本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。本明細書に添付した図面においては、理解を容易にするために、各部の形状、縮尺、縦横の寸法比等を、実物から変更したり、誇張したりしている場合がある。
本明細書等において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値のそれぞれを下限値及び上限値として含む範囲であることを意味する。
本明細書等において、「フィルム」、「シート」、「板」等の用語は、呼称の相違に基づいて相互に区別されない。例えば、「板」は、「シート」、「フィルム」と一般に呼ばれ得るような部材をも含む概念である。
〔第1の実施形態〕
図1は、第1の実施形態に係る微細凹凸構造体の一具体例としての微細凸状構造体の概略構成を示す切断端面図であり、図2は、第1の実施形態に係る微細凹凸構造体における微細凸部の概略構成を示す部分拡大切断端面図であり、図3は、第1の実施形態に係る微細凹凸構造体における微細凸部の他の態様の概略構成を示す部分拡大切断端面図である。なお、第1の実施形態において、微細凸部を備える微細凸状構造体としてのインプリントモールドを例に挙げて説明するが、この態様に限定されるものではない。第1の実施形態に係る微細凹凸構造体には、当該インプリントモールドを用いたインプリント処理を経て作製され、微細凹部を備える微細凹状構造体(例えばレプリカモールド等)や、当該レプリカモールドを用いたインプリント処理を経て作製され、微細凸部を備える微細凸状構造体(例えば、インプリントモールド等も含む)も含まれ得る。
[インプリントモールド]
図1に示すように、第1の実施形態に係るインプリントモールド1は、第1面2A及び当該第1面2Aに対向する第2面2Bを有する基部2と、基部2の第1面2A側に位置する、ピラー状の複数の微細凸部3とを備える。基部2と微細凸部3とは、同一材料により構成されていてもよいし、異なる材料により構成されていてもよい。インプリントモールド1は、例えば、シリコン、窒化ガリウム等の半導体;石英ガラス、ソーダガラス、蛍石、フッ化カルシウム基板、フッ化マグネシウム基板、アクリルガラス等のガラス;ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、シリコーン等の樹脂;ニッケル、チタン、アルミニウム等の金属等により構成されていてもよい。基部2と微細凸部3とが異なる材料により構成される場合、基部2及び微細凸部3のそれぞれは、上記のインプリントモールド1を構成する材料として例示したものの中から選択される任意の材料により構成されていればよい。
基部2の平面視形状としては、特に限定されるものではなく、例えば、略矩形状、略円形状等が挙げられる。後述するように、第1の実施形態に係るインプリントモールド1がシリコン基板20(図4(A)参照)を用いて製造される場合、基部2の平面視形状は、通常、略円形状である。
基部2の大きさも特に限定されるものではないが、例えば、基部2の平面視形状が略円形状である場合には200〜300mmφ程度である。また、基部2の厚さT2は、強度、取り扱い適性等を考慮し、例えば、100μm〜1mm程度の範囲で適宜設定され得る。
図2に示すように、第1の実施形態において、微細凸部3は、基部2の第1面2A側に位置し、第1面2Aから当該第1面2Aの略直交方向に突出する第1領域31と、第1領域31に連続する第2領域32とを含む。ここで、略直交方向とは、第1面2Aに対して約90°で交差する方向であり、例えば、80°〜90°で交差する方向が含まれる。
第1領域31は、第1面2A側から微細凸部3の先端部(頂部)33に向かって実質的に同一の幅W31を有する領域である。第2領域32は、微細凸部3の先端部(頂部)33に向かうに従って幅W32が漸減する領域である。
第1の実施形態において、インプリントモールド1の基部2の厚さ方向における切断面を見たときに、第1領域31の側壁34上の第1点P311と第2点P312とを結ぶ第1線分L1の基部2の第1面2Aに対する傾きθ1は、第2領域32の側壁34上の第1点321と第2点322とを結ぶ第2線分L2の基部2の第1面2Aに対する傾きθ2よりも大きい。したがって、微細凸部3の第1領域31及び第2領域32は、当該傾きθ1,θ2によっても定義され得る。傾きθ1は、例えば、75°〜90°である。傾きθ2は、例えば、30°〜80°である。なお、第1領域31の第1点P311は、基部2の第1面2Aから第1領域31の高さH31の半分の高さ(H31/2)に位置する点であり、第2点P312は、第1領域31における最も先端部(頂部)33側に位置する点である。また、第2領域32の第1点P321は、第1領域31の第2点P312と同一の点であり、第2点P322は、第1点P321から第2領域32の高さH32の半分の高さ(H32/2)に位置する点である。第1領域31の第1点P311よりも先端部33に近い側における第1領域31の側壁34は、第1点P311よりも先端部33から遠い(基部2の第1面2Aに近い)側における第1領域31の側壁34よりも基部2の第1面2Aに対して大きな傾きを有していてもよい。すなわち、第1領域31における基部2の第1面2Aに平行な断面の面積は、基部2の第1面2Aに近くなるほど大きくなっていてもよい。これにより、微細凸部3の物理的な強度が高くなることが期待される。また、第1領域31の側壁34が基部2の第1面2Aに連続する部分の形状は、ラウンド形状であってもよい。これにより、当該連続する部分に生じ得る応力を分散することができる。
第1領域31における「実質的に同一の幅W31を有する」とは、第2領域32に比べ、第1面2A側から先端部33に向かう方向に従う第1領域31の幅W31の減少割合が小さい、又は第1面2A側から先端部33に向かう方向に従って第1領域31の幅W31が減少しないことを意味する。例えば、第1領域31の下端部(図2において基部2の第1面2Aに連続する部分)における幅W31と第1領域31の第2点P312における幅との差分をdW31、第2領域32の第1点P321における幅と先端部33における幅との差分をdW32としたとき、dW31/H31の値がdW32/H32の値よりも小さい場合に、第1領域31の幅W31が実質的に同一であると評価することができる。dW31/H31の値をdW32/H32の値の半分以下とすると、微細凸部3のアスペクト比(高さ/幅)が大きくなり、種々の機能の向上が期待される。
第1領域31の幅W31が基部2の第1面2A側から先端部33に向かう方向に従って減少する場合において、dW31/H31は、例えば、0.1〜0.3程度であってもよい。第1領域31の幅W31が基部2の第1面2A側から先端部33に向かう方向に従って減少する場合、又は当該方向に従って変化しない場合において、dW32/H32は、0.3〜2.0程度であってもよい。dW31/H31及びdW32/H32を上記範囲にすることで、全体として微細凸部3のアスペクト比(高さ/幅)を大きくすることができ、微細凸部3の物理的な強度をさらに高めることができる。
基部2の厚さ方向における微細凸部3の切断面を、先端部33が上方に位置し、基部2が下方に位置する状態で任意の方向から見たときに、微細凸部3は、左右対称の形状を有していてもよいし、左右非対称の形状を有していてもよい。図2及び図3に示す微細凸部3は、当該切断面の第1の側(例えば左側)と当該第1の側に対向する第2の側(例えば右側)とのそれぞれにおける第1領域31の第1点P311、第2点P312、第2領域の第1点P321及び第2点P322の水平方向位置、並びに第1領域31の側壁34の傾き(基部2の第1面2Aに対する傾き)が略一致しており、左右対称の形状を有していると評価され得る。この場合においては、複数の微細凸部3による機能が等方的に現われ得る。一方、当該切断面の第1の側(例えば左側)と当該第1の側に対向する第2の側(例えば右側)とのそれぞれにおける第1領域31の第1点P311、第2点P312、第2領域の第1点P321及び第2点P322の水平方向位置、並びに第1領域31の側壁34の傾き(基部2の第1面2Aに対する傾き)のうちの少なくとも1つが略一致していない場合、微細凸部3は、左右非対称の形状を有していると評価され得る。この場合においては、複数の微細凸部3による機能が異方的に現われ得る。例えば、第1の側(例えば左側)から見た第2領域32の形状や高さと、第2の側(例えば右側)から見た第2領域32の形状や高さとが異なる場合、第1の側によって発現される機能と第2の側によって発現される機能との程度等が異なり得る。
微細凸部3の平面視形状は、特に限定されるものではないが、後述するシリカ粒子41の形状、分散性等に応じて適宜設定され得る。微細凸部3の平面視形状の一態様は、略円形状である。また、微細凸部3の平面視形状の別の一態様は、輪郭が曲線により構成される島状の形状である。
平面視略円形状の微細凸部3の寸法は、特に限定されるものではない。後述するように、第1の実施形態に係るインプリントモールド1は、シリカ粒子41をマスクとして用いたエッチング処理を経て製造され得るため(図4参照)、微細凸部3の寸法は、シリカ粒子41の粒度分布、分散性等に応じた範囲に設定され得る。例えば、微細凸部3の寸法は、10nm〜300μm程度である。なお、微細凸部3の寸法は、平面視における微細凸部3の側壁34の外接円により定義され、走査型電子顕微鏡(例えば、製品名:SU−8000,日立ハイテクノロジーズ社製)、透過型電子顕微鏡、原子間力顕微鏡等を用いて測定され得る。
第1領域31の幅W31も同様に、上記シリカ粒子41の粒度分布(粒径分布)、分散性等に応じた範囲に設定され得る。例えば、微細凸部3の第1領域31の幅W31は、5nm〜300μm程度であり、5〜500nm程度であってもよく、10〜300nm程度であってもよい。なお、微細凸部3の第1領域31の幅W31は、第1領域31が基部2の第1面2Aに連続する部分における幅と定義され、走査型電子顕微鏡(例えば、製品名:SU−8000,日立ハイテクノロジーズ社製)、透過型電子顕微鏡、原子間力顕微鏡等を用いて測定され得る。
微細凸部3の高さH3は、特に限定されるものではない。後述するように、本実施形態に係るインプリントモールド1は、シリカ粒子41をマスクとして用いたシリコン基板20のエッチング処理を経て製造されるため、微細凸部3の高さH3は、シリカ粒子41とシリコン基板20とのエッチング選択比に応じて設定され得る。例えば、微細凸部3の高さH3は、10〜1000nm程度であり、50〜800nm程度であってもよく、100〜600nm程度であってもよい。
微細凸部3の第1領域31の高さH31は、シリカ粒子41とシリコン基板20とのエッチング選択比及びシリカ粒子41の直径等に応じて設定され得る。また、第2領域32の高さH32は、シリカ粒子41とシリコン基板20とのエッチング選択比等に応じて設定され得る。例えば、第1の領域31の高さH31は、微細凸部3の下端の幅W31との関係において下記式の関係により表され得る。
1.5W31≦H31≦5W31
さらに、第1の領域31の高さH31は、微細凸部3の下端の幅W31との関係において下記式の関係により表されてもよい。
2W31≦H31≦4W31
第2領域32において、少なくとも微細凸部3の側壁34は湾曲面により構成される。図2に示すように、第2領域32は、全体がドーム状に湾曲していてもよいし、図3に示すように、先端部(頂部)33が略平坦面(第1面2Aに略平行な面)であって、側壁34が外側に凸状に湾曲していてもよい。
第2領域32の第2点P322における幅W32は、例えば、第1領域31の下端の幅W31の0.1〜0.3倍程度であってもよい。第2領域32の高さH32は、特に限定されないが、例えば、10nm〜100nm程度であってもよい。隣接する微細凸部3の間隔Dは、特に限定されないが、例えば、50nm〜500nm程度であってもよく、100nm〜250nm程度であってもよい。なお、微細凸部3の周囲に当該微細凸部3とは異なる形状の凸部が存在する場合であっても、当該微細凸部3と当該凸部との間隔は、上記範囲内であってもよい。
上述した構成を有する第1の実施形態に係るインプリントモールド1においては、微細凸部3が略柱状であり、その軸方向に沿って実質的に同一幅W31の第1領域と、少なくとも側壁34が湾曲し、先端部(頂部)33に向かって幅W32が漸減する第2領域とを含む。そのため、第1の実施形態に係るインプリントモールド1を用いたインプリント処理を経てレプリカモールドを作製し、当該レプリカモールドを用いたインプリント処理により、第1の実施形態に係るインプリントモールド1の微細凸部3と実質的に同一形状の微細凸部を有する微細凹凸構造体(微細凸状構造体)を、安価に、かつ簡便に製造することができる。
[インプリントモールドの製造方法]
次に、第1の実施形態に係るインプリントモールド1の製造方法の一例を説明する。図4は、第1の実施形態に係るインプリントモールドの製造方法の各工程を切断端面にて示す工程フロー図である。
まず、第1面2A及びそれに対向する第2面2Bを有するシリコン基板20を準備し、当該シリコン基板20の第1面20A上にシリカ粒子41を含有するレジスト組成物40をスピンコート法等により塗布する(図4(A)参照)。
レジスト組成物40に含まれるシリカ粒子41としては、平均粒子径(数平均粒子径)が5nm〜300μm、好ましくは5nm〜1000nmのものが挙げられる。シリカ粒子41の粒径分布は、特に限定されないが、可能な限り狭いのが好ましい。シリカ粒子41の粒径分布は、微細凸部3の形状を決める重要なファクターの一つであり、粒径分布の狭いシリカ粒子41を用いることで、所望とする形状の微細凸部3の形成が可能となり、微細凸部3の形状のバラツキを低減することができる。
さらに、シリカ粒子41としては、その表面がメチル基、エチル基、オクタデシル基等のアルキル基等の官能基により修飾されてなるものが用いられ得る。シリカ粒子41の表面が上記官能基により修飾されていることで、レジスト組成物40中においてシリカ粒子41を凝集させることなく、適度に分散させることができる。なお、シリカ粒子41の表面を上記官能基により修飾する方法としては、例えば、シリカ粒子にUVオゾン処理、プラズマ処理、真空紫外(VUV)処理を施すことでその表面を活性化し、当該表面が活性化されたシリカ粒子を、メチル基、エチル基、オクタデシル基等のアルキル基を含むシランカップリング剤溶液中に浸漬させる、又は当該シランカップリング剤のガス雰囲気下に暴露する方法等が挙げられる。
レジスト組成物40を構成する樹脂材料としては、例えば、ポジ型又はネガ型レジスト、UV硬化性樹脂等を用いることができる。ポジ型レジストとしては、ビスフェノールA骨格ノボラックレジスト等のノボラック系ポリマーと光酸発生剤とクエンチャー(溶解抑止剤)とを含むものを例示することができ、ネガ型レジストとしては、ビスフェノールA骨格ノボラックレジスト等のノボラック系ポリマーと光酸発生剤と架橋剤とを含むものを例示することができる。UV硬化性樹脂としては、アクリル系モノマーと光開始剤とを含むものを例示することができる。
上記レジスト組成物40には、シリカ粒子41の分散性や表面エネルギーを調整可能な界面活性剤等の添加剤等が含まれ得る。これにより、レジスト組成物40中においても、シリコン基板20の第1面20A上に塗布された状態においても、シリカ粒子41を凝集させることなく、適度に分散させることができる。
次に、シリコン基板20の第1面20A上に塗布されたレジスト組成物40を硬化させる(図4(B)参照)。レジスト組成物40を硬化させる方法としては、当該レジスト組成物40を構成する樹脂材料の硬化特性に応じた方法を採用することができる。例えば、レジスト組成物40を構成する樹脂材料が紫外線硬化性樹脂である場合には、レジスト組成物40に紫外線UVを照射することにより、レジスト組成物40を硬化させ得る。
レジスト組成物40を紫外線UVの照射により硬化させる際、所望により、所定の開口部を有するマスクを用いてパターニングしてもよい。レジスト組成物40を構成する樹脂材料がネガ型フォトレジスト材料である場合、開口部を介して露光された領域のレジスト組成物40のみを硬化させることができ、シリコン基板20の第1面20A上における所望とする領域にのみ微細凸部3を形成することができる。
続いて、シリコン基板20の第1面20A上において硬化したレジスト組成物40中の樹脂材料をアッシング等により除去する(図4(C)参照)。これにより、シリコン基板20の第1面20A上に、適度に分散した状態でシリカ粒子41を残存させることができる。このように、シリカ粒子41は、シリコン基板20の第1面20A上に直接配置される。なお、直接配置されるとは、シリカ粒子41とシリコン基板20の第1面20Aとの間に、別個のマスク材等が介在していないことを意味する。
そして、シリカ粒子41をマスクとして、臭化水素(HBr)をエッチングガスとして用いる異方性ドライエッチング処理を行う(図4(D)参照)。かかるドライエッチング処理において、シリカ粒子41とシリコン基板20とのエッチング選択比に応じて、シリコン基板20の第1面20A側がエッチングされ、ピラー状(略柱状)のパターンが形成される。このとき、シリカ粒子41もエッチングされるが、シリカ粒子41がその半径分エッチングされるまでの間は、シリカ粒子41により被覆されていない部分がシリコン基板の厚さ方向に沿ってエッチングされるため、ピラー状のパターンが形成される(図4(D)参照)。その後、シリカ粒子41がさらにエッチングされると、シリカ粒子41により被覆されていたピラー状のパターンの先端の周縁部がエッチングされ、側壁が湾曲面として形成される(図4(E)参照)。そして、シリカ粒子41が消失してしまう前又は消失するのと略同時にエッチング処理を終了する。これにより、図2又は図3に示す形状を有する微細凸部3がシリコン基板20の第1面20A側に形成される。
上述したように、第1の実施形態において、シリカ粒子41がその半径分エッチングされるまでの間は、シリカ粒子41の直径に対応した寸法を有するピラー状のパターンが形成され、その後ピラー状のパターンの先端の周縁部がエッチングされるため、略柱状の第1領域31と、少なくとも側壁34が湾曲面により構成される第2領域32とを含む微細凸部3が形成される。そのため、第1領域31の下端の幅W31は、エッチングマスクとしてのシリカ粒子41の直径と実質的に同一となり、第1領域31の高さH31は、シリカ粒子41の半径とエッチング選択比との積により表される。よって、第1領域31の高さH31は、微細凸部3の下端の幅W31との関係において下記式の関係により表され得る。
1.5W31≦H31≦5W31
最後に、フッ酸(HF)等を用いて、微細凸部3上に残存するシリカ粒子41をエッチングして除去する。これにより、軸方向に沿って実質的に同一幅W31の第1領域と、少なくとも側壁34が湾曲し、先端部(頂部)33に向かって幅W32が漸減する第2領域とを含む微細凸部3を備えるインプリントモールド1が製造され得る。
上述した第1の実施形態に係るインプリントモールドの製造方法によれば、レジスト組成物40中に含まれるシリカ粒子41をマスクとしたエッチング処理により、所望とする形状の微細凸部3を形成することができるため、金属汚染等を生じさせることなく、インプリントモールド1を安価に製造することができる。
〔第2の実施形態〕
図5は、第2の実施形態に係る微細凹凸構造体の一具体例としての微細凸状構造体の概略構成を示す切断端面図であり、図6は、第2の実施形態に係る微細凹凸構造体における微細凸部の概略構成を示す部分拡大切断端面図であり、図7は、第2の実施形態に係る微細凹凸構造体における微細凸部の他の態様の概略構成を示す部分拡大切断端面図である。なお、第2の実施形態において、微細凸部を備える微細凸状構造体としてのインプリントモールドを例に挙げて説明するが、この態様に限定されるものではない。第2の実施形態に係る微細凹凸構造体には、当該インプリントモールドを用いたインプリント処理を経て作製され、微細凹部を備える微細凹状構造体(例えばレプリカモールド等)や、当該レプリカモールドを用いたインプリント処理を経て作製され、微細凸部を備える微細凸状構造体(例えば、インプリントモールド等も含む)も含まれ得る。
[インプリントモールド]
図5に示すように、第2の実施形態に係るインプリントモールド1は、第1面2A及び当該第1面2Aに対向する第2面2Bを有する基部2と、基部2の第1面2A側に位置する、ピラー状の複数の微細凸部3とを備える。基部2と微細凸部3とは、同一材料により構成されていてもよいし、異なる材料により構成されていてもよい。インプリントモールド1は、例えば、シリコン、窒化ガリウム等の半導体;石英ガラス、ソーダガラス、蛍石、フッ化カルシウム基板、フッ化マグネシウム基板、アクリルガラス等のガラス;ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、シリコーン等の樹脂;ニッケル、チタン、アルミニウム等の金属等により構成されていてもよい。基部2と微細凸部3とが異なる材料により構成される場合、基部2及び微細凸部3のそれぞれは、上記のインプリントモールド1を構成する材料として例示したものの中から選択される任意の材料により構成されていればよい。
基部2の平面視形状としては、特に限定されるものではなく、例えば、略矩形状、略円形状等が挙げられる。後述するように、第2の実施形態に係るインプリントモールド1がシリコン基板20(図8(A)参照)を用いて製造される場合、基部2の平面視形状は、通常、略円形状である。
基部2の大きさも特に限定されるものではないが、例えば、基部2の平面視形状が略円形状である場合には200〜300mmφ程度である。また、基部2の厚さT2は、強度、取り扱い適性等を考慮し、例えば、100μm〜1mm程度の範囲で適宜設定され得る。
図6に示すように、第2の実施形態において、微細凸部3は、基部2の第1面2A側に位置し、第1面2Aから当該第1面2Aの略直交方向に突出する第1領域31と、第1領域31に連続する第2領域32とを含む。ここで、略直交方向とは、第1面2Aに対して約90°で交差する方向であり、例えば、80°〜90°で交差する方向が含まれる。
第1領域31は、第1面2A側から微細凸部3の先端部(頂部)33に向かって実質的に同一の幅W31を有する領域である。第2領域32は、微細凸部3の先端部(頂部)33に向かうに従って幅W32が漸減する領域である。
第2の実施形態において、インプリントモールド1の基部2の厚さ方向における切断面を見たときに、第1領域31の側壁34上の第1点P311と第2点P312とを結ぶ第1線分L1の基部2の第1面2Aに対する傾きθ1は、第2領域32の側壁34上の第1点321と第2点322とを結ぶ第2線分L2の基部2の第1面2Aに対する傾きθ2よりも大きい。したがって、微細凸部3の第1領域31及び第2領域32は、当該傾きθ1,θ2によっても定義され得る。傾きθ1は、例えば、75°〜90°である。傾きθ2は、例えば、30°〜80°である。なお、第1領域31の第1点P311は、基部2の第1面2Aから第1領域31の高さH31の半分の高さ(H31/2)に位置する点であり、第2点P312は、第1領域31における最も先端部(頂部)33側に位置する点である。また、第2領域32の第1点P321は、第1領域31の第2点P312と同一の高さ位置にある点であり、第2点P322は、第1点P321から第2領域32の高さH32の半分の高さ(H32/2)に位置する点である。第1領域31の第1点P311よりも先端部33に近い側における第1領域31の側壁34は、第1点P311よりも先端部33から遠い(基部2の第1面2Aに近い)側における第1領域31の側壁34よりも基部2の第1面2Aに対して大きな傾きを有していてもよい。すなわち、第1領域31における基部2の第1面2Aに平行な断面の面積は、基部2の第1面2Aに近くなるほど大きくなっていてもよい。これにより、微細凸部3の物理的な強度が高くなることが期待される。また、第1領域31の側壁34が基部2の第1面2Aに連続する部分の形状は、ラウンド形状であってもよい。これにより、当該連続する部分に生じ得る応力を分散することができる。
第1領域31における「実質的に同一の幅W31を有する」とは、第2領域32に比べ、第1面2A側から先端部33に向かう方向に従う第1領域31の幅W31の減少割合が小さい、又は第1面2A側から先端部33に向かう方向に従って第1領域31の幅W31が減少しないことを意味する。例えば、第1領域31の下端部(図6において基部2の第1面2Aに連続する部分)における幅W31と第1領域31の第2点P312における幅との差分をdW31、第2領域32の第1点P321における幅と先端部33における幅との差分をdW32としたとき、dW31/H31の値がdW32/H32の値よりも小さい場合に、第1領域31の幅W31が実質的に同一であると評価することができる。dW31/H31の値をdW32/H32の値の半分以下とすると、微細凸部3のアスペクト比(高さ/幅)が大きくなり、種々の機能の向上が期待される。
第1領域31の幅W31が基部2の第1面2A側から先端部33に向かう方向に従って減少する場合において、dW31/H31は、例えば、0.1〜0.3程度であってもよい。第1領域31の幅W31が基部2の第1面2A側から先端部33に向かう方向に従って減少する場合、又は当該方向に従って変化しない場合において、dW32/H32は、0.3〜2.0程度であってもよい。dW31/H31及びdW32/H32を上記範囲にすることで、全体として微細凸部3のアスペクト比(高さ/幅)を大きくすることができ、微細凸部3の物理的な強度をさらに高めることができる。
基部2の厚さ方向における微細凸部3の切断面を、先端部33が上方に位置し、基部2が下方に位置する状態で任意の方向から見たときに、微細凸部3は、左右対称の形状を有していてもよいし、左右非対称の形状を有していてもよい。図6及び図7に示す微細凸部3は、当該切断面の第1の側(例えば左側)と当該第1の側に対向する第2の側(例えば右側)とのそれぞれにおける第1領域31の第1点P311、第2点P312、第2領域の第1点P321及び第2点P322の水平方向位置、並びに第1領域31の側壁34の傾き(基部2の第1面2Aに対する傾き)が略一致しており、左右対称の形状を有していると評価され得る。この場合においては、複数の微細凸部3による機能が等方的に現われ得る。一方、当該切断面の第1の側(例えば左側)と当該第1の側に対向する第2の側(例えば右側)とのそれぞれにおける第1領域31の第1点P311、第2点P312、第2領域の第1点P321及び第2点P322の水平方向位置、並びに第1領域31の側壁34の傾き(基部2の第1面2Aに対する傾き)のうちの少なくとも1つが略一致していない場合、微細凸部3は、左右非対称の形状を有していると評価され得る。この場合においては、複数の微細凸部3による機能が異方的に現われ得る。例えば、第1の側(例えば左側)から見た第2領域32の形状や高さと、第2の側(例えば右側)から見た第2領域32の形状や高さとが異なる場合、第1の側によって発現される機能と第2の側によって発現される機能との程度等が異なり得る。
微細凸部3の平面視形状は、特に限定されるものではないが、後述するシリカ粒子41の形状、分散性等に応じて適宜設定され得る。微細凸部3の平面視形状の一態様は、略円形状である。また、微細凸部3の平面視形状の別の一態様は、輪郭が曲線により構成される島状の形状である。
平面視略円形状の微細凸部3の寸法は、特に限定されるものではない。後述するように、第2の実施形態に係るインプリントモールド1は、シリカ粒子41をマスクとして用いたエッチング処理を経て製造され得るため(図8参照)、微細凸部3の寸法は、シリカ粒子41の粒度分布、分散性等に応じた範囲に設定され得る。例えば、微細凸部3の寸法は、10nm〜300μm程度である。なお、微細凸部3の寸法は、平面視における微細凸部3の側壁34の外接円により定義され、走査型電子顕微鏡(例えば、製品名:SU−8000,日立ハイテクノロジーズ社製)、透過型電子顕微鏡、原子間力顕微鏡等を用いて測定され得る。
第1領域31の幅W31も同様に、上記シリカ粒子41の粒度分布(粒径分布)、分散性等に応じた範囲に設定され得る。例えば、微細凸部3の第1領域31の幅W31は、5nm〜300μm程度であり、5〜500nm程度であってもよく、10〜300nm程度であってもよい。なお、微細凸部3の第1領域31の幅W31は、第1領域31が基部2の第1面2Aに連続する部分における幅と定義され、走査型電子顕微鏡(例えば、製品名:SU−8000,日立ハイテクノロジーズ社製)、透過型電子顕微鏡、原子間力顕微鏡等を用いて測定され得る。
微細凸部3の高さH3は、特に限定されるものではない。後述するように、第2の実施形態に係るインプリントモールド1は、シリカ粒子41をマスクとして用いたシリコン基板20のエッチング処理を経て製造され得るため、微細凸部3の高さH3は、シリカ粒子41とシリコン基板20とのエッチング選択比に応じて設定され得る。例えば、微細凸部3の高さH3は、10〜1000nm程度であり、50〜800nm程度であってもよく、100〜600nm程度であってもよい。
微細凸部3の第1領域31の高さH31は、シリカ粒子41とシリコン基板20とのエッチング選択比及びシリカ粒子41の直径等に応じて設定され得る。また、第2領域32の高さH32は、シリカ粒子41とシリコン基板20とのエッチング選択比等に応じて設定され得る。例えば、第1の領域31の高さH31は、微細凸部3の下端の幅W31との関係において下記式の関係により表され得る。
1.5W31≦H31≦5W31
さらに、第1の領域31の高さH31は、微細凸部3の下端の幅W31との関係において下記式の関係により表されてもよい。
2W31≦H31≦4W31
第2の実施形態に係るインプリントモールド1において、微細凸部3の第2領域32の先端部(頂部)33は先鋭形状を有する。微細凸部3の先端部(頂部)33が先鋭形状を有することで、当該インプリントモールド1を用いたインプリント処理時においてインプリント樹脂からの離型が容易となる。
第2の実施形態において、第1領域31と第2領域32との連続部には、微細凸部3の略全周に亘る周状段差部35が設けられている。このような周状段差部35が設けられていることで、特に図6に示す態様においては、平面視における先鋭形状の面積密度を増大させることができ、当該インプリントモールド1を用いて得られる樹脂シート等において抗菌作用の向上が期待される。なお、ある種の菌においては、先鋭形状を有する微細凸部3上に足場を形成し難く、それにより当該菌の増殖を抑制可能であるものと考えられる。
周状段差部35は、図6に示すように、先端部(頂部)33側に向かって開口する凹溝状に構成されていてもよいし、図7に示すように、階段状に構成されていてもよい。後述するインプリントモールド1の製造方法におけるエッチング条件を調整することで、周状段差部35の形状が調整され得る。
周状段差部35の幅W35は、特に限定されるものではなく、例えば、1nm〜30nm程度であってもよく、3nm〜20nm程度であってもよい。なお、周状段差部35の幅W35は、走査型電子顕微鏡(例えば、製品名:SU−8000,日立ハイテクノロジーズ社製)、透過型電子顕微鏡、原子間力顕微鏡等を用いて測定され得る。
第2領域32の第2点P322における幅W32は、例えば、第1領域31の下端の幅W31の0.1〜0.3倍程度であってもよい。第2領域32の高さH32は、特に限定されないが、例えば、10nm〜100nm程度であってもよい。隣接する微細凸部3の間隔Dは、特に限定されないが、例えば、50nm〜500nm程度であってもよく、100nm〜250nm程度であってもよい。なお、微細凸部3の周囲に当該微細凸部3とは異なる形状の凸部が存在する場合であっても、当該微細凸部3と当該凸部との間隔は、上記範囲内であってもよい。
上述した構成を有する第2の実施形態に係るインプリントモールド1においては、微細凸部3が略柱状であり、その軸方向に沿って実質的に同一幅W31の第1領域と、先端部(頂部)33に向かって幅W32が漸減する第2領域とを含む。そのため、第2の実施形態に係るインプリントモールド1を用いたインプリント処理を経てレプリカモールドを作製し、当該レプリカモールドを用いたインプリント処理により、第1の実施形態に係るインプリントモールド1の微細凸部3と実質的に同一形状の微細凸部を有する微細凹凸構造体(微細凸状構造体)を、安価に、かつ簡便に製造することができる。
[インプリントモールドの製造方法]
次に、第2の実施形態に係るインプリントモールド1の製造方法の一例を説明する。図8は、第2の実施形態に係るインプリントモールドの製造方法の各工程を切断端面にて示す工程フロー図である。
まず、第1面2A及びそれに対向する第2面2Bを有するシリコン基板20を準備し、当該シリコン基板20の第1面20A上にシリカ粒子41を含有するレジスト組成物40をスピンコート法により塗布する(図8(A)参照)。
レジスト組成物40に含まれるシリカ粒子41としては、平均粒子径(数平均粒子径)が5nm〜300μm、好ましくは5nm〜1000nmのものが挙げられる。シリカ粒子41の粒径分布は、特に限定されないが、可能な限り狭いのが好ましい。シリカ粒子41の粒径分布は、微細凸部3の形状を決める重要なファクターの一つであり、粒径分布の狭いシリカ粒子41を用いることで、所望とする形状の微細凸部3の形成が可能となり、微細凸部3の形状のバラツキを低減することができる。
さらに、シリカ粒子41としては、その表面がメチル基、エチル基、オクタデシル基等のアルキル基等の官能基により修飾されてなるものが用いられ得る。シリカ粒子41の表面が上記官能基により修飾されていることで、レジスト組成物40中においてシリカ粒子41を凝集させることなく、適度に分散させることができる。なお、シリカ粒子41の表面を上記官能基により修飾する方法としては、例えば、シリカ粒子にUVオゾン処理、プラズマ処理、真空紫外(VUV)処理を施すことでその表面を活性化し、当該表面が活性化されたシリカ粒子を、メチル基、エチル基、オクタデシル基等のアルキル基を含むシランカップリング剤溶液中に浸漬させる、又は当該シランカップリング剤のガス雰囲気下に暴露する方法等が挙げられる。
レジスト組成物40を構成する樹脂材料としては、例えば、ポジ型又はネガ型レジスト、UV硬化性樹脂等を用いることができる。ポジ型レジストとしては、ビスフェノールA骨格ノボラックレジスト等のノボラック系ポリマーと光酸発生剤とクエンチャー(溶解抑止剤)とを含むものを例示することができ、ネガ型レジストとしては、ビスフェノールA骨格ノボラックレジスト等のノボラック系ポリマーと光酸発生剤と架橋剤とを含むものを例示することができる。UV硬化性樹脂としては、アクリル系モノマーと光開始剤とを含むものを例示することができる。
上記レジスト組成物40には、シリカ粒子41の分散性や表面エネルギーを調整可能な界面活性剤等の添加剤等が含まれ得る。これにより、レジスト組成物40中においても、シリコン基板20の第1面20A上に塗布された状態においても、シリカ粒子41を凝集させることなく、適度に分散させることができる。
次に、シリコン基板20の第1面20A上に塗布されたレジスト組成物40を硬化させる(図8(B)参照)。レジスト組成物40を硬化させる方法としては、当該レジスト組成物40を構成する樹脂材料の硬化特性に応じた方法を採用することができる。例えば、レジスト組成物40を構成する樹脂材料が紫外線硬化性樹脂である場合には、レジスト組成物40に紫外線UVを照射することにより、レジスト組成物40を硬化させ得る。
レジスト組成物40を紫外線UVの照射により硬化させる際、所望により、所定の開口部を有するマスクを用いてパターニングしてもよい。レジスト組成物40を構成する樹脂材料がネガ型フォトレジスト材料である場合、開口部を介して露光された領域のレジスト組成物40のみを硬化させることができ、シリコン基板20の第1面20A上における所望とする領域にのみ微細凸部3を形成することができる。
続いて、シリコン基板20の第1面20A上において硬化したレジスト組成物40中の樹脂材料をアッシング等により除去する(図8(C)参照)。これにより、シリコン基板20の第1面20A上に、適度に分散した状態でシリカ粒子41を残存させることができる。このように、シリカ粒子41は、シリコン基板20の第1面20A上に直接配置される。なお、直接配置されるとは、シリカ粒子41とシリコン基板20の第1面20Aとの間に、別個のマスク材等が介在していないことを意味する。
そして、シリカ粒子41をマスクとして、臭化水素(HBr)をエッチングガスとして用いる異方性ドライエッチング処理を行う(図8(D)参照)。かかるドライエッチング処理において、シリカ粒子41とシリコン基板20とのエッチング選択比に応じて、シリコン基板20の第1面20A側がエッチングされ、ピラー状(略柱状)のパターンが形成される。このとき、シリカ粒子41もエッチングされるが、シリカ粒子41がその半径分エッチングされるまでの間は、シリカ粒子41により被覆されていない部分がシリコン基板20の厚さ方向に沿ってエッチングされるため、ピラー状のパターンが形成される。
シリカ粒子41がその半径分エッチングされたら、異方性ドライエッチング処理を終了し、フッ酸(HF)等を用いて、残存するシリカ粒子41を除去する。そして、CF4、SF6等のフッ素系ガスをエッチャントとして用いる等方性エッチング処理を行う(図8(E)参照)。等方性エッチングにより、ピラー状のパターンの先端部が先細形状になるようにエッチングされる一方、ピラー状のパターンの側壁には、上記異方性ドライエッチング処理中の堆積物が付着しており、当該堆積物によりピラー状のパターンの側壁のエッチング速度が低下する。これにより、第1領域31と第2領域32との連続部に周状段差部35が形成される。このようにして、図6又は図7に示す形状を有する微細凸部3が形成される。
上述した第2の実施形態に係るインプリントモールドの製造方法によれば、レジスト組成物40中に含まれるシリカ粒子41をマスクとしたエッチング処理により、所望とする形状の微細凸部3を形成することができるため、金属汚染等を生じさせることなく、インプリントモールド1を安価に製造することができる。
[微細凹凸構造体の製造方法]
第1及び第2の実施形態に係るインプリントモールド1を用いた微細凹凸構造体の製造方法について説明する。図9は、第1の実施形態に係るインプリントモールド1を用いて微細凹凸構造体(微細凹状構造体)としてのレプリカモールドを製造する方法の各工程を切断端面にて示す工程フロー図であり、図10は、第2の実施形態に係るインプリントモールド1を用いて微細凹凸構造体(微細凹状構造体)としてのレプリカモールドを製造する方法の各工程を切断端面にて示す工程フロー図であり、図11は、第1の実施形態におけるレプリカモールドを用いて微細凹凸構造体(微細凸状構造体)を製造する方法の各工程を切断端面にて示す工程フロー図であり、図12は、第2の実施形態におけるレプリカモールドを用いて微細凹凸構造体(微細凸状構造体)を製造する方法の各工程を切断端面にて示す工程フロー図である。なお、下記のようにして製造される微細凹凸構造体(微細凸状構造体)1''としては、例えば、抗菌シート、殺菌シート、DNA解析用構造物、プラズモン共鳴構造体、マイクロ流路、モスアイフィルム等の反射防止フィルム、細胞培養シート、細胞分離デバイス、インプリントモールド等が挙げられる。
まずは、微細凹凸構造体1''を製造するために用いられる、微細凹状構造体としてのレプリカモールド1’を、第1及び第2の実施形態に係るインプリントモールド1を用いて作製する。図9(A)及び図10(A)に示すように、第1及び第2の実施形態に係るインプリントモールド1の基部2の第1面2A側に形成されてなる微細凸部3を上方に向けて当該インプリントモールド1を載置し、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等の硬化性樹脂材料10’を第1面2A側に塗布する。
次に、図9(B)及び図10(B)に示すように、第1面2A側に塗布された硬化性樹脂材料10’を硬化させて、その後、インプリントモールド1を剥離する。これにより、第1面2A’及びそれに対向する第2面2B’を有する基部2’と、基部2’の第1面2A’側に形成されてなる微細凹部3’とを備えるレプリカモールド1’が作製される。かかる微細凹部3’は、微細凹凸構造体1''に求められる微細凸部3''に対応するものである。
続いて、図11(A)及び図12(A)に示すように、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等の硬化性樹脂10''にレプリカモールド1’の微細凹部3’を転写する。そして、図11(B)及び図12(B)に示すように、硬化後の硬化性樹脂10''からレプリカモールド1’を剥離する。これにより、第1面2A''及びそれに対向する第2面2B''を有する基部2''と、基部2''の第1面2A''側に形成されてなる微細凸部3''とを備える微細凹凸構造体(微細凸状構造体)1''を製造することができる。
上述のようにして製造される微細凹凸構造体1''は、第1及び第2の実施形態に係るインプリントモールド1の微細凸部3と略同一形状の微細凸部3''を有する。よって、第1の実施形態に係るインプリントモールド1から得られる微細凹凸構造体1''によれば、当該微細凹凸構造体1''をフィルム状に構成することで、反射防止膜等として利用することができる。また、第2の実施形態に係るインプリントモールド1から得られる微細凹凸構造体1''によれば、当該微細凹凸構造体1''をフィルム状に構成することで、抗菌シート等として利用することができる。
〔適用例〕
第1及び第2の実施形態に係る微細凹凸構造体を適用した物品(製品)の一例について説明する。図13は、第1及び第2の実施形態に係る微細凹凸構造体を適用した物品の概略構成を示す断面図であり、図14は、第1及び第2の実施形態に係る微細凹凸構造体を適用した物品の概略構成を示す分解斜視図である。
図13及び図14に示す物品は、例えば、ディスプレイ100であって、表示パネル101と、当該表示パネル101上に設けられた、第1及び第2の実施形態に係る微細凹凸構造体1としての機能性シート102とを備える。機能性シート102は、例えば、反射防止シート又は防眩シート等である。ディスプレイ100の表示パネル101は、微細凹凸構造体1の基部2の第2面2B側に配置されている。なお、図13及び図14における機能性シート102において、微細凸部3の図示が省略されている。図14において斜線の設けられている領域は、微細凸部3が設けられている領域を表している。
図13及び図14に示す機能性シート102(微細凹凸構造体1)は、ディスプレイ100の表示パネル101の表示部101Aに対応する位置に微細凸部3を選択的に有しており、表示パネル101の外周部101Bに対応する位置には、微細凸部3を有していない。この適用例によれば、ディスプレイ100の表示パネル101の表示部101Aに対応する位置にのみ選択的に反射防止性能又は防眩性能を付与することができる。
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
上記第1及び第2の実施形態においては、軸方向に沿って実質的に同一幅W31の第1領域と、少なくとも側壁34が湾曲し、先端部(頂部)33に向かって幅W32が漸減する第2領域とを含む微細凸部3を備える微細凹凸構造体(インプリントモールド1)を例に挙げて説明したが、本発明の微細凹凸構造体は、上記形状の微細凸部3又はそれに対応する形状の微細凹部3を備える限りにおいて、他の形状(例えば、略柱状、略錐状等)の微細凸部又は微細凹部を備えていてもよい。
以下、実施例等を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、下記の実施例等により何ら限定されるものではない。
〔実施例1〕
平面視略円形のシリコン基板(200mmφ)の第1面上に、シリカ粒子(平均粒子径(数平均粒子径):100nm)と、ノボラック系フェノールポリマーとを含有するレジスト組成物をスピンコートにより塗布し、レジスト組成物膜を形成した。
シリコン基板の第1面上のレジスト組成物膜に対して紫外線を照射してレジスト組成物を硬化させ、酸素プラズマによるアッシング処理により、レジスト組成物の硬化物を除去した。レジスト組成物の硬化物を除去した後、シリコン基板の第1面上には、適度に分散された状態でシリカ粒子が残存していた。
上記シリコン基板を、臭化水素(HBr)をエッチングガスとして用いた異方性ドライエッチング処理を行い、シリカ粒子が消失する前に当該ドライエッチング処理を終了した。そして、シリコン基板の第1面上に形成された微細凸部の先端部(頂部)に残存するシリカ粒子を、フッ酸(HF)を用いたエッチングにより除去した。
このようにして作製されたインプリントモールドの微細凸部を、電子顕微鏡(SEM)にて観察した。当該電子顕微鏡によるSEM写真を図15に示す。図15に示すように、シリカ粒子をマスクとしたドライエッチング処理を行い、シリカ粒子が消失してしまう前に当該ドライエッチング処理を終了することで、軸方向に沿って実質的に同一幅W31の第1領域と、少なくとも側壁34が湾曲し、先端部(頂部)33に向かって幅W32が漸減する第2領域とを含み、図3に示す形状の微細凸部3を備えるインプリントモールドを製造可能であることが確認された。
〔実施例2〕
シリカ粒子の平均粒子径の1/2がエッチングされる前に異方性ドライエッチング処理を終了し、残存するシリカ粒子を、フッ酸(HF)を用いたエッチングにより除去し、さらに、CF4をエッチャントとして用いる等方性エッチング処理を行った以外は、実施例1と同様にしてインプリントモールドを作製した。
このようにして作製されたインプリントモールドの微細凸部を、電子顕微鏡(SEM)にて観察した。当該電子顕微鏡によるSEM写真を図16に示す。図16に示すように、シリカ粒子をマスクとしたドライエッチング処理を行い、途中でシリカ粒子を除去した後に等方性エッチング処理を行うことで、軸方向に沿って実質的に同一幅W31の第1領域と、先端部(頂部)33に向かって幅W32が漸減する第2領域と、第1領域と第2領域との連続部に位置する周状段差部とを含み、図6に示す形状の微細凸部3を備えるインプリントモールドを製造可能であることが確認された。