JP6762551B2 - 鋳造装置および鋳造方法並びにそれに用いられる金属板表面平滑化具 - Google Patents
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図1〜図3に示す本実施の形態の鋳造装置10は、冷却能を有する移動式の底壁20と、底壁20の上面21に配置され互いに離間して一方向に延在する一対の側壁30とを含む型枠と、型枠内に金属の溶湯M1(図2、図3)を供給する溶湯供給部50とを備えている。鋳造装置10はさらに、型枠内に供給した溶湯M1の上面を冷却するための冷却用の回転ロール40を備えている。回転ロール40は、一対の側壁30を挟んで底壁20の上面21と対向して配置されている。回転ロール40の回転軸40Cは底壁20と平行でかつ後堰部材55の前縁に平行に配置されている。かつ鋳造装置10はさらに、溶湯供給部50の先端から底壁20の上面21まで延びる後堰部材55と、後堰部材55の一端から底壁20上に突出する表面平滑化具としての浸漬部材57とを備えている。浸漬部材57は、鋳造される金属板の下面を平滑化する表面平滑化具として機能する。突出するとは、すなわち後堰部材55に接して、又は、後堰部材55に対して溶湯が間に入り込まない程度の間隙で、浸漬部材57が設置されることである。
最初に、回転ロール40が側壁30と接触しないようにz方向に離した状態で、回転ロール40を底壁20の先端の上方(z方向)に配置する。次に、回転ロール40を底壁20に近付ける。
次に、図3に示すように、溶湯供給部50から湯だまり12に向けて溶湯M1を供給する。溶湯供給部50から流れ出た溶湯M1は、表面平滑化具としての浸漬部材57の上方に注湯されて、湯だまり12に進入する。溶湯M1は、浸漬部材57の上面に沿って移動する(移動方向T)。浸漬部材57は断熱材で構成されているため、浸漬部材57上では溶湯M1の冷却が抑制される。その後、溶湯M1は底壁20上に到達する。溶湯M1は底壁20上を移動するにつれて、底壁20によって冷却されて徐々に凝固する。
溶湯の供給を続けたまま(すなわち、回転ロール40より上流側(x方向)に存在する溶湯の液面を維持したまま)、図3に示すように、回転ロール40を回転させる。回転は連れまわりであってもよく、駆動回転させてもよく、底壁20とロール周速を同期させて駆動回転させてもよい。回転ロール40の外面40Sは、側壁30および凝固層M3と接触しているため、それらを介して底壁20が−x方向(移動方向T)に力を受ける。このとき、底壁20がx方向に移動自在にされているため、底壁20は移動方向Tに移動する。その結果、非溶湯部は、回転ロール40の直下に向かって−x方向に移動する(図3)。底壁20と回転ロール40との間隔は、回転ロール40の直下に向かって徐々に狭くなるため、非溶湯部は回転ロール40によって徐々に圧下される。これにより、金属板Mの上面が平滑化される。
金属板Mが所定の長さになったら、溶湯M1の供給を止める。そして、金属板Mが湯だまり12から完全に出たら、回転ロール40の回転を止める。そして、底壁20の上で十分に冷却した後、金属板Mを底壁20と側壁30とから取り外す。これにより、上面が比較的平滑で、下面もリップルマークのない金属板Mを鋳造することができる。
表面平滑化具としての浸漬部材57を設けない場合、後堰部材55と底壁20の境界部において溶湯M1のメニスカスが発生する(図4(a))。図4(a)に示すように、後堰部材55と底壁20の境界部には、溶湯M1のメニスカスによる空洞S1が形成されている。このような現象は金属の材質、特にAl−Sn合金などのように、液相線から下回る温度になると流動性が急速に悪化するという金属の材質に由来すると考えられる。底壁20により溶湯を移動させながら冷却しているため、冷却されて流動性が低くなった下方側の部分が引っ張られることで、後堰部材55と溶湯M1の間のメニスカスの形状に周期的な変動が生じ、リップルマークが形成されると推測される。特に厚い板を作る場合は、移動速度を遅くする必要があり、この場合にメニスカスの近傍が凝固しやすくなって、鋳造される金属板表面に大きなリップルマークが生じ易くなる傾向が顕著である。これに対して、リップルマークの発生が抑制される理由は明らかではないが、表面平滑化具としての浸漬部材57を設けた場合に、メニスカスの周期的な変動の程度を抑制することができ、鋳造される金属板表面にリップルマークが生じ易くなる傾向も減少させることができるものと考えられる(図4(b)参照)。
底壁20、回転ロール40の材質は、熱伝導性が高く、鋳造材料と反応、固着等しなければ限定されず、例えば鉄系、銅系などの金属から形成することができる。Al−Sn合金板の鋳造では、底壁20、回転ロール40に銅系合金を使用すれば、効率よく冷却できるため、巣の発生を抑制することができる。
側壁30は、圧縮可能な耐火材料から形成されている。具体的には、セラミック等の耐火物の繊維材料(例えば、アルミナ、シリカ等)から成り、通気性のある圧縮可能部材から形成することができる。そのような材料として例えば、イソウール(登録商標)ボード、又は、イソウール(登録商標)ペーパボード等があげられる。
後堰部材55は、断熱性を有する部材、例えばイソウール(登録商標)ボード、鉄板等で裏打ちした不織布、又は、イソウール(登録商標)ペーパボード等から形成することができる。
表面平滑化具としての浸漬部材57も、後堰部材55と同様に断熱性を有する部材(イソウール(登録商標)ボード、不織布、イソウール(登録商標)ペーパボード等)で形成することでき、鉄板などで裏打ちしてもよい。浸漬部材57の材料としては、金属の溶湯M1を冷却するための底壁20よりも断熱性の高い材料であることが好ましい。
実際の生産を想定して以下の条件で行った。
回転ロール40は銅製で直径300mm、幅600mmの水冷ロールを用いた。
底壁20は銅製のものを用いた(約30mm厚)。
側壁30には、厚み30mm×長さ400mm×高さ100mmのイソウール(登録商標)ブランケットを並べた。側壁30の高さは溶湯M1の高さよりも高く(溶湯M1の高さの+10〜30mm)なる物を用い、底壁20の両端部(底壁20の短手方向の両側部)に沿って延在するよう設置した。側壁30同士の間隔を400mmとなるように設定した。これにより、鋳造する金属板の幅を400mmに設定した。
回転ロール40の水冷は、回転ロール40中の冷却路に水道水を循環させて行った。ロール温度は、ロール頂点を測温したが各実験中50℃以下に保たれていた。
底壁20を冷却するための冷却管としては幅100mm高さ30mmの軟鋼性缶を用い、供給チューブを介して水道水を缶に通水した。底壁20の移動速度は、1m/minとした。回転ロール40直下から後堰部材55までの距離(凝固距離)は、200mmとした。
溶湯M1の供給位置よりも上流側において、底壁20まで接触して鉛直方向に延びる後堰部材55を設けた。後堰部材55は、イソウール(登録商標)シートを鉄板に貼ったものから成り、両端が側壁30に接する長さと、側壁30と略同じ高さとした。
Al−40%mass%合金の溶湯M1を、成分が分離しない700℃以下にて、るつぼから樋(溶湯供給部50)を介して液面が一定高さになるように注湯した。
パターン1と同様に、溶湯M1をるつぼから桶(溶湯供給部60)を介して注湯する一方、表面平滑化具としての浸漬部材57を設けずに、後堰部材65の角度により、リップルマークが解消できないか確認した。
前述したように、後堰部材65の一端には浸漬部材を設けず、(底壁20に対する)後堰部材65の角度を変えて製造を行った。角度については図6(b)に示す通り、30度、60度、75度、90度とした。溶湯M1の高さCは一律、20mmとした。
溶湯供給部70として、後堰部材75と一体になった桶を用いて、溶湯M1を添わして注湯することにより、リップルマークが解消できないか確認した。パターン2と同様に、後堰部材75の一端には浸漬部材を設けず、(底壁20に対する)後堰部材75の角度を変えて製造を行った。角度については図7(b)に示す通り、30度、60度とした。パターン2と同様に、溶湯M1の高さCは一律、20mmとした。
図5(b)、図6(b)、図7(b)に示すように、浸漬させた表面平滑化具としての浸漬部材57を設けたパターン1では、浸漬部材57を設けないパターン2、3と異なり、全幅400mm幅にわたってリップルマークの発生を防止することができた。
一方、後堰部材65、75の角度を変える場合(パターン2、3)や、溶湯M1を添わして注湯する場合(パターン3)も、メニスカスの発生に影響を与えることを予想し、パターン2、パターン3の実験を行ったが、リップルマークの発生を抑制することは出来なかった。リップルマークの発生の判断は、図8に示す例を基準に目視により行った。
12 湯だまり
20 底壁
30 側壁
40 回転ロール
50 溶湯供給部
55 後堰部材
57 浸漬部材
M1 溶湯
Claims (7)
- 金属の溶湯を冷却して金属板を鋳造する金属板の鋳造装置であって、
金属の溶湯を移動させながら冷却する移動式の底壁と、
底壁の側方を仕切る一対の側壁と、
湯だまりに金属の溶湯を供給する溶湯供給部と、
溶湯供給部による溶湯の供給位置よりも上流側に設けられた後堰部材と、
溶湯供給部による溶湯の供給位置よりも下流側において、湯だまり内の溶湯に上方から接触して溶湯を冷却する回転ロールと、
後堰部材における底壁側の端部から溶湯の移動方向に設置され、湯だまりの幅方向にわたって延び、湯だまり内の溶湯の高さよりも低い高さを有して、断熱性を有する、表面平滑化具としての浸漬部材と、を備え、
湯だまりは、底壁と、一対の側壁と、回転ロールと、後堰部材と、浸漬部材とで囲まれて形成される、金属板の鋳造装置。 - 浸漬部材の先端は、回転ロールの最下点よりも上流側にある、請求項1に記載の金属板の鋳造装置。
- 金属の溶湯を移動させながら冷却する移動式の底壁と、
底壁の側方を仕切る一対の側壁と、
湯だまりに金属の溶湯を供給する溶湯供給部と、
溶湯供給部による溶湯の供給位置よりも上流側に設けられた後堰部材と、
後堰部材における底壁側の端部から溶湯の移動方向に設置され、湯だまりの幅方向にわたって延び、湯だまり内の溶湯の高さよりも低い高さを有して、断熱性を有する、表面平滑化具としての浸漬部材と、を備える金属板の鋳造装置を用いて金属の溶湯を冷却して金属板を鋳造する金属板の鋳造方法であって、
移動式の底壁と、底壁の側方を仕切る一対の側壁と、後堰部材と、浸漬部材とによって囲まれる湯だまりに、金属の溶湯を供給するステップと、
底壁を移動させることで金属の溶湯を移動させながら冷却するステップと、を含み、
後堰部材および浸漬部材は、非移動式であって固定的に配置されている、金属板の鋳造方法。 - 金属の溶湯を移動させながら冷却する移動式の底壁と、
底壁の側方を仕切る一対の側壁と、
湯だまりに金属の溶湯を供給する溶湯供給部と、
溶湯供給部による溶湯の供給位置よりも上流側に設けられた後堰部材と、
後堰部材における底壁側の端部から溶湯の移動方向に設置され、湯だまりの幅方向にわたって延び、湯だまり内の溶湯の高さよりも低い高さを有して、断熱性を有する、表面平滑化具としての浸漬部材と、
溶湯供給部による溶湯の供給位置よりも下流側において、湯だまり内の溶湯に上方から接触して溶湯を冷却する回転ロールと、を有する金属板の鋳造装置を用いて金属の溶湯を冷却して金属板を鋳造する金属板の鋳造方法であって、
移動式の底壁と、底壁の側方を仕切る一対の側壁と、回転ロールと、後堰部材と、浸漬部材とによって囲まれる湯だまりに、金属の溶湯を供給するステップと、
底壁を移動させることで金属の溶湯を移動させながら冷却するステップと、
湯だまりへの溶湯の供給位置よりも下流側において底壁の上方に設けられた回転ロールを湯だまり内の溶湯に接触させて溶湯を冷却するステップと、
を含む、金属板の鋳造方法。 - 浸漬部材の先端は、回転ロールの最下点よりも上流側にある、請求項4に記載の金属板の鋳造方法。
- 表面平滑化具としての浸漬部材の高さは、2mm〜10mmであり、湯だまり内の溶湯の移動方向に沿った浸漬部材の長さは、5mm〜100mmである、請求項3乃至5のいずれかの請求項に記載の金属板の鋳造方法。
- 金属板として、5〜45mass%の錫を含有するAl−Sn合金板を製造する、請求項3乃至6のいずれかの請求項に記載の金属板の鋳造方法。
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JP2016028168A JP6762551B2 (ja) | 2016-02-17 | 2016-02-17 | 鋳造装置および鋳造方法並びにそれに用いられる金属板表面平滑化具 |
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