以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、氷上の水分量測定装置(以下、単に「測定装置」ということがある。)1の一例を示す斜視図である。図2は、図1の正面図である。本実施形態の測定装置1は、氷面S上の水分量を測定するためのものである。測定対象の氷面Sは、特に限定されるわけではなく、例えば、タイヤ等の氷上性能試験に使用される氷路面や、競技等に使用されるスケートリンクやホッケーリンク等に適用されうる。本実施形態の測定装置1は、吸水体2と、治具3とを含んで構成されている。
図3(a)は、吸水体2の一例を示す斜視図である。図3(b)は、図3(a)の吸水体2が吸水した状態を示す斜視図である。図3(a)に示されるように、吸水体2は、氷面S(図2に示す)上の水分を吸収するためのものである。吸水体2は、吸水性材料5によって構成されている。吸水性材料5としては、水分を吸水可能なものであれば特に限定されるわけではなく、例えば、セルロース繊維等からなる濾紙や、高吸収性高分子ポリマーを含むシート材等を採用することができる。本実施形態の吸水性材料5は、濾紙によって構成されている。また、吸水体2の吸水速度は、濾紙のメッシュを変更することで適宜設定することができる。
本実施形態の吸水体2は、長尺体に形成されている。さらに、吸水体2は、その長手方向において、吸水体2の氷面Sに接触させる一端2sから他端2tにかけて、一定の幅W1を有している。本実施形態の吸水体2は、正面視において矩形状に形成されている。吸水体2の幅W1、長さL1及び厚さT1については適宜設定することができる。吸水体2の幅W1は、例えば、1〜10mm程度である。吸水体2の長さL1は、例えば、30〜150mm程度である。吸水体2の厚さT1は、例えば、0.1〜1.5mm程度である。
本実施形態の吸水体2は、吸水により変色するものである。吸水性材料5には、吸水によって変色可能な染料(図示省略)が添加されている。これにより、図3(b)に示されるように、吸水体2は、変色した部分(以下、単に「変色部分」ということがある。)8の大きさによって、氷面S(図1に示す)上の水分量を測定することができる。染料としては、吸水によって変色可能なものであれば特に限定されるわけでなく、例えば、青色1号、緑色3号、又は、赤色40号等を採用することができる。本実施形態の染料は、青色1号が採用されている。
また、染料(図示省略)は、吸水性材料5の一部に添加されていればよく、また、吸水性材料5の全体に添加されてもよい。本実施形態の染料は、図3(a)に示されるように、吸水体2の一端2s(即ち、吸水体2の氷面に接触させる部分)から他端2t側に離間する部分から、吸水性材料5の他端2tまでの範囲6に添加されている。これにより、吸水体2は、染料が氷面S側に溶け出るのを防ぐことができる。なお、染料が氷面S側に溶け出ると、溶け出た染料の量によって、変色部分8の大きさが変化してしまい、データの再現性を確保できなくなるおそれがある。
吸水体2の一端2sから染料(図示省略)が添加される範囲6までの距離L3については適宜設定することができる。距離L3が小さいと、染料の溶け出しを防げないおそれがある。逆に、距離L3が大きいと、氷面S(図2に示す)上の水分量が少ない場合に、十分変色できないおそれがある。このため、距離L3は、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは1.0mm以上であり、また、好ましくは3mm以下である。
本実施形態の吸水体2には、目盛7が設けられるのが望ましい。このような目盛7により、図3(b)に示されるように、変色部分8の大きさを、正確に測定することができる。なお、目盛7の間隔W2については、適宜設定することができる。目盛7の間隔W2は、例えば、0.5〜3.0mmに設定されている。
図1及び図2に示されるように、治具3は、吸水体2を氷面Sに接触させるためのものである。治具3は、基部11と、吸水体2を保持する吸水体保持手段12とを含んで構成されている。
基部11は、氷面Sの上に配置される載置部16と、載置部16から上方にのびる支柱17とを含んで構成されている。
載置部16は、板状に形成されている。本実施形態の載置部16は、その下面16dが平滑に形成されている。これにより、治具3は、平らな氷面Sの上に安定して配置されうる。本実施形態の載置部16は、平面視において、矩形状に形成されている。
支柱17は、載置部16から上方にのびている。本実施形態の支柱17は、載置部16の上面に対して、垂直にのびている。また、支柱17は、断面矩形状に形成されている。
吸水体保持手段12は、基部11の支柱17から水平にのびるアーム24として構成されている。アーム24は、断面略矩形状に形成されている。アーム24は、幅方向の一方の側面に、吸水体2の一部分が固定するための貼付面18が設けられている。貼付面18には、吸水体2の他端2t側が固定されている。
また、本実施形態の貼付面18には、複数の吸水体2が貼り付けられる。これにより、治具3は、複数の吸水体2を保持することができる。本実施形態では、複数の吸水体2が、貼付面18(アーム24)の長手方向に一定の距離を隔てて、貼付面18に固定されている。吸水体2の固定には、例えば、貼付面18に取り外し可能な接着剤や粘着テープ等が用いられるのが望ましい。なお、貼付面18には、一つの吸水体2のみが貼り付けられていても良い。
次に、本実施形態の氷面上の水分量測定方法(以下、単に「測定方法」ということがある。)について説明する。本実施形態の測定方法では、測定装置1が用いられている。図4は、測定方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。
本実施形態の測定方法は、先ず、吸水体2を治具3に固定する(工程S1)。図1及び図2に示されるように、本実施形態の工程S1では、吸水体保持手段12の貼付面18に、複数の吸水体2が貼り付けられる。貼付面18には、各吸水体2の他端2t側が固定される。本実施形態では、吸水体2の長手方向が氷面Sと略垂直になるように、治具3(吸水体保持手段12)に保持されている。ここで、略垂直とは、氷面Sと直角な法線Nに対して、吸水体2の長手方向の角度が20度以下の範囲を含んでいる。
本実施形態では、氷面Sに対する垂直方向(上下方向)において、吸水体2の一端2sが載置部16の下面16dと同一位置、又は、載置部16の下面16dよりも下方に配置されている。これにより、治具3は、載置部16が氷面Sに配置される吸水工程S2において、吸水体2の一端2sを氷面Sに接触させることができる。
次に、本実施形態の測定方法は、吸水体2を氷面Sに予め定められた時間で接触させて保持する(吸水工程S2)。図5は、吸水工程S2の処理手順の一例を示すフローチャートである。
本実施形態の吸水工程S2では、先ず、吸水体2を氷面Sに接触させる(工程S21)。工程S21では、図2に示されるように、治具3の載置部16が氷面Sに配置される。これにより、工程S21では、吸水体2の一端2sを氷面Sに接触させることができる。
本実施形態では、複数の吸水体2を、氷面Sに同時に接触させている。各吸水体2は、貼付面18の長手方向に(氷面Sと平行に)一定の距離を隔てて保持されているため、氷面Sの異なる位置に、吸水体2をそれぞれ接触させることができる。これにより、各吸水体2は、氷面Sの複数箇所において、氷面Sの水分を吸収することができる。
次に、吸水工程S2では、吸水体2が氷面Sに接触してから予め定められた時間が経過したか否かが判断される(工程S22)。本実施形態において、予め定められた時間が経過したか否かの判断は、使用者によって行われる。また、吸水体2を氷面Sに接触させる時間については、吸水体2の吸水性などに基づいて、適宜設定される。
工程S22において、予め定められた時間が経過したと判断された場合(工程S22において、「Y」)、治具3を氷面Sから持ち上げて、吸水体2を氷面Sから離す(工程S23)。他方、工程S22において、予め定められた時間が経過していないと判断された場合(工程S22において、「N」)、吸水体2の氷面Sへの接触が継続される(即ち、工程S22が再度実施される)。これにより、吸水工程S2では、吸水体2を氷面Sに予め定められた時間で接触させて保持することができる。
次に、本実施形態の測定方法は、図4に示されるように、吸水体2の吸水量を調べる(工程S3)。工程S3では、吸水体保持手段12の貼付面18から各吸水体2が取り外される。そして、工程S3では、各吸水体2の変色部分8(図3(b)に示す)の大きさに基づいて、吸水量が調べられる。本実施形態では、図3(b)に示されるように、吸水体2に設けられた目盛7に基づいて、変色部分8の大きさが測定される。これにより、工程S3では、氷面S上の水分量を正確に測定することができる。
本実施形態の工程S3では、複数の吸水体2によって、氷面S上の異なる位置に接触した各吸水体2の水分量が、それぞれ測定される。そして、本実施形態では、各吸水体2の水分量の平均値が計算される。これにより、工程S3では、氷面S上でバラツキやすい水分量を均すことができるため、氷面Sの水分量をより正確に測定することができる。
このように、本実施形態の測定方法(測定装置1)は、氷面S上の水分量を簡単に測定することができる。しかも、本実施形態の測定方法は、例えば、氷上で行われる試験や競技などに使用される氷面Sについて、氷面S上の水分量を事前に測定できるため、例えば、氷面Sのコンディションを揃えたり、さらには、氷面S上の水分量を考慮して実験結果を評価したりするのに役立つ。
また、本実施形態では、複数の吸水体2を、同時に氷面Sに接触させているため、氷面Sの複数箇所の水分量を平均することで、氷面Sの水分量のバラツキを均すことができる。従って、本実施形態の測定方法(測定装置1)は、氷面Sの水分量をより正確に測定することができる。
図3(a)に示したように、本実施形態の吸水体2は、吸水体2の長手方向に一定の幅W1を有するものが例示されたが、このような態様に限定されない。図6は、本発明の他の実施形態の吸水体2を示す斜視図である。この実施形態の吸水体2の幅W1は、一端(即ち、吸水体2の氷面S(図2に示す)に接触させる部分)2sに向かって漸減している。本実施形態の吸水体2の一端2sが、鋭角状に突出している。このような吸水体2は、一端2s側の吸水性材料5の体積を小さくできるため、氷面S上の水分量が少なくても、吸水体2の他端2t側に向かって早期に吸水することができる。これにより、吸水体2は、吸水体2の長手方向に、変色部分8(図3(b))を大きくできるため、吸水量を容易に調べることができる。
吸水体2の長手方向において、吸水体2の幅W1が漸減する部分(以下、単に「漸減部」ということがある。)54の長さL4については、適宜設定することができる。なお、漸減部54の長さL4が小さいと、変色部分8(図3(b)に示す)を、吸水体2の長手方向に十分に大きくできない場合がある。逆に、漸減部54の長さL4が大きくても、氷面S上の水分量が多い場合に、吸水体2の他端2tまで変色してしまい、吸水量を正確に調べられないおそれがある。このような観点より、漸減部54の長さL4は、吸水体2の長さL1の1/10以上が望ましく、また、1/2以下が望ましい。
本実施形態の測定方法では、吸水体2の変色部分8(図3(b)に示す)の大きさに基づいて、吸水量が調べられたが、このような態様に限定されない。例えば、工程S3では、吸水体2の質量の変化に基づいて、吸水量が調べられてもよい。この場合、工程S3では、吸水後の吸水体2の質量から、吸水前の吸水体2の質量が減じられることで、吸水量が調べられる。これにより、この実施形態の測定方法は、吸水体2が変色部分8(図3(b)に示す)の大きさに基づいて吸水量が調べられる前実施形態に比べて、吸水量をより正確に測定することができる。しかも、吸水体2に染料を添加する必要がないため、吸水体2のコストを低減することができる。
図7は、本発明の他の実施形態の治具3を示す斜視図である。なお、この実施形態において、前実施形態と同一の構成については、同一の符号を付し、説明を省略することがある。
この実施形態の治具3には、時計部10が設けられている。これにより、図5に示した吸水工程S2において、吸水体2を氷面Sに接触させる時間を、時計部10を用いて容易に測定することができる。時計部10には、載置部16の下面16dが氷面Sに配置されると同時に、時間の測定が開始可能なセンサー(図示省略)等が設けられるのが望ましい。
図8は、本発明の他の実施形態の治具3を示す斜視図である。この実施形態の治具3には、吸水体保持手段12を移動させる移動手段13が設けられている。なお、この実施形態において、これまでの実施形態と同一の構成については、同一の符号を付し、説明を省略することがある。
この実施形態の吸水体保持手段12は、アーム24と、アーム24の長手方向の一端から上方にのびる立上がり部25とを含む主部21からなり、L字状に形成されている。さらに、主部21には、アーム24と立上がり部25との間を連結する補強部26が設けられている。
この実施形態のアーム24は、基部11の支柱17と離間して配置されている。立上がり部25は、アーム24の一端から上方にのびている。立上がり部25は、正面視矩形の板状に形成されている。立上がり部25は、アーム24側を向く第1側面25aの下端側に、アーム24の一端が固定されている。
補強部26は、アーム24の上面と、立上がり部25の第1側面25aとに固定されており、略三角形の板状に形成されている。このような補強部26は、アーム24と立上がり部25とを強固に連結することができるため、主部21の耐久性を高めることができる。
本実施形態の移動手段13は、ガイドレール43、ガイドレール43に移動可能に嵌合する移動部44、及び、ガイドレール43に沿って移動部44を移動させる駆動手段45を含んでいる。
ガイドレール43は、支柱17のアーム24側を向く第1側面17aに固定されており、支柱17の長手方向にのびている。移動部44は、吸水体保持手段12の立上がり部25に固定されている。本実施形態では、立上がり部25の支柱17側を向く第2側面25bに、一対の移動部44、44が固定されている。一対の移動部44、44は、立上がり部25の長手方向に離間して配置されている。
駆動手段45は、シリンダ47、ロッド48、及び、電動機(図示省略)を含んで構成されている。シリンダ47の端部は、支柱17の第1側面17aの上端側において、ブラケット50を介して固定されている。ロッド48の端部は、吸水体保持手段12の補強部26の上端側に固定されている。
移動手段13は、駆動手段45のロッド48を下方に伸長させることにより、ガイドレール43に案内される移動部44を介して、吸水体保持手段12を、下方側に移動させる(即ち、吸水体2を氷面S側に移動させる)ことができる。この吸水体保持手段12の下方への移動により、吸水体2を氷面Sに接触させることができる。また、移動手段13は、駆動手段45のロッド48の収縮により、ガイドレール43に沿って案内される移動部44を介して、吸水体保持手段12を、上方に移動させる(即ち、吸水体2を氷面Sから離間させる)ことができる。
図9は、この実施形態の測定装置1を用いた測定方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。なお、この実施形態において、これまでの実施形態と同一の構成については、同一の符号を付し、説明を省略することがある。
この実施形態の測定方法は、吸水体2を治具3に固定する工程S1に先立ち、治具3を氷面S上に設置する(工程S4)。工程S4では、図8に示されるように、氷面Sの上に、基部11の載置部16が配置される。これにより、治具3を氷面Sの上に設置することができる。なお、工程S4では、駆動手段45のロッド48を収縮させて、吸水体保持手段12を上方に移動させている。
工程S4では、治具3を氷面Sの上に安定して設置するために、載置部16の四隅に設けられた各孔部19に、杭(図示省略)が打ち込まれるのが望ましい。この実施形態の工程S4は、工程S1の前に実施されているが、工程S1の後に実施されてもよい。
図5に示した吸水工程S2において、吸水体2を氷面Sに接触させる工程S21では、図8に示されるように、駆動手段45のロッド48を下方に伸長させる。これにより、工程S21では、吸水体2を氷面Sに接触させることができる。この氷面Sへの接触により、吸水体2は、氷面Sの水分を吸収することができる。また、吸水体2を氷面Sから離す工程S23では、駆動手段45のロッド48を収縮させている。
このように、この実施形態の測定方法では、治具3(載置部16)を氷面Sに設置した状態で、吸水体2を氷面Sに接触及び離間させることができる。これにより、この実施形態の測定方法は、氷面S上の水分を、吸水体2に安定して吸水させることができる。
図10は、本発明の他の実施形態の治具3の一例を示す斜視図である。図11は、図10の正面図である。この実施形態の治具3には、駆動手段45等を制御するための制御手段14がさらに設けられている。なお、この実施形態において、これまでの実施形態と同一の構成については、同一の符号を付し、説明を省略することがある。
図1に示されるように、制御手段14は、例えば、作業用メモリ、各種の演算処理や情報処理等を実行するCPU(Central Processing Unit)、磁気ディスクなどの記憶装置、処理結果等を表示するための表示部51、及び、作業者が操作するための操作部52を有している。また、制御手段14は、時間を計測可能なタイマー(図示省略)を有している。
この実施形態の治具3は、アーム24の下面に、変位計27が設けられている。この実施形態の変位計27は、レーザー変位計として構成されている。このような変位計27は、変位計27から氷面Sまでの距離を、任意のタイミングで測定することができる。この測定データは、制御手段14に転送される。また、変位計27は、制御手段14によって制御される。
このような実施形態の制御手段14は、変位計27から氷面Sまでの距離に基づいて、駆動手段45のロッド48を伸縮させることができる。これにより、制御手段14は、吸水体2の一端2sを、氷面Sに精度よく接触させることができる。また、制御手段14は、タイマー(図示省略)を有しているため、吸水体2を氷面Sに接触させる時間を測定することができる。
次に、この実施形態の測定方法の処理手順について説明する。なお、この実施形態において、これまでの実施形態と同一の構成については、同一の符号を付し、説明を省略することがある。
この実施形態の測定方法では、吸水体2を氷面Sに接触させる工程S21(図5に示す)おいて、変位計27から氷面Sまでの距離M1(図10に示す)から、変位計27から吸水体2の一端2sまでの距離M2(図11に示す)を減じた距離(即ち、吸水体2の一端2sから氷面Sまでの距離)に基づいて、駆動手段45のロッド48が伸長されている。これにより、工程S21では、吸水体2の一端2sを、氷面Sに確実に接触させることができる。
この実施形態の予め定められた時間が経過したか否かを判断する工程S22(図5に示す)では、吸水体2が氷面Sに接触すると同時にセットされた制御手段14のタイマー(図示省略)に基づいて行われる。また、吸水体2を氷面Sから離す工程S23では、制御手段14が、駆動手段45のロッド48を収縮させている。
このように、この実施形態の測定方法では、制御手段14によって、吸水体2を氷面Sに接触及び離間させることができるため、予め定められた時間で吸水体2を氷面Sに確実に接触させて吸水させることができる。これにより、この実施形態の測定方法では、吸水体2の吸水量の測定誤差を小さくすることができる。
また、基部11には、載置部16と支柱17との間に、支柱17を載置部16に対して垂直軸回りに回動可能な回転盤20が設けられてもよい。回転盤20は、載置部16の上面に固定される下支持部20aと、支柱17の下面に固定される上支持部20bとを含んで構成されている。上支持部20bは、下支持部20aに垂直軸回りに回転可能に支持されている。このような回転盤20により、支柱17が垂直軸回りに回転されることで、吸水体保持手段12に保持されている吸水体2を、載置部16の外側の氷面Sの任意の位置に接触させることができる。なお、回転盤20は、使用者によって手動で回転されてもよいし、モータ等の駆動手段(図示省略)によって回転されてもよい。
図12は、本発明の他の実施形態の治具3を示す斜視図である。図13は、図12の部分斜視図である。図14は、図12の分解斜視図である。この実施形態の吸水体保持手段12は、吸水体2を取り外し可能に安定して固定するための取付部22を含んで構成されている。なお、この実施形態において、これまでの実施形態と同一の構成については、同一の符号を付し、説明を省略することがある。
取付部22は、切欠き部31と、狭持部32と、保持片33とを含んで構成されている。
図14に示されるように、切欠き部31は、アーム24の長手方向の他端側を平面視L字状に切り欠くことによって形成される。切欠き部31には、アーム24の長手方向に沿ってのびている。切欠き部31は、保持片33が配置される第1側面31aを具えている。第1側面31aには、保持片33を嵌め込み可能な嵌合部34が設けられている。本実施形態の嵌合部34は、T字状に形成されている。
狭持部32は、切欠き部31(即ち、アーム24の他端をL字状に切り欠いた領域)と略同じ大きさに形成されている。狭持部32には、切欠き部31の第1側面31aに突き合わせられる第1側面32aが設けられる。また、狭持部32の一端は、固定具35を介して、アーム24に固定されている。固定具35は、狭持部32を、垂直軸回りに回動可能に支持している。これにより、狭持部32は、切欠き部31の第1側面31aと狭持部32の第1側面32aとを突き合わせた閉状態(図13に示す)と、第1側面31a、32aを離間させた開状態(図14に示す)との間で、回動することができる。
狭持部32は、図13に示した閉状態において、切欠き部31の第1側面31a(図14に示す)と狭持部32の第1側面32a(図14に示す)との間で、保持片33(図3に示す)を挟み込むことができる。また、図14に示した狭持部32の開状態では、取付部22から吸水体2を容易に取り外すことができる。図13に示されるように、閉状態を安定して維持するために(吸水体2を安定して保持するために)、狭持部32の他端には、アーム24の他端と取り外し可能に固定するロック手段36が設けられるのが望ましい。
図14に示されるように、第1側面32aには、切欠き部31の第1側面32aとの間で、保持片33に固定されている吸水体2を挟み込むのを防ぐ溝部37が設けられている。このような溝部37により、切欠き部31と狭持部32との間で吸水体2が圧迫されるのを防ぐことができるため、吸水体2の吸水が阻害されることもない。
図14に示されるように、保持片33は、貼付部39と、取手部40とを含み、正面視T字状に形成されている。この保持片33は、切欠き部31の第1側面31aの嵌合部34に取り外し可能に嵌め込まれる。
貼付部39は、正面視において、横長矩形の板状に形成されている。貼付部39には、切欠き部31の第1側面31aに沿ってのびる貼付面39sを有している。この貼付面39sには、吸水体2の一部分が固定される。
本実施形態の貼付面39sには、吸水体2の他端2t側が固定されている。これにより、吸水体保持手段12は、図13に示されるように、保持片33が嵌合部34に嵌め込まれた状態(以下、単に「保持片33の嵌合状態」ということがある。)において、吸水体2の一端2s側を、アーム24の下面よりも下方に突出させることができる。さらに、吸水体2は、吸水体2の長手方向が、氷面S(図12に示す)と略垂直になるように保持される。また、図14に示されるように、本実施形態の貼付面39sには、複数の吸水体2が貼り付けられる。これにより、治具3は、複数の吸水体2を保持することができる。
取手部40は、貼付部39の長手方向の中央から上方にのびている。また、図12及び図14に示されるように、取手部40の上端側は、アーム24の上面から上方に突出し、かつ、アーム24の厚さ方向に向かって湾曲している。このような取手部40は、使用者が容易に把持することができるため、保持片33の取り付け及び取り外しを円滑に行うことができる。
この実施形態の取付部22によれば、保持片33を介して、複数の吸水体2の取り付け及び取り外しが容易となる。従って、この実施形態の治具3は、氷面S上の水分量を効率よく測定することができる。
この実施形態の測定方法では、吸水体2を治具3に固定する工程S1(図9に示す)において、先ず、図14に示されるように、保持片33の貼付部39に、複数の吸水体2の他端2t側が貼り付けられる。次に、工程S1では、狭持部32の開状態(図14に示す)において、切欠き部31の嵌合部34に、保持片33が嵌め込まれる。次に、工程S1では、狭持部32を回動させて、切欠き部31の第1側面31aと狭持部32の第1側面32aとが突き合わされる(図13に示した閉状態)。これにより、治具3は、図12に示されるように、複数の吸水体2を、それらの長手方向が氷面Sと略垂直になるように保持することができる。
図9に示した工程S3では、吸水体2の吸水量を調べるのに先立ち、狭持部32の開状態(図14に示す)において、切欠き部31の嵌合部34から、保持片33が取り外される。これにより、この実施形態の測定方法では、複数の吸水体2を治具3から容易かつ迅速に取り外すことができる。
図15は、本発明の他の実施形態の吸水体保持手段12の一例を示す斜視図である。図16は、開状態の狭持部32を示す斜視図である。この実施形態の吸水体保持手段12には、吸水体2の折れ曲がりを防ぐ支持手段56が設けられている。支持手段56は、一対の支持片57a、57bを含んで構成されている。
図16に示されるように、一方の支持片57aは、切欠き部31が設けられるアーム24の下面に固定されている。この実施形態の一方の支持片57aは、一対の垂下片61、61、第1連結片62、及び、第2連結片63を含んで構成されている。
一対の垂下片61、61は、アーム24の長手方向において、嵌合部34の両側にそれぞれ配置されている。各垂下片61、61は、アーム24の下面から下方にのびている。各垂下片61、61の下端は、保持片33の嵌合状態において、吸水体2の一端2sよりも上方に配置されている。
第1連結片62は、垂下片61、61の下端を連結している。また、第1連結片62は、アーム24の長手方向と平行にのびている。これにより、第1連結片62は、吸水体2の一端2sよりも上方に配置されている。第2連結片63は、第1連結片62の上方で一対の垂下片61、61を連結している。この実施形態の第2連結片63は、第1連結片62と平行にのびている。この実施形態の第1連結片62及び第2連結片63は、断面円形状に形成されている。
他方の支持片57bは、狭持部32の下面に固定されている。この実施形態の他方の支持片57bは、一方の支持片57aと同様に、一対の垂下片65、65、第1連結片66、及び、第2連結片67を含んで構成されている。
支持手段56は、図15に示した狭持部32の閉状態において、一対の支持片57a、57b間の間隔が、吸水体2の厚さT1(図3(a)に示す)と略同一(厚さT1の±0.2mm程度)に設定されている。これにより、支持手段56は、狭持部32の閉状態において、アーム24の下面よりも下方に突出する吸水体2を、一方の支持片57aの第1連結片62及び第2連結片63と、他方の支持片57bの第1連結片66及び第2連結片67との間で挟み込むことができる。
このように、この実施形態の支持手段56は、吸水体2の長手方向の広範囲に亘って、吸水体2を挟み込むことができるため、吸水体2の厚さ方向の折れ曲がりを防いで安定して保持することができる。第1連結片62及び第2連結片63は、断面円形状に形成されているため、吸水体2への圧迫を最小限に抑えることができる。これにより、吸水体2の吸水が阻害されるのを防ぐことができる。なお、第2連結片63、67は、吸水体2をより安定して保持するために、複数本設けられてもよい。
また、この実施形態の支持手段56は、図16に示した狭持部32の開状態において、一方の支持片57a及び他方の支持片57bを離間させることができるため、取付部22から吸水体2を容易に取り外すことができる。
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
図4及び図5に示した手順に従って、下記の異なるコンディション(気温、湿度、及び、氷面の温度)の氷面上の水分量が、図1に示した測定装置を用いて測定された(実施例1〜3)。共通仕様は次のとおりである。
実施例1:
気温:1℃、湿度:90%、氷面の温度:−1℃
実施例2:
気温:1℃、湿度:70%、氷面の温度:−1℃
実施例3:
気温:1℃、湿度:20%、氷面の温度:−1℃
吸水体:
吸水性材料:濾紙
染料:青色1号
幅W1:5mm
長さL1:50mm
厚さT1:0.3mm
染料の距離L3:1.0mm
目盛の間隔W2:2.0mm
治具:
吸水体の個数:4本
実施例1〜3において、吸水体を氷面に接触させてから10秒後に、吸水体を氷面から離し、吸水体の吸水量が調べられた。そして、実施例1〜3において、各吸水体の吸水量の平均が求められ、氷面上の水分量が測定された。図17(a)は、実施例1〜3の吸水体が変色した部分の大きさと、湿度との関係を示すグラフである。
一般に、気温及び氷面の温度が同一の条件下において、湿度が大きくなるほど、氷面の水分量は多くなる。図17(a)に示されるように、実施例1〜3は、湿度が大きくなるほど(即ち、氷面の水分量が多くなるほど)、吸水体が変色した部分が大きくなった。しかも、吸水体が変色した部分の大きさと、湿度とは、比例関係にある。従って、実施例では、吸水体の吸水量(即ち、吸水体が変色した部分の大きさ)を調べることにより、氷面上の水分量を簡単に測定することができた。
また、水膜の厚さが異なる平皿(シャーレ)を複数用意し、気温1℃及び湿度20%の条件下で、図1に示した測定装置を用いて水分量が測定された(実験例)。図17(b)は、実験例の吸水体が変色した部分の大きさと、水膜の厚さとの関係を示すグラフである。図17(b)に示されるように、実験例では、水膜の厚さが大きくなるほど、吸水体が変色した部分が大きくなった。従って、実施例と実験例とは、相関があることを確認できた。また、このようなグラフに基づいて、吸水体が変色した部分の大きさと、水膜の厚さとの比を予め求めておくことにより、図17(a)のグラフの吸水体が変色した部分の大きさから、氷面上の水分量を定量的に求めることができた。