JP6812723B2 - 歯科用磁性アタッチメント用キーパー - Google Patents

歯科用磁性アタッチメント用キーパー Download PDF

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Description

本発明は永久磁石による磁気吸引力を利用して義歯を保持する歯科用磁性アタッチメント用キーパーに関する。
歯科用磁性アタッチメントを用いた義歯は、永久磁石の磁気吸引力を利用して義歯を歯根に装着したり取り外したりすることを可能にするものであり、取り扱いが簡単であり衛生的であること等から、従来の機械的な固定手段に代わって急速にその適用例を増している。歯科用磁性アタッチメントは、図1に示すように、磁性アタッチメント磁石構造体1(以下、単に磁石構造体1という。)と、前記磁石構造体1の磁気吸引力により義歯を保持するための円板状の磁性アタッチメント用キーパー2(以下、単にキーパー2という。)とからなり、磁石構造体1を義歯に、キーパー2を歯根4に埋設された根面板3に固着して使用される。
特開平9-253096号(特許文献1)は、磁性材料からなる磁性アタッチメント用キーパーであって、表面に第4族及びAlの内少なくとも1種の元素の酸化物、炭化物、窒化物、炭窒化物、酸炭窒化物から選ばれた1種又は2種以上からなるコーティング層(例えば、TiN層、(Ti,Al)N層)を有する耐食性に優れたキーパーを開示しており、これらのコーティング層は、イオンプレーティング法、プラズマCVD法等によって形成することができ、キーパーの母材との密着性及び耐摩耗性にも優れると記載している。
しかしながら、このようなコーティング層を有するキーパーを用いた磁性アタッチメントは、長期間の使用により咬み合いを繰り返した場合、TiN層にクラックが入る場合があり、必ずしも十分な密着性及び耐摩耗性を有しているわけではなかった。従って、優れた耐食性を有するとともに、密着性及び耐摩耗性が改良された磁性アタッチメント用キーパーの開発が望まれている。
特開平9-253096号公報
従って、本発明の目的は、優れた耐食性を有するとともに、密着性及び耐摩耗性が改良された歯科用磁性アタッチメント用キーパーを提供することである。
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者らは、フェライト系ステンレス鋼からなる板の表面に窒素を固溶させることにより、耐食性及び耐摩耗性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼の表層部が形成され、前記表層部はフェライト系ステンレス鋼からなる本体部と一体化しているため優れた密着性を有することを見出し、本発明に想到した。
すなわち、本発明の歯科用磁性アタッチメント用キーパーは、歯根に埋設された根面板に設置され、永久磁石の磁気吸引力により義歯を保持するためのキーパーであり、
耐食性の軟磁性フェライト系ステンレス鋼からなる板状の本体部と、前記本体部の少なくとも側面に形成された10〜120μmの厚さのオーステナイト系ステンレス鋼からなる表層部とを有することを特徴とする。
前記本体部の主面に0〜50μmの厚さの表層部を有してもよい。
前記本体部の主面は表層部を有さなくてもよい。
前記表層部は窒素固溶相からなるのが好ましい。
前記表層部の窒素含有量は0.5〜4.5質量%であるのが好ましい。
本発明のキーパーは、Ni含有量が0.2質量%以下であるのが好ましい。
本発明のキーパーは、Cr含有量が17〜32質量%であるのが好ましい。
本発明の歯科用磁性アタッチメント用キーパーは、優れた耐食性を有するとともに、優れた密着性及び耐摩耗性を有する表層部を備えているので、長期間にわたって交換せずに使用が可能であり、患者への負担を低減することができる。
磁性アタッチメント磁石構造体を有する義歯を、歯根に埋設された根面板に設置されたキーパーに装着した状態を示す模式断面図である。 磁性アタッチメントの一例を示す模式断面図である。 本発明の磁性アタッチメント用キーパーの例を示す模式断面図である。 実施例1で得られた本発明の磁性アタッチメント用キーパーの断面を示す光学顕微鏡写真である。 実施例2で得られた本発明の磁性アタッチメント用キーパーの断面を示す光学顕微鏡写真である。 実施例3で得られた本発明の磁性アタッチメント用キーパーの断面を示す光学顕微鏡写真である。 本発明の磁性アタッチメント用キーパーの咬合試験を行うための装置を示す模式図である。
[1] 磁性アタッチメント
(1) 全体構造
歯科用磁性アタッチメントは、図1に示すように、義歯床6内に埋設される磁性アタッチメント磁石構造体1(以下、単に磁石構造体1という。)と、歯根4部に埋設される根面板3上面に配置された板状の磁性アタッチメント用キーパー2(以下、単にキーパー2という。)とからなり、磁石構造体1とキーパー2との磁気吸引力により義歯を保持する。図1は歯根4に根面板3を埋設した例を示すが、歯根4が失われている場合にはインプラントによる人工の歯根に根面板を取り付けても良く、本発明はその場合も含む。
磁石構造体1は、例えば、円筒状の外形を有し、人工歯5を固定した樹脂製の義歯床6の底部に接着固定され、キーパー2は円板状の磁性材からなり、残存する歯根4に埋設される根面板3上に、例えば、鋳接法により固定される。磁石構造体1とキーパー2との間には、磁石構造体1の内部に配置された永久磁石102によって磁気吸引力が働き、義歯を歯根4側に吸着固定する。一方で、前記磁気吸引力以上の力を加えることにより義歯を取り外すことができる。歯根4上に置かれる根面板3は金合金のような耐食非磁性材料からなり、歯根4部を被覆保護する機能を有する。キーパー2は、磁石構造体1との間で所要の磁気吸引力を生じさせるために良好な軟磁特性を有するとともに、高い耐食性を有することが必要である。
(2) 磁石構造体
磁石構造体1は、図2に示すように、軟磁性ステンレス鋼製のカップ型ヨーク101の開口部に軟磁性ステンレス鋼製のディスクヨーク103と非磁性金属製のシールドリング104とが同心状に配置され、ディスクヨーク103とシールドリング104との間及びシールドリング104とカップ型ヨーク101との間が全周溶接されて永久磁石102が密封された構造を有する。カップ型ヨーク101及びディスクヨーク103は軟磁性ステンレス鋼からなり、シールドリング104は非磁性金属からなるため、永久磁石102を軸方向(ディスクヨーク103の面に垂直な方向)に着磁すると、磁力線はカップ型ヨーク101を通過し、シールドリング104をバイパスし、ディスクヨーク103に入る。このように永久磁石102が発生する磁束は磁石構造体1のディスクヨーク103側の空間(カップ型ヨーク101とディスクヨーク103との間)に分布するため、磁性体のキーパー2を近づけると、キーパー2はディスクヨーク103側に吸引される。
磁石構造体1は、実質的にNiを含有しないステンレス鋼からなるのが好ましく、特に耐食性の軟磁性フェライト系ステンレス鋼(SUS447J1、SUSXM27、SUS444等)からなるのが好ましい。前記フェライト系ステンレス鋼のCr含有量は17〜32質量%であるのが好ましく、24〜32質量%であるのがより好ましい。
磁石構造体1の外形は円筒形に限らず、楕円形でも四角形等の多角形でも良い。この場合、永久磁石2の形状も、必要に応じて磁石構造体1の外形に合わせて変更してもよい。
永久磁石102としては、残留磁束密度Brが他の永久磁石より大きく、より大きな吸引力が得られるネオジム磁石を用いるのが好ましい。ネオジム磁石の残留磁束密度Brは磁気回路を飽和させる必要があるため、1.3 T以上であるのが好ましく、1.35 T以上であるのがより好ましい。永久磁石2は、磁石構造体に組み込んだ後着磁される。
(3)キーパー
本発明のキーパー2は、図2に示すように、本体部21と、前記本体部21の表面に形成された10〜120μmの厚さの表層部22とからなる二重構造を有する。本体部21は、耐食性の軟磁性フェライト系ステンレス鋼からなり、表層部22はオーステナイト系ステンレス鋼からなる。このような構成のキーパー2は、フェライト系ステンレス鋼からなる板の表層部に窒素を固溶させることにより作製することができる。表層部22の窒素含有量は、ステンレス鋼のCr含有量により異なるが、0.5〜4.5質量%であるのが好ましい。
歯科用磁性アタッチメント用キーパーとして使用されているSUSXM27(26質量%Cr、1質量%Mo及び残部Fe)、SUS447J1(29質量%Cr、2質量%Mo及び残部Fe)等のフェライト系ステンレス鋼は、1100℃以上の温度で窒素を固溶し、体心立方格子構造のα相から面心立方格子構造のγ相に変態する。窒素固溶γ相(窒素含有量:0.5〜4.5質量%程度)はビッカース硬度が約350 HVであり、α相(フェライト相)のビッカース硬度(約200 HV)に対して1.5倍以上の硬度を有し、20%前後の伸びを有することから、α相(フェライト相)からなる本体部の表層部に窒素固溶γ相を形成した場合、γ相の表層部は応力に対してα相の本体部とともに弾性変形するものの塑性変形が起こりにくい。従って、このように窒素固溶相を表層部に形成してなるキーパーは、耐食性及び耐摩耗性に優れるとともに、応力による塑性変形に対して強く、その表面の状態を良好に保つことができる。
耐食性の軟磁性フェライト系ステンレス鋼のCr含有量は17〜32質量%であるのが好ましく、24〜32質量%であるのがより好ましい。フェライト系ステンレス鋼のNi含有量は0.2質量%以下であるのが好ましく、0.1質量%以下であるのがより好ましい。フェライト系ステンレス鋼は実質的にNiを含有しないのが好ましい。フェライト系ステンレス鋼としては、SUS447J1、SUSXM27、SUS444等を用いるのが好ましい。
キーパー2の外形は、円形(円板状)に限らず、楕円形でも四角形等の多角形でも良い。キーパー2の外形は、磁石構造体1の外形に合わせて設定するのが好ましい。
キーパー2は、図3(a)に示すように、本体部21の全ての表面、すなわち側面21a及び主面(軸方向に直交する面)21bに表層部22がほぼ均一に形成された構成としても良いし、図3(b)に示すように、前記本体部21の側面21aに形成された表層部22aが、主面21bに形成された表層部22bよりも厚い構成としてもよい。磁石構造体1とキーパー2とが接触する場合、磁石構造体1のエッジ部に対向するキーパー2周縁部にかかる応力が大きいので、特にこの周縁部に形成される表層部22を厚く構成するのが好ましい。前記本体部21の側面21aに形成された表層部22aの厚さは、主面21bに形成された表層部22bよりも20μm以上厚くすることが好ましい。さらに図3(c)に示すように、本体部21の側面21aにのみ表層部22を形成し、主面21bには表層部22を形成しない構成としても良い。この場合もやはり側面21aの表層部22は厚く形成するのが好ましい。なお本体部21の側面21aと、主面21bのうち磁石構造体1と対向する側の面とに表層部22を形成し、主面21bのうち磁石構造体1と対向する側とは反対の面(根面板3に固定される側)には表層部22を形成ない構成(図示せず)としても良い。前記本体部21の側面21aに形成された表層部22は10〜120μmの厚さを有するのが好ましく、主面21bに形成された表層部22は0〜50μmの厚さを有するのが好ましい。
(窒素固溶処理)
キーパー2は、耐食性の軟磁性フェライト系ステンレス鋼の板(例えば、円板)に窒素固溶処理を施してその表層部に窒素固溶相を形成しオーステナイト化することによって作製することができる。窒素固溶処理は、フェライト系ステンレス鋼を窒素雰囲気下(50 kPa以上)、及び1150〜1250℃で、例えば真空加熱装置中で加熱処理することにより行う。前記真空加熱装置内は、大気圧程度の窒素雰囲気とするのが操作上好ましく、80〜120 kPa程度の窒素雰囲気が好ましい。酸化物が生成するのを防ぐため、使用する窒素ガスには酸素や水を含有しないことが好ましい。加熱処理の温度が1150℃よりも低い場合、十分に窒素が固溶しにくくなり、1250℃よりも高い場合、窒素固溶速度を制御することが難しくなり、表層部22の厚さ(窒素固溶オーステナイト系ステンレス鋼の深さ)を一定に保つのが難しくなる。窒素固溶オーステナイト系ステンレス鋼は、フェライト相が十分にオーステナイト化する程度の窒素を含有する必要があり、オーステナイト相の窒素含有量は、ステンレス鋼のCr含有量により異なり、0〜4.5質量%であるのが好ましい。前記窒素含有量の下限は、0.5質量%であるのがより好ましい。
窒素固溶処理は、(a)炉の加熱室内にフェライト系ステンレス鋼を予め設置し加熱する方法、(b)所定の温度になってから炉の加熱室内にフェライト系ステンレス鋼を挿入する方法等があるがいずれでも構わない。ステンレス鋼を予め設置してから加熱する方法の場合、加熱室内に裁置されたフェライトステンレス鋼が均一に加熱昇温されるように、5〜20℃/min程度の昇温速度とするのが好ましい。また窒素ガスは加熱開始から炉内に充填しても、所定温度になってから充填しても構わない。
加熱処理の時間(最高温度での保持時間)は、窒素固溶処理によってフェライト系ステンレス鋼をどの程度の深さまでオーステナイト化するかによって適宜調節する。例えば、大気圧の窒素雰囲気下及び1200℃の条件で、100μm程度の深さまでのオーステナイト化は、60分程度の加熱処理を施すことによって可能である。
図3(c)に示すような、本体部21の側面21aのみ表層部22が形成されたキーパー2は、フェライト系ステンレス鋼からなる丸棒材に窒素固溶処理を施して、表面から一定の深さまでの部分をオーステナイト化し、それを輪切りにして円板を切り出すことにより得ることができる。
また図3(b)に示すような、本体部21の側面21aに形成された表層部22aが、主面21bに形成された表層部22bよりも厚くなるように構成されたキーパー2は、本体部21の側面21aにのみ表層部22が形成されたキーパー2(図3(c)を参照)を作製した後で、さらに二回目の窒素固溶処理を施して、表面から一定の深さまでの部分をオーステナイト化することによって得ることができる。
窒素固溶処理で形成されたオーステナイト相の組織を室温においても維持するためには、窒素固溶処理後の高温状態のステンレス鋼を急冷する。窒素固溶処理後のステンレス鋼を徐冷した場合には、生成したオーステナイト相の組織がフェライト相又はフェライト相とCr窒化物とが混合した組織へと変態してしまう。ステンレス鋼を急冷する方法としては、加熱装置内に冷却部を設置し窒素固溶処理後の素材をこの冷却部に移動し、窒素ガス、希ガス等の冷却用ガスを吹き込んで空冷する方法やこの冷却部を水冷する方法等が挙げられる。
窒素固溶処理の前に700℃以上窒素固溶処理温度以下及び大気圧の水素ガス雰囲気中でフェライト系ステンレス素材を処理し、表面の酸化物等を除去するのが望ましい。素材表面に酸化物等があるとそれらが窒素ガスの浸透のバリアとなり、窒素固溶処理の速度が低下するとともに、窒素固溶処理の深さが均一でなくなってしまうおそれがある。
窒素固溶処理の前に固溶処理温度で1〜3時間予備加熱処理を行うと、素材が粒成長し均一な厚さでのオーステナイト相を形成することができる。予備加熱の処理時間は素材の結晶粒の大きさに依存するため、素材に応じて設定すればよい。
このように窒素固溶処理を施して、表面から一定の深さまでの部分をオーステナイト化する方法によって得られたキーパー2の断面をエッチング処理し、光学顕微鏡で観察した写真を図4に示す。なおエッチング処理は、室温で飽和シュウ酸水溶液中に試料を+極として浸漬し、1〜1.2 Vの電圧をかけて10〜15秒通電することによって行った。図4に示すキーパー2は、上部が磁石構造体1への吸着面であり、左側が側面である。下部は窒素固溶処理が施されていない面である。図4から明らかなように、フェライト系ステンレス鋼からなる本体部21とオーステナイト系ステンレス鋼からなる表層部22との境界は実際には直線とはならずある程度入り組んだ曲線となっている。従って、表層部22の厚さは、表面から深さ方向に任意に10カ所の直線を引き、各直線部分において、表面からフェライト系ステンレス鋼の本体部21に交差する点までの長さL1〜L10を測定し、それらの平均値として算出する。
本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
実施例1
SUSXM27製の丸棒(直径4.0 mm)を厚さO.9 mmに輪切りに切断後、両面を#2000の砥粒で研磨し、厚さO.8 mmとした後、バレル研磨にて鏡面仕上げを行いディスク状の板を製作した。このディスクを、1200℃及び1気圧の窒素中に20分間保持し、窒素固溶処理を施し、円板状のキーパーを作製した。得られたキーパーの断面をエッチング処理し、光学顕微鏡で観察した写真を図4に示す。得られたキーパーの断面の窒素量を日本電子製EPMA JXA-8900を用いて測定したところ、図3(a)に示すように、円板の全ての表面に、表面から平均20μmの深さまで窒素固溶γ相(表層部)が形成されていた。この表層部の窒素含有量は3.5質量%であり、表面硬さ(ビッカース硬さ、荷重50 g)は350 HVであった。
得られたキーパーの耐久性は、ハイパースリム磁石構造体4013(NEOMAXエンジニアリング株式会社製)との咬合試験により評価した。咬合試験を行うための咬合試験装置200は、図7に示すように、磁石構造体1を取り付けるための下試料台201と、前記下試料台201と対向して配置された、キーパー2を取り付けるための上試料台202と、前記下試料台201を保持するための下プレート203と、前記上試料台202を保持するための上プレート204と、前記上プレート204に固定されたシャフト205と、前記シャフト205を摺動自在に保持するために下プレート203に設けられた軸受206と、前記上プレート204を下プレート203方向に一定圧力で押し下げて、前記磁石構造体1とキーパー2とを所望の圧力で咬合させるための加圧棒207と、前記加圧棒207の圧力を解除したときに前記上プレート204を上方向に押し上げるためのバネ208をと有する。
この咬合試験装置200にキーパーとハイパースリム磁石構造体4013とを取り付け、2秒/回のサイクルで荷重30 kgを繰り返しかけて咬合試験を行った。その結果、100万回の試験の後、磁石構造体には面荒れが見られたが、キーパーには面荒れ及び変形は見られなかった。
実施例2
SUSXM27製の丸棒(直径4.0 mm)を1200℃及び1気圧の窒素中に20分間保持し、窒素固溶処理を施した。処理後の丸棒の断面の窒素量を日本電子製EPMA JXA-8900を用いて測定したところ、表面から20μmの厚さで窒素固溶γ相(表層部)が形成されていた。この丸棒を厚さO.9 mmに切断後、両面を#2000の砥粒で研磨し、厚さO.8 mmとした後、バレル研磨にて鏡面仕上げを行い、図3(c)に示すような、円板の側面にのみ窒素固溶γ相(表層部)が形成された円板状のキーパーを製作した。得られたキーパーの断面をエッチング処理し、光学顕微鏡で観察した写真を図5に示す。この表層部の窒素含有量は3.4質量%であり、表面硬さ(ビッカース硬さ)は350 HVであった。
得られたキーパーとハイパースリム磁石構造体4013とを用いて、実施例1と同様にして咬合試験を行ったところ、100万回の試験の後、磁石構造体には面荒れが見られたが、キーパーには面荒れ及び変形は見られなかった。
実施例3
SUSXM27製の丸棒(直径4.0 mm)を1200℃及び1気圧の窒素中に45分間保持し、窒素固溶処理を施した。この丸棒を厚さO.9 mmに切断後、両面を#2000の砥粒で研磨し、厚さO.8 mmとした後、バレル研磨にて鏡面仕上げを行いディスク状の板を製作した。このディスクを、1200℃及び1気圧の窒素中に15分間保持し、再度窒素固溶処理を施し、円板状のキーパーを作製した。得られたキーパーの断面をエッチング処理し、光学顕微鏡で観察した写真を図6に示す。得られたキーパーの断面の窒素量を日本電子製EPMA JXA-8900を用いて測定したところ、図3(b)に示すように、円板の側面には、表面から平均100μmの深さまで窒素固溶γ相(表層部A)が形成されており、主面には、表面から20μmの深さまで窒素固溶γ相(表層部B)が形成されていた。この表層部Aの窒素含有量は3.5質量%、表面硬さ(ビッカース硬さ)は350 HVであり、表層部Bの窒素含有量は3.5質量%、表面硬さ(ビッカース硬さ)は350 HVであった。
得られたキーパーとハイパースリム磁石構造体4013とを用いて、実施例1と同様にして咬合試験を行ったところ、100万回の試験の後、磁石構造体には面荒れが見られたが、キーパーには面荒れ及び変形は見られなかった。
1・・・磁性アタッチメント磁石構造体
2・・・磁性アタッチメント用キーパー
3・・・根面板
4・・・歯根
5・・・人工歯
6・・・義歯床
21・・・本体部
21a・・・側面
21b・・・主面
22、22a、22b・・・表層部
101・・・カップ型ヨーク
102・・・永久磁石
103・・・ディスクヨーク
104・・・シールドリング
200・・・咬合試験装置
201・・・下試料台
202・・・上試料台
203・・・下プレート
204・・・上プレート
205・・・シャフト
206・・・軸受
207・・・加圧棒
208・・・バネ

Claims (6)

  1. 歯根に埋設された根面板に設置され、永久磁石の磁気吸引力により義歯を保持するため
    の歯科用磁性アタッチメント用キーパーであって、耐食性の軟磁性フェライト系ステンレス鋼からなる板状の本体部と、前記本体部の少なくとも側面に形成された10〜120μmの厚さのオーステナイト系ステンレス鋼からなる表層部と、前記本体部の主面に0〜50μmの厚さの表層部を有することを特徴とする磁性アタッチメント用キーパー。
  2. 請求項1に記載の磁性アタッチメント用キーパーにおいて、前記本体部の主面は表層部を有さないことを特徴とする磁性アタッチメント用キーパー。
  3. 請求項1又は2に記載の磁性アタッチメント用キーパーにおいて、前記表層部が窒素固溶相からなることを特徴とする磁性アタッチメント用キーパー。
  4. 請求項3に記載の磁性アタッチメント用キーパーにおいて、前記表層部の窒素含有量が0.5〜4.5質量%であることを特徴とする磁性アタッチメント用キーパー。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の磁性アタッチメント用キーパーにおいて、Ni含有量が0.2質量%以下であることを特徴とする磁性アタッチメント用キーパー。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の磁性アタッチメント用キーパーにおいて、Cr含有量が17〜32質量%であることを特徴とする磁性アタッチメント用キーパー。
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