以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
1.全体構成
図1に本実施形態の通信システム(制御システム)の全体構成例を示す。図1に示すように本実施形態の通信システム(制御システム)は、ウェアラブル機器(WT1〜WT3、LD、HMD)と近距離無線通信網BNTとコンピューター通信網INTを含む。またサーバーSVや制御対象物(EV、HS、RB、CA)を含むことができる。
コンピューター通信網INTは、例えばTCP/IPの通信規格に基づくネットワークであるインターネットである。例えばネットワーク上のコンピューターがユニークなIPアドレスにより個別に識別可能なネットワークである。例えばコンピューター通信網INTはサーバーSVが通信接続可能な広域ネットワーク(WAN)である。コンピューター通信網INTはケーブル網や電話通信網や無線LAN等の通信網を含むことができ、通信方法については有線/無線を問わない。
近距離無線通信網BNTは、ゲートウェイ機器GW1〜GWN(アクセスポイント)を有し、コンピューター通信網INTに接続可能な通信網である。ゲートウェイ機器GW1〜GWNは例えば不特定多数の機器(不特定多数のユーザーが有する機器)が接続可能な機器である。近距離無線通信網BNTとしては、例えばブルートゥース(Bluetoothは登録商標。以下、同様)の通信網を用いることができる。例えばゲートウェイ機器GW1〜GWNはブルートゥースのルーターなどにより実現できる。近距離無線通信網BNTは、WANのように地理的に離れた広い領域に形成される通信網であってもよいし、LANのように特定の構内に形成される通信網であってもよい。例えば近距離無線通信網BNTは、アミューズメント施設、ショッピングモールや、会社又は工場などの構内において形成される通信網であってもよい。
近距離無線通信網BNTとして、ZigBee(登録商標。以下、同様)やWi−SUN(登録商標。以下、同様)、IP500(登録商標。以下、同様)などによる通信網を用いることも可能である。ジグビー(ZigBee)はジグビーアライアンスが仕様を定義している省電力で動作する無線規格であり、IEEE 802.15.4上で動作する。ジグビーのノードとしてはコーディネーター、ルーター、エンドデバイスの3種類が定義されている。ジグビーの基本動作としては、エンドデバイスが通常は省電力でスリープしており、タイマー等からのトリガー信号でウェイクアップして、ルーター又はコーディネーターにデータを送り、再度、スリープに移行する。スリープに移行することでエンドデバイスの省電力化を図る。一方、ルーターとコーディネーターは常に受信状態で待機し、エンドデバイスからのデータを待ち受けている。ワイサン(Wi−SUN)は例えばガス、電気、水道のメータ等に端末を搭載し、無線通信を使って効率的にデータを収集する無線通信規格である。ワイサンではサブギガヘルツ帯域と呼ばれる900MHz前後の周波数帯域の電波で通信が行われる。このため2.4GHz帯域の近距離無線通信と比べて、障害物などがあっても電波が届きやすく、他の機器などからの干渉も少ないという特徴を有する。ワイサンの物理層の仕様はIEEE 802.15.4gで規格化されており、複数の端末がバケツリレー方式でデータを中継し、遠隔地間を結ぶマルチホップ通信にも対応している。IP500は、物理層にはIEEE 802.15.4を採用し、サブギガヘルツ帯域を使って通信を行い、メッシュネットワークが基本で既存ネットワークとの全相互接続が可能であり、IPv6、6LoWPANにも対応している。
図1ではウェアラブル機器として、ウォッチWT1〜WT3(腕時計)や、リスト型の生体センサー機器LDや、頭部装着型表示装置であるHMDが、近距離無線通信網BNT(ゲートウェイ機器GW1〜GWN)に通信接続されている。
ウォッチWT1〜WT3は、リスト型電子機器であり、例えばGPS内蔵ウォッチ、スマートウォッチ、ダイバーズウォッチ又はソーラーウォッチなどと呼ばれるものである。これらのウォッチWT1〜WT3は例えば指針(秒針、分針、時針)の運針機構を有する。また位置センサー(GPS等)、環境センサー(温度、湿度、気圧、地磁気又は天候等のセンサー)、体動センサー(加速度センサー又はジャイロセンサー等)、或いは生体情報を検出する生体センサーなどの各種センサーを有する。
生体センサー機器LDは、脈拍、活動量、血圧、酸素飽和度、体温又は生体電位等の生体情報の検出が可能なウェアラブル機器である。具体的には生体センサー機器LDは、リスト型電子機器(リスト型生体センサー)であり、リスト型の脈波計や活動量計などである。HMDは、ユーザーが頭部に装着するディスプレイ装置である。HMDは、ユーザーの目を完全に覆う非透過型であってもよいし、透過型(メガネタイプ等)であってもよい。HMDにも上述の位置センサー、環境センサー、体動センサー又は生体センサー等のセンサーを設けることができる。
なお図1では、ウォッチWT2はウォッチWT1や生体センサー機器LDを介して近距離無線通信網BNTのゲートウェイ機器GW1に通信接続されている。この通信接続は例えば後述するピコネットなどにより実現できる。また本実施形態のウェアラブル機器(広義には電子機器)は図1に例示する機器に限定されるものではない。例えば本実施形態のウェアラブル機器としては、手や頭部以外にも、ユーザーの種々の部位(胸部、腹部、足、首又は指等)に装着可能な種々の機器を想定できる。
また図1では制御対象物(制御対象機器)として、エレベーターEV、スマートハウスHS、ロボットRB、自動車CAが、コンピューター通信網INTに通信接続されている。エレベーターEVは会社、施設又は個人住居等に設けられる昇降機である。スマートハウスHSは、家電や設備機器を情報化配線等で通信接続して最適制御が行われる住宅である。例えばスマートハウスHSでは、HEMS(Home Energy Management System)と呼ばれる家庭用のエネルギー管理システムにより、家電、太陽光発電、蓄電池又は電気自動車等が一元的に管理される。ロボットRBは、例えば双腕型や単腕型のロボットであり、工場等で用いられる産業用のロボットであってもよいし、非産業用(医療・福祉・警備・コミュニケーション、エンターテイメント)のロボットであってもよい。自動車CAは、例えば従来の内燃機関型の車、ハイブリッドカー、電気自動車又は燃料電池車などである。自動車CAはバイク等の二輪車であってもよい。これらのエレベーターEV、スマートハウスHS、ロボットRB又は自動車CAは後述するように、ウェアラブル機器とゲートウェイ機器との疎結合の近距離無線通信を利用して、インターネット等のコンピューター通信網INTを介して遠隔制御される。
なお、遠隔制御の制御対象物としては、図1に示すものに限定されず、種々の機器、設備を想定できる。またコンピューター通信網INTには、ウェアラブル機器のユーザーが所持する携帯型の情報通信端末SP(スマートフォン、携帯電話機又はタブレットPC等)も通信接続されている。例えばユーザーに対する報知処理は、この情報通信端末SPの表示部や音出力部などを用いて実現してもよい。
図2に本実施形態のウェアラブル機器10、ゲートウェイ機器100、サーバー200の構成例を示す。ウェアラブル機器10は処理部20、通信部30を含む。また電力発現部40、記憶部50、センサー部54、入力部60、出力部62を含むことができる。ゲートウェイ機器100は処理部120、通信部130、140、記憶部150を含む。サーバー200は処理部220、通信部230、記憶部250を含む。なおウェアラブル機器10、ゲートウェイ機器100、サーバー200の構成は図2の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素を追加したり、接続関係を変更するなどの種々の変形実施が可能である。
処理部20、120、220(プロセッサー)は各種の情報の処理や制御を行うものである。処理部20、120、220の各部が行う本実施形態の各処理(各機能)はプロセッサー(ハードウェアを含むプロセッサー)により実現できる。例えば本実施形態の各処理は、プログラム等の情報に基づき動作するプロセッサーと、プログラム等の情報を記憶するメモリー(記憶部50、150、250)により実現できる。プロセッサーは、例えば各部の機能が個別のハードウェアで実現されてもよいし、或いは各部の機能が一体のハードウェアで実現されてもよい。プロセッサーは、例えばCPU(C entral Processing Unit)であってもよい。但し、プロセッサーはCPUに限定されるものではなく、GPU(Graphics Processing Unit)、或いはDSP(Digital Processing Unit)等、各種のプロセッサーを用いることが可能である。またプロセッサーはASICによるハードウェア回路であってもよい。メモリー(記憶部50、150、250)は、SRAM、DRAM等の半導体メモリーであってもよいし、レジスターであってもよい。或いはハードディスク装置(HDD)等の磁気記憶装置であってもよいし、光学ディスク装置等の光学式記憶装置であってもよい。例えば、メモリーはコンピューターにより読み取り可能な命令を格納しており、当該命令がプロセッサーにより実行されることで、処理部20、120、220の各部の処理(機能)が実現されることになる。ここでの命令は、プログラムを構成する命令セットでもよいし、プロセッサーのハードウェア回路に対して動作を指示する命令であってもよい。
通信部30、130は、アンテナANW、ANGを用いて図1の近距離無線通信網BNTの近距離無線通信を行う回路(IC)である。例えば前述したブルートゥース、ジグビー又はワイサンなどの種々の規格の近距離無線通信を行う回路である。通信部30、130は、通信用ASICや通信用プロセッサーなどのハードウェアや、通信用ファームウェアなどにより実現できる。具体的には通信部30、130は、例えば物理層回路と、リンク層回路等を実現するロジック回路を含む。物理層回路は受信回路と送信回路を有する。受信回路は、アンテナANW、ANGからのRFの受信信号を低ノイズで増幅する低ノイズアンプや、ミキサー、フィルターなどを含む。送信回路はアンテナANW、ANGに送信信号を出力するパワーアンプを含む。ロジック回路は復調回路、変調回路、受信バッファー、送信バッファー、処理回路、インターフェース回路などを含むことができる。
通信部140、230は、インターネット等のコンピューター通信網INTを用いた通信の処理を行う。通信部140、230は、通信用ASICや通信用プロセッサーなどのハードウェアや、通信用ファームウェアなどにより実現できる。例えば通信部140、230は物理層やデータリンク層の処理として、イーサネット(登録商標。以下、同様)の仕様にしたがった通信の処理を行う。またネットワーク層やトランスポート層の処理として、TCP/IPの仕様にしたがった通信の処理を行う。この場合にゲートウェイ機器100の処理部120は、例えば近距離無線通信網BNTのプロトコル(例えばブルートゥース)とコンピューター通信網INTのプロトコル(例えばイーサネット、TCP/IP)の間のプロトコル変換を行う。例えば近距離無線通信網BNTのプロトコルのパケットを、コンピューター通信網INTのプロトコルのパケットに再構成したり、コンピューター通信網INTのプロトコルのパケットを、近距離無線通信網BNTのプロトコルのパケットに再構成する処理などを行う。例えばウェアラブル機器のアドレス情報(例えばブルートゥースのMACアドレス)を、コンピューター通信網INT用のアドレス情報(例えばTCP/IPのIPv6)に変換する処理などを行う。
記憶部50、150、250(メモリー)は、各種の情報を記憶するものであり、処理部20、120、220や通信部30、130、140、230のワーク領域等として機能する。処理部20、120、220等の各種の処理を実現するためのプログラム、データ等の各種の情報は、記憶部50、150、250に記憶される。記憶部50、150、250は、半導体メモリー(DRAM、VRAM)や、HDD(ハードディスクドライブ)などにより実現できる。
ウェアラブル機器10が有する電力発現部40は、ウェアラブル機器10を動作させるための電力を発現する。処理部20は、電力発現部40からの電力により動作して情報(データ、信号)を処理する。通信部30は、電力発現部40からの電力により動作して外部機器であるゲートウェイ機器100との間で疎結合の近距離無線通信を行う。電力発現部40からの電力は記憶部50、センサー部54等にも供給される。電力発現部40の発電は、太陽発電(ソーラーセル)により実現してもよいし、振動発電、手巻き発電又は温度差発電などにより実現してもよい。
また電力発現部40によってウェアラブル機器10に供給される電力は、必ずしも発電による電力には限定されない。例えば一年以上電池交換不要の条件等であれば、ウェアラブル機器10に供給される電力は、通常のウォッチ(腕時計)に内蔵されるボタン電池や同様の電池からの電力であってもよい。本発明によれば、従来技術と比べて大幅に低消費電力を実現できるので、このような場合においても頻繁な電池交換が不要になるという利点がある。
センサー部54は、例えば生体センサー、位置センサー、モーションセンサー又は環境センサーなどを含むことができる。生体センサーは、例えば脈拍(脈波)、活動量、血圧、体温、酸素飽和度又は生体電位等の生体情報を検出するセンサーである。例えば生体センサーは、LED等の発光部とフォトダイオード等の受光部を有する光センサーなどにより実現できる。例えば発光部からの光が手首の肌に照射され、血流の情報を持った反射光が受光部に入射されることで、脈拍、酸素飽和度又は血圧等の生体情報を検出できる。また消費カロリーなどの活動量の演算も可能になる。位置センサーは、ウェアラブル機器10の位置等を検出するセンサーであり、GPSなどにより実現できる。モーションセンサーは、ウェアラブル機器10の動きやユーザーの動き(体の動きや歩行・走行などの行動状態)を検出するものであり、例えば加速度センサーやジャイロセンサーにより実現できる。環境センサーは、ウェアラブル機器10の周囲の環境状況を検出するセンサーであり、温度センサー、湿度センサー、気圧センサー、地磁気センサー等により実現できる。
入力部60は、各種の信号や情報を入力するためのものである。入力部60は、例えば操作ボタン等を有する操作部や、マイクなどの音声入力部や、或いはタッチパネル型ディスプレイなどにより実現できる。出力部62は各種の信号や情報を出力するものである。出力部60は、例えば液晶ディスプレイ(LCD)や有機ELディスプレイ等の表示部や、スピーカー等の音出力部や、LED等の発光部や、或いは振動モータ等の振動発生部などより実現できる。例えば本実施形態の報知処理は、これらの表示部、音出力部、発光部、或いは振動発生部などにより実現できる。
2.通信システム
本実施形態の通信システムでは疎結合の近距離無線通信を利用した通信を行っている。以下、本実施形態の通信手法について詳細に説明する。
図3A、図3Bは本実施形態の比較例となる通信手法の説明図である。図3Aの第1の比較例では、ウォッチWTや生体センサー機器LDなどのウェアラブル機器は、スマートフォンやタブレットPCなどの携帯型の情報通信端末SPを介して、インターネットなどのコンピューター通信網INTに接続される。例えばウェアラブル機器(WT、LD)と情報通信端末SPはブルートゥースなどの近距離無線通信で接続される。情報通信端末SPとコンピューター通信網INTは、基地局BSやルーターRTを介して接続される。例えば情報通信端末SPと基地局BSは携帯電話通信網で接続され、情報通信端末SPとルーターRTはWi−Fi(登録商標。以下、同様)などの無線通信網(ワイヤレスLAN)により接続される。なお以下では、コンピューター通信網INTを、適宜、インターネットと記載する。
図3Aの第1の比較例においても、ウェアラブル機器(WT、LD)の情報をインターネット(INT)にアップロードしたり、インターネットの情報をウェアラブル機器にダウンロードするなどのインターネット接続が可能である。しかしながら、インターネットへのウェアラブル機器の接続には、情報通信端末SPが必要であるが、一般的に情報通信端末SPはウェアラブル機器よりも大きく、ユーザーが常時所有していない場合があり、その場合、ウェアラブル機器単独では、インターネットと接続できない。また、一般的に情報通信端末SPはウェアラブル機器よりも消費電力が高く、充電切れとなる場合があり、その場合にも、インターネットと接続できなくなる。このためインターネットへのウェアラブル機器の常時接続を維持することが難しいという課題がある。
例えばウェアラブル機器で測定されたユーザーの生体情報や活動情報のライフログ情報を取得するためには、ユーザーが常時装着するウェアラブル機器をネットワークに常時接続することが望ましいが、図3Aの比較例ではその実現が困難である。また災害発生時には停電が原因でAC電源による情報通信端末SPの充電ができなくなり、情報通信端末SPの充電切れにより、ウェアラブル機器による災害情報の報知の実現も困難になる。
またウェアラブル機器をワイファイ(Wi−Fi)により直接にルーターRTに接続する手法も考えられるが、この手法ではウェアラブル機器の通信部の消費電力が過大になってしまう。このため、ウェアラブル機器の頻繁な充電が必要になり、ウェアラブル機器の常時装着性や常時接続性が妨げられてしまう。
図3Bの比較例では、例えば店舗やアミューズメント施設に設けられた通信モジュールCMが周囲にビーコンを発信する。情報通信端末SPを所持するユーザーが通信モジュールCMに近づくと、情報通信端末SPがビーコンを受信し、対応するアプリ(アプリケーションプログラム)が起動する。そして、起動したアプリによりインターネット(INT)に接続され、サーバーSVから店舗の広告情報や施設の案内情報等が、情報通信端末SPにダウンロードされる。
この図3Bの比較例では、インターネットに接続されるのはウェアラブル機器ではなく情報通信端末である。またビーコンの送信は単方向の通信であり、双方向通信には対応していない。このため図3Bの比較例では、インターネットとウェアラブル機器を常時接続して情報を送受信する手法を実現できないという課題がある。
以上のような課題を解決するための本実施形態では、疎結合の近距離無線通信により、インターネット等のコンピューター通信網に対してウェアラブル機器をダイレクトに接続する手法を採用する。具体的には本実施形態の通信システムは、図1、図2に示すように、ウェアラブル機器10(WT1〜WT3、LD、HMD)と、不特定多数の機器が接続可能なゲートウェイ機器100(GW1〜GWN)を有し、コンピューター通信網INTに接続可能な近距離無線通信網BNTと、を有する。また図2に示すように、ウェアラブル機器10は、電力を発現する電力発現部40と、電力発現部40からの電力により動作して情報を処理する処理部20と、電力発現部40からの電力により動作して外部機器との間で疎結合の近距離無線通信を行う通信部30を有する。
そしてウェアラブル機器10(通信部30)は、疎結合の近距離無線通信(広義には近距離無線通信)によりゲートウェイ機器100と通信接続され、ゲートウェイ機器100を介してコンピューター通信網INTに通信接続される。即ち、ウェアラブル機器10とゲートウェイ機器100(例えばブルートゥース等のルーター)は、疎結合の近距離無線通信により通信接続される。例えば図2のウェアラブル機器10の通信部30とゲートウェイ機器100の通信部130が、疎結合の近距離無線通信により情報の送受信を行う。ブルートゥースを例にとれば、ペアリングによる1対1の通信接続の確立前の疎結合の近距離無線通信で、情報の送受信を行う。そしてゲートウェイ機器100の通信部140が、例えばインターネットのプロトコル(イーサネット、TCP/IP)にしたがった通信を行うことで、ゲートウェイ機器100とコンピューター通信網INT(サーバー200)が通信接続される。これにより、ウェアラブル機器とコンピューター通信網INTが、近距離無線通信網BNTのゲートウェイ機器100を介してダイレクトに通信接続されるようになる。
ウェアラブル機器10の表示部では、ゲートウェイ機器100との接続に関する情報、即ち接続可能な状態であるか、接続不可能な状態であるかが表示され、安定して接続している場合、安心してインターネットが利用できることを、視覚的にユーザーに伝える。なお、ウェアラブル機器10の位置情報から、接続可能なゲートウェイ機器が存在しないことを把握すれば、通信を行わないようにして、低消費電力を図ることも可能である。
例えば図3Aの比較例では、ウェアラブル機器は情報通信端末SPを介してコンピューター通信網INTに接続されている。これに対して本実施形態の通信システムでは、ウェアラブル機器10が、他の情報通信端末SPを介さずに直接に、疎結合の近距離無線通信によりゲートウェイ機器100に通信接続されて、コンピューター通信網INTに接続されるようになる。従って、ユーザーは、情報通信端末SPを所持していなくても、ウェアラブル機器10をダイレクトにコンピューター通信網INTに接続できる。即ち、情報通信端末SPの充電状態等に依存せずに、ウェアラブル機器10をコンピューター通信網INTに接続できる。そして、ウェアラブル機器10の情報をサーバー200(SV)にアップロードしたり、サーバー200からの情報をウェアラブル機器10にダウンロードできるようになる。従って、ウェアラブル機器10を常時にコンピューター通信網INTに接続して、情報の送受信を行えるようになり、ウェアラブル機器10の常時接続性を向上できる。
またウェアラブル機器10は、例えばソーラー発電等の電力発現部40を有しており、ウェアラブル機器10の処理部20、通信部30等は、電力発現部40からの電力により動作する。従って、AC電源等によりウェアラブル機器10の充電を行わなくても、電力発現部40により発電した電力によりウェアラブル機器10を動作させることが可能になる。このようにウェアラブル機器10の充電が不要になることで、ユーザーが充電のためにウェアラブル機器10を取り外す必要がなくなり、ウェアラブル機器10の常時装着性を向上できる。
この場合にウェアラブル機器10とゲートウェイ機器100は、ワイファイ(Wi−Fi)等に比べて極めて電力消費が少ない疎結合の近距離無線通信により接続される。従って、電力発現部40により発電した電力に基づいて、ウェアラブル機器10を長時間に亘って、動作させることが可能になり、常時装着性の向上を図れる。
このように本実施形態の手法によれば、ウェアラブル機器10の常時接続性と常時装着性を大幅に向上できる。従って、ウェアラブル機器10によりユーザーの生体情報や活動情報(脈波、消費カロリー、行動履歴等)を常時に測定して、より適切なライフログ情報を取得できるようになり、付加価値の高い情報をユーザーに提供できる。また災害の発生時等においても、停電等の影響を受けることなく、ウェアラブル機器10を用いてユーザーに災害情報を報知したり、ウェアラブル機器10で測定された位置情報等を用いてユーザーの救出活動を行うことなどが可能になる。またウェアラブル機器10の常時接続性や常時装着性が確保されることで、後述するようなウェアラブル機器10の監視情報等に基づく保守情報等の報知処理や、ウェアラブル機器10を用いた制御対象物の遠隔制御の実現も容易になる。
また本実施形態に係る通信システムでは、ウェアラブル機器10が充電不要で常時インターネットに接続できるという特徴から、災害などの有事において、ウェアラブル機器10を有するユーザーがインターネットを経由して、自治体や、警察、軍隊などが指揮する本部と双方向通信可能になる。即ち、本実施形態に係る通信システムは、例えば一部地域の長期停電の場合でも、被災者の捜索や救出、避難誘導といった緊急対応システムとして活用できる技術である。
ここで、本実施形態で用いられる疎結合の近距離無線通信は、通常結合の近距離無線通信に比べて、通信の結合度が緩やかな無線通信である。例えば通常結合の近距離無線通信は、双方向通信のペアとなる2つの機器間で、通信接続の確立のための処理(例えばペアリング)が行われ、一旦、通信接続が確立されると、それを解除するのには所定の解除処理が必要になる。このような通常結合の近距離無線通信は、その近距離無線通信網の通信規格(ブルートゥース等)において、通常モード(デフォルト)の無線通信としてプロトコル等が定義されている。
これに対して疎結合の近距離無線通信は、このような通信接続の確立のための処理を行うことなく、緩やかな通信の結合度で、2つの機器間において例えば双方向通信等が行われる無線通信である。疎結合の近距離無線通信では、上記の通常結合の近距離無線通信で規定される通信接続の確立は行われないため、それを解除するための解除処理も不要となる。このため、ウェアラブル機器等の機器は、ゲートウェイ機器等の接続対象機器を次々と切り替えながら、当該接続対象機器を介したコンピューター通信網への通信接続が可能になる。この疎結合の近距離無線通信の一例は、通信接続の確立の前の準備期間で行われる通信であり、この準備期間の一例としては、存在報知パケットの検索が行われるスキャン期間がある。即ち、疎結合の近距離無線通信は、例えば、ウェアラブル機器10からの存在報知パケットをゲートウェイ機器100が探索するスキャン期間(探索期間)において行われる通信である。
例えば図4Aにおいてウェアラブル機器WDは、自身の存在を周囲に報知するための存在報知パケットPKを、例えば所与の周期ごとに送信する処理を行っている。この存在報知パケットPKの送信は図2の通信部30が行う。一方、ゲートウェイ機器GWは、この存在報知パケットPKをキャプチャーすることで、周囲に存在するウェアラブル機器WD(電子機器)を見つけ出すスキャン動作を行っている。本実施形態の疎結合の近距離無線通信は、このようなスキャン期間において行われる通信である。
即ち、通常は、スキャン期間において周囲のウェアラブル機器が見つかると、ゲートウェイ機器とウェアラブル機器との間で通信の接続確立が行われる。そして、この接続確立(ペアリング)の後に、ゲートウェイ機器とウェアラブル機器の間の1対1の双方向通信が開始される。
本実施形態の疎結合の近距離無線通信は、このような接続確立(ペアリング)の前のスキャン期間において行われる緩やかな結合の通信である。例えば本実施形態では、後述の図8A〜図8Cで説明するように、ウェアラブル機器を装着しているユーザーが移動すると、ユーザーの位置に対応する場所のゲートウェイ機器がウェアラブル機器に接続されることで、常時接続性を確保している。即ち、ユーザーの位置に応じて、ウェアラブル機器の接続先となるゲートウェイ機器が次々に切り替わって行く。
この場合に、ウェアラブル機器とゲートウェイ機器との間の通信が、接続確立後(ペアリング後)の通信であると、接続先となるゲートウェイ機器が切り替わるごとに、元のゲートウェイ機器との間の接続確立を解除するための処理やユーザーの手間が必要になってしまう。例えばウェアラブル機器と第1のゲートウェイ機器との間で接続確立(ペアリング)が行われた後に、ユーザーが移動して、移動先の第2のゲートウェイ機器にウェアラブル機器が接続される場合を想定する。この場合に、ウェアラブル機器と第1のゲートウェイ機器の接続確立を解除する処理や、接続確立を解除するためのユーザーの操作が必要になってしまう。このため、接続確立の解除処理による無駄な電力消費が生じてしまい、ウェアラブル機器の低消費電力化が妨げられたり、ユーザーの利便性が阻害されてしまう。
この点、本実施形態の疎結合の近距離無線通信は、このような接続確立前のスキャン期間において行われる通信であるため、接続確立の解除のための処理やユーザーの手間が不要になる。従って、ウェアラブル機器の低消費電力化やユーザーの利便性の向上等を図れる。また存在報知パケットの送信は間欠的な送信であるため、例えば存在報知パケットの送信間隔の適切な制御により、更なる低消費電力化を図れるという利点もある。
なお図2に示す本実施形態のウェアラブル機器10は、情報を処理する処理部20と、コンピューター通信網INTに通信接続されるゲートウェイ機器100との間で近距離無線通信を行う通信部30を含むことができる。そして通信部30は、ウェアラブル機器10からの存在報知パケットをゲートウェイ機器100が探索するスキャン期間においてゲートウェイ機器100と近距離無線通信を行うことで、ゲートウェイ機器100を介してコンピューター通信網INTに通信接続されることになる。
また図4Aにおいてウェアラブル機器WDは、存在報知パケットPKを用いて、ゲートウェイ機器GWに情報を送信する。例えば存在報知パケットPKのペイロード(図7A参照)に送信情報を設定することで、当該送信情報をゲートウェイ機器GWに送信する。或いはウェアラブル機器WDは、後述の図7Bのように、存在報知パケットPK(PKAD)に対してゲートウェイ機器GWがリクエストパケット(PKRQ)を送信した場合に、リクエストパケットの応答パケット(PKRS)を用いて、ゲートウェイ機器GWに情報を送信する。例えば応答パケットのペイロード(図7A)に送信情報を設定することで、当該送信情報をゲートウェイ機器GWに送信する。この送信の処理は図2の通信部30により実行される。また送信情報として対応できる情報は、例えばウェアラブル機器WDの認証処理のための認証用情報(例えば機器アドレス)、ウェアラブル機器の測定情報(例えば生体情報、位置情報、モーション情報、活動量情報、或いは温度・気圧・湿度等の環境情報)、ウェアラブル機器が有するデバイス(モーター、電力発現部等)の動作状態情報、或いは制御対象物の遠隔制御用の情報などが挙げられる。
またウェアラブル機器WDは、ゲートウェイ機器GWを介してコンピューター通信網INTに送信された情報に基づき取得された情報を、スキャン期間において受信する。即ち、スキャン期間において、コンピューター通信網INTからゲートウェイ機器GWを介して疎結合の近距離無線通信により、当該情報を受信する。例えばゲートウェイ機器GWに送信情報を送信した当該スキャン期間において、その送信情報に基づき取得された情報である受信情報を、ゲートウェイ機器GWから受信する。この受信の処理は図2の通信部30により実行される。また受信情報は、ウェアラブル機器WDが認証処理用の情報を送信した場合に、認証処理の結果により取得される情報である。或いは、ウェアラブル機器WDの測定情報やウェアラブル機器WDが有するデバイスの動作状態情報を送信した場合に、受信情報は、これらの測定情報や動作状態情報に基づき取得される情報である。例えば受信情報は、これらの情報をサーバーSVが処理することで得られるライフログに関する情報や報知情報などである。また制御対象物の遠隔制御用の情報を送信した場合に、受信情報は、この遠隔制御の結果に応じて取得される情報である。
また存在報知パケット、スキャン期間は、各々、例えばブルートゥース(ブルートゥース・ローエナジー。ブルートゥースの4.0以降の規格)におけるアドバタイジングパケット、アクティブスキャン期間である。アドバタイジングパケットは、デバイスの発見のためにアドバタイザーが送信するパケットである。スキャナーはこのアドバタイジングパケットをキャプチャーして受信することで、アドバタイザーを発見する。このアドバタイジングパケットはアドバタイジング・チャンネルよって送信されるパケットである。またブルートゥースにはパッシブスキャンとアクティブスキャンがあり、パッシブスキャンでは、スキャナーは、アドバタイジングパケットを受信するだけである。一方、アクティブスキャンでは、スキャナーは、scan_reqのパケットを送信することで、アドバタイジングパケットに収まらなかった情報を更に取得できる。なお本実施形態の近距離無線通信の規格は、ブルートゥース規格には限定されず、前述のジグビー規格、ワイサン規格、或いはこれらの規格を発展させた規格などの種々の規格を想定できる。
また後述の図8A〜図8Cで説明するように、ウェアラブル機器WDは、第1の期間では、近距離無線通信網BNTに含まれる第1のゲートウェイ機器GW1との間で疎結合の近距離無線通信(広義には近距離無線通信)を行う。そして第1の期間とは異なる第2の期間(第1の期間の次の第2の期間)では、近距離無線通信網BNTに含まれる第2のゲートウェイ機器GW2との間で疎結合の近距離無線通信(広義には近距離無線通信)を行う。例えば、ウェアラブル機器WDが第1のゲートウェイ機器GW1の近傍に位置する第1の期間では、第1のゲートウェイ機器GW1との間で疎結合の近距離無線通信を行う。ウェアラブル機器WDが第2のゲートウェイ機器GW2の近傍に位置する第2の期間では、第2のゲートウェイ機器GW2との間で疎結合の近距離無線通信を行う。即ち、ウェアラブル機器WDの位置に応じて、疎結合の近距離無線通信の接続先となるゲートウェイ機器を順次に切り替えて行く。この場合に図8A〜図8Cに示すように、第1のゲートウェイ機器GW1は、ウェアラブル機器WDが第2のゲートウェイ機器GW2と通信接続され、所与の削除条件が成立した場合に、ウェアラブル機器WDからの受信情報又はウェアラブル機器WDへの送信情報(例えば送信する予定の情報)の削除処理を行う。
またゲートウェイ機器GWは、疎結合の近距離無線通信によりウェアラブル機器WDから受信したウェアラブル機器WDのアドレス情報を、コンピューター通信網用のアドレス情報に変換する処理を行う。この変換処理は図2の処理部120が実行する。ここでウェアラブル機器WDのアドレス情報は、例えばウェアラブル機器WDのMACアドレスなどの機器アドレス情報である。この機器アドレス情報としては、例えば図2の通信部30を構成する通信用の半導体ICの識別情報(識別番号、製造番号等)を用いることができる。或いは半導体ICの識別情報に所与の情報を付加した情報を、機器アドレス情報としてもよい。またコンピューター通信網用のアドレス情報は、コンピューター通信網INTにおいて機器を唯一に特定する識別情報である。例えばコンピューター通信網INTがインターネットである場合に、コンピューター通信網用のアドレス情報はIPアドレスである。例えばインターネットプロトコルのIPv6で規定されるIPアドレスである。IPv4において約232個であったIPアドレスが、IPv6では、約2128個まで使用可能になっている。ゲートウェイ機器GWは、ブルートゥースからインターネットプロトコルへのプロトコル変換の際に、ウェアラブル機器WDの機器アドレス(MACアドレス)を、例えばIPv6にしたがったIPアドレスに変換する。こうすることで、ウェアブル機器WDを、インターネット上で唯一無二の機器として識別できるようになる。
また図4Aに示すように、ウェアラブル機器WDは、他の情報通信端末SPを介さずに直接に、疎結合の近距離無線通信によりゲートウェイ機器GWに通信接続される。即ち、スマートフォン、タブレットPC、携帯電話器、又はノートPC等の情報通信端末SPを介さずに直接にゲートウェイ機器GWに通信接続される。このようにすれば、例えばユーザーが情報通信端末SPを所持していない場合や情報通信端末SPの充電切れなどの場合にも、ウェアラブル機器WDをダイレクトにコンピューター通信網INTに接続することができ、常時接続性の向上を図れる。またウェアラブル機器WDとゲートウェイ機器GWと間が疎結合の近距離無線通信でダイレクトに接続されることで、ワイファイ(Wi−Fi)等により接続する場合に比べて、消費電力を大幅に低減することができ、常時接続性や常時装着性を向上できる。
また本実施形態の通信システムは、図4Bに示すように、ウェアラブル機器WD1と通信接続される第2のウェアラブル機器WD2を含んでもよい。この場合には第2のウェアラブル機器WD2は、疎結合の近距離無線通信により、ウェアラブル機器WD1及びゲートウェイ機器GWを介して、コンピューター通信網INTに通信接続される。
例えば図4Bはブルートゥースのピコネットの例であり、ピコネットNPT1(広義には第1のネットワーク)とピコネットNPT2(広義には第2のネットワーク)が形成されている。ピコネットNPT1では、ウェアラブル機器WD2がアドバタイザーになり、ウェアラブル機器WD1がスキャナーになる。そしてアクティブスキャン期間(広義にはスキャン期間)において、アドバタイザーであるウェアラブル機器WD2がアドバタイジングパケット(広義には存在報知パケット)を送信し、スキャナーであるウェアラブル機器WD1がアドバタイジングパケットを受信することで、これらの機器間での疎結合の近距離無線通信が実現される。一方、ピコネットNPT2では、ウェアラブル機器WD1がアドバタイザーになり、ゲートウェイ機器GWがスキャナーになる。そしてアクティブスキャン期間において、アドバタイザーであるウェアラブル機器WD1がアドバタイジングパケットを送信し、スキャナーであるゲートウェイ機器GWがアドバタイジングパケットを受信することで、これらの機器間での疎結合の近距離無線通信が実現される。
例えば、ピコネットNPT1での疎結合の近距離無線通信によって、ウェアラブル機器WD2がウェアラブル機器WD1に送信した送信情報を、ウェアラブル機器WD1はその記憶部(図2の記憶部50)に保持しておく。そしてピコネットNPT2での疎結合の近距離無線通信では、ウェアラブル機器WD1は、記憶部に保持しておいた送信情報を読み出して、ゲートウェイ機器GWに送信すればよい。またピコネットNPT2での疎結合の近距離無線通信によって、ゲートウェイ機器GWからウェアラブル機器WD1が受信した受信情報を、ウェアラブル機器WD1はその記憶部に保持しておく。そしてピコネットNPT1での疎結合の近距離無線通信では、ウェアラブル機器WD1は、記憶部に保持しておいた受信情報を読み出して、ウェアラブル機器WD2に送信すればよい。
なお、後述する図9A、図9Bに示すように、ウェアラブル機器WD1は、所与の削除条件が成立した場合に、第2のウェアラブル機器WD2からの受信情報又は第2のウェアラブル機器WD2への送信情報の削除処理を行うことが望ましい。また後述する図10Aに示すように、ウェアラブル機器WDとゲートウェイ機器GWとの間の疎結合の近距離無線通信が、ユーザーからの入力情報に基づいて接続又は非接続に設定されることが望ましい。このように、ユーザーによって、必要ない時に非接続の設定にしておくと、消費電力の節約に繋がる。
また図2の電力発現部40はソーラーセルを含むことができる。例えばソーラーセルにより構成されるソーラーパネルを含むことができる。この場合に、ウェアラブル機器の平均消費電力は、照度500ルクスの環境下において電力発現部40により発現される電力以下に設定されていることが望ましい。
例えば晴天の場合の午前10時の照度は65000ルクス程度、曇りの場合の日の出から1時間後の太陽光での照度は2000ルクス程度、パチンコ店内での照度は1000ルクス程度、百貨店内での照度は500〜700ルクス程度、蛍光灯を使用している事務所内での照度は400〜500ルクス程度と測定される。これらの測定結果から、ウェアラブル機器の周囲の下限の照度は500ルクス程度であると想定できる。そして、照度500ルクスの環境下において電力発現部40により発現される電力をPWminとし、ウェアラブル機器の平均消費電力をPWavとしたとする。このとき、PWav≦PWminとすれば、下限の照度と想定される500ルクスの環境下での電力発現部40の発電電力だけで、ウェアラブル機器を動作させることができる。従って、例えば1年以上というような長い期間に亘って、充電することなくウェアラブル機器を動作させることが可能になり、ウェアラブル機器の常時装着性を向上できる。この結果、ユーザーの生体情報や活動情報を常時に測定して、ユーザーのライフログ情報を取得できるようになる。
なお電力発現部40は、振動発電、手巻き発電及び温度差発電の少なくとも1つの発電を行うことで実現されてもよい。振動発電には、圧電方式、電磁誘導方式、静電方式などがある。圧電方式は、材料(ピエゾ素子)が振動によって変形する際に発生する電位差を電力として回収する。電磁誘導式は回転式発電機などを用いる方式である。ウォッチなどのリスト型電子機器を例にとれば、ユーザーの腕の動きによって、内蔵された回転錘を回転させ、歯車によって増速した回転を利用し、回転式発電機を超高速で回転させて、発生した電力をキャパシターに充電する。静電方式の発電機は、2つの平面状の電極が互いに向かい合った構造を用い、振動によって対向する電極の位置関係がずれることで起電力を発生させる。手巻き発電は、例えばウォッチのリューズや、ハンドルなどの回転部材を回転させることで発電する発電機を用いる。例えば磁石の間に導線を巻いたコイルを配置し、このコイルを回転させることで発電を行う。温度差発電は、高い温度と低い温度との温度差を利用して発電する方式である。具体的には熱電素子(ゼーベック素子)を用いて発電する。例えばユーザーの体温とウェアラブル機器の筺体(例えば表面側)の温度の温度差を利用して発電する。
ゼーベック温度差発電では、ゼーベック素子が配置される伝熱面積が大きいほど発電電力も大きくなる。従って、ウェアラブル機器とユーザー(肌等)が接するエリアの全域に渡って、できるだけ多くのゼーベック素子を配置することが望ましい。例えば、ウェアラブル機器がウォッチ等である場合には、ゼーベック素子は、筐体のユーザー側の面とバンドのユーザー側の面の両方に配置することが望ましい。また、高温側の熱源は、必ずしもユーザーの体温には限定されない。例えば使い捨てカイロなどの防寒用品や熱を発するヒーター内蔵衣服といったような、熱源の上に重ねて装着できるような構造のウェアラブル機器であれば、体温を利用する場合よりも大きな温度差を得ることができ、発電量が大きくなる。
また本実施形態において疎結合の近距離無線通信により通信される情報は、ウェアラブル機器を装着しているユーザーの生体情報、及び時刻情報の少なくとも1つを含むことができる。例えば図2のセンサー部54を用いてユーザーの生体情報を取得する。或いは、ウェアラブル機器がウォッチ等である場合には、計時された時刻情報を取得する。そして、生体情報や時刻情報を、疎結合の近距離無線通信によりゲートウェイ機器100に送信する。これにより、生体情報や時刻情報をゲートウェイ機器100、コンピューター通信網INTを介してサーバー200にアップロードできる。この結果、例えばサーバー200の処理部220が種々の情報処理を行うことで、ユーザーの生体情報等に基づくライフログ情報等を生成できるようになる。
3.疎結合の近距離無線通信
次に疎結合の近距離無線通信の詳細について説明する。図5はブルートゥースにおいてスタンバイからペアリングまでの遷移を示す通信シーケンス図である。
最初はウェアラブル機器WD、ゲートウェイ機器GWの両者はスタンバイ状態になっている。スタンバイ状態では両者の間での送受信は行われない。そして図5ではウェアラブル機器WDがアドバタイジング状態に遷移し、アドバタイザー(ブロードキャスター)として、一定期間ごとにアドバタイジングパケットPKADを送信している。このアドバタイジングパケットPKADは、アドバタイザーであるウェアラブル機器WDが、自身の存在を周囲に報知するためのパケットである。アドバタイジングパケットPKADの送信間隔が短いほど、ウェアラブル機器WDが発見され易くなるが、送信間隔が短いと、通信による消費電力も増加してしまう。
ゲートウェイ機器GWは、アドバタイジングパケットPKADを受信すると、スキャニング状態に遷移する。スキャナー(オブザーバー)であるゲートウェイ機器GWが、アドバタイジングパケットPKADを受信するだけなのがパッシングスキャンである。一方、アクティブスキャンでは、スキャナーは、アドバタイジングパケットPKADを受信した後に、リクエストパケットPKRQ(scan_req)を送信して、アドバタイザーから更なる情報を取得する。
ゲートウェイ機器GWは、スキャンにより得た情報に基づいて、接続先を決定する。そしてイニシエイティング状態に遷移して、接続先であるウェアラブル機器WDに対して、接続要求のリクエストパケットPKRQ(connection_req)を送信する。これによりゲートウェイ機器GW、ウェアラブル機器WDはコネクション状態に遷移し、ゲートウェイ機器GWがマスター、ウェアラブル機器WDがスレーブになる。そして両者の接続確立が行われて、ペアリングが実現される。このようにペアリングを行うことで、マスターとスレーブとの間での1対1の双方向通信が行われる。そして、このペアリングを解除するのには所定の処理が必要になる。またブルートゥースではペアリング後の再接続であるリコネクションも定義されている。
図5に示すようにブルートゥースによる双方向通信は、ペアリングが行われることが前提になる。しかしながら、このようなペアリングを行ってゲートウェイ機器とウェアラブル機器の間で双方向の通信を行うと、低消費電力化や常時接続性の点で問題がある。例えば後述する図8A〜図8Cのようにウェアラブル機の接続先となるゲートウェイ機器を順次に切り替える処理を行った場合には、ペアリングやリコネクションを解除する処理やユーザーの操作等が必要になり、無駄に電力が消費されてしまったり、ユーザーの利便性が阻害される。このためゲートウェイ機器とウェアラブル機器の常時接続を確保することが困難になる。
そこで本実施形態では、ウェアラブル機器とゲートウェイ機器の間の通信接続を、疎結合の近距離無線通信により実現する。この疎結合の近距離無線通信は、ペアリングが行われていない状態であるスキャン期間において行われる通信である。スキャン期間は、図5において接続確立(1対1の双方向の通信の接続確立)の要求(connection_req)が行われる前の期間である。
図6は本実施形態の疎結合の近距離無線通信を説明する通信シーケンス図である。図6に示すように、最初はウェアラブル機器WD、ゲートウェイ機器GWはスタンバイ状態である。そしてアドバタイジング状態に遷移したウェアラブル機器WDがアドバタイジングパケットPKADを送信し、ゲートウェイ機器GWがPKADを受信すると、ゲートウェイ機器GWがスキャニング状態に遷移する。
この場合にウェアラブル機器WDは、図6のA1に示すアドバタイジングパケットPKAD(存在報知パケット)を用いてゲートウェイ機器GWに情報を送信できる。例えば機器アドレス情報等の認証用の情報を送信できる。ゲートウェイ機器GWは、アクティブスキャンにおいては、例えばA2に示すリクエストパケットPKRQ(scan_req)を送信することで、ウェアラブル機器WDから更なる情報を取得できる。例えばA1に示すアドバタイジングパケットPKADに収まりきらなかった情報を取得できる。またゲートウェイ機器GWは、A2に示すリクエストパケットPKRQを用いて、例えばウェアラブル機器WDがアドバタイジングパケットPKADを次に送信するタイミングを決める期間TWAの長さを設定できる。このようにすれば、ウェアラブル機器WDから送信されるアドバタイジングパケットPKADの送信間隔を、最適に制御できるようになり、更なる低消費電力化を図れる。
ウェアラブル機器WDから認証用情報等を受信したゲートウェイ機器GWは、図6のA3、A4に示すように、サーバー上にあるユーザー情報等の各種の情報を取得するためのリクエストを、インターネット(広義にはコンピューター通信網)を介してサーバーに送出する。この場合にゲートウェイ機器GWは、ブルートゥースからインターネットへのプロトコル変換を行う。例えばウェアラブル機器WDから受信した認証用情報である機器アドレス(MACアドレス)を、インターネットのIPアドレス(IPv6)に変換する処理などを行う。例えばブルートゥースの4.1以降の規格においては、IPv6のIPアドレスについてサポートされている。こうすることで、インターネット上でウェアラブル機器WDをユニークに特定できるようになり、サーバーの記憶部(データベース)においてIPアドレス(機器アドレス)に関連づけられたユーザー情報等の各種の情報を特定できるようになる。
サーバーは、このようにして特定されたユーザー情報等の各種の情報を、図6のA5、A6に示すように、レスポンスとしてインターネットを介してゲートウェイ機器GWに返信する。そして例えば期間TWAの経過後に、A7に示すようにウェアラブル機器WDがアドバタイジングパケットPKADを送信して来たとする。この場合にゲートウェイ機器GWは、例えばA8に示すリクエストパケットPKRQ(scan_req)を用いて、サーバーから取得されたユーザー情報等の各種の情報をウェアラブル機器WDに送信する。例えばリクエストパケットPKRQのペイロードにユーザー情報等の情報を設定して送信する。こうすることで、ウェアラブル機器WDは様々な情報をサーバーから取得できるようになる。なお期間TWAの長さは、サーバーにリクエスト(A3、A4)を送出してから、サーバーからレスポンス(A5、A6)が返信されるまでの時間の長さを考慮して設定される。また、A7に示すように期間TWAの経過後にウェアラブル機器WDがアドバタイジングパケットPKADを送信して来たタイミングにおいて、サーバーからのレスポンスがゲートウェイ機器GWに未だ届いていない場合には、所定期間後にウェアラブル機器WDがアドバタイジングパケットPKADを、再度、送信するようにしてもよい。
このように本実施形態では、図6の疎結合の近距離無線通信を用いることで、図5のようなペアリングを行うことなく、ウェアラブル機器WDとゲートウェイ機器GWとの間での疎結合の双方向通信を実現している。そして、この疎結合の双方向通信では、ペアリングの解除などの処理や手間が不要になるため、低消費電力化を図れ、ユーザーの利便性も向上できる。例えば図6の期間TWAの長さを最適に設定することにより、更なる低消費電力化も実現できる。従って、例えば電力発現部40からの電力に基づいて、充電することなく常時接続性や常時装着性を維持して動作するウェアラブル機器WDにおいて、最適な通信手法を実現できる。
また図3Bに示すビーコンを用いる比較例では、ビーコンを送出する通信モジュールCM自体が、インターネットを介してサーバーSVに接続して、サーバーSVの情報を取得することはできない。即ち、サーバーSVの情報は、情報通信端末SPがインターネットに接続することで取得される。
これに対して本実施形態の疎結合の近距離無線通信を用いる手法によれば、図6に示すように、ウェアラブル機器WDが、情報通信端末SPを介することなくダイレクトにゲートウェイ機器GWに通信接続して、インターネットを介してサーバー等から情報を取得できる。従って、ウェアラブル機器WDの常時接続や常時装着に最適な通信手法を実現できる。
なお、ウェアラブル機器WDとゲートウェイ機器GWとの間での双方向の通信手法は、上述した手法に限定されず、種々の変形実施が可能である。例えばウェアラブル機器WDの送信情報のデータ量が多い場合には、例えばゲートウェイ機器GWが複数回のリクエストスパケットPKRQを送信し、これらのリクエストパケットPKRQに対応する複数回の応答パケットPKRS(図7B参照)をウェアラブル機器WDが送信することで、当該送信情報を送信できる。例えばウェアラブル機器WDの測定情報(監視情報)については、このような送信手法により送信することが望ましい。またウェアラブル機器WDがゲートウェイ機器GWから受信する受信情報についても、上述の送信手法と同様の手法により受信できる。またウェアラブル機器WDとゲートウェイ機器GWの双方向の通信を、アドバタイジングパケットPKADやリクエストパケットPKRQや応答パケットPKRSとは異なるパケットタイプのパケットを用いて実現してもよい。例えば本実施形態の双方向通信手法は、ブルートゥースの4.1や4.2の規格などにより実現可能であるが、これらの規格を発展させた規格(例えば4.3以降の規格)において定義されるパケットタイプを用いて、本実施形態の双方向通信手法(疎結合の近距離無線通信)を実現してもよい。
図7Aにブルートゥースのパケットフォーマットを示す。パケットは、アクセスアドレス、プロトコルデータユニットPDU、誤り検出用の巡回検査符号CRCにより構成される。なおパケットの先頭のプリアンブルは、信号の強さとビット(0/1)の読み出しタイミングの同期に使用されるものである。
アクセスアドレスは、2つのデバイス間での接続ごとに割り振られるランダムな値であり、当該パケットがどの接続のパケットなのかを区別するための識別子である。例えばアドバタイジングの通信は、ブルートゥースの3つのチャンネルを用いて行われるが、そのアクセスアドレスは固定値に設定される。なおアドバタイジングパケットは、一定周期のアドバタイジングイベントごとに送出される。アドバタイジングの周期は例えば20msec〜10.25秒の間で設定可能になっている。
PDUは、上位層が送受信するデータであり、ヘッダーとペイロードを有する。PDUのヘッダーにより例えばパケットタイプ(scan_req、scan_res、connection_req等)を設定できる。
PDUのペイロードには、上位層によるデータを設定できる。例えばアドバタイジングパケットのペイロードは、パブリックデバイスアドレスを有しており、このパブリックデバイスアドレスをウェアラブル機器の機器アドレスの設定に利用してもよい。
本実施形態では図7Bに示すように、ウェアラブル機器WDは、アドバタイジングパケットPKAD(存在報知パケット)を用いて、ゲートウェイ機器GWに送信情報を送信できる。例えば図7AのPDUのペイロードに当該送信情報を設定して送信する。また図7Bに示すように、ウェアラブル機器WDからのアドバタイジングパケットPKADに対して、ゲートウェイ機器GWがリクエストパケットPKRQを送信したとする。このリクエストパケットPKRQのヘッダーには、上述したパケットタイプとしてscan_reqが設定されている。この場合にウェアラブル機器WDは、リクエストパケットPKRQの応答パケットPKRSを用いて、ゲートウェイ機器GWに送信情報を送信してもよい。例えばアドバタイジングパケットPKADでは収まらなかった情報(例えば測定情報、監視情報)を、応答パケットPKRSを用いて送信する。この応答パケットPKRSのヘッダーには、上述したパケットタイプとしてscan_resが設定されている。また例えばインターネット(サーバー)から取得した情報については、ゲートウェイ機器GWは、図7BのリクエストパケットPKRQを用いてウェアラブル機器WDに送信できる。なお、アドバタイジングパケットPKAD、リクエストパケットPKRQ、応答パケットPKRSは図7Aに示すような同一のパケットフォーマットになっている。
また本実施形態ではウェアラブル機器WDは、その位置等に応じて、接続先となるゲートウェイ機器を順次に切り替えて接続するようになっている。例えば図8A(第1の期間)では、ウェアラブル機器WDは、ゲートウェイ機器GW1との間で、図6に示すような疎結合の近距離無線通信を行って、情報の送受信を行う。
そして図8B(第2の期間)に示すように、ウェアラブル機器WDを装着するユーザーが移動して、ゲートウェイ機器GW1が通信距離の範囲に入らなくなり、ゲートウェイ機器GW2が通信距離の範囲に入ったとする。通信距離の範囲(通信可能な最大距離の範囲)は、ブルートゥース等の場合は例えば50m〜100m程度の範囲であり、ワイサン等のサブギガ通信の場合には例えば100m〜1km程度の範囲である。この場合にはウェアラブル機器WDは、ゲートウェイ機器GW2との間で疎結合の近距離無線通信を行って、情報の送受信を行う。
そして図8C(第3の期間)に示すように、ユーザーが移動して、ゲートウェイ機器GW2が通信距離の範囲に入らなくなり、ゲートウェイ機器GW3が通信距離の範囲に入った場合には、ウェアラブル機器WDは、ゲートウェイ機器GW3との間で疎結合の近距離無線通信を行って、情報の送受信を行う。
このように本実施形態では、図8A〜図8Cに示すように、ウェアラブル機器WDは、その位置等に応じて、接続先となるゲートウェイ機器を順次に切り替えて、疎結合の近距離無線通信を行う。そして図8A〜図8Cのいずれの場合にも、ウェアラブル機器WDは、ゲートウェイ機器を介してインターネットに接続して、種々の情報をインターネット(サーバー)にアップロードしたり、インターネットから情報をダウンロードできるようになる。従って、インターネットとの常時接続の実現が可能になる。また疎結合の近距離無線通信では、ペアリングの解除というような処理が不要であるため、無駄な電力消費についても抑制できる。従って、太陽発電などによる電力発現部40の発電電力だけで、ウェアラブル機器WDを動作させながら、インターネットとの常時接続も実現できるようになる。
なお図8Bに示すように、ゲートウェイ機器GW1は、ウェアラブル機器WDがゲートウェイ機器GW2と通信接続され、削除条件が成立した場合に、ウェアラブル機器WDからの受信情報やウェアラブル機器WDへの送信情報の削除処理を行うことが望ましい。例えば図8Aにおいてゲートウェイ機器GW1がウェアラブル機器WDから受信した受信情報や、ウェアラブル機器WDに送信した送信情報が、ゲートウェイ機器GW1の記憶部に保持されている場合に、これらの受信情報、送信情報を削除する。
同様に図8Cに示すように、ゲートウェイ機器GW2は、ウェアラブル機器WDがゲートウェイ機器GW3と通信接続され、削除条件が成立した場合に、ウェアラブル機器WDからの受信情報やウェアラブル機器WDへの送信情報の削除処理を行う。例えば図8Bにおいてゲートウェイ機器GW2がウェアラブル機器WDから受信した受信情報や、ウェアラブル機器WDに送信した送信情報が、ゲートウェイ機器GW2の記憶部に保持されている場合に、これらの受信情報や送信情報を削除する。
ここで、削除条件は例えば時間経過に基づいて判断できる。例えば図8Aから図8Bの状態になり、ウェアラブル機器WDからのパケットをゲートウェイ機器GW1が受信できなくなった場合に、時間の計測を開始して、所定時間が経過した場合に、受信情報や送信情報を削除する。或いは、図8Bに示すようにウェアラブル機器WDがゲートウェイ機器GW2に接続されたことが、例えばインターネット等を介してゲートウェイ機器GW1に通知された場合に、ゲートウェイ機器GW1の記憶部に記憶されている受信情報や送信情報を削除してもよい。
なお図6において、インターネットに向けて送出したリクエスト(A3、A4)に対して、そのレスポンス(A5、A6)が返信される前に、ゲートウェイ機器GW1とウェアラブル機器WDの距離が離れて、通信範囲外になったとする。この場合には、ゲートウェイ機器GW1は、ウェアラブル機器WDに送信する予定であった送信情報の削除処理を行ってもよい。
このように受信情報や送信情報の削除処理を行えば、無駄な情報がゲートウェイ機器の記憶部に保持されて、記憶部の使用記憶容量が圧迫されてしまうなどの事態を抑制できる。また非接続となったウェアラブル機器についての受信情報や送信情報を削除することで、情報のセキュリティーの向上も図れる。
また本実施形態では図9Aに示すように、ウェアラブル機器WD2は、疎結合の近距離無線通信により、他のウェアラブル機器WD1及びゲートウェイ機器GWを介して、インターネット(コンピューター通信網)に通信接続されるようにしてもよい。例えばウェアラブル機器WD2は、ウェアラブル機器WD1とWD2との間での疎結合の近距離無線通信と、ウェアラブル機器WD2とゲートウェイ機器GWとの間での疎結合の近距離無線通信により、情報I1をゲートウェイ機器GWに送信したり、情報I2をゲートウェイ機器GWから受信する。情報I1はゲートウェイ機器GWによりインターネットにアップロードされる。情報I2はインターネットからゲートウェイ機器GWにダウンロードされた情報である。このような他のウェアラブル機器を介した情報の送受信は、ブルートゥースの場合には、図4Bで説明したピコネットの通信などにより実現できる。
この場合に図9Bに示すように、ウェアラブル機器WD1は、削除条件が成立した場合に、ウェアラブル機器WD2からの受信情報やウェアラブル機器WD2への送信情報の削除処理を行うことが望ましい。
例えば図9Aにおいて、ウェアラブル機器WD1が、ウェアラブル機器WD2から情報I1を受信し、受信した情報I1をゲートウェイ機器GWに送信する場合を想定する。この場合にウェアラブル機器WD1は、ウェアラブル機器WD2との間の疎結合の近距離無線通信により受信した情報I1を、その記憶部に、一旦、保持する。その後に、記憶部に保持された情報I1を、ゲートウェイ機器GWとの間の疎結合の近距離無線通信により送信する。この場合に図9Bに示すように、ウェアラブル機器WD1は、その記憶部に一時記憶された情報I1の削除処理を行う。
また図9Aにおいて、ウェアラブル機器WD1が、ゲートウェイ機器GWから情報I2を受信し、受信した情報I2をウェアラブル機器WD2に送信する場合を想定する。この場合にウェアラブル機器WD1は、ゲートウェイ機器GWとの間の疎結合の近距離無線通信により受信した情報I2を、その記憶部に、一旦、保持する。その後に、記憶部に保持された情報I2を、ウェアラブル機器WD2との間の疎結合の近距離無線通信により送信する。この場合に図9Bに示すように、ウェアラブル機器WD2は、その記憶部に一時記憶された情報I2の削除処理を行う。
この場合の削除条件は、例えば時間経過によって判断してもよい。例えば図9Aにおいて、ウェアラブル機器WD1は、ゲートウェイ機器GWへの情報I1の送信後、所与の時間が経過した場合に、情報I1を削除する。或いは情報I1の送信後に直ぐに削除してもよい。またウェアラブル機器WD1は、ウェアラブル機器WD2への情報I2の送信後、所与の時間が経過した場合に、情報I2を削除する。或いは情報I2の送信後に直ぐに削除してもよい。
なお、図9Aのように、ウェアラブル機器WD2が他のウェアラブル機器WD1を中継して情報I1を送信する場合に、セキュリティーの確保のために、情報I1の暗号化処理を行うことが望ましい。また、情報I2についても暗号処理が行われることが望ましい。
また本実施形態では、ウェアラブル機器とゲートウェイ機器との間の疎結合の近距離無線通信を、ユーザーからの入力情報に基づいて、接続又は非接続に設定できるようにしてもよい。例えば図10Aの選択画面は、ゲートウェイ機器GWAとの間の疎結合の近距離無線通信の接続又は非接続を、ユーザーが選択するための画面の例である。図10Aの選択画面において、ユーザーが切断を選択すると、ゲートウェイ機器GWAとの間での疎結合の近距離無線通信は行われないようになる。
例えば本実施形態では、図8A〜図8Cに示すように、ユーザーの位置の近傍のゲートウェイ機器が、ユーザーのウェアラブル機器に自動的に常時接続されるようになっている。しかしながら、ユーザーによっては、このような自動的な常時接続を望まないユーザーも存在する。例えば、プライベートの理由などにより、このような常時接続を一時的に切断したいと考える場合がある。このような場合には、例えば図10Aのような選択画面等により、疎結合の近距離無線通信による接続を、ユーザーが切断できるようにすることが望ましい。
なお、疎結合の近距離無線通信を接続又は非接続に設定する手法としては、種々の手法が対応できる。例えば図10Aのような選択画面を表示せずに、ウェアラブル機器に設けられたスイッチ等の操作部により、ユーザーが疎結合の近距離無線通信の接続又は非接続を設定できるようにしてもよい。或いは、図10Aのような選択画面を、ユーザーが所持するスマートフォン等の情報通信端末に表示して、ユーザーが疎結合の近距離無線通信の接続又は非接続を設定できるようにしてもよい。
図10Bに電力発現部40の構成例を示す。図10Bは太陽発電を用いる場合の構成例である。図10Bの電力発現部40は、ソーラーセルにより構成されるソーラーパネル42(太陽電池)と、充電制御部44と、二次電池46(電荷蓄積キャパシター、バッテリー)を有する。ソーラーパネル42は、太陽発電により電力を発電する。例えば入射される光により発電し、生じた発電電流を出力する。充電制御部44は、ソーラーパネル42が発電した電力や、二次電池46に蓄電された電力を、処理部20、通信部30等に供給する。また充電制御部44は、ソーラーパネル42が発電した電力により、二次電池46を充電する。例えばソーラーパネル42からの発電電流により二次電池46を充電する。
図10Bのようは電力発現部40をウェアラブル機器に設けることで、電力発現部40からの電力により動作して情報を処理する処理部20や、電力発現部40からの電力により動作して外部機器との間で疎結合の近距離無線通信を行う通信部30を実現できる。
また図10Bの電力発現部40は、ソーラーパネル42(ソーラーセル)を有している。そして前述したように、ウェアラブル機器の平均消費電力PWavは、照度500ルクスの環境下において電力発現部40により発現される電力以下に設定されている。例えば前述のように、ウェアラブル機器の周囲の下限の照度は500ルクス程度であると想定できる。従って、照度500ルクスの環境下において電力発現部40により発現される電力をPWminとした場合に、PWav≦PWminとすることで、下限の照度と想定される500ルクスの環境下での電力発現部40の発電電力だけで、ウェアラブル機器を動作させることが可能になる。
例えば、従来のリスト型電子機器(スマートウォッチなどのウォッチや、リスト型の脈拍計、活動量計)などのウェアラブル機器では、機器単独では、充電無しで長期間にわたってインターネットに接続することはできなかった。これに対して本実施形態では、疎結合でインターネットに接続可能になることで、消費電力を抑えられる。従って、電力発現部40による発電電力だけで、充電無しで長期間にわたってインターネットにウェアラブル機器を接続することが可能になる。またユーザーは、ウェアラブル機器と情報通信端末の両方を持たなくても済むようになり、ユーザーの利便性の向上も図れる。
4.報知処理、監視処理
次に、本実施形態の通信システムを利用した種々の適用例について説明する。本実施形態では、疎結合の近距離無線通信を利用した報知処理や監視処理を実現する。例えばウェアラブル機器の情報を疎結合の近距離無線通信により送信することに基づいて取得した報知情報の報知処理を行う。またウェアラブル機器の動作状態や使用環境についての監視情報を、疎結合の近距離無線通信により送信する。
具体的には図1、図2で説明したように本実施形態のウェアラブル機器10は、情報を処理する処理部20と、外部機器との間で疎結合の近距離無線通信を行う通信部30を含む。通信部30は、不特定多数の機器が接続可能なゲートウェイ機器100に疎結合の近距離無線通信により通信接続され、ゲートウェイ機器100を介してコンピューター通信網INTに通信接続される。そして処理部20は、ウェアラブル機器10の情報を疎結合の近距離無線通信により送信することに基づいて取得した報知情報の報知処理を行う。
例えば図11Aでは、ウェアラブル機器WDの情報が、図6で説明した疎結合の近距離無線通信によりゲートウェイ機器GWに送信される。この情報はゲートウェイ機器GWからインターネットを介してサーバーSVに送信され、サーバーSVは当該情報に基づいて報知情報の生成処理等を行う。そして生成された報知情報がゲートウェイ機器GWに送信され、この報知情報が、疎結合の近距離無線通信によりウェアラブル機器WDに送信される。そして、ウェアラブル機器WDにおいて報知情報の報知処理が行われる。なおウェアラブル機器WDを所持するユーザーの情報通信端末の表示部などを用いて、報知情報を表示してもよい。
また図11Bでは、ウェアラブル機器WDの通信部30は、ウェアラブル機器WDの情報として、ウェアラブル機器WDの動作状態及び使用環境の少なくとも1つについての監視情報を、疎結合の近距離無線通信によりゲートウェイ機器GWに送信している。
ウェアラブル機器の動作状態についての監視情報は、例えばウェアラブル機器が有するデバイス(回路、センサー、素子等)の動作(回路やセンサーや素子の動作)についての監視情報や、ウェアラブル機器内で発生する電流、電圧又は磁気等の物理量に関する監視情報などである。ウェアラブル機器の使用環境についての監視情報は、ウェアラブル機器の外部環境や内部環境についての監視情報である。例えば使用環境についての監視情報は、磁界情報、温度情報、湿度情報、気圧情報、磁気情報、天候情報、重力情報、加速度情報、放射線情報、照度情報及びウェアラブル機器の位置情報の少なくとも1つを含む情報であり、ウェアラブル機器の通信部30は、これらの情報を、疎結合の近距離無線通信によりゲートウェイ機器に送信する。
具体的にはウェアラブル機器の処理部20は、ウェアラブル機器が有するデバイスの監視処理を行う。例えばデバイスの動作状態の監視処理を行う。このデバイスは、例えば図2の電力発現部40、センサー部54などのデバイスである。或いは、通信部30、記憶部50、入力部60、出力部62を構成するデバイスなどであってもよい。そして通信部30は、デバイスの監視処理より取得された監視情報を、疎結合の近距離無線通信によりゲートウェイ機器に送信する。
例えばウェアラブル機器が、回動する指針を有するウォッチ(腕時計)である場合に、監視処理の対象となるデバイスは、指針を駆動するモーターである。例えばウォッチは、モーターと、モーターを駆動するモーター駆動回路と、運針機構を有しており、運針機構は、モーターにより回転する複数の歯車から構成される輪列と、輪列により回転する指針(秒針、分針、時針)を有する。モーターの回転に対する負荷は、温度、経時変化、注油の状態、外部磁界などにより変動する。モーター駆動回路は、負荷の状態に対して最適な駆動になるように、モーターを駆動するパルス信号のパルス段数(パルス幅の長さやPWMにおけるデューティー)を変化させる。またモーター駆動回路は、1発目のパルス信号で回転しなかった場合には、補助パルス信号を出力する。この場合に、モーターの動作状態の監視情報は、パルス信号のパルス幅、補助パルス信号の出力の有無、外部磁界の情報などである。通信部30は、モーターの監視処理より取得された監視情報を、疎結合の近距離無線通信によりゲートウェイ機器に送信する。
また監視対象となるデバイスが、処理部20及び通信部30を動作させる電力を発現する電力発現部40である場合に、処理部20は、電力発現部40の発電量情報、電力消費量情報、及び電力収支情報の少なくとも1つの監視処理を行う。そして通信部30は、発電量情報、電力消費量情報及び電力収支情報の少なくとも1つを、疎結合の近距離無線通信によりゲートウェイ機器に送信する。例えば処理部20は、図10Bのソーラーパネル42の発電の状態を検出することで、ソーラーパネル42の発電量情報を求める。また処理部20は、ソーラーパネル42の発電電力や二次電池46の蓄電電力の消費量を、電力消費量情報として求める。また処理部20は、発電量と電力消費量の比較により、電力収支情報を求める。そして通信部30が、これらの発電量情報、電力消費量情報、或いは電力収支情報を、疎結合の近距離無線通信によりゲートウェイ機器に送信する。
図11Bに示すように、監視処理により取得された監視情報は、ゲートウェイ機器GWからインターネットを介してサーバーSVに送信される。そしてサーバーSVは、監視情報に基づいて報知情報の生成処理等を行う。例えばサーバーSVは、監視情報に基づいて、報知情報である保守情報を生成するための処理を行う。或いは監視情報に基づいて、ウェアラブル機器WDの動作可能時間情報を求める処理を行う。
そして、これらの保守情報や動作可能時間情報が、サーバーSVからゲートウェイ機器GWに送信され、疎結合の近距離無線通信によりウェアラブル機器WDに送信される。そして、ウェアラブル機器WDにおいて、保守情報や動作可能時間情報の報知処理が行われる。
即ち処理部20は、報知情報として、ウェアラブル機器の保守に関する保守情報の報知処理を行う。具体的には処理部20は、保守情報として、ウェアラブル機器の保守サービスに関する告知情報の報知処理を行う。例えばウェアラブル機器が保守サービスを受ける必要があることを告知する告知情報の報知処理を行う。或いは処理部20は、報知情報として、ウェアラブル機器の動作可能時間を表す動作可能時間情報の報知処理を行う。この動作可能時間情報は、例えばユーザーが指定した時刻からの、ウェアラブル機器の動作可能な時間の情報を含むことができる。動作可能時間情報は、ウェアラブル機器の充電残量(電池残量)などに基づき求められるものである。例えば図10Bの二次電池46の充電残量やソーラーパネル42の発電量を監視情報として、サーバーSVに送信することで、ウェアラブル機器WDの動作可能時間情報を求めることができる。
図12A〜図12Cは報知処理の具体例を示す図である。図12Aでは、ウェアラブル機器の保守情報の報知処理が行われている。具体的には、ウェアラブル機器が特定の保守サービス(メインテナンス)を受ける必要があることが告知されている。保守情報は、ウェアラブル機器を適正な状態(正常な状態)に保つための情報である。例えばウェアラブル機器の動作状態等の監視情報に基づいて、ウェアラブル機器が適正な状態ではないと、サーバー等により判断された場合に、それを知らせる保守情報の報知処理が行われる。この保守情報の報知処理は、保守サービスを受ける必要があることを単に知らせる処理であってもよいし、受ける必要がある保守サービスを特定して知らせる処理であってもよい。
図12Bでは、ウェアラブル機器の動作可能時間情報の報知処理が行われている。例えばユーザーの使用環境での動作可能時間を報知する。例えばユーザーの平均的な使用環境(平均的な照度環境)での動作可能時間を報知してもよいし、最も悪い条件の使用環境(最も低いと想定される照度環境)での動作可能時間を報知してもよい。
図12Cでは、ユーザーの使用環境である外部磁界についての報知処理が行われている。例えばウェアラブル機器の外部磁界が、使用環境の監視情報として検出される場合に、この外部磁界についての情報を報知する。例えばウェアラブル機器であるウォッチの外部磁界の監視結果から、ユーザーが腕に頻繁に磁気ブレスレットを装着していると判断される場合には、磁気ブレスレットをはずしてウォッチを使用すべきことを、ユーザーに報知する。
なお図12A〜図12Cではウェアラブル機器の表示部などを用いた報知処理の例であるが、本実施形態の報知処理はこれに限定されない。例えば、スピーカー等の音出力部、LED等の発光部、振動モーター等の振動発生部、或いはウォッチの指針などを用いて、ユーザーへの報知処理を実現してもよい。或いは、報知情報の報知処理を、ユーザーが所持する情報通信端末(インターネットに接続される端末)を利用して行うようにしてもよい。例えば図12A〜図12Cの画面を情報通信端末の表示部に表示する。この場合にはウェアラブル機器の処理部20が行う報知処理は、情報通信端末に対して、表示部等を用いた報知処理を指示したり許可する処理などになる。また、例えば何らかの報知情報が存在することを、ウェアラブル機器のデバイス(例えばウォッチの針)を用いてユーザーに知らせ、その報知情報の内容を、サーバーが電子メール等を用いて、スマートフォン等の情報通信端末に送信するようにしてもよい。即ち、ウェアラブル機器においては第1の詳細度の報知処理を行い、情報通信端末では第1の詳細度よりも詳細度が高い第2の詳細度の報知処理を行う。
また処理部20は、ウェアラブル機器のデバイスの複数の監視項目についての監視処理を行い、複数の監視項目の各監視項目についての統計情報、及び各監視項目についての時系列のログ情報の少なくとも1つを取得する。そして通信部30は、統計情報及びログ情報の少なくとも1つを、疎結合の近距離無線通信によりゲートウェイ機器に送信する。
例えば図13Aではウェアラブル機器のデバイス(電力発現部、センサー部、モーター等)の監視項目として、複数の監視項目MT1、MT2、MT3・・・が設定されている。監視項目としては、例えばウォッチのモーターの動作状態についての監視項目や、温度、湿度、気圧、磁気(地磁気)、天候、ウェアラブル機器の位置、発電量、電力消費量、又は電力収支などの項目が挙げられる。そして図13Aでは、これらの監視項目MT1、MT2、MT3・・・の各々についての統計情報ST1、ST2、ST3・・・が取得されている。これらの統計情報ST1、ST2、ST3・・・が、疎結合の近距離無線通信によりゲートウェイ機器に送信される。そしてこれらの統計情報に基づく報知情報がサーバー等により生成されて、当該報知情報の報知処理が行われる。ここで統計情報は、例えば監視処理の監視結果についての累計データである。ウォッチを例にとれば、監視結果は、パルス段数、補助パルスの出力の有無、回転の有無、或いは外部磁界検出の有無などであり、統計情報は、これらの監視結果についての累計データである。なお統計情報は、監視結果についての平均データや分布データなどであってもよい。
また図13Bでは、複数の監視項目MT1、MT2、MT3・・・の各々についての時系列の監視結果データMQ11〜MQ14、MQ21〜MQ24、MQ31〜MQ34・・・が、時系列のログ情報として取得されている。例えば監視処理が実行された各時間に対して、複数の監視項目MT1、MT2、MT3・・・の各監視結果データMQ11〜MQ14、MQ21〜MQ24、MQ31〜MQ34・・・が対応づけられたログ情報が取得されている。このログ情報が、疎結合の近距離無線通信によりゲートウェイ機器に送信される。そしてこのログ情報に基づく報知情報がサーバー等により生成されて、当該報知情報の報知処理が行われる。
図13Aの統計情報を用いる手法には、疎結合の近距離無線通信の通信量を減らすことができるという利点がある。一方、図13Bのログ情報を用いる手法は、通信量は増えてしまうが、より詳細度が高い監視情報をサーバー等に送信できるという利点がある。
ユーザーは、これらの二種類の手法を、電力発現部の発電状態や蓄電された二次電池の充電残量に応じて、適宜使い分ける。例えば、充電残量が所定の値よりも少なくなった場合には、通信量が少ない手法に自動的に切り替えて、省電力化を図る。
5.ウォッチへの適用例
次に本実施形態の手法を、ウェアラブル機器の1つであるウォッチに適用した例について説明する。
例えばスマートフォンや携帯電話機では、その高い表示能力により、電池残量を詳細に表示できる。しかしながら、ウォッチでは、例えば、あと数時間で電池が切れてしまうことを秒針などで告知する手法もあるが、電池残量があと一週間持つのかといった簡単な情報さえも、ユーザーに報知できないのが現状である。
また、ウォッチが有するデバイスの動作状態やユーザーの使用環境を把握することも重要である。
例えばウォッチの運針機構などの機械機構においては、温度、経時変化、注油の状態、外部磁界などが要因となって、機械的な負荷が変動する。例えば低温になると負荷が重くなり、負荷が重くなると、輪列を駆動するモーターの駆動パルスの幅が長くなり、消費電流が上昇し、電池寿命も短くなる。また製品を何年も使用すると、経時劣化により負荷が重くなる。更に、油が劣化することで負荷が変動し、外部要因である外部磁界によっても負荷が重くなる。負荷が重くなることで、消費電流が増加し、電池寿命が短くなり、最悪の場合には、ウォッチは動作を停止してしまう。このため、機械機構の負荷を軽くする方策が必要になる。
またユーザーの使用環境を把握することも重要である。例えばウォッチが外部磁界にさらされている頻度が高いと、負荷が重い場合と同様の現象が生じる。
ユーザーの使用環境で知ることで、修理が必要なウォッチの状況把握も可能になる。例えば故障による修理持ち込みの場合、不良が再現しないというケースが多い。このようなケースを削減できることで、ユーザーが何度も製品を修理に持ち込むというような不便さを解消できる。また良品の範囲であるのに不良と思われてしまうナンセンスクレームについても、使用環境と設計指標のずれを知ることで、対処可能になる。例えばユーザーがウォッチと一緒に磁気ブレスレットを腕につけている使用環境の場合には、ウォッチだけを修理に持ち込まれても、状況を把握できない。このような状況の把握は、修理に持ち込まれたウォッチ内の残留磁化を測定することで判断するしかないが、ウォッチの使用中での外部磁化の状況を把握できれば、より適切な助言等が可能になる。
また現在は、製品の設計や評価を行う際に、ユーザーの使用シーンを想定して規格を作成し、様々な調整を行いながら、長い年月を費やして製品の品質を保証している。しかし、ユーザーの使用シーンの想定は、適正であるとは限らない。また製品の持込みによる不良品の対応の場合には、現品である不良品を修理するので、状況の把握が可能である。しかし、持ち込まれない不良品については、状況を知る手段がない。良品として扱われる製品についても、上記の規格の想定内での稼働品なのかを把握することは、現状ではできない。
そこで本実施形態では、ウォッチに対して双方向の無線通信システムを搭載し、スモールデータである監視結果データを蓄積する処理を行うためのファームウェアを組み込む。このスモールデータを、定期的に又は不定期に、メーカー等のサーバーにアップロードし、サーバーにおいてビックデータとして扱う仕組みを構築する。そのビックデータに基づいて、ユーザーの使用環境とメーカーの想定とのギャップを測り、正常、異常、或いは要確認項目なのかを判断する。そして異常であれば、保守点検又は早急な対応を行う。要確認項目であれば、確認のために実験などを行うことで対応する。こうすることで、より良い製品の開発に繋がる。
即ち本実施形態では、ウォッチの各種の状態(動作状態、環境の状態)についての情報をアップロード可能にすることで、ウォッチの保守・保全や、更には、その情報を活用することで、より良い製品の開発のための技術向上を実現できる。また使用環境の影響について情報収集することで、予防保全が図れる。例えばウォッチが外部磁界にさらされている頻度が高い場合には、負荷が重い場合と同様の現象が生じるため、このような外部磁界の情報も収集できることが望ましい。またウォッチがソーラーパネルのような電力発現部を有する場合には、発電量や電力消費量や電力収支について把握することで、電池切れの発生を適切に予測できる。
ウォッチの記憶部には、例えば1日〜数日分のデータ(スモールデータ)を蓄積すればよい。長期的なデータ(ビックデータ)については、サーバーの記憶部(クラウド)に保持する。例えば1ヶ月程度の頻度で、保持されたデータを解析し、フィードバックするようにシステムを運用する。
本実施形態のウェアラブル機器はインターネットへの常時接続が可能であるため、ウェアラブル機器の過去履歴のログを取得することができ、より正確な保守情報や電池残量情報などを、表示や音声通知などにより告知することが可能になる。
図14にウェアラブル機器である本実施形態のウォッチ(腕時計)の構成例を示す。また図15Aにウォッチが有するモーター72及び運針機構80の構成例を示し、図15Bにモーター駆動回路70の構成例を示す。なおウォッチ、モーター72、運針機構80、モーター駆動回路70の構成は図14、図15A、図15Bの構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素を追加したり、接続関係を変更するなどの種々の変形実施が可能である。
発振回路64は、振動子XTALを発振させて、例えば32KHzなどの基準信号を生成する。分周回路66はこの基準信号を分周して、例えば1Hzのクロック信号を処理部20に供給する。処理部20は、記憶部50に記憶されるファームウェア(プログラム)等に基づいて動作して、モーター駆動回路70を制御する。モーター駆動回路70は、処理部20の制御の下で、駆動パルス信号をモーター72(ステップモーター)に供給することで、運針機構80を動作させ、図15Aの秒針81、分針82、時針83を回転駆動する。針位置検出部88は秒針81、分針82、時針83の針位置を検出し、検出結果を処理部20に出力する。通信部30は、アンテナANWを用いて近距離無線通信の処理を行う。操作部61は、ウォッチのリューズ(竜頭)や操作ボタンの操作検出信号を処理部20に出力する。処理部20、通信部30、記憶部50、発振回路64、分周回路66、モーター駆動回路70は、ソーラーパネル42、充電制御部44、二次電池46により構成される電力発現部40からの発電電力に基づいて動作する。
図15Aに示すようにモーター72は、コイル73、ステーター74、ローター75を有する。モーター駆動回路70からの駆動パルス信号がコイル73に印加されることで、ステーター74が磁化し、ローター75の磁極との反発、吸引力により、ローター75が例えば180度、回転する。ローター75が回転することで、輪列84を構成する歯車が回転して、秒針81、分針82、時針83が回転駆動される。
図15Bに示すようにモーター駆動回路70は、P型のトランジスターTA1、TA2とN型のトランジスターTA3、TA4により構成されるブリッジ回路を有する。またモーター駆動回路70は、抵抗RA1、RA2とN型のトランジスターTA5、TA6と検出回路71とにより構成される磁気検出回路を有する。
第1の期間では駆動パルス信号DR1、DR4によりブリッジ回路のトランジスターTA1、TA4がオンになることで、コイル73にはノードN1からN2に向かう電流が流れる。第2の期間では駆動パルス信号DR2、DR3によりブリッジ回路のトランジスターTA2、TA3がオンになることで、コイル73にはノードN2からN1に向かう電流が流れる。コイル73に電流が流れることで、ローター75が回転する。そしてカレンダー送りなどが原因で負荷が重い場合には、ローター75が完全には回転せずに非回転になる。この場合に、抵抗RA1、RA2、トランジスターTA5、TA6、検出回路71により構成される磁気検出回路により、コイル73の残留磁気を検出することで、ローター75の回転、非回転を検出できる。具体的には、駆動パルスによる回転駆動の後に、コイル73の両端に誘起される電圧を、チョッパー増幅回路などにより構成される検出回路71により検出することで、回転、非回転を検出できる。なおモーター駆動回路70の詳細については前述した特許文献3に開示されている。
図16Aは駆動パルス信号の波形例を示す図である。図14の分周回路66からの1Hzのクロック信号により規定される1秒の各期間ごとに各駆動が行われる。図16Aでは正極性の駆動と負極性の駆動が交互に行われている。
例えば駆動パルスP1でローター75の回転駆動を行った後、SP2でローター75の回転、非回転を検出する。SP2は駆動パルスP1のサンプリング期間である。SP2では、例えば図15Bの磁気検出回路のトランジスターTA5、TA6が制御信号CT1、CT2(非回転検出パルス)によりオンになる。そして短いパルス幅の駆動パルスP1によっては、ローター75が非回転であったことがSP2において検出された場合には、図16Aに示すように長いパルス幅の補助パルスP2が印加される。こうすることで、カレンダー送りなどが原因で負荷が重い場合にも、ローター75を適正に回転させることが可能になる。
図16Bはモーター駆動のシーケンスの詳細例を示す図である。SP0、SP1では外部磁界が検出される。具体的にはSP0では、テレビなどを原因とする高周波磁界(スパイク状の電磁ノイズ等)が検出され、SP1では、電気毛布などを原因とする交流磁界(商用電源による磁界等)が検出される。この外部磁界の検出は、外部磁界によりコイル73の両端に誘起される電圧を、上述した磁気検出回路で検出することで実現される。また消去パルスPeは、長いパルス幅の補助パルスP2が印加された場合に、補助パルスP2により発生する残留磁気を打ち消すために印加されるパルスである。
ウォッチのモーター駆動では、低消費電力化のために、駆動パルスP1のパルス段数を適応的に制御する。パルス段数は駆動パルスP1のパルス幅やPWMの櫛歯パルスにおけるデューティーに相当する。例えばパルス段数が多いほど、パルス幅が長くなったり、デューティーが大きくなり、より大きな負荷に対抗してローター75を回転できるようになる。本実施形態では、このパルス段数(パルス幅、デューティー)を所定期間(例えば2分)ごとに更新する処理を行う。例えば駆動パルスP1のパルス段数が1〜16の範囲で設定可能であり、パルス段数が12に設定されていたとする。この場合に所定期間(2分)が経過したときに、駆動パルスP1のパルス段数を例えば1つだけ減らして11に設定する。そしてローター75が回転しなかった場合には、補助パルスP2を出力してローター75を回転させると共にパルス段数を12に戻す。一方、パルス段数が11でローター75が回転した場合には、パルス段数を更に1だけ減らして10に設定する。そして例えば所定期間の間は、そのパルス段数を維持する。パルス段数が少なくなることで、モーター駆動時間が短くなり、モーター駆動による電力消費を低減できる。例えばローター75の回転等に対する負荷は、温度、経時変化、注油の状態、外部磁界などが要因で変動するが、このようにパルス段数を適応的に制御すれば、変動する負荷に対して最適なパルス段数でモーター72を駆動できるようになり、低消費電力化を実現できる。
そして本実施形態では、このようなモーター72の駆動の監視処理を行って、各監視項目についての統計情報を取得している。図17はモーター駆動の監視処理に基づき統計情報を取得する処理のフローチャートである。
まず1秒経過したか否かを判断し、1秒経過した場合には、パルス発生のハード処理の開始指示を行う(ステップS1、S2)。例えば処理部20がモーター駆動回路70等によるハード処理の開始指示を行う。そしてハード処理が終了したか否かを判断する(ステップS3)。
ハード処理が終了した場合には、外部磁界が発生したかを否かを判断し、発生した場合には外部磁界発生カウンターの値を+1する(ステップS4、S5)。具体的には図16BのSP0、SP1で外部磁界の発生が検出された場合に、外部磁界発生カウンターの値を+1する。
次にローター75の非回転が検出されたか否かを判断し、検出された場合には非回転カウンターの値を+1する(ステップS6、S7)。具体的には図16A、図16BのSP2でローター75の非回転が検出された場合に、非回転カウンターの値を+1する。
次にパルス段数を判断し、対応するパルスカウンターの値を+1する(ステップS8〜S18)。例えばパルス段数が12であった場合には、12段目のパルスカウンターの値を+1する。またパルス段数が12から1だけ減って11になった場合には、11段目のパルスカウンターの値を+1する。
このように図17の処理を行うことで、外部磁界、非回転検出、パルス段数の各監視項目について、その統計情報が、外部磁界発生カウンターのカウント値、非回転カウンターのカウント値、各パルス段数に対応するパルスカウンターのカウント値として、生成されるようになる。例えばモーター駆動回路70等のハードウェア回路が、駆動パルス、補助パルス等の発生やパルス段数の制御を実行し、その結果がレジスターに保存される。そして、それをソフトウェア的に処理することで、図17で説明するように保守用の統計情報を生成できる。そして、このようにして蓄積された統計情報を、例えば所定の通信間隔ごとに、疎結合の近距離無線通信によりゲートウェイ機器を介してサーバーにアップロードする。そしてアップロード後に、カウンターをクリアして、次の通信タイミングまで、統計情報の蓄積を行うというような動作を繰り返す。
例えば外部磁界発生カウンターのカウント値に基づいて、外部磁界の発生の頻度を把握できる。非回転カウンターのカウント値に基づいて、補助パルスP2の発生頻度を把握できる。各パルス段数のパルスカウンターのカウント値に基づいて、パルス段数の度数分布などを得ることができる。これにより、運針機構80の負荷の状況を把握でき、例えば温度、経時変化、注油状態等により変動する負荷の状況を把握できるようになる。
例えば、常にパルス段数が高い場合や、補助パルスP2が連続し発生している場合には、磁気ブレスレット等による強い外部磁界が存在していると判断したり、注油状態が悪化していると判断できる。この場合には例えば図12Aに示すような報知処理を行って、保守サービスを受けることをユーザーに提案したり、図12Cに示すような助言等の報知処理を行う。またユーザーから依頼があれば、インターネット経由でウォッチの初期化やファームウェアのアップデートなどを実行する。
図18は監視処理に基づき取得されるログ情報の例である。図18のログ情報では、外部磁界、非回転検出、パルス段数、発電状態、充電状態、温度、湿度、気圧、磁気、GPS位置、加速度又は脈拍などの情報が、各時刻に関連づけて記録される。そしてこのログ情報が、疎結合の近距離無線通信によりゲートウェイ機器を介してサーバーにアップロードされる。
例えば発電状態や充電状態の監視項目に基づいて、ウォッチのソーラー発電と電力消費の電力収支が、想定した規定の範囲内であるか否かを判断できる。また、温度、湿度、気圧、磁気(方位)、加速度の監視項目に基づいて、ユーザーの使用環境を把握することが可能になる。例えば温度の監視項目により、ユーザーの環境での使用温度を確認でき、湿度の監視項目により、防水性能や結露の状態を確認できる。またGPS位置の監視項目に基づいて、ユーザーの位置の北緯東経がわかり、使用環境での気候(太陽光の照度等)の予測も可能になる。またウォッチが販売店や倉庫に置かれているかなどの在庫状況や、ユーザーの机の引き出しに入っている状況なのかなども把握できる。またウォッチにおける監視項目としては、これ以外にも、水晶の発振周波数のずれ量、電波時計における時刻受信成功率、自動針位置検出や針位置修正の実施頻度、磁気センサーによる内部磁化量の検出などの種々の項目を想定できる。
以上のように本実施形態によれば、ウォッチ等のウェアラブル機器の動作環境や使用環境についての監視情報を、疎結合の近距離無線通信によりサーバーにアップロードすることで、ウェアラブル機器の故障診断や劣化診断を行うことができる。そして、その結果データを報知処理によりユーザーにフィードバックしたり、修理会社にフィードバックすることで、事前に故障を予防したり、修理時にこれまでの経緯を的確に判断できるようになる。またこの結果データを、次の製品の開発時に、更に良い品質の製品にするための情報として用いることも可能になる。例えばモーターから輪列を含めた機械的、電気的な品質を向上したり、ソフトウェア処理の品質を向上させることが可能になる。
またウォッチ等のウェアラブル機器は、その使用状況によって、電池の消耗が大きく変化するため、単純に、電池交換からの時間だけでは、正確な電池切れのタイミングは把握できない。この点、本実施形態では、疎結合の近距離無線通信による常時接続により、ウェアラブル機器の使用状況を、保守管理サーバー(データベース)に蓄えておき、その情報を逐一に読み出すことで、電池切れを報知するなどの適切な保守処理を実現できる。
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語(存在報知パケット、コンピューター通信網、スキャン、電子機器、近距離無線通信等)と共に記載された用語(アドバタイジングパケット、インターネット、アクティブスキャン、ウェアラブル機器、疎結合の近距離無線通信等)は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また本実施形態及び変形例の全ての組み合わせも、本発明の範囲に含まれる。またウェアラブル機器、通信システム、制御システム、ゲートウェイ機器、サーバーの構成・動作等も、本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
更に、本発明はウェアラブル機器を用いることから、以下の利点がある。つまり、身に着けていて置き忘れることがない。ヴァイブレーション機能などによって、例えばシャワー中でも、必要な情報を身体で直接感知し、入浴中に身体的問題が発生したとしても、自動的に情報の要求や提供もできることにより、更に、安全で健康、快適な生活が得られる。また、ハンズフリーなので、自動車の運転時にユーザーの動作が制約されない。同時進行の他の作業を止めることなく無意識に使える。
また、本発明の通信においては、なりすまし対策を施したセキュア通信が必要であり、通信時には、ID番号や生体センシングによる個人認証を行うことが望ましい。