JP6770780B2 - 薄膜および薄膜形成方法 - Google Patents

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Description

本開示は、基材の表面に形成された薄膜およびその薄膜の形成方法に関する。さらに詳しくは、基材との密着性が高い傾斜構造を有する、炭素薄膜もしくは金属酸化物薄膜などの薄膜、ならびに該薄膜を大気圧もしくは大気圧近傍の圧力下(以降、大気圧下ということもある。)で発生させた放電プラズマを利用して、基材表面に薄膜を形成する方法に関する。
高分子または金属材料などの基材の表面に薄膜を形成することによって、低コストかつ省資源で簡便に、バルクとしての基材に高機能性(例えば、高硬度、耐スクラッチ性または高ガスバリア性等)を付与する技術が従来から広く実用に供されている。近年では、酸化ケイ素または酸化アルミニウムなどの金属酸化物からなる無機薄膜を、プラスチック基材または金属基材表面にコーティングする技術が開発され、表面保護、ガスバリア性または美粧性などの機能を付与する技術が普及している(例えば、特許文献1を参照。)。
また、金属酸化物に代えて非晶質の炭素系薄膜(DLC:ダイヤモンドライクカーボン)をコーティングする技術も開示されている(例えば、特許文献2を参照。)。
これらの無機薄膜は、従来真空下でのスパッタリング、イオンプレーティングもしくは真空蒸着法などの物理気相蒸着法、または高周波もしくはマイクロ波によって励起したプラズマによって化学種を活性化して化学反応蒸着するプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法によって成膜する方法が一般的である。いずれも高真空から中真空の低圧領域での成膜が必須となっている。低圧領域での成膜では、膜の原料となる活性種が気相中で他分子または活性種同士で衝突することが少ないため、形成された無機薄膜は均一な非晶質膜であることが特徴である。しかし一方では、形成した薄膜が厚さ方向にも均一であるため、例えば、高硬度、耐摩耗性または高ガスバリア性などの機能を有する薄膜では、基材との界面において基材との特性の差異が大きすぎて剥離を生じる場合があり、密着性に問題があった。
このため薄膜を積層構造にして密着性を維持しながら薄膜表面では高い機能を維持する積層膜が各種提案されている(例えば、特許文献3および特許文献4を参照。)。
さらに製造面では、低圧領域での成膜に用いる成膜装置は、真空を維持するためのチャンバーおよび真空ポンプなどの設備コストがかかり、その運転経費および取り扱いも容易ではない問題があった。これら真空プロセスに起因する問題を解決するため大気圧下において無機薄膜を成膜する大気圧プラズマCVD法も提案されている(例えば、特許文献5および特許文献6を参照。)。特許文献5および特許文献6では、高電圧のパルス電源を使用し、大気圧下で誘電体バリア放電によってダイヤモンド状炭素薄膜を製造する方法を開示している。一般的に、誘電体バリア放電による大気圧プラズマCVD法では、グロー放電が利用される(例えば、非特許文献1を参照。)
特開平11−348171号公報 特開平9−272567号公報 特開2008−94447号公報 特開2010−242225号公報 特開平11−12735号公報 特開2010−208277号公報
「大気圧プラズマの生成制御と応用技術」、小駒 益弘(監修)、福嶋 邦彦(発行者)、サイエンス&テクノロジー株式会社、2006年11月29日 初版第1刷、p23−33 三浦健一、中村守正、表面技術、59、(2008)203
しかし特許文献3または特許文献4のように、薄膜の積層構造によって基材との密着性を高める方法は、組成および構造の異なる薄膜を複数形成する必要があるため製造にあたって装置が複雑化し、また製造に要するコストも大きいという問題があった。
特許文献5または特許文献6のように、誘電体バリア放電を利用する方式は、非特許文献1に示されるように、大気圧グロー放電を維持して低温で均一なプラズマ状態を得るため電界強度が低く、ガス密度が高いにもかかわらず高密度なプラズマを発生させることができない。このため、真空法(真空を利用したプラズマCVD法)に比べて形成した薄膜の密度、硬度およびガスバリア性などの機能が低いという問題があった。また、大気圧もしくは大気圧近傍の圧力下での成膜では、活性種が気相中で他分子または活性種同士で衝突することが多いため、真空法によって得られた薄膜と異なり粒子が互いに接着して形成された粒界を有する不均一な構造となっている。さらに、気相中での相互衝突に運動エネルギーが低下するため基材への衝突エネルギーも真空法に比べて小さく、その結果基材との密着性もより低くなる。大気圧下において高密度プラズマを得るために電界強度を高くすると、電離が急激に派生する。その結果電子なだれが線状に成長し、ストリーマ放電が発生する。ストリーマ放電が発生すると、プラズマが不均一になり、さらに熱電子の発生にともなってアーク放電に移行して高温プラズマとなるため基材の損傷が大きくなり、薄膜の形成は困難である。このため、従来、大気圧プラズマCVD法では、ストリーマ放電の発生を抑制することが好ましいとされてきた。
本開示は、上記の課題を解決し、基材表面に真空を利用したプラズマCVD法によって得られる薄膜と同等もしくはそれ以上の高機能性(硬度および耐摩耗性等)を有し、かつ基材との密着性の高い薄膜およびその薄膜形成方法を提供することを目的とする。
前記の通り、従来、誘電体バリア放電による大気圧プラズマCVD法では、ストリーマ放電の発生を抑制することが好ましいとされてきた。しかし、本発明者らは、誘電体バリア放電による大気圧プラズマCVD法において、ストリーマ放電を利用して、高機能性を有する薄膜を形成できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明に係る薄膜は、基材の表面に設けられた薄膜において、該薄膜は、該薄膜の内表面から該薄膜の外表面に向かうにつれて粒界密度が連続的または断続的に小さくなる傾斜構造を有し、前記薄膜の前記基材の表面に接する最内部領域は、結晶粒の粒径が10〜30nmである粒界構造を有することを特徴とする。
本発明に係る薄膜形成方法は、電圧を印加する電源に接続された第1電極および接地された第2電極からなる一対の対向電極と、該一対の対向電極間に反応ガスおよび放電ガスを含む混合ガスを供給するガス供給路と、を備え、前記第1電極の対向面は固体誘電体によって覆われている成膜装置を用いた薄膜形成方法において、前記第2電極の対向面上に、表面抵抗が10−8〜10オーム/sqの範囲の基材を設置する工程と、大気圧または大気圧近傍の圧力下で、前記一対の対向電極間に前記ガス供給路から前記混合ガスを供給するとともに前記電源によって電圧を印加してストリーマ放電を発生させてプラズマCVDで前記基材の表面に薄膜を形成する工程と、を有し、前記電源が印加する電圧は、高周波もしくは休止期間を有するパルス状の電圧であり、前記高周波または前記パルス状電圧の周波数は1〜100kHzの範囲であり、かつ換算電界が30〜1000Tdの範囲であり、前記対向電極間のもっとも近接している対向面の間の距離は3〜20mmであることを特徴とする。
本発明に係る薄膜形成方法では、前記放電ガスは、ヘリウム、アルゴン、窒素の少なくとも1種もしくはこれらの混合物であることが好ましい。
本発明に係る薄膜形成方法では、前記放電ガスは、ヘリウムからなるか、又はヘリウムとアルゴンとからなり、前記放電ガスの組成は、標準状態の体積比率としてヘリウムを40〜100%の範囲で含み、アルゴンを60〜0%の範囲で含むことが好ましい。
本開示によれば、基材表面に真空を利用したプラズマCVD法によって得られる薄膜と同等もしくはそれ以上の高機能性(硬度および耐摩耗性等)を有し、かつ基材との密着性の高い薄膜およびその薄膜形成方法を提供することができる。
本実施形態に係る薄膜断面であって、大気圧法(ストリーマ放電)で成膜した薄膜断面の走査式電子顕微鏡画像である。 真空法で成膜した薄膜断面の走査式電子顕微鏡画像である。 大気圧法(グロー放電)で成膜した薄膜断面の走査式電子顕微鏡画像である。 本実施形態に係る薄膜形成方法で用いる成膜装置の一例を示す概略図である。 グロー放電を説明するための模式図である。 ストリーマ放電を説明するための模式図である。 本実施形態に係る薄膜が形成される機構について説明するための図である。 対向電極間の各距離における放電形態を示す写真であり、対向電極間の距離は、(a)が1mm、(b)が2mm、(c)が3mm、(d)が4mmである。 対向電極間距離と成膜レートとの関係を示すグラフである。 供試体1〜4のラマンスペクトルである。 対向電極間距離とN/(N+S)との関係を示す。 供試体1〜4のIRスペクトルである。 対向電極間距離と押し込み深さとの関係を示す。 膜厚とN/(N+S)との関係を示す。 供試体5〜8のラマンスペクトルである。 対向電極間距離とN/(N+S)との関係を示す。 供試体9〜12のラマンスペクトルである。 成膜時間とN/(N+S)との関係を示す。 対向電極間距離と押し込み硬度との関係を示す。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示す実施形態に限定されるものではない。これらの実施の例は例示に過ぎず、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
図1は、本実施形態に係る薄膜断面の走査式電子顕微鏡画像である。本実施形態に係る薄膜は、図1に示すように、基材の表面に設けられた薄膜において、該薄膜は、薄膜の内表面から薄膜の外表面に向かうにつれて粒界密度が連続的または断続的に小さくなる傾斜構造を有し、前記薄膜の前記基材の表面に接する最内部領域は、結晶粒の粒径が10〜30nmである粒界構造を有する。
薄膜の種類は、特に限定されないが、例えば、炭素系薄膜、金属酸化物薄膜または珪素系薄膜である。薄膜の厚さは、100〜800nmであることが好ましく、200〜600nmであることがより好ましい。
本明細書において、最内部領域は、薄膜を外表面から見た最深部のことであり、薄膜の内表面(薄膜の基材と接する側の表面)を含む。最内部領域は、薄膜の厚さ方向において、薄膜の内表面から薄膜の外表面(薄膜の基材と接する側とは反対側の表面)へ向かう方向に30nmまでの領域を含むことが好ましい。また、最外部領域は、薄膜を外表面から見た最浅部のことであり、薄膜の外表面を含む。最外部領域は、薄膜の厚さ方向において、薄膜の外表面から基材へ向かう方向に30nmまでの領域を含むことが好ましい。また、薄膜の断面を倍率40000倍で観察した走査式電子顕微鏡(SEM)または透過型電子顕微鏡(TEM)の画像において、粒界が観察される場合を粒界構造と判断し、粒界が観察されない場合を非晶質構造と判断する。
図1に示す薄膜は、例えば、図4に示す成膜装置で成膜することができる。互いに平行に配置された例えば銅製の対向電極2、12のうち、対向電極2の対向面側には、固体誘電体3が配置されている。固体誘電体3としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンテレフタレートもしくはポリエチレンなどのプラスチック、ガラス、またはアルミナなどの金属酸化物が使用できる。固体誘電体3と他方の対向電極12との間に、基材4が配置される。
対向電極2、12間には、ガス供給路5を通して、反応ガス成分を含有する混合ガス6が、所定の流速で対向電極2、12の隙間に供給される。混合ガス6は、対向電極2、12間に印加される高周波電圧によってプラズマ化され、プラズマ化混合ガス7となる。プラズマ化混合ガス7に含有される反応ガス成分の一部は、基材4の表面に堆積し、薄膜(不図示)を形成する。対向電極2、12間を通過し、反応ガス成分の一部が消費された混合ガス6は、排気路8を通して系外に排出される。
図1の薄膜は、ストリーマ放電を利用した大気圧プラズマCVD法(以降、「大気圧法(ストリーマ放電)」ということもある。)で成膜した薄膜である。図1に示す薄膜は次の通り形成した。すなわち、対向電極2,12間の距離dを4mmとし、基材4としてシリコン基材(表面抵抗260オーム/sq、厚さ0.38mm)を電極12の対向面上に配置し、100kPaの圧力下で、反応ガスとしてメタン(CH)400mL/minと、放電ガスとしてヘリウム(He)4L/minおよびアルゴン(Ar)1L/minとを含む混合ガスを、ガス供給路から供給するとともに、周波数30kHz、パルス幅5μsおよび電圧7kVの電源条件でパルス状電圧を印加して、放電を発生させて基材4の表面に膜厚500nmの薄膜を形成した。成膜時間は250sであった。成膜装置1において、対向電極2,12は銅製とした。
図1に示すように、大気圧法(ストリーマ放電)で成膜した薄膜の構造は、基材の表面に接する最内部領域では粒界が明確に形成される粒界構造を有していた。最内部領域における結晶粒の粒径は10〜30nmの範囲であった。ここで、結晶粒の粒径は、SEMまたはTEMによる断面観察で倍率40000倍のときに粒界構造を濃淡によって確認できた場合に、一体となっている粒界構造の外縁の縦の直径と横の直径の平均値として求めたものである。薄膜は、該薄膜の最外部領域に近づくにつれて傾斜的に粒界が不明確となって均一の非晶質構造に近づいていく構造を示していた。
本実施形態に係る薄膜は、薄膜の内表面から薄膜の外表面に向かうにつれて粒界密度が連続的または断続的に小さくなる傾斜構造を有する。粒界密度(無次元数)とは、SEMまたはTEMにおける断面観察の倍率40000倍において、濃淡によって確認できた粒界構造と、粒界構造の間の連続的非晶質部分との単位面積当たりの面積比である。
図1では、薄膜の厚さ方向において、薄膜の内表面から薄膜の外表面(薄膜の基材と接する側とは反対側の表面)へ向かう方向に30nmまでの領域(最内部領域)では、結晶粒の粒径が10〜30nmの粒界構造を有していた。また、薄膜の厚さ方向において、薄膜の外表面から基材へ向かう方向に30nmまでの領域(最外部領域)では、非晶質構造であった。最内部領域と最外部領域との間の領域には、粒界構造を有する部分と非晶質構造を有する部分とが混在していた。最内部領域と最外部領域との間の領域を厚さ方向に二等分したとき、最内部領域側の領域では粒界構造を有する部分が非晶質構造を有する部分よりも多く見られたが、最外部領域側の領域では非晶質構造を有する部分が粒界構造を有する部分よりも多く見られた。また、粒界密度は、薄膜の内表面から薄膜の外表面に向かうにつれて小さくなる傾向が見られた。
図1では、薄膜の最外部領域が非晶質構造を有する形態を示したが、本実施形態では薄膜の最外部領域が粒界構造を有していてもよい。本実施形態では、最外部領域が粒界構造を有するとき、最外部領域における結晶粒の粒径は、最内部領域における結晶粒の粒径よりも大きいことが好ましい。最外部領域が粒界構造を有する薄膜は、たとえば、薄膜の形成において所定の膜厚となったところで停止することで得ることができる。所定の膜厚は、基材の種類、混合ガスの種類、ガス流量および成膜装置の電源条件など成膜条件によって異なるが、たとえば図1の薄膜の形成条件では、100〜250nmである。
次に、本実施形態に係る薄膜と従来の薄膜との断面構造を比較する。
図2は、真空プラズマCVD法(以降、「真空法」ということもある。)で成膜した薄膜断面の走査式電子顕微鏡画像である。図2に示す薄膜は次の通り形成した。すなわち、平行平板法による高周波プラズマCVD装置を用い、0.1Torr(13.3Pa)の圧力下で、反応ガスとしてアセチレン(C)を用い、高周波電力200W、周波数13.56MHzの条件で成膜を行った。薄膜の膜厚は500nmであり、成膜時間は100sであった。
図3は、グロー放電を利用した大気圧プラズマCVD法(以降、「大気圧法(グロー放電)」ということもある。)で成膜した薄膜断面の走査式電子顕微鏡画像である。図3に示す薄膜は次の通り形成した。すなわち、図1の薄膜の作製において、対抗電極間の距離を1mmとし、反応ガスとしてアセチレン(C)20mL/minと放電ガスとして窒素(N)1L/minとを含む混合ガスを用い、電源条件を周波数10kHz、パルス幅5μsおよび電圧18kVに変更した以外は、図1の薄膜と同様にして作製した。薄膜の膜厚は800nmであり、成膜時間は50sであった。
図1〜図3は、倍率40000倍で観察した像である。
図2に示すように、真空法で成膜した薄膜の構造は、該薄膜の厚さ方向の全体にわたって均一な非晶質を有しており、粒界を形成する構造を示さなかった。また、図3に示すように、大気圧法(グロー放電)で成膜した薄膜の構造は、該薄膜の厚さ方向の全体にわたって結晶粒の粒径が50〜100nmである明確な粒界構造を示していた。
また薄膜の硬度は、大気圧法(ストリーマ放電)では12GPa、大気圧法(グロー放電)では3GPa、真空法では12GPaであった。硬度は、ナノインデンター・システム(「Nano Indenter G200」 Agilent Technologies社製)を用いてISO 14577−2002に準拠してバーコビッチ圧子を使用してナノインデンテーション試験を行い、押し込み深さを測定し、押し込み硬度を算出した。薄膜の耐剥離性は、クロスカット剥離試験(JIS K 5600−5−6:1999「塗料一般試験方法−第5部:塗膜の機械的性質−第6節:付着性(クロスカット法)」)によれば、良好な方から順に、大気圧法(ストリーマ放電)、真空法、大気圧法(グロー放電)であった。この結果から、基材と薄膜との界面では粒径が10〜30nm程度の粒界構造の方が、粒界のない均一な非晶質構造よりも密着性が高いことがわかる。また、粒径が50nm以上になると気相中で運動エネルギーを失うため基材との密着性が、粒径が10〜30nmの場合と比較して低下することがわかる。一方、図1および図2の薄膜のように薄膜の最外部領域が非晶質構造となっていることによって、高い硬度特性を示すことが確認できた。以上より、大気圧法(ストリーマ放電)によって成膜した薄膜は傾斜構造を有することによって、真空法によって得られる薄膜と同等もしくはそれ以上の、高硬度特性および高密着特性を有していることが認められた。
薄膜の表面粗さについて、大気圧法(ストリーマ放電)と大気圧法(グロー放電)とを比較すると、大気圧法(ストリーマ放電)の方が、大気圧法(グロー放電)よりも表面粗さが小さかった。表面粗さは、走査型プローブ顕微鏡(「SPM−9700」、島津製作所社製)を用い、JIS R 1683:2007「原子間力顕微鏡によるファインセラミックス薄膜の表面粗さ測定方法」に準拠して測定した。
また耐磨耗性をテーバー式磨耗試験機によってJIS K 7204:1999「プラスチック―摩耗輪による摩耗試験方法」に準拠して評価すると、大気圧法(ストリーマ放電)で得た薄膜がもっとも耐磨耗性が高かった。次いで、真空法、大気圧法(グロー放電)の順であった。
本実施形態に係る薄膜は、薄膜の外表面に近づくにしたがって水素濃度が多くなる傾斜構造を有することが好ましい。最外部領域の水素濃度が最内部領域に比べて増加する傾斜的特性を有することによって、摺動性および緩衝性が増し、その結果、薄膜の耐磨耗性が向上する。
薄膜中の水素濃度は、たとえば、二次イオン質量分析法(Secondary Ion Mass Spectrometry、SIMS)によって、薄膜を深さ方向分析することで測定することができる。また、薄膜中の水素濃度は、ラマン分析結果から推測してもよい。ラマン分光法は物質に照射した光の散乱光(ラマン散乱光)を分光測定する分析法で、物質の組成および構造を解析できる。典型的なDLC膜のラマンスペクトルは1500cm−1付近のGバンドと1300cm−1付近のDバンドとで構成される。これらの強度比からグラファイトクラスター化度または間接的にsp/sp結合成分比を求めることができるが、水素濃度が高くなるとバックグラウンド(蛍光成分)強度が大きくなることが知られている。そこで、Gバンドのピーク位置におけるラマン散乱光強度をS、蛍光成分強度をNとしたとき、水素濃度定性分析値になり得るパラメーターとしてlog(N/S)またはN/(N+S)が定義される(例えば、非特許文献2を参照。)。
図1の薄膜の作製において、膜厚を1000nmとした以外は、図1の薄膜の作製と同様の方法で薄膜を形成した。このとき、膜厚200nm毎にラマン分析を行い、N/(N+S)を求めた。膜厚とN/(N+S)との関係を図14に示す。
図14に示すとおり、N/(N+S)は200nmでは0.5であり、800nmでは0.75であった。そして、800nmまでは、薄膜の外表面に近づくほどN/(N+S)が増加しており、800nm以上ではN/(N+S)は略一定であった。このことから、供試体5の薄膜は、薄膜の外表面に近づくにしたがって水素濃度が多くなる傾斜構造を有することが確認できた。
図2に示す大気圧法(グロー放電)で形成した薄膜は、N/(N+S)が0.9〜1程度であり、水素濃度の傾斜は見られなかった。大気圧法(ストリーマ放電)では、大気法(グロー放電)よりも薄膜の外表面における水素濃度が低いことが確認できた。また、図3に示す真空法で形成した薄膜は、N/(N+S)が0.6〜0.7程度であり、水素濃度の傾斜は見られなかった。このことから、大気圧法(ストリーマ放電)では、薄膜の外表面における水素濃度が真空法と同程度であることが確認できた。この結果は、耐摩耗性評価の結果に整合している。
さらに原料ガスをトリメチルシランと酸素の混合ガスとしてヘリウムで希釈してSiOx薄膜をシリコン基板上に成膜した場合、やはり大気圧法(ストリーマ放電)で得られたSiOx薄膜の耐磨耗性がもっとも高かった。この理由は、薄膜が表面に近いほど粒界が不明確となって均一な非晶質構造に近づくと同時に、最外部領域の水素濃度が最内部領域に比べて増加し、密度がそれに伴って低下する傾斜的特性を有することによって、摺動性および緩衝性が増し、その結果耐磨耗性が増加したものと考えられる。
次に、図4を用いて本実施形態に係る薄膜形成方法を説明する。本発明は、図4に示す成膜装置に限定されるものではない。本実施形態に係る薄膜形成方法は、電圧を印加する電源に接続された第1電極2および接地された第2電極12からなる一対の対向電極2,12と、一対の対向電極2,12間に反応ガスおよび放電ガスを含む混合ガスを供給するガス供給路5と、を備え、第1電極2の対向面は固体誘電体3によって覆われている成膜装置1を用いた薄膜形成方法において、第2電極12の対向面上に、表面抵抗が10−8〜10オーム/sqの範囲の基材4を設置する工程と、大気圧または大気圧近傍の圧力下で、一対の対向電極2,12間にガス供給路5から混合ガス6を供給するとともに電源によって電圧を印加してストリーマ放電を発生させてプラズマCVDで基材4の表面に薄膜を形成する工程と、を有する。
反応ガスは、薄膜の種類によって適宜選択され、本発明はこれに制限されない。炭素系薄膜を形成する場合、反応ガスは、例えば、炭素、水素および/または酸素を含有する化合物であり、メタン、エタンもしくはプロパンのいずれか一種またはこれらの混合物であることが好ましい。金属酸化物薄膜を形成する場合、反応ガスは、例えば、有機金属化合物および酸素である。有機金属化合物は、例えば、トリメチルアルミニウムまたはチタンテトライソポロポキシドである。珪素系薄膜を形成する場合、反応ガスは、例えば、有機珪素化合物および酸素である。有機珪素化合物は、例えば、トリメチルシラン(TrMS)、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラメトキシシラン(TMOS)またはヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)である。各種薄膜の形成において、反応ガスは一種を単独で用いるか、または二種以上を混合して用いてもよい。
放電ガスは、ヘリウム、アルゴンもしくは窒素の少なくとも1種またはこれらの混合物を使用することが好ましく、とくにヘリウムを標準状態の体積%で40%以上、より好ましくは60%以上含むことが好ましい。また、放電ガスは、ヘリウムからなるか、又はヘリウムとアルゴンとからなり、放電ガスの組成は、標準状態の体積比率としてヘリウムを40〜100%の範囲で含み、アルゴンを60〜0%の範囲で含むことが好ましい。
図4に示すように、対向電極のうち一方の電極(図4では上部の電極)2は、好ましくは高周波電圧もしくはパルス電圧が印加され、他方の電極(図4では下部電極)12は接地されている。薄膜の原料となる反応ガスおよび電離して放電プラズマを発生させる放電ガスを含む混合ガス6が対向する電極の間に供給される。電圧が印加される対向電極2の対向面はアルミナなどの固体誘電体3で覆われる。放電開始した場合に固体誘電体3の表面への電荷蓄積によって放電電圧が低下する。このため、固体誘電体3は、固体誘電体3で覆われた電極2がカソード側になった場合にストリーマ放電が固体誘電体3の表面に連続して生じることが抑制され、また放電がアーク放電に移行することを防止する誘電体バリアとしての役割をする。図4では、対向電極2,12のうち、電圧が印加される電極2の対向面だけが固体誘電体3で覆われている形態を示したが、本実施形態では、電極2の対向面に加えて、接地された電極12の対向面も固体誘電体(不図示)で覆われていてもよい。
従来の大気圧プラズマを利用する薄膜形成方法では、たとえば非特許文献1に示されるように対向電極2,12間の距離をグロー放電が持続する距離に設定し、誘電体バリア放電(DBD)をグロー放電状態にして、反応ガスを活性化してプラズマCVD処理を行い、薄膜を形成していた。しかし大気圧プラズマを利用するグロー誘電体バリア放電(GDBD)では、プラズマ中の電子密度およびイオン密度が、真空法でのグロー放電に比べて高いものの、ガス分子の密度が高いため気相中で粒子生成または反応性を失う率が高く、基材表面での膜形成の速度はイオン密度に対して低く、形成された薄膜の密度も低い傾向にある。
本実施形態に係る薄膜形成方法では、グロー放電ではなく、ストリーマ放電を対向電極2,12の間に発生させ、基材の表面に薄膜を形成させる。図5および図6は、放電形態を説明するための模式図であり、図5はグロー放電11B、図6はストリーマ放電11Aを示す。従来ストリーマ放電が発生するとプラズマが不均一かつ不安定となるため均一な薄膜を形成することが困難であり、また集中した放電によって高温となり、低温プラズマ処理が必要なプラスチック基材では熱損傷を受けてしまうという問題があった。本発明者らは、電圧を印加する対向電極2の対向面を固体誘電体3で覆い、対向電極2,12間の距離が狭い条件(例えば、対向電極2,12間の距離1mm、周波数20kHzおよびピーク巾7kVの正負パルス電圧、放電ガスHe、装置内圧力1気圧)では、図5に示すように誘電体表面の沿面放電が接地電極に達するグロー状の放電(グロー放電)11Bが発生するが、この電極間隔を広くすると図6に示すように電圧を印加している電極2の対向面から近傍(0.5mm以内)ではグロー放電のような均一に近い放電が維持され、この均一に近い放電状領域から接地された電極12の対向面上に設置した特定の範囲の表面抵抗値を有する基材の表面に向けてストリーマ放電11Aが発生することを見出した。このストリーマ放電は、1cmあたり2本から10本程度発生しており、フィラメント状放電とも呼ばれる放電形態であった。
このときストリーマ放電を発生させるためには、少なくとも基材の表面抵抗が10オーム/sq以下であることが必要であることがわかった。基材4が、表面抵抗が10オーム/sqを超える高分子材料からなるとき、基材4の表面抵抗は、基材4の表面に導電性化合物を付与するか、または基材4中に導電性化合物を混合して調整することが好ましい。導電性化合物は、たとえばカーボンブラック、銀もしくは銅などの金属、または酸化錫若しくは酸化インジウムなどの金属化合物である。たとえばポリエチレンテレフタレート(PET)シートもしくはポリプロピレンシートなどのプラスチックシート(厚さ0.1mm)に、カーボンブラックを練りこんで、カーボンブラック添加量によって表面抵抗1〜1000オーム/sqの範囲に調整した場合、またはボロンドープシリコンウエファ(厚さ0.4mm、表面抵抗50〜260オーム/sq)の場合にストリーマ放電が発生した。もちろん導電体である金属シート(鋼板、アルミニウム、チタン等、厚さ0.3mmにおいて表面抵抗10−8オーム/sq程度である)も問題なくストリーマ放電が発生した。本明細書において、表面抵抗とは、JIS C 2139:2008「固体電気絶縁材料−体積抵抗率及び表面抵抗率の測定方法」に準拠して測定した値である。
基材として表面抵抗が高く、かつ、透明性の高い高分子材料を用い、当該高分子材料を透明性の導電性化合物の膜で被覆してもよい。透明導電性化合物の膜としては、例えば、酸化インジウム/スズ(ITO)膜又はPEDOT/PSS(ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4−スチレンスルフォン酸))粒子をバインダー樹脂に分散させた膜が挙げられる。
基材は市販品を用いてもよい。たとえば、PETにカーボンブラックを約10%練りこんだマスタバッチペレットとしてライオン社製のレオパウンドPET M3000(厚さ0.15mm、表面抵抗49.8オーム/sq)が市販されている。このマスタバッチペレットをPETペレットに一定比率で分散させることにより所定の表面抵抗のPETシートを得ることができる。
電源が印加する電圧は、高周波もしくは休止期間を有するパルス状の電圧であればよいが、印加する電極2の対向面が固体誘電体3に覆われているため、放電持続のためには、前記高周波およびパルス状電圧は、交流の波形を有していることが好ましい。また、その正ピークと負ピークとの間の電圧は、対向電極2,12間の距離、放電ガス種および圧力によって決定される放電開始電圧の2〜10倍で範囲であることが好ましい。ストリーマ放電が生じ始める対向電極2,12間の距離の条件は、(1)式で表される(例えば、非特許文献1を参照。)。(1)式は、Meekの条件と呼ばれる。
(数1)αd=20 …(1)
(1)式において、dは、対向電極間の距離(mm)、αは電離係数である。
発明者らの研究の結果、大気圧もしくは大気圧近傍の圧力条件下では、放電開始電圧の2〜10倍で範囲の電圧を加えることによって、良質な薄膜の形成に適したストリーマ放電を発生させることができることがわかった。本明細書において、「大気圧近傍の圧力条件下」とは、大気圧近傍の圧力を含むものであり、具体的には絶対圧で例えば80〜120kPaの範囲の圧力下をいう。対向電極間の距離dを拡大したり、印加電圧を放電開始電圧の2倍より少なくしたりすると、電極間の換算電界Td(電界/粒子密度)が低下し、Tdの関数である(1)式の電離係数αが電極間距離dの増加に反比例して急激に低下するため、(1)式の条件を満たさなくなりストリーマ放電が停止してしまう。発明者らの研究によると、基材に損傷を与えないプラズマ密度、かつ、200℃以下の温度での薄膜を形成するためには、対向電極間の距離を3mm以上20mm以下の範囲とすることが好ましい。3mm未満では、誘電体表面の沿面放電の影響と放電距離が短いことからストリーマ放電の成長が抑制され、電子密度とイオン密度を高くすることができない。20mmより大きいと、電極間の換算電界を維持するために、印加電圧を高くする必要があり、発生したストリーマ中のプラズマ密度が高くなり、高温になるため基材への損傷や熱劣化を生じる恐れがある。対向電極間の距離は、4mm以上15mm以下であることがより好ましい。この範囲とすることで、より確実にストリーマ放電を発生させることができるとともに、基板への損傷をより抑制することができる。本明細書において対向電極間の距離は、図4に示すように、対向する電極2,12の対向面間の距離であって、対向面同士が最も近接している部分での距離dである。
基材の損傷をなくし、安定なストリーマ放電を維持するためには、交流の高周波およびパルス状電圧の周波数は1〜100kHzの範囲であり、かつ換算電界が30〜1000Tdの範囲になることが好ましい。なお対向電極2,12は、平行平板形状に対向させて配置する場合、少なくとも一方の対向電極が、角柱の形状である場合が含まれる。図4では、一例として、一方の電極2が角柱状であり、他方の電極12が平板状である形態を示した。この場合、電極2の角柱形状は他方の電極12の奥行方向(図4が図示された紙面の法線方向)の幅と合わせた奥行を有しており、図4において、電極2または電極12のいずれか一方を横方向(図4が図示された紙面の左右方向)に移動させることによって、連続的に大面積に成膜をすることができる。
次に、本発明の条件のストリーマ放電によって、大気圧下においても真空法と同等の高機能な薄膜が形成される機構について図7を参照しながら述べる。図7の左図に示すように、成膜を開始すると、表面抵抗が低い基材4の表面にストリーマ放電11Aの先端が到達し、反応ガス由来のイオンが基材4の表面に衝突して基材4の表面において拡散し、互いに結合して薄膜10を形成する。このときストリーマ中では、グロー放電に比べてパワー密度が約10倍であり、イオン密度、電子密度ともに約1000倍の高密度が維持され、ストリーマ中での再結合も少ないため、真空法でのプラズマCVD法の場合と同レベルの衝突エネルギーで基材に衝突する。その結果、真空法で得られる薄膜と同様の高密度で、絶縁性の無機的な結合の薄膜10が形成される。またストリーマ放電11Aが着地した基材表面に絶縁性の高い薄膜10が合成されるため、薄膜形成部分の表面抵抗率が高くなる。この結果、ストリーマ放電11Aは、図7の右図に示すように、表面抵抗率のより低い未蒸着部分もしくは絶縁性の薄膜10の厚さがより薄い部分に移動する。上記過程を繰り返し、厚さが均一な薄膜10が形成される。基材4の表面に絶縁性の薄膜が形成されるにつれて、表面抵抗が増加するためストリーマ放電内の電界密度が徐々に低下する。その結果、プラズマ中のパワー密度も低下し、それにともなって形成される薄膜10の厚さは均一性が増すとともに、密度も低下する。そして、薄膜10はその外表面に向かうにつれて粒界が不明確になる傾斜構造になっていく。
本実施形態に係る薄膜は、その薄膜の厚さ方向に結晶構造が変化する傾斜構造によって、基材との密着性が高く、かつ真空法で成膜した薄膜と同等かそれ以上の機能性を発揮することができる。
また本実施形態に係る薄膜形成方法は、ストリーマ放電を利用することによって、大気圧下において真空法と同等の高機能性(高硬度および耐擦傷性等)を有する薄膜を基材上に形成することが可能である。また薄膜形成時の温度は低温(室温から100℃程度)でも可能であり、プラスチック基材への適用が可能である。また大気圧CVDを利用しているため従来の真空プロセスに比べ、装置コストおよび運転コストが低い。さらに成膜の速度が真空プロセスに比べて早いため、製造コストを大幅に低下することが期待できる。特に、絶縁性のプラスチック基材であってもカーボンブラックまたは帯電防止剤などをブレンドもしくは塗布することによって、表面抵抗を一定レベルに低下させれば、高機能な薄膜を形成できることを見出し、またシリコンまたは合金などの導電性の産業資材への低コストで簡易な高機能薄膜の付与の可能を見出した。
以下、実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例に何ら限定されるものではない。
図4に示す成膜装置1を用い、対向電極2,12間の距離を変化させて成膜を行った。
(供試体1の作製)
対向電極2,12間の距離dを1mmとし、基材4としてシリコン基材(表面抵抗263オーム/sq、厚さ0.38mm)を電極12の対向面上に配置し、100kPaの圧力下で、反応ガスとしてメタン(CH)200mL/minと、放電ガスとしてヘリウム(He)4L/minおよびアルゴン(Ar)1L/minとを含む混合ガスを、ガス供給路から供給するとともに、周波数30kHz、パルス幅5μsおよび電圧10kVの電源条件でパルス状電圧を印加して、放電を発生させて基材4の表面に膜厚500nmの薄膜を形成した。膜厚は、触針式表面形状測定器(Dektak3030、Veeco Instruments Inc., USA社製)を用いて測定した。
(供試体2〜4の作製)
対向電極2,12間の距離dを2mm(供試体2),3mm(供試体3),4mm(供試体4)に変更した以外は、供試体1と同様にして基材上に薄膜を形成した。
(実験例1)放電形態
供試体1〜4の作成時の放電形態を観察した。供試体1〜4の放電形態を図8に示す。図8に示すように、供試体1(対向電極間距離1mm)はグロー放電であった。供試体2(対向電極間距離2mm)はグロー放電とストリーマ放電とが混在していた。供試体3、4(対向電極間距離3、4mm)は全体にわたってストリーマ放電であった。以上より、対向電極間の距離を3mm以上とすることで、ストリーマ放電が発生することが確認できた。図8では、放電の形態をグレー諧調に処理した画像を示したが、放電の形態はグレー諧調に処理する前のカラー画像によって、より正確に表現される。
(実験例2)成膜レート
対向電極間距離と成膜レートとの関係を確認した。供試体1〜4を5個ずつ作製した。各供試体の作製にあたり、膜厚500nmの薄膜を成膜するのに要した時間(成膜時間)を測定した。供試体1〜4について、それぞれ、作製5回分の成膜時間の平均を求め、膜厚(単位:nm)を成膜時間の平均値(単位:s)で除して成膜レート(単位:nm/s)を求めた。対向電極間距離と成膜レートとの関係を図9に示す。
図9に示すように、対向電極間距離を3mm以上とすることで、成膜レートが急激に増加した。これは、ストリーマ放電は、グロー放電よりもストリーマ内部のイオン密度が高いため、反応ガスの分解がより促進されたことに因ると考えられる。
(実験例3)ラマン分析
供試体1〜4について、薄膜をラマン分光法によって分析した。供試体1〜4のラマンスペクトルを図10に示す。ラマン分析は、JIS K 0137:2010「ラマン分光分析通則」を参照してラマン分光測定装置(inVia StreamLine Plus、RENISHAW社製)を用いて分析を行った。
図10に示すように、対向電極間を3mm以上とすることで、ポリマー構造に起因する蛍光が小さくなった。これは、ストリーマ放電は、グロー放電よりもストリーマ内部のイオン密度が多いため、イオン同士の反応がより促進されたことに因ると考えられる。
ラマン分析において、N/(N+S)を求め、薄膜中の水素濃度の高低を推測した。対向電極間距離とN/(N+S)との関係を図11に示す。
図11に示すとおり、対向電極間距離を3mm以上とすることで、N/(N+S)が急激に小さくなった。このことから、ストリーマ放電で成膜した薄膜は、グロー放電で成膜した薄膜よりも、薄膜中の水素濃度が低いことが推測できる。これは、ストリーマ放電は、グロー放電よりもストリーマ内部のイオン密度が高いため、イオンの反応がより活性化して水素の引き抜きが起こったことに因ると考えられる。
(実験例4)IR分析
供試体1〜4について、薄膜をFTIR(Fourier Transform infrared spectroscopy)法で分析し、対向電極間距離とsp−CHxピークとの関係を確認した。供試体1〜4のFTIRスペクトルを図12に示す。FTIR分析は、赤外分光装置(ALPHA‐T, Bruker Corp.,USA社製)を用いて分析を行った。
図12に示すように、対向電極間距離を3mm以上とすることで、C−Hに起因する2800〜3000cm−1付近のピーク強度が大幅に減少した。特に、sp−CHのピークが弱くなっていることから、Hの減少に伴ってCHによる末端が減少していると考えられる。
(実験例5)表面粗さ
供試体1〜4について、薄膜の表面粗さを、走査型プローブ顕微鏡(「SPM−9700」、島津製作所社製)を用い、JIS R 1683:2007「原子間力顕微鏡によるファインセラミックス薄膜の表面粗さ測定方法」に準拠して測定した。表面粗さは、供試体1が0.41nm、供試体2が0.29nm、供試体3が0.19nm、供試体4が0.25nmであった。
(実験例6)硬さ
供試体1〜4について、薄膜の硬さを評価した。対向電極間距離と押し込み深さとの関係を図13に示す。また、対向電極間距離と押し込み硬度との関係を図19に示す。硬度は、ナノインデンター・システム(「Nano Indenter G200」 Agilent Technologies社製)を用いてISO 14577−2002に準拠してバーコビッチ圧子を使用してナノインデンテーション試験を行い、押し込み深さを測定し、押し込み硬度を算出した。
図13に示すように、対向電極間距離を増加させるにしたがって、押し込み深さ(Indent depth)が小さくなる傾向が見られた。また、図19に示すように、押し込み深さの値を用いて算出した押し込み硬度(Hardness)は、対向電極間距離が増加するにしたがって高くなる傾向が見られた。特に、対向電極間距離が3mm以上では押し込み硬度が略一定となった。これは、ストリーマ放電は、グロー放電よりもストリーマ内部のイオン密度が高いため、イオンの反応がより活性化して水素の引き抜きが起こり、薄膜中の水素濃度が低くなったことに因ると考えられる。
(供試体5の作製)
図4に示す成膜装置1を用い、対向電極2,12間の距離dを1mmとし、基材4としてSUS304(表面抵抗7×10−3オーム/sq、厚さ0.1mm)を電極12の対向面上に配置し、100kPaの圧力下で、反応ガスとしてメタン(CH)200mL/minと、放電ガスとしてヘリウム(He)4L/minおよびアルゴン(Ar)1L/minとを含む混合ガスを、ガス供給路から供給するとともに、周波数20kHz、パルス幅5μsおよび電圧7kVの電源条件でパルス状電圧を印加して、放電を発生させて基材4の表面に膜厚280nmの薄膜を形成した。成膜時間は120sであった。供試体5の放電形態はグロー放電であった。
(供試体6〜8の作製)
対向電極2,12間の距離dを3mm(供試体6),4mm(供試体7),5mm(供試体8)に変更した以外は、供試体5と同様にして基材上に薄膜を形成した。供試体6〜8の放電形態はストリーマ放電であった。
供試体5は比較例であり、供試体6〜8は本発明品である。
(実験例7)
供試体5〜8について実験例3と同様にラマン分析を行った。図15は、供試体5〜8のラマンスペクトルである。図16は、対向電極間距離とN/(N+S)との関係を示す。図15に示すとおり、電極間距離が1mmでは、G−bandが確認できなかったが、電極間距離を3mm以上とすることG−bandが確認できた。図16に示すとおり、電極間距離を3mm以上とすることで、N/(N+S)が急激に小さくなった。このように、ストリーマ放電を発生させることで、金属製の基材を用いても良好に成膜できることが確認できた。
(供試体9の作製)
図4に示す成膜装置1を用い、対向電極2,12間の距離dを5mmとし、基材4として厚さ1.8mmのSiO上に厚さ1μmのSnOをコーティングした基材(表面抵抗10オーム/sq)を電極12の対向面上にSnOコーティング面を上に向けて配置し、100kPaの圧力下で、反応ガスとしてメタン(CH)200mL/minと、放電ガスとしてヘリウム(He)4L/minおよびアルゴン(Ar)1L/minとを含む混合ガスを、ガス供給路から供給するとともに、周波数30kHz、パルス幅5μsおよび電圧11kVの電源条件でパルス状電圧を印加して、放電を発生させて基材4の表面に膜厚60nmの薄膜を形成した。成膜時間は25sであった。
(供試体10)
成膜時間を50sに変更し膜厚を120nmとした以外は、供試体9の作製と同様にして作製した。
(供試体11)
成膜時間を100sに変更し膜厚を240nmとした以外は、供試体9の作製と同様にして作製した。
(供試体12)
基材を厚さSiO基板(表面抵抗1012オーム/sq、厚さ1.8mm)に変更した以外は、供試体9の作製と同様にして電圧を印加したが、ストリーマ放電は発生せず薄膜は形成されなかった。
供試体9〜11は本発明品であり、供試体12は比較例である。
(実験例8)
供試体9〜12について実験例3と同様にラマン分析を行った。図17は、供試体9〜12のラマンスペクトルである。図18は、成膜時間とN/(N+S)との関係を示す。図17に示すとおり、供試体12は絶縁性のSiO基板を用いたため成膜できなかったが、供試体9〜11は絶縁性のSiO基板上に導電性のSnOをコーティングすることでG−bandを有する薄膜を形成することができた。このことから、表面抵抗を所定の範囲に調整することで、基材の材質に関わらず成膜できることが確認できた。図18に示すとおり、供試体9〜11は、N/(N+S)が0.7〜0.8程度であった。図11に示すSi基板を用いた供試体1〜4のN/(N+S)と比較すると(0.5〜0.6程度)、供試体9〜11の方が少し高かった。
(供試体13の作製)
図4に示す成膜装置1を用い、対向電極2,12間の距離dを2mmとし、基材4としてシリコン基材(表面抵抗263オーム/sq、厚さ0.38mm)を電極12の対向面上に配置し、100kPaの圧力下で、反応ガスとしてTrMS(トリメチルシラン)0.5mL/minおよび酸素(O)0.5L/minと、放電ガスとして窒素(N)20L/minとを含む混合ガスを、ガス供給路から供給するとともに、周波数30kHz、パルス幅5μsおよび電圧18kVの電源条件でパルス状電圧を印加して、放電を発生させて基材4の表面にSiOx薄膜を形成した。放電形態はストリーマ放電であった。
供試体13は本発明品である。本発明に係る薄膜形成方法は、反応ガスの種類に関わらず、良好に成膜できることが確認できた。
(供試体14の作製)
図4に示す成膜装置1を用い、対向電極2,12間の距離dを3mmとし、基材4としてシリコン基材(表面抵抗263オーム/sq、厚さ0.38mm)を電極12の対向面上に配置し、100kPaの圧力下で、反応ガスとしてメタン(CH)400mL/minと、放電ガスとしてヘリウム(He)5L/minを、ガス供給路から供給するとともに、周波数30kHz、パルス幅5μsおよび電圧7kVの電源条件でパルス状電圧を印加して、放電を発生させて基材4の表面に膜厚240nmの薄膜を形成した。成膜時間は100sであった。
(供試体15の作製)
放電ガスをヘリウム(He)4L/minおよびアルゴン(Ar)1L/minとを含む混合ガスに変更した以外は、供試体14の作製と同様にして作製した。
(供試体16の作製)
放電ガスをヘリウム(He)3L/minおよびアルゴン(Ar)2L/minとを含む混合ガスに変更した以外は、供試体14の作製と同様にして作製した。
(供試体17の作製)
放電ガスをヘリウム(He)2L/minおよびアルゴン(Ar)3L/minとを含む混合ガスに変更した以外は、供試体14の作製と同様にして作製した。
(供試体18の作製)
放電ガスをヘリウム(He)1L/minおよびアルゴン(Ar)4L/minとを含む混合ガスに変更した以外は、供試体14の作製と同様にして作製した。
(供試体19の作製)
放電ガスをアルゴン(Ar)5L/minに変更した以外は、供試体14の作製と同様にして作製した。
(実験例10)
供試体14〜19について形成された薄膜の押し込み硬度を測定するとともに表面状態を観察した。その結果を表1に示す。表1の結果から、放電ガスの組成は、標準状態の体積比率としてヘリウムを40〜100%の範囲で含み、アルゴンを60〜0%の範囲で含むことが好ましく、ヘリウムを60〜100%の範囲で含み、アルゴンを40〜0%の範囲で含むことがより好ましいことが確認された。
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
(付記1)
基材の表面に設けられた薄膜において、
該薄膜は、薄膜の内表面から薄膜の外表面に向かうにつれて粒界密度が連続的または断続的に小さくなる傾斜構造を有し、
前記薄膜の前記基材の表面に接する最内部領域は、結晶粒の粒径が10〜30nmである粒界構造を有することを特徴とする薄膜。
(付記2)
電圧を印加する電源に接続された第1電極および接地された第2電極からなる一対の対向電極と、該一対の対向電極間に反応ガスおよび放電ガスを含む混合ガスを供給するガス供給路と、を備え、
前記第1電極の対向面は固体誘電体によって覆われている成膜装置を用いた薄膜形成方法において、
前記第2電極の対向面上に、表面抵抗が10−8〜10オーム/sqの範囲の基材を設置する工程と、
大気圧または大気圧近傍の圧力下で、前記一対の対向電極間に前記ガス供給路から前記混合ガスを供給するとともに前記電源によって電圧を印加してストリーマ放電を発生させてプラズマCVDで前記基材の表面に薄膜を形成する工程と、を有することを特徴とする薄膜形成方法。
(付記3)
前記第2電極の対向面は固体誘電体によって覆われていることを特徴とする付記2に記載の薄膜形成方法。
(付記4)
前記電源が印加する電圧は、高周波もしくは休止期間を有するパルス状の電圧であることを特徴とする付記2又は3に記載の薄膜形成方法。
(付記5)
前記高周波またはパルス状の電圧は、交流の波形を有しており、かつその正ピークと負ピークの間の電圧は、前記対向電極間の距離と放電ガス種と圧力によって決定される放電開始電圧の2〜10倍で範囲であることを特徴とする付記4に記載の薄膜形成方法。
(付記6)
前記交流の高周波またはパルス状電圧の周波数は1〜100kHzの範囲であり、かつ換算電界が30〜1000Tdの範囲であることを特徴とする付記4または5に記載の薄膜形成方法。
(付記7)
前記対向電極間のもっとも近接している対向面の間の距離は3〜20mmであることを特徴とする付記2〜6のいずれか一つに記載の薄膜形成方法。
(付記8)
前記対向電極は、平板形状に対向させて配置するか、または少なくとも一方の電極が円柱、角柱、円筒または球面状の形状であることを特徴とする付記2〜7のいずれか一つに記載の薄膜形成方法。
(付記9)
前記反応ガスは、炭素系薄膜を形成する場合は、炭素、水素および/または酸素を含有する化合物、金属酸化物薄膜を形成する場合は、有機金属化合物および酸素であることを特徴とする付記2〜8のいずれか一つに記載の薄膜形成方法。
(付記10)
前記炭素系薄膜を形成する場合、メタン、エタンおよびプロパンのいずれか一種もしくはこれらの混合物を反応ガスとすることを特徴とする付記9に記載の薄膜形成方法。
(付記11)
放電ガスは、ヘリウム、アルゴン、窒素の少なくとも1種もしくはこれらの混合物を使用することを特徴とする付記2〜10のいずれか一つに記載の薄膜形成方法。
(付記12)
前記放電ガスは、ヘリウムからなるか、又はヘリウムとアルゴンとからなり、前記放電ガスの組成は、標準状態の体積比率としてヘリウムを40〜100%の範囲で含み、アルゴンを60〜0%の範囲で含むことを特徴とする付記11に記載の薄膜形成方法。
(付記13)
基材が、表面抵抗が10オーム/sqを超える高分子材料からなるとき、前記基材の表面抵抗は、該基材の表面に導電性化合物を付与するか、または前記基材中に導電性化合物を混合して調整することを特徴とする付記2〜12に記載の薄膜形成方法。
1 成膜装置
2 電極(第1電極)
3 固体誘電体
4 基材
5 ガス供給路
6 混合ガス
7 プラズマ化混合ガス
8 排気路
10 薄膜
11A ストリーマ放電
11B グロー放電
12 電極(第2電極)

Claims (4)

  1. 基材の表面に設けられた薄膜において、
    該薄膜は、該薄膜の内表面から該薄膜の外表面に向かうにつれて粒界密度が連続的または断続的に小さくなる傾斜構造を有し、
    前記薄膜の前記基材の表面に接する最内部領域は、結晶粒の粒径が10〜30nmである粒界構造を有することを特徴とする薄膜。
  2. 電圧を印加する電源に接続された第1電極および接地された第2電極からなる一対の対向電極と、該一対の対向電極間に反応ガスおよび放電ガスを含む混合ガスを供給するガス供給路と、を備え、
    前記第1電極の対向面は固体誘電体によって覆われている成膜装置を用いた薄膜形成方法において、
    前記第2電極の対向面上に、表面抵抗が10−8〜10オーム/sqの範囲の基材を設置する工程と、
    大気圧または大気圧近傍の圧力下で、前記一対の対向電極間に前記ガス供給路から前記混合ガスを供給するとともに前記電源によって電圧を印加してストリーマ放電を発生させてプラズマCVDで前記基材の表面に薄膜を形成する工程と、を有し、
    前記電源が印加する電圧は、高周波もしくは休止期間を有するパルス状の電圧であり、
    前記高周波または前記パルス状電圧の周波数は1〜100kHzの範囲であり、かつ換算電界が30〜1000Tdの範囲であり、
    前記対向電極間のもっとも近接している対向面の間の距離は3〜20mmであることを特徴とする薄膜形成方法。
  3. 前記放電ガスは、ヘリウム、アルゴン、窒素の少なくとも1種もしくはこれらの混合物であることを特徴とする請求項2に記載の薄膜形成方法。
  4. 前記放電ガスは、ヘリウムからなるか、又はヘリウムとアルゴンとからなり、
    前記放電ガスの組成は、標準状態の体積比率としてヘリウムを40〜100%の範囲で含み、アルゴンを60〜0%の範囲で含むことを特徴とする請求項2に記載の薄膜形成方法。
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