JP6744195B2 - 紡糸工程の検査方法 - Google Patents

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Description

本発明は、紡糸工程(紡糸設備・紡糸条件)の検査方法に関する。
紡糸は、高分子などの紡糸素材を加熱溶融しあるいは溶媒に溶解して流動化させた粘調体を、紡糸ヘッドに連続的に供給し、紡糸口から吐出して糸を製造する技術である。紡糸素材の粘調体の形態により、溶融紡糸、溶液紡糸がある。また、粘調体を紡糸口から吐出後に糸の形に固定する形態により、湿式紡糸、乾式紡糸、メルトブローン、電界紡糸(エレクトロスピニング)などの公知の紡糸法がある。
メルトブローン法や電界紡糸法などでは、直径100μm程度の微細な紡糸口を使用して、繊維径10μm以下の極細繊維を製造する場合がある。例えば不織布の構成繊維がこのような極細繊維であると、柔軟性、液体保持性、隠蔽性、払拭性、分離性、絶縁性などの諸特性が向上するため、極細繊維からなる不織布が要望されている。
極細繊維を製造するための紡糸技術には、より高精度に加工された紡糸ノズルや、紡糸空間の温度、風速、電界などについてより高度な管理が要求される。特に、紡糸口が微細な紡糸ノズルは詰まりやすく、その管理は重要である。一旦紡糸口が詰まると、紡糸が中断されるだけでなく、紡糸設備から紡糸ノズルを取り外して洗浄し、詰まりの原因となった樹脂や異物を除去しなければならず、紡糸工程の正常化に多大な時間と労力を費やすことになる。また、紡糸ノズルは、一般に高額部品であることから予備品を大量にストックしておくことが難しく、さらに、注文してから納品されるまでに比較的長期間を要することから、紡糸ノズルの不具合が頻発すると、ストックしておいた予備品が枯渇し、生産ラインの稼働停止を余儀なくされるおそれがある。
このような事態を避けるためには、紡糸口の詰まりなどの不都合が実際に発生する前に、即ち生産ラインで不良品が発生せずに良品が取得できている正常な段階で、紡糸ノズルに生じる僅かな異常の有無を検査するなどして、紡糸工程、具体的には紡糸設備・紡糸条件などの正常性を判断し、その僅かな異常が生産ラインの稼働停止のような重大な問題に発展する前に、予備の紡糸ノズルの手配を開始できるような生産体制の構築が望まれる。
しかしながら、紡糸ヘッドには通常、微細な紡糸口が数百から数千設けられており、各紡糸口を1個1個光学顕微鏡などで検査することは、多大な手間と時間を要するという問題がある。しかも、紡糸ヘッドにおける紡糸口の形成部位は、厚み数ミリ程度の鋼板で作製されている場合が多いところ、この紡糸口が形成された鋼板は、紡糸時に紡糸原料たる粘調体の背圧によって吐出面側に膨れて湾曲しているのが常態であり、紡糸口を観察すること自体がそもそも容易ではない。従って、紡糸工程の正常性を判断するに際し、紡糸口を直接観察する方法は現実的ではないといえる。
紡糸工程の正常性を判断する別の方法として、原料物性、処方、投入速度といった原料の管理や、紡糸に用いる熱、風量などのエネルギーの管理を行った上で、実際に紡糸された繊維の繊維径を測定し、あるいは紡糸された繊維を不織布のようなシート状にする場合にはそのシートの地合いを測定し、それらの測定結果から紡糸口の異常などを検知する方法が知られている。しかし、このような、製造装置ではなく製造結果物を観察する方法では、繊維が折り重なった状態での観察となるため、特に、多数の紡糸口が密に存在する場合に、各紡糸口の異常を見逃すおそれがある。例えば一般的なメルトブローン法の場合、紡糸口のピッチは0.2〜3mm程度であり、繊維は交絡しながらシート化されるため、シート上に異常を見つけたとしても、紡糸口を含めた具体的な故障箇所の特定が困難で、その後の対策に結びつけることが難しいのが実情である。また、紡糸設備は運転を停止すると原料の詰まりなどが生じやすくなることから、一般的に1ヶ月以上の長期間にわたって連続的に運転されるため、紡糸設備に特段の異常が発生していない段階で、紡糸設備を一時停止して紡糸ノズルの観察を行うことは現実的ではなく、また、仮にそうして紡糸ノズルの観察を行ったとしても、明確な異常が認められない限り、その観察結果を紡糸工程の正常性の判断材料とすることも難しいのが実情である。
研究開発の分野では、紡糸設備における紡糸挙動の解析方法として、紡糸ノズルの近傍を光学測定する方法が用いられている。例えば非特許文献1及び2には、メルトブローン法において、ダイの紡糸口からの吐出物が紡糸空間で繊維化される様子をハイスピードカメラで撮影し、その撮像データから当該メルトブローン法で得られる繊維の繊維径を測定する方法が開示されている。非特許文献1の図2や非特許文献2の図4などによれば、メルトブローン法においては、紡糸素材(ポリプロピレン)の粘調体が紡糸口から吐出されると、その吐出直後から該粘調体の細化が生じ、紡糸口からの距離が4cm以上になると、細化がほぼ完了して繊維径が安定する。
Vishal Bansal and Robert L. Shambaugh,「On-line Determination of Diameter and Temperature during Melt Blowing of Polypropylene」,Ind. Eng. Chem. Res.,1998,37,p.1799-1806 Randall R. Bresee and Wen-Chien Ko,「Fiber Formation During Melt Blowing」,Journal of Engineered Fibers and Fabrics INJ Summer 2003,p.21-28
非特許文献1及び2に開示されている繊維径の測定方法、即ち、紡糸設備での実際の紡糸の様子を光学機器で撮影する方法は、紡糸ノズルの近傍での観察であることから、紡糸ノズルの紡糸口と紡糸された繊維とをある程度対応させることができるため、紡糸ノズルの異常を検知できる可能性があり、紡糸工程の正常性を判断する方法として有望と考えられる。しかしながら、一般的な光学機器による光学測定の分解能は、例えば作動距離(WD)を5mm程度まで縮めれば1μm程度まで確保できる可能性があるが、実際的には紡糸の高熱や繊維付着の観点からWDは100mm程度までしか狭めることができず、その場合には10μm程度の分解能しか確保できない。このような観察系を用いて繊維の細径化の正常性を判断するためには、測定対象とする繊維の平均繊維径は、分解能に対し5倍以上の大きさが必要と考えられるため、非特許文献1及び2に開示されている方法は、繊維径が50μm未満となるような極細繊維の製造には適用できない。
従って本発明は、紡糸口の詰まりなどの不都合が実際に発生する前に、紡糸設備の運転を停止することなく、紡糸工程の正常性を検査することができ、極細繊維の紡糸にも適用可能な紡糸工程の検査方法を提供することに関する。
本発明は、紡糸素材の粘調体を吐出する紡糸口と、該紡糸口からの吐出物が繊維化される紡糸空間と、該紡糸空間で繊維化された該吐出物を捕集する捕集器とを具備する紡糸設備による紡糸工程の正常性を検査する、紡糸工程の検査方法であって、前記紡糸空間に前記紡糸口からの吐出物を採取する採取手段を挿入して、該採取手段に該吐出物を付着させ、その付着物の物性を測定する、紡糸工程の検査方法を提供するものである。
本発明によれば、紡糸口の詰まりなどの不都合が実際に発生する前に、紡糸設備の運転を停止することなく、紡糸工程の正常性を検査することができ、例えば繊維径が10μm以下の極細繊維の紡糸にも適用可能な紡糸工程の検査方法が提供される。
図1は、本発明の紡糸工程の検査方法の一実施態様を示す図であり、メルトブローン法による不織布の製造に該検査方法を適用した場合の模式的な斜視図である。 図2は、本発明の紡糸工程の検査方法の他の一実施態様を示す図であり、メルトブローン法による不織布の製造に該検査方法を適用した場合の模式的な正面又は背面図である。 図3は、本発明の紡糸工程の検査方法のさらに他の一実施態様を示す図であり、メルトブローン法による不織布の製造に該検査方法を適用した場合の模式的な正面又は背面図である。
以下、本発明の紡糸工程の検査方法をその好ましい実施態様に基づき図面を参照して説明する。図1には、本発明の紡糸工程の検査方法の一実施態様として、メルトブローン法による不織布の製造に該検査方法を適用した場合が示されている。図1に示す紡糸設備10は、紡糸素材の粘調体を吐出する紡糸口(図示せず)を有する紡糸ヘッド11と、該紡糸口からの吐出物Fが繊維化される紡糸空間12と、該紡糸空間12で繊維化された該吐出物F即ち繊維Fを捕集する捕集器13とを具備する。本実施態様においては、捕集器13は搬送コンベアであり、紡糸ヘッド11の下方に配され、紡糸ヘッド11から吐出され繊維化された吐出物Fを、その上部の捕集面13aで捕集・集積して不織布S(メルトブローン不織布)を形成し、符号MDで示す方向に搬送する。
紡糸設備10の構成は、公知のメルトブローン方式の紡糸設備のそれと同じである。紡糸ヘッド11の内部空間は、紡糸素材の粘調体の貯留部となっている。紡糸ヘッド11が有する図示しない紡糸口は、紡糸ヘッド11の下端部11bに複数形成され、その複数の紡糸口は、不織布Sの搬送方向MDと直交する方向CDに間欠配置されている。また、紡糸ヘッド11の下端部11bにおける図示しない紡糸口の近傍に、高速気流の吹き出し口(図示せず)を設け、該紡糸口からの吐出物Fに対し、該吹き出し口から高温の空気を高速度で吹き付けて、該吐出物Fの細化を促進するようにしても良く、そうすることで、繊維径10μm以下の極細繊維の製造が一層容易になる。
本発明で用いる「紡糸素材の粘調体」は、具体的には、液状の紡糸素材又は紡糸素材と溶媒との溶液である。紡糸素材としては、紡糸に通常用いられるものを特に制限なく用いることができ、例えば熱可塑性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン−プロピレンコポリマー等のポリオレフィン系熱可塑性樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系熱可塑性樹脂、ナイロン等のポリアミド系熱可塑性樹脂等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
紡糸ヘッド11の紡糸口から吐出される際の粘調体の温度即ち紡糸温度は特に限定されず、使用する紡糸素材の種類、メルトフローレート、紡糸ヘッド11の具体的な構成等を考慮して適宜設定すれば良い。紡糸温度が低すぎると、紡糸口からの吐出物Fの流動性が不足し、紡糸空間12において粘調体Fが十分に細化されず、得られる不織布Sの風合いが硬いものとなるおそれがある。逆に紡糸温度が高すぎると、紡糸素材の分解が進みやすく、安定して紡糸し難くなるおそれがある。例えば、繊維素材としてポリプロピレン樹脂を用いてメルトブローン法により不織布を製造する場合の紡糸温度は、好ましくは160℃以上、さらに好ましくは210℃以上、そして、好ましくは240℃以下、さらに好ましくは270℃以下である。
また、紡糸ヘッド11の紡糸口から繊維の捕集面までのいわゆる捕集距離、より具体的には、紡糸ヘッド11の下端部11bから捕集器13の上面までの距離、即ち紡糸空間12の高さも特に限定されず、粘調体の吐出量、紡糸温度、得ようとする不織布Sの密度等を考慮して適宜設定すれば良い。例えば、繊維素材としてポリプロピレン樹脂を用いてメルトブローン法により不織布を製造する場合の捕集距離は、好ましくは100mm以上、さらに好ましくは200mm以上、そして、好ましくは700mm以下、さらに好ましくは300mm以下である。
以上のような構成の紡糸設備10による紡糸工程(紡糸設備・紡糸条件)の正常性を検査する方法として、本実施態様では図1に示すように、紡糸空間12に該紡糸口からの吐出物F(繊維)を採取する採取手段20を挿入して、採取手段20に吐出物Fを付着させ、その付着物(吐出物F)の物性を測定する方法を採用する。即ち、本実施態様の検査方法は、紡糸ヘッド11の紡糸口から吐出された吐出物Fが捕集器13の捕集面13aに到達する前に、吐出物Fをサンプリングしてその物性を測定するものである。
採取手段20の紡糸空間12への挿入は通常、紡糸設備10の運転中に実施する。具体的には例えば、紡糸ヘッド11の紡糸口から紡糸空間12に向けて吐出物Fが吐出されている状態下で、該紡糸口の仮想延長線を採取手段20が瞬間的に横切るように、採取手段20を紡糸空間12に挿入すれば良い。また、採取手段20の紡糸空間12への挿入は、手動でも自動でも良い。例えば本実施態様のように、捕集器13の捕集面13aが、紡糸ヘッド11の紡糸口の仮想延長線を横切るように移動するよう構成されている場合は、採取手段20を、その移動可能な捕集面13aに支持部材を介して固定し、該捕集面13aの搬送方向MDへの移動に伴って、該採取手段20が紡糸ヘッド11の紡糸口の仮想延長線を自動的に横切るようにしても良い。
本実施態様の検査方法によれば、紡糸空間12に挿入された採取手段20に付着した微量の吐出物F、例えば繊維状の1本の吐出物Fが観察・測定対象となるため、繊維が多数集積した状態の不織布Sを観察する場合に比して、紡糸口と該紡糸口から吐出された吐出物F(繊維)との紐づけを容易に行うことができる。つまり、紡糸空間12に挿入された採取手段20には、紡糸ヘッド11が有する複数の紡糸口から吐出された複数の繊維状の吐出物Fが、それら複数の紡糸口と1対1に近い条件で対応するように付着するため、その付着物(吐出物F)がその紡糸口から吐出されたものかが容易に判断できる。従って、採取手段20の各付着物の物性を測定することで、個々の付着物に対応する紡糸口の状態などを推測することができる。
測定対象たる採取手段20の付着物の物性は特に限定されず、紡糸設備、紡糸条件の正常性を測る上で有効と考えられる物性を適宜選択すれば良い。測定対象たる採取手段20の付着物(吐出物F)の物性の一例として、繊維径が挙げられる。例えば、紡糸ヘッド11が有する複数の紡糸口のうちの一部に詰まり、あるいは紡糸口の詰まりまでには至らないもののそれに近い異常な現象が発生している場合には、その異常な紡糸口に対応する付着物の繊維径は、詰まりの無い正常な紡糸口に対応する付着物の繊維径に比して短いため、異常な紡糸口を速やかに特定することができる。採取手段20の付着物の繊維径は、走査型電子顕微鏡など、公知の繊維径の測定方法によって測定できる。
前述した通り、非特許文献1及び2に開示されているような、紡糸設備での実際の紡糸の様子をカメラの如き光学機器で撮影し、その撮像データから紡糸口からの吐出物たる繊維の繊維径を測定する方法では、該光学機器の分解能の関係上、平均繊維径が50μm未満となるような極細繊維の繊維径を測定することは困難である。これに対し、本実施態様の検査方法によれば、紡糸口からの吐出物たる繊維を、捕集器13に捕集される前に、採取手段20でサンプリングしてその繊維径を測定するため、公知の繊維径測定手段で測定可能な範囲であれば、平均繊維径10μm以下の微細な極細繊維であってもその繊維径を測定することができる。つまり、本発明の検査方法には、採取手段20の付着物(吐出物F)が平均繊維径50μm以下の繊維である態様が含まれ、さらには平均繊維径10μm以下の繊維が含まれる。
紡糸空間12における採取手段20の挿入位置は特に制限されないが、紡糸ヘッド11の紡糸口(紡糸ヘッド11の下端部11b)から10mm以上離間し且つ該紡糸口から90mm以内の領域に、採取手段20を挿入することが好ましい。非特許文献1によれば、メルトブローン法における紡糸口からの吐出物は、紡糸口から10mm程度離間した位置で急峻に細化する、即ち繊維化される。この非特許文献1の示唆に基づけば、メルトブローン法において、紡糸口からの離間距離が10mmに満たない位置に採取手段20を挿入して該紡糸口からの吐出物を採取した場合、その採取した吐出物(採取手段20の付着物)は、繊維の形態をなしておらず繊維径が安定していないため、繊維径などの繊維に関する物性を測定することが困難になることが予想される。また、非特許文献2によれば、メルトブローン法における紡糸口からの吐出物(繊維)は、紡糸口から90mm程度までは直進性を維持している、即ち紡糸口の仮想延長線に沿って飛翔するが、紡糸口からの離間距離が90mmを超えると直進性を失い、該仮想延長線から大きく外れて飛翔する傾向がある。この非特許文献2の示唆に基づけば、メルトブローン法において、紡糸口からの離間距離が90mmを超える位置に採取手段20を挿入して該紡糸口からの吐出物(繊維)を採取した場合、その採取手段20の挿入位置では該吐出物の直進性が失われているため、採取手段20における該吐出物の付着位置と紡糸口との紐づけが困難となり、延いては紡糸口の状態などを推測することが困難となることが予想される。以上の観点から、紡糸空間12における採取手段20の挿入位置は、紡糸ヘッド11の紡糸口から10mm以上離間し且つ該紡糸口から90mm以内の領域が好ましい。
また、測定対象たる採取手段20の付着物(吐出物F)の物性の他の一例として、該付着物の温度が挙げられる。採取手段20の付着物の温度は、前記の紡糸温度と密接に関連するものであり、紡糸原料や紡糸条件の管理が適切に行われているかの判断材料となり得る。また、採取手段20の付着物の温度を測定することで、紡糸空間12における吐出物Fの固化ポイントを特定することが可能となるため、仮に、採取手段20に付着した複数の付着物それぞれの繊維径が同じであった、即ち、紡糸ヘッド11の複数の紡糸口に特段の異常が認められなかったとしても、採取手段20の付着物の温度は、紡糸挙動の解析に有用な情報となり得る。
尚、本発明の検査方法によれば、前述した通り、紡糸設備の運転中に紡糸空間に採取手段を挿入するため、その挿入中は繊維の連続性が失われることになる。しかし、採取手段の挿入時間、即ち採取手段による吐出物のサンプリング時間は、吐出物の物性測定に必要な量の採取に要する時間であって斯かる量は通常微量であり、それ故、斯かるサンプリング時間は通常極めて短時間であるから、本発明の検査方法を実施しても最終製品の品質への影響は実質的には無いといえる。本発明の検査方法は、メルトブローン法以外にも、電界紡糸(エレクトロスピニング)法など、種々の紡糸法に適用できる。
電界紡糸法は、原料液(紡糸素材の粘調体)を紡糸口から吐出すると共に、吐出した粘調体に電界を作用させて該粘調体を延伸して繊維とした後に捕集して繊維集合体とする方法である。電界紡糸法における原料液としては、繊維形成の可能な高分子化合物が溶媒に溶解又は分散した溶液あるいは高分子化合物を加熱、溶融した溶融液を用いることができる。この高分子化合物としては、前記の熱可塑性樹脂を用いることができる。原料液に高分子溶液を用いる電界紡糸法は溶液法、高分子融液を用いる方法は溶融法と呼ばれることがある。該溶液又は融液には適宜、無機物粒子、有機物粒子、植物エキス、界面活性剤、油剤、イオン濃度を調整するための電解質等を配合することができる。
採取手段20は、図1に示すように、複数の紡糸口を有する紡糸ヘッド11の下端部11bに対向配置され、該紡糸口からの吐出物F(繊維)が付着する採取部21を有している。本実施態様における採取部21は、図1に示すようにメッシュ状であり、該採取部21を厚み方向に貫通する複数の貫通孔と、各該貫通孔を画成する線状部材とを含んで構成されている。このようなメッシュ状の採取部21を紡糸空間12に挿入した場合、紡糸口からの吐出物F(繊維)は、前記線状部材に絡みつくように付着する。また、本実施態様における採取部21は、屈曲部及び湾曲部を有しておらず厚みが均一であり、方向CD(複数の紡糸口の並び方向)に沿う断面視において直線状をなしている。
本実施態様においては、図1に示すように、紡糸設備10が有する複数の紡糸口それぞれと採取手段20との距離が均一になるように、紡糸空間12に採取手段20を挿入している。即ち、採取手段20は、紡糸空間12において、複数の紡糸口が形成されている紡糸ヘッド11の下端部11bに対して平行に配置される。このように、複数の紡糸口それぞれと採取手段20との距離が均一になるように採取手段20を紡糸空間12に挿入することで、採取手段20によって採取される、複数の紡糸口に対応した複数の吐出物Fの紡糸条件が互いに同一となるため、例えば、複数の紡糸口のうちの一部に詰まりなどの異常が生じた場合に、その異常を速やかに発見することができる。つまり、複数の紡糸口が全て正常であれば、採取手段20によって採取される、複数の紡糸口に対応した複数の吐出物Fの繊維径は互いに同じはずであるが、一部の紡糸口に詰まりが生じた場合、その詰まった紡糸口からの吐出物Fの繊維径は、他の紡糸口からの吐出物Fの繊維径に比して短いため、詰まった紡糸口を容易に特定することができる。
採取手段20の紡糸空間12への挿入態様としては、図2に示すように、紡糸設備10が有する複数の紡糸口それぞれと採取手段20との距離Lが均一にならないように、紡糸空間12に採取手段20を挿入する態様もあり得る。図2に示す態様では、方向CDに沿う断面視が直線状の採取部21を有する採取手段20を、該採取部21の方向CDの一端側が紡糸ヘッド11の下端部11bから最も近い位置に存し且つ他端側が該下端部11bから最も遠い位置に存するように、紡糸空間12に該下端部11bの延在方向即ち水平方向に対して斜めに挿入している。このように、複数の紡糸口それぞれと採取手段20との距離Lが均一にならないように採取手段20を紡糸空間12に挿入することで、採取手段20の紡糸空間12への1回の挿入操作即ち1回のサンプリングで、距離Lの異なる複数の吐出物Fを同時に採取することが可能となる。また、こうして採取された、複数の紡糸口に対応した複数の吐出物Fの物性をそれぞれ測定することにより、複数の紡糸口に詰まりなどの異常が発生していないことを前提として、原料たる紡糸素材や紡糸条件の管理が適切になされているかを確認することが可能となる。
前記実施態様の採取手段20は、方向CD(複数の紡糸口の並び方向)に沿う断面視あるいは側面視において、採取部21が屈曲部及び湾曲部を有しておらずに直線状をなしていたが、本発明には、採取部21が屈曲部又は湾曲部を有する態様も含まれる。図3に示す採取手段20Aは、斯かる態様の一例であり、採取部21が屈曲部21aを複数有しており、図3に示す如き方向CDに沿う断面視において、採取部21の方向CDの一端側が紡糸ヘッド11の下端部11bから最も近い位置に存し且つ他端側が該下端部11bから最も遠い位置に存するような、階段状をなしている。このような構成の採取手段20Aを用いることで、採取手段20Aの紡糸空間12への挿入態様に特段の注意を払わずとも、単に、採取手段20Aを紡糸ヘッド11の下端部11bに対して平行に挿入するだけで、図2に示す態様と同様に、1回のサンプリングで、距離Lの異なる複数の吐出物Fを同時に採取することが可能となる。
以上、本発明について説明したが、本発明は前述した実施態様に制限されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、本発明に係る採取手段の採取部は、図1に示す如きメッシュ状に限定されず、棒状でも良い。即ち、本発明に係る採取手段の一例として、1本の棒状部材(例えば竹ひご)からなる採取手段が挙げられる。このような棒状の採取手段は、ハンドリング性に優れ、紡糸口からの吐出物(繊維)のサンプリングの際に紡糸空間に瞬間的に挿入する操作が容易であるため、紡糸空間を乱しにくいという利点を有する。
10 紡糸設備
11 紡糸ヘッド
12 紡糸空間
13 捕集器
20,20A 採取手段
21 採取部
21a 採取部の屈曲部
F 紡糸ヘッドの紡糸口からの吐出物(繊維)
S 不織布

Claims (9)

  1. 紡糸素材の粘調体を吐出する紡糸口と、該紡糸口からの吐出物が繊維化される紡糸空間と、該紡糸空間で繊維化された該吐出物を捕集する捕集器とを具備する紡糸設備による紡糸工程の正常性を検査する、紡糸工程の検査方法であって、
    前記紡糸空間に前記紡糸口からの吐出物を採取する採取手段を挿入して、該採取手段に該吐出物を付着させ、その付着物の物性を測定する、紡糸工程の検査方法。
  2. 測定対象たる前記付着物の物性が繊維径である請求項1に記載の紡糸工程の検査方法。
  3. 前記付着物が平均繊維径50μm以下の繊維である請求項1又は2に記載の紡糸工程の検査方法。
  4. 前記紡糸空間における、前記紡糸口から10mm以上離間し且つ該紡糸口から90mm以内の領域に、前記採取手段を挿入する請求項1〜3の何れか1項に記載の紡糸工程の検査方法。
  5. 前記紡糸設備が前記紡糸口を複数具備しており、その複数の紡糸口それぞれと前記採取手段との距離が均一になるように、前記紡糸空間に該採取手段を挿入する請求項1〜4の何れか1項に記載の紡糸工程の検査方法。
  6. 前記紡糸設備が前記紡糸口を複数具備しており、その複数の紡糸口それぞれと前記採取手段との距離が均一にならないように、前記紡糸空間に該採取手段を挿入する請求項1〜4の何れか1項に記載の紡糸工程の検査方法。
  7. 前記採取手段は、複数の前記紡糸口に対向配置され、前記吐出物が付着する採取部を有し、該採取部が屈曲部又は湾曲部を有する請求項6に記載の紡糸工程の検査方法。
  8. 前記採取手段は、複数の前記紡糸口に対向配置され、前記吐出物が付着する採取部を有し、該採取部がメッシュ状である請求項1〜7の何れか1項に記載の紡糸工程の検査方法。
  9. 前記採取手段は、複数の前記紡糸口に対向配置され、前記吐出物が付着する採取部を有し、該採取部が棒状である請求項1〜7の何れか1項に記載の紡糸工程の検査方法。
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