次に本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。まず図1、図2を参照して、基板に電子部品を実装する電子部品実装装置1の構成を説明する。電子部品実装装置1は、電子部品を供給するパーツフィーダから電子部品を取り出して基板に移送搭載する機能を有するものであり、図2は、図1におけるA−A断面を部分的に示している。
図1において基台1aの中央にはX方向(基板搬送方向)に基板搬送機構2が配設されている。基板搬送機構2は上流側から搬入された基板3を搬送し、部品実装作業を実行するために設定された実装ステージに位置決めして保持する。基板搬送機構2の両側方には、部品供給部4A、4Bが配置されており、それぞれの部品供給部4A、4Bにはパーツフィーダを装着する複数のスロットを有するフィーダベース18a(図2参照)が設けられている。フィーダベース18aのスロットには、少なくとも1つのパーツフィーダであるテープフィーダ5が並列に装着されている。
ここで、一方(図1において下側)の部品供給部4Aには、電子部品実装装置1に電子部品を供給するテープフィーダ5およびディスペンサ6が、共通のフィーダベース18aのスロットに装着されている。テープフィーダ5は、電子部品を収納したキャリアテープをテープ送り方向にピッチ送りすることにより、以下に説明する部品実装機構の搭載ヘッドによる取り出し位置に供給する。
ディスペンサ6は、搭載ヘッドによって取り出された電子部品21の下面に、上向きに開いた吐出孔42から重力に抗して飛翔させた部品接合用の接着剤などのペーストPを下面側から塗布する機能を有している(図8参照)。なお、ここでは一方側の部品供給部4Aのみにディスペンサ6を配置した例を示しているが、他方側の部品供給部4Bについても同様の構成を適用してもよい。
基台1aの上面においてX方向の一方側の端部には、リニア駆動機構を備えたY軸移動テーブル7がY方向(X方向と直交する方向)に配設されており、Y軸移動テーブル7には、同様にリニア駆動機構を備えた2基のX軸移動テーブル8が、Y方向に移動自在に結合されている。2基のX軸移動テーブル8には、それぞれ搭載ヘッド9がX方向に移動自在に装着されている。
搭載ヘッド9は複数の保持ヘッドを備えた多連型ヘッドであり、それぞれの保持ヘッドの下端部には、図2に示すように、部品を吸着して保持し個別に昇降可能な部品吸着ノズル10が装着されている。搭載ヘッド9は部品吸着ノズル10を昇降させるZ軸昇降機構および部品吸着ノズル10をノズル軸廻りに回転させるθ軸回転機構を備えている。
Y軸移動テーブル7、X軸移動テーブル8を駆動することにより、搭載ヘッド9はX方向、Y方向に移動する。これにより2つの搭載ヘッド9は、それぞれ対応した部品供給部4A、4Bのテープフィーダ5の取り出し位置から電子部品を部品吸着ノズル10によって取り出す。本実施の形態では、搭載ヘッド9は、テープフィーダ5によって供給される電子部品21のほかに、以下に説明する一時使用部材17を、移送などの所定の作業処理のために保持する機能を有している。
下側の部品供給部4Aと基板搬送機構2との間には、部品認識カメラ13、廃棄ボックス15および一時使用部材供給部16が配設されており、上側の部品供給部4Bと基板搬送機構2との間には部品認識カメラ13およびノズルホルダ14が配設されている。一時使用部材供給部16は、複数の板状またはシート状の一時使用部材17を積層させて供給する機能を有している。
ここで一時使用部材17は、ディスペンサ6を作動させる過程において、一時的に使用される部材である。本実施の形態の電子部品実装装置1では、一時使用部材供給部16から供給された一時使用部材17を使用してディスペンサ6に対して所定の処理を実行する対ディスペンサ作業部を備えており、対ディスペンサ作業部は以下に説明する処理を実行する。
まず一時使用部材17は、ディスペンサ6の上方においてディスペンサ6の吐出孔42(図5参照)の上方に開口部17c(図4参照)が位置するように配置することにより、ディスペンサ6によって飛翔させたペーストPの飛散を低減する目的で用いられる。すなわちこの用途では一時使用部材17は電子部品21とディスペンサ6との間に配置され、吐出孔42の上方が開口部17cによって開口したシールド体17Aとして用いられる(図8参照)。
そしてこの場合には、対ディスペンサ作業部は、シールド体17Aとして用いられる一時使用部材17を交換する作業、すなわち未使用の一時使用部材17を一時使用部材供給部16から取り出してシールド体17Aとしてディスペンサ6に保持させ、使用済みのシールド体17Aを廃棄ボックス15に廃棄して回収する作業を実行する。
次に一時使用部材17は、ディスペンサ6から試験的に飛翔させたペーストPを受け止める計測用部材17Bとしての用途に用いられる。この場合には、対ディスペンサ作業部は、試し塗布の目的でディスペンサ6から試験的に飛翔させたペーストPを計測用部材17Bとしての一時使用部材17で受け止める作業を実行する(図9参照)。この作業では、計測用部材17Bを搭載ヘッド9によって保持してディスペンサ6の上方に移動させる作業が実行される。
さらに一時使用部材17は、ディスペンサ6の吐出孔42またはその周囲に付着するペーストPを拭き取る清掃用部材17Cとしての用途に用いられる。この場合には、対ディスペンサ作業部は、清掃用部材17Cとしての一時使用部材17でディスペンサ6の吐出孔42(図5参照)またはその周囲に付着するペーストPを拭き取る作業を実行する。この作業では、清掃用部材17Cを搭載ヘッド9によって保持してディスペンサ6の上方に位置させて、吐出孔42に対して摺動させる拭き取り動作が実行される。
上述のディスペンサ6を対象として実行される所定の処理では、搭載ヘッド9に一時使用部材17を保持する一時使用部材保持部を設け、この構成の搭載ヘッド9が対ディスペンサ作業部として機能する。一時使用部材保持部の具体例として、本実施の形態においては、搭載ヘッド9に部品吸着ノズル10と交換自在に装着され、一時使用部材17を吸着保持可能な部材保持ノズル10Aを用いるようにしている。なお、多連型ヘッドである搭載ヘッド9が有する保持ヘッドのうちの特定の一つを、一時使用部材17を保持するための専用の一時使用部材保持部として用いるようにしてもよい。
上述のように本実施の形態においては、一時使用部材17は、以下に説明する3通りの用途に用いられる。すなわち、一時使用部材17は、ディスペンサ6の上方において電子部品21との間に配置され、ディスペンサ6の吐出孔42の上方のみが開口してディスペンサ6によって飛翔させたペーストPの飛散を低減する目的で用いられるシールド体17Aとしての用途、ディスペンサ6から試験的に飛翔させたペーストPを受け止める計測用部材17Bとしての用途、さらにディスペンサ6の吐出孔42またはその周囲に付着するペーストPを拭き取る清掃用部材17Cとしての用途に用いることが可能となっている。そして本実施の形態においては、これらの3つの用途のうち、少なくとも2つの用途に一時使用部材17を用いるようにしている。
ノズルホルダ14は、搭載ヘッド9に装着される吸着ノズルを複数個収納する。これらの吸着ノズルには、電子部品21の吸着保持を目的として装着される部品吸着ノズル10のほか、一時使用部材17を吸着保持するための部材保持ノズル10Aが含まれている。搭載ヘッド9をノズルホルダ14にアクセスさせて所定のノズル交換動作を行わせることにより、搭載ヘッド9には保持対象に応じて部品吸着ノズル10または部材保持ノズル10Aが装着される。
廃棄ボックス15は、部品認識カメラ13による撮像結果を認識した結果、不良と判定された電子部品21や、使用後の一時使用部材17を回収する。すなわち回収対象の電子部品21や一時使用部材17を保持した搭載ヘッド9を廃棄ボックス15に移動させて廃棄動作を行わせることにより、これらの回収対象は廃棄ボックス15内に投棄されて回収される。したがって廃棄ボックス15は、使用された一時使用部材17を搭載ヘッド9によって回収する回収部として機能している。
部品供給部4A,4Bから電子部品21を取り出した搭載ヘッド9が部品認識カメラ13の上方を移動する際に、部品認識カメラ13は搭載ヘッド9に保持された状態の電子部品21を撮像する。この撮像結果を実装処理部52の画像認識52a(図11参照)によって認識処理することにより、電子部品21の識別や位置検出が行われる。また試し塗布後の計測用部材17Bを保持した搭載ヘッド9を部品認識カメラ13の上方に移動させて撮像した撮像結果をディスペンサメンテナンス処理部53の塗布量計測53cが備えた認識処理機能によって認識処理することにより、計測用部材17Bに試し塗布されたペーストPの塗布量や塗布位置を計測することができる。したがって部品認識カメラ13および塗布量計測53cは、計測用部材17Bとしての一時使用部材17に塗布されたペーストPを計測する計測部となっている。
搭載ヘッド9にはX軸移動テーブル8の下面側に位置して、それぞれ搭載ヘッド9と一体的に移動する基板認識カメラ12が装着されている。搭載ヘッド9が移動することにより、基板認識カメラ12は基板搬送機構2に位置決めされた基板3の上方に移動し、基板3を撮像する。この撮像結果を同様に実装処理部52の画像認識52a(図11参照)によって認識処理することにより基板3の位置が検出される。
図2に示すように、部品供給部4A、4Bにはパーツフィーダを装着する複数のスロット(図示省略)を有するフィーダベース18aが設けられている。部品供給部4A、4Bには、フィーダベース18aのスロットに予めパーツフィーダである複数のテープフィーダ5が着脱自在に装着された状態の台車18がセットされる。基台1aに設けられた固定ベース1bに対してフィーダベース18aをクランプすることにより、部品供給部4A、4Bにおいて台車18の位置が固定される。台車18には、電子部品21を保持したキャリアテープ20を巻回状態で収納する供給リール19が保持されている。供給リール19から引き出されたキャリアテープ20は、テープフィーダ5によって部品吸着ノズル10による部品取り出し位置までピッチ送りされる。
次に図3を参照して、前述構成の電子部品実装装置1で使用するディスペンサ6の構成および機能について説明する。図3において、ディスペンサ6の本体を形成する本体部6aはテープフィーダ5と装着互換性を有しており、台車18に設けられたフィーダベース18aが有するスロットに着脱自在に装着可能となっている。なお、本発明においてはディスペンサ6がフィーダベース18aに着脱自在となっていることは必須要件ではなく、フィーダベース18aの範囲外にテープフィーダ5とは別個に独立してディスペンサ6を配設するようにしてもよい。
本体部6aの前端部には、塗布対象のペーストを吐出する吐出機構30が、吐出孔42が設けられた吐出ノズル41(図5参照)を有する吐出ヘッド部30aを上面側に向けて配置されている。吐出ヘッド部30aの吐出孔42は、搭載ヘッド9によって取り出された電子部品21の下面に向かって上向きにペーストPを飛翔させる(図8参照)。
吐出孔42から上方に離れた位置には、吐出孔42の上方が開口した(図5に示す開口部17c参照)一時使用部材17がシールド体17Aとして装着されている。搭載ヘッド9によって取り出された電子部品21の下面にディスペンサ6によってペーストPを塗布する際には、電子部品21とディスペンサ6との間には吐出孔42の上方が開口したシールド体17Aが配置される。
吐出機構30の後方には、貯留したペーストPをエア圧力により吐出するシリンジ32が斜め姿勢で配置されており、シリンジ32の吐出側、加圧側にはそれぞれ吐出管31、加圧管33が接続されている。シリンジ32の内部には貯留されたペーストPを加圧するためのフロート部材32aが挿入されており、シリンジ32の外周面には所定レベルまでペーストPが減少したことを検出するための残量検出センサ32bが装着されている。
吐出管31は吐出ヘッド部30aの吐出ノズル41に繋ぎ込まれており、加圧管33はバルブユニット34に繋ぎ込まれている。バルブユニット34はさらにレギュレータ35を介してエア供給源36に接続されている。エア供給源36から供給されるエアはレギュレータ35によって規定のエア圧力に調圧され、バルブユニット34によってオンオフ操作されることにより、規定のバルブ開放時間だけ加圧管33を介してシリンジ32に送給される。ここで、エア圧力およびバルブ開放時間は、吐出機構30による単一ショットにおけるペーストPの吐出量を調整するための調整パラメータとして用いられる。
ディスペンサ6はペースト吐出動作を制御するためのコントローラ37を有しており、コントローラ37は、吐出機構30、残量検出センサ32b、操作パネル38、台車18、制御装置50と接続されている。コントローラ37は制御装置50からの制御指令、台車18からの動力供給によって制御を実行し、これにより吐出機構30によるペーストPの塗布動作を制御する。この塗布動作に伴ってペーストPが消費される過程において、コントローラ37は残量検出センサ32bの検出結果に基づきシリンジ32内におけるペーストPの減少を検出する。さらに操作パネル38を介して入力される手動操作指令によってコントローラ37による所定の制御操作が可能となっている。
次に図4を参照して、一時使用部材17および一時使用部材17を供給する一時使用部材供給部16について説明する。図4(a)に示すように、一時使用部材17は矩形の板状部材であり、上面側、すなわち搭載ヘッド9の部品吸着ノズル10に保持される側の層である第1の層17aと、下面側、すなわちディスペンサ6に装着された状態でディスペンサ6に対向して所定の処理作業に使用される側の層である第2の層17bとの少なくとも2層を有する構成となっている。
第1の層17aとしては、部材保持ノズル10Aによって安定して吸着保持が容易となるように、剛性を有する樹脂材などを上面が平滑な板状に成型したものが用いられる。第2の層17bとしては、ペーストPの試し塗布や拭き取りなどに使用することができるよう、不織布や紙などペーストPが付着または含浸し易い材質をシート状に成型したものが用いられる。
一時使用部材17には、シールド体17Aとしてディスペンサ6に保持された状態において吐出孔42の上方に位置する開口部17cおよび開口部17cをディスペンサ6に対して位置決めするための1対の位置決め穴17d、位置決め穴17eが設けられている。1対の位置決め穴17d、17eにおいて、位置決め穴17dはシールド体装着部45を構成する2つの位置合わせピン44のうちの基準ピンが所定精度の寸法公差で嵌合する基準穴であり、位置決め穴17eは2つの位置合わせピン44の位置誤差を考慮して形状を長穴とした従属穴となっている。
図4(b)は、上述の一時使用部材17を供給する一時使用部材供給部16の構成を示している。一時使用部材供給部16は平板形状の台座16aの上面に、一時使用部材17の外形形状に倣った複数の位置に位置保持ポスト16bを立設した構成となっており、これらの位置保持ポスト16bで囲まれた空間は、一時使用部材17の側面を位置保持ポスト16bで規制して積層状態で収納する収納空間となっている。すなわち一時使用部材供給部16は、供給対象の板状の一時使用部材17を複数枚積層させて供給する。このように、一時使用部材17を複数枚積層させて収納することにより、長時間の稼働に対応する必要枚数の一時使用部材17を、省スペースで収納効率よく供給することが可能となっている。
次に、図5〜図8を参照して、一時使用部材17をシールド体17Aとして用いる場合のディスペンサ6への装着およびシールド体17Aとしての機能について説明する。シールド体17Aは、前述構成のディスペンサ6を備えた電子部品実装装置1において、搭載ヘッド9に保持された電子部品21とディスペンサ6との間に配置されて用いられる。
図5において、ディスペンサ6の本体部6aの先端部には、ディスペンサ6を構成する吐出機構30が配置されている。吐出機構30の上面の吐出ヘッド部30aは、吐出孔42が設けられた吐出ノズル41を装着した構成となっている。吐出ヘッド部30aの両側方には、上面に位置合わせピン44が植設された保持ブロック43が配置されており、1対の保持ブロック43および位置合わせピン44は、シールド体17Aを保持するシールド体装着部45を構成する。シールド体17Aを吐出ヘッド部30aの上方に位置させて、位置決め穴17d、17eを位置合わせピン44に位置合わせすることにより、シールド体17Aの開口部17cは吐出ノズル41に設けられた吐出孔42の直上に位置する。
この状態でシールド体17Aを下降させて位置決め穴17d、位置決め穴17eを位置合わせピン44に嵌合させることにより、図7に示すように、シールド体17Aはディスペンサ6に設けられたシールド体装着部45に保持された状態となる。この状態では、シールド体装着部45は吐出ノズル41の吐出孔42から上方に離れた位置にシールド体17Aを保持している。
すなわち電子部品実装装置1においてフィーダベース18a(図2参照)のスロットに装着されたディスペンサ6は、吐出孔42から上方に離れた位置に吐出孔42に対応する部分が限定的に開口したシールド体17Aを有する構成となっている。このような構成とすることにより、シールド体17Aと吐出孔42とを離隔させて配置することができ、シールド体17Aに付着したペーストPによって吐出孔42やその周辺が汚損されることを防止することができる。
シールド体17Aのディスペンサ6への装着は、図6に示す動作過程によって行われる。まず図6(a)に示すように、搭載ヘッド9に一時使用部材17の保持のために準備された専用の部材保持ノズル10Aを装着する。すなわち搭載ヘッド9をノズルホルダ14にアクセスさせ、搭載ヘッド9を部材保持ノズル10Aに対して下降させてノズル交換動作を行わせる。
次いで搭載ヘッド9を図6(b)に示す一時使用部材供給部16に移動させ、一時使用部材供給部16に積層状態で収納された一時使用部材17に対して部材保持ノズル10Aを下降させて吸着動作を行わせる。これにより、図6(c)に示すように、搭載ヘッド9に装着された部材保持ノズル10Aによって一時使用部材17を吸着保持する。
そしてこの後、部材保持ノズル10Aによって一時使用部材17を保持した搭載ヘッド9をディスペンサ6の上方へ移動させる。次に、図6(d)に示すように、部材保持ノズル10Aをディスペンサ6へ向かって下降させて、位置合わせピン44をシールド体17Aの位置決め穴17d、位置決め穴17eに挿入して、一時使用部材17をシールド体17Aとしてディスペンサ6のシールド体装着部45に保持させる。すなわち図7に示すように、シールド体装着部45の位置合わせピン44を、シールド体17Aの位置決め穴17d、位置決め穴17eに嵌合させる。これにより、シールド体17Aの開口部17cは吐出ノズル41に設けられた吐出孔42の上方に位置する。
このように、ディスペンサ6はシールド体17Aとしての一時使用部材17を保持するシールド体装着部45を備え、シールド体17Aはシールド体装着部45に対して着脱自在となっている。これにより、使用によって汚損されたシールド体17Aを吐出孔42から離すことができ、使用後のシールド体17Aに付着したペーストPによる吐出孔42やその周辺の汚損を防止することができる。上述の構成において、部材保持ノズル10Aが装着されて一時使用部材17を吸着保持した状態で移動可能に構成された搭載ヘッド9は、ペーストPが付着したシールド体17Aをシールド体装着部45から取り外し、未使用のシールド体17Aを一時使用部材供給部16から取り出してシールド体装着部45に装着するシールド体交換部となっている。これにより、使用により汚損されたシールド体17Aの自動交換が可能となり、作業負荷の軽減が実現される。
上述のシールド体17Aの交換に際しては、以下のようなシールド体交換動作が実行される。すなわち使用済みのシールド体17Aを搭載ヘッド9によってディスペンサ6のシールド体装着部45から取り外して廃棄ボックス15まで移送し、廃棄ボックス15内に投棄することによりシールド体17Aを回収する。次いで未使用のシールド体17Aを搭載ヘッド9によって一時使用部材供給部16から取り出して、ディスペンサ6のシールド体装着部45に保持させる。
すなわち、上述のシールド体交換部は、ディスペンサ6のシールド体装着部45から取り外したシールド体17Aを回収する廃棄ボックス15と、未使用のシールド体17Aを供給するシールド体供給部(一時使用部材供給部16)と、シールド体17Aを移送するシールド体移送部としての搭載ヘッド9とを備えた構成となっている。シールド体移送部としての搭載ヘッド9は、搭載ヘッド9にシールド体17Aを保持する機能を有するシールド体保持部を設けて構成される。
シールド体保持部としては、電子部品21を保持する部品吸着ノズル10をシールド体17Aを吸着保持可能な部材保持ノズル10Aと交換する構成を用いることができる。このような構成でシールド体交換を行うことにより、電子部品実装装置1が備えた既存の機構を活用して、簡便・安価な構成でシールド体17Aの自動交換を実現することが可能となっている。
次に図8を参照して、ディスペンサ6に保持されたシールド体17Aの機能について説明する。図8は、電子部品実装装置1においてテープフィーダ5から搭載ヘッド9によって電子部品21を取り出して基板に移送搭載する動作過程において、搭載ヘッド9によって取り出された電子部品21の下面に部品接合用のペーストPをディスペンサ6によって塗布するペースト塗布動作を示している。このペースト塗布は、制御部50(図11参照)の実装処理部52による制御処理機能のうちのペースト塗布52bにより実行される。
本実施の形態においては、ディスペンサ6の吐出ヘッド部30aの上方にシールド体17Aとしての一時使用部材17をシールド体装着部45によって保持させた状態で、ディスペンサ6によるペースト塗布を行うようにしている。すなわち図8(a)に示すように、複数の部品吸着ノズル10のそれぞれに電子部品21を吸着保持した搭載ヘッド9をディスペンサ6に保持されたシールド体17Aの上方に移動させ、電子部品21が開口部17cの直上、すなわちディスペンサ6においてペーストPを吐出する吐出孔42の直上を順次通過するように、搭載ヘッド9を移動させる(矢印a)。
この搭載ヘッド9の移動において、図8(b)に示すように、上向きに開いた吐出孔42から重力に抗してペーストPが開口部17cを介して上向きに飛翔し(矢印c)、上方を矢印b方向に移動する電子部品21の下面に塗布される。このペーストPの塗布動作において、ディスペンサ6の吐出孔42から吐出されるペーストPは、必ずしも所望の液滴形状で所望の狙い位置に飛翔するとは限らない。例えば吐出孔42がペーストPの付着などによって汚損されている場合には、本来の狙い位置である直上方向から外れて飛散する場合がある。
このような場合にあっても、ディスペンサ6の吐出ヘッド部30aの上方にシールド体17Aを配置することにより、吐出孔42から吐出されて飛翔するペーストPは、狙い方向である直上方向に開口した開口部17cを介して飛翔するペーストPのみが、電子部品21に対して塗布される。これにより、シールド体17Aが配置されていない場合に生じていたペーストPの飛散による不具合、すなわち飛散したペーストPが電子部品21の本来の塗布対象部位から外れた位置に塗布されることによる導通不良、搭載ヘッド9の機構部分など付着させたくない部位に付着することによる動作不良などを有効に防止することが可能となっている。
なお、本実施の形態ではシールド体装着部45を吐出ヘッド部30aの上面に設けているがシールド体装着部45を構成する位置合わせピン44を吐出ノズル41と一体的に設けてもよい。このようにすることによりシールド体装着部45に装着されたシールド体17Aの開口部17cと吐出孔42との位置合わせをより高精度で実現することができる。
次に図9を参照して、一時使用部材17を計測用部材17Bとして使用することにより実行される試し塗布動作について説明する。本実施の形態においては、電子部品21に塗布されたペーストPの塗布量または塗布位置もしくはこれらのいずれもが所定範囲外の場合や、ディスペンサ6にペーストPを新たにセットした場合、さらにはペーストPの塗布が最後に実行されたタイミングから所定のインターバル時間以上が経過した場合など、予め規定された試し塗布実行条件にしたがって、計測用部材17BにペーストPを塗布する試し塗布を行うようにしている。この試し塗布の制御処理は、制御部50(図11参照)のディスペンサメンテナンス処理部53による制御処理機能のうちの試し塗布53aにより実行される。
本実施の形態においては、ディスペンサ6の吐出ヘッド部30aの上方にシールド体17Aとしての一時使用部材17をシールド体装着部45によって保持させた状態で、ディスペンサ6による試し塗布を行うようにしている。すなわち図9(a)に示すように、部材保持ノズル10Aによって計測用部材17Bとしての一時使用部材17を吸着保持した搭載ヘッド9を、ディスペンサ6に保持されたシールド体17Aの上方に移動させる。そして一時使用部材17に設定された試し塗布点が開口部17cの直上、すなわちディスペンサ6においてペーストPを吐出する吐出孔42の直上を順次通過するように、搭載ヘッド9を移動させる(矢印d)。
この搭載ヘッド9の移動において、図9(b)に示すように、上向きに開いた吐出孔42から重力に抗してペーストPが開口部17cを介して上向きに飛翔する(矢印f)。そして上方を矢印e方向に移動する計測用部材17Bとしての一時使用部材17の下面17fに設定された複数の試し塗布点に、ペーストPが順次塗布される。次いで試し塗布後の計測用部材17Bを保持した搭載ヘッド9を部品認識カメラ13の上方へ移動させ、ペーストPが塗布された計測用部材17Bを部品認識カメラ13によって撮像する。そしてこの撮像結果をディスペンサメンテナンス処理部53の塗布量計測53cが備えた機能によって認識処理することにより、ペーストPの塗布量の計測が行われる。
次に図10を参照して、一時使用部材17を清掃用部材17Cとして使用することにより実行される拭き取り動作について説明する。この拭き取り動作は、電子部品21や計測用部材17Bに塗布されたペーストPの塗布状態を画像認識52aによって認識した結果、塗布量や塗布位置の乱れなど吐出機構30からのペースト吐出の不安定に起因する不良が検出された場合に行われる。この拭き取りは、制御部50(図11参照)のディスペンサメンテナンス処理部53のうちの拭き取り53bの制御処理機能により実行される。
この拭き取りは、図10(a)に示すように、ディスペンサ6において吐出ヘッド部30aに設けられたシールド体装着部45からシールド体17Aを取り外して、吐出ノズル41の上面を露呈させた状態で行う。すなわち部材保持ノズル10Aが装着された搭載ヘッド9を一時使用部材供給部16(図1,図4参照)に移動させ、部材保持ノズル10Aに清掃用部材17Cとしての一時使用部材17を保持させる。
そして部材保持ノズル10Aによって清掃用部材17Cを保持した搭載ヘッド9をディスペンサ6の吐出ノズル41の上方に移動させ、清掃用部材17Cの下面を吐出孔42に接触させた状態で、搭載ヘッド9を水平方向に往復動させる(矢印g)。これにより、図10(b)に示すように、清掃用部材17Cとして使用される一時使用部材17の第2の層17bが吐出孔42の上面に接触し、搭載ヘッド9の往復動(矢印h)により、吐出孔42の上面に付着したペーストPなどの汚損物が第2の層17bによって拭き取られる。なおこの拭き取りにおける搭載ヘッド9の動作は、図10に示す一方向の往復動のほか、2方向の往復動や回転動作など、各種の動作を適宜組み合わせることができる。
次に図11を参照して、電子部品実装装置1の制御系の構成を説明する。図11において、電子部品実装装置1の動作制御を行う制御装置50は、基板搬送機構2、Y軸移動テーブル7、X軸移動テーブル8、搭載ヘッド9よりなる部品実装機構11、部品供給部4A,4Bに配設されたテープフィーダ5、ディスペンサ6、基板認識カメラ12、部品認識カメラ13に接続されている。
制御装置50が有する制御処理機能である処理部51は、実装処理部52、ディスペンサメンテナンス処理部53を備えている。実装処理部52は、電子部品実装装置1において前述の基板搬送機構2以下の各部を制御することにより、基板3に電子部品21を移送搭載して実装するための作業処理を実行させる制御処理機能である。すなわち実装処理部52は、画像認識52a、ペースト塗布52b、部品供給52c、一時使用部材交換52dの各処理を実行するための制御プログラムを備えている。さらにディスペンサメンテナンス処理部53は、ディスペンサ6を対象とするメンテナンスなどの所定の処理を実行させるための制御処理機能である。すなわちディスペンサメンテナンス処理部53は、試し塗布53a、拭き取り53b、塗布量計測53c、塗布量補正53dの各処理を実行するための制御プログラムを備えている。
画像認識52aは、基板認識カメラ12、部品認識カメラ13による撮像結果を認識処理するための制御処理である。ペースト塗布52bは、ディスペンサ6によりペーストPを吐出させて電子部品21の下面に塗布するための制御処理である。部品供給52cは、テープフィーダ5によって電子部品21を部品実装機構11に対して供給するための制御処理である。一時使用部材交換52dは、ディスペンサ6に装着されるシールド体17Aや、計測用部材17B、清掃用部材17Cとして搭載ヘッド9に保持された状態で使用される一時使用部材17を交換する処理を実行するための制御処理である。これにより未使用の一時使用部材17を一時使用部材供給部16から取り出し、使用済みの一時使用部材17を廃棄ボックス15に廃棄して回収する処理が搭載ヘッド9によって実行される。
試し塗布53aは、搭載ヘッド9に一時使用部材17を計測用部材17Bとして保持させてディスペンサ6の上方を移動させ、吐出孔42から吐出されたペーストPを計測用部材17Bに試し塗布する処理を行うための制御処理である。拭き取り53bは、搭載ヘッド9に一時使用部材17を清掃用部材17Cとして保持させてディスペンサ6に対して移動させることにより、清掃用部材17Cの第1の層17aによって吐出孔42やその周辺に付着したペーストPを拭き取る処理を行うための制御処理である。
塗布量計測53cは、試し塗布53aによってペーストPが試し塗布された計測用部材17B、すなわちディスペンサ6から試験的に飛翔させたペーストPを受け止めた一時使用部材17を、部品認識カメラ13によって撮像した撮像結果を認識処理することにより、一時使用部材17に塗布されたペーストPの塗布量を計測する処理を行うための制御処理である。塗布量補正53dは、塗布量計測53cによって取得されたペーストPの塗布量の計測結果に基づいて、ディスペンサ6の吐出機構30によるペーストPの単一ショットにおける塗布量を調整するための制御処理である。ここでは、単一ショットのペーストの塗布量に関するパラメータ(例えばシリンジ32を加圧するエア圧力、加圧時のバルブ開放時間など)を調整することにより、塗布量を調整するようにしている。
上述の制御処理機能のうち、実装処理部52の一時使用部材交換52d、ディスペンサメンテナンス処理部53の試し塗布53a、拭き取り53bの各処理は、電子部品実装装置1が備えた前述の対ディスペンサ作業部にそれぞれの所定の処理を実行させるための制御処理に対応している。
なお図1に示す構成では、一時使用部材17を供給する一時使用部材供給部16を基板搬送機構2と部品供給部4Aとの間に配置した例を示しているが、図12に示すように、ディスペンサ6に未使用のシールド体17Aとしての一時使用部材17を供給する一時使用部材供給部16を備えた構成としてもよい。すなわちこの例では、本体部6aの上面において、先端部に配置された吐出機構30に隣接する位置に、図4(b)に示す構成と同様の一時使用部材供給部16を配置している。これにより、一時使用部材供給部16を配置するスペースを削減することができるとともに、シールド体17Aが用いられる使用位置に近接して複数枚の一時使用部材17を積層して待機させることができ、シールド体17Aの交換を効率よく行うことができるという利点がある。
上記説明したように、本実施の形態に示す電子部品実装装置1は、パーツフィーダとしてのテープフィーダ5から搭載ヘッド9によって電子部品21を取出して基板3に移送搭載する電子部品実装装置1に、搭載ヘッド9によって取り出された電子部品21の下面に、上向きに開いた吐出孔42から重力に抗して飛翔させたペーストPを塗布するディスペンサ6を備えた構成において、板状もしくはシート状の一時使用部材17を積層させて供給する一時使用部材供給部16と、一時使用部材供給部16から供給された一時使用部材17を使用してディスペンサ6に所定の処理を実行する対ディスペンサ作業部とを備えるようにしている。
そして対ディスペンサ作業部による処理として、搭載ヘッド9によってディスペンサ6の上方において電子部品21との間に配置される一時使用部材17を、ディスペンサ6の吐出孔42の上方が開口しディスペンサ6によって飛翔させたペーストPの飛散を低減する目的でシールド体17Aとして交換して用いることにより、電子部品21の所望の位置以外や搭載ヘッド9などペーストPを付着させたくない位置にペーストPが接着するのを防止することができる。これにより、ペーストPの付着に起因する導通不良などの不具合を防止して、製品不良の発生を低減することができる。
また対ディスペンサ作業部による処理として、搭載ヘッド9によって保持された一時使用部材17をディスペンサ6から試験的に飛翔させたペーストPを受け止める計測用部材17Bとして用いることにより、従来技術において試し塗布に実際の電子部品を用いる場合に発生する不都合、すなわち使用した後に廃棄される電子部品の無駄を排除することができる。
さらに対ディスペンサ作業部による処理として、搭載ヘッド9によって保持された一時使用部材17をディスペンサ6の吐出孔42またはその周囲に付着するペーストPを拭き取る清掃用部材17Cとして用いることにより、汚損により付着したペーストPの拭き取り作業を自動で行うことが可能となっている。これにより、清掃等のメンテナンス作業における作業者の負荷を低減させて、保守清掃作業を効率よく適切に行うことができる。