以下に、本発明に係る流体制御弁の実施形態について、図面に基づいて説明する。本実施形態では、流体制御弁の一例として、自動車用のエンジンEの冷却システムに用いられる流体制御弁Vとして説明する。ただし、以下の実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
図1に示すように、エンジンEの冷却システムは、エンジンEとラジエータRとの間に冷却水(流体の一例)を循環させる第一循環路1と、エンジンEとヒータコアHとの間に冷却水を循環させる第二循環路2と、エンジンEに冷却水を供給するウォータポンプPとを備えている。本実施形態におけるウォータポンプPは、不図示のクランクプーリからタイミングベルトを介して駆動力を得て回転する機械式ウォータポンプで構成されており、エンジンの回転数に応じて流量が変化する。
第一循環路1や第二循環路2におけるラジエータRやヒータコアHからの冷却水の流出流路は、サーモスタットバルブ3を介してウォータポンプPに接続されている。第一循環路1は、エンジンEで加熱された冷却水をラジエータRで冷却した後、サーモスタットバルブ3を介してエンジンEに還流させる。第二循環路2は、エンジンEとヒータコアHとの間に流体制御弁Vを配置し、この流体制御弁Vが開弁状態のとき、エンジンEで加熱された冷却水を、車室内の空気を暖めるヒータコアHに流入させる。このとき、ヒータコアHで熱交換されて冷却された冷却水は、サーモスタットバルブ3を介してエンジンEに還流される。
一方、冷却水が所定の温度(暖機完了温度T1)より低い場合、流体制御弁Vを閉弁して、ヒータコアHの熱交換による冷却水の温度の低下を防止する。また、冷却水の温度が低い場合にはサーモスタットバルブ3も閉弁しているため、冷却水はラジエータRにも循環しない。このため、エンジンEの暖機運転時における冷却水の温度上昇を促進して、燃費の向上を図ることができる。
(第一実施形態)
以下、第一実施形態について図面を用いて説明する。
図2〜図3に示すように、流体制御弁Vは、ハウジング4と、ハウジング4に固定されたストッパ9と、軸部材5と、軸部材5を支持する支持部材6と、支持部材6の内部に収容されたコイルスプリングS(付勢部材の一例)と、弁座としての第一磁性体8と、第一磁性体8に磁束を流すソレノイドBと、軸部材5に一体形成された弁体としての第二磁性体7と、を備えている。本実施形態では、第一磁性体8と軸部材5および第二磁性体7とは、鉄などの磁性体で構成されている。また、ハウジング4,支持部材6,およびストッパ9は、非磁性体の樹脂やステンレス等で構成されている。
ハウジング4は、ストッパ9が内側に固定された第一ハウジング41と、第一磁性体8がインサート成形された第二ハウジング42と、支持部材6が内側に固定された第三ハウジング43とを備えている。これら第一ハウジング41,第二ハウジング42,および第三ハウジング43は、ボルト締結、接着、圧入などによって互いに接続されている。なお、第一ハウジング41,第二ハウジング42,および第三ハウジング43は、いずれか2つを一体形成しても良いし、4分割以上で構成しても良い。
第一ハウジング41は、軸部材5の軸芯Xに沿う冷却水の流出口41aが円筒状に形成されている。また、複数(本実施形態では3箇所)の延出部44が第一ハウジング41の内面から延出形成されており、この延出部44の端部に円筒状のストッパ9が一体形成されている。なお、延出部44やストッパ9は、第一ハウジング41に接着等で固定される別部材であっても良い。
図4に示すように、延出部44は、底面(第一ハウジング41の内面のうち第二磁性体7の背面7aに対向する面)の中央付近を第二磁性体7から離間させる方向に窪ませて形成される水通路45(流路絞り部の一例)と、この水通路45に対して周方向の両側で、且つ径方向に亘って第二磁性体7の側に突出形成された側壁部46とを有している。コイルスプリングSによる付勢力による第二磁性体7の移動がストッパ9によって阻止された開弁時には、側壁部46の底面(ストッパ9の底面92aと同一面)が第二磁性体7の背面7aに当接して、水通路45の側方への冷却水の漏出が防止される(図2参照)。このように、第二磁性体7のストッパ9に当接する背面7aと第一ハウジング41の内面との間における流路の一部には、流路面積が絞られた水通路45が、第一ハウジング41の延出部44の底面を窪ませて形成されている。
また、図2および図4に示すように、水通路45のうち第二磁性体7よりも径方向外側に位置する部分においては、延出部44の底面を第二磁性体7から離間する方向に更に窪ませた溜り部45aが形成されている。この溜り部45aは、開弁時に水通路45に流通する冷却水を貯留する機能を有する。なお、溜り部45aを省略しても良い。
ストッパ9は、第一ハウジング41の延出部44に接続させた環状鍔部92を有している。この環状鍔部92には、水通路45に接続される接続通路92b(流路絞り部の一例)が、底面92a(第一ハウジング41の内面のうち第二磁性体7の背面7aに対向する面)を第二磁性体7から離間させる方向に窪ませて形成されている。この接続通路92bも、水通路45と同様に、第二磁性体7が第一磁性体8から離間した開弁時に流路面積を絞る機能を有している。また、環状鍔部92の中央には貫通孔部92cが形成されている。
これらによって、図2に示すように、第二磁性体7の開弁時には、冷却水が水通路45の溜り部45aに流入して、水通路45,接続通路92b,貫通孔部92cの順番で流通する。このとき、水通路45および接続通路92bを流通する冷却水により、第二磁性体7の背面7aが水圧(流体圧)を受けて第二磁性体7が第一磁性体8に向かって押圧される。なお、コイルスプリングSによる付勢力は、この水圧よりも大きく設定されているため、ソレノイドBに通電しないときには開弁状態が維持されている。
図2〜図3に戻って、第二ハウジング42には、平板状の第一磁性体8がインサート成形されている。また、第二ハウジング42の側方には、後述するソレノイドBの固定ヨーク11が一体形成されている。
第三ハウジング43には、軸部材5の軸芯Xに沿う冷却水の流入口43aが円筒状に形成されている。また、第三ハウジング43の内周面には、平板状に構成された複数(本実施形態では3箇所)の平板部43bが延出形成されており、この平板部43bの先端に有底筒状の支持部材6が第一磁性体8と一体形成されている。
軸部材5は、ハウジング4の内部を移動可能に、一方の端部の側が支持部材6に支持されている。軸部材5の外面が支持部材6の内面に摺接することで、軸部材5の移動が支持部材6の内面にガイドされる。また、軸部材5の他方の端部は、第一磁性体8よりも流出口41aの側まで延在しており、この他方の端部に第二磁性体7が一体形成されている。なお、軸部材5と第二磁性体7とを一体形成せずに、第二磁性体7の中央に貫通孔を設けて、この貫通孔に軸部材5の他方の端部を固定(圧入)する構成であっても良い。
支持部材6は、流入口43aの側で第三ハウジング43に固定されており、側壁61が第一磁性体8の流通孔81に侵入している。つまり、側壁61により軸部材5の摺接領域を確保して、支持部材6の軸部材5に対する支持機能を高めている。
図5に示すように、支持部材6は、筒状本体62と、筒状本体62の第二磁性体7の側にある開口端部を径方向外側に拡径させた円環状部63(流体圧受け部の一例)とを備えている。筒状本体62は、中央に小孔64aが形成された底部64と、底部64から軸芯X方向に沿って立設した第一立設部65と、第一立設部65から次第に拡径されたテーパ部66と、テーパ部66の最大径と同径となるようにテーパ部66から軸芯X方向に沿って立設した第二立設部67とを有している。つまり、支持部材6の側壁61は、第一立設部65とテーパ部66と第二立設部67とで構成されている。上述した軸部材5は、第二立設部67の領域で移動可能に構成されている。
円環状部63は、第一磁性体8と第二磁性体7との間に配置されている(図2参照)。この円環状部63の内面には、軸部材5よりも径方向外側に窪んだ溝部68が形成されている。この溝部68は、周方向に沿って等間隔に複数(本実施形態では4箇所)設けられており、円環状部63および第二立設部67の領域に亘って軸芯X方向に沿って配置されている。
図2〜図3に示すように、コイルスプリングSは、軸部材5の他方の端部に形成された凸部52にガイドされながら軸部材5の端面と支持部材6の底部64とに当接した状態で、支持部材6の内部に収容されている。本実施形態では、支持部材6の第一立設部65およびテーパ部66の内部がコイルスプリングSの収容空間となっている(図5参照)。このコイルスプリングSは、第二磁性体7が第一磁性体8から離間するように、軸部材5(第二磁性体7)を流出口41aに向かって付勢している。
第一磁性体8は、冷却水が流通する流通孔81が設けられており、軸芯X方向に沿う第二磁性体7と支持部材6との間に配置されている。図6に示すように、第一磁性体8は、流通孔81の周囲にある円環状の周縁部84と、周縁部84の径方向内側に形成された流通孔81と、を含んでいる。この周縁部84が、後述する第二磁性体7の突出部72が当接する弁座として機能する。第一磁性体8は、ソレノイドBの固定ヨーク11と一体化された板状に形成されており、固定ヨーク11と共に第二ハウジング42にインサート成形されている。
第一磁性体8は、流通孔81の周縁部84から径方向内側に延出した一対の腕部82を有している。各々の腕部82は、流通孔81の周縁部84と接続される直線状に形成された一対の接続部82aと、一対の接続部82aの端部を弧状に連結する弧状部82bとを有している。この弧状部82bの内周面は、非磁性体の支持部材6が介在した状態で軸部材5の外周面と径方向視で重複している。また、第一磁性体8は、周縁部84のうち磁束が通過する部分に一対の磁束絞り部83が設けられている。一対の腕部82は、周縁部84のうち一対の磁束絞り部83を挟む両側の領域から延出するように設けられている。腕部82の接続部82a(腕部82のうち周縁部84から径方向に延出する部位)の幅L1は、磁束絞り部83の幅L2より大きく形成されている。また、本実施形態では、腕部82の弧状部82bの幅L3を接続部82aの幅L1や磁束絞り部83の幅L2よりも小さく形成して磁束密度を高めている。なお、弧状部82bの幅L3を、接続部82aの幅L1と同様に磁束絞り部83の幅L2より大きく形成しても良い。
図2〜図3に示すように、ソレノイドBは、鉄などの磁性体で構成される板状の固定ヨーク11と、通電により磁場を発生させる電磁コイル12と、電磁コイル12を外部の駆動回路(不図示)に電気的に接続するソケット13とを有している。つまり、電磁コイル12に通電することで、固定ヨーク11を介して第一磁性体8に磁束が流れる。
第二磁性体7は、軸部材5の軸芯Xと同軸芯となるように、軸部材5の他方の端部に一体形成された弁体として機能する。第二磁性体7は、第一磁性体8の流通孔81を閉塞可能な円板状の閉塞面71と、閉塞面71の外周部から第一磁性体8に向かって突出する円筒状の突出部72と、を有している。閉弁時には、この突出部72が流通孔81の周縁部84に当接して、第二磁性体7の閉塞面71が第一磁性体8の流通孔81を閉塞する(図3参照)。
一方、開弁時には、ストッパ9の環状鍔部92が、第二磁性体7の背面7aの径方向内側の部分に当接して第二磁性体7の移動を阻止している(図2参照)。このとき、第二磁性体7の径方向外側から第一ハウジング41の延出部44の間に形成された空間を主流路として、冷却水が流入口43aから流出口41aに向かって流通する。加えて、冷却水が水通路45の溜り部45aに流入し、延出部44の水通路45,ストッパ9の接続通路92b,ストッパ9の貫通孔部92cの順番で流通する副流路も形成されている。なお、本実施形態では、ストッパ9が、第二磁性体7の突出部72よりも径方向内側に配置されており、第二磁性体7の閉塞面71よりも径方向外側に形成された主流路の流通抵抗の増大を抑制している。
(制御例)
図7には、上述した流体制御弁Vを用いた制御方法の一例が示されている。エンジンEを始動したとき、ソレノイドBは非通電となっており、コイルスプリングSの付勢力によって第二磁性体7が第一磁性体8から離間して流体制御弁Vが開弁している(図2参照)。まず、デフロスタ等から開弁要求があるか否かが判定される(♯01)。開弁要求がない場合(♯01No判定)、ソレノイドBを通電することによりコイルスプリングSの付勢力に抗して第二磁性体7が第一磁性体8に引き寄せられ、第二磁性体7が第一磁性体8に当接して流体制御弁Vが閉弁される(♯02、図3参照)。その結果、エンジンEの暖機が促進される。次いで、冷却水温度が暖機完了温度T1以上になれば(♯03Yes判定)、ソレノイドBの通電を停止して流体制御弁Vを開弁する(♯04)。冷却水温度が暖機完了温度T1に達していない場合には(♯03No判定)、流体制御弁Vの閉弁状態を維持する(♯02)。
一方、開弁要求がある場合(♯01Yes判定)は、緊急性の高い流体供給の制御が優先され、ソレノイドBが非通電の状態で流体制御弁Vの開弁状態を維持し、ヒータコアHに冷却水を循環させる(♯05)。そして、開弁要求が解除された場合(♯06Yes判定)、冷却水温度が暖機完了温度T1に達していないときには、流体制御弁Vを再度閉弁して暖機を促進させ(♯02〜♯04)、冷却水温度が暖機完了温度T1に達していれば、開弁を維持してエンジンEに冷却水を循環させる通常運転モードに移行する。
通常運転モードに移行してから、暖房要求があった場合(♯07Yes判定)、エンジンEの回転数が低回転領域にあり(Rrpm以下)、且つ冷却水が所定温度T2以下である場合(♯08Yes判定)、ソレノイドBに通電して流体制御弁Vを閉弁する(♯09)。その結果、エンジンEの運転に影響を及ぼさない範囲で、冷却水の温度が上昇する。そして、冷却水が所定温度T2より大きくなった場合(♯08No判定)、ソレノイドBの通電を停止して流体制御弁Vを開弁すれば(♯10)、ヒータコアHに高温の冷却水が循環するので、室内を迅速に暖めることができる。また、エンジンEの回転数が低回転領域より大きくなった場合(♯08No判定)は、エンジンEの冷却を優先するために、ソレノイドBの通電を停止して流体制御弁Vを開弁し(♯10)、ラジエータRおよびヒータコアHで熱交換して冷却水の温度を低下させる。
その他の制御方法としては、例えば、ヒータコアH、EGRクーラやトランスミッション等に各別に流体制御弁Vを配置し、必要に応じて開閉動作を繰り返す形態などが想定される。このように、開閉動作を頻繁に行う流体制御弁Vにあっては、エンジンEの回転数に応じて流量が変化する機械式のウォータポンプPのように水圧を制御できない場合であっても、水圧に拘らず開閉動作を迅速に行えることが望ましい。
図2に示すように、第二磁性体7は、第一磁性体8から離間する方向に付勢されており、ソレノイドBに通電しないときは、流体制御弁Vは開弁状態にある。このため、エンジンEの始動時のように水圧が低いときにデフロスタ等から開弁要求があった場合でも、早急に開弁して冷却水を流通させることができる。しかも、エンジン停止時は常に開弁状態なので、第二磁性体7と第一磁性体8とが固着して開弁し難い不都合もない。
図2,図6に示すように、第二磁性体7が他方の端部に一体形成された軸部材5は第一磁性体8の腕部82に対して近い位置に設けられている。このため、ソレノイドBに通電したとき、第一磁性体8から軸部材5を経由して第二磁性体7に向かう磁気回路が形成され、第二磁性体7が第一磁性体8に吸着される。このとき、腕部82の弧状部82bの幅L3を、接続部82aの幅L1や磁束絞り部83の幅L2よりも小さく形成しているので、弧状部82bの磁束密度を高まることができる(図6参照)。また、第一磁性体8の腕部82の接続部82aの幅L1を磁束絞り部83の幅L2より大きく形成すれば、腕部82に磁束が流れやすくなり、軸部材5を介して第二磁性体7に流す磁束量を増大させることが可能となる。その結果、第一磁性体8と第二磁性体7との吸着力が高まり、少ない電力で開弁状態から閉弁状態へと移行させることができる。
また、図2および図5に示すように、第一磁性体8と第二磁性体7との間には、流入口43aから流入する冷却水の圧力を受け止める支持部材6の円環状部63が、第一磁性体8の流通孔81を閉塞可能な第二磁性体7の閉塞面71に対向して設けられている。支持部材6の円環状部63が水圧を受け止めることによって、この閉塞面71に作用して第二磁性体7を第一磁性体8から離間させる方向に作用する水圧を減少させることが可能となる。その結果、流体制御弁Vを開弁状態から閉弁状態へと迅速に移行させることができる。
しかも、図2および図4に示すように、開弁時に第二磁性体7の背面7aと第一ハウジング41(延出部44およびストッパ9)の内面との間に流路面積を絞る水通路45および接続通路92bが形成されている。その結果、第二磁性体7の背面7aが水圧を受けて第二磁性体7が第一磁性体8に向かって押圧されるので、第二磁性体7の背面7aに作用する水圧が第一磁性体8に吸着するためのソレノイドBの駆動力をアシストして、より迅速に閉弁することができる。本実施形態のように、この水通路45に流通する冷却水を貯留する溜り部45aを設ければ、溜り部45aからの冷却水が水通路45に流通し易いので、冷却水の流通が途切れることによる第二磁性体7の背面7aに作用する水圧の低下を抑制することができる。
また、第二磁性体7の他方の端部に固定された軸部材5が支持部材6によってガイドされるので、軸部材5が軸ぶれすることなく第二磁性体7の移動が円滑なものとなって開閉動作が安定する。本実施形態では、図5に示すように、支持部材6の内面に溝部68を設けると共に底部64に小孔64aを設けているので、軸部材5と支持部材6との間に異物が混入した場合でも、溝部68から小孔64aを介して支持部材6の外部に該異物を排出することができる。その結果、軸部材5の移動が円滑なものとなり、軸部材5の端部に固定された第二磁性体7の開閉動作が安定する。
(第二実施形態)
以下、第二実施形態について図面を用いて説明する。なお、制御方法や作用効果は上述した実施形態と同様であるため、説明を省略する。また、第一実施形態と同様の構成については、詳細な説明を省略する。
図8〜図10に示すように、流体制御弁VAは、ハウジング4Aと、ハウジング4Aに固定されたストッパ9Aと、ハウジング4Aに固定されたガイド部材6Aと、ガイド部材6Aの内部に収容されたコイルスプリングSA(付勢部材の一例)と、弁座としての第一磁性体8Aと、第一磁性体8Aに磁束を流すソレノイドBAと、弁体としての第二磁性体7Aと、を備えている。本実施形態では、第一磁性体8Aと第二磁性体7Aとは、鉄などの磁性体で構成されている。また、ハウジング4A,ガイド部材6A,およびストッパ9Aは、非磁性体の樹脂やステンレス等で構成されている。
ハウジング4Aは、ストッパ9Aが内側に固定された第一ハウジング41Aと、第一磁性体8Aがインサート成形された第二ハウジング42Aと、ガイド部材6Aが内側に固定された第三ハウジング43Aとを備えている。
第一ハウジング41Aには、複数(本実施形態では3箇所)の延出部44Aが第一ハウジング41Aの内面から延出形成されており、この延出部44Aの端部に円筒状のストッパ9Aが一体形成されている。この延出部44Aおよびストッパ9Aは、第一実施形態における延出部44およびストッパ9と同様の構成であるので説明を省略する。つまり、延出部44Aの水通路45Aおよび溜り部45Aa,ストッパ9Aの接続通路92Abおよび貫通孔部92Acは、夫々、第一実施形態における延出部44の水通路45および溜り部45a,ストッパ9の接続通路92bおよび貫通孔部92cに相当する。また、第二ハウジング42Aは、第一実施形態における第二ハウジング42と同様の構成であるので説明を省略する。
図10に示すように、第三ハウジング43Aの内周面には、軸芯XAに沿って配置された複数(本実施形態では2箇所)の曲板部43Abが延出形成されており、この曲板部43Abの一端にガイド部材6Aが一体形成されている。曲板部43Abの第三ハウジング43Aとの接続部位が第一磁性体8Aよりも流入口43Aaの側に設けられており、曲板部43Abが第一磁性体8Aの流通孔81Aに侵入して、ガイド部材6Aが第一磁性体8Aよりも流出口41Aaの側に配置されている。
ガイド部材6Aは、底部64Aと底部64Aの外周に接続される筒部62Aとを有する有底筒状に構成されている。ガイド部材6Aの筒部62Aの外面および曲板部43Abの一部の外面は、カップ状の第二磁性体7Aの内面に摺接して、第二磁性体7Aの移動をガイドする。図11に示すように、ガイド部材6Aには、筒部62Aの外面を径方向内側に窪ませた溝部68Aが周方向に沿って等間隔に複数(本実施形態では4箇所)形成されており、この溝部68Aに後述する第一磁性体8Aの立上がり部82Aが挿入されている。また、隣り合う一対の溝部68Aa,68Abの外側面の間に曲板部43Abが配置されており、曲板部43Abの肉厚が溝部68Aa,68Abの肉厚と等しく設定されている。
図8〜図10に示すように、ガイド部材6Aの底部64A(流体圧受け部の一例)は、第二磁性体7Aの閉塞面71Aに対向しており、流入口43Aaから流入する冷却水の圧力を受け止めるように構成されている。また、ガイド部材6Aの底部64Aには、小孔64Aaが形成されている。ガイド部材6Aと第二磁性体7Aとの間に異物が混入した場合、この異物は、ガイド部材6Aの溝部68Aから小孔64Aaを介してガイド部材6Aの外部に排出される。
図8〜図10に示すように、コイルスプリングSAは、ガイド部材6Aの底部64Aと第二磁性体7Aの閉塞面71Aとに当接した状態で、ガイド部材6Aの内部に収容されている。このコイルスプリングSAは、第二磁性体7Aが第一磁性体8Aから離間するように、第二磁性体7Aを流出口41Aaに向かって付勢している。なお、コイルスプリングSAを収容する筒状部材をガイド部材6Aの底部64Aから延出形成しても良い。
第一磁性体8Aは、冷却水が流通する流通孔81Aが設けられている。図11に示すように、この流通孔81Aの周囲にある円環状の周縁部84Aが、後述する第二磁性体7Aの鍔部7dが当接する弁座として機能する。第一磁性体8Aは、ソレノイドBAの固定ヨーク11Aと一体化された板状に形成されており、固定ヨーク11Aと共に第二ハウジング42Aにインサート成形されている。
第一磁性体8Aは、流通孔81Aの周縁部84Aから軸芯XA方向に沿って垂直に立設した複数(本実施形態では4箇所)の立上がり部82Aを有している。この立上がり部82Aは、ガイド部材6Aの溝部68Aに挿入された状態で、第二磁性体7Aの内面に対向している(図10参照)。また、第一磁性体8Aは、周縁部84Aのうち磁束が通過する部分に、幅を小さくした複数の磁束絞り部83Aが設けられている。一対の立上がり部82Aa,82Abは、周縁部84のうち一つの磁束絞り部83Aを挟む両側の領域から延出するように設けられている。これによって立上がり部82Aの磁束密度が高まるので、第二磁性体7Aに流れる磁束量を増大させることが可能となる。その結果、第一磁性体8Aと第二磁性体7Aとの吸着力が高まり、少ない電力で開弁状態から閉弁状態へと移行させることができる。
ソレノイドBAは、第一実施形態におけるソレノイドBと同様の構成であるので説明を省略する。
図8〜図10に示すように、第二磁性体7Aは、カップ状に形成されており、弁体として機能する。第二磁性体7Aは、底壁部7bと、底壁部7bから第一磁性体8Aに向かって延出する周壁部7cと、周壁部7cの端部を径方向外側に拡径した鍔部7dとを備えている。第二磁性体7Aの底壁部7bは、第一磁性体8Aの流通孔81Aを閉塞可能な閉塞面71Aを有している。閉弁時には、鍔部7dが流通孔81Aの周縁部84Aに当接して、第二磁性体7Aの閉塞面71Aが第一磁性体8Aの流通孔81Aを閉塞する(図9参照)。
一方、開弁時には、ストッパ9Aの環状鍔部92Aが、第二磁性体7Aの閉塞面71Aの背面7Aaの径方向内側の部分に当接して第二磁性体7Aの移動を阻止している(図8および図10参照)。このとき、第二磁性体7Aの径方向外側から第一ハウジング41Aの延出部44Aの間に形成された空間を主流路として、冷却水が流入口43Aaから流出口41Aaに向かって流通する。加えて、冷却水が水通路45Aの溜り部45Aaに流入し、延出部44Aの水通路45A,ストッパ9Aの接続通路92Ab,ストッパ9Aの貫通孔部92Acの順番で流通する副流路も形成されている。
[その他の実施形態]
(1)上述した実施形態における流体圧受け部としての支持部材6の円環状部63やガイド部材6Aの底部64Aを省略しても良い。この場合でも、流路絞り部としての延出部44,44Aの水通路45,45Aおよびストッパ9,9Aの接続通路92b,92Abによって、第二磁性体7,7Aの背面7a,7Aaに水圧を作用させて迅速な閉弁を実現することができる。
(2)上述した実施形態における流路絞り部としての延出部44,44Aの水通路45,45Aおよびストッパ9,9Aの接続通路92b,92Abを、第二磁性体7の背面7aを窪ませて形成しても良い。
(3)第二実施形態において、第一磁性体8Aの立上がり部82Aが挿入されるガイド部材6Aの溝部68Aだけでなく、径方向内側に窪ませた異なる溝部を更に設けても良い。これによって、ガイド部材6Aと第二磁性体7Aとの間に異物が混入した場合でも、該異物を確実にガイド部材6Aの外部に排出することができる。
(4)第二実施形態におけるガイド部材6Aの曲板部43Abのうち、第一磁性体8Aよりもストッパ9Aの側の部位に貫通孔を形成しても良い。この場合、開弁時に該貫通孔から第一ハウジング41Aの延出部44Aの間に冷却水を循環させて、主流路における流路抵抗を減少させることができる。
(5)上述した実施形態における第二磁性体7,7Aは、全領域を露出させずに一部を樹脂で覆っても良い。
(6)上述した実施形態における流入口43a,43Aaと流出口41a,41Aaとは軸芯X,XAをずらして配置しても良い。
(7)流体制御弁V,VAが配置される流路に流体を流通させるポンプは、エンジンEの冷却水を供給するウォータポンプPに限定されず、エンジンオイルを循環させるオイルポンプであっても良いし、車両以外の用途に用いても良い。また、ウォータポンプPは、機械式ポンプではなく、三相交流モータ等を用いた電動ポンプであっても良い。