以下、本発明の一態様に係る赤外線検出装置等について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本発明の一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
(実施の形態1)
[赤外線検出装置の構成]
以下、実施の形態1における赤外線検出装置について、図面を参照しながら説明する。
図1は、実施の形態1における赤外線検出装置の構成の一例を示す図である。図2は、本実施の形態における赤外線検出装置が筐体に搭載された場合の物理的構成の概観図である。図3は、本実施の形態における赤外線検出装置が搭載された筐体が設置された様子を示す図である。図4は、本実施の形態における赤外線検出装置の物理的構成を示す図である。
赤外線検出装置1は、図3に示すように空間4の底面42と略垂直な設置面41であって底面42から所定高さの設置面41に設置されている筐体2に取り付けられ、検出対象範囲の熱画像を取得する。ここで、熱画像は、温度検出対象範囲の温度の分布を表す複数の画素から構成される画像である。また、所定高さとは、例えば人や熱源などの温度検出対象(計測対象)よりも高い高さであり、例えば1800mm以上の高さである。筐体2は、例えばエアコンなど空調機器である。筐体2は、赤外線検出装置1が取得した熱画像により、人の位置、熱源の位置、温冷感など部屋の状態を分析し、分析した部屋の状態に基づいて、風向、風量、温度、湿度のいずれかを制御する。空間4は、例えば部屋であり、底面42は例えば部屋の床の表面であり、設置面41は例えば部屋の壁の表面などである。
赤外線検出装置1は、図1に示すように、赤外線検出部10と、走査部11と、制御処理部12とを備える。
走査部11は、走査回転軸S1を有し、赤外線センサ102を当該走査回転軸S1で回転させることにより赤外線センサ102に空間4を走査させる。走査回転軸S1は、設置面41と略平行である。本実施の形態では、走査部11は、図2〜図4に示すように、モータ111と、設置台112とを備える。
モータ111は、制御処理部12に制御され、設置台112を走査回転軸S1で回転させることで、赤外線センサ102を走査回転軸S1で回転させる。ここで、モータ111は、例えばステッピングモータやサーボモータなどである。
設置台112は、後述するセンサモジュール101が設置される。設置台112は、走査回転軸S1に対して、傾きを有するように、配置されている。ここで、例えば、傾きは、30度程度であるとしてもよい。
赤外線検出部10は、走査部11により走査回転軸S1で回転されることにより空間4の温度検出対象範囲を走査する。本実施の形態では、赤外線検出部10は、図2〜図4に示すように、赤外線センサ102が搭載されたセンサモジュール101と、カバー103とを備える。
センサモジュール101は、赤外線センサ102と、レンズ(不図示)とを搭載し、配線104で筐体2と電気的に接続する。また、センサモジュール101は、走査部11の設置台112に設置される。
レンズ(不図示)は、赤外線の透過率が高いシリコンやZnSなどで構成されている。レンズは、各方向から当該レンズに入射した赤外線(赤外光)が、赤外線センサ102を構成する1以上の赤外線検出素子それぞれに入射するように設計されている。
赤外線センサ102は、図4に示すように走査回転軸S1で回転されることにより、空間4の温度検出対象範囲を走査し、走査した温度検出対象範囲の熱画像(赤外線)を、制御処理部12に出力する。具体的には、赤外線センサ102は、1以上の赤外線検出素子が1以上の列で配列された赤外線センサ102で構成され、当該1以上の赤外線検出素子により走査された空間4の温度検出対象範囲の赤外線を検出する。
当該1以上の赤外線検出素子の配列面は、設置面41に対して、傾きを有するように、配置されている。換言すると、当該配列面は、走査回転軸S1と傾きを有するように配置されている。また、当該配列面の中心(レンズ中心)には、赤外線センサ102が走査回転軸S1で回転される際の回転中心であって走査回転軸S1が通る回転中心を有する。さらに、当該配列面は、走査回転軸S1と交差している。これにより、例えば図3に示すように、赤外線センサ102の視野中心軸C1が、設置面41の垂直方向より底面42に向いている、すなわち下向きになる。
ここで、比較例について説明する。
図5Aは、比較例における赤外線検出装置が筐体に搭載された場合の物理的構成の概観図である。図5Bは、図5Aに示す比較例における赤外線検出装置の死角領域を説明するための図である。なお、図3と同様の要素には同一の符号を付しており、詳細な説明は省略する。
図5Aおよび図5Bに示す比較例における赤外線検出装置は、本実施の形態における赤外線検出装置1と比較して、設置台512と、設置台512に設置されるセンサモジュール501と、センサモジュール501に搭載される赤外線センサ502との配置が異なり、走査回転軸S1に沿って(平行に)配置されている。なお、比較例のおける設置台512、センサモジュール501および赤外線センサ502の構成は、上記の配置を除き、本実施の形態の設置台112、センサモジュール101および赤外線センサ102と同じであるので詳細な説明は省略する。
赤外線センサ502の視野中心軸C2は、図5Bに示すように設置面41の垂直方向と平行(底面42と平行)である。また、図5Aおよび図5Bに示すように、赤外線センサ502の配列面には、走査回転軸S1が通っており、赤外線センサ502は、当該配列面に通る走査回転軸S1で回転される。そのため、赤外線センサ502の有効視野角(画角)における底面42に最も近い最下端の主光線である最下端主光線V3よりも下方の領域A1は、死角すなわち検出対象範囲外となってしまう。
一方、本実施の形態の赤外線センサ102では、図3および図4に示すように、走査回転軸S1に対して傾いて配置され、走査回転軸S1が赤外線センサ102の中心を通り、かつ走査回転軸S1と赤外線センサ102とは交差している。そのため、赤外線センサ102の視野中心軸C1は、下向きに傾いている。すなわち、赤外線センサ102の視野中心軸C1は、赤外線センサ502の視野中心軸C2より下向きに傾いている。そのため、赤外線センサ102は、視野中心軸C1を底面42に対して同角度に維持したまま走査回転軸S1で回転されることになる。
これにより、赤外線センサ102が設置されている位置近くの下方領域が有効視野角(画角)に含まれるようになる。換言すると、赤外線センサ102の有効視野角(画角)における底面42に最も近い最下端の主光線である最下端主光線V2よりも下方の死角となる領域は、比較例の赤外線センサ502と比べると小さくなる。このようにして、本実施の形態の赤外線センサ102は、下方領域の検出対象範囲を広げることができる。
カバー103は、赤外線センサ102(レンズ)を覆っており、ポリエチレン、シリコンなどの赤外透過素材で構成されている。
制御処理部12は、走査部11を制御し、赤外線検出部10が取得した熱画像(入力画像)を処理し、筐体2に含まれる演算装置に出力する。なお、制御処理部12は、筐体2の演算装置に含まれるとしてもよい。
ここで、制御処理部12は、赤外線検出部10が取得した熱画像の歪補正を行った後に、歪補正を行った熱画像に基づいて温度検出対象範囲内にいる人の位置や、ユーザの手や顔の温度、壁の温度など熱源の位置や温度を示す熱画像データを取得する処理を行う。赤外線センサ102は、走査回転軸S1で回転されるとき、赤外線センサ102の底面42からみた上端と下端の回転速度(回転ピッチ)が異なるため、赤外線センサ102により出力された熱画像には歪が生じているからである。
なお、制御処理部12は、赤外線検出部10が取得した熱画像(入力画像)に超解像処理を施し、熱画像(入力画像)を再構成することで高精細な熱画像(出力画像)を生成するとしてもよい。この場合、制御処理部12は、生成した高精細な熱画像すなわち超解像処理後の熱画像を出力することができる。ここで、超解像処理は、入力画像に存在しない高い解像度の情報(出力画像)を生成できる高解像度化処理の一つである。超解像処理には、複数枚の画像から1枚の高解像度画像を得る処理方法や、学習データを用いた処理方法がある。本実施の形態では、赤外線検出部10が走査部11により走査されることにより、温度検出対象範囲の熱画像であってサブピクセル単位の位置ずれの熱画像すなわち異なるサンプル点の熱画像データを取得することができる。
[実施の形態1の効果等]
以上のように、本実施の形態の赤外線検出装置は、走査回転軸S1に対して視野中心軸を傾けた赤外線センサを備える。これにより、本実施の形態の赤外線検出装置が設置された位置近くの下方領域の検出対象範囲を広げることができる。
(実施の形態2)
実施の形態1では、赤外線センサ102により出力された熱画像の歪を、制御処理部12で歪補正処理をするとして説明したが、それに限らない。赤外線センサ102を構成する1以上の赤外線検出素子を走査回転軸S1に対する傾きを考慮して形成することにより制御処理部12において歪補正処理を行う必要がなくなる。以下、この場合について、説明する。
図6は、実施の形態1における赤外線センサにより走査された熱画像に歪が生じることを説明するための図である。
赤外線センサ102は、走査回転軸S1で回転されるとき、赤外線センサ102の底面42からみた上端と下端の回転速度(回転ピッチ)が異なる。例えば赤外線センサ102が行列状の複数の赤外線検出素子で構成されており、当該複数の赤外線検出素子の大きさが等しいとする。この場合には、上端の行にある複数の赤外線検出素子の回転速度は、下端の行にある複数の赤外線検出素子の回転速度よりも速いため、上端(図6でD1)の方が下端(図6でD2)よりも走査密度(解像度)が低くなる。つまり、上端(図6でD1)の方が下端(図6でD2)より1つの赤外線検出素子がカバーする走査領域が広くなる。なお、この場合、制御処理部12では、上端と下端との間の赤外線検出素子の走査密度(解像度)の違いを補正(歪補正)することで、取得する熱画像の解像度を均一にする。
本実施の形態では、制御処理部12が歪補正を不必要にするべく赤外線センサを構成する複数の赤外線検出素子(画素)の横幅を変更する。以下、具体的に説明する。
[赤外線センサの構成]
図7は、実施の形態2における赤外線センサの構成の一例を示す図である。
本実施の形態の赤外線センサ202は、複数の赤外線検出素子が1以上の列で配列され、列それぞれにおける複数の赤外線検出素子のそれぞれの底面42と略平行の横辺の幅は、底面42に近いほど、狭くなるように形成される。図7では、複数の赤外線検出素子が1列に配列されており、複数の赤外線検出素子のそれぞれの底面42と略平行の横辺の幅は、底面42に近いほど、狭くなるように形成されている赤外線センサ202の一例が示されている。
ここで、隣接する赤外線検出素子の横辺の幅の関係について説明する。
図8A〜図8Dは、実施の形態2における隣接する赤外線検出素子の横辺の幅の関係について説明するための図である。図2および図3と同様の要素には同一の符号を付しており、詳細な説明は省略する。図8Aには、赤外線センサ202のFOV(Field of View)すなわち有効視野角(画角)が概念的に示されている。図8Bには、赤外線センサ202を構成するn個の赤外線検出素子が1列に配列された例が概念的に示されている。
図8Cに示すように、赤外線センサ202が搭載されたセンサモジュール101は走査回転軸S1とθzの角度(頂角)を有して傾いているとしている。また、図8Cに示される赤外線検出素子x0は、図8Bに示すn個の赤外線検出素子のうちの例えば下端にある赤外線検出素子を示している。赤外線検出素子x0の有効視野角(画角)における底面42に最も近い最下端の主光線と走査回転軸S1とのなす頂角を角度θx0と示している。この場合、角度θx0=90−FOV/2−θz−(FOV/2n)の関係が成立する。
同様に、n個の赤外線検出素子のうちの例えば下端にある赤外線検出素子x0に隣接する(次の)赤外線検出素子x1の有効視野角(画角)における底面42に最も近い最下端の主光線と走査回転軸S1との角度θx1は次の関係が成立する。すなわち、角度θx0=90−FOV/2−θz−(FOV/2n)+1*(FOV/n)の関係が成立する。
同様に、赤外線検出素子x1に隣接する(次の)赤外線検出素子x2の有効視野角(画角)における底面42に最も近い最下端の主光線と走査回転軸S1との角度θx2は、90−FOV/2−θz−(FOV/2n)+2*(FOV/n)と表せる。また、赤外線検出素子x0からm番目の赤外線検出素子xmの有効視野角(画角)における底面42に最も近い最下端の主光線と走査回転軸S1との角度θxmは、90−FOV/2−θz−(FOV/2n)+m*(FOV/n)と表せる。
さらに、図8Dには、隣接する赤外線検出素子が概念的に示されている。n個の赤外線検出素子のうちの下端にある赤外線検出素子からm番目の赤外線検出素子xmの横幅をLm、赤外線検出素子xmに底面42から離れる側に隣接する赤外線検出素子xm+1の幅をLm+1とすると、以下の式1の関係が成立する。
Lm+1/Lm+2=sin(θm)/sin(θm+1) (式1)
これを一般化すると、列それぞれにおける複数の赤外線検出素子のうちの一の赤外線検出素子の横辺の幅をLxとし、当該一の赤外線検出素子と底面42側に隣接する赤外線検出素子の横辺の幅をLyとし、当該一の赤外線検出素子の画角における底面42に最も近い最下端の主光線と走査回転軸S1とのなす角をθxとし、隣接する赤外線検出素子の画角における走査回転軸S1とのなす角をθyとするとき、Lx/Ly=sin(θx)/sin(θy)の関係を満たす。
このような関係を満たす赤外線センサ202を構成する複数の赤外線検出素子を形成することにより、各行の複数の赤外線検出素子で回転速度の違いがあっても上端から下端までの走査密度(解像度)を一定にすることができる。
それにより、実施の形態1で説明したような制御処理部12での歪補正が不要となる。つまり、制御処理部12において歪補正をしなくてよいので、メモリ使用量および演算負荷がなくなるという効果を奏する。
なお、赤外線センサ202を構成する複数の赤外線検出素子は、図7に示す場合に限らない。図9に示すような場合でもよい。ここで、図9は、実施の形態2における赤外線センサの構成の別の一例を示す図である。
図9に示す赤外線センサ202bでは、複数の赤外線検出素子が複数の列で配列されており、各列における複数の赤外線検出素子のそれぞれの底面42と略平行の横辺の幅は、底面42に近いほど、狭くなるように形成されている。より具体的には、図9に示す赤外線センサ202bは、複数の赤外線検出素子が3以上の列で配列されており、当該列それぞれにおける複数の赤外線検出素子のそれぞれの底面42と略平行の横辺の幅は、底面42に近いほど、狭くなり、当該3つ以上の列の隣接する列において、対応する位置の赤外線検出素子の中心位置の距離は一定である。なお、各列における隣接する赤外線検出素子の横辺の幅の関係については上述した通りであるので説明を省略する。
[実施の形態2の効果等]
以上のように、本実施の形態の赤外線検出装置は、走査回転軸S1に対して視野中心軸を傾けた赤外線センサ202を備える。これにより、赤外線検出装置が設置された位置近くの下方領域の検出対象範囲を広げることができる。
また、本実施の形態の赤外線検出装置では、列における複数の赤外線検出素子のそれぞれの横辺の幅が底面42に近いほど狭く形成した赤外線センサ202を有する。これにより、走査回転軸S1に対して視野中心軸を傾けた赤外線センサ202において各行の複数の赤外線検出素子で回転速度の違いがあっても上端から下端までの走査密度(解像度)を一定にすることができるので、熱画像の歪補正が不用になるという効果を奏する。
なお、本実施の形態における赤外線センサを構成する複数の赤外線検出素子は、図7および図9に示す場合に限らないので、以下に変形例として説明する。
(変形例1)
図10は、実施の形態2の変形例1における赤外線センサの構成の一例を示す図である。
図9に示す赤外線センサ202bでは、隣接する列の間隔すなわち隣接する列の対応する赤外線検出素子の中心および間は一定である場合について説明したが、それに限らない。図10の赤外線センサ202cに示すように、隣接する列の対応する赤外線検出素子の中心および間が底面42に近いほど狭く形成されているとしてもよい。すなわち、図10に示す赤外線センサ202cは、複数の赤外線検出素子が3以上の列で配列されており、当該配列それぞれにおける複数の赤外線検出素子のそれぞれの底面42と略平行の横辺の幅は、底面42に近いほど、狭くなり、当該3以上の列それぞれにおける複数の赤外線検出素子のそれぞれの位置は、底面42に近づく程ほど、当該3以上の列の、列方向の中心となる位置に近づいているとしてもよい。なお、各列における隣接する赤外線検出素子の横辺の幅の関係は図7で説明した通りであるので、説明を省略する。
これにより、図10の赤外線センサ202cは、図9に示す赤外線センサ202bと比較して、隣接する列の間隔(隣接する列の対応する赤外線検出素子の間)を小さくできるので、走査密度を大きくすることができる。つまり、図10の赤外線センサ202cは、図9に示す赤外線センサ202bと比較して、より高感度に走査することができるという効果を奏する。
(変形例2)
図11Aは、実施の形態2の変形例2における赤外線センサの構成の一例を示す図である。図11Bは、実施の形態2の変形例2における赤外線センサの構成の別の一例を示す図である。
図9に示す赤外線センサ202bでは、赤外線センサ202bを構成する複数の赤外線検出素子それぞれが長方形である場合について説明したが、それに限らない。すなわち、図11Aに示すように、赤外線センサ202dでは、構成する複数の赤外線検出素子は、平行四辺形であってもよい。また、図11Aに示すように、赤外線センサ202dでは、隣接する列の対応する赤外線検出素子の間は一定であるが、隣接する列の対応する赤外線検出素子の中心の間は底面42に近いほど狭く形成されているとしてもよい。
これにより、図11Aの赤外線センサ202dは、図10に示す赤外線センサ202cと比較して、隣接する列の間隔(隣接する列の対応する赤外線検出素子の間)を小さくできるので、走査密度を大きくすることができる。つまり、図11Aの赤外線センサ202dは、図10に示す赤外線センサ202cと比較して、より高感度に走査することができるという効果を奏する。
なお、図11Bに示すように、赤外線センサ202eでは、図11Aに示す赤外線センサ202dを構成する複数の赤外線検出素子のうち回転方向の両端(図で左右端)を無効にするとしてもよい。これにより、赤外線センサに赤外線を集光するために用いられるレンズのコマ収差や球面収差の影響を抑制することができる。ここで、球面収差は、レンズの表面が球面であることが原因で起こる収差、すなわちレンズの表面が球面であるためにレンズの中心部分と周辺部分で光の進み方が違うことに起因する収差である。コマ収差は、光軸から離れたところで、点像が尾をひく現象すなわち光軸から離れた1点から出た光が、像面で1点に集まらずに、尾が引いた彗星のような像になり、点像が伸びる現象のことをいう。
(変形例3)
図12Aは、実施の形態2の変形例3における赤外線センサの構成の一例を示す図である。図12Bは、実施の形態2の変形例3における赤外線センサの構成の別の一例を示す図である。
図11Aに示す赤外線センサ202dでは、各列における複数の赤外線検出素子は走査回転軸S1と略平行に形成されており、各行における複数の赤外線検出素子は走査回転軸S1と略垂直に形成されているとして説明したが、それに限らない。
図12Aに示すように、赤外線センサ202fを構成する行列状に配置された複数の赤外線検出素子は、走査回転軸S1に対して所定角度で傾いているとしてもよい。ここで、所定角度は、赤外線センサ202を構成する複数の赤外線検出素子それぞれの中心位置のすべてが、走査回転軸S1と垂直な方向からみて異なる位置となるように調整された角度である。
これにより、赤外線センサ202fが走査回転軸S1で回転されたときには、走査回転軸S1に垂直な方向の赤外線検出素子の数は、走査回転軸S1に対して所定角度を有さない場合と比較して増加することになる。つまり、走査回転軸S1に対して所定角度の傾いた赤外線センサ202fでは、走査回転軸S1に垂直な方向の画素数を、実質的に増加させることができる。これにより、走査回転軸S1に垂直な方向の解像度を向上させることができる。
なお、赤外線センサ202fにおいて、図11Bに示す赤外線センサ202eと同様に、赤外線センサ202fを構成する複数の赤外線検出素子のうち回転方向の両端(図で左右端)を無効にするとしてもよい。これにより、赤外線センサに赤外線を集光するために用いられるレンズのコマ収差や球面収差の影響を抑制することができる。
また、さらに、図12Bの赤外線センサ202gに示すように、無効にした左右端にある列の赤外線検出素子の一部(回転方向の先頭では下端を、末尾では上端)を有効にするとしてもよい。当該一部はレンズ歪の影響も軽減できる位置にあるからである。当該一部(回転方向の先頭では下端を、末尾では上端)を有効にすることで、両端にある列を全部無効にする場合に比べて走査回転軸S1に垂直な方向(縦軸)の赤外線検出素子の数を増やして走査回転軸S1に垂直な方向の熱画像の画素数を向上させることができる。
(変形例4)
図13は、実施の形態2の変形例4における赤外線センサ202hの構成の一例を示す図である。
図7に示す赤外線センサ202では、構成する複数の赤外線検出素子の形が長方形である場合について説明したが、それに限らない。図13に示す赤外線センサ202hのように、構成する複数の赤外線検出素子を台形で形成するとしてもよい。ここで、赤外線センサ202hの複数の赤外線検出素子それぞれの縦辺の幅は一定である。
なお、赤外線センサ202hを構成する列における赤外線検出素子の横辺の幅の関係は図7に示す通りであるので、説明を省略する。
(変形例5)
図14は、実施の形態2の変形例5における赤外線センサの構成の一例を示す図である。図15は、実施の形態2の変形例5における赤外線センサの構成の別の一例を示す図である。図16は、実施の形態2の変形例5における赤外線センサを構成する複数の赤外線検出素子の大きさの一例を示す図である。
図9に示す赤外線センサ202bでは、隣接する列の間隔すなわち隣接する列の対応する赤外線検出素子の中心および間は一定であり、かつ、隣接する列の対応する赤外線検出素子の位置は同じである場合について説明したが、それに限らない。さらに図14に示す赤外線センサ202iのように、各列において隣接する列の対応する赤外線検出素子の位置がずれているとしてもよい。
図14では、1列目の上端の赤外線検出素子g11と2列目の上端の赤外線検出素子g21とは1/4画素ずれており、2列目の上端の赤外線検出素子g21と3列目の上端の赤外線検出素子g31とは1/4画素ずれており、3列目の上端の赤外線検出素子g31と4列目の上端の赤外線検出素子g41とは1/4画素ずれている場合の例が示されている。同様に、上端以外の行における隣接する列の対応する赤外線検出素子の位置は1/4画素ずれている。
換言すると、図14に示す赤外線センサ202iは、3以上の列の底面42からみて最初となる赤外線検出素子の位置は、順に底面42に近づくようにずれている。ここで、最初となる赤外線検出素子の位置は、隣接する当該列の最初となる赤外線検出素子の底面42と略垂直の縦辺の幅の1/4だけ当該隣接する列の最初となる赤外線検出素子からずれているとしてもよい。各列における隣接する赤外線検出素子の横辺の幅の関係は図7で説明した通りであるので、説明を省略する。
これにより、赤外線センサ202iが走査回転軸S1で回転されたときには、走査回転軸S1に垂直な方向の赤外線検出素子の数は、図9に示す赤外線センサ202bと比較して増加することになる。つまり、赤外線センサ202iでは、走査回転軸S1に垂直な方向の画素数を、実質的に増加させることができる。これにより、走査回転軸S1に垂直な方向の解像度を向上させることができる。
なお、図14に示す赤外線センサ202iでは、隣接する列の間隔すなわち隣接する列の対応する赤外線検出素子の中心および間は一定である場合について説明したが、それに限らない。さらに図15に示す赤外線センサ202jのように、各列において隣接する列の対応する赤外線検出素子の中心の間は底面42に近いほど狭く形成されているとしてもよい。
また、図16には、図14および図15の赤外線センサを構成する複数の赤外線検出素子が16行4列である場合、かつ、走査回転軸S1との頂角θzが30度である場合に、上述した式1を満たす行毎の赤外線検出素子の横辺の幅(横幅)が示されている。
縦辺の幅(縦幅)は、案1のように最下端の赤外線検出素子の縦辺横辺の長さの比が2/1となるようにするとよい。しかし、プロセス上の制約がある場合には、案2のように最下端の赤外線検出素子の縦辺横辺の長さの比が3/2(0.75/0.5)になるようにしてもよい。
(実施の形態3)
実施の形態1および2では、設置面41に平行な走査回転軸に対して視野中心軸を傾けた赤外線センサを備える赤外線検出装置について説明したが、それに限らない。以下、この場合の例について説明する。
[赤外線検出装置の構成]
以下、実施の形態3における赤外線検出装置について、図面を参照しながら説明する。
図17は、実施の形態3における赤外線検出装置が筐体に搭載された場合の物理的構成の概観図である。なお、図1〜図4と同様の要素には同一の符号を付しており、詳細な説明は省略する。
本実施の形態における赤外線検出装置は、図17に示すように、空間4の底面42と略垂直な設置面41であって底面42から所定高さの設置面41に設置されている筐体2に取り付けられ、検出対象範囲の熱画像を取得する。ここで、所定高さとは、実施の形態1および2と同様に、例えば人や熱源などの温度検出対象(計測対象)よりも高い高さであり、例えば1800mm以上の高さである。
図17に示す本実施の形態の赤外線検出装置は、実施の形態1の赤外線検出装置1と比較して、走査部(モータ311)の走査回転軸S3と、設置台312と、センサモジュール301と赤外線センサ302との配置が異なり、設置面41と傾きを有するように配置されている。なお、設置台312、センサモジュール301および赤外線センサ302の構成は、配置を除いて、実施の形態1の設置台112、センサモジュール101および赤外線センサ102と同じであるので説明を省略する。
本実施の形態では、走査回転軸S3および赤外線センサ302の配列面は、設置面41と傾きを有するように設置される。そのため、赤外線センサ302の視野中心軸C3は、図17に示すように設置面41の垂直方向と平行(底面42と平行)である。また、赤外線センサ302の配列面には、図17に示すように走査回転軸S3が通っており、赤外線センサ302は、当該配列面に通る走査回転軸S3で回転される。
このように、本実施の形態では、設置面41に対して走査回転軸S3ごと傾け、かつ、赤外線センサ302の視野中心軸C3は、走査回転軸S3に略垂直である。
[実施の形態3の効果等]
これにより、赤外線センサ302は、走査回転軸S3で回転されるとき、赤外線センサ302の底面42からみた上端と下端の回転速度(回転ピッチ)が同一となるので、実施の形態1で説明したような制御処理部12での歪補正が不要となる。つまり、制御処理部12において歪補正をしなくてよいので、メモリ使用量および演算負荷がなくなるという効果を奏する。
また、本実施の形態の赤外線検出装置は、設置面41の略垂直よりも底面42側に視野中心軸C3を傾けた赤外線センサ302を備える。これにより、赤外線検出装置が設置された位置近くの下方領域の検出対象範囲を広げることができるという効果も奏する。
(実施の形態1〜3の変形例)
なお、実施の形態2において、赤外線センサは、複数の赤外線検出素子が1以上の列で配列され、列それぞれにおける複数の赤外線検出素子のそれぞれの底面42と略平行の横辺の幅は、底面42に近いほど、狭くなるように形成される。そして、列それぞれの隣接する複数の赤外線検出素子の横辺の幅は、上記(式1)で規定されるとして説明した。しかし、当該横辺の幅は上記(式1)で規定される場合に限らない。
つまり、例えば、上記(式1)のLx/Ly=sin(θx)/sin(θy)の関係を満たす場合に限らず、Lx/Ly>sin(θx)/sin(θy)の関係を満たすとしてもよいし、Lx/Ly<sin(θx)/sin(θy)の関係を満たすとしてもよい。
より具体的には、列それぞれにおける複数の赤外線検出素子のうちの一の赤外線検出素子の横辺の幅をLxとし、当該一の赤外線検出素子と底面42側に隣接する赤外線検出素子の横辺の幅をLyとし、当該一の赤外線検出素子の画角における底面42に最も近い最下端の主光線と走査回転軸S1とのなす角をθxとし、当該隣接する赤外線検出素子の画角における最下端の主光線と走査回転軸S1とのなす角をθyとするとき、Lx/Ly>sin(θx)/sin(θy)の関係を満たすとしてもよい。
この場合、赤外線センサを構成する各赤外線検出素子のうちで有効視野角が水平(底面42に平行)である赤外線検出素子ほど高感度で走査することができるという効果を奏する。赤外線検出装置が設置される位置から水平方向に遠い測定対象物を高感度に走査したい場合に適する。
また、列それぞれにおける複数の赤外線検出素子のうちの一の赤外線検出素子の横辺の幅をLxとし、当該一の赤外線検出素子と底面42側に隣接する赤外線検出素子の横辺の幅をLyとし、当該一の赤外線検出素子の画角における底面42に最も近い最下端の主光線と走査回転軸S1とのなす角をθxとし、当該隣接する赤外線検出素子の画角における最下端の主光線と走査回転軸S1とのなす角をθyとするとき、Lx/Ly<sin(θx)/sin(θy)の関係を満たすとしてもよい。
この場合、赤外線検出装置が設置される位置の真下に近い赤外線検出素子ほど距離に対して走査密度を高くして(高感度で)走査することができるという効果を奏する。赤外線検出装置が設置される位置の直下の領域を高感度に走査したい場合に適する。
なお、実施の形態1〜3で説明した赤外線検出装置を搭載する筐体では、空調機器に限らない。セキュリティカメラに搭載してもよいし、電子レンジに搭載するとしてもよい。
[実施の形態1〜3の効果等]
本発明の一態様に係る赤外線検出装置は、空間の底面と略垂直な設置面であって前記底面から所定高さの設置面に設置された筐体に取り付けられる赤外線検出装置であって、1以上の赤外線検出素子が1以上の列で配列された赤外線センサと、走査回転軸を有し、前記赤外線センサを前記走査回転軸で回転させることにより前記赤外線センサに前記空間を走査させる走査部と、を備え、前記1以上の赤外線検出素子の配列面は、前記設置面に対して、傾きを有するように、配置されている。
この構成により、設置位置近くの下方領域の検出対象範囲を広げることができる赤外線検出装置を実現できる。
ここで、例えば、前記配列面の中心には、前記赤外線センサが前記走査回転軸で回転される際の回転中心であって前記走査回転軸が通る回転中心を有するとしてもよい。
さらに、例えば、前記走査回転軸および前記配列面は、前記設置面と前記傾きを有するように設置されており、前記配列面には、前記走査回転軸が通っており、前記赤外線センサは、前記配列面に通る前記走査回転軸で回転されるとしてもよい。
また、例えば、前記走査回転軸は、前記設置面と略平行であり、前記配列面は、前記走査回転軸と交差しているとしてもよい。
ここで、例えば、前記赤外線センサは、複数の赤外線検出素子が1以上の列で配列されており、前記列それぞれにおける複数の赤外線検出素子のそれぞれの前記底面と略平行の横辺の幅は、前記底面に近いほど、狭くなる。
さらに、例えば、前記列それぞれにおける複数の赤外線検出素子のうちの一の赤外線検出素子の横辺の幅をLxとし、前記一の赤外線検出素子と前記底面側に隣接する赤外線検出素子の横辺の幅をLyとし、前記一の赤外線検出素子の画角における前記底面に最も近い最下端の主光線と前記走査回転軸とのなす角をθxとし、前記隣接する赤外線検出素子の画角における最下端の主光線と前記走査回転軸とのなす角をθyとするとき、Lx/Ly=sin(θx)/sin(θy)の関係を満たすとしてもよい。
また、例えば、前記列それぞれにおける複数の赤外線検出素子のうちの一の赤外線検出素子の横辺の幅をLxとし、前記一の赤外線検出素子と前記底面側に隣接する赤外線検出素子の横辺の幅をLyとし、前記一の赤外線検出素子の画角における前記底面に最も近い最下端の主光線と前記走査回転軸とのなす角をθxとし、前記隣接する赤外線検出素子の画角における最下端の主光線と前記走査回転軸とのなす角をθyとするとき、Lx/Ly>sin(θx)/sin(θy)の関係を満たすとしてもよい。
また、例えば、前記列それぞれにおける複数の赤外線検出素子のうちの一の赤外線検出素子の横辺の幅をLxとし、前記一の赤外線検出素子と前記底面側に隣接する赤外線検出素子の横辺の幅をLyとし、前記一の赤外線検出素子の画角における前記底面に最も近い最下端の主光線と前記走査回転軸とのなす角をθxとし、前記隣接する赤外線検出素子の画角における最下端の主光線と前記走査回転軸とのなす角をθyとするとき、Lx/Ly<sin(θx)/sin(θy)の関係を満たすとしてもよい。
また、例えば、前記赤外線センサは、複数の赤外線検出素子が3以上の列で配列されており、前記列それぞれにおける複数の赤外線検出素子のそれぞれの前記底面と略平行の横辺の幅は、前記底面に近いほど、狭くなり、前記3つ以上の列の隣接する列において、対応する位置の赤外線検出素子の中心位置の距離は一定であるとしてもよい。
また、例えば、前記赤外線センサは、複数の赤外線検出素子が3以上の列で配列されており、前記列それぞれにおける複数の赤外線検出素子のそれぞれの前記底面と略平行の横辺の幅は、前記底面に近いほど、狭くなり、前記3以上の列それぞれにおける複数の赤外線検出素子のそれぞれの位置は、前記底面に近づく程ほど、前記3以上の列の、列方向の中心となる位置に近づいているとしてもよい。
また、例えば、前記3以上の列の前記底面からみて最初となる赤外線検出素子の位置は、順に前記底面に近づくようにずれているとしてもよい。
また、例えば、前記最初となる赤外線検出素子の位置は、隣接する前記列の最初となる赤外線検出素子の前記底面と略垂直の縦辺の幅の1/4だけ前記隣接する列の前記最初となる赤外線検出素子からずれているとしてもよい。
また、例えば、前記赤外線センサは、前記1以上の列が、前記走査回転軸に対して所定角度の傾きを有するように、配置されているとしてもよい。
また、例えば、前記所定角度は、前記赤外線センサを構成する複数の赤外線検出素子それぞれの中心位置のすべてが、前記走査回転軸と垂直な方向からみて異なる位置となるように調整された角度であるとしてもよい。
なお、これらの全般的または具体的な態様は、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラムまたはコンピュータで読み取り可能なCD−ROM等の記録媒体で実現されてもよく、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラムまたは記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
(実施の形態4)
本実施の形態では、赤外線検出素子の数を増加させずに熱画像の解像度を向上させることができる赤外線検出装置の具体的態様について説明する。
[赤外線検出装置の構成]
以下、実施の形態4における赤外線検出装置について、図面を参照しながら説明する。
図18は、実施の形態4における赤外線検出装置1Aの構成の一例を示す図である。図19Aは、本実施の形態における赤外線検出部10と走査部11との構成のイメージ図である。図19Bは、本実施の形態における赤外線センサ102Aの構成のイメージ図である。
図18に示すように、赤外線検出装置1Aは、赤外線検出部10と、走査部11と、制御処理部12とを備える。
走査部11は、赤外線検出部10を所定の方向に走査させる。より具体的には、走査部11は、赤外線センサ102Aを所定の方向に動かすことにより赤外線センサ102Aに検出対象範囲を走査させる。本実施の形態では、走査部11は、図19Aに示すモータ111を備える。モータ111は、制御処理部12に制御され、センサモジュール101の赤外線センサ102Aを所定の方向に回転または移動させる。ここで、モータ111は、例えばステッピングモータやサーボモータなどである。所定の方向とは、図19Aにおける水平方向であり、図19Bにおける走査軸の方向(走査方向)に相当する。
制御処理部12は、走査部11を制御し、赤外線検出部10が取得した熱画像(入力画像)を処理する。制御処理部12は、図18に示すように機器制御部121と、画像処理部122とを備える。
機器制御部121は、赤外線検出部10が検出した情報を基に、走査部11を走査させる制御を行うための制御情報を算出し、算出した制御情報に従って走査部11の制御を行う。画像処理部122は、赤外線検出部10が取得した熱画像(入力画像)に超解像処理を施し、熱画像(入力画像)を再構成することで高精細な熱画像(出力画像)を生成する。画像処理部122は、生成した高精細な熱画像すなわち超解像処理後の熱画像を出力する。
ここで、熱画像は、温度検出対象範囲の温度の分布を表す複数の画素から構成される画像である。また、超解像処理は、入力画像に存在しない高い解像度の情報(出力画像)を生成できる高解像度化処理の一つである。超解像処理には、複数枚の画像から1枚の高解像度画像を得る処理方法や、学習データを用いた処理方法がある。本実施の形態では、赤外線検出部10が走査部11により走査されることにより、温度検出対象範囲の熱画像であってサブピクセル単位の位置ずれの熱画像すなわち異なるサンプル点の熱画像データを取得することができる。そのため、複数枚の熱画像から1枚の高解像度熱画像を得る処理方法を用いるとして以下説明する。
なお、画像処理部122は、さらに、超解像処理後の熱画像に基づいて温度検出対象範囲内にいる人の位置や、ユーザの手や顔の温度、壁の温度など熱源の位置や温度を示す熱画像データを取得し、その熱画像データを出力するとしてもよい。
赤外線検出部10は、走査部11により所定の方向に走査されることで、温度検出対象範囲の熱画像を取得することができる。より具体的には、赤外線検出部10は、複数の赤外線検出素子が行列状に配列された赤外線センサ102Aを有し、赤外線センサ102Aにより走査された温度検出対象範囲の赤外線を検出する。赤外線センサ102Aは、複数の赤外線検出素子の行列が、当該所定の方向に対して所定角度の傾きを有するように、配置されている。ここで、所定角度は、赤外線センサ102Aを構成する複数の赤外線検出素子それぞれの中心位置のすべてが、当該所定の方向からみて異なる位置となるように調整された角度である。
本実施の形態では、赤外線検出部10は、例えば図19Aに示すセンサモジュール101で構成される。センサモジュール101は、赤外線センサ102Aと図示しないレンズとを備える。
レンズは、赤外線の透過率が高いシリコンやZnSなどで構成されている。当該レンズでは、各方向から当該レンズに入射した赤外線(赤外光)が、赤外線センサ102Aを構成するそれぞれ異なる赤外線検出素子に入射するように設計されている。
赤外線センサ102Aは、例えば図19Bに示すように、N行M列(N、Mは2以上の自然数)で行列状に配列された複数の赤外線検出素子で構成される。また、赤外線センサ102Aは、水平方向すなわち図19Bの走査軸の方向に沿って回転(移動)されることにより、温度検出対象範囲を走査することができる。赤外線検出部10は、所定の方向(水平方向)に走査が行われることにより、温度検出対象範囲の熱画像(赤外線)を取得し、画像処理部122に出力する。
より具体的には、赤外線センサ102Aは、モータ111によって、水平方向すなわち図19Bに示す走査軸の方向に、サブピクセル単位の位置ごとに回転(移動)される。これにより、赤外線センサ102Aは、温度検出対象範囲の熱画像であってサブピクセル単位の位置ずれの熱画像(赤外線)を取得し、画像処理部122に出力する。
また、赤外線センサ102Aは、水平方向すなわち図19Bに示す走査軸の方向に対して所定角度(図のX°)で傾いている。換言すると、赤外線センサ102Aは、N行M列の行列状に配列された複数の赤外線検出素子で構成されており、この複数の赤外線検出素子の行列は、走査軸と所定角度(X°)の傾きを有するセンサ軸に平行および垂直となるように配列されている。つまり、所定角度(X°)は、赤外線センサ102Aを構成する複数の赤外線検出素子それぞれの中心位置のすべてが、走査軸の方向からみて異なる位置となるように調整された角度である。さらに言い換えると、所定角度(X°)は、複数の赤外線検出素子が走査軸の方向に沿って回転(移動)されるときに、センサ軸に平行のM列の赤外線検出素子およびそれらに隣接する行の赤外線検出素子が、走査軸の方向において重ならないように調整された角度である。
また、赤外線センサ102Aは、走査軸の方向に対して所定角度(図のX°)で傾いていることから、赤外線センサ102Aを構成する複数の赤外線検出素子において、以下の関係が成立する。すなわち、同一の列(例えば第1の配列)において隣接する赤外線検出素子それぞれの中心位置の間の距離であって走査軸と垂直な方向(図で縦方向)における距離(例えば第1距離)は等しい。また、当該列(第1の配列)の走査方向の先頭となる方の一方端に位置する赤外線検出素子(例えば第1の素子)および当該列(第1の配列)と隣接する列(例えば第2の配列)の赤外線検出素子(例えば第2の素子)であって当該列(第1の配列)の他方端の赤外線検出素子と隣接する赤外線検出素子(第2の素子)それぞれの中心位置の間の距離であって走査軸と垂直な方向(縦方向)における距離(例えば第2距離)と上記第1距離とは等しい。
これにより、複数の赤外線検出素子が走査軸の方向に沿って回転(移動)されたときには、走査軸に垂直な方向の赤外線検出素子の数が、走査軸とセンサ軸とが平行である場合のN個よりも増加することになる。つまり、センサ軸が走査軸から所定角度(X°)の傾いた赤外線センサ102Aでは、走査軸に垂直な方向(縦軸)の熱画像の画素数を、センサ軸が走査軸と平行である場合に比べて、実質的に増加させることができる。これにより、走査軸に垂直な方向(縦軸)の解像度を向上させることができる。
以下、実施例を用いて所定角度の一例について説明する。
(実施例)
次に、図20および図21を用いて、実施例における赤外線センサ102Aの構成の一例について説明する。
図20は、実施の形態4の実施例における赤外線センサを示す図である。
図20に示す赤外線センサ102aは、赤外線センサ102Aの一例であり、8行8列に配列された複数の赤外線検出素子で構成される。なお、図20に示す各赤外線検出素子の中心に検出点が示されている。各赤外線検出素子は、検出点での赤外線検出感度が高く当該検出点で赤外線を検出するとしてもよい。また、各赤外線検出素子は、当該素子の領域全体で赤外線を検出するものの検出点で赤外線を支配的に検出するとしてもよい。また、この検出点が各赤外線検出素子の領域を代表するとしてもよい。この場合、この検出点が各赤外線検出素子の検出する赤外線の平均を示しているとしてもよい。
赤外線センサ102aを構成する8行8列の複数の赤外線検出素子のセンサ軸は、水平方向すなわち図20に示す走査軸の方向に対して所定角度aで傾いている。なお、所定角度aは、上記の所定角度xの一例であり、8行8列の赤外線検出素子それぞれの中心位置のすべてが、走査軸の方向からみて異なる位置となるように調整された角度である。言い換えると、所定角度aは、赤外線センサ102aを構成する8×8の行列状に配列された複数の赤外線検出素子が走査軸の方向に沿って回転(移動)されるときに、センサ軸に平行の8列の赤外線検出素子およびそれらに隣接する行の8列の赤外線検出素子が、走査軸の方向において重ならないように調整された角度である。
図21は、図20に示す赤外線センサ102aの傾きについて説明するための図である。図21には、説明の便宜のため、図20に示す8行8列に配列された複数の赤外線検出素子のうち、2行分の複数の赤外線検出素子が示されている。ここで、点線c1、点線c2は、走査軸と平行な点線を示している。
図21において、所定角度aは、赤外線検出素子a11〜赤外線検出素子a18、および赤外線検出素子a21〜赤外線検出素子a28が、走査軸の方向に沿って回転(移動)されるときに走査軸の方向において重ならないように調整された角度となっている。
ここで、例えば赤外線検出素子a11および赤外線検出素子a12それぞれの中心位置の間の当該縦方向の距離h、赤外線検出素子a12および赤外線検出素子a13それぞれの中心位置の間の当該縦方向の距離h、赤外線検出素子a13および赤外線検出素子a14それぞれの中心位置の間の当該縦方向の距離h、赤外線検出素子a14および赤外線検出素子a15それぞれの中心位置の間の当該縦方向の距離h、赤外線検出素子a15および赤外線検出素子a16それぞれの中心位置の間の当該縦方向の距離h、赤外線検出素子a16および赤外線検出素子a17それぞれの中心位置の間の当該縦方向の距離h、赤外線検出素子a17および赤外線検出素子a18それぞれの中心位置の間の当該縦方向の距離h、ならびに、赤外線検出素子a16および赤外線検出素子a17それぞれの中心位置の間の当該縦方向の距離hはすべて等しい第1距離となっている。なお、赤外線検出素子a21〜赤外線検出素子a28の場合も同様である。
また、第2距離、すなわち赤外線検出素子a18(第1の素子)および赤外線検出素子a21(第2の素子)それぞれの中心位置の間の当該縦方向の距離hは、第1距離と等しい。また、赤外線検出素子a11および赤外線検出素子a18それぞれの中心位置の間の当該縦方向の距離は8hである。
そして、上記の関係を満たす所定角度aは、tan−1(1/8)を満たす角度であり、7.125°と算出できる。
したがって、赤外線センサ102aは、センサ軸に平行および垂直となる8×8の赤外線検出素子で構成され、そのセンサ軸は走査軸に対して7.125°の傾き(所定角度a)を有する。これにより、赤外線センサ102aを構成する8行8列の赤外線検出素子それぞれの中心位置のすべてが、走査軸の方向からみて異なる位置になる。このように、赤外線センサ102aを構成する8列の赤外線検出素子すべてが走査軸の方向において重ならないようにすることができるので、走査軸に垂直な方向(縦軸)の熱画像の画素数を実質的に増加させることができる。
なお、本実施例では、赤外線センサ102Aを構成するN行M列に配列された複数の赤外線検出素子の一例として8行8列の赤外線検出素子について説明したが、これに限らない。
4行4列の赤外線検出素子でもよいし、16行16列の赤外線検出素子でもよいし、32行32列の赤外線検出素子であってもよい。N行N列(Nは2以上の自然数)の赤外線検出素子であれば、汎用品として取得する事ができるので赤外線センサの採用コストを下げることができるからである。
図22Aは、比較例の赤外線センサ502aを用いた場合の赤外線検出装置の効果を説明するための図である。図22Bは、図20に示す赤外線センサ102aを用いた場合の赤外線検出装置の効果を説明するための図である。
図22Aに示す比較例の赤外線センサ502aは、走査軸の方向(水平方向)に対して傾いていない。すなわち、赤外線センサ502aのセンサ軸は、走査軸と一致している。この場合、赤外線センサ502aを構成する8×8の赤外線検出素子が走査軸の方向に沿って回転(移動)されるとき、走査軸に平行な方向(列方向)の赤外線検出素子が重なる。そのため、走査軸に垂直な方向の赤外線検出素子の数は、8個のままである。
一方、図22Bに示す赤外線センサ102aは、走査軸の方向(水平方向)に対して7.125度で傾いている。すなわち、赤外線センサ102aのセンサ軸は、走査軸に対して7.125度で傾いている。この場合、赤外線センサ102aを構成する8×8の赤外線検出素子が走査軸の方向に沿って回転(移動)されるとき、走査軸に平行な方向(列方向)の赤外線検出素子が重ならない。これにより、走査軸に垂直な方向の赤外線検出素子の数は、赤外線センサ102aの行方向の赤外線検出素子の数である8個(8 vertical levels)よりも増加し、64個(64 vertical levels)となっている。
このように、赤外線検出装置1Aは、走査軸に対して7.125°の傾いたセンサ軸を有する赤外線検出素子で構成された赤外線センサ102aを有することにより、赤外線センサ102aを構成する赤外線検出素子の数を増加させることなく、比較例に比較して8倍となる高解像度の熱画像を取得することができる。さらに、赤外線検出装置1Aは、当該熱画像に対して制御処理部12で超解像処理を施すことにより、解像度をより向上させた熱画像を取得することができる。
[赤外線検出装置の動作]
次に、上記のように構成された赤外線検出装置1Aの動作について説明する。
図23は、実施の形態4における赤外線検出装置1Aの動作を説明するためのフローチャートである。
まず、赤外線検出装置1Aは、赤外線検出部10を走査させて(S10)、温度検出対象範囲の熱画像を取得する(S11)。具体的には、赤外線検出装置1Aは、赤外線検出部10の赤外線センサ102aを走査軸に沿って動かす(回転させる)ことにより、赤外線センサ102aに温度検出対象範囲を走査させて温度検出対象範囲の熱画像を取得する。なお、赤外線センサ102aは、走査部11により、サブピクセル単位に動かされる(回転される)走査が行われ、サブピクセル単位に移動された複数の熱画像を取得する。
次に、赤外線検出装置1Aは、取得した熱画像に超解像処理を施す(S12)。具体的には、赤外線検出装置1は、取得した複数枚の熱画像に処理を施し、複数枚の熱画像を再構成することで1枚の高精細な熱画像を生成する。
次に、赤外線検出装置1Aは、生成した高精細な熱画像すなわち超解像処理後の熱画像を出力する(S13)。
このようにして、赤外線検出装置1Aは、温度検出対象範囲における熱画像を高解像度で取得することができる。
[実施の形態4の効果等]
以上のように、本実施の形態の赤外線検出装置は、走査軸に対して所定角度傾いたセンサ軸を有する赤外線検出素子で構成された赤外線センサを備える。これにより、赤外線センサを構成する赤外線検出素子の数を増加させずに熱画像の解像度を向上させることができる。ここで、所定角度は、赤外線センサを構成する複数の赤外線検出素子それぞれの中心位置のすべてが、走査方向となる所定の方向からみて異なる位置となるように調整された角度である。例えば、赤外線センサが8行8列の赤外線検出素子で構成されていた場合には、この所定角度は7.125度である。
また、本実施の形態の赤外線検出装置は、赤外線センサを構成する赤外線検出素子の数を増加させずに高解像度の熱画像を取得することができるので、赤外線センサを走査軸と垂直方向にも動かす(走査させる)ためにモータを増設する必要がない。また、本実施の形態の赤外線検出装置は、赤外線センサを構成する赤外線検出素子の数を増加させずに高解像度の熱画像を取得することができるので、赤外線検出素子の数がより多くコストの高い赤外線センサを採用する必要もない。つまり、本実施の形態の赤外線検出装置によれば、高解像度の熱画像を取得するためのモータのコストを削減できるだけでなく、赤外線検出素子の数のより多い赤外線センサを採用するためのコストも削減できるという効果を奏する。
また、モータを増設して赤外線センサの走査方向を増やすことで高解像度の熱画像を取得可能とする比較例の赤外線検出装置では、モータを増設する分だけ機械的にサイズが大きくなってしまう。そのため、比較例の赤外線検出装置をモジュールとして、例えば空調機器などの他の機器に搭載することが難しくなる。一方、本実施の形態の赤外線検出装置では、走査方向(当該垂直方向の走査)を増やすためのモータを増設する必要がないので、サイズも大きくならない。そのため、本実施の形態の赤外線検出装置は、モジュールとして例えば空調機器などの他の機器に搭載しやすいという効果も奏する。
さらに、走査軸と垂直方向にも動かす(走査させる)ためにモータを増設する場合と比較すると、本実施の形態の赤外線検出装置は、走査軸の方向を走査した後に当該垂直方向をさらに走査する時間も必要がない。つまり、本実施の形態の赤外線検出装置では、赤外線検出時間を増加させずに熱画像の解像度を向上させることができるという効果も奏する。
これについて具体的に説明する。比較例の赤外線検出装置では、モータを増設して赤外線センサの走査方向を増やすことにより高解像度の熱画像が取得可能になるため、熱画像を取得するための走査時間(赤外線検出時間)が走査方向を増やした分だけ増加してしまう。つまり、比較例の赤外線検出装置では、温度検出対象範囲の熱画像の取得に時間を要するので、走査開始から熱画像取得までの時差が大きく、取得した熱画像の解像度が期待解像度よりも低くなってしまう問題がある。一方、本実施の形態の赤外線検出装置では、走査方向(当該垂直方向の走査)を増やすためのモータを増設する必要がないので、赤外線検出時間を増加させずに熱画像の解像度を向上させることができる。
(変形例)
実施の形態4では、赤外線センサを構成する複数の赤外線検出素子がすべて有効であった(赤外線センサを構成する複数の赤外線検出素子をすべて用いた)場合について説明したが、それに限らない。赤外線センサに赤外線を集光するために用いられるレンズのコマ収差や球面収差の影響を考慮して、赤外線センサを構成する複数の赤外線検出素子のうちの一部の赤外線検出素子を有効にし、当該一部以外の他部の赤外線検出素子を無効にするとしてもよい。
以下、この場合の例を変形例として以下説明する。
なお、球面収差は、レンズの表面が球面であることが原因で起こる収差、すなわちレンズの表面が球面であるためにレンズの中心部分と周辺部分で光の進み方が違うことに起因する収差である。コマ収差は、光軸から離れたところで、点像が尾をひく現象すなわち光軸から離れた1点から出た光が、像面で1点に集まらずに、尾が引いた彗星のような像になり、点像が伸びる現象のことをいう。
[赤外線センサの構成]
図24は、実施の形態4の変形例における赤外線センサ102bの構成のイメージ図である。
赤外線センサ102bは、赤外線センサ102Aの一例である。赤外線センサ102bを構成する複数の赤外線検出素子は、N行N列(Nは2以上の自然数)に配列されており、N列のうちの両端にある列の赤外線検出素子が無効にされている。つまり、赤外線センサ102bは、N列のうちの両端にある列を除くN行L列(L<N、Lは2以上の自然数)の赤外線検出素子である一部の赤外線検出素子を用いる。N列のうちの両端にある列を除くのは、赤外線センサ102bに用いられるレンズでは、中心から遠い位置にある赤外線センサ102bの赤外線検出素子ほどコマ収差や球面収差の影響が大きくなるからである。
また、赤外線センサ102bは、実施の形態4と同様に、走査軸の方向に対して所定角度(図のX1°)で傾いている。ここで、所定角度X1は、赤外線センサ102bを構成するN行N列の赤外線検出素子それぞれの中心位置のすべてが、走査軸の方向からみて異なる位置となるように調整された角度である。例えば、赤外線センサ102bが8行8列の複数の赤外線検出素子で構成されており、一部の赤外線検出素子が8行6列の赤外線検出素子であった場合、所定角度X1は、9.462°である。
なお、所定角度は、赤外線センサ102bを構成するN行N列の赤外線検出素子のすべてではなく、一部(N行L列)の赤外線検出素子それぞれの中心位置のすべてが、走査軸の方向からみて異なる位置となるように調整された角度であってもよい。
さらに、所定角度は、以下の式を満たす値であることが好ましい。すなわち、X1=arctan(1/Ceff)。ここで、X1は所定角度である。Ceffは画素が利用されている列の数である。なお、当該式において図24の場合はCeffは6となる。また、以下で説明する図25の場合もCeffは6となる。
[変形例の効果等]
以上のように、本変形例の赤外線検出装置によれば、赤外線センサを構成する赤外線検出素子の数をさせずに熱画像の解像度を向上させることができる。さらに、本変形例では、赤外線センサを構成する複数の赤外線検出素子のすべてを用いず、一部を用いている。これにより、赤外線センサに赤外線を集光するために用いられるレンズのコマ収差や球面収差の影響を軽減することができる効果を奏する。
なお、本変形例では、赤外線センサを構成する複数の赤外線検出素子の一部を用いる例として、走査軸方向の両端にある列の赤外線検出素子を無効にして用いない場合について説明したが、それに限らない。例えば、図25に示すように、走査軸方向の両端にある列の赤外線検出素子のうちの一部を有効にしてもよい。
図25は、実施の形態4の変形例の別の例における赤外線センサの構成のイメージ図である。なお、図24と同様の要素には同一の符号を付しており、詳細な説明は省略する。
図25に示す赤外線センサ102cは、赤外線センサ102Aの一例であり、N行N列(Nは2以上の自然数)に配列された赤外線検出素子で構成されている。
赤外線センサ102cでは、N列のうちの両端にある列の赤外線検出素子の一部を除いて無効にされている。より具体的には、赤外線センサ102bは、図25に示すように、N列のうちの両端にある列を除くN行L列(L<N、Lは2以上の自然数)の赤外線検出素子と、図25で右側の端(両端のうち走査時に先頭側となる端)の下端の赤外線検出素子と、図25で左側の端(両端のうち走査時に末尾側となる端)の上端の赤外線検出素子とを用いる。N列のうちの両端にある列を除くのは、上述したようにコマ収差や球面収差の影響が大きくなるからである。N列のうちの両端にある列の一部を有効にするのは、走査軸に垂直な方向(縦軸)の熱画像の画素数を向上させるために、走査軸に垂直な方向(縦軸)の赤外線検出素子の数を増やして縦軸の視野を広げるためであり、当該一部はレンズ歪の影響も軽減できる位置にあるからである。
(実施の形態5)
赤外線センサを構成するすべての赤外線検出素子のうちの一部の赤外線検出素子を有効する場合の例は、上述した例に限らない。本実施の形態では、一部の赤外線検出素子の別の構成例について説明する。以下では、実施の形態4と異なる部分を中心に説明する。
[赤外線センサの構成]
図26は、実施の形態5における赤外線センサの一例の構成のイメージ図である。図27は、図26に示す赤外線センサの傾きについて説明するための図である。
赤外線センサ102dは、赤外線センサ102Aの一例である。赤外線センサ102dを構成する複数の赤外線検出素子は、複数の赤外線検出素子のうちの一部の赤外線検出素子が有効にされ、当該一部以外の他部の赤外線検出素子は無効にされている。
本実施の形態では、赤外線センサ102dを構成する複数の赤外線検出素子は、N行N列(Nは2以上の自然数)に配列されており、一部の赤外線検出素子は、N行N列のうち走査軸の方向における両端部にある複数の赤外線検出素子以外の複数の赤外線検出素子である。
より具体的には、図26に示す一部の赤外線検出素子は、N行N列の2つの対角線のうち走査軸の方向となす角度が大きい第1対角線に沿って並ぶ複数の赤外線検出素子である第1素子列と、第1素子列に隣接し第1対角線に沿って並ぶ複数の赤外線検出素子である第2素子列と、第2素子列に隣接し第1対角線に沿って並ぶ複数の赤外線検出素子である第3素子列と、第3素子列に隣接し第1対角線に沿って並ぶ複数の赤外線検出素子である第4素子列を含めて構成されている。つまり、一部の赤外線検出素子として、赤外線センサ102dを構成する複数の赤外線検出素子のうち、第1素子列から第4素子列の赤外線検出素子が有効にされており、その他の赤外線検出素子は無効にされている。
また、赤外線センサ102dは、実施の形態4と同様に、走査軸の方向に対して所定角度(図のx2°)で傾いている。所定角度x2は、上述した一部の赤外線検出素子それぞれの中心位置のすべてが、走査軸の方向からみて異なる位置となるように調整された角度である。
ここで、所定角度x2の算出する方法について、例えば図26に示す一部の領域F1を抜き出した図27を用いて説明する。図27において点線S11、S12およびS13は、走査軸と平行な点線を示している。点線L11は、赤外線検出素子c11、c13およびc15を結び、センサ軸と平行な点線を示している。同様に点線L12は、赤外線検出素子c12およびc14を結び、センサ軸と平行な点線を示している。
ここで、例えば赤外線検出素子c11および赤外線検出素子c13それぞれの中心位置の間の走査軸と垂直な方向(図で縦方向)の距離h2、赤外線検出素子c13および赤外線検出素子c15それぞれの中心位置の間の走査軸と垂直な方向(図で縦方向)の距離h2、赤外線検出素子c12および赤外線検出素子c14それぞれの中心位置の間の走査軸と垂直な方向(図で縦方向)の距離h2はすべて等しい。また、例えば赤外線検出素子c11および赤外線検出素子c12それぞれの中心位置の間の走査軸と垂直な方向(図で縦方向)の距離は、(素子列の数−1)であるPのh2倍(P×h2)となっている。
このような関係を満たす角度x2を算出することにより所定角度x2を算出することができる。具体的には、このような関係は、sin(x2)=Ph2/D1、sin(45−x2)=h3/(√2・D1)として関係式に表せる。ここで、D1は、赤外線検出素子の間の距離であり、例えば赤外線検出素子c11および赤外線検出素子c12それぞれの中心位置の間の距離(センサ軸上の距離)である。そして、これら関係式を解くことで、所定角度x2を算出できる。すなわち、上記関係式を、sin(x2)=P√2・sin(45−x2)すなわちsin(x2)=Pcos(x2)−Psin(x2)と解き、tan(x2)=P/(P+1)と表現を変えることにより、所定角度x2=tan−1(P/P+1)を算出できる。
以下、実施例を用いて所定角度の一例について説明する。
(実施例)
以下、図28および図29を用いて、本実施例における赤外線センサ102eの構成の一例について説明する。
図28は、実施の形態5の実施例における赤外線センサの構成のイメージ図である。図29は、図28に示す赤外線センサの傾きについて説明するための図である。
図27に示す赤外線センサ102eは、赤外線センサ102Aの一例であり、8行8列に配列された複数の赤外線検出素子で構成されている。赤外線センサ102eでは、複数の赤外線検出素子のうちの一部の赤外線検出素子が有効にされ、当該一部以外の他部の赤外線検出素子は無効にされている。
本実施例では、赤外線センサ102eを構成する複数の赤外線検出素子は、8行8列に配列されており、一部の赤外線検出素子は、8行8列のうち走査軸の方向における両端部にある複数の赤外線検出素子以外の複数の赤外線検出素子である。
より具体的には、図28に示す一部の赤外線検出素子は、8行8列の2つの対角線のうち走査軸の方向となす角度が大きい第1対角線に沿って並ぶ複数の赤外線検出素子である第1素子列と、第1素子列に隣接し第1対角線に沿って並ぶ複数の赤外線検出素子である第2素子列と、第2素子列に隣接し第1対角線に沿って並ぶ複数の赤外線検出素子である第3素子列とを含めて構成されている。つまり、一部の赤外線検出素子として、赤外線センサ102eを構成する複数の赤外線検出素子のうち、第1素子列から第3素子列の赤外線検出素子が有効にされており、その他の赤外線検出素子は無効にされている。
また、赤外線センサ102eは、走査軸の方向に対して所定角度(図のa2°)で傾いている。所定角度a2は、上述した一部の赤外線検出素子それぞれの中心位置のすべてが、走査軸の方向からみて異なる位置となるように調整された角度である。
ここで、所定角度a2の算出する方法について、例えば図28に示す一部の領域F2を抜き出した図29を用いて説明する。図29において点線S21、S22およびS23は、走査軸と平行な点線を示している。点線L21は、赤外線検出素子c21、c23およびc25を結び、センサ軸と平行な点線を示している。同様に点線L22は、赤外線検出素子c22およびc24を結び、センサ軸と平行な点線を示している。
ここで、第1素子列に属する赤外線検出素子である第1素子(赤外線検出素子c23)の中心位置と、前記走査軸の方向と所定角度を有する行方向に並ぶ第1素子(赤外線検出素子c23)を含む複数の赤外線検出素子と隣接する複数の赤外線検出素子のうち第1素子(赤外線検出素子c23)に隣接する第2素子(赤外線検出素子c21、c25)であって第3素子列それぞれに属する赤外線検出素子である第2素子(赤外線検出素子c21、c25)の中心位置との間の距離であって走査軸の方向と垂直な方向における距離である第1距離h2は等しい。また、2つの第2素子(赤外線検出素子c21、c25)のうち走査方向の末尾となる方の第3素子(赤外線検出素子c21)の中心位置と、行方向に並ぶ第1素子(赤外線検出素子c23)を含む複数の赤外線検出素子のうち第1素子(赤外線検出素子c23)と隣接し、第3素子(赤外線検出素子c25)と隣接しない第2素子列に属する赤外線検出素子である第4素子(赤外線検出素子c24)の中心位置との間の距離であって走査軸の方向と垂直な方向における距離である第2距離は、第1距離と等しい。また、第4素子(赤外線検出素子c24)の中心位置と、行方向に並ぶ第3素子(赤外線検出素子c21)を含む複数の赤外線検出素子のうち第3素子(赤外線検出素子c21)と隣接、かつ第2素子列に属する赤外線検出素子である第5素子(赤外線検出素子c22)の中心位置との間の距離であり走査軸の方向と垂直な方向における距離である第3距離は、第1距離と等しい。
より具体的には、図29に示すように、例えば赤外線検出素子c21および赤外線検出素子c23それぞれの中心位置の間の走査軸と垂直な方向(図で縦方向)の距離h3、赤外線検出素子c23および赤外線検出素子c25それぞれの中心位置の間の走査軸と垂直な方向(図で縦方向)の距離h2、赤外線検出素子c22および赤外線検出素子c24それぞれの中心位置の間の走査軸と垂直な方向(図で縦方向)の距離h3はすべて等しい。また、例えば赤外線検出素子c21および赤外線検出素子c22それぞれの中心位置の間の走査軸と垂直な方向(図で縦方向)の距離は2h3倍((素子列の数−1)×h3)となっている。
このような関係を満たす角度x3を算出することにより所定角度a2を算出することができる。具体的には、このような関係を、sin(x3)=2h3/D2、sin(z)=h3/(√2・D2)、z=45−x3、として関係式に表し、これら関係式を解くことで、所定角度a2を算出できる。ここで、D2は、赤外線検出素子の間の距離であり、例えば赤外線検出素子c21および赤外線検出素子c22それぞれの中心位置の間の距離(センサ軸上の距離)である。すなわち、上記関係式を、sin(x3)=2√2・sin(z)すなわちsin(x3)=2cos(x3)−2sin(x3)と解き、tan(x3)=2/3と表現を変えることにより、x3=33.69度と解くことできる。これにより、所定角度a2は33.69度と算出できる。
したがって、赤外線センサ102eは、センサ軸に平行および垂直となる8×8の赤外線検出素子で構成され、そのセンサ軸は走査軸に対して33.69°の傾き(所定角度a2)を有する。これにより、赤外線センサ102eを構成する8行8列の赤外線検出素子のうち、一部の赤外線検出素子として有効にされている第1素子列〜第3素子列の赤外線検出素子それぞれの中心位置のすべてが、走査軸の方向からみて異なる位置になり、走査軸の方向において重ならない。これにより、赤外線センサ102eにおいて走査軸に垂直な方向の赤外線検出素子の数を増加させることができるので、走査軸に垂直な方向(縦軸)の熱画像の画素数を実質的に増加させることができる。
なお、本実施例では、赤外線センサ102eを8行8列の赤外線検出素子で構成されているとしたが、これに限らない。4行4列の赤外線検出素子でもよいし、16行16列の赤外線検出素子でもよいし、32行32列の赤外線検出素子であってもよい。N行N列(Nは2以上の自然数)の赤外線検出素子であれば、汎用品として取得する事ができるので赤外線センサの採用コストを下げることができるからである。
図30は、図27に示す赤外線センサ102eを用いた場合の赤外線検出装置の効果を説明するための図である。
図30に示す赤外線センサ102eは、走査軸の方向(水平方向)に対して33.69度で傾いている。すなわち、赤外線センサ102eのセンサ軸は、走査軸に対して33.69度で傾いている。この場合、赤外線センサ102eが走査軸の方向に沿って回転(移動)されるとき、走査軸に平行な方向(列方向)の当該一部の赤外線検出素子が重ならない。これにより、走査軸に垂直な方向の一部の赤外線検出素子の数は、赤外線センサ102eの行方向の赤外線検出素子の数である8個(8 vertical levels)よりも増加し、34個(34 vertical levels)となっている。
このように、赤外線検出装置1Aは、走査軸に対して33.69度傾いたセンサ軸を有する赤外線検出素子で構成された赤外線センサ102eを有することにより、赤外線センサ102eを構成する赤外線検出素子の数を増加させることなく、比較例に比較して4.25倍となる高解像度の熱画像を取得することができる。さらに、赤外線検出装置1Aは、当該熱画像に対して制御処理部12で超解像処理を施すことにより、解像度をより向上させた熱画像を取得することができる。
[実施の形態5の効果等]
以上のように、本変実施の形態の赤外線検出装置によれば、赤外線センサを構成する赤外線検出素子の数をさせずに熱画像の解像度を向上させることができる。さらに、本実施の形態では、赤外線センサを構成する複数の赤外線検出素子のすべてを用いず、一部を用いていることにより、赤外線センサに赤外線を集光するために用いられるレンズのコマ収差や球面収差の影響を軽減することができる効果を奏する。
ここで、所定角度は、赤外線センサを構成する複数の赤外線検出素子のうちの一部の赤外線検出素子がそれぞれの中心位置のすべてが、走査方向となる所定の方向からみて異なる位置となるように調整された角度である。例えば、赤外線センサが8行8列の赤外線検出素子で構成されており、一部の赤外線検出素子として上記の第1素子列〜第3素子列の赤外線検出素子を有効にして用いた場合には、この所定角度は33.69度である。
この場合、8行8列の赤外線検出素子を用いる場合に比べると、3つの素子列の赤外線検出素子は、走査軸に略平行に並ぶ数が少ないので、走査時間すなわち温度検出対象範囲を走査するための時間(赤外線検出時間)を短くできるという効果を奏する。これにより、解像度をより向上できるという効果も奏する。
また、本実施の形態の赤外線検出装置は、実施の形態4と同様に、高解像度の熱画像を取得するためのモータのコストを削減できるだけでなく、赤外線検出素子の数のより多い赤外線センサを採用するためのコストも削減できる。また、本実施の形態の赤外線検出装置は、実施の形態4と同様に、モジュールとして例えば空調機器などの他の機器に搭載しやすいという効果も奏する。
なお、上記の実施の形態4および5では、赤外線センサ102Aの一例として、8行8列(8×8)で行列状に配列された複数の赤外線検出素子について説明したがそれに限らない。16行16列や32行32列で列状に配列された複数の赤外線検出素子でもよく、N行M列(N、Mは2以上の自然数)で行列状に配列された複数の赤外線検出素子で構成されていればよい。
(実施の形態6)
[実施の形態6の基礎となった知見]
実施の形態1等では、センサモジュールは、赤外線センサと、レンズとを搭載しているとして説明したが、それに限らない。センサモジュールは、赤外線センサと、赤外線センサの出力信号を信号処理するICチップ(IC素子)とを収納するパッケージであってもよい。
この場合、ICチップは、駆動により発熱するため、ICチップで発生した熱による赤外線センサの検出結果への影響を抑制する必要がある。
そこで、例えば特許文献2には、ICチップで発生した熱を赤外線センサに伝達しないようにICチップと赤外線センサとの間に壁部を設けるなどの構成が提案されている。
しかしながら、赤外線センサを搭載するセンサモジュール(パッケージ)では、走査回転軸を中心に回転されることにより、検出対象範囲を走査する。ICチップと赤外線センサとの配置によっては、走査時にICチップで発声した熱がパッケージ内の雰囲気を介して赤外線センサまで到達し、赤外線センサの検出結果に悪影響を及ぼしてしまう場合がある。つまり、特許文献2に提案されるセンサモジュール(パッケージ)では、ICチップと赤外線センサとの配置方向(並設方向)に関する検討がされていないため、走査時には、ICチップで発生した熱による赤外線センサの検出結果への影響を抑制できない。そのため、ICチップからの熱による影響で赤外線センサが走査する検出対象範囲の検出温度が上昇し、赤外線センサのセンサ特性が低下してしまうことが懸念される。
そこで、実施の形態6では、走査時におけるICチップからの熱による影響を抑制することができる赤外線検出装置について説明する。
[赤外線検出装置の構成]
以下、実施の形態6における赤外線検出装置について、図面を参照しながら説明する。
図31は、本実施の形態における赤外線検出装置1Bの構成の一例を示す図である。図32は、本実施の形態における赤外線検出装置1Bが筐体に搭載された場合の物理的構成の一部概観図である。図33Aは、本実施の形態における赤外線検出装置1Bの物理的構成を示す図である。図33Bは、本実施の形態における赤外線検出装置の別の物理的構成を示す図である。なお、図1〜図4と同様の要素には同一の符号を付しており、詳細な説明は省略する。
本実施の形態における赤外線検出装置1Bは、図3で説明したのと同様に、空間4の底面と略垂直な設置面41であって底面から所定高さの設置面41に設置されている筐体2に取り付けられ、空間4内における検出対象範囲の熱画像を取得する。
赤外線検出装置1Bは、図31に示すように、赤外線検出部20と、走査部11と、制御処理部12とを備える。なお、図31に示す赤外線検出装置1Bは、実施の形態1に係る赤外線検出装置1に対して、赤外線検出部20の構成が異なる。
[走査部]
まず、本実施の形態における走査部11の構成等について説明する。
走査部11は、走査回転軸を有し、赤外線検出部20を当該走査回転軸で回転させることにより赤外線検出部20を構成する赤外線センサ102に空間4を走査させる。
走査部11は、例えば図33Aに示すように、モータ111と、設置台112とを備え、設置面41と略平行である走査回転軸S1を有する。モータ111は、制御処理部12に制御され、設置台112を走査回転軸S1で回転させることで、赤外線検出部20を走査回転軸S1で回転させる。設置台112は、赤外線検出部20が設置される。設置台112は、図33Aに示すように走査回転軸S1に対して、傾きを有するように、配置され、走査回転軸S1と交差している。
なお、走査部11は、例えば図33Bに示すように、モータ311と、設置台312とを備え、設置面41と傾きを有する走査回転軸S3を有するとしてもよい。この場合、モータ311は、制御処理部12に制御され、設置台312を走査回転軸S3で回転させることで、赤外線検出部20を走査回転軸S3で回転させる。設置台312は、赤外線検出部20が設置される。設置台312は、走査回転軸S3と略平行に配置されている。
[制御処理部]
次に、本実施の形態における制御処理部12の構成等について説明する。
制御処理部12は、走査部11を制御し、赤外線検出部20(赤外線センサ102)が取得した熱画像(入力画像)を処理し、筐体2に含まれる演算装置に出力する。なお、制御処理部12は、筐体2の演算装置に含まれるとしてもよい。歪補正処理や超解像処理など、制御処理部12が行う処理の詳細は実施の形態1で説明した通りであるので、ここでの説明は省略する。なお、歪補正処理や超解像処理は、後述する赤外線検出部20のICチップ204が行うとしてもよい。
[赤外線検出部]
次に、本実施の形態における赤外線検出部20の構成等について説明する。
図34は、本実施の形態における赤外線検出部20の分解斜視図である。図35は、本実施の形態における赤外線検出部20の断面概略図である。
赤外線検出部20は、図33Aまたは図33Bに示されるように、走査部11により走査回転軸S1または走査回転軸S3で回転されることにより空間4の温度検出対象範囲を走査する。本実施の形態では、赤外線検出部20は、赤外線センサ102とICチップ204とを赤外線センサ102の走査回転軸に沿った方向に略並設して収容するパッケージである。なお、パッケージは実施の形態1等におけるセンサモジュールの一態様に該当する。より具体的には、赤外線検出部20は、図34に示すように、パッケージ本体201と、赤外線センサ102と、ICチップ204と、窓孔203を有するパッケージ蓋205と、複数のサーミスタ207とを備える。
パッケージ本体201は、平板状に形成され、一表面側に赤外線センサ102とICチップ204とが赤外線センサ102の走査回転軸S1または走査回転軸S3に沿った方向に略並設するように実装される。また、パッケージ本体201は、走査回転軸S1または走査回転軸S3に沿って赤外線センサ102の近傍にサーミスタ207が配置される。また、パッケージ本体201の当該一表面側には、赤外線センサ102およびICチップ204を囲むパッケージ蓋205と接合されている。
なお、パッケージ本体201の基材の材料としては、例えば、セラミックや樹脂などの電気絶縁性材料を採用し得る。パッケージ本体201の電気絶縁性材料としてセラミックを採用する方が、エポキシ樹脂などの有機材料を採用する場合に比べて、パッケージ本体201の耐湿性および耐熱性を向上させることができる。
また、パッケージ本体201には、赤外線センサ102、ICチップ204などが電気的に接続される配線パターン(図示せず)が形成されている。また、パッケージ本体201は、上述の配線パターンに適宜接続された複数の外部接続用電極(図示せず)が形成されている。パッケージ本体201は、例えば、セラミック基板やプリント配線板などにより構成することができる。ここで、外部接続用電極と赤外線センサ102との距離より、外部接続用電極とICチップ204との距離が近いとよい。これにより、外部接続用電極を経由して外部に放熱する熱流が赤外線センサ102を通過しない配置とすることができるので、赤外線センサ102内の温度分布を軽減することが可能となる。なお、ICチップ204に対して、外部接続用電極と赤外線センサ102とが反対の位置に設置されているとより好ましく、より赤外線センサ102内の温度分布を軽減することが可能となる。
パッケージ蓋205は、赤外線センサ102およびICチップ204を囲み、パッケージ本体201の当該一表面側に接合される。パッケージ蓋205は、赤外線センサ102と対向する位置に、赤外線センサ102に赤外線を通す窓孔203を有する。窓孔203には、赤外線センサ102に赤外光を照射させるレンズ206が配置されている。
レンズ206は、赤外線センサ102に赤外線(赤外光)を照射させる。より具体的には、レンズ206は、上述したように、赤外線の透過率が高いシリコンやZnSなどで構成されている。レンズ206は、各方向から当該レンズ206に入射した赤外線(赤外光)が、赤外線センサ102を構成する1以上の赤外線検出素子それぞれに入射するように設計されている。
本実施の形態では、レンズ206の光心には走査回転軸S1または走査回転軸S3が通っている。そのため、赤外線検出部20(赤外線センサ102)およびレンズ206は、レンズ206の光心を通る走査回転軸S1または走査回転軸S3を中心に回転駆動される。
なお、レンズ206の光心に走査回転軸S1または走査回転軸S3が通っている場合に限らない。赤外線センサ102の当該配列面の中心(レンズ中心)には、赤外線センサ102が走査回転軸S1で回転される際の回転中心であって走査回転軸S1が通る回転中心を有するとしてもよい。
サーミスタ207は、赤外線センサ102の温度を検出するためのものであり、パッケージ本体201内において赤外線センサ102に近接して配置され、赤外線センサ102の温度に応じたアナログの出力電圧を発生する。本実施の形態では、サーミスタ207は、赤外線センサ102の近傍に配置される。サーミスタ207は、発生した出力電圧をICチップ204に出力する。なお、赤外線センサ102の温度を検出することができれば、サーミスタ207に限らず、熱伝対であってもよい。
[ICチップ]
次に、本実施の形態におけるICチップ204の構成等について説明する。
ICチップ204は、例えばASIC(:Application Specific IC)であり、赤外線センサ102の出力信号を信号処理する。なお、ICチップ204は、ASICに限らず、所望の信号処理回路が集積化されたものであればよい。ICチップ204は、例えばシリコン基板を用いて形成されてもよいし、例えば、GaAs基板、InP基板などの化合物半導体基板を用いて形成されたものでもよい。
本実施の形態では、ICチップ204は、ベアチップを用いている。このように、ベアチップを用いることで、ICチップ204のベアチップをパッケージングした場合に比べて、赤外線検出部20の小型化を図れるからである。
また、ICチップ204は、上述したように、赤外線センサ102とともにパッケージ本体201に実装される。ICチップ204は、赤外線センサ102の走査回転軸に沿った方向に、赤外線センサ102に略並設される。
ここで、ICチップ204は、2以上のサーミスタ207の出力結果に基づいて、赤外線センサ102の出力信号を補正処理して、補正処理した出力信号を信号処理してもよい。これにより、ICチップ204は、サーミスタを用いて熱画像の温度補正を行うことができるので、赤外線検出部20は、よりノイズの少ない綺麗な熱画像を取得することができる。なお、ICチップ204は、上述したように制御処理部12の一部機能を取り込んで、超解像処理等を行うとしてもよい。
ICチップ204は、赤外線センサ102と協働する。ICチップ204の回路構成は、赤外線センサ102の種類などに応じて適宜設計すればよく、例えば赤外線センサ102の出力信号を信号処理する信号処理回路などを採用し得る。以下、ICチップ204の回路構成の一例について説明する。
図36は、本実施の形態におけるICチップ204の回路ブロック図である。
ICチップ204は、図36に示すように、赤外線センサ102の出力電圧を増幅する第1の増幅回路2042aと、サーミスタ207の出力電圧を増幅する第2の増幅回路2042bと、赤外線センサ102の複数の出力電圧を択一的に第1の増幅回路2042aに入力するマルチプレクサ2041とを備える。また、ICチップ204は、第1の増幅回路2042aにて増幅された赤外線センサ102の出力電圧、および第2の増幅回路2042bにて増幅されたサーミスタ207の出力電圧をデジタル値に変換するA/D変換回路2043を備えている。ICチップ204の演算部2044は、赤外線センサ102とサーミスタ207との各出力電圧に対応してA/D変換回路2043から出力されるデジタル値を用いて物体400の温度を演算する。また、ICチップ204は、演算部2044での演算に利用するデータなどを記憶する記憶部であるメモリ2045を備える。また、ICチップ204は、赤外線センサ102を制御する制御回路2046を備える。
[赤外線センサの構成]
次に、赤外線センサ102の構成について説明する。
赤外線センサ102は、図33Aに示すように走査回転軸S1を中心に回転されることにより、空間4の温度検出対象範囲を走査し、走査した温度検出対象範囲の熱画像(赤外線)を示す出力信号を、ICチップ204に出力する。具体的には、赤外線センサ102は、1以上の赤外線検出素子が1以上の列で配列されており、当該1以上の赤外線検出素子により走査された空間4の温度検出対象範囲の赤外線を検出する。
当該1以上の赤外線検出素子の配列面は、設置面41に対して、傾きを有するように、配置されている。換言すると、当該配列面は、走査回転軸S1と傾きを有するように配置されている。また、当該配列面は、走査回転軸S1と交差している。これにより、例えば図3で上述したように、赤外線センサ102の視野中心軸が、設置面41の垂直方向より底面に向いている、すなわち下向きになる。
これにより、赤外線センサ102が設置されている位置近くの下方領域が有効視野角(画角)に含まれるようになる。このようにして、本実施の形態の赤外線センサ102は、下方領域の検出対象範囲を広げることができる。
なお、本実施の形態では、レンズ206の光心に走査回転軸S1または走査回転軸S3が通るとして説明しているが、上述したように、レンズ206の光心ではなく赤外線センサ102の当該配列面の中心(レンズ中心)に、赤外線センサ102が走査回転軸S1または走査回転軸S1で回転される際の回転中心であって走査回転軸S1が通る回転中心を有するとしてもよい。
また、赤外線センサ102を構成する複数の赤外線検出素子の配列は、実施の形態2〜実施の形態5で説明した配列を採用し得る。以下では、赤外線センサ102を構成する複数の赤外線検出素子の配列例について図を用いて説明する。
図37、図38、図39A〜図39Cは、本実施の形態における赤外線センサを構成する複数の赤外線検出素子の配列の一例を示す図である。なお、図2、図19A、図20等と同様の要素には同一の符号を付しており、詳細な説明は省略する。
(配列例1)
例えば、赤外線センサ102は、図37に示すように、赤外線センサ102の走査回転軸S1(または走査回転軸S3)に沿った方向にICチップ204と並設(または略並設)され、赤外線センサ102を構成する複数の赤外線検出素子の列は、走査回転軸S1を中心とした回転方向に対して沿って配列されているとしてもよい。
(配列例2)
また、例えば、赤外線センサ102は、図38に示す赤外線センサ102aであってもよい。すなわち、赤外線センサ102aは、図38に示すように、赤外線センサ102aの走査回転軸S1(または走査回転軸S3)に沿った方向にICチップ204と並設(または略並設)され、赤外線センサ102aを構成する複数の赤外線検出素子の列は、走査回転軸S1(または走査回転軸S3)を中心とした回転方向に対して所定角度の傾きを有するように、配列されているとしてもよい。ここで、所定角度は、赤外線センサ102aを構成する複数の赤外線検出素子それぞれの中心位置のすべてが、走査回転軸S1(または走査回転軸S3)を中心とした回転方向からみて異なる位置となるように調整された角度である。なお、所定角度や赤外線センサ102aの詳細は、実施の形態4および実施の形態5で説明した通りであるので、ここでの説明は省略する。
このように構成される赤外線センサ102aでは、実施の形態4等で説明したように、走査回転軸S1に垂直な方向の画素数を、実質的に増加させることができる。つまり、赤外線センサを構成する赤外線検出素子の実際の数を増加させずに走査回転軸S1に垂直な方向の解像度を向上させることができる。
(配列例3)
また、例えば、赤外線センサ102は、図39Aに示す赤外線センサ402aであってもよい。すなわち、赤外線センサ402aは、図39Aに示すように、赤外線センサ402aおよびICチップ204の並び方向に、複数の赤外線検出素子が2以上の列で配列されており、当該2以上の列のそれぞれの列は、並び方向においてずれて配列されているとしてもよい。図39Aの例では、赤外線センサ402aの2以上の列のそれぞれは、走査回転軸S1(または走査回転軸S3)を中心とした回転方向での先頭に近いほど、赤外線センサ402aおよびICチップ204の並び方向における一方の端に近づくようにずれている。図39Aでは、8行8列の赤外線検出素子が配列されている例が示されており、隣接する列における赤外線検出素子同士は1/8画素ずれている例が示されている。
なお、隣接する列における赤外線検出素子同士がずれて配列(画素ずれ配列)される例は、図39Aに示す赤外線センサ402aに限らない。例えば、図39Bに示す赤外線センサ402bであってもよいし、図39Cに示す赤外線センサ402cであってもよい。より具体的には、図39Bに示すように、16行4列の赤外線検出素子が配列され、隣接する列における赤外線検出素子同士が1/4画素ずれた赤外線センサ402bであってもよい。また、図39Cに示すように、32行2列の赤外線検出素子が配列され、隣接する列における赤外線検出素子同士が1/2画素ずれた赤外線センサ402cであってもよい。
このように構成される赤外線センサ402a等では、実施の形態2で説明したように、走査回転軸S1(または走査回転軸S3)に垂直な方向の画素数を、実質的に増加させることができる。つまり、赤外線センサを実際に構成する赤外線検出素子の数を増加させずに走査回転軸S1に垂直な方向の解像度を向上させることができる。
また、図39A〜図39Cでは全て、全画素数が64画素となる赤外線センサの配置について示している。つまり、16行4列(16×4)や32行2列(32×2)のように行と列との画素数が異なっているとしても、全画素数がn2(nは自然数)となる赤外線センサを用いるのが好ましい。これにより、8×8と同じASICすなわちICチップ204を用いて電気信号を温度信号に変換することができるのでASIC開発費を抑制することができるからである。
(配列例4)
また、例えば、赤外線センサ102は、実施の形態2で説明した図7、図9、図10、図11A〜図15に示す赤外線センサ202等のように、複数の赤外線検出素子が1以上の列で配列されており、当該列それぞれにおける複数の赤外線検出素子のそれぞれの底面42と略平行の横辺の幅は、底面42に近いほど、狭くなるよう形成されているとしてもよい。なお、詳細は、実施の形態2で説明した通りであるので、ここでの説明は省略する。
このように構成される赤外線センサ202等は、実施の形態2で説明したように、走査回転軸S1に対して視野中心軸を傾けた赤外線センサ202において各行の複数の赤外線検出素子で回転速度の違いがあっても上端から下端までの走査密度(解像度)を一定にすることができる。それにより、熱画像の歪補正が不用になるという効果を奏する。
[実施の形態6の効果等]
以上のように、本実施の形態によれば、走査時におけるICチップ204からの熱による影響を抑制することができる赤外線検出装置1Bを実現することができる。
ここで、走査時におけるICチップ204からの熱による影響を抑制できる効果について図を用いて説明する。
図40Aは、比較例における走査時におけるICチップ204からの熱による影響を説明するための図である。図40Bは、本実施の形態の赤外線検出装置における走査時におけるICチップからの熱による影響を説明するための図である。図40Aおよび図40Bでは、図38で説明したような傾きを有する(斜めの)赤外線センサ102aや図39A〜図39Cで説明したような隣接する列の赤外線検出素子がずれている(画素ずれ配列の)赤外線センサ402a等も同様のことが言えるため、図39Bに示す赤外線センサ402bを用いて説明する。また、図40Aおよび図40Bでは、赤外線センサ402bを構成する赤外線検出素子に対して、上から順に番号(1,2,3,4,5,6,7,8,…63,64)を割り振っている。
例えばASICであるICチップ204は発熱する。図40Aに示す比較例のICチップ204および赤外線センサ402bの配置では、走査回転軸を中心とした回転方向に向けて(図で横方向)温度分布が生じてしまう。そのため、図39Bで説明した隣接する列の画素がずれている赤外線センサ402bを用いて熱画像を取得し、超解像処理を行う場合、超解像処理後の画像に横縞ノイズが生じてしまうという問題がある。例えば4番の赤外線検出素子は低温であるが5番の赤外線検出素子は高温となり4−5番間に温度差ができてしまう。つまり、隣り合う番号の赤外線検出素子の間に温度差ができてしまうからである。このように、横方向(回転方向・走査方向)に温度分布ができてしまうと、超解像処理を行う場合には、ギザギザができるなどの横縞ノイズが生じてしまうなど、好ましくない処理結果を出力してしまう。
一方、図40Bに示す本実施の形態におけるICチップ204および赤外線センサ402bの配置では、走査回転軸に沿った方向に(図で縦方向)温度分布が生じることになる。この場合、1,2,3,…63,64番という順番で赤外線検出素子の温度が高くなっていくので、隣り合う番号の赤外線検出素子の間の温度差が小さくなる。そのため、取得した熱画像に対して超解像処理を行ったとしても、超解像処理後の画像に発生する横縞ノイズを抑制できる。つまり、本実施の形態の赤外線検出装置によれば、走査時におけるICチップ204からの熱による影響を抑制することができる。
なお、図40Bでは、赤外線センサ402bの真下にICチップ204が配置されている例を示している。すなわち、赤外線センサ402bの略中心位置とICチップの略中心位置とを結ぶ線(以下、第1の線)と走査回転軸との成す角度θ(図示せず)が、0°となる例を記載している。しかしこれに限られず、赤外線センサ402bおよびICチップ204は、赤外線センサ402bの走査回転軸に沿った方向に略並設されていればよい。ここで、略並設とは、例えば、第1の線と走査回転軸との成す角度θが−45°<θ<+45°となる配置である。言い換えると、「第1の線と走査回転軸との角度」<「第1の線と走査回転軸と垂直方向との角度」、となる配置であればよい。なお、上記した温度分布の影響を考慮すると、−15°<θ<+15°であることが、より好ましい。
さらに、例えば、サーミスタや熱伝対のような赤外線センサ402bの温度を検出可能な温度計測手段を備えるとよい。それにより、ICチップ204は、サーミスタ207の出力結果に基づいて、赤外線センサ402bの出力信号を補正処理して、補正処理した出力信号を信号処理することができる。つまり、ICチップ204は、サーミスタ207の出力結果に基づいて、ICチップ204による熱の影響を補正により抑制することにより、より綺麗な熱画像を出力することができる。よって、その後に超解像処理を行った場合でも、より横縞ノイズの少ない熱画像を取得することができるという効果を奏する。
ここで、図41Aおよび図41Bは、複数のサーミスタを用いる場合のサーミスタの配置例を示す図である。つまり、本実施の形態の赤外線検出装置1Bが2つのサーミスタ207を用いる場合、例えば図41Aに示すように配置される。本実施の形態の赤外線検出装置1Bが6つのサーミスタ207を用いる場合、例えば図41Bに示すように配置される。
なお、図41Aおよび図41Bでは、複数のサーミスタを用いる場合について示したが、これに限らない。本実施の形態の赤外線検出装置1Bに使用するサーミスタは1つでもいい。
(変形例1)
[本変形例の基礎となった知見]
実施の形態6で説明したように、1パッケージ内に赤外線センサと共にICチップのような発熱物が内蔵される場合、走査時におけるICチップからの熱による影響を考慮する必要がある。例えば図40Aに示すように、赤外線センサ402bとICチップ204とが並設される場合、横方向の回転方向(走査方向)に対して温度分布が生じる。赤外線センサ402bを用いて熱画像を取得し、超解像処理を行うと、走査方向に対する温度分布により超解像後の画像に横縞やギザギザの画像ノイズを発生させてしまうからである。
これと同様に、レンズ等の光学系による画像歪みの影響を考慮する必要がある。赤外線センサにより熱画像を取得する場合、光学系による画像歪みがある熱画像を取得すると、超解像後の画像に縞やギザギザの画像ノイズを発生させてしまうからである。
そこで、本変形例では、走査時における光学系による画像歪みの影響を抑制することができる赤外線検出装置について説明する。以下では、実施の形態6と異なるところを中心に説明する。
本変形例における赤外線検出装置の構成は、実施の形態6における赤外線検出装置1Bと比較すると、レンズ206B(不図示)の構成と赤外線センサ102等が取得する熱画像の特性とが異なる。その他の構成については実施の形態6と同様のため説明は省略する。
[レンズ206B]
図42Aは、比較例におけるレンズ206の光学構成の一例を示す図である。図42Bは、実施の形態6の変形例1におけるレンズ206Bの光学構成の一例を示す図である。
レンズ206Bは、赤外光を透過させる。本変形例では、レンズ206Bは、走査回転軸方向および走査方向の長さが略同一のレンズの当該走査方向の端部が切り落とされた形状からなる。
より具体的には、実施の形態6の赤外線検出装置1Bで用いられるレンズは、例えば図42Aに示されるように、光心206aを有し、走査回転軸方向および走査方向の長さが略同一のレンズ206である。一方、本変形例の赤外線検出装置で用いられるレンズ206Bは、図42Bに示されるように、図42Aのレンズ206の走査方向の端部が切り落とされた形状からなる。このような形状とすることにより、レンズ206Bでは、感度はレンズ206より低くなる。しかし、赤外線センサ102の横方向(走査方向)のPSF(Point Spread Function:点像強度分布)を縦方向(走査回転軸方向)のPSFより小さくすることができる。レンズが小さいほど感度が小さくなるが縦方向のレンズ径を横方向のレンズ径より大きくすることで、感度の低下を抑えながら横方向のPSFを小さくすることができる。
なお、レンズ206Bが図42Bに示すような形状である場合、赤外線センサ102等を構成する赤外線検出素子(画素)自体を、走査回転軸方向に長く、走査方向に短い長方形型としてもよい。
また、レンズ206は、例えば非(光)軸対称レンズであってもよく、例えばシリンドリカルレンズであってもよい。
[赤外線センサ102等]
赤外線センサ102等は、実施の形態6と同様に、赤外線検出素子が2以上の列で配列され、レンズの一部を通る走査回転軸を中心に回転されることにより検出対象範囲を走査し、検出対象範囲の熱画像を示す出力信号を出力する。そして、赤外線センサの少なくとも2つの赤外線検出素子は、走査回転軸と垂直方向からみてズレた位置に配置されている。
本変形例では、2以上の列で配列された赤外線検出素子のうちの第1赤外線検出素子であって走査方向の点像強度分布の半値幅が走査回転軸方向の点像強度分布の半値幅より小さい第1赤外線検出素子の数は、2以上の列で配列された赤外線検出素子のうちの第2赤外線検出素子であって走査方向の点像強度分布の半値幅が走査回転軸方向の点像強度分布の半値幅より大きい第2赤外線検出素子の数よりも多い。ここで、第1赤外線検出素子は、2以上の列で配列された赤外線検出素子のうちの4隅の赤外線検出素子を含むとしてもよい。
なお、赤外線センサ102等では、2以上の列で配列された赤外線検出素子における隣接する行の両端の赤外線検出素子のうち走査順に連続する第1位置の赤外線検出素子と第2位置の赤外線検出素子とにおける走査方向の点像強度分布の半値幅における差は、隣接する行または隣接する列の両端の赤外線検出素子のうち第1位置の赤外線検出素子と第1位置の赤外線検出素子に走査順で連続しない第3位置の赤外線検出素子とにおける走査方向の点像強度分布の半値幅の差よりも小さいとしてもよい。
以下、図41Aを例に挙げて具体的に説明する。
例えば図41Aにおける画素4と画像5では、画像4のPSFの左右(走査方向)の半値幅と、画素5のPSFの左右方向の半値幅との差異が大きいほど横縞やギザギザの画像ノイズを発生させやすくなる。しかしながら、画素4のPSFの上下(回転軸方向)の半値幅と画素5のPSFの上下(回転軸方向)と差異は、画像ノイズへの影響が少ない。
このように、赤外線センサは、走査方向に対する光学系による画像歪の影響により、走査方向に対して横縞やギザギザの画像ノイズを発生させてしまう。
そこで、本変形例では、走査方向に対する光学系による画像歪の影響を抑制するため、赤外線センサを構成する各赤外線検出素子(画素)において、回転軸方向のPSFより走査方向のPSFの方が小さくなるようにする。これは光学系すなわちレンズ206Bの構成による実現される。
なお、例えば、図41Aに示す画素1、4、61、64など、特に四隅の画素ほど光学系による歪の影響を受けやすい。そのため、例えば少なくとも画素1、4、61、64など少なくとも四隅の画素において走査方向のPSFの広がりが走査方向に垂直な方向のPSFの広がりより小さくなるように光学系やセンサ配置を設計することが望ましい。このようにすることにより、走査方向のPSF自体が小さくなり、画素4、5における走査方向のPSFの差異自体も小さくなるからである。
[変形例1の効果等]
以上のように、本変形例によれば、走査時における光学系による画像歪みの影響を抑制することができる赤外線検出装置を実現することができる。
なお、上記の変形例1では、赤外線センサとICチップとが配置されている赤外線検出装置について説明したが、これに限らない。変形例1における赤外線センサ102等は、ICチップ204と共に配置されていなくてもよい。また、上記の変形例1では、赤外線センサ102等を構成する複数の赤外線検出素子が、走査回転軸と垂直方向からみてズレた位置に配置されているとして説明したが、それに限らない。以下、この場合について説明する。
図43Aは、比較例におけるレンズ206と赤外線センサ602の配置の一例を示す図である。図43Bは、比較例における赤外線センサ602が取得した熱画像の画像歪みのイメージを示す図である。図44は、実施の形態6の変形例1における赤外線センサ602Bの光学特性の一例を説明するための図である。
図43Aに示すように、赤外線センサ602は4×4の赤外線検出素子(画素)を有する。しかし、赤外線センサ602が取得する熱画像602cは、レンズ206の端部の収差など光学系による歪みの影響を受ける。その際、図43Bに示す画素1、4、13、16など四隅の画素ほど光学系による歪の影響を受けやすい。
したがって、上述した図41Aに示す4×16の画素の場合と同様に、図44に示す赤外線センサ602Bでも、少なくとも画素1、4、13、16において走査方向のPSFの広がりが走査方向に垂直な方向のPSFの広がりより小さくなるように、光学系やセンサ配置を設計するとよい。つまり、本変形例では、赤外線センサ102等において、走査方向の点像強度分布の半値幅が走査回転軸方向の点像強度分布の半値幅より小さい第1赤外線検出素子は、2以上の列で配列された赤外線検出素子のうちの4隅の赤外線検出素子を含むとしてもよい。
図45は、比較例における赤外線センサ602の各画素の光学特性を説明するための図である。すなわち、赤外線センサ602が取得する熱画像602iでは、対角線上に配置される画素における走査方向(左右)のPSFの半値幅と回転軸方向(上下)のPSFの半値幅とは同じである。また、例えば領域P1および領域P4に含まれるような、回転軸方向の端部に属する画素では、左右(走査方向)のPSFの半値幅よりも、上下方向(回転軸方向)のPSFの半値幅の方が大きい。一方、例えば領域P2および領域P3に含まれるような、走査方向の端部に属する画素では、上下(回転軸方向)のPSFの半値幅よりも、左右方向(走査方向)のPSFの半値幅の方が大きい。つまり、一般的には、赤外線センサ602では、上下(回転軸方向)のPSFの半値幅が大きい画素と左右(走査方向)のPSFの半値幅の方が大きい画素とは同数になる。
そのため、本変形例では、1つでも左右(走査方向)のPSFの半値幅の方が小さい画素となる構成にすればよい。より具体的には、本変形例における赤外線センサ102等において、2以上の列で配列された赤外線検出素子のうちの第1赤外線検出素子であって走査方向の点像強度分布の半値幅が走査回転軸方向の点像強度分布の半値幅より小さい第1赤外線検出素子の数は、2以上の列で配列された赤外線検出素子のうちの第2赤外線検出素子であって走査方向の点像強度分布の半値幅が走査回転軸方向の点像強度分布の半値幅より大きい第2赤外線検出素子の数よりも多いとすればよい。これにより、走査時における光学系による画像歪みの影響を抑制できるという効果を得られる。
また、センサ上端画素と下端画素のPSFの違いより、センサ左端画素と右端画素のPSFの違いが小さいほうが望ましい。例えば、図46は、実施の形態6の変形例1における赤外線センサ602Cの光学特性を説明するための図である。すなわち、図46に示すように、赤外線センサ602Cにおいて、画素4と画素15とにおける左右(走査方向)のPSFの半値幅の差よりも、画素4と画素5とにおける左右(走査方向)のPSFの半値幅の差の方が小さいとしてもよい。この構成により、走査方向のPSF自体が小さくなり、画素4、5における走査方向のPSFの差異自体も小さくなる。
より具体的には、本変形例における赤外線センサ102等では、2以上の列で配列された複数の赤外線検出素子における隣接する行の両端の赤外線検出素子のうち走査順に連続する第1位置の赤外線検出素子と第2位置の赤外線検出素子とにおける走査方向の点像強度分布の半値幅における差は、隣接する行または隣接する列の両端の赤外線検出素子のうち第1位置の赤外線検出素子と第1位置の赤外線検出素子に走査順で連続しない第3位置の赤外線検出素子とにおける走査方向の点像強度分布の半値幅の差よりも小さいとしてもよい。これにより、走査時における光学系による画像歪みの影響を抑制できるという効果を得られるからである。
(変形例2)
上述した実施の形態6では、赤外線検出部20は、赤外線センサ402bとICチップ204を含んだパッケージであり、パッケージ自体が回転する構成を例として説明したが、これに限らない。
図47は、実施の形態6の変形例2における赤外線検出部20Aの構成の一例を説明するための図である。なお、図34等と同様の要素には同一の符号を付しており、詳細な説明は省略する。図47に示す赤外線検出部20Aは、実施の形態6に係る図34等に示す赤外線検出部20に対して、ミラー208が追加されており、走査回転軸が通る位置が異なる。
例えば図47に示すように、赤外線検出部20Aは、赤外線センサ402bとICチップ204とがパッケージに固定されている。ここで、実施の形態6と同様に、赤外線センサ402bは、走査方向に対して、赤外線センサ402bとICチップ204とが略並設されている。さらに、外部接続用ケーブル209は、赤外線センサ402bの距離よりも、ICチップ204との距離が近くなるように配置されている。なお、不図示だが、ICチップ204に対して、外部接続用電極と赤外線センサ402bとは反対の位置に設置されている。
なお、本変形例においては、走査方向に対して赤外線センサとICチップとが略並設された構成において、外部接続用ケーブルが、赤外線センサとの距離よりも、ICチップとの距離が近くなるように配置されていればよい。
図47では、本変形例の赤外線センサは、一例として、図40Bと同様の構成の赤外線センサ402bであるとして説明したが、これに限らない。本変形例の赤外線センサは、図34〜図35、図37〜図39B、図41A〜図41Bと同様の構成の赤外線センサであってもよく、赤外線センサの距離よりも、ICチップとの距離が近くなるように外部接続用ケーブルを配置してもよい。また、本変形例では、図47に示される赤外線センサ402bおよびレンズ206を、例えば図42A〜図46に示すものに適宜置き換えた構成としてもよい。
本変形例では、ミラー208は、赤外線センサ402bを構成する各赤外線検出素子の検出対象範囲を走査する。ミラー208は、例えば平面ミラーでもよく、一定の曲率を有するミラーであってもよい。
(実施の形態7)
[実施の形態7の基礎となった知見]
実施の形態1では、例えば図3または図4に示すように、当該1以上の赤外線検出素子の配列面(以下センサチップ面とも記載)を、設置面41(走査回転軸S1)に対して、傾きを有するように、配置することにより、下方領域の検出対象範囲を広げることができることを説明した。
しかしながら、実施の形態1における赤外線センサ102により出力された熱画像には、上述したように歪が含まれるので、制御処理部12で歪補正処理をする必要が生じる。そして、この補正処理のためには、制御処理部12に搭載されるマイコンを増やして処理能力を増やすなどが必要になる。これは、走査回転軸S1とセンサチップ面とを平行にする場合と比較すると、コストが増大することになる。また、実施の形態2で説明したように、当該1以上の赤外線検出素子の配列を台形するなど行い歪補正処理を不要にするとしても、赤外線センサ102自体のコストが増大することになる。
したがって、本実施の形態では、コストの増大を抑制しつつ、下方領域の検出対象範囲を広げることができる赤外線検出装置について説明する。
[赤外線検出装置の構成]
以下、実施の形態7における赤外線検出装置について、図面を参照しながら説明する。
図48は、実施の形態7における赤外線検出装置が筐体に搭載された場合の物理的構成の概観図である。図49は、実施の形態7における赤外線センサの構成の一例を示すイメージ図である。図50は、実施の形態7における赤外線センサ702とレンズ706との位置関係を説明するための図である。なお、図1〜図4と同様の要素には同一の符号を付しており、詳細な説明は省略する。
図48に示す赤外線検出装置1Cは、図3で説明した通り、空間の底面42と略垂直な設置面41であって底面42から所定高さの設置面41に設置された筐体2に取り付けられる。
図48に示す本実施の形態の赤外線検出装置1Cは、実施の形態1の赤外線検出装置1と比較して、設置台712と、センサモジュール701と赤外線センサ702とカバー703とレンズ706(不図示)の配置が異なり、設置面41と平行に配置されている。なお、設置台712、センサモジュール701、赤外線センサ702、カバー703およびレンズ706の構成は、これらの配置を除いて、実施の形態1の設置台112、センサモジュール101、赤外線センサ102、カバー103およびレンズと同じであるので説明を省略する。
赤外線センサ702は、上述したように、走査回転軸S1とセンサチップ面とが平行に配置されている以外は、実施の形態1等で説明した赤外線センサ102と同様である。より具体的には、赤外線センサ702は、赤外線検出素子が2以上の列で配列され、レンズ706の一部を通る走査回転軸S1を中心に回転されることにより検出対象範囲を走査し、検出対象範囲の熱画像を示す出力信号を出力する。2以上の赤外線検出素子の配列面は、設置面41に対して、平行となるように、配置されている。
なお、赤外線センサ702は、図49に示す赤外線センサ702Aであってもよい。すなわち、赤外線センサ702Aは、センサモジュール701Aとともに、設置台712に対して所定の角度(図でθg)を有してもよい。この場合の例については、実施の形態4等で説明した通りであるため、ここでの説明は省略する。
レンズ706は、赤外光を透過させる。本実施の形態では、例えば図50に示すように、レンズ706は、赤外線センサ702の中央および当該レンズ706の光心706aを結ぶ線l1と、赤外線センサ702の配列面に垂直な線l2との角度が、所定の角度(θi)になるように、赤外線センサ702の配列面に対してズレて配置されている。ここで、所定の角度(θi)は、10度以上60度以下である。
なお、レンズ706のその他の構成については、実施の形態1〜3で説明した通りであるので、ここでの説明は省略する。
[実施の形態7の効果等]
図51Aは、実施の形態1の比較例における赤外線センサ502のセンサ視野を示す図である。図51Bは、実施の形態1における赤外線センサ102のセンサ視野を示す図である。図52は、実施の形態7における赤外線センサ702のセンサ視野を示す図である。なお、図3〜図5B、図48〜図50と同様の要素には同一の符号を付しており、詳細な説明は省略する。
図51Aには、赤外線センサ502のセンサチップ面が走査回転軸S1(図で垂直方向)と平行であり、赤外線センサ102の中央および当該レンズ106の光心106aを結ぶ線と、赤外線センサ102のセンサチップ面に垂直な線とが略一致する場合について示されている。図51Bには、赤外線センサ102のセンサチップ面が走査回転軸(図で垂直方向)と非平行であり、赤外線センサ102の中央および当該レンズ106の光心106aを結ぶ線と、赤外線センサ102のセンサチップ面に垂直な線とが略一致する場合について示されている。図52には、赤外線センサ702のセンサチップ面が走査回転軸S1(図で垂直方向)と平行であり、赤外線センサ702の中央および当該レンズ706の光心706aを結ぶ線と、赤外線センサ702のセンサチップ面に垂直な線とが所定の角度となっているい場合について示されている。
図51Aと図51Bとを比較すると、図51Bに示す実施の形態1の赤外線センサ102のセンサ視野は、図51Aに示す比較例の赤外線センサ502のセンサ視野よりも下方になっている。一方で、図52に示す本実施の形態の赤外線センサ702のセンサ視野は、図51Bに示す実施の形態1の赤外線センサ102のセンサ視野と同様に、図51Aに示す赤外線センサ502のセンサ視野よりも下方になっているのがわかる。
以上、本実施の形態の赤外線検出装置ICによれば、レンズ706の位置をずらすことにより、走査回転軸S1とセンサチップ面とを平行にしたままで、赤外線検出装置1Cが設置された位置近くの下方領域の検出対象範囲を広げることができる。これにより、コストの増大を抑制しつつ、設置位置近くの下方領域の検出対象範囲を広げることができる赤外線検出装置1Cを実現できる。
(変形例)
実施の形態7では、レンズ706の位置をずらすことにより、走査回転軸S1とセンサチップ面とを平行にしたままで、下方領域の検出対象範囲を広げることができることを説明したが、これに限らない。
レンズの位置をずらすことと、走査回転軸S1とセンサチップ面とを非平行にすることとを組み合わせてもよい。以下、この場合について変形例として説明する。
[赤外線検出装置の構成]
以下、実施の形態7の変形例における赤外線検出装置について、図面を参照しながら説明する。
図53は、実施の形態7の変形例における赤外線検出装置が筐体に搭載された場合の物理的構成の概観図である。なお、図48と同様の要素には同一の符号を付しており、詳細な説明は省略する。
図53に示す本実施の形態の赤外線検出装置1Dは、実施の形態7の赤外線検出装置1Cと比較して、設置台812と、センサモジュール801と赤外線センサ802とカバー803とレンズ806の配置が異なり、設置面41と非平行に配置されている。なお、設置台812、センサモジュール801、赤外線センサ802、カバー803およびレンズ806の構成は、これらの配置を除いて、実施の形態7の設置台712、センサモジュール701、赤外線センサ702、カバー703およびレンズ706と同じであるので説明を省略する。
赤外線センサ802は、走査回転軸S1とセンサチップ面とが非平行に配置されている以外は、実施の形態7で説明した赤外線センサ702と同様である。より具体的には、赤外線センサ802は、赤外線検出素子が2以上の列で配列され、レンズ806の一部を通る走査回転軸S1を中心に回転されることにより検出対象範囲を走査し、検出対象範囲の熱画像を示す出力信号を出力する。そして、2以上の赤外線検出素子の配列面は、設置面41に対して、第1角度の傾きを有するように、配置されている。
なお、赤外線センサ802は、図49に示す赤外線センサ702Aと同様に、設置台812に対して所定の角度を有してもよい。
レンズ806は、赤外光を透過させる。本実施の形態では、レンズ806は、赤外線センサ802の中央および当該レンズ806の光心を結ぶ線と、赤外線センサ802の配列面に垂直な線との角度が、第2角度になるように、赤外線センサ702の配列面に対してズレて配置されている。
なお、レンズ806のその他の構成については、実施の形態1〜3で説明した通りであるので、ここでの説明は省略する。
以上のように構成された赤外線検出装置1Dの視野中心は、第1角度と第2角度とを足した第3角度だけ設置面41の垂直方向より下方となる。例えば45度下方を視野中心にしたい場合、赤外線センサ802を20度傾けて、レンズ806の位置を25度傾けることで合計45度となるようにすればよい。
[効果等]
図54は、実施の形態7の変形例における赤外線センサ802のセンサ視野を示す図である。なお、図53と同様の要素には同一の符号を付しており、詳細な説明は省略する。
図54には、赤外線センサ802のセンサチップ面が走査回転軸(図で垂直方向)と非平行であり(第1角度を有しており)、赤外線センサ802の中央および当該レンズ806の光心806aを結ぶ線と、赤外線センサ802のセンサチップ面に垂直な線とが第2角度となっている場合について示されている。
図51A、図52および図54を比較すると、図54に示す赤外線センサ802のセンサ視野は、図52に示す赤外線センサ702のセンサ視野と同様に、図51Aに示す赤外線センサ502のセンサ視野よりも下方になっているのがわかる。
以上、本実施の形態の赤外線検出装置IDによれば、レンズ806の位置をずらすことと、走査回転軸S1とセンサチップ面とを非平行にすることを併用することにより、赤外線検出装置1Cが設置された位置近くの下方領域の検出対象範囲を広げることができる。
実施の形態7で説明したように、レンズの位置をずらすことのみで下方領域の検出対象範囲を広げることはできるが、レンズの中心から遠い画素で収差の影響でボケが発生してしまう。一方、実施の形態1で説明したように赤外線センサに傾きを与えるだけだと、上述したように台形補正のためのセンサ構造変更や信号処理が複雑化しすぎる。
そのため、本変形例のように、レンズの位置をずらすことと赤外線センサを傾けることとを併用することで、収差によるボケ発生の効果も台形補正のためのマイコンやセンサチップ高コスト増も軽減し両方式のいい所取りができるという効果を奏する。
以上、本発明の一つまたは複数の態様に係る赤外線検出装置について、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本発明の一つまたは複数の態様の範囲内に含まれてもよい。例えば、以下のような場合も本発明に含まれる。
(1)図55Aおよび図55Bは、赤外線センサの構成する複数の赤外線検出素子の形の一例である。例えば、実施の形態2の図14等において説明したが、本発明の一態様における赤外線センサは、図55Aに示すようにそれぞれの幅が少しずつ狭くなっていく複数の赤外線検出素子で構成される赤外線センサ402dであってもよい。また、本発明の一態様における赤外線センサは、図55Bに示す赤外線センサ402eであってもよい。より具体的には、赤外線センサ402eは、赤外線センサ402eおよびICチップ204(不図示)の並び方向に、複数の赤外線検出素子が2以上の列で配列されており、当該2以上の列の数は、同一または異なる数の行ごとに、かつ、赤外線センサ402eおよびICチップ204における当該並び方向の一方の端に近いほどに、少なくなるとしてもよい。
(2)上記の実施の形態等において、赤外線センサの角度、サイズ、等に関して一例として記載したが、これらは記載した例に限らない。記載した角度やサイズから外れたとしても同様の効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれる。
(3)上記の各装置は、具体的には、マイクロプロセッサ、ROM、RAM、ハードディスクユニット、ディスプレイユニット、キーボード、マウスなどから構成されるコンピュータシステムである。前記RAMまたはハードディスクユニットには、コンピュータプログラムが記憶されている。前記マイクロプロセッサが、前記コンピュータプログラムにしたがって動作することにより、各装置は、その機能を達成する。ここでコンピュータプログラムは、所定の機能を達成するために、コンピュータに対する指令を示す命令コードが複数個組み合わされて構成されたものである。
(4)上記の各装置を構成する構成要素の一部または全部は、1個のシステムLSI(Large Scale Integration:大規模集積回路)から構成されているとしてもよい。システムLSIは、複数の構成部を1個のチップ上に集積して製造された超多機能LSIであり、具体的には、マイクロプロセッサ、ROM、RAMなどを含んで構成されるコンピュータシステムである。前記RAMには、コンピュータプログラムが記憶されている。前記マイクロプロセッサが、前記コンピュータプログラムにしたがって動作することにより、システムLSIは、その機能を達成する。
(5)上記の各装置を構成する構成要素の一部または全部は、各装置に脱着可能なICカードまたは単体のモジュールから構成されているとしてもよい。前記ICカードまたは前記モジュールは、マイクロプロセッサ、ROM、RAMなどから構成されるコンピュータシステムである。前記ICカードまたは前記モジュールは、上記の超多機能LSIを含むとしてもよい。マイクロプロセッサが、コンピュータプログラムにしたがって動作することにより、前記ICカードまたは前記モジュールは、その機能を達成する。このICカードまたはこのモジュールは、耐タンパ性を有するとしてもよい。
(6)本発明は、上記に示す方法であるとしてもよい。また、これらの方法をコンピュータにより実現するコンピュータプログラムであるとしてもよいし、前記コンピュータプログラムからなるデジタル信号であるとしてもよい。
また、本発明は、前記コンピュータプログラムまたは前記デジタル信号をコンピュータで読み取り可能な記録媒体、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、CD−ROM、MO、DVD、DVD−ROM、DVD−RAM、BD(Blu−ray(登録商標) Disc)、半導体メモリなどに記録したものとしてもよい。また、これらの記録媒体に記録されている前記デジタル信号であるとしてもよい。
また、本発明は、前記コンピュータプログラムまたは前記デジタル信号を、電気通信回線、無線または有線通信回線、インターネットを代表とするネットワーク、データ放送等を経由して伝送するものとしてもよい。
また、本発明は、マイクロプロセッサとメモリを備えたコンピュータシステムであって、前記メモリは、上記コンピュータプログラムを記憶しており、前記マイクロプロセッサは、前記コンピュータプログラムにしたがって動作するとしてもよい。
また、前記プログラムまたは前記デジタル信号を前記記録媒体に記録して移送することにより、または前記プログラムまたは前記デジタル信号を、前記ネットワーク等を経由して移送することにより、独立した他のコンピュータシステムにより実施するとしてもよい。
(7)上記実施の形態及び上記変形例をそれぞれ組み合わせるとしてもよい。