JP6760880B2 - マグネシウム又はマグネシウム合金の研磨用組成物及びそれを用いた研磨方法 - Google Patents
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例えば、特許文献1には、マグネシウム板をアルミナ砥粒を備えるナイロンワイヤ製ブラシロールを用いて研磨することにより、表面酸化膜の厚みを減らし、光沢度保持率を高めることが開示されている。
しかしながら、このような従来の研磨方法では、グロスの高い光沢度にすぐれた表面を効率的に得ることができない場合があった。
本実施形態の研磨用組成物は、グロス向上剤を含む。グロス向上剤とは、これを含有することによって、研磨した際の被研磨材料であるマグネシウムおよびマグネシウム合金の表面のグロスを向上させることが出きる成分を意味する。グロス向上剤は、アルキレングリコールの重合体または共重合体、ポリビニルピロリドン、6価以上の糖アルコール及び合成多糖類からなる群から選ばれる1種または2種以上の化合物である。
ポリビニルピロリドンは、ポリビニルピロリドン又はビニルピロリドン(含有)共重合体であってよく、好ましくは、ポリビニルピロリドンであってもよい。分子量は5000〜500000であってもよい。
グロス向上剤の含有量は特に限定されるものではないが、0.01〜10.0質量%であってよく、0.05〜5.0質量%であってもよい。
砥粒は、シリカ、アルミナ、セリア、チタニア、ジルコニア、酸化クロム、酸化マグネシウム、二酸化マンガン、酸化亜鉛、ベンガラ粒子等の酸化物、窒化ケイ素、窒化ホウ素、炭化ケイ素粒子、炭化ホウ素粒子等の炭化物粒子、ダイヤモンド粒子、炭酸カルシウムや炭酸バリウム等の炭酸塩等であってもよい。有機砥粒の例としては、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)粒子やポリ(メタ)アクリル酸粒子(ここで(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸およびメタクリル酸を包括的に指す意味である。)、ポリアクリロニトリル粒子等が挙げられる。砥粒は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
砥粒の形状は特に限定されず、球形であってもよく、非球形であってもよい。非球形をなすシリカ粒子の具体例としては、ピーナッツ形状(すなわち、落花生の殻の形状)、繭形状、突起付き形状等の形状を有するシリカ粒子が挙げられる。シリカ粒子は、同形状の1種を単独で使用してもよく、形状の異なる2種以上を組み合わせて使用してもよい。例えば、多くがピーナッツ形状をしたシリカ粒子を好ましく採用し得る。
本実施形態の研磨用組成物は、研磨材を分散させ他の成分を分散又は溶解する分散媒又は溶媒としての水を含有する。水は、他の成分の作用を阻害することを抑制するという観点から、不純物をできる限り含有しない水が好ましい。具体的には、イオン交換樹脂にて不純物イオンを除去した後、フィルタを通して異物を除去した純水や超純水、又は蒸留水が好ましい。
本実施形態の研磨用組成物のpHは10以上であり、好ましくは11以上であってもよい。pHの調整は、添加剤であるpH調整剤によって行ってもよい。pH調整剤は、研磨用組成物のpHを調整し、これにより、研磨対象物の研磨速度や研磨材の分散性等を制御することができる。pH調整剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合しても用いてもよい。
本実施形態の研磨用組成物は、その性能を向上させるために、必要に応じて、pH調整剤以外の添加剤をさらに含有してもよい。例えば、研磨用組成物は、錯化剤、エッチング剤、酸化剤等の研磨速度をさらに高める作用を有する添加剤を含有してもよい。また、研磨用組成物は、研磨対象物の表面や研磨材の表面に作用する水溶性重合体(共重合体やその塩、誘導体でもよい)を含有してもよい。さらに、研磨用組成物は、研磨材の分散性を向上させる分散剤や研磨材の凝集体の再分散を容易にする分散助剤のような添加剤を含有してもよい。さらに、研磨用組成物は、防腐剤、防黴剤、防錆剤のような公知の添加剤を含有してもよい。
酸化剤の例としては、過酸化水素、過酢酸、過炭酸塩、過酸化尿素、過塩素酸塩、過硫酸塩、硝酸、過マンガン酸カリウム等が挙げられる。
防食剤の例としては、界面活性剤、アルコール類、高分子、樹脂、アミン類、ピリジン類、テトラフェニルホスホニウム塩、ベンゾトリアゾール類、トリアゾール類、テトラゾール類、安息香酸等が挙げられる。
防腐剤の例としては、次亜塩素酸ナトリウム等があげられる。また、防黴剤の例としては、オキサゾリジン−2,5−ジオン等のオキサゾリン等があげられる。
本発明の研磨用組成物の研磨対象物はマグネシウム又はマグネシウム合金である。
マグネシウム合金は、特に限定されないがアルミニウムを3質量%以上含有するMg−Al系合金であってもよい。Mg−Al系合金としては、Mg−Al−Zn系合金、Mg−Al−Mn系合金、Mg−Al−RE系合金、Mg−Al−Ca系合金及びMg−Al−Sr系合金などが挙げられる。
本実施形態の研磨用組成物の製造方法は特に限定されるものではなく、グロス向上剤と、砥粒と、所望により各種添加剤とを、水で撹拌、混合することによって製造することができる。例えば、ポリエチレングリコールと、シリカと、pH調整剤等の各種添加剤とを、水中で撹拌、混合することによって製造することができる。各成分を混合する際の温度は特に限定されるものではないが、10℃以上40℃以下が好ましく、溶解速度を向上させるために加熱してもよい。また、混合時間も特に限定されない。
本実施形態の研磨用組成物は、例えば、通常の金属または合金からなる研磨対象物の研磨で通常に用いられる研磨装置及び研磨条件で使用することができる。研磨装置としては、一般的な片面研磨装置や両面研磨装置が使用可能である。片面研磨装置を用いて研磨する場合には、キャリアと呼ばれる保持具を用いて研磨対象物を保持し、研磨用組成物を供給しながら、研磨パッドが貼付された定盤を研磨対象物の片面に押しつけ、定盤を回転させることにより研磨対象物の片面を研磨する。両面研磨装置を用いて研磨する場合には、キャリアを用いて研磨対象物を保持し、研磨用組成物を供給しながら、研磨パッドが貼付された定盤を研磨対象物の両面に押しつけ、研磨パッドと研磨対象物を相反する方向に回転させることにより研磨対象物の両面を研磨する。いずれの研磨装置を用いた場合でも、研磨パッド及び研磨用組成物と研磨対象物との間の摩擦による物理的作用と、研磨用組成物が研磨対象物にもたらす化学的作用によって、研磨対象物は研磨される。
さらに、研磨条件のうち研磨用組成物の供給速度は、研磨対象物の種類や、研磨装置の種類や、他の研磨条件に依存するが、研磨用組成物が研磨対象物及び研磨パッドの全体に均一に供給されるのに十分な供給速度であることが好ましい。
まず、表1に示される含有量(質量%)となるように、砥粒としてコロイダルシリカ粒子、グロス向上剤として表1に示される化合物群から選ばれる化合物、pH調整剤として水酸化カリウム及び純水を混合して、実施例1〜28の研磨用組成物を製造した。また、実施例1〜28のグロス向上剤に替えて、表1に示す化合物群から選ばれる化合物を配合して、比較例1〜14、17〜25の研磨用組成物を製造した。比較例16および19ではグロス向上剤およびこれに替わる化合物を添加しなかった。実施例および比較例の研磨用組成物中の各成分の含有量(質量%)は表1に記載の通りであり、残部は純水である。また、各研磨用組成物のpHは、表1に記載の通りである。比較例19〜25は、pHを9に調整した。さらに、比較例15では研磨用組成物を使用せずに、表面に#240相当のアルミナ砥粒を有するブラシにより、0.5wt%水酸化ナトリウムの水溶液を流しながら特許文献1と同様の方法で研磨した。
研磨装置:片面研磨装置(定盤の直径:380mm)
研磨パッド:スウェード製研磨パッド
研磨荷重:9.8kPa(100gf/cm2)
定盤の回転速度:90min−1
研磨速度(線速度):10.7m/分
研磨時間:5分
研磨用組成物の供給速度:10mL/分
結果を表1に示す。表1に示す結果から分かるように、実施例1〜28は、基板のグロス値が1770以上であり、十分に優れた光沢面が得られた。これに対して、比較例1〜25はグロス値が1770未満であり、表面の光沢性が不十分であった。
Claims (7)
- アルキレングリコールの重合体または共重合体、ポリビニルピロリドン、6価以上の糖アルコール及び合成多糖類からなる群から選ばれる化合物の1種または2種以上のグロス向上剤と、砥粒と、水とを含有し、pHが10以上である、マグネシウム又はマグネシウム合金の研磨用組成物。
- 前記グロス向上剤が、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ソルビトール、プルランから選ばれる1種又は2種以上である請求項1に記載のマグネシウム又はマグネシウム合金の研磨用組成物。
- 前記グロス向上剤が、ポリエチレングリコール及びポリビニルピロリドンから選ばれる1種又は2種である請求項2に記載のマグネシウム又はマグネシウム合金の研磨用組成物。
- 前記グロス向上剤が、ソルビトール、プルランから選ばれる1種又は2種である請求項2に記載のマグネシウム又はマグネシウム合金の研磨用組成物。
- 前記マグネシウム合金はアルミニウムを3質量%以上含有するMg−Al系合金である請求項1〜4のいずれか一項に記載のマグネシウム又はマグネシウム合金の研磨用組成物。
- 前記Mg−Al系合金は、Mg−Al−Zn系合金、Mg−Al−Mn系合金、Mg−Al−RE系合金、Mg−Al−Ca系合金及びMg−Al−Sr系合金から選択される請求項5に記載のマグネシウム又はマグネシウム合金の研磨用組成物。
- 請求項1〜6のいずれか一項に記載の研磨用組成物を用いて、マグネシウム又はマグネシウム合金を研磨することを特徴とする研磨方法。
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