JP6781453B2 - ロボティックウエアを用いた同調制御による起立動作支援方法、起立動作支援用コンピュータプログラムおよびロボティックウエア - Google Patents

ロボティックウエアを用いた同調制御による起立動作支援方法、起立動作支援用コンピュータプログラムおよびロボティックウエア Download PDF

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Description

本発明は、高齢者、障害者等の動作支援を行うロボティックウエアに関する。さらに詳しくは、起立動作を適切に支援することのできるロボティックウエアを用いた同調制御による起立動作支援方法、起立動作支援用コンピュータプログラム、および当該方法により起立支援動作を行うロボティックウエアに関する。
現在、日本の総人口における65歳以上の高齢者の割合は、25.1%にまで達し、今後は介護者の不足や生産活動に参加する人口の減少などの問題に直面すると考えられる。これらの高齢化の問題を解決する手段として、近年、残存能力を維持しながら起立動作補助を行う装着型ロボット、非装着の装置などの開発が盛んに行われている。
起立動作アシスト装置としてはエアバッグ式椅子やばね付椅子(非特許文献1)、起立着座支援機能を有するリハビリ歩行器(非特許文献2)などが知られている。どちらも装着の手間がないという長所があるが、持ち運びには適していないとう短所がある。
装着型のアシスト装置としては、空気圧式ゴム人工筋を用いた装着型下肢支援装置(非特許文献3)、HAL(Hybrid Assistive Limb)(非特許文献4)、WPAL(Wearable Power0Assist Locomotor)(非特許文献5)などが知られている。これらは全て起立動作支援を行うことができる装置であるが、全て健常者の起立動作のパターンによって起立が行われるために、自身で、ある程度起立が行える使用者に対しては、拘束感に繋がってしまう。
一方、本発明者等は、これまでにリハビリテーションを目的とした拘束感の少ない非外骨格型のロボティックウエアの研究とその同調制御の研究を行ってきた。そして、装着者の運動機能の補助、歩行アシスト等を好適に行うために、神経振動子モデルを用いた同調制御により駆動されるロボティックスーツ、および、当該同調制御を適切に行うためのロボティックスーツの制御方法を提案している(特許文献1、2)。また、ロボティックスーツとして、人体の骨格を利用した非外骨格型のロボティックウエアを提案している(特許文献3)。
前田卓二,「高齢者用起立補助装置及び歩行力退化予防装置の開発」,高知工科大学学位論文 山田貴博、中後大輔、横田祥、橋本洋志,「起立/着座支援とリハビリ機能を有する歩行器の研究」,ロボティクス・メカトロニクス講演会講演概要2007 末長大輔、則次俊郎、高岩昌弘、佐々木大輔、福永敦史,「空気圧ゴム人工筋を用いたウエアラブル立ち上り動作支援ロボット」,ロボティクス・メカトロニクス講演会公講演概要集2007 佐藤帆紡等、「ロボットスーツHALによる移動介助動作の支援」、日本機械学会論文集、C編Vol.76(762)、227−235,2010 清水康裕ら、「対麻痺者の新しい歩行補助ロボットWPAL(Wearable Power-Assist Locomotor)に関する予備的検討」、日本リハビリテーション医学会、Vol.46,pp.527−533,2009
特開2012−66375号公報 特開2015−44240号公報 特開2015−2970号公報
上記のように、従来の起立動作支援のための装着型のアシスト装置(以下、これらを、「ロボティックウエア」と総称する。)は、健常者の起立動作のパターンによって起立が行われるために、自身である程度起立が行える装着者に対しては、当該装着者の本来の起立動作に追従して動作して起立支援用のアシスト力を発揮できるものではない。このため、装着者は過剰なアシスト力で起立動作を強制されるように感じる、あるいは、不十分なアシスト力のために起立動作に大きな負担に感じるなど、自身の意図する起立動作を行うことができず違和感あるいは拘束感を覚えることが多い。
本発明の課題は、装着者が違和感あるいは拘束感を覚えることなく自身の意図する起立動作に沿った動作形態で起立動作支援を行うことのできるロボティックウエアを用いた同調制御による起立動作支援方法、起立動作支援用プログラム、および、当該方法を用いて起立支援動作を行うロボティックウエアを提供することにある。
本発明者等は、装着者の歩行などの周期的な動作を支援するロボティックウエアの駆動制御に適用される神経振動子モデルを用いた同調制御方法に着目し、当該同調制御方法を今まで制御対象と見做されていなかった単周期運動の支援、特に起立動作の支援に適用することを着想した。この着想に基づき、ロボティックウエアに当該同調制御方法を適用して起立動作などの単周期運動の支援を行った場合の運動アシスト効果の評価を行った。これにより得た知見に基づき、本発明を想到するに至った。
すなわち、本発明は、装着者の股関節および膝関節のうち、少なくとも股関節を中心とする動作を支援するアシスト力を発生する股関節アクチュエータを備えたロボティックウエアを用いて、当該装着者の起立動作を支援する起立動作支援方法であって、
装着者の起立動作における当該装着者と前記股関節アクチュエータの出力部材との間に生じる相互作用トルクを所定のサンプリング周期で検出し、
前記股関節アクチュエータの起立支援動作を、前記相互作用トルクに基づき、神経振動子モデルを用いた同調制御によりフィードバック制御することを特徴としている。
本発明者等の実験によれば、単周期運動である装着者の起立動作の支援を、歩行動作等の周期運動を支援するために用いられる神経振動子モデルを用いた同調制御方法により行った場合においても、装着者の本来の起立動作に対してロボティックウエアの動作部分の軌道が引き込まれ、当該ロボティックウエアによって違和感あるいは拘束感の無い、あるいは少ない起立動作支援を行えることが確認された。
この場合、装着者の起立動作の速度に、股関節アクチュエータの起立支援動作の起立速度が一致するように、神経振動子モデルの自励振動の周波数を設定することができる。
このためには、事前に装着者の起立動作の速度を計測し、計測結果に基づき、起立動作における股関節アクチュエータの起立速度を予め設定すればよい。股関節アクチュエータの起立速度を装着者の起立動作の速度に合わせることにより、装着者の起立動作に対する股関節アクチュエータの起立動作支援動作の同調遅れを緩和でき、起立動作支援用のアシスト力をより与え易い状態を形成できる。
なお、股関節アクチュエータの起立速度を、装着者の起立動作の速度よりも遅い速度に設定することも可能であり、この場合には、同調制御における、装着者と股関節アクチュエータとの間の同調の度合いを表す同調性を高めに設定する。逆に、股関節アクチュエータの起立速度を、装着者の起立動作の速度よりも速い速度に設定する場合には、同調制御による同調性を下げることにより、装着者の動きに同調し過ぎずに、継続的に補助力を与える状態を形成できる。
股関節アクチュエータの速度の設定は次のようにして行うことができる。まず、装着者が起立動作を行った場合において、股関節アクチュエータの無負荷状態での角度変化と、当該股関節アクチュエータの出力部材に作用する前記相互作用トルクとを計測する。計測結果に基づき、相互作用トルクの最小値から最大値までの時間を算出する。算出した時間が、起立支援動作の開始から終了までの時間の半分の時間に相当するように、起立速度を設定する。
なお、本発明の起立動作支援方法は、起立動作支援に同調制御を用いているので、装着者自身の能力に応じてアシスト力の強弱を調整することができる。したがって、日常の起立動作支援の他に、リハビリ訓練などにおいて、効果的な訓練効果が得られることが期待される。例えば、リハビリ訓練初期に用いる場合においては、同調ゲインを下げて使用し、股関節アクチュエータがより主体的な運動を生成することで運動の教示を行うことや、起立訓練の身体的負担を軽減するように使用する。そして、回復の段階に応じて同調ゲインをたかめていくことで、最終的にはロボットの補助がほとんどない状態の自力での起立訓練につなげるといった利用法が考えられる。
本発明において、神経振動子モデルを用いた同調制御では、神経振動子モデルの出力に所定のオフセット値を加えて、股関節アクチュエータによる股関節の起立動作の目標角度を生成し、装着者の起立動作における屈曲動作の間はオフセット値を0に設定し、伸展動作においては、当該伸展動作の進行に伴って、オフセット値を0から所定の値まで漸増させることが望ましい。
このように、オフセット値を動作中に切り替える制御を取り入れることにより、着座中において、同調制御によって制御される股関節アクチュエータが初期位置(坐位の状態における角度位置)を維持したまま停止し、起立動作の屈曲動作を妨げることがない。また、起立動作の伸展時には、オフセット値を増加(加算)していくことで、股関節アクチュエータが装着者よりも先行して動作し、同調するだけでは発揮しにくいアシスト力を装着者に働かせることが可能になる。本発明者等は、検証実験により、股関節アクチュエータがより多く先行して動作を生成していることが確認できた場合に、膝関節の伸展に関わる大腿直筋や外側広筋に対して動作中の筋負担が軽減されたことを確認した。これは、起立補助制御が伸展動作の筋負担の減少効果を示すものであるといえる。
また、本発明において、神経振動子モデルを用いた同調制御での相互作用トルクに基づき得られる外部入力に対する神経振動子モデルの同調性を、装着者の起立動作における屈曲動作の間は相対的に高く設定し、装着者の起立動作における伸展動作の間は相対的に低く設定することが望ましい。
このような同調性を切り替えることにより、屈曲動作から伸展動作への切り替え時点における股関節アクチュエータの反発力を軽減し、違和感なく動作の切り替えができる制御が実現される。これは、本発明者等の検証実験により、屈曲動作開始時の相互作用トルクピーク値が小さくなったことから明らかになった。
上記のオフセット値可変化、および同調性の切り替えの起点となる、屈曲動作から伸展動作の切り替え時点、すなわち、伸展動作の開始時点は、装着者の起立動作における股関節角度を検出し、検出した股関節角度に基づき、認識することができる。
ここで、神経振動子モデルとして、以下の非線形1階連立微分方程式により規定される松岡モデルを用いることができる。
ここで、
xi:i番目の神経素子の内部状態を示す係数
g(xi):i番目の神経素子の出力
fi:i番目の神経素子の疲労状態を表す係数
Si:i番目の神経素子への定常入力
bi:i番目の神経素子の疲労係数
aij:i番目の神経素子からj番目の神経素子への結合係数(神経素子間の重み係数)Ta,Tr:時定数
Input:外部入力
Output:出力
であり、
相互作用トルクをτ_mutualとし、神経振動子モデルの入力信号を増幅することで当該神経振動子モデルの自励振動が入力信号に同調する度合いを調節するゲインを同調ゲインCとすると、神経振動子の外部入力Inputは、相互作用トルクτ_mutualおよび同調ゲインCを用いて、
Input=C*τ_mutual
ただし、0 ≦ C ≦ 1
で表される。
次に、本発明は、上記の方法によりロボティックウエアの股関節アクチュエータを制御するロボティックウエアを用いた起立動作支援用コンピュータプログラムであって、
装着者の起立動作における当該装着者と股関節アクチュエータの出力部材との間に生じる相互作用トルクを所定のサンプリング周期で取得し、取得した相互作用トルクに基づき、神経振動子モデルを用いた同調制御により、股関節アクチュエータの起立支援動作をフィードバック制御する同調制御機能を、コンピュータに実行させることを特徴としている。
ここで、同調制御機能には、相互作用トルクを、同調ゲインを用いて調整して外部入力を生成するゲイン調整機能、外部入力に同調する出力を算出する神経振動子モデルを用いた解析機能、および、解析機能によって得られる出力に基づき、股関節アクチュエータの起立支援動作を制御するPID制御機能が含まれている。
一方、本発明による、上記の方法により起立動作支援を行うロボティックウエアは、
装着者の股関節の部位に起立動作を支援するアシスト力を伝える股関節アクチュエータと、
装着者の起立動作における当該装着者と股関節アクチュエータの出力部材との間に生じる相互作用トルクを所定のサンプリング周期で検出する検出部と、
股関節アクチュエータの起立支援動作を、相互作用トルクに基づき、神経振動子モデルを用いた同調制御によりフィードバック制御する同調制御部と
を有していることを特徴としている。
この場合、装着者の起立動作の速度に、股関節アクチュエータの起立支援動作の起立速度が一致するように、神経振動子モデルの自励振動の周波数が設定されていることが望ましい。
また、装着者が起立動作を行った場合において計測された、股関節アクチュエータの無負荷状態での角度変化と、当該股関節アクチュエータの出力部に作用する前記相互作用トルクとに基づき、相互作用トルクの最小値から最大値までの時間を算出し、当該時間が、起立支援動作の開始から終了まで半分の時間となるように、起立速度を設定しておくことができる。
さらに、同調制御部は、神経振動子モデルの出力に所定のオフセット値を加えて股関節アクチュエータによる股関節の起立動作の目標角度を生成し、装着者の起立動作における屈曲動作の間はオフセット値を0に設定し、伸展動作においては、当該伸展動作の進行に伴って、オフセット値を0から所定の値まで漸増させることが望ましい。
また、同調制御部は、相互作用トルクに基づき得られる外部入力に対する神経振動子モデルの同調性を、装着者の起立動作における屈曲動作の間は相対的に高く設定し、装着者の起立動作における伸展動作の間は相対的に低く設定することが望ましい。
ここで、装着者の起立動作における股関節角度を検出する検出部を配置し、同調制御部は股関節角度に基づき伸展動作の開始時点を認識することができる。例えば、股関節アクチュエータの構成要素であるモータに内蔵のエンコーダを検出部として用いることができる。
本発明において、ロボティックウエアは、装着者の膝関節の部位に、起立動作を支援するアシスト力を伝える膝関節アクチュエータを備えている場合がある。この場合には、股関節側と同様に、装着者の起立動作における当該装着者と膝関節アクチュエータの出力部材との間に生じる膝側相互作用トルクを所定のサンプリング周期で検出する膝側検出部と、膝関節アクチュエータによる膝関節に対する起立支援動作を、膝側相互作用トルクに基づき、神経振動子モデルを用いた同調制御によりフィードバック制御する膝側同調制御部とを配置すればよい。
さらに、同調制御における神経振動子モデルは、上述の式で表される非線形1階連立微分方程式により規定されるものを用いることができる。
この場合、同調制御部は、相互作用トルクを、同調ゲインを用いて調整して外部入力を生成するゲイン調整部、外部入力に同調する出力を算出する神経振動子モデルを用いた解析部、および、解析部の出力に基づき、股関節アクチュエータの起立支援動作を制御するPID制御部から構成することができる。
本発明を適用可能な非外骨格型の下肢用のロボティックウエアの一例を示す正面図および側面図である。 左側の股関節ユニットを示す分解斜視図およびアクチュエータを示す説明図である。 ロボティックウエアの制御装置を示すブロック図である。 神経振動子モデルを示す説明図である。 同調制御の処理の流れを示す説明図である。 起立動作における角度変化と相互作用トルクの変化のグラフである。 入力基準波形に対する出力の位相遅れのグラフである。 入力信号と出力信号の位相差のグラフである。 股関節ユニットの減速機の一例を示す説明図である。 起立動作の実験の様子を示す図面代用写真である。 起立動作における角度および相互作用トルクの変化のグラフである。 起立動作における角度および相互作用トルクの変化のグラフである。 起立動作における角度および相互作用トルクの変化のグラフである。 筋電位の測定結果のグラフである。 筋電位の測定結果のグラフである。 起立動作における角度および相互作用トルクの変化のグラフである。 起立動作における角度および相互作用トルクの変化のグラフである。 起立動作における角度および相互作用トルクの変化のグラフである。 筋電位の測定位置を示す説明図である。 筋電位の測定結果のグラフである。 起立動作の角度変化のグラフである。 起立動作の相互作用トルクの変化のグラフである。 ロボットまたは人間先行時の判断基準を示す説明図である。 ロボット先行時の相互作用トルク積分値のグラフである。 起立動作における伸展時間率のグラフである。 関節角度の正負の方向を示す説明図である。 起立動作における股関節および膝関節の角度変化のグラフである。 起立動作の各段階の姿勢を示す説明図である。 神経振動子の出力波形の一例のグラフである。 神経振動子の出力にオフセットを掛けた状態のグラフである。 人間が停止した場合のロボットの角度と相互作用トルクの変化のグラフである。 実施例2における軌道生成法2を示す説明図である。 軌道生成法2の制御フローを示すフローチャートである。 実験条件を示す一覧表である。 軌道生成法1における同調ゲインの違いにおける各関節に生じる相互作用トルクと関節角度の変化のグラフである。 軌道生成法1における同調ゲインの違いにおける各関節に生じる相互作用トルクと関節角度の変化のグラフである。 軌道生成法1における同調ゲインの違いにおける各関節に生じる相互作用トルクと関節角度の変化のグラフである。 軌道生成法1における同調ゲインの違いにおける各関節に生じる相互作用トルクと関節角度の変化のグラフである。 軌道生成法2における設定速度の違いにおける各関節に生じる相互作用トルクと関節角度の変化のグラフである。 軌道生成法2における設定速度の違いにおける各関節に生じる相互作用トルクと関節角度の変化のグラフである。 軌道生成法2における設定速度の違いにおける各関節に生じる相互作用トルクと関節角度の変化のグラフである。 軌道生成法2における設定速度の違いにおける各関節に生じる相互作用トルクと関節角度の変化のグラフである。 補助区間の割合のグラフである。 平均補助トルクのグラフである。 起立軌道のグラフである。 軌道生成法1における最大屈曲角度と最大伸展角度のグラフである。 軌道生成法2における最大屈曲角度のグラフである。 軌道生成法2における最大伸展角度のグラフである。 軌道生成法2における最大伸展角度のグラフである。 軌道生成法1における被験筋に対する筋電位の%MVCのグラフである。 軌道生成法1における被験筋に対する筋電位の%MVCのグラフである。 軌道生成法1における被験筋に対する筋電位の%MVCのグラフである。 軌道生成法2における被験筋に対する筋電位の%MVCのグラフである。 軌道生成法2における被験筋に対する筋電位の%MVCのグラフである。 軌道生成法2における被験筋に対する筋電位の%MVCのグラフである。 伸展時間の比較結果を示すグラフである。 被験者を示す一覧表である。 実験条件を示す一覧表である。 被験者1に対する実験結果のグラフである。 被験者1に対する実験結果のグラフである。 被験者1に対する実験結果のグラフである。 被験者1に対する実験結果のグラフである。 被験者2に対する実験結果のグラフである。 被験者2に対する実験結果のグラフである。 被験者2に対する実験結果のグラフである。 被験者2に対する実験結果のグラフである。 被験者3に対する実験結果のグラフである。 被験者3に対する実験結果のグラフである。 被験者3に対する実験結果のグラフである。 被験者3に対する実験結果のグラフである。 被験者4に対する実験結果のグラフである。 被験者4に対する実験結果のグラフである。 被験者4に対する実験結果のグラフである。 被験者4に対する実験結果のグラフである。 患足側の補助区間のグラフである。 患足側の平均補助トルクのグラフである。 被験者1の筋電位の%MVCのグラフである。 被験者1の筋電位の%MVCのグラフである。 被験者1の筋電位の%MVCのグラフである。 被験者2の筋電位の%MVCのグラフである。 被験者2の筋電位の%MVCのグラフである。 被験者2の筋電位の%MVCのグラフである。 被験者3の筋電位の%MVCのグラフである。 被験者3の筋電位の%MVCのグラフである。 被験者3の筋電位の%MVCのグラフである。 被験者4の筋電位の%MVCのグラフである。 被験者4の筋電位の%MVCのグラフである。 被験者4の筋電位の%MVCのグラフである。 被験者毎の伸展時間の変化のグラフである。
以下に、図面を参照して本発明によるロボティックウエアを用いた起立動作支援方法を説明する。
[非外骨格型のロボティックウエア]
図1.1(a)、(b)は本発明を適用可能な非外骨格型の下肢用のロボティックウエアの一例を示す正面図および側面図である。ロボティックウエア1は、装着者Pの左右の股関節に対応する左右の側部に装着される左右一対の股関節ユニット2L、2Rと左右一対の膝関節ユニット3L、3Rを備えている。また、各ユニット2L、2R、3L、3Rによる歩行アシスト運動を制御する制御装置(図3参照)が備わっている。
左右の股関節ユニット2L、2Rは左右対称に配置された同一構造のものであり、回転アクチュエータである股関節アクチュエータ4L、4Rと、この回転出力軸であるウエア関節軸(図示せず)を中心として旋回する上アーム5L、5Rおよび下アーム6L、6Rとを備えている。上アーム5L、5Rの上端部は装着者Pの腰に固定したウエストバンド7に連結され、下アーム6L、6Rの下端部は装着者Pの大腿部に固定した大腿部バンド8L、8Rに連結されている。
各股関節ユニット2L、2Rのウエア股関節軸が装着者Pの左右の股関節に対応する位置となるように、ロボティックウエア1が装着者Pに装着される。左右の股関節ユニット2L、2Rの上アーム5L、5R、下アーム6L、6Rは、歩行運動に合わせて関節軸を中心として所定の振幅、周期で相対回転して(歩行アシスト運動を行って)、左右の股関節を中心とする歩行アシスト力(トルク)を装着者Pに伝える。また、装着者Pの起立動作に合わせて関節軸を中心として所定の振幅、周期で相対回転する単周期運動である起立支援動作を行い、左右の股関節を中心とする起立動作支援用のアシスト力を装着者Pに伝える。
左右の膝関節ユニット3L、3Rも基本的に左右の股関節ユニット2L、2Rと同様に構成されている。
図1.2(a)は左の股関節ユニット2Lを示す分解斜視図であり、図1.2(b)はその股関節アクチュエータ4Lを示す説明図である。
これらの図に示すように、股関節ユニット2Lの股関節アクチュエータ4Lは、モータ9Lおよび減速機10Lを備えた回転アクチュエータである。股関節アクチュエータ4Lの回転出力は、上アーム5L、下アーム6Lを介して、股関節を中心とする起立支援用のアシスト力として装着者Pの大腿部に直接伝達される。アクチュエータ4Lの減速機10Lの出力軸(関節軸11)には、その出力側に加わる負荷トルクを検出するためのトルクセンサ12Lが配置されている。関節軸11Lの回転位置は、例えば、モータ9Lに内蔵のエンコーダ(図示せず)によって検出される。
トルクセンサ12Lにより、股関節ユニット2Lと装着者Pとの間に生じる相互作用力がトルクとして検出される。検出されたトルクに基づいて、以下に述べる制御システムにより、各股関節ユニット2L、2Rの起立支援動作(上アーム5、下アーム6の開閉動作)を制御して装着者2の起立動作を補助する。
膝関節ユニット3L、3Rも同様に構成されており、それぞれ、装着者Pの左右の膝関節を中心とするアシスト力を装着者Pに伝える。
[同調制御システム]
図1.3はロボティックウエア1の制御装置を示すブロック図である。この制御装置20では、制御用PC21によって、ロボティックウエア1の左右の股関節ユニット2L、2R、膝関節ユニット3L、3R(図示せず)の駆動制御を、神経振動子を用いた同調制御により行う。図においては左右の股関節ユニット2L、2Rを制御する左制御ユニット20Lおよび右制御ユニット20Rのみを示してある。
制御用PC21は、同調制御用コンピュータプログラム(歩行アシスト用コンピュータプログラム)を実行することにより、同調制御のためのゲイン調整部22L、22R、解析部23L、23RおよびPID制御部24L、24Rとして機能する。人とロボティックウエア1の各関節ユニットの間の相互作用力がトルクセンサ12L、12Rにより検出される。検出された相互作用トルクは、装着者とロボティックウエアとの同調の度合いを調整するゲイン調整部22L、22Rを介して、解析部23L、23Rに入力される。解析部23L、23Rでは、神経振動子モデルにより解析して左右の股関節の目標角度を求め、各股関節における現在角度と目標角度との差をPID制御部24L、24Rに出力する。
PID制御部24L、24Rは、左右の股関節ユニット2L、2Rのモータ9L、9RをPID制御するものであり、モータ9L、9Rを駆動した結果得られる相互作用トルクをトルクセンサ12L、12Rによって再度検知し、解析部23L、23Rによって新たに目標角度を設定して、再度モータ9L、9Rを駆動制御する。モータ9L、9Rの駆動を補正制御する操作を繰り返し行うことによって同調制御が行われる。
なお、左右の股関節ユニット2L、2Rのトルクセンサ12L、12Rによって検出される相互作用トルクは、アンプ25L、25Rを介して増幅され、AD変換器26L、26Rによってデジタル信号に変換された後に、I/Oインターフェース27を介して制御用PC21に取り込まれる。また、制御用PC21は、PID制御部24L、24Rから出力される指令電圧をD/A変換器28L、28Rを介してモータドライバ29L、29Rに供給し、指令電圧に基づきモータドライバ29L、29Rによりモータ9L、9Rを駆動する。
[神経振動子モデル]
ここで、神経振動子を用いた同調制御において、神経振動子の数学モデルには様々なものがあるが、本例では松岡モデルを用いた。図1.4(a)には1つの神経振動子をモデル化したものを示す。松岡モデルは、図1.4(b)に示すように、最小の構成である2つの神経素子によって構成され、その2つの神経素子から得られる出力の差が1つの出力として得られる。この出力が周期的であることから、歩行などの周期的な運動生成に適したモデルである。松岡モデルは、式(2,1)〜(2,7)で表されるような非線形微分方程式で表せる。この神経振動子モデルの出力outputを、g(x1)−g(x2)とすることで、正弦波のような周期的な信号波形が得られる。x1、x2、a12、a21、b1、b2、S1、S2、Ta、Tr、Inputなどを任意に定めることにより、神経振動子モデルの出力波形を変化させることができる。
ここで、
xi:i番目の神経素子の内部状態を示す係数
g(xi):i番目の神経素子の出力
fi:i番目の神経素子の疲労状態を表す係数
Si:i番目の神経素子への定常入力
bi:i番目の神経素子の疲労係数
aij:i番目の神経素子からj番目の神経素子への結合係数(神経素子間の重み係数)Ta,Tr:時定数
Input:外部入力
Output:出力
松岡モデルは非線形1階連立微分方程式であり、ルンゲ・クッタ法(Runger-Kutta method)により数値積分し解を得る。ルンゲ・クッタ法とは、数値解析において常微分方程式の近似解を求め一連の方法である(松岡清利、神経振動子によるロボットの運動制御、IEICE Tecnical Report,NC2012−40,2012)。本例においては、4次のルンゲ・クッタ法を用いた。ここでは、与えられた初期値に対し、以下の式(2,8)〜(2,13)の連立微分方程式を解くことで解が得られる。
ここで、k1は初期値に対する勾配である。k2は区間の中央における勾配であり、勾配k1を用いて、xi+h/2におけるyの値をオイラー法により決定したものである。k3は区間に中央における勾配を再計算したものであり、k2の値から決められたyの値を用いる。k4は区間の最後における勾配であり、k3の値から決められたyの値を用いる。このルンゲ・クッタ法を用いて非線形1階連立微分方程式で示された松岡モデルを解き、神経振動子を構築した。
[同調制御方法]
図1.5は、制御装置20において行われる一方の股関節ユニットに対する同調制御の処理の流れを示す説明図である。神経振動子を用いた同調制御方法は生物が脊髄にもつ神経振動子というリズム生成器を数学的にモデル化したものを用いており、人とロボットが同調して動くことを実現している。このような同調制御については前述の特許文献1、2において提案されている。
同調制御においては、まず、装着者Pとロボティックウエア1の例えば左側の股関節ユニット2Lとの間の動きの違いによって生じる相互作用トルクを、ロボティックウエア1の股関節ユニット2Lのトルクセンサを用いて所定のサンプリング周期で計測する。
次に、この相互作用トルクの信号に対してゲインを掛けて神経振動子の入力として数値を与える。このときの神経振動子の計算をルンゲ・クッタ法で解くことによって、入力信号に同調した波形が神経振動子から出力される。神経振動子から出力される波形は、ほぼ±1程度の値で振動するような波形が得られる。すなわち、神経振動子からの出力の値に、起立動作における装着者の股関節の回転角度範囲に対応する倍率を掛けることにより、角度に変換している。例えば、振幅20°を与える場合には、神経振動子の出力値を20倍するといった要領である。このように、神経振動子の出力信号を角度に変換し、さらにオフセット値を与えることにより、目標角度を求め、PID制御を用いて股関節ユニット2Lの新たな軌道を生み出す。
ここで、オフセット値について説明する。起立動作の軌道が正負で対称ではない(後述の図3.4参照)。与える軌道が、正負で対称の値でない場合には、上記のように倍率を掛けて求めた角度の値に対して、さらに、起立軌道を実現するための補正値であるオフセット値を加算もしくは減算する必要がある。例えば、振幅が20°で、正方向の角度が30°、負方向の角度が10°とする場合には、神経振動子の出力を20倍し、これにより得られた値に対して、オフセット値として10を加算することで目標軌道が求められる(後述の図3.5参照)。
上記の制御の流れを繰り返すことで、神経振動子の同調引き込みが起こり、装着者Pと股関節ユニット2Lとが互いに引き込み合うことで協調動作が生成される。このとき、相互作用トルクに対して掛けるゲインを同調ゲインと呼ぶものとすると、この同調ゲインの大小でシステムの同調度合いが変わるという性質をもつ。同調ゲインを高くした場合には人間主体の運動生成が可能となり、同調ゲインを低めていくと、よりロボット(股関節ユニット2L)が能動的に人間をけん引するような運動生成が可能になる。したがって、同調制御において、装着者Pの能力に応じて同調ゲインを調整することで、適切な起立動作アシスト力による起立動作支援を実現できる。
神経振動子に対する外部入力Inputは、相互作用により発生する関節トルク(相互作用トルク)をτ_mutualとし、同調ゲインをCとすると、神経振動子の外部入力Inputは次のように表される。
Input=C*τ_mutual
ただし、0 ≦ C ≦ 1
C=0の場合には、外部情報をフィードバックせず、自分自身の特性(振幅や周波数など)に基づく神経振動子モデルの出力が得られる。いいかえれば、同調しない制御となる。Cが正の値の場合には、外部情報をフィードバックし、入力信号に引き込まれた(相互作用を取り入れた)神経振動子モデルの出力が得られ同調制御が実現される。同調ゲインCを調整することによって、望みの同調性を実現することができる。
以下に述べる実施例1においては、正負で非対称の軌道を描く起立動作に対応するよう
に、オフセット値として一定の値を与えて軌道を生成している。例えば、股関節では、屈曲側(負側)で30°、伸展側(正側)で70°を設定しようとした場合、振幅50°でオフセット値20°を与えることになる。また、同調ゲインについても一定の値を与えて同調性を一定に保持している。実施例1において採用したオフセット値一定・同調性一定の軌道生成法を、軌道生成法1と呼ぶ。
これに対して、実施例2においては、オフセットを変化させて目標軌道を修正している。また、同調性についても、同調ゲインを起立動作における屈曲動作と伸展動作とでは切り替えるようにしている。実施例2において採用したオフセット値可変化・同調性切り替えの軌道生成法を、軌道生成法2と呼ぶ。
[起立動作に対する同調制御の適用可能性:神経振動子モデルのシミュレーション]
起立動作に対して神経振動子モデルを用いた同調制御を行う場合、神経振動子モデルが入力信号に対して単周期のうちに位相を合わせることができることが必要条件である。この神経振動子モデルが単周期で同調できるか否か(非周期運動に対して同調できるか否か)に関して、数値シミュレーションを行って確認した。
(シミュレーション条件の設定)
そのために、まず、ロボティックウエア1は装着しているがそこに搭載されている起立動作支援用の股関節アクチュエータ4L、4R(以下、これらを纏めて「股関節アクチュエータ4」と呼ぶ。)の左右のモータ9L、9R(以下、これらを纏めて「モータ9」と呼ぶ。)が動かない状態、すなわち、モータ9へのトルク指令がゼロの状態で、装着者Pが起立動作を行った際の角度(関節軸の回転角度)と、装着者Pと股関節アクチュエータ4との間の相互作用力を表す相互作用トルクの変化の様子を実験によって確認した。
すなわち、起立動作中に生じる相互作用トルクと角度を股関節アクチュエータ4が動作停止状態(無負荷状態)で計測して、ロボティックウエア1の装着者Pが起立動作において発生する発生トルクである相互作用トルクを計測した。図2.1に計測結果を示す。
着座状態の角度を0とした場合、上体を屈曲時の最小角度は約−15度となり、起立完了時の角度は約30度となった。この結果から、関節軸に対する角度変化の比率は、屈曲側と伸展側で1:2程度の正弦波に近い波形であることが分かる。また、周期は3秒程度であった。相互作用トルクの値も同様の傾向が見られた。
上記の実験結果に基づき、神経振動子モデルの数値シミュレーションの条件を設定する。まず、神経振動子モデルの入力として、0.25Hzの正弦波を基準波形として入力する。これは、上記の起立動作測定の値よりも少し遅い値にした。また、入力基準波形の振幅を2とし、屈曲側と伸展側の値が1:2程度となるように、関節軸に対して入力信号を+0.5Nmずらした。
このように設定した入力基準波形を入力した場合の出力波形が、入力基準波形に対してどの程度位相遅れが生じるかを確認するシミュレーションを行った。図2.2に入力基準波形および出力波形を示す。
次に、この状態から、位相をずらした場合の入力信号と出力信号の位相差を、入力を開始してから一番初めのピークの値によって比較を行った。図2.3に比較結果を示す。
図2.3に示すように、若干の位相差が生じてはいるが、入力波形の位相に関わらず、単周期の中で、神経振動子モデルは入力信号に対して位相を合わせることができることが
確認された。
[装着実験1:同調に関する検証実験]
(実験装置)
実験装置は図1.1に示すロボティックウエア1と同一であり、その左右の股関節ユニット2L、2Rの左右2台の股関節アクチュエータ4(モータ9)を用いてアシスト効果の検証実験を行った。本実験では、事前に、パラメータを変更することにより、神経振動子モデルの自励振動を起立動作の周波数付近に調整した。起立実験は椅子に座った状態から始め、立ち上がるまでの測定を行った。
実験装置の仕様を表1に示す。股関節ユニット2のモータ9は山洋電気株式会社製のモータを使用している。減速機10は株式会社ハーモニック・ドライブ・システムズ製の「ハーモニックドライブ(登録商標)」を使用している。
図2.4に示すように、減速機10の出力部材であるフレックスプライン(可撓性外歯車)のダイヤフラムに、トルクセンサとして等角度間隔で三ケ所に歪ゲージが貼ってある。これらの歪ゲージの出力から、実験装置と人間の相互作用によって発生する相互作用トルクを検出する。
(実験方法)
まず、ロボティックウエア1の股関節ユニット2が装着者の起立動作に対して同調しているかどうかを確認する実験を行った。本実験では、パイプ椅子を用いて、椅子から立ち上がり動作を行い同調しているか否かを検証した。神経振動子モデルの自励振動の周波数(股関節ユニット2の股関節アクチュエータ4の動きの速さ)に関する時定数Ta、Trの比率を、1:0.2に固定し、Taを1.2、1.3、1.4の3パターンで変化させロボットの周波数を変化させた。
また、同調性(ロボットが人に同調する度合いを意味し、同調ゲインCを設定することで変化させることができる。)については、同調性が相対的に高いもの(ロボティックウエアが装着者の動きに対して合わせる状態)と同調性が相対的に低いもの(装着者の動きをロボティックウエアが本来持つ動きに引き込む作用が強い状態)の2種類のパラメータを設定した。実験条件1〜6を以下の表2に示す。
また、被検者は、20代健常者男性1人で、手を使わずに2から3秒程度の速さで立ち上がるよう指示した。条件一定のため、背もたれに背中を付けた状態から動作を開始した
。図2.5に実験の様子を示す。
(実験結果)
実験結果を図2.6、図2.7および図2.8に示す。これらの図に示されている角度は、実際に股関節アクチュエータ4が動いた角度を示している。また、括弧の中の高低(high,low)の文字は、同調性の値が大きい場合と小さい場合を示している。破線で区切られた区間が立ち上がり動作を行っている部分である。
同調に関する実験により次の事項が確認された。
1)同調性の違いによる影響
同調性が大きくなるほど、位相差が小さくなり、また、相互作用トルクが小さくなる。2)ロボット周波数による影響
相互作用トルクのピーク値は、入力基準波長の長短(速度の大小)に応じて次のように変化する。
(速度中:Ta=1.3)>(速度高:Ta=1.2)>(速度低:Ta=1.4)
3)相互作用トルクのピーク
起立動作の屈曲から伸展への変化時にピーク(最大)になる。
4)同調に関して
相互作用トルクはピーク後に収束する傾向を示しているので、徐々に装着者に股関節アクチュエータが同調したことを示している。
[装着実験2:アシスト効果の検証実験]
アシスト効果の検証実験には、筋電位測定を用いて評価を行った。筋電位と筋肉の発生力は比例関係にあることから、アシスト効果があるとすれば、活動時の筋電位が減少するはずである。
計測には、追坂電子機器製の表面筋電位計測装置、Personal-EMGを用いた。装着実験1の場合と同じく、この実験でも、ロボティックウエアの股関節ユニット2の左右の2台のモータ9のみ制御を行った場合のアシスト効果について検証した。
(実験方法)
実験条件としては、装着実験1(同調に関する検証実験)の条件(表2参照)に、制御無しの場合を加えた7条件で実験を行った。制御無しの場合は、その他の条件と同じ重量が体に掛かるようにした。各パラメータについて、5回ずつ計測を行った。本実験では立ち上がりのタイミングは指定しないが、5秒間程度の起立をしてもらった。立ち上がり補助の必要がない健常者1名で実験を行ったため、アシスト効果を確認できるように、敢えて立ち上がり方は上体の反動を使わず上体が屈曲した後一度軽く停止して、立ち上がりを行うよう指示した。また、立ち上がり速度は事前にメトロノームを用いて覚えてもらった。
本実験ではビデオ撮影を行い、画像処理によって上体の動きが屈曲から伸展に変化する点から立ち上がって関節角度の変化が無くなる点までの積分筋電位の値を用いて、定量的に比較した。比較には、股関節の伸展に関わる大殿筋と大腿二頭筋の二つの筋電位を用いた。また、測定は大殿筋、大腿二頭筋ともにそれぞれ左右の筋肉で行った。
(実験結果)
図2.9、図2.10に実験結果を示す。これらの図において、グラフの値は積分筋電位の値を%MVC法を用いて正規化し、その後、値を積分して動作全体で生じた筋電位を求め、さらに、5回の実験データで平均化した数値である。また、左右のバランスのずれによる差が出ないように、同じ筋肉の左右でも値の平均値をとった。制御無しの場合と、
その他の全ての値から、t検定を行い有意差があるか否かを確認した。
大殿筋に関しては、制御無しの全てのパラメータに対して筋電位の減少傾向が確認される。ただし、5%の有意水準に対して有意差または有意傾向が確認されたのは、Ta=1.4の場合だけであった。また、大腿二頭筋に関しても、有意傾向が見られたのは、T=1.4の場合のみであった。
このように、入力基準波形の周波数(起立支援動作の周波数)による影響については次の点が確認された。
1)速度低(Ta=1.4)で同調性大の場合に筋電位が最小
2)速度中(Ta=1.3)で同調性大の場合に筋電位が最大
次に、図2.11、図2.12には、最もアシスト効果の得られなかったTa=1.3の場合と、最もアシスト効果の得られたTa=1.4の場合について、角度変化と相互作用トルクの変化を示す。
(アシスト効果に関する考察)
上記のように、比較的早い起立動作に対しては、ロボットの動きを人の動きよりも少し早く設定した場合に、ある程度、同調した後に、人の動きを追い越してロボットが先導するような現象が確認された。また、比較的遅い起立動作に対しては、かなりの精度で同調するがアシスト効果が確認された。さらに、人の動きよりも遅いロボットの動きの方が、相互作用トルクの変化も緩やかで、アシスト力が継続的に掛かったため、筋活動量の減少につながったと考えられる。ロボットの動きを早くする場合には、本実験で設定した同調性の値よりも同調性を下げることにより、人に同調し過ぎず、継続的にアシスト力を与えることに繋がると考えられる。
[装着実験3]
(実験装置)
実験装置は、装着実験1の場合と同様に図1に示すロボティックウエア1と同一であり、その左右の股関節ユニット2の左右2台のモータ9を用いてアシスト効果の検証実験を行った。実験装置の仕様も装着実験1と同一である(表1参照)。
(股関節ユニットの起立速度の設定)
神経振動子モデルを用いた同調制御においては、本来、神経振動子への入力は周期的な信号が望ましい。しかし、起立動作支援の際には、入力が単周期であるので、いかに早い段階で同調できるかが重要になる。このとき、同調できるまでの時間を左右する要素として最も影響が大きいのは、装着者とロボティックウエア(股関節ユニット)の起立速度の差であると考えられる。
本実験では、事前に計測した相互作用トルクから、装着者の起立速度の指標を求め、股関節ユニットの速度を装着者に合わせた状態で同調制御を行った。起立速度の設定は、装着者が起立動作を行った場合における股関節ユニット2の無負荷状態での角度変化を計測し、計測結果に基づき行った。
図2.13は無負荷状態における股関節ユニット2の出力軸(関節軸)の角度変化の計測結果を示すグラフである。この計測結果に基づき、股関節ユニット2の起立時間を次のように設定した。まず、相互作用トルク値が最大および最小となる時間を検出する。この相互作用トルクの最小値から最大値までの時間が、装着者が股関節の伸展を開始してから直立状態になるまでの大凡の時間に相当すると考えられる。次に、求めた時間を正弦波の半周期と仮定して、股関節ユニット2の起立速度を決定した(股関節ユニット2の起立時
間を神経振動子の自励振動周期により設定する)。本実験においては、ロボットの運動周期は2秒とした。
(実験方法)
本実験では、装着実験1と同様に、アシスト効果を評価するために表面筋電位の計測を行った。被検者は20代健常者男性1名で手を使わずに起立するように指示し、起立速度が一定になるようにメトロノームを使用して一定リズムで起立してもらった。
実験条件は、トルク指令値がゼロで制御を行わない状態、股関節ユニット2を装着者の起立速度に合わせて制御した場合で同調性が大と小の場合を加えた3パターンの実験を5回ずつ行った。表3には筋電位を計測する被験筋とその役割を示し、図2.14には被験筋の位置を示す。
なお、本実験では、股関節の伸展動作のみのアシストを考える。データは、それぞれ起立動作のうち股関節の最大屈曲時から直立状態になるまでの筋電位を計測したものである。
(筋電位計測結果)
図2.15に筋電位計測結果を示す。
(伸展時の表面筋電位による検証)
結果より、同調性に関わらず、最も筋電位の減少が確認されたのが大腿直筋である。最大で30%程度もの減少があった。次に減少が大きかったのは、膝関節や下腿に関する筋である。また、脊柱起立筋でも減少傾向が確認されたことから、体幹部が安定的な状態で起立動作を行えることが分かる。ハムストリングス、大殿筋、肺腹筋について筋電位の減少は確認できなかった。
このように、股関節については、大腿直筋は同調性大で筋電位に大きな減少が得られアシスト力が有効に作用していることが分かる。これに対して、同調性小では動作タイミングにずれが生じるので筋電位の減少程度が少なくなっているものと考えられる。一方、ハムストリングスや大殿筋に大きな変化が無かったことは、伸展し始めの段階でのアシスト力が小さいことが分かる。
また、膝関節については、外側広筋の平均値が最大となり、アシスト力によって負担を大きく減らすことができたことが分かる。また、同調性大で、より大きな減少が確認され、ロボットが先行して動作する時間が多いことが分かる。
(相互作用トルクと角度による検証)
起立動作の角度変化については、図2.16に示すように、制御の有無にかかわらず略一定であった。
起立動作の相互作用トルクについては、図2.17に示すように、屈曲と伸展の切り替えが起立動作全体を100%とすると起立動作開始時点から50%前後の時点であること
が分かる。
また、同調制御を行った場合において、相互作用トルクにより股関節ユニット先行か装着者先行かを判断できる。図2.18は、屈曲時および伸展時におけるロボット先行の場合、人間(装着者)先行の場合におけるトルクの向き(正負)を示す説明図である。
図2.18において、伸展時のトルクが負の値を示している領域は、ロボットが先行している状態である。伸展動作におけるロボット先行時の評価を、相互作用トルク積分値を用いて行った。図2.19に示すように、同調性が大きい方が、相互作用トルク積分値が大きく、伸展動作において継続的にアシスト力が作用していることが分かる。
(起立全体に占める伸展時間率)
ここで、同調制御を行った場合と行っていない場合での起立周期全体における最大屈曲時から直立状態までの時間の割合に着目した。図2.20には起立全体に占める伸展時間率を示してある。
同調性の大小にかかわらず、起立動作全体に対する伸展時間の割合が10%程度減少することから、起立動作アシストにより、伸展時に股関節の伸展方向にアシスト力が働き、伸展動作を速めたことが、膝関節の伸展を行う内側広筋や外側広筋、前脛骨筋の活動量を抑えた(装着者への起立動作時の負担が低減した)と考えられる。
(実験結果の考察)
筋電位計測の結果より、ロボティックウエアによる起立支援によって、股関節の伸展がアシストされたことで、伸展時間が短縮され、股関節を動かす筋でも筋電位の減少が確認されたと考えられる。また、脊柱起立筋の筋電位の減少から、起立動作中のアシスト力の影響を受けても、上体姿勢の維持には特に問題がないことが分かる。
同調性の大小による違いとして、同調性大の場合に比べて、小の場合には筋電位の減少が少なくなっている。これは、同調性が小さいことによる同調までの時間の遅れによる影響であると考えられる。より筋力を必要とする離臀状態の初期には、あまり同調せず、アシスト効果が減少してしまったと考えられる。
また、ハムストリングスや大殿筋、肺腹筋に影響が出なかったのは、今回の被検者が健常者であり、動作速度が速いため、速筋の少ない後ろの筋肉に変化が無かった可能性がある。
以上説明したように、同調制御を用いて起立動作アシストの実験を行った。このとき、股関節ユニットの起立速度を装着する人間の起立速度に合わせることで、股関節ユニットの同調遅れを緩和し、よりアシスト力を受けやすい状態になると考えらえる。起立動作の相互作用トルクの実測値から股関節ユニットの速度を決め制御を行ったところ、起立時における伸展時間が短縮され、特に、全面の筋肉で筋活動の減少が認められた。同調性小の場合は、大の場合に比べて人間に対して同調するまでに遅れが生じるので、アシスト効果が減少することが分かった。脊柱起立筋は、体幹部の姿勢保持を行う筋であるが、筋電位の減少が確認された。これは、起立時の中間姿勢の時間がアシストにより短くなったため生じたと考えられる。
また、膝関節の筋電位が大きく生じているのは、膝関節の負担が大きいことを示している。したがって、起立動作において、膝関節ユニットを同調制御することにより、より有効な起立動作時のアシストを行うことが可能であると考えられる。
[起立動作支援と同調制御]
本発明者等は、上記の実施例1によって起立動作に対する神経振動子を用いた同調制御の有効性について確認できたことを踏まえ、起立動作における同調制御の適用時に必要な設定(オフセット値、同調性)について検討を行った。
まず、起立動作中における右股関節と右膝関節の角度変化を計測した。計測は、実施例1の場合と同一構成のロボティックウエア1を装着して起立動作を行った際の関節角度を、右側の股関節アクチュエータ4R、右側の膝関節アクチュエータのそれぞれのモータ内に組み込まれたエンコーダにより計測したものである。
図3.1に示すように、各関節角度は、モータ出力軸から見て時計回りを正とし、反時計回りを負と設定しており、右の股関節と膝関節の角度は屈曲伸展で正負が異なる。着座状態の股関節角度および膝関節角度をそれぞれ0°として設定している。
図3.2は計測によって得られた起立動作中における右股関節(Hip joint)と膝関節(Knee joint)の角度変化を示す。縦軸は角度であり、横軸は、坐位から立位までの起立動作範囲を100%として正規化した場合における各角度における起立動作の位置を示す。
図3.3には起立動作の姿勢変化を時系列に示してある。この図に示すように、起立動作において、その開始点である坐位(Sitting position)から股関節の最大屈曲位(Maximum
flexed position)までを屈曲相(Flexion phase)として扱い、起立における股関節の最大屈曲位から立位(Standing position)までを伸展相(Extension phase)として扱うこととする。
[制御アルゴリズム]
起立動作支援に対して同調制御を適用する場合に、従来の歩行支援時の同調制御法とは異なる設定が必要になる。起立動作が、非周期運動であること、および、歩行と比べて生成する起動が大きいことに起因して生じるオフセット値の影響による問題に対処する必要があるためである。神経振動子を用いた同調制御を用いて起立動作支援を適切に行うには、神経振動子を用いた起立動作の軌道生成を適切に行い、起立段階に応じて適切に同調性を切り換え制御することが必要になる。
(同調制御における軌道生成法とオフセット値による影響)
実施例2による軌道生成法2を説明するのに先立って、同調制御の軌道生成法と制御中に人間が動作停止を行った場合のロボットの挙動について説明する。
図3.4に神経振動子からの出力波形の例を示す。先に述べたように、神経振動子は±1程度の値で振動するモデルであり、軌道生成は、神経振動子からの出力の値に角度に対応する倍率を掛けることにより目標角度を設定している。例えば、振幅20°を与える場合には、神経振動子の出力値を20倍するといった要領である。
起立動作に適用する場合には、起立動作の軌道が図3.2に示したように正負で対称ではない。このように、与える軌道が、正負で対称の値でない場合には、倍率を掛けて求めた角度の値に対して、起立軌道を実現するためのオフセット値を加算もしくは減算する。振幅が20°で、正方向の角度が30°、負方向の角度が10°とする場合には、図3.5に示すように、神経振動子の出力を20倍し、これにより得られた値に対して、オフセット値として10を加算することで目標軌道が求められる。
図3.6に、上記の要領で制御した際に、人間が停止した場合のロボットの角度(股関節アクチュエータ4の出力軸の角度)と相互作用トルクの変化を示す。このグラフは、振幅は20°に設定してあり、正方向に16°、負方向に24°、すなわち、オフセット値として−4を与えた場合のものである。このとき、同調制御の作用により、ロボットは装着者に同調していき、それに伴い相互作用トルクも減少して0に近い値に収束する。神経振動子への入力信号である相互作用トルクが0に収束した状態においては、神経振動子の出力も0に収束する。しかし、オフセット値による影響が残るので、−4°という角度に収束していることがグラフより確認できる。つまり、実際にはロボットはオフセット値に応じた角度に収束してしまう。
先に述べた実施例1における起立支援制御で採用している軌道生成法1では、正負で非対称の軌道を描く起立動作に対応するように、オフセット値を設定して軌道を生成している。例えば、股関節では、屈曲側(負側)で30°、伸展側(正側)で70°を設定しようとした場合、振幅50°でオフセット値20°を与えることになる。このとき、人間が坐位を維持しようとしても、ロボットは20°伸展側に動いた状態に収束しようとする。この状態で制御を行った場合には、坐位においても伸展させようとする力が働いてしまうことが明らかになった。この状態を改善するために、実施例2において採用する軌道生成法2では、オフセット値を可変化して軌道を生成する。
(オフセット値可変化の神経振動子による起立軌道生成)
非周期運動に対して同調制御を用いる際に、実施例1において用いた軌道生成法1ではオフセット値による影響が大きくなることや、単周期内で同調しにくいといった問題が生じる。そのために、起立動作の状態に応じて適切な同調状態を生成するために、屈曲から伸展の動作切替えを認識し、適切な軌道を生成する手法を考案した。
まず、人間が坐位の状態においては、人間に対してロボットが力を加えない状態で初期位置に停止させることが必要である。このとき、ロボットには、股関節、膝関節ともに20°の振幅を与え、初期のオフセット値は0とする。20°という値は、実際に計測された屈曲時の最大屈曲角度を参考に設定した。この設定によって、坐位の状態の角度が0度として設定されたロボットは、神経振動子を介することで、人間停止時に0°の位置に停止する状態となる。
また、このロボットの停止状態において、人間が屈曲運動を開始した場合にも、相互作用トルクに神経振動子が同調し、設定された20°までの屈曲動作には、ロボットが同調可能であるため、屈曲動作が阻害されにくい状態となることが考えられる。神経振動子が0に収束した状態では、屈曲伸展のどちらの方向から動作を開始した場合にも同調できるため、人間の屈曲伸展動作開始の意思を反映しやすい設定であると言える。この状態で、屈曲相においてロボットが人間に同調することで、スムーズな伸展動作開始が実現できると考えられる。
次に、最大屈曲から立位の状態を実現する軌道生成法を示す。この最大屈曲位までにロボットが人間に同調していた場合、人間とロボットの運動速度の差が少なくなることで、伸展動作においてロボットが短周期内で引き込み特性を最大限発揮し伸展速度を人間に合わせることができる。この状態から、オフセット値を加算していくことで、ロボットの制御動作を引き出し、同調するだけでは発揮しにくい補助力を人間に働かせることが可能になると考えられる。
加算するオフセット値については、伸展動作開始の時点に合わせて徐々にオフセット値を掛ける必要がある。そこで、伸展動作開始の時点をロボットで認識する方法を取り入れた。具体的には、股関節角度によって伸展動作開始を認識するようにしている。計測した
股関節角度の値から極小値を認識することによって、動作の屈曲から伸展への切り換えの認識が可能となる。また、その際の誤認識を防ぐために、関節角度の10°以上の屈曲という条件も付加した。このように、伸展開始を認識し、そこからロボットに設定した伸展時間内にオフセット値を徐々に加算することで、立位の状態までの軌道を生成し、目的の角度に到達した時点でモータを停止するように設定を行った。
膝関節においては、股関節の屈曲中には角度変化は起こらず、股関節と同時に伸展が開始されるため、股関節と同時に膝関節のオフセット値の切り替えを開始する設定とした。また、オフセット値に関しては、最終的に実現したいオフセット値をロボットの設定伸展時間で割った値を徐々に加算することで、伸展時間完了時にロボットのオフセットが完了するように設定を行った。
これらの設定により、非周期運動に対して同調させる区間とアシスト力が必要な区間を明確に分けて異なる設定を用いることで、人間へのロボットの同調と効率的な補助を可能にすることができると考えられる。
(起立段階に応じた同調ゲインの切り替え)
上記のオフセット値可変化による補助効果に対して大きな影響力を与える要素として、同調ゲインの設定が挙げられる。それは、屈曲動作と伸展動作において、ロボットとしての役割が異なるためである。屈曲動作は、より人間に同調して屈曲から伸展動作に切り替わる時点での同調遅れによる抵抗を軽減する区間として位置付ける。また、伸展動作は、ロボットが軌道を維持して人間よりも先行動作し大きな補助力を生じさせる区間と位置付ける。実施例2では、この役割を効率的に果たす設定にするため、同調ゲインを起立段階に応じて切り替えるようにする。
屈曲動作においては、より人間に同調し、人間の動作の抵抗にならないように制御を行う必要があるため、同調ゲインを高く設定した。この設定により、ロボットが人間意思をより反映した動作生成を行うことができる。この作用により、屈曲段階でロボットが人間の起立速度に同調した状態を生成しておくことで、ロボット動作の遅れをなくし、伸展時のオフセットによる先行動作を生成しやすくなると考えられる。
次に、伸展動作においては、ロボットが人間に同調するよりも、人間動作よりロボットが先行した動作を維持することが、大きなアシスト力を発生させるために必要である。ここでは、先行動作を生成するために、オフセット値を加算した軌道に沿ったロボット動作を生成する必要があるが、同調性が高い場合には人間に同調してしまいアシスト力が減少してしまうことが予想される。そこで、伸展動作においては、同調ゲインを中程度まで下げることとした。この設定により、人間の動作意思が反映された動作が生成されつつも、ロボットが設定された軌道を満たすように動作できると考えられる。
同調ゲインの切り替えにおいても、屈曲動作から伸展動作の切り替えを、ロボットが認識する必要がある。オフセット値の切り替え時と同様に、股関節角度が10°以上屈曲側にあり、かつ、極小値を取った時点で瞬間的に同調ゲインの切り替えを行った。このように、起立段階に応じて同調ゲインを切り替えることで、人間意思を反映しながらも、効果的に補助力を生じさせるとともに、非周期運動に対して効率的に同調することが可能になると推察される。
(制御フローの例)
図3.7には、上記の軌道生成法2(オフセット値可変化・同調性切り替え)の概念図を示してある。また、図3.8には、実施例2における同調制御の制御手順を示す概略フローチャートを示してある。
これらの図に示すように、軌道生成方法2においては、動作の切り替えとともに、オフセット値を可変にし、同調ゲインの切り替えを行うことで、起立動作のような非周期運動に対してもロボットが人間に同調しながらも先行動作を生成し、人間を補助することが可能となると予想される。さらに、人間の起立動作に合わせたロボットの伸展時間を設定することで、神経振動子の同調特性がより効果的に働き、短時間の動作に対してもロボットが同調する制御が可能となると考えられる。
[健常者による同調制御の検証実験]
健常者における実験を行い、実施例2の同調制御法(軌道生成法2)によって得られる効果の検証を行った結果を示す。実験では、股関節のみのモータ制御を実施例1において採用した同調制御法(軌道生成法1:オフセット値一定・同調性一定)で行った場合と、実施例2の軌道生成法2により股・膝関節の制御を行った場合のデータの比較を行った。
(実験環境)
実験では、それぞれ、20代前半で、身長が170cm程度の体格の似た男性1名ずつを対象とし実験を行った。対象動作は椅子からの起立動作である。
(実験条件)
図4.1に実験条件の一覧表を示す。それぞれ個人の伸展時間に合わせてロボット側に予め伸展時間を設定し、この伸展時間(グラフでは0%と表す)で制御を行った場合と、±10%の伸展時間を設定した制御を行った場合との比較を行い、ロボットの設定速度による影響を確認する。このパターンに加え、モータをフリー状態にした状態(以下、「TF」と表す)で、角度や相互作用トルクを計測し、このテーダを装着実施の軌道データとして扱う。それぞれのパターンで各5回ずつ計測実験を行った。
(被験筋の選定)
被験筋として、大腿直筋、外側広筋、大殿筋を対象とする。特に、大腿直筋と外側広筋については膝関節の伸展の際に活動する筋であり、表面筋電位の減少が認められれば、補助効果があったと考えられる。大殿筋は股関節の伸展に関わる筋として計測を行った。表面筋電位は100%MVC値によって評価を行う。
(評価項目)
以下のように、相互作用トルク、表面筋電位および伸展時間の3項目について、制御法1、2の実験結果について比較および評価を行った。
(検証実験結果)
(相互作用トルクと角度の関係)
図4.2〜図4.5に、軌道生成法1における同調ゲインと設定速度の違いにおける各関節に生じる相互作用トルクと関節角度の変化を示す。これらのグラフでは、屈曲開始から立位の状態までを100%に正規化しており、屈曲相(Flexion)と伸展相(Extension)の境界が屈曲から伸展への切り替え時点であり、各曲線は、各条件で平均軌跡を求めてグラフ化したものである。
TFの状態においては、モータが動作しない状態における関節角度の変化が示されている。この角度変化が、装着者自身が持つ軌道といえる。この場合、約50%を境に、関節の屈曲と伸展が入れ替わるということになる。このときの相互作用トルクの値を見ると、屈曲時には負の値を取っていたものが、伸展時には値が正値を取っている。この相互作用トルクの変化がロボットに対して人間が常に先行して動作した場合の相互作用トルクであると考えられる。制御を行った場合に、共通して相互作用トルクが負値を取るのは、オフ
セット値の影響でロボットが伸展側に常に動こうとしていることの現れである。人間が屈曲開始してから相互作用トルクが負の値のピークを迎えるのは、伸展しようとするロボットに対して人間が反発しながら屈曲しているためのであると考えられる。同調ゲインが高い場合において、それが低い場合よりもピーク値が低い傾向にあるのは、より早くロボット側が人間に同調したためであろう。
TFのように動作が伸展に切り替わったところで、関節の動作が反転し相互作用トルクの値の正負が反転する状態が、人間がロボットよりも先行した状態であると考えた場合、制御を行った場合の伸展相において相互作用トルク値が正負反転するまでの時間がアシスト効果のある区間であると考えられる。この正負反転しない状態の区間の長さをパラメータ毎に比較すると、±10%で同調ゲインが高い場合が最も長く、次いで、+10%で同調ゲインが低い場合となる。この二つのパラメータにおいて筋電位の減少が大きくなった場合、この仮説が成り立つと考えられる。
次に、図4.6〜図4.9に、軌道生成法2における設定速度の違いにおける各関節に生じる相互作用トルクと関節角度の変化を示す。すべてのパラメータにおいて、伸展動作時の相互作用トルクがTFの時と比べて反転していることが分かる。また、屈曲時に大きなピーク値が生じていないことを考慮すると、軌道生成法1よりもはるかに安定して屈曲動作に入れる設定になっているといえる。
また、最大屈曲角を迎えるまでの時間に差があることが考えられる。加えて、0%設定が最もTFに近い波形を示しており、本来の起立動作に近い動作が生成されていたと考えられる。アシスト効果については、股関節を考えた場合に0%で最もロボットの先行動作が生成されていたと考えられる。逆に、膝関節の場合は、0%が最も相互トルクが小さい値で変化していたため、アシスト力が弱いと考えられる。
ここで、先に図2.18に示したように、ロボットと人間の相対的な位置に差が生じた際に、相互作用トルクが発生すると考えられ、この相対的位置に差が生じるというのはオフセット値の設定により人間動作よりもロボットの角速度が大きくなった場合に生じるはずである。この状態では、ロボットが人間の動作方向に力を加えていると考えられる。このときに生じている相互作用トルクが人間を補助していると仮定し、この補助力が働いていると考えられる区間を「補助領域」ということとする。
補助トルクの判別を行うには、TF時に生じる相互作用トルクに対して正負が反転した値の相互作用トルクが生じているかどうかを判定すればよい。それは、TF時に生じている相互作用トルクは人間がロボットに対して常に先行して動作を行った際に回転軸が生じるものであるからである。相互作用トルクがTF時と反転している場合には、ロボットが人間よりも先行して動作していると考えられる。
以下では、この補助領域について議論を行うために、補助領域の平均補助トルク(補助領域における相互作用トルクの平均値)と補助区間(起立動作全体を100%として正規化した際に補助区間が起立全体に占める割合)を求めた。
図4.10に補助領域のグラフを示し、図4.11に平均補助トルクのグラフを示す。補助区間については、軌道生成法1と比較し、軌道生成法2では、倍以上の補助区間が生じていることが分かる。このことから、軌道生成法2(オフセット値可変化、同調ゲイン切り替え)で、よりアシスト効果が高いことが予想される。また、平均補助トルクに関しても、軌道生成法1よりも、継続的に補助力が働いていることが確認できる結果であると考えられる。ただし、軌道生成法2では、速度の条件にかかわらず、補助領域の差が少なくなっていることから、補助領域の生成にはオフセット値の可変化が大きく影響している
ことが考えられる。
次に、人の起立軌道に沿ったロボットの動きが正しく生成されているかを評価するために、動作開始点αから最大屈曲点βまでの角度(最大屈曲角度とする)と最大屈曲点βから立位γまでの角度(最大伸展角度とする)を求めて、各条件での値を比較した。求め方について図4.12にて例を示す。
図4.13〜図4.16に、上記要領で求めた最大屈曲角度と最大伸展角度のグラフを示す。図4.13は、軌道生成法1の結果を示しており、図4.14〜図4.16は軌道生成法2の結果を示してある。ここでは、各パラメータを5%水準でt検定を行っている。
軌道生成法1では、屈曲においては−10%の同調ゲインが低い場合に5%水準で有意に屈曲角度が大きくなった。また、伸展では、−10%以外のパラメータで有意に伸展角度の減少がみられた。
軌道生成法2では、股関節については最大屈曲角度と最大伸展角度のグラフを示し、膝関節に関しては伸展のみの評価を行った。結果より、伸展角度はTF時に比べて有意に低下してしまっている。原因としては軌道の設定が小さすぎることが考えられる。
軌道生成法1、軌道生成法2ともに、伸展時の最大角度に低下がみられる傾向があることが明らかとなった。軌道設定をより大きく設定しなおすことで、より自然な軌道になることが考えられる。
(表面筋電位による補助効果の検討)
図4.17〜図4.22には、各被験筋に対する筋電位の%MVCを示す。図4.17〜図4.19では軌道生成法1における被験筋の筋電位の%MVC値を示しており、図4.20〜図4.22では軌道生成法2における%MVC値を示した。ここでも、TFと各パラメータ間において、5%水準でt検定を行った。
軌道生成法1においては、相互作用トルクで同調性の高低にかかわらず+10%のパラメータにおいて、相互作用トルクが反転するまでの区間が長かったことから、筋電位の値も減少していると推察される。実際に大腿直筋では、TF時よりも有意に値が減少していることが確認できた。ただし、その他のパラメータにおいても大腿直筋は減少傾向がみられることから、この制御において、膝関節の伸展に対し効果的であることが考えらえる。ただし、股関節の伸展にかかわる大殿筋で有意差はなかった。
次に、軌道生成法2では、大腿直筋においてTF時と比較し各パラメータ間で有意に筋電位の減少が確認された。外側広筋、大殿筋においては、計測値の標準偏差が大きく有意差はでなかったものの、±10%のパラメータには減少傾向がみられている。0%のパラメータにおいて股関節はアシストされたものの膝関節に働く力が小さかったものと考えられる。よって、股関節のアシストよりも膝関節のアシストの方がアシスト効果を得られやすいと考えられる。一般に、起立時に生じる股関節のトルクというのは30N・mほどであり、膝関節は20N・m程度であるとされている。そのため、制御法2で生じる2N・m程度の力で効果が得られやすいのは膝関節である可能性が高い。
(伸展時間による検討)
図4.23に伸展時間による比較を行った結果を示す。軌道生成法1では、伸展時間の差が殆どみられなかったのに対して、軌道生成法2では、伸展時間の差がみられた。このとき、軌道生成法2では、1.5秒の設定伸展時間を基準としたため、±10%に関して
はロボットの設定どおりの速度に引き込まれていることが分かる。ただし、0%で伸展時間が長くなってしまったのは、装着者が装置に慣れていないことから、補助感をもってから起立動作をおこなってしまったことが要因として挙げられる。結果として、屈曲動作の勢いを活かすことのできない遅い起立動作が実現されたために、補助効果が得られなかったと考えられる。
(考察)
比較実験においては、膝関節により補助力を加えることで、より効果的な補助が実現できる可能性を示唆するものであった。
また、軌道生成法2(オフセット値可変化、同調ゲイン切り替え)では、継続的に人間に対してアシスト力をかけ続けられること、人間の屈曲から伸展への動作の切り替え時の相互作用トルクの変化が緩やかなことから、軌道生成法1(オフセット値一定、同調ゲイン一定)よりも、屈曲時の抵抗感は少ないものと考えられる。
ロボットにおける設定伸長時間については、装着者本人の伸展時間に合わせて設定した0%において、もっともTF時の軌道を満たす結果となった。
軌道生成法2では、0%以外はロボットの設定伸展時間に基づいた起立動作に引き込まれていることが確認された。その場合、ロボットが人間に対して先行動作を生成しやすく、結果、筋負担の減少がみられたのではないかと考えられる。0%で筋負担の減少がみられなかったのは、屈曲の動作速度が伸展で継続的に活かされなかったことが原因であると考えられる。
以上の結果より、軌道生成法1と比較し、軌道生成法2において筋負担の減少傾向が大きくなったことから、より補助効果があるのは軌道生成法2であるとの考えから、軌道生成法2を用いて片麻痺患者による評価実験を行った。
[片麻痺患者による評価実験]
(対象者:subjects)
ブルンストロームステージ(Brunnstrom stage: Brs)におけるステージIV、Vの患者とし、実験においては杖などを使用せずに実験を行ってもらった。図5.1には、対象者一覧表を示す。
(実験環境)
先に述べた「健常者による同調制御の検証実験」における場合と同様である。
(実験方法)
リハビリ訓練用の椅子から立ち上がり動作の計測を行った、図5.2には、実験条件一覧表を示す。立ち上がり時には手による補助動作を用いず、また、杖は使用せずに起立動作を行うよう指示をしている。実験は、健常者実験同様に各5回ずつ計測を行った。ロボットの設定伸展時間は、TF時の伸展時間をもとに算出したものを用いた。
(実験結果:角度と相互作用トルクによる検証)
図5.3〜図5.6、図5.7〜図5.10、図5.11〜図5.14、および図5.15〜図5.18に、それぞれ、被験者1〜4による計測結果のグラフを示す。
被験者1においては、どの設定速度においても伸展時に大きなアシスト方向のトルクが生じていることが確認できる。大小関係では、0%の場合に±10%のときと比べて、トルク値が小さくなっていることから、アシスト効果としては3パターンの中でも小さくな
っていると考えられる。
被験者2においては、被験者1よりも相互作用トルク値が小さくなってしまっている。被験者2においては、非装着時の起立速度が非常に速いことから、屈曲動作時に反発によるピーク値を確認できる。このピーク値は最も設定速度の短い−10%で小さくなっているので、動作に十分に同調できていると考えられるが補助力としては小さいと考えられる。
被験者3の場合には、股関節に対して非常に大きなアシストトルクが生じていることが分かる。また、膝関節は、10%の場合に小さな相互作用トルクとなっており、アシストされていないと考えられるが、−10%の場合には非常に大きなトルクが生じており、アシスト効果が高いと考えられる。
被験者4においても、膝関節に大きな補助トルクが生じていることが分かる。−10%の設定では、ロボットがより先行動作を行っており、アシスト効果が得られたと考えられる。ただし、この被験者4においても、被験者の起立速度が速かったために、+10%や0%の場合には十分なアシスト効果が得れなかったと考えられる。
次に、図5.19に患足側の補助区間を示し、図5.20に平均補助トルクを示す。患足の補助区間に関しては、被験者1、3で大きく、被験者2、4では小さくなる傾向がみられた。また、平均補助トルクについても同様に被験者1、3では大きかったのに対して、被験者2、4では小さくなる傾向が確認された。これらの差が生じた原因として考えられるのは、伸展時間による差である。伸展時間が遅かった被験者1、3については補助区間および平均補助トルクが大きくなる傾向がある。逆に、伸展時間が速かった被験者2、4については、補助区間および平均補助トルクが小さくする。これは、ロボットが人間の伸展時間に対して単周期内で同調できず、成功動作が生じくいことに起因すると考えられる。
(実験結果:表面筋電位による補助効果の検証)
図5.21〜図5.23、図5.24〜図5.26、図5.27〜図5.29、および図5.30〜図5.32に、それぞれ、被験者1〜4の結果を示す。
被験者1については、相互作用トルクの値からも示されるように、大きな補助トルクが生じていたことが考えられる。その際、麻痺のない健足側の動きに対しても補助を行ってしまうため、通常でも健足に頼った起立動作であるものが、さらに、動きが助長されて健足側の筋電位が有意に大きくなったと考えられる。
もともと起立速度の速い被験者2については、−10%という最も速度の速いパラメータで、より筋電位の減少が確認された。被験者1とは異なり、健足側において筋電位の減少が大きくでている。
被験者3では、股関節に対して大きなアシストトルクが生じていたにもかかわらず、膝関節周りの筋において、筋電位の減少がみられる。股関節に大きな力がかかったにもかかわらず、大殿筋の値で有意な増加が認められたのは、股関節では膝関節以上に、駆動に対して大きな力を使っていることが原因として考えられる。
最もアシスト効果の低かった被験者4では、相互作用トルクが伸展中にもかかわらず、0値に近い値を推移する。これは、ロボットが同調した結果であり、この場合にはやはり補助力は働かない。あくまで、ロボット先行による相互作用トルクがより大きく生じた場合に、補助力が働くと考えられる。
(実験結果:伸展時間の変化)
図5.33に被験者毎の伸展時間の変化を示す。結果から、伸展時間の短い片麻痺患者の場合、補助力として力が働く補助区間が非常に短いことにより、補助効果がなかったと考えられる。被験者1、3では、被験者2、4と比べて、倍近い伸展時間があることから、ロボットも先行動作を行う時間が長かったため筋電位の有意な減少がみられたのであると考えられる。また、全ての被験者において、非装着時の基準であるBDに対して、伸展時間がより長い場合の方が筋電位の減少がより多く確認される傾向がみられる。また、ロボットの設定伸展時間による伸展時間変化については、片麻痺感謝の場合には傾向がみられなかった。
(考察)
片麻痺者における有用性の評価実験では、被験者毎に効果は異なるが、一部の被験者で患足側の筋負担の減少が確認された。このことから、片麻痺患者に対しても、同調制御により起立動作支援が行えることが示唆された。
ただし、今回は4名の被験者のみであったため、今後、被験者を増やして、補助効果の検証を行っていく必要がある。
[その他の実施の形態]
上記の例は起立動作支援のために同調制御を適用している。起立動作以外の単周期運動を行う装着者の部位に、当該部位の単周期運動を支援する関節ユニットを装着し、当該関節ユニットを同調制御して、当該部位の単周期運動をアシストさせるようにすることも可能である。例えば、腕の上げ下ろし動作を支援するための肩関節ユニット、腕の曲げ伸ばし動作を支援するための肘関節ユニットを同調制御することができる。
上記の例は本発明を非外骨格型のロボティックウエアに適用した場合であるが、本発明は外骨格型のロボティックウエアに対しても同様に適用可能である。
1 ロボティックウエア
2 股関節ユニット
2L 左側の股関節ユニット
2R 右側の股関節ユニット
3L、3R 膝関節ユニット
4 股関節アクチュエータ
4L 左側の股関節アクチュエータ
4R 右側の股関節アクチュエータ
5L、5R 上アーム
6L、6R 下アーム
7 ウエストバンド
8L、8R 大腿部バンド
9 モータ
9L、9R モータ
10 減速機
10L、10R 減速機
11L、11R 関節軸
12L、12R トルクセンサ
20 制御装置
20L、20R 制御ユニット
21 制御用PC
22L、22R ゲイン調整部
23L、23R 解析部
24L、24R PID制御部
25L、25R アンプ
26L、26R AD変換器
27 I/Oインターフェース
28L、28R D/A変換器
29L、29R モータドライバ
P 装着者

Claims (14)

  1. 装着者の股関節および膝関節のうち、少なくとも股関節を中心とする動作を支援するアシスト力を発生する股関節アクチュエータ、および当該股関節アクチュエータの駆動を制御する制御装置が備わっているロボティックウエアにおいて、前記制御装置により実行される前記装着者の起立動作を支援する起立動作支援方法であって、
    装着者の起立動作における当該装着者と前記股関節アクチュエータの出力部材との間に生じる相互作用トルクを所定のサンプリング周期で検出し、
    前記股関節アクチュエータの起立支援動作を、前記相互作用トルクに基づき、神経振動子モデルを用いた同調制御によりフィードバック制御し、
    前記アシスト力が作用しない状態での前記装着者の前記起立動作の速度に、前記股関節アクチュエータの前記起立支援動作の起立速度が一致するように、前記神経振動子モデルの自励振動の周波数を設定し、
    前記装着者が前記起立動作を行った場合において、前記股関節アクチュエータの無負荷状態での角度変化と、当該股関節アクチュエータの出力部材に作用する前記相互作用トルクとを計測し、
    計測結果に基づき、前記相互作用トルクの最小値から最大値までの時間を算出し、
    当該時間が、前記起立支援動作の開始から終了までの時間の半分の時間に相当するように、前記起立速度を設定するロボティックウエアを用いた起立動作支援方法。
  2. 装着者の股関節および膝関節のうち、少なくとも股関節を中心とする動作を支援するアシスト力を発生する股関節アクチュエータ、および当該股関節アクチュエータの駆動を制御する制御装置が備わっているロボティックウエアにおいて、前記制御装置により実行される前記装着者の起立動作を支援する起立動作支援方法であって、
    装着者の起立動作における当該装着者と前記股関節アクチュエータの出力部材との間に生じる相互作用トルクを所定のサンプリング周期で検出し、
    前記股関節アクチュエータの起立支援動作を、前記相互作用トルクに基づき、神経振動子モデルを用いた同調制御によりフィードバック制御し、
    前記神経振動子モデルを用いた同調制御では、前記神経振動子モデルの出力に所定のオフセット値を加えて、前記股関節アクチュエータの出力部材の目標角度を生成し、
    前記装着者の起立動作における屈曲動作の間は、前記オフセット値を0に設定し、
    前記装着者の起立動作における伸展動作においては、当該伸展動作の進行に伴って、前記オフセット値を0から所定の値まで漸増させるロボテッィクウエアを用いた起立動作支援方法。
  3. 装着者の股関節および膝関節のうち、少なくとも股関節を中心とする動作を支援するアシスト力を発生する股関節アクチュエータ、および当該股関節アクチュエータの駆動を制御する制御装置が備わっているロボティックウエアにおいて、前記制御装置により実行される前記装着者の起立動作を支援する起立動作支援方法であって、
    装着者の起立動作における当該装着者と前記股関節アクチュエータの出力部材との間に生じる相互作用トルクを所定のサンプリング周期で検出し、
    前記股関節アクチュエータの起立支援動作を、前記相互作用トルクに基づき、神経振動子モデルを用いた同調制御によりフィードバック制御し、
    前記神経振動子モデルを用いた同調制御では、前記相互作用トルクに基づき得られる外部入力に対する前記神経振動子モデルの同調性を、
    前記装着者の起立動作における屈曲動作の間は、相対的に高く設定し、
    前記装着者の起立動作における伸展動作の間は、相対的に低く設定するロボティックウエアを用いた起立動作支援方法。
  4. 請求項2または3において、
    前記装着者の起立動作における股関節角度を検出し、
    検出した前記股関節角度に基づき、前記伸展動作の開始時点を認識するロボティックウエアを用いた起立動作支援方法。
  5. 請求項1ないし4のうちのいずれか一つの項において、
    前記同調制御における前記神経振動子モデルを、以下の非線形1階連立微分方程式により規定し、

    ここで、
    xi:i番目の神経素子の内部状態を示す係数
    g(xi):i番目の神経素子の出力
    fi:i番目の神経素子の疲労状態を表す係数
    Si:i番目の神経素子への定常入力
    bi:i番目の神経素子の疲労係数
    aij:i番目の神経素子からj番目の神経素子への結合係数(神経素子間の重み係数)Ta,Tr:時定数
    Input:外部入力
    Output:出力
    であり、
    前記相互作用トルクをτ_mutualとし、前記神経振動子モデルの入力信号を増幅することで当該神経振動子モデルの自励振動が入力信号に同調する度合いを調節するゲインを同調ゲインCとすると、前記神経振動子モデルの前記外部入力Inputは、前記相互作用トルクτ_mutualおよび同調ゲインCを用いて、
    Input=C*τ_mutual
    ただし、0 ≦ C ≦ 1
    で表されるロボティックウエアを用いた起立動作支援方法。
  6. 請求項5に記載の方法により前記ロボティックウエアの前記股関節アクチュエータを制御するロボティックウエアを用いた起立動作支援用プログラムであって、
    前記装着者の起立動作における当該装着者と前記股関節アクチュエータの出力部材との間に生じる相互作用トルクを所定のサンプリング周期で取得し、取得した前記相互作用トルクに基づき、神経振動子モデルを用いた同調制御により、前記股関節アクチュエータの前記起立支援動作をフィードバック制御する同調制御機能を、コンピュータに実行させることを特徴とするロボティックウエアを用いた起立動作支援用コンピュータプログラム。
  7. 請求項6において、
    前記同調制御機能は、
    前記相互作用トルクを、前記同調ゲインを用いて調整して、前記外部入力を生成するゲイン調整機能、
    調整後の前記外部入力に同調する出力を算出する前記神経振動子モデルを用いた解析機能、および、
    前記解析機能によって得られる出力に基づき、前記股関節アクチュエータの前記起立支援動作を制御するPID制御機能
    を含むロボティックウエアを用いた起立動作支援用コンピュータプログラム。
  8. 装着者の股関節の部位に起立動作を支援するアシスト力を伝える股関節アクチュエータと、
    前記装着者の起立動作における当該装着者と前記股関節アクチュエータの出力部材との間に生じる相互作用トルクを所定のサンプリング周期で検出する検出部と、
    前記股関節アクチュエータによる起立支援動作を、前記相互作用トルクに基づき、神経振動子モデルを用いた同調制御によりフィードバック制御する同調制御部と
    を有しており、
    前記装着者の前記起立動作の速度に、前記股関節アクチュエータの前記起立支援動作の起立速度が一致するように、前記神経振動子モデルの自励振動の周波数が設定されており、
    前記装着者が前記起立動作を行った場合において計測された、前記股関節アクチュエータの無負荷状態での角度変化と、当該股関節アクチュエータの出力部に作用する前記相互作用トルクとに基づき、前記相互作用トルクの最小値から最大値までの時間を算出し、当該時間が、前記起立支援動作の開始から終了まで半分の時間となるように、前記起立速度が設定されているロボティックウエア。
  9. 装着者の股関節の部位に起立動作を支援するアシスト力を伝える股関節アクチュエータと、
    前記装着者の起立動作における当該装着者と前記股関節アクチュエータの出力部材との間に生じる相互作用トルクを所定のサンプリング周期で検出する検出部と、
    前記股関節アクチュエータによる起立支援動作を、前記相互作用トルクに基づき、神経振動子モデルを用いた同調制御によりフィードバック制御する同調制御部と
    を有しており、
    前記同調制御部は、
    前記神経振動子モデルの出力に所定のオフセット値を加えて、前記股関節アクチュエータによる股関節の起立動作の目標角度を生成し、
    前記装着者の起立動作における屈曲動作の間は、前記オフセット値を0に設定し、
    前記装着者の起立動作における伸展動作においては、当該伸展動作の進行に伴って、前記オフセット値を0から所定の値まで漸増させるロボテッィクウエア。
  10. 装着者の股関節の部位に起立動作を支援するアシスト力を伝える股関節アクチュエータと、
    前記装着者の起立動作における当該装着者と前記股関節アクチュエータの出力部材との間に生じる相互作用トルクを所定のサンプリング周期で検出する検出部と、
    前記股関節アクチュエータによる起立支援動作を、前記相互作用トルクに基づき、神経振動子モデルを用いた同調制御によりフィードバック制御する同調制御部と
    を有しており、
    前記同調制御部は、
    前記相互作用トルクに基づき得られる外部入力に対する前記神経振動子モデルの同調性を、前記装着者の起立動作における屈曲動作の間は相対的に高く設定し、前記装着者の起立動作における伸展動作の間は相対的に低く設定するロボティックウエア。
  11. 請求項9または10において、
    前記装着者の起立動作における股関節角度を検出する検出部を有し、
    前記同調制御部は、前記股関節角度に基づき、前記伸展動作の開始時点を認識するロボティックウエア。
  12. 請求項8ないし11のうちのいずれか一つの項において、
    装着者の膝関節の部位に、起立動作を支援するアシスト力を伝える膝関節アクチュエータと、
    前記装着者の起立動作における当該装着者と前記膝関節アクチュエータの出力部材との間に生じる膝側相互作用トルクを所定のサンプリング周期で検出する膝側検出部と、
    前記膝関節アクチュエータによる膝関節に対する起立支援動作を、前記膝側相互作用トルクに基づき、神経振動子モデルを用いた同調制御によりフィードバック制御する膝側同調制御部と
    を有していることを特徴とするロボティックウエア。
  13. 請求項8ないし12のうちのいずれか一つの項において、
    前記同調制御における前記神経振動子モデルは、以下の非線形1階連立微分方程式により規定され、

    ここで、
    xi:i番目の神経素子の内部状態を示す係数
    g(xi):i番目の神経素子の出力
    fi:i番目の神経素子の疲労状態を表す係数
    Si:i番目の神経素子への定常入力
    bi:i番目の神経素子の疲労係数
    aij:i番目の神経素子からj番目の神経素子への結合係数(神経素子間の重み係数)Ta,Tr:時定数
    Input:外部入力
    Output:出力
    であり、
    前記相互作用トルクをτ_mutualとし、前記神経振動子モデルの入力信号を増幅することで当該神経振動子モデルの自励振動が入力信号に同調する度合いを調節するゲインを同調ゲインCとすると、前記神経振動子モデルの前記外部入力Inputは、前記相互作用トルクτ_mutualおよび同調ゲインCを用いて、
    Input=C*τ_mutual
    ただし、0 ≦ C ≦ 1
    で表されるロボティックウエア。
  14. 請求項13において、
    前記同調制御部は、
    前記相互作用トルクを、前記同調ゲインを用いて調整して前記外部入力を生成するゲイン調整部と、
    前記外部入力に同調する出力を算出する前記神経振動子モデルを用いた解析部と、
    前記解析部の前記出力に基づき、前記股関節アクチュエータの前記起立支援動作を制御するPID制御部と
    を備えているロボティックウエア。
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