JP6843512B2 - 電子ビーム溶接装置、コンピュータプログラム、電子ビーム溶接方法 - Google Patents
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Description
そこでなされた本発明の目的は、厚板であっても溶接を確実に行いつつ入熱量を抑え、溶接部位の強度や靭性等の機械的性質を向上させることのできる電子ビーム溶接装置、コンピュータプログラム、電子ビーム溶接方法を提供することである。
本発明の一態様に係る電子ビーム溶接装置は、互いに突き合わせた一対の加工対象物の開先部に向かって電子ビームを照射する電子銃と、電磁界によって前記電子ビームを集束させるフォーカスコイルと、前記開先部に沿って前記電子ビームを照射している間、前記フォーカスコイルに供給する電流値を変化させて、前記電子ビームの焦点位置を前記加工対象物の板厚方向に変動させる制御部と、を備え、前記制御部は、一定時間Tsの間に、前記電流値のピーク位置が互いに異なる電流波形の複数パルスを前記フォーカスコイルに供給することによって、前記焦点位置が前記板厚方向に異なる前記電子ビームを順次生成し、前記複数パルスは、前記加工対象物の表面側に前記焦点位置を有する第一パルスと、前記板厚方向中央部に前記焦点位置を有する第二パルスと、裏面側に前記焦点位置を有する第三パルスと、を少なくとも含む。
さらに、このように、一定時間の間に、電流値のピーク位置が板厚方向で互いに異なる複数パルスの電流波形で電流を供給すると、電子ビームの焦点位置を加工対象物の板厚方向に容易に変動させることができる。
このように構成することで、開先部の板厚方向全体にわたって、電子ビームによる溶接を確実に行うことができる。
このような構成によれば、一次溶接ビードと二次溶接ビードとが重なることで、開先部に形成される溶接ビードの幅を広くとることができ、目外れによる欠陥を防止し、溶接金属の強度の低下を防ぐことができる。
図1に示すように、電子ビーム溶接装置10は、電子銃11と、フォーカスコイル12と、ワーク保持部(図示無し)と、制御部20と、を備えている。
この実施形態において、ワーク100,100は、低合金鋼、オーステナイト系ステンレス鋼等とすることができる。
図2は、本実施形態に係る電子ビーム溶接方法の処理の流れを示す図である。
制御部20は、予めインストールされたコンピュータプログラムに基づいて所定の処理を順次実行することで、以下に示すような電子ビーム溶接方法を実現する。
図2に示すように、電子ビーム溶接処理が開始されると、制御部20は、電子銃11から電子ビームEBを放射し、ワーク100,100の開先部100kに照射させる(ステップS101)。これとともに、ワーク保持部(図示無し)は、保持したワーク100,100を、電子銃11に対して開先部100kが連続する方向に沿って移動させる。これにより、電子銃11から開先部100kに照射される電子ビームEBによって、開先部100kの両側のワーク100,100がビームによって溶融され、開先部100kに沿った溶接が順次なされていく。
開先部100kに沿って電子ビームEBを照射する一定時間Tsの間、制御部20は、関数発生器(図示無し)等により、電流波形が互いに異なる複数パルスの電流を発生させ、第二フォーカスコイル12Bに供給する。制御部20は、例えば、図3に示すように、第一パルスP1では、ワーク100の表面100f(図1参照)側にピークPt1を有した電流波形で電流を供給する。また、第二パルスP2では、ワークの板厚方向中央部にピークPt2を有した電流波形で電流を供給する。第三パルスP3では、ワーク100の裏面100g(図1参照)側にピークPt3を有した電流波形で電流を供給する。これら第一パルスP1、第二パルスP2、第三パルスP3は、一定時間Tsの間に順次供給される。
このように、一定時間Tsの間に、電流値のピークPt1〜Pt3をワーク100の板厚方向T(図1参照)に変化させながら第一パルスP1、第二パルスP2、第三パルスP3を出力すると、時間Ts内における第一パルスP1、第二パルスP2、第三パルスP3の合成波形W1は、電流値が板厚方向Tにおいてほぼ一定となった矩形(台形)パルス状となる。
第一パルスP1、第二パルスP2、第三パルスP3において、電流値のピークPt1〜Pt3の位置をずらすと、電子銃11から放射される電子ビームEBの焦点位置Fが板厚方向Tに順次変化する。つまり、開先部100kに沿って電子ビームEBを照射している間に、照射している電子ビームEBの焦点位置Fをワークの板厚方向Tに変動させることができる。
図3に示したような電流波形で第二フォーカスコイル12Bに電流を供給した場合、図4に示すように、開先部100kに照射される電子ビームEBのエネルギ分布は、開先部100kの板厚方向Tにおいて、ほぼ一定の大きさとなる。したがって、ワーク100,100を開先部100kの全体にわたって板厚方向Tに均一に入熱することができる。
この図5に示すように、一定時間Tsの間に順次発生する第一パルスP1’、第二パルスP2’、第三パルスP3’において、電流のピーク位置Pt0を固定したままとすると、これら第一パルスP1’、第二パルスP2’、第三パルスP3’の合成波形W0においては、開先部100kの板厚方向Tの中央部において、電流値のピークPwが大きくなる。
図5に示すように、一定時間Tsの間、電流のピーク位置Pt0を固定したまま第二フォーカスコイル12Bに電流を印加し続けると、図6に示すように、開先部100kに照射される電子ビームEBの板厚方向Tにおけるエネルギ分布は、電流波形の電流のピーク位置(板厚方向Tの中央部)でエネルギ値が最も大きくなる。すなわち板厚方向T中央部に対する入熱量が多く、板厚方向Tの両側における入熱量は板厚方向Tの中央部に対して低くなる。
この図7に示すように、板厚方向Tにおける電流のピーク位置Pt0を固定したまま、つまり電子ビームEBの焦点位置を板厚方向Tに変動させずに溶接を行った場合、板厚方向Tの中央部(図6、図7における断面B−B)においては、電子ビームEBによる入熱によってなされる溶接幅(ビード幅)は狭いものの、エネルギが集中しており、入熱量は大きい。また、この場合、板厚方向Tの端部(図6、図7における断面A−A)においては、板厚方向Tの中央部に対し、電子ビームEBの焦点位置からのオフセット寸法が大きいため、電子ビームEBのビーム径が大きい。このため、溶接幅が大きく、入熱量は、板厚方向Tの中央部よりも小さい。
上記実施形態では、開先部100kを1パスで溶接する場合を示したが、これに限らない。開先部100kに対して、複数パスでの電子ビーム溶接を行うようにしてもよい。
例えば図8に示すように、1パス目の電子ビーム溶接で、開先部100kを含む範囲でビード幅の大きい一次溶接ビードB1を形成した後、2パス目の電子ビーム溶接で、ビード幅のより小さい二次溶接ビードB2を、一次溶接ビードB1及び開先部100kに重ねて施すようにしてもよい。
なお、本発明の電子ビーム溶接装置10の構成は、図面を参照して説明した上述の実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
例えば、上記実施形態では、一定時間Tsの間に、第一パルスP1、第二パルスP2、第三パルスP3で電流を供給する例を挙げたが、時間Tsの間、より細かい時間Ts間隔でより多くのパルスで電流を供給するようにしてもよい。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
11 電子銃
11a 陰極
12 フォーカスコイル
12A 第一フォーカスコイル
12B 第二フォーカスコイル
20 制御部
100 ワーク(加工対象物)
100k 開先部
B1、B3 一次溶接ビード
B2、B4、B5、B6、B7 二次溶接ビード
EB 電子ビーム
F 焦点位置
P1 第一パルス
P2 第二パルス
P3 第三パルス
Ts 一定時間
T 板厚方向
W0 合成波形
W1 合成波形
Claims (4)
- 互いに突き合わせた一対の加工対象物の開先部に向かって電子ビームを照射する電子銃と、
電磁界によって前記電子ビームを集束させるフォーカスコイルと、
前記開先部に沿って前記電子ビームを照射している間、前記フォーカスコイルに供給する電流値を変化させて、前記電子ビームの焦点位置を前記加工対象物の板厚方向に変動させる制御部と、
を備え、
前記制御部は、一定時間Tsの間に、前記電流値のピーク位置が互いに異なる電流波形の複数パルスを前記フォーカスコイルに供給することによって、前記焦点位置が前記板厚方向に異なる前記電子ビームを順次生成し、
前記複数パルスは、前記加工対象物の表面側に前記焦点位置を有する第一パルスと、前記板厚方向中央部に前記焦点位置を有する第二パルスと、裏面側に前記焦点位置を有する第三パルスと、を少なくとも含む電子ビーム溶接装置。 - 電子ビーム溶接装置の制御部で実行されるコンピュータプログラムであって、
互いに突き合わせた一対の加工対象物の開先部に向かって電子銃から電子ビームを照射するステップと、
前記電子ビームを照射している間、前記電子ビームの焦点位置が前記加工対象物の板厚方向に変化するよう、電磁界によって前記電子ビームを集束させるフォーカスコイルに対して供給する電流値を変動させるステップと、
一定時間Tsの間に、前記電流値のピーク位置が互いに異なる電流波形の複数パルスを前記フォーカスコイルに供給することによって、前記焦点位置が前記板厚方向に異なる前記電子ビームを順次生成するステップと、
を備え、
前記複数パルスは、前記加工対象物の表面側に前記焦点位置を有する第一パルスと、前記板厚方向中央部に前記焦点位置を有する第二パルスと、裏面側に前記焦点位置を有する第三パルスと、を少なくとも含むことを特徴とするコンピュータプログラム。 - 電子ビーム溶接装置で実行される電子ビーム溶接方法であって、
互いに突き合わせた一対の加工対象物の開先部に向かって電子ビームを照射する工程と、
前記電子ビームを照射している間、前記電子ビームの焦点位置が前記加工対象物の板厚方向に変化するよう、電磁界によって前記電子ビームを集束させるフォーカスコイルに対して供給する電流値を変動させる工程と、
一定時間Tsの間に、前記電流値のピーク位置が互いに異なる電流波形の複数パルスを前記フォーカスコイルに供給することによって、前記焦点位置が前記板厚方向に異なる前記電子ビームを順次生成する工程と、
を備え、
前記複数パルスは、前記加工対象物の表面側に前記焦点位置を有する第一パルスと、前記板厚方向中央部に前記焦点位置を有する第二パルスと、裏面側に前記焦点位置を有する第三パルスと、を少なくとも含むことを特徴とする電子ビーム溶接方法。 - 前記開先部を含むように前記電子ビームを照射して一次溶接ビードを形成する工程と、
前記一次溶接ビードと少なくとも一部が重なり、かつ、前記一次溶接ビードとは前記開先部が連続する方向に直交する方向における位置及び幅の少なくとも一方が異なる二次溶接ビードを形成する工程と、
を備える請求項3に記載の電子ビーム溶接方法。
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