JP6828238B2 - 樹脂組成物及び硬化物 - Google Patents

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Description

本発明は、樹脂組成物及び硬化物に関する。
近年の半導体パッケージデバイスは、高密度化及び高集積化により、使用温度が高温になり、放熱対策が必要となっている。特に、電気自動車、ハイブリッド自動車、産業機器等に使用されるパワーデバイスの分野においては、半導体としてシリコンに替えて、より高出力化が可能な炭化ケイ素(SiC)を適用する検討が盛んに行なわれている。パワーデバイスを取り巻く周辺材料の性能としては、高耐熱性及び高熱伝導性が求められている。また、適用箇所によっては高い絶縁性も必要とされる。
半導体パッケージデバイスの小型化及び軽量化の流れに伴い、周辺材料は、これまで使用されてきたセラミック等の無機材料に替わり、有機材料が使用されつつある。有機材料としては、有機高分子(樹脂)と無機フィラーとの混合物からなるコンポジット材料が挙げられる。有機材料として、流動性を有し、かつ架橋点を有するエポキシ樹脂等の樹脂を用いれば、接着性を付与することも可能となる。
成形材及び封止材の高熱伝導率化に関する検討は数多く取り組まれている。成形材を用いるパワーデバイス構造体において、成形材の熱伝導率を高くすることにより、発熱体であるチップ全面から熱を奪い取ることができ、チップ動作温度を効率よく低下させることが可能で、更なる高出力化が可能となる。
コンポジット材料の高熱伝導率化に用いられるフィラーとしては、高い熱伝導性を有し、かつ絶縁性を有するセラミック材料が一般的に用いられ、アルミナ、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム等が例として挙げられる(例えば、特許文献1参照)。
さらに、コンポジット材料の高熱伝導率化手法として、熱伝導率の高い樹脂を使用する例も挙げられる(例えば、特許文献2参照)。具体的には、分子内にメソゲン骨格を有する樹脂の自己配向性を利用し、成形後に結晶性又は液晶性を発現することにより、樹脂の熱伝導率を高めるもので、これによりコンポジットの熱伝導率は飛躍的に向上する。
成形材の高熱伝導率化の手法の多くは、前者の高熱伝導フィラーの適用に関するものである。具体的には、フィラーとして汎用性の高いシリカを、熱伝導率の高いアルミナ又は酸化マグネシウムに置換することにより、高熱伝導率化を達成するものである。
特許第4889110号公報 特許第4118691号公報
しかしながら、フィラーとしてアルミナ又は酸化マグネシウムを用いた成形材及び封止材は、シリカを適用したものよりも流動性が低く成形性が低下し、さらに成形後の金型からの離型性が悪化し、量産に際し生産性の低下を招くことが多い。
上記状況に鑑み、本発明は、流動性、及び成形に用いる金型に対しての離型性に優れる樹脂組成物及びこれにより得られる硬化物を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、本発明に至った。すなわち、本発明は以下の態様を含む。
<1> 純水中でゼータ電位がプラスとなるフィラーと、
酸価が1mgKOH/g以下となる離型添加剤と、
硬化性樹脂と、
硬化剤と、
を含む、樹脂組成物。
<2> 前記フィラーが、アルミナ及び酸化マグネシウムから選択される少なくとも1種を含む、<1>に記載の樹脂組成物。
<3> 前記離型添加剤が、ポリオレフィンを含む、<1>又は<2>に記載の樹脂組成物。
<4> 前記ポリオレフィンの重量平均分子量が、700〜10000である、<3>に記載の樹脂組成物。
<5> 前記硬化性樹脂が、メソゲン骨格を有するエポキシ樹脂を含む、<1>〜<4>のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
<6> シランカップリング剤をさらに含む、<1>〜<5>のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
<7> 硬化触媒をさらに含む、<1>〜<6>のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
<8> 熱伝導率が、8W/(m・K)以上である、<1>〜<7>のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
<9> 未硬化体又は半硬化体である、<1>〜<8>のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
<10> <1>〜<9>のいずれか1項に記載の樹脂組成物の硬化物。
<11> トランスファー成形により成形されてなる、<10>に記載の硬化物。
本発明によれば、流動性、及び成形に用いる金型に対しての離型性に優れる樹脂組成物並びにこれにより得られる硬化物を提供することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合、原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本発明を制限するものではない。
本明細書において「工程」との語には、他の工程から独立した工程に加え、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、当該工程も含まれる。
本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲には、「〜」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本明細書において組成物中の各成分の含有率は、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率を意味する。
本明細書において組成物中の各成分の粒子径は、組成物中に各成分に該当する粒子が複数種存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の粒子の混合物についての値を意味する。
本明細書において「層」との語には、当該層が存在する領域を観察したときに、当該領域の全体に形成されている場合に加え、当該領域の一部にのみ形成されている場合も含まれる。
〔樹脂組成物〕
本実施形態の樹脂組成物は、純水中でゼータ電位がプラスとなるフィラーと、酸価が1mgKOH/g以下となる離型添加剤と、硬化性樹脂と、硬化剤と、を含む。以下、「純水中でゼータ電位がプラスとなるフィラー」を特定フィラーともいう。また、「酸価が1mgKOH/g以下となる離型添加剤」を特定離型添加剤ともいう。
特定フィラーと特定離型添加剤との組合せを選択することにより、成形に用いる金型に対しての離型性が向上する。離型性の向上により、成形における流動性の向上にも効果を発揮する。上記効果を奏する詳細な理由は必ずしも明らかではないが、化学的見地から以下のように考えることができる。
特定フィラーを、酸価が1mgKOH/gを超える参照離型添加剤と組み合わせた場合、静電的相互作用により、参照離型添加剤がフィラーの表面に吸着する。さらに、例えば参照離型添加剤が長鎖アルキル基を有する場合、アルキル鎖同士の相互作用により、特定フィラーの表面において参照離型添加剤が2重層を形成する。またさらには、例えば参照離型添加剤が極性基を有する場合、極性基間同士の相互作用により、特定フィラーの表面に数層の参照離型添加剤分子膜が形成される。
このように、酸価が1mgKOH/gを超える参照離型添加剤は、特定フィラーの表面に固定化され、移動が抑制される。これにより、成形後の成形物の表面に滲み出てくる参照離型添加剤の量が少なくなり、成形物と金型との接触界面において参照離型添加剤の量が減少し、流動性及び離型性が低下する。流動性及び離型性を高めるため参照離型添加剤の添加量を多くすることも考えられるが、離型添加剤は熱可塑性であることが多く、硬化物特性の低下を招く虞がある。
これに対し、純水中でゼータ電位がプラスとなる特定フィラーと、酸価が1mgKOH/g以下の特定離型添加剤とを組み合わせた場合には、特定フィラーの表面と特定離型添加剤との間における静電的相互作用による表面吸着が起き難い。そのため、特定離型添加剤は、移動が妨げられず、成形の際に成形物の表面に滲み出て、成形後の成形物と金型との接触界面において、特定離型添加剤の量が十分となり、流動性、及び成形物の金型からの離型性が向上する。
なお、フィラーとして、純水中でゼータ電位がマイナスとなる参照フィラーを組み合わせて用いてもよい。純水中でゼータ電位がマイナスとなる参照フィラーと、酸価が1mgKOH/gを超える参照離型添加剤との組合せでは、離型性の低下の問題は生じないと考えられる。これは、参照フィラーの表面と参照離型添加剤とは、電荷がマイナス同士であるため静電的相互作用が起こらず、参照フィラーの表面に参照離型添加剤が吸着し難いからである。
<フィラー>
樹脂組成物は、純水中でゼータ電位がプラスとなるフィラー(特定フィラー)の少なくとも1種を含む。
フィラーのゼータ電位は、市販のゼータ電位測定計により測定が可能である。ゼータ電位測定計としては、例えば、Delsa 440SX(ベックマン・コールター株式会社製)、ELSZ−100ZS(大塚電子株式会社製)等を用いることができる。測定には、フィラーを純水中に分散した分散液を試料として用いる。試料に電場を印加し、陽極又は陰極のいずれの側にフィラーが移動するかにより、フィラーの電気二重層での電荷符号を確認する。
特定フィラーは、純水中でゼータ電位がプラスとなるフィラーであれば特に制限されない。コスト、汎用性、絶縁性及び熱伝導性の観点からは、無機フィラーであることが好ましく、セラミックフィラーであることがより好ましい。
本明細書において、フィラーの「絶縁性」とは、数百ボルト〜数千ボルト程度の電圧をかけてもフィラー自体が電流を流さない性質をいう。絶縁性は、電子に占有された最もエネルギー準位の高い価電子帯からその上にある次のバンド(伝導帯)までが大きなエネルギーギャップで隔てられていることに起因する性質である。
フィラーとしては、流動性、熱伝導性及び絶縁性の観点から、具体的には、窒化ホウ素、アルミナ、窒化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ケイ素、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム等のフィラーが挙げられる。
中でも、特定離型添加剤との組合せにおいて、流動性及び成形後の金型に対する離型性に加えて、硬化物としたときにより高い熱伝導性を発揮する観点から、特定フィラーは、酸化マグネシウム及びアルミナからなる群より選択される少なくとも1種のフィラーを含むことが好ましく、窒化ホウ素、シリカ、窒化アルミニウム等のフィラーをさらに含有してもよい。
フィラー全体に対する、酸化マグネシウム及びアルミナからなる群より選択される少なくとも1種のフィラーの含有率は、50質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。フィラー全体に対する、酸化マグネシウム及びアルミナからなる群より選択される少なくとも1種のフィラーの含有率の上限値は、特に制限はない。
フィラーは、特定フィラー以外のその他のフィラーを含んでいてもよいが、特定フィラーの含有率は全フィラー中、75質量%以上であることが好ましく、85質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましい。
フィラーは、横軸に粒子径を、縦軸に頻度をとった粒度分布曲線を描いた場合に、単一のピークを有していてもよく、複数のピークを有していてもよい。粒度分布曲線が複数のピークを有するフィラーを用いることで、フィラーの充填性が向上し、硬化物の熱伝導性が向上する傾向がある。
粒度分布曲線を描いたときにフィラーが単一のピークを有する場合、フィラーの重量累積粒度分布の小粒径側からの累積50%に対応する粒子径である平均粒子径(D50)は特に制限されない。熱伝導性の観点からは、フィラーの平均粒子径(D50)は、0.1μm〜100μmであることが好ましく、0.1μm〜70μmであることがより好ましい。また、粒度分布曲線が複数のピークを有する場合は、例えば、異なる平均粒子径を有する2種類以上のフィラーを組み合わせて構成できる。
本明細書において、フィラーの平均粒子径はレーザー回折法を用いて測定され、重量累積粒度分布曲線を小粒径側から描いた場合に、重量累積が50%となる粒子径に対応する。レーザー回折法を用いた粒度分布測定は、レーザー回折散乱粒度分布測定装置(例えば、ベックマン・コールター株式会社製、LS230)を用いて行うことができる。
フィラーの比表面積の測定法としては、主にBET法が適用される。BET法とは、窒素(N)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)等の不活性気体分子を固体粒子に吸着させ、吸着した気体分子の量から固体粒子の比表面積を測定する気体吸着法である。比表面積の測定は、比表面積細孔分布測定装置(例えば、ベックマン・コールター株式会社製、SA3100)を用いて行うことができる。
樹脂組成物中におけるフィラーの含有率は特に制限されない。熱伝導性及び成形性の観点から、樹脂組成物の全体積を100体積%とした場合に、フィラーの含有率は60体積%〜90体積%であることが好ましく、70体積%〜85体積%以下であることがより好ましい。フィラーの含有率が60体積%以上であることで、熱伝導性が向上する傾向にある。一方、フィラーの含有率が90体積%以下であることで、成形性が向上する傾向にある。
本明細書において、樹脂組成物中のフィラーの含有率(体積%)は、次式により求めた値とする。
フィラーの含有率(体積%)={(Ew/Ed)/((Aw/Ad)+(Bw/Bd)+(Cw/Cd)+(Dw/Dd)+(Ew/Ed)+(Fw/Fd)+(Gw/Gd))}×100
ここで、各変数は以下の通りである。
Aw:硬化性樹脂の質量組成比(質量%)
Bw:硬化剤の質量組成比(質量%)
Cw:シランカップリング剤(任意成分)の質量組成比(質量%)
Dw:硬化触媒(任意成分)の質量組成比(質量%)
Ew:フィラーの質量組成比(質量%)
Fw:離型添加剤の質量組成比(質量%)
Gw:その他の成分(任意成分)の質量組成比(質量%)
Ad:硬化性樹脂の比重
Bd:硬化剤の比重
Cd:シランカップリング剤(任意成分)の比重
Dd:硬化触媒(任意成分)の比重
Ed:フィラーの比重
Fd:離型添加剤の比重
Gd:その他の成分(任意成分)の比重
<離型添加剤>
樹脂組成物は、酸価が1mgKOH/g以下となる離型添加剤(特定離型添加剤)の少なくとも1種を含む。「酸価が1mgKOH/g以下となる離型添加剤」は、酸価が1mgKOH/g以下である離型添加剤に加え、加水分解等により1mgKOH/g以下の酸価を生ずる離型添加剤を含む。
特定離型添加剤は、カルボキシル基、スルホン基等の酸官能基を有する化合物、及びこれらの酸官能基がアルキル基等とエステル結合したエステル化合物が挙げられる。酸官能基を有する化合物において、これら酸官能基はプロトンが脱離することによりマイナスの電荷の発生源となる。エステル化合物は、加水分解により、同様の酸価を有する化合物に転化する。
特定フィラーと組合せたときに、離型機能を効果的に発揮する観点からは、離型添加剤の酸価は1mgKOH/g以下となるものである。離型添加剤の酸価を低くするほど、離型添加剤が少量でも優れた離型効果を発揮することができる傾向にある。離型添加剤の酸価の下限値は特に制限されない。
離型添加剤の酸価は、JIS K 0070:1992に準じて測定する。
特定離型添加剤としては、例えば、酸化型及び非酸化型のポリオレフィン、カルナバワックス、モンタン酸エステル、モンタン酸並びにステアリン酸が挙げられ、ポリオレフィンが好ましい。ポリオレフィンとしては、酸化型及び非酸化型が挙げられ、非酸化型のポリオレフィンがより好ましい。ポリオレフィンの具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。これらは1種類を単独で用いても、又は2種類以上を併用してもよい。
「非酸化型のポリオレフィン」とは、酸化変性処理を行なっていないポリオレフィンをいう。酸化型ポリオレフィンは非酸化型のポリオレフィンを意図的に酸化したものであるため酸価が高くなる傾向にある。
また、カルナバワックス、モンタン酸エステル、モンタン酸及びステアリン酸は、不純物を含有しやすく、エステル分解を起こしてカルボキシル基が生成する可能性があり、酸価が高くなる傾向がある。
非酸化型のポリエチレンとしては、リコワックスPE520、PE130(いずれもクラリアントジャパン株式会社製)、A−C9、A−C9A、A−C9F、A−C8、A−C8A、A−C3A、A−C725、A−C735、A−C715、A−C15、A−C7、A−C7A、A−C6、A−C6A、A−C16、A−C16A、A−C617、A−C617A、A−C1702(いずれもハネウェル社製)等が好適な材料として挙げられる。
非酸化型のポリプロピレンとしては、リコセンPP6102、PP6502、PP7502(いずれもクラリアントジャパン株式会社製)等が好適な材料として挙げられる。
ポリオレフィンの重量平均分子量は、特に制限されず、700〜10000の範囲が好ましく、1000〜8000の範囲がより好ましい。ポリオレフィンの重量平均分子量が700以上であると、硬化性樹脂との相溶性が低くなって離型性が発揮されやすくなる傾向があり、10000以下であると、成形材の粘度が低くなって成形性が向上する傾向がある。
特定離型添加剤が非酸化型のポリオレフィンを含む場合、さらに酸化型のポリオレフィン、カルナバワックス、モンタン酸エステル、モンタン酸、及びステアリン酸を併用してもよい。
特定離型添加剤中の非酸化型のポリオレフィンの含有率は、90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、99質量%以上であることがさらに好ましい。
<硬化性樹脂>
樹脂組成物は、硬化性樹脂の少なくとも1種を含む。硬化性樹脂としては、反応性架橋点を有する樹脂であれば特に制限されない。硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、イソシアネート樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂等、当該技術分野で用いられている樹脂が挙げられる。これらの中でも、耐熱性、作業性、安定性及び汎用性の観点からは、エポキシ樹脂が好ましい。これら硬化性樹脂は、1種類を単独で用いても、又は2種類以上を併用してもよい。
一般的なエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、水素添加したビスフェノールA型エポキシ樹脂、水素添加したビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂及び反応性希釈剤とよばれるエポキシ基を1つだけ有しているエポキシ樹脂が挙げられる。
また、エポキシ樹脂として、メソゲン骨格を有するエポキシ樹脂を使用してもよい。メソゲン骨格とは、結晶性又は液晶性を発現する可能性のある分子構造を示す。具体的には、ビフェニル、フェニルベンゾエート、アゾベンゼン、スチルベン、これらの誘導体等が挙げられる。メソゲン骨格を有しているエポキシ樹脂は高次構造を形成し易く、成形材料を作製した場合により高い熱伝導率を達成できる傾向にある。
ここで、高次構造とは、その構成要素がミクロに配列している状態のことであり、例えば、結晶相及び液晶相が相当する。このような高次構造が存在しているか否かは、偏光顕微鏡での観察によって容易に判断することが可能である。すなわち、クロスニコル状態での観察において、偏光解消による干渉模様が見られる場合は高次構造が存在していると判断できる。高次構造は、通常は樹脂中に島状に存在しており、ドメイン構造を形成している。そして、ドメイン構造を形成している島のそれぞれを高次構造体という。高次構造体を構成する構造単位同士は、一般的には共有結合で結合されている。
メソゲン骨格を有するエポキシ樹脂の含有率は、硬化性樹脂の全体中、50質量%以上であることが好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましく、実質的に硬化性樹脂がメソゲン骨格を有するエポキシ樹脂で構成されていること(99.9質量%以上)が特に好ましい。
メソゲン骨格を有するエポキシ樹脂の含有率が50質量%以上であることで、樹脂組成物の硬化物における熱伝導性が向上する。
メソゲン骨格を有するエポキシ樹脂の具体例としては、例えば、特許4118691号公報に記載されているものを挙げることができる。以下に、メソゲン骨格を有するエポキシ樹脂の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
メソゲン骨格を有するエポキシ樹脂としては、ビフェニル型エポキシ樹脂、1−(3−メチル−4−オキシラニルメトキシフェニル)−4−(4−オキシラニルメトキシフェニル)−1−シクロヘキセン、1−(3−メチル−4−オキシラニルメトキシフェニル)−4−(4−オキシラニルメトキシフェニル)−ベンゼン、trans−4−{4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル}シクロヘキシル=4−(2,3−エポキシプロポキシ)ベンゾエート等が挙げられる。ビフェニル型エポキシ樹脂は、ビフェノール化合物にエピクロルヒドリンを公知の方法で反応させることによって得られる。このようなビフェニル型エポキシ樹脂としては、4,4’−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)ビフェニル等が挙げられる。
このようなビフェニル型エポキシ樹脂としては、YL−6121H(三菱化学株式会社製)等が市販品として入手可能である。これらメソゲン骨格を有するエポキシ樹脂は1種類を単独で用いても、又は2種類以上を併用してもよい。
メソゲン骨格を有するエポキシ樹脂は、一部を硬化剤等により部分的に反応させたプレポリマーの状態であってもよい。メソゲン骨格を有するエポキシ樹脂は一般に結晶化し易く、溶媒への溶解度も低いものが多いが、メソゲン骨格を有するエポキシ樹脂を一部重合させると結晶化を抑制することができる。このため、メソゲン骨格を有するエポキシ樹脂をプレポリマーの状態で用いると、成形性が向上する場合がある。
エポキシ樹脂のエポキシ当量は、130g/eq〜500g/eqが好ましく、135g/eq〜400g/eqがより好ましく、140g/eq〜300g/eqがさらに好ましい。
本明細書におけるエポキシ当量の測定手法を以下に記載する。
エポキシ樹脂をメチルエチルケトンに溶解する。溶解液に氷酢酸、セチルトリメチル臭化アンモニウム、及びスクリーン指示薬(テンブルー0.3gを氷酢酸100mlに溶解した溶液と、チモールブルー1.5gをメタノール500mlに溶解した溶液を混合して調製)を加え、0.1Nに調整した過塩素酸溶液を用いて滴定し、溶液の色がピンクに変化し、ピンク色で1分間持続した点を終点とする。同時にブランクテストを行い、以下式よりエポキシ当量を算出する。
エポキシ当量(g/eq)=(1000×W)/{(S−B)×N}
W:試料質量
B:ブランクテストに使用した0.1N過塩素酸溶液の量
S:サンプルの滴定に使用した0.1N過塩素酸溶液の量
N:過塩素酸溶液の規定度(0.1N)
<硬化剤>
樹脂組成物は、硬化剤を含有する。硬化剤としては、通常用いられるものを特に制限なく用いることができ、アミン硬化剤、酸無水物硬化剤、メルカプタン硬化剤、フェノール硬化剤等を挙げることができる。中でも、硬化剤は、フェノール硬化剤であることが好ましい。フェノール硬化剤としては、市販の低分子フェノール化合物、及びそれらをノボラック化したフェノール樹脂を用いることができる。低分子フェノール化合物としては、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール等の単官能の化合物;カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン等の2官能の化合物;1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン等の3官能の化合物;などが挙げられる。また、これら低分子フェノール化合物をメチレン鎖等で連結してノボラック化したフェノールノボラック樹脂を硬化剤として用いることもできる。
フェノール硬化剤としては、熱伝導性の観点から、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン等の2官能のフェノール化合物、又はこれらをメチレン鎖で連結したフェノールノボラック樹脂であることが好ましく、耐熱性の観点から、これらの2官能のフェノール化合物をメチレン鎖で連結したフェノールノボラック樹脂であることがより好ましい。
フェノールノボラック樹脂として、具体的には、クレゾールノボラック樹脂、カテコールノボラック樹脂、レゾルシノールノボラック樹脂、ヒドロキノンノボラック樹脂等の1種類のフェノール化合物をノボラック化した樹脂;カテコールレゾルシノールノボラック樹脂、レゾルシノールヒドロキノンノボラック樹脂等の2種類又はそれ以上のフェノール化合物をノボラック化した樹脂;などを挙げることができる。中でも、フェノールノボラック樹脂が、下記一般式(I−1)及び(I−2)からなる群より選択される少なくとも1種で表される構造単位を有する化合物を含むことが好ましい。
一般式(I−1)及び(I−2)において、Rはそれぞれ独立に、アルキル基、芳香族基、又はアラルキル基を示す。Rで示されるアルキル基、芳香族基、及びアラルキル基は、さらに置換基を有していてもよい。該置換基としては、アルキル基(但し、Rがアルキル基の場合を除く)、アリール基、ハロゲン原子、水酸基等を挙げることができる。mはそれぞれ独立に、0、1又は2を示し、mが2の場合、2つのRは同一であっても異なっていてもよい。mはそれぞれ独立に、0又は1であることが好ましく、0であることがより好ましい。
一般式(I−1)及び(I−2)において、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、芳香族基、又はアラルキル基を示す。R及びRで示されるアルキル基、芳香族基、及びアラルキル基は、さらに置換基を有していてもよい。該置換基としては、アルキル基(但し、R及びRがアルキル基の場合を除く)、アリール基、ハロゲン原子、水酸基等を挙げることができる。
一般式(I−1)及び(I−2)中のR及びRとしては、保存安定性及び熱伝導性の観点から、水素原子、アルキル基、又は芳香族基であることが好ましく、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、又は炭素数6〜12の芳香族基であることがより好ましく、水素原子であることがさらに好ましい。
一般式(I−1)で表される構造単位を有する化合物は、レゾルシノール以外のフェノール化合物に由来する構造単位の少なくとも1種類をさらに含んでいてもよい。レゾルシノール以外のフェノール化合物は、特に制限されない。熱伝導性及び接着性の観点からは、レゾルシノール以外のフェノール化合物は、フェノール、クレゾール、カテコール、ヒドロキノン、1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン、及び1,3,5−トリヒドロキシベンゼンから選ばれる少なくとも1種類であることが好ましく、カテコール及びヒドロキノンから選ばれる少なくとも1種類であることがより好ましい。本実施形態においては、これらフェノール化合物に由来する構造単位の1種類を単独で含んでいてもよく、又は2種類以上を組み合わせて含んでいてもよい。
また、一般式(I−2)で表されるカテコールに由来する構造単位を有する化合物においても同様に、カテコール以外のフェノール化合物に由来する構造単位の少なくとも1種類を含んでいてもよい。カテコール以外のフェノール化合物は、特に制限されない。熱伝導性の観点からは、カテコール以外のフェノール化合物は、フェノール、クレゾール、ヒドロキノン、1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン、及び1,3,5−トリヒドロキシベンゼンから選ばれる少なくとも1種類であることが好ましく、ヒドロキノンであることがより好ましい。本実施形態においては、これらフェノール化合物に由来する構造単位の1種類を単独で含んでいてもよく、又は2種類以上を組み合わせて含んでいてもよい。
ここで、フェノール化合物に由来する構造単位とは、フェノール化合物のベンゼン環部分から1個又は2個の水素原子を取り除いて構成される1価又は2価の基を意味する。なお、水素原子が取り除かれる位置は特に限定されない。
また、一般式(I−1)で表される構造単位を有する化合物において、レゾルシノールに由来する構造単位の含有比率については特に制限はない。弾性率の観点から、一般式(I−1)で表される構造単位を有する化合物の全質量に対するレゾルシノールに由来する構造単位の含有比率は55質量%以上であることが好ましい。硬化物のガラス転移温度(Tg)及び線膨張率の観点から、一般式(I−1)で表される構造単位を有する化合物の全質量に対するレゾルシノールに由来する構造単位の含有比率は60質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましく、熱伝導性の観点から、90質量%以上であることが特に好ましい。
一般式(I−1)及び(I−2)からなる群より選択される少なくとも1種で表される構造単位を有する化合物の分子量は特に制限されない。流動性の観点から、数平均分子量(Mn)としては2000以下であることが好ましく、1500以下であることがより好ましく、350〜1500であることがさらに好ましい。また、重量平均分子量(Mw)としては2000以下であることが好ましく、1500以下であることがより好ましく、400〜1500であることがさらに好ましい。
本明細書において、分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用いて測定される分子量分布から標準ポリスチレンの検量線を使用して換算して求められる。
〔測定条件〕
ポンプ:L−6000(株式会社日立製作所製)
カラム:TSKgel(登録商標) G4000HHR+G3000HHR+G2000HXL(東ソー株式会社製)
カラム温度:40℃
溶出溶媒:テトラヒドロフラン(クロマトグラフィー用安定剤不含、和光純薬工業株式会社製)
試料濃度:5g/L(テトラヒドロフラン可溶分)
注入量:100μL
流速:1.0mL/分
検出器:示差屈折率計RI−8020(東ソー株式会社製)
分子量較正標準物質:標準ポリスチレン
データ処理装置:GPC−8020(東ソー株式会社製)
一般式(I−1)及び(I−2)からなる群より選択される少なくとも1つで表される構造単位を有する化合物の水酸基当量は特に制限されない。耐熱性に関与する架橋密度の観点から、水酸基当量は平均値で50g/eq〜150g/eqであることが好ましく、50g/eq〜120g/eqであることがより好ましく、55g/eq〜120g/eqであることがさらに好ましい。
また、フェノールノボラック樹脂は、下記一般式(II−1)〜(II−4)からなる群より選択される少なくとも1つで表される構造を有する化合物を含むことも好ましい。
一般式(II−1)〜(II−4)中、m及びnはそれぞれ独立に、正の整数を示し、m又はnが付されたそれぞれの構造単位の繰り返し数を意味する。また、Arはそれぞれ独立に、下記一般式(II−a)及び(II−b)のいずれか1つで表される基を示す。
一般式(II−a)及び(II−b)中、R11及びR14はそれぞれ独立に、水素原子又は水酸基を示す。R12及びR13はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。
一般式(II−1)〜(II−4)からなる群より選択される少なくとも1つで表される構造を有する化合物は、2価のフェノール化合物をノボラック化する製造方法によって副生成的に生成可能なものである。
一般式(II−1)〜(II−4)からなる群より選択される少なくとも1つで表される構造は、フェノールノボラック樹脂の主鎖骨格として含まれていてもよく、又はフェノールノボラック樹脂の側鎖の一部として含まれていてもよい。さらに、一般式(II−1)〜(II−4)のいずれか1つで表される構造を構成するそれぞれの構造単位は、ランダムに含まれていてもよいし、規則的に含まれていてもよいし、ブロック状に含まれていてもよい。
また、一般式(II−1)〜(II−4)において、水酸基の置換位置は芳香族環上であれば特に制限されない。
一般式(II−1)〜(II−4)のそれぞれについて、複数存在するArは全て同一の原子団であってもよいし、2種類以上の原子団を含んでいてもよい。なお、Arは一般式(II−a)及び(II−b)のいずれか1つで表される基を示す。
一般式(II−a)及び(II−b)におけるR11及びR14はそれぞれ独立に、水素原子又は水酸基を示し、熱伝導性の観点から水酸基であることが好ましい。また、R11及びR14の置換位置は特に制限されない。
また、一般式(II−a)におけるR12及びR13はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。R12及びR13における炭素数1〜8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等が挙げられる。また、一般式(II−a)におけるR12及びR13の置換位置は特に制限されない。
一般式(II−1)〜(II−4)におけるArは、より優れた熱伝導性を達成する観点から、ジヒドロキシベンゼンに由来する基(一般式(II−a)においてR11が水酸基であって、R12及びR13が水素原子である基)、及びジヒドロキシナフタレンに由来する基(一般式(II−b)においてR14が水酸基である基)からなる群より選ばれる少なくとも1種類であることが好ましい。
ここで、「ジヒドロキシベンゼンに由来する基」とは、ジヒドロキシベンゼンの芳香環部分から水素原子を2つ取り除いて構成される2価の基を意味し、水素原子が取り除かれる位置は特に制限されない。「ジヒドロキシナフタレンに由来する基」についても同様の意味である。
また、樹脂組成物の生産性及び流動性の観点からは、Arはジヒドロキシベンゼンに由来する基であることがより好ましく、1,2−ジヒドロキシベンゼン(カテコール)に由来する基及び1,3−ジヒドロキシベンゼン(レゾルシノール)に由来する基からなる群より選ばれる少なくとも1種類であることがより好ましい。さらに、熱伝導性を特に高める観点から、Arとして少なくともレゾルシノールに由来する基を含むことが好ましい。
また、熱伝導性を特に高める観点から、繰り返し数がnで示される構造単位は、レゾルシノールに由来する基を含んでいることが好ましい。
レゾルシノールに由来する基を含む構造単位の含有率は、弾性率の観点から、一般式(II−1)〜(II−4)からなる群より選択される少なくとも1つで表される構造を有する化合物の総重量中において55質量%以上であることが好ましい。硬化物のガラス転移温度(Tg)及び線膨張率の観点から、一般式(II−1)〜(II−4)からなる群より選択される少なくとも1つで表される構造を有する化合物の総重量に対するレゾルシノールに由来する基を含む構造単位の含有率は、60質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましく、熱伝導性の観点から、90質量%以上であることが特に好ましい。
一般式(II−1)〜(II−4)におけるm及びnについては、流動性の観点からm/nは20/1〜1/5であることが好ましく、20/1〜5/1であることがより好ましく、20/1〜10/1であることがさらに好ましい。また、(m+n)は、流動性の観点から20以下であることが好ましく、15以下であることがより好ましく、10以下であることがさらに好ましい。なお、(m+n)の下限値は特に制限されない。
一般式(II−1)〜(II−4)からなる群より選択される少なくとも1つで表される構造を有する化合物は、特にArが置換又は非置換のジヒドロキシベンゼン及び置換又は非置換のジヒドロキシナフタレンの少なくともいずれか1種類である場合、これらを単純にノボラック化した樹脂等と比較して、その合成が容易であり、軟化点の低い硬化剤が得られる傾向にある。したがって、このような樹脂を含む樹脂組成物は、製造、取り扱い等が容易になる利点がある。
なお、一般式(II−1)〜(II−4)からなる群より選択される少なくとも1つで表される構造を有する化合物は、電界脱離イオン化質量分析法(FD−MS)によって、そのフラグメント成分として上記構造が含まれていることを容易に特定することができる。
一般式(II−1)〜(II−4)からなる群より選択される少なくとも1つで表される構造を有する化合物の分子量は特に制限されない。流動性の観点から、数平均分子量(Mn)として2000以下であることが好ましく、1500以下であることがより好ましく、350〜1500であることがさらに好ましい。また、重量平均分子量(Mw)としては2000以下であることが好ましく、1500以下であることがより好ましく、400〜1500であることがさらに好ましい。これらMn及びMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いた通常の方法により測定される。
一般式(II−1)〜(II−4)からなる群より選択される少なくとも1つで表される構造を有する化合物の水酸基当量は特に制限されない。耐熱性に関与する架橋密度の観点から、水酸基当量は平均値で50g/eq〜150g/eqであることが好ましく、50g/eq〜120g/eqであることがより好ましく、55g/eq〜120g/eqであることがさらに好ましい。
本明細書における水酸基当量の測定方法は、以下の通りである。
ピリジン−塩化アセチル法を用い、化合物の水酸基をピリジン溶液中で塩化アセチル化した後、その過剰の試薬を水で分解し、生成した酢酸を水酸化カリウム及びエタノールを含む溶液で滴定して、水酸基当量を求める。
フェノール硬化剤は、フェノールノボラック樹脂を構成するフェノール化合物であるモノマーを含んでいてもよい。フェノールノボラック樹脂を構成するフェノール化合物であるモノマーの含有比率(以下、「モノマー含有比率」ともいう。)としては特に制限されない。熱伝導性及び成形性の観点から、モノマー含有比率は5質量%〜80質量%であることが好ましく、15質量%〜60質量%であることがより好ましく、20質量%〜50質量%であることがさらに好ましい。
モノマー含有比率が80質量%以下であることで、硬化反応の際に架橋に寄与しないモノマーが少なくなり、架橋する高分子量体が多くなるため、より高密度な高次構造が形成され、熱伝導性が向上する傾向にある。また、モノマー含有比率が5質量%以上であることで、成形の際に流動し易いため、フィラーとの密着性がより向上し、熱伝導性及び耐熱性がより向上する傾向にある。
<シランカップリング剤>
樹脂組成物は、シランカップリング剤を含有していてもよい。樹脂組成物がシランカップリング剤を含有すると、フィラーの表面とその周りを取り囲む硬化性樹脂との間で相互作用することにより、樹脂組成物の流動性及び樹脂組成物を硬化物としたときの熱伝導性が向上する傾向にあり、さらには水分の浸入を妨げることにより絶縁信頼性が向上する傾向にある。中でも、硬化性樹脂としてメソゲン骨格を有するエポキシ樹脂を用いる場合には、シランカップリング剤としてフェニル基を含有するシランカップリング剤を用いることが好ましい。フェニル基を含有するシランカップリング剤は、メソゲン骨格を有するエポキシ樹脂と相互作用しやすいため、より優れた熱伝導性が期待できる。
フェニル基を含有するシランカップリング剤の種類としては特に限定されず、市販のものを使用することができる。フェニル基を含有するシランカップリング剤の具体例としては、3−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−フェニルアミノプロピルトリエトキシシラン、N−メチルアニリノプロピルトリメトキシシラン、N−メチルアニリノプロピルトリエトキシシラン、3−フェニルイミノプロピルトリメトキシシラン、3−フェニルイミノプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトシキシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、トリフェニルメトキシシラン、トリフェニルエトキシシラン等が挙げられる。これらシランカップリング剤は、1種類を単独で用いてもよく、又は2種類以上を併用してもよい。
シランカップリング剤の使用量は、フィラー全体の表面積に対する被覆率(以下、シランカップリング剤の被覆率と記す)が0.4〜0.8となるように設定することが好ましく、0.5〜0.7となるように設定することがより好ましい。シランカップリング剤の被覆率は次式により算出される。
シランカップリング剤の被覆率={シランカップリング剤の最小被覆面積(m/g)×シランカップリング剤の使用量(g)}/{フィラーの比表面積(m/g)×フィラーの使用量(g)}
また、上式のシランカップリング剤の最小被覆面積は次式により算出される。
シランカップリング剤の最小被覆面積(m/g)={アボガドロ定数(6.02×1023)(mol−1)×シランカップリング剤1分子当たりの被覆面積(13×10−20)(m)}/シランカップリング剤の分子量(g/mol)
上式により求められるシランカップリング剤の被覆率は、フィラー表面をシランカップリング剤が全て覆い尽くす場合に1となる。
熱伝導率の観点から、シランカップリング剤の被覆率は0.8以下であることが好ましい。シランカップリング剤の被覆率が0.8以下の場合、フィラーと反応しない未反応のシランカップリング剤の量が抑えられ、未反応のシランカップリング剤によるフィラーとエポキシ樹脂との結合又はエポキシ樹脂間の架橋の阻害が抑制されて、熱伝導率の低下を防ぐことができる傾向にある。
また、成形後にボイド等の成形不良の発生を抑制する観点から、シランカップリング剤の被覆率は0.4以上であることが好ましい。
樹脂組成物へのシランカップリング剤の添加方法としては特に制限はない。具体的な添加方法としては、硬化性樹脂、フィラー等の他の材料と混合する際に添加するインテグラル法;少量の硬化性樹脂に一定量のシランカップリング剤を混合した後、フィラー等の他の材料と混合するマスターバッチ法;硬化性樹脂等の他の材料と混合する前に、フィラーと混合して予めフィラーの表面にシランカップリング剤を処理する前処理法;などが挙げられる。また、前処理法には、シランカップリング剤の原液又は溶液をフィラーとともに高速撹拌により均一に分散させて処理する乾式法と、シランカップリング剤の希薄溶液でフィラーをスラリー化したり、フィラーに直接浸漬したりすることでフィラー表面に処理を施す湿式法とがある。
<硬化触媒>
樹脂組成物は、硬化触媒を含有してもよい。硬化触媒を併用することで、樹脂組成物をさらに十分に硬化させることができる。硬化触媒の種類及び配合量は特に限定されず、反応速度、反応温度、保管性等の観点から適切なものを選択することができる。
硬化触媒の具体例としては、イミダゾール化合物、有機リン化合物、第3級アミン、第4級アンモニウム塩等が挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよく、又は2種類以上を併用してもよい。中でも、耐熱性の観点から、有機ホスフィン化合物;有機ホスフィン化合物に無水マレイン酸、キノン化合物(1,4−ベンゾキノン、2,5−トルキノン、1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルベンゾキノン、2,6−ジメチルベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−5−メチル−1,4ベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノン、フェニル−1,4−ベンゾキノン等)、ジアゾフェニルメタン、フェノール樹脂等のπ結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物;及び有機ホスフィン化合物と有機ボロン化合物(テトラフェニルボレート、テトラ−p−トリルボレート、テトラ−n−ブチルボレート等)との錯体;からなる群より選択される少なくとも1つであることが好ましい。
有機ホスフィン化合物としては、具体的には、トリフェニルホスフィン、ジフェニル(p−トリル)ホスフィン、トリス(アルキルフェニル)ホスフィン、トリス(アルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(アルキルアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルコキシフェニル)ホスフィン、トリアルキルホスフィン、ジアルキルアリールホスフィン、アルキルジアリールホスフィン等が挙げられる。
樹脂組成物が硬化触媒を含有する場合、樹脂組成物中における硬化触媒の含有率は特に制限されない。流動性及び成形性の観点から、硬化触媒の含有率は、硬化性樹脂と硬化剤との合計質量に対して、0.1質量%〜1.5質量%であることが好ましく、0.2質量%〜1質量%であることがより好ましい。
本実施形態の樹脂組成物は、未硬化体であっても、半硬化体であってもよい。
本明細書において「半硬化」とは、常温(25℃)における粘度が10Pa・s〜10Pa・sであって、100℃における粘度が10Pa・s〜10Pa・sに低下する状態にあることを意味する。尚、粘度は、ねじり型動的粘弾性測定装置等により測定が可能である。
〔樹脂組成物の調製方法〕
樹脂組成物の調製方法としては、各種成分を均一に分散混合できるのであれば、特に制限されない。一般的な手法として、所定の配合量の成分をミキサー等によって十分混合した後、ミキシングロール、押出機等によって溶融混練し、そして、冷却し、粉砕する方法を挙げることができる。樹脂組成物の調製方法としては、上述した成分の所定量を均一に撹拌し、混合し、予め70℃〜140℃に加熱してあるニーダー、ロール、エクストルーダー等で混練し、冷却し、粉砕する方法が挙げられる。
樹脂組成物を成形材として用いる場合、トランスファー成形機等の成形機に投入するのに適した形状に成形することが好ましく、その形状は特に制限されない。成形材は、成形条件に合うような寸法及び質量で樹脂組成物をタブレット化すると使いやすい。
〔樹脂シート〕
本実施形態の樹脂シートは、本実施形態の樹脂組成物をシート状に形成したものである。樹脂シートは未硬化体であっても半硬化体であってもよい。
〔硬化物〕
本実施形態の硬化物は、本実施形態の樹脂組成物を硬化させたものである。
樹脂組成物の硬化方法は特に制限されない。例えば、100℃〜250℃で1時間〜10時間、好ましくは130℃〜230℃で1時間〜8時間加熱することにより、硬化物を得ることができる。
樹脂組成物は、トランスファー成形法、圧縮成形法等によって硬化することもできる。例えば、トランスファー成形では、金型温度140℃〜180℃、成形圧力10MPa〜25MPaで30秒間〜600秒間加熱することにより、硬化物を得ることができる。必要に応じて、金型から外した硬化物を160℃〜200℃で2時間〜8時間さらに加熱し、後硬化してもよい。
本実施形態の樹脂組成物を封止材として用いて、半導体装置等の電子部品装置を封止することができる。樹脂組成物により封止された素子を備える電子部品装置としては、リードフレーム、配線済みのテープキャリア、配線板、ガラス、シリコンウエハ等の支持部材、実装基板等に、半導体チップ、トランジスタ、ダイオード、サイリスタ等の能動素子、コンデンサ、抵抗体、コイル等の受動素子等の素子を搭載し、必要な部分を本実施形態の樹脂組成物で封止した電子部品装置等が挙げられる。
ここで、実装基板としては特に制限するものではなく、有機基板、有機フィルム、セラミック基板、ガラス基板等のインターポーザ基板、液晶用ガラス基板、MCM(Multi Chip Module)用基板、ハイブリットIC用基板等が挙げられる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
(使用材料)
<エポキシ樹脂>
・エポキシ樹脂1:YL6121H(三菱化学株式会社製、下記式中RがHの化合物とRがCHの化合物が約1:1の混合物、エポキシ当量:172g/eq)
・エポキシ樹脂2:ME21(trans−4−{4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル}シクロヘキシル=4−(2,3−エポキシプロポキシ)ベンゾエート、住友化学株式会社製、特許第5471975号公報参照、エポキシ当量:212g/eq)
・エポキシ樹脂3:ME21(trans−4−{4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル}シクロヘキシル=4−(2,3−エポキシプロポキシ)ベンゾエート、住友化学株式会社製、特許第5471975号公報参照、エポキシ当量:212g/eq)とヒドロキノンとのプレポリマー化合物(ME21プレポリマー)
以下、エポキシ樹脂3の合成方法を示す。
500mLの三口フラスコに、エポキシ樹脂2(ME21)を50g(0.118mol)量り取り、そこにシクロヘキサノンを80g添加した。三口フラスコに冷却管及び窒素導入管を設置し、溶媒に漬かるように撹拌羽を取り付けた。この三口フラスコを160℃のオイルバスに浸漬し、撹拌を開始した。数分後にエポキシ樹脂2が溶解し、透明な溶液になったことを確認した後に、ヒドロキノンを1.30g(0.0118mol)フラスコに添加し、さらに硬化触媒であるトリフェニルホスフィンを0.5g添加し、160℃のオイルバス温度で加熱を継続した。5時間加熱を継続した後に、反応溶液からシクロヘキサノンを減圧留去した残渣を室温まで冷却することにより、エポキシ樹脂3を得た。なお、このエポキシ樹脂3には、合成溶媒の一部と未反応のエポキシ樹脂モノマーとが含まれていた。
<フェノール硬化剤>
・フェノールノボラック硬化剤:A−4SM(カテコールレゾルシノールノボラック樹脂、日立化成株式会社製)
<シランカップリング剤>
・シランカップリング剤:KBM−202SS(ジフェニルジメトキシシラン、信越化学工業株式会社製、分子量244)
<硬化触媒>
・リン系硬化触媒:トリフェニルホスフィン(北興化学工業株式会社製、分子量:262)
<フィラー>
・パイロキスマ3350(酸化マグネシウム、協和化学工業株式会社製、平均粒子径50μm、比表面積0.1m/g、純水中でゼータ電位がプラス)
・パイロキスマ3320(酸化マグネシウム、協和化学工業株式会社製、平均粒子径20μm、比表面積0.2m/g、純水中でゼータ電位がプラス)
・スターマグSL(酸化マグネシウム、神島化学工業株式会社製、平均粒子径8μm、比表面積1m/g、純水中でゼータ電位がプラス)
・AL35−63(アルミナ、新日鉄住金マテリアルズ株式会社製、平均粒子径50μm、比表面積0.1m/g、純水中でゼータ電位がプラス)
・AL35−45(アルミナ、新日鉄住金マテリアルズ株式会社製、平均粒子径20μm、比表面積0.2m/g、純水中でゼータ電位がプラス)
・AX3−32(アルミナ、新日鉄住金マテリアルズ株式会社製、平均粒子径4μm、比表面積1m/g、純水中でゼータ電位がプラス)
<離型添加剤>
・リコワックスE(酸価:約17mgKOH/g、クラリアントジャパン株式会社製)
・リコワックスS(酸価:約140mgKOH/g、クラリアントジャパン株式会社製)
・ポリワックス500(酸価:1mgKOH/g未満、平均分子量Mw:500、東洋アドレ株式会社製)
・リコワックスPE520(酸価:1mgKOH/g未満、平均分子量Mw:6000、クラリアントジャパン株式会社製)
・リコワックスPE130(酸価:1mgKOH/g未満、平均分子量Mw:4800、クラリアントジャパン株式会社製)
・リコワックスPE190(酸価:1mgKOH/g未満、平均分子量Mw:18000、クラリアントジャパン株式会社製)
・セリダスト3715(酸価:2mgKOH〜5mgKOH/g、クラリアントジャパン株式会社製)
・リコワックスPED521(酸価:15mgKOH/g〜19mgKOH/g、平均分子量Mw:4200、クラリアントジャパン株式会社製)
・リコワックスPED522(酸価:22mgKOH/g〜28mgKOH/g、平均分子量Mw:3100、クラリアントジャパン株式会社製)
・リコワックスPED153(酸価:22mgKOH〜27mgKOH/g、平均分子量Mw:8800、クラリアントジャパン株式会社製)
・リコワックスPED191(酸価:15mgKOH〜19mgKOH/g、平均分子量Mw:12000、クラリアントジャパン株式会社製)
(成形材の調製)
[比較例1]
計量天秤を用いて、エポキシ樹脂1(YL6121H)を5.46g、フェノール硬化剤(A−4SM)を2.11g、シランカップリング剤(KBM−202SS)を0.06g、硬化触媒(トリフェニルホスフィン、TPP)を0.03g、アルミナフィラー(AL−35−63)を58.13g、アルミナフィラー(AL−35−45)を16.61g、アルミナフィラー(AX−3−32)を16.61g、さらに離型添加剤(リコワックスE)を1.00g配合した。これを混練温度60℃〜90℃、混練時間10分間の条件でロール混練し、冷却し、粉砕することにより、成形材(樹脂組成物)を調製した。
[実施例1〜4、比較例2〜7]
比較例1において、離型添加剤の種類を表1に示すように変えた以外は同様の方法により成形材を得た。
[比較例8]
計量天秤を用いて、エポキシ樹脂3(ME21プレポリマー)を6.01g、フェノール硬化剤(A−4SM)を1.55g、シランカップリング剤(KBM−202SS)を0.06g、硬化触媒(トリフェニルホスフィン、TPP)を0.03g、アルミナフィラー(AL−35−63)を58.13g、アルミナフィラー(AL−35−45)を16.61g、アルミナフィラー(AX−3−32)を16.61g、さらに離型添加剤(リコワックスE)を1.00g配合し、上記方法により成形材を得た。
[実施例5]
比較例8において、離型添加剤の種類をリコワックスPE130に変えた以外は同様の方法により成形材を得た。
[比較例9]
計量天秤を用いて、エポキシ樹脂1(YL612H)を5.36g、フェノール硬化剤(A−4SM)を2.07g、シランカップリング剤(KBM−202SS)を0.03g、硬化触媒(トリフェニルホスフィン、TPP)を0.03g、酸化マグネシウムフィラー(パイロキスマ3350)を64.06g、酸化マグネシウムフィラー(パイロキスマ3320)を18.30g、酸化マグネシウムフィラー(スターマグSL)を9.15g、さらに離型添加剤(リコワックスE)を1.00g配合し、上記方法により成形材を得た。
[実施例6〜9、比較例10〜12]
比較例9において、離型添加剤の種類を表2に示すように変えた以外は同様の方法により成形材を得た。
[比較例13]
計量天秤を用いて、エポキシ樹脂3(ME21プレポリマー)を5.91g、フェノール硬化剤(A−4SM)を1.52g、シランカップリング剤(KBM−202SS)を0.03g、硬化触媒(トリフェニルホスフィン、TPP)を0.03g、酸化マグネシウムフィラー(パイロキスマ3350)を64.06g、酸化マグネシウムフィラー(パイロキスマ3320)を18.30g、酸化マグネシウムフィラー(スターマグSL)を9.15g、さらに離型添加剤(リコワックスE)を1.00g配合し、上記方法により成形材を得た。
[実施例10]
比較例13において、離型添加剤の種類をリコワックスPE130に変えた以外は同様の方法により成形材を得た。
なお、成形材中のフィラーの含有率はアルミナを使用した比較例1〜8及び実施例1〜5では76体積%、酸化マグネシウムを使用した比較例9〜13及び実施例6〜10では78体積%であった。
(スパイラルフローの評価)
EMMI−1−66に準じたスパイラルフロー測定用金型を用いて、調製した成形材をトランスファー成形機により、金型温度180℃、成形圧力22.5MPa、硬化時間300秒間の条件で成形して流動距離を求めた。
(金型離型性の評価)
厚さ3mm、直径50mmΦの円盤状金型を用い、調製した成形材をトランスファー成形機により、金型温度180℃、成形圧力22.5MPa、硬化時間300秒間の条件で成形した。
金型から離型する際に、金型への成形材中の成分の転写がなく、かつ真鍮製金属板を使用せずとも容易に離型するものをAと判定した。一方、金型から離型する際に、金型への成形材成分の転写がある場合、又は成形物を金型から外す際に真鍮製金属板を使用しないと容易に離型できない場合の少なくとも一方の現象を発生するものをBと判定した。
(比重の測定)
厚さ3mm、直径50mmΦの円盤状金型を用い、調製した成形材をトランスファー成形機により、金型温度180℃、成形圧力22.5MPa、硬化時間300秒間の条件で成形し、後硬化として180℃で4時間オーブンに投入して硬化物を得、この硬化物を測定サンプルとした。この測定サンプルに対して、市販のアルキメデス法に基づく電子比重計を使用し、比重を測定した。
(熱伝導率の測定)
硬化物の熱拡散率を、熱拡散率測定装置(NETZSCH社製、LFA447)を用いてレーザーフラッシュ法により測定した。得られた熱拡散率と、別途、示差走査熱量測定(DSC)により測定した硬化物の比熱及び比重との積から、硬化物の熱伝導率を求めた。

表1及び表2に示すように、いずれの検討例でも比重は離型添加剤を変えても同等で、アルミナフィラーを用いる樹脂組成物では3.23又は3.24、酸化マグネシウムフィラーを用いる樹脂組成物では3.00であり、理論計算より導かれる比重値と同等の値を有していた。このことから、表1及び表2に示す樹脂組成物では最低限の流動性及び成形性を有していることがわかる。
また、熱伝導率に関してもアルミナフィラーを用いる樹脂組成物では約8.0W/(m・K)、酸化マグネシウムフィラーを用いる組成物では約10.0W/(m・K)となり、離型添加剤の種類に大きく依存しなかった。
一方、酸価が1mgKOH/gを超える離型添加剤を用いた比較例は、金型離型性に劣り、金型への成形材成分の転写がある、又は成形物を金型から外す際に真鍮製金属板を使用しないと容易に離型できない、といういずれか又は両方の現象が見られ、作業性が低下した。
それに対し、酸価が1mgKOH/g以下である離型添加剤を使用した実施例では、金型から成形物を容易に取り外すことが可能であった。
さらに、酸価が1mgKOH/g以下である離型添加剤を使用した場合では、成形流動時における成形材と金型界面との間で滑り性が向上したことにより、スパイラルフロー特性の維持又は向上が見られた(実施例1〜10)。特に、離型添加剤の分子量が小さいほど、スパイラルフロー性の向上が見られた。

Claims (8)

  1. 純水中でゼータ電位がプラスとなるフィラーと、
    酸価が1mgKOH/g以下となる離型添加剤と、
    硬化性樹脂と、
    硬化剤と、
    を含み、
    前記硬化性樹脂が、メソゲン骨格を有するエポキシ樹脂を含み、
    前記フィラーが、アルミナ及び酸化マグネシウムから選択される少なくとも1種を含み、
    硬化物としたときの熱伝導率が8W/(m・K)以上である、樹脂組成物。
  2. 前記離型添加剤が、ポリオレフィンを含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. 前記ポリオレフィンの重量平均分子量が、700〜10000である、請求項2に記載の樹脂組成物。
  4. シランカップリング剤をさらに含む、請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  5. 硬化触媒をさらに含む、請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  6. 未硬化体又は半硬化体である、請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  7. 請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の樹脂組成物の硬化物。
  8. トランスファー成形により成形されてなる、請求項に記載の硬化物。
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