JP6745450B2 - 大腸癌モデル動物、大腸癌モデル動物の製造方法、抗癌剤、アレルギーモデル動物、アレルギーモデル動物の製造方法、及びスクリーニング方法 - Google Patents

大腸癌モデル動物、大腸癌モデル動物の製造方法、抗癌剤、アレルギーモデル動物、アレルギーモデル動物の製造方法、及びスクリーニング方法 Download PDF

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Description

本発明は、大腸癌モデル動物、大腸癌モデル動物の製造方法、抗癌剤、アレルギーモデル動物、アレルギーモデル動物の製造方法、及びスクリーニング方法に関する。
大腸炎関連性大腸癌(Coltis−associated colon cancer (CAC))は、大腸癌(Colorectal cancer)のサブタイプであり、潰瘍性大腸炎(Ulcerative colitis)やクローン病(Crohn’s disease)等の炎症性腸疾患に起因するとされる。慢性炎症は癌を発生させる主要なリスク因子の一つと広く認識されている。しかし、その発生のメカニズム等の理解はいまだ不十分である。
Gasdermin D(Gsdmd)は、Gasdermin(Gsdm)遺伝子ファミリーの一員である。マウスでは、GsdmdはGsdmdサブファミリーに属する唯一の遺伝子であり、大腸等の腸の上皮において特異的に発現することが知られている(非特許文献1)。しかし、Gsdmdノックアウト(Gsdmd−/−)マウスの腸管の形態に異常は報告されていなかった(非特許文献2)。近年では、Gsdmd/GSDMDは、パイロトーシスの新規の制御因子であるとの報告もある(非特許文献2、3)。
また、近年アレルギーの発症が増加傾向にある。ある種のアレルギー性疾患では、体内の免疫グロブリンE(IgE)の増加によって、アレルギー反応が生じている。IgEの生産は、インターロイキン−4(IL−4)等の特定のサイトカインにより促進されることが知られている。
アレルギーが重症化すると鼻炎や蕁麻疹などが生じて日常生活にも支障をきたす他、ショック症状を呈した場合には重篤な状態に至る可能性もある。そのため、アレルギーが生じるメカニズムの解明やアレルギーの治療について期待されている。
Tamura, M. et al. Members of a novel gene family, Gsdm, are expressed exclusively in the epithelium of the skin and gastrointestinal tract in a highly tissue-specific manner. Genomics 89, 618-29 (2007). Fujii, T. et al. Gasdermin D (Gsdmd) is dispensable for mouse intestinal epithelium development. Genesis 46, 418-423 (2008). Shi, J. et al. Cleavage of GSDMD by inflammatory caspases determines pyroptotic cell death. Nature (2015). Kayagaki, N. et al. Caspase-11 cleaves gasdermin D for non-canonical inflammasome signalling. Nature (2015).
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、大腸癌モデルとなる大腸癌モデル動物の提供、該大腸癌モデル動物の製造方法、該大腸癌モデル動物を利用するスクリーニング方法、及び抗癌剤の提供を課題とする。
また、本発明は、アレルギーモデル動物の提供、該アレルギーモデル動物の製造方法、及び該アレルギーモデル動物を利用するスクリーニング方法の提供を課題とする。
本発明者らは、Cre−loxP部位特異的組換えにより作製されたGsdmdヌル(−/−)のノックアウトマウスが、大腸癌を発症することを見出し、本発明を完成させた。
また本発明者らは、Cre−loxP部位特異的組換えにより作製されたGsdmdヌル(−/−)のノックアウトマウスで、アレルギーの発症に関連するインターロイキンの発現が高められていることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
(1)Gasdermin D(Gsdmd)遺伝子の機能が欠損又は低下した非ヒト動物である大腸癌モデル動物。
(2)Gsdmd遺伝子又はGsdmd遺伝子の発現調節領域に変異を有する前記(1)に記載の大腸癌モデル動物。
(3)体内に大腸癌特異的発癌物質及び大腸起炎物質を含む前記(1)又は(2)に記載の大腸癌モデル動物。
(4)前記大腸癌が、大腸炎関連性大腸癌(Coltis−associated colon cancer)である前記(1)〜(3)のいずれか一つに記載の大腸癌モデル動物。
(5)げっ歯類である前記(1)〜(4)のいずれか一つに記載の大腸癌モデル動物。
(6)Gsdmd遺伝子の機能が欠損又は低下した非ヒト動物に、大腸癌特異的発癌物質及び大腸起炎物質を投与することを含む、大腸癌モデル動物の製造方法。
(7)前記大腸癌が、大腸炎関連性大腸癌(Coltis−associated colon cancer)である、前記(6)に記載の大腸癌モデル動物の製造方法。
(8)前記(1)〜(5)のいずれか一つに記載の大腸癌モデル動物に被験物質を投与し、被験物質が投与された前記大腸癌モデル動物と、被験物質が投与されていない前記大腸癌モデル動物とを比較し、被験物質が投与された前記大腸癌モデル動物のほうが大腸癌に関連する表現型が抑制されていた場合、前記被験物質を大腸癌の治療又は予防に有効な物質であると判断することを含む、スクリーニング方法。
(9)以下の(I)〜(III)のいずれか1以上のタンパク質を有効成分として含有する大腸癌の抗癌剤。
(I)配列番号3で表されるアミノ酸配列における、第1アミノ酸〜第275アミノ酸配列からなるアミノ酸配列を有し、大腸癌細胞の細胞障害活性を有するタンパク質
(II)配列番号3で表されるアミノ酸配列における、第1アミノ酸〜第275アミノ酸配列からなるアミノ酸配列において、1〜数個のアミノ酸が欠失、置換、又は付加されているアミノ酸配列を有し、大腸癌細胞の細胞障害活性を有するタンパク質
(III)配列番号3で表されるアミノ酸配列における、第1アミノ酸〜第275アミノ酸配列からなるアミノ酸配列との同一性が80%以上であるアミノ酸配列を有し、大腸癌細胞の細胞障害活性を有するタンパク質
(10)以下の(I)〜(III)のいずれか1以上のタンパク質をコードする遺伝子を含む発現ベクターを有効成分として含有する大腸癌の抗癌剤。
(I)配列番号3で表されるアミノ酸配列における、第1アミノ酸〜第275アミノ酸配列からなるアミノ酸配列を有し、大腸癌細胞の細胞障害活性を有するタンパク質
(II)配列番号3で表されるアミノ酸配列における、第1アミノ酸〜第275アミノ酸配列からなるアミノ酸配列において、1〜数個のアミノ酸が欠失、置換、又は付加されているアミノ酸配列を有し、大腸癌細胞の細胞障害活性を有するタンパク質
(III)配列番号3で表されるアミノ酸配列における、第1アミノ酸〜第275アミノ酸配列からなるアミノ酸配列との同一性が80%以上であるアミノ酸配列を有し、大腸癌細胞の細胞障害活性を有するタンパク質
(11)Gasdermin D(Gsdmd)遺伝子の機能が欠損又は低下した非ヒト動物であり、アレルギー性疾患が発症されやすいアレルギーモデル動物。
(12)Gsdmd遺伝子又はGsdmd遺伝子の発現調節領域に変異を有する前記(11)に記載のアレルギーモデル動物。
(13)体内に大腸癌特異的発癌物質及び大腸起炎物質を含む前記(11)又は(12)に記載のアレルギーモデル動物。
(14)前記アレルギー性疾患が、I型アレルギーの疾患である前記(11)〜(13)のいずれか一つに記載のアレルギーモデル動物。
(15)げっ歯類である前記(11)〜(14)のいずれか一つに記載のアレルギーモデル動物。
(16)Gsdmd遺伝子の機能が欠損又は低下した非ヒト動物に、大腸癌特異的発癌物質及び大腸起炎物質を投与することを含むアレルギーモデル動物の製造方法。
(17)前記大腸癌が、大腸炎関連性大腸癌(Coltis−associated colon cancer)である前記(16)に記載のアレルギーモデル動物の製造方法。
(18)前記(11)〜(15)のいずれか一つに記載のアレルギーモデル動物に被験物質を投与し、被験物質が投与された前記アレルギーモデル動物と、被験物質が投与されていない前記アレルギーモデル動物とを比較し、被験物質が投与された前記アレルギーモデル動物のほうがアレルギーに関連する表現型が抑制されていた場合、前記被験物質をアレルギー性疾患の治療又は予防に有効な物質であると判断することを含む、スクリーニング方法。
本発明によれば、大腸癌モデルとなる大腸癌モデル動物を提供できる。また該大腸癌モデル動物の製造方法、及び該大腸癌モデル動物を利用するスクリーニング方法を提供できる。
また、本発明によれば、アレルギーモデル動物を提供できる。また該アレルギーモデル動物の製造方法、及び該アレルギーモデル動物を利用するスクリーニング方法を提供できる。
実施例における、CAC(colitis−associated colon cancer)モデル動物の製造手順を模式的に示す概要図である。 AOM−DSS処理期間中のマウスの体重変化率の結果を示したグラフである。 12週間のAOM−DSS処理の後のマウスの遠位大腸を示す写真である。 12週間のAOM−DSS処理後のWTマウス及びGsdmd−/−マウスにおける、腫瘍数と、腫瘍サイズを示すドットプロットである。 WTマウスとGsdmd−/−マウスに発生した大腸腺癌の、ヘマトキシリン及びエオシンで染色された切片の画像である。 WT及びGsdmd−/−マウスのCACにおける、BrdUの取り込み、及びcleaved Caspase−3(Casp3)の染色結果を示す図である。 WTマウス及びGsdmd−/−マウスから得られた大腸腺癌に対する免疫組織化学的検査、及び免疫ブロットの結果を示す画像である。 実施例における、急性炎症処理の手順を模式的に示す概要図である。 DSS処理期間中のマウスの体重変化率を示したグラフである。 急性炎症処理後の組織学的解析の結果を示す画像と、その組織学的スコアを示すグラフである。 急性炎症処理後のWTマウス及びGsdmd−/−マウスの腸の長さの値を示すグラフである。 急性炎症処理後のWTマウス及びGsdmd−/−マウスの腸の組織学的解析の結果を示す画像である。 WT及びGsdmd−/−マウスの大腸の炎症部位における免疫組織学的解析の結果を示す画像である。 WT及びGsdmd−/−マウスの大腸の炎症部位における免疫組織学的解析の結果を示す画像である。 実施例で得られた、リアルタイム定量PCRの結果を示すグラフである。 実施例で得られた、リアルタイム定量PCRの結果を示すグラフである。 実施例で得られた、リアルタイム定量PCRの結果を示すグラフである。 正常なヒトの大腸、及びCACの検体の組織学的解析の結果を示す画像と、そのIHCの染色強度のスコアを示すグラフである。 マウスの正常な大腸上皮と、急性炎症処理を受けたCACモデルマウスの大腸上皮の組織学的解析の結果を示す画像である。 GSDMD−NをコードするDNA配列が導入されたcolo−320細胞、及びコントロールの細胞を示す画像である。
≪大腸癌モデル動物≫
本発明の大腸癌モデル動物は、Gsdmd遺伝子の機能が欠損又は低下した非ヒト動物である。
ヒト(Homo sapiens)とマウス(Mus musculus)のGasdermin D(ぞれぞれGSDMDとGsdmd)は、Gsdmdサブファミリーに属する唯一の遺伝子である。マウスのGsdmdは15番染色体(15D3)にマップされることが明らかにされている(非特許文献1)。Gsdm遺伝子ファミリー遺伝子は、400〜500アミノ酸からなるタンパク質をコードしている。Gsdmファミリーの遺伝子は、転写因子として機能という報告もあり、Gsdmdも同様に転写因子として機能する可能性がある(Lunny, D. P. et al. Mutations in gasdermin 3 cause aberrant differentiation of the hair follicle and sebaceous gland. J Invest Dermatol 124, 615-21 (2005).)。
マウスのGsdmd遺伝子と、それがコードするタンパク質のアミノ酸配列が開示されている(Gene ID: 69146)。ヒトのGSDMD遺伝子と、それがコードするタンパク質のアミノ酸配列が開示されている(Gene ID: 79792)。Gene IDは、Geneデータベース(URL:ttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/)の登録番号を表す。
マウスのGSDMDのアミノ酸配列を配列番号1に示す。マウスのGSDMDをコードするDNAの塩基配列を配列番号2に示す。ヒトのGSDMDのアミノ酸配列を配列番号3に示す。ヒトのGSDMDをコードするDNAの塩基配列を配列番号4に示す。
本明細書における非ヒト動物としては、ヒト以外の動物であれば特に制限されないが、哺乳類であることが好ましく、げっ歯類(Rodentia)であることがより好ましい。哺乳類に分類される動物としては、ヤギ、ブタ、イヌ、ネコ、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、ウサギ等が挙げられる。げっ歯類に分類される動物としては、マウス、ラット、モルモット、ハムスター等が挙げられる。
本発明の大腸癌モデル動物は、大腸癌に関連する表現型の少なくとも1つを示す。
大腸癌に関連する表現型としては、大腸における腫瘍の発生、腫瘍の発生率、腫瘍の発生数、腫瘍の大きさ、腫瘍の浸潤の度合い、大腸癌の進行度、大腸の細胞の分化異常、大腸の細胞の形態異常等が挙げられる。それらは、大腸における腫瘍の存在を示す腫瘍マーカーやその他の因子を確認することにより得られた情報であってもよい。大腸癌に関連する表現型は、本願実施例に記載のものも採用できる。
前記大腸癌は、大腸炎関連性大腸癌であってもよい。
大腸炎関連性大腸癌に関連する表現型としては、大腸粘膜における炎症、潰瘍、びらん等が挙げられる。それらは、大腸における大腸炎の存在を示す炎症マーカーやその他の因子を確認することにより得られた情報であってもよい。大腸炎関連性大腸癌に関連する表現型は、本願実施例に記載のものも採用できる。
本明細書におけるGsdmd遺伝子としては、上記の配列番号1又は3で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子が挙げられ、その他、当該遺伝子のホモログ、バリアント、変異体を含む。
モデル動物となる動物におけるGsdmd遺伝子が公知の場合は、それをGsdmd遺伝子として選択すればよい。モデル動物となる動物におけるGsdmd遺伝子が公知ではない場合であっても、当業者であれば、モデル動物となる動物ゲノム情報のなかからGsdmd遺伝子を選択することができる。
Gsdmd遺伝子、又は当該遺伝子のホモログ、バリアント、変異体としては、例えば、以下の(a)〜(c)のいずれかのアミノ酸配列を有するタンパク質をコードする遺伝子が挙げられる。
(a)配列番号1又は3で表されるアミノ酸配列を有し、機能の欠損又は低下により大腸癌発生の原因となるタンパク質、
(b)配列番号1又は3で表されるアミノ酸配列において、1〜数個のアミノ酸が欠失、置換、又は付加されているアミノ酸配列を有し、機能の欠損又は低下により大腸癌発生の原因となるタンパク質、
(c)配列番号1又は3で表されるアミノ酸配列との同一性が80%以上であるアミノ酸配列を有し、機能の欠損又は低下により大腸癌発生の原因となるタンパク質
ここで、欠失、置換、又は付加されていてもよいアミノ酸の数としては、1〜30個が好ましく、1〜20個が好ましく、1〜10個が好ましく、1〜7個がより好ましく、1〜5個がさらに好ましく、1〜3個が特に好ましく、1〜2個が最も好ましい。
ここで、アミノ酸配列との同一性としては、80%以上が好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましく、95%以上が特に好ましく、98%以上が最も好ましい。アミノ酸配列の同一性は、例えば、BLAST(参照URL:http://blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi)により求めることができる。パラメーターはたとえばscore = 100、wordlength = 12とする。また、BLASTに基づいてBLASTXによってアミノ酸配列を解析する場合には、パラメーターはたとえばscore = 50、wordlength = 3とする。BLASTとGapped BLASTプログラムを用いる場合には、各プログラムのデフォルトパラメーターを用いる。
ここで、大腸癌発生の原因となるとは、機能の欠損又は低下が生じているモデル動物と、機能の欠損又は低下が生じていない動物(モデル動物の野生型(WT)等のコントロールとなる動物)と比較して、機能の欠損又は低下が生じているモデル動物のほうが、大腸癌に関連する表現型の程度が増すことを意味する。
Gsdmd遺伝子の機能が喪失しているとは、Gsdmd遺伝子がコードするタンパク質が本来有する機能が完全に失われている状態のことをいう。Gsdmd遺伝子の機能が低下しているとは、Gsdmd遺伝子がコードするタンパク質が本来有する機能が部分的に失われている状態のことをいう。
Gsdmd遺伝子がコードするタンパク質が本来有する機能が部分的に失われている場合には、その喪失の程度が、モデル動物と、モデル動物の野生型の動物等のコントロールとなる動物とを比較し、モデル動物に大腸癌に関連する表現型と認められる状態(コントロールとの差異)がより強く表れる程度であればよい。
本明細書中において、大腸とは、盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸、及び直腸を含む。
本発明のモデル動物に係る大腸癌としては、大腸炎関連性大腸癌(Coltis−associated colon cancer)が挙げられる。大腸炎関連性大腸癌における大腸炎としては、潰瘍性大腸炎(Ulcerative colitis)及びクローン病(Crohn’s disease)が挙げられる。
Gsdmd遺伝子の機能の欠損又は低下は、Gsdmd遺伝子の発現が消失又は低下することによっても生じ得る。Gsdmd遺伝子の発現が消失しているとは、モデル動物となる動物において、Gsdmd遺伝子産物が消失していることをいう。Gsdmd遺伝子の発現が低下しているとは、モデル動物の野生型の動物等のコントロールとなる動物と比較して、Gsdmd遺伝子産物の量が低下していることをいう。Gsdmd遺伝子の発現が低下している場合には、低下の程度は、モデル動物の野生型の動物等のコントロールとなる動物と比較して、モデル動物に、上記に示すような大腸癌に関連する表現型と認められる状態(コントロールとの差異)がより強く表れる程度であればよい。
Gsdmd遺伝子の発現の消失又は低下は、例えば、Gsdmd遺伝子に対するRNAiを生じさせる核酸や、アンチセンス核酸をモデル動物に導入し発現させることで、生じさせることができる。標的の遺伝子に対するこれらの核酸の設計、導入、及び発現は、公知の手法を用いて行うことができる。
本発明のモデル動物は、Gsdmd遺伝子又はGsdmd遺伝子の発現調節領域に変異が導入されて、Gsdmd遺伝子の機能が欠損又は低下している状態にあることが好ましい。係るモデル動物は、遺伝子工学的手法により、遺伝情報が改変された遺伝子改変動物のことを指し、例えば、トランスジェニックマウス、ノックアウトマウス等が挙げられる。
導入される変異は、Gsdmd遺伝子がコードするタンパク質が本来有する機能を完全又は部分的に失わせるものであってもよく、Gsdmd遺伝子の発現を消失又は低下させるものであってもよい。
Gsdmd遺伝子には、タンパク質をコードする領域であるエクソンのほか、Gsdmd遺伝子の発現を消失又は低下させる、又は前記Gsdmd遺伝子がコードするタンパク質の機能を欠損又は低下させることができる場合にはイントロンも含まれる。
Gsdmd遺伝子の発現調節領域とは、Gsdmd遺伝子の発現を調節するゲノムDNA上の領域であって、例えば、プロモーターである。
導入される変異としては、欠失、置換、又は付加が挙げられる。
Gsdmd遺伝子の機能の欠損又は低下は、例えば、ゲノムDNA上のGsdmd遺伝子又はGsdmd遺伝子の発現調節領域に該当するDNAの、全部又は一部を欠失させることで達成可能である。また、Gsdmd遺伝子の機能の欠損又は低下は、例えば、ゲノムDNA上のGsdmd遺伝子又はGsdmd遺伝子の発現調節領域に該当するDNAに、本来とは異なる配列の核酸を置換又は付加させることで、達成可能である。
遺伝子に変異を導入する手法は公知であり、種々の遺伝子工学的手法により行うことができる。例えば、相同組み換え技術等による遺伝子ターゲッティング、遺伝子改変、ノックアウト、ノックダウン、ノックイン、Cre−loxP系等による部位特異的組換え等の手法を用いて行うことができる。また、CRISPR/CasやTranscription Activator−Like Effector Nucleases(TALEN)等のゲノム編集技術を用いても行うことができる。
本発明に係るモデル動物は、Gsdmd遺伝子の機能が欠損又は低下したことのみによっても、頻度は低いものの大腸癌に関連する表現型を示す。しかし、本発明者らは、アゾキシメタン(AOM)及びデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)を投与されたGsdmd ノックアウト(Gsdmd−/−)マウスが、非常に高頻度で、大腸癌を発症することを見出した。
一態様において、本発明に係るモデル動物は、その体内に大腸癌特異的発癌物質を含む。大腸癌特異的発癌物質としては、例えば、AOM、2−Amino−1−methyl−6−phenylimidazo[4,5−b]pyridine(PhIP)、1,2−Dimethylhydrazine(DMH)等が挙げられる。
一態様において、本発明に係るモデル動物は、その体内に大腸起炎物質を含む。大腸起炎物質としては、例えば、DSS、トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)、オキサゾロン(Oxazolone)等が挙げられる。
一態様において、本発明に係るモデル動物は、その体内に大腸癌特異的発癌物質及び/又は大腸起炎物質を含む。大腸癌特異的発癌物質及び大腸起炎物質は、組み合わせて用いられてもよい。一態様において、本発明に係るモデル動物は、その体内に大腸癌特異的発癌物質及び大腸起炎物質を含む。好ましい大腸癌特異的発癌物質及び大腸起炎物質の組み合わせとしては、AOM及びDSSの組み合わせが挙げられる。一態様において、本発明に係るモデル動物は、その体内にAOM及びDSSを含む。
体内に大腸癌特異的発癌物質及び大腸起炎物質を含むモデル動物は、大腸炎関連性大腸癌のモデル動物として有用である。
AOM及びDSSが、大腸炎関連性大腸癌を誘発させることは従来知られていた。しかし、Gsdmd遺伝子の機能の欠損又は低下が大腸炎関連性大腸癌の発症を増強させることは、Gsdmd遺伝子の機能の欠損又は低下によってもたらされる従来知られていない新たな効果である。
本発明に係るモデル動物は、大腸癌に関連する表現型を示す。そのため大腸癌発症のメカニズムの解明や、その治療等に有用な物質の探索、治療方法などの開発に対して大変に有用である。
本発明の一態様として、Gsdmd遺伝子の機能が欠損又は低下した非ヒト動物を、大腸癌モデル動物として使用する方法が挙げられる。
≪アレルギーモデル動物≫
本発明のアレルギーモデル動物は、Gsdmd遺伝子の機能が欠損又は低下した非ヒト動物である。
以下、本発明のアレルギーモデル動物について説明するが、前記大腸癌モデル動物と同一の構成について説明を省略する。
本発明のアレルギーモデル動物は、アレルギーに関連する表現型の少なくとも1つを示す。
アレルギーは、発症メカニズムの違いによりI〜V型に分類されている。そのなかでI型アレルギーは、即時型アレルギーとも呼ばれ、動物体内でのIgE抗体の産生が関与する。I型アレルギーの疾患としては、例えば、食物アレルギー、花粉症、アレルギー性鼻炎、気管支喘息、アトピー性皮膚炎等が挙げられる。
本発明のアレルギーモデル動物は、I型アレルギーに関連する表現型の少なくとも1つを示してもよい。I型アレルギーに関連する表現型としては、発疹、鼻炎、結膜炎、涙目、気管支炎、咳、呼吸困難等が挙げられる。
その他、動物体内でI型アレルギーの発症メカニズムに関連する因子又は細胞の存在を表現型として解析してもよい。当該因子又は細胞としては、IgE、2型ヘルパーT細胞(Th2細胞)、抗体産生細胞に対してIgEの産生を刺激するIL−4の他、IL−5、IL−13等のTh2サイトカインや、Th2サイトカインの生産を誘導するIL−25、IL−33等が挙げられ、これらの因子又は細胞は、I型アレルギーで増加又は活性化することが知られている。したがって、これらの因子又は細胞の増加又は活性化を、I型アレルギーに関連する表現型として扱うことができる。
アレルギー性疾患が発症された状態の場合の他に、これらの因子又は細胞のうち一以上が増加した状態にあると、アレルギー性疾患が発症されやすい状態となる。実施例において示されるように、Gsdmd遺伝子の機能が欠損したマウスのIL−4、IL−25、IL−33の発現量は、野生型マウスのこれらの発現量と比較し、有意に増加していた。
本発明のアレルギーモデル動物は、アレルギーに関連する表現型に加えて、さらに大腸癌に関連する表現型の少なくとも1つを示してもよい。
大腸癌に関連する表現型としては、大腸における腫瘍の発生、腫瘍の発生率、腫瘍の発生数、腫瘍の大きさ、腫瘍の浸潤の度合い、大腸癌の進行度、大腸の細胞の分化異常、大腸の細胞の形態異常等が挙げられる。それらは、大腸における腫瘍の存在を示す腫瘍マーカーやその他の因子を確認することにより得られた情報であってもよい。大腸癌に関連する表現型は、本願実施例に記載のものも採用できる。
Gsdmd遺伝子、又は当該遺伝子のホモログ、バリアント、変異体としては、例えば、以下の(a)〜(c)のいずれかのアミノ酸配列を有するタンパク質をコードする遺伝子が挙げられる。
(a)配列番号1又は3で表されるアミノ酸配列を有し、機能の欠損又は低下によりアレルギー発生の原因となるタンパク質、
(b)配列番号1又は3で表されるアミノ酸配列において、1〜数個のアミノ酸が欠失、置換、又は付加されているアミノ酸配列を有し、機能の欠損又は低下によりアレルギー発生の原因となるタンパク質、
(c)配列番号1又は3で表されるアミノ酸配列との同一性が80%以上であるアミノ酸配列を有し、機能の欠損又は低下によりアレルギー発生の原因となるタンパク質
ここで、欠失、置換、又は付加されていてもよいアミノ酸の数としては、1〜30個が好ましく、1〜20個が好ましく、1〜10個が好ましく、1〜7個がより好ましく、1〜5個がさらに好ましく、1〜3個が特に好ましく、1〜2個が最も好ましい。
ここで、アミノ酸配列との同一性としては、80%以上が好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましく、95%以上が特に好ましく、98%以上が最も好ましい。アミノ酸配列の同一性は、例えば、BLAST(参照URL:http://blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi)により求めることができる。パラメーターはたとえばscore = 100、wordlength = 12とする。また、BLASTに基づいてBLASTXによってアミノ酸配列を解析する場合には、パラメーターはたとえばscore = 50、wordlength = 3とする。BLASTとGapped BLASTプログラムを用いる場合には、各プログラムのデフォルトパラメーターを用いる。
ここで、アレルギー発生の原因となるとは、機能の欠損又は低下が生じているモデル動物と、機能の欠損又は低下が生じていない動物(モデル動物の野生型(WT)等のコントロールとなる動物)と比較して、機能の欠損又は低下が生じているモデル動物のほうが、アレルギーに関連する表現型の程度が増すことを意味する。
Gsdmd遺伝子の機能が喪失しているとは、Gsdmd遺伝子がコードするタンパク質が本来有する機能が完全に失われている状態のことをいう。Gsdmd遺伝子の機能が低下しているとは、Gsdmd遺伝子がコードするタンパク質が本来有する機能が部分的に失われている状態のことをいう。
Gsdmd遺伝子がコードするタンパク質が本来有する機能が部分的に失われている場合には、その喪失の程度が、モデル動物と、モデル動物の野生型の動物等のコントロールとなる動物とを比較し、モデル動物にアレルギーに関連する表現型と認められる状態(コントロールとの差異)がより強く表れる程度であればよい。
Gsdmd遺伝子の機能の欠損又は低下は、Gsdmd遺伝子の発現が消失又は低下することによっても生じ得る。Gsdmd遺伝子の発現が消失しているとは、モデル動物となる動物において、Gsdmd遺伝子産物が消失していることをいう。Gsdmd遺伝子の発現が低下しているとは、モデル動物の野生型の動物等のコントロールとなる動物と比較して、Gsdmd遺伝子産物の量が低下していることをいう。Gsdmd遺伝子の発現が低下している場合には、低下の程度は、モデル動物の野生型の動物等のコントロールとなる動物と比較して、モデル動物に、上記に示すようなアレルギーに関連する表現型と認められる状態(コントロールとの差異)がより強く表れる程度であればよい。
本発明に係るモデル動物は、Gsdmd遺伝子の機能が欠損又は低下したことのみによっても、アレルギーに関連する表現型を示す。本発明者らは、デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)を投与されたGsdmd ノックアウト(Gsdmd−/−)マウス、並びにアゾキシメタン(AOM)及びデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)を投与されたGsdmd ノックアウト(Gsdmd−/−)マウスが、野生型のマウスと比較して有意にアレルギーに関連する表現型を示すことを見出した。
一態様において、本発明に係るモデル動物は、その体内に大腸癌特異的発癌物質を含む。
一態様において、本発明に係るモデル動物は、その体内に大腸起炎物質を含む。
一態様において、本発明に係るモデル動物は、その体内に大腸癌特異的発癌物質及び/又は大腸起炎物質を含む。大腸癌特異的発癌物質及び大腸起炎物質は、組み合わせて用いられてもよい。一態様において、本発明に係るモデル動物は、その体内に大腸癌特異的発癌物質及び大腸起炎物質を含む。好ましい大腸癌特異的発癌物質及び大腸起炎物質の組み合わせとしては、AOM及びDSSの組み合わせが挙げられる。一態様において、本発明に係るモデル動物は、その体内にAOM及びDSSを含む。
体内に大腸癌特異的発癌物質及び大腸起炎物質を含むモデル動物は、アレルギーモデル動物として有用である。
AOM及びDSSが、大腸炎関連性大腸癌を誘発させることは従来知られていた。しかし、Gsdmd遺伝子の機能の欠損又は低下がアレルギーに関連する表現型を示すことは、Gsdmd遺伝子の機能の欠損又は低下によってもたらされる従来知られていない新たな効果である。
本発明に係るモデル動物は、アレルギーに関連する表現型を示す。そのためアレルギーのメカニズムの解明や、その治療等に有用な物質の探索、治療方法などの開発に対して大変に有用である。
本発明の一態様として、Gsdmd遺伝子の機能が欠損又は低下した非ヒト動物を、アレルギー性疾患が発症されやすいアレルギーモデル動物として使用する方法が挙げられる。アレルギーモデル動物は、例えば、アレルギー性疾患の原因となるアレルゲンで処理し、使用することができる。
≪モデル動物の製造方法≫
本発明の大腸癌モデル動物の製造方法は、Gsdmd遺伝子の機能が欠損又は低下した非ヒト動物に、大腸癌特異的発癌物質及び/又は大腸起炎物質を投与することを含む。
本発明のアレルギーモデル動物の製造方法は、Gsdmd遺伝子の機能が欠損又は低下した非ヒト動物に、大腸癌特異的発癌物質及び/又は大腸起炎物質を投与することを含む。
以下、本発明の大腸癌モデル動物の製造方法及び本発明のアレルギーモデル動物の製造方法について、本発明のモデル動物の製造方法として説明する。
大腸癌特異的発癌物質及び大腸起炎物質は、組み合わせて用いられてもよい。一態様において、本発明のモデル動物の製造方法は、Gsdmd遺伝子の機能が欠損又は低下した非ヒト動物に、大腸癌特異的発癌物質及び大腸起炎物質を投与することを含む。好ましい大腸癌特異的発癌物質及び大腸起炎物質の組み合わせとしては、AOM及びDSSの組み合わせが挙げられる。一態様において、本発明のモデル動物の製造方法は、Gsdmd遺伝子の機能が欠損又は低下した非ヒト動物に、アゾキシメタン(AOM)及びデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)を投与することを含む。
Gsdmd遺伝子の機能が欠損又は低下した非ヒト動物としては、本発明のモデル動物が挙げられ、上記の≪モデル動物≫で挙げられたものを例示できる。なお、本製造方法によって本発明のモデル動物を製造することができるが、本発明のモデル動物は、本製造方法によって得られたものに限定されない。
以下、本発明に係るモデル動物の製造方法の一実施形態について説明する。
まず、Gsdmd遺伝子の機能が欠損又は低下した非ヒト動物を用意する。
次いで、該非ヒト動物に大腸癌特異的発癌物質及び/又は大腸起炎物質を投与する。大腸癌特異的発癌物質、大腸起炎物質としては、上記の≪モデル動物≫で挙げられたものを例示できる。
これらの物質の動物への投与形態は、種々の方法から適宜選択すればよく、例えば、皮下注射、腹腔内注射、飼料添加による経口投与等が挙げられる。例えば、マウスの場合、Gsdmd遺伝子の機能が欠損又は低下したマウスに、大腸癌特異的発癌物質及び/又は大腸起炎物質5〜20mg/kg(体重)を、週1〜2回、約3〜15週間投与して飼育することが挙げられる。
以上の手順により、大腸炎関連性大腸癌に関連する表現型を示すモデル動物を製造できる。
また以上の手順により、アレルギーに関連する表現型を示すモデル動物を製造できる。
一態様として、本発明のアレルギーモデル動物の製造方法は、Gsdmd遺伝子の機能が欠損又は低下した非ヒト動物に、アレルギー性疾患の原因となるアレルゲンを投与又は暴露することを含む。
≪スクリーニング方法≫
(大腸癌)
本発明のスクリーニング方法は、本発明の大腸癌モデル動物に被験物質を投与し、被験物質が投与された前記大腸癌モデル動物と、被験物質が投与されていない前記大腸癌モデル動物とを比較し、被験物質が投与された前記大腸癌モデル動物のほうが大腸癌に関連する表現型が抑制されていた場合、前記被験物質を大腸癌の治療又は予防に有効な物質であると判断することを含む。
本発明のモデル動物としては、上記の≪モデル動物≫で挙げられたものを例示できる。
大腸癌モデル動物に被験物質を投与する方法は、例えば、皮下注射、腹腔内注射、経口投与等が挙げられる。
スクリーニング方法において、上記比較は同一条件下で行われるものとする。すなわち、比較は、被験物質の投与の有無以外について、被験物質の有効性を判断可能な程度の同一条件下で飼育されたモデル動物についてなされるものとする。
被験物質としては、例えば、ペプチド、タンパク質、低分子化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液等が挙げられる。
大腸癌の治療又は予防に有効な物質であると判断された物質は、大腸癌の治療剤又は予防剤の有効成分となり得る。
また被験物質の代わりに該被験物質を含む被験試料を投与し、前記被験試料を大腸癌の治療又は予防に有効な試料であると判断してもよい。
本発明のスクリーニング方法は、大腸癌に関連する表現型を指標にして行う。大腸癌に関連する表現型としては、上記の≪大腸癌モデル動物≫で挙げられたものを例示できる。表現型が抑制されていた場合としては、例えば、腫瘍の発生数の低下していた場合、腫瘍マーカーの値の低下していた場合等が挙げられる。
(アレルギー)
本発明のスクリーニング方法は、本発明のアレルギーモデル動物に被験物質を投与し、被験物質が投与された前記アレルギーモデル動物と、被験物質が投与されていない前記アレルギーモデル動物とを比較し、被験物質が投与された前記アレルギーモデル動物のほうがアレルギーに関連する表現型が抑制されていた場合、前記被験物質をアレルギーの治療又は予防に有効な物質であると判断することを含む。
本発明のモデル動物としては、上記の≪モデル動物≫で挙げられたものを例示できる。
アレルギーモデル動物に被験物質を投与する方法は、例えば、皮下注射、腹腔内注射、経口投与等が挙げられる。
スクリーニング方法において、上記比較は同一条件下で行われるものとする。すなわち、比較は、被験物質の投与の有無以外について、被験物質の有効性を判断可能な程度の同一条件下で飼育されたモデル動物についてなされるものとする。
被験物質としては、例えば、ペプチド、タンパク質、低分子化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液等が挙げられる。
アレルギーの治療又は予防に有効な物質であると判断された物質は、アレルギーの治療剤又は予防剤の有効成分となり得る。
また被験物質の代わりに該被験物質を含む被験試料を投与し、前記被験試料をアレルギーの治療又は予防に有効な試料であると判断してもよい。
本発明のスクリーニング方法は、アレルギーに関連する表現型を指標にして行う。アレルギーに関連する表現型としては、上記の≪アレルギーモデル動物≫で挙げられたものを例示できる。表現型が抑制されていた場合としては、例えば、IL−4の発現量低下していた場合等が挙げられる。
≪大腸癌の抗癌剤≫
本発明の大腸癌の抗癌剤は、以下の(I)〜(III)のいずれか1以上のタンパク質を有効成分として含有する。
(I)配列番号3で表されるアミノ酸配列における、第1アミノ酸〜第275アミノ酸配列からなるアミノ酸配列を有し、大腸癌細胞の細胞障害活性を有するタンパク質
(II)配列番号3で表されるアミノ酸配列における、第1アミノ酸〜第275アミノ酸配列からなるアミノ酸配列において、1〜数個のアミノ酸が欠失、置換、又は付加されているアミノ酸配列を有し、大腸癌細胞の細胞障害活性を有するタンパク質
(III)配列番号3で表されるアミノ酸配列における、第1アミノ酸〜第275アミノ酸配列からなるアミノ酸配列との同一性が80%以上であるアミノ酸配列を有し、大腸癌細胞の細胞障害活性を有するタンパク質
ここで、欠失、置換、又は付加されていてもよいアミノ酸の数としては、1〜30個が好ましく、1〜20個が好ましく、1〜10個が好ましく、1〜7個がより好ましく、1〜5個がさらに好ましく、1〜3個が特に好ましく、1〜2個が最も好ましい。
ここで、アミノ酸配列との同一性としては、80%以上が好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましく、95%以上が特に好ましく、98%以上が最も好ましい。アミノ酸配列の同一性は、例えば、BLAST(参照URL:http://blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi)により求めることができる。パラメーターはたとえばscore = 100、wordlength = 12とする。また、BLASTに基づいてBLASTXによってアミノ酸配列を解析する場合には、パラメーターはたとえばscore = 50、wordlength = 3とする。BLASTとGapped BLASTプログラムを用いる場合には、各プログラムのデフォルトパラメーターを用いる。
ここで、タンパク質が大腸癌細胞の細胞障害活性を有しているかは、タンパク質が投与又は発現された大腸癌細胞と、タンパク質が投与又は発現されていない大腸癌細胞とを比較し、タンパク質が投与又は発現された大腸癌細胞で、大腸癌細胞の細胞数が減少した場合又は増加しない場合、投与されたタンパク質が細胞障害活性を有しているといえる。例えば、大腸癌細胞が細胞死する場合も、投与されたタンパク質が細胞障害活性を有しているといえる。
前記(I)〜(III)のタンパク質は、大腸癌細胞の細胞障害活性を有する範囲において、前記(I)〜(III)のタンパク質からなるものであってもよく、また、前記(I)〜(III)のタンパク質に他の物質が付加されたものであってもよい。他の物質としては、アミノ酸、ポリペプチド、タンパク質、糖、糖鎖、核酸、ポリヌクレオチド等が挙げられる。
また、本発明の大腸癌の抗癌剤は、上記(I)〜(III)のいずれか1以上のタンパク質をコードする遺伝子を含む発現ベクターを有効成分として含有する。発現ベクターとしては、、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、又はレンチウイルスベクター等の遺伝子治療用ベクターが挙げられる。
抗癌剤は、上記(I)〜(III)のいずれか1以上のタンパク質のみからなるものであってもよく、その他成分と組み合わせて製剤化されてもよい。例えば、錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、液剤などの各種形態が挙げられる。
これら製剤化においては、薬理学上もしくは飲食品として許容される担体、具体的には、滅菌水や生理食塩水、植物油、溶剤、基剤、乳化剤、懸濁剤、界面活性剤、安定剤、香味剤、芳香剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、結合剤、希釈剤、等張化剤、増量剤、崩壊剤、緩衝剤、コーティング剤、滑沢剤、着色剤、甘味剤、粘稠剤、矯味矯臭剤、溶解補助剤あるいはその他の添加剤と適宜組み合わせることができる。また、大腸癌細胞の細胞障害活性を有するその他の成分が更に配合されてもよい。
本発明の抗癌剤を、大腸癌患者へと投与する投与方法としては、大腸癌への注射等による局所投与、経口投与、静脈注射等が挙げられる。また、大腸癌細胞の細胞障害活性を有するその他の成分と併用して投与されてもよい。
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
アゾキシメタン(AOM)とデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)を用いたCAC発生の増強モデルにおいて、CACの発生におけるGsdmdの関与を評価した。
図1は、実施例におけるモデル動物の製造手順を模式的に示す概要図である。このモデルでは、マウスは変異原としてAOMを注射された後、2.5%のDSS処理を繰り返し受けた。
図2は、AOM−DSS処理期間中のマウスの体重変化率を示したグラフである。データは、平均値±SDで表される[WT,n=18;Gsdmd−/−,n=14、**p<0.01]。最初の回のDSS処理の後、Gsdmd−/−マウスは、野生型(WT)のマウスと比べて、体重の減少率の軽減を示した。
図3は、12週間のAOM−DSS処理の後のマウスの遠位大腸を示す写真である。AOM注射から12週間後、Gsdmd−/−マウスでは、WTのマウスと比べて、大腸癌の数が劇的に増加していた。肉眼で識別できる程度の大きさの大腸癌も多数確認された。
図4(a)(b)は、12週間のAOM−DSS処理後のWTマウス及びGsdmd−/−マウスにおける、腫瘍数(Tumor No./mouse)と、腫瘍サイズ(mm)を示すドットプロットである。バーは平均値を表す[WT,n=18;Gsdmd−/−,n=14;WT tumor, n=94; Gsdmd−/− tumor, n=130]。Gsdmd−/−マウスの腫瘍の発生率と腫瘍のサイズの値は、WTのマウスのものと比べて優位に高かった。
図5は、WTマウスとGsdmd−/−マウスに発生した大腸腺癌の、ヘマトキシリン及びエオシンで染色された切片の画像である。病理組織学的分析により、WTマウス及びGSDMD−/−マウスの両方で、AOM−DSS処理によって腺癌が誘導されたことがわかる。
これらの結果から、Gsdmdが欠損すると、大腸炎関連性大腸癌の発生が、増加することが示された。GsdmdはCACにおける腫瘍の発生及び腫瘍の成長において、明確な役割を果たすことが示された。
WTとGsdmd−/−のマウスとのあいだで、腫瘍の成長に違いがみられたため、各マウスにおいて10〜20mmのサイズの範囲にある大腸癌の腫瘍を選び、腫瘍の細胞増殖及びアポトーシスについて調べた。
図6(a)(b)は、WT及びGsdmd−/−マウスのCACにおける、BrdUの取り込み、及びcleaved Caspase−3(Casp3)の結果を示す図である。データは、平均値±SDで表される[n=3、**p<0.01]。WTとGsdmd−/−マウスの腫瘍とで、BrdUを取り込んだ細胞の比率の違いは見られなかった。一方で、cleaved Caspase−3の検出により識別されたアポトーシス細胞の数は、WTマウスに比べ、Gsdmd−/−マウスで有意に減少していた。これらの結果から、腫瘍の発生において、Gsdmdは細胞増殖ではなくアポトーシスを特異的に促進させることが示された。
2つの主要なシグナルカスケードであるNF−κBシグナリングとSignal transducer and activator 3 (Stat3)シグナリングパスウェイの活性化が、CACの発生に重要であるとの報告がされてきた。そこで、それらのシグナリングが、Gsdmd−/−マウスの腫瘍において影響されているかどうかを、免疫組織化学的解析及び免疫ブロットにより調べた。
図7(a)は、WTマウス及びGsdmd−/−マウスから得られた大腸腺癌に対する、phospho−Stat1(p−Stat1)、phospho−Stat3(p−Stat3)及びphospho−Ikkβ(p−IKKβ)の免疫組織化学的検査の結果を示す画像である。図7(b)は、記載のタンパク質に対する、WT及びGsdmd−/−マウスから得られた大腸腺癌のライセートに対する免疫ブロットの結果を示す画像である。各腫瘍(T)は別々の個体から得られた同サイズの腫瘍である。
WTとGsdmd−/−マウスとでは、NF−κBシグナリングとStat3シグナリングに目立った違いは観察されなかった。一方、アポトーシス細胞の減少と一致して、Gsdmd−/−マウスの腫瘍では、リン酸化されたStat1の量も減少していた。つまり、AOM−DSS処理されたGsdmd−/−マウスは、CACのアポトーシスが減少しており、STAT1シグナリングがダウンレギュレーションされていた。このことは、腫瘍細胞において、GsdmdがアポトーシスとStat1シグナリングを制御していることを示している。
腫瘍の発生率の増加は、DSS処理によって誘導された急性炎症に対する感受性によるものと推測した。この可能性を検証するため、マウスを2.5%DSSで7日間処理し、その後HOを与えて3日間飼育し、急性炎症を誘導した。図8は、実施例における急性炎症処理の手順を模式的に示す概要図である。
図9は、DSS処理期間中のマウスの体重変化率を示したグラフである。データは、平均値±SDで表される[WT,n=5;Gsdmd−/−,n=5、**p<0.01]。確かに、DSS処理されたGsdmd−/−マウスは、WTのマウスと比べて有意な体重の減少率の軽減を示した。
図10(a)は、急性炎症処理後の組織学的解析の結果を示す画像であり、図10(b)はその組織学的スコアを示すグラフである。[WT,n=5;Gsdmd−/−,n=5、**p<0.01]。図11は、急性炎症処理後のWTマウス及びGsdmd−/−マウスの腸の長さの値を示すグラフである。図12は、急性炎症処理後のWTマウス及びGsdmd−/−マウスの腸の組織学的解析の結果を示す画像である。炎症による腸の長さの収縮の程度はGsdmd−/−マウスにおいて低減されていた。組織学的解析によれば、Gsdmd−/−マウスでは、WTのマウスと比較して、急性炎症による大腸組織の破壊の程度は、期待のとおり中程度であった。
図13及び図14(a)(b)は、WT及びGsdmd−/−マウスの大腸の炎症部位における、cleaved−Caspase3 (Casp−3)及びp−Stat1に対する免疫組織学的解析の結果を示す画像である。AOM−DSS処理を受けたマウスのCACと同様、DSS処理されたGsdmd−/−マウスでも、アポトーシス細胞とStat1活性の低下が確認された。この結果は、Gsdmdの欠損により炎症反応が弱められたことを支持している。このことから、Gsdmdの機能は、炎症への応答におけるStat1の働きに付随し、アポトーシスを制御するものであることが示唆された。
Gsdmd−/−マウスにおける炎症反応の低減の根底にあるパスウェイ又は遺伝子を知るため、無処置の大腸に対してマイクロアレイ解析を行った。13の遺伝子が2倍以上の発現増加しており、15の遺伝子が3倍以上の発現低下していることが判明した。
急性炎症が生じた大腸及びCACを用い、無処置の大腸において顕著に発現抑制された遺伝子と、炎症性サイトカインの発現レベルとを、リアルタイム定量PCRを用いて調べた。
図15及び図16は、図に記載の遺伝子に対するリアルタイム定量PCRの結果を示すグラフである。値はRps18遺伝子の発現量に対する相対値である。図15及び16中、(D0)は無処置の大腸の結果を表し、(D7+3)は7日間DSS処理し、その後3日間HOを与えて飼育したマウスの急性炎症の大腸の結果を表し、(AOMDSS)は図1に示す手順によるAOM及びDSS処置による大腸腺癌の結果を表す[*p<0.05、**p<0.01]。
Gsdmd−/−マウスにおけるLy6遺伝子の発現低下が、一貫して、急性炎症が生じた大腸及びCACの両方で検出された。これらの発現データからは、GsdmdはLy6遺伝子の遺伝子制御に関与することが、少なくとも示唆された。Ly6遺伝子は、GPIアンカー型の細胞表面糖タンパク質をコードしており、Ly6遺伝子の発現は、インターフェロンγ(IFNγ)の刺激に応答して、Stat1がLy6のプロモーターに直接結合することによって誘導されることが知られている(Flanagan, K. et al. Intestinal epithelial cell up-regulation of LY6 molecules during colitis results in enhanced chemokine secretion. J Immunol 180, 3874-81 (2008)、及びKhan, K. D. et al. Induction of the Ly-6A/E gene by interferon alpha/beta and gamma requires a DNA element to which a tyrosine-phosphorylated 91-kDa protein binds. Proc Natl Acad Sci U S A 90, 6806-10 (1993))。Ifngの発現は、Gsdmd−/−の無処置の大腸において増加しており、一方で、Ly6の発現は低下していた。
上記の結果から、Gsdmdの欠損は、IFNγ刺激への不応答をもたらすものであり、IFNγ応答遺伝子の発現低下を引き起こすものと仮定した。IFNγが、Stat1の活性化を介し、直接Casp−1遺伝子の発現を誘導することは、よく知られている。この仮説を検証するため、IFNγの処理の有無による、WTとGsdmd−/−マウスの脾細胞におけるCasp−1の遺伝子発現を比較した。
図17(a)(b)は、Gsdmd遺伝子と、Casp1遺伝子に対するリアルタイム定量PCRの結果を示すグラフである。値は、Rps18遺伝子の発現量に対する相対値である[**p<0.01]。WTマウスでは、IFNγ処理によりCasp−1の発現が劇的に発現上昇していた。一方Gsdmd−/−マウスでは、そのようなCasp−1の発現上昇は観察されなかった。これらのデータから、GsdmdはIFNγ−Stat1シグナリングを制御していることが示された。
図16に示されるように、Gsdmd−/−マウスでは、アレルギーに関連が知られるIL−25、IL−33、IL−4の発現が、それぞれ上記(D0)、(D7+3)、(AOMDSS)の条件において、WTのマウスと比較して有意に増加していた。
次に、患者から得られた大腸癌(colorectal cancer)の検体における、GSDMDの発現を調べた。
図18(a)(b)は、大腸癌患者の大腸の正常領域と癌領域の検体の組織学的解析の結果を示す画像と、そのIHCの染色強度のスコアを示すグラフである[**p<0.01]。興味深いことに、ヒトのCACにおいては、GMDMDタンパク質の発現はほとんど抑制されていた。
図19は、マウスの正常な大腸上皮と、急性炎症処理を受けたCACのモデルマウスの大腸上皮の組織学的解析の結果を示す画像である。マウスにおいて、Gsdmdは同様に大腸上皮の先端部で発現していた。ヒトの大腸癌の検体での場合と同様に、CACのモデルマウスにおいても、Gsdmdタンパク質の減少がみられた。これらのデータは、GSDMDの発現はCACの進行に密接に関連していることを示している。
Gsdmdは、カスパーゼ1(Casp−1)により切断され、Gsdmdタンパク質のN末端部分が、マクロファージ等において、炎症に関連した細胞死、パイロトーシスを誘導することが知られている(非特許文献3,4)。Gsdmdはカスパーゼ1(Casp−1)の基質として機能するが、今回示したデータからは、GsdmdはCasp−1の制御因子としても機能することが示唆された。
ヒトGSDMDタンパク質のN末端側部分であり、配列番号3で表されるアミノ酸配列における、第1アミノ酸〜第275アミノ酸配列からなるタンパク質をヒトGSDMD−Nと名付けた。
ヒトGSDMD−NをコードするDNA配列をpcDNAベクターに挿入し、得られた発現ベクターをヒト大腸ガン(colon carcinoma)由来の細胞株(Colo−320)に導入し、GSDMD−NにMyc−Hisタグペプチドが連結されたタンパク質を発現させた。
ヒトGSDMDタンパク質のC末端側部分であり、配列番号3で表されるアミノ酸配列における、第276アミノ酸〜第484アミノ酸配列からなるタンパク質をヒトGSDMD−Cと名付けた。
ヒトGSDMD−CをコードするDNA配列をpcDNAベクターに挿入し、得られた発現ベクターをヒト大腸ガン(colon carcinoma)由来の細胞株(Colo−320)に導入し、GSDMD−CにMyc−Hisタグペプチドが連結されたタンパク質を発現させた。
コントロールとして、GFP(Green Fluorescent Protein)をコードするDNA配列をpcDNAベクターに挿入し、得られた発現ベクターをヒト大腸ガン(colon carcinoma)由来の細胞株(Colo−320)に導入し、GFPにMyc−Hisタグペプチドが連結されたタンパク質を発現させた。
結果を図20に示す。GSDMD−Nを導入されたcolo−320細胞では、膨潤(swelling)・破裂(burst)した細胞が観察された。GSDMD−Cが導入されたcolo−320細胞、及びGFPが導入されたcolo−320細胞では導入の影響は認められなかった。
これらの結果から、ヒトGSDMD―Nタンパク質の導入により、細胞死が誘導されることが明らかとなった。
以下、上記の実施例における、実験方法、及び使用された各種材料の詳細を記載する。
(マウス)
Gsdmd ノックアウト(Gsdmd−/−)マウスは、既報(非特許文献2)に記載のとおり作製し、C57BL/6系統のバックグラウンドに戻し交配したものである。C57BL/6マウスは日本クレアから購入し、使用したすべてのマウスは、6〜8週齢の雄である。全ての動物実験は、順天堂大学静岡病院の実験動物委員会の承認を受けた。
ターゲッティングベクターは、pLoxFNFDTプラスミドにコンストラクトした。pLoxFNFDTプラスミドは、推定プロモーター領域及びExon 1−2、3’末端に1つのloxPサイトを含むpgk−Neoカセットからなる8.9Kbの長さのlong armと、Exon 3−4からなる1.4kbの長さのshort armと、Diphteriatoxin−Aフラグメントカセットと、を含む。ここでは、コンディショナル又はコンベンショナルなGsdmd遺伝子の破壊を目的とし、上記のlong armのExon 1の1.95 kb上流に追加のloxPサイトを導入したものを用いた。ターゲッティングベクターは、I−SceIで直線化し、その後(B6×CBA/J)F1マウス由来のTT2 胚性幹(ES)細胞へとエレクトロポレーションした。相同組み換えのため、G418耐性のESコロニーをPCRにより選抜し、陽性のクローンを8細胞期胚と凝集させて代理の雌に移植した。生殖細胞系列への伝達が確認された雌のキメラマウスは、B6及びCAG−Cre トランスジェニックマウスとかけあわせた。ノックアウトアリルのヘテロ接合体(Gsdmd+/−)が得られ、それらを交雑させてホモ接合体(Gsdmd−/−)を作製した。
(生検組織)
ヒトの大腸癌の生検組織は、順天堂大学静岡病院で治療を受けた患者から得たものである。実験は、順天堂大学静岡病院の倫理委員会の承認を受けた。
(大腸癌の誘発)
大腸癌の誘発は、既報(Neufert, C. et al. An inducible mouse model of colon carcinogenesis for the analysis of sporadic and inflammation-driven tumor progression. Nat Protoc 2, 1998-2004 (2007))の方法に基づき行った。マウスに、腹腔内に体重1kgあたり10mgのアゾキシメタン(AOM)を注入した。次いで、マウスを2.5%でデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)を含む飲用水にて1週間飼育し、その後、通常の水で3週間飼育した。当該DSS処理サイクルを2度行った。大腸組織の採取と、腫瘍の評価は、AOM注入から12週間後に行った。大腸の腫瘍は実態顕微鏡で観察し、評価した。
(急性炎症の誘発)
マウスを、2.5%DSSを含む飲用水にて1週間飼育した後、通常の水に切り替えて、飼育した。通常の水に切り替えてから3日後に、マウスから大腸組織を採取した。
(組織学実験)
大腸組織は、パラフィン包埋の前に、ホスファターゼインヒビター及びパラホルムアルデヒド4%を含む固定液で、4℃で一晩固定した。脱パラフィン処理された切片(5μmm)に対し、ヘマトキシリン・エオシン染色、又は免疫組織化学処理を行った。免疫組織化学処理に際しては、切片は0.01Mのクエン酸バッファー(pH6.0)で105℃、15分間処理した後、室温で2時間放置した。
使用した一次抗体を、以下に示す:
Anti-Cleaved Caspase-3 (Asp175) (1:800, #9664, Cell signaling technology),
anti-Phospho-Stat1 (Ser727) (1:800, #8826, Cell signaling technology),
anti-Phospho-Stat3 (Tyr705) (1:600, #9145, Cell signaling technology),
anti-Phospho-IKK a/b (Ser176/180) (1:150, #2697, Cell signaling technology),
anti-GSDMD (1:50, #3F12-1B2, Abnova),
anti-GSDMD (1:50, orb37999, biorbyt)
これらの抗体の検出は、適切な二次抗体を使用し、VECTASTAIN Elite ABC kit (Vector Laboratories)と、ペルオキシダーゼの基質としてDAB(Sigma)と、を用いて可視化した。
(細胞増殖の定量)
マウスの腹腔内に、2時間前に体重1kgあたり100mgのBrdU(Sigma)注入した。BrdUが取り込まれた細胞を検出するため、脱パラフィン処理した切片を、2N HClに37℃で30分間処理した。その後、切片をPBSで洗浄した後、0.1M Tris−HCl(pH7.5)で2度洗浄した。さらに切片を0.1%トリプシンで37℃3分間処理した後、洗浄した。BrdUが取り込まれた細胞の免疫学的検出は、上記のanti−BrdU抗体(Sigma)を用いて行った。
(イムノブロッティング)
組織を、低温の低浸透圧溶解バッファー(10mM HEPES,pH7.4,1.5mM MgCl2,10mM KCl,0.5mM DTT,0.05% NP−40)にプロテアーゼインヒビター(Complete mini,Roche)及びphosphatase inihibitors(PhosSTOP,Roche)を加えた溶液中で溶解し、4℃において3000rpmで10分間遠心分離した。得られた上清は、細胞質画分として使用した。得られたペレットは、抽出バッファー(5mM HEPES,pH7.4, 1.5mM MgCl,300mM NaCl,0.2mM EDTA,0.5mM DTT,26% Glycerol)に再懸濁してホモジナイズし、氷上で30分間静置した後、4℃、15000rpmで20分間遠心分離し、得られた上清を核画分として用いた。タンパク質の濃度は、Bio−Rad protein assay(Bio Rad)付属の指示書に沿って求めた。各レーンに、等量に調整された各タンパク質のサンプルを加え、SDS−PAGEゲルで分離し、ニトロセルロースに転写し、イムノブロットを行った。
使用した抗体を、以下に示す:
anti-Phospho-Stat1 (Ser727) (1:800),
Stat1(1:1000, #9172, Cell signaling technology),
anti-Phospho-Stat3 (Tyr705) (1:2000),
anti-Phospho-NF-κB p65 (Ser536) (1:1000,#3033, Cell signaling technology),
anti-NF-κB p65 (1:1000,#8242, Cell signaling technology),
anti-Caspase-1 (1:1000, #06-503, Millipore),
anti-b-Actin (1:1000, #8242, Cell signaling technology),
anti-Caspase-1 (1:1000, #06-503, Millipore)
タンパク質のバンドは、ECL prime Western Blotting Detection System (GE Helthcare Japan)を用いてケミルミネッセンスにより可視化した。
(大腸上皮炎症の形態学的基準によるスコアリング)
以下の4つの形態学的特徴に対し、盲検的に、総合スコアを用いた形態学的スコアリングを行った。炎症(スコア0:正常、スコア1:粘膜固有層に限局した炎症細胞、スコア2:粘膜下層にまで及んだ炎症細胞、スコア3:凝集と粘膜下層の拡大が認められる炎症細胞)、形態(スコア0:正常、スコア1:杯状細胞の減少、スコア2:腸陰窩の散在、スコア3:腸陰窩の消失)、潰瘍形成(スコア0:存在せず、スコア1:存在する)、リンパ濾胞(スコア0:存在せず、スコア1:存在する)。各形態学的特徴について、重み付けされたスコアの総合を、フィールドのパーセンテージの合計により算出した(0%:0、0.1〜25%:1、26〜50%:2、51〜75%:3、76〜100%:4)。スコアの範囲は0〜40である。
(大腸上皮炎症の形態学的基準によるスコアリング)
染色強度及びフィールドの割合に対し、盲検的に、総合スコアを用いたスコアリングを行った。強い強度の染色をスコア3とし、中程度の染色をスコア2とし、弱い染色をスコア1とし、陰性のものをスコア0とした。
各染色強度について、重み付けされたスコアの総合を、フィールドのパーセンテージの合計により算出した(0%:0、0.1〜25%:1、26〜50%:2、51〜75%:3、76〜100%:4)。スコアの範囲は0〜16である。
(遺伝子発現解析)
マイクロアレイ解析に、RNAlater(Qiagen)処理された大腸組織から、RNAeasy mini kit(Qiagen)を用いてtotal RNAを精製した。アレイは、Affimetrix Mouse Genome 430 2.0 arrayを用いた。RNAの増幅産物は、製品に添付のプロトコルに沿って合成した。データは、GeneSpring GX(Agilent)で解析した。Real−time PCR解析のため、PrimeScript II(TaKaRa)を用いてDnase処理されたtotal RNA 500ngから、cDNAを合成した。Real−time定量PCRは、TaKaRa Thermal Cycler Dice(TaKaTa)を使用し、SYBR premix Ex Taq II(TaKaRa)を用いて行った。
(大腸からの腸上皮細胞及びリンパ球の単離)
腸上皮細胞(intestinal epithelial cell(IECs))及びリンパ球は、既報(Weigmann, B. et al. Isolation and subsequent analysis of murine lamina propria mononuclear cells from colonic tissue. Nat Protoc 2, 2307-11 (2007))の記載に沿って、単離した。大腸は長軸方向に開き、脂肪組織及びデブリ除去のため、冷やしたPBSで数回洗浄した。大腸を5mmの断片に切断し、37℃で15分間、HBSS(5% FBS、2mM EDTA、1mM DTT、10mM HEPES添加されたもの)中でインキュベートし、上皮細胞を分離した。ボルテックスの後、培地を含んだ組織片を、100μmのセルストレーナーを通過させた。通過した画分を遠心分離し、腸上皮細胞(IECs)を集めた。セルストレーナー上に残った組織片を、PBS(5% FBS、1.5mg/ml Collagenase Type VIII、0.1mg/ml DnaseI添加されたもの)で、さらに37℃、45分間培養した。ボルテックスの後、セルストレーナーで濾過し、パーコール(GE helthcare)を用いて密度勾配遠心により、粘膜固有層単核細胞(LPMCs)を濃縮した。
以上で説明した各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。また、本発明は各実施形態によって限定されることはなく、請求項(クレーム)の範囲によってのみ限定される。

Claims (6)

  1. Gasdermin D(Gsdmd)遺伝子の機能が欠損又は低下したマウスであり、体内に大腸癌特異的発癌物質及び大腸起炎物質を含む、大腸癌モデル動物。
  2. Gsdmd遺伝子又はGsdmd遺伝子の発現調節領域に変異を有する請求項1に記載の大腸癌モデル動物。
  3. 前記大腸癌が、大腸炎関連性大腸癌(Coltis−associated colon cancer)である請求項1又は2に記載の大腸癌モデル動物。
  4. Gsdmd遺伝子の機能が欠損又は低下したマウスに、大腸癌特異的発癌物質及び大腸起炎物質を投与することを含む大腸癌モデル動物の製造方法。
  5. 前記大腸癌が、大腸炎関連性大腸癌(Coltis−associated colon cancer)である請求項に記載の大腸癌モデル動物の製造方法。
  6. 請求項1〜のいずれか一項に記載の大腸癌モデル動物に被験物質を投与し、被験物質が投与された前記大腸癌モデル動物と、被験物質が投与されていない前記大腸癌モデル動物とを比較し、被験物質が投与された前記大腸癌モデル動物のほうが大腸癌に関連する表現型が抑制されていた場合、前記被験物質を大腸癌の治療又は予防に有効な物質であると判断することを含む、スクリーニング方法。
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