JP6749745B2 - アマドリアーゼ含有組成物の安定化方法、熱安定性が向上したアマドリアーゼ含有組成物及びこれを用いた糖化ヘモグロビン測定用組成物 - Google Patents

アマドリアーゼ含有組成物の安定化方法、熱安定性が向上したアマドリアーゼ含有組成物及びこれを用いた糖化ヘモグロビン測定用組成物 Download PDF

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Description

本発明は、アマドリアーゼ含有組成物の安定化方法、熱安定性が向上したアマドリアーゼ含有組成物及びこれを用いた糖化ヘモグロビン測定用組成物に関する。
糖化タンパク質は、グルコースなどのアルドース(アルデヒド基を潜在的に有する単糖およびその誘導体)のアルデヒド基と、タンパク質のアミノ基が非酵素的に共有結合を形成し、アマドリ転移することにより生成したものである。タンパク質のアミノ基としてはアミノ末端のαアミノ基、タンパク質中のリジン残基側鎖のεアミノ基が挙げられる。生体内で生じる糖化タンパク質としては血液中のヘモグロビンが糖化された糖化ヘモグロビン、アルブミンが糖化された糖化アルブミンなどが知られている。
これら生体内で生じる糖化タンパク質の中でも、糖尿病の臨床診断分野において、糖尿病患者の診断や症状管理のための重要な血糖コントロールマーカーとして、糖化ヘモグロビン(HbA1c)が注目されている。血液中のHbA1c濃度は過去の一定期間の平均血糖値を反映しており、その測定値は糖尿病の症状の診断や管理において重要な指標となっている。
このHbA1cを迅速かつ簡便に測定する方法として、アマドリアーゼを用いる酵素的方法、すなわち、HbA1cをプロテアーゼ等で分解し、そのβ鎖アミノ末端より遊離させたα−フルクトシルバリルヒスチジン(以降「αFVH」と表す。)もしくはα−フルクトシルバリン(以降「αFV」と表す。)を定量する方法が提案されている(例えば、特許文献1〜7参照。)。実際には、より正確な測定値を得る目的から、特に現在ではαFVHを測る方法が主流となっている。
アマドリアーゼは、酸素の存在下で、イミノ2酢酸もしくはその誘導体(「アマドリ化合物」ともいう。)を酸化して、グリオキシル酸またはα−ケトアルデヒド、アミノ酸またはペプチドおよび過酸化水素を生成する反応を触媒する。
アマドリアーゼは、細菌、酵母、真菌から見出されているが、特にHbA1cの測定に有用である、αFVHおよび/またはαFVに対する酵素活性を有するアマドリアーゼとしては、例えば、コニオカエタ(Coniochaeta)属、ユーペニシリウム(Eupenicillium)属、ピレノケータ(Pyrenochaeta)属、アルスリニウム(Arthrinium)属、カーブラリア(Curvularia)属、ネオコスモスポラ(Neocosmospora)属、クリプトコッカス(Cryptococcus)属、フェオスフェリア(Phaeosphaeria)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、エメリセラ(Emericella)属、ウロクラディウム(Ulocladium)属、ペニシリウム(Penicillium)属、フザリウム(Fusarium)属、アカエトミエラ(Achaetomiella)属、アカエトミウム(Achaetomium)属、シエラビア(Thielavia)属、カエトミウム(Chaetomium)属、ゲラシノスポラ(Gelasinospora)属、ミクロアスカス(Microascus)属、レプトスフェリア(Leptosphaeria)属、オフィオボラス(Ophiobolus)属、プレオスポラ(Pleospora)属、コニオケチジウム(Coniochaetidium)属、ピチア(Pichia)属、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属、アグロバクテリウム(Agrobacterium)属、アルスロバクター(Arthrobacter)属由来のアマドリアーゼが報告されている(例えば、特許文献1、6〜15、非特許文献1〜11参照。)。なお、上記報告例の中で、アマドリアーゼは、文献によってはケトアミンオキシダーゼやフルクトシルアミノ酸オキシダーゼ、フルクトシルペプチドオキシダーゼ、フルクトシルアミンオキシダーゼ等の表現で記載されている場合もある。
糖化ヘモグロビンを測定する目的で、アマドリアーゼを含有する測定用組成物や測定用キットを製造するにあたり、その保存性を向上させるという観点から、アマドリアーゼ含有組成物の熱安定性を向上させることが求められている。熱安定性を向上させることにより、長期保存が可能になり、あるいは、常温流通が可能になり、また、高温環境下での流通や使用が可能になることが期待される。
従来、アマドリアーゼの熱安定性を向上させるための技術としては、アマドリアーゼの数個のアミノ酸を置換することにより熱安定性を向上させる手法が挙げられる。具体的には、変異型Coniochaeta sp. NISL 9330株由来アマドリアーゼおよび変異型Eupenicillium terrenum ATCC18547株由来アマドリアーゼ、変異型Aspergillus nidulans株由来フルクトシルアミノ酸オキシダーゼ、変異型Phaeosphaeria nodorum株由来フルクトシルペプチドオキシダーゼが報告されている(例えば、特許文献16、17参照。)。中でも、特許文献16において開示されている大腸菌JM109(pKK223−3−CFP−T32)株が生産する変異型アマドリアーゼは、従来のアマドリアーゼと比較して非常に優れた熱安定性を示し、60℃、30分間の熱処理においても81%の残存活性を維持することが示されている。また、特許文献17において開示されているPhaeosphaeria nodorum株由来変異型フルクトシルペプチドオキシダーゼIE353−F282Yは、50℃、10分間の熱処理において92%の残存活性を維持することが示されている。また、変異を導入することなくある程度の熱安定性を有する天然型アマドリアーゼもいくつか見いだされている。具体的には、Neocosmospora vasinfecta NBRC7590株由来の真核型ケトアミンオキシダーゼは、45℃、30分間の熱処理で80%の残存活性を示している(例えば、特許文献9参照。)。Curvularia clavata YH923株由来の真核型ケトアミンオキシダーゼは、50℃、30分間の熱処理で80%の残存活性を示している(例えば、特許文献9参照。)。また、Phaeosphaeria nodorum株由来フルクトシルペプチドオキシダーゼは、50℃、10分間の熱処理で75%の残存活性を示している(例えば、特許文献17参照。)。さらに、アマドリアーゼそのものに対する改変ではなく、アマドリアーゼと共存させてその安定性を向上させるという観点からの検討もなされている。具体的には、Coniochaeta sp. NISL 9330株由来アマドリアーゼを含んだ溶液に、5mMのエチレンジアミン4酢酸および3%のグリシンを添加した際は、30℃、7日間保存後において79%の残存活性を維持していることが示されている(例えば、特許文献18参照。)。また、Fusarium oxysporum IFO−9972株由来フルクトシルアミノ酸オキシダーゼを含んだ溶液に、3%のL−アラニン、3%のグリシンまたは3%のザルコシンを添加した際は、37℃、2日間保存後において100%の残存活性を維持していることが示されている(例えば、特許文献19参照。)。
アマドリアーゼに変異を導入し界面活性剤耐性を向上させたことが報告されている(例えば、特許文献20参照)。特許文献20には、界面活性剤の存在下でのアマドリアーゼの残存活性を維持する又は低下を軽減する化合物も記載されているが、特定の変異や特定の化合物によりアマドリアーゼの界面活性剤耐性が向上したとしても、熱安定性は必ずしも向上するとは限らない。
しかしながら、アマドリアーゼ含有組成物の熱安定性を向上させる方法にはさらなる知見が求められているのが現状である。
国際公開第2004/104203号 国際公開第2005/49857号 特開2001−95598号公報 特公平05−33997号公報 特開平11−127895号公報 国際公開第97/13872号 特開2011−229526号公報 特開2003−235585号公報 特開2004−275013号公報 特開2004−275063号公報 特開2010−35469号公報 特開2010−57474号公報 国際公開第2010/41715号 国際公開第2010/41419号 国際公開第2011/15325号 国際公開第2013/100006号 特開2010−115189号公報 特開2006−325547号公報 特開2009−000128号公報 国際公開第2015/020200号
Biochem. Biophys. Res. Commun. 311, 104−11, 2003 Biotechnol. Bioeng. 106, 358−66, 2010 J. Biosci. Bioeng. 102, 241−3, 2006 Eur. J. Biochem. 242, 499−505, 1996 Arch.Microbiol.178,344−50,2002 Mar.Biotechnol.6,625−32,2004 Biosci. Biotechnol. Biochem.59, 487−91,1995 Appl. Microbiol. Biotechnol. 74, 813−819, 2007 Biosci. Biotechnol. Biochem. 66, 1256−61, 2002 Biosci. Biotechnol. Biochem. 66, 2323−29, 2002 Biotechnol. Letters 27, 27−32,2005
本発明が解決しようとする課題は、アマドリアーゼ含有組成物の熱安定性を向上する方法、熱安定性が向上したアマドリアーゼ含有組成物及びこれを用いた糖化ヘモグロビン測定用組成物を提供することにある。
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、特定の位置に特定のアミノ酸を有する複数のアマドリアーゼに対して、ある種のアニオンを共存させることにより得られるアマドリアーゼ含有組成物が前記アニオンを共存させない場合と比較して、熱安定性が向上することを見出した。そして、このような特定のアニオンを共存させたアマドリアーゼ含有組成物を用いることにより、熱安定性が向上した糖化ヘモグロビン測定用組成物を提供し得ることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下を包含する。
[1] 配列番号1に示すアミノ酸配列と80%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、配列番号1における312位のアミノ酸に対応する位置のアミノ酸がヒスチジンであるアマドリアーゼを含む組成物に2mM以上のアニオンを共存させる工程を含むことを特徴とする、アマドリアーゼ含有組成物の熱安定性を向上させる方法。
[2] 配列番号30に示すアミノ酸配列と80%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、配列番号30における310位のアミノ酸に対応する位置のアミノ酸がヒスチジンであるアマドリアーゼを含む組成物に2mM以上のアニオンを共存させる工程を含むことを特徴とする、アマドリアーゼ含有組成物の熱安定性を向上させる方法。
[3] アマドリアーゼが糖化ジペプチドに作用するアマドリアーゼである[1]または[2]記載のアマドリアーゼ含有組成物の熱安定性を向上させる方法。
[4] アニオンが1種類以上のジカルボン酸、トリカルボン酸、ポリカルボン酸、リン酸もしくはリン酸エステルまたはこれらの塩を含む、[1]〜[3]のいずれかに記載のアマドリアーゼ含有組成物の熱安定性を向上させる方法。
[5] ジカルボン酸がリンゴ酸、シュウ酸、マロン酸、スクシン酸、コハク酸、グルタル酸、α−ケトグルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、グルタコン酸、酒石酸、タルトロン酸、オキサロ酢酸、マレイン酸、ムコン酸、メサコン酸、シトラコン酸、メコン酸、3−3’ジメチルグルタル酸、イタコン酸、グルタミン酸、及びアスパラギン酸からなる群より選択され、
トリカルボン酸がクエン酸、イソクエン酸、アコニット酸、トリメシン酸、1,2,3−プロパントリカルボン酸、及び2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸からなる群より選択され、
ポリカルボン酸がポリグルタミン酸からなる群より選択され、
リン酸がリン酸塩及びピロリン酸塩からなる群より選択され、リン酸エステルがホスホグリセリン酸及びホスホエノールピルビン酸からなる群より選択される、[4]に記載のアマドリアーゼ含有組成物の熱安定性を向上させる方法。
[6] 前記アマドリアーゼを含む組成物が、アセトアミドグリシン、ACES(N-(2-アセトアミド)-2-アミノエタンスルホン酸)、ADA(N-(2-アセトアミド)イミノ二酢酸)、BES(N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2-アミノエタンスルホン酸)、Bicin(N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)グリシン)、Bis−Tris(ビス(2-ヒドロキシエチル)イミノトリス(ヒドロキシメチル)メタン)、コラミン塩酸、EPPS(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンプロパンスルホン酸)、グリシンアミド、HEPES(4-2-ヒドロキシエチル-1-ピペラジンエタンスルホン酸)、HEPPSO(N-(ヒドロキシエチル)ピペラジン-N'-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸)、MES(2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸)、MOPS(3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸)、MOPSO(2-ヒドロキシ-3-モルホリノプロパンスルホン酸)、PIPES(ピペラジン-N,N'-ビス(2-エタンスルホン酸))、POPSO(ピペラジン-1,4-ビス(2-ヒドロキシプロパンスルホン酸))、TAPS(N-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-3-アミノプロパンスルホン酸)、TAPSO(3-[N-トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノ]-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸)、TES(N-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-2-アミノエタンスルホン酸)、トリシン(N-トリス(ヒドロキシメチル)メチルグリシン)、AMPSO(N-(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-3-アミノ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸)、CABS(4-(シクロヘキシルアミノ)-1-ブタンスルホン酸)、CAPS(N-シクロヘキシル-3-アミノプロパンスルホン酸)、CHES(N-シクロヘキシル-2-アミノエタンスルホン酸)、CAPSO(N-シクロヘキシル-2-ヒドロキシル-3-アミノプロパンスルホン酸)、DIPSO(3-(N,N-ビス[2-ヒドロキシエチル]アミノ)-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸)及びこれらの混合物からなる群より選択されるグッド緩衝剤を含むものである、[1]〜[5]のいずれかに記載のアマドリアーゼ含有組成物の熱安定性を向上させる方法。
[7] 緩衝剤の濃度が20mM以上である、[6]に記載のアマドリアーゼ含有組成物の熱安定性を向上させる方法。
[8] 配列番号1に示すアミノ酸配列と80%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、配列番号1における312位のアミノ酸に対応する位置のアミノ酸がヒスチジンであるアマドリアーゼおよび2mM以上のアニオンを含む、熱安定性が向上したアマドリアーゼ含有組成物。
[9] 配列番号30に示すアミノ酸配列と80%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、配列番号30における310位のアミノ酸に対応する位置のアミノ酸がヒスチジンであるアマドリアーゼおよび2mM以上のアニオンを含む、熱安定性が向上したアマドリアーゼ含有組成物。
[10] アニオンが1種類以上のジカルボン酸、トリカルボン酸、ポリカルボン酸、リン酸もしくはリン酸エステルまたはこれらの塩を含有する、[8]または[9]に記載のアマドリアーゼ含有組成物。
[11] ジカルボン酸がリンゴ酸、シュウ酸、マロン酸、スクシン酸、コハク酸、グルタル酸、α−ケトグルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、グルタコン酸、酒石酸、タルトロン酸、オキサロ酢酸、マレイン酸、ムコン酸、メサコン酸、シトラコン酸、メコン酸、3−3’ジメチルグルタル酸、イタコン酸、グルタミン酸、及びアスパラギン酸からなる群より選択され、
トリカルボン酸がクエン酸、イソクエン酸、アコニット酸、トリメシン酸、1,2,3−プロパントリカルボン酸、及び2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸からなる群より選択され、
ポリカルボン酸がポリグルタミン酸からなる群より選択され、
リン酸がリン酸塩及びピロリン酸塩からなる群より選択され、リン酸エステルがホスホグリセリン酸及びホスホエノールピルビン酸からなる群より選択される、[10]記載のアマドリアーゼ含有組成物。
[12] アセトアミドグリシン、ACES(N-(2-アセトアミド)-2-アミノエタンスルホン酸)、ADA(N-(2-アセトアミド)イミノ二酢酸)、BES(N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2-アミノエタンスルホン酸)、Bicin(N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)グリシン)、Bis−Tris(ビス(2-ヒドロキシエチル)イミノトリス(ヒドロキシメチル)メタン)、コラミン塩酸、EPPS(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンプロパンスルホン酸)、グリシンアミド、HEPES(4-2-ヒドロキシエチル-1-ピペラジンエタンスルホン酸)、HEPPSO(N-(ヒドロキシエチル)ピペラジン-N'-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸)、MES(2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸)、MOPS(3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸)、MOPSO(2-ヒドロキシ-3-モルホリノプロパンスルホン酸)、PIPES(ピペラジン-N,N'-ビス(2-エタンスルホン酸))、POPSO(ピペラジン-1,4-ビス(2-ヒドロキシプロパンスルホン酸))、TAPS(N-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-3-アミノプロパンスルホン酸)、TAPSO(3-[N-トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノ]-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸)、TES(N-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-2-アミノエタンスルホン酸)、トリシン(N-トリス(ヒドロキシメチル)メチルグリシン)、AMPSO(N-(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-3-アミノ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸)、CABS(4-(シクロヘキシルアミノ)-1-ブタンスルホン酸)、CAPS(N-シクロヘキシル-3-アミノプロパンスルホン酸)、CHES(N-シクロヘキシル-2-アミノエタンスルホン酸)、CAPSO(N-シクロヘキシル-2-ヒドロキシル-3-アミノプロパンスルホン酸)、DIPSO(3-(N,N-ビス[2-ヒドロキシエチル]アミノ)-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸)及びこれらの混合物からなる群より選択されるグッド緩衝剤を含む、[8]〜[11]のいずれかに記載のアマドリアーゼ含有組成物。
[13] 緩衝剤の濃度が20mM以上である[12]に記載のアマドリアーゼ含有組成物。
[14] [8]〜[13]のいずれかに記載のアマドリアーゼ組成物を用いる糖化ヘモグロビンの測定方法。
[15] [8]〜[13]のいずれかに記載のアマドリアーゼ組成物を含む糖化ヘモグロビン測定用組成物。
本発明によれば、熱安定性が向上したアマドリアーゼ含有組成物及びこれを用いた糖化ヘモグロビン測定用組成物を提供することができる。
本発明のアマドリアーゼ含有組成物は、常温流通や長距離輸送等、酵素が処方されたキットがより過酷な温度条件にさらされることを想定した場合、あるいは、製造工程において加熱処理等を施すことが想定される酵素センサーとしての用途等を考えた場合等において、これまでに提案されたアマドリアーゼ含有組成物よりも、さらに優れた耐熱性、保存性を有することが期待され、糖化ヘモグロビン測定用組成物およびキットの流通において、また、センサー等の用途開発において、多大に貢献することが期待される。
図1−1は、各種公知のアマドリアーゼのアミノ酸配列のアライメントである。 図1−1の続きである。 図1−2の続きである。
以下、本発明を詳細に説明する。
(アマドリアーゼ)
アマドリアーゼは、ケトアミンオキシダーゼ、フルクトシルアミノ酸オキシダーゼ、フルクトシルペプチドオキシダーゼ、フルクトシルアミンオキシダーゼ等とも称され、酸素の存在下で、イミノ2酢酸またはその誘導体(アマドリ化合物)を酸化して、グリオキシル酸またはα−ケトアルデヒド、アミノ酸またはペプチドおよび過酸化水素を生成する反応を触媒する酵素のことをいう。アマドリアーゼは、自然界に広く分布しており、微生物や、動物または植物起源の酵素を探索することにより、得ることができる。微生物においては、例えば、糸状菌、酵母または細菌等から得ることができる。
本発明に用いるアマドリアーゼの種類は、限定されるものではなく、各種公知のアマドリアーゼを含み得るが、本発明に用いるアマドリアーゼは、対応する特定の位置のアミノ酸残基が特定の残基であることを特徴とする。具体的には、本発明に用いるアマドリアーゼは、配列番号1に記載のアマドリアーゼにおける312位のアミノ酸に対応する位置のアミノ酸がヒスチジンであることを特徴とする。または、配列番号30に記載のアマドリアーゼにおける310位のアミノ酸に対応する位置のアミノ酸がヒスチジンであることを特徴とする。
一態様において、本発明に用いるアマドリアーゼは、配列番号1または配列番号30に示されるアミノ酸配と高い配列同一性(例えば、80%以上、好ましくは、85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上、最も好ましくは99%以上)を有するアミノ酸配列を有するアマドリアーゼおよび配列番号1または配列番号30に示されるアミノ酸配列において、1から数個のアミノ酸が改変もしくは変異、または、欠失、置換、付加および/または挿入されたアミノ酸配列を有するアマドリアーゼを含む。
本発明のアマドリアーゼは例えば、Eupenicillium属、Pyrenochaeta属、Arthrinium属、Curvularia属、Neocosmospora属、Cryptococcus属、Phaeosphaeria属、Aspergillus属、Emericella属、Ulocladium属、Penicillium属、Fusarium属、Achaetomiella属、Achaetomium属、Thielavia属、Chaetomium属、Gelasinospora属、Microascus属、Leptosphaeria属、Ophiobolus属、Pleospora属、Coniochaetidium属、Pichia属、Corynebacterium属、Agrobacterium属、Arthrobacter属などの生物種に由来するアマドリアーゼに基づき作製されたものでもよいし、上記以外の生物種に由来し、上述の対応する特定の位置に特定のアミノ酸残基を有するものでもよい。
なお、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するアマドリアーゼは、特開2013−176351号において、pKK223−3−CFP−T7と称する組換え体プラスミド(寄託番号:FERM BP−10593)を保持する大腸菌が生産するConiochaeta属由来のアマドリアーゼ(CFP−T7)に対し、基質特異性改善型変異(E98A、G103H、S154N、G263M)と熱安定性向上型変異(G184D、カルボキシ末端3アミノ酸欠失(ΔPTS1))を導入したConiochaeta属由来アマドリアーゼのアミノ酸配列であり、配列番号2の遺伝子にコードされている。なお、このCFP−T7は、天然型のConiochaeta属由来のアマドリアーゼに対し、272位、302位および388位に人為的な変異を順次導入することにより獲得した3重変異体である(国際公開2007/125779号参照)。そして、当該アマドリアーゼの312位のアミノ酸に対応する位置のアミノ酸はヒスチジンである。
また、配列番号30に示されるアミノ酸配列を有するアマドリアーゼは、国際公開2004/104203号において、pPOSFOD923と称する組み換えプラスミドを保持する大腸菌が生産するCurvularia clavata由来ケトアミンオキシダーゼ(CcFX)のアミノ酸配列である。そして、当該アマドリアーゼの310位のアミノ酸に対応する位置のアミノ酸はヒスチジンである。
上記の2つのアマドリアーゼにおいてアミノ酸の位置を示す番号は配列番号1または配列番号30に示されるアマドリアーゼのアミノ酸配列における位置を表しているが、他の生物種由来のアマドリアーゼのアミノ酸配列においては、配列番号1に示されるアミノ酸配列における位置に対応する位置のアミノ酸が置換されている。「対応する位置」の意味については後述する。
なお、本明細書において、配列番号1または配列番号30を例示しているが、これは本発明の効果が配列番号1または配列番号30で示されるアマドリアーゼに限定的であることや、あるいは、これらの配列とは異なるアマドリアーゼに対する効果よりも顕著に大きいことを示すものではない。本発明の効果は、対応する特定の位置にヒスチジンを有する各種のアマドリアーゼに共通的にみられるものであるから、アマドリアーゼ活性を有し、対応する特定の位置にヒスチジンを有するアマドリアーゼ全般が、本発明に包含される。例えば、本明細書中に例示する配列番号1と配列番号30のアマドリアーゼの間のアミノ酸の同一性は80%である。このような同一性の程度を有する複数のアマドリアーゼにおいて、本発明の効果が確認されていることからも、本発明の効果が、配列番号1あるいは配列番号30に対し、同一性が同等、若しくは、より高い他のアミノ酸配列を有するアマドリアーゼについても当然に発揮されるとの蓋然性が高いことが理解される。
本発明に使用できるアマドリアーゼは、上述の通り、対応する特定の位置にヒスチジンを有することを特徴とし、それ以外の位置において、任意の各種変異等を含んでいても良い。例えば、それらの各種変異の中には、耐熱性向上や基質特異性向上、生産性向上等に寄与する変異が含まれ得るが、特段に人為的な変異を導入していない天然型酵素を用いる場合であれ、何らかの変異等を人為的に導入している場合であれ、本発明の効果が発揮され、その熱安定性が向上している限り、いかなるアマドリアーゼを用いる場合についても、本発明に包含される。本発明に使用できるアマドリアーゼは、公知の各種文献等に記載の方法で入手・製造できるほか、市販品に関しては適宜購入することもできる。
(アミノ酸配列の同一性)
アミノ酸配列の同一性は、GENETYX Ver.11(ゼネティックス社製)のマキシマムマッチングやサーチホモロジー等のプログラムまたはDNASIS Pro(日立ソフト社製)のマキシマムマッチングやマルチプルアライメント等のプログラムにより計算することができる。
(アミノ酸に対応する位置の特定)
「アミノ酸に対応する位置」とは、配列番号1または配列番号30に示すアマドリアーゼのアミノ酸配列の特定の位置のアミノ酸に対応する他の生物種由来のアマドリアーゼのアミノ酸配列における位置をいう。
「アミノ酸に対応する位置」を特定する方法としては、例えば、リップマン−パーソン法等の公知のアルゴリズムを用いてアミノ酸配列を比較し、各アマドリアーゼのアミノ酸配列中に存在する保存アミノ酸残基に最大の同一性を与えることにより行うことができる。アマドリアーゼのアミノ酸配列をこのような方法で整列させることにより、アミノ酸配列中にある挿入、欠失にかかわらず、相同アミノ酸残基の各アマドリアーゼ配列における配列中の位置を決めることが可能である。相同位置は、三次元構造中で同位置に存在すると考えられ、対象となるアマドリアーゼの特異的機能に関して類似した効果を有することが推定できる。
図1に種々の公知の生物種由来のアマドリアーゼの配列を例示する。配列番号1で示されるアミノ酸配列を最上段に示す。また、配列番号30で示されるアミノ酸配列を上から5段目に示す。図1に示される各種配列は、いずれも配列番号1の配列と70%以上の同一性を有し、公知のアルゴリズムを用いて整列させた。図中に、本発明の変異体における変異点を示す。なお、配列番号30の配列を基準にしても、対応する位置は変わらない。図1からConiochaeta属由来のアマドリアーゼのアミノ酸配列の特定の位置のアミノ酸に対応する他の生物種由来のアマドリアーゼのアミノ酸配列における位置を知ることができる 。図1には、Coniochaeta sp.由来のアマドリアーゼ(配列番号1)、Eupenicillium terrenum由来のアマドリアーゼ(配列番号27)、Pyrenochaeta sp.由来のケトアミンオキシダーゼ(配列番号28)、Arthrinium sp.由来のケトアミンオキシダーゼ(配列番号29)、Curvularia clavata由来のケトアミンオキシダーゼ(配列番号30)、Neocosmospora vasinfecta由来のケトアミンオキシダーゼ(配列番号31)、Cryptococcus neoformans由来のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼ(配列番号32)、Phaeosphaeria nodorum由来のフルクトシルペプチドオキシダーゼ(配列番号33)、Aspergillus nidulans由来のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼ(配列番号34)、Ulocladium sp.由来のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼ(配列番号35)およびPenicillium crysogenum由来のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼ(配列番号36)のアミノ酸配列を示してある。
(対応する位置)
本発明において、「配列番号1における312位のヒスチジン、または配列番号30における310位のヒスチジンに対応する位置」とは、確定したアマドリアーゼのアミノ酸配列を、配列番号1または配列番号30に示されるアマドリアーゼのアミノ酸配列と比較した場合に、配列番号1のアマドリアーゼの312位のヒスチジン、または配列番号30のアマドリアーゼの310位のヒスチジンに対応するアミノ酸を意味するものである。これにより、上記の「対応する位置のアミノ酸残基」を特定する方法でアミノ酸配列を整列させた図1により特定することができる。
すなわち、Eupenicillium terrenum由来のアマドリアーゼでは312位のヒスチジン、Pyrenochaeta sp.由来のケトアミンオキシダーゼでは310位のヒスチジン、Arthrinium sp.由来のケトアミンオキシダーゼでは313位のヒスチジン、Neocosmospora vasinfecta由来のケトアミンオキシダーゼでは312位のヒスチジン、Cryptococcus neoformans由来のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼでは312位のヒスチジン、Phaeosphaeria nodorum由来のフルクトシルペプチドオキシダーゼでは308位のヒスチジン、Aspergillus nidulans由来のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼでは312位のヒスチジン、Ulocladium sp.由来のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼでは310位のヒスチジン、Penicillium crysogenum由来のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼでは312位のヒスチジンである。
(添加成分)
本発明は、上述の任意のアマドリアーゼに対し、任意の添加成分を共存させることにより、アマドリアーゼ含有組成物の熱安定性を向上できることを特徴とする。これまでに、アマドリアーゼ自体を改変して熱安定性を向上させる試みや、あるいは、天然型の状態で比較的熱安定性が高いアマドリアーゼを探索する試みが多く行われてきた一方で、各種アマドリアーゼに対して効果的な熱安定性向上剤や、組成物として熱安定性が向上しているアマドリアーゼ含有組成物の知見は乏しかった。本発明は、特定の1変異体に限定的な知見ではなく、ある特定のアミノ酸残基に着目して、一定の同一性を有する複数のアマドリアーゼに共通の効果を奏する熱安定性向上成分として、アニオンが有効であることを見出した。
本発明において、アマドリアーゼと共存させるアニオンの濃度は、アマドリアーゼ含有組成物中、2mM以上、好ましくは5mM以上、より好ましくは10mM以上、20mM以上、30mM以上、さらに好ましくは40mM以上、特に好ましくは50mM以上、100mM以上、200mM以上であることを特徴とする。このような濃度でアニオンを共存させることにより、共存させない場合と比較して、アマドリアーゼ含有組成物の熱安定性を良好に向上させることができる。なお、アマドリアーゼと共存させるアニオンの濃度は、後述する緩衝剤を用いる場合、当該緩衝剤の量に応じて変化させてもよい。
(アニオンの種類)
上記のアニオンを、単独で、あるいは複数組み合わせて、本発明に使用することができる。これらのアニオンを共存させることにより、特定モチーフを有する各種アマドリアーゼの熱安定性を向上させることができる。本発明におけるアニオンとしては、本発明のアマドリアーゼ含有組成物の熱安定性を向上させるものであれば特に制限は無く、例えば、カルボキシル基含有化合物、ハロゲン化合物、リン酸塩、硝酸塩、硫酸塩、タンパク質、ペプチド、アミノ酸などが挙げられる。カルボキシル基含有化合物としては、ジカルボン酸、トリカルボン酸、ポリカルボン酸化合物などが挙げられる。特に、本発明に用いる好ましいアニオンは、1種類以上のジカルボン酸、トリカルボン酸もしくはリン酸またはこれらの塩である。
また、本発明に用いるジカルボン酸は、本発明のアマドリアーゼ含有組成物の熱安定性を向上させるものであれば特に制限は無いが、例えば、一態様において、シュウ酸、マロン酸、スクシン酸、コハク酸、グルタル酸、α−ケトグルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、グルタコン酸、リンゴ酸、酒石酸、タルトロン酸、オキサロ酢酸、マレイン酸、ムコン酸、メサコン酸、シトラコン酸、メコン酸、3−3’ジメチルグルタル酸、イタコン酸、グルタミン酸、アスパラギン酸等が好ましいジカルボン酸として例示される。また、一態様において、本発明に用いる好ましいトリカルボン酸としては、クエン酸、イソクエン酸、アコニット酸、トリメシン酸、1,2,3−プロパントリカルボン酸、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸等が挙げられる。また、一態様において、本発明に用いる好ましいポリカルボン酸としては、ポリグルタミン酸等が挙げられる。さらに、一態様において、本発明に用いる好ましいリン酸塩としては、リン酸カリウム塩、リン酸ナトリウム塩、ピロリン酸ナトリウム塩等が挙げられる。さらに、一態様において、本発明に用いるアニオンとしては、リン酸及びカルボン酸を有するリン酸エステル、例えばホスホエノールピルビン酸またはホスホグリセリン酸を用いてもよい。
(アマドリアーゼ及びアニオンを含むアマドリアーゼ含有組成物)
上述のアニオンを各種任意のアマドリアーゼと共存させることにより、熱安定性が向上したアマドリアーゼ含有組成物及が得られる。
本発明において、アニオンとアマドリアーゼを共存させる方法は、限定されるものではないが、例えば、溶液中で両成分を混合する方法が挙げられる。
本発明のアマドリアーゼ及びアニオンを含むアマドリアーゼ含有組成物には、本発明の効果を妨げない限り、その他の各種目的で混合される任意の成分が添加されていてもよい。例えば、pH調整剤(緩衝剤)、界面活性剤による影響を低減する化合物等が挙げられる。
(アマドリアーゼ及びアニオンを含む糖化ヘモグロビン測定用組成物)
上述のアマドリアーゼ含有組成物に、その他の糖化ヘモグロビン測定試薬、糖化ヘモグロビン測定用キットに必要とされる各種成分をさらに組み合わせて、糖化ヘモグロビン測定用組成物を得ることができる。
例えば、本発明のアマドリアーゼ含有組成物に対し、αFVH測定用試薬、αFVHを切り出すためのプロテアーゼまたはペプチダーゼ、その他公知の安定化物質や緩衝溶液を組み合わせて、糖化ヘモグロビン測定用組成物を製造できる。
(本発明のアニオンを共存させることによる、熱安定性の向上)
本発明において、アニオンを共存させることによるアマドリアーゼの熱安定性の向上とは、アニオンを共存させないものと比較した場合に、例えば、55℃、10分間の熱処理後の熱安定性が向上していることをいう。具体的には、アニオンを共存させないものと比較して、本明細書中に記載の活性測定方法および熱安定性評価方法に記載した反応条件下で、所定の熱処理、例えば、「55℃、10分間」等の熱処理後の残存活性(%)が、本発明の変異を導入する前と比較して3%以上、好ましくは10%以上、より好ましくは20%以上、さらに好ましくは30%以上、最も好ましくは40%以上向上していることを特徴とする。
あるいは、一態様において、アニオンを共存させることによるアマドリアーゼの熱安定性が向上しているとは、アニオンを共存させることによるアマドリアーゼの残存活性(%)を、アニオンを共存させないもの残存活性(%)で割ることにより得られる値(残存活性比率)が、1より大きい、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、4以上、さらに好ましくは5以上、6以上、向上していることをいう。
このような、共存させることによりアマドリアーゼの熱安定性を向上させるアニオンを本明細書において、「アマドリアーゼの熱安定性を向上させる安定化剤」、または単に「安定化剤」と呼ぶことがある。また本明細書においてアマドリアーゼまたはアマドリアーゼ含有組成物についていう安定化とは、特に断らない限り、当該アマドリアーゼの熱安定性を向上または維持することをいう。
アマドリアーゼの活性測定および残存活性測定方法については後述する。
(アマドリアーゼ含有組成物中のアマドリアーゼの濃度)
本発明における、アマドリアーゼ含有組成物中のアマドリアーゼの濃度は限定されるものではないが、例えば、保存中あるいは糖化ヘモグロビン測定時における終濃度として、アニオン10mM当たり0.01μg/ml〜1000μg/ml、好ましくは0.1μg/ml〜500μg/ml、より好ましくは0.5μg/ml〜200μg/mlである。
ここで、測定時における終濃度、とは最終的に成分を希釈して糖化ヘモグロビン測定を行うときの濃度をいう。したがってキット中では、測定時における終濃度よりも高濃度のストック溶液を用いてもよい。
(緩衝剤)
本発明のキット又は組成物には、アマドリアーゼの活性が失活しない範囲であるpH5.0〜pH10.0、好ましくはpH6.0〜pH8.0の範囲で緩衝能を有する緩衝剤又は緩衝液を適宜加えてよい。本明細書において緩衝剤というとき、特に断らない限り、この用語は1以上の緩衝剤を包含するものとする。緩衝液とは溶液のpHを一定範囲に保つ緩衝作用(緩衝能)のある溶液のことをいい、緩衝剤とは溶液に緩衝作用を付与する物質をいう。緩衝剤は、弱酸を例にとると、弱酸とその塩から構成され、この場合、当該塩を共役塩と呼ぶ。ある緩衝剤についての濃度は、当該緩衝剤のベースとなる化合物の単独形態とその共役塩の形態とを合計したベース化合物についての濃度をいう。例えば100mMのグッド緩衝剤というとき、これは終濃度として溶液に含まれるグッド緩衝剤化合物及びその共役塩を合計したグッド緩衝剤化合物濃度が100mMであることをいう。
本発明のキット又は組成物に用いることのできる緩衝剤としては、例えば、グッド緩衝剤、リン酸及び/又はその塩を含むリン酸緩衝剤、例えばリン酸カリウム緩衝剤又はリン酸ナトリウム緩衝剤、有機酸緩衝剤及び/又はその塩を含む有機酸緩衝剤、例えばトリカルボン酸緩衝剤及び/又はその塩を含むトリカルボン酸緩衝剤、例えばクエン酸及び/又はその塩を含むクエン酸緩衝剤、ホウ酸及び/又はその塩を含むホウ酸緩衝剤、ジカルボン酸緩衝剤及び/又はその塩を含むジカルボン酸緩衝剤、例えばリンゴ酸及び/又はその塩を含むリンゴ酸緩衝剤、モノカルボン酸緩衝剤及び/又はその塩を含むモノカルボン酸緩衝剤、例えば酢酸緩衝剤及び/又はその塩を含む酢酸緩衝剤等の緩衝剤、並びにそれらの混合物が挙げられる。
グッド緩衝剤(グッドバッファーともいう)は、一般にはNorman Goodらによって提唱された生化学実験に適した種々の緩衝剤等を指す。Goodらは1966年に12種類の緩衝剤を提唱した(Goodら、(1966)、Biochemistry 5 (2): 467-477)。その後、他にも緩衝剤が追加され、以下の20種が提唱されている:アセトアミドグリシン、ACES(N-(2-アセトアミド)-2-アミノエタンスルホン酸)、ADA(N-(2-アセトアミド)イミノ二酢酸)、BES(N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2-アミノエタンスルホン酸)、Bicin(N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)グリシン)、Bis−Tris(ビス(2-ヒドロキシエチル)イミノトリス(ヒドロキシメチル)メタン)、コラミン塩酸、EPPS(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンプロパンスルホン酸、HEPPSと呼ぶこともある)、グリシンアミド、HEPES(4-2-ヒドロキシエチル-1-ピペラジンエタンスルホン酸)、HEPPSO(N-(ヒドロキシエチル)ピペラジン-N'-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸)、MES(2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸)、MOPS(3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸)、MOPSO(2-ヒドロキシ-3-モルホリノプロパンスルホン酸)、PIPES(ピペラジン-N,N'-ビス(2-エタンスルホン酸))、POPSO(ピペラジン-1,4-ビス(2-ヒドロキシプロパンスルホン酸))、TAPS(N-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-3-アミノプロパンスルホン酸)、TAPSO(3-[N-トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノ]-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸)、TES(N-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-2-アミノエタンスルホン酸)、及びトリシン(N-トリス(ヒドロキシメチル)メチルグリシン)(Goodら, (1972) Methods Enzymol. 24: 53-68;Goodら(1980) Anal. Biochem. 104 (2): 300-310)。上記の他にも、必ずしもGoodらによって提唱されたものではないが、AMPSO(N-(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-3-アミノ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸)、CABS(4-(シクロヘキシルアミノ)-1-ブタンスルホン酸)、CAPS(N-シクロヘキシル-3-アミノプロパンスルホン酸)、CHES(N-シクロヘキシル-2-アミノエタンスルホン酸)、CAPSO(N-シクロヘキシル-2-ヒドロキシル-3-アミノプロパンスルホン酸)、及びDIPSO(3-(N,N-ビス[2-ヒドロキシエチル]アミノ)-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸)などの化合物もpKa等が評価され、いわゆるグッド緩衝剤として一般に受け入れられている。本明細書においてグッド緩衝剤というとき、この用語は、アセトアミドグリシン、ACES、ADA、BES、Bicin、Bis−Tris、コラミン塩酸、EPPS、グリシンアミド、HEPES、HEPPSO、MES、MOPS、MOPSO、PIPES、POPSO、TAPS、TAPSO、TES、トリシン、AMPSO、CABS、CAPS、CHES、CAPSO、DIPSO及びこれらの混合物を包含するものとする。
塩としてはベース化合物のナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩及びアンモニウム塩が挙げられるがこれに限らない。
本発明の緩衝剤は、適当な濃度で本発明のキット又は組成物に用いることができる。通常、本発明のキット又は組成物に添加する本発明の緩衝剤の量は、測定溶液での終濃度に基づいて算出することができる。ある実施形態において測定溶液における本発明の緩衝剤の終濃度は、好ましくは当該測定溶液に生じうるpH変化を緩衝するのに十分な濃度である。本発明の緩衝剤の終濃度は、例えば1mM以上、5mM以上、10mM以上、20mM以上、30mM以上、40mM以上、例えば50mM以上、1M以下、500mM以下、400mM以下、300mM以下、200mM以下、100mM以下、例えば1mM〜1M、5mM〜500mM、10mM〜300mM、20mM〜300mM、30mM〜300mM、40mM〜300mM、40mM〜200mM、50mM〜200mM、例えば50mM〜100mMであり得る。
本発明の緩衝剤としてHEPES緩衝剤、TES緩衝剤またはBES緩衝剤を用いる場合、その濃度は10mM〜500mM、例えば20mM〜300mM、例えば30mM〜300mM、例えば40mM〜300mM、例えば50mM〜300mM、例えば50mM〜200mMであり得る。本発明の緩衝剤はそのpKaを考慮し、目的のpHを達成するために複数を適宜組み合わせてよい。組み合わせはHEPES緩衝剤とTES緩衝剤との組み合わせのようにグッド緩衝剤同士の態様に限られず、グッド緩衝剤と他の緩衝剤とを組み合わせてもよい。
なお、組成物に用いる緩衝剤の量は、組成物にアマドリアーゼの熱安定性を向上させる安定化剤も添加する場合、当該安定化剤の量に応じて変化させてもよい。
アマドリアーゼの活性の測定方法としては、種々の方法を用いることができるが、一例として、以下に、本発明で用いるアマドリアーゼ活性の測定方法について説明する。
(アマドリアーゼ活性の測定方法)
本発明におけるアマドリアーゼの酵素活性の測定方法としては、酵素の反応により生成する過酸化水素量を測定する方法や酵素反応により消費する酸素量を測定する方法などが主な測定方法として挙げられる。以下に、一例として、過酸化水素量を測定する方法について示す。本発明におけるアマドリアーゼの活性測定には、断りのない限り、フルクトシルバリンを基質として用いる。なお、酵素力価は、フルクトシルバリンを基質として測定したとき、1分間に1μmolの過酸化水素を生成する酵素量を1Uと定義する。フルクトシルバリンは、阪上らの方法に基づき合成、精製することができる(特開2001−95598号公報参照)。
A.試薬の調製
(1)試薬1:POD−4−AA溶液
4.0kUのパーオキシダーゼ(キッコーマンバイオケミファ社製)、100mgの4−アミノアンチピリン(東京化成社製)を0.1Mのリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)に溶解し、1Lに定容する。
(2)試薬2:TOOS溶液
500mgのTOOS(N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−m−トルイジンナトリウム、同仁化学社製)をイオン交換水に溶解し、100mlに定容する。
(3)試薬3:基質溶液(150mM;終濃度 5mM)
フルクトシルバリン417mgをイオン交換水に溶解して10mlに定容する。
B.測定法
2.7mlの試薬1、100μlの試薬2、および100μlの酵素液を混和し、37℃で5分間予備加温する。その後、試薬3を100μl加えて良く混ぜた後、分光光度計(U−3010A、日立ハイテクノロジーズ社製)により、555nmにおける吸光度の経時変化を観測し、555nmにおける吸光度の1分間あたりの変化量(ΔAs)を測定した。なお、対照液は、100μlの試薬3の代わりに100μlのイオン交換水を加える以外は前記と同様にして、555nmにおける吸光度の1分間あたりの変化量(ΔA0)を測定した。37℃で1分間あたりに生成される過酸化水素のマイクロモル数を酵素液中の活性単位(U)とし、下記の式に従って算出する。
活性(U/ml)= {(ΔAs−ΔA0)×3.0×df}÷(39.2×0.5×0.1)
ΔAs : 反応液の1分間あたりの吸光度変化
ΔA0 : 対照液の1分間あたりの吸光度変化
39.2: 反応により生成されるキノンイミン色素の
ミリモル吸光係数(mM−1・cm−1
0.5 : 1molの過酸化水素による生成されるキノンイミン色素のmol数
df : 希釈係数
(熱安定性測定方法)
1M HEPES緩衝液(pH7.0)を用いて、500mM HEPES緩衝液に約0.5U/mlのアマドリアーゼ粗酵素液、またはアマドリアーゼ精製標品が含まれる溶液を600μl調製し、この希釈溶液100μlを55℃にて10分間加温する。上述のB.の方法を用いて加熱前と加熱後のサンプルの酵素活性を測定し、加熱前の活性を100とした場合の残加熱後の活性の割合、すなわち、残存活性(%)を求めることにより、熱安定性を評価する。
(緩衝剤評価方法)
上記の熱安定性測定方法において、500mM HEPES緩衝液の代わりに種々の緩衝剤を用いてアマドリアーゼの残存活性の測定を行うことで、緩衝剤によるアマドリアーゼの活性残存への寄与を評価することができる。例えば500mM HEPES緩衝液(pH7.0)の代わりに、リン酸緩衝液(pH7.0)等を用いることができる。他の条件及び手順は上記の熱安定性測定方法と同様としうる。
(アマドリアーゼの熱安定性を向上させる安定化剤の評価方法)
上記の熱安定性測定方法において、種々の安定化剤をさらに添加してアマドリアーゼの残存活性の測定を行うことで、当該安定化剤の作用を評価することができる。具体的には、例えば、5mMの添加成分を安定化剤として評価するということは、上述の熱安定性測定法において、添加成分を共存させない状態で55℃にて10分間加温した際の残存活性(%)を1とした場合の、終濃度5mMの添加成分を共存させた状態で加温した際の残存活性(%)の割合を比率として算出することで評価できる。添加成分がアマドリアーゼの熱安定性を向上させる安定化剤として効果があるということは、該比率が、1より大きい、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、4以上、さらに好ましくは5以上、6以上、向上していることをいう。評価対象であるアマドリアーゼの熱安定性を向上させる安定化剤が緩衝作用をも有する化合物である場合、緩衝剤を溶液に緩衝能を付与するのに十分な濃度で使用しつつ(例えばHEPES緩衝剤を500mM(pH 7.0)にて使用)、該安定化剤を低濃度で、すなわち溶液のpHを変化させるには十分でない低濃度で用いることができる。溶液に緩衝能を付与するのに十分な濃度とは、当該溶液に添加する他の試薬に起因するpH変動が生じることなく、pHが一定の範囲に保たれる濃度のことをいう。pHの設定値は、アマドリアーゼが安定に存在し得る範囲(例えば、pH5〜10、より好ましくはpH6〜8)ならばいずれでもよい。溶液に緩衝能を付与するには十分でない濃度とは、当該溶液に他の試薬を添加するとpH変動が生じpHが一定範囲から逸脱する濃度をいう。これらの濃度は溶液に添加される他の試薬の種類及び量に応じて変化するが、当業者であれば慣用法により該濃度を適宜決定することができる。他の条件及び手順は上記の熱安定性測定方法と同様とする。
(併用作用)
緩衝剤と、本発明のアマドリアーゼの熱安定性を向上させる安定化剤とを併用した場合のアマドリアーゼ安定作用(熱安定性)を評価するために、対応する特定の位置にヒスチジンを有するアマドリアーゼを含む溶液に、アマドリアーゼの熱安定性を向上させる安定化剤及び緩衝剤を、適宜濃度調整しつつ添加し、アマドリアーゼの残存活性を測定することもできる。他の条件及び手順は、上記の熱安定性測定方法と同様としうる。
緩衝剤と安定化剤とを併用した場合に、前記緩衝剤のみまたは安定化剤のみを用いた場合と比較してアマドリアーゼの熱安定性がさらに向上していることがある。このような併用により得られる熱安定性のさらなる向上を、本明細書において、相乗効果という。本発明のアマドリアーゼを含む組成物は適宜、上記の緩衝剤と上記の安定化剤とを併用し、所望の相乗効果を得ることができる。
以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明の技術的範囲は、それらの例により何ら限定されるものではない。
[実施例1]
(Coniochaeta属由来のアマドリアーゼに対する本発明の熱安定性向上効果の確認)
(1)組換え体プラスミドpKK223−3−CFP−T9−98A/103H/154N/263M/265F/ΔPTS1 DNAの調製およびアマドリアーゼの生産
配列番号1は基質特異性改善型変異(E98A、G103H、S154N、G263M)と熱安定性向上型変異(G184D、N272D、H302R、H388Y、カルボキシ末端3アミノ酸欠失(ΔPTS1))を導入したConiochaeta属由来アマドリアーゼのアミノ酸配列であり、配列番号2の遺伝子にコードされている(特開2013−176351号公報参照、以下、CFP−T9−98A/103H/154N/263M/265F/ΔPTS1)。このCFP−T9−98A/103H/154N/263M/265F/ΔPTS1遺伝子(配列番号2)を含む組換え体プラスミドを有する大腸菌JM109(pKK223−3−CFP−T9−98A/103H/154N/263M/265F/ΔPTS1)株(特開2013−176351号公報参照)を、LB−amp培地[1%(W/V) バクトトリプトン、0.5%(W/V) ペプトン、0.5%(W/V) NaCl、50μg/ml Ampicilin]2.5mlに接種して、37℃で20時間振とう培養し、培養物を得た。
次いで、前記培養物を7,000rpmで、5分間遠心分離することにより集菌して菌体を得た。次いで、QIAGEN tip−100(キアゲン社製)を用いて組換え体プラスミドpKK223−3−CFP−T9−98A/103H/154N/263M/265F/ΔPTS1を抽出して精製し、組換え体プラスミドpKK223−3−CFP−T9−98A/103H/154N/263M/265F/ΔPTS1のDNA2.5μgを得た。
得られた上記組換え体プラスミドを保持する大腸菌JM109株を、0.1mMのIPTGを添加したLB−amp培地3mlにおいて、30℃で16時間培養した。その後、菌体をpH7.0の0.01Mリン酸カリウム緩衝液で洗浄、超音波破砕、15,000rpmで10分間遠心分離し、アマドリアーゼ粗酵素液1.5mlを調製した。本アマドリアーゼは、本発明の配列番号1における312位のヒスチジンに対応するアミノ酸残基を有するアマドリアーゼの一例である。
(2)各種緩衝剤存在下におけるアマドリアーゼの熱安定性評価
HEPES緩衝剤(pH7.0)とリン酸カリウム緩衝剤(pH7.0)を用いた場合の、緩衝剤の濃度によるアマドリアーゼの熱安定性の変化に関し、検討を行った。
上記の方法により取得したCFP−T9−98A/103H/154N/263M/265F/ΔPTS1粗酵素液をサンプルとし、各種緩衝剤、具体的にはリン酸とリン酸カリウムとを含むリン酸緩衝剤(pH7.0)、HEPESとそのナトリウム塩とを含むHEPES緩衝剤(pH7.0)を、複数の濃度で存在させた場合の熱安定性評価を行った。熱安定性の評価は、上述の「熱安定性測定法」および「緩衝剤評価方法」に従った。結果を表1に示す。
Figure 0006749745
表1に示す通り、本実施例の条件下では、リン酸緩衝剤の濃度を上昇させると、濃度依存的にCFP−T9−98A/103H/154N/263M/265F/ΔPTS1の熱安定性が向上する傾向が確認された。一方、HEPES緩衝剤については、若干ながら濃度依存的な熱安定性向上の傾向がみられるとはいえ、リン酸緩衝剤を存在させた場合と比較すると、熱安定性向上効果は非常に乏しいことが確認された。例えば、リン酸緩衝液の場合、濃度10mMの場合には18%であった残存活性が、濃度500mMでは78%まで向上したのに対し、HEPES緩衝液の場合は、濃度10mMで存在させた場合の残存活性はわずか3.5%であり、濃度500mMにした場合でも残存活性は10%にとどまった。
(3)各添加成分の共存下におけるアマドリアーゼの熱安定性評価
上記のように得られたアマドリアーゼの粗酵素液をサンプルとし、上述の「アマドリアーゼ活性の測定方法」「熱安定性評価方法」「アマドリアーゼの熱安定性を向上させる安定化剤の評価方法」法に従って、種々の添加成分を共存させた場合のアマドリアーゼの熱安定性評価を行った。
1M HEPES緩衝液(pH7.0)300μlに、終濃度の30倍濃度の添加成分含有溶液または超純水を20μl加えて、アマドリアーゼ粗酵素液、またはアマドリアーゼ精製標品を約0.5U/mlとなるように混合し、総体積が600μlとなるように超純水を混合した。このうち、100μlを55℃にて10分間加温し、上述のB.の方法を用いて加熱前と加熱後のサンプルの酵素活性を測定し、上述の熱安定性評価方法に従って、残存活性(%)を求めることにより、熱安定性を評価した。さらに、添加成分含有溶液の代わりに超純水を混合した場合を基準として、上述のアマドリアーゼの熱安定性を向上させる安定化剤の評価方法に従って、各種添加成分が安定化剤となり得るか否かの評価を行った。
なお、安定化効果を評価する対象となる各種の成分を添加して、その熱安定化効果を評価する際には、各種評価対象成分を添加することによってアマドリアーゼを含有するサンプル溶液のpHが変化し、pHの違いによる安定性の差異が熱安定性の評価に影響して正確な熱安定性が測定できなくなることを防ぐ目的で、添加成分を共存させてもサンプル溶液のpHが変化しないように、緩衝液として500mM HEPES緩衝液(pH7.0)を用いた。実際に、各種の添加成分を共存させた時にもpHは7.0に維持されていることを確認した後、熱処理を行った。また、上記の(2)での検討により、500mM HEPES緩衝液は、緩衝能を有する一方で、アマドリアーゼの熱処理後の残存活性は10%にとどまることが確認されている。
CFP−T9−98A/103H/154N/263M/265F/ΔPTS1粗酵素を含有するHEPES緩衝液に対し、種々の安定化効果の評価対象成分を共存させ、上記の熱安定性測定法に従って、熱安定性評価を行った。結果の一部を表2〜6に示す。
なお、表2〜6における「比率」とは、添加成分を共存させなかった場合の残存活性(%)を1とした場合の、添加成分を共存させた場合の残存活性(%)の相対値である。表2はリン酸を添加した場合、表3はクエン酸を添加した場合、表4はリンゴ酸を添加した場合、表5は酢酸を添加した場合、表6はMESを添加した場合の熱安定性評価の結果を示す。
Figure 0006749745
表2に示す通り、本実施例の条件下では、リン酸を添加した際に、リン酸を添加しない場合と比較して、添加濃度依存的に、CFP−T9−98A/103H/154N/263M/265F/ΔPTS1の残存活性が高い、すなわち、熱安定性が向上していることが明らかとなった。特に、5mM リン酸を添加した際に、55℃、10分間加温後の残存活性が25.7%となり、リン酸を添加しない場合での残存活性が10%であったのと比較して大幅に残存活性が向上した。以上のことから、5mM以上のリン酸には、アマドリアーゼの熱安定性を向上させる効果があることが示された。
また、表1、2を参照し、50mM リン酸緩衝液下における55℃、10分加温後のCFP−T9−98A/103H/154N/263M/265F/ΔPTS1の残存活性を比較すると、リン酸を添加することなく500mM HEPES緩衝液のみの場合では残存活性が10%であり、リン酸を添加することなくリン酸緩衝液のみの場合では残存活性が31%であった(表1)。そして、500mM HEPES緩衝液と50mM リン酸を共存させた場合には、残存活性が74%と飛躍的に向上した(表2)。
リン酸を添加することにはアマドリアーゼの熱安定性を向上させる効果があることが示され、その中でも、HEPESとリン酸を共存させることによって、アマドリアーゼの熱安定性が顕著に向上する相乗効果が示された。
Figure 0006749745
同様に、表3に示す通り、本実施例の条件下では、クエン酸を添加し、熱処理を行った。なお、緩衝液中のpHを一定にするために、用いたクエン酸はpH7.0に調製したものを用いた。その結果、クエン酸を添加しない場合と比較して、添加濃度依存的に、CFP−T9−98A/103H/154N/263M/265F/ΔPTS1の残存活性が高い、すなわち、熱安定性が向上していることが明らかとなった。特に、2mM クエン酸を添加した際に、55℃、10分間加温後の残存活性が26.5%となり、クエン酸を添加しない場合での残存活性が10%であったのと比較して大幅に残存活性が向上した。以上のことから、2mM以上のクエン酸には、アマドリアーゼの熱安定性を向上させる効果があることが示された。
Figure 0006749745
同様に、表4に示す通り、本実施例の条件下では、リンゴ酸を添加し、熱処理を行った。なお、緩衝液中のpHを一定にするために、用いたリンゴ酸はpH7.0に調製したものを用いた。その結果、リンゴ酸を添加しない場合と比較して、添加濃度依存的に、CFP−T9−98A/103H/154N/263M/265F/ΔPTS1の残存活性が高い、すなわち、熱安定性が向上していることが明らかとなった。特に、50mM リンゴ酸を添加した際に、55℃、10分間加温後の残存活性が32.0%となり、リンゴ酸を添加しない場合での残存活性が10%であったのと比較して大幅に残存活性が向上した。以上のことから、50mM以上のリンゴ酸には、アマドリアーゼの熱安定性を向上させる効果があることが示された。
Figure 0006749745
Figure 0006749745
一方、表5、6に示す通り、添加成分として酢酸、MESを試験した結果、濃度50mMで共存させた場合の残存活性は、何ら添加成分を加えない場合と同様であり、CFP−T9−98A/103H/154N/263M/265F/ΔPTS1の熱安定性の向上効果はみられなかった。
以上より、リン酸、トリカルボン酸、ジカルボン酸には、アマドリアーゼの熱安定性を向上させる効果があることが確認された。
[実施例2]
(人為的に特定アミノ酸に変異を導入することによる熱安定性向上効果の確認)
次に、実施例1で見出されたCFP−T9−98A/103H/154N/263M/265F/ΔPTS1に対する本発明に係るアマドリアーゼの熱安定性を向上させる安定化剤の効果が、312位のヒスチジンに起因するものであることを確認する目的で、312位のヒスチジンを別のアミノ酸へと置換する変異を導入させた改変型アマドリアーゼを作製し、その効果を確認した。また、比較例として、312位のヒスチジン以外のヒスチジン、具体的には26位のヒスチジンと90位のヒスチジンをアスパラギンへと置換する変異を導入させた改変型アマドリアーゼを作製し、本発明に係るアマドリアーゼの熱安定性を向上させる安定化剤の効果を確認した。具体的には、下記の手順により、各変異体を作製した。
(1)組換え体プラスミドpKK223−3−CFP−T9−98A/103H/154N/263M/265F/ΔPTS1 DNAの部位特異的改変操作
得られた組換え体プラスミドpKK223−3−CFP−T9−98A/103H/154N/263M/265F/ΔPTS1 DNAを鋳型として、配列番号3、4の合成オリゴヌクレオチド、KOD−Plus−(東洋紡績社製)を用い、以下の条件でPCR反応を行った。
すなわち、10×KOD−Plus−緩衝液を5μl、dNTPが各2mMになるよう調製されたdNTPs混合溶液を5μl、25mMのMgSO溶液を2μl、鋳型となるpKK223−3−CFP−T9−98A/103H/154N/263M/265F/ΔPTS1 DNAを50ng、上記合成オリゴヌクレオチドをそれぞれ15pmol、KOD−Plus−を1Unit加えて、滅菌水により全量を50μlとした。調製した反応液をサーマルサイクラー(エッペンドルフ社製)を用いて、94℃で2分間インキュベートし、続いて、「94℃、15秒」−「50℃、30秒」−「68℃、6分」のサイクルを30回繰り返した。
反応液の一部を1.0%アガロースゲルで電気泳動し、約6,000bpのDNAが特異的に増幅されていることを確認した。こうして得られたDNAを制限酵素DpnI(NEW ENGLAND BIOLABS社製)で処理し、残存している鋳型DNAを切断した後、大腸菌JM109を形質転換し、LB−amp寒天培地に展開した。生育したコロニーをLB−amp培地に接種して振とう培養し、実施例1(1)と同様の方法でプラスミドDNAを単離した。該プラスミド中のアマドリアーゼをコードするDNAの塩基配列を、マルチキャピラリーDNA解析システムApplied Biosystems 3130xlジェネティックアナライザ(Life Technologies社製)を用いて決定し、その結果、配列番号1記載のアミノ酸配列の312位のヒスチジンがフェニルアラニンに置換された改変型アマドリアーゼをコードする組換え体プラスミド(pKK223−3−CFP−T9−98A/103H/154N/263M/265F/ΔPTS1−312F)を得た。
続いて、同様に配列番号1記載のアミノ酸配列の312位のヒスチジンを他のアミノ酸に置換するために、組換え体プラスミドpKK223−3−CFP−T9−98A/103H/154N/263M/265F/ΔPTS1 DNAを鋳型として、表7に示した合成オリゴヌクレオチド(配列番号4〜22)、KOD−Plus−(東洋紡績社製)を用い、上記と同様の条件でPCR反応、大腸菌JM109の形質転換および生育コロニーが保持するプラスミドDNA中のアマドリアーゼをコードするDNAの塩基配列決定を行った。その結果、配列番号1記載のアミノ酸配列の312位のヒスチジンが各種アミノ酸に置換された改変型アマドリアーゼをコードする組換え体プラスミドを得た。
続いて、同様に配列番号1記載のアミノ酸配列の26位のヒスチジンをアスパラギンに置換するために、組換え体プラスミドpKK223−3−CFP−T9−98A/103H/154N/263M/265F/ΔPTS1 DNAを鋳型として、配列番号23、24の合成オリゴヌクレオチド、KOD−Plus−を用い、上記と同様の条件でPCR反応、大腸菌JM109の形質転換および生育コロニーが保持するプラスミドDNA中のアマドリアーゼをコードするDNAの塩基配列決定を行った。その結果、配列番号1記載のアミノ酸配列の26位のヒスチジンがアスパラギンに置換された改変型アマドリアーゼをコードする組換え体プラスミド(pKK223−3−CFP−T9−98A/103H/154N/263M/265F/ΔPTS1−26N)を得た。
続いて、同様に配列番号1記載のアミノ酸配列の90位のヒスチジンをアスパラギンに置換するために、組換え体プラスミドpKK223−3−CFP−T9−98A/103H/154N/263M/265F/ΔPTS1 DNAを鋳型として、配列番号25、26の合成オリゴヌクレオチド、KOD−Plus−を用い、上記と同様の条件でPCR反応、大腸菌JM109の形質転換および生育コロニーが保持するプラスミドDNA中のアマドリアーゼをコードするDNAの塩基配列決定を行った。その結果、配列番号1記載のアミノ酸配列の90位のヒスチジンがアスパラギンに置換された改変型アマドリアーゼをコードする組換え体プラスミド(pKK223−3−CFP−T9−98A/103H/154N/263M/265F/ΔPTS1−90N)を得た。
(2)アマドリアーゼの熱安定性を向上させる安定化剤の添加時における各種改変型アマドリアーゼの熱安定性評価
上記のようにして得られた21種の改変型アマドリアーゼ生産能を有する大腸菌JM109株を、実施例1記載の方法で培養して、各種改変型アマドリアーゼの粗酵素液1.5mlを調製した。得られた各粗酵素液をサンプルとし、実施例1に準じた熱安定性測定方法に従って、種々の酸を添加した際のアマドリアーゼの熱安定性を評価した。その結果、312位のヒスチジンをフェニルアラニン、チロシン、アスパラギン、スレオニン、システイン、トリプトファン、アルギニン、リジン、グルタミン、バリン、セリンに置換した変異体において、熱処理を55℃にて10分間加温で行ったところ、50mM リン酸を添加しても、残存活性が5%以下となり、熱安定性が著しく低下した。変異体の種類によって、安定化剤を添加しない場合の残存活性も変化することと、安定化剤の効果を一定の条件で比較しやすくする目的を考慮し、安定化剤を添加しない場合の残存活性を約8〜20%とするために、必要に応じ熱処理の条件を変化させた。各変異体の具体的な熱処理温度は表7に示す通りであり、熱処理時間はいずれも10分で行った。結果の一部を表7〜9に示す。
なお、本実施例では、大腸菌JM109(pKK223−3−CFP−T9−98A/103H/154N/263M/265F/ΔPTS1)株由来のアマドリアーゼであるCFP−T9−98A/103H/154N/263M/265F/ΔPTS1を変異元酵素としたため、表中に記載の「変異」の記載には、CFP−T9−98A/103H/154N/263M/265F/ΔPTS1に既に導入済みの各種変異点は含めず、上記変異元酵素が有している312位のヒスチジンを変異させた、その変異箇所のみを記載した。また、表中の「比率」は、添加成分を共存させなかった場合の残存活性(%)を1とした場合の、添加成分を共存させた場合の残存活性(%)の相対値である。
Figure 0006749745
表7に示す通り、本実施例の条件下では、CFP−T9−98A/103H/154N/263M/265F/ΔPTS1の残存活性の比率は、安定化剤添加なしを1とした場合、50mMのリン酸を添加した際に7.4であったのに対し、312位のヒスチジンを置換した各変異体は大幅に安定化剤の効果が減少した。例えば、T9−98A/103H/154N/263M/265F/ΔPTS1−312Fの残存活性は安定化剤添加なしを1とした場合、50mMのリン酸を添加した際に、1.5となり、安定化剤の添加による熱安定性向上効果はほとんどみられなかった。
312位のヒスチジンを、ヒスチジンとアミノ酸構造が類似しているフェニルアラニン、チロシン、アスパラギンに置換した変異体においては、安定化剤無添加の条件下で312位がヒスチジンであるアマドリアーゼと比較した時に、熱安定性が低下し、そのため熱処理条件も緩和して評価を行う必要が生じた。表7に示す通り、いずれのアミノ酸に置換した場合も、リン酸による熱安定性向上効果は大きく減少したことが示された。すなわち、これらの変異体においては、リン酸を添加しても十分な熱安定性を有するアマドリアーゼ含有組成物を得ることはできなかった。
さらに、312位のヒスチジンを、ヒスチジンとアミノ酸構造が類似していない他のアミノ酸に置換した変異体においては、熱安定性が一層低下し、そのため熱処理条件もさらに緩和して評価を行う必要が生じた。表7に示す通り、いずれのアミノ酸に置換した場合も、リン酸による熱安定性向上効果は大きく減少したことが示された。すなわち、これらの変異体においては、リン酸を添加しても十分な熱安定性を有するアマドリアーゼ含有組成物を得ることはできなかった。
すなわち、リン酸等の安定化剤を添加することによる熱安定性向上の効果は、312位のアミノ酸がヒスチジンであることに起因し、この位置のアミノ酸がヒスチジンでなくなることにより失われるか大幅に低減することが確認された。
一方、比較例として、アマドリアーゼのアミノ酸配列中の他の位置に存在するヒスチジンが、このような熱安定性向上効果に寄与している度合を検証する目的で、312位のヒスチジン以外のヒスチジン、具体的には26位、90位のヒスチジンそれぞれアスパラギンに置換した変異体を作製し、同様に評価を行った。その結果、安定化剤無添加の場合の残存活性をそれぞれ1とした場合、50mMのリン酸を添加した際の熱安定性向上効果はそれぞれ、6.0、5.1となり、リン酸による熱安定性向上の効果は、維持されていることを確認できた。
すなわち、リン酸等のアマドリアーゼの熱安定性を向上させる安定化剤を添加することによる熱安定性向上の効果は、312位のアミノ酸がヒスチジンであることに起因し、312位以外の位置のヒスチジンが別のアミノ酸に置換されることによる影響は少ないことが確認された。
なお、312位のヒスチジンをプロリン、グリシン、アラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、ロイシン、イソロイシン、メチオニンに置換した変異体に関しては、アマドリアーゼの生産性が著しく低下したために、熱安定性を評価することができなかった。
Figure 0006749745
表8に示す通り、本実施例の条件下では、CFP−T9−98A/103H/154N/263M/265F/ΔPTS1の残存活性の比率は、安定化剤無添加を1とした場合、50mMのクエン酸を添加した際に、6.0であったのに対し、312位のヒスチジンを、ヒスチジンとアミノ酸構造が類似しているフェニルアラニン、チロシン、アスパラギンに置換した各変異体では大幅に減少した。例えば、T9−98A/103H/154N/263M/265F/ΔPTS1−312Fの残存活性は安定化剤添加なしを1とした場合、50mMのクエン酸を添加した際に、1.5となり、安定化剤の添加による熱安定性向上効果はほとんどみられなかった。さらに、312位のヒスチジンを、ヒスチジンとアミノ酸構造が類似していない他のアミノ酸に置換した変異体においては、熱安定性が一層低下し、そのため熱処理条件もさらに緩和して評価を行う必要が生じた。表8に示す通り、いずれのアミノ酸に置換した場合も、クエン酸による熱安定性向上効果は大きく減少したことが示された。すなわち、これらの変異体においては、クエン酸を添加しても十分な熱安定性を有するアマドリアーゼ含有組成物を得ることはできなかった。
Figure 0006749745
表9に示す通り、本実施例の条件下では、CFP−T9−98A/103H/154N/263M/265F/ΔPTS1の残存活性の比率は、安定化剤無添加を1とした場合、50mMのリンゴ酸を添加した際に、3.2であったのに対し、312位のヒスチジンを、ヒスチジンとアミノ酸構造が類似しているフェニルアラニン、チロシン、アスパラギンに置換した各変異体は大幅に安定化剤の効果が減少した。例えば、T9−98A/103H/154N/263M/265F/ΔPTS1−312Fの残存活性は安定化剤添加なしを1とした場合、50mMのリンゴ酸を添加した際に、1.5となり、安定化剤の添加による熱安定性向上効果はほとんどみられなかった。さらに、312位のヒスチジンを、ヒスチジンとアミノ酸構造が類似していない他のアミノ酸に置換した変異体においては、熱安定性が一層低下し、そのため熱処理条件もさらに緩和して評価を行う必要が生じた。表9に示す通り、いずれのアミノ酸に置換した場合も、リンゴ酸による熱安定性向上効果は大きく減少したことが示された。すなわち、これらの変異体においては、リンゴ酸を添加しても十分な熱安定性を有するアマドリアーゼ含有組成物を得ることはできなかった。
以上のことから、312位のヒスチジンを別のアミノ酸に置換した場合には、リン酸、クエン酸、リンゴ酸による熱安定性向上効果は減少することが示された。すなわち、312位のアミノ酸がヒスチジンであるアマドリアーゼに特有の現象として、リン酸、クエン酸、リンゴ酸を添加した際に熱安定性が向上する効果が確認された。
[実施例3]
(グッド緩衝液とアニオンの併用による熱安定性向上効果の確認)
上記、表1、2に示される通り、50mM リン酸緩衝液下におけるCFP−T9−98A/103H/154N/263M/265F/ΔPTS1の残存活性は31%であり、500mM HEPES緩衝液下における残存活性は10%であるのに対し、50mM リン酸を添加した500mM HEPES緩衝液下における残存活性は74%であった。したがって、リン酸とHEPES緩衝液を併用することにより、相乗的にアマドリアーゼの熱安定性向上効果が得られるといえる。
次に、HEPES緩衝液の濃度を変化させても、同様にリン酸等のアニオンとの併用作用による熱安定性向上効果が得られるか検証するために、HEPES緩衝液とリン酸の濃度をそれぞれ変化させ、上記の熱安定性測定法に従って、CFP−T9−98A/103H/154N/263M/265F/ΔPTS1の熱安定性向上効果を評価した。ただし、上記の熱安定性測定法においてHEPES緩衝液の濃度は表10に示す各濃度を用いて、熱安定性を評価した。
Figure 0006749745
表10に示す通り、本実施例の条件下では、CFP−T9−98A/103H/154N/263M/265F/ΔPTS1の残存活性は、20mM HEPES緩衝液下では4.6%、10mM リン酸緩衝液下では18%であるのに対し、10mM リン酸添加を添加した20mM HEPES緩衝液下では43%と向上した。さらに、50mM リン酸を添加した際に、HEPES緩衝液の濃度依存的にCFP−T9−98A/103H/154N/263M/265F/ΔPTS1の残存活性が向上していることが示された。したがって、20mM以上のHEPES緩衝液であれば、リン酸との相乗効果が確認された。
続いて、HEPES緩衝液以外のグッド緩衝液においてもアニオン、例えばリン酸を添加した際にアマドリアーゼの熱安定性向上効果が得られるか検証した。
HEPES緩衝液以外のグッド緩衝液として、TES緩衝液及びBES緩衝液を用いて上記と同様にCFP−T9−98A/103H/154N/263M/265F/ΔPTS1の熱安定性を評価した。その結果を、表11、12に示す。
Figure 0006749745
表11に示す通り、本実施例の条件下では、CFP−T9−98A/103H/154N/263M/265F/ΔPTS1の残存活性は、20mM TES緩衝液下では20%、10mM リン酸緩衝液下では18%であるのに対し、10mM リン酸添加を添加した20mM TES緩衝液下では45%と向上した。さらに、50mM リン酸を添加した際に、TES緩衝液の濃度依存的にCFP−T9−98A/103H/154N/263M/265F/ΔPTS1の残存活性が向上していることが示され、したがって、20mM以上のTES緩衝液であれば、HEPES緩衝液と同様にリン酸との相乗効果が得られていることを確認した。
Figure 0006749745
表12に示す通り、本実施例の条件下では、CFP−T9−98A/103H/154N/263M/265F/ΔPTS1の残存活性は、20mM BES緩衝液下では11%、10mM リン酸緩衝液下では18%であるのに対し、10mM リン酸添加を添加した20mM BES緩衝液下では34%と向上した。さらに、50mM リン酸を添加した500mM BES緩衝液下では50%と向上した。したがって、20mM以上のBES緩衝液であれば、HEPES緩衝液やTES緩衝液と同様にリン酸との相乗効果が得られていることを確認した。
次に、リン酸以外のアニオン、例えばクエン酸を用いた際に、20mMのグッド緩衝液との相乗効果を検証した。HEPES緩衝液またはTES緩衝液とクエン酸の濃度をそれぞれ変化させ、上記の熱安定性測定法に従って、CFP−T9−98A/103H/154N/263M/265F/ΔPTS1の熱安定性向上効果を評価した。ただし、上記の熱安定性測定法において500mM HEPES緩衝液の代わりに、20mM HEPES緩衝液および20mM TES緩衝液を用いて熱安定性を評価した。
Figure 0006749745
表13に示す通り、本実施例の条件下では、CFP−T9−98A/103H/154N/263M/265F/ΔPTS1の残存活性は、添加したクエン酸の濃度依存的に高くなり、すなわち熱安定性が向上することが確認された。
以上より、グッド緩衝液であるHEPES緩衝液、TES緩衝液及びBES緩衝液において、リン酸やトリカルボン酸、例えばクエン酸と併用することにより、312位に対応する位置がヒスチジンであるアマドリアーゼの熱安定性が向上したことから、その他のグッド緩衝剤においても、さらには複数種の緩衝剤を混合した緩衝剤を用いた場合においても、同様に熱安定性向上効果を示すと考えられる。また、HEPES緩衝液とジカルボン酸、例えばリンゴ酸を併用した際にも、同様に熱安定性向上効果が示されたことから、リンゴ酸とその他のグッド緩衝剤や複数種の緩衝剤を混合した緩衝剤を併用して用いた場合にも、同様に熱安定性向上効果を示すと考えられる。
[実施例4]
(Curvularia clavata由来のケトアミンオキシダーゼにおける本発明の熱安定性向上効果の確認)
実施例1、2に示したConiochaeta属由来アマドリアーゼにおける312位のヒスチジンに対応する同様のアミノ酸残基を有する別種のアマドリアーゼについても、本発明の熱安定性向上効果が奏されるか否かの検証を行った。別種の他のアマドリアーゼの一例として、Curvularia clavata由来のケトアミンオキシダーゼ(CcFX)に対し、上記の安定化剤による熱安定性向上効果を確認した。
(1)Curvularia clavata由来のケトアミンオキシダーゼの生産
配列番号30はCcFXのアミノ酸配列であり、配列番号30で示される440アミノ酸をコードし、且つ、大腸菌発現用にコドンを最適化した、配列番号37で示す1323bpの遺伝子(終止コドンTAAを含む)を、定法である遺伝子断片のPCRによる全合成により、cDNAを全合成することによって取得した。このとき、配列番号37の5´末端、3´末端にはそれぞれEcoRIサイトとHindIIIサイトを付加した。また、クローニングした遺伝子配列から予想されたアミノ酸配列全長は図1のCurvularia clavata由来のケトアミンオキシダーゼの配列と一致していることを確認した。
続いて、取得した配列番号37に示される遺伝子を大腸菌で発現させるために、以下の手順を行った。まず、上記で全合成した遺伝子をEcoRIサイトとHindIII(タカラバイオ社製)の2種類の制限酵素で処理し、pKK223−3 Vector(アマシャム・バイオテク社製)のEcoRI−HindIIIサイトに挿入することで、組換え体プラスミドpKK223−3−CcFXを取得し、実施例1と同様の条件でJM109株を形質転換し、大腸菌JM109(pKK223−3−CcFX)株を得た。
上記のようにして得られたCurvularia clavata由来のケトアミンオキシダーゼ生産能を有する大腸菌JM109(pKK223−3−CcFX)株を実施例1の方法で培養して、粗酵素液1.5mlを調製した。得られた粗酵素液をサンプルとし、実施例1に準じた活性測定方法に従ってケトアミンオキシダーゼの活性を確認した。
(2)各安定化剤添加時におけるアマドリアーゼの熱安定性評価
熱安定性を向上させる安定化剤は実施例1および実施例2と同様のものを用い、実施例1および2と同様に、各安定化剤添加時におけるアマドリアーゼの熱安定性評価を行った。ただし、安定化剤を添加しない場合の残存活性を約8〜20%とするために、熱処理を60℃、10分加温で行った。各種安定化剤を添加した際に、pHの変化を防ぐ目的から、緩衝液は500mM HEPES(pH7.0)を用い、安定化剤を添加した際のpHは実際に7.0を示すことを確認後に、熱処理を行った。結果の一部を表14、15に示す。本発明の効果の傾向を参照する目的で、実施例1に示したCFP−T9−98A/103H/154N/263M/265F/ΔPTS1の結果も並べて示す。表中の「比率」は、添加成分を共存させなかった場合の残存活性(%)を1とした場合の、添加成分を共存させた場合の残存活性(%)の相対値である。
Figure 0006749745
CcFXの60℃、10分加温後の残存活性は、8.4%であるのに対し、50mM リン酸を共存させた際の残存活性は、46.5%であり、表14に示す比率の通り、本実施例の条件下では、CFP−T9−98A/103H/154N/263M/265F/ΔPTS1と同様にCcFXに対しても、リン酸を添加した際に、熱安定性向上効果が示された。
Figure 0006749745
CcFXの60℃、10分加温後の残存活性は、8.4%であるのに対し、50mM クエン酸を共存させた際の残存活性は、53.1%であり、表15に示す比率の通り、本実施例の条件下では、CFP−T9−98A/103H/154N/263M/265F/ΔPTS1と同様にCcFXに対しても、クエン酸を添加した際に、熱安定性向上効果が示された。
したがって、リン酸、トリカルボン酸、ジカルボン酸には、Coniochaeta属由来アマドリアーゼに限定されず配列番号1における312位のヒスチジンに対応する特定アミノ酸残基を共通して有する別種のアマドリアーゼの熱安定性を向上させる効果があることが確認された。
続いて、リン酸と20mMのグッド緩衝液との相乗効果を検証するために、上記の熱安定性測定法に従って、CcFXの熱安定性向上効果を評価した。ただし、上記の熱安定性測定法において500mM HEPES緩衝液の代わりに、20mM HEPES緩衝液および20mM TES緩衝液を用いて熱安定性を評価し、熱処理を58℃、10分加温で行った。
Figure 0006749745
表16に示す通り、本実施例の条件下では、10mM以上のリン酸を20mM HEPES緩衝液またはTES緩衝液に添加することで、CcFXの残存活性が高くなる、すなわち熱安定性が向上することが確認された。
以上より、グッド緩衝液であるHEPES緩衝液及びTES緩衝液において、リン酸やトリカルボン酸、例えばクエン酸と併用することにより、312位に対応する位置がヒスチジンであるアマドリアーゼの熱安定性が向上したことから、その他のグッド緩衝剤においても、さらには複数種の緩衝剤を混合した緩衝剤を用いた場合においても、同様に熱安定性向上効果を示すと考えられる。
CFP−T9−98A/103H/154N/263M/265F/ΔPTS1とCcFXのアミノ酸配列同一性は80%であり、このような相同性を有する同種の酵素において、本発明の効果が共に確認されたことから、CFP−T9−98A/103H/154N/263M/265F/ΔPTS1と80%のアミノ酸配列同一性を有し、または、CcFXと80%のアミノ酸配列同一性を有し、かつ、Coniochaeta属由来アマドリアーゼの312位のヒスチジンに対応するアミノ酸残基を持つアマドリアーゼは、本発明の効果を有するアマドリアーゼに包含される蓋然性が高い。
(さらなる組成物の調製例)
アマドリアーゼとして、配列番号1における312位のアミノ酸に対応する位置のアミノ酸がヒスチジンであるものを使用する。緩衝液としてHEPES緩衝液、TES緩衝液またはBES緩衝液を20〜500mM、例えば500mMにて使用する(pH7.0)。安定化剤として、マレイン酸、シトラコン酸、マロン酸、酒石酸、コハク酸、またはイソクエン酸を2mM〜50mM、例えば20mMにて使用する。以下に調製例を示す:
調製例1
アマドリアーゼ 0.5U
HEPES緩衝液(pH7.0) 500mM
マレイン酸 20mM
調製例2
アマドリアーゼ 0.5U
HEPES緩衝液(pH7.0) 500mM
シトラコン酸 20mM
調製例3
アマドリアーゼ 0.5U
HEPES緩衝液(pH7.0) 500mM
マロン酸 20mM
調製例4
アマドリアーゼ 0.5U
HEPES緩衝液(pH7.0) 500mM
酒石酸 20mM
調製例5
アマドリアーゼ 0.5U
HEPES緩衝液(pH7.0) 500mM
コハク酸 20mM
調製例6
アマドリアーゼ 0.5U
HEPES緩衝液(pH7.0) 500mM
イソクエン酸 20mM
(アマドリアーゼの熱安定性を向上させる安定化剤の評価)
1MのHEPES緩衝液(pH7.0)を用いて、500mMのHEPES緩衝液に約0.5U/mlのアマドリアーゼ粗酵素液、またはアマドリアーゼ精製標品が含まれ、かつ安定化剤が添加された溶液を600μl調製する。また対照には安定化剤を添加しない。この溶液100μlを55℃にて10分間加温する。上述のB.の方法を用いて加熱前と加熱後のサンプルの酵素活性を測定し、加熱前の活性を100とした場合の残加熱後の活性の割合、すなわち、残存活性(%)を求める。
安定化剤を添加せずに55℃にて10分間加温した際の残存活性(%)を1とした場合の、安定化剤を添加し加温した後の残存活性(%)の割合を比率として算出する。熱安定性の評価は、上述の「熱安定性測定法」および「アマドリアーゼの熱安定性を向上させる安定化剤の評価方法」に従う。
配列の説明
配列番号1. CFP−T9−98A/103H/154N/263M/265F/ΔPTS1のアミノ酸配列
配列番号2. CFP−T9−98A/103H/154N/263M/265F/ΔPTS1の遺伝子配列
配列番号3. H312F導入プライマーFw
配列番号4. H312X導入プライマーRv
配列番号5. H312Y導入プライマーFw
配列番号6. H312N導入プライマーFw
配列番号7. H312T導入プライマーFw
配列番号8. H312C導入プライマーFw
配列番号9. H312W導入プライマーFw
配列番号10.H312R導入プライマーFw
配列番号11. H312K導入プライマーFw
配列番号12. H312Q導入プライマーFw
配列番号13. H312V導入プライマーFw
配列番号14. H312S導入プライマーFw
配列番号15. H312P導入プライマーFw
配列番号16. H312G導入プライマーFw
配列番号17. H312A導入プライマーFw
配列番号18. H312D導入プライマーFw
配列番号19. H312E導入プライマーFw
配列番号20. H312L導入プライマーFw
配列番号21. H312I導入プライマーFw
配列番号22. H312M導入プライマーFw
配列番号23. H26N導入プライマーFw
配列番号24. H26N導入プライマーRv
配列番号25. H90N導入プライマーFw
配列番号26. H90N導入プライマーRv
配列番号27. Eupenicillium terrenum由来のアマドリアーゼ
配列番号28. Pyrenochaeta sp.由来のケトアミンオキシダーゼ
配列番号29. Arthrinium sp.由来のケトアミンオキシダーゼ
配列番号30. Curvularia clavata由来のケトアミンオキシダーゼ
配列番号31. Neocosmospora vasinfecta由来のケトアミンオキシダーゼ
配列番号32. Cryptococcus neoformans由来のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼ
配列番号33. Phaeosphaeria nodorum由来のフルクトシルペプチドオキシダーゼ
配列番号34. Aspergillus nidulans由来のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼ
配列番号35. Ulocladium sp.由来のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼ
配列番号36. Penicillium crysogenum由来のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼ
配列番号37. Curvularia clavata由来のケトアミンオキシダーゼの遺伝子

Claims (6)

  1. 配列番号1に示すアミノ酸配列と90%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、アマドリアーゼ活性を有し、配列番号1における312位のアミノ酸に対応する位置のアミノ酸がヒスチジンであるアマドリアーゼを含む組成物に2mM以上のジカルボン酸、トリカルボン酸、リン酸またはこれらの塩からなる群より選択されるアニオンを1種類以上共存させることによりアマドリアーゼ含有組成物の熱安定性を向上させる工程を含む、アマドリアーゼ含有組成物の熱安定性を向上させる方法。
  2. 配列番号30に示すアミノ酸配列と90%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、アマドリアーゼ活性を有し、配列番号30における310位のアミノ酸に対応する位置のアミノ酸がヒスチジンであるアマドリアーゼを含む組成物に2mM以上のジカルボン酸、トリカルボン酸、リン酸またはこれらの塩からなる群より選択されるアニオンを1種類以上共存させることによりアマドリアーゼ含有組成物の熱安定性を向上させる工程を含む、アマドリアーゼ含有組成物の熱安定性を向上させる方法。
  3. アマドリアーゼが糖化ジペプチドに作用するアマドリアーゼである、請求項1または請求項2に記載のアマドリアーゼ含有組成物の熱安定性を向上させる方法。
  4. ジカルボン酸がリンゴ酸、シュウ酸、マロン酸、スクシン酸、コハク酸、グルタル酸、α−ケトグルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、グルタコン酸、酒石酸、タルトロン酸、オキサロ酢酸、マレイン酸、ムコン酸、メサコン酸、シトラコン酸、メコン酸、3−3’ジメチルグルタル酸、イタコン酸、グルタミン酸、及びアスパラギン酸からなる群より選択され、
    トリカルボン酸がクエン酸、イソクエン酸、アコニット酸、トリメシン酸、1,2,3−プロパントリカルボン酸、及び2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸からなる群より選択され、
    リン酸がリン酸塩及びピロリン酸塩からなる群より選択される、請求項1、2または3に記載のアマドリアーゼ含有組成物の熱安定性を向上させる方法。
  5. 前記アマドリアーゼを含む組成物が、アセトアミドグリシン、ACES(N-(2-アセトアミド)-2-アミノエタンスルホン酸)、ADA(N-(2-アセトアミド)イミノ二酢酸)、BES(N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2-アミノエタンスルホン酸)、Bicin(N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)グリシン)、Bis−Tris(ビス(2-ヒドロキシエチル)イミノトリス(ヒドロキシメチル)メタン)、コラミン塩酸、EPPS(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンプロパンスルホン酸)、グリシンアミド、HEPES(4-2-ヒドロキシエチル-1-ピペラジンエタンスルホン酸)、HEPPSO(N-(ヒドロキシエチル)ピペラジン-N'-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸)、MES(2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸)、MOPS(3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸)、MOPSO(2-ヒドロキシ-3-モルホリノプロパンスルホン酸)、PIPES(ピペラジン-N,N'-ビス(2-エタンスルホン酸))、POPSO(ピペラジン-1,4-ビス(2-ヒドロキシプロパンスルホン酸))、TAPS(N-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-3-アミノプロパンスルホン酸)、TAPSO(3-[N-トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノ]-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸)、TES(N-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-2-アミノエタンスルホン酸)、トリシン(N-トリス(ヒドロキシメチル)メチルグリシン)、AMPSO(N-(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-3-アミノ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸)、CABS(4-(シクロヘキシルアミノ)-1-ブタンスルホン酸)、CAPS(N-シクロヘキシル-3-アミノプロパンスルホン酸)、CHES(N-シクロヘキシル-2-アミノエタンスルホン酸)、CAPSO(N-シクロヘキシル-2-ヒドロキシル-3-アミノプロパンスルホン酸)、DIPSO(3-(N,N-ビス[2-ヒドロキシエチル]アミノ)-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸)及びこれらの混合物からなる群より選択されるグッド緩衝剤を含むものである、請求項1〜4のいずれか1項に記載のアマドリアーゼ含有組成物の熱安定性を向上させる方法。
  6. 緩衝剤の濃度が20mM以上である、請求項5に記載のアマドリアーゼ含有組成物の熱安定性を向上させる方法。
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