JP6773562B2 - スフィンゴ脂質吸収促進剤 - Google Patents

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Description

関連出願の参照
本願は、先行する日本国特許出願である特願2015−000745号(出願日:2015年1月6日)に基づくものであって、その優先権の利益を主張するものであり、その開示内容全体は参照することによりここに組み込まれる。
本発明は、スフィンゴ脂質吸収促進剤(Absorption Promoter of Sphingolipid)に関する。また、本発明は、乳酸菌および/またはビフィズス菌の発酵物および/または培養物と、追加のスフィンゴ脂質とを含んでなる、経口摂取用または経腸投与用組成物に関する。
スフィンゴ脂質は、真核生物の細胞膜を構成する成分であり、スフィンゴイド塩基を持つ脂質の総称であり、経口摂取に基づく、皮膚のバリア機能の改善効果などが明らかにされている。
スフィンゴミエリンは、乳由来のスフィンゴ脂質の一つである。スフィンゴミエリンについては、経口摂取に基づく、皮膚の状態の悪化(皮膚のバリア機能の低下、皮膚の乾燥・かさつき、角層の水分量の低下、アトピー性皮膚炎など)の予防効果や改善効果などが明らかにされている。
さらに、スフィンゴミエリンについては、ガン(大腸がん)抑制作用(菅原達也、「食品機能性成分としてのスフィンゴ脂質の消化と吸収」、日本栄養・食糧学会誌、第66巻4号、pp.177-183 (2013))、美肌作用(特開2008−184428号公報)、乳幼児脳発達促進作用(特許第3203485号)、ミトコンドリア機能向上作用(特開2011−157329号公報)、運動機能向上作用(特開2014−141496号公報)、内臓脂肪蓄積抑制および血中アディポネクチン濃度上昇促進作用(抗高血糖作用、抗高脂血症作用)(特開2007−320900号公報)、感染症予防作用(特開2008−037788号公報)などがあることが知られている。
スフィンゴミエリンは、セラミドとホスホコリンで構成される物質であり、スフィンゴミエリナーゼによって、セラミドとホスホコリンとに加水分解される。さらに、セラミドは、セラミダーゼによって、スフィンゴイド塩基と脂肪酸とに加水分解され、その多くは、脂肪酸として、小腸の上皮細胞に吸収されると共に、一部のスフィンゴイド塩基は、スフィンゴミエリンやセラミドなどに再合成される。なお、スフィンゴミエリンは、腸内細菌によって分解されることが示唆されている。
グルコシルセラミドは、スフィンゴ塩基と脂肪酸からなるセラミドにグルコースが結合された物質である。グルコセラミド分解酵素によって、セラミドとグルコースに加水分解される。ガラクトシルセラミドは、スフィンゴ塩基と脂肪酸からなるセラミドにガラクトースが結合された物質である。
一般的に、脂質を経口摂取すると、胆汁酸によって、乳化され、リパーゼによって、脂肪酸とモノグリセリドへ分解されて、小腸で吸収される。さらに、モノグリセリドは、小腸の上皮細胞内で、トリアシルグリセロールに再合成され、カイロミクロンとなって、リンパ管に送られて、胸管を経てから、全身循環へと移行する。
ところが、スフィンゴミエリンやセラミドは、その消化・吸収性が低いことが明らかになっている。その原因として、消化管内のスフィンゴミエリナーゼの活性が低いことや、そこに発現したトランスポーターによって、いったん吸収したスフィンゴイド塩基が排出されることなどが考えられている。
したがって、上記のような様々な作用が期待されるスフィンゴミエリンを含むスフィンゴ脂質を経口摂取した場合に、スフィンゴ脂質の吸収性を高めることができ、かつ、安全で、簡便かつ効率的な摂取手段が望まれていた。
脂質の消化吸収を向上させることに関しては、例えば、特許第3920969号には、脂質の消化吸収を向上させるために、胆汁酸や胆汁酸塩を配合した栄養組成物が提案されている。しかしながら、ここには、スフィンゴ脂質について記載されておらず、また胆汁酸自体は苦みがあり、食品として使用する場合には、その影響を考慮しなければならない。
発酵乳(ヨーグルト)は、乳に乳酸菌や酵母を混ぜて発酵することによって調製される発酵食品であり、その美味しさと、美容や健康面から幅広く食されている。
例えば、特開平7−327633号公報には、キトサン、はと麦、粉末ヨーグルトを混合したキトサン加工食品が開示されている。ここで、粉末ヨーグルトは、キトサンの消化吸収を助ける働きがあることが記載されている。しかしながら、ここでの消化吸収機能は、粉末ヨーグルト中の活性レシチンの作用に着目したものであり、ここには、スフィンゴ脂質の消化吸収の促進については開示も示唆もされていない。
本発明者らは今般、発酵乳(ヨーグルト)をスフィンゴミエリンと同時に摂取すると、スフィンゴミエリンの生体内への吸収量を増加させることができること、すなわち、スフィンゴミエリンの吸収が向上することを予想外にも見出した。このとき、本発明者らは、セラミドの吸収が向上することも見出している。そして、これらのことから、本発明者らは、乳酸菌および/またはビフィズス菌の発酵物および/または培養物の摂取によって、スフィンゴ脂質の吸収が促進できることを発見した。さらにスフィンゴミエリンを含むスフィンゴ脂質の生体内への吸収量が向上することで、スフィンゴ脂質の吸収に伴って期待される、皮膚のバリア機能の改善の他、様々な有益な作用や効果の向上を図ることができる。そして、本発明者らは、ヨーグルトと、ヨーグルトの含量を超えたスフィンゴミエリンとを含む経口用もしくは経腸用組成物を調製することで、スフィンゴミエリンの生体内への吸収量の向上を実際に確認した。本発明は、これら知見に基づくものである。
よって、本発明は、スフィンゴ脂質を摂取した場合に、スフィンゴ脂質の吸収を向上や促進することができる手段であって、安全かつ簡便で、経済的(もしくは効率的)に吸収することができる手段を提供することを目的とする。
すなわち、本発明によれば、以下の発明が提供される。
<1> 乳酸菌および/またはビフィズス菌の発酵物および/または培養物を有効成分とする、スフィンゴ脂質吸収促進剤。
<2> 前記<1>のスフィンゴ脂質吸収促進剤において、スフィンゴ脂質がスフィンゴミエリンであり、スフィンゴミエリンの生体内への吸収を促進するのがよい。
<3> 前記<2>のスフィンゴ脂質吸収促進剤において、乳由来のスフィンゴミエリンの生体内への吸収を促進するのがよい。
<4> 前記<1>〜<3>のいずれかのスフィンゴ脂質吸収促進剤において、スフィンゴ脂質がセラミド、グルコシルセラミド、ガラクトシルセラミドのいずれか1つ以上であるのがよい。
<5> 前記<1>〜<4>のいずれかのスフィンゴ脂質吸収促進剤において、乳酸菌および/またはビフィズス菌の発酵物および/または培養物が、乳酸菌および/またはビフィズス菌の乳発酵物および/または乳培養物であるのがよい。
<6> 多糖類を有効成分とする、スフィンゴ脂質吸収促進剤。
<7> 前記<1>〜<6>のいずれかのスフィンゴ脂質吸収促進剤と、スフィンゴ脂質とを含んでなる、経口摂取用または経腸投与用組成物。
<8> 乳酸菌および/またはビフィズス菌の発酵物および/または培養物と、追加のスフィンゴ脂質とを含んでなる、経口摂取用または経腸投与用組成物。
<9> 前記<7>または<8>の経口摂取用または経腸投与用組成物において、乳酸菌および/またはビフィズス菌の発酵物および/または培養物と、スフィンゴ脂質との配合比が、スフィンゴ脂質の1mgに対して、乳酸菌および/またはビフィズス菌の発酵物および/または培養物(乾重量(粉末))を1〜10000mgで含んでなるのがよい。
<10> 前記<7>または<8>の経口摂取用または経腸投与用組成物において、乳酸菌および/またはビフィズス菌の発酵物および/または培養物と、スフィンゴ脂質との配合比が、スフィンゴ脂質の1mgに対して、乳酸菌および/またはビフィズス菌の発酵物および/または培養物(湿重量)を0.01〜100gで含んでなるのがよい。
<11> 前記<7>〜<10>のいずれかの経口摂取用または経腸投与用組成物において、スフィンゴ脂質はスフィンゴミエリンであるのがよい。
<12> 前記<7>〜<11>のいずれかの経口摂取用または経腸投与用組成物は、スフィンゴミエリンの生体内への吸収によって誘発される生体内の作用のために用いられるのがよい。
<13> 前記<12>の経口摂取用または経腸投与用組成物において、前記<7>の生体内の作用が、皮膚の状態の悪化の予防もしくは改善、ガン抑制作用、美肌作用、乳幼児脳発達促進作用、ミトコンドリア機能向上作用、運動機能向上作用、内臓脂肪蓄積抑制および血中アディポネクチン濃度上昇促進作用、および、感染症予防作用からなる群より選択されるものであるのがよい。
<14> 前記<7>〜<11>のいずれかの経口摂取用または経腸投与用組成物は、皮膚の状態の悪化の予防、抑制または改善用であるのがよい。
<15> 前記<14>の組成物において、皮膚の状態の悪化が、皮膚のバリア機能の悪化であるのがよい。
<16> 前記<1>〜<6>のいずれかのスフィンゴ脂質吸収促進剤、または前記<7>〜<15>のいずれかの組成物を含む、飲食品。
<17> 前記<16>の飲食品において、機能性食品、健康栄養食品、サプリメント、特定保健用食品、機能性表示食品、または疾病リスク低減表示付き食品であるのがよい。
<18> 乳酸菌および/またはビフィズス菌の発酵物および/または培養物をスフィンゴ脂質と同時に、スフィンゴ脂質の摂取が望まれる対象に、経口摂取させるか、または経腸投与することを含む、スフィンゴ脂質の吸収促進方法。
<19>前記<18>の吸収促進方法において、スフィンゴ脂質はスフィンゴミエリンであるのがよい。
本発明のスフィンゴ脂質吸収促進剤によれば、スフィンゴミエリンを摂取した場合に、スフィンゴミエリンの吸収を向上や促進することができ、さらに、安全かつ簡便で、経済的(もしくは効率的)にスフィンゴミエリンを吸収することができる。本発明の吸収促進剤および組成物において使用するヨーグルトは、従来食品として使用の経験があるものであることから、安全性が高く、実際の摂取にあたって簡易であり、経済的にも有利なものである。
実施例1の結果(リンパ液中のセラミド分子種量の推移(積算値))を示すグラフである。 実施例1の結果(リンパ液中のスフィンゴミエリン分子種量の推移(積算値))を示すグラフである。 実施例2の結果(血清中のセラミド分子種量の変化)を示すグラフである(図中、*はMPL群に対して有意差(P<0.05)があることを意味する)。 実施例2の結果(血清中のセラミド分子種量の時間曲線下面積)を示すグラフである(図中、*はMPL群に対して有意差(P<0.05)があることを意味する)。 実施例3の試験1における角層水分量の推移を示したグラフである(異なる英数字間に有意差(p<0.05)あり)。 実施例3の試験1における経皮水分蒸散量の推移を示したグラフである(異なる英数字間に有意差(p<0.05)あり)。 実施例4の結果(血清中のセラミド分子種量の時間曲線下面積)を示すグラフである(図中、*はMPL群に対して有意差(P<0.05)があることを意味し、#は、未発酵乳群に対して有意差(P<0.05)があることを意味する)。 実施例5の結果(血清中のセラミド分子種量の時間曲線下面積)を示すグラフである(図中、*はMPL群に対して有意差(P<0.05)があることを意味する)。 実施例6の結果(血清中のセラミド分子種量の時間曲線下面積)を示すグラフである(図中、*はMPL群に対して有意差(P<0.05)があることを意味する)。 実施例7の結果(血清中のセラミド分子種量の時間曲線下面積)を示すグラフである(図中、*はMPL群に対して有意差(P<0.05)があることを意味する)。 実施例8の結果(血清中のセラミド分子種量の時間曲線下面積)を示すグラフである(図中、*はMPL群に対して有意差(P<0.05)があることを意味する)。 実施例9の結果(血清中のセラミド分子種量の時間曲線下面積)を示すグラフである(図中、*はMPL群に対して有意差(P<0.05)があることを意味する)。 実施例10の結果(血清中のセラミド分子種量の時間曲線下面積)を示すグラフである(図中、*はMPL群に対して有意差(P<0.05)があることを意味する)。
以下、本発明の実施形態について説明する。
スフィンゴ脂質吸収促進剤
本発明のスフィンゴ脂質吸収促進剤は、前記したように、乳酸菌および/またはビフィズス菌の発酵物および/または培養物を有効成分とする。ここで、「有効成分とする」とは、本発明による吸収促進剤が、スフィンゴ脂質の吸収を促進する作用を生体内で奏するのに充分な使用量(すなわち、有効量)の乳酸菌および/またはビフィズス菌の発酵物および/または培養物を含有することをいう。
また、ここで、スフィンゴ脂質の「吸収促進」とは、スフィンゴ脂質の生体内への吸収を促進することを意味する。そして、ここでいう「吸収」とは、典型的には、本発明の吸収促進剤と同時または逐次的に経口摂取や経腸投与されたスフィンゴ脂質、または既に体内へ摂取済のスフィンゴ脂質を、消化管や吸収管などにおける生体膜を介して、生体内の循環器(血管系やリンパ系)など中に取り込むことをいい、これにより、実際に吸収されたスフィンゴ脂質は、スフィンゴ脂質もしくはその誘導物質として、生体内への様々な作用を及ぼすことが可能となる。
また、ここでいう「促進」とは、吸収促進剤を使用しない場合に比べて、スフィンゴ脂質の吸収が促進されることを意味し、ここには、吸収量が増加すること、吸収する速度が向上すること、低下した吸収能の改善などを包含する。なお、本発明の好ましい態様において「促進」とは、スフィンゴ脂質の生体内への吸収量が増加する意味で使用される。
本明細書において、スフィンゴ脂質は、天然由来のものであり、例えば、牛乳、ヤギ乳、羊乳、馬乳などの乳由来のもの、卵黄由来のもの、大豆、米、トウモロコシ、穀物由来のもの、コンニャク由来、ビート由来などが挙げられ、好ましくは、乳由来のものであり、より好ましくは牛乳由来のものである。スフィンゴ脂質には、スフィンゴミエリン、グルコシルセラミド、ガラクトシルセラミドが包含される。スフィンゴ脂質は、好ましくはスフィンゴリン脂質であり、より好ましくは、スフィンゴミエリンである。これらは、天然原料より慣用の方法により調製することもできるが、市販品を使用しても良い。
本発明において、使用可能なスフィンゴミエリンは、スフィンゴ脂質の一つであり、前記したスフィンゴ脂質と同様に、天然由来のものであり、好ましくは、乳由来のものであり、より好ましくは、牛乳由来のものである。スフィンゴミエリンは、天然原料から慣用の方法によって調製することもできるが、市販品を使用しても良い。
本発明の好ましい態様によれば、スフィンゴ脂質吸収促進剤において、乳由来のスフィンゴミエリンの生体内への吸収が促進される。
本発明において、スフィンゴ脂質(例えば、スフィンゴミエリン)の吸収は、生体内へのスフィンゴ脂質量を測定することで評価することができる。このとき、例えば、スフィンゴミエリンの一定の分子種に着目し、その分子種が生体内に取り込まれた量を測定することで、スフィンゴミエリンの吸収を評価してもよい。あるいは、スフィンゴミエリンの誘導物質、例えば、スフィンゴミエリンの加水分解により生ずるセラミドが生体内に取り込まれた量を測定することで、スフィンゴミエリンの吸収を評価することもできる。
一般的に、スフィンゴミエリン、特に、乳由来のスフィンゴミエリンに含まれる分子種としては、例えば、以下のようなものを挙げることができる:
すなわち、炭素鎖数が16〜18であるスフィンゴシンまたはジヒドロスフィンゴシンと炭素鎖が14〜26である脂肪酸がそれぞれアミド結合したセラミド構造に、ホスホコリンまたはホスホエタノールアミンが結合したスフィンゴミエリン分子種である。
スフィンゴミエリンの吸収では、これら分子種のいずれか、または複数を組み合わせたものに着目して、その量またはその誘導物質の量を測定することによって評価することができる。
前記したように、スフィンゴミエリンは、セラミドとホスホコリンで構成される物質であり、スフィンゴミエリナーゼによって、セラミドとホスホコリンとに加水分解される。セラミドはさらに、セラミダーゼによってスフィンゴイド塩基と脂肪酸とに加水分解される。このため、スフィンゴ脂質吸収促進剤によって、スフィンゴミエリンの吸収が促進される他、セラミドの生体内への吸収も促進される。
このため、本発明のスフィンゴ脂質吸収促進剤によれば、セラミドの生体内への吸収も促進される。
本発明の別の態様によれば、乳酸菌および/またはビフィズス菌の発酵物および/または培養物を有効成分とする、セラミド、グルコシルセラミド、および/またはガラクトシルサラミドの吸収促進剤も提供される。このような本発明によるセラミド、グルコシルセラミド、および/またはガラクトシルサラミド脂質吸収促進剤によれば、セラミド、グルコシルセラミド、ガラクトシルサラミド、またはそれらの2以上の組み合わせの生体内への吸収も促進される。
本発明において、セラミド、グルコシルセラミド、ガラクトシルセラミドに含まれる分子種としては、例えば、以下のようなものを挙げることができる:
すなわち、炭素鎖数が16〜18であるスフィンゴシン、ジヒドロスフィンゴシン、スフィンガジエニン、フィトスフィンゴシンまたはヒドロキシスフィンゲニンと炭素鎖が14〜26である脂肪酸またはヒドロキシ脂肪酸がそれぞれアミド結合したセラミド分子種。上記のセラミド分子種にグルコースが結合したグルコシルセラミド分子種。上記のセラミド分子種にガラクトースが結合したガラクトシルセラミド分子種である。
本発明において、「乳酸菌および/またはビフィズス菌の発酵物および/または培養物」とは、乳酸菌とビフィズス菌の発酵物、乳酸菌の発酵物、ビフィズス菌の発酵物、乳酸菌とビフィズス菌の培養物、乳酸菌の培養物、ビフィズス菌の培養物、およびそれらの組合せを含む意味で使用される。
本発明において、「乳酸菌」とは、ブドウ糖を資化して対糖収率で50%以上の乳酸を生産する微生物の総称で、生理学的性質としてグラム陽性菌の球菌または桿菌で、運動性なし、胞子形成能なし、カタラーゼ陰性などの特徴を有しているものである。乳酸菌は古来から、発酵乳等を介して世界各地で食されており、極めて安全性の高い微生物と言える。乳酸菌は現在までに、Lactococcus属、Lactobacillus属、Leuconostoc属、Pediococcus属、Streptococcus属、Wissella属、Tetragenococcus属、Oenococcus属、Enterococcus属、Vagococcus属、Carnobacterium属の11属に分類されている。本発明において、これらの乳酸菌を用いることができる。これらの中でも、好適な乳酸菌として、Lactobacillus属、すなわち、Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus、Streptococcus thermophilus、Lactobacillus lactis、Lactobacillus gasseriなどが挙げられる。とくに、Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricusおよびStreptococcus thermophilusの混合スターターを用いることが好ましい。
本発明において、「ビフィズス菌」とは、ブドウ糖を資化して酢酸や乳酸を生成する微生物であり、Bifidobacterium属に属する微生物である。例えば、Bifidobacterium longum、Bifidobacterium infantis、Bifidobacterium adolescentis、Bifidobacterium breveなどが例示できる。
本発明の一つの好ましい態様によれば、乳酸菌は、ブルガリア菌とサーモフィラス菌の組合せを含むものであり、より好ましくは、ブルガリア菌とサーモフィラス菌の組合せである。
また本発明において「発酵物」とは、乳酸菌および/またはビフィズス菌による発酵によって得られた培養物自体をいう。本発明において「発酵物」には、乳酸菌および/またはビフィズス菌の発酵物およびその処理物、例えば、前記培養物(乳酸菌および/またはビフィズス菌発酵物)をろ過・遠心分離もしくは膜分離等で除菌して得られた培養濾液や培養上清液、前記培養濾液・培養上清液や乳酸菌および/またはビフィズス菌発酵物等をエバポレーター等により濃縮した濃縮物、ペースト化物、希釈物又は(凍結、加熱、減圧など)乾燥物が含まれる。
さらに、本発明において、処理物の作成の際は、ろ過、遠心分離、膜分離等の除菌処理、沈殿、濃縮、ペースト化、希釈、乾燥などの前述の処理工程の1つ又は複数を組み合わせて用いることができる。
また、本発明において「培養物」の培地としては、例えば、酵母エキスを添加した脱脂粉乳培地、MRS培地などが挙げられる。
本発明の一つの好ましい態様によれば、「乳酸菌および/またはビフィズス菌の発酵物および/または培養物」は、乳酸菌および/またはビフィズス菌の乳発酵物および/または乳培養物である。さらに本発明の一つのより好ましい態様によれば、「乳酸菌および/またはビフィズス菌の発酵物および/または培養物」は、発酵乳(ヨーグルト)である。ここで、前記ヨーグルトは、好ましくはその上清であることができる。本発明の一つのさらに好ましい態様によれば、「乳酸菌および/またはビフィズス菌の発酵物および/または培養物」は、多糖類である。ここで、前記多糖類は、発酵物および/または培養物由来のものであることが好ましい。
よって、本発明の別の態様によれば、多糖類を有効成分とするスフィンゴ脂質吸収促進剤が提供される。
本発明において、「乳発酵物および/または乳培養物」、すなわち、「乳の発酵物および/または乳の培養物」は、乳を含む原料を発酵や培養させてなるものをいう。乳の例としては、牛乳等の獣乳や、その加工品(例えば、脱脂乳、全脂粉乳、脱脂粉乳、れん乳、カゼイン、乳清、生クリーム、コンパウンドクリーム、バター、バターミルクパウダー等)や、大豆由来の豆乳等の植物性乳等が挙げられる。
発酵乳の原料として、例えば、発酵乳原料ミックスと呼ばれるものが挙げられる。
発酵乳原料ミックスとは、原料乳および他の成分を含む混合物であり、例えば、原料乳、水、他の任意成分(例えば、砂糖、糖類、甘味料、酸味料、ミネラル、ビタミン、香料等)等の発酵乳の製造に常用される原料を加温して溶解し、混合することによって得ることができる。また、発酵乳は、脱脂粉乳やホエイ分解物などの培養液にペクチン、グアーガム、キサンタンガム、カラギーナン、加工でんぶんなどの増粘剤やゲル化剤を使用できる。乳には、殺菌前のものも、殺菌後のものも含まれる。原料乳の具体的な素材(材料)には、水、生乳、殺菌乳、脱脂乳、全脂粉乳、脱脂粉乳、全脂濃縮乳、脱脂濃縮乳、バターミルク、バター、クリームなどが含まれてもよい。また、ホエイタンパク質濃縮物(WPC)、ホエイタンパク質単離物(WPI)、α−ラクトアルブミン(α−La)、β−ラクトグロブリン(β−Lg)などが含まれてもよい。
発酵乳の製造方法は、原材料を混合(調合)する、原料ミックスの調合工程を含む。原料ミックスの調合工程では、発酵乳を製造する際に用いられる通常の条件を適宜採用すればよい。さらに、本発明の発酵乳の製造方法は、従来の方法と同様に、原料ミックスの(加熱)殺菌工程、原料ミックスの冷却工程、スターターの添加工程、発酵工程、発酵乳の冷却工程を含み、この順番で含むことが望ましい。なお、これらの工程では、発酵乳を製造する際に用いられる通常の条件を適宜採用すればよい。
乳酸菌等を培養するための培地としては通常で用いられる培地を使用できる。すなわち、主炭素源のほか窒素源、無機物その他の栄養素を程良く含有する培地ならば、いずれの培地も使用可能である。炭素源としてはラクトース、グルコース、スクロース、フラクトース、澱粉加水分解物、廃糖蜜などが使用菌の資化性に応じて使用できる。窒素源としてはカゼインの加水分解物、ホエイタンパク質加水分解物、α−ラクトアルブミン、β−ラクトグロブリン、グリコマクロペプチド、大豆タンパク質加水分解物等の有機窒素含有物が使用できる。ほかに増殖促進剤としては、肉エキス、魚肉エキス、酵母エキス等を使用いることができる。
乳酸菌等を培養するための条件としては、嫌気状態が好ましいが、通常で用いられる液体静置培養などによる微好気状態でもよい。この嫌気状態の培養には、炭素ガス気層下で培養する方法などの公知の手法を適用することができるが、他の方法でもかまわない。培養温度は一般に30〜47℃が好ましく、より好ましくは35〜46℃、さらに好ましくは37℃〜45℃である。乳酸菌等を培養中の培地のpHとしては、6〜7に維持することが好ましいが、菌が生育する温度であれば他のpH条件でもよい。乳酸菌等の培養時間としては、通常で1〜48時間が好ましく、より好ましくは8〜36時間、さらに好ましくは10〜24時間が好ましい。
本発明における発酵乳(ヨーグルト)の典型例としては、無脂乳固形分が8重量%以上であり、乳酸菌数又は酵母数が1000万/ml以上である。例えば、1011個/ml以下である。
用途
本発明の有効成分である乳酸菌および/またはビフィズス菌の発酵物および/または培養物は、スフィンゴ脂質の吸収促進活性を有し(後述する実施例1および2)、通常、セラミドの吸収促進活性も有する。したがって、本発明のスフィンゴ脂質吸収促進剤を使用することで、生体内でのスフィンゴ脂質の吸収を向上させることができるため、生体内でスフィンゴ脂質またはその誘導物質の存在により奏される種々の作用を、より一層向上させることができる。この点は、スフィンゴ脂質がスフィンゴミエリンである場合も当然同様のことが言え、本発明のスフィンゴミエリン吸収促進剤を使用することで、生体内でのスフィンゴミエリンの吸収を向上させることができるため、生体内でスフィンゴミエリンまたはその誘導物質の存在により奏される種々の作用を、より一層向上させることができる。
さらに同様に、スフィンゴ脂質がセラミド、グリコシルセラミド、またはガラクトシルセラミドである場合、本発明のセラミド、グリコシルセラミド、またはガラクトシルセラミドの吸収促進剤を使用することで、生体内でのセラミド、グリコシルセラミド、またはガラクトシルセラミドの吸収を向上させることができる。このため、生体内でセラミド、グリコシルセラミド、またはガラクトシルセラミド、さらにそれらの誘導物質の存在により奏される種々の作用を、より一層向上させることもできる。
生体内でのスフィンゴミエリンまたはその誘導物質の存在量の増加によって、皮膚の状態の悪化(皮膚のバリア機能の低下、皮膚の乾燥・かさつき、角層の水分量の低下、アトピー性皮膚炎など)の向上、改善、増強、予防効果の向上が奏されうる。
また、生体内でのスフィンゴミエリンまたはその誘導物質の存在量の増加によって、ガン(大腸がん)抑制作用(菅原達也、「食品機能性成分としてのスフィンゴ脂質の消化と吸収」、日本栄養・食糧学会誌、第66巻4号、pp.177-183 (2013))、美肌作用(特開2008−184428号公報)、乳幼児脳発達促進作用(特許第3203485号)、ミトコンドリア機能向上作用(特開2011−157329号公報)、運動機能向上作用(特開2014−141496号公報)、内臓脂肪蓄積抑制および血中アディポネクチン濃度上昇促進作用(抗高血糖作用、抗高脂血症作用)(特開2007−320900号公報)、感染症予防作用(特開2008−037788号公報)などが発揮されうる。
よって、本発明のスフィンゴ脂質吸収促進剤により、スフィンゴ脂質の吸収が促進されることで、これらの効果が得られる。
さらに、後述する実施例3で示したように、スフィンゴ脂質の吸収促進により、紫外線による皮膚バリア機能の低下状態において、皮膚バリア機能をより一層改善することができる。
本発明において、皮膚の状態の悪化とは、例えば、皮膚のバリア機能の低下、皮膚の乾燥、皮膚のかさつき、角層の水分量の低下、アトピー性皮膚炎などが包含される。皮膚のバリア機能の低下には、バリア機能の維持も包含される。また、皮膚のバリア機能の低下は、好ましくは、紫外線の照射下における皮膚のバリア機能の低下である。
また、ここで、悪化した状態の「予防、抑制または改善」は、そのような状態の、調節、進行の遅延、緩和、発症予防、再発予防などを包含する意味で使用される。
よって、本発明によれば、スフィンゴ脂質の吸収促進により、生体内吸収されるスフィンゴ脂質を増やすことができるため、その結果、スフィンゴ脂質の生体内への吸収によって誘発される生体内の作用(機能、効能)の向上、改善、増強を図ることができる。なお、ここでいう生体内の作用とは、スフィンゴ脂質の生体内への吸収によって誘発されるものであって、具体的には、前記したように、種々の効果のものが上げられる。したがって、本発明によれば、スフィンゴ脂質吸収により誘発される生体内の作用(機能)の増強剤(スフィンゴ脂質吸収(摂取)に伴う機能の強化剤)を提供することもできる。
経口摂取用または経腸投与用組成物
前記したように、本発明によれば、本発明の有効成分、すなわち乳酸菌および/またはビフィズス菌の発酵物および/または培養物と、スフィンゴ脂質とを含んでなる、経口摂取用または経腸投与用組成物が提供される。この組成物は、そのような有効成分として、本発明のスフィンゴ脂質吸収促進剤を含んでなるということもできる。
乳酸菌および/またはビフィズス菌の発酵物および/または培養物では、多くの場合に、それ自体にスフィンゴ脂質が既に含まれているが、本発明の好ましい態様において、本発明の組成物は、乳酸菌および/またはビフィズス菌の発酵物および/または培養物と、追加のスフィンゴ脂質とを含んでなる。このため、本発明の組成物は、従来のヨーグルトなどのような、乳酸菌および/またはビフィズス菌の発酵物および/または培養物とは区別されうるものである。
ここで、「追加のスフィンゴ脂質」とは、乳酸菌および/またはビフィズス菌の発酵物および/または培養物にスフィンゴ脂質が含まれている場合に、乳酸菌および/またはビフィズス菌の発酵物および/または培養物に含まれているスフィンゴ脂質自体の量を超えて、追加的に組成物中に存在するスフィンゴ脂質のことを意味する。
追加のスフィンゴ脂質は、スフィンゴ脂質自体をそのまま使用してもよいが、例えば、乳由来のスフィンゴミエリンの高含有のリン脂質濃厚物(MPL)が挙げられる。クリーム又はバターから、あるいはバターオイルを製造する際の副産物であるバターゼラムから、アセトン(溶媒)および/またはエタノールの不溶画分として得ることもできる。バターゼラムは、市乳分野でも利用されており、入手可能である(例えば、ニュージーランド、Tatua社製)。バターゼラムには、スフィンゴミエリンが局在するMFGMが多く含まれており、原料として好適である。
バターゼラムからスフィンゴミエリンが局在するリン脂質の分画を分離するには、リン脂質がアセトンおよび/またはエタノールに不溶性であるという性質を利用する。複数回のアセトンの抽出により、中性脂質を含むアセトン可溶性画分を除去し、リン脂質が濃縮されたアセトン不溶性画分を得る。このアセトン不溶性画分を減圧濃縮してアセトンを除去し、この濃縮物を殺菌後に凍結乾燥してから、この乾燥物を粉砕して、乳由来のリン脂質画分を得るなどの形態で組成物に対して使用してもよい。
また、鶏皮粉末から総脂質を抽出し、乾燥処理した乾燥総脂質を、脂肪族炭化水素系溶剤と水溶性ケトン系溶剤との混合溶剤で抽出処理し、スフィンゴミエリンを主体とする不溶部を、水と水溶性ケトン系溶剤との混合溶剤で抽出処理し、可溶部に含まれる非脂質成分を除去したスフィンゴミエリンの抽出方法が挙げられる。魚介類、獣鳥類からの抽出方法などの既存の方法を用いることができる。風味の観点からは、乳由来のスフィンゴミエリンが好ましい。
本発明の組成物において、乳酸菌および/またはビフィズス菌の発酵物および/または培養物は、セットタイプヨーグルト(固形状発酵乳)、ソフトタイプヨーグルト(糊状発酵乳)、ドリンクヨーグルト(液状発酵乳)などの各種形態のヨーグルトであってもよく、また、穀物や果物、野菜、栄養成分などを含むヨーグルトであってもよい。
本発明の経口摂取用または経腸投与用組成物は、好ましくは、スフィンゴ脂質の生体内への吸収性が高められたものであり、より好ましくはスフィンゴミエリンの生体内への吸収性が高められたものである。すなわち、本発明の経口摂取用または経腸投与用組成物は、「スフィンゴ脂質高吸収性」、好ましくは「スフィンゴミエリン高吸収性」の経口摂取用または経腸投与用組成物ということができる。なお、「スフィンゴ脂質高吸収性」または「スフィンゴミエリン高吸収性」であることは、例えば、後述する実施例1または2のように、既存のヨーグルトなどの場合におけるスフィンゴミエリン吸収量と比較することで確認することができる。
スフィンゴ脂質の高吸収性またはスフィンゴミエリンの高吸収性の観点からは、本発明の経口摂取用または経腸投与用組成物において、乳酸菌および/またはビフィズス菌の発酵物および/または培養物と、スフィンゴ脂質との配合比が、スフィンゴ脂質の1mgに対して、乳酸菌および/またはビフィズス菌の発酵物および/または培養物(乾重量(粉末))を好ましくは1〜10000mg、より好ましくは5〜5000mg、さらに好ましくは10〜750mgで含んでなることとなる。
同様に、スフィンゴ脂質の高吸収性またはスフィンゴミエリンの高吸収性の観点からは、本発明の経口摂取用または経腸投与用組成物において、乳酸菌および/またはビフィズス菌の発酵物および/または培養物と、スフィンゴ脂質の配合比が、スフィンゴ脂質の1mgに対して、乳酸菌および/またはビフィズス菌の発酵物および/または培養物(湿重量)を好ましくは0.01〜100g、より好ましくは0.05〜50g、さらに好ましくは0.1〜7.5gで含んでなることとなる。
本発明の経口摂取用または経腸投与用組成物は、好ましくは、スフィンゴミエリンの生体内への吸収によって誘発される生体内の作用のために用いられる。そして、本発明の経口摂取用または経腸投与用組成物は、より好ましくは,前記の生体内の作用が、皮膚の状態の悪化の予防もしくは改善、ガン抑制作用、美肌作用、乳幼児脳発達促進作用、ミトコンドリア機能向上作用、運動機能向上作用、内臓脂肪蓄積抑制および血中アディポネクチン濃度上昇促進作用、および、感染症予防作用からなる群より選択される作用のために用いられる。
本発明の経口摂取用または経腸投与用組成物は、好ましくは、皮膚の状態の悪化の予防、抑制または改善作用のために用いられる。ここで、皮膚の状態の悪化は、皮膚のバリア機能の悪化であることが好ましい。そして、皮膚のバリア機能の悪化は、紫外線の照射によるものであることが好ましい。
本発明の組成物は、一つの好ましい態様として、医薬組成物であることができる。
本発明において、医薬組成物とは、製剤化のために許容されうる添加剤を併用して、常法に従い、経口製剤または非経口製剤として調製したものである。簡易性の点からは、経口製剤であることが好ましい。経口製剤の場合には、錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤、丸剤、徐放剤などの固形製剤、溶液、懸濁液、乳濁液などの液状製剤の形態をとることができる。製剤化のために許容されうる添加剤としては、例えば、賦形剤、安定剤、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、滑沢剤、甘味料、着色料、香料、緩衝剤、酸化防止剤、pH調整剤などが挙げられる。
また、本発明によれば、本発明のスフィンゴ脂質吸収促進剤、または前記した経口摂取用または経腸投与用組成物を含んでなる、飲食品が提供される。
このような本発明の組成物および飲食品は、例えば、本発明の吸収促進剤またはその有効成分を、その組成物および飲食品の材料成分に添加することを含んでなる製造方法によって製造することができる。
本発明の飲食品には、必要に応じて、任意の成分を加えることができる。このような任意の添加可能な成分としては、特段の制限はないが、通常、飲食品に配合される成分、甘味料、酸味料、野菜や果物や種実の汁やそのエキス、ビタミン、ミネラル、アミノ酸などの栄養素、乳酸菌、ビフィズス菌、プロピオン酸菌などの有用な微生物やその培養物、オリゴ糖などの機能性をもつ糖類、ローヤルゼリー、コラーゲン、セラミド、グルコサミン、アスタキサンチン、ポリフェノールなどの既存の機能性素材、香料、pH調整剤、賦形剤、酸味料、着色料、乳化剤、保存料などを配合することができる。
本発明において、飲食品とは、医薬組成物以外のものであって、溶液、懸濁液、乳濁液、粉末、固体成形物など、経口摂取可能な形態であればよく特に限定されない。具体的には、例えば、乳飲料、ヨーグルト類、乳酸菌飲料、発酵乳、アイスクリーム類、クリーム類、チーズ類などの乳製品;清涼飲料、果汁飲料、野菜飲料、豆乳飲料、コーヒー飲料、茶飲料、ゼリー飲料、ココア、スムージーなどの粉末飲料やスポーツ粉末飲料、栄養強化の粉末飲料、美容用の粉末食品、粉末スープ、蒸しパンのもと、濃縮飲料、アルコール飲料などの飲料類;パン、パスタ、麺、ケーキミックス、唐揚げ粉、パン粉などの小麦粉製品;チョコレート、ガム、飴、クッキー、グミ、スナック、和菓子、ゼリー、プリンなどのデザート菓子などの菓子類;加工調味料、風味調味料、調理ミックスなどの調味料;カレー、バスタソース、ポトフ、シチュー、和風食品のレトルト食品;加工油脂、バター、マーガリン、スプレッド、マヨネーズなどの油脂類;フリーズドライ食品などの即席食品類;農産缶詰、ジャム・マーマレード類、漬け物、煮豆、シリアル、雑炊などの農産加工品;水産加工品;畜産加工品;ピッツア、ドリア、グラタン、惣菜、フライなど冷凍食品;流動食、さらには動物の飼料、タブレット、口腔内に使用する化粧品などが挙げられる。
本発明の一つの好ましい態様によれば、飲食品は、乳飲料(加工乳を含んでもよい)、発酵乳、清涼飲料、ゼリー飲料、タブレット、美容用の粉末食品、粉末飲料、流動食、液状の調製粉乳であり、より好ましい態様によれば、飲食品は、乳飲料、発酵乳、清涼飲料、ゼリー飲料、調製粉乳のタブレット、美容用の粉末食品であり、さらに好ましい態様によれば、飲食品は、乳飲料(加工乳を含んでもよい)、発酵乳である。
また、飲食品には、機能性食品、健康栄養食品、サプリメント、健康食品、特定保健用食品、機能性表示食品、栄養機能食品、病者用食品、乳幼児用調製粉乳、妊産婦もしくは授乳婦用粉乳、または疾病リスク低減表示を付した飲食品のような分類のものも包含される。本発明の一つの好ましい態様によれば、飲食品は、機能性食品、健康栄養食品、サプリメント、特定保健用食品、機能性表示食品、または疾病リスク低減表示付き食品である。
なお、ここで、疾病リスク低減の表示とは、疾病リスクを低減する可能性のある飲食品の表示であって、FAO/WHO合同食品規格委員会(コーデックス委員会)の定める規格に基づいて、またはその規格を参考にして、定められた表示または認められた表示であることができる。
よって、本発明の飲食品は、例えば、皮膚状態の悪化の改善または緩和を期待する消費者に適した食品、皮膚の状態悪化の改善に適した食品、すなわち、所謂、特定保健用食品もしくは機能性表示食品、として提供することができる。
本発明の飲食品および組成物において、スフィンゴミエリンの吸収に伴う所望の効果を得るためには、飲食品および組成物におけるスフィンゴミエリンの含有量を、所定の範囲に設定することが望ましい。具体的な含有量は、飲食品もしくは組成物の種類、形態や、予防・改善の目的などによって変化させることができるため、一律に規定することは難しいが、本発明の組成物では、成人(体重:60kg)が1日当たり、乳由来のスフィンゴミエリンを、0.5〜1500mg、好ましくは1〜1000mg、より好ましくは5〜500mgで摂取可能な有効量に調整されたものであることができる。
スフィンゴ脂質、例えば、スフィンゴミエリンの含量では、慣用の方法によって測定することができるが、例えば、後述する実施例1および2の記載に従って測定してもよい。また、例えば、液体クロマトグラフィーを用い、カラムとして、AQUASIL SP100(4.6X250mm、センシュー科学社)を用いて測定することができる。
このとき、移動相として、例えば、0.5mM リン酸−クエン酸緩衝液(pH:3.0)とメタノールを5対95の割合で混合させた溶液を用いるとよい。測定時間を20分間に設定し、移動相の流速を0.6mL/分、カラム温度を40℃に設定し、吸光度を205nmとして検出することができる。標準物質として、例えば、スフィンゴミエリン(乳由来、長良サイエンス社)を用いることができ、面積比により定量することができる。
本発明の別の態様によれば、飲食品および組成物における有効成分の含量は、一包装形態当たりで規定することもでき、例えば、飲食品の場合、スフィンゴ脂質の含量は5〜1500mg、好ましくは6〜1000mg、より好ましくは7〜500mgで含むものであり、また、組成物の場合、スフィンゴ脂質の含量は0.5〜1500mg、好ましくは1〜1000mg、より好ましくは5〜500mgで含むものであることができる。また、一包装形態当たりの量(含量)は、1回の摂取量に限らず、複数回分または複数日分(例えば、30日分)の摂取量を包括してもよく、例えば、飲食品の場合、スフィンゴ脂質の含量は5〜45000mg、好ましくは6〜30000mg、より好ましくは7〜15000mgで含むものであり、また、組成物の場合、スフィンゴ脂質の含量は0.5〜45000mg、好ましくは1〜30000mg、より好ましくは5〜15000mgで含むものであることができる。
従来の一般的な乳飲料、発酵乳では、脂質の1g当たり、リン脂質が20mgで含まれるが、本発明の乳飲料、発酵乳では、脂質の1g当たり、リン脂質が25〜3000mgで含まれ、好ましくは30〜2500mg、より好ましくは40〜2000mg、さらに好ましくは、50〜1500mgで含まれるものであることができる。また、従来の一般的な乳飲料、発酵乳では、脂質の1g当たり、スフィンゴミエリンが6mgで含まれるが、本発明の飲食品または組成物では、脂質の1g当たり、スフィンゴミエリンが7〜1500mgで含まれ、好ましくは8〜1250mg、より好ましくは9〜1000mg、さらに好ましくは、10〜750mgで含まれるものであることができる。すなわち、本発明の一つの好ましい態様においては、スフィンゴミエリン含量が意図的に高められたものを使用する。
本発明の乳飲料、発酵乳では、脂質を通常量で含む(例えば、脂質を3重量%で含む)場合、リン脂質が1〜300mg/gで含まれ、好ましくは1.5〜250mg/g、より好ましくは2〜200mg/g、さらに好ましくは、2.5〜150mg/gで含まれるものであることができる。また、本発明の飲食品または組成物では、脂質を通常量で含む場合、スフィンゴミエリンが0.2〜60mg/gで含まれ、好ましくは0.25〜50mg/g、より好ましくは0.3〜40mg/g、さらに好ましくは、0.35〜30mg/gで含まれるものであることができる。
一方、従来の一般的な乳飲料、発酵乳では、脂質の1g当たり、リン脂質が20mgで含まれるが、本発明の乳飲料、発酵乳では、脂質の1g当たり、リン脂質が25〜3000mgで含まれ、好ましくは30〜2500mg、より好ましくは40〜2000mg、さらに好ましくは、50〜1500mgで含まれるものであることができる。また、本発明の飲食品または組成物では、脂質を少量で含む場合、スフィンゴミエリンが0.05〜60mg/gで含まれ、好ましくは0.1〜50mg/g、より好ましくは0.15〜40mg/g、さらに好ましくは、0.2〜30mg/gで含まれるものであることができる。
そして、従来の一般的な乳飲料、発酵乳では、脂質の1g当たり、リン脂質が20mgで含まれるが、本発明の乳飲料、発酵乳では、脂質の1g当たり、リン脂質が25〜3000mgで含まれ、好ましくは30〜2500mg、より好ましくは40〜2000mg、さらに好ましくは、50〜1500mgで含まれるものであることができる。また、本発明の乳飲料、発酵乳、清涼飲料、ゼリー飲料、タブレット、美容用の粉末食品では、脂質を殆ど含まない(無脂肪の)場合、スフィンゴミエリンが0.02〜60mg/gで含まれ、好ましくは0.04〜50mg/g、より好ましくは0.06〜40mg/g、さらに好ましくは、0.08〜30mg/gで含まれるものであることができる。
本発明の別の態様によれば、乳酸菌および/またはビフィズス菌の発酵物および/または培養物をスフィンゴ脂質と同時に、スフィンゴ脂質の摂取が望まれる対象に、経口摂取させるか、または経腸投与することを含む、スフィンゴ脂質の吸収促進方法が提供される。ここで、このましくは、スフィンゴ脂質はスフィンゴミエリンである。
本発明のさらに別の態様によれば、乳酸菌および/またはビフィズス菌の発酵物および/または培養物をスフィンゴ脂質と同時に、スフィンゴ脂質の摂取が望まれる対象に、経口摂取させるか、または経腸投与することを含む、セラミドの吸収促進方法が提供される。
なお、ここで、好ましくは、前記方法は、医療用途を除いたものである。また、前記の対象とは、好ましくは、ヒト、またはヒト以外の哺乳類である。
そして、前記方法は、好ましくは乳酸菌および/またはビフィズス菌の発酵物および/または培養物を2日以上で継続して経口摂取させるか、または経腸投与する、スフィンゴ脂質の摂取が望まれる対象のためのスフィンゴ脂質の吸収促進方法、スフィンゴ脂質の摂取が望まれる対象のためのセラミドの吸収促進方法であることができる。
以下において、本発明を下記の実施例によって詳細に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
実施例1: ヨーグルトとスフィンゴミエリンの同時投与におけるスフィンゴミエリンの吸収性の評価試験
ラットに、乳由来のスフィンゴミエリンのみを投与するか、粉末のヨーグルトと乳由来のスフィンゴミエリンを同時に投与して、リンパ液中に取り込まれたスフィンゴミエリンの吸収量を評価した。
[実験方法]
Sugawaraらの方法(J. Lipid Res. 2010, 51, 1761-1769)に従って実験した。具体的には、下記の通りであった。
(1−1) スフィンゴミエリンの投与およびリンパ液の回収
ラット(SD系、雄、体重:約350g)を1週間で馴化飼育した後に、胸管リンパと胃にカニュレを処置し、シリンジポンプを用いて、緩衝液(グルコース:139mM、塩化ナトリウム:85mM)を胃内へ一晩で(約12時間で)送液(流速:3mL/min)した。
そして、後述するような各試験溶液(A)、(B)および(C)に対応して、ラットを3群(a、b、c)に群分けし、これら各試験溶液を胃内に投与する1時間前から、3群(a、b、c)について、EDTA処理したスピッツ管にリンパ液を回収した。
さらに、シリンジポンプを用いて、各試験溶液(A)、(B)および(C)(各3mL)を胃内へ1分間で送液(流速:3mL/min)した後に、シリンジポンプを用いて、緩衝液を胃内へ6時間で送液(流速:3mL/min)した。
そして、この1時間毎で、3群(a、b、c)について、EDTA処理したスピッツ管にリンパ液を回収した。
(1−2) 試験溶液
各試験溶液(A)、(B)および(C)を下記のようにして調製した。
(A) トリオレイン:200mg、牛血清アルブミン:50mg、およびタウロコール酸ナトリウム:200mgを混合した。
(B) トリオレイン:195mg、牛血清アルブミン:50mg、およびタウロコール酸ナトリウム:200mgを混合した液体に、乳由来のスフィンゴミエリン(SM、純度98%、長良サイエンス社):5mgを超音波で乳化させた。
(C) トリオレイン:192mg、牛血清アルブミン:50mg、およびタウロコール酸ナトリウム200mgを混合した液体に、乳由来のスフィンゴミエリン(SM、純度98%、長良サイエンス社):4.75mgを超音波で乳化させた。これと合わせて、粉末のヨーグルト(YG、脂肪:約0%、明治ブルガリアヨーグルト脂肪ゼロ、株式会社明治より入手):250mgを用意した。
(1−3) 評価群の構成
試験溶液(A)、(B)および(C)に対応した3群(a、b、c)を次に示し、それらの内容を表1に示した。なお、各群のラットを5匹ずつとした。
(a) 対照群: 試験溶液(A):3mL/rat(SM:0mg/rat)で胃内投与した。
(b) SM群: 試験溶液(B):3mL/rat(SM:5mg/rat)で胃内投与した。
(c) SM+YG群: 試験溶液(C):3mL/rat(SM:4.75mg/rat)と合わせて、YG:250mg/ratで胃内投与した。
Figure 0006773562
(1−4) 評価指標
試験溶液を投与した後に、ラットのリンパ液のスフィンゴミエリンの吸収量を評価した。具体的には、ラットのリンパ液には存在せず、乳由来のスフィンゴミエリンに特異的に存在するセラミド分子種(d16:1−C16:0)、スフィンゴミエリン分子種(d16:1−C16:0 SM)の動態を指標として、吸収性の違いを比較した。
(1−5) 分析方法
ラットから採取したリンパ液の脂質の抽出は、Folchらの方法(J. Biol. Chem., 1957, 226, 497-509)に従った。
具体的には、リンパ液:200μL(リンパ液を2.5mL/hで回収した場合)に、生理食塩水:800μLを加えて、クロロホルム−メタノールの混合液(2:1(v/v)):4mLを加え、振とう(200rpm、15分間)した。次いで、遠心分離(2000rpm、10分間)した後に、下層を別のチューブに移し、遠心濃縮してから、メタノール:500μLを加えて、セラミドの分析用の試料を調製した。さらに、メタノールで10倍に希釈して、スフィンゴミエリンの分析用の試料を調製した。
標準品には、セラミド(d18:1−C16:0、Avanti polar lipids社より入手)、スフィンゴミエリン(d18:1−C16:0 SM、Avanti polar lipids社より入手)を用いた。これらの標準品を当量として、LC/MS/MS(ACQUITY premier XE (Waters社製))を用いて、セラミド(d16:1−C16:0)、スフィンゴミエリン(d16:1−C16:0 SM)を定量した。このとき、カラムには、ACQUITY UPLC BEH C18(2mm×100mm、Waters社製)を用い、移動相Aには、酢酸アンモニウム(5mM)/メタノール(95%)を、移動相Bには、酢酸アンモニウム(5mM)/メタノールを用いた。
そして、移動相Aを100%から開始し、30分後に、移動相Bを100%になるようにグラジエントしてから、移動相Bを100%にして2分間で保持し、さらに3分後に、移動相Aが100%になるように切り替えた。ここで、LC/MS/MSにおける1試料の測定時間を35分間、移動相の流速を0.4mL/分、カラムの温度を40℃に設定し、エレクトロ・スプレー・イオン化を用いて、ポジティブモードで検出した。LC/MS/MSの分析変数として、キャピラリーの電圧を3000V、ソースの温度を120℃、脱溶媒の温度を400℃、脱溶媒ガスの流速を850L/時間、コーンガスの流速を50L/時間、コーン電圧を40V/時間に設定した。
[結果]
結果は図1および図2に示されるとおりであった。
図1には、セラミド分子種(d16:1−C16:0)量の推移を示した。ここで、各試験溶液を経口投与してから4、5、6時間後に、SM群に比べて、SM+YG群において、セラミド分子種量は高値であった。
図2には、スフィンゴミエリン分子種(d16:1−C16:0 SM)量の推移を示した。ここで、各試験溶液を経口投与してから3、4、5、6時間後に、SM群に比べて、SM+YG群において、スフィンゴミエリン分子種量は高値であった。
これらの結果から、スフィンゴミエリンとヨーグルトを同時に経口摂取することにより、セラミドの吸収が促進されると共に、スフィンゴミエリンの吸収が促進されることがわかった。
実施例2: ヨーグルトと乳由来スフィンゴミエリン高含有リン脂質濃縮物(MPL)の同時摂取におけるスフィンゴミエリンの吸収性の評価試験
ラットに、MPLのみを経口投与するか、ヨーグルトとMPLを同時に経口投与するかして、血中のセラミド量を評価した。
[実験方法]
(2−1) MPLの経口投与および採血
ラット(SD系、雄、体重:約300g)を1週間で馴化飼育した。そして、ラットを16時間で絶食させた後に、2群に群分けし、下記に示す各試験溶液(D)および(E)を経口投与し、その投与前、その投与の90分後、180分後、270分後、360分後に、尾静脈より採血した。そして、常法に従い、血清を得た。
(2−2) 評価群の構成
(d) MPL群: 試験溶液(D):体重の1kgあたり、MPL:540mg(スフィンゴミエリンとして100mg)の用量を投与した。
(e) MPL+YG群: 試験溶液(E):体重の1kgあたり、ヨーグルト(明治ブルガリアヨーグルト脂肪ゼロ、株式会社明治より入手):11.3g、およびMPL:535mg(スフィンゴミエリンの総量として100mg)の用量を投与した。
(2−3) 評価指標
試験溶液を経口投与した後に、ラット血清中のセラミド量を評価した。
具体的には、ラットの血清には存在せず、乳由来のスフィンゴミエリンに特異的に存在するセラミド分子種(d16:1−C16:0、d16:1−C22:0、d16:1−C23:0、d16:1−C24:0)の動態を指標として、血清濃度の違いを比較した。
(2−4) 分析方法
ラットから採取した血清脂質の抽出は、Folchらの方法(J. Biol. Chem., 1957, 226, 497-509)に従った。
具体的には、血清:50μLに、生理食塩水:200μLを加えてから、クロロホルム−メタノールの混合液(2:1(v/v)):1mLを加え、抽出した。次いで、遠心分離(2000rpm、10分間)した後に、下層を別のチューブに移し、遠心濃縮してから、メタノール:200μLを加えて、セラミドの分析用の試料を調製した。
標準品には、セラミド(d18:1−C16:0、d18:1−C22:0、d18:1−C23:0、d18:1−C24:0、Avanti polar lipids社より入手)を用いた。これらの標準品を当量として、LC/MS/MS(ACQUITY premier XE(Waters社製))を用い、セラミド(d16:1−C16:0、d16:1−C22:0、d16:1−C23:0、d16:1−C24:0)を定量した。このとき、カラムには、ACQUITY UPLC BEH C18(2mm×100mm、Waters社製)を用い、移動相Aには、酢酸アンモニウム(5mM)/メタノール(95%)を、移動相Bには、酢酸アンモニウム(5mM)/メタノールを用いた。
そして、移動相Aを100%から開始し、30分後に、移動相Bを100%になるようにグラジエントしてから、移動相Bを100%にして2分間で保持し、さらに3分後に、移動相Aが100%になるように切り替えた。ここで、LC/MS/MSにおける1試料の測定時間を35分間、移動相の流速を0.4mL/分、カラムの温度を40℃に設定し、エレクトロ・スプレー・イオン化を用いて、ポジティブモードで検出した。LC/MS/MSの分析変数として、キャピラリーの電圧を3000V、ソースの温度を120℃、脱溶媒の温度を400℃、脱溶媒ガスの流速を850L/時間、コーンガスの流速を50L/時間、コーン電圧を40V/時間に設定した。
[結果]
結果は図3および図4に示されるとおりであった。
図3には、血清セラミド分子種(d16:1−C16:0、d16:1−C22:0、d16:1−C23:0、d16:1−C24:0)量の変化を示した。セラミド分子種(d16:1−C16:0)では、試験溶液の投与後90、180分後、セラミド分子種(d16:1−C22:0、d16:1−C23:0)では、試験溶液の投与後90、180、270分後、セラミド分子種(d16:1−C24:0)では、試験溶液の投与後90、180、270、360分後に、MLP群に比べて、MPL+YG群において、有意に高値であった。
図4には、血清中のセラミド分子種量の時間曲線下面積を示した。いずれのセラミド分子種も、時間曲線下面積がMPL群に比べて、MPL+YG群において、有意に高値であった。
スフィンゴミエリンを高含有に含む乳由来のリン脂質濃縮物とヨーグルトを同時に経口摂取することにより、スフィンゴミエリンの吸収が促進されることがわかった。
実施例3: 紫外線の照射下における皮膚のバリア機能の悪化に対するヨーグルトとスフィンゴ脂質の影響
紫外線を照射することによって、皮膚のバリア機能を悪化させたヘアレスマウスに、スフィンゴミエリンまたは、スフィンゴミエリンとヨーグルトを3日間経口摂取させて、皮膚バリア機能(角層水分量、経皮水分蒸散量(TEWL))への影響を評価した。
スフィンゴ脂質として、乳由来のスフィンゴミエリン(SM、純度98%、長良サイエンス社)を使用した。
[実験方法]
(3−1) 紫外線の照射による皮膚のバリア機能悪化状態の誘導
ヘアレスマウス(Hos:HR−1、雌、4週齢 星野試験動物飼育所)を1週間で馴化させた後に、20mJ/cmの条件で、紫外線(UV−B(GL20SE、三共電気株式会社))を照射した。
(3−2) 評価群の構成
皮膚のバリア機能悪化の試験系を用いて、スフィンゴミエリンまたはスフィンゴミエリンとヨーグルトの経口投与による皮膚の状態への影響を評価した。各群の試験系を8匹ずつとした。動物実験の群構成(評価群の構成)とスフィンゴミエリンとヨーグルトの含量の関係を、下記に示した。
Control群(対照群): 通常飼料を摂取する群
SM群: スフィンゴミエリンを10mg/kg/dayで経口投与する群
SM+YG群: スフィンゴミエリンとヨーグルトをそれぞれ10mg/kg/day、11.3g/kg/dayで経口投与する群
(ただし、前記SM群とSM+YG群では共に、スフィンゴミエリンやヨーグルトに加えて、さらにコラーゲンを1000mg/kg/dayの割合で経口投与している)。
(3−3) 評価試験方法
各試験群について、角層水分量およびTEWLを測定し、これらより、皮膚のバリア機能を評価した。
(3−3−1) 角層水分量
角層水分量は、コルネオメーター(Corneometer,Courage and Khazaka Electronic GmbH社)を用いて、5回/匹で測定した。このうち、最大値と最小値を除いた3回の測定値の平均を採用し、角層水分量とした。
(3−3−2) 経皮水分蒸散量(TEWL)
経皮水分蒸散量(TEWL)は、テヴァメーター(Tewemeter MPA580,Courage and Khazaka Electronic GmbH社)に、29℃に保温したプローブを20秒間で用いて測定した。これら得られた測定結果について、3回の平均を採用、経皮水分蒸散量とした。
[評価結果]
(角層水分量)
結果は、図5に示した通りであった。
図5において、Control群の角層水分量に比べて、SM群およびSM+YG群の角層水分量は高値であった。さらに、SM+YG群はSM群に比べ、高値であった。このことから、SM+YG群は、SM群に比べて皮膚のバリア機能の悪化がより抑制(改善)されたと考えられた。
(経皮水分蒸散量(TEWL))
結果は、図6に示した通りであった。
図6において、Control群のTEWLに比べて、SM群のTEWLは低値であった。さらに、SM+YG群はSM群に比べ、低値であった。これらから、SM+YG群は、SM群に比べて皮膚のバリア機能の悪化がより抑制(改善)されたと考えられた。
スフィンゴ脂質とヨーグルト(発酵乳)を経口摂取することで、紫外線に基づく皮膚のバリア機能の悪化がより抑制(改善)されることが示唆された。さらに、スフィンゴミエリンとヨーグルト(発酵乳)を3日間以上で継続して摂取する程、皮膚のバリア機能の悪化が抑制(改善)されやすいことが示唆された。
実施例4: 未発酵乳とMPLの同時摂取におけるスフィンゴミエリンの吸収性の評価試験
ラットに、MPLのみを経口投与した場合、ヨーグルトとMPLを同時に経口投与した場合、および、未発酵乳とMPLを同時に経口投与した場合のそれぞれについて、血中のセラミド量を評価した。
[実験方法]
(4−1)
ラット(SD系、雄、体重:約270g)を1週間で馴化飼育した。そして、ラットを16時間で絶食させた後に、3群に群分けし、下記に示す試験溶液(F)、(G)および(H)を経口投与した。次いで、投与前、投与の90分後、180分後、270分後、および360分後の各タイミングに、尾静脈より採血を行い、常法に従い、血清を得た。
(4−2)評価群の構成
(f)MPL群: 試験溶液(F):体重の1kgあたり、MPL:540mg(スフィンゴミエリンとして100mg)の用量を投与した。
(g)MPL+YG群: 試験溶液(G):体重の1kgあたり、ヨーグルト(明治ブルガリアヨーグルト脂肪ゼロ、株式会社明治より入手):11.3g、およびMPL:535mg(スフィンゴミエリンの総量として100mg)の用量を投与した。
(h)MPL+未発酵乳群: 試験溶液(H):体重の1kgあたり、脱脂粉乳(明治脱脂粉乳、株式会社明治より入手):1.3g、およびMPL:537mg(スフィンゴミエリンの総量として100mg)の用量を投与した。
(4―3)評価指標
試験溶液を経口投与した後に、ラット血清中のセラミド量を評価した。
具体的には、セラミド分子種(d16:1−C16:0、d16:1−C22:0、d16:1−C23:0、d16:1−C24:0)を指標とした。
[結果]
結果は、図7に示されるとおりであった。
図7では、血清中のセラミド分子種量の時間曲線下面積を示した。いずれのセラミド分子種も、時間曲線下面積がMPL群に比べて、MPL群、MPL+未発酵乳群、MPL+YG群の順に有意に高値になった。
スフィンゴミエリンを高含有に含む乳由来のリン脂質濃縮物と未発酵乳を同時に経口摂取することにより、スフィンゴミエリンの吸収が促進されるが、スフィンゴミエリンを高含有に含む乳由来のリン脂質濃縮物とヨーグルトを同時に経口摂取することにより、さらにスフィンゴミエリンの吸収が促進されることがわかった。
実施例5: ヨーグルト分画物とMPLの同時摂取におけるスフィンゴミエリンの吸収性の評価試験
ラットに、MPLのみを経口投与した場合、ヨーグルトとMPLを同時に経口投与した場合、ヨーグルト分画上清物とMPLを同時に経口投与した場合、およびヨーグルト分画沈殿物とMPLを同時に経口投与した場合のそれぞれについて、血中のセラミド量を評価した。
[実験方法]
(5−1)ヨーグルト分画物の調製方法
ヨーグルト(明治ブルガリアヨーグルト脂肪ゼロ、株式会社明治より入手)を6000rpmで10分間遠心分離し、ヨーグルト分画上清物およびヨーグルト分画沈殿物を得た。
(5−2)
ラット(SD系、雄、体重:約270g)を1週間で馴化飼育した。そして、ラットを16時間で絶食させた後に、3群に群分けし、下記に示す試験溶液(I)、(J)および(K)および(L)を経口投与した。次いで、投与前、投与の90分後、180分後、270分後、および360分後の各タイミングに、尾静脈より採血を行い、常法に従い、血清を得た。
(5−3)評価群の構成
(i)MPL群: 試験溶液(I):体重の1kgあたり、MPL:540mg(スフィンゴミエリンとして100mg)の用量を投与した。
(j)MPL+YG群: 試験溶液(J):体重の1kgあたり、ヨーグルト(明治ブルガリアヨーグルト脂肪ゼロ、株式会社明治より入手):11.3g、およびMPL:535mg(スフィンゴミエリンの総量として100mg)の用量を投与した。
(k)MPL+YG上清群: 試験溶液(J):体重の1kgあたり、ヨーグルト上清:743mg、およびMPL:539mg(スフィンゴミエリンの総量として100mg)の用量を投与した。
(l)MPL+YG沈殿群: 試験溶液(K):体重の1kgあたり、ヨーグルト沈殿:455mg、およびMPL:536mg(スフィンゴミエリンの総量として100mg)の用量を投与した。
(5―4)評価指標
試験溶液を経口投与した後に、ラット血清中のセラミド量を評価した。
具体的には、セラミド分子種(d16:1−C16:0、d16:1−C22:0、d16:1−C23:0、d16:1−C24:0)を指標とした。
[結果]
結果は、図8に示されるとおりであった。
図8では、血清中のセラミド分子種量の時間曲線下面積を示した。いずれのセラミド分子種も、時間曲線下面積がMPL群に比べて、MPL+YG群およびMPL+YG上清群において、有意に高値であったが、MPL群とMPL+YG沈殿群の間に有意な差はみられなかった。
スフィンゴミエリンを高含有に含む乳由来のリン脂質濃縮物とヨーグルトの上清画分を同時に経口摂取することにより、スフィンゴミエリンの吸収が促進されることがわかった。これらの結果は、ヨーグルトの上清画分にスフィンゴミエリンの吸収を促進させる成分が含まれていることを示していると考えられた。
実施例6: 乳酸とMPLの同時摂取におけるスフィンゴミエリンの吸収性の評価試験
ラットに、MPLのみを経口投与した場合、ヨーグルトとMPLを同時に経口投与した場合、および乳酸とMPLを同時に経口投与した場合のそれぞれについて、血中のセラミド量を評価した。
[実験方法]
(6−1)
ラット(SD系、雄、体重:約270g)を1週間で馴化飼育した。そして、ラットを16時間で絶食させた後に、3群に群分けし、下記に示す試験溶液(L)、(M)および(N)を経口投与した。次いで、投与前、投与の90分後、180分後、270分後、および360分後の各タイミングに、尾静脈より採血を行い、常法に従い、血清を得た。
(6−2)評価群の構成
(l)MPL群: 試験溶液(L):体重の1kgあたり、MPL:540mg(スフィンゴミエリンとして100mg)の用量を投与した。
(m)MPL+YG群: 試験溶液(M):体重の1kgあたり、ヨーグルト(明治ブルガリアヨーグルト脂肪ゼロ、株式会社明治より入手):11.3g、およびMPL:535mg(スフィンゴミエリンの総量として100mg)の用量を投与した。
(n)MPL+乳酸群: 試験溶液(N):体重の1kgあたり、乳酸(和光純薬工業株式会社より入手):109mg(ヨーグルト中の乳酸量とpHを等しくした)、およびMPL:540mg(スフィンゴミエリンとして100mg)の用量を投与した。
(6―3)評価指標
試験溶液を経口投与した後に、ラット血清中のセラミド量を評価した。
具体的には、セラミド分子種(d16:1−C16:0、d16:1−C22:0、d16:1−C23:0、d16:1−C24:0)を指標とした。
[結果]
結果は、図9に示されるとおりであった。
図9では、血清中のセラミド分子種量の時間曲線下面積を示した。いずれのセラミド分子種も、時間曲線下面積がMPL群に比べて、MPL+YG群において、有意に高値であったが、MPL群とMPL+乳酸群の間に有意な差が見られなかった。
これらの結果は、ヨーグルト中の乳酸はスフィンゴミエリンの吸収を促進させる成分でないことを示していると考えられた。
実施例7: ホエイたんぱく質とMPLの同時摂取におけるスフィンゴミエリンの吸収性の評価試験
ラットに、MPLのみを経口投与した場合、ヨーグルトとMPLを同時に経口投与した場合、およびホエイたんぱく質とMPLを同時に経口投与した場合のそれぞれについて、血中のセラミド量を評価した。
[実験方法]
(7−1)
ラット(SD系、雄、体重:約270g)を1週間で馴化飼育した。そして、ラットを16時間で絶食させた後に、3群に群分けし、下記に示す試験溶液(O)、(P)および(Q)を経口投与た。次いで、投与前、投与の90分後、180分後、270分後、および360分後の各タイミングに、尾静脈より採血を行い、常法に従い、血清を得た。
(7−2)評価群の構成
(o)MPL群: 試験溶液(O):体重の1kgあたり、MPL:540mg(スフィンゴミエリンとして100mg)の用量を投与した。
(p)MPL+YG群: 試験溶液(P):体重の1kgあたり、ヨーグルト(明治ブルガリアヨーグルト脂肪ゼロ、株式会社明治より入手):11.3g、およびMPL:535mg(スフィンゴミエリンの総量として100mg)の用量を投与した。
(q)MPL+ホエイたんぱく質群: 試験溶液(Q):体重の1kgあたり、ホエイたんぱく質(アラセン8899、フォンテラ社より入手):109mg(ヨーグルト中のホエイたんぱく質量と等しくした)、およびMPL:540mg(スフィンゴミエリンとして100mg)の用量を投与した。
(7―3)評価指標
試験溶液を経口投与した後に、ラット血清中のセラミド量を評価した。
具体的には、セラミド分子種(d16:1−C16:0、d16:1−C22:0、d16:1−C23:0、d16:1−C24:0)を指標とした。
[結果]
結果は、図10に示されるとおりであった。
図10では、血清中のセラミド分子種量の時間曲線下面積を示した。いずれのセラミド分子種も、時間曲線下面積がMPL群に比べて、MPL+YG群において、有意に高値であったが、MPL群とMPL+ホエイたんぱく質群の間に有意な差はみられなかった。
これらの結果は、ヨーグルト中のホエイたんぱく質はスフィンゴミエリンの吸収を促進させる成分でないことを示していると考えられた。
実施例8: 多糖類とMPLの同時摂取におけるスフィンゴミエリンの吸収性の評価試験
ラットに、MPLのみを経口投与した場合、ヨーグルトとMPLを同時に経口投与した場合、および多糖類とMPLを同時に経口投与した場合のそれぞれについて、血中のセラミド量を評価した。
[実験方法]
(8−1)多糖類の精製
多糖類の精製はCerningらの方法(J. Dairy Sci., 1992, 75, 692-699)に従った。ヨーグルト上清画分をプロナーゼ(ロシュ製)処理し、たんぱく質を加水分解した。3倍量のエタノールを添加し、一晩冷凍し、遠心分離により多糖類を含む沈殿物を得た。沈殿物を限外ろ過膜(Merck Millipore, Centriprep Ultracel YM−3)により、たんぱく質加水分解物を除去し、多糖類を精製した。
(8−2)
ラット(SD系、雄、体重:約270g)を1週間で馴化飼育した。そして、ラットを16時間で絶食させた後に、3群に群分けし、下記に示す試験溶液(R)、(S)および(T)を経口投与した。次いで、投与前、その投与の90分後、180分後、270分後、および360分後の各タイミングに、尾静脈より採血を行い、常法に従い、血清を得た。
(8−3)評価群の構成
(r)MPL群: 試験溶液(R):体重の1kgあたり、MPL:540mg(スフィンゴミエリンとして100mg)の用量を投与した。
(s)MPL+YG群: 試験溶液(S):体重の1kgあたり、ヨーグルト(明治ブルガリアヨーグルト脂肪ゼロ、株式会社明治より入手):11.3g、およびMPL:535mg(スフィンゴミエリンの総量として100mg)の用量を投与した。
(t)MPL+多糖類群: 試験溶液(T):体重の1kgあたり、多糖類:52.5mg(ヨーグルト中の多糖類と等しくした)、およびMPL:540mg(スフィンゴミエリンとして100mg)の用量を投与した。
(8―4)評価指標
試験溶液を経口投与した後に、ラット血清中のセラミド量を評価した。
具体的には、セラミド分子種(d16:1−C16:0、d16:1−C22:0、d16:1−C23:0、d16:1−C24:0)を指標とした。
[結果]
結果は、図11に示されるとおりであった。
図11には、血清中のセラミド分子種量の時間曲線下面積を示した。いずれのセラミド分子種も、時間曲線下面積がMPL群に比べて、MPL+YG群およびMPL+多糖類群において、有意に高値であった。
スフィンゴミエリンを高含有に含む乳由来のリン脂質濃縮物とヨーグルト中の多糖類を同時に経口摂取することにより、スフィンゴミエリンの吸収が促進され、ヨーグルト中の多糖類がスフィンゴミエリンの吸収を促進させる成分の一つであることを示していると考えられた。
実施例9: 乳酸菌および/またはビフィズス菌により調製されたヨーグルトとMPLの同時摂取におけるスフィンゴミエリンの吸収性の評価試験
ラットに、MPLのみを経口投与した場合、乳酸菌および/またはビフィズス菌により調製されたヨーグルトとMPLを同時に経口投与した場合のそれぞれについて、血中のセラミド量を評価した。
(9−1)
ラット(SD系、雄、体重:約270g)を1週間で馴化飼育した。そして、ラットを16時間で絶食させた後に、3群に群分けし、下記に示す試験溶液(U)、(V)、(W)、(X)および(Y)を経口投与した。次いで、投与前、その投与の90分後、180分後、270分後、および360分後の各タイミングに、尾静脈より採血を行い、常法に従い、血清を得た。
(9−2)評価群の構成
(u)MPL群: 試験溶液(U):体重の1kgあたり、MPL:540mg(スフィンゴミエリンとして100mg)の用量を投与した。
(v)MPL+YG(1)群: 試験溶液(V):体重の1kgあたり、ヨーグルト(1)(乳酸菌Lactobacillus GasseriおよびStreptococcus thermophilusにより調製、明治プロビオヨーグルトLG21脂肪ゼロ、株式会社明治より入手):11.3g、およびMPL:535mg(スフィンゴミエリンの総量として100mg)の用量を投与した。
(w)MPL+YG(2)群: 試験溶液(W):体重の1kgあたり、ヨーグルト(2)(乳酸菌Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricusおよびStreptococcus thermophilusにより調製、明治プロビオヨーグルトR−1脂肪ゼロ、株式会社明治より入手):11.3g、およびMPL:535mg(スフィンゴミエリンの総量として100mg)の用量を投与した。
(x)MPL+YG(3)群: 試験溶液(W):体重の1kgあたり、ヨーグルト(3)(乳酸菌Lactobacillus Gasseri、ビフィズス菌Bifidobacterium longumにより調製、ナチュレ恵 megumi脂肪0(ゼロ)、雪印メグミルク株式会社より入手):11.3g、およびMPL:535mg(スフィンゴミエリンの総量として100mg)の用量を投与した。
(y)MPL+YG(4)群: 試験溶液(Y):体重の1kgあたり、ヨーグルト(4)(ビフィズス菌 Bifidobacterium longumにより調製、ビヒダスBB536プレーンヨーグルト脂肪ゼロ、森永乳業株式会社より入手):11.3g、およびMPL:535mg(スフィンゴミエリンの総量として100mg)の用量を投与した。
(9―3)評価指標
試験溶液を経口投与した後に、ラット血清中のセラミド量を評価した。
具体的には、セラミド分子種(d16:1−C16:0、d16:1−C22:0、d16:1−C23:0、d16:1−C24:0)を指標とした。
[結果]
結果は、図12に示されるとおりであった。
図12では、血清中のセラミド分子種量の時間曲線下面積を示した。いずれのセラミド分子種も、時間曲線下面積がMPL群に比べて、MPL+YG(1)群、MPL+YG(2)群、MPL+YG(3)群、MPL+YG(4)群において、有意に高値であった。
スフィンゴミエリンを高含有に含む乳由来のリン脂質濃縮物と様々な乳酸菌および/またはビフィズス菌によって調製されたヨーグルトを同時に経口摂取することにより、スフィンゴミエリンの吸収が促進されることを示していると考えられた。
実施例10: ヨーグルトとグルコシルセラミドの同時摂取におけるグルコシルセラミドの吸収性の評価試験
ラットに、グルコシルセラミド(GC)のみを経口投与した場合、ヨーグルトとグルコシルセラミドLを同時に経口投与した場合のそれぞれについて、血中のセラミド量を評価した。
[実験方法]
(10−1)
ラット(SD系、雄、体重:約270g)を1週間で馴化飼育した。そして、ラットを16時間で絶食させた後に、3群に群分けし、下記に示す試験溶液(Y)および(Z)を経口投与した場合、投与前、投与の90分後、180分後、270分後、および360分後の各タイミングに、尾静脈より採血を行い、常法に従い、血清を得た。
(10−2)評価群の構成
(y)GC群: 試験溶液(Y):体重の1kgあたり、GC:1613mg(グルコシルセラミドとして100mg、ニップンセラミドRPS、日本製粉より入手)の用量を投与した。
(z)GC+YG群: 試験溶液(Z):体重の1kgあたり、ヨーグルト(明治ブルガリアヨーグルト脂肪ゼロ、株式会社明治より入手):11.3g、およびGC:1613mgの用量を投与した。
(10―3)評価指標
試験溶液を携行した後に、ラット血清中のセラミド量を評価した。
具体的には、Sugawaraらの報告(J. Lipid Res., 2010, 51, 1761-1769)により、グルコシルセラミド投与後に増加することが知られている血清セラミド分子種(d18:2−C16:0、d18:2−C23:0)を指標とした。
[結果]
結果は、図13に示されるとおりであった。
図13では、血清中のセラミド分子種量の時間曲線下面積を示した。いずれのセラミド分子種も、時間曲線下面積がGC群に比べて、GC+YG群において、有意に高値であった。
グルコシルセラミドとヨーグルトを同時に経口摂取することにより、グルコシルセラミドの吸収が促進されることがわかった。


Claims (10)

  1. 乳酸菌および/またはビフィズス菌の乳発酵物および/または乳培養物と、追加のスフィンゴミエリンまたは乳由来のスフィンゴミエリン高含有リン脂質濃厚物とを含んでなる、スフィンゴミエリンまたはグルコシルセラミド吸収促進のための経口摂取用または経腸投与用組成物。
  2. 乳酸菌および/またはビフィズス菌の乳発酵物および/または乳培養物と、スフィンゴミエリンまたは乳由来のスフィンゴミエリン高含有リン脂質濃厚物との配合比が、スフィンゴミエリンまたは乳由来のスフィンゴミエリン高含有リン脂質濃厚物の1mgに対して、乳酸菌および/またはビフィズス菌の乳発酵物および/または乳培養物(乾重量(粉末))を1〜10000mgで含んでなる、請求項に記載の経口摂取用または経腸投与用組成物。
  3. 乳酸菌および/またはビフィズス菌の乳発酵物および/または乳培養物と、スフィンゴミエリンまたは乳由来のスフィンゴミエリン高含有リン脂質濃厚物との配合比が、スフィンゴミエリンまたは乳由来のスフィンゴミエリン高含有リン脂質濃厚物の1mgに対して、乳酸菌および/またはビフィズス菌の乳発酵物および/または乳培養物(湿重量)を0.01〜100gで含んでなる、請求項に記載の経口摂取用または経腸投与用組成物。
  4. 乳酸菌およびビフィズス菌が、Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus、Streptococcus thermophilus、Lactobacillus gasseri、およびBifidobacterium longumから選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の経口摂取用または経腸投与用組成物。
  5. スフィンゴミエリンの生体内への吸収によって誘発される生体内の作用のために用いられる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の経口摂取用または経腸投与用組成物。
  6. 誘発される生体内の作用が、皮膚の状態の悪化の予防もしくは改善、ガン抑制作用、美肌作用、乳幼児脳発達促進作用、ミトコンドリア機能向上作用、運動機能向上作用、内臓脂肪蓄積抑制および血中アディポネクチン濃度上昇促進作用、および、感染症予防作用からなる群より選択されるものである、請求項に記載の経口摂取用または経腸投与用組成物。
  7. 皮膚の状態の悪化の予防、抑制または改善用である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の経口摂取用または経腸投与用組成物。
  8. 皮膚の状態の悪化が、皮膚のバリア機能の悪化である、請求項に記載の組成物。
  9. 求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物を含む、スフィンゴミエリンまたはグルコシルセラミド吸収促進のための飲食品。
  10. 機能性食品、健康栄養食品、サプリメント、特定保健用食品、機能性表示食品または疾病リスク低減表示付き食品である、請求項に記載の飲食品。

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