JP6746302B2 - ジオポリマー硬化体の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ジオポリマー硬化体の製造方法に関する。
ジオポリマー硬化体とは、セメントを用いることなく、シリカ及びアルミニウムを含む無機粉体とアルカリ水溶液を反応させて製造される硬化体の総称である。
例えば、特許文献1では、無機粉体としてフライアッシュを用い、アルカリ水溶液としてケイ酸ナトリウム水溶液を用い、これらを練り混ぜた後、常温養生又は蒸気養生を施すことによりジオポリマー硬化体を製造する方法が提案されている。しかし、アルカリ水溶液としてケイ酸ナトリウム水溶液を用いると、原料の練り混ぜを開始してから凝結するまでの時間が非常に短く、練り混ぜ中に凝結してしまうことがある。したがって、可使時間の確保が困難であるという問題がある。
特許文献2には、この問題の解決策が提案されている。具体的には、アルカリ水溶液として水酸化ナトリウム水溶液のみを用い、無機粉体としてフライアッシュ及び高炉スラグ微粉末を用い、これらを撹拌した後にシリカフュームを徐々に溶かす処理を行うことによって、凝結時間を稼ぎ、可使時間を確保するようにしている。
特開平8−301639号公報 特開2014−237561号公報
しかしながら、特許文献2において提案されているジオポリマー硬化体の製造方法においては、十分な圧縮強度を有するジオポリマー硬化体を製造するために、原料の練り上がり温度を35℃程度にコントロールしなければならず(特許文献2の段落0017を参照)、原料の事前加温や練り混ぜ中の加温が必要となる。さらには、シリカフュームを添加するタイミングや添加速度をコントロールする必要もある。したがって、特許文献2において提案されているジオポリマー硬化体の製造方法は、簡便性及び汎用性に欠けるという問題がある。
そこで、本発明は、原料の事前加温や練り混ぜ中の加温、さらには原料の添加タイミングや添加速度のコントロールを必要とすることなく、高強度のジオポリマー硬化体を製造することが可能な、簡便性及び汎用性の高いジオポリマー硬化体の製造方法を提供することを目的とする。
本発明のジオポリマー硬化体の製造方法は、ケイ酸ナトリウム水溶液を含まず、無機粉体、水酸化ナトリウム、水及び骨材を含む原料を練り混ぜて混練物を得る工程と、混練物に対して前養生を行った後に蒸気養生を行う工程とを含み、無機粉体はフライアッシュ、高炉スラグ微粉末及びシリカフュームを含み、前養生は10℃〜50℃の温度でかつ前記蒸気養生よりも低温で6時間以上かけて実施されることを特徴としている。
ここで、本発明のジオポリマー硬化体の製造方法において、前養生は常温養生であることが好ましい。
さらに、本発明のジオポリマー硬化体の製造方法において、フライアッシュはフライアッシュ原粉であることが好ましい。
本発明のジオポリマー硬化体の製造方法によれば、原料の事前加温や練り混ぜ中の加温、さらには原料の添加タイミングや添加速度のコントロールを必要とすることなく、高い簡便性及び汎用性をもって、高強度のジオポリマー硬化体を製造することが可能となる。
本発明のジオポリマー硬化体の製造方法の実施形態の一例を示す工程フロー図である。 実施例1で製造した各種硬化体の圧縮強度を、無機粉体の配合条件及び前養生の有無により区別して示した比較図である。 実施例1で製造した各種硬化体の曲げ強度を、無機粉体の配合条件及び前養生の有無により区別して示した比較図である。 実施例1で製造したフライアッシュ原粉単味配合条件(F)の硬化体について、フライアッシュ原粉に代えてJIS−I種品のフライアッシュを用いて製造した硬化体の圧縮強度を、前養生の有無により区別して示した比較図である。 実施例1で製造した各種硬化体の圧縮強度と全空隙率の関係を示す図である。 実施例1で製造したフライアッシュ原粉と高炉スラグ微粉末とシリカフュームを配合した条件(FBS)の硬化体について、前養生条件を変化させた場合の圧縮強度と前養生時間の関係を、前養生温度毎に示した図である。 実施例1で製造したフライアッシュ原粉と高炉スラグ微粉末とシリカフュームを配合した条件(FBS)の硬化体について、前養生条件を変化させた場合の全空隙率と前養生時間の関係を、前養生温度毎に示した図である。 実施例1で製造したフライアッシュ原粉と高炉スラグ微粉末とシリカフュームを配合した条件(FBS)の硬化体について、前養生条件を変化させた場合の圧縮強度と全空隙率の関係を示した図である。 実施例1で製造した各種硬化体の空隙直径に対する積算空隙量を、無機粉体の配合条件及び前養生の有無により区別して示した図である。 図9における積算空隙量をLOG微分空隙量に変換した図である。 実施例1で製造したフライアッシュ原粉と高炉スラグ微粉末とシリカフュームを配合した条件(FBS)の硬化体について、前養生条件を変化させた場合の空隙直径に対する積算空隙量を、前養生温度毎に示した図である。 図11における積算空隙量をLOG微分空隙量に変換した図である。 実施例1で製造した各種硬化体について、長さ変化率の経時変化を検討した結果を示す図である。 実施例1で製造した各種硬化体について、質量変化率の経時変化を検討した結果を示す図である。 実施例1で製造したフライアッシュ原粉と高炉スラグ微粉末とシリカフュームを配合した条件(FBS)の硬化体について、前養生の有無による耐硫酸性の変化を検討した結果を示す図である。 実施例1で製造したフライアッシュ原粉と高炉スラグ微粉末とシリカフュームを配合した条件(FBS)の硬化体について、前養生の有無による陽イオン交換容量の変化を検討した結果を示す図である。 高炉スラグ微粉末の置換率と硬化体の圧縮強度の関係について検討した結果を示す図である。 高炉スラグ微粉末の置換率と硬化体の曲げ強度の関係について検討した結果を示す図である。 高炉スラグ微粉末の置換率と前養生の有無による硬化体の圧縮強度比及び曲げ強度比の関係について検討した結果を示す図である。 実施例3で製造した各種硬化体の圧縮強度を、フライアッシュの種類と前養生の有無により区別して示した比較図である。 実施例3で製造した各種硬化体の曲げ強度を、フライアッシュの種類と前養生の有無により区別して示した比較図である。
以下、本発明を実施するための形態について、図面に基づいて詳細に説明する。
図1に、本発明のジオポリマー硬化体の製造方法の実施形態の一例を示す。
本実施形態におけるジオポリマー硬化体の製造方法は、大まかには、練り混ぜ工程(S1)、前養生工程(S2)、及び蒸気養生工程(S3)により構成される。
練り混ぜ工程(S1)では、原料として、無機粉体、水酸化ナトリウム、水及び骨材を練り混ぜて混練物を得る。
無機粉体としては、フライアッシュ及び高炉スラグ微粉末が用いられる。
無機粉体としてフライアッシュと高炉スラグ微粉末を用いてジオポリマー硬化体を製造することによって、フライアッシュ単味でジオポリマー硬化体を製造する場合よりもジオポリマー硬化体の強度(圧縮強度及び曲げ強度)を増進させることができる。また、無機粉体としてフライアッシュと高炉スラグ微粉末を用い、蒸気養生前に前養生を施してジオポリマー硬化体を製造することによって、蒸気養生のみを行う場合よりもジオポリマー硬化体の強度(圧縮強度及び曲げ強度)を増進させることができる。本発明では、高炉スラグを配合することによる強度増進効果と前養生を施すことによる強度増進効果とが相俟って、極めて高強度なジオポリマーを製造することが可能となる。
フライアッシュとしては、JIS A 6201に規定されているコンクリート用フライアッシュI種〜IV種品を用いることができるのは勿論のこと、フライアッシュ原粉(即ち、非JIS品)を用いることもできる。あるいはこれらのうちの2種以上を組み合わせて用いることもできる。フライアッシュ原粉は、石炭火力発電所から発生したフライアッシュに対して分級処理等が一切施されていないことから、構成粒子の粒度分布が広く、粗い粒をも含んでいる。このため、JIS−I種〜IV種品と比較して反応性が劣る傾向にあり、現在その多くはセメント原料としての利用にとどまっている。セメント原料として利用されないものの大半は埋立処分されている。ここで、フライアッシュ発生量のうち、JIS品は約2%程度に過ぎず、残りの約98%は非JIS品である。非JIS品であるフライアッシュ原粉の発生量は将来的にさらなる増大が見込まれるものの、セメント原料としての利用量は頭打ちになることが予想される。したがって、非JIS品であるフライアッシュ原粉の新たな有効利用方法の確立が急務である。本発明では、ジオポリマー硬化体の製造用の原料として、非JIS品であるフライアッシュ原粉を利用することが可能であることから、非JIS品であるフライアッシュ原粉を用いながらも、セメントを使用することなく、環境に優しい建築資材等の製造に資することができる。このような点においても、本発明は極めて優れたものである。
高炉スラグ微粉末についても、JIS品及び非JIS品のいずれを用いてもよいし、これらを組み合わせて用いてもよいが、高炉スラグ微粉末の非JIS品は市場に殆ど流通しておらず、ブレーン値が小さすぎる非JIS品については強度増進効果が小さくなることもあることから、入手容易なJIS品を用いることが好適である。具体的には、JIS A 6206に規定されている高炉スラグ微粉末(ブレーン値3000cm/gクラス、4000cm/gクラス、6000cm/gクラス、8000cm/gクラス)を用いることができ、特にブレーン値4000cm/gクラス適合品を好適に使用できる。あるいは、これら4種のJIS品のうちの2種以上を組み合わせて使用することもできる。
フライアッシュと高炉スラグ微粉末の配合割合については、本発明の効果が発揮される範囲であれば特に限定されるものではないが、例えば、フライアッシュと高炉スラグ微粉末の全質量に対する高炉スラグ微粉末の配合量を5〜50質量%とすればよく、10〜40質量%とすることが好適であり、20〜30質量%とすることがより好適であり、25質量%程度とすることがさらに好適である。高炉スラグ微粉末の配合割合が少なすぎると、高炉スラグ微粉末を配合することによる強度増進効果が奏されないことがある。また、前養生を施すことによる曲げ強度の増進効果が奏されにくくなる。逆に、高炉スラグ微粉末の配合割合が多すぎると、原料コストが上昇してしまう。また、前養生を施すことによる圧縮強度の増進効果が奏されにくくなる。
特に、フライアッシュと高炉スラグ微粉末の全質量に対する高炉スラグ微粉末の配合量を10〜40質量%、好適には20〜30質量%、より好適には25質量%程度とすることで、前養生を施すことによる圧縮強度及び曲げ強度の増進効果が最大限に発揮される。
ここで、本発明においては、無機粉体として、フライアッシュ及び高炉スラグ微粉末に加えて、さらにシリカフュームを用いることが好ましい。この場合、無機粉体としてフライアッシュと高炉スラグ微粉末を用いてジオポリマー硬化体を製造する場合よりもジオポリマー硬化体の強度(圧縮強度及び曲げ強度)をさらに増進させることができる。また、前養生を施すことによる強度増進効果も、無機粉体としてフライアッシュと高炉スラグ微粉末を用いてジオポリマー硬化体を製造する場合と同様に奏される。したがって、無機粉体としてフライアッシュと高炉スラグ微粉末を用いてジオポリマー硬化体を製造する場合よりもさらに高強度なジオポリマー硬化体を製造することが可能となる。
シリカフュームとしては、JIS品及び非JIS品のいずれを用いることもできるし、これらを組み合わせて用いることもできる。なお、JIS品とは、JIS A 6207に規定されるコンクリート用シリカフュームである。
シリカフュームの配合割合についても、本発明の効果が発揮される範囲であれば特に限定されるものではないが、例えば、フライアッシュと高炉スラグ微粉末とシリカフュームの全質量に対するシリカフュームの配合量を1〜10質量%とすればよく、3〜7質量%とすることが好適であり、5質量%程度とすることがより好適である。シリカフュームの配合割合が少なすぎると、シリカフュームを配合することによる強度増進効果が奏されないことがある。逆に、シリカフュームの配合割合が多すぎると、原料コストが上昇してしまう。
水酸化ナトリウムは、予め水(練り混ぜ水)に溶解させて水酸化ナトリウム水溶液とした後、練り混ぜ工程に供することが好適である。なお、水としては、例えばイオン交換水等を用いることが好適であるが、蒸留水や水道水を用いてもよい。
なお、無機粉体に対する水の配合割合については、特に限定されるものではなく、ジオポリマー硬化体を製造する際に要求される一般的な条件を適宜選択すればよい。例えば、無機粉体に対する水の配合割合(水/無機粉体)は20〜40質量%とすればよく、25〜35質量%とすることが好適であり、28質量%程度とすることがより好適である。また、水酸化ナトリウムの配合割合についても、特に限定されるものではなく、ジオポリマー硬化体を製造する際に要求される一般的な条件を適宜選択すればよい。例えば、水に対する水酸化ナトリウムの配合割合(水酸化ナトリウム/水)は20〜60質量%とすればよく、30〜50質量%とすることが好適であり、48質量%程度とすることがより好適である。
本発明のジオポリマー硬化体の製造方法においては、アルカリ水溶液として、ケイ酸ナトリウム水溶液を用いることなく、水酸化ナトリウム水溶液を用いてジオポリマー硬化体を製造することができる。したがって、ケイ酸ナトリウム水溶液を用いる従来技術(特許文献1)のように、原料の練り混ぜを開始してから凝結するまでの時間が非常に短く、可使時間の確保が困難であるという問題は生じない。
骨材としては、コンクリートやモルタルに一般的に用いられる粗骨材(例えば砂利等)や細骨材(例えば砂等)等を適宜用いることができる。なお、骨材以外の原料に対する骨材の配合割合は、特に限定されるものではなく、例えばコンクリートやモルタルにおいて一般的に採用される条件を適宜選択すればよい。
練り混ぜ工程(S1)は、原料を練り鉢等の容器に投入し、二軸式ミキサー等の攪拌装置を用いて練り混ぜることにより行われる。なお、骨材については、コンクリートやモルタルを製造する場合と同様、他の原料(無機粉体及び水酸化ナトリウム水溶液)を練り混ぜてペーストとした後に投入することが好適である。
本発明のジオポリマー硬化体の製造方法においては、従来法(特許文献2)のように、練り上がり温度を一定の温度範囲(35℃程度)にコントロールする必要がない。したがって、原料の事前加温や練り混ぜ中の加温を必要とせず、常温(例えば10℃〜30℃)で練り混ぜを実施することができる。しかも、原料の添加タイミングや添加速度のコントロールを必要とすることなく練り混ぜを実施することができる。つまり、無機粉体及び水酸化ナトリウム水溶液を練り鉢等の容器に投入してから練り混ぜを開始することができ、シリカフュームを練り混ぜ中に徐々に添加するような操作を必要としない。したがって、本発明のジオポリマー硬化体の製造方法は、従来法(特許文献2)と比較して、圧倒的に簡便性及び汎用性に優れた製造方法であるといえる。
練り混ぜ工程(S1)により得られた混練物は、型枠に打設され、次工程の前養生工程(S2)に供される。
前養生は、蒸気養生温度よりも低温で実施される。即ち、前養生温度は、例えば蒸気養生温度未満、好適には50℃以下、より好適には40℃以下、さらに好適には常温(10℃〜30℃)である。前養生を常温で実施する場合、加温手段を必要としないことから、本発明のジオポリマー硬化体の製造方法の簡便性及び汎用性をさらに向上させることができるとともに、加温手段の導入や加温手段の稼働による製造コストの上昇も生じない。
なお、前養生は、必ずしも一定温度で実施せずともよい。例えば、前養生を行う環境の温度が上記範囲で変動した場合であっても、前養生の効果は奏される。また、前養生の温度を上記範囲内で意図的に変動させることで、前養生の効果がさらに向上することもある。
前養生の時間については、本発明の効果が発揮される範囲であれば特に限定されるものではないが、例えば、6時間以上とすればよく、12時間以上とすることが好適であり、24時間以上とすることがより好適であり、48時間以上とすることがさらに好適である。前養生の時間が短すぎる前養生を施すことによる強度増強効果が十分に奏されないことがある。なお、前養生の時間を48時間よりもさらに長時間化することで、前養生の効果はいずれ飽和するものと考えられるものの、デメリットは特に生じない。したがって、前養生の時間を48時間よりもさらに長時間化しても構わない。
なお、前養生は、混練物からの水分逸散を防ぎながら実施することが好ましい。例えば、打設面をシート等で覆うこと等によって、混練物からの水分逸散を防ぎながら前養生を実施することができる。
前養生工程(S2)が完了した後、型枠ごと、あるいは型枠から凝結した混練物を外して、次工程の蒸気養生工程(S3)に供される。
蒸気養生の条件については、特に限定されるものではなく、ジオポリマー硬化体の製造方法において採用される一般的な条件が採用される。例えば、最高温度80℃で最高温度保持時間24時間相当の蒸気養生条件を採用することができるが、これに限定されるものではない。
本発明の製造方法によれば、圧縮強度50MPa以上、さらには60MPa以上の高強度なジオポリマー硬化体を製造することができる。また、本発明の製造方法により得られるジオポリマー硬化体の空隙の主成分は、直径50nm以下の空隙であり、空隙構造が極めて緻密である。さらに、本発明の製造方法により得られるジオポリマー硬化体は乾燥収縮率が極めて小さく、経時的な寸法変動が極めて起こり難いという優れた特性を有している。加えて、本発明の製造方法により得られるジオポリマー硬化体は、ジオポリマーの特徴である耐硫酸性や陽イオン交換能も兼ね備えている。
上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。
例えば、上述の実施形態では、原料として、無機粉体、水酸化ナトリウム、水及び骨材を用いた場合を例に挙げて説明したが、原料の構成は必ずしもこれに限定されるものではない。例えば、本発明の効果を大きく阻害することのない範囲で、無機粉体、水酸化ナトリウム、水及び骨材以外の他の物質、例えば、水酸化ナトリウム代替としての水酸化カリウム、及び、減水剤等の各種添加材を原料に配合するようにしてもよい。
また、上述の実施形態では、無機粉体として、フライアッシュ及び高炉スラグ微粉末、又は、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末及びシリカフュームを用いた場合を例に挙げて説明したが、無機粉体の構成は必ずしもこれらに限定されるものではない。例えば、本発明の効果を大きく阻害することのない範囲で、特定の元素成分を多く含む非晶質無機粉末、カオリン、及び下水汚泥焼却灰等をさらに含む無機粉体を用いるようにしてもよい。
以下に本発明の実施例を説明するが、本発明はこれら実施例に限られるものではない。
[実施例1]
各種条件にてジオポリマーモルタル硬化体を製造し、前養生の効果について検討した。なお、以降の説明では、ジオポリマーモルタル硬化体のことを単に硬化体と呼ぶこともある。
1.原料
無機粉体、水酸化ナトリウム水溶液、及び細骨材を用いた。
(1)無機粉体
フライアッシュ、高炉スラグ微粉末、及びシリカフュームを用いた。
(1−1)フライアッシュ
石炭火力発電所から発生した灰に一切手を加えていないフライアッシュ原粉(非JIS品)を用いた。以降の説明では、このフライアッシュ原粉を「F」と略記することもある。
(1−2)高炉スラグ微粉末
JIS A 6206 高炉スラグ微粉末4000適合品を用いた。以降の説明では、この高炉スラグ微粉末を「B」と略記することもある。
(1−3)シリカフューム
JIS A 6207適合品とした。以降の説明では、このシリカフュームを「S」と略記することもある。
表1に、本実施例において使用したフライアッシュ、高炉スラグ微粉末、及びシリカフュームの品質を示す。
(2)水酸化ナトリウム水溶液
純薬の水酸化ナトリウム(NaOH)を、練混ぜ水としてのイオン交換水に溶解させて12.1mol/L(NaOH/水=48.4mass%)の水酸化ナトリウム水溶液を調製した。
(3)細骨材
密度2.64g/cmの細砂とした。
2.配合
表2に、本実施例において製造した硬化体の原料の配合条件を示す。
表2中、「無機粉体全体に対する各粉体の比」とは、無機粉体全体に対する各粉体(F、S、及びB)の置換率(内割質量比)である。
また、表2中の「ペースト」とは、細骨材以外の原料である無機粉体と水酸化ナトリウム水溶液を混合して得られるペーストのことである。
また、表2中の「水」とは、練混ぜ水としてのイオン交換水のことである。即ち、水酸化ナトリウム水溶液を構成する水のことである。
なお、以降の説明では、無機粉体の配合条件について、以下のように略記することがある。
・F :フライアッシュ原粉単味
・FS :フライアッシュ原粉+シリカフューム
・FB :フライアッシュ原粉+高炉スラグ微粉末
・FBS:フライアッシュ原粉+高炉スラグ微粉末+シリカフューム
3.打設及び養生条件
無機粉体と水酸化ナトリウム水溶液とを練り鉢内に投入し、二軸式ミキサーによって1分間練り混ぜた後、細骨材(細砂)を加えてさらに3分間練り混ぜて混練物を得、これを振動締固めにより型枠に打設した。型枠に打設後、各種条件で養生を実施し、ジオポリマーモルタル硬化体を製造した。
本実施例において検討した養生条件を表3に示す。
前養生有り(前養生時間6h〜)の場合には、混練物を型枠に打設し、ポリ塩化ビニル製のシートを打設面に密着させて前養生を行った後、脱型してから蒸気養生を実施した。
前養生無し(前養生時間0h)の場合には、混練物を型枠に打設した直後に蒸気養生を実施した。
前養生は、相対湿度60%の恒温恒湿槽内にて、表3に示す温度及び時間で実施した。
蒸気養生条件は、最高温度80℃、最高温度保持時間24時間相当とした。
4.測定項目
(1)圧縮強度及び曲げ強度
圧縮強度試験では円柱硬化体(φ5x10cm)を、曲げ強度試験では角柱硬化体(4x4x16cm)を用いた。試験は同一条件にて製造した硬化体2本について実施し、平均値を用いた。
(2)空隙率及び空隙径分布
空隙径分布の測定は、水銀圧入式ポロシメーターを用いて行った。蒸気養生終了後の角柱硬化体を粗砕して得た5mm角程度の試料をアセトン浸漬した後、D−Dry法により乾燥させ、1.5g程度の試料を用いて測定を行った。空隙径の測定範囲は、直径3nm〜150μmとした。
(3)乾燥収縮性状
「JIS A 1129 モルタル及びコンクリートの長さ変化測定方法」に準拠し、角柱硬化体(4x4x16cm)を温度20℃で相対湿度60%の恒温恒湿槽内に静置し、所定の日数毎に長さ及び質量を測定した。
(4)硫酸浸漬
円柱硬化体(φ5x10cm)の全体を、5mass%硫酸水溶液に浸漬させ、所定の浸漬日数毎に、質量、直径、硫酸浸透深さ、及び圧縮強度を測定した。
(5)陽イオン交換容量
「JIS K 1478 人工ゼオライトの陽イオン交換容量(CEC)測定方法」に準拠し、陽イオン交換容量の測定を行った。
5.試験結果
(1)無機粉体の配合条件及び前養生の有無が強度及び空隙率に及ぼす影響
図2及び図3に、各種硬化体の圧縮強度及び曲げ強度を、無機粉体の配合条件(即ち、F、FS、FB、FBS)及び前養生の有無(0h又は24h)により区別して示す。
まず、無機粉体の配合条件が強度に及ぼす影響について検討する。前養生無し(0h)の条件について、無機粉体の配合条件毎の強度の差異に着目すると、F及びFSよりもFBの方が著しく高い圧縮強度及び曲げ強度を示すことが明らかとなった。そして、FBSについては、さらに高い圧縮強度及び曲げ強度を示すことが明らかとなった。前養生有り(24h)の条件についても、同様の傾向が見られた。
次に、前養生が強度に及ぼす影響について検討する。F及びFSについては、圧縮強度及び曲げ強度の両者ともに、前養生の有無による有意な強度変化は見られなかった。これに対し、高炉スラグ微粉末を混和した系(FB及びFBS)については、前養生を施すことによって、前養生を施さない場合よりも1.3〜1.6倍程度の顕著な強度増進が生じることが明らかとなった。
以上の検討結果から、フライアッシュ原粉に高炉スラグ微粉末を混和する配合条件(FB)とすることで顕著な強度増進効果が奏され、さらにシリカフュームを混和する配合条件(FBS)とすることでさらに顕著な強度増進効果が奏されることが明らかとなった。また、フライアッシュ原粉に高炉スラグ微粉末を混和した系(FB及びFBS)に対して前養生を施すことで顕著な強度増進効果が奏されることが明らかとなった。そして、これらの強度増進効果が相俟って、フライアッシュ原粉に高炉スラグ微粉末を混和する配合条件(FB)において前養生を施すことで高強度の硬化体を製造することができ、フライアッシュ原粉に高炉スラグ微粉末とシリカフュームを混和する配合条件(FBS)において前養生を施すことでさらに高強度の硬化体を製造することができることが明らかとなった。
ここで、参考データとして、フライアッシュ原粉単味配合条件(F)について、フライアッシュ原粉に代えて、フライアッシュをJIS A 6201 I種品を用い、上記と同様に前養生が圧縮強度に及ぼす影響について検討した結果を図4に示す。フライアッシュとしてJIS I種品を用いた場合であっても、フライアッシュ単味配合条件では十分な圧縮強度が確保できず、前養生を施すことによる強度増進効果も奏されないことが明らかとなった。
次に、図2及び図3において強度を比較検討した硬化体について、全空隙率の圧縮強度の関係を検討した結果を図5に示す。
全空隙率と圧縮強度は全体として良好な相関を示した。このことから、無機粉体の配合条件による圧縮強度の差異は、空隙率の差異に起因するものと推察された。
また、フライアッシュ原粉に高炉スラグ微粉末を混和した系(FB及びFBS)では、前養生を施すことにより空隙率の低下が生じることが明らかとなった。このことから、前養生を施すことによる強度増進効果は、空隙率の低減により奏されるものと推察された。
(2)前養生条件の相違が強度及び空隙率に及ぼす影響
フライアッシュ原粉と高炉スラグ微粉末とシリカフュームを配合した条件(FBS)について、前養生条件を変化させて製造した硬化体の圧縮強度と前養生時間の関係を、前養生温度毎に示した結果を図6に示す。
前養生温度を10℃、20℃、及び30℃としたいずれの場合においても、前養生時間の延長により圧縮強度が増進することが明らかとなった。詳細には、前養生無し(0h)における圧縮強度を基準とすると、前養生時間6時間において約10%、12時間において10〜20%、24時間で20〜30%、48時間で30〜50%の強度増進効果が認められた。
より詳細には、前養生時間と強度の関係は前養生温度毎に異なっており、前養生時間12時間までは20℃、前養生時間24時間では10℃、前養生時間48時間では30℃で前養生した硬化体がそれぞれ最も高い強度を示した。
また、前養生温度を30℃とした場合には、前養生時間を24時間から48時間に延長することで、大きな強度増進効果が認められた。
なお、これらの結果を考慮すると、前養生温度を蒸気養生温度(80℃)未満の範囲で30℃よりも高めたり、前養生時間をさらに延長したりすることで、さらなる強度増進効果が期待できるものと推察される。
次に、フライアッシュ原粉と高炉スラグ微粉末とシリカフュームを配合した条件(FBS)について、前養生条件を変化させて製造した硬化体の全空隙率と前養生時間の関係を、前養生温度毎に示した結果を図7に示す。
全空隙率は、前養生時間の延長により低下する傾向を示すことが明らかとなった。
次に、フライアッシュ原粉と高炉スラグ微粉末とシリカフュームを配合した条件(FBS)について、前養生条件を変化させて製造した硬化体の圧縮強度と全空隙率の関係を検討した結果を図8に示す。
全空隙率と圧縮強度は全体として良好な相関を示した。このことから、前養生温度及び時間による圧縮強度の変化は、空隙率の変化に起因するものと推察された。
(3)無機粉体の配合条件及び前養生の有無が空隙構造に及ぼす影響
図9に、各種硬化体の空隙直径に対する積算空隙量を、無機粉体の配合条件及び前養生の有無(0h又は24h)により区別して示す。
F及びFSでは、前養生を施すことにより空隙量が増加する傾向が見られた。一方、高炉スラグ微粉末を混和した系(FB及びFBS)では、高炉スラグ微粉末を混和していない系(F及びFS)と比較して、より微細な空隙が多く分布している傾向が見られた。
次に、空隙径分布をより詳細に検討するために、図9の積算空隙率をLOG微分空隙量に変換した結果を図10に示す。
まず、前養生無しの硬化体について検討する。F及びFSでは、微分空隙量の最も大きなピークは空隙直径500nm〜700nmに存在していた。これに対し、FBでは、微分空隙量の最も大きなピークは空隙直径15nm付近に存在し、FBSでは空隙直径10nm以下と150nm付近に存在していた。これらの結果から、高炉スラグ微粉末を混和した系(FB及びFBS)で製造した硬化体においては、高炉スラグ微粉末を混和していない系(F及びFS)で製造した硬化体と比較して、空隙径が大幅に縮小することが明らかとなった。
次に、前養生を施した硬化体について検討する。F及びFSについては、強度の場合と同様、前養生を施すことによる空隙径分布の有意な変化は見られないことが明らかとなった。これとは対照的に、高炉スラグ微粉末を混和した系(FB及びFBS)については、前養生を施すことにより空隙径が小さくなっていることから、空隙構造が緻密化していることがわかる。特に、FBSの変化は大きく、前養生を施すことにより、前養生無しの場合において見られた空隙直径約150nmをピークとする空隙分布が大幅に減少し、空隙直径50nm以下、特に空隙直径20nm以下の極微細な空隙分布の増大が生じており、全体として非常に顕著な空隙構造の緻密化が認められた。
(4)前養生条件の相違が空隙構造に及ぼす影響
フライアッシュ原粉と高炉スラグ微粉末とシリカフュームを配合した条件(FBS)について、前養生条件を変化させて製造した硬化体の空隙直径に対する積算空隙量を、前養生温度毎に示した結果を図11に示す。
また、図11の積算空隙率をLOG微分空隙量に変換した結果を図12に示す。
前養生温度を10℃、20℃、及び30℃としたいずれの場合においても、前養生時間の延長により空隙構造の緻密化が認められた。特に、前養生時間の延長により、空隙直径約150nmをピークとする空隙分布の減少と、空隙直径20nm以下の極微細な空隙分布の増大が認められた。
ここで、原料である無機粉体の粒径は、フライアッシュ原粉及び高炉スラグ微粉末については1〜70nm程度、シリカフュームについては100〜500nm程度であることから、これらの粒子間に存在する空隙の直径は、幾何学的には無機粉体の粒径と同程度のサイズオーダーになるものと考えられる。したがって、空隙直径20nm以下の極微細な空隙の大半は、養生の過程で生成した生成物間及び生成物内部に存在する空隙であると推察される。
(5)無機粉体の配合条件及び前養生の有無が乾燥収縮性状に及ぼす影響
図13に、各種硬化体の長さ変化率(乾燥収縮量)の経時変化を示す。また、図14に、各種硬化体の質量変化率の経時変化を示す。
高炉スラグ微粉末を混和した系であるFBSについては、高炉スラグ微粉末を混和していない系(F及びFS)と比較して、長さ変化率(乾燥収縮量)及び質量変化率が低減することが明らかとなった。
また、FBSについては、前養生を施すことにより、40%もの長さ変化率(乾燥収縮量)の低減が認められた。
ここで、FBSについては、前養生を施すことによる質量変化率の低減が認められたことから、前養生を施すことにより乾燥による逸散水量が少なくなっていることがわかった。このため、乾燥収縮量が低減したものと推察される。なお、乾燥による逸散水量の低減が生じた原因は、空隙構造の緻密化によるものと推察される。
(6)前養生の有無が耐硫酸性に及ぼす影響
フライアッシュ原粉と高炉スラグ微粉末とシリカフュームを配合した条件(FBS)について、前養生の有無による硬化体の耐硫酸性を検討した結果を図15に示す。図15(a)は硫酸浸漬期間と質量変化率の関係を示し、(b)は硫酸浸漬期間と直径変化率の関係を示し、(c)は硫酸浸漬期間と硫酸浸漬深さの関係を示し、(d)は硫酸浸漬期間と圧縮強度の関係を示している。また、図15には、参考データとして高炉セメントB種使用モルタル硬化体(以下、「BB」と呼ぶこともある)の試験結果も掲載した。
図15(a)に示す結果から、BBでは硫酸に浸漬することで質量が急激に増大するのに対し、FBSでは前養生の有無に依らず殆ど質量が変化しないことが明らかとなった。
また、図15(b)に示す結果から、BBでは硫酸に浸漬することで激しく膨張するのに対し、FBSでは前養生の有無に依らず殆ど膨張しないことが明らかとなった。
さらに、図15(c)に示す結果から、硫酸浸漬28日目におけるFBSの硫酸浸透深さは、BBの2/3以下の値であり、FBSは硫酸浸透抵抗性に優れることが明らかとなった。前養生の有無による差については、若干ではあるが前養生を施した硬化体の硫酸浸透深さが小さかった。
また、図15(d)に示す結果から、硫酸浸漬28日目において、BBは初期強度の約1/3まで強度低下が生じているのに対し、FBSでは殆ど強度低下が見られなかった。
以上の結果から、フライアッシュ原粉と高炉スラグ微粉末とシリカフュームを配合した条件(FBS)で製造した硬化体は、優れた耐硫酸性を有することが明らかとなった。
また、前養生の有無による硬化体の耐硫酸性の差異は殆ど見られなかったことから、前養生を行ったとしても硬化体の耐硫酸性を低下させることなく、セメント系硬化体と比較して優れた耐硫酸性を維持しながらも、硬化体の強度及び乾燥収縮性状を向上させることが可能であることが明らかとなった。
(7)前養生の有無が陽イオン交換容量に及ぼす影響
フライアッシュ原粉と高炉スラグ微粉末とシリカフュームを配合した条件(FBS)について、前養生の有無による硬化体の陽イオン交換容量(CEC)の変化を検討した結果を図16に示す。また、図16には、参考データとしてセメント系硬化体の一般的な陽イオン交換容量値も掲載した。
フライアッシュ原粉と高炉スラグ微粉末とシリカフュームを配合した条件(FBS)で製造した硬化体は、セメント系硬化体と比較して圧倒的に優れた陽イオン交換能を示すことが明らかとなった。また、前養生の有無による陽イオン交換容量の変化は殆どみられなかった。したがって、前養生を行ったとしても硬化体の陽イオン交換能を殆ど低下させることなく、セメント系硬化体と比較して優れた陽イオン交換能を維持しながらも、硬化体の強度及び乾燥収縮性状を向上させることが可能であることが明らかとなった。
[実施例2]
実施例1のフライアッシュ原粉と高炉スラグ微粉末とシリカフュームを配合した条件(FBS)について、高炉スラグ微粉末の置換率を異ならせて、前養生の有無による硬化体の圧縮強度及び曲げ強度の変化について実施例1と同様の手法で検討した。
実施例2で検討した配合を表4に示す。なお、表4中における「FBS−B25」は、実施例1のFBSと同一の配合である。
高炉スラグ微粉末置換率と圧縮強度の関係を図17に示し、高炉スラグ微粉末置換率と曲げ強度の関係を図18に示す。
高炉スラグ微粉末置換率の増大に伴い、両強度とも増大する傾向が認められた。また、高炉スラグ微粉末置換率25%で前養生(24h)を施した場合の硬化体の強度は、高炉スラグ微粉末置換率40%で前養生無し(0h)の場合の硬化体の強度と同程度であった。
一方で、前養生が強度に及ぼす影響度、即ち前養生無し(0h)と前養生有り(24h)の強度差は、圧縮強度と曲げ強度で異なっていた。高炉スラグ微粉末置換率と前養生の有無が強度に及ぼす影響について詳細に評価するために、前養生無し(0h)に対する前養生有り(24h)の強度の比(前養生有りの場合の強度/前養生無しの場合の強度)を求めた。圧縮強度比及び曲げ強度比と高炉スラグ微粉末置換率との関係を図19に示す。
図19においては、縦軸の値が大きいほど、前養生有りの場合の強度増進効果が大きいことになる。圧縮強度については、高炉スラグ微粉末置換率が増大するにつれて前養生による強度増進効果が低減する一方、曲げ強度については高炉スラグ微粉末置換率が増大するにつれて前養生による強度増進効果が顕著になることが明らかとなった。
また、高炉スラグ微粉末置換率25%付近において、圧縮強度及び曲げ強度ともに1.3倍程度の強度増進を示したことから、圧縮強度及び曲げ強度の両者について、前養生を施すことによる強度増進効果が最大限に得られる高炉スラグ微粉末の置換率は25%程度であると推察される。
[実施例3]
使用するフライアッシュを実施例1とは異ならせて、前養生の有無による硬化体の圧縮強度及び曲げ強度の変化について実施例1と同様の手法で検討した。
表5に、本実施例において使用したフライアッシュの品質を示す。
フライアッシュ原粉Bは、実施例1及び2において使用したフライアッシュ原粉よりもさらに粒子が粗い非JIS品である。また、フライアッシュI種の密度及び比表面積は文献値(文献:山口ら:フライアッシュを少量混合した普通ポルトランドセメントを用いたコンクリートの性能に関する研究、セメント・コンクリート論文集、Vol.66、pp.287−294、2012)である。
無機粉体の配合条件は、実施例1のFBSと同様とし、前養生無し(0h)又は前養生有り(24h)の条件で硬化体を製造した。
本実施例で製造した各種硬化体の圧縮強度及び曲げ強度を、フライアッシュの種類と前養生の有無により区別して示した結果を図20及び図21に示す。なお、図20及び図21には、実施例1においてフライアッシュ原粉を用いて製造した硬化体の圧縮強度及び曲げ強度も掲載した。図20及び図21中、実施例1において使用したフライアッシュ原粉は「原A」と表示した。また、フライアッシュ原粉Bについては「原B」と表示し、フライアッシュI種については「I種」と表示した。
フライアッシュI種を用いて製造した硬化体は、フライアッシュ原粉を用いて製造した硬化体よりも高い強度を示した。また、フライアッシュの品質に依らず、前養生による強度増進効果が認められた。
以上の結果から、フライアッシュの品質に依らずに、前養生を施すことによる強度増進効果が奏されることが明らかとなった。
本発明の製造方法により得られるジオポリマー硬化体は、歩車道分離ブロック等の各種ブロック、電柱、カルバートといった既存の一般プレキャストコンクリート製品と同様の蒸気養生装置及び施設において製造することが可能であり、一般的なプレキャストコンクリート製品全般への利用可能性を有している。また、優れた耐酸性を有することから、微生物の活動に由来し生じる硫酸による劣化が問題となる下水道資材、酸性温泉水による酸劣化が問題となる温泉地における建設資材(U字溝や護岸ブロック等)としての利用可能性を有している。さらに、優れた陽イオン交換能を有することから、水環境中における悪臭の一要因であるアンモニウムイオン等を吸着する環境浄化材用途としての利用可能性を有している。

Claims (3)

  1. ケイ酸ナトリウム水溶液を含まず、無機粉体、水酸化ナトリウム、水及び骨材を含む原料を練り混ぜて混練物を得る工程と、
    前記混練物に対して前養生を行った後に蒸気養生を行う工程とを含み、
    前記無機粉体はフライアッシュ、高炉スラグ微粉末及びシリカフュームを含み、
    前記前養生は10℃〜50℃の温度でかつ前記蒸気養生よりも低温で6時間以上かけて実施される
    ことを特徴とするジオポリマー硬化体の製造方法。
  2. 前記前養生は常温養生である、請求項1に記載のジオポリマー硬化体の製造方法。
  3. 前記フライアッシュはフライアッシュ原粉である、請求項1または2記載のジオポリマー硬化体の製造方法。
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