JP6794629B2 - 電線の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、電線、ケーブル、及び電線の製造方法に関する。
近年では、ハロゲン元素や貴金属元素などの環境負荷物質の削減が世界規模で進められている。電線・ケーブルの絶縁被覆材料としては、ポリ塩化ビニル(PVC)を主体とするハロゲン樹脂組成物から、ハロゲンを含まず燃焼時にハロゲン系の有毒ガスを生じないノンハロゲン樹脂組成物への代替が進められている。ノンハロゲン樹脂組成物としては、例えば、ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)等のポリオレフィンを含むベースポリマと、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の金属水酸化物を含む難燃剤と、を有する材料が用いられている(例えば、特許文献1)。
特開2007−231240号公報
しかしながら、電線・ケーブルに難燃剤として含まれる水酸化マグネシウムは、酸化窒素(NOx)、酸化硫黄(SOx)、オゾン等の腐食性ガスと反応し、硝酸マグネシウム、硫酸マグネシウム等に変質する可能性があった。このような反応によって電線・ケーブル内に硝酸マグネシウム等が生じると、硝酸マグネシウム等が潮解性を有しているため、多湿環境下において、電線・ケーブルの表面にべたつき(粘着性)が生じる可能性があった。
この対策として、難燃剤としての水酸化マグネシウムを水酸化アルミニウムに変更することが考えられる。しかしながら、難燃剤として水酸化アルミニウムを用いると、難燃性が低下し、その要求を満たさない可能性があった。そのため、従来では、難燃性と耐酸性とを両立することが困難となっていた。
本発明の目的は、優れた難燃性と耐酸性とを両立することができる電線、ケーブル、及び電線の製造方法を提供することである。
本発明の一態様によれば、
導体と、
前記導体の外周を覆うように設けられ、水酸化マグネシウムを含むノンハロゲン樹脂組成物からなる絶縁層と、
前記絶縁層の外周を覆うように設けられ、ケイ素化合物を含むガスバリア層と、を有する電線が提供される。
本発明の他の態様によれば、
導体と、前記導体の外周を覆うように設けられる絶縁層と、を有する複数の電線と、
前記複数の電線の外周を覆うように設けられ、水酸化マグネシウムを含むノンハロゲン樹脂組成物からなるシースと、
前記シースの外周を覆うように設けられ、ケイ素化合物を含むガスバリア層と、を有するケーブルが提供される。
本発明の更に他の態様によれば、
導体の外周を覆うように、水酸化マグネシウムを含むノンハロゲン樹脂組成物からなる絶縁層を形成する工程と、
前記絶縁層の外周を覆うように、ケイ素化合物を含むガスバリア層を形成する工程と、を有する電線の製造方法が提供される。
本発明によれば、優れた難燃性と耐酸性とを両立することができる電線、ケーブル、及び電線の製造方法を提供することができる。
本発明の第1実施形態に係る電線の軸方向と直交する断面図である。 本発明の第1実施形態に係る電線の製造方法を示すフローチャートである。 ガスバリア層形成工程を示す模式図である。 本発明の第2実施形態に係るケーブルの軸方向と直交する断面図である。 耐酸性試験の一例を示す模式図である。 (a)は、比較例1,3,および4に係る電線の軸方向と直交する断面図であり、(b)は、比較例2に係る電線の軸方向と直交する断面図であり、(c)は、比較例5に係る電線の軸方向と直交する断面図である。
<本発明の第1実施形態>
(1)電線
本発明の一実施形態にかかる電線について、図1を用いて説明する。図1は、本実施形態に係る電線の軸方向と直交する断面図である。
図1に示すように、本実施形態に係る電線10は、例えば、ノンハロゲン難燃電線として構成され、導体110と、絶縁層120と、ガスバリア層300と、を有している。なお、本実施形態において「ノンハロゲン」とは、ハロゲン元素を含まないことを意味している。
(導体)
導体110は、例えば、純銅、または錫めっき銅からなっている。なお、導体110は、1本である場合に限られず、複数の素線が撚り合わされて構成されていてもよい。
(絶縁層)
絶縁層120は、導体110の外周を覆うように設けられた絶縁被覆として構成されている。本実施形態の絶縁層120は、例えば、ベースポリマ(ベース樹脂)と、難燃剤と、その他の添加剤と、を含むノンハロゲン樹脂組成物からなり、難燃性に優れるよう構成されている。以下、詳細を説明する。
(ベースポリマ)
絶縁層120を構成する樹脂組成物は、例えば、ベースポリマとして、ポリオレフィンを含んでいる。ベースポリマのポリオレフィンとしては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、直鎖状超低密度ポリエチレン(VLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン−アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−ブテン−1共重合体、エチレン−オクテン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体(EPDM)等が挙げられる。これらのなかから、1種類のポリオレフィンを単独で用いてもよいし、2種類以上のポリオレフィンを混合して用いてもよい。
(難燃剤)
絶縁層120を構成する樹脂組成物は、上記したベースポリマに加え、難燃剤を含んでいる。本実施形態の難燃剤は、例えば、水酸化マグネシウムである。これにより、要求される難燃性や絶縁性を満たすことができる。
難燃剤として用いられる水酸化マグネシウムは、天然鉱石を粉砕した天然水酸化マグネシウム、合成水酸化マグネシウムなどのうち、いずれのものであってもよく、その製法に限定されない。また、水酸化マグネシウムの粒径、表面処理の種類および表面処理量等の制限はない。
樹脂組成物における難燃剤としての水酸化マグネシウムの添加量(含有量)は、ベースポリマ100重量部に対して、10重量部以上300重量部以下である。水酸化マグネシウムの添加量が10重量部未満であると、電線10の難燃性が不充分となる可能性がある。これに対して、水酸化マグネシウムの添加量が10重量部以上であることにより、電線10の難燃性を確保することができる。一方で、水酸化マグネシウムの添加量が300重量部超であると、電線10の難燃性は向上するものの、電線10の機械的強度が著しく低下する可能性がある。これに対して、水酸化マグネシウムの添加量が300重量部以下であることにより、電線10の機械的強度が低下することを抑制することができる。
なお、難燃性等の特性を満たす範囲で、水酸化マグネシウムと他の難燃剤とが併用されていてもよい。具体的には、他の難燃剤として、水酸化アルミニウム等の無機水酸化物、メラミンシアヌレート等の窒素系難燃剤等が用いられていてもよい。
(その他の添加剤)
樹脂組成物には、上記した難燃剤に加え、適宜、架橋剤、架橋助剤、充填剤、安定剤、酸化防止剤、滑剤、可塑剤等が添加されていてもよい。
(ガスバリア層)
ガスバリア層300は、絶縁層120の外周を覆うように設けられ、例えば、ケイ素化合物を含んでいる。これにより、ガスバリア層300によって、酸化窒素(NOx)、酸化硫黄(SOx)、オゾン等の腐食性ガスが絶縁層120に接触または侵入することを抑制することができる。
ここで、ケイ素化合物を含むガスバリア層300を形成する方法としては、ゾル・ゲル法、ポリシラザン法、電気めっき法、大気圧プラズマ法などが挙げられるが、本実施形態では、ガスバリア層300は、例えば、有機ケイ素化合物を原料として、大気プラズマ法(大気プラズマCVD法)により形成されている。具体的には、有機ケイ素化合物としては、例えば、ヘキサメチルジシロキサン、テトラエトキシオルソシランなどが用いられる。なお、ガスバリア層形成工程については、詳細を後述する。
上記のようにして形成されるガスバリア層300は、アモルファスのケイ素ガラス層となっている。また、ガスバリア層300は、ケイ素(Si)を含むとともに、例えば、酸素(O)および炭素(C)を含んでいる。酸素(O)および炭素(C)は、原料の有機ケイ素化合物に由来している。また、ガスバリア層300は、原料の有機ケイ素化合物の反応によって、または原料の有機ケイ素化合物に由来して、少なくとも一部にシロキサン結合(Si−O−Si結合)を有している。
ガスバリア層300の厚さは、例えば、0.01μm以上1μm以下である。ガスバリア層300の厚さが0.01μm未満であると、ガスバリア層300の所定のガスバリア性が得られず、電線10の耐酸性が不十分となる可能性がある。これに対して、ガスバリア層300の厚さが0.01μm以上であることにより、ガスバリア層300の所定のガスバリア性を得ることができ、電線10の耐酸性を確保することができる。一方で、ガスバリア層300の厚さが1μm超であると、電線10の耐酸性を向上させることができるものの、電線10が白色化するなど、電線10の外観に悪影響が及ぶ可能性がある。これに対して、ガスバリア層300の厚さが1μm以下であることにより、電線10の耐酸性を維持することができるとともに、電線10の外観に悪影響が及ぶことを抑制することができる。
また、本実施形態のように大気プラズマ法によって形成したガスバリア層300は、ポリシラザン法などの湿式法によって形成した層よりも、緻密性および均一性に優れている。これにより、本実施形態のガスバリア層300では、ポリシラザン法などの湿式法によって形成した層よりもガスバリア性を向上させることができる。
(2)電線の製造方法
次に、図2を用い、本実施形態に係る電線の製造方法について説明する。図2は、本実施形態に係る電線の製造方法を示すフローチャートである。なお、ステップをSと略している。
(S110:導体用意工程)
まず、例えば、純銅、または錫めっき銅からなる導体110を用意する。
(S200:絶縁層形成工程)
次に、導体110の外周を覆うように絶縁層120を形成する絶縁層形成工程S200を行う。絶縁層形成工程S200は、例えば、ペレット材形成工程S210と、押出工程S220と、架橋工程S230と、を有している。
(S210:ペレット材形成工程)
EVA等を含むベースポリマと、水酸化マグネシウムを含む難燃剤と、その他の添加剤と、を配合し、加圧ニーダによって所定温度にて混練することで、ノンハロゲン樹脂組成物の混練材を形成する。次に、短軸押出機により、当該混練材をストランド状に押し出し、ノンハロゲン樹脂組成物の押出材を水冷により冷却する。そして、ペレタイザにより、ストランド状の押出材を切断し、ノンハロゲン樹脂組成物のペレット材を形成する。
(S220:押出工程)
次に、上記したノンハロゲン樹脂組成物のペレット材を押出機に投入し、ノンハロゲン樹脂組成物を導体110の外周に押出被覆する。これにより、導体110の外周を覆うように絶縁層120を形成することで、電線中間体(12)が形成される。
(S230:架橋工程)
次に、電線中間体(12)を巻き取り後、電線中間体(12)における絶縁層120に対して、電子線などの電離放射線を照射し、絶縁層120を架橋させる。
(S300:ガスバリア層形成工程)
次に、絶縁層120の外周を覆うようにガスバリア層300を形成するガスバリア層形成工程S300を行う。
ここで、図3において、ガスバリア層形成工程S300で使用される大気圧プラズマ処理装置(大気圧プラズマジェット装置)30について説明する。図3は、ガスバリア層形成工程を示す模式図である。
図3に示すように、本実施形態の大気圧プラズマ処理装置30は、大気圧中で所定ガスのプラズマを電線中間体12に照射するよう構成され、例えば、前処理用ノズル410と、本処理用ノズル420と、を有している。
前処理用ノズル410は、不活性ガスのプラズマを出射するよう構成されている。前処理用ノズル410は、例えば、電線中間体12に交差する方向に向けて設けられている。前処理用ノズル410には、不活性ガス供給管(不図示)を介して、不活性ガス供給源(不図示)が接続されている。ここでの不活性ガスは、例えば、窒素ガス、または希ガスである。また、前処理用ノズル410内には、前処理用プラズマ生成電極(不図示)が設けられている。前処理用ノズル410は、前処理用プラズマ生成電極に高周波の高電圧が印加されることで、不活性ガスのプラズマを生成し、不活性ガスのプラズマをノズル孔412から出射するようになっている。
一方、本処理用ノズル420は、原料ガスとしての有機ケイ素化合物のプラズマを出射するよう構成されている。本処理用ノズル420は、例えば、電線中間体12の進行方向において前処理用ノズル410よりも下流側に設けられるとともに、電線中間体12に交差する方向に向けて設けられている。本処理用ノズル420には、原料ガス供給管(不図示)を介して、原料ガス供給源(不図示)が接続されている。原料ガス供給源は、例えば、直接気化方式またはバブリング方式により有機ケイ素化合物のガスを供給するよう構成されている。ここでの有機ケイ素化合物としては、取り扱いの観点から、200℃以下で気化するような材料が好ましい。具体的には、有機ケイ素化合物は、上述のように、例えば、ヘキサメチルジシロキサン、テトラエトキシオルソシランなどである。また、本実施形態では、本処理用ノズル420には、キャリアガス供給管(不図示)を介して、キャリアガス供給源(不図示)が接続されている。ここでのキャリアガスは、例えば、窒素ガス、または希ガスである。不活性ガスのキャリアガスを有機ケイ素化合物と合わせて供給することで、キャリアガスをプラズマアシストガスとして機能させ、プラズマを安定化させることができる。また、本処理用ノズル420内には、本処理用プラズマ生成電極(不図示)が設けられている。本処理用ノズル420は、本処理用プラズマ生成電極に高周波の高電圧が印加されることで、有機ケイ素化合物および不活性ガスのプラズマを生成し、有機ケイ素化合物および不活性ガスのプラズマをノズル孔422から出射するようになっている。
上記した大気圧プラズマ処理装置30を用いて行われるガスバリア層形成工程S300は、例えば、前処理工程S310と、本処理工程S320と、を有している。なお、本実施形態では、これらの工程は、独立して行われるのではなく、一連の工程として連続的に行われる。
(S310:前処理工程)
まず、導体110の外周に絶縁層120が形成された電線中間体12を周方向に所定の回転速度で回転させつつ、電線中間体12の軸方向に沿って所定の処理速度(進行速度)で進行させる。そして、この状態で、前処理用ノズル410に不活性ガスを供給し、前処理用プラズマ生成電極に高周波の高電圧を印加することで、ノズル孔412から絶縁層120の外周面に向けて不活性ガスのプラズマを照射する。なお、不活性ガスのプラズマからラジカルが大気中の酸素に転移することで、大気中の酸素もプラズマとなる。これにより、電線中間体12において、絶縁層120の外周面に付着した有機物からなる不純物が除去され、絶縁層120の外周面が洗浄される。このとき、電線中間体12を周方向に回転させることで、絶縁層120の外周面の全体が洗浄される。
(S320:本処理工程)
次に、電線中間体12を周方向に回転させつつ軸方向に沿って進行させた状態で、本処理用ノズル420に有機ケイ素化合物のガスと不活性ガスとを供給し、本処理用プラズマ生成電極に高周波の高電圧を印加することで、ノズル孔422から洗浄後の絶縁層120の外周面に向けて有機ケイ素化合物および不活性ガスのプラズマを照射する。これにより、プラズマによって有機ケイ素化合物が分解されることで、ケイ素化合物を含むガスバリア層300が絶縁層120の外周面上に堆積される。このとき、電線中間体12を周方向に回転させることで、絶縁層120の外周面の全体に亘って、ガスバリア層300が形成される。
以上により、本実施形態の電線10が製造される。
(3)本実施形態にかかる効果
本実施形態によれば、以下に示す1つまたは複数の効果を奏する。
(a)本実施形態では、導体110の外周を覆うように設けられた絶縁層120が、水酸化マグネシウムを含むノンハロゲン樹脂組成物からなっている。絶縁層120が難燃剤として水酸化マグネシウムを含むことで、電線10を構成する材料をノンハロゲンとしつつ、電線10の難燃性を向上させることができる。また、絶縁層120の外周を覆うように、ケイ素化合物を含むガスバリア層300が設けられている。これにより、ガスバリア層300によって、酸化窒素(NOx)、酸化硫黄(SOx)、オゾン等の腐食性ガスが絶縁層120に接触または侵入することを抑制することができ、絶縁層120内の水酸化マグネシウムが硝酸マグネシウムや硫酸マグネシウム等に変質することを抑制することができる。つまり、電線10の耐酸性を向上させることができる。また、ガスバリア層300がケイ素化合物を含んでいることで、ガスバリア層300自体が難燃性を有している。このように難燃性を有するガスバリア層300によって絶縁層120の外周を覆うことで、電線10の難燃性をさらに向上させることができる。以上のようにして、本実施形態では、電線10の優れた難燃性と耐酸性とを両立することが可能となる。
(b)ガスバリア層300は、大気プラズマ法により形成されている。これにより、真空チャンバなどを用いることなく、インラインでガスバリア層300を形成することができる。その結果、ガスバリア層300を形成する装置(大気圧プラズマ処理装置30)を簡略化することができるとともに、電線中間体12を軸方向に沿って進行させながら連続的にガスバリア層300を形成することが可能となる。さらには、絶縁層120用の押出機と大気圧プラズマ処理装置30とを隣接させて配置することで、導体110に絶縁層120を押出被覆した直後に、押出機から出てきた電線中間体12に対してインラインでガスバリア層300を連続的に形成することが可能となる。
また、ガスバリア層300が大気プラズマ法により形成されることで、緻密性および均一性に優れたガスバリア層300を得ることができる。これにより、酸化窒素(NOx)、酸化硫黄(SOx)、オゾン等の腐食性ガスに対するガスバリア性を効果的に向上させることができる。
なお、参考までに、ポリシラザン法などの湿式法によってガスバリア層を形成することが考えられる。しかしながら、湿式法では、薄い膜厚で緻密性を有するガスバリア層を形成することが困難となる可能性がある。また、湿式法では、棒状の電線の外周に原料を塗布する際に、重力に従って原料が垂れてしまうため、ガスバリア層を均一に形成することが困難となる可能性がある。さらには、湿式法では、原料または溶媒に酸が含まれている場合や、反応副生成物として酸が生成される場合などに、絶縁層内に含まれる水酸化マグネシウムが変質してしまう可能性がある。これらの結果、湿式法では、水酸化マグネシウムを含む絶縁層を備える電線において、充分なガスバリア性を有するガスバリア層を安定的に形成することが困難となる可能性がある。
これに対して、本実施形態によれば、大気圧プラズマ法により、薄い膜厚であっても緻密性を向上させたガスバリア層300を形成することができる。また、大気圧プラズマ法により、有機ケイ素化合物のプラズマが絶縁層120の外周を覆うことで、ガスバリア層300を均一に形成することができる。さらには、ガスバリア層300を乾式法で形成することにより、絶縁層120内の水酸化マグネシウムが変質することを抑制することができる。これらの結果、本実施形態では、水酸化マグネシウムを含む絶縁層120を備える電線10において、充分なガスバリア性を有するガスバリア層300を安定的に形成することが可能となる。
(c)ガスバリア層形成工程S300では、本処理工程S320の前に、前処理工程S310を行う。具体的には、前処理工程S310において、大気圧プラズマ法により不活性ガスのプラズマを生成し、該不活性ガスのプラズマを絶縁層120の外周面に照射することで、絶縁層120の外周面を洗浄する。これにより、絶縁層120とガスバリア層300との密着性を向上させることができる。
<本発明の第2実施形態>
図4を用い、本発明の第2実施形態について説明する。図4は、本実施形態に係るケーブルの軸方向と直交する断面図である。
本実施形態では、複数の電線を有するケーブルがガスバリア層を有する点が第1実施形態と異なる。以下、第1実施形態と異なる要素についてのみ説明し、第1実施形態で説明した要素と実質的に同一の要素には、同一の符号を付してその説明を省略する。
(1)ケーブル
図2に示すように、本実施形態に係るケーブル20は、例えば、ノンハロゲン難燃ケーブルとして構成され、複数の電線14と、シース200と、ガスバリア層302と、を有している。
(電線)
ケーブル20に含まれる電線14は、例えば、導体112と、絶縁層122と、を有している。電線14における導体112の材料および絶縁層122のノンハロゲン樹脂組成物は、それぞれ、第1実施形態の電線10における導体110の材料および絶縁層120のノンハロゲン樹脂組成物と同様の材料を用いることができる。なお、本実施形態の絶縁層122を構成するノンハロゲン樹脂組成物は、難燃剤として水酸化マグネシウムを含んでいなくてもよい。
ケーブル20内には、複数の電線14が設けられている。複数の電線14は、互いに撚り合わせられている。ここでは、例えば、ケーブル20内には、3本の電線14が拠り合わせられて設けられている。
(シース)
シース200は、複数の電線14の外周を覆うように設けられている。シース200は、例えば、ノンハロゲン樹脂組成物からなっている。シース200のノンハロゲン樹脂組成物は、第1実施形態の電線10における絶縁層120のノンハロゲン樹脂組成物と同様の材料を用いることができる。すなわち、シース200を構成するノンハロゲン樹脂組成物は、EVA等を含むベースポリマと、水酸化マグネシウムを含む難燃剤と、架橋剤等のその他の添加剤と、を含んでいる。
(ガスバリア層)
ガスバリア層302は、シース200の外周を覆うように設けられている。本実施形態のガスバリア層302は、第1実施形態のガスバリア層300と同様に、ケイ素化合物を含んでいる。
(2)ケーブルの製造方法
次に、本実施形態に係るケーブルの製造方法について説明する。
(電線形成工程)
まず、導体112を用意する。そして、導体112の外周を覆うように絶縁層122を形成することで、電線14を形成する。次に、電線14を巻き取り後、所定の圧力の蒸気を電線14に当てることで、絶縁層122を架橋させる。
(シース形成工程)
次に、3本の電線14を撚り合わせながら押出機に導き、水酸化マグネシウムを含むノンハロゲン樹脂組成物を3本の電線14の外周に押出被覆する。これにより、3本の電線14の外周を覆うようにシース200を形成することで、ケーブル中間体が形成される。次に、ケーブル中間体を巻き取り後、所定の圧力の蒸気をケーブル中間体に当てることで、シース200を架橋させる。
(ガスバリア層形成工程)
次に、大気圧プラズマ処理装置30を用い、前処理工程として、不活性ガスのプラズマによりシース200の外周面を洗浄する。そして、本処理工程として、有機ケイ素化合物および不活性ガスのプラズマによりシース200の外周を覆うようにガスバリア層302を形成する。
以上により、本実施形態のケーブル20が製造される。
(3)本実施形態にかかる効果
本実施形態によれば、複数の電線14を有するケーブル20においても、水酸化マグネシウムを含むシース200の外周を覆うように、ガスバリア層302を設けることができる。これにより、ガスバリア層302によって、酸化窒素(NOx)、酸化硫黄(SOx)、オゾン等の腐食性ガスがシース200に接触または侵入することを抑制することができ、ケーブル20の耐酸性を向上させることができる。
<本発明の他の実施形態>
以上、本発明の一実施形態を具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
上述の実施形態では、電線10が1つの絶縁層120を有する場合について説明したが、電線は、複数の絶縁層を有していてもよい。この場合、複数の絶縁層のうち、少なくとも最も外側の絶縁層が、難燃剤として水酸化マグネシウムを含むノンハロゲン樹脂組成物からなっていればよい。さらに、電線は、必要に応じて、セパレータや、編組等のシールド層を有していてもよい。
上述の実施形態では、ケーブル20が1つのシース200を有する場合について説明したが、ケーブルは、複数のシースを有していてもよい。この場合、複数のシースのうち、少なくとも最も外側のシースが、難燃剤として水酸化マグネシウムを含むノンハロゲン樹脂組成物からなっていればよい。さらに、ケーブルは、必要に応じて、セパレータ、編組等のシールド層、または金属箔によるシールドテープを有していてもよい。
上述の実施形態では、電線10またはケーブル20が1つのガスバリア層300を有する場合について説明したが、電線またはケーブルは、複数のガスバリア層を有していてもよい。例えば、1つのガスバリア層にピンホールが形成されていたとしても、複数のガスバリア層を積層することで、絶縁層またはシースまでの酸性ガスの伝達経路を長くすることができる。
上述の実施形態では、大気圧プラズマ処理装置30において、前処理用ノズル410と本処理用ノズル420とが独立して設けられている場合について説明したが、前処理工程および本処理工程を行うノズルは1つであってもよく、前処理工程と本処理工程とを連続的ではなく別々に行ってもよい。
上述の実施形態では、大気圧プラズマ処理装置30において、前処理用ノズル410および本処理用ノズル420がそれぞれ1つずつ設けられている場合について説明したが、電線中間体の周囲に複数の前処理用ノズルおよび複数の本処理用ノズルが設けられていてもよい。例えば、電線中間体を挟んで両側に一対の前処理用ノズルおよび一対の本処理用ノズルが設けられていてもよい。この場合、電線中間体を周方向に回転させなくてもよい。
上述の実施形態では、本処理工程S320の前に前処理工程S310を行う場合について説明したが、本処理工程のみによってガスバリア層の密着性を確保できる場合は、前処理工程を行わなくてもよい。
次に、本発明に係る実施例を説明する。これらの実施例は本発明の一例であって、本発明はこれらの実施例により限定されない。
(1)電線またはケーブルの製造
以下の表1および表2のように、実施例1,2、比較例1〜4の電線、実施例3、比較例5のケーブルを作製した。なお、各配合の単位は、「重量部」である。
Figure 0006794629
Figure 0006794629
エチレン・酢酸ビニル共重合体 A:三井・デュポンポリケミカルズ社製 エバフレックス(登録商標) EV170
水酸化マグネシウム B:神島化学工業社製 マグシーズ(登録商標)S4
水酸化アルミニウム C:アルベマール社製 MARTINAL OL−107ZO
窒素系難燃剤 D:堺化学社製 MC−2OS(メラミンシアヌレート)
架橋助剤 E:新中村化学社製 NKエステルTMPT
滑剤 F:日本化成社製 スリパックス(登録商標)O
酸化防止剤 G:ADEKA社製 アデカスタブ(登録商標)AO−18
エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体 H:JSR社製 EP−51
過酸化物 I:日油社製 パーブチル(登録商標)P
安定剤 J:堺化学社製 亜鉛華3種
酸化防止剤 K:大内新興化学社製 ノクラック(登録商標)224
充填剤 L:日本ミストロン社製 ミストロンペーパータルク
エチレン・酢酸ビニル共重合体 M:ランクセス社製 レバプレン(登録商標)500
架橋助剤 N:日本化成社製 TAIC(登録商標)
着色剤 O:Cancarb社製 N990
[電線]
(実施例1)
表1に示した各配合剤を80℃に保持した加圧ニーダに投入し、160℃まで昇温しながら溶融混練することで、ノンハロゲン樹脂組成物の混練材を形成した。次に、短軸押出機により、当該混練材をストランド状に押し出し、ペレタイザにより、ストランド状の押出材を切断し、ノンハロゲン樹脂組成物のペレット材を形成した。
次に、上記したノンハロゲン樹脂組成物のペレット材を、シリンダ径80mmの押出機に投入した。そして、22AWG(外径0.76mm)の銅製の導体の外周にノンハロゲン樹脂組成物からなる絶縁層を形成することで、外径1.26mmの電線中間体を形成した。その際の押出機の設定温度は、シリンダ、ヘッド、ダイともに180℃とした。次に、電線中間体を巻き取り後、電線中間体における絶縁層に対して、5kGyの電子線を照射し、絶縁層を架橋させた。
次に、大気圧プラズマ処理装置として、日本プラズマトリート社製プラズマトリータを用い、電線中間体を周方向に回転させつつ軸方向に沿って進行させた状態で、ガスバリア層形成工程として、前処理工程と、本処理工程とを行った。なお、処理速度(進行速度)を30m/minとした。前処理工程では、窒素ガスを前処理用ノズルに供給し、前処理用ノズルから絶縁層の外周面に向けて窒素ガスのプラズマを照射することで、電線中間体における絶縁層の外周面を洗浄した。このときの前処理工程の条件としては、窒素ガスの流量を5l/minとし、前処理用ノズルのノズル孔の直径を4mmとし、ノズル孔から電線中間体までの距離を5mmとし、処理幅を20mmとした。次に、本処理工程では、予め気化させたヘキサメチルジシロキサンのガスと窒素ガスとを本処理用ノズルに供給し、本処理用ノズルから洗浄後の絶縁層の外周面に向けてヘキサメチルジシロキサンおよび窒素ガスのプラズマを照射することで、絶縁層の外周を覆うようにガスバリア層を形成した。このときの本処理工程の条件としては、ヘキサメチルジシロキサンの流量を0.4g/minとし、窒素ガスの流量を5l/minとし、本処理用ノズルのノズル孔の直径を4mmとし、ノズル孔から電線中間体までの距離を5mmとし、処理幅を20mmとした。これにより、ガスバリア層の厚さを0.08μm〜0.13μmとした。以上により、実施例1の電線を製造した。
(実施例2)
実施例2では、ガスバリア層形成工程の条件を除いて、実施例1と同様に電線を製造した。実施例2のガスバリア層形成工程では、処理速度(進行速度)を10m/minとした。これにより、ガスバリア層の厚さを0.25μm〜0.35μmとした。
(比較例1)
比較例1では、絶縁層の外周にガスバリア層を形成しない点を除いて、実施例1と同様に電線を製造した。
なお、図6(a)は、比較例1,3,および4に係る電線の軸方向と直交する断面図である。図6(a)に示すように、比較例1に係る電線70は、導体711と、導体711の外周を覆うように設けられノンハロゲン樹脂組成物からなる絶縁層712と、を有している。なお、上述のように、絶縁層712の外周にガスバリア層は設けられていない。
(比較例2)
比較例2では、絶縁層の外周にガスバリア層を形成する代わりに樹脂製の外層を形成する点を除いて、実施例1と同様に電線を製造した。
具体的には、表1に示した組成を有するノンハロゲン樹脂組成物のペレット材を、シリンダ径80mmの押出機に投入した。そして、22AWG(外径0.76mm)の銅製の導体の外周にノンハロゲン樹脂組成物からなる絶縁層を形成することで、外径1.06mmの電線中間体を形成した。その際の押出機の設定温度は、シリンダ、ヘッド、ダイともに180℃とした。次に、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)(NUC社製NUCG−5130)を、シリンダ径80mmの押出機に投入した。そして、上記した電線中間体の外周にLLDPEからなる外層を形成することで、外径1.26mmの電線を形成した。その際の押出機の設定温度は、シリンダ、ヘッド、ダイともに180℃とした。これにより、外層の厚さを98μm〜103μmとした。次に、電線中間体を巻き取り後、電線の絶縁層および外層に対して、5kGyの電子線を照射し、絶縁層および外層を架橋させた。以上により、比較例2の電線を製造した。
なお、図6(b)は、比較例2に係る電線の軸方向と直交する断面図である。図6(b)に示すように、比較例2に係る電線80は、導体811と、導体811の外周を覆うように設けられノンハロゲン樹脂組成物からなる絶縁層812と、絶縁層812の外周を覆うように設けられLLDPEからなる外層813と、を有している。なお、上述のように、外層813の外周にガスバリア層は設けられていない。
(比較例3)
比較例3では、絶縁層を構成するノンハロゲン樹脂組成物が難燃剤の水酸化マグネシウムを含まない点と、絶縁層の外周にガスバリア層を形成しない点とを除いて、実施例1と同様に電線を製造した。
なお、比較例3に係る電線は、図6(a)に示した比較例1に係る電線70と同様の構造を有している。
(比較例4)
比較例4では、絶縁層を構成するノンハロゲン樹脂組成物が難燃剤の水酸化マグネシウムの代わりに水酸化アルミニウムを含む点と、絶縁層の外周にガスバリア層を形成しない点とを除いて、実施例1と同様に電線を製造した。
なお、比較例4に係る電線は、図6(a)に示した比較例1に係る電線70と同様の構造を有している。
[ケーブル]
(実施例3)
表2に示した絶縁層用の各配合剤を含むノンハロゲン樹脂組成物を押出機に投入し、断面積22mmの導体の外周に厚さが1.2mmの絶縁層を形成することで、電線を形成した。次に、電線に対して、1.3MPaの水蒸気を2分間当てることで、絶縁層を架橋させた。次に、上記した電線を3本撚り合わせながら押出機に導き、表2に示したシース用の各配合剤を含むノンハロゲン樹脂組成物を押出機に投入し、3本の電線の外周にシースを形成することで、外径26mmのケーブル中間体を形成した。次に、ケーブルに対して、1.3MPaの水蒸気を3分間当てることで、シースを架橋させた。
次に、実施例1と同様のガスバリア層形成工程を行うことにより、シースの外周を覆うようにガスバリア層を形成した。実施例2のガスバリア層形成工程では、処理速度(進行速度)を10m/minとした。これにより、ガスバリア層の厚さを0.25μm〜0.35μmとした。以上により、実施例3のケーブルを製造した。
(比較例5)
比較例5では、シースの外周にガスバリア層を形成しない点を除いて、実施例3と同様にケーブルを製造した。
なお、図6(c)は、比較例5に係る電線の軸方向と直交する断面図である。図6(c)に示すように、比較例5に係るケーブル90は、導体911および絶縁層912を有する3本の電線91と、3本の電線91の外周を覆うように設けられノンハロゲン樹脂組成物からなるシース920と、を有している。なお、上述のように、シース920の外周にガスバリア層は設けられていない。
(2)電線およびケーブルの評価
実施例1,2、比較例1〜4の電線と、実施例3、比較例5のケーブルとに対して、以下の評価を行った。
[電線]
(難燃性)
実施例1,2、比較例1〜4の電線に対して、UL subject 758に準拠したVW−1試験を実施した。試験規格に合格するものを○(合格)とし、合格しないものを×(不合格)とした。
(耐酸性)
図5は、耐酸性試験の一例を示す模式図である。図5に示すように、100mlのビーカ500内に濃度30%の硝酸520を30g投入し、ビーカ500上部に実施例1,2、比較例1〜4のそれぞれの電線(10,70,80)を固定した。次に、この状態のビーカ500を30℃の環境下で24時間放置した。放置後、ガーゼ等で電線表面をふき取った際に、べたつき(粘着性)が生じないものを○(合格)とし、べたつきが生じたものを×(不合格)とした。
[ケーブル]
(難燃性)
実施例3、比較例5のケーブルに対して、JIS C3005に準拠した傾斜試験を実施した。試験規格に合格するものを○(合格)とし、合格しないものを×(不合格)とした。
(耐酸性)
図5に示すように、1000mlのビーカ500内に濃度30%の硝酸520を300g投入し、ビーカ500上部に実施例3、比較例5のそれぞれのケーブル(20,90)を固定した。次に、この状態のビーカ500を30℃の環境下で24時間放置した。放置後、ガーゼ等でケーブル表面をふき取った際に、べたつき(粘着性)が生じないものを○(合格)とし、べたつきが生じたものを×(不合格)とした。
(3)結果
[電線]
表1に基づいて、実施例1,2、比較例1〜4の結果を比較する。
比較例1では、難燃性試験が合格であった。比較例1での絶縁層が難燃剤として水酸化マグネシウムを含んでいたため、難燃性が向上したと考えられる。しかしながら、比較例1では、耐酸性試験が不合格であった。比較例1の電線にはガスバリア層が設けられていなかったため、耐酸性試験において、酸化窒素(NOx)が絶縁層に接触または進入し、絶縁層内の水酸化マグネシウムが硝酸マグネシウムに変質したことで、絶縁層表面にべたつきが生じたと考えられる。
比較例2では、耐酸性試験が合格であった。比較例2の電線は(水酸化マグネシウムを含まない)LLDPEからなる外層を有していたため、酸化窒素(NOx)が絶縁層に接触または侵入することが抑制されたことで、耐酸性が確保されたと考えられる。しかしながら、比較例2では、難燃性試験が不合格であった。比較例2の電線では、外層が難燃剤を含まなかったため、難燃性試験において、外層が燃焼してしまったと考えられる。
比較例3では、耐酸性試験が合格であった。比較例3の絶縁層は水酸化マグネシウムを含まなかったため、硝酸マグネシウム等が生じることが無く、電線の耐酸性が確保されたと考えられる。しかしながら、比較例3では、難燃性試験が不合格であった。比較例3の絶縁層は難燃剤として水酸化マグネシウムを含まなかったため、電線の難燃性が不充分であったと考えられる。
比較例4では、耐酸性試験が合格であった。比較例4の絶縁層は水酸化マグネシウムの代わりに水酸化アルミニウムを含んでいたため、水酸化アルミニウムは酸化窒素(NOx)によって変質し難く、電線の耐酸性が確保されたと考えられる。しかしながら、比較例4では、難燃性試験が不合格であった。比較例3の絶縁層に含まれる水酸化アルミニウムでは難燃性が不充分であったため、電線の難燃性が低下したと考えられる。
これらに対して、実施例1および実施例2では、難燃性および耐酸性がともに合格であった。実施例1および実施例2のように、絶縁層が難燃剤として水酸化マグネシウムを含むことで、電線の難燃性を向上させることができることを確認した。また、実施例1および実施例2のように、ガスバリア層を設けることで、酸化窒素(NOx)が絶縁層に接触または侵入することを抑制することができ、電線の耐酸性を向上させることができることを確認した。また、難燃性を有するガスバリア層によって絶縁層の外周を覆うことで、電線の難燃性をさらに向上させることができることを確認した。以上により、実施例1および実施例2では、電線の優れた難燃性と耐酸性とを両立できることを確認した。
[ケーブル]
表2に基づいて、実施例3、比較例5の結果を比較する。
比較例5では、難燃性試験が合格であった。比較例5でのシースが難燃剤として水酸化マグネシウムを含んでいたため、難燃性が向上したと考えられる。しかしながら、比較例5では、耐酸性試験が不合格であった。比較例5のケーブルにはガスバリア層が設けられていなかったため、耐酸性試験において、酸化窒素(NOx)がシースに接触または進入し、シース内の水酸化マグネシウムが硝酸マグネシウムに変質したことで、シース表面にべたつきが生じたと考えられる。
これに対して、実施例3では、難燃性および耐酸性がともに合格であった。実施例3のように、シースが難燃剤として水酸化マグネシウムを含むことで、ケーブルの難燃性を向上させることができることを確認した。また、実施例3のように、ガスバリア層を設けることで、酸化窒素(NOx)がシースに接触または侵入することを抑制することができ、シースの耐酸性を向上させることができることを確認した。また、難燃性を有するガスバリア層によってシースの外周を覆うことで、ケーブルの難燃性をさらに向上させることができることを確認した。以上により、実施例3では、ケーブルの優れた難燃性と耐酸性とを両立できることを確認した。
<本発明の好ましい態様>
以下に、本発明の好ましい態様について付記する。
(付記1)
本発明の一態様によれば、
導体と、
前記導体の外周を覆うように設けられ、水酸化マグネシウムを含むノンハロゲン樹脂組成物からなる絶縁層と、
前記絶縁層の外周を覆うように設けられ、ケイ素化合物を含むガスバリア層と、を有する電線が提供される。
(付記2)
付記1に記載の電線であって、好ましくは、
前記ガスバリア層は、大気圧プラズマ法により形成される。
(付記3)
付記1または2に記載の電線であって、好ましくは、
前記ガスバリア層は、酸化窒素、酸化硫黄、およびオゾンが前記絶縁層に接触または侵入することを抑制するよう構成される。
(付記4)
付記1〜3のいずれかに記載の電線であって、好ましくは、
30℃の環境下で24時間、濃度30%の硝酸上に曝したときに、前記ガスバリア層の外周面に粘着性を生じない。
(付記5)
付記1〜4のいずれかに記載の電線であって、好ましくは、
前記ガスバリア層は、酸素および炭素を含む。
(付記6)
付記1〜5のいずれかに記載の電線であって、好ましくは、
前記ガスバリア層の厚さは、0.01μm以上1μm以下である。
(付記7)
付記1〜6のいずれかに記載の電線であって、好ましくは、
前記絶縁層は、
ポリオレフィンを含むベースポリマと、
前記ベースポリマ100重量部に対して10重量部以上300重量部以下の前記水酸化マグネシウムと、を含む。
(付記8)
本発明の他の態様によれば、
導体と、前記導体の外周を覆うように設けられる絶縁層と、を有する複数の電線と、
前記複数の電線の外周を覆うように設けられ、水酸化マグネシウムを含むノンハロゲン樹脂組成物からなるシースと、
前記シースの外周を覆うように設けられ、ケイ素化合物を含むガスバリア層と、を有するケーブルが提供される。
(付記9)
本発明の更に他の態様によれば、
導体の外周を覆うように、水酸化マグネシウムを含むノンハロゲン樹脂組成物からなる絶縁層を形成する工程と、
前記絶縁層の外周を覆うように、ケイ素化合物を含むガスバリア層を形成する工程と、を有する電線の製造方法が提供される。
(付記10)
付記9に記載の電線の製造方法であって、好ましくは、
前記ガスバリア層を形成する工程では、
大気圧プラズマ法により前記ガスバリア層を形成する。
(付記11)
付記10に記載の電線の製造方法であって、好ましくは、
前記ガスバリア層を形成する工程では、
大気圧プラズマ法により有機ケイ素化合物のプラズマを生成し、該有機ケイ素化合物のプラズマを前記絶縁層の外周面に照射することで、前記ガスバリア層を形成する。
(付記12)
付記10又は11に記載の電線の製造方法であって、好ましくは、
前記ガスバリア層を形成する工程は、
大気圧プラズマ法により不活性ガスのプラズマを生成し、該不活性ガスのプラズマを前記絶縁層の外周面に照射することで、前記絶縁層の外周面を洗浄する前処理工程と、
洗浄された前記絶縁層の外周面を覆うように前記ガスバリア層を形成する本処理工程と、を有する。
(付記13)
付記12に記載の電線の製造方法であって、好ましくは、
前記本処理工程では、
前記有機ケイ素化合物のキャリアガスとして不活性ガスを前記有機ケイ素化合物とともに供給する。
(付記14)
本発明の更に他の態様によれば、
導体の外周を覆うように絶縁層を形成することで、電線を複数形成する工程と、
前記複数の電線の外周を覆うように、水酸化マグネシウムを含むノンハロゲン樹脂組成物からなるシースを形成する工程と、
前記シースの外周を覆うように、ケイ素化合物を含むガスバリア層を形成する工程と、を有するケーブルの製造方法が提供される。
10,14 電線
12 電線中間体
20 ケーブル
30 大気圧プラズマ処理装置(大気圧プラズマジェット装置)
110,112 導体
120,122 絶縁層
200 シース
300,302 ガスバリア層
410 前処理用ノズル
412 ノズル孔
420 本処理用ノズル
422 ノズル孔
500 ビーカ
520 硝酸

Claims (3)

  1. 導体の外周を覆うように、ベースポリマ及び水酸化マグネシウムを含むノンハロゲン樹脂組成物からなる絶縁層が形成された電線中間体を形成する工程と、
    前記絶縁層の外周を覆うように、ケイ素化合物を含むガスバリア層を形成する工程と、を有する電線の製造方法において
    前記電線中間体を形成する工程は、前記ベースポリマ100重量部に対して、前記水酸化マグネシウムを100重量部以上300重量部以下含有し、
    前記ガスバリア層を形成する工程は前記電線中間体を周方向に回転させつつ軸方向に沿って進行させた状態で、大気圧プラズマ法により前記ガスバリア層を形成する電線の製造方法。
  2. 前記ガスバリア層を形成する工程では、
    大気圧プラズマ法により有機ケイ素化合物のプラズマを生成し、該有機ケイ素化合物のプラズマを前記絶縁層の外周面に照射することで、前記ガスバリア層を形成する請求項に記載の電線の製造方法。
  3. 前記ガスバリア層を形成する工程は、
    大気圧プラズマ法により不活性ガスのプラズマを生成し、該不活性ガスのプラズマを前記絶縁層の外周面に照射することで、前記絶縁層の外周面を洗浄する前処理工程と、
    洗浄された前記絶縁層の外周面を覆うように前記ガスバリア層を形成する本処理工程と、を有する請求項又はに記載の電線の製造方法。
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