以下に本発明による乗物用シートの実施形態を、図1〜図8を参照して説明する。以下の説明では、乗物用シートに着座した乗員を基準にして左右、及び内外を定める。左右一対設けられる構成については、共通の番号を付し、左右を特定するときは構成の名称に左又は右の文字を付す。
図1に示すように、乗物用シートSは、いわゆるフルバケットシートであって、シートクッションS1と、背もたれS3及びヘッドレスト部S4が一体として形成されたシートバックS2とを有する。シートクッションS1は、シートクッションフレームと、シートクッションフレームの上側に被せられたパッド及び表皮とを有し、乗員の臀部及び大腿部を支持する。シートクッションフレームは、前後に延びる左右一対のクッションサイドフレームF2と、両クッションサイドフレームF2の内側の側面を連結する複数のフレームとによって枠形に形成されている。シートバックS2には、乗員の概ね肩に対応する位置に前後に貫通する左右1対の通気口S5が形成されている。
図2に示されるように、シートバックS2は、シートバックフレームF3と、シートバックフレームF3の前側に設けられるパッドユニットC1と、シートバックフレームF3の後部に設けられたバックカバーC2とを有する。図2、及び図3に示されるように、シートバックフレームF3は、対向する一対の左バックサイドフレーム1L及び右バックサイドフレーム1Rと、両バックサイドフレーム1L、1Rを接続するバックアッパフレーム3及びバックロアフレーム5と、バックアッパフレーム3に結合するヘッドレストフレーム7とを有する。
各バックサイドフレーム1L、1Rは金属製の板材によって略上下に延びるように形成され、それぞれ水平方向の断面視で内側に向くコの字状をなす。各バックサイドフレーム1L、1Rは下端部において、リクライニング機構Rを介して各クッションサイドフレームF2の後端部にそれぞれ回動可能に結合している。リクライニング機構RはクッションサイドフレームF2に対する各バックサイドフレーム1L、1Rの傾倒角度を任意の角度に選択的に保持する。左バックサイドフレーム1L、及び右バックサイドフレーム1Rは左右方向に離間して配設され、シートバックS2の幅を形成している。左右のバックサイドフレーム1L、1Rの間には板状の背部支持部材8が設けられている。左右のバックサイドフレーム1L、1Rにはそれらを接続する所定の弾性部材9が掛け渡され、背部支持部材8は左右のバックサイドフレーム1L、1Rに弾性部材9を介して結合している。背部支持部材8は弾性部材9によってバックサイドフレーム1L、1Rに対して前後に変位することができ、弾性力を以て乗員の背部を支持する。本実施形態では背部支持部材8は板状部材を用いて形成されているが、板状部材には限定されず、ランバーサポート機能をもたらす構成(例えば、ばね等)によって形成される公知の構成であってよい。
左右のバックサイドフレーム1L、1Rの下端部後壁には、図3に示されるように、バックサイドフレーム1L、1RとバックカバーC2とを連結するための締結部10が設けられている。締結部10は、折り曲げられた金属板によって形成され、左右のバックサイドフレーム1L、1Rに結合している。左右の締結部10は左右対称をなすように形成され、その後壁に螺子孔が形成されている。
バックアッパフレーム3は正面視で下方に向くコの字状の金属製のパイプ状部材によって形成されている。バックアッパフレーム3の両端部はそれぞれ対応するバックサイドフレーム1L、1Rの内側面の上部に一部が重なり溶接等によって結合され、バックアッパフレーム3は両バックサイドフレーム1L、1Rの上端部を接続している。バックロアフレーム5もまた金属製のパイプ状部材によって形成され、両バックサイドフレーム1L、1Rの下部間に左右方向に延在し、バックロアフレーム5の左右両端はバックサイドフレーム1L,1Rの内側面に溶接等により結合されている。更に、バックアッパフレーム3の上部の左右両端部にはそれぞれ、シートバックS2の乗員の肩部に当接する部分を構成するためのサブフレーム6が設けられている。
シートバックフレームF3には、左右のバックサイドフレーム1L、1Rの内側であり背部支持部材8の左右外方に設けられ、バックアッパフレーム3と左右のバックサイドフレーム1L、1Rとをそれぞれ接続する棒状部材32LU、32RUが含まれている。棒状部材32LU、32RUは金属製であり円環状の断面を有するパイプ部材によって形成され、左右に離れて配置されている。また、棒状部材32LU、32RUの両端は、バックアッパフレーム3及びバックサイドフレーム1L、1Rにそれぞれ溶接されている。棒状部材32LU、32RUはそれぞれ所定の高さの位置に上下方向に直線状に延びるように形成された部分を含んでいる。シートバックフレームF3には、更に、棒状部材32LD、32RDの下方にはそれぞれ、環状をなし、その両端が左バックサイドフレーム1L、1Rに結合された金属製の棒状部材32LD、32RDが含まれている。これらの棒状部材32LD、32RDもまた、パイプ部材によって形成され、左右に離れて配置されている。棒状部材32LD、32RDは、それぞれ所定の高さの位置に上下方向に直線状に延びるように形成された部分を含んでいる。棒状部材32(32LU、32RU、32LD、32RD)は全て、締結部10より上方の所定の高さの位置に配置されている。
パッドユニットC1は、緩衝材であって、シートバックフレームF3の前側に設けられるパッド部材36と、パッド部材36を被覆する表皮材37とを有する。パッド部材36はシートバックフレームF3に後方から支持され、表皮材37はパッド部材36の概ね前側を被覆している。パッド部材36の通気口S5に対応する位置に前後に貫通する貫通孔39が形成されている。表皮材37にも、パッド部材36と同様に通気口S5に対応する位置に開口部が形成されている。表皮材の開口部、及びパッド部材36の貫通孔39には、概ね後方に筒状に延びる樹脂製のガーニッシュ40が嵌めこまれている。ガーニッシュ40の後端外周には内周方向へ突出する図示しない複数の係止爪が形成されている。
ヘッドレストフレーム7はバックアッパフレーム3の上部背面に結合する第1ヘッドレストフレーム50と、第1ヘッドレストフレーム50の上部前側に結合する第2ヘッドレストフレーム52及び第3ヘッドレストフレーム54とを有する。第1ヘッドレストフレーム50は正面視で下方に向く逆U字状の金属製のパイプ部材によって形成され、その下端部においてバックアッパフレーム3の上部前面に結合している。第2ヘッドレストフレーム52、及び、第3ヘッドレストフレームも第1ヘッドレストフレーム50と同様にそれぞれ金属製のパイプ部材によって形成され、正面視で逆U字状をなし、側面視で第1ヘッドレストフレーム50から前方へ延びるように形成されている。第1ヘッドレストフレーム50、第2ヘッドレストフレーム52、及び第3ヘッドレストフレーム54によって、ヘッドレスト部S4の骨格が形成されている。
図2に示されるように、バックカバーC2はシートバックS2の背面に沿って配設される樹脂製の板状部材であり、左右対称に形成されている。バックカバーC2は上下に延びる板状の板部60と、板部60の上縁部から前方に向けて屈曲し、上方且つ前方に延びる板状の頭部61とを含む。バックカバーC2はシートバックS2の背面に結合するとき、板部60が乗物用シートSの背もたれ部分を覆い、頭部61が乗物用シートSのヘッドレスト部S4を覆うように配置される。板部60の上部には、通気口S5と対応する位置に左右1対の貫通孔62が形成され、その縁部から連続し前方に筒状の接続部63が延びている。接続部63の前端には、その前端縁に沿って並ぶように配置された貫通孔である係合孔が複数形成されている。係合孔は、ガーニッシュ40の係止爪と係合する位置に配置されている。頭部61の上端には、第1ヘッドレストフレーム50の上端に引っ掛けられる引掛部64が形成されている。本実施形態では、引掛部64は頭部61の上端から下方に突出した板状に形成されている。
バックカバーC2は、その上部右端、上部左端、及び上下方向の略中央部の右端、及び左端に、それぞれ係止部65RU、65LU、65RD、及び65LDを備えている。図2、及び図3に示されるように、係止部65RU、65LU、65RD、及び65LDは、互いに上下、及び左右に対称に形成されている。即ち、上部右端の係止部65RUは、上部左端の係止部65LUに対して左右方向に鏡映対称な形状をなし、略中央部の右端の係止部65RDは、略中央部の左端の係止部65LDに対して左右方向に鏡映対称な形状をなしている。また、上部右端の係止部65RU、及び上部左端の係止部65LUは略中央部右端の係止部65RD、及び略中央部左端の係止部65LDに対して、それぞれ上下方向に鏡映対称に形成されている。以下では、必要に応じて、上部左端の係止部65LUと略中央部の左端の係止部65LDとを左側係止部65Lと記載し、上部右端の係止部65RUと略中央部の右端の係止部65RDとを右側係止部65Rと記載する。
係止部65(65RU、65LU、65RD、及び65LD)は、それぞれ前方に向けて板部60から突出する係止爪67と、係止爪67に対してバックカバーC2の左右外方に位置し、間隙を介して対向する衝立69と、係止爪67と衝立69との間において板部60から前方に向けて突出する突壁71とを有している。以下では、図4、図5(A)、及び図6を参照して、上部左端に位置する係止部65LUについて詳細に説明する。
図4に示されるように、係止爪67は、板部60から前方に突出する第1突片73と、第1突片73の突端から左側(左右外方)に突出した爪部75を有している。第1突片73は、左右方向に主面を有する略四角柱状の概形をなす。爪部75は後側において板部60に対向し、板部60と略平行な後方を向く逆止面77と、前側において衝立69の側に向けて板部60の側に傾斜した第1斜面79とを有している。第1斜面79の板部60の側には、上下に線状に延びる第1縁部81が形成され、第1斜面79と逆止面77とは第1縁部81を介して接続されている。
図4、及び図6に示されるように、係止爪67の右側面(衝立69から離れた側の面)の後端(基端)には、左側(衝立69に近い側、左右外方)に向けて凹んだ肉抜き部83が形成されている。本実施形態では、係止爪67には2つの肉抜き部83が形成され、係止爪67の右壁は3つのリブ状をなしている。
図5(A)に示されるように、係止爪67の左側面(衝立69に近い側の面)の後端には、右方に凹んだ凹部85が形成されている。そのため、第1突片73の後端側の断面積は、第1突片73の前後方向の中央部分の断面積よりも小さい。
衝立69は、係止爪67の左側において板部60から前方に突出する第2突片87と、第2突片87の前端において、右側に向けて後方に傾斜した第2斜面89とを有している。第2斜面89の右端の第2縁部91は第1縁部81よりも後方に位置し、第1縁部81と第2縁部91との距離は、棒状部材32の延在方向に垂直な方向の幅である直径よりも小さく設定されている。よって、第1縁部81と第2斜面89との距離は棒状部材32の直径よりも小さくなっている。
図4及び図6に示されるように、衝立69の左側面(係止爪67から離れた側の面)にも、右方に向けて凹んだ肉抜き部93が形成されている。本実施形態では、衝立69には2つの肉抜き部93が形成され、衝立69の左側面もまた、3つのリブ状をなしている。
突壁71は、図6に示されるように、第1突片73及び第2突片87の間において板部60から左右に主面を有する板状に前方に突出する第1突壁71Aと、第1突壁71Aに直交し、板部60から板状に前方に突出する第2突壁71Bとを有している。突壁71は、第1突壁71A、及び第2突壁71Bによって、横断面が略+字形をなしている。第1突壁71Aは、板部60において、第1突片73及び衝立69の間から、それらの上端よりも上方にまで延びるリブ状をなしている。第2突壁71Bは、板部60において、第1突壁71Aの上下方向概ね中央の位置で交差し、左右に延びるリブ状をなしている。本実施形態では、第2突壁71Bは第2突片87に接続し、第2突壁71Bの上面と第2突片87の上面とは連続する態様をなしている。図5(B)に示されるように、突壁71の前端は、逆止面77から棒状部材32の直径以上の距離を介して後方に位置している。
図2に示されるように、4つの係止部65(65RU、65LU、65RD、及び65LD)は、それぞれ上下、及び左右に対称をなしている。左側係止部65Lでは、衝立69が係止爪67の左側に形成され、右側係止部65Rでは、衝立69が係止爪67の右側に形成され、互いに左右方向に鏡映対称をなしている。
バックカバーC2の上部右端、及び上部左端に設けられた係止部65RU、及び65LUでは、突壁71はそれぞれ、係止爪67及び衝立69よりも上方にまで延びている。バックカバーC2の下部右端、及び下部左端に設けられた係止部65RD、及び65LDでは、突壁71はそれぞれ、係止爪67及び衝立69よりも下方にまで延びている。
板部60の略中央であり、背部支持部材8の後側の位置に、左右に長方形状に延びるクッション部材95が設けられている。図8に示されるように、クッション部材95の四隅には所定の大きさのクッション貫通穴97が形成されている。板部60には、そのクッション貫通穴97に対応する位置に、クッション部材95を掛止するためのフック99が4つ設けられている。フック99は側面視で逆L字状をなし、板部60が板部60に対して略垂直に突出する基部100と、基部100の突端から板部60に沿って突出する突出部101を有する。フック99はクッション貫通穴97を通過し、突出部101がクッション部材95の板部60から離れる方向の移動を規制している。
バックカバーC2の板部60の下端であって、係止部65の下方であり、締結部10に形成された螺子孔に対応する位置に、バックカバーC2を前後に貫通する貫通孔105が設けられている。
次に、乗物用シートSのシートバックS2の組立方法について説明する。シートバックフレームF3に引掛部64を引っ掛けることによって、バックカバーC2の上端をシートバックフレームF3の上端に結合させる。更に、シートバックフレームF3の背面に沿い、且つ、4つの係止部65がそれぞれ棒状部材32の後側に位置するように、バックカバーC2を配置する。このとき、図7(A)に示されるように、棒状部材32は係止爪67と衝立69との間であり、且つ、第1斜面79及び第2斜面89の前側に位置している。このとき、第1縁部81と第2縁部91との距離が棒状部材32の直径よりも狭いため、荷重が加えられる前には棒状部材32が第1斜面79及び第2斜面89に当接している。
その後、作業者は、バックカバーC2をシートバックフレームF3に押し付け、バックカバーC2に前方に向かう荷重を加える。図7の(B)には、バックカバーC2に荷重が加えられたときの棒状部材32と上部左端の係止部65LUの断面図が示されている。バックカバーC2に加えられた荷重によって、第1斜面79から棒状部材32に荷重が加わり、第1斜面79は棒状部材32から反力を受ける。そのため、係止爪67は衝立69から離れる方向に力が加わり、係止爪67は衝立69から離れる方向に撓むように弾性変形する。
係止爪67の弾性変形によって、第1縁部81と第2斜面89とが離れ、第1縁部81と第2斜面89との間に棒状部材32の幅よりも間隙が生じる。よって、棒状部材32は第1縁部81と第2斜面89との間を通過し、棒状部材32は逆止面77と第2斜面89との間に挟み込まれる。更に、棒状部材32は第2斜面89に沿ってバックカバーC2の側へ進むと共に、第2斜面89から離れ、第1突片73及び衝立69の間に入り込む。棒状部材32が第2斜面89から離れたときに、棒状部材32から係止爪67に加わる荷重がなくなるため、係止爪67は撓み変形した状態から弾性復元し、元の状態に戻る。そのため、図5(A)に示されるように、第1縁部81と第2斜面89との距離が棒状部材32の直径よりも小さくなる。そのため、棒状部材32LUは係止部65LUから外れなくなり、係止部65LUは棒状部材32LUに掛止される。
図5(A)には、このときの板部60の上部左端に設けられた係止部65LUの断面図が示されている。第1突片73は板部60から前方に突出して背面視で棒状部材32LUの右側を通過し、爪部75は第1突片73の突端から左方に突出している。逆止面77は棒状部材32の前面に当接し、その前方への移動を規制している。また、衝立69は板部60から前方に突出して棒状部材32LUの左側を通過し、係止爪67の左側に間隙を介して対向している。衝立69は、棒状部材32LUの左側への移動を規制している。また、突壁71は棒状部材32LUの後方に位置し、棒状部材32LUの後方への移動を制限している。
図5(B)には、このときの板部60の上部右端に設けられた係止部65RUの断面図が示されている。上部右端に設けられた係止部65RUでは、第1突片73は板部60から前方に突出して背面視で棒状部材32RUの左側を通過し、爪部75は第1突片73の突端から右方に突出している。逆止面77は棒状部材32RUの前面に当接し、その前方への移動を規制している。また、衝立69は板部60から前方に突出して棒状部材32RUの右側を通過し、係止爪67の右側に間隙を介して対向している。すなわち、上部右端に設けられた係止部65RUは、上部左端に設けられた係止部65LUに対して、左右方向に鏡映対称をなすように形成されている。また、衝立69は、棒状部材32RUの右側への移動を規制している。また、突壁71は棒状部材32RUの後方に位置し、棒状部材32RUの後方への移動を制限している。図5(A)及び(B)には、左右の棒状部材32LU、32RUは共に対応する係止爪67に当接している場合が示されている。左側の棒状部材32LUの左側面、及び、右側の棒状部材32RUの右側面の距離は左右の衝立69間の距離と実質的に同一であり、衝立69が対応する棒状部材32LU、32RUに近接している。そのため、バックカバーの移動がより確実に制限される。
更に、バックカバーC2の貫通孔62に螺子を通し、その螺子を締結部10に設けられた螺子孔に締結することにより、バックカバーC2の下部がシートバックフレームF3に結合する。
次にパッドユニットC1をシートバックフレームF3の前方の適正な位置に配置し、ガーニッシュ40を接続部63に挿入し、ガーニッシュ40の係止爪67をバックカバーC2の係合孔に嵌合させる。これによって、パッドユニットC1がシートバックフレームF3に結合する。更にパッドユニットC1の左右縁をシートバックフレームF3の左右外側に配置し、パッドユニットC1の縁部をバックカバーC2に嵌め込むことによって、シートバックS2が完成する。
次に、乗物用シートSの効果について説明する。組付時には、図7(B)に示されるように、係止爪67は棒状部材32から荷重によって左右内方(右側)に撓む。組付には、衝立69を撓ませる必要がないため、衝立69の剛性を高く設定することができる。図5(A)及び(B)に示されるように、組立後には、右側係止部65R(65RU、65RD)の衝立69、及び、左側係止部65L(65LU、65LD)の衝立69がともに、棒状部材32RU、32LUに対してそれぞれ左右外方に配置されている。そのため、これらの衝立69によってバックカバーC2のシートバックフレームF3に対する左右方向の移動が規制される。したがって、左右方向の荷重を受けた場合であっても、バックカバーC2がシートバックフレームF3に対して左右にぐらつき難くなる。
図7(B)に示されるように、第2斜面89によって棒状部材32が移動することによって、棒状部材32は逆止面77に当接する位置に案内されるため、バックカバーC2が組付やすい。また、第2斜面89が係止爪67の側に向かって後方に傾斜した斜面として形成されているため、棒状部材32が第1縁部81と第2斜面89との隙間を通過するときに、係止爪67に求められる撓みが小さくなる。したがって、係止爪67の剛性を高めることができ、バックカバーC2がよりぐらつき難くなる。
係止爪67と衝立69との間には前方に突出する突壁71が形成されている。突壁71が棒状部材32の後方への移動を規制しているため、バックカバーC2のシートバックフレームF3に対する前方の移動が規制され、バックカバーC2がシートバックフレームF3に対してぐらつき難くなる。また、図6に示されるように、突壁71の横断面は略+字形をなしているため、突壁71の前方からの荷重に対する剛性が高められる。そのため、突壁71はより確実にバックカバーC2のシートバックフレームF3に対する前方の移動を規制し、バックカバーC2の前方へのぐらつきが抑えられる。
バックカバーC2は、上端において引掛部64を介してシートバックフレームF3に結合し、下端において締結部10を介してシートバックフレームF3に結合している。係止部65RU、LU、RD及びLDは、引掛部64と締結部10との間に配置されている。一方、係止爪67と衝立69とが棒状部材32の左右方向の移動のみを規制しているため、棒状部材32は上下に変位することができる。したがって、後突時等に、乗員の上半身に加わる荷重によって、シートバックフレームF3が後方へ反るように変形した場合であっても、バックカバーC2が変形しにくい。
棒状部材32はシートバックフレームF3に対して左右に対をなすと共に、左右に離れて配置されている。よって、バックカバーC2とシートバックフレームとは、左右に離れた場所において結合するため、バックカバーC2が左右方向への荷重に対してぐらつき難くなる。
第1突片73の基端には凹部85が形成されているため、第1突片73の基端の断面積は他の部分の断面積よりも小さい。そのため、第1突片73の基端の剛性が小さく、係止爪67が弾性変形しやすい。また、係止爪67の衝立69から離れた側の側面には肉抜き部83が形成されているため、係止爪67の可撓性が増し、バックカバーC2の組付が容易になる。
バックカバーC2には、乗員の背部を支持する背部支持部材8の後方にクッション部材95が設けられ、そのクッション部材95を係止するためのフック99が本体の前面に突設されている。クッション部材95によって、背部支持部材8が後方に移動したときに、バックカバーC2に加わる荷重が低減され、背部支持部材8からの衝突から保護されるため、バックカバーC2が変形しにくくなる。
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。本実施形態では、係止部65は4つ設けられていたが、互いに左右方向に鏡映対称をなす1組が形成されていればよい。2つの係止部65が左右方向に鏡映対称に形成されていることで、2つの係止部65の衝立69が、棒状部材32に対して左右の異なる方向から当接するため、バックカバーC2のシートバックフレームF3に対する左右方向へのぐらつきが低減される。
本実施形態では、衝立69にも肉抜き部93が形成されていたが、必ずしも肉抜き部93が形成されていなくてもよい。また、係止爪67の後端に設けられた凹部85は必ずしも左右内方に凹むように形成されていなくてもよく、その後端の可撓性を高めるいかなる態様であってもよい。例えば、係止爪67の後端に左右外方に凹む凹部が形成されていてもよい。また、本実施形態では、第1突片73は左右方向に主面を有する略四角柱状に形成されていたが、左右方向に主面を有する板状に形成されていてもよい。
本実施形態では、棒状部材32は断面が円環状のパイプ状に形成されていたが、他の形状を有するパイプ、ワイヤ等であってもよい。このとき、第1縁部81と第2縁部91との距離は、棒状部材32の延在方向に垂直な方向の幅の最大値よりも狭くなるように設定するとよい。