JP6767527B2 - ハイブリッド型電解コンデンサ用電解液 - Google Patents
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Description
このようなコンデンサとして、導電材料に電解液のみを用いたいわゆるアルミ電解コンデンサがあるが、さらに低ESRとなるように、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェンなどの導電性ポリマーの固体電解質を用いた固体電解コンデンサが適用されるようになってきている。
こうした要望に対し、電解質材料として、導電性ポリマーなどの固体電解質以外に誘電体である陽極酸化皮膜の欠陥部の修復作用に優れた電解液を合わせて用いる、いわゆるハイブリッド型電解コンデンサが提案されている(例えば、特許文献1、2)。
しかし、ポリエチレングリコールは分子量が高いと揮発しないが、固体状なので、ハイブリッド型コンデンサには適用が難しく、ポリエチレングリコールは低分子量のものに限られていた。そのため、これらの低分子量のポリエチレングリコールを含有する電解コンデンサが高温環境下にさらされるとこれらの揮発性成分が、封止体とケースの隙間や封止体とリード線の隙間から徐々に揮散していく。その結果、誘電体酸化皮膜の欠陥部の修復する電解液の作用を失うこととなり、漏れ電流が大きくなり、ショートを引き起こす。
すなわち、本発明は、3〜8価の多価アルコール(a)のアルキレンオキサイド(b)付加物(C)を含有することを特徴とするハイブリッド型電解コンデンサ用電解液(A)である。
さらに、本発明の電解液を用いた電解コンデンサは、多価アルコールのアルキレンオキサイド付加物であるので、分子量が高くても常温で液状であり、例えば、分子量3000以上でも常温で液状である。また、分子量が大きいほうが、漏れ電流を低減できることから、多価アルコールのアルキレンオキサイド付加物を用いる本発明は、通常のポリアルキレングリコールを用いる電解液と一線を画す。
付加させるアルキレンオキサイド(b)としては、エチレンオキサイド(以下、EOと略称することがある。)、プロピレンオキサイド(以下、POと略称することがある。)、ブチレンオキサイドなどが挙げられ、単独でも、2種以上を併用してもよい。
付加させるアルキレンオキサイドの種類は、電極へ浸透しやすいという観点から、エチレンオキサイド単独、あるいはエチレンオキサイドとそれ以外のアルキレンオキサイドとの併用が好ましい。
エチレンオキサイドとそれ以外のアルキレンオキサイドとの併用の場合は、ランダム状付加でもブロック状付加でもいいが、コンデンサの封止ゴムを侵さないという観点で、ランダム状が好ましい。
エチレンオキサイドをそれ以外のアルキレンオキサイドと併用する場合は、電極へ浸透しやすくするという観点から、アルキレンオキサイド全体の60〜95モル%がエチレンオキサイドであることが好ましく、さらに好ましくは、65〜90モル%である。
アルキレンオキサイド全体に対するエチオキサイドの含有量が60モル%未満や95モル%を超えるとESR(等価直列抵抗)の初期値が高くなる。またESRの変化率も大きくなる。
これらのうち、(a)としては、3価と4価と6価の多価アルコールが好ましく、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトールがより好ましく、グリセリンが最も好ましい。
一方、1価〜2価アルコールのアルキレンオキサイド付加物では、分子量が小さいと揮散し、分子量が大きいと固体となりコンデンサとして機能しなくなる。
本用途であるアルミ電解コンデンサ用途では、金属イオンはコンデンサのショートの原因となるため、カリウムまたは、ナトリウムを吸着処理等で、好ましくは20ppm以下さらに好ましくは、1ppm以下にする必要がある。
電解質(D)は、カチオン成分(D1)とアニオン成分(D2)とで構成され、カチオン成分(D1)としては、アンモニア、トリエチルアミン、ジメチルエチルアミン、ジエチルメチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、1−メチルイミダゾール、1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリニウム、1−エチル−3−メチルイミダゾリニウムなどが挙げられ、トリエチルアミンが好ましい。
一方、アニオン成分(D2)としてはアジピン酸、アゼライン酸、1,6−デカンジカルボン酸、フタル酸、マレイン酸、安息香酸、リン酸およびその誘導体、ホウ酸およびその誘導体などが挙げられ、フタル酸か好ましい。
また(D1)と(D2)の比は、導電性ポリマーに取り込まれているドーパントを脱ドープさせないという観点から、(D1)/(D2)が0.3〜1.0が好ましく、0.5〜1.0がさらに好ましい。
この目的で使用される有機溶剤(E)としては、エチレングリコール、γ−ブチロラクトン、スルホランなどが挙げられ、エチレングリコールが最も好ましい。
添加剤としては、ニトロ化合物(例えば、o−ニトロ安息香酸、p−ニトロ安息香酸、m−ニトロ安息香酸、o−ニトロフェノール、p−ニトロフェノールなど)、ホウ酸、ポバールなどを挙げることができる。その添加量は、電解液への溶解度の観点から、電解液の重量に基づいて、好ましくは5重量%以下、特に好ましくは0.1〜2重量%がよい。
この導電性ポリマーはドーパントが組み込まれており、ドーパントは導電性を発現する役割を担っている。代表的な、ドーパントはp−トルエンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸などの酸である。
外装体は、筒状のケースと、封口体とで構成されており、このケースには電解液を含浸したコンデンサ素子を収納し、封口体にはリード線をそれぞれ挿通させる貫通孔に通し、ケースの外周面に設けた絞り加工部で圧縮することによって封止する。
陽極箔はアルミニウム箔をエッジング処理により、粗面化し、さらにその表面に誘電体である陽極酸化皮膜を化成処理によって形成される。
コンデンサ素子は陽極箔以外にさらに、陰極箔とセパレータも有するが、陽極箔と陰極箔とセパレータを積層して巻回することでコンデンサ素子が構成される。そして、陽極箔と陰極箔との間に導電性ポリマーからなる固体電解質の層を作成する。作成方法としては、導電性ポリマー溶液に含浸させ、その後乾燥させる方法や、導電性高分子を電解重合させるなどの方法がある。
以上のように形成されたコンデンサ素子内に形成された固体電解質の隙間に電解液が入り込み、ハイブリッド型コンデンサが作成される。
ソルビトール182重量部(1mol)に水酸化カリウム1.1重量部(0.02mol)添加し、170℃でEO1,056重量部(24mol)を反応させ、圧平衡に達したところで終点とした。
その後、カリウム除去のためにキヨーワード600、およびキヨーワード700(協和化学工業株式会社製)を用いて吸着処理を行い、カリウム含量1ppm以下であることも確認した。
プロトン核磁気共鳴装置(H−NMR)チャートでソルビトールのエチレンオキサイド24モル付加物(C−1)が得たことを確認した。水酸基価換算による数平均分子量(Mn)は1,240であった。
製造例1において、ソルビトール182重量部(1mol)をグリセリン92重量部(1mol)に、EO1,056重量部(24mol)をEO484重量部(11mol)とPO290重量部(5mol)の混合物とした以外とした以外は製造例1と同様にしてグリセリンのEO11モルとPO5モルとのランダム付加物を得た。Mnは960であった。
製造例1において、ソルビトール182重量部(1mol)をグリセリン92重量部(1mol)に、EO1,056重量部(24mol)をEO2200重量部(50mol)とPO165重量部(3mol)の混合物とした以外は製造例1と同様にしてグリセリンのEO50モルとPO3モルとのランダム付加物を得た。Mnは2,300であった。
製造例1において、ソルビトール182重量部(1mol)をペンタエリスリトール136重量部(1mol)に、EO1,056重量部(24mol)をEO2420重量部(55mol)とPO2320重量部(40mol)の混合物とした以外とした以外は製造例1と同様にしてペンタエリスリトールのEO55モルとEO40モルとのランダム付加物を得た。Mnは2,560であった。
グリセリン92重量部(1mol)に水酸化カリウム1.1重量部(0.02mol)添加し、170℃でEO528重量部(12mol)を圧平衡に達するまで反応させた。その後、あらかじめ、EO1936重量部(44mol)とPO812重量部(14mol)をボンベ中で均一にした液を反応させ、圧平衡に達したところで終点とした。その後、水酸化カリウム除去のために吸着剤としてキヨーワード600、キヨワード700(協和化学工業株式会社製)を用いて水酸化カリウムを1ppm以下にした。
一段目の反応が終わった時点でのサンプリング物のH−NMRチャートと最終製造品のH−NMRチャートで、グリセリンのEO12モル付加物へのEO44モルとPO14モルとのランダム付加物を得たことを確認した。Mnは3,370であった。
製造例1において、エチレンオキサイド1,056重量部(24mol)をEO3520重量部(80mol)とPO580重量部(10mol)の混合物とした以外とした以外は製造例1と同様にしてソルビトールのEO80モルとPO10モルとのランダム付加物を得た。Mnは4,280であった。
エチレングリコール62重量部(1mol)に水酸化カリウム1.1重量部(0.02mol)添加し、170℃でEO1,188重量部(27mol)を反応させ、圧平衡に達したところで終点とした。その後、カリウム除去のためにキヨーワード600、およびキヨーワード700(協和化学工業株式会社製)を用いて吸着処理を行い、カリウム含量1ppm以下であることも確認した。数平均分子量が1,200のポリエチレングリコール(C’−1)を得たことを確認した。
比較製造例1において、EO1,188重量部を176重量部(4mol)とした以外は比較製造例1と同様にして数平均分子量が200のポリエチレングリコール(C’−2)を得た。
(1)酸化アルミニウム皮膜の誘電体層を表面に有する陽極箔と陰極箔とセパレータとを一定の幅と長さに切断する。そしてリード線を陽極、陰極にカシメによって接続する。
その後、ロール状に巻き取って円筒型にする。さらにその外周側面を絶縁テープで固定しコンデンサ素子を完成させる。次に封止ゴムとリード線を通し装着させる。
PEDOTを水溶液に分散させた分散液に作成したコンデンサ素子を含浸した後、そのコンデンサ素子を120℃の恒温槽内で1時間乾燥させる。なお、ドーパントとしてはポリスチレンスルホン酸を適用している。
その後、上記の電解液(A)をコンデンサ素子に含浸させ、ケースに格納しカシメを行い、コンデンサを完成させた。
なお、比較例の(A’−1)は 常温で固体のため、コンデンサ素子に含浸させることはできなかった。
なお、実施例、比較例すべてにおいて、固体電解質層は、PEDOT(B−1)を用いた。
<初期評価>
初期評価として、静電容量、ESR、漏れ電流値を計測した。
静電容量は120Hz、ESR値は100kHzで測定し、漏れ電流は定格電圧1分間印加後の値を計測している。
揮発性を加速して評価できるように、ケースに格納せずにコンデンサ素子を開放した状態で125℃、200時間、恒温槽に放置した後に初期評価と同様の評価を行った。
一方、比較例1は、電解液に含まれる(C’−1)の分子量が大きいために、電解液が固体であり、コンデンサ素子に電解液を含浸できないため、ハイブリッド型コンデンサとして組み立てることができない。
また、比較例2では電解液に含まれる(C’−2)の分子量が低いため、初期特性では、漏れ電流が大きくなり、加速試験では(C’−2)が揮散してしまい、容量変化率、ESR変化率、漏れ電流とすべての項目で悪化した。
さらに、家電、車載などの長寿命・信頼性が求められる用途に好適である。
Claims (4)
- グリセリンのアルキレンオキサイド(b)の付加物(C)を含有することを特徴とするハイブリッド型電解コンデンサ用電解液(A)であって、前記アルキレンオキサイド付加物(C)のアルキレンオキサイド(b)がエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドであり、前記アルキレンオキサイド付加物(C)の水酸基価換算による数平均分子量が960〜4,000であるハイブリッド型電解コンデンサ用電解液。
- 前記アルキレンオキサイド付加物(C)のアルキレンオキサイド(b)の60〜95モル%以上がエチレンオキサイドである請求項1記載の電解コンデンサ用電解液。
- アルキレンオキサイド付加物(C)の水酸基価換算による数平均分子量が1,000〜4,000である請求項1又は2記載の電解コンデンサ用電解液。
- 表面に誘電体層を有する陽極箔と、この陽極箔の誘電体層に接触した固体電解質(B)の層とを有するコンデンサ素子から形成される電解コンデンサであって、前記コンデンサ素子に含浸された電解液(A)が、グリセリンのアルキレンオキサイド(b)付加物(C)を含有することを特徴とするハイブリッド型電解コンデンサであって、前記アルキレンオキサイド付加物(C)のアルキレンオキサイド(b)がエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドであり、前記アルキレンオキサイド付加物(C)の水酸基価換算による数平均分子量が960〜4,000であるハイブリッド型電解コンデンサ。
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