JP6750545B2 - プレスフィット端子接続構造 - Google Patents

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Description

本発明は、プレスフィット端子接続構造に関し、さらに詳しくは、プリント基板に設けられたスルーホールに、プレスフィット端子の基板接続部が圧入接続されるプレスフィット端子接続構造に関するものである。
プリント基板(PCB)に設けられたスルーホールに圧入接続される基板接続部を有するプレスフィット端子においては、基板接続部の表面にスズめっき層が形成されることが多い。スルーホールへの挿入時にプレスフィット端子のスズめっき層が削れると、削れたスズ(削れカス)が、プレスフィット端子とスルーホールの間の電気接続や、プリント基板上の回路等に影響を与える可能性がある。
そこで、プレスフィット端子の基板接続部の表面の金属層の削れを抑制する観点から、金属層の組成や基板接続部の形状に対して、改良がなされている。金属層の組成に対する改良として、例えば、特許文献1には、プレスフィット端子の母材の表面に、下地めっき層を介して、CuSn合金層とCuSn合金層が順次設けられ、該CuSn合金層の表面におけるSnの露出をなくした構成が開示されており、2種の合金層が設けられていることで母材表面側の硬度が高くなっているのを利用し、スルーホールに圧入する際の削れの低減を図っている。
特開2010−262863号公報
上記特許文献1のように、プレスフィット端子の基板接続部の表面に設ける金属層として、硬い金属層を用いることで、端子挿抜時の表面の摩擦を低減し、削れを抑制することができる。端子挿抜時における表面の摩擦が低いことは、プレスフィット端子の挿抜に要する荷重を小さくできる点においても有利である。しかし、プレスフィット端子においては、スルーホールへの挿抜時の削れの抑制や必要荷重の低減だけでなく、スルーホールに挿入した状態において、高い保持力が発揮され、意図しない時に容易にスルーホールから脱出しないことが好ましい。特許文献1に開示されているもののように、プレスフィット端子の挿抜時の削れの抑制や必要荷重の低減に効果を有するものとして用いられてきた金属層は、スルーホールに挿入した状態でのプレスフィット端子の保持力を高める効果には乏しい傾向がある。
また、プレスフィット端子のスルーホールに対する挿抜や、挿入した状態における保持は、プレスフィット端子の表面の金属材料と、スルーホールの内周面の金属材料が相互に接触した状態で行われるので、プレスフィット端子挿抜時における削れの抑制や必要荷重の低減、そして挿入した状態における保持力の向上を図るに際し、プレスフィット端子の表面に形成される金属層の構成を考慮するだけでは十分とは言えない。スルーホールの内周面に形成される金属層の構成にも、配慮する必要がある。
本発明の課題は、プリント基板に設けられたスルーホールにプレスフィット端子の基板接続部が圧入接続されるプレスフィット端子接続構造において、プレスフィット端子をスルーホールに対して挿抜する際の表面層の削れの抑制や挿抜に必要な荷重の低減と、プレスフィット端子をスルーホールに挿入した状態に維持する保持力の向上とを両立することができるプレスフィット端子接続構造を提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明にかかるプレスフィット端子接続構造においては、プリント基板に設けられたスルーホールに、プレスフィット端子の基板接続部が圧入され、前記スルーホールと前記プレスフィット端子とが、それぞれの接点部で、相互に電気的に接触するプレスフィット端子接続構造において、前記プレスフィット端子は、少なくとも前記接点部の表面に、スズとパラジウムを主成分とする合金よりなる合金部のドメイン構造が、純スズまたは前記合金部よりもパラジウムに対するスズの割合が高い合金よりなるスズ部の中に存在し、前記合金部と前記スズ部の両方が最表面に露出した合金含有層を有し、前記スルーホールは、少なくも前記接点部を含む内周面の最表面に、スズ層を有するものである。
ここで、前記合金含有層の表面の硬度は、120Hv以上、380Hv以下であることが好ましい。
前記プレスフィット端子および前記スルーホールの前記接点部の表面には、コンタクトオイルの層が存在しないことが好ましい。
また、前記スルーホールの前記スズ層に被覆された内周面と、前記プレスフィット端子の前記合金含有層に被覆された接点部の間における摩擦係数の最大値が、前記プレスフィット端子を前記スルーホールに挿入する際よりも、前記プレスフィット端子を前記スルーホールから抜去する際に大きくなるとよい。
前記スルーホールの前記スズ層に被覆された内周面と、前記プレスフィット端子の前記合金含有層に被覆された接点部の間における最大静止摩擦係数と動摩擦係数の差が、0.06以上であるとよい。前記スルーホールの前記スズ層に被覆された内周面と、前記プレスフィット端子の前記合金含有層に被覆された接点部の間における最大静止摩擦係数が、0.4以上であるとよい。前記スルーホールの前記スズ層に被覆された内周面と、前記プレスフィット端子の前記合金含有層に被覆された接点部の間における動摩擦係数が、0.4未満であるとよい。
また、前記合金含有層におけるパラジウムの含有量は、2原子%以上であるとよい。
前記プレスフィット端子を構成する基材と、前記合金含有層の間に、ニッケルまたはニッケル合金よりなる下地層が設けられているとよい。
上記発明にかかるプレスフィット端子接続構造においては、プレスフィット端子の基板接続部の表面に合金含有層が形成され、スルーホールの内周面にスズ層が形成されている。プレスフィット端子側に形成された合金含有層の最表面には、スズとパラジウムを主成分とする合金よりなる合金部と、純スズまたは合金部よりもパラジウムに対するスズの割合が高い合金よりなるスズ部の両方が露出されている。これらのうち、合金部は、スルーホール側に形成されたスズ層との接触部において、動摩擦係数を低下させ、プレスフィット端子挿抜時の削れの抑制や挿抜に必要な荷重の低減に、高い効果を有する。一方で、スズ部は、スルーホール側に形成されたスズ層との接触部において、スズの同種金属間における高い凝着力を発揮するため、静止摩擦係数を高める役割を果たす。その結果、プレスフィット端子をスルーホールに挿入した状態において、高い保持力が得られ、プレスフィット端子がスルーホールから抜けにくくなる。このように、プレスフィット端子とスルーホールの両方の表面における金属層の構成を適切に選択することで、挿抜時の金属材料の削れの抑制および必要荷重の低減と、挿入状態における保持力の向上を、高度に両立することが可能である。
ここで、合金含有層の表面の硬度が、120Hv以上、380Hv以下である場合には、硬い合金部と軟らかいスズ部が、それぞれ動摩擦係数の低減と凝着力の向上に高い効果を発揮できる量で、合金含有層の表面に露出されることにより、合金含有層の表面において上記範囲の硬度が達成されるので、硬度をそのような範囲に設定することで、プレスフィット端子を挿抜する際の表面層の削れの抑制や必要荷重の低減と、プレスフィット端子をスルーホールに挿入した状態における保持力の向上の両方を、効果的に達成することができる。特に、摩擦係数の最大値が、プレスフィット端子をスルーホールに挿入する際よりもスルーホールから抜去する際に大きくなる状態を、実現しやすい。
上記のようなプレスフィット端子の接続構造によれば、従来一般にめっき削れやめっき切れを抑制するために用いられるコンタクトオイルを使用しない場合であっても、スズ部によるスルーホール側のめっき切れの抑制の効果が、高く得られる。コンタクトオイルを使用しないことで、コンタクトオイル使用に伴って生じる種々の影響を排除することができる。
また、スルーホールのスズ層に被覆された内周面と、プレスフィット端子の合金含有層に被覆された接点部の間における摩擦係数の最大値が、プレスフィット端子をスルーホールに挿入する際よりも、プレスフィット端子をスルーホールから抜去する際に大きくなる場合には、プレスフィット端子を小さな力でスルーホールに挿入することができ、挿入に際して高い作業性が得られるとともに、挿入後の状態において高い保持力を得ることができる。
スルーホールのスズ層に被覆された内周面と、プレスフィット端子の合金含有層に被覆された接点部の間における最大静止摩擦係数と動摩擦係数の差が、0.06以上である場合には、最大静止摩擦係数が大きいことによる、プレスフィット端子をスルーホールに挿入した状態での保持力の増大と、動摩擦係数が小さいことによる、挿抜時の削れの抑制および必要荷重の低減とを、効果的に両立することができる。
スルーホールのスズ層に被覆された内周面と、プレスフィット端子の合金含有層に被覆された接点部の間における最大静止摩擦係数が、0.4以上である場合には、プレスフィット端子をスルーホールに挿入した状態での保持力を、特に効果的に増大させることができる。
スルーホールのスズ層に被覆された内周面と、プレスフィット端子の合金含有層に被覆された接点部の間における動摩擦係数が、0.4未満である場合には、プレスフィット端子をスルーホールに対して挿抜する際に、金属材料の削れの抑制と、必要な荷重の低減を、特に効果的に達成することができる。
また、合金含有層におけるパラジウムの含有量が、2原子%以上である場合には、動摩擦係数を低くし、最大静止摩擦係数と動摩擦係数の差を大きくする効果に特に優れている。
プレスフィット端子を構成する基材と、合金含有層の間に、ニッケルまたはニッケル合金よりなる下地層が設けられている場合には、合金含有層の基材に対する密着性を高めるとともに、合金含有層の耐熱性を高めることができる。
本発明の一実施形態にかかるプレスフィット端子接続構造について、プレスフィット端子をスルーホールに挿入していない状態を示す軸線方向に沿った断面図である。 上記プレスフィット端子接続構造について、プレスフィット端子をスルーホールに挿入した状態を示しており、(a)は軸線方向に沿った断面図、(b)は(a)中のA−A断面図である。 (a)スルーホールの内周面、および(b)プレスフィット端子の表面の層構成を示す断面図である。 プレスフィット端子をスルーホールから抜く際の、印加荷重および摩擦係数と変位量との関係を模式的に示す図である。 スルーホールの内周面にスズ層が形成されている場合について、荷重と変位の関係を測定した結果を示す図である。(a)〜(c)は、プレスフィット端子に合金含有層が形成された実施例1〜3に対応しており、合金含有層におけるパラジウムの含有量が異なっている。(d)〜(f)は、プレスフィット端子に種々の合金層が形成された比較例1〜3に対応している。 プレスフィット端子に合金含有層が形成され、スルーホールの内周面に銀層または銅層が形成されている場合について、荷重と変位の関係を測定した結果を示す図である。(a)〜(c)は、スルーホールの内周面に銀層が形成された比較例4〜6に、(d)〜(f)は、スルーホールの内周面に銅層が形成された比較例7〜9対応しており、それぞれ、合金含有層におけるパラジウムの含有量が異なっている。 最大摩擦係数差と合金含有層の硬度の関係を示す図である。 内周面にスズ層が形成されたスルーホールにプレスフィット端子を挿入した状態において、スルーホールとプレスフィット端子の境界部の状態を示す写真であり、プレスフィット端子の表面に、(a)合金含有層が形成されている場合、(b)薄いスズ層が形成されている場合、(c)厚いスズ層が形成されている場合を示している。(a)ではコンタクトオイルを使用せず、(b)および(c)ではコンタクトオイルを使用している。 内周面にスズ層が形成されたスルーホールにプレスフィット端子を挿入し、引き抜いた後の状態について、スルーホールの断面を示す写真であり、プレスフィット端子の表面に、(a)合金含有層が形成されている場合、(b)薄いスズ層が形成されている場合を示している。(a),(b)いずれにおいても、コンタクトオイルは使用していない。
以下、図面を用いて本発明の一実施形態にかかるプレスフィット端子接続構造について、詳細に説明する。
[プレスフィット端子接続構造の概略]
まず、図1〜3を参照しながら、プレスフィット端子接続構造1の概略について説明する。プレスフィット端子接続構造1は、プレスフィット端子2と、プリント基板(PCB)3に設けられたスルーホール30とによって構成される。プリント基板3のスルーホール30にプレスフィット端子2の基板接続部20が圧入され、スルーホール30とプレスフィット端子2とが、それぞれの接点部で、相互に電気的に接触する。
プリント基板3の表面には、所定のパターンを有する導電路(図略)が形成されている。そして、導電路上に、スルーホール30が形成されている。スルーホール30の内周面31には、後で詳しく説明するスズ層3cが形成されており、導電性の接点部となっている。スルーホール30の内周面31は、導電路に電気的に接続されている。
プレスフィット端子2は、全体的に細長い形状を有する電気接続端子であり、一端に、プリント基板3のスルーホール30に圧入接続される基板接続部20を有し、他端に、相手方接続端子と嵌合等によって接続される端子接続部(図略)を有している。両端に基板接続部20と端子接続部を有するプレスフィット端子2を利用することで、プレスフィット端子2を介して、プリント基板3と相手方接続端子の間に、電気接続を形成することができる。プレスフィット端子2は、多数を並べて保持したPCBコネクタの形で用いられることが多い。
基板接続部20は、スルーホール30に圧入接続される部分に、1対の膨出片21,21を有している。膨出片21,21は、プレスフィット端子2の軸線方向(図1の縦方向)と直交する方向に互いに離れるように、略円弧状に膨出した形状を有している。膨出片21,21の膨出方向の外側面において、最も外側に突出した頂部が、スルーホール30の内周面31に接触する接点部21a,21aとなる。1対の膨出片21,21の径方向の最大長さ(1対の接点部21a,21aの間の最大の距離)はスルーホール30の内径よりも大きくなっている。
1対の膨出片21,21の間には空隙23が形成されており、この空隙23により、図2のようにプレスフィット端子2をスルーホール30に挿入した際に、1対の膨出片21,21が、径方向に押し縮められ、弾性変形する。そして弾性成分によって弾性回復し、スルーホール30の内周面31の接点部との接触を保つ。基板接続部20の膨出片21,21よりも先端側には、先細り形状に加工された案内部22が形成されており、基板接続部20をスルーホール30に案内する役割を果たす。
[プレスフィット端子およびスルーホールの材料構成]
次に、プレスフィット端子2およびプリント基板3のスルーホール30を構成する材料について説明する。
(1)スルーホール
スルーホール30の内周面31には、全域に、スズ層3cが形成され、最表面に露出している。つまり、図3(a)に断面の概略図を示すように、プリント基板3を構成する基材3aの表面に、適宜、銅下地層3bを挟んで、スズ層3cが形成されている。そして、スズ層3cの表面が、スルーホール30の内周面31となっている。
スズ層3cは、純スズ、またはスズを主成分とするスズ合金よりなる。スズ合金である場合には、スズ以外の金属元素の含有量が、次に説明するプレスフィット端子2の表面の合金含有層2cに含まれる合金部2c1(スズ−パラジウム合金)におけるパラジウムの含有量よりも少ないことが好ましい。
銅下地層3bおよびスズ層3cは、例えば公知のめっき法により、順に積層して形成すればよい。銅下地層3bおよびスズ層3cの厚さは特に指定されないが、スズ層3cの厚さとしては、プレスフィット端子2との間における高い接続信頼性や高い最大静止摩擦係数(以下、単に静止摩擦係数と称する場合がある)等、スズ本来の性質として得られる特性を発揮するのに十分な厚さ、例えば0.1μm以上であることが好ましい。また、基板3へのめっき時間の短縮等の観点から、10.0μm以下であることが好ましい。ただし、プリント基板3のスルーホール30において、金属層の厚さを自在に変化させることは通常は困難である。
なお、スズ層3c(および銅下地層3b)は、プレスフィット端子2との間での挿抜や挿入状態の保持に有効に寄与させる観点からは、スルーホール30の内周面31のうち、プレスフィット端子2の接点部21a,21aと接触する可能性のある接点部にさえ設ければよいことになる。しかし、通常、この種の金属層は、スルーホール30の内周面31の全体に設けられる。スズ層3cの表面には、プレスフィット端子2との間での挿抜や挿入状態の保持におけるスズ層3cの特性を大きく変化させない範囲で、プリフラックス処理等により、有機皮膜が形成されていてもよい。
(2)プレスフィット端子
プレスフィット端子2の表面には、最表面に合金含有層2cが露出されている。つまり、図3(b)に断面の概略図を示すように、プレスフィット端子2を構成する銅または銅合金等の基材2aの表面に、適宜、ニッケル下地層2bを挟んで、合金含有層2cが形成されている。
合金含有層2cは、スズとパラジウムを主成分とする合金よりなる合金部2c1と、純スズまたは合金部2c1におけるよりもスズの割合が高い合金よりなるスズ部2c2とから構成される。スズ部2c2の中に、合金部2c1が偏析し、三次元ドメイン状(海島状、クラスター状)の構造を形成している。合金部2c1は、主に、スズとパラジウムが一定の組成比で合金を形成したスズ−パラジウム合金よりなる。ただし、ニッケル下地層2bを構成するニッケルや基材2aを構成する金属元素、不可避的不純物、合金に取り込まれていないパラジウムの相などが、合金中に少量含まれていてもよい。特に、ニッケル下地層2bを用いる場合に、合金含有層2cが、スズおよびパラジウムに加え、ニッケルを含有する金属間化合物よりなってもよい。
合金部2c1とスズ部2c2は、ともに合金含有層2cの最表面に露出している。合金含有層2cとしては、その全体が参照により援用される本出願人の出願による国際公開第2013/168764号に開示されているスズ−パラジウム合金含有層を好適に用いることができるが、以下に、特に好ましい形態について簡単に説明する。
後に詳しく説明するように、合金含有層2cにおいて、最表面に露出した合金部2c1が、スルーホール30の内周面31のスズ層3cとの間で、動摩擦係数を低減する役割を果たし、最表面に露出したスズ部2c2が静止摩擦係数を増大させる役割を果たす。合金部2c1による動摩擦係数の低減を効果的に達成する観点から、合金含有層2c全体、つまり合金部2c1およびスズ部2c2を合わせた合金含有層2cの全領域において、パラジウムの含有量(Pd/(Pd+Sn))が1原子%以上、特に2原子%以上、さらには3原子%以上、4原子%以上であることが好ましい。一方、スズ−パラジウム合金は、PdSnなる安定な金属間化合物を形成することが知られており、合金含有層2cの一部を占める合金部2c1を、この金属間化合物(またはそのパラジウムの一部がニッケルに置換された金属間化合物)を主として構成する観点から、パラジウムの含有量が20原子%未満であることが好ましい。さらに、スズ部2c2を十分に確保し、スズ部2c2による静止摩擦係数の増大を効果的に達成する観点から、パラジウムの含有量の上限値は、より好ましくは7原子%である。
また、スルーホール30のスズ層3cとの間の動摩擦係数を効果的に低減する観点から、合金含有層2cの表面に占める合金部2c1の露出面積率は、10%以上、さらには20%以上であることが好ましい。なお、合金部2c1の露出面積率は、(表面に露出する合金部2c1の面積)/(合金含有層2cの表面全体の面積)×100(%)として算出される。
また、スルーホール30のスズ層3cとの間の動摩擦係数を低減しつつ静止摩擦係数を増大するという合金含有層2cの有する特性を十分に発揮させる観点から、合金含有層2c全体の厚さは、0.1μm以上であることが好ましい。また、合金含有層2cの形成に要するコストを抑える等の観点から、合金含有層2c全体の厚さは、10μm以下であることが好ましい。
ニッケル下地層2bは、ニッケルまたはニッケル合金よりなり、基材2aに対する合金含有層2cの密着性を高めるとともに、基材2aから合金含有層2cへの銅原子の拡散を抑制する役割を果たす。ニッケル下地層2bのうち、合金含有層2c側の一部は、後述する合金含有層2cの形成工程での加熱によって、ニッケル−スズ合金層2b2となっていてもよい。ニッケル下地層2bの残りの部分は、スズと合金化しないニッケル層2b1となっている。
合金含有層2cは、例えば、基材2aの表面またはニッケル下地層2bの表面にパラジウムめっき層とスズめっき層をこの順に積層し、加熱によって合金化させることで、形成することができる。または、スズとパラジウムの両方を含むめっき液を使用して、共析によって合金含有層2cを形成してもよい。簡便性の観点からは、パラジウムめっき層とスズめっき層を積層してから合金化させる前者の方法が好適である。合金化の際の加熱温度と加熱時間を調整することで、合金部2c1の露出面積率を制御することが可能である。
スズめっき層とパラジウムめっき層の厚さは、最終的に作成したい合金含有層2cの厚さや、パラジウムの含有量、合金部2c1およびスズ部2c2の露出面積率、合金含有層2cの硬度等を考慮して適宜定めればよい。例えば、スズめっき層の厚さを1.0〜1.5μmとし、パラジウムめっき層の厚さを0.02〜0.03μmとする形態を例示することができる。
なお、合金含有層2c(およびニッケル下地層2b)は、スルーホール30に対する挿抜や挿入状態の保持に対して寄与させる観点からは、接点部21a,21aの表面にさえ設ければよいことになる。しかし、プレフィット端子の製造の簡便性等の観点から、基板接続部20全体、さらには端子接続部まで含むプレスフィット端子2全体に設けておけばよい。プレスフィット端子2は、基材2aの表面に合金含有層2c(およびニッケル下地層2b)を形成した板材から、打ち抜き加工によって製造することができる。
[合金含有層の硬度]
ここで、合金含有層2cの表面の硬度と、スルーホール30におけるプレスフィット端子2の挿抜および保持における挙動との関係について説明する。なお、合金含有層2cの表面の硬度は、プレスフィット端子2の合金含有層2cがスルーホール30の内周面31のスズ層3cと実際に接触する実接触面の領域全体において計測される硬度、つまり共存して露出した合金部2c1とスズ部2c2の両方を含んだ表面に対して計測される硬度(みかけの硬度)である。
合金含有層2cが露出したプレスフィット端子2の基板接続部20を、内周面31にスズ層3cが露出したスルーホール30に挿入する際に、合金含有層2cの表面の金属材料が部分的に摩耗され、接点部21a,21aとスルーホール30の内周面31との間の界面に、凝着力を有する層が形成される。
金属材料の摩耗の起こりやすさは、下記の式(1)で表されることが知られている。
V=(k/H)WL (1)
ここで、Vは摩耗体積、kは摩耗係数、Hは硬度、Wは荷重、Lは摺動距離である。
式(1)に示されるように、合金含有層2cにおける摩耗の起こりやすさ(摩耗体積V)は、硬度Hに反比例する。つまり、合金含有層2cの表面の硬度が低いほど、摩耗が起こりやすく、上記のような凝着力を有する層が形成されやすくなる。プレスフィット端子2の基板接続部20がスルーホール30に挿入された状態において、そのような層が形成され、相互に接触した合金含有層2cとスズ層3cの間で凝着が起こっていると、スルーホール30におけるプレスフィット端子2の保持力が高くなり、プレスフィット端子2がスルーホール30から離脱しにくくなる。上記したように、スズ部2c2は、硬度が低く、かつスルーホール30側のスズ層3cと同種金属間の凝着を起こしやすいため、合金含有層2cの表面において、凝着力を有する層を形成することによる保持力の向上に、中心的に寄与する。
一方、合金含有層2cの表面において、動摩擦力の主要な発生要因は、凝着摩擦であり、凝着摩擦は下記の式(2)で表されることが知られている。
Fs=(s/H)W (2)
ここで、Fsは凝着摩擦力、sは剪断強さ、Hは硬度、Wは荷重である。
式(2)に示されるように、凝着摩擦力Fsは硬度Hに反比例する。つまり、合金含有層2cの表面の硬度が低いほど、凝着摩擦によって発生する動摩擦係数が高くなる。プレスフィット端子2の合金含有層2cとスルーホール30のスズ層3cの間の動摩擦係数が高くなると、プレスフィット端子2をスルーホール30に対して挿抜する際に、材料の削れが起こりやすくなるとともに、挿抜に必要な荷重が大きくなる。上記したように、合金部2c1は、硬度が高く、合金含有層2cの表面において、凝着摩擦による動摩擦係数を低減する方向に作用する。その結果として、合金部2c1は、プレスフィット端子2の挿抜時の削れの抑制や必要荷重の低減に、中心的に寄与する。
このように、合金含有層2cの表面の硬度が低いほど、スルーホール30におけるプレスフィット端子2の保持力が高くなる一方、合金含有層2cの硬度が高いほど、スルーホール30に対してプレスフィット端子2を挿抜する際の削れの抑制や必要荷重の低減を達成しやすい。そこで、合金含有層2cの表面の硬度を、例えば、120Hv以上、380Hv以下としておけば、保持力の向上と、挿抜時の削れの抑制および必要荷重の低減とを、バランスよく両立することができる。換言すると、合金含有層2cが上記のような範囲の硬度を有することは、表面の動摩擦係数を低減することができる高硬度の合金部2c1と、スズ層3cとの凝着によって静止摩擦係数を高めることができる低硬度のスズ部2c2とが、それぞれの役割を十分に発揮できる面積で、ともに最表面に露出されていることを意味し、その結果として、動摩擦係数の低減と静止摩擦係数の向上とを両立することができる。合金含有層2cの硬度は、150Hv以上、さらには200Hv以上であれば、また350Hv以下、さらには300Hv以下であれば、一層好ましい。
合金含有層2cの硬度は、上記のように、合金含有層2cの表面に露出される合金部2c1とスズ部2c2との割合(露出面積率)に依存し、例えば、合金含有層2cを形成する際のスズ層とパラジウム層の厚さの比率によって、露出面積率を制御することができる。おおむね、パラジウム層の比率を高くすることで、合金含有層2cに占める合金部2c1の割合が高まり、硬度が高くなる。また、合金含有層2cの硬度は、スズ層とパラジウム層を積層して加熱する際の加熱温度や加熱時間にも依存する。
[摩擦の挙動]
(1)動摩擦係数および静止摩擦係数
合金部2c1とスズ部2c2よりなる合金含有層2cが露出したプレスフィット端子2の基板接続部20の接点部21a,21aと、スズ層3cが露出したスルーホール30の内周面31の接点部との間における摩擦の挙動を、以下のようにして評価することができる。
つまり、図2に示すように、プレスフィット端子2の基板接続部20、あるいは基板接続部20のみを抜き出したモデルとして構成したピンを、スルーホール30に挿入した状態で準備する。そして、プレスフィット端子2を、軸線方向に沿って、スルーホール30から脱出する方向に変位させながら、プレスフィット端子2の軸線方向に沿って、先端側から基端側に向かって印加される荷重Fを計測する。そして、プレスフィット端子2の変位xの関数として、印加した荷重Fをとして記録する。
印加した荷重Fと変位xの関係をプロットすると、図4のようになる。変位xが小さい領域では、荷重Fが変位量xに対して大きな傾きをもって増加する。換言すると、荷重Fを印加しても、プレスフィット端子2がほとんど変位しない状態にある。荷重Fは、最大値Fmaxをとった後、急激に落ち込み、変位xに対して実質的に一定値をとるようになる(Fdr)。荷重Fの最大値Fmaxは、スルーホール30におけるプレスフィット端子2の保持力に対応する。また、落ち込み量に対応する最大値Fmaxと平坦部の値Fdrの差であるFapが、プレスフィット端子2の離脱におけるピーク高さとなる。
ここで、荷重Fの値は、プレスフィット端子2の接点部21a,21aとスルーホール30の内周面31との間の摩擦係数μに変換することができる。つまり、図2に示すように、スルーホール30の内周面31からプレスフィット端子2の一方の膨出片21に、プレスフィット端子2の軸線に垂直な方向に印加される力が、接触荷重Pであり、その接触荷重Pを用いて、下記の式(3)のように、摩擦係数μを求めることができる。なお、接触荷重Pは、上記式(1),(2)の荷重Wに対応する量である。
μ=F/2P (3)
スルーホール30の径が一定であれば、プレスフィット端子2の変位中に接触荷重Pは実質的に変化しないので、摩擦係数μは印加荷重Fとの間に線形の関係を維持し、図4に示すように、変位xに対する摩擦係数μの挙動は、印加荷重Fの挙動と同じパターンをとる。ここで、摩擦係数μの最大値μmaxは、最大静止摩擦係数に対応する。そして、急激に落ち込んだ後の平坦な摩擦係数μdrが、動摩擦係数に対応する。落ち込み量μapが、最大静止摩擦係数と動摩擦係数の差に対応する。
上記で説明したプレスフィット端子2は、接点部21a,21aの最表面に、合金含有層2cの合金部2c1とスズ部2c2の両方を露出させている。このうち、合金部2c1は、その硬さ等の効果により、スルーホール30の内周面31のスズ層3cとの間に、非常に低い動摩擦係数μdrを示す。その結果、プレスフィット端子2をスルーホール30に対して挿抜する際に、プレスフィット端子2の表面が削れにくくなっている。また、プレスフィット端子2の挿抜に要する力が小さくて済むようになっている。一方で、スズ部2c2は、軟らかい表面を有し、同種の金属層であるスルーホール30の内周面31のスズ層3cとの間で、凝着を起こしやすい。そのため、プレスフィット端子2をスルーホール30に挿入した状態において、プレスフィット端子2の表面とスルーホール30の内周面31の間に、凝着が生じる。その結果、プレスフィット端子2がスルーホール30から離脱する際の剪断力が大きくなり、最大静止摩擦係数μmaxが高くなる。そして、スルーホール30におけるプレスフィット端子2の保持力が大きくなる。
このように、内周面31にスズ層3cを有するスルーホール30と組み合わせるプレスフィット端子2として、スズ部2c2と合金部2c1をともに最表面に露出させた合金含有層2cを有するものを用いることで、低い動摩擦係数μdrによる挿抜時の削れの抑制および必要荷重の低減と、高い最大静止摩擦係数μmaxによる挿入状態での保持力の向上とを、両立することができる。そして、最大静止摩擦係数μmaxと動摩擦係数μdrの差μapが大きいことにより、スルーホール30からのプレスフィット端子2の離脱における荷重Fのピーク(Fap)が大きくなり、意図しない離脱の回避と意図した離脱(抜去)の補助とが両立される。
このような、低動摩擦係数と高静止摩擦係数の両立は、合金部2c1とスズ部2c2の両方を最表面に露出させた合金含有層2cをプレスフィット端子2側に用い、その合金含有層2cを構成するスズ部2c2と同種の金属層であるスズ層3cをスルーホール30側に用いるという特定の組み合わせを採用することにより、達成されるものである。プレスフィット端子2とスルーホール30のいずれか一方でも、表面の金属層の種類がこれと異なっていれば、摩擦に関して同様の挙動は達成され難い。一般にプリント基板のスルーホールの内周面に形成される金属層として、代表的なものは、スズ層、銀層、銅層であるが、後の実施例にも示すように、銀層または銅層を備えるスルーホールと組み合わせて、上記のような合金含有層2cを有するプレスフィット端子2を用いても、高静止摩擦係数と低動摩擦係数は両立されない。反対に、スルーホール30の内周面31にスズ層3cが形成されている場合に、プレスフィット端子の表面に、スズ部2c2のような純スズまたはスズ含有量の多い合金の領域が、合金部2c1のように高硬度の領域と混在した構造をとっていない他種の合金を用いても、高静止摩擦係数と低動摩擦係数は両立されない。例えば、スズ−銀合金、スズ−鉛合金、スズ−銅合金等は、層内における均一性の高い合金層を形成し、ドメイン状にスズ部と共存するものではないので、低摩擦係数化の効果には優れるが、静止摩擦係数も低くなってしまう。
プレスフィット端子2の挿抜時における削れの抑制および必要荷重の低減の効果を十分に得る観点から、動摩擦係数μdrは、0.4未満、さらには、0.3以下であることが好ましい。一方、挿入状態における保持力の向上の効果を十分に得る観点から、最大静止摩擦係数μmaxは、0.4以上、さらには0.45以上であることが好ましい。また、最大静止摩擦係数μmaxと動摩擦係数μdrの差μapは、0.06以上、さらには0.10以上であることが好ましい。
(2)挿入時最大摩擦係数および抜去時最大摩擦係数
上記では、スルーホール30におけるプレスフィット端子2の保持力の大きさと、挿抜時の必要荷重の低減を両立するための指標として、プレスフィット端子2の合金含有層2cとスルーホール30のスズ層3cの間の静止摩擦係数と動摩擦係数を用いることを説明した。しかし、それら静止摩擦係数および動摩擦係数に代わって、別の指標を用いることもできる。
つまり、プレスフィット端子2をスルーホール30に挿入する際の摩擦係数の最大値(挿入時最大摩擦係数)と、プレスフィット端子2をスルーホール30から抜去する際の摩擦係数の最大値(抜去時最大摩擦係数)を、指標として用いることができる。挿入時最大摩擦係数よりも、抜去時最大摩擦係数が大きくなるようにすれば、スルーホール30におけるプレスフィット端子2の保持力の大きさと、スルーホール30へのプレスフィット端子2の挿入時の必要荷重の低減とを、効果的に両立することができる。換言すると、抜去時最大摩擦係数の値から挿入時最大摩擦係数の値を引いた差分(抜去時最大摩擦係数−挿入時最大摩擦係数)として表される最大摩擦係数差が、正の値をとるようにすればよい。
挿入時最大摩擦係数が小さいほど、プレスフィット端子2をスルーホール30に挿入する際に要する力が小さくてすむようになる。その結果、プレスフィット端子2の挿入時の作業性が向上する。一方、抜去時最大摩擦係数が大きいほど、スルーホール30からプレスフィット端子2を脱出させるのに大きな力を要することになるので、スルーホール30におけるプレスフィット端子2の保持力が大きくなる。その結果、プレスフィット端子2をスルーホール30に挿入した状態を強固に維持できるようになる。そして、挿入時最大摩擦係数よりも抜去時最大摩擦係数が大きいという関係性を確保することで、それらの効果を両立しやすくなる。最大摩擦係数差の挿入時最大摩擦係数に対する割合(最大摩擦係数差/挿入時最大摩擦係数)が、3%以上、さらには5%以上であれば、それらの効果の両立性に特に優れる。
ここで、挿入時最大摩擦係数および抜去時最大摩擦係数は、プレスフィット端子2をスルーホール30に対して軸線方向に運動させ、挿入または抜去する過程全体の中で摩擦係数が最大になった時の値であり、挿入または抜去の過程を通じて、プレスフィット端子2およびスルーホール30の状態が一定ではないこと等に起因して、挿入時および抜去時に最大摩擦係数を与える現象も複合的なものとなりうる。しかし、挿入時最大摩擦係数は、プレスフィット端子2の合金含有層2cとスルーホール30のスズ層3cとの間の動摩擦係数と、強い正の相関を有し、抜去時最大摩擦係数は、両者の間の最大静止摩擦係数と、強い正の相関を有するはずである。よって、挿入時最大摩擦係数が小さいほど、表面間の動摩擦係数が小さくなると言える。一方、抜去時最大摩擦係数が大きいほど、表面間の最大静止摩擦係数が大きくなると言える。
挿入時最大摩擦係数と抜去時最大摩擦係数の大小関係は、合金含有層2cの表面の状態に依存して変化するが、後の実施例に示すように、合金含有層2cの表面の硬度が、上記で好適な値として示した120〜380Hvの範囲に存在する場合に、挿入時最大摩擦係数よりも抜去時最大摩擦係数の方が大きいという関係が得られやすい。実施例に示すように、最大摩擦係数差(抜去時最大摩擦係数−挿入時最大摩擦係数)は、合金含有層2cの硬度に対して、極大を有する挙動を示す。抜去時最大摩擦係数、挿入時最大摩擦係数とも、表面の硬度が高くなるほど、値が小さくなるという挙動を示すが、挿入時最大摩擦係数の方が、表面の硬度に対して大きな依存性を示すことにより、最大摩擦係数差が、そのような極大を有する挙動を示すものと考えられる。
挿入時最大摩擦係数および抜去時最大摩擦係数の値自体は、挿抜を行った回数等の履歴、評価の順序等の要因に依存して変化する可能性があるが、両最大摩擦係数の間の大小関係自体は、それらの要因にほぼ依存しない。また、プレスフィット端子2をスルーホール30に挿入してからすぐにプレスフィット端子2を抜去し、抜去時最大摩擦係数を測定してもよいが、合金含有層2cとスズ層3cの間の凝着が進むことで抜去時最大摩擦係数が上昇し、保持力が向上するという現象を正確に評価に取り込むために、プレスフィット端子2をスルーホール30に挿入した状態でしばらく放置してから、抜去時最大摩擦係数を測定する方がよい。放置する時間は、凝着が十分に進行する程度に設定すればよく、24時間以上を例示することができる。
[コンタクトオイルの排除]
従来一般のプレスフィット端子においては、スルーホールに挿入する前に、潤滑性を付与し、プレスフィット端子のめっき削れやスルーホールのめっき切れを抑制するために、表面にコンタクトオイルを塗布することが多い。しかし、本実施形態にかかるプレスフィット端子接続構造1においては、コンタクトオイルを使用せず、プレスフィット端子2の接点部21a,21aの表面にも、スルーホール30の内周面31にも、コンタクトオイルの層を設けない方が好ましい。
上記のように、本実施形態にかかるプレスフィット端子接続構造1においては、プレスフィット端子2の表面に、合金部2c1とスズ部2c2の両方を最表面に露出させた合金含有層2cが形成されており、スルーホール30の内周面31にスズ層3cが露出されている。硬い合金部2c1がプレスフィット端子2の最表面に露出されていることにより、プレスフィット端子2をスルーホール30に対して挿抜した時に、プレスフィット端子2の表面の材料が削れること(めっき削れ)が効果的に抑制される。一方、軟らかいスズ部2c2が最表面に露出されていることにより、プレスフィット端子2をスルーホール30に対して挿抜した時に、スルーホール30の内周面31のスズ層3cが、硬い表面との摩擦によって除去を受けること(めっき切れ)も効果的に抑制される。
このように、プレスフィット端子2の表面に合金含有層2cを設け、スルーホール30の内周面31にスズ層3cを設けるという組み合わせを採用することで、コンタクトオイルを塗布しなくても、プレスフィット端子2側のめっき削れおよびスルーホール30側のめっき切れの両方を十分に抑制することができる。コンタクトオイルを塗布する場合には、塗布自体、また、塗布による濡れの程度を管理するために、コストおよび労力を要する。また、コンタクトオイルがプレスフィット端子とスルーホールの間の電気接触部に介在することで、接続信頼性に影響を与える可能性がある。さらに、コンタクトオイルを塗布した表面には、塵埃が付着しやすくなり、塵埃も接続信頼性に影響を与える可能性がある。コンタクトオイルを使用しないことで、コンタクトオイルの塗布によって発生するこれらの事象を排除することができる。
以下に本発明の実施例および比較例を示す。なお、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
<試験A:動摩擦係数および静止摩擦係数の評価>
[試料の作製]
(1)実施例1〜3
図1,2に示したようなプレスフィット端子の基板接続部の形状で製造されたプレスフィットピン(ニードルアイタイプ、厚さt1=0.6mm)を準備し、ニッケル下地層を形成した上に、スズ−パラジウム合金含有層を形成した。合金含有層の形成に際して、パラジウム層とスズ層をこの順に積層し、300℃で加熱した。スズ層とパラジウム層の厚さは、実施例1〜3で変化させた。厚さの実測値を下記の表1中に示している。
また、スルーホールの内周面にスズめっきを施したプリント基板を準備した。プリント基板は、FR−4材よりなるものであり、スルーホールは、φ1.09mmの内径を有し、深さt2=1.6mmである。スルーホールの内周面には、厚さ25〜35μmのCu下地層の上に、厚さ0.6〜0.8μmのスズ層が形成されている。
(2)比較例1〜3
実施例1〜3のスズ−パラジウム合金含有層の代わりに、スズ−銀合金層、スズ−鉛合金層、スズ−銅合金層を形成したプレスフィットピンを準備し、比較例1〜3の試料とした。スルーホールとしては、実施例1〜3と同じ、内周面にスズめっきを施したものを用いた。
(3)比較例4〜6
比較例4〜6に用いるプレスフィットピンとして、実施例1〜3に用いたのと同じ、スズ−パラジウム合金含有層を形成したものを用いた。スルーホールの内周面には、厚さ25〜35μmのCu下地層の上に、厚さ0.1〜0.3μmの銀層が形成されたものを用いた。
(3)比較例7〜9
比較例7〜9に用いるプレスフィットピンとして、実施例1〜3に用いたのと同じ、スズ−パラジウム合金含有層を形成したものを用いた。スルーホールの内周面には、厚さ25〜35μmのCu層にプリフラックス処理を施したものを用いた。
[端子脱出時の荷重の計測]
各実施例および比較例にかかる試料について、プレスフィットピンをスルーホールに挿入した。そして、プレスフィットピンを、軸線方向に沿って、スルーホールから脱出させる方向に変位させながら、ロードセルを用いて、プレスフィットピンに印加される荷重を計測した。各実施例および比較例について、計測は試料を替えて5回行った。なお、この試験においては、いずれの実施例、比較例についても、コンタクトオイルを用いていない。
[試験結果]
図5,6に、実施例1〜3および比較例1〜9について、端子脱出時の荷重と変位量の関係を計測した結果を示す。掲載している結果は、5回の計測のうちの代表例のものである。
また、表1に、内周面にスズ層が形成されたスルーホールを用いた実施例1〜3および比較例1〜3について、荷重および摩擦係数の計測結果をまとめている。掲載した各値は、5回の計測における平均値である。ここで、摩擦係数は、上記の式(3)に基づいて算出しており、接触荷重Pとしては、スルーホールの内径と等しい幅まで膨出片21,21を押し縮めるのに必要な荷重をロードセルにより測定した値を用いている。また、落ち込み後の印加荷重(Fdr)に変動が見られる場合には、落ち込み直後の所定区間の平均値を採用した。
図5および表1に示した、スルーホール(TH)の内周面にスズ層が設けられている場合について、プレスフィットピン(PF)の表面にスズ−パラジウム合金含有層が設けられている実施例1〜3(図5(a)〜(c))と、他の金属層が設けられている比較例1〜3(図5(d)〜(e))とを比べると、実施例1〜3の場合において、最大静止摩擦係数が大きくなっており、また、動摩擦係数も比較的小さくなっている。そして、変位量が小さい領域に明確なピーク構造が見られ、最大静止摩擦係数と動摩擦係数の差(μap=μmax−μdr)に対応する離脱ピークの高さ(Fap)が大きくなっている。このことは、スルーホールの内周面にスズ層、プレスフィットピンの表面にスズ−パラジウム合金含有層という特定の組み合わせを採用することで、高い最大静止摩擦係数と低い動摩擦係数を両立し、両者の差を大きくすることが可能であることを示している。
実施例1〜3においては、合金含有層におけるパラジウムの含有量が変化しており、パラジウムの含有量が多いほど、動摩擦係数が低くなっている。一方、パラジウムの含有量が少なく、スズの含有量が多いほど、最大静止摩擦係数が高くなっている。最大静止摩擦係数と動摩擦係数の差は、パラジウムの含有量が多くなるほど、大きくなっており、このことは、パラジウム含有量の増加による動摩擦係数低下の効果の方が、最大静止摩擦係数低下の影響よりも大きいことを示している。特に、実施例1と実施例2の間で、両摩擦係数の差の値に大きな開きが見られる。
図5(a)〜(c)に示したスルーホールの内周面にスズ層が設けられている場合の実施例1〜3の結果を、図6(a)〜(c)に示した銀層が設けられている場合の比較例4〜6の結果および、図6(d)〜(f)に示した銅層が設けられている場合の比較例7〜9の結果と比較すると、スルーホールの内周面が銀または銅の場合には、スズである場合のように、高い最大静止摩擦係数と低い動摩擦係数を両立する挙動は得られていない。特に、銅の場合には、硬い表面を有し、スズ−パラジウム合金含有層のスズ部との凝着の効果がほとんど利用できないことにより、最大静止摩擦係数が小さくなっている。
<試験B:挿入時最大摩擦係数および抜去時最大摩擦係数の評価>
[試料の作製]
実施例1〜3で用いたのとは別のニードルアイタイプ(t1=0.6mm)のプレスフィットピンを用い、ニッケル下地層の上に、スズ−パラジウム合金含有層を形成したものを準備した。さらに、プリント基板として、上記試験Aの実施例1〜3で用いたのと同様の、スルーホールの内周面にスズめっきを施したものを準備した。
ここで、プレスフィットピンについては、試料B1〜B7として、合金含有層の硬度の異なる複数の試料を準備した。具体的には、合金含有層を形成する際のパラジウム層とスズ層の膜厚の比(Pd膜厚/Sn膜厚×100%)を変更することで、合金含有層の硬度を変更した。各試料におけるパラジウム層とスズ層の膜厚の比は、それぞれの膜厚の値とともに、表2に示している。また、スズ層とパラジウム層の積層構造に対する加熱温度は、300℃とした。
[硬度の確認]
各試料について、合金含有層の表面の硬度を測定した。測定は、ビッカース硬度計を用いて行った。
[挿入時最大摩擦係数および抜去時最大摩擦係数の評価]
各試料のプレスフィットピンを、スルーホールに挿入した。この際、プレスフィットピンを軸線方向に沿って変位させながら、ロードセルを用いて、プレスフィットピンに印加される荷重を計測した。端子と基板の間の接触荷重Pは、100Nとした。そして、変位の関数として得られた荷重の値を、上記試験Aと同様に、式(3)に基づいて、摩擦係数に変換した。その摩擦係数の最大値を、挿入時最大摩擦係数とした。
上記で挿入時の摩擦係数を測定した後、スルーホールにプレスフィットピンを挿入した状態のまま、室温にて24時間放置した。この状態から、プレスフィットピンを抜去し、挿入時と同様に荷重の測定と摩擦係数への変換を行った。抜去時も、接触荷重Pは100Nとした。そして、得られた摩擦係数の最大値を、抜去時最大摩擦係数とした。なお、この試験においても、コンタクトオイルは用いていない。
[試験結果]
表2に、試料B1〜B7について、パラジウム層とスズ層の膜厚値および膜厚比、合金含有層の硬度とともに、計測された挿入時最大摩擦係数および抜去時最大摩擦係数の値をまとめる。表にはさらに、それらの値から算出した最大摩擦係数差(抜去最大時摩擦係数−挿入時最大摩擦係数)を示す。また、図7に、合金含有層の硬度と最大摩擦係数差の関係を示す。図7には、データ点を2次関数で近似した曲線も併せて示している。
表2に示されるように、Pd/Sn膜厚比が大きくなるほど、合金含有層の硬度が高くなっている。そして、合金含有層の硬度が上がるほど、挿入時最大摩擦係数および抜去時最大摩擦係数が小さくなっている。
さらに、表2および図7によると、合金含有層の硬度と最大摩擦係数差の間には、明確な相関性が見られ、2次関数で近似できる、最大摩擦係数差に極大値が存在する挙動が得られている。そして、図中に破線で示すように、おおむね硬度120〜380Hvの領域において、最大摩擦係数が正の値をとっている。つまり、挿入時最大摩擦係数よりも、抜去時最大摩擦係数の方が大きくなっている。
<試験C:めっき削れおよびめっき切れの評価>
[試料の作製]
プレスフィット端子として、上記試験Aの実施例1〜3で用いたのと同様の、ニッケル下地層の上に、スズ−パラジウム合金含有層を形成したものを準備した。また、スズ−パラジウム合金含有層を形成する代わりに、ニッケル層、銅層、スズ層をこの順に積層し、リフロー処理を行って、最表面にスズ層を露出させたプレスフィット端子を準備した。ここで、スズ層を形成したプレスフィット端子としては、スズ層が厚いもの(0.8μm)と薄いもの(0.3μm)の2種を作成した。なお、リフロー処理により、スズ層の下層には、銅−スズ合金層が形成されている。さらに、プリント基板として、上記試験Aの実施例1〜3で用いたのと同様の、スルーホールの内周面にスズめっきを施したものを準備した。
[プレスフィット端子のめっき削れの評価]
各プレスフィット端子をプリント基板のスルーホールに挿入した。その状態で、プレスフィット端子とスルーホールの境界部を目視にて観察し、スルーホール周縁部への付着物の有無を指標として、プレスフィット端子においてめっき削れが起こっているかどうかを調べた。2種の厚さのスズ層が形成されたプレスフィット端子については、いずれも、スルーホールへの挿入の前に、表面にコンタクトオイルを塗布しておいたが、スズ−パラジウム合金含有層が形成されたプレスフィット端子に対しては、コンタクトオイルを用いていない。
図8に、(a)スズ−パラジウム合金含有層、(b)薄いスズ層、(c)厚いスズ層を有するプレスフィット端子について、スルーホールとプレスフィット端子の境界部を撮影した写真を示す。図8(c)の厚いスズ層を有するプレスフィット端子の場合には、円で囲んで示すように、スルーホールの周縁部に、付着物が見られている。これは、プレスフィット端子表面のスズ層が、スルーホールへの圧入時に削れて付着したものである。つまり、厚いスズ層がプレスフィット端子の表面に形成されている場合には、コンタクトオイルを用いているにもかかわらず、めっき削れが起こってしまっている。プレスフィット端子表面のスズ層を薄くした場合には、図8(b)のように、めっき削れに由来する付着物が観察されておらず、めっき削れを防ぐことが可能となっている。これらに対し、スズ−パラジウム合金層がプレスフィット端子の表面に形成されている場合には、コンタクトオイルを用いなくても、図8(a)のように、めっき削れに由来する付着物が観察されておらず、めっき削れが高度に防止されている。
[スルーホールのめっき切れの評価]
スズ−パラジウム合金含有層を形成したプレスフィット端子および薄いスズ層を形成したプレスフィット端子について、スルーホールに挿入した後、スルーホールから引き抜いた。引き抜き後に、スルーホールを軸線に沿って切断した。そして、断面において、スルーホールの内周面を目視にて観察し、内周面でめっき切れが起こっているかどうかを調べた。この評価においては、いずれのプレスフィット端子に対しても、コンタクトオイルを使用していない。
図9に、(a)スズ−パラジウム合金含有層、(b)薄いスズ層を有するプレスフィット端子を挿抜した場合について、スルーホールの断面を撮影した写真を示す。図9(b)のスズ層を有するプレスフィット端子を挿抜した場合には、図中に符号Aで指示するような基板材料の露出や、符号Bで指示するような銅下地層の露出が見られており、スルーホールにおいてめっき切れが起こっていることが分かる。これは、プレスフィット端子のスズ層が薄いため、下層のスズ−銅合金層の硬さの影響によるものと考えられる。一方、図9(a)のスズ−パラジウム合金含有層を有するプレスフィット端子を挿抜した場合には、スルーホール内周面に基板材料や銅下地層の露出に由来する構造が見られず、一様にスズ層に被覆された表面が観察されている。つまり、コンタクトオイルを使用していないにもかかわらず、スルーホールのめっき切れを防止することができている。これは、スズ−パラジウム合金含有層において、十分な厚さを有するスズ部が露出しており、軟らかい表面をスルーホール内周面との接触に提供しているためであると考えられる。
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
1 プレスフィット端子接続構造
2 プレスフィット端子
20 基板接続部
21 膨出片
21a 接点部
3 プリント基板
30 スルーホール
31 内周面
F 印加荷重
P 接触荷重

Claims (9)

  1. プリント基板に設けられたスルーホールに、プレスフィット端子の基板接続部が圧入され、前記スルーホールと前記プレスフィット端子とが、それぞれの接点部で、相互に電気的に接触するプレスフィット端子接続構造において、
    前記プレスフィット端子は、少なくとも前記接点部の表面に、スズとパラジウムを主成分とする合金よりなる合金部のドメイン構造が、純スズまたは前記合金部よりもパラジウムに対するスズの割合が高い合金よりなるスズ部の中に存在し、前記合金部と前記スズ部の両方が最表面に露出した合金含有層を有し、
    前記合金含有層の表面の硬度は、120Hv以上、380Hv以下であり、
    前記スルーホールは、少なくも前記接点部を含む内周面の最表面に、スズ層を有することを特徴とするプレスフィット端子接続構造。
  2. 前記プレスフィット端子および前記スルーホールの前記接点部の表面には、コンタクトオイルの層が存在しないことを特徴とする請求項1に記載のプレスフィット端子接続構造。
  3. 前記スルーホールの前記スズ層に被覆された内周面と、前記プレスフィット端子の前記合金含有層に被覆された接点部の間における摩擦係数の最大値が、前記プレスフィット端子を前記スルーホールに挿入する際よりも、前記プレスフィット端子を前記スルーホールから抜去する際に大きくなることを特徴とする請求項1または2に記載のプレスフィット端子接続構造。
  4. 前記スルーホールの前記スズ層に被覆された内周面と、前記プレスフィット端子の前記合金含有層に被覆された接点部の間における最大静止摩擦係数と動摩擦係数の差が、0.06以上であることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載のプレスフィット端子接続構造。
  5. 前記スルーホールの前記スズ層に被覆された内周面と、前記プレスフィット端子の前記合金含有層に被覆された接点部の間における最大静止摩擦係数が、0.4以上であることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載のプレスフィット端子接続構造。
  6. 前記スルーホールの前記スズ層に被覆された内周面と、前記プレスフィット端子の前記合金含有層に被覆された接点部の間における動摩擦係数が、0.4未満であることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載のプレスフィット端子接続構造。
  7. 前記合金含有層におけるパラジウムの含有量は、2原子%以上であることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載のプレスフィット端子接続構造。
  8. 前記プレスフィット端子を構成する基材と、前記合金含有層の間に、ニッケルまたはニッケル合金よりなる下地層が設けられていることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載のプレスフィット端子接続構造。
  9. 前記合金含有層におけるパラジウムの含有量は、3原子%以上であることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載のプレスフィット端子接続構造。
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