JP6769109B2 - ガスバリア性フィルムの製造方法 - Google Patents
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Description
得られる酸化グラフェンは、厚みが0.75nm〜1.00nm、大きさ(長さ)が1μm〜数10μmであり、上記の粘土鉱物を超える高アスペクト比の層状化合物である。また、酸化グラフェンは、種々の還元剤を用いることでグラフェンに還元することが可能であり、グラフェンのナノシート同士の層間距離(層間間隔)は1nm以下、最小でグラフェンの単層の厚みに相当する0.334nmまで狭められる。
なお、本実施の形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
本実施形態に係るガスバリア用コーティング剤は、アニオン性層状化合物(A)と、カチオン性化合物(B)と、を含む。
酸化グラフェンの平均粒子径(Median径)が20nm以上であれば、酸化グラフェンのアスペクト比が大きくなり、十分にガスバリア性の向上効果が得られる。一方、酸化グラフェンの平均粒子径(Median径)が100μm以下であれば、ガスバリア層の表面から酸化グラフェンが突き出すことがなく、外観不良やガスバリア性低下を招くことがない。
アニオン性層状化合物(A)の質量比が70.0以上、すなわち、カチオン性化合物(B)の質量比が30.0以下であれば、アニオン性層状化合物(A)が緻密に積層するため、ガスバリア層はガスバリア性に優れる。一方、アニオン性層状化合物(A)の質量比が99.0以下、すなわち、カチオン性化合物(B)の質量比が1.0上であれば、基材フィルムに対するガスバリア層の密着性が得られ、応力により、ガスバリア層からアニオン性層状化合物(A)が自然剥離したり、ガスバリア層に亀裂が生じたりすることがない。
添加剤としては、例えば、酸化防止剤、耐候剤、熱安定剤、滑剤、結晶核剤、紫外線吸収剤、可塑剤、帯電防止剤、着色剤、フィラー、界面活性剤、シランカップリング剤等が挙げられる。
本実施形態に係るガスバリア性フィルムは、プラスチック材料からなる基材フィルムと、その基材フィルムの少なくとも一方の面に設けられたガスバリア層と、を備える。また、本実施形態に係るガスバリア性フィルムは、ガスバリア層が、アニオン性層状化合物(A)と、カチオン性化合物(B)と、を含む。
ガスバリア層において、カチオン性化合物は、アニオン性層状化合物(A)の層間に介在していてもよく、アニオン性層状化合物(A)の周囲を覆うように存在していてもよく、アニオン性層状化合物(A)と基材フィルムの間に介在していてもよい。
また、基材フィルムとしては、上記の材料からなる層(皮膜)を他の基材(金属、木材、紙、セラミックス等)に積層した積層基材を用いてもよい。
ガスバリア層の塗工量は、乾燥質量で0.02g/m2以上10.00g/m2以下であることが好ましく、0.10g/m2以上5.00g/m2以下であることがより好ましい。
ガスバリア層の塗工量が乾燥質量で0.02g/m2以上であると、基材フィルムの表面の凹凸の影響を受けて、ガスバリア層に欠陥が生じ難く、ガスバリア層のガスバリア性を向上することができる。ガスバリア層の塗工量が乾燥質量で10.00g/m2以下であると、製造コストの増加を抑制できる。
グラフェンの平均粒子径(Median径)が20nm以上であれば、グラフェンのアスペクト比が大きくなり、十分にガスバリア性の向上効果が得られる。一方、グラフェンの平均粒子径(Median径)が100μm以下であれば、ガスバリア層の表面からグラフェンが突き出すことがなく、外観不良やガスバリア性低下を招くことがない。
グラフェンの層間距離が0.334nm〜1.000nmであれば、ガスバリア層において、グラフェンが緻密に積層されるため、ガスバリア層において、ガスが透過し難くなり、ガスバリア性が向上する。
ここで、X線回折装置を用いたグラフェンの層間距離の測定方法を説明する。
X線回折装置を用いて、X線回折により、還元前の酸化グラフェンの構造解析を行うと、還元前の酸化グラフェンの(002)面の回折ピークを、例えば、2θ=12°付近(d=0.75nm)に観察することができる。酸化グラフェンの層間にアミン化合物が介在している状態では、酸化グラフェンの層間距離が広がり、例えば、2θ=6°付近(d=1.40nm)までピークがシフトすることもある。酸化グラフェンを還元すると、これらのピークが消失して、例えば、2θ=26°付近(d=0.334nm)に、ブロードなピークが生じる。このようにして、グラフェンの層間距離を測定することができる。
アニオン性層状化合物(A)の質量比が70.0以上、すなわち、カチオン性化合物(B)の質量比が30.0以下であれば、アニオン性層状化合物(A)が緻密に積層するため、ガスバリア層はガスバリア性に優れる。一方、アニオン性層状化合物(A)の質量比が99.0以下、すなわち、カチオン性化合物(B)の質量比が1.0以上であれば、基材フィルムに対するガスバリア層の密着性が得られ、応力により、ガスバリア層からアニオン性層状化合物(A)が自然剥離したり、ガスバリア層に亀裂が生じたりすることがない。
屈曲後の酸素透過度が上記の範囲内であれば、本実施形態のガスバリア性フィルムは、加工・成型後も良好なガスバリア性を発揮することができる。
本実施形態のガスバリア性フィルムの製造方法は、基材フィルムの少なくとも一方の面に、上述のガスバリア用コーティング剤を塗布し、塗膜を形成する工程(工程a)と、塗膜を乾燥して、アニオン性層状化合物(A)と、カチオン性化合物(B)と、を含むガスバリア層を形成する工程(工程b)と、を有する。
乾燥温度は、50℃〜200℃であることが好ましい。乾燥温度が50℃以上であれば、塗膜内の溶媒が抜けるため、アニオン性層状化合物(A)がより緻密になり、ガスバリア性が向上する。一方、乾燥温度が200℃以下であれば、基材フィルムやガスバリア層が熱により劣化することを防止できる。
アニオン性層状化合物(A)を還元する方法としては、例えば、水素ガスまたは他の還元剤を用いた化学的還元方法が用いられる。
酸化グラフェンとしては、Graphenea Graphene Oxide(Graphenea社製)を用いた。
酸化グラフェンの固形分が0.5質量%になるように、酸化グラフェンに、水とメタノールを質量比で70:30の割合で混合した混合溶液を加えた。
これらの混合物を、室温で60分間超音波処理した後、回転数500rpmにて12時間攪拌して、酸化グラフェン分散液を調製した。
酸化グラフェン分散液に、トリエチレンテトラミン(東京化成工業社製)の5質量%水溶液を、この水溶液の添加後の溶液(分散液)における酸化グラフェンとトリエチレンテトラミンの固形分質量比が80:20の割合になるように添加して、ガスバリア用コーティング剤を調製した。
基材フィルム(厚さ100μm、ポリエチレンテレフタレートフィルム、商品名:A4100、東洋紡社製)の一方の面に、スピンコーターにより、20回にわたりガスバリア用コーティング剤を積層塗工した。
その後、この積層体をオーブンにより、70℃で10分間乾燥させて、基材フィルムの一方の面に、厚さ200nmの皮膜が形成されたフィルムを得た。
得られたフィルムを、ヒドラジン一水和物(東京化成工業社製)を0.5mL染み込ませた濾紙とともにシャーレに入れて蓋をした。
次に、このシャーレをホットプレート上で90℃に加熱して、ヒドラジン一水和物の蒸気にフィルムを30分間暴露することで酸化グラフェンを還元し、基材フィルムと、その一方の面に形成されたガスバリア層とからなる実施例のガスバリア性フィルムを得た。
酸化グラフェン分散液に、トリエチレンテトラミン(東京化成工業社製)の5質量%水溶液を、この水溶液の添加後の溶液(分散液)における酸化グラフェンとトリエチレンテトラミンの固形分質量比が65:35の割合になるように添加したこと以外は実施例と同様にして、比較例1のガスバリア性フィルムを得た。
酸化グラフェン分散液に、トリエチレンテトラミン(東京化成工業社製)の5質量%水溶液を、この水溶液の添加後の溶液(分散液)における酸化グラフェンとトリエチレンテトラミンの固形分質量比が50:50の割合になるように添加したこと以外は実施例と同様にして、比較例2のガスバリア性フィルムを得た。
酸化グラフェン分散液に、トリエチレンテトラミン(東京化成工業社製)の5質量%水溶液を、この水溶液の添加後の溶液(分散液)における酸化グラフェンとトリエチレンテトラミンの固形分質量比が99.5:0.5の割合になるように添加したこと以外は実施例と同様にして、比較例3のガスバリア性フィルムを得た。
酸化グラフェン分散液に、トリエチレンテトラミンの水溶液を添加しないこと以外は実施例と同様にして、比較例4のガスバリア性フィルムを得た。
実施例および比較例1〜4のガスバリア性フィルムを、下記の方法に従って評価した。
実施例および比較例1〜4のガスバリア性フィルムについて、酸素透過度(cc/m2・day)を、下記の方法に従って測定した。
酸素透過度測定装置MOCON(商品名:OX−TRAN2/20 SLモジュール、モダンコントロール社製)を用いて、30℃、70%RHの雰囲気下におけるガスバリア性フィルムの酸素透過度を測定した。
なお、ここでは、ガスバリア性フィルムの酸素透過度を、酸素透過度測定装置に測定用のガスバリア性フィルムをセットしてから24時間後に測定した値とした。
結果を表1に示す。
酸素透過度測定装置にセットしてから24時間後に、実施例および比較例1〜4のガスバリア性フィルムについて、基材フィルムとガスバリア層の間における剥離の有無を目視により観察した。
結果を表1に示す。
一方、比較例1、2では、アミン化合物(トリエチレンテトラミン)の添加量が多いため、グラフェンによる迷路効果が低下してガスバリア性が低下することが分かった。
比較例3では、アミン化合物の添加量が少ないため、ガスバリア層の一部が基材フィルムから剥離しており、ガスバリア性が低下することが分かった。
アミン化合物を含まない比較例4では、酸化グラフェンのみからなるガスバリア層が基材フィルムから自然剥離していた。
このように、ガスバリア層におけるアミン化合物の添加量が少ないか、もしくは、アミン化合物を含まない場合、応力により、ガスバリア層に亀裂や剥離が生じると考えられる。
第一級のアミンであれば3350cm−1〜3150cm−1近傍に、第二級のアミンであれば2800cm−1〜2000cm−1近傍に、第三級のアミンであれば2700cm−1〜2250cm−1近傍に等にN−H伸縮振動に由来するピークが現われる。
また、塗工前の分散液をイオンクロマトグラフィー法で分析したり、ガスバリア層を削り取り、その削り取ったものを溶媒に溶かして、塗膜に含まれるイオンを溶出させた後、これをイオンクロマトグラフィー法で分析したりすることにより、アミン化合物のイオン濃度を定量することでも、ガスバリア層中のアミン化合物の存在を確認できる。
本明細書は、以下の技術思想を含んでいる。
(付記項1)
アニオン性層状化合物(A)と、カチオン性化合物(B)と、を含むことを特徴とするガスバリア用コーティング剤。
(付記項2)
前記アニオン性層状化合物(A)は、酸化グラフェンであることを特徴とする付記項1に記載のガスバリア用コーティング剤。
(付記項3)
前記カチオン性化合物(B)は、アミン化合物であることを特徴とする付記項1または2に記載のガスバリア用コーティング剤。
(付記項4)
前記アニオン性層状化合物(A)と前記カチオン性化合物(B)との質量比((A)/(B))が、70.0/30.0〜99.0/1.0であることを特徴とする付記項1〜3のいずれか1項に記載のガスバリア用コーティング剤。
(付記項5)
プラスチック材料からなる基材フィルムと、該基材フィルムの少なくとも一方の面に設けられたガスバリア層と、を備え、
前記ガスバリア層は、アニオン性層状化合物(A)と、カチオン性化合物(B)と、を含むことを特徴とするガスバリア性フィルム。
(付記項6)
前記アニオン性層状化合物(A)は、酸化グラフェンまたはグラフェンであることを特徴とする付記項5に記載のガスバリア性フィルム。
(付記項7)
前記カチオン性化合物(B)は、アミン化合物であることを特徴とする付記項5または6に記載のガスバリア性フィルム。
(付記項8)
前記アニオン性層状化合物(A)と前記カチオン性化合物(B)との質量比((A)/(B))が、70.0/30.0〜99.0/1.0であることを特徴とする付記項5〜7のいずれか1項に記載のガスバリア性フィルム。
(付記項9)
前記アニオン性層状化合物(A)は、前記グラフェンであり、前記グラフェンの層間距離が0.334nm〜1.000nmであることを特徴とする付記項6〜8のいずれか1項に記載のガスバリア性フィルム。
(付記項10)
基材フィルムの少なくとも一方の面に、付記項1〜4のいずれか1項に記載のガスバリア用コーティング剤を塗布し、塗膜を形成する工程と、
前記塗膜を乾燥して、アニオン性層状化合物(A)と、カチオン性化合物(B)と、を含むガスバリア層を形成する工程と、を有することを特徴とするガスバリア性フィルムの製造方法。
(付記項11)
前記塗膜を形成する工程と前記ガスバリア層を形成する工程の間に、前記アニオン性層
状化合物(A)を還元する工程を有することを特徴とする付記項10に記載のガスバリア
性フィルムの製造方法。
(付記項12)
前記塗膜を形成する工程の前に、水素化ホウ素ナトリウムを含む溶液に、前記ガスバリア用コーティング剤を加えて還流することにより、前記ガスバリア用コーティング剤に含まれる前記アニオン性層状化合物(A)を還元する工程を有することを特徴とする付記項10に記載のガスバリア性フィルムの製造方法。
Claims (3)
- 基材フィルムの少なくとも一方の面に、酸化グラフェンとアミン化合物とを含むガスバリア用コーティング剤を塗布して塗膜を形成する工程と、
前記塗膜を乾燥して、前記酸化グラフェンと前記アミン化合物とを含むガスバリア層を形成する工程と、
前記酸化グラフェンを還元する工程と、
を有する、
ガスバリア性フィルムの製造方法。 - 前記酸化グラフェンを還元する工程は、前記塗膜を形成する工程と前記ガスバリア層を形成する工程との間で行われる、
請求項1に記載のガスバリア性フィルムの製造方法。 - 前記酸化グラフェンを還元する工程は、前記塗膜を形成する工程の前に、水素化ホウ素ナトリウムを含む溶液に、前記ガスバリア用コーティング剤を加えて還流することにより行われる、
請求項1に記載のガスバリア性フィルムの製造方法。
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