以下、図面を参照しながら、本実施形態の水処理装置100を説明する。なお、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
以下の実施形態の説明においては、金属関連物質という用語が用いられる。金属関連物質は、金属イオンM+、金属粒子M、金属酸化物粒子MO、及び金属水酸化物粒子MOHからなる群より選ばれる1又は2以上の物質を意味する。また、被処理水Wは、金属関連物質である金属イオンM+、金属粒子M、金属酸化物粒子MO、及び金属水酸化物粒子MOHのうちの少なくともいずれか1つと、シリカ及びアルミナの少なくとも一方を含有する濁質成分とを含むものである。
また、金属関連物質である金属イオンM+、金属粒子M、金属酸化物粒子MO、及び金属水酸化物粒子MOHのいずれもが、多孔質担体に担持されている金属酸化物粒子及び金属水酸化物粒子の少なくともいずれか1つに吸着される。そのため、本明細書においては、金属関連物質を吸着する機能を有する金属酸化物粒子及び金属水酸化物粒子を吸着粒子という。
図1に示すように、本実施形態の水処理装置100は、被処理水Wが流れる被処理水流路11,12,13を備えている。被処理水流路11と被処理水流路12との間には、混合部1が接続されている。被処理水流路12と被処理水流路13との間には、凝集促進部2が接続されている。混合部1には、酸化剤供給部4から酸化剤Oが供給され、さらに凝集剤供給部5から凝集剤Fが供給される。凝集促進部2から被処理水流路13へ流れ出た被処理水Wは、フィルタ部3によって濾過され、供給流路14を経由して、処理済みの水として水栓等に至る。
図2に示すように、水処理装置100においては、金属関連物質を含む被処理水Wが、被処理水流路11から混合部1へ流れ込む。被処理水Wは、井戸、河川若しくは池等の水源から汲み出した水又は雨水を用いることができ、上述のように、金属関連物質やシリカ及びアルミナなどの濁質成分を含有している。なお、被処理水Wに含まれる金属関連物質において、金属イオンM+は、二価の鉄イオン(Fe2+)及び三価の鉄イオン(Fe3+)である。金属粒子Mは、鉄(Fe)の粒子である。金属酸化物粒子MOは、鉄酸化物(FeO,Fe2O3,Fe3O4)の粒子である。金属水酸化物粒子MOHは、鉄水酸化物(Fe(OH)2,Fe(OH)3,FeO(OH))の粒子である。
酸化剤供給部4は、酸化剤Oを混合部1へ供給する。混合部1は、被処理水流路11を流れる被処理水Wと酸化剤供給部4から供給された酸化剤Oとを混合するように構成されている。混合部1から流れ出た被処理水Wは、被処理水流路12を経由して凝集促進部2へ流れ込む。
酸化剤Oは、被処理水W中において、金属関連物質に対し酸化作用を生じさせる。具体的には、金属関連物質が二価の鉄イオンの場合には、三価の鉄イオンに酸化させる作用を有する。このような酸化剤Oは、オゾン又は塩素を含むことが好ましい。オゾン及び塩素は被処理水Wに容易に添加でき、金属関連物質を効率的に酸化させるため、好ましく用いることができる。
酸化剤Oとしては塩素系薬剤が好ましく、特に被処理水Wの内部で次亜塩素酸が生成するものが好ましい。酸化剤Oとしては、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム及び塩素化イソシアヌル酸からなる群より選ばれる少なくとも一つを用いることができる。次亜塩素酸カルシウムとしては、さらし粉(有効塩素30%)及び高度さらし粉(有効塩素70%))の少なくとも一つを用いることができる。塩素化イソシアヌル酸としては、トリクロロイソシアヌル酸ナトリウム、トリクロロイソシアヌル酸カリウム、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム、及びジクロロイソシアヌル酸カリウムからなる群より選ばれる少なくとも一つを用いることができる。この中でも、次亜塩素酸ナトリウムは液体であり、定量ポンプによる注入方式を用いて被処理水Wに定量的に添加できるため、特に好ましく用いることができる。また、無機系の高度さらし粉は被処理水Wに対する溶解度が非常に高いため、高い酸化作用を発揮することができる。
図3に示すように、凝集促進部2は金属材料凝集促進層200を備え、金属材料凝集促進層200には、混合部1を経由して酸化剤Oが添加された被処理水Wが流れ込む。そして、金属材料凝集促進層200は、基材201と、基材201の内部に設けられた多孔質担体層202とを備える。
基材201は、被処理水流路12から流れ込んだ被処理水Wが多孔質担体層202を透過し、被処理水流路13から流れ出るように、多孔質担体層202を保持する。基材201としては、例えば、内部に多孔質担体層202を保持できる空間を有する筒体や箱体を用いることができる。また、基材201としては、表面に多孔質担体層202を保持できる枠体を用いることができる。なお、図3に示す凝集促進部2は、金属材料凝集促進層200における基材201の上面に被処理水流路12が接続され、基材201の下面に被処理水流路13が接続されている。そして、基材201の内部に保持されて多孔質担体層202を構成する多孔質担体Cが、被処理水流路13に流れ出ないように、網203を設けている。
多孔質担体層202は、表面に吸着粒子Aを担持する多孔質担体Cを含んでいる。多孔質担体Cは、活性炭、シリカ、セラミックス及びゼオライトからなる群より選ばれる少なくとも一つを用いることができる。多孔質担体Cは、酸化剤Oを含む被処理水Wの流速を一定以上に維持する開口率を有している。また、多孔質担体Cは、金属関連物質M+,M,MO,MOHの凝集に必要な吸着粒子Aを担持するために、十分な表面積及び吸着性を有している。
吸着粒子Aは、金属酸化物粒子及び金属水酸化物粒子の少なくともいずれか一方を含む。具体的には、吸着粒子Aは、Fe2O3、Fe3O4、Fe(OH)3及びFeOOHからなる群より選ばれる少なくとも一種の三価の鉄イオン化合物を含む。
凝集促進部2は、被処理水流路12から酸化剤Oを含む被処理水Wを受け入れる。そして、凝集促進部2は、酸化剤Oの作用によって酸化された金属関連物質を吸着粒子Aへ吸着させる。これにより、凝集促進部2は、多孔質担体Cの表面で、金属関連物質に由来する金属酸化物粒子MO及び金属水酸化物粒子MOHからなる混合粒子の凝集を促進させる。
具体的には、図2に示すように、被処理水Wに含まれる金属関連物質が鉄イオン、鉄粒子、鉄酸化物、及び鉄水酸化物である場合、酸化剤Oの酸化作用によって鉄イオンは三価の鉄イオン(Fe3+)に酸化される。そして、三価の鉄イオン、鉄粒子、鉄酸化物及び鉄水酸化物は、吸着粒子Aに含まれる三価の鉄イオン化合物が核となり、吸着粒子Aの表面に吸着する。その結果、吸着粒子Aの表面で、金属関連物質は、粒子径が1μm以上の鉄酸化物の粒子及び鉄水酸化物等からなる凝集物MDAへ成長する。なお、三価の鉄イオンは吸着粒子Aに吸着されるが、被処理水Wに含まれる二価の鉄イオン(Fe2+)は、多孔質担体Cを構成する活性炭の表面に吸着され、凝集物MDAへ成長する。
ここで、吸着粒子Aを構成する金属と、被処理水Wに含まれる金属関連物質を構成する金属とが同一元素であることが好ましい。この場合、吸着粒子Aは、金属関連物質を効率的に吸着することが可能となる。ただし、吸着粒子Aは、被処理水Wにおける金属関連物質を吸着することができればよい。したがって、吸着粒子Aを構成する金属と金属関連物質を構成する金属とが異なる元素であってもよい。
多孔質担体Cの表面で凝集した凝集物MDAは、ある程度の大きさ以上、例えば粒子径が1μm以上になると、被処理水Wの水流によって多孔質担体Cの表面から脱離し、被処理水Wと共に下流へ流れる。つまり、凝集物MDAを含む被処理水Wは、凝集促進部2から被処理水流路13を経由してフィルタ部3へ流れ込む。
フィルタ部3は、凝集促進部2の下流に設けられ、凝集促進部2から被処理水Wと共に流れてきた凝集物MDAを捕捉する。本実施形態においては、フィルタ部3は、砂濾過部である。このフィルタ部3によれば、被処理水Wから凝集物MDAを除去することができる。その結果、フィルタ部3の下流においては、金属イオンM+、金属粒子M、金属酸化物粒子MO、及び金属水酸化物粒子MOHの凝集物MDAが除去された処理済の水が生成される。この処理済の水は、供給流路14を経由して水栓まで供給される。
次に、図4を用いて、被処理水W中の鉄イオンの除去に着目して、本実施形態の水処理装置100と比較例の水処理装置との相違を説明する。
図4の(a)に示すように、比較例の水処理装置において、被処理水Wは酸素(O2)を含むが、酸化剤Oを含まない。多孔質担体Cとして活性炭を用いた場合、活性炭は二価の鉄イオン(Fe2+)を吸着しやすい性質を有する。ここで、二価の鉄イオンが水中で酸化されて三価の鉄イオン(Fe3+)になった場合、三価の鉄イオンは瞬時に酸素と結合し、微粒子状の酸化鉄に変化する。しかし、活性炭は鉄イオンよりも酸化鉄微粒子を吸着し難いため、結果的に三価の鉄イオンは吸着されずに活性炭を通過してしまう場合が多い。
このように、二価の鉄イオンは多孔質担体Cに吸着されるが、三価の鉄イオンは酸素と結合して数nmレベルの酸化鉄粒子となることから、多孔質担体Cを通過してしまう。このような数nmレベルの酸化鉄粒子を除去するには逆浸透膜(RO膜)などを用いなければならず、コストが大きく増大してしまう。
一方、本実施形態の水処理装置100では、図4の(b)に示すように、酸化剤Oが被処理水W中に供給された場合、二価の鉄イオンは三価の鉄イオンに酸化される。そして、三価の鉄イオンは、凝集促進部2に存在する吸着粒子Aに吸着される。つまり、吸着粒子Aは、Fe2O3、Fe3O4、Fe(OH)3及びFeOOHからなる群より選ばれる少なくとも一種の三価の鉄イオン化合物を含んでいる。被処理水W中の三価の鉄イオンは、吸着粒子Aにおける三価の鉄イオン化合物との親和性が高いことから、三価の鉄イオン化合物が核となり、吸着粒子Aの表面に吸着する。その結果、吸着粒子Aの表面で被処理水W中の鉄イオンが凝集し、鉄酸化物や鉄水酸化物の凝集物MDAが生成する。また、酸化剤Oによって酸化されなかった二価の鉄イオンは多孔質担体Cに吸着され、多孔質担体Cの表面に存在する吸着粒子Aと凝集物MDAを生成する。
ここで、凝集物MDAの粒子径が数μmレベルとなった後に、凝集物MDAは吸着粒子Aの表面から脱離する。つまり、被処理水W中の鉄イオンは、鉄酸化物や鉄水酸化物の凝集物MDAとして吸着粒子Aの表面に凝集する。そして、凝集物MDAが1μm以上となった場合には、被処理水Wの水流により吸着粒子Aの表面から脱離し、フィルタ部3に到達する。ただ、凝集物MDAは1μm以上となっているため、逆浸透膜を用いなくても、例えば砂濾過等で容易に除去することが可能となる。
上述のように、吸着粒子Aは、Fe2O3、Fe3O4、Fe(OH)3及びFeOOHからなる群より選ばれる少なくとも一種の三価の鉄イオン化合物を含むことが好ましい。ただ、吸着粒子Aは、Fe(OH)3及びFeOOHの少なくともいずれか一方を含むことがより好ましい。Fe(OH)3及びFeOOHは、三価の鉄イオンとの親和性が特に高いことから、凝集物MDAを生成しやすくなり、被処理水Wから金属関連物質を効率的に除去することが可能となる。
なお、被処理水W中に鉄水酸化物(Fe(OH)3)、鉄酸化物(Fe2O3)、及び鉄(Fe)の粒子が含まれている場合には、鉄水酸化物、鉄酸化物及び鉄の粒子は多孔質担体Cに吸着され難い。しかしながら、吸着粒子Aは、鉄水酸化物、鉄酸化物及び鉄の粒子も吸着することができるため、凝集物MDAとして除去することが可能となる。
上述のように、井戸、河川若しくは池等の水源から汲み出した水又は雨水などからなる被処理水Wは、金属関連物質に加えて、シリカ及びアルミナなどの濁質成分を含有している場合がある。このような濁質成分の一部は、金属関連物質に巻き込まれる形で吸着粒子Aの表面に凝集することができるため、金属関連物質と共に凝集物MDAを形成して除去することができる。ただ、被処理水W中の濁質成分は粒子径が数nmレベルであるため、凝集促進部2の作用だけでは十分に除去できない可能性がある。そのため、水処理装置100は、図1に示すように、濁質成分を凝集させる凝集剤Fを被処理水Wに供給する凝集剤供給部5を備えている。
凝集剤供給部5は、凝集剤Fを混合部1へ供給する。混合部1は、被処理水流路11を流れる被処理水Wと凝集剤供給部5から供給された凝集剤Fとを混合するように構成されている。つまり、混合部1は、凝集剤Fと酸化剤供給部4から供給された酸化剤Oとを混合するように構成されている。被処理水Wに対する凝集剤Fと酸化剤Oの添加順序は特に限定されず、凝集剤Fを添加した後に酸化剤Oを添加してもよく、酸化剤Oを添加した後に凝集剤Fを添加してもよく、凝集剤Fと酸化剤Oを同時に添加してもよい。
なお、凝集剤FのpHが3.5程度の酸性であり、酸化剤Oとして塩素系薬剤を用いた場合、これらが直接接触しないように混合することが好ましい。つまり、これらを被処理水Wに同時に添加した際には、酸性の凝集剤Fにより酸化剤Oが分解して塩素ガスが発生する原因となる可能性がある。そのため、酸化剤供給部4を被処理水流路の上流に設け、凝集剤供給部5を被処理水流路の下流に設け、酸性の凝集剤Fと酸化剤Oとが直接接触し難くすることが好ましい。
凝集剤供給部5において、凝集剤Fの添加方法は特に限定されない。凝集剤Fが液体の場合には、定量ポンプによる注入方式を用いて、被処理水Wに定量的に添加することができる。また、凝集剤Fが粉体の場合には、フィーダー等を用いて、被処理水Wに粉体のまま添加することができる。
凝集剤Fは、濁質成分を凝集させ、フィルタ部3により濾過される程度の粒子、つまり粒子径が20μm〜50μmの粒子にすることが可能なものならば特に限定されない。凝集剤Fとしては、無機凝集剤及び有機凝集剤の少なくとも一方を用いることができる。無機凝集剤は、鉄系無機凝集剤及びアルミニウム系無機凝集剤の少なくとも一方であることが好ましい。鉄系無機凝集剤としては、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、塩化第二鉄、ポリ硫酸第二鉄、及びポリシリカ−鉄凝集剤からなる群より選ばれる少なくとも一つを用いることができる。アルミニウム系無機凝集剤としては、ポリ塩化アルミニウム(PAC)及び硫酸アルミニウム(硫酸バンド)の少なくとも一方を用いることができる。有機凝集剤は、カチオン系合成高分子凝集剤、アニオン系合成高分子凝集剤、ノニオン系合成高分子凝集剤からなる群より選ばれる少なくとも一つを用いることができる。この中でも、凝集剤Fは無機凝集剤を用いることが好ましく、鉄系無機凝集剤を用いることがより好ましい。鉄系無機凝集剤は、アルミニウム系無機凝集剤と比べて健康被害に対する懸念が小さいことから、好適に用いることができる。
被処理水Wに対する凝集剤Fの添加量は濁質成分を凝集させ、フィルタ部3により濾過される程度の粒子にすることが可能ならば特に限定されない。例えば、凝集剤Fが無機凝集剤の場合には、被処理水Wに対する凝集剤Fの濃度が1〜5ppmとなるように添加することが好ましい。
水処理装置100において、凝集剤供給部5により凝集剤Fが被処理水Wに添加された場合、凝集剤Fの作用により、被処理水Wに分散している濁質成分が集合し、凝集物を生成する。この際、凝集物には、濁質成分であるシリカやアルミナと共に、金属関連物質が取り込まれる場合がある。そして、濁質成分が凝集してなる凝集物は、被処理水流路12を経由して凝集促進部2に到達する。濁質成分の凝集物の多くは凝集促進部2をそのまま通過するが、当該凝集物の一部は金属関連物質と共に凝集し、凝集物MDAの内部に取り込まれる場合がある。
そして、凝集促進部2から流出した濁質成分の凝集物及び金属関連物質の凝集物MDAは、被処理水流路13を経由してフィルタ部3へ流れ込む。濁質成分の凝集物及び金属関連物質の凝集物MDAは粒子が粗大化しているため、フィルタ部3により容易に捕捉され、被処理水Wから除去することができる。その結果、フィルタ部3の下流においては、濁質成分の凝集物及び金属関連物質の凝集物MDAが除去された処理済の水が生成され、この処理済の水は供給流路14を経由して水栓まで供給される。
このように、本実施形態の水処理装置100は、金属関連物質と、シリカ及びアルミナの少なくとも一方を含有する濁質成分とを含む被処理水Wが流れる被処理水流路11,12,13を備える。金属関連物質は、金属イオン、金属粒子、金属酸化物粒子及び金属水酸化物粒子からなる群より選ばれる少なくとも一つである。また、水処理装置100は、被処理水Wに酸化剤Oを供給する酸化剤供給部4と、被処理水Wに、濁質成分を凝集させる凝集剤Fを供給する凝集剤供給部5とを備える。さらに水処理装置100は、金属材料凝集促進層200を有し、酸化剤の作用によって被処理水Wに含まれる金属関連物質を吸着粒子Aに吸着させることにより、金属関連物質の凝集を促進する凝集促進部2を備える。金属材料凝集促進層は、基材201と、基材に設けられた多孔質担体層202と、多孔質担体層に担持され、Fe2O3、Fe3O4、Fe(OH)3及びFeOOHからなる群より選ばれる少なくとも一種の三価の鉄イオン化合物を含む吸着粒子Aとを有する。
水処理装置100において、被処理水Wに含まれる金属関連物質が鉄イオン、鉄粒子、鉄酸化物、及び鉄水酸化物である場合、吸着粒子が高密度に存在する多孔質担体層202に、酸化剤と共に鉄イオンを含む被処理水Wを通過させる。それにより、二価の鉄イオンは、多孔質担体Cの表面に吸着される。また、三価の鉄イオンは、多孔質担体Cの表面に付着した吸着粒子Aとしての鉄酸化物の粒子又は鉄水酸化物の粒子等に吸着される。その結果、多孔質担体Cの表面で、金属関連物質の凝集が促進される。また、被処理水Wに含まれる濁質成分も、凝集剤Fの作用により凝集される。そのため、被処理水Wに含まれる鉄イオンの価数によらず鉄イオンを除去することができ、加えて濁質成分も効率的に除去することができる。
また、多孔質担体層202は活性炭を含むことが好ましい。活性炭は比表面積が高いため、吸着粒子を高濃度で担持することができる。また、活性炭は二価の鉄イオンを吸着するため、被処理水W中の二価の鉄イオンを容易に除去することができる。
さらに、水処理装置100は、凝集促進部2の下流に設けられ、被処理水Wと共に凝集促進部2から流れてきた金属関連物質の凝集物MDA及び濁質成分の凝集物を濾過するフィルタ部3をさらに備えていることが好ましい。これにより、フィルタ部3によって、被処理水Wから金属関連物質の凝集物MDA及び濁質成分の凝集物を除去することができる。その結果、金属関連物質の凝集物MDA及び濁質成分の凝集物が除去された水を生成することができる。なお、フィルタ部3により捕捉される金属関連物質の凝集物MDA及び濁質成分の凝集物の粒子径は、20μm〜50μmであることが好ましい。凝集物の粒子径がこの範囲内であることにより、フィルタ部3として濾過砂を使用できるため、安価に濾過を行うことができる。なお、金属関連物質の凝集物MDA及び濁質成分の凝集物の粒子径を測定する場合、その測定方法は特に限定されないが、例えばレーザー回折・散乱法により測定することができる。
なお、図1において、凝集剤供給部5は混合部1に接続されているが、このような態様に限定されない。つまり、凝集剤Fの作用により濁質成分が粗大化するのに時間を要する場合には、凝集剤供給部5は混合部1に接続することが好ましい。これにより、被処理水Wが被処理水流路12及び凝集促進部2を通過している間に凝集物が粗大化できるため、粒子径が20μm〜50μmの凝集物を容易に得ることができる。ただ、濁質成分の粗大化がごく短時間で行われるような凝集剤Fを用いる場合には、混合部1に限定されず、被処理水流路12、凝集促進部2、被処理水流路13のいずれかに凝集剤供給部5を接続してもよい。
次に、図5を用いて、本実施形態の他の例における水処理装置100の全体構成を説明する。他の例の水処理装置100においても、混合部1には酸化剤供給部4及び凝集剤供給部5が接続されており、酸化剤供給部4から酸化剤Oが供給され、凝集剤供給部5から凝集剤Fが供給される。そして、酸化剤Oは塩素を含んでいる。塩素を含む酸化剤Oは、上述のように金属関連物質の凝集の促進を行うと共に、被処理水Wの殺菌を行うことができる。また、他の例の水処理装置100においては、鉄の繊維材料が混合部1に設置されている。それにより、混合部1において、鉄イオン及び鉄の粒子が被処理水Wに供給される。なお、鉄の粒子は、被処理水W中において、鉄イオン、鉄酸化物の粒子、及び鉄水酸化物の粒子に変化するものもある。
一般に、水処理装置100が使用される環境では、被処理水Wとなる原水は、金属関連物質として、金属イオンM+、金属粒子M、金属酸化物粒子MO、及び金属水酸化物粒子MOHのうちの少なくとも一つを含んでいる。例えば、当該原水は、鉄イオン、鉄の粒子、鉄酸化物の粒子及び鉄水酸化物の粒子のうちの少なくとも一つを含んでいる。この場合、水処理装置100では、上述のように塩素の酸化作用及び金属材料凝集促進層200によって、原水から三価の鉄イオン、鉄の粒子、鉄酸化物の粒子、及び鉄水酸化物の粒子を除去することができる。また、二価の鉄イオンは、多孔質担体Cの吸着作用により、原水から除去することができる。
一方、被処理水Wとなる原水が鉄イオン、鉄の粒子、鉄酸化物の粒子、及び鉄水酸化物の粒子のいずれも殆ど含んでいない場合がある。上述のように、ヒ素やマンガンなど鉄以外の金属関連物質は、鉄イオンに巻き込まれる形で吸着粒子Aの表面に凝集して除去されるため、原水が鉄を含まない場合には、これらの金属関連物質が除去され難くなる可能性がある。そのため、被処理水Wに意図的に鉄を添加し、これらの金属関連物質を除去しやすくすることが好ましい。図5に示す水処理装置100では、被処理水Wに鉄を供給するための繊維材料を混合部1に設けている。
図5に示される例では、鉄の繊維材料と塩素とが反応することによって、二価の鉄イオン及び三価の鉄イオンが被処理水Wに溶け出す。また、被処理水W中において、三価の鉄イオン、鉄の粒子、鉄酸化物の粒子、及び鉄水酸化物の粒子は、金属材料凝集促進層200中の吸着粒子Aに吸着される。この場合においても、吸着粒子Aは、Fe2O3、Fe3O4、Fe(OH)3及びFeOOHからなる群より選ばれる少なくとも一種の三価の鉄イオン化合物を含む。
本実施形態の他の例の水処理装置100は、被処理水Wに対し、鉄の繊維材料から鉄イオン、鉄の粒子、鉄酸化物の粒子、及び鉄水酸化物の粒子を積極的に添加している。それにより、吸着粒子Aの表面で、鉄酸化物の粒子及び鉄水酸化物の粒子の凝集を意図的に促進し、ヒ素やマンガンなど鉄以外の金属関連物質を除去することが可能となる。
上記した本実施形態の他の例の水処理装置100によれば、塩素の酸化作用により、大型の貯留槽を設けることなく、必要とされる程度まで、被処理水Wから金属関連物質を除去することができる。そのため、水処理装置100によれば、金属関連物質の除去のスペース効率を向上させることができる。また、鉄の繊維材料が鉄イオンとして被処理水Wに溶け出すことを利用して、被処理水Wから微細粒子を除去することができる。
以下、本実施形態の水処理装置100の具体的構成を説明する。
(実施形態1)
図6及び図7を用いて、実施形態1の水処理装置100を説明する。図6に示すように、実施形態1の水処理装置100においては、凝集促進部2とフィルタ部3とが1つの貯留槽10内に設けられている。そして、被処理水流路13は、貯留槽10内に設けられており、貯留槽10内の凝集促進部2とフィルタ部3との境界部である。
被処理水流路11には、ポンプP1が設けられている。ポンプP1は、井戸等から被処理水Wを混合部1へ送る。貯留槽10内においては、混合部1から流れ出た被処理水Wは、被処理水流路12を経由して、貯留槽10の上部から貯留槽10内へ流れ込む。貯留槽10内では、上方から下方へ向かって被処理水Wが流れ落ちる。このとき、流れ落ちる被処理水Wは、凝集促進部2とフィルタ部3とを通過する。その後、処理済の水は、貯留槽10の下部から外部へ流れ出て、供給流路14を経由して、水栓へ供給される。
実施形態1においては、混合部1及び酸化剤供給部4が一体化されている。具体的には、図7に示すように、混合部1は、蓋部22を有する混合酸化タンク23を備えている。酸化剤供給部4は、混合部1内に設置された酸化剤Oとしてのタブレット状の塩素系薬剤24そのものである。混合部1内には、タブレット状の塩素系薬剤24と共に、被処理水Wへ鉄イオン及び鉄粒子を供給する繊維状の鉄25が設置されている。なお、図6に示すように、混合部1には凝集剤供給部5が接続されており、凝集剤供給部5から凝集剤Fが供給されるが、図7では図示を省略している。
図7に示すように、混合部1内においては、被処理水Wが被処理水流路11から混合酸化タンク23内の空間21へ吹き出される。その後、被処理水Wは、混合酸化タンク23の下部に設置されているタブレット状の塩素系薬剤24と繊維状の鉄25とに接触する。それにより、タブレット状の塩素系薬剤24と繊維状の鉄25は、被処理水Wへ、酸化剤O並びに鉄イオン及び鉄粒子を供給する。
なお、タブレット状の塩素系薬剤24と繊維状の鉄25とは、混合酸化タンク23から被処理水流路12へ至る経路に設けられた網26によって捕捉されるため、下流の被処理水流路12へ流されてしまうことはない。塩素系薬剤24としては、塩素化イソシアヌル酸を用いることが好ましく、例えばジクロロイソシアヌル酸ナトリウムやトリクロロイソシアヌル酸ナトリウムを用いることがより好ましく、トリクロロイソシアヌル酸ナトリウムを用いることが特に好ましい。トリクロロイソシアヌル酸ナトリウムは水に対する溶解度が低いため、タブレット状の塩素系薬剤24として用いた場合、少量の薬剤を長期に亘り継続して添加することが可能となる。
このように、実施形態1では、混合酸化タンク23に塩素系薬剤24と繊維状の鉄25を近接して配置している。そのため、塩素系薬剤24の効果により鉄25から鉄イオン、鉄、鉄酸化物及び鉄水酸化物が溶出しやすくなり、被処理水Wに対する酸化剤O並びに鉄イオン、鉄、鉄酸化物及び鉄水酸化物の添加を効率的に行うことが可能となる。また、上述のように、被処理水Wとなる原水が鉄イオン、鉄、鉄酸化物、及び鉄水酸化物を殆ど含んでいない場合であっても、実施形態1の水処理装置100を用いることで、被処理水Wに意図的に鉄を添加できる。その結果、ヒ素やマンガンなど鉄以外の金属関連物質を除去することが可能となる。
(実施形態2)
図8及び図9を用いて、実施形態2の水処理装置100を説明する。水処理装置100は、流路切替弁50と排水口17とをさらに備えている。流路切替弁50は、被処理水流路12と供給流路14とに接続されている。混合部1と流路切替弁50とは、被処理水流路12aによって接続されている。流路切替弁50と貯留槽10とは、被処理水流路12bによって接続されている。また、貯留槽10と流路切替弁50とは、供給流路14aによって接続されている。流路切替弁50と蛇口16とは、供給流路14bによって接続されている。流路切替弁50は、排水口17にも接続されている。流路切替弁50は、いわゆる五方弁である。
流路切替弁50は、図8に示される被処理水Wが凝集促進部2からフィルタ部3へ向かう順方向Xに流れる状態と、図9に示される被処理水Wがフィルタ部3から凝集促進部2へ向かう逆方向Yに流れる状態とを切り替える。順方向Xの流れの場合においては、図8に示すように、被処理水Wは、混合部1、流路切替弁50、凝集促進部2、フィルタ部3、流路切替弁50、及び蛇口16をこの順番で流れる。逆方向Yの流れの場合においては、図9に示すように、被処理水Wは、混合部1、流路切替弁50、フィルタ部3、凝集促進部2、流路切替弁50、及び排水口17をこの順番で流れる。
排水口17は、被処理水Wが逆方向Yに流れる状態において凝集促進部2の下流に位置付けられ、被処理水Wを外部へ排出する。そのため、水処理装置100によれば、フィルタ部3を逆流洗浄することが可能になる。また、フィルタ部3の逆流洗浄のときに、フィルタ部3に付着している吸着粒子Aが凝集促進部2に吸着されている吸着粒子Aに吸着される。その結果、凝集促進部2の吸着粒子Aの能力を回復させることができる。
ここで、凝集促進部2は、例えば一群の粒状体を含む多孔質担体Cを有し、フィルタ部3は、例えば一群の砂粒を含む砂濾過部を有している。凝集促進部2の一群の粒状体の密度は、フィルタ部3の一群の砂粒の密度よりも小さい。したがって、貯留槽10内の水の中で、凝集促進部2の一群の粒状体は、フィルタ部3の一群の砂粒よりも上側に堆積される。また、凝集促進部2を構成する一群の粒状体とフィルタ部3を構成する一群の砂粒とは、互いに上下方向において並ぶように堆積されている。そのため、水処理装置100を小型化することが可能になっている。また、フィルタ部3を逆流洗浄しても、凝集促進部2を構成する一群の粒状体とフィルタ部3を構成する一群の砂粒とは、重力により自然に互いの配置を維持する。
なお、フィルタ部3を構成する一群の砂粒は、例えばマンガン砂とすることができる。そして、マンガン砂の密度は2.57〜2.67g/cm3であり、マンガン砂におけるマンガン付着量は0.3mg/g以上である。ただし、フィルタ部3は、一般の濾過砂(2.5g/cm3)で形成されていてもよい。また、凝集促進部2を構成する一群の粒状体を含む多孔質担体Cの密度は、例えば、活性炭の場合0.5g/cm3であり、ゼオライトの場合0.9〜1.1/cm3であり、シリカの場合2.2g/cm3であり、セラミックスの場合0.7g/cm3である。
(実施形態3)
図10を用いて、実施形態3の水処理装置100を説明する。水処理装置100は、混合部1の上流の被処理水流路11に設けられ、被処理水Wに含まれる還元剤としてのアンモニアを吸着する還元剤吸着部18をさらに備えている。そのため、混合部1における酸化剤Oが、被処理水W中のアンモニアの酸化のために消費されてしまうことを抑制することができる。還元剤吸着部18では、ナトリウムイオンを含み、そのナトリウムイオンと被処理水W中のアンモニウムイオンとを置換することにより、被処理水W中のアンモニアを吸着するゼオライトを用いることができる。
水処理装置100は、ゼオライトのアンモニア吸着効果を再生する再生液供給部19を備えている。再生液供給部19は、ゼオライトに塩化ナトリウムを含む再生液を供給することにより、還元剤吸着部18に新たなナトリウムイオンを吸着させる。それにより、還元剤吸着部18によるアンモニアの吸着効果を維持することができる。
以下、本実施形態における水処理装置の作用を実施例によりさらに詳細に説明するが、本実施形態はこれら実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
実施例1では、図11に示す水処理装置を用いて、金属材料凝集促進層の除鉄性能を確認した。
まず、多孔質担体としての活性炭へ、吸着粒子としての鉄化合物を担持した。具体的には、最初に、内径がΦ50mm、容量1Lの円筒型処理槽に、活性炭を300mL入れた。なお、活性炭は、粒子径が0.5mm〜2.3mmのものを用いた。次に、円筒型処理槽の内部の活性炭に、二価の鉄イオンを0.7ppm含む水と次亜塩素酸ナトリウム溶液とを連続通水し、処理槽内で活性炭、水及び次亜塩素酸ナトリウム溶液が十分接触するようにした。水の通水流量は6L/minとし、次亜塩素酸ナトリウム溶液の注入量は処理槽内の遊離塩素濃度が5ppmで維持されるように定量制御を行った。この水及び次亜塩素酸ナトリウム溶液の注入処理を10時間行い、活性炭へ鉄化合物を担持した。
次に、上述のようにして得られた、鉄化合物を担持した活性炭を用い、図11に示す水処理装置を作製した。そして、金属材料凝集促進層の除鉄性能を確認するため、従来技術との比較を行った。従来技術として、酸化剤で鉄の凝集を促して粒成長させた後に、濾過砂で濾過する高速濾過と比較した。
比較実験は、図11で示される水処理装置を用いて行った。凝集促進部及び砂濾過槽には、内径Φが50mmで容量が1Lの円筒型の容器を用いた。そして、当該容器の内部に、濾過砂利を100mLと、鉄化合物を担持した活性炭を300mL入れ、金属材料凝集促進層を備える凝集促進部を作製した。なお、濾過砂利は、粒子径が2mm〜4mmのものを使用した。さらに、別の円筒型容器の内部に、濾過砂利を100mLと、マンガン砂(Φ0.35mm)を300mL入れ、砂濾過槽を作製した。なお、濾過砂利は粒子径が2mm〜4mmのものを使用し、マンガン砂は粒子径が0.35mmのものを使用した。
そして図11に示すように、被処理水流路を用いて、凝集促進部を砂濾過槽の上流側に配置し、凝集促進部の上流側に、被処理水としての原水の供給ポンプと、酸化剤の定量注入機構を設けた。酸化剤は、塩素濃度が10000ppmの次亜塩素酸ナトリウム溶液を用いた。なお、次亜塩素酸の注入機構と凝集促進部の間と、凝集促進部と砂濾過槽の間にバイパスラインBLを設けた。バイパスラインの容量は1Lとなっており、バイパスラインと凝集促進部のどちらの流路を通っても、合計容量は同じになるようにしてある。
実験項目としては、凝集促進部の有無と塩素供給の有無の組み合わせからなる計4通りを行った。従来技術である高速濾過は、凝集促進部が無く、かつ、酸化剤としての塩素が有りの場合に相当する。また、本実施形態に係る凝集促進部を用いた濾過は、凝集促進部が有り、かつ、塩素が有りの場合に相当する。なお、原水としては、鉄濃度が0.72ppmの水を用い、原水流量は1L/minとした。塩素供給を行う場合は、投入量が30ppmになるよう制御した。
表1では、各々の処理水に含まれる鉄濃度を示す。従来技術である高速濾過(凝集促進部無、塩素有)では、鉄濃度が0.47ppmとなった。これは、一部の鉄は塩素の効果で粒成長して砂濾過部により濾過されるが、十分な除鉄を行うには粒成長の時間、つまり砂濾過槽の前段の容量が不足した結果と考えられる。
これに対して、砂濾過槽の前に凝集促進部を用いた場合(凝集促進部有、塩素有)では、鉄濃度が0.16ppmとなっており、除鉄性能の向上が確認された。これは、凝集促進部が鉄の凝集を加速し、濾過される鉄の量が増加した結果と考えられ、凝集促進部の除鉄処理に対する効果が確認された。また、凝集促進部のみを用いた場合(凝集促進部有、塩素無)でも鉄濃度の低下はわずかながら起こっており、凝集促進部単体での粒成長加速効果も確認された。
以上のように、本実施形態の凝集促進部を砂濾過槽の上流に備えることで、酸化剤のみを用いた場合よりも鉄の粒成長が加速され、濾過による除鉄性能が大幅に向上することが確認された。
[実施例2]
実施例2では、図12に示す水処理装置300を用いて、金属材料凝集促進層及び凝集剤による濁質成分の除去性能を確認した。
図12に示すように、水処理装置300は、貯留槽310を備えている。貯留槽310としては、内径Φが100mmで長さが500mmの円筒型の容器を用いた。貯留槽内部の上流側には、実施例1で得られた、鉄化合物を担持した活性炭からなる凝集促進部302を配置し、下流側にはフィルタ部303を配置した。フィルタ部303では、粒子径が0.35mmのマンガン砂と、粒子径が2〜4mmの砂利と、粒子径が4〜8mmの砂利とを、凝集促進部側からこの順で積層させた。なお、貯留槽310において、凝集促進部302の容量は400mLとした。また、貯留槽310におけるマンガン砂の容量は1400mLとし、粒子径が2〜4mmの砂利の容量は500mLとし、粒子径が4〜8mmの砂利の容量は500mLとした。
そして図12に示すように、被処理水流路を用いて、凝集剤供給部305を貯留槽310の上流側に配置し、凝集剤供給部305の上流側に、被処理水としての原水の供給ポンプPと、酸化剤供給部304とを設けた。なお、原水の供給ポンプPの上流側には、原水の流量を測定する流量計を設置した。原水としては、カオリンを0.1g/Lの濃度で添加した水を用いた。酸化剤供給部304から供給される酸化剤としては、次亜塩素酸ナトリウム溶液を用いた。また、凝集剤供給部305から供給される凝集剤としては、濃度が11%である液体のポリ塩化アルミニウムを用いた。
このような水処理装置300を用いて、濁質成分であるカオリンの除去性能を確認した。具体的には、カオリンを0.1g/Lの濃度で添加した原水を、供給ポンプPを用いて流速2.3L/min(線速度17.6m/h)で流した。そして、供給ポンプPを用いて、酸化剤供給部304から原水に酸化剤を添加した。この際、酸化剤の添加量は、塩素濃度が10ppmとなるように調整した。さらに、供給ポンプPを用いて、凝集剤供給部305から原水に凝集剤を添加した。
酸化剤及び凝集剤を含む原水は貯留槽310に到達し、凝集促進部302及びフィルタ部303をこの順で通過することにより、処理水を得た。そして、貯留槽310を通過した後の処理水中に含まれるカオリンの濁度を測定した。測定結果を図13に示す。なお、図13のグラフは、縦軸を処理水中に含まれるカオリンの濁度(単位:Nephelometric Turbidity Unit(NTU))とし、横軸を原水の累積濾過流量としている。図13では、凝集促進部302を除いた貯留槽310を使用した場合における、カオリンの濁度の測定結果も示している。
図13に示すように、凝集剤と凝集促進部を併用した場合には、WHO基準である5NTU未満となることが分かる。また、凝集促進部を使用しなかった場合には、累積濾過流量が10m3/m2程度で濁度が上昇しているのに対し、凝集剤と凝集促進部を併用した場合には、20m3/m2程度まで濁度の上昇が抑制できることが分かる。つまり、凝集促進部を用いることにより、凝集剤により粗大化した濁質成分が金属関連物質に取り込まれて凝集物MDAを形成し易くなるため、濁質成分を効率的に除去することが可能となる。なお、カオリンを0.1g/Lの濃度で添加した処理前の原水の濁度は100NTUであることから、凝集剤と凝集促進部を併用することで、濁度を大幅に低減できることが分かる。
さらに、貯留槽310を通過した後の処理水中に含まれるアルミニウムの濃度も測定した。このアルミニウムは凝集剤に由来するものであり、処理水にアルミニウムが含まれると健康被害に対する懸念が生じる。測定結果を図14に示す。なお、図14のグラフは、縦軸を処理水中に含まれるアルミニウムの濃度とし、横軸を原水の累積濾過流量としている。図14に示すように、凝集剤と凝集促進部を併用した場合には、WHO基準である0.2mg/L未満となることが分かる。また、凝集促進部を使用しなかった場合には、累積濾過流量が10m3/m2程度で濃度が上昇しているのに対し、凝集剤と凝集促進部を併用した場合には、20m3/m2を超えても濃度の上昇が抑制できることが分かる。このことから、凝集促進部を用いることにより、凝集剤の流出も抑制できることが分かる。
以上、本実施形態の内容を説明したが、本実施形態はこれらの記載に限定されるものではなく、種々の変形及び改良が可能であることは、当業者には自明である。