JP6843433B2 - 彫刻刀 - Google Patents
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Description
特許文献1に開示された彫刻刀では、保護部材が柄部分に対して移動可能に取り付けられている。そして、保護部材が柄部材から飛び出して刃先の周囲を覆う状態と、保護部材が柄部材の内部に収納された状態を切り替え可能となっている。
その一方で、熟練した使用者は、刃先の周囲に位置する保護部材を邪魔に感じる場合がある。そのような場合、使用者は、保護部材を柄部材の内部に収納することで、保護部材のない彫刻刀と同じように使用することができる。
また、保護部材を柄部材に対して着脱させる構造とは異なり、取り外した保護部材を紛失したりしないため、好ましい。
すなわち、彫刻刀は、上記したように、年少者による使用が想定されるものであり、思いがけない使い方をされる可能性がある。そして、彫刻刀を想定外の姿勢とした上で無理に力を加えるといった具合に、通常とは異なる使い方をされることで、保護部材が破損してしまう可能性がある。
ここで、保護部材は、手の保護等を目的とした安全のための部材であるので、より壊れにくいことが好ましい。すなわち、より破損し難い保護部材が望まれていた。
なお、ここでいう「対象面」とは、合板の表面等の彫刻対象となる面であり、彫刻刀を使用する際に刃を接触させる彫刻対象物の面である。
そこで、本発明の彫刻刀では、刃を対象面(例えば、版木の表面)に接触させる際、対象面に対する彫刻刀(柄部)の傾きが上記範囲内であるときに刃が接触する構造としている。つまり、上記範囲を超えて立てた姿勢としたり、上記範囲を超えて寝かせた姿勢としたりした場合には、刃が対象面に接触しない構造としている。
このように、作業がやり易い姿勢とすると刃が対象面に接触し、作業をやり難い姿勢とすると刃が接触しない構造とすると、使用するときに刃を対象面に接触させることで、彫刻刀が自然に作業し易い姿勢となる。このため、作業に不慣れな者が使用しても使用感がよく、使い易い彫刻刀を提供できる。
また、作業が不慣れな使用者が本発明の彫刻刀を使い続けることで、使用者が対象面への好ましい刃の当て方を自然に体得するという効果も期待できる。
さらに、ガード部を角度規制部材として機能させるので、部品点数を不必要に増加させることなく姿勢の制限が可能となる。つまり、製造コストの低減を図ることが可能であり、新たに設けた部品が使用時に邪魔になる等の理由により、使用感が悪くなるということもない。
なお、ここでいう「正面視」とは、前方からみた平面視である。また、「側面視」とは、側方からみた平面視であり、刃を彫刻対象面に接触させた状態における彫刻対象面側を下側とし、その反対側を上側としたときの側面視である。
具体的に説明すると、ガード部は、不意に大きな力が加わった際の破壊を阻止するという観点から、一定以上変形し易くし、弾性範囲を広くすることが好ましい。しかしながら、その一方で、通常使用時に安全性を確保するという観点から、軽く力を加えた程度では変形しないものとすることが好ましい。したがって、上記の構成とすることで、不意に大きな力が加わった際と、通常使用時の双方において好適なガード部を形成することができる。
なお、ここでいう「主原料」とは、機能を発揮するために十分な量が含まれていることをいう。さらに、ここでいう「ポリアセタール及びポリアミドを主原料とする」とは、ポリアセタールとポリアミドの原料全体に占める割合が50パーセント以上であるものとする。
以下の説明では、特に断りのない限り、彫刻刀1の長手方向を前後方向とし、刃が位置する長手方向の一端側を前側、対となる他端側を後側とする。
また、特に断りのない限り、以下の説明における上下方向は、彫刻刀1の長手方向と直交する方向であり、図1における高さ方向とする。
さらにまた、特に断りのない限り、以下の説明における幅方向は、上記した上下方向及び前後方向と直交する方向とする。
そして、ここでいう「寝かせた姿勢」とは、前後方向が水平面と平行な方向となる姿勢である。
そして、この彫刻刀1は、保護部材4の一部であるガード部6が刃体部3の周囲を覆う保護姿勢(図1(a)参照)と、ガード部6が柄部2の内部に収納される収納姿勢(図1(b)参照)との間で姿勢変更が可能となっている。すなわち、外部に露出する操作部7を前後方向に移動させることで、保護部材4の全体が前後方向に移動し、それに伴ってガード部6が前後方向に移動する構造となっている。そして、収納姿勢とすることで、ガード部6が刃体部3の周囲から退去する。つまり、収納姿勢は、刃体部3の周辺を開放する姿勢となっている。
なお、第一柄形成片10には、操作部7を露出させるための窓部10aが形成されている。この窓部10aは、第一柄形成片10の外側面(上面)と、内側面(下面)とを貫通する貫通孔であり、前後方向に延びる長孔となっている。
この刃体取付部18の前端面には、刃体部3を取り付けるための取り付け孔が形成されている。そして、刃体取付部18の下端側部分に、柄側係合凹部18aが形成されている。
この柄側係合凹部18aは、保護部材4の一部と係合することで、保護部材4の移動時にガイド部として機能する。
2つのガイド形成片部19a,19bは、いずれも立壁状の部分であり、幅方向で間隔を空けて配置され、互いに平行となるように前後方向に延びている。このガイド形成片部19a,19bは、第二柄形成片11の内側面から上方に突出しており、第一柄形成片10の内側面(下面)から下方に離れた位置まで延びている。つまり、2つのガイド形成片部19a,19bの上端部分と、第一柄形成片10の内側面(下面)の間に空間が形成されている。
そして、この柄内空間20が、保護部材4の大部分を収納可能となっている。具体的には、刃体取付部18及びガイド突起部19よりも幅方向の一端側に位置する部分と、これらよりも幅方向の他端側に位置する部分と、ガイド突起部19の上方に位置する部分とが、保護部材4を配置、移動させるための空間となっている。
付言すると、刃体部3の刃とは、刃体部3の上面と下面の境界となる部分であり、当該部分を薄く鋭く加工して形成される部分である。したがって、この刃体部3の刃は、刃体部3の前端側に位置するごく細い面又は辺である。
より詳細に説明すると、ガード部6は、保護部材4と一体成型され、保護部材4の前端側で半環状に連続する部分となっている。そして、幅方向の一端側に位置する立壁状のガード形成片30と、他端側に位置するもう一方のガード形成片31と、2つのガード形成片30,31の前端側同士を連結するガード連結片32とが一体に形成され、全体における平面視形状が略U字状となっている。
このガード部6は、本実施形態の特徴的な部分であり、詳しくは後述する。
2つの連結片部25a,25bは、いずれも断面形状が略「L」字状で前後方向に延びる部分であり、立壁状となる部分の下端側の一部を内側(幅方向内側)に折り曲げたような形状となっている。すなわち、2つの連結片部25a,25bは、幅方向で離間した位置で互いに平行となるように延びる部分であり、離間対向するそれぞれ内側面の下端側には、互いに近づく方向へ突出する平板状の部分が形成されている。
2つの連結片部25a,25bのうち、一方の前端部分が一方のガード形成片30の後端部分と連続して一体となって延びている。また、他方の前端部分がもう一方のガード形成片31の後端部分と連続して一体となって延びている。そして、それぞれの後端部分が内部摺動体26の前端側部分と連続している。
すなわち、天板部26aの下方側には、天板部26aと、幅方向で離間対向する2つの立板部26b,26cに囲まれた係合凹部35が形成されている。そして、この係合凹部35は、ガイド突起部19を嵌入可能な凹部となっている。
なお、ここでいう「小判状(トラック状)」とは、長方形の2本の短辺をそれぞれ半円に置き換えた形状とする。
したがって、操作突起7aを下方側へ向かって押圧すると、前側係止片部7bもまた下方側へ移動する構造となっている。
ガード部6は、上記したように、2つのガード形成片30,31と、ガード連結片32が一体になって形成される部分となっている(図1(a)等参照)。
ここで、2つのガード形成片30,31は、同形であり、視線方向を幅方向とした平面視において重なるように配置されている。これらは、幅方向で離間対向しており、互いに平行となるように延びている。
なお、以下の説明では、一方のガード形成片30(第1のガード形成片30)を詳細に説明し、同形である他方のガード形成片31(第2のガード形成片31)については、重複する詳細な説明を省略する。
すなわち、ガード形成片30では、ガード基端部38が後端側部分を形成しており、くびれ部39及び先端側部40によって先端側部分が形成されている。そして、先端側部分は、ガード基端部38の前端から前方上側へ向かって延びている。
そして、ガード形成片30の先端側部分では、後側部分を形成するくびれ部39が、前側部分を形成する先端側部40の大部分と比べて細くなるように形成されている。
このくびれ部39の上面は、斜め方向(前側下方)に窪んだ湾曲面となっている。
湾曲面部45は、先端側部40の下面のうちで前側よりとなる部分から、ガード形成片30の前端面までの間で延びる湾曲面を形成している。つまり、ガード形成片30の前端側には、下面における前端側から前面における下側までの間に跨って延びる湾曲面が形成されている。
なお、「くびれ部39の厚さ」とは、くびれ部39の上面から下面までの距離であり、幅方向を視線方向とした平面視において、くびれ部39の延び方向と直交する方向の長さである。また、ここでいう「程度」とは数パーセントの誤差を含むものとし、後述する記載においても同様である。
なお、この距離L2は、視線方向を幅方向とした側面視において、ガード部6の前端部分と刃を結ぶ線分(仮想線分)の前後方向成分の長さでもある。言い換えると、ガード部6の前端部分と刃を結ぶ線分(仮想線分)のうちで、最も短い線分の前後方向(彫刻刀1の長手方向)成分の長さでもある。
なお、この長さL3は、視線方向を幅方向とした側面視において、ガード部6のうちで刃の直上に位置する部分から刃までの距離でもある。
なお、この距離L4は、視線方向を幅方向とした側面視において、ガード連結片32の下面と刃を結ぶ線分(仮想線分)の上下方向成分の長さでもある。
本実施形態では、この距離L4を3.67mm程度としている。
なお、ここでいう「横断面」とは、延び方向に垂直な方向(くびれ部39の厚さ方向)で切断した断面である。
つまり、くびれ部39の横断面の断面二次モーメントの平均値は、ガード基端部38の前端部分における断面二次モーメントの値を下回っている。
さらに、くびれ部39の最も細い部分における横断面(図6(b)参照)は、くびれ部39の横断面のうち、断面二次モーメントの値が最小となる部分となっている。そして、この部分における断面二次モーメントの値は、181.98mm4程度となっている。
より詳細には、この彫刻刀1は、図7で示されるように、保護姿勢時にガード部6を下側に向けて直立させた姿勢とし、鉛直下方へと移動させて下側の平面に押し付けた場合、刃が平面に当たるまで押し付けてもガード部6が破損しない構造となっている。
なお、ここでいう「直立させた姿勢」とは、彫刻刀1の長手方向(上記の前後方向)が上下方向となる姿勢である。
そして、ガード部6をこのような状態まで変形させても、ガード部6を自然状態(外力が加わらない状態であり、平面から離した状態)とすることで、ガード部6が元の形状に戻るものとなっている。
以上のように、彫刻刀1は、ガード部6を弾性範囲内で変形させる際、変形後のガード部6の前端部分と刃のそれぞれとが同一平面上(彫刻刀1の長手方向と直交する仮想面上)に位置させることが可能となっている。より詳細には、この状態からさらにもう少しだけ反り返らせる弾性変形が可能となっている。
そこで、本実施形態では、ガード部6が何らかの面に押し付けられても、ガード部6が撓んで変形し、その結果、ガード部6とは異なる部分(刃体部3の刃等)がこの接触面に接触する構造となっている。このことにより、ガード部6の一定量以上の変形が阻止され、ガード部6の破損を阻止する(抑制する)ことが可能な構造となっている。このことは、上記のように直立した姿勢の他、彫刻刀1が接触面に対して傾斜した姿勢(彫刻刀1の長手方向に延びる仮想線と接触面とのなす角が90度以下となる姿勢)として押し付けた場合も同様である。
すなわち、彫刻刀1を天地逆とし、彫刻刀1が接触面に対して傾斜した姿勢で刃先近傍を平面に押し付けた場合であっても、ガード部6が変形し刃体部3が平面に接触する構造となっている。
なお、ガード部6の上端が下方側に移動する変形の弾性範囲内における最大変形量は、上方側に移動する変形の弾性範囲内における最大変形量よりも小さくなっている。
したがって、図8(c)で示されるように、彫刻刀1を収納姿勢としたとき、ガード部6の上方に位置する第一柄形成片10の内側面と、ガード部6の上面とは、一部が接触し、他の大部分で離間対向した状態となる。そして、離間対向している部分では、各部における第一柄形成片10の内側面とガード部6の上面の間隔が略同一となっている。
この間隔は、ガード部6の上下方向における長さの10パーセント以下であり、数mm(例えば、3mm)以下となる微細な間隔であって、本実施形態では、1mm以下の間隔である。
そして、このままガード部6を後方側へ移動させる操作を実施すると、ガード部6が柄部2の前端面や内周面上部に押し当てられた状態となり、さらにガード部6に対して後方側へと向かう力が加わる。このことから、ガード部6は、柄部2から受ける反力により、反りが矯正される方向へ力が加わることとなる。
この所定範囲(なす角αの範囲)は、15.0度以上40.0度以下であることが好ましく、15.0度以上35.0度以下であることが特に好ましい。そして、16.05度以上31.68度以下であることがより好ましく、20.0度以上30.0度以下であることがさらに好ましい。
具体的に説明すると、本発明者らがさまざまな人に官能試験を実施した結果、なす角αが40.0度を超えて彫刻刀を立てた姿勢すると、大多数の人が作業をやり難く感じることが判明した。
また、なす角αを15.0度を下回る角度で寝かせた姿勢とした場合、刃先が表面で滑る等の問題が生じ、15.0度以上とした場合に比べ、とたんに作業がやり難くなることが判った。
そして、なす角αが15.0度以上の範囲において、上記なす角αが35.0度以下とした場合、35.0度を上回る角度した場合よりも、多くの人が作業をやり易く感じるようになることが判明した。さらに、上記なす角αを20.0度以上30.0度以下の範囲としたとき、より顕著に大多数の人が作業をやり易く感じるようになることが判明した。
また、このなす角αの範囲は、ガード部6が自然状態における形状(通常形状)を保っている場合の範囲であり、当然のことながら、無理に力を加えてガード部6を撓ませた場合はこの限りではない。
さらに、図11(a)で示されるように、刃とガード部6がそれぞれ対象面に接触する場合においても、上記したように、湾曲面部45が形成されており、ガード部6と対象面の接触面積を少なくすることができる。このため、刃を対象面に接触させたまま動かすとき、ガード部6が刃の移動を妨げたりすることなく、好ましい。
その一方で、ガード部6は、接触角度を規制する規制部材としても機能するため、軽く力を加えた程度では変形しないものとする必要がある。このため、弾性率を一定以上高くする必要がある。
このことから、本実施形態のガード部6は、上記したように形成することで、ゴム等を原料にして形成した場合に比べて弾性率が高く、適宜な弾性率と広い弾性範囲を有する部材となっている。すなわち、上記した主原料を用いると共に、上記したL1の範囲とすることで、強度と安全性を両立させる上で好ましいものとしている。
また、上記したL2、L3、L4の範囲とすることで、上記した角度制限を可能とすると共に、刃を十分に隠した状態としつつ、ガード部を作業時に邪魔にならないようにしている。つまり、安全性と使用感のよさを両立させる上で好ましいものとしている。
つまり、これら前側係止片部7bと凹部とは、保護姿勢を維持するための第一の姿勢維持部として機能する部分であり、保護姿勢時に係合した状態となり、保護部材4を移動させる際と収納姿勢時において係合解除された状態となる。
ここで、2つの立板部26b,26cには、いずれも後端部分よりもやや前方となる位置に溝部51が形成されている。言い換えると、2つの立板部26b,26cは、いずれも後端側の一部分が欠落した壁状部分となっている。
後側係合突起50は、幅方向内側へ突出するように形成された突起状部分であり、突出端側の部分が丸みを帯びた形状となっている。言い換えると、後側係合突起50は、平面視した形状が略半円状で上下方向に延びる突起状部分となっている。
また、2つの後側係合突起50は、同形の突起状部分であり、幅方向で離間対向する位置にそれぞれ形成され、互いに近づく方向に突出している。したがって、この2つの後側係合突起50のそれぞれもまた、前後方向における位置が同一となっている。
つまり、2つの柄側係合突起53は、同形であり、幅方向で離間対向する位置にそれぞれ形成され、互いに離れる方向に突出している。つまり、2つの柄側係合突起53のそれぞれは、前後方向における位置が同一となっている。
すなわち、窓部10aに操作突起7aを挿入させる構造とし、係合凹部35にガイド突起部19を嵌入させる構造とすることで、保護部材4の左右方向への移動を規制している。
つまり、窓部10aと操作突起7aからなる組と、係合凹部35とガイド突起部19からなる組とが、いずれも保護部材4を前後方向に移動させる際のガイド部としても機能する。
つまり、一方のガイド形成片部19aの幅方向における外側面と、一方の立板部26bの同方向における内側面とが微細に間隔を空けて離間対向した状態となっている。さらに、他方のガイド形成片部19bの外側面と、他方の立板部26cの内側面もまた、微細に間隔を空けて離間対向した状態となっている。
そして、この状態からさらに保護部材4を後方側へ移動させることで、2つの後側係合突起50のそれぞれが、いずれも2つの柄側係合突起53の幅方向外側に位置した状態となる(図14(b)参照)。
このため、後側係合突起50が柄側係合突起53に前方から当接した状態で、保護部材4にさらに後方側へ向かう力を加えると、後側係合突起50は、柄側係合突起53と接触した状態を維持しつつ柄側係合突起53を乗り越えるように移動することとなる。
すなわち、2つのガイド形成片部19a,19bの後端部同士が互い離れる方向に移動するように弾性変形し、2つのガイド形成片部19a,19bの後端側部分が通常時よりも開いた状態となる。そして、一方の後側係合突起50が、一方の柄側係合突起53よりも幅方向における外側に位置し、他方の後側係合突起50が、他方の柄側係合突起53よりも幅方向における外側に位置した状態となる(図14(b)参照)。
なお、収納姿勢から保護姿勢への変更する際は、一定以上の力で保護部材4を前方側へ移動させることで、2つの後側係合突起50が上記とは逆に移動し、柄側係合突起53を後方側から乗り越える。
なお、所謂印刀のように、刃が前後方向成分を含む方向に延びる形状とした場合には、上記した距離L2等での刃の前後方向における位置は、前端部分であるものとする。
また、所謂三角刀のように、刃が上下方向成分を含む方向に延びる形状とした場合には、上記した線分の長さL3等での刃の上下方向における位置は、下端部分であるものとする。
さらに、距離L2を6.3mm程度とすることが特に好ましい。
さらに、距離L2を6.79mm程度とすることが特に好ましい。
さらに、距離L2を7.52mm程度とすることが特に好ましい。
実施例及び比較例として、上記した実施形態に準じた彫刻刀と、市販されている彫刻刀に対して耐久試験を実施し、ガード部の耐久性能を比較した。
(実施例1)
試験では、図15で示されるように、ガード部を上方に向けて直立させた姿勢とし、下端部を万力で固定した。すなわち、前後方向が鉛直方向に沿う姿勢として彫刻刀を固定した。さらに、図15で示されるように、センサの下端面をガード部の前端部分(試験開始時における上端部分)に当接させ、この下端面を50mm/minの速度で下方側に移動させて、折れ強度と曲がり強度を測定した。
なお、センサの下端面は、水平面と平行となる面とした。さらに、センサの下端面の面積は、直立させた姿勢における彫刻刀の平面視面積よりも十分に広い面積とし、その中心近傍にガード部を当接させた状態から試験を開始した。
そして、センサの下端面が刃に当接した状態となったとき、測定を終了した。
なお、この耐久試験では、ガード部の形状が反り返るように変形していくのに対し、荷重は、常に鉛直方向下側に加わる。このため、弾性範囲内での変形であるにもかかわらず、移動距離が3mm程度であるときに荷重の最大値(4.5kgf程度)を計測し、その後、移動距離が増加しても計測される荷重の値が大きく変化しないものとなっている。
したがって、実質的な強度は、実験初期のグラフの傾きをそのまま延長させた線分上において、刃当たりした際の移動距離と対応する点A以上となる。
(比較例1)
試験の結果は、図16のグラフのようになった。また、移動距離が4.5mm程度であるときに荷重の最大値(6.6kgf程度)を計測し(図中の点B参照)、保護部材が折れて破損した。すなわち、センサに刃が当接する前に、保護部材が折れて破損した。
(比較例2)
試験の結果は、図16のグラフのようになった。比較例2の彫刻刀は、刃がセンサに当接するまで保護部材を変形させると、保護部材が塑性変形して元に戻らなくなった。
2 柄部
3 刃体部
4 保護部材
20 柄内空間
20a 開口部分
30,31 ガード形成片
32 ガード連結片
38 ガード基端部
39 くびれ部
40 先端側部
45 湾曲面部
α なす角
Claims (10)
- 柄部と、前記柄部に取り付けられた刃体部と、保護部材を備え、前記刃体部に形成された刃を対象面に接触させて使用可能な彫刻刀であって、
前記保護部材は、少なくとも前記刃体部の周辺に配置可能なガード部を有し、
前記ガード部が前記刃の周辺に位置する保護姿勢とすることが可能であり、
前記ガード形成片の前端側には、下面から前面に跨って延びる湾曲面が形成されており、
前記保護姿勢では、前記柄部の長手方向を前記対象面に対して傾斜する方向とし、所定の角度傾けた姿勢とすることで、前記刃を前記対象面に接触させることが可能であり、
少なくとも前記ガード部が、前記刃と前記対象面とが接触可能となる前記角度の範囲を規制するものであり、
前記保護姿勢において前記柄部の長手方向に延びる仮想線と前記対象面とのなす角が15度以上40度以下の範囲であるときに前記刃が前記対象面に接触するものであり、
前記なす角が前記15度以上40度以下の範囲内であるとき、前記ガード部が前記対象面と接触しない状態と、前記ガード部が前記対象面と接触する状態が前記なす角の角度に応じて切り替わり、前記刃と共に前記ガード部が前記対象面と接触する状態では、前記湾曲面が前記対象面と接触することを特徴とする彫刻刀。 - 前記柄部の長手方向を前後方向として前記刃体部側を前側としたとき、
前記保護姿勢とした状態での前記ガード部の前端部分から前記刃までの前後方向における距離をL2とし、
前記保護姿勢とし、さらに前後方向を水平面に対して平行となる姿勢とした状態で、前記刃と前記ガード部を鉛直方向に延びる仮想線分で結んだ際の仮想線分の長さをL3としたとき、
前記L2は、4.0mm以上8.0mm以下であり、前記L3は、1.0mm以上3.0mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の彫刻刀。 - 前記柄部の長手方向を前後方向として前記刃体部側を前側とし、
前後方向と直交する方向における一端側であり、前記保護姿勢として前記刃を前記対象面に接触させた状態における前記対象面側を下側とし、その反対側を上側としたとき、
前記ガード部の下端よりも下方側に前記柄部の下端が位置し、
前記柄部の下端部分のうちで前端側周辺となる部分もまた、前記角度の範囲を規制することを特徴とする請求項1又は2に記載の彫刻刀。 - 前記柄部の長手方向を前後方向として前記刃体部側を前側とし、
前後方向と直交する方向における一端側であり、前記保護姿勢として前記刃を前記対象面に接触させた状態における前記対象面側を下側とし、その反対側を上側としたとき、
前記ガード部は、2つのガード形成片と、2つの前記ガード形成片の前端側同士を繋いで延びるガード連結片とを有し、且つ、前記保護姿勢において前記刃体部の前端及び両側端の外側で半環状に連続して延びるものであり、
前記ガード形成片は、前記保護姿勢において前記刃体部の側方外側で前後方向に延びる部分であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の彫刻刀。 - 前記柄部の長手方向を前後方向として前記刃体部側を前側とし、
前後方向と直交する方向における一端側であり、前記保護姿勢として前記刃を前記対象面に接触させた状態における前記対象面側を下側とし、その反対側を上側としたとき、
前記ガード部は、2つのガード形成片を有し、
前記保護姿勢では、2つの前記ガード形成片の間に前記刃体部が位置し、且つ、前記ガード形成片が前記刃体部の側方外側で前後方向に延びており、
前記ガード形成片は、前後方向に延びる後端側部分と、前方へ向かうにつれて上方へと向かう方向に延びる先端側部分とを有し、
前記ガード形成片の先端側部分には、他の部分よりもくびれた部分であるくびれ部が形成されており、前記ガード形成片の先端側部分がしなる弾性変形が可能であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の彫刻刀。 - 前記くびれ部は、前記ガード形成片の先端側部分の後端よりの部分に形成されていることを特徴とする請求項5に記載の彫刻刀。
- 前記くびれ部の横断面の断面二次モーメントの平均値は、100mm4以上300mm4以下であり、前記ガード形成片の後端側部分における横断面の断面二次モーメントの最小値よりも小さいことを特徴とする請求項5又は6に記載の彫刻刀。
- 前記くびれ部の後端部分は、前記刃よりも前後方向における後側に位置しており、前記くびれ部の前端部分は、前記刃よりも前後方向における前側に位置していることを特徴とする請求項5乃至7のいずれかに記載の彫刻刀。
- 前記柄部には、内部に前記ガード部の少なくとも一部を収納可能な柄内空間が形成されており、
前記柄内空間は、前記柄部の前方側に開口部分を有しており、当該開口部分の上端部分が、前記ガード部の上端部分よりも僅かに上方に位置している、又は、前記ガード部の上端部分と上下方向の位置が同一となるように形成されており、
前記保護部材は、前記柄部に対して相対的に移動可能に取り付けられ、
前記保護部材を移動させることにより、前記保護姿勢と、前記ガード部の少なくとも一部が前記柄内空間に収納される収納姿勢とを切り替え可能であり、
前記収納姿勢では、前記柄内空間に位置する前記ガード部の上面の各部と、前記柄内空間の上面とが僅かな隙間を空けて対向している、又は、接触していることを特徴とする請求項5乃至8のいずれかに記載の彫刻刀。 - 前記保護部材は、ポリアセタール及びポリアミドを主原料として形成された樹脂成型体であり、
前記ガード部は、前記保護部材と一体成型されるものであることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の彫刻刀。
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