本願による電力変換装置は、ブリッジ接続された半導体スイッチを有し、バッテリなどの蓄電装置の直流電力を交流電力に変換して発電電動機を駆動するように構成され、あるいは、発電電動機が発電した交流電力を直流電力に変換してバッテリなどの蓄電装置に供給するように構成された電力変換装置であって、特に、直流側端子間の短絡故障、例えば半導体スイッチの短絡破壊あるいは誤オンによるアーム短絡故障、または機械的接触による地絡短絡あるいは相間短絡等、を検出して電力変換装置を保護する保護手段を備えたものである。以下、図面を参照して実施の形態1による電力変換装置について説明する。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1による電力変換装置の全体構成を示すブロック図である。図1において、電力変換装置100は、電力変換回路101と、電力変換回路101を制御する制御回路110とを備えている。電力変換回路101は、複数の半導体スイッチにより構成された三相ブリッジ回路を備えており、直流と交流の双方向に電力変換を行うことができる。前述の三相ブリッジ回路は、周知のように、U相上アーム半導体スイッチと、U相下アーム半導体スイッチと、V相上アーム半導体スイッチと、V相下アーム半導体スイッチと、W相上アーム半導体スイッチと、W相下アーム半導体スイッチと、により構成されている。
U相上アーム半導体スイッチの一端とU相下アーム半導体スイッチの一端とは互いに直列接続され、V相上アーム半導体スイッチの一端とV相下アーム半導体スイッチの一端とは互いに直列接続され、W相上アーム半導体スイッチの一端とW相下アーム半導体スイッチの一端とは互いに直列接続されている。そして、U相上アーム半導体スイッチとU相下アーム半導体スイッチとの直列接続点からU相交流側端子Uが導出され、V相上アーム半導体スイッチとV相下アーム半導体スイッチとの直列接続点からV相交流側端子Vが導出され、W相上アーム半導体スイッチとW相下アーム半導体スイッチとの直列接続点からW相交流側端子Wが導出されている。
また、U相上アーム半導体スイッチの他端とV相上アーム半導体スイッチの他端とW相上アーム半導体スイッチの他端は、夫々正極側直流端子Pに接続され、U相下アーム半導体スイッチの他端とV相下アーム半導体スイッチの他端とW相下アーム半導体スイッチの他端は、夫々負極側直流端子Nに接続されている。
なお、電力変換回路101の三相ブリッジ回路を構成する半導体スイッチは、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)、あるいはパワートランジスタ(Power Transistor)、あるいはそれ以外の半導体スイッチでもよく、その種類は問わない。
以上のように構成された電力変換回路101において、そのU相交流側端子Uと、V相交流側端子Vと、W相交流側端子Wは、三相交流回転電機としての発電電動機107の電機子巻線のU相巻線端子とV相巻線端子とW相巻線端子に夫々接続されている。電力変換回路101の正極側直流端子Pは、第1の逆流防止用半導体素子108aを介して第1の蓄電装置103の正極端子に接続され、電力変換回路101の負極側直流端子Nは、第1の蓄電装置103の負極端子に接続されている。なお、106は、第1の蓄電装置103と電力変換回路101を接続する配線の配線インダクタンスを表している。
制御回路110は、電力変換回路101を駆動するための駆動回路113と、駆動回路113を制御するマイクロコンピュータ(以下、「マイコン」と称する)112と、電圧検知回路111と、電圧判定回路121と、時間検出回路122と、信号保持回路123と、を備えている。電圧判定回路121と、時間検出回路122と、信号保持回路123は、保護回路120を構成している。以上のように構成された制御回路110の詳細については後述する。
電源回路102は、電力変換回路101の正極側直流端子Pと負極側直流端子Nとの間に接続されている。第2の蓄電装置104は、第2の逆流防止用半導体素子108bを介して電源回路102の両端子間に接続されている。また、電力変換回路101の正極側直流端子Pと負極側直流端子Nとの間には、平滑用コンデンサ105が接続されている。平滑用コンデンサ105は、電力変換回路101の半導体スイッチのスイッチング動作などに起因するノイズを低減し、また電源電圧の変動を抑制する役割を担っており、必要に応じて前述の様に接続されて用いられる。
電力変換回路101は、第1の蓄電装置103から直流電力が供給される。制御回路110は、電源回路102を介して第1の蓄電装置103或いは第2の蓄電装置104から直流電力が供給される。電源回路102には、第1の逆流防止用半導体素子108aを介して第1の蓄電装置103が接続され、且つ第2の逆流防止用半導体素子108bを介して第2の蓄電装置104が接続されているので、制御回路110は、第1の蓄電装置103と第2の蓄電装置104のうち電圧の高い方の蓄電装置から電力が供給される構成となっている。
発電電動機107を電動機として動作させるときは、電力変換回路101は、第1の蓄電装置103から正極側直流端子Pと負極側直流端子Nを介して供給された直流電力を交流電力に変換し、その交流電力を交流側端子U、V、Wを介して発電電動機107の電機子巻線に供給する。他方、発電電動機107が車載エンジンなどにより駆動されて発電機として動作するときは、電力変換回路101は、発電電動機107から交流側端子U、V、Wを介して入力された発電電動機107からの交流電力を直流電力に変換し、その直流電力を正極側直流端子Pと負極側直流端子Nを介して第1の蓄電装置および第2の蓄電装置104に供給し、これ等の蓄電装置を充電する。
制御回路110に設けられたマイコン112は、駆動回路113に対する指令信号としての駆動回路制御信号eを駆動回路113に入力する。駆動回路113は、マイコン112から入力された駆動回路制御信号eに基づいて、電力変換回路101の複数の半導体スイッチのスイッチング動作を制御する制御信号gを発生して電力変換回路101に入力する。電力変換回路101は、駆動回路113から入力された制御信号gに基づいて複数の半導体スイッチがスイッチング制御されることで、前述の電力変換を行なう。
電圧検知回路111は、第1の蓄電装置103から電力変換回路101へ入力される入力電圧Vinを常に監視し、検知した入力電圧Vinに対応する入力電圧信号aを保護回路120に入力する。保護回路120は、電圧検知回路111から入力された入力電圧Vinに対応する入力電圧信号aが、予め定められた閾値電圧Vth以下の状態で且つ予め定められた判定時間T1以上継続した場合に、電力変換回路101の動作を停止させるように動作する。
更に詳しく述べれば、保護回路120は、入力電圧信号aから得られた入力電圧Vinが予め設定された閾値電圧Vth以下である場合に判定信号bを出力する電圧判定回路121と、電圧判定回路121から出力された判定信号bが入力され、判定信号bが電圧判定回路121から出力されている時間を検出し、判定信号bが出力されている時間が予め定められた判定時間T1以上継続した場合にエラー確定信号cを出力する時間検出回路122と、入力電圧Vinが予め定められた閾値電圧Vthより大きな値に復帰しても時間検出回路122が出力するエラー確定信号cを保持する信号保持回路123とを備える。前述の予め定められた閾値電圧Vth、および予め定められた判定時間T1については後述する。
信号保持回路123は、時間検出回路122から入力されたエラー確定信号cを保持するとともに、保持したエラー確定信号cに相当するエラー確定信号fを出力する。信号保持回路123から出力されたエラー確定信号fは、駆動回路113に入力される。駆動回路113は、信号保持回路123からエラー確定信号fが入力されることにより駆動動作を停止し、直ちに電力変換回路101の電力変換動作を停止させるように電力変換回路101の半導体スイッチをオフとする制御信号gを電力変換回路101に与える。その結果、電力変換回路101における半導体スイッチは直ちにオフとなり、電力変換回路101の電力変換動作は停止される。これにより、電力変換回路101は短絡事故による短絡電流が流れる前に早期に保護される。
また、マイコン112が信号保持解除信号dを常に出力することで、信号保持回路123は常に時間検出回路122からのエラー確定信号cの切り替わりを無効化することができる。従って、必要に応じて、マイコン112から信号保持解除信号dを常に出力することで、保護回路120の動作を無効化することが可能である。
次に、発電電動機107の駆動動作中に、三相ブリッジ回路の何れかの相の上アーム半導体スイッチと下アーム半導体スイッチが同時オン状態となり、あるいは半導体スイッチの短絡故障により、電力変換回路101の正極側直流端子Pと負極側直流端子Nとの間が短絡された短絡故障の場合の故障検出の例について、以下に説明する。
ここで、注目すべき点としては、次の2点が挙げられる。1点目は、同相の上アーム半導体スイッチと下アーム半導体スイッチに短絡故障が発生した場合には、入力電圧Vinが瞬時に低下することである。そして、2点目は、半導体スイッチに短絡故障が発生した場合、第1の蓄電装置103からの短絡電流が増加し、定常的には、非常に大きな短絡電流となるが、配線インダクタンス106の影響で、短絡故障発生時点から遅れて第1の蓄電装置103からの短絡電流が電力変換装置100に流れてくることである。
前述の注目すべき点に着目して電圧検知回路111により入力電圧Vinの電圧低下を監視すれば、電力変換回路101の正極側直流端子Pと負極側直流端子Nとの間が短絡される短絡故障の検出が可能となる。さらに、短絡故障の検出後、信号保持回路123からのエラー確定信号f、つまりエラー確定信号cにより駆動回路113を停止し、電力変換回路101における半導体スイッチを早期に遮断することによって、第1の蓄電装置103からの短絡電流が増大する前に、電力変換装置100の保護が可能となる。
図2は、実施の形態1による電力変換装置の短絡保護動作を示すフローチャートであって、保護回路120による短絡保護動作を示している。図2において、まず、ステップ201において電圧検知回路111により電力変換回路101に入力される入力電圧Vinを検出する。ステップ202では、電圧判定回路121により、入力電圧Vinが予め定められた閾値電圧Vth以下の状態であるか否かの判定を実施する。ステップ202での判定の結果、入力電圧Vinが閾値電圧Vth以下であった場合(Yes)は、ステップ203に進み、電圧判定回路121から判定信号bを出力する。一方、ステップ202での判定の結果、入力電圧Vinが閾値電圧Vthよりも大きい場合(No)は、電力変換回路101は正常に動作していると判断して元の状態に戻る。
ステップ204では、時間検出回路122により判定信号bが予め定められた判定時間T1以上継続されて出力されているか否かの判定を行なう。ステップ204での判定の結果、判定信号bが判定時間T1以上継続されて出力されたと判定された場合(Yes)は、時間検出回路122がエラー確定信号cを出力する。一方、ステップ204での判定の結果、判定信号bが判定時間T1以上継続されて出力されていないと判定された場合(No)は、電力変換回路101は正常に動作していると判断して元の状態に戻る。
次に、ステップ205では、信号保持回路123は、時間検出回路122から入力されるエラー確定信号cを予め定められた時間保持する。ステップ206では、マイコン112から信号保持解除信号dが出力されているか否かを判定し、信号保持解除信号dが出力されていなければ(No)、保護回路120は無効化されていないので、保持したエラー確定信号cに相当するエラー確定信号fを駆動回路113へ出力する。一方、ステップ206での判定の結果、マイコン112から信号保持解除信号dが出力されていると判定されれば(Yes)、信号保持回路123はエラー確定信号cを無効化して元の状態に戻る。
ステップ207では、エラー確定信号fが駆動回路113に入力され、電力変換回路101を停止する。このとき、保持したエラー確定信号cに相当するエラー確定信号fによる電力変換回路101の停止は、半導体スイッチに入力される駆動回路113からの制御信号gを直接オフすることにより行われるのが望ましい。なお、電力変換回路101の駆動制御のために、マイコン112とは別にドライバIC(Integrated Circuit)を設けてもよく、この場合は、ドライバICの動作を停止させることで電力変換回路101を停止させることができる。
以上述べたように、短絡電流が流れる前に保護回路120により短絡故障を早期に検出して半導体スイッチを遮断し、電力変換回路101を保護することが可能となる。
また、電圧検知回路111が出力する入力電圧信号aは、電圧判定回路121に入力されると同時にマイコン112へも入力される。マイコン112では、電圧検知回路111から入力された入力電圧信号aから得られた入力電圧Vinが予め定められた条件を満たした場合、例えば前述の保護回路120での保護動作と同様に、予め設定された閾値電圧Vth以下であり且つ予め定められた判定時間T1以上継続した場合に、短絡故障であると判定して駆動回路制御信号eにより駆動回路を停止させて電力変換回路101の半導体スイッチを遮断させることで、短絡電流が流入する前に早期に電力変換回路101を保護することもできる。
このように、短絡事故の発生時に、保護回路120の動作により直接、駆動回路113を停止させる場合と、マイコン112の処理によって駆動回路113を停止させる場合の二重系を構成することで、構成部品の不具合等により保護回路120が動作しない状況下でも、短絡故障を検出し電力変換回路101動作を保護することが可能である。
次に、電圧判定回路121で予め設定される閾値電圧Vthについて述べる。閾値電圧Vthは、電力変換回路101の駆動電圧の最小値V1未満で、且つ、半導体スイッチの短絡時における抵抗値と予め定められた電流から算出した電圧値V2よりも大きい値の範囲内に設定されることが好ましい。即ち、[V1≧Vth≧V2]とするのが望ましい。
正常動作時には、入力電圧Vinは大幅には低下しない。そこで、電圧判定回路121が判定信号bを出力する閾値電圧Vthを、電力変換回路101の正常動作時に入力電圧Vinが低下し得る最低の電圧値V1よりも小さい値に設定する。このように構成することで、正常動作時の短絡事故の誤検出を回避することができる。
図3は、実施の形態1による電力変換装置における入力電圧の波形図である。図3において、区間Aは電力変換回路101の正常動作時の区間、区間Bは電力変換回路101の短絡故障時の区間、区間Cは電力変換回路101の短絡故障後の区間、をそれぞれ示している。図3に示されるように、正常動作時の区間Aでは、入力電圧Vinは、半導体スイッチのオン/オフ切り替え時に、第1の蓄電装置103と電力変換回路101とを接続する配線の配線インダクタンス106、および浮遊容量に起因する電圧振動を伴うことがあるが、その電圧振動を含めて低下し得る最低の電圧値V1以上である。
図3に示すように、短絡故障時の区間Bにおいて、電力変換回路101における三相ブリッジ回路の何れかの相の上アーム半導体スイッチと下アーム半導体スイッチが同時オン状態となり、あるいは半導体スイッチの短絡故障により、電力変換回路101の正極側直流端子Pと負極側直流端子Nとの間が短絡された短絡故障が発生すると、入力電圧Vinは瞬時に電圧値V2以下に低下する。その後、区間Cに示すように、短絡後の入力電圧Vinは、短絡抵抗Rfailと保護すべき短絡電流Ifailとの積となる電圧値[Rfail*Ifail]に収束する。
このとき、短絡抵抗Rfailは、短絡発生直後は高く、短絡電流Ifailが流れるとともに徐々に低下する特性を有する。そのため、半導体スイッチの短絡発生直後の短絡抵抗値以下の任意の抵抗値と、半導体スイッチの定格電流値以下の電流値とから、前述の電圧値V2を設定するのが好ましい。
次に、時間検出回路122に設定する判定時間T1について述べる。判定時間T1は、電力変換回路101における半導体スイッチのスイッチング動作に起因する電圧振動、あるいは第1の蓄電装置103と電力変換回路101とを接続する配線の配線インダクタンス106、および浮遊容量から算出される電圧振動の周期T以上の値とすることが好ましい。
図4Aは、実施の形態1による電力変換装置の誤検出防止動作を説明する説明図、図4Bは、図4Aの部分拡大図であって、区間A―区間Bの間を拡大して示している。図4Bに示すように、時点401において入力電圧Vinが閾値電圧Vth以下となり、その時点401にて電圧判定回路121から判定信号bがハイレベルに立ち上がって出力される。その後、入力電圧Vinが上昇に転じて時点4011において閾値電圧Vthに達し、その時点4011で判定信号bがローレベルに変化して電圧判定回路121からの判定信号bは停止する。
即ち、入力電圧Vinは、時点401から判定時間T1が経過する時点402に至る前の時点4011で閾値電圧Vthに復帰し、従って、判定信号bは時点4011にて停止する。このように、判定時間T1が経過する前に判定信号bが停止するので、時間検出回路122は、時点401から判定時間T1が経過した時点402ではエラー確定信号cを出力しない。
次に、時点403において入力電圧Vinが再び閾値電圧Vth以下となり、その時点403において判定信号bが出力され、時点403から判定時間T1が経過した時点404までの間では、入力電圧Vinは継続して閾値電圧Vth以下であるので判定信号bが判定時間T1以上継続して出力される。このため、時間検出回路122は、時点403においてエラー確定信号cを出力する。
このように、判定時間T1を、電力変換回路101における半導体スイッチのスイッチング動作に起因する電圧振動、あるいは第1の蓄電装置103と電力変換回路101とを接続する配線の配線インダクタンス106、および浮遊容量から算出される電圧振動の周期T以上の値とすることで、電力変換回路101の正常動作時において電圧振動による電圧低下が発生して入力電圧Vinが閾値電圧Vthを下回った場合でも、短絡故障の誤検出を防ぐことができる。
また、時間検出回路122は、判定信号bを予め定められた時間だけ無効化する機能を有していてもよい。即ち、入力電圧Vinが閾値電圧Vth以下となってから、判定信号bを無効化する無効化時間T2を設定する。また、無効化時間T2を経過した後、予め定められた判定時間T3を設定する。判定信号bが出力されてから無効化時間T2を経過した後に入力電圧Vinが閾値電圧Vth以下の状態が判定時間T3以上継続することでエラー確定信号cを出力する。つまり、入力電圧Vinが閾値電圧Vth以下の状態になってから、無効化時間T2と判定時間T3の和から算出される時間[T2+T3]経過時にエラー確定信号cを出力する。
図5は、実施の形態1による電力変換装置にいて無効化時間を設けた場合の波形図である。図5において、無効化時間T2の期間中に入力電圧Vinが閾値電圧Vth以下となり判定信号bが出力されるが、この間、時間検出回路122はエラー確定信号cを出力しない。そして、無効化時間T2の経過後も入力電圧Vinが閾値電圧Vth以下であり判定信号bが判定時間T3以上継続して出力されるため、時間検出回路122はエラー確定信号cを出力する。
このとき、無効化時間T2は、電力変換回路101の半導体スイッチのスイッチングに起因する電圧振動、或いは第1の蓄電装置103と電力変換回路101とを接続する配線の配線インダクタンス106及び浮遊容量から算出される電圧振動の周期Tの1/2以上の値とすることが望ましい。
図6は、実施の形態1による電力変換装置において無効化時間を設けた場合の短絡保護動作を示すフローチャートである。図6において、まず、ステップ601において電力変換回路101に入力される入力電圧Vinを電圧検知回路111により検出する。ステップ602では、電圧判定回路121により、入力電圧Vinが予め定められた閾値電圧Vth以下の状態であるか否かの判定を実施する。ステップ602での判定の結果、入力電圧Vinが閾値電圧Vth以下であった場合(Yes)は、ステップ603に進み、電圧判定回路121から判定信号bを出力する。一方、ステップ602での判定の結果、入力電圧Vinが閾値電圧Vthよりも大きい場合(No)は、正常動作と判断して元の状態に戻る。
ステップ604では、判定信号bの入力から無効化時間T2を経過した後も入力電圧Vinが閾値電圧Vth以下であるか否か、即ち判定信号bが出力されているか否かの判定を行い、判定信号bが出力されていれば(Yes)、ステップ605へ移行する。一方、ステップ604での判定の結果、無効化時間T2の経過後に判定信号bが出力されていなければ(No)は、電力変換回路101は正常に動作していると判断し元の状態に戻る。
ステップ605では、時間検出回路122により判定信号bが予め定められた判定時間T3以上継続されて出力されているか否かの判定を行なう。ステップ605での判定の結果、判定信号bが判定時間T3以上継続して出力されたと判定された場合(Yes)は、時間検出回路122がエラー確定信号cを出力する。一方、ステップ605での判定の結果、判定信号bが判定時間T3以上継続されて出力されていないと判定された場合(No)は、電力変換回路101は正常に動作していると判断して元の状態に戻る。
次に、ステップ606では、信号保持回路123は、時間検出回路122から入力されるエラー確定信号cを予め定められた時間保持する。ステップ607では、マイコン112から信号保持解除信号dが出力されているか否かを判定し、信号保持解除信号dが出力されていなければ(No)、保護回路120は無効化されていないので、保持したエラー確定信号cに相当するエラー確定信号fを駆動回路113へ出力する。一方、ステップ206での判定の結果、マイコン112から信号保持解除信号dが出力されていると判定されれば(Yes)、信号保持回路123はエラー確定信号cを無効化して元の状態に戻る。
ステップ608では、保持したエラー確定信号cに相当するエラー確定信号fが駆動回路113に入力され、半導体スイッチを遮断して電力変換回路101を停止する。このとき、保持したエラー確定信号cに相当するエラー確定信号fによる電力変換回路101の停止は、半導体スイッチに入力される駆動回路113からの制御信号gを直接オフにして半導体スイッチを遮断することが望ましい。なお、駆動制御のためにマイコン112とは別にドライバICを設け、このドライバICの動作を停止させるようにしてもよい。
以上述べたように、無効化時間T2を設定することで、正常動作時において、電圧振動による電圧低下時に、入力電圧Vinが閾値電圧Vthを下回った場合でも短絡事故の誤検出を防ぐことができる。
さらに、判定時間T1、及び/又は、無効化時間T2と判定時間T3の和から算出される時間[T2+T3]は、短絡事故が発生してから保護すべき短絡電流が流れるまでの時間に比べて小さいため、前述のように時間[T2+T3]を判定時間として設定しても短絡電流を早期に遮断することができる。
次に、電力変換回路101を発電電動機107の制御に使用した場合について説明する。発電電動機107を発電動作させるときには、保護回路120を無効化し、電動機として動作させるときには、保護回路120を有効にすることが望ましい。そこで、発電動作時には、マイコン112が信号保持解除信号dを継続して出力するように構成することで、エラー確定信号cが駆動回路113に入力されないため、保護回路120を無効化することができる。また、駆動動作時つまり電動機としての動作時には、マイコン112から信号保持解除信号dを継続して出力させないことで、保護回路120を有効化し、短絡故障を検出した場合にエラー確定信号cを出力して保護回路120により駆動回路113の動作を停止させることができる。
なお、保護回路120を含む制御回路110は、電源回路102を介して、第1の蓄電装置103及び第2の蓄電装置104のうち電圧が高い側の蓄電装置から電力が供給される構成としている。そのため、正極側直流端子Pと負極側直流端子Nとの間の短絡によって第1の蓄電装置103の電圧が低下しても、第2の蓄電装置104から電力が供給されるため保護回路120が機能することができる。
前述の従来の電力変換装置によれば、短絡故障が発生していない正常時にもシャント抵抗に直流電流が流れることで電力損失が発生するため、電力変換装置の効率が低下し、また、その電力損失による過熱を防止するために放熱対策を施す必要が生じ、電力変換装置の大型化につながることになるが、本願の実施の形態1によれば、発電電動機107を駆動する際に、電力変換回路101の正極側直流端子Pと負極側直流端子Nと間の電圧低下を電圧検知回路111により監視することで、早期に短絡故障の検出を行うことができるので、前述の従来の装置のようにシャント抵抗など短絡電流検出のための電流センサは不要となり、電力変換装置の小型化および高効率化を図ることが可能となる。また、誤検出のリスクを低減し、確実に短絡故障を検出できる。
また、従来の電力変換装置は早期に短絡故障を検出することができず、短絡電流が電力変換回路に流れて半導体スイッチの正常動作領域を逸脱し2次故障を誘引する可能性があるが、本願の実施の形態1による電力変換装置は、短絡電流が電力変換回路に流れる前に短絡故障を検出して電力変換装置の保護を行なうことができ、従来の電力変換装置のように短絡電流が電力変換回路に流れて半導体スイッチの正常動作領域を逸脱し2次故障を誘引する可能性をなくすることができる。
実施の形態2.
次に、実施の形態2による電力変換装置について説明する。前述の実施の形態1では、入力電圧Vinが予め定められた閾値電圧th以下の状態が予め定められた時間以上継続した場合に、電力変換回路101を保護するように構成していたが、実施の形態2では、短絡故障時の入力電圧Vinの変化率が予め定められた閾値の範囲外となることで電力変換回路101の故障を検出して保護するように構成したものである。なお、実施の形態2による電力変換装置は、図1と同様の構成である。
図7は、実施の形態2による電力変換装置における入力電圧の波形図である。図7において、波形701は、電力変換回路101の短絡故障時に入力電圧Vinが急峻に低下する場合の波形を示している。波形702は、電力変換回路101の短絡故障時に入力電圧Vinが緩慢に低下する場合の波形を示している。さらに、波形703は、電力変換回路101の短絡故障を検出するための、入力電圧Vinの変化率の閾値を示す波形である。
例えば、電力変換回路101の正極側直流端子Pと負極側直流端子Nとの間に大容量のコンデンサが実装されている場合には、波形702のように短絡故障時に入力電圧Vinが緩慢に低下する。入力電圧Vinの変化率は、入力電圧Vinが第1の閾値電圧Vth1以下となる時点と入力電圧Vinが第2の閾値電圧Vth2以下となる時点との間の時間、即ち、入力電圧Vinが第1の閾値電圧Vth1と第2の閾値電圧Vth2との電圧差分だけ低下するに要する時間から算出される。即ち、入力電圧Vinが波形701に示すように急峻に低下するのであれば、入力電圧Vinの変化率は、時点t1から時点t2までの時間により算出される。一方、入力電圧Vinが波形702に示すように緩慢に低下するのであれば、入力電圧Vinの変化率は、時点t1から時点t4までの時間により算出される。
ここで、入力電圧Vinが第1の閾値電圧Vth1以下となる時点と入力電圧Vinが第2の閾値電圧Vth2以下となる時点との間の時間、即ち、入力電圧Vinが第1の閾値電圧Vth1と第2の閾値電圧Vth2との電圧差分だけ低下するに要する時間を、Tdと表記する。入力電圧Vinが波形701に示すように急峻に低下するのであれば、時点t1から時点t2までの時間が時間Tdであり、入力電圧Vinが波形702に示すように緩慢に低下するのであれば、時点t1から時点t4までの時間が時間Tdである。
時間検出回路122は、時間Tdが予め定められた判定時間T4以上[T4≦Td]である波形702の場合にエラー確定信号cを出力するように構成されている。入力電圧Vinの変化率の閾値を示す波形703は、時点t3にて第2の閾値電圧Vth2以下となり、その時間Tdは判定時間T4に等しくなる。なお、設定される第1の閾値電圧Vth1及び第2の閾値電圧Vth2、判定時間T4については後述する。
図8は、実施の形態2における電力変換装置における短絡保護動作を示すフローチャートである。図8において、ステップ801では電圧検知回路111により入力電圧Vinを検出する。ステップ802では、電圧判定回路121は入力電圧Vinが第1の閾値電圧Vth1以下であるか否かの判定を行い、Vin≦Vth1であれば(Yes)、ステップ803に進むと同時にステップ805に進む。ステップ805では、第1の判定信号b1を出力する。一方、ステップ802での判定の結果、入力電圧Vinが第1の閾値電圧Vth1よりも大きい場合(No)は、電力変換回路101が正常に動作していると判定し元の状態に戻る。
ステップ803では、電圧判定回路121は入力電圧Vinが第2の閾値電圧Vth2以下であるか否かの判定を行い、Vin≦Vth2であれば(Yes)、ステップ804に進んで第2の判定信号b2を出力する。一方、ステップ803での判定の結果、入力電圧Vinが第2の閾値電圧Vth2よりも大きい場合(No)は、電力変換回路101が正常に動作していると判定し元の状態に戻る。
ステップ804又はステップ805からステップ806に進むと、時間検出回路122は第1の判定信号b1が出力されてから第2の判定信号b2が出力されるまでの時間Tdを検出し、この時間Tdが判定時間T4以上であるか否かの判定を行なう。ステップ806での判定の結果、Td≧T4であれば(Yes)、ステップ808に進んでエラー確定信号cを出力する。また、ステップ806での判定の結果、Td≧T4でなければ(No)、ステップ807に移行する。
ステップ807又はステップ808からステップ809に進むと、信号保持回路123は、時間検出回路122から入力されるエラー確定信号cを予め定められた時間保持する。ステップ810では、マイコン112から信号保持解除信号dが出力されているか否かを判定し、信号保持解除信号dが出力されていなければ(No)、保護回路120は無効化されていないので、ステップ811に進む。一方、ステップ810での判定の結果、マイコン112から信号保持解除信号dが出力されていると判定されれば(Yes)、保護回路120は無効化されているので、信号保持回路123はエラー確定信号cを無効化して元の状態に戻る。
ステップ811では、保持したエラー確定信号cに相当するエラー確定信号fが駆動回路113に入力され、電力変換回路101を停止する。このとき、保持したエラー確定信号cに相当するエラー確定信号fによる電力変換回路101の停止は、半導体スイッチに入力される駆動回路113からの制御信号gを直接オフすることで半導体スイッチを遮断することが望ましい。なお、駆動制御のためにマイコン112とは別にドライバICを設け、このドライバICの動作を停止させるようにしてもよい。
次に、第1の閾値電圧Vth1と第2の閾値電圧Vth2について説明する。電圧判定回路121において、第1の閾値電圧Vth1と第2の閾値電圧Vth2は、駆動電圧の最小値未満、且つ、半導体スイッチの短絡時における抵抗値Rfailと平滑用コンデンサ105の内部抵抗Rcesrと予め定められた電流から算出した電圧よりも大きい値の範囲内に設定されることが望ましい。なお、実施の形態2では、第1の閾値電圧Vth1は第2の閾値電圧Vth2より大きな値とする。電圧判定回路121は、入力電圧Vinが第1の閾値電圧Vth1以下になると第1の判定信号b1を出力し、入力電圧Vinが第2の閾値電圧Vth2以下になると第2の判定信号b2を出力する。
また、時間検出回路122では、第2の判定信号b2が入力された状態で、且つ、第1の判定信号b1と第2の判定信号b2が入力された時刻の差に相当する時間Tdが判定時間T4以上であればエラー確定信号cを出力する。
ここで、判定時間T4は、半導体スイッチのスイッチング時に起因する電圧振動、或いは第1の蓄電装置103と電力変換回路101とを接続する配線の配線インダクタンス106及び浮遊容量から算出される電圧振動の周期Tの1/4以上の値が好ましい。このように判定時間T4を設定することで、電力変換回路101の正常動作時において、入力電圧Vinが電圧振動により低下し、第2の閾値電圧Vth2以下となった場合でも誤検出を防ぐことができる。
このように、入力電圧Vinの変化率を検出しエラー確定信号cを出力することで、短絡故障時に入力電圧Vinが緩慢に低下するような場合でも、電力変換回路101を早期に誤検出なく保護することができる。
以上のように、実施の形態2によれば、発電電動機107を駆動する際に、電力変換回路101の入力電圧が低下する変化率を検出することで、短絡故障の検出を行うことができる。その結果、シャント抵抗など短絡電流検出のための電流センサは不要となり、電力変換装置の小型化、高効率化を図ることが可能となる。また、誤検出のリスクを低減し、確実に短絡故障を検出できる。
また、従来の電力変換装置は早期に短絡故障を検出することができず、短絡電流が電力変換回路に流れて半導体スイッチの正常動作領域を逸脱し2次故障を誘引する可能性があるが、本願の実施の形態1による電力変換装置は、短絡電流が電力変換回路に流れる前に短絡故障を検出して電力変換装置の保護を行なうことができ、従来の電力変換装置のように短絡電流が電力変換回路に流れて半導体スイッチの正常動作領域を逸脱し2次故障を誘引する可能性をなくすることができる。
実施の形態3.
実施の形態3による電力変換装置は、直流側に蓄電装置が接続されブリッジ接続された半導体スイッチをする電力変換回路と、前記半導体スイッチを駆動制御する制御回路とを有する電力変換装置であって、前記制御回路は、前記半導体スイッチの駆動を指令する指令信号を発生するマイコンを備え、前記マイコンは、前記電力変換回路の入力電圧を監視し、前記入力電圧が予め定められた電圧以下の状態が予め定められた時間以上継続した場合、又は、前記入力電圧の変化率が予め定められた閾値以上の場合に、前記半導体スイッチを遮断する指令を発生して前記半導体スイッチを遮断させるようにしたものである。回路構成としては、図1から保護回路120を除外した構成となる。
実施の形態3による電力変換装置によれば、半導体スイッチの駆動を指令する指令信号を発生するマイコンに、電力変換回路の入力電圧を監視し、入力電圧が予め定められた電圧以下の状態が予め定められた時間以上継続した場合、又は、入力電圧の変化率が予め定められた閾値以上の場合に、半導体スイッチを遮断する指令を発生して前記半導体スイッチを遮断させる機能を持たせることで、短絡電流が電力変換回路に流れる前に短絡故障を検出して電力変換装置の保護を行なうことができ、従来の電力変換装置のように短絡電流が電力変換回路に流れて半導体スイッチの正常動作領域を逸脱して2次故障を誘引する可能性をなくすることができる。
また、シャント抵抗など短絡電流検出のための電流センサは不要となり、電力変換装置の小型化、高効率化を図ることが可能となる。また、誤検出のリスクを低減し、確実に短絡故障を検出できる。
本願は、様々な例示的な実施の形態及び実施例が記載されているが、1つ、または複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。従って、例示されていない無数の変形例が、本願に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。