以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、各図は実施形態とその理解を促すための模式図であり、その形状や寸法、比などは実際のものと異なる個所があるが、これらは適宜、設計変更することができる。
(第1の実施形態)
第1の実施形態の液滴噴射装置の一例について図1乃至図10を参照して説明する。図1は、溶液滴下装置1で使用される第1の実施形態の液滴噴射装置2の使用例を示す斜視図である。図2は、液滴噴射装置2の上面図であり、図3は液滴噴射装置2の液滴を噴射する面である下面図を示す。図4は、図2のF4−F4線断面図を示す。図5は、第1の実施形態の液滴噴射装置2の液滴噴射アレイ27を示す平面図である。図6は、図5のF6−F6線断面図である。図7は、液滴噴射装置2のノズル110の周辺構造を示す縦断面図である。図8は、第1の実施形態の液滴噴射装置が液滴噴射装置装着モジュールに取り付けられた状態を示す要部の横断面図である。図9は、図8のF9−F9線断面図である。
溶液滴下装置1は、矩形平板状の基台3と、液滴噴射装置装着モジュール5と、を有する。本実施形態では、1536穴のマイクロプレート4へ溶液を滴下する実施形態について説明する。ここでは、基台3の前後方向をX方向、基台3の左右方向をY方向と称する。X方向とY方向とは直交する。
マイクロプレート4は、基台3の中央位置に固定されている。基台3の上には、マイクロプレート4の両側に、X方向に延設された左右一対のX方向ガイドレール6a、6bを有する。各X方向ガイドレール6a、6bの両端部は、基台3上に突設された、固定台7a、7bに固定されている。
X方向ガイドレール6a、6b間には、Y方向に延設されたY方向ガイドレール8が架設されている。Y方向ガイドレール8の両端は、X方向ガイドレール6a、6bに沿ってX方向に摺動可能なX方向移動台9にそれぞれ固定されている。
Y方向ガイドレール8には、液滴噴射装置装着モジュール5がY方向ガイドレール8に沿ってY方向に移動可能なY方向移動台10が設けられている。このY方向移動台10には、液滴噴射装置装着モジュール5が装着されている。この液滴噴射装置装着モジュール5には、本実施形態の液滴噴射装置2が固定されている。これにより、Y方向移動台10がY方向ガイドレール8に沿ってY方向に移動する動作と、X方向移動台9がX方向ガイドレール6a、6bに沿ってX方向に移動する動作との組み合わせにより、液滴噴射装置2は、直交するXY方向の任意の位置に移動可能に支持されている。
第1の実施形態の液滴噴射装置2は、矩形板状の板体である平板状のベース部材21を有する。図2に示すようにこのベース部材21の表面側には、複数、本実施形態では8個の溶液保持容器22がY方向に一列に並設されている。溶液保持容器22は、図4に示すように上面が開口された有底円筒形状の容器である。ベース部材21の表面側には、各溶液保持容器22と対応する位置に円筒形状の溶液保持容器用凹陥部21aが形成されている。これにより、8個の溶液保持容器22をY方向に一直線状に並設する容器並設部42が形成されている。
溶液保持容器22の底部は、この溶液保持容器用凹陥部21aに接着固定されている。さらに、溶液保持容器22の底部には、中心位置に溶液出口となる開口部22aが形成されている。溶液保持容器22の上面開口部22bの開口面積は、溶液出口の開口部22aの開口面積よりも大きくなっている。
また、ベース部材21の両端には、液滴噴射装置装着モジュール5へ装着固定させるための装着固定用切欠き(係合凹部)28がそれぞれ形成されている。このベース部材21の2つの切欠き28は、半長円形の切欠き形状に形成されている。なお、装着固定用切欠き28は、半円形、半楕円形、三角形の切欠き形状等であってもよい。ここで、ベース部材21の2つの切欠き28を結ぶG4−G4線上には、ベース部材21にY方向に一列に並設されている8個の溶液保持容器22が配設されている。すなわち、Y方向に一列に並設されている8個の溶液保持容器22の溶液出口の開口部22a間を結ぶ中心線は、G4−G4線と一致する。これにより、ベース部材21の2つの切欠き28は、容器並設部42の中心線上に配置されている。なお、ベース部材21の一端部側の角部、例えば図2中の左上部分および図3中の右上部分には、大きな曲面の大曲面部31が形成されている。これにより、ベース部材21の左右の形状が異なり、ベース部材21の姿勢の確認が行いやすくなっている。
図3に示すようにベース部材21の裏面側には、溶液保持容器22と同数の電装基板23がY方向に一列に並設されている。電装基板23は、矩形状の平板部材である。ベース部材21の裏面側には、図4に示すように電装基板23の装着用の矩形状の電装基板用凹陥部21bと、この電装基板用凹陥部21bと連通する液滴噴射アレイ部開口21dとが形成されている。電装基板用凹陥部21bの基端部は、ベース部材21の図3中で上端部近傍位置(図4中で右端部近傍位置)まで延設されている。電装基板用凹陥部21bの先端部は、図4に示すように溶液保持容器22の一部と重なる位置まで延設されている。電装基板23は、電装基板用凹陥部21bに接着固定されている。
電装基板23には、電装基板用凹陥部21bとの接着固定面とは反対側の面に電装基板配線24がパターニング形成されている。この電装基板配線24には、後述する下部電極131の端子部131c及び上部電極133の端子部133cとそれぞれ接続される2つの配線パターン24a、24bが形成されている。
電装基板配線24の一端部には、外部からの制御信号を入力するための制御信号入力端子25が形成されている。電装基板配線24の他端部には、電極端子接続部26を備える。電極端子接続部26は、図5に示す後述する液滴噴射アレイ27に形成された下部電極端子部131c及び上側電極端子部133cと接続するための接続部である。
また、ベース部材21には、液滴噴射アレイ部開口21dの貫通穴が設けられている。液滴噴射アレイ部開口21dは、図3に示すように矩形状の開口部で、ベース部材21の裏面側に凹陥部21aと重なる位置に形成されている。
溶液保持容器22の下面には、溶液保持容器22の開口部22aを覆う状態で図5に示す液滴噴射アレイ27が接着固定されている。この液滴噴射アレイ27は、ベース部材21の液滴噴射アレイ部開口21dと対応する位置に配置されている。
図6に示すように液滴噴射アレイ27は、ノズルプレート100と、圧力室構造体200とが積層されて形成されている。図7に示すようにノズルプレート100は、溶液を吐出するノズル110と、振動板120と、駆動部である駆動素子130と、保護層である保護膜150と、撥液膜160とを備える。振動板120と駆動素子130によってアクチュエータ170が構成されている。本実施形態では、図5に示すように複数のノズル110は、例えば3×3列に配列される。
図5に示すように、本実施形態の複数のノズル110は、溶液保持容器22の溶液出口の開口部22aの内側に位置する。それゆえ3×3列に配列される9個のノズル110は、ベース部材21の両端の装着固定用切欠き28を結ぶG4−G4線上に位置する。
振動板120は、例えば圧力室構造体200と一体に形成される。圧力室構造体200を製造するためのシリコンウエハ201を酸素雰囲気で加熱処理すると、シリコンウエハ201の表面にSiO2(酸化シリコン)膜が形成される。振動板120は、酸素雰囲気で加熱処理して形成されるシリコンウエハ201の表面のSiO2(酸化シリコン)膜を用いる。振動板120は、シリコンウエハ201の表面にCVD法(化学的気相成膜法)でSiO2(酸化シリコン)膜を成膜して形成しても良い。
振動板120の膜厚は、1〜30μmの範囲が好ましい。振動板120は、SiO2(酸化シリコン)膜に代えて、SiN(窒化シリコン)等の半導体材料、或いは、Al2O3(酸化アルミニウム)等を用いることもできる。
駆動素子130は、各ノズル110毎に形成されている。駆動素子130は、ノズル110を囲む円環状の形状である。駆動素子130の形状は限定されず、例えば円環の一部を切り欠いたC字状でも良い。図7に示すように駆動素子130は、圧電体である圧電体膜132を挟んで下部電極131の電極部131aと、上部電極133の電極部133aとを備える。電極部131aと、圧電体膜132及び電極部133aは、ノズル110と同軸であり、同じ大きさの円形パターンである。
下部電極131は、円形の複数のノズル110と同軸の円形の複数の電極部131aをそれぞれ備える。例えば、ノズル110の直径を20μmとし、電極部131aの外径を133μm、内径を42μmとする。なお、図5中では駆動素子130として下部電極131の電極部131aと、上部電極133の電極部133aとが重なった状態で示されている。図5に示すように下部電極131は、複数の電極部131aを接続する配線部131bを備え、配線部131bの端部に端子部131cを備える。
駆動素子130は、下部電極131の電極部131a上に例えば厚さ2μmの圧電材料である圧電体膜132を備える。圧電体膜132は、PZT(Pb(Zr,Ti)O3:チタン酸ジルコン酸鉛)からなる。圧電体膜132は、例えばノズル110と同軸であって、電極部131aと同一形状の外径が133μm、内径が42μmの円環状の形状である。圧電体膜132の膜厚は、概ね1〜30μmの範囲となる。圧電体膜132は、例えばPTO(PbTiO3:チタン酸鉛)、PMNT(Pb(Mg1/3Nb2/3)O3−PbTiO3)、PZNT(Pb(Zn1/3Nb2/3)O3−PbTiO3)、ZnO、AlN等の圧電材料を用いることもできる。
圧電体膜132は、厚み方向に分極を発生する。分極と同じ方向の電界を圧電体膜132に印加すると、圧電体膜132は、電界方向と直交する方向に伸縮する。言い換えると、圧電体膜132は、膜厚に対して直交する方向に収縮し、或いは伸長する。
駆動素子130の上部電極133は、圧電体膜132上にノズル110と同軸であって、圧電体膜132と同一形状の外径が133μm、内径が42μmの円環状の形状である。図5に示すように上部電極133は、複数の電極部133aを接続する配線部133bを備え、配線部133bの端部に二つの端子部133cを備える。上部電極133を一定電圧に接続した場合は、下部電極131へ電圧制御信号を印加する。
下部電極131は、例えばスパッタリング法によりTi(チタン)とPt(白金)を積層して厚さ0.5μmに形成する。下部電極131の膜厚は、概ね0.01〜1μmの範囲となる。下部電極131は、Ni(ニッケル)、Cu(銅)、Al(アルミニウム)、Ti(チタン)、W(タングステン)、Mo(モリブデン)、Au(金)、SrRuO3(ストロンチウムルテニウム酸化物)等の他の材料を使用できる。下部電極131は、各種金属を積層して使用することもできる。
上部電極133は、Pt薄膜で形成した。薄膜の成膜はスパッタリング法を用い、膜厚0.5μmとした。上部電極133の他の電極材料として、Ni、Cu、Al、Ti、W、Mo、Au、SrRuO3などを利用することも可能である。他の成膜法として、蒸着、鍍金を用いることも可能である。上部電極133は、各種金属を積層して使用することもできる。上部電極133の望ましい膜厚は0.01から1μmである。
ノズルプレート100は、下部電極131と、上部電極133とを絶縁する絶縁膜140を備える。絶縁膜140は、例えば、厚さ0.5μmのSiO2(酸化シリコン)を用いる。絶縁膜140は、駆動素子130の領域にあっては、電極部131aと、圧電体膜132及び電極部133aの周縁を覆う。絶縁膜140は、下部電極131の配線部131bを覆う。絶縁膜140は、上部電極133の配線部133bの領域で振動板120を覆う。絶縁膜140は、上部電極133の電極部133aと配線部133bを電気的に接続するコンタクト部140aを備える。
ノズルプレート100は、駆動素子130を保護する例えばポリイミドの保護膜150を備える。保護膜150は、振動板120のノズル110に連通する円筒状の溶液通過部141を備える。溶液通過部141は、振動板120のノズル110の直径と同じ直径20μmである。
保護膜150は、他の樹脂またはセラミックス等の他の絶縁性の材料を利用することもできる。他の樹脂として、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)、ポリアセタール、ポリアミド、ポリカーボネート、オイルエーテルサルフォン等がある。セラミックスとして、例えばジルコニア、炭化シリコン、窒化シリコン、酸化シリコン等がある。保護膜150の膜厚は、概ね1〜50μmの範囲にある。
保護膜150の材料選択においては、ヤング率、耐熱性、絶縁性、熱膨張係数、平滑性、溶液に対する濡れ性も考慮する。なお、絶縁性は、導電率の高い溶液を使用した状態で駆動素子130を駆動時に、上部電極133と接触することによる溶液変質の影響を考慮する。
ノズルプレート100は、保護膜150を覆う撥液膜160を備える。撥液膜160は、溶液をはじく特性のある例えばシリコーン系樹脂をスピンコーティングして形成される。撥液膜160は、フッ素含有樹脂等の溶液をはじく特性を有する材料で形成することもできる。撥液膜160の厚さは、例えば0.5μmである。
圧力室構造体200は、例えば厚さ525μmのシリコンウエハ201を用いて形成される。圧力室構造体200は、振動板120と反対側の面に、反り低減層である反り低減膜220を備える。圧力室構造体200は、反り低減膜220を貫通して振動板120の位置に達し、ノズル110と連通する圧力室210を備える。圧力室210は、例えばノズル110と同軸上に位置する直径190μmの円形に形成される。圧力室210の形状、及びサイズは限定されない。
但し第1の実施形態のように、圧力室210は溶液保持容器22の開口部22aに連通する開口部を備えている。圧力室210の開口部の幅方向のサイズDより、深さ方向のサイズLを大きくすることが好ましい。深さ方向のサイズL>幅方向のサイズDとすることにより、ノズルプレート100の振動板120の振動により、圧力室210内の溶液にかかる圧力が、溶液保持容器22へ逃げるのを遅らせる。
圧力室構造体200は、圧力室210の振動板120が配置される側を第1の面200aとし、反り低減膜220が配置される側を第2の面200bとする。圧力室構造体200の反り低減膜220側には例えばエポキシ系接着剤により溶液保持容器22が接着される。圧力室構造体200の圧力室210は、反り低減膜220側の開口部で、溶液保持容器22の開口部22aに連通する。溶液保持容器22の開口部22aの開口面積は、液滴噴射アレイ27に形成された全ての圧力室210の溶液保持容器22の開口部22aに連通する開口部の開口面積より大きくなっている。それ故、液滴噴射アレイ27に形成された全ての圧力室210は、溶液保持容器22の開口部22aに連通している。
反り低減膜220は、例えば圧力室構造体200を製造するためのシリコンウエハ201を酸素雰囲気で加熱処理して、シリコンウエハ201の表面に形成される厚さ4μmのSiO2(酸化シリコン)膜を用いる。反り低減膜220は、シリコンウエハ201の表面にCVD法(化学的気相成膜法)でSiO2(酸化シリコン)膜を成膜して形成しても良い。反り低減膜220は、液滴噴射アレイ27に生じる反りを低減する。
反り低減膜220は、シリコンウエハ201の振動板120側と対向する側にあって、シリコンウエハ201の反りを低減する。反り低減膜220は、圧力室構造体200と振動板120との膜応力の違い、更には、駆動素子130の各種構成膜の膜応力の違い等によるシリコンウエハ201の反りを低減する。反り低減膜220は、成膜プロセスを用いて液滴噴射アレイ27の構成部材を作成する場合に、液滴噴射アレイ27が反るのを低減する。
反り低減膜220の材料及び膜厚等は振動板120と異なるものであっても良い。但し、反り低減膜220を振動板120と同じ材料で同じ膜厚とすれば、シリコンウエハ201の両面にての振動板120との膜応力の違いと反り低減膜220との膜応力の違いは同じになる。反り低減膜220を振動板120と同じ材料で同じ膜厚とすれば、液滴噴射アレイ27に生じる反りをより効果的に低減する。
振動板120は、面状の駆動素子130の動作により厚み方向に変形する。液滴噴射装置は、振動板120の変形により圧力室構造体200の圧力室210内に発生する圧力変化によって、ノズル110に供給された溶液を吐出する。
液滴噴射アレイ27の製造方法の一例について述べる。液滴噴射アレイ27は、先ず圧力室構造体200を形成するためのシリコンウエハ201の両面の全面に、SiO2(酸化シリコン)膜を成膜する。シリコンウエハ201の一方の面に形成したSiO2(酸化シリコン)膜を振動板120として用いる。シリコンウエハ201の他方の面に形成したSiO2(酸化シリコン)膜を反り低減膜220として用いる。
例えばバッチ式の反応炉を用いて、酸素雰囲気で加熱処理する熱酸化法によって、例えば円板状のシリコンウエハ201の両面にSiO2(酸化シリコン)膜を形成する。次に、成膜プロセスにより、円板状のシリコンウエハ201に複数個のノズルプレート100及び圧力室210を形成する。ノズルプレート100及び圧力室210を形成後、円板状のシリコンウエハ201を切って、ノズルプレート100と一体の、複数の圧力室構造体200に分離する。円板状のシリコンウエハ201を用いて、複数個の液滴噴射アレイ27を一度に量産できる。シリコンウエハ201は円板状でなくても良い。1枚の矩形のシリコンウエハ201を用いて、一体のノズルプレート100と圧力室構造体200とを個別に形成しても良い。
シリコンウエハ201に形成される振動板120を、エッチングマスクを用いてパターニングしてノズル110を形成する。パターニングは、エッチングマスクの材料として、感光性レジストを用いる。振動板120の表面に感光性レジストを塗布後、露光及び現像して、ノズル110に相当する開口部をパターニングしたエッチングマスクを形成する。エッチングマスク上から振動板120を圧力室構造体200に達するまでドライエッチングして、ノズル110を形成する。振動板にノズル110を形成後、例えば剥離液を用いてエッチングマスクを除去する。
次にノズル110が形成された振動板120の表面に、駆動素子130、絶縁膜140、保護膜150および撥液膜160を形成する。駆動素子130、絶縁膜140、保護膜150および撥液膜160の形成は、成膜工程と、パターニングする工程を繰り返す。成膜工程は、スパッタリング法或いはCVD法、スピンコーティング法等により行う。パターニングは、例えば感光性レジストを用いて膜上にエッチングマスクを形成し、膜材料をエッチングした後、エッチングマスクを除去することで行う。
振動板120の上に、下部電極131、圧電体膜132及び上部電極133の材料を積層成膜する。下部電極131の材料として、Ti(チタン)膜とPt(白金)膜をスパッタリング法により順に成膜する。Ti(チタン)及びPt(白金)膜は、蒸着法或いは鍍金により形成しても良い。
下部電極131の上に、圧電体膜132の材料として、PZT(Pb(Zr,Ti)O3:チタン酸ジルコン酸鉛)を基板温度350℃にてRFマグネトロンスパッタリング法により成膜する。PZTを成膜後、500℃で3時間熱処理することによりPZTは、良好な圧電性能を得る。PZT膜は、CVD(化学的気相成膜法)、ゾルゲル法、AD(エアロゾルデポジション)法、水熱合成法により形成しても良い。
圧電体膜132の上に、上部電極133の材料として、Pt(白金)膜をスパッタリング法により成膜する。成膜したPt(白金)膜上に、下部電極131の材料膜を残して、上部電極133の電極部133aと圧電体膜132を残すエッチングマスクを作る。エッチングマスク上からエッチングをして、Pt(白金)とPZT(Pb(Zr,Ti)O3:チタン酸ジルコン酸鉛)の膜を除去し、上部電極の電極部133aと圧電体膜132を形成する。
次に、上部電極の電極部133aと圧電体膜132を形成した下部電極131材料の上に、下部電極131の電極部131a、配線部131b及び端子部131cを残すエッチングマスクを作る。エッチングマスク上からエッチングをして、Ti(チタン)及びPt(白金)の膜を除去し、下部電極131を形成する。
下部電極131、上部電極の電極部133aと圧電体膜132を形成した振動板120上に、絶縁膜140の材料として、SiO2(酸化シリコン)膜を成膜する。SiO2(酸化シリコン)膜は、例えばCVD法により低温成膜して良好な絶縁性を得る。成膜したSiO2(酸化シリコン)膜をパターニングして絶縁膜140を形成する。
絶縁膜140を形成した振動板120上に、上部電極133の配線部133b及び端子部133cの材料として、Au(金)をスパッタリング法により成膜する。Au(金)膜は、蒸着法或いはCVD法、又は鍍金により形成しても良い。成膜したAu(金)膜上に上部電極133の電極配線部133b及び端子部133cを残すエッチングマスクを作る。エッチングマスク上からエッチングをして、Au(金)の膜を除去し、上部電極133の電極配線部133b及び端子部133cを形成する。
上部電極133を形成した振動板120上に、保護膜150の材料であるポリイミド膜を成膜する。ポリイミド膜は、振動板120上にポリイミド前駆体を含む溶液をスピンコーティング法により塗布し、ベークによる熱重合及び溶剤を除去して成膜する。成膜したポリイミド膜をパターニングして、溶液通過部141、下部電極131の端子部131c及び上部電極133の端子部133cを露出する保護膜150を形成する。
保護膜150上に撥液膜160の材料であるシリコーン系樹脂膜をスピンコーティング法により塗布し、ベークによる熱重合及び溶剤を除去して成膜する。成膜したシリコーン系樹脂膜をパターニングして、ノズル110、溶液通過部141、下部電極131の端子部131c及び上部電極133の端子部133cを露出する撥液膜160を形成する。
撥液膜160上に、例えばシリコンウエハ201のCMP(化学機械研磨)用の裏面保護テープを、カバーテープとして貼り付けて撥液膜160を保護し、圧力室構造体200をパターニングする。シリコンウエハ201の反り低減膜220上に、圧力室210の直径190μmを露出するエッチングマスクを形成し、まず、反り低減膜220をCF4(4フッ化カーボン)とO2(酸素)の混合ガスによってドライエッチングする。次に、例えばSF6(6フッ化硫黄)とO2の混合ガスで、シリコンウエハ専用の垂直深堀ドライエッチングをする。ドライエッチングは、振動板120に当接する位置で止め、圧力室構造体200に圧力室210を形成する。
圧力室210を形成するエッチングは、薬液を用いるウェットエッチング法、プラズマを用いてのドライエッチング法等で行っても良い。エッチング終了後、エッチングマスクを除去する。撥液膜160上に貼り付けたカバーテープに紫外線を照射して接着性を弱めてから、カバーテープを撥液膜160から剥がし、円板状のシリコンウエハ201を切断することにより、複数個の液滴噴射アレイ27が分離形成される。
次に、液滴噴射装置2の製造方法について説明する。液滴噴射アレイ27と溶液保持容器22を接着させる。このとき、液滴噴射アレイ27における圧力室構造体200の反り低減膜220側(第2の面200b側)に、溶液保持容器22の底面(開口部22a側の面)を接着する。
その後、液滴噴射アレイ27と接着した溶液保持容器22をベース部材21の凹陥部21aに接着する。続いて、ベース部材21の裏面側の凹陥部21bに電装基板23を接着する。このとき、電装基板23は、電装基板配線24を図4、図6中で下面側(ノズルプレート100が圧力室210と接触する面と反対側の面)に配置させる状態で、ベース部材21の電装基板用凹陥部21bに電装基板23を接着する。
続いて、電装基板配線24の電極端子接続部26と、液滴噴射アレイ27の下部電極131の端子部131c及び上部電極133の端子部133cとを、ワイヤ配線12で接続する。他の接続方法として、フレキシブルケーブルを用いた方法等がある。これは、フレキシブルケーブルの電極パッドと電極端子接続部26、又は端子部131c、端子部133cを異方性導電フィルムにて熱圧着して電気的接続する方法である。
電装基板配線24のもう一方の端子は、制御信号入力端子25であり、例えば、図示しない制御回路から出力される制御信号を入力する板バネコネクタと接触できる形状となっている。これにより液滴噴射装置2が形成される。
また、液滴噴射装置装着モジュール5は、図8に示すようにY方向に延設された横壁部13と、この横壁部13の両側に連結された2つの側壁部14a、14bとを有する。1つの横壁部13と、2つの側壁部14a、14bとによってほぼU字状のモジュール本体15が形成されている。このモジュール本体15には、側壁部14a、14bの内面側に液滴噴射装置2を保持するスリット32が形成されている。液滴噴射装置2は、このスリット32の前面開口部側からモジュール本体15に挿入される。このスリット32の高さは、液滴噴射装置2のベース部材21の板厚よりも大きく、このスリット32の内部で液滴噴射装置2が板厚方向(Z方向)に移動可能な大きさに形成されている。
一方の側壁部14aのスリット32の床面32a1には、ベース部材21の切欠き28と係合可能な位置決めピン33が上向きに突設されている。この位置決めピン33の頂点とスリット32の天井面32a2との間には、液滴噴射装置2が通過可能な大きさの隙間が形成されている。
他方の側壁部14bのスリット32の内部には、液滴噴射装置2の固定機構35が設けられている。この固定機構35は、ベース部材21の切欠き28と係合可能な押し込みピン35aと、この押し込みピン35aを切欠き28と係合する方向に付勢するばね部材35bとを有する。押し込みピン35aは、スリット32の床面32b1上に配置されている。ばね部材35bの基端部は、スリット32の側壁面(図8、9中で右側面)に固定されている。ばね部材35bの先端部には、押し込みピン35aが固定されている。この押し込みピン35aの頂点とスリット32の天井面32b2との間には、液滴噴射装置2が通過可能な大きさの隙間が形成されている。
そして、液滴噴射装置2がスリット32の内部に挿入され、正しいセット位置に移動すると位置決めピン33がベース部材21の一方(図8、9中で左側)の切欠き28と係合する。このとき、ベース部材21の他方(図8、9中で右側)の切欠き28に押し込みピン35aが係合することで、液滴噴射装置2がモジュール本体15に固定される。
次に、上記構成の作用について説明する。本実施形態の液滴噴射装置2は、溶液滴下装置1の液滴噴射装置装着モジュール5に固定して使用される。この液滴噴射装置2を液滴噴射装置装着モジュール5に取り付ける作業時には、モジュール本体15のスリット32の前面開口部側から液滴噴射装置2がモジュール本体15のスリット32の内部に挿入される。
そして、液滴噴射装置2がスリット32の内部に挿入され、正しいセット位置に移動すると位置決めピン33がベース部材21の一方(図8、9中で左側)の切欠き28と係合する。このとき、ベース部材21の他方(図8、9中で右側)の切欠き28に押し込みピン35aが係合することで、液滴噴射装置2がモジュール本体15に固定される。
液滴噴射装置2の使用時には、まず、溶液保持容器22の上面開口部22bから図示しないピペッターなどにより、溶液を所定量、溶液保持容器22に供給する。溶液は、溶液保持容器22の内面で保持される。溶液保持容器22の底部の開口部22aは、液滴噴射アレイ27と連通している。溶液保持容器22に保持された溶液は、溶液保持容器22の底面の開口部22aを介して液滴噴射アレイ27の各圧力室210へ充填される。
この状態で、電装基板配線24の制御信号入力端子25に入力された電圧制御信号は、電装基板配線24の電極端子接続部26から下部電極131の端子部131c及び上部電極133の端子部133cへ送られる。このとき、駆動素子130への電圧制御信号の印加に対応して、振動板120が変形して圧力室210の容積を変化させることにより、液滴噴射アレイ27のノズル110から溶液が溶液滴として吐出される。そして、ノズル110から、マイクロプレート4の各ウエル開口300に所定量の液体を滴下する。
ノズル110から吐出される1滴の液量は、2から5ピコリットルである。そのため、滴下回数を制御することにより、各ウエル開口300にpLからμLのオーダーの液体を滴下制御することが可能となる。
第1の実施形態の液滴噴射装置2においては、複数のノズル110が、ベース部材21の両端に設けられた装着固定用切欠き28の延長線上に配置されている。それゆえ、溶液滴下装置1の液滴噴射装置装着モジュール5へ装着固定された際、液滴噴射装置2が多少傾いて固定されても、滴下位置精度が高い効果がある。この効果について詳しく説明する。
図10は、第1の実施形態の液滴噴射装置2が、7度傾いて装着固定された時の液滴の滴下位置のバラつきの範囲を示す説明図である。装着固定用切欠き28を結ぶG4−G4線を軸に左右に7°傾くことになる。D1は、液滴噴射装置2が水平(傾き0度)に装着固定された際のノズル110の位置から、溶液滴が鉛直下方向(垂直方向)に距離L離れた滴下位置に対して、左右に7度傾いて装着固定された時の滴下位置のバラつきの範囲を示している。
第1の実施形態の液滴噴射装置2のノズル110は、装着固定用切欠き28を結ぶG4−G4線上に位置する。そのため、液滴噴射装置2が傾いて装着固定されてもノズル110の高さはほとんど変わらない。
したがって、上記構成の第1の実施形態の液滴噴射装置2においては、複数のノズル110が、ベース部材21の両端に設けられた装着固定用切欠き28の延長線上に配置されている。これにより、溶液滴下装置1の液滴噴射装置装着モジュール5へ装着固定された際、液滴噴射装置2が多少傾いても、滴下位置精度が高い。その結果、滴下位置精度が高い液滴噴射装置を安価に提供することが可能となる。
(第2の実施形態)
図11および図12は、第2の実施形態を示す。本実施形態は、第1の実施形態(図1乃至図10参照)の液滴噴射装置2の構成を次の通り変更した変形例である。第1の実施形態では、溶液滴下装置1への装着固定用の係合凹部は、ベース部材21の両端に設けられた切欠き28であった。これに替えて第2の実施形態では、ベース部材21の両端に装着固定用の係合凹部として貫通孔29を設けた構成とする。なお、第2の実施形態にあって、前述の第1の実施形態と同一部分については同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
図11は、第2の実施形態の液滴噴射装置2を示す上面(溶液保持容器22側)の平面図である。図12は、第2の実施形態の液滴噴射装置2が液滴噴射装置装着モジュール5に取り付けられた状態を示す要部の横断面図である。本実施形態では、モジュール本体15の2つの側壁部14a、14bにおけるスリット32の上側に固定ピン収容室37がそれぞれ設けられている。この固定ピン収容室37には、ベース部材21の貫通孔29と係合可能な位置決めピン36が収容されている。固定ピン収容室37とスリット32との間の仕切り壁41には、ピン挿通孔41aが形成されている。このピン挿通孔41aは、ベース部材21の貫通孔29と対応する位置に形成されている。位置決めピン36の上端部には、ピン挿通孔41aよりも大径なフランジ部36aが形成されている。位置決めピン36の下端部側は、ピン挿通孔41aを通り固定ピン収容室37からスリット32側に突没可能に突出される。
また、固定ピン収容室37内には、位置決めピン36をスリット32側に突出する方向に付勢するばね部材38を有する。なお、固定ピン収容室37には、ばね部材38のばね力に抗して位置決めピン36をスリット32側から固定ピン収容室37側に移動させる図示しない周知のロック解除レバー機構が組み込まれている。
そして、液滴噴射装置2がスリット32の内部に挿入され、正しいセット位置に移動すると位置決めピン36がベース部材21の貫通孔29内に挿入されて係合することで、液滴噴射装置2がモジュール本体15に固定される。
本実施形態では、図11に示すように、溶液保持容器22の溶液出口の開口部22aは、両端の装着固定用貫通孔29を結ぶG10−G10線上に位置する。さらに、第1の実施形態と同様に、複数のノズル110は、溶液保持容器22の溶液出口の開口部22aの内側に位置する。それゆえ、ノズル110は、ベース部材21の両端の装着固定用貫通孔29を結ぶG10−G10線上に位置する。
第2の実施形態によれば、液滴噴射装置2は、第1の実施形態と同様、複数のノズル110が、ベース部材21の両端に設けられた装着固定用貫通孔29の延長線上に配置されている。そのため、溶液滴下装置1の液滴噴射装置装着モジュール5へ装着固定された際、液滴噴射装置2が多少傾いても、滴下位置精度が高い液滴噴射装置を安価に提供することが可能である。
(第3の実施形態)
図13および図14は、第3の実施形態を示す。本実施形態は第2の実施形態(図11および図12参照)の液滴噴射装置2のさらなる変形例である。なお、第3の実施形態にあって、前述の第2の実施形態と同一部分については同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
図13は、第3の実施形態の液滴噴射装置2を示す上面(溶液保持容器22側)の平面図である。図14は、第3の実施形態の液滴噴射装置2が液滴噴射装置装着モジュール5に取り付けられた状態を示す要部の横断面図である。本実施形態では、ベース部材21の両端に装着固定用の係合凹部として半球形状の凹部30を設けた構成とする。
本実施形態では、溶液保持容器22の溶液出口の開口部22aは、両端の装着固定用凹部30を結ぶG10−G10線上に位置する。第1の実施形態と同様に、複数のノズル110は、溶液保持容器22の溶液出口の開口部22aの内側に位置する。それゆえノズル110は、ベース部材21の両端の装着固定用凹部30を結ぶG10−G10線上に位置する。
第3の実施形態によれば、液滴噴射装置2は、第1の実施形態と同様、複数のノズル110が、ベース部材21の両端に設けられた装着固定用凹部30の延長線上に配置されている。そのため、溶液滴下装置1の液滴噴射装置装着モジュール5へ装着固定された際、液滴噴射装置2が多少傾いても、滴下位置精度が高い液滴噴射装置を安価に提供することが可能である。
以上説明した実施形態では、駆動部である駆動素子130を円形としたが、駆動部の形状は限定されない。駆動部の形状は、例えばひし形或いは楕円等であっても良い。また圧力室210の形状も円形に限らず、ひし形或いは楕円形、更には矩形等であっても良い。
また、実施形態では、駆動素子130の中心にノズル110を配置したが、圧力室210の溶液を吐出可能であれば、ノズル110の位置は限定されない。例えばノズル110を、駆動素子130の領域内ではなく、駆動素子130の外側に形成しても良い。ノズル110を駆動素子130の外側に配置した場合には、駆動素子130の複数の膜材料を貫通してノズル110をパターニングする必要がない。駆動素子130の複数の膜材料は、ノズル110に対応する位置の開口パターニングが不要であり、ノズル110は振動板120と保護膜150をパターニングするのみで形成でき、パターニングが容易となる。
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、溶液滴下装置1へ装着固定された際、液滴噴射装置2が多少傾いても、滴下位置精度が高い液滴噴射装置を安価に提供することができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]溶液を吐出するノズルに連通し、内部に溶液が充填される圧力室が形成された液滴噴射部と、前記圧力室内の圧力を変化させ、前記圧力室内の溶液を前記ノズルから吐出させるアクチュエータと、溶液を受ける溶液受け口と、前記圧力室内に連通する溶液出口を有する溶液保持容器と、前記溶液保持容器を保持する板状のベース部材とを有し、前記ベース部材は、複数の前記溶液保持容器を一直線状に並設する容器並設部を有し、前記ベース部材における前記容器の並設方向の両端部に装着固定用の係合凹部がそれぞれ形成され、前記係合凹部を結んだ延長線上に前記ノズルが位置する液滴噴射装置。
[2]前記ベース部材は、矩形板状の板体を有し、前記容器並設部は、前記板体の長手方向に沿って配置され、前記係合凹部は、前記容器並設部の中心線上に配置されている[1]に記載の液滴噴射装置。
[3]前記係合凹部は、半円形、半長円形、半楕円形、三角形の切欠き形状、または貫通孔、凹み形状の少なくともいずれか1つを有する[1]または[2]に記載の液滴噴射装置。
[4][1]乃至[3]のいずれか1項の液滴噴射装置と、[1]乃至[3]のいずれか1項の前記液滴噴射装置を着脱可能に装着する液滴噴射装置装着モジュールとを有し、前記液滴噴射装置装着モジュールは、前記液滴噴射装置を水平状態で保持するスリットを有するモジュール本体を有し、前記モジュール本体は、前記スリットの両側部に前記容器並設部の中心線を揺動中心として前記液滴噴射装置を揺動可能に支持する支持機構を有する溶液滴下装置。
[5]前記支持機構は、前記ベース部材の両側の前記係合凹部に対し、接離可能に圧接し、前記液滴噴射装置を固定する固定機構を有する[4]に記載の溶液滴下装置。