JP6754459B2 - 羊膜間葉系細胞組成物の製造方法及び凍結保存方法、並びに治療剤 - Google Patents

羊膜間葉系細胞組成物の製造方法及び凍結保存方法、並びに治療剤 Download PDF

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Description

本発明は、羊膜から、細胞治療応用に適した間葉系細胞(Mesenchymal stromal cell:MSC)を高純度かつ簡便に分離することによる間葉系細胞組成物の製造方法に関する。さらに本発明は、凍結保存された間葉系細胞組成物の製造方法、並びに間葉系細胞組成物を含む治療剤に関する。
間葉系幹細胞は、骨髄に存在することが指摘された体性幹細胞であり、幹細胞として骨、軟骨及び脂肪に分化する能力を有する。間葉系幹細胞は、細胞治療における有望な細胞ソースとして注目され、最近では、胎盤、臍帯、卵膜などの胎児付属物にも存在することが知られている。
現在、間葉系幹細胞は、分化能以外に免疫抑制能を有することで注目されており、骨髄由来間葉系幹細胞を用い、造血幹細胞移植における急性移植片対宿主病(GVHD)、及び炎症性腸疾患のCrohn病に対する治験が進んでいる。本発明者らは胎児付属物由来間葉系幹細胞の免疫関連疾患に対する臨床応用を目指した研究を進めてきた。これまでに本発明者らは、胎児付属物由来間葉系幹細胞が骨髄由来間葉系幹細胞と同様の分化能を有すること(非特許文献6)、卵膜由来間葉系幹細胞がラット自己免疫性心筋炎モデルの病態を改善すること(非特許文献7)、並びに臍帯由来間葉系幹細胞がマウス急性移植片対宿主病(GVHD)モデルの救命率を改善すること(非特許文献8)を報告してきた。胎児付属物由来間葉系幹細胞は、骨髄由来間葉系幹細胞と比較し、一度に多くの間葉系幹細胞が得られ、大量培養が短期間・低コストに可能であり、非侵襲的に採取可能であり、免疫抑制効果も高い(非特許文献7)。これらのことから、胎児付属物由来間葉系幹細胞を含むMSCは、その著明な免疫抑制効果により、様々な免疫関連疾患を対象とした細胞治療に応用可能である。
これまでに、胎児付属物である卵膜、胎盤および羊水から、多能性ヒト胎児由来幹細胞を取得する方法が報告されている(特許文献1)。特許文献1では、これら幹細胞をc-kit(CD117)陽性と位置づけ、フローサイトメトリーにより分離する方法が記載されている。また、胎盤および臍帯から、成人または小児の様々な細胞に分化する能力を有する幹細胞・前駆細胞を取得する方法も報告されている(特許文献2)。特許文献2では、様々な臓器や組織を構成する細胞に分化する能力を有する(=間葉系幹細胞以上の分化能力を有する)幹細胞・前駆細胞が胎盤および臍帯に含まれており、その分離に関する方法が記載されている。
これら胎児付属物由来の幹細胞および前駆細胞を含む細胞分離には、一般にトリプシン、コラゲナーゼ又はディスパーゼ等の分解酵素が用いられている(特許文献1及び2、非特許文献1〜4)。胎児付属物のうち卵膜は、羊水に接し最も胎児側に位置する羊膜と、その外側に位置する絨毛膜とに分けられ、卵膜(羊膜および絨毛膜)由来のMSCも分解酵素を用いて分離する方法が一般的である(非特許文献1及び4)。
胎児付属物の卵膜の一部である羊膜は、羊水に接する上皮細胞層と、その下にあるMSCを含む細胞外基質層とに分けられる(図1)。そのため、羊膜全体をトリプシンにて処理した場合、細胞外基質層のみならず上皮細胞層を支持する基底膜も消化され、結果、上皮細胞とMSCの混合物となるという問題があった。この問題の解決方法としては、非特許文献1〜3のように、羊膜からMSCを高純度に分離するために、分解酵素や用手的に上皮細胞を先に取り除き、残った細胞外基質層を再度分離酵素で処理し、MSCを回収する方法がある。しかし、これらの方法では、完全には上皮細胞を除去できない、又はMSCの回収量が下がるという問題があった。
更に、卵膜MSCをオンデマンドで細胞治療用に使用するには、凍結保存が必須である。研究レベルではジメチルスルホキシド(DMSO)をベースとした各種の細胞凍結保存液が市販され、骨髄MSCの臨床試験でもDMSOを10%含有した凍結保存液が用いられているが、解凍後の細胞の生存率が下がるという問題があった。
特許第4330995号 特許第3934539号 特表第2010−518096号
Am J Obstet Gynecol. 2004;190(1):87-92. Am J Obstet Gynecol. 2006;194(3):664-73. Current Protocols in Stem Cell Biology 1E.5 J Tissue Eng Regen Med. 2007;1(4):296-305. Cytotherapy. 2006;8(4):315-7. Stem Cells. 2008;26(10):2625-33. J Mol Cell Cardiol. 2012;53(3):420-8. Cytotherapy. 2012;14(4):441-50. BMC Biotechnology 2012;12:49.
ヒト羊膜由来MSCの細胞製剤化を考えると、細菌・ウイルス等のコンタミネーションを排除するため、出来るだけ製造工程は簡便であることが好ましい。複数回の酵素処理は、途中、洗浄・遠心操作等による酵素除去が必要となり、MSC回収効率を下げる結果をもたらす。また、既知の方法では、分解酵素による工程で全ての上皮細胞が除去される訳ではなく(非特許文献3及び実施例3)、依然多くの上皮細胞が羊膜に接着している状態にある。
また、細胞保存液に関しては、DMSOは細胞毒性を有することから、できるだけ濃度を下げることが望ましい。ラット骨髄由来MSCを用い、DMSO含有量を減らした凍結保存液の報告もなされている(非特許文献9)。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、一回の酵素処理のみで、簡便かつ無菌的に高純度な羊膜由来MSCを分離することによる間葉系細胞組成物の製造方法を提供することを課題とする。更に本発明は、細胞凝集を抑制し、MSC移植に至適化されている凍結保存された間葉系細胞の製造方法を提供することを課題とする。さらに本発明は、上記方法で製造した羊膜由来MSCを含む細胞治療剤を提供することを課題とする。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、羊膜を、コラゲナーゼと、サーモリシン及び/又はディスパーゼとにより酵素処理し、酵素処理した羊膜をメッシュに通すことによって、間葉系細胞を高純度に分離できることを見出した。さらに本発明者らは、ジメチルスルホキシドを5〜10質量%含有し、ヒドロキシルエチルデンプンを5〜10質量%またはデキストランを1〜5質量%含有する溶液中に間葉系細胞を含む混合物を凍結保存することによって凍結保存された間葉系細胞をMSC移植に至適化した形で製造できることを見出した。さらに本発明者らは、上記の方法で得た間葉系細胞組成物が細胞治療剤として有用であることを実証した。本発明はこれらの知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本明細書によれば以下の発明が提供される。
(1)羊膜を、コラゲナーゼと、サーモリシン及び/又はディスパーゼとにより酵素処理する工程;及び
酵素処理した羊膜をメッシュに通す工程:
を含む、間葉系細胞組成物の製造方法。
(2)メッシュを通過した細胞を回収する工程;及び
回収した細胞を培養する工程:
をさらに含む、(1)に記載の間葉系細胞組成物の製造方法。
(3) 前記メッシュを通過した細胞を回収する工程が、倍量又はそれ以上の量の培地又は平衡塩溶液で濾液を希釈した後、遠心分離により間葉系細胞を回収する工程である、(2)に記載の間葉系細胞組成物の製造方法。
(4) コラゲナーゼの濃度が50CDU/ml〜1000CDU/mlであり、サーモリシンおよび/又はディスパーゼの濃度が100PU/ml〜800PU/mlである、(1)から(3)の何れかに記載の間葉系細胞組成物の製造方法。
(5) 酵素処理する工程が、30〜40℃で30分以上処理する工程である、(1)から(4)の何れかに記載の間葉系細胞組成物の製造方法。
(6) 酵素処理する工程が、スターラー又はシェーカーを用いて10rpm/分〜100rpm/分で30分以上撹拌する工程である、(1)から(5)の何れかに記載の間葉系細胞組成物の製造方法。
(7) 羊膜が帝王切開により得られたものである、(1)から(6)の何れかに記載の間葉系細胞組成物の製造方法。
(8) メッシュのポアサイズが40〜200μmである、(1)から(7)の何れかに記載の間葉系細胞組成物の製造方法。
(9) 羊膜をメッシュを通す工程が自然落下である、(1)から(8)の何れかに記載の間葉系細胞組成物の製造方法。
(10) CD324及びCD326陽性上皮細胞の含有率が20%以下であり、CD90陽性細胞の含有率が75%以上であり、および生細胞率が80%以上である、間葉系細胞組成物。
(11) (1)から(9)の何れかに記載の間葉系細胞組成物の製造方法により得られる、(11)に記載の間葉系細胞組成物。
(12) (10)又は(11)に記載の間葉系細胞組成物を0.05質量%より多く5質量%以下のアルブミンを含有する培地にて培養することにより得られる、間葉系細胞培養組成物。
(13) ジメチルスルホキシドを5〜10質量%含有し、ヒドロキシルエチルデンプンを5〜10質量%またはデキストランを1〜5質量%含有する溶液中に間葉系細胞を含む混合物を凍結保存する工程を含む、凍結保存された間葉系細胞の製造方法。
(14) 前記溶液が、さらにヒトアルブミンを0質量%より多く5質量%以下含有する溶液である、(13)に記載の凍結保存された間葉系細胞の製造方法。
(15) 前記間葉系細胞が、(1)から(9)の何れかに記載の方法により製造された間葉系細胞組成物に含まれる間葉系細胞、請求(10)又は(11)に記載の間葉系細胞組成物に含まれる間葉系細胞、又は(12)に記載の間葉系細胞培養組成物に含まれる間葉系細胞である、(13)又は(14)に記載の凍結保存された間葉系細胞の製造方法。
(16) (13)から(15)の何れかに記載の方法により得られる凍結保存された間葉系細胞を解凍後、輸液製剤により2倍以上に希釈する工程を含む、間葉系細胞投与用組成物を製造する方法。
(17) (10)又は(11)に記載の間葉系細胞組成物、および/又は(12)に記載の間葉系細胞培養組成物、および/又は(16)に記載の方法により製造される間葉系細胞投与用組成物を有効成分として含む、細胞治療剤。
(18) 注射用製剤である、(17)に記載の細胞治療剤。
(19) 細胞塊又はシート状構造の移植用製剤である、(17)に記載の細胞治療剤。
(20) 移植片対宿主病、炎症性腸疾患、全身性エリテマトーデス、肝硬変、又は放射線腸炎から選択される疾患の治療剤である、(17)から(19)の何れかに記載の治療剤。
本発明によれば、ヒト羊膜由来MSCを簡易且つ精度良く分離することができる。従って、本発明は再生医療分野において有効性が示されているMSCの産業利用促進につながることが期待できる。
ヒト羊膜の組織図である。 本実施形態にかかる羊膜由来MSC分離法の概観を説明する図である。 コラゲナーゼの濃度を一定にし、サーモリシンの濃度を変更した場合の、ヒト羊膜の酵素処理から得られた細胞に関する表面抗原マーカー発現解析である。 コラゲナーゼの濃度を一定にし、サーモリシンの濃度を変更した場合の、ヒト羊膜の酵素処理後、フィルター上に残存する組織のHE染色像である。 コラゲナーゼを全く含有せず、サーモリシンの濃度を変更した場合の、ヒト羊膜の酵素処理から得られた細胞に関する表面抗原マーカー発現解析である。 コラゲナーゼを全く含有せず、サーモリシンの濃度を変更した場合の、ヒト羊膜の酵素処理後、フィルター上に残存する組織のHE染色像である。 トリプシンを用いた場合の、ヒト羊膜の酵素処理から得られた細胞に関する表面抗原マーカー発現解析である。 トリプシンを用いた場合の、ヒト羊膜の酵素処理後、フィルター上に残存する組織のHE染色像である。 サーモリシン濃度を250PU/mlに固定し、コラゲナーゼ濃度を振った際の、ヒト羊膜の酵素処理後、フィルター上に残存する組織のHE染色像である。 サーモリシン濃度を500PU/mlに固定し、コラゲナーゼ濃度を振った際の、ヒト羊膜の酵素処理後、フィルター上に残存する組織のHE染色像である。 コラゲナーゼの濃度を一定にし、ディスパーゼの濃度を変更した場合の、ヒト羊膜の酵素処理から得られた細胞に関する表面抗原マーカー発現解析である。 コラゲナーゼの濃度を一定にし、ディスパーゼの濃度を変更した場合の、ヒト羊膜の酵素処理後、フィルター上に残存する組織のHE染色像である。 コラゲナーゼを全く含有せず、ディスパーゼの濃度を変更した場合の、ヒト羊膜の酵素処理から得られた細胞に関する表面抗原マーカー発現解析である。 コラゲナーゼを全く含有せず、ディスパーゼの濃度を変更した場合の、ヒト羊膜の酵素処理後、フィルター上に残存する組織のHE染色像である。 ディスパーゼ濃度を250PU/mlに固定し、コラゲナーゼ濃度を振った際の、ヒト羊膜の酵素処理後、フィルター上に残存する組織のHE染色像である。 各種凍結保存液から急速解凍した羊膜由来MSCをプラスチックウェルに播種後、24時間経過した写真である。 各種凍結保存液から急速解凍した羊膜由来MSCをプラスチックウェルに播種後、48時間経過した写真である。 マウス急性GVHDモデルにおける羊膜由来MSC移植による治療効果を、経時的な体重変化率で見たものである。 ラット炎症性腸疾患モデルにおける羊膜由来MSC移植による治療効果を、経時的な疾患活動性の変化、および治療5日目における大腸の長さで見たものである。 マウス全身性エリテマトーデスモデルにおける羊膜由来MSC移植による治療効果を、経時的な尿蛋白の変化で見たものである。 ラット肝硬変モデルにおける羊膜由来MSC移植による治療効果を、肝臓の繊維化面積率で見たものである。 ラット放射線腸炎モデルにおける羊膜由来MSC移植による治療効果を、直腸のPAS染色によるPAS陽性杯細胞数で見たものである。
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態について具体的に説明するが、当該実施形態は本発明の原理の理解を容易にするためのものであり、本発明の範囲は、下記の実施形態に限られるものではなく、当業者が以下の実施形態の構成を適宜置換した他の実施形態も、本発明の範囲に含まれる。
[1]用語の説明
本明細書において「胎児付属物」は、卵膜、胎盤、臍帯および羊水を指す。さらに「卵膜」は、胎児の羊水を含む胎嚢であり、内側から羊膜、絨毛膜および脱落膜からなる。このうち、羊膜と絨毛膜は胎児を起源とする。「羊膜」は、卵膜の最内層にある血管に乏しい透明薄膜で、内壁は分泌機能のある一層の上皮細胞で覆われ羊水を分泌する。
本明細書における「間葉系細胞(Mesenchymal stromal cell:MSC)」は、間葉系および前駆細胞(1つ又は複数の様々な臓器又は組織を構成する細胞に分化する能力を有する細胞を意味)を含有し、The International Society for Cellular Therapyが提唱する多能性間葉系細胞(Mesenchymal stromal cell:MSC)の定義を満たす細胞を指す(非特許文献5、下記参照)。
多能性間葉系細胞の定義
i)標準培地での培養条件で、プラスチックに接着性を示す。
ii)表面抗原CD105, CD73, CD90が陽性であり、CD45, CD34, CD14, CD11b, CD79alpha, CD19, HLA-DRが陰性。
iii)培養条件にて骨細胞、脂肪細胞、軟骨細胞に分化可能。
本明細書における「間葉系細胞組成物」は、間葉系細胞を含む任意の組成物を意味し、特に限定されないが、例えば、羊膜を分解酵素にて処理した後の間葉系細胞を含有する細胞浮遊液などを意味する。
本明細書における「間葉系細胞培養組成物」とは、上記の間葉系細胞組成物を培養することにより得られる細胞浮遊液などを意味する。
本明細書における「間葉系細胞投与用組成物」とは、上記の間葉系細胞組成物を用いて投与に適した形に調製した任意の組成物を意味し、特には限定されないが、例えば、ジメチルスルホキシドを5〜10質量%含有し、ヒドロキシルエチルデンプンを5〜10質量%またはデキストランを1〜5質量%含有する溶液中に間葉系細胞を含む混合物に輸液製剤を2倍量以上加えて得られる細胞浮遊液などを意味する。
[2]間葉系細胞組成物の製造方法
本発明の間葉系細胞組成物の製造方法は、羊膜を、コラゲナーゼと、サーモリシン及び/又はディスパーゼとにより酵素処理する工程;及び酵素処理した羊膜をメッシュに通す工程を含む方法である。
本発明による間葉系細胞組成物の製造方法の一例においては、ヒト羊膜を、至適濃度に調整したコラゲナーゼとサーモリシン及び/又はディスパーゼとを含有する酵素液で一回のみ処理し、酵素処理後の羊膜消化液をメッシュに通すことができる。至適濃度に調整したコラゲナーゼとサーモリシン及び/又はディスパーゼでは消化されない基底膜を含む上皮細胞層はメッシュに残り、至適濃度に調整したコラゲナーゼとサーモリシン及び/又はディスパーゼでは消化される細胞外基質層に含まれるMSCはメッシュを通過することから、メッシュを通過した細胞を回収することにより、MSCを回収することができる。さらに、回収した細胞を培養することによって間葉系細胞組成物を製造してもよい。
図1は、ヒト羊膜の組織図である。図1に示されるように、羊膜は表層の上皮細胞層とその下にある細胞外基質層からなり、後者にはMSCが含まれている。羊膜上皮細胞は、他の上皮細胞同様、特徴として上皮カドヘリン(E-cadherin:CD324)および上皮接着因子(EpCAM:CD326)を発現しているのに対し、MSCはこれら上皮特異的表面抗原マーカーを発現しておらず、FACSで容易に区別可能である(図3)。
図2は、本実施形態にかかる羊膜由来MSC分離法の概要を説明する図である。ヒト胎児付属物から羊膜を物理的に採取する(A)。羊膜を生理食塩水等の等張液にて洗浄し(B)、至適濃度のコラゲナーゼとサーモリシン及び/又はディスパーゼとを含有する酵素を含有する溶液に羊膜を浸して、適温にて震盪攪拌する(C)。上皮細胞層は細胞外基質のみを標的とする酵素処理では個々の細胞に分離されず層構造のままであるため、得られた羊膜消化液をメッシュに通すと(D)、上皮細胞層はメッシュ上に残り、細胞外基質層に含まれるMSCはメッシュを通過し、回収することが可能となる。Eは遠心管、Fは培養皿、Gは培養細胞の写真である。
本発明における実施形態を一例として詳細に述べる。
1.手術室にて待機的帝王切開例からヒト胎児付属物を無菌的に採取する。
2.胎児付属物から羊膜を無菌的且つ用手的に剥離する。
3.羊膜を滅菌容器(ディスポーザブルカップ)に移し、生理食塩水等の等張液を用いて数回洗浄し、付着した血液等を取り除く。
4.羊膜を、メス・ハサミ等にて大まかに切る(このステップは省略しても良い)。また、羊膜は、培地中で2〜8℃、24〜48時間保存してから使用してもよい。
5.羊膜を至適濃度に調整したコラゲナーゼと、サーモリシン及び/又はディスパーゼとを含有する溶液に浸し、恒温振盪機を用いて37℃90分間60rpm震盪攪拌する。
6.その結果、上皮細胞層は一層のままとなり、細胞外基質層に含まれるMSCは酵素含有溶液に浮遊する。
7. Falconセルストレーナー(100mmメッシュ)を滅菌チューブ(Falcon50mlチューブ)にセットし、自由落下にて羊膜消化後の細胞含有液をろ過することで、上皮細胞層はメッシュ上に残り、MSCのみがメッシュを通過する。
8.メッシュを通過したMSC含有溶液をハンクス平衡塩液で希釈後、400×g、5分遠心操作にて間葉系細胞をペレットにする。
9. 10%FBS添加aMEMにて希釈し、プラスチックフラスコに播種し、培養する。
本発明によれば、従来のように、酵素処理を複数回行い、処理する度に遠心分離や洗浄を繰り返すことによる回収率の低下や微生物等の汚染を防止し、また、フィコール密度勾配遠心等の精製操作も不要で、容易に短時間で大量の均質なMSCを調製できる。
本発明にかかる羊膜由来MSCの分離に用いられる酵素の組み合わせは、コラーゲンのみを消化するコラゲナーゼと、非極性アミノ酸のN末端側を切断する金属プロテイナーゼであるサーモリシン及び/又はディスパーゼである。
本発明では、コラゲナーゼ、サーモリシンおよび/又はディスパーゼの組合せを用いているが、MSCを遊離し、上皮細胞層を分解しない酵素(又はその組み合わせ)を使用することもできる。コラゲナーゼ、サーモリシンおよび/又はディスパーゼの好ましい濃度の組合せは、酵素処理後顕微鏡観察やFACSにより決定することができる。上皮細胞層が分解されず、細胞外基質層に含まれるMSCが遊離する濃度条件であることが好ましい。
コラゲナーゼの濃度は好ましくは50CDU/ml〜1000CDU/mlであり、サーモリシンおよび/又はディスパーゼの濃度は好ましくは100PU/ml〜800PU/mlである。
コラゲナーゼ300CDU/ml単独処理では生細胞数は0.29×106個だったが、サーモリシンを添加すると濃度依存的に生細胞数が増加し、サーモリシン400PU/mlでは生細胞数が1.99×106個と約7倍まで増加し、生細胞率も91.7%であった(実施例1、表1)。
同様に、コラゲナーゼ300CDU/mlにディスパーゼを添加すると濃度依存的に生細胞数は増加し、ディスパーゼ200PU/mlでは生細胞数が3.02×106個まで増加し、生細胞率も83.7%であった(実施例6、表8)。したがって、コラゲナーゼのみでなく、サーモリシン又はディスパーゼを混合して同時に酵素処理することにより、より多くの生細胞が得られる。
コラゲナーゼ300CDU/mlの場合、最適なサーモリシン濃度は400PU/mlであった。この場合のCD90陽性MSC含有率は83.3%、CD324陽性上皮細胞は12.8%であった(実施例1、表2)。また、コラゲナーゼ300CDU/mlに添加する最適なディスパーゼ濃度は200PU/mlであり、この場合のCD90陽性MSC含有率は83.3%、CD324陽性上皮細胞は12.8%であった(実施例6、表9)。
サーモリシンおよびディスパーゼを単独で400PU/mlよりも高濃度で添加すると、上皮細胞が破綻する現象が観察された(実施例2、図6、実施例7、図14)。
コラゲナーゼ300CDU/ml、サーモリシン250PU/mlの場合、CD90陽性MSCの含有率は93.3%であり、CD90陽性MSCの細胞数は1.43×106個であった(実施例4、表6)。また、コラゲナーゼ300CDU/ml、ディスパーゼ250PU/mlの場合、CD90陽性MSCの含有率は91.5%であり、CD90陽性MSCの細胞数は1.49×106個であった(実施例8、表11)。
酵素処理は、生理食塩水等で洗浄した羊膜を酵素液に浸漬し、スターラー又はシェーカーで撹拌しながら処理することが好ましいがこれ以外の撹拌手段でもよく、要は効率よくMSCが遊離すればよい。これにより細胞外基質層に含まれるMSCが遊離する。酵素処理は、好ましくはスターラー又はシェーカーを用いて10rpm/分〜100rpm/分で30分以上撹拌することにより行うことができる。なお、酵素処理時間の上限は特に限定されないが、一般的には6時間以内、好ましくは3時間以内、例えば、90分以内行うことができる。また、酵素処理温度は、本発明の目的が達成できる限り特に限定されないが、好ましくは30〜40℃であり、より好ましくは30〜37℃である。
この際、上皮細胞層が分解しない濃度の組合せにすることが重要である。上皮細胞が混入すると相対的にMSCの含有率が落ちるためである。
遊離したMSCを含む酵素溶液をメッシュを通してろ過することにより、遊離した細胞のみがメッシュを通過し、分解されなかった上皮細胞層はメッシュを通過できずにメッシュ状に残るため、遊離したMSCを容易に回収することができる。この際、メッシュのポアサイズ(大きさ)は本発明の目的に反しない限り特に限定されないが、好ましくは40〜200μmであり、より好ましくは40〜150μmであり、さらに好ましくは70〜150μmであり、特に好ましくは100〜150μmである。メッシュのポアサイズ(大きさ)を上記の範囲とすることにより、圧力を加えず、自然落下により落下させることで細胞の生存率が下がるのを防止することができる。
メッシュの材質としては、ナイロンメッシュが好ましく用いられる。研究用として汎用されるFalconセルストレーナーなどの40mm、70mm、100mmのナイロンメッシュを含有するチューブが利用可能である。また、血液透析などで使用されている医療用メッシュクロス(ナイロンおよびポリエステル)が利用できる。更に、体外循環時に使用される動脈フィルター(ポリエステルメッシュ、40mm〜120mm)も利用可能である。他の材質、例えば、ステンレスメッシュ(金網)等も用いることが可能である。
MSCをメッシュ通過させる場合、自然落下(自由落下)が好ましい。ポンプ等を用いた吸引など強制的なメッシュ通過も可能であるが、細胞にダメージを与える事を避けるため、できるだけ弱い圧力が望ましい。
メッシュを通したMSCは、倍量又はそれ以上の培地又は平衡塩緩衝液で濾液を希釈した後、遠心分離により回収することができる。回収した細胞は、所望により、培養により増殖させることによって間葉系細胞培養組成物を製造することができる。培地は、0.05%より多く5%以下のアルブミンを含有するαMEM・M199あるいはこれらを基礎とする培地であり、DMEM・F12・RPMI1640あるいはこれらを基礎とする培地は増殖性が低下する。望ましくは10%以上のウシ・ヒト血清を含有するαMEM培地であり、プラスチックデッシュ・フラスコにて5%CO、37℃環境にて培養を行う。平衡塩緩衝液としては、ダルベッコリン酸バッファー(DPBS)、アール平行塩(EBSS)、ハンクス平衡塩(HBSS)、リン酸バッファー(PBS)等の緩衝液を用いることができる。
上記した本発明の方法によれば、CD324及びCD326陽性上皮細胞の含有率が20%以下であり、CD90陽性細胞の含有率が75%以上であり、および生細胞率が80%以上である間葉系細胞組成物を製造することができ、前記間葉系細胞組成物も本発明の範囲内のものである。
[3]凍結保存された間葉系細胞の製造方法
本発明による凍結保存された間葉系細胞の製造方法は、ジメチルスルホキシド(DMSO)を5〜10質量%含有し、ヒドロキシルエチルデンプンを5〜10質量%またはデキストランを1〜5質量%含有する溶液中に間葉系細胞を含む混合物を凍結保存する工程を含む方法である。
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、高濃度DMSOによる細胞毒性が原因と思われる解凍後のMSCの生存率減少を見いだした(実施例)。凍結保存液におけるDMSO含有量を減らすことは、細胞死の抑制という観点から、細胞移植用ヒトMSCの凍結保存液として好ましいことが判明した。本発明の方法で用いるMSCの凍結保存液は、DMSO含有量を減らし、代わりにヒドロキシルエチルデンプン(HES)又はデキストラン(Dextran40など)を添加したことを特徴とするものである。凍結保存液は、さらにヒトアルブミンを0質量%より多く5質量%以下含有するものでもよい。凍結保存液の一例としては、DMSO5質量%、HES6質量%、ヒトアルブミン4質量%の組成の凍結保存液を用いることができる。
上記した凍結保存液を用いて、プログラムフリーザーを用い、例えば、-1〜-2℃/分の凍結速度で-30℃〜-50℃の間の温度(例えば、-40℃)まで温度を下げ、更に-10℃/分の凍結速度で-80℃〜-100℃の間の温度(例えば、-90℃)まで温度を下げることによって、凍結保存された間葉系細胞を製造することができる。
上記の方法により得られた凍結保存された間葉系細胞は、解凍後、輸液製剤により2倍以上に希釈することによって、間葉系細胞投与用組成物を製造することができる。
[4]細胞治療剤
上記で調製したMSC(増殖させたMSCも含む)は難治性疾患の治療剤として利用が可能である。
即ち、本発明によれば、上記した間葉系細胞組成物および/又は間葉系細胞培養組成物および/又は間葉系細胞投与用組成物を有効成分として含む細胞治療剤が提供される。さらに本発明によれば、細胞移植治療のために使用される、上記した間葉系細胞組成物および/又は間葉系細胞培養組成物および/又は間葉系細胞投与用組成物が提供される。更に本発明によれば、被験者に、上記の間葉系細胞組成物および/又は間葉系細胞培養組成物および/又は間葉系細胞投与用組成物の治療有効量を投与する工程を含む、被験者に細胞を移植する方法、並びに被験者の疾患の治療方法が提供される。
本発明の細胞治療剤、間葉系細胞組成物および/又は間葉系細胞培養組成物および/又は間葉系細胞投与用組成物は、例えば移植片対宿主病(GVHD、実施例10)、クローン病(実施例11)や潰瘍性大腸炎を含む炎症性腸疾患、全身性エリテマトーデス(実施例12)を含む膠原病、肝硬変(実施例13)、放射線腸炎(実施例14)、アトピー性皮膚炎等に適用することができる。本発明の製造法により調製したMSCを治療部位に効果が計測できる量投与することで、炎症を抑制することができる。
なお、凍結保存したMSCは、細胞生存率を維持するため、急速解凍後、生理食塩水等の輸液製剤で希釈後、できるだけ早く使用することが必要である。これは凍結保存液に含まれるDMSOに細胞毒性があるためである。上記輸液製剤にて希釈した間葉系細胞投与組成物も、移植片対宿主病、クローン病を含む炎症性腸炎、全身性エリテマトーデスを含む膠原病、肝硬変、放射線腸炎、アトピー性皮膚炎等の患者の静脈に投与し、治療することができる。
本明細書における「輸液製剤」としては、ヒトの治療の際に用いられる溶液であれば特に限定されないが、たとえば、生理食塩水、5%ブドウ糖液、リンゲル液、乳酸リンゲル液、酢酸リンゲル液、1号液、2号液、3号液、4号液等が挙げられる。
本発明の細胞治療剤の投与方法は、特に限定されないが、例えば、皮下注射、リンパ節内注射、静脈内注射、腹腔内注射、胸腔内注射又は局所への直接注射、又は局所に直接移植することなどが挙げられるが、これらに限定されない。
本発明の細胞治療剤は、骨髄MSC製剤同様、他の疾患治療目的に注射用製剤、あるいは細胞塊又はシート状構造の移植用製剤として用いることも可能である。
本発明の細胞治療剤の投与量としては、被験者に投与した場合に、投与していない被験者と比較して疾患に対して治療効果を得ることができるような細胞の量である。具体的な投与量は、投与形態、投与方法、使用目的および被験者の年齢、体重及び症状等によって適宜決定することができるが、一例としては、間葉系細胞数で、ヒト(例えば成人)の1回の投与当たり10〜10個/kg体重が好ましく、10〜10個/kg体重がより好ましい。
以下の実施例にて本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
(実施例1)
インフォームドコンセントを得た待機的帝王切開症例の妊婦由来ヒト胎児付属物から、羊膜を用手的に分離した。ハンクス平衡塩液(Ca・Mg不含有)にて2回洗浄後、得られた羊膜の内1gを容器に取り、精製コラゲナーゼ (CLSPA, Worthington社, 規格>500CDU/mg)300CDU/ml (=<600μg/ml)及びサーモリシン(和光純薬、規格>7000PU/mg)0〜400PU/ml(=<60μg/ml) (No.1:0PU/ml、No.2:100PU/ml、No.3:200PU/ml、No.4:400PU/mlの4種類)を含有するハンクス平衡塩液(Ca・Mg含有)計5mlを添加し、37℃にて90分間、60rpmにてシェーカーにより震盪攪拌を行った。得られた混合物に2倍量の10%ウシ胎児血清(FBS)添加αMEM(Alpha Modification of Minimum Essential Medium Eagle)を添加後、ナイロンネットフィルター(ポアサイズ:100μm)で濾過した。フィルターに残った組織をヘマトキシリン・エオジン(HE)染色にて評価した。濾液は400 x gにて5分遠心操作を行い、上清を破棄後、10%FBS添加αMEMにて細胞を再懸濁し、細胞数をトリパンブルー染色後に測定した。得られた細胞は間葉系マーカー抗CD90-FITC抗体及び上皮系マーカー抗CD324-APC抗体(BD Bioscience社)にて4℃にて15分染色後、死細胞除去のため7-AAD色素を添加し、フローサイトメーター(FACSCanto:BD社)にて表面抗原マーカー解析を行った。結果を表1、表2,図3及び図4に示す。
CDU(=collagen digestion unit):コラーゲンを基質として、37℃、pH7.5において5時間に1μmolのロイシンに相当するアミノ酸およびペプチドを生成する酵素量。
PU(=protease unit): 乳酸カゼインを基質として35℃、pH7.2において1分間に1μgのチロシンに相当するアミノ酸及びペプチドを生成する酵素量。
表1に示すように、コラゲナーゼのみ(No.1)で得られるトリパンブルー染色陰性の生細胞数は0.29x106個であったのに対し、サーモリシンを加えることで生細胞数は増加し、サーモリシン400PU/ml(No.4)では1.99x106個と、約7倍まで増加した。一方トリパンブルー陽性の死細胞数に大きな変化はなく、どのサンプルでも80%以上の生細胞率が得られた。
図3に示すように、フローサイトメーターによる結果から、コラゲナーゼのみ(No.1)のサンプルでは、目的とするCD90陽性MSCは34.6%のみであり、不要なCD324陽性上皮細胞は8.6%、それ以外の赤血球と思われる細胞が56.8%であった。表1同様、サーモリシンを添加することでCD90陽性MSCの割合は増加し、サーモリシン400PU/ml(No.4)ではCD90陽性MSC83.3%、CD324陽性上皮細胞12.8%、その他が3.9%であった。
表2に示すように、各サンプルから得られるMSC数は、コラゲナーゼのみ(No.1)では0.1x106個であったが、サーモリシン添加により得られるMSCは増加し、400PU/ml(No.4)では1.66x106個と、No.1の約16倍のMSCが得られた。
図4に示すように、酵素処理後のフィルター上に残留した組織をHE染色により検討を行ったところ、コラゲナーゼのみ(No.1)では細胞外基質層の構造が保たれ、消化不十分であった。サーモリシンを添加することで細胞外基質層の消化が認められ、400PU/ml(No.4)では完全に消化された。
これら実施例1の結果から、コラゲナーゼ単独では羊膜を消化できないこと、コラゲナーゼにサーモリシンを加えることで、濃度依存的に羊膜は消化され、400PU/mlのサーモリシンでは、MSCを含む細胞外基質層が完全に消化されていたことが分かった。
(実施例2)
上記実施例1を踏まえ、同様の方法にて、コラゲナーゼを除きサーモリシンのみを用いた検討を行った。
結果を表3,図5及び図6に示す。
表3に示すように、サーモリシンのみの消化により得られる、ヒト羊膜1g当たりの細胞数はサーモリシンの濃度依存的に増加した。
しかしながら、図5に示すように、サーモリシンのみの酵素処理液に含有する細胞のフローサイトメーターによる結果からは、どの濃度においても得られる細胞はほぼ100%CD324陽性上皮細胞であり、目的とするCD90陽性MSCは得られなかった。
図6に示すように、酵素処理後のフィルター上に残留した組織のHE染色による検討では、MSCを含む細胞外基質層は全く消化されておらず、また、上皮細胞層の破綻がサーモリシンの濃度依存的に存在した。
これら実施例2の結果から、サーモリシンのみでは、目的とするMSCは全く得られないこと、サーモリシンの濃度が800PU/ml以上の場合、上皮細胞層の破綻が認められることが分かった。
(実施例3)
更に、従来法であるトリプシンを用いた方法との比較検討を行った(非特許文献3)。ヒト羊膜1gを容器に取り、No.41)0.05%トリプシン(0.53 mM EDTA含有)5mlにて37℃90分60rpm震盪攪拌(シェーカーにより)、No.42)0.05%トリプシン(0.53 mM EDTA含有、Invitrogen社)5mlにて37℃90分60rpm震盪攪拌(シェーカーにより)後、ナイロンネットフィルター(ポアサイズ:100μm)濾過にて残存した組織を、更に精製コラゲナーゼ (300CDU/ml)含有ハンクス平衡塩液(Ca・Mg含有)にて37℃90分60rpm震盪攪拌(シェーカーにより)、No.43)精製コラゲナーゼ(300CDU/ml)+サーモリシン(250PU/ml)含を有するハンクス平衡塩液(Ca・Mg含有)5mlにて、37℃90分震盪攪拌(シェーカーにより)を行った。以下は実施例1と同様とした。結果を表4、表5、図7及び図8に示す。
表4のように、トリプシン処理に加え、残った羊膜を更にコラゲナーゼ処理を行ったサンプル(No.42)から最も多くの細胞を得ることが出来た。
しかしながら、図7に示すように、各酵素処理液に含有する細胞のフローサイトメーターによる結果からは、トリプシンのみ(No.41)だと、目的とするCD90陽性MSCは0.6%と全く得られない、トリプシン処理後、更にコラゲナーゼ処理を加えた2段階処理(No.42)の場合、目的とするCD90陽性細胞は32.6%得られたが、不要なCD324陽性上皮細胞も65.6%含有している、コラゲナーゼ+サーモリシンの一回の処理(No.43)では、CD90陽性MSCは90.3%、CD324陽性上皮細胞は8.0%であった。
図8に示すように、酵素処理後のフィルター上に残留した組織のHE染色による検討では、41トリプシン処理のみでは、上皮細胞層の基底膜の破壊に加え、上皮細胞が球状かつばらばらになっているのに対し、細胞外基質層の構造は保たれていた、トリプシン処理後、コラゲナーゼ処理(No.42)をすることで、羊膜は完全に消化された、コラゲナーゼ+サーモリシンの一括処理(No.43)によって、細胞外基質層は完全に消化されているにもかかわらず、上皮細胞層はその構造が基底膜を含め保たれていた。
表5に示すように、各サンプルから得られるMSCは、トリプシンのみ(No.51)ではほとんどないこと、トリプシン後コラゲナーゼ処理(No.52)をした場合は、5.39 x106個と非常に多く得られること、コラゲナーゼ+サーモリシンの一括処理(No.53)では、3.25 x106個得られることが分かった。一方不要なCD324陽性上皮細胞に関しては、トリプシンのみ(No.51)では、2.25 x106個の上皮細胞が得られること、トリプシン+コラゲナーゼの一括処理(No.52)では、13.07 x106個と、必要なMSC以上の細胞数が得られてしまうこと、コラゲナーゼ+サーモリシンの一括処理(No.53)では、0.29 x106個とMSCに比べると少ない細胞数であること、が明らかとなった。
以上のことから、従来のトリプシン処理後にコラゲナーゼにより処理する方法は、メリットとして、多くの細胞数が得られる反面、上皮細胞の混入が多く、高純度のMSCを得るには比重遠心等の手法により細胞を選別する操作が必要となること、工程がトリプシン処理に加えコラゲナーゼ処理の2段階になり、操作が煩雑になること、がデメリットとしてあげられる。特に後者のデメリットに関しては、トリプシンがCaにより不活化される反面、コラゲナーゼはCa要求性があるため、同時処理することが不可能であることがその原因である。
(実施例4)
上記実施例1〜3を踏まえ、サーモリシン濃度を250PU/mlに固定した場合の、羊膜間葉系細胞分離に最小限必要なコラゲナーゼ濃度の検討を行った。結果を表6及び図9に示す。
表6に示すように、コラゲナーゼ300CDU/ml(No.63)で得られるトリパンブルー染色陰性の生細胞数は1.53x106個であったのに対し、コラゲナーゼ濃度がその1/4の75CDU/ml(No.61)の場合、生細胞数は1.16 x106個に減少した。トリパンブルー陽性の死細胞数に大きな変化はなく、どのサンプルでも80%以上の生細胞率が得られた。また、フローサイトメーターによる結果からはどのサンプルもCD90陽性間葉系細胞は90%以上であった。
図9に示すように、酵素処理後のフィルター上に残留した組織をHE染色により検討を行ったところ、コラゲナーゼ濃度が300および150 CDU/ml(No.63および62)では上皮細胞層のみであったのに対し、コラゲナーゼ濃度が75 CDU/ml(No.61)の場合、ごく一部であるが細胞外基質層が観察され、消化不十分であった。
これら実施例4の結果から、サーモリシン濃度を250PU/mlに固定した場合、細胞外基質層を十分に消化するには、コラゲナーゼ濃度は、好ましくは少なくとも75 CDU/ml以上であり、より好ましくは150CDU/ml以上にする必要性が分かった。
(実施例5)
更にサーモリシン濃度を実施例3の倍である500PU/mlに固定した場合の、羊膜間葉系細胞分離に最小限必要なコラゲナーゼ濃度の検討を行った。結果を表7及び図10に示す。
表7に示すように、コラゲナーゼ150CDU/ml(No.73)で得られるトリパンブルー染色陰性の生細胞数は2.05x106個であったのに対し、コラゲナーゼ濃度がその1/4の37.5CDU/ml(No.71)の場合、生細胞数は0.82x106個に減少した。トリパンブルー陽性の死細胞数に大きな変化はなく、どのサンプルでも80%以上の生細胞率が得られた。また、フローサイトメーターによる結果からはどのサンプルもCD90陽性間葉系細胞は90%以上であった。
図10に示すように、酵素処理後のフィルター上に残留した組織をHE染色により検討を行ったところ、コラゲナーゼ濃度が150および75 CDU/ml(No.73および72)では上皮細胞層のみであったのに対し、コラゲナーゼ濃度が37.5 CDU/ml(No.71)の場合、多くの細胞外基質層が観察され、消化不十分であった。
これら実施例5の結果から、サーモリシン濃度を500PU/mlに固定した場合、細胞外基質層を十分に消化するには、コラゲナーゼ濃度は、好ましくは少なくとも37.5CDU/ml以上であり、より好ましくは75CDU/ml以上にする必要性が分かった。
(実施例6)
上記実施例1に関し、サーモリシンに代えて、同様に非極性アミノ酸のN末端側を切断する金属プロテイナーゼであるディスパーゼを用い、これにコラゲナーゼを添加した検討を行った。
インフォームドコンセントを得た妊婦由来のヒト胎児付属物から、羊膜を用手的に分離した。ハンクス平衡塩液(Ca・Mg不含有)にて2回洗浄後、得られた羊膜の内1gを容器に取り、コラゲナーゼ (Brightase-C, ニッピ社, 規格>20万CDU/バイアル)300CDU/ml及びディスパーゼI(和光純薬、規格10000〜13000PU/バイアル)0〜400PU/ml (No.1:0PU/ml、No.2:100PU/ml、No.3:200PU/ml、No.4:400PU/mlの4種類)を含有するハンクス平衡塩液(Ca・Mg含有)計5ml添加し、37℃にて90分、60rpmにてシェーカーにより震盪攪拌を行った。得られた混合物に2倍量の10%ウシ胎児血清(FBS)添加αMEM(Alpha Modification of Minimum Essential Medium Eagle)を添加後、ナイロンネットフィルター(ポアサイズ:100μm)で濾過した。フィルターに残った組織をヘマトキシリン・エオジン(HE)染色にて評価した。濾液は400 x gにて5分遠心操作を行い、上清を破棄後、10%FBS添加αMEMにて細胞を再懸濁し、細胞数をトリパンブルー染色後、測定した。得られた細胞は間葉系マーカー抗CD90-FITC抗体及び上皮系マーカー抗CD324-APC抗体(BD Bioscience社)にて4℃にて15分染色後、死細胞除去のため7-AAD色素を添加し、フローサイトメーター(FACSCanto:BD社)にて表面抗原マーカー解析を行った。結果を表8、表9、図11及び図12に示す。
表8に示すように、コラゲナーゼのみ(No.81)で得られるトリパンブルー染色陰性の生細胞数は0.42x106個であったのに対し、ディスパーゼを加えることで生細胞数は増加し、ディスパーゼ200PU/ml(No.83)では3.02x106個と、約7倍まで増加した。一方トリパンブルー陽性の死細胞数に大きな変化はなく、ディスパーゼを入れたどのサンプルでも80%以上の生細胞率が得られた。
図11に示すように、フローサイトメーターによる結果では、コラゲナーゼのみ(No.81)であっても、ディスパーゼを加えても(No.82-84)、目的とするCD90陽性MSCは90%以上であり、不要なCD324陽性上皮細胞はいずれも10%以下であった。コラゲナーゼのみ(No.81)の結果が、実施例1(図3)でのコラゲナーゼのみ(No.1)のそれと異なるが、これは用いたコラゲナーゼのメーカーが異なるためと考えられた。
表9に示すように、各サンプルから得られるMSC数は、コラゲナーゼのみ(No.81)では0.39x106個であったが、ディスパーゼ添加により得られるMSCは増加し、200PU/ml(No.83)では2.86x106個と、No.81の約7倍のMSCが得られた。
図12に示すように、酵素処理後のフィルター上に残留した組織をHE染色により検討を行ったところ、コラゲナーゼのみ(No.81)では細胞外基質層の構造が保たれ、消化不十分であった。ディスパーゼを添加することで細胞外基質層の消化が認められ、200PU/ml(No.83)、400PU/ml(No.84)では完全に消化された。
これら実施例6の結果から、コラゲナーゼ単独では羊膜消化が不十分であること、コラゲナーゼにディスパーゼを加えることで、濃度依存的に羊膜は消化され、2000PU/ml以上のディスパーゼでは、MSCを含む細胞外基質層が完全に消化されていた。
(実施例7)
上記実施例6を踏まえ、同様の方法にて、コラゲナーゼを除きディスパーゼのみを用いた検討を行った。
結果を表10,図13及び図14に示す。
表10に示すように、ディスパーゼのみの消化により得られる、ヒト羊膜1g当たりの細胞数はサーモリシンの濃度依存的に増加した。
しかしながら、図13に示すように、ディスパーゼのみの酵素処理液に含有する細胞のフローサイトメーターによる結果からは、どの濃度においても目的とするCD90陽性MSC数%と非常に少なかった。
図14に示すように、酵素処理後のフィルター上に残留した組織のHE染色による検討では、MSCを含む細胞外基質層は全く消化されておらず、また、上皮細胞層の破綻がディスパーゼの濃度依存的に存在した。
これら実施例7の結果から、ディスパーゼのみでは、目的とするMSCは全く得られない、ディスパーゼの濃度が800PU/ml以上の場合、上皮細胞層の破綻が認められることが分かった。
(実施例8)
上記実施例6〜7を踏まえ、ディスパーゼ濃度を250PU/mlに固定した場合の、羊膜間葉系細胞分離に最小限必要なコラゲナーゼ濃度の検討を行った。結果を表11及び図15に示す。
表11に示すように、コラゲナーゼ300CDU/ml(No.113)で得られるトリパンブルー染色陰性の生細胞数は1.57x106個であったのに対し、コラゲナーゼ濃度がその1/4の75CDU/ml(No.113)の場合、生細胞数は1.34 x106個に減少した。トリパンブルー陽性の死細胞数に大きな変化はなく、どのサンプルでも80%以上の生細胞率が得られた。また、フローサイトメーターによる結果からはどのサンプルもCD90陽性間葉系細胞は90%以上であった。
図15に示すように、酵素処理後のフィルター上に残留した組織をHE染色により検討を行ったところ、コラゲナーゼ濃度が300CDU/ml(No.113)では上皮細胞層のみであったのに対し、コラゲナーゼ濃度が75 および150CDU/ml(No.111および112)の場合、細胞外基質層が観察され、消化不十分であった。
これら実施例8の結果から、ディスパーゼ濃度を250PU/mlに固定した場合、細胞外基質層を十分に消化するには、コラゲナーゼ濃度は少なくとも75CDU/ml以上、より好ましくは150CDU/ml以上、さらに好ましくは300CDU/ml以上にする必要性が分かった。
(実施例9)
実施例1にて得られた細胞を10%FBS添加αMEM培養液にて希釈後、プラスチックデッシュ上に播種し、羊膜由来MSCを接着培養させた。トリプシン処理にて細胞剥離後、10%FBS添加αMEM培養液にてトリプシン中和し、遠心後上清を捨て、得られた細胞ペレットをRPMI1640にて再懸濁し、羊膜由来MSC懸濁液を作成した。得られた懸濁液に対し、最終組成が表12となるように凍結保存液を調整した。
DMSO:Simga-Aldrich社製、品番D2650
HES:ニプロ社製、品番HES40
ヒトアルブミン(Alb):ベネシス社製、献血アルブミン25%静注12.5g/50ml
デキストラン40:大塚製薬工場社製、低分子デキストラン糖注
生理食塩水:大塚製薬工場社製:上記の希釈調整用液とした。
凍結保存液は羊膜由来MSCが106細胞/mlとなるように調整し、それぞれ1mlをクライオチューブに移し、プログラムフリーザーにて、−1〜−2℃/分の凍結速度で−40℃まで温度を下げ、更に−90℃まで−10℃/分の速度で下げ、−150℃の超低温冷凍庫に保存した。翌日、クライオチューブを37℃恒温槽に浸して急速融解した。表13に急速解凍した細胞のトリパンブルー陰性生細胞割合を示す。
この結果から、IIIのDMSOのみでは生細胞が少ないこと、HESやデキストラン、アルブミンを添加することで生細胞割合は増加することが明らかとなった。
更に、解凍した細胞懸濁液100μLを24wellプレート4ウェルに播種し、3mlの10%FBS添加αMEM培養液を添加し、24時間後および48時間後に写真撮影後、一視野当たりの細胞数の平均値を測定した。表14、図16及び図17に結果を示す。
表13の結果同様、IIIのDMSOのみ、あるいはIVのDMSO+Albでは細胞増殖が遅かったが、HESやデキストランの添加により細胞増殖は促進した。特にDMSOの濃度を減らしたI、II、IVにおいて著明な細胞増殖を認めた。
(実施例10)
マウスにおいて、同種他家骨髄移植および脾細胞移植を行い、急性移植片対宿主病(GVHD)を発症させ、ヒト羊膜由来MSC移植による治療効果を検討した。7-8週齢の雌B6C3F1マウスに対して、15GyのX線照射の後、同種他家であるBDF1マウス由来骨髄細胞1.0×107細胞および同脾細胞3×107細胞を経静脈的に移植した。骨髄細胞移植14日目、17日目、21日目、15日目に、実施例1と同様の手法(コラゲナーゼ300CDU/ml+サーモリシン250PU/mlの条件下)にて得られたヒト羊膜由来MSC(1×105細胞 )を経静脈的に移植し、体重を経時的に観察した。図18に、骨髄細胞移植日からの体重変化率を示す。
この結果から、急性移植片対宿主病(GVHD)に伴う体重増加の遅延がヒト羊膜由来MSC移植により改善していることが明らかとなった。
(実施例11)
ラットにおいて、デキストラン硫酸(DSS)を経口摂取させることで炎症性腸疾患を発症させ、ヒト羊膜由来MSC移植による治療効果を検討した。8週齢の雄SDラットに対し8%DSSの自由飲水での投与を開始した。DSS投与開始の翌日、実施例1と同様の手法(コラゲナーゼ300CDU/ml+サーモリシン250PU/mlの条件下)にて得られたヒト羊膜由来MSC(1×106細胞 )を経静脈的に移植し、DSSを計5日間投与した。
図19に疾患活動性(Disease activity index(DAI):体重の減少、便の固さ、直腸出血を観察、測定し、点数化)および相対的体重変化を示す。この結果から、腸炎の病態がヒト羊膜由来MSC移植により改善していることが明らかとなった。
尚、DAIの点数化は、下記の文献の方法に従った。Cooper, H. S.; Murthy, S. N.; Shah, R. S.; Sedergran, D. J. Clinicopathologic study of dextran sulfate sodium experimental murine colitis. Lab. Invest. 69:238-249; 1993.
(実施例12)
マウスにおいて、プリスタン(Pristane; 2,6,10,14-tetramethyl-pentadecane)を投与することで全身性エリテマトーデスを発症させ、ヒト羊膜由来MSC移植による治療効果を検討した。13週齢雄BALB/cマウスに対しプリスタンを500μl腹腔内に投与した。同時に実施例1と同様の手法(コラゲナーゼ300CDU/ml+サーモリシン250PU/mlの条件下)にて得られたヒト羊膜由来MSC(1×105細胞/10g)を尾静脈に投与し、以後隔週で同数のヒト羊膜由来MSCを投与し、20週経過後に生化学的評価を行った。
図20に尿蛋白の経過を示す。この結果から、全身性エリテマトーデスに伴う蛋白尿がヒト羊膜由来MSC移植により改善していることが明らかとなった。
(実施例13)
ラットにおいて、四塩化炭素(CCl4)を繰り返し投与することで肝硬変を発症させ、ヒト羊膜由来MSC移植による治療効果を検討した。6週齢の雄SDラットに対し2ml/kgのCCl4を週2回の頻度で腹腔内投与を開始した。CCl4投与開始から3週目に実施例1と同様の手法(コラゲナーゼ300CDU/ml+サーモリシン250PU/mlの条件下)にて得られたヒト羊膜由来MSC(1×106細胞 )を経静脈的に移植し、CCl4を計7週間投与し、肝臓の組織学的評価を行った。
図21に肝臓のMasson trichrome染色の結果から得られた繊維化面積率(膠原線維陽性割合)を示す。この結果から、肝硬変に伴う肝線維化がヒト羊膜由来MSC移植により改善していることが明らかとなった。
(実施例14)
ラットにおいて、直腸に放射線照射することで放射線腸炎を発症させ、ヒト羊膜由来MSCによる治療効果を検討した。8週齢の雄SDラットに対し5Gy/日の放射線を5日間連日で下腹部に照射した。最終照射日に実施例1と同様の手法(コラゲナーゼ300CDU/ml+サーモリシン250PU/mlの条件下)にて得られたヒト羊膜由来MSC(1×106細胞 )を経静脈的に移植し、その3日後に直腸の組織学的評価を行った。
図22に直腸のPAS染色の結果から得られたPAS陽性杯細胞数(/HPF:強拡大視野当たり)の変化を示す。この結果から、放射線腸炎に伴う杯細胞の減少がヒト羊膜由来MSC移植により改善していることが明らかとなった。
1 間葉系幹細胞
2 上皮細胞層
3 細胞外基質層

Claims (10)

  1. ジメチルスルホキシドを5〜10質量%、ヒドロキシエチルデンプンを4〜10質量%、及びヒトアルブミンを5質量%以下で含有し、間葉系細胞組成物を含む混合物を凍結保存し、次いで前記凍結保存した混合物を解凍した後に培養する工程を含み、
    前記間葉系細胞組成物は、CD324及び/又はCD326陽性上皮細胞の含有率が20%以下であり、CD90陽性細胞の含有率が75%以上である、間葉系細胞組成物の製造方法。
  2. 前記間葉系細胞組成物中における生細胞率が80%以上である、請求項1記載の製造方法。
  3. 前記CD90陽性細胞が、CD90陽性間葉系細胞である請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. 前記間葉系細胞が羊膜由来である、請求項1からのいずれか一項に記載の製造方法。
  5. 請求項1からのいずれか一項に記載の方法により得られる間葉系細胞を、輸液製剤により2以上に希釈する工程を含む、間葉系細胞投与用組成物を製造する方法。
  6. 請求項1からのいずれか一項に記載の方法により得られる間葉系細胞を有効成分として含む細胞治療剤。
  7. 請求項に記載の方法により得られる間葉系細胞投与用組成物を有効成分として含む細胞治療剤。
  8. 注射用製剤である、請求項6又は7に記載の細胞治療剤。
  9. 細胞塊又はシート状構造の移植用製剤である、請求項6又は7に記載の細胞治療剤。
  10. 移植片対宿主病、炎症性腸疾患、全身性エリテマトーデス、肝硬変、又は放射線腸炎から選択される疾患の治療剤である、請求項からのいずれか一項に記載の細胞治療剤。
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