JP6736921B2 - Fish染色方法 - Google Patents

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Description

本発明は、病理診断等に用いられる組織切片中の標的とする核酸を定量するための、蛍光in situ ハイブリダイゼーション(FISH)染色方法に関する。より詳しくは、本発明は、蛍光ナノ粒子を用いて標的とする核酸を標識するFISH染色方法に関する。
病理診断は、患者から採取した組織切片を薄切してスライドを作製し、所定の方法で染色したときの染色画像に基づいて、細胞または組織の形態を観察するとともに、特定の生体分子の発現レベルを定量、評価することにより、その患者が特定の疾患に罹患しているか否か、あるいは特定の治療薬が奏功するか否かといった様々な事象を診断する方法である。
たとえば、癌組織を採取して作製された組織切片を用いて、癌遺伝子の一種であるHER2遺伝子(HER2/neu、c-erbB-2)および/またはHER2遺伝子から産生される膜タンパク質であって癌細胞増殖因子の受容体として機能していると推定されるHER2タンパクを定量し、評価することによって、乳癌患者の予後を診断したり、分子標的治療薬「トラスツズマブ」(商品名「ハーセプチン」(登録商標)、抗HER2モノクローナル抗体)による治療効果を予測したりする病理診断が広く行われている。DNAレベルの検査法として代表的なものが、蛍光in situ ハイブリダイゼーション(FISH)法である。
FISH法は、ホルマリン固定パラフィン包埋組織切片、細胞診スライド等で、蛍光標識された核酸プローブを用いて、ハイブリダイズする相手であるDNA、RNA領域の発現の増幅度や、DNA領域の転座(染色体上の特定遺伝子の位置の入れ替わり)、欠損を検出する方法である。
FISH用のプローブ試薬として、特許文献1(WO2015/141856)には、蛍光体を集積してなる蛍光体集積ナノ粒子と所定の塩基配列を有する核酸分子とが結合したプローブ試薬を開示しており、そのようなプローブ試薬を用いることで、非特異的吸着を抑制しつつ、安定的に蛍光シグナルを得ることができることが記載されている。また、当該文献には、(i)前記蛍光体集積ナノ粒子と前記核酸分子とは、必要に応じてリンカー分子を用いた共有結合により結合していても、核酸分子に共有結合により連結した第1の生体分子(例えばビオチン)と蛍光体集積ナノ粒子に共有結合により連結した第2の生体分子(例えばストレプトアビジン)との特異的結合により間接的に結合していてもよいこと、(ii)蛍光体集積ナノ粒子を直接的または間接的に結合させるための核酸分子中の部位は、5'末端または3’末端標識法、ニックトランスレーション法などにより、1箇所または複数箇所に導入することができること、(iii)核酸配列の塩基数が5000以下である場合は核酸分子と蛍光体集積ナノ粒子とがモル比が1:1〜1:40で結合していることが好ましいこと、などが記載されている。例えば、前記(i)において核酸分子と蛍光体集積ナノ粒子を間接的に結合させるプローブ試薬を利用した一実施形態として、所定の配列を有する核酸と、第1の生体分子が複数連結された核酸分子とのハイブリダイゼーションを行った後に、第2の生体分子が連結した蛍光体集積ナノ粒子を前記ハイブリダイゼーションの反応系に添加して、第1の生体分子に第2の生体分子を特異的に結合させることにより、前記所定の配列を有する核酸を蛍光標識するFISHも提案されている。
一方、特定の分析対象物(アナライト)に結合した標識体から発せられるシグナルを増強し、アナライトを高感度で検出するための一つの手段として、酵素によって活性化されたアナライトの近傍に沈着することのできる基質と、標識物質(ラベル)またはそれを連結させるための部位とのコンジュゲートを利用する増感法が知られている。
例えば、特許文献2(US5196306)には、酵素(例えばホースラディシュペルオキシダーゼ)によって活性化される基質(例えばチラミン)と、検出または定量可能なシグナルを直接的または間接的に発生させることのできる検出可能なラベル(例えば酵素的、蛍光発光的または化学発光的なラベルなど)とのコンジュゲートを利用した、アナライト依存性酵素活性化システムによってアナライトの検出または定量を行う方法が開示されている。その実施形態の一例として、実施例8には、次のようなものが記載されている。まず、酵素免疫測定法用の支持体(ポリスチレンストリップ)上に固相化された一次抗体に、アナライト(抗体)を抗原抗体反応により結合させ、続いてそのアナライトに、ホースラディシュペルオキシダーゼが連結された二次抗体を抗原抗体反応により結合させる。次に、チラミンとビオチンとのコンジュゲートを添加し、ホースラディッシュペルオキシダーゼによってチラミンを活性化させることで、複数のコンジュゲートを基板上の一次抗体近傍に沈着させる。さらに、ストレプトアビジンとガラクトシダーゼとのコンジュゲートを添加し、沈着したチラミンに連結されているビオチンと結合させる。最後に、4−メチルウンベリフェリル−β−D−ガラクトシド(MUG)を添加し、ガラクトシダーゼと反応させ、それにより発せられる蛍光を測定することで、アナライトを定量する。
特許文献2には、前記ラベルとして様々なものが例示されているが、蛍光体集積ナノ粒子またはその他の蛍光体粒子を用いることは具体的に開示されていない。上述した実施例では、マイクロタイタープレートリーダーにより生成した蛍光色素から発生する蛍光量の総和を測定しているが、蛍光体集積ナノ粒子等の輝点の位置、数といった情報を取得しているわけではない。また、特許文献2に記載された方法は基本的に、血液検体等に含まれるタンパク質をアナライトとし、その検出、定量用のラベルを増幅させるための手段であり、組織切片中の核酸(遺伝子)の検出、定量用のラベルを増幅させることについては記載されていない。
一方、特許文献3(特表2013−531801)には、特定の遺伝子を検出、定量の対象とするin situハイブリダイゼーションアッセイにおいて、(i)標的とする核酸配列に、ハプテン(例えばジゴキシゲニン)で標識された核酸プローブを結合させる工程、(ii)前記ハプテンに対応する抗ハプテン抗体とペルオキシダーゼとのコンジュゲートを前記ハプテンと反応させ、ペルオキシダーゼを固定化する工程、(iii)過酸化物の存在下に、ペルオキシダーゼにより活性可能なアリール部分(例えばチラミン又はチラミン誘導体)とハプテンとのコンジュゲートを複数、前記ペルオキシダーゼと反応させ、固定化されたペルオキシダーゼの近傍に沈着させる(フェノール含有化合物、例えばチロシンと二量体を形成させる)工程、(iv)蛍光標識と抗ハプテン抗体とのコンジュゲートを、沈着した前記複数のコンジュゲートのハプテンと反応させる工程により、核酸配列の蛍光シグナルを増幅することができることなどが開示されている。また、蛍光標識としては量子ドットが例示されている。
特許文献3に記載された方法は基本的に、蛍光標識を抗ハプテン抗体で修飾し、それとハプテンとの結合を介して標的とする核酸配列に間接的に結合させるものであり、蛍光標識をアビジンとビオチンとの結合を介して間接的に結合させることについては記載されていない。また、蛍光標識体として蛍光体集積ナノ粒子を用いることも具体的に開示されていない。
また、非特許文献1では、染色体上のHER2遺伝子を検出するために、蛍光色素分子で修飾した塩基長が200程度の様々なFISHプローブを作製し、それらを複数組み合わせて用いることで、プローブの合計塩基長を変えながら、HER2遺伝子の検出性を検証している。その結果、FISHプローブの全長が少なくとも3000(200×15)塩基程度あれば、蛍光色素分子の輝点を顕微鏡で視認することができたことが記載されている。逆に言えば、非特許文献1の記載からは、プローブの合計塩基長が3000以下の場合には顕微鏡での視認が困難になることが示されている。
WO2015/141856 US5196306 特表2013−531801
NATURE METHODS 10, 2, pp.122-124(2013)
特許文献1に開示されているような従来のFISHの代表的な実施形態では、上述したとおり、所定の配列を有する核酸にプローブを結合させ、そのプローブに連結した1つまたは複数の第1の生体分子と、それに対応する第2の生体分子とを結合させることを介して、蛍光体集積ナノ粒子で前記所定の配列を有する核酸を蛍光標識している。しかしながら、蛍光体集積ナノ粒子は粒子径が比較的大きいため、核酸の周囲を覆っているヒストンなどのタンパク質との間で、またプローブに結合しようとする蛍光体集積ナノ粒子同士の間で、立体障害を起こしやすいと考えられる。その影響により、標的とする核酸に結合しているプローブに蛍光体集積ナノ粒子が近づきにくくなり、逆にあらかじめ蛍光体集積ナノ粒子をプローブに結合させた場合にはそのプローブが標的とする核酸に近づきにくくなる。このような観点から、従来のFISHにおける、多数の蛍光体集積ナノ粒子を用いて標的とする核酸を修飾する際の結合反応性、換言すれば結合する蛍光体集積ナノ粒子の数およびその結合力に基づく標識率には改善の余地があった。
一方で、蛍光体集積ナノ粒子の代わりに、それよりも粒子径の小さな蛍光ナノ粒子、例えば量子ドットを用いれば、上述したような立体障害による問題は起きないかもしれないが、蛍光体集積ナノ粒子に比べて粒子1つ当たりの輝点が小さいため、より多数の粒子を安定的に結合させて、検出または定量のための感度を増加させることが望ましい。
また、プローブの合計塩基長が短いほど、調製しやすく、取り扱い性にも優れるが、プローブに直接結合させることのできる蛍光色素分子その他の蛍光体の総量は少なくなるため、標的とする核酸の検出または定量が困難となる傾向にある。
本発明は、標的とする核酸を標識する物質として蛍光体集積ナノ粒子や量子ドット等の無機蛍光体ナノ粒子などの蛍光ナノ粒子を用いる場合に、標識の効率を向上させ、検出または定量のための感度を増加させることができ、核酸プローブの合計塩基長が3000以下であっても標的とする核酸を検出または定量することのできる、核酸のFISH染色方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、核酸プローブに修飾した分子を起点にした結合により、または核酸プローブ周辺の分子への結合により、蛍光ナノ粒子が結合可能な部位を増幅する工程を取り入れることによって、上記のような課題が解決された核酸のFISH染色方法を実施することができるようになることを見出した。すなわち、本発明には下記のような各発明が包含される。
[1]
標的とする核酸に、その塩基配列に対して相補的な塩基配列を有する、合計の塩基長が3000以下である核酸プローブをハイブリダイズさせる工程(ハイブリダイゼーション工程)と、
下記工程(1)または(2)から選ばれる、蛍光ナノ粒子が結合可能な部位を増幅させる工程(結合部位増幅工程)と、
工程(1):前記核酸プローブにあらかじめ直接的または間接的に増幅の起点としてのビオチンを結合させておき、当該ビオチンとアビジン−ビオチン複合体(ABC)に含まれるアビジンと結合させることにより、前記核酸プローブを、蛍光ナノ粒子と結合可能な部位としての前記ABCに含まれるビオチンで修飾する処理(ABC処理工程)
工程(2):前記核酸プローブにあらかじめ直接的または間接的にペルオキシダーゼを結合させておき、過酸化物の存在下で、当該ペルオキシダーゼに、蛍光ナノ粒子と結合可能な分子で修飾されたタイラマイドを接触させることにより、前記核酸プローブの周辺に蛍光ナノ粒子と結合可能な部位を沈着させる処理(タイラマイド処理工程)
前記結合部位に蛍光ナノ粒子を結合させる工程(蛍光ナノ粒子結合工程)と
を含む、核酸のFISH(蛍光in situ ハイブリダイゼーション)染色方法。
[2]
前記結合部位増幅工程において、前記核酸プローブに間接的に増幅の起点としてのビオチン(工程1)またはペルオキシダーゼ(工程2)を結合させるために、
前記核酸プローブをハプテンで修飾しておき、
前記ハプテンで修飾された核酸プローブに、1次抗体として抗ハプテンポリクローナル抗体または抗ハプテンモノクローナル抗体を結合させた後、
前記1次抗体に、2次抗体として前記1次抗体に対するポリクローナル抗体を結合させる、[1]に記載の核酸のFISH染色方法。
[3]
前記ハプテンが、ジニトロフェノール、ジゴキシゲニンおよびFITC(フルオレセインイソチオシアネート)からなる群より選択される、[1]または[2]に記載の核酸のFISH染色方法。
[4]
前記蛍光ナノ粒子結合工程の後、蛍光ナノ粒子が結合した部位から遊離することを防ぐ工程(固定化工程)を行う、[1]〜[3]のいずれか1項に記載の核酸のFISH染色方法。
[5]
前記蛍光ナノ粒子が蛍光色素集積ナノ粒子であり、その平均粒子径が20nm〜300nmである、[1]〜[4]のいずれか1項に記載の核酸のFISH染色方法。
[6]
前記蛍光ナノ粒子が無機蛍光体集積ナノ粒子であり、その平均粒子径が20nm〜300nmである、[1]〜[4]のいずれか1項に記載の核酸のFISH染色方法。
[7]
前記蛍光ナノ粒子が量子ドットおよび炭素ドットからなる群より選択される無機蛍光体ナノ粒子であり、その平均粒子径が1nm〜300nmである、[1]〜[4]のいずれか1項に記載の核酸のFISH染色方法。
[8]
[1]〜[7]のいずれか1項に記載のFISH染色方法における、前記結合部位増幅工程により増幅された複数の結合部位に蛍光ナノ粒子が結合してなることを特徴とする、核酸のFISH染色がされた病理標本。
本発明に係るFISH染色方法は、所定の処理を用いて、核酸プローブまたはその周辺に存在する蛍光ナノ粒子が結合することのできる部位の数を著しく増幅することで、標的とする核酸を標識する蛍光ナノ粒子の数を増やすことができ、さらには蛍光ナノ粒子が洗浄等により離脱することを抑制することもできるようになる。このようにして、蛍光ナノ粒子による標識能力を飛躍的に向上させることにより、合計塩基長が3000以下である、設計、作製および取扱いが比較的容易な核酸プローブを用いる場合でも、標的とする核酸の検出および定量に十分な輝度(感度)を達成することができ、試料同士の染色結果の再現性も改善することができる。
図1は、結合部位増幅工程として工程1:ABC処理工程を行う、本発明の第1実施形態における反応様式の一例を表す模式図である。 図2は、結合部位増幅工程として工程2:タイラマイド処理工程を行う、本発明の第2実施形態における反応様式の一例を表す模式図である。 図3は、本発明の第2実施形態として好ましい反応様式の一例(核酸プローブに間接的にペルオキシダーゼを結合させるためにポリクローナル2次抗体を用いる場合)を表す模式図である。 図4は、[A]実施例1で撮影された蛍光画像および[B]比較例1で撮影された蛍光画像である。 図5は、[A]実施例2で撮影された蛍光画像および[B]比較例2で撮影された蛍光画像である。
以下、本発明に係る核酸のFISH染色方法およびこれを用いて染色された病理標本について説明する。
−核酸のFISH染色方法−
本発明に係るFISH染色方法は、少なくとも、「ハイブリダイゼーション工程」、「結合部位増幅工程」および「蛍光ナノ粒子結合工程」を含み、必要に応じてさらに、「固定化工程」を含んでいてもよい。
(ハイブリダイゼーション工程)
ハイブリダイゼーション工程は、標的とする核酸に、その塩基配列に対して相補的な塩基配列を有する、合計の塩基長が3000以下である核酸プローブをハイブリダイズさせる工程である。この工程でハイブリダイズさせる核酸プローブは、次の結合部位増幅工程の実施形態に応じた所定の分子(「核酸プローブ修飾分子」と称する。)で修飾された核酸プローブ(「修飾核酸プローブ」と称する。)である。
核酸プローブは、1本の核酸分子によって構成されていてもよいし、2本以上の核酸分子(混合物)によって構成されていてもよい。すなわち、「合計の塩基長が3000以下である」という規定は、前者の場合はその1本の核酸分子の塩基長が3000以下であることを意味し、後者の場合は2本以上の核酸分子それぞれの塩基長の合計が3000以下であることを意味する。核酸プローブとして2本以上の核酸分子を用いる場合は、それぞれの核酸分子の塩基配列は、標的とする核酸の異なる(重複しない)領域の塩基配列と相補的なものとする。例えば、1本あたり200塩基長の、10本の核酸分子のセットは、合計の塩基長が2000(200×10)である核酸プローブとして使用することができる。
(結合部位増幅工程)
核酸プローブ接触工程の後に行われる結合部位増幅工程は、蛍光ナノ粒子が結合可能な部位を増幅させるための工程であり、下記工程1または2から選ばれる工程である。
工程1:前記核酸プローブにあらかじめ直接的または間接的に増幅の起点としてのビオチンを結合させておき、当該ビオチンとアビジン−ビオチン複合体(ABC:avidin-biotin complex)に含まれるアビジンとを結合させることにより、前記核酸プローブを、蛍光ナノ粒子と結合可能な部位としての前記ABCに含まれる複数のビオチンで修飾する処理(ABC処理工程)。
工程2:前記核酸プローブにあらかじめ直接的または間接的にペルオキシダーゼを結合させておき、過酸化物の存在下で、当該ペルオキシダーゼに蛍光ナノ粒子と結合可能な分子で修飾されたタイラマイドを接触させることにより、前記核酸プローブの周辺に蛍光ナノ粒子と結合可能な部位を複数沈着させる処理(タイラマイド処理工程)。
(工程1:ABC処理工程)
図1の反応様式に示されるように、工程1(ABC処理工程)は、核酸プローブにあらかじめ直接的または間接的に増幅の起点としてのビオチンを結合させておき、当該ビオチンとABCに含まれるアビジンとを結合させることにより、核酸プローブを、蛍光ナノ粒子と結合可能な部位としてのABCに含まれる複数のビオチンで修飾する処理を含む工程である。
なお、本明細書において「アビジン」は、卵白由来の本来のアビジンの他、放線菌由来のストレプトアビジン、アビジンから糖鎖を除去したニュートラルアビジン等、アビジンの類縁体を包含する用語である。
「核酸プローブにあらかじめ直接的または間接的に増幅の起点としてのビオチンを結合」させるための手段は特に限定されるものではなく、公知の様々な手段の中から選択することができる。例えば、1次抗体およびビオチン修飾2次抗体を用いて、間接的にビオチンを結合させる方法、すなわち、まず標的とする核酸にハイブリダイズさせた修飾核酸プローブに、その核酸プローブ修飾分子に対して特異的に結合する抗体(1次抗体)を結合させ、続いてその1次抗体に、ビオチンで修飾された1次抗体に対応する抗体(ビオチン修飾2次抗体)を結合させる反応様式が好ましい。ビオチン修飾2次抗体を用いず、ビオチン修飾1次抗体だけを用いて、それを修飾核酸プローブに結合させるようにしてもよい。また、核酸プローブ修飾分子としてビオチンを選択し、それを核酸プローブに直接的に(必要に応じてリンカー分子を用いた共有結合により)結合させることもできる。ハイブリダイゼーション工程よりも前にそのようなビオチン修飾核酸プローブを作製しておき、それを用いてハイブリダイゼーション工程を行えば、結合部位増幅工程の開始時点で、核酸プローブにあらかじめ直接的に増幅の起点としてのビオチンを結合させておいたことになる。増幅の起点としてのビオチンは、1つの核酸プローブにつき少なくとも1個あればよいが、2個以上あれば蛍光ナノ粒子の結合部位の増幅効率を高めることができるため好ましい。
「(増幅の起点としての)ビオチンとアビジン−ビオチン複合体(ABC)に含まれるアビジンと結合させる」ための手段も特に限定されるものではなく、公知の様々な手段の中から選択することができる。一般的には、個々に複数のビオチンを担持した物質(例えばペルオキシダーゼ)をあらかじめ作製しておいた上で、まず増幅の起点としてのビオチンにアビジンを接触させて結合させ、続いてそのアビジンに作製しておいたビオチン担持物質を接触させて、増幅の起点としてのビオチンに結合しなかった余剰のアビジンと共に、ABCが形成されるようにする。あるいは、先にそのビオチン担持物質とアビジンとを接触させてABCを形成しておき、そのABCを増幅の基点としてのビオチンに接触させて、ABC中の未反応だった(ビオチンとまだ結合していない)アビジンを当該ビオチンと反応させるようにしてもよい。工程(1)では、上記のようにして核酸プローブを修飾した、ABCに含まれる複数のビオチンが、蛍光ナノ粒子と結合可能な部位となる。ビオチン担持物質はペルオキシダーゼに限定されるものではなく、複数のビオチンを担持することができる適切なサイズの物質(分子)を用いることができる。
(工程2:タイラマイド処理工程)
図2の反応様式に示されるように、工程2(タイラマイド処理工程)は、核酸プローブにあらかじめ直接的または間接的にペルオキシダーゼを結合させておき、過酸化物の存在下で、当該ペルオキシダーゼに蛍光ナノ粒子と結合可能な分子で修飾されたタイラマイドを接触させることにより、核酸プローブの周辺に蛍光ナノ粒子と結合可能な部位を複数沈着させる処理を含む工程である。
「核酸プローブにあらかじめ直接的または間接的にペルオキシダーゼを結合」させるための手段は特に限定されるものではなく、公知の様々な手段の中から選択することができる。例えば、標的とする核酸にハイブリダイズさせた修飾核酸プローブに、まずその核酸プローブ修飾分子に対して特異的に結合する抗体(1次抗体)を結合させ、続いてその1次抗体に、抗体修飾用の所定の分子(抗体修飾分子、例えばビオチン)で修飾された1次抗体に対応する抗体(修飾2次抗体)を結合させ、さらにその修飾2次抗体に、抗体修飾分子と特異的に結合する、ペルオキシダーゼ修飾用の所定の分子(ペルオキシダーゼ修飾分子、例えばストレプトアビジン)で修飾されたペルオキシダーゼ(修飾ペルオキシダーゼ)を結合させることにより、核酸プローブに間接的にペルオキシダーゼを結合させる反応様式が好ましい。修飾2次抗体を用いず、ビオチン等で修飾された1次抗体(修飾1次抗体)だけを用いて、それを修飾核酸プローブに結合させ、さらにストレプトアビジン等で修飾されたペルオキシダーゼを結合させてもよい。また、修飾1次抗体および修飾2次抗体を用いず、核酸プローブ修飾分子(例えばビオチン)と特異的に結合するペルオキシダーゼ修飾分子(例えばストレプトアビジン)を選択することにより、修飾核酸プローブに修飾ペルオキシダーゼを結合させることもできる。ペルオキシダーゼは、1つの核酸プローブにつき少なくとも1個あればよいが、2個以上あれば蛍光ナノ粒子の結合部位の増幅効率を高めることができるため好ましい。
「過酸化物の存在下で、ペルオキシダーゼに、蛍光ナノ粒子と結合可能な分子で修飾されたタイラマイドを接触させることにより、核酸プローブの周辺に蛍光ナノ粒子と結合可能な部位を複数沈着させる」ための手段も特に限定されるものではなく、公知の様々な手段の中から選択することができる。一般的には、まず、タイラマイド修飾用の所定の分子(タイラマイド修飾分子)で修飾された、ペルオキシダーゼに対応する基質であるタイラマイド(修飾タイラマイド)を作製しておき、過酸化水素等の過酸化物の存在下で、その修飾タイラマイドをペルオキシダーゼと接触させ、反応させるようにすればよい。その反応によってタイラマイドを活性化させることで、修飾タイラマイド(タイラマイド修飾分子)を修飾核酸プローブの周辺に沈着させることができる。工程(2)では、上記のようにして核酸プローブの周辺に沈着したタイラマイド修飾分子が「蛍光ナノ粒子が結合可能な部位」となる。
工程(2)における「核酸プローブにあらかじめ直接的または間接的にペルオキシダーゼを結合」させるための手段の一例として、工程(1)との関係で前述したアビジンービオチン複合体(ABC)を利用する実施形態が挙げられる。すなわち、ビオチン担持物質としてペルオキシダーゼを利用したABCを、工程(1)における「増幅の起点としてのビオチン」に相当するビオチン、例えばビオチン修飾2次抗体に結合させることにより、ABCに含まれる複数のペルオキシダーゼを核酸プローブに間接的に結合させたことになる。ABC中には多数のペルオキシダーゼが含まれているので、過酸化物の存在化で蛍光ナノ粒子と結合可能な分子で修飾されたタイラマイドを接触させたときの反応効率が改善され、より多くの蛍光ナノ粒子と結合可能な部位を核酸プローブの周辺に沈着させることができるようになる。このような好ましい実施形態の工程(2)を行った後に、沈着した蛍光ナノ粒子と結合可能な部位に蛍光ナノ粒子を結合させる蛍光ナノ粒子結合工程を行う場合は、前述したようなABC処理による工程(1)を行った後に、ABC中のビオチンに蛍光ナノ粒子を結合させる蛍光ナノ粒子結合工程を行う場合に比べて、100倍程度の検出感度の増幅が期待できるため、核酸プローブの塩基長が短い場合に特に好ましい。
(蛍光ナノ粒子結合工程)
工程(1)または(2)から選ばれる結合部位増幅工程の後に行われる蛍光ナノ粒子反応工程は、結合部位増幅工程により増幅された結合部位に蛍光ナノ粒子を結合させる工程である。この工程により、標的とする核酸を蛍光ナノ粒子で標識することができる。
結合部位増幅工程が工程(1)のABC処理工程である場合、「結合部位増幅工程により増幅された結合部位」は「ABCに含まれるビオチン」なので、蛍光ナノ粒子結合工程で用いる蛍光ナノ粒子は、ビオチンに対して特異的に結合する分子、すなわちアビジンで修飾された蛍光ナノ粒子となる。結合部位増幅工程が工程(2)のタイラマイド処理工程である場合、「結合部位増幅工程により増幅された結合部位」は「タイラマイド修飾分子」なので、蛍光ナノ粒子結合工程で用いる蛍光ナノ粒子は、タイラマイド修飾分子に対して特異的に結合する分子で修飾された蛍光ナノ粒子となる。
(固定化工程)
蛍光ナノ粒子結合工程の後に任意で行われる固定化工程は、所定の結合部位で結合した蛍光ナノ粒子をその周辺のタンパク質と架橋させることにより、ないしは蛍光ナノ粒子の周辺のタンパク質同士が架橋することで細胞核内に入り込んだ蛍光ナノ粒子が細胞核外に出にくくすることにより、蛍光ナノ粒子による標的とする核酸の蛍光標識を、後の水洗処理等ではがれないような強固で安定的なものとするための工程である。
このような工程は例えば、蛍光体集積ナノ粒子が有するアミノ基とその周辺のタンパク質が有するアミノ基、または蛍光体集積ナノ粒子の周辺のタンパク質が有するアミノ基同士を、アルデヒド等の化合物との反応により架橋する(メチレン架橋)ことにより行うことができる。そのような架橋反応を引き起こすための固定化剤としては、パラホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、グリオキサール等のジアルデヒド類が好ましい。
本発明では、結合部位増幅工程の実施形態をどのようなものとするかによって、ハイブリダイゼーション工程における核酸プローブ修飾分子、結合部位増幅工程における1次抗体、2次抗体、抗体修飾分子、ペルオキシダーゼ修飾分子、タイラマイド修飾分子などの実施形態も変動する。以下、結合部位増幅工程として工程(1)のABC処理工程を採用する場合の本発明全体を「第1実施形態」、工程(2)のタイラマイド処理工程を採用する場合の本発明全体を「第2実施形態」と称することとし、それぞれの実施形態に関係する事項をさらに説明する。
結合部位増幅工程として工程1:ABC処理工程を行う、本発明の第1実施形態における反応様式の一例を図1に示す。ハイブリダイゼーション工程において、核酸プローブ(2)および核酸プローブ修飾分子(3)からなる修飾核酸プローブ(4)が標的核酸(1)にハイブリダイズする。結合部位増幅工程において、モノクローナル1次抗体(10)が修飾核酸プローブ(4)に結合し、モノクローナル2次抗体(20a)および(2次抗体修飾分子(21)に相当する)増幅の起点としてのビオチン(50)からなる修飾モノクローナル2次抗体(22a)が1次抗体(10)に結合する。さらに、アビジン(60)と、ペルオキシダーゼ(70)に担持された複数のビオチン(50)からなるアビジンービオチン複合体(ABC)(80)が修飾モノクローナル2次抗体(22a)に結合する。蛍光ナノ粒子結合工程において、蛍光ナノ粒子(100)および(蛍光ナノ粒子修飾分子(101)に相当する)アビジン(60)からなる修飾蛍光ナノ粒子(102)が、ABC(80)に含まれるビオチン(50)に結合する。
結合部位増幅工程として工程2:タイラマイド処理工程を行う、本発明の第2実施形態における反応様式の一例を図2に示す。ハイブリダイゼーション工程において、核酸プローブ(2)および核酸プローブ修飾分子(3)からなる修飾核酸プローブ(4)が標的核酸(1)にハイブリダイズする。結合部位増幅工程において、モノクローナル1次抗体(10)が修飾核酸プローブ(4)に結合し、モノクローナル2次抗体(20a)および2次抗体修飾分子(21)からなる修飾モノクローナル2次抗体(22a)がモノクローナル1次抗体(10)に結合し、ペルオキシダーゼ(70)およびペルオキシダーゼ修飾分子(71)からなる修飾ペルオキシダーゼ(72)が修飾モノクローナル2次抗体(22a)に結合する。さらに、過酸化物(H22)の存在化で、活性化される前のタイラマイド(90a)およびタイラマイド修飾分子(91)からなる活性化される前の修飾タイラマイド(92a)をペルオキシダーゼ(70)に接触させると、活性化されたタイラマイド(90b)およびタイラマイド修飾分子(91)からなる活性化修飾タイラマイド(92b)に変換され、核酸プローブ(2)の周辺に沈着する。蛍光ナノ粒子結合工程において、蛍光ナノ粒子(100)および蛍光ナノ粒子修飾分子(101)からなる修飾蛍光ナノ粒子(102)が、活性化修飾タイラマイド(92b)に含まれるタイラマイド修飾分子(91)に結合する。
本発明の第2実施形態の好ましい反応様式の一例を図3に示す。図3は、(i)核酸プローブ(2)が、1本の核酸分子ではなく複数本の核酸分子で構成されており、標的核酸(1)に複数本の修飾核酸プローブ(4)がハイブリダイズしている点、および(ii)モノクローナル2次抗体(20a)および2次抗体修飾分子(21)からなる修飾モノクローナル2次抗体(22a)の代わりに、ポリクローナル2次抗体(20b)および2次抗体修飾分子(21)からなる修飾ポリクローナル2次抗体(22b)が用いられており、モノクローナル1次抗体(10)に複数個の修飾ポリクローナル2次抗体(22b)が結合している点が図2と相違している。
(標的核酸)
本発明のFISH染色方法において標的とする、つまり検出および定量の対象とする核酸(本明細書において「標的核酸」と呼ぶ。)は、特に限定されるものではなく、従来のFISH染色方法と同様に、様々な塩基配列を有するDNAまたはRNAが標的核酸に包含される。典型的には、染色体上に存在する特定の塩基配列を有する遺伝子が標的核酸となるが、非染色体性の核酸、例えばmRNA,tRNA,rRNA,miRNA,siRNA,non−cordingRNAなども標的核酸となり得る。
標的核酸となりうるバイオマーカーとしては、診断用バイオマーカー、疾患段階を判断するバイオマーカー、疾患予後バイオマーカー、および治療処置に対する反応を見る目的のモニター用バイオマーカー等がある。例えば、癌の増殖や分子標的薬の奏効率に関係する遺伝子として、HER2、TOP2A、HER3、EGFR、P53、METなどが挙げられる。さらに、癌関連遺伝子として知られている遺伝子として、以下のものが挙げられる。チロシンキナーゼ関連遺伝子として、ALK、FLT3、AXL、FLT4(VEGFR3、DDR1、FMS(CSF1R)、DDR2、EGFR(ERBB1)、HER4(ERBB4)、EML4−ALK、IGF1R、EPHA1、INSR、EPHA2、IRR(INSRR)、EPHA3、KIT、EPHA4、LTK、EPHA5、MER(MERTK)、EPHA6、MET、EPHA7、MUSK、EPHA8、NPM1−ALK、EPHB1、PDGFRα(PDGFRA)、EPHB2、PDGFRβ(PDGFRB)、PD−L1、BMI1、LGR5、EPHB3、RET、EPHB4、RON(MST1R)、FGFR1、ROS(ROS1)、FGFR2、TIE2(TEK)、FGFR3、TRKA(NTRK1)、FGFR4、TRKB(NTRK2)、FLT1(VEGFR1)、TRKC(NTRK3)が挙げられる。また、乳がん関連の遺伝子としてATM、BRCA1、BRCA2、BRCA3、CCND1、E−Cadherin、ERBB2、ETV6、FGFR1、HRAS、KRAS、NRAS、NTRK3、p53、PTENが挙げられる。カルチノイド腫瘍に関連する遺伝子として、BCL2、BRD4、CCND1、CDKN1A、CDKN2A、CTNNB1、HES1、MAP2、MEN1、NF1、NOTCH1、NUT、RAF、SDHD、VEGFAが挙げられる。大腸がん関連遺伝子として、APC、MSH6、AXIN2、MYH、BMPR1A、p53、DCC、PMS2、KRAS2(またはKi−ras)、PTEN、MLH1、SMAD4、MSH2、STK11、MSH6が挙げられる。肺がん関連の遺伝子としては、ALK、PTEN、CCND1、RASSF1A、CDKN2A、RB1、EGFR、RET、EML4、ROS1、KRAS2、TP53、MYCが挙げられる。肝臓がん関連の遺伝子としては、Axin1、MALAT1、b−catenin、p16 INK4A、c−ERBB−2、p53、CTNNB1、RB1、Cyclin D1、SMAD2、EGFR、SMAD4、IGFR2、TCF1、KRASが挙げられる。腎臓がん関連遺伝子として、Alpha、PRCC、ASPSCR1、PSF、CLTC、TFE3、p54nrb/NONO、TFEBが挙げられる。甲状腺がん関連遺伝子として、AKAP10、NTRK1、AKAP9、RET、BRAF、TFG、ELE1、TPM3、H4/D10S170、TPRが挙げられる。卵巣がん関連遺伝子として、AKT2、MDM2、BCL2、MYC、BRCA1、NCOA4、CDKN2A、p53、ERBB2、PIK3CA、GATA4、RB、HRAS、RET、KRAS、RNASET2が挙げられる。前立腺がん関連遺伝子として、AR、KLK3、BRCA2、MYC、CDKN1B、NKX3.1、EZH2、p53、GSTP1、PTENが挙げられる。骨腫瘍関連遺伝子として、CDH11、COL12A1、CNBP、OMD、COL1A1、THRAP3、COL4A5、USP6が挙げられる。
(核酸プローブ)
核酸プローブは、標的核酸の塩基配列の一部または全部と相補的な塩基配列(プローブ配列)を有し、標的核酸と相補鎖を形成することができる核酸分子からなる。核酸プローブは、DNA、RNAのように天然に存在する分子で構成されていてもよいし、PNA(Peptide Nucleic Acid)、LNA(Locked Nucleic Acid、BNA:Bridged Nucleic Acidと呼ばれることもある)等の人工核酸分子で構成されていてもよいし、これら両方で構成されていてもよい。
核酸プローブの塩基配列(プローブ配列)としては、標的とする核酸の塩基配列、例えばHER2等のバイオマーカー遺伝子に関連する染色体上の塩基配列の全部または一部と相補的な配列が好適に用いられる。標的核酸が非染色体性の核酸、例えばmRNA,tRNA,rRNA,miRNA,siRNA,non−cordingRNAである場合も、その塩基配列の全部または一部と相補的な配列をプローブ配列とすればよい。所望の塩基配列および塩基長を有する核酸プローブは基本的に、公知の手段を用いて作製することができる。前述したように、核酸プローブとして2本以上の核酸分子からなるセットを用いる場合は、それぞれの核酸分子の塩基配列は、標的核酸の異なる(重複しない)領域の塩基配列と相補的なものになるよう設計される。
プローブ配列は、標的核酸、例えば染色体上の特定領域にある、ユニークな配列を含むように設計することが好ましい。また、染色体上の特定の遺伝子のコピー数をFISHで検出する場合、スプライシング前のイントロンを含むゲノム配列を考慮してプローブ配列を設計する必要がある。検出対象の遺伝子を含むゲノム配列の入手方法としては、公開されている遺伝子のデータベースDDBJ(DNA Data Bank of Japan)に対して、生物名、遺伝子名、染色体の番号等を検索単語として用いて検索したり、例えば「Cancer cell lines BACS」等を検索単語として検索することにより入手することができる。ここで、がん(原)遺伝子のコピー数をFISHで検出する場合、がん(原)遺伝子の配列を含む「Cancer cell lines BACS」のBACクローンライブラリーの配列が好適である。
プローブ配列については、通常の構造遺伝子を検出する場合、indel, VNTR(Variable Number of Tandem Repeat)、マイクロサテライト等の、コピー数が多型となっている遺伝子配列部分を含めないことが好ましい。ヒト(2n=46)の細胞において、一つの細胞(核)あたりの通常の遺伝子のコピー数は1〜2であるため、蛍光体の輝点の数から推定されるコピー数が3以上の場合は当該遺伝子が増幅する染色体の異常が起きており、逆にそのコピー数が0の場合は当該遺伝子が欠損する染色体の異常が起きていると判断することができる。上述したような多型の遺伝子の配列をプローブ配列に含めると、蛍光体の輝点の数が目的とする特定の遺伝子のコピー数と一致しなくなり、上述したようなコピー数の検出に支障をきたす。
また、例えば核酸分子中の特定の塩基(例えばチミン(T))を、ビオチン標識されたヌクレオチド(例えばBiotin−16−dUTP)にニックトランスレーションにより置換し、置換部位のビオチンに、酵素修飾分子としてアビジンを有する修飾酵素や、1次抗体として抗アビジン抗体を結合させることができる。このような場合、核酸分子中の特定の塩基の数(上記例ではチミン(T))がFISHを行った際の輝点数や発光の強さに影響することとなるため、輝点数や発光の強さが所望の程度となるよう、核酸分子中の特定の塩基を決めてプローブ配列を設計することとしてもよい。
核酸プローブの入手方法については、核酸の塩基数が数十〜数百塩基であれば、プローブ配列を含む核酸の配列のデータを提出してフナコシ等の核酸合成受託サービスに依頼して核酸プローブを入手することが好ましい。一方、核酸の塩基数が多い場合(例えば1000塩基を超える場合)は上記のように合成することも可能であるが時間がかかるため、塩基配列のシークエンスを行って正しく核酸プローブが形成されているか確認することを前提に例えば以下のようにして行ってもよい。なお、このようにさまざまな手法で設計・作成されたプローブは、核酸配列がDNAであればDNAプローブ、核酸配列がRNAであればRNAプローブと、一般的に呼ばれている。
1つ目の方法としては、検出対象の生物のゲノムDNAに含まれるプローブ配列部分を挟みこむようにプライマーを設計および合成し、このプライマーのセットを用いてゲノムDNA(または、上記のBACクローンライブラリー等のゲノムライブラリー)に対して複製精度の高いpfuDNAポリメラーゼを用いたPCR法を行う。次に、PCRの反応溶液を電気泳動により分離し、目的の核酸の長さに相当するバンドを切り出して核酸精製キット(MonoFas(登録商標)DNA精製キットI等のキット)を用いて溶出することにより、目的の核酸を入手することができる。
別の方法としては、核酸プローブの配列を含むプラスミド(BACプラスミド等)を大腸菌(E. coli HST08 Premium Electro−Cells(タカラバイオ社)等)に形質転換して培養(増幅)し、集菌して核酸抽出を行い、核酸プローブにあたる部分を所定の制限酵素で切り出して上述のように電気泳動および核酸精製をすることで入手することができる。
また、上述した核酸プローブの入手方法とは異なり、PNA、LNA(BNA)等の人工核酸を利用して、プローブとして使用可能な配列を有するプローブ(核酸)を人工的に合成することによって核酸プローブを入手することもできる。
(核酸プローブ修飾分子)
核酸プローブ修飾分子は、核酸プローブに、結合部位増幅工程の実施形態に応じて用いられる所定の物質、すなわち第1実施形態においてはアビジン−ビオチン複合体(ABC)を、第2実施形態においては修飾ペルオキシダーゼを間接的に結合させるための分子である。核酸プローブが複数の核酸分子からなるセットである場合、核酸プローブ修飾分子は、核酸分子のそれぞれに導入される。
核酸プローブ修飾分子としては、核酸プローブを修飾できる分子構造を有し、かつ特異的に結合する物質、典型的には抗体が存在する(核酸プローブ修飾分子が抗原となる)ものが好適である。そのような核酸プローブ修飾分子としては、例えばビオチン、アビジンおよびハプテンが挙げられる。ハプテンとしては、例えばジニトロフェノール、ジゴキシゲニンおよびFITC(フルオレセインイソチオシアネート)が挙げられる。ビオチンおよびアビジンに対しては抗ビオチン抗体および抗アビジン抗体が作製でき、ジニトロフェノール、ジゴキシゲニン、FITC等のハプテンに対しては、それぞれ抗ジニトロフェノール抗体、抗ジゴキシゲニン抗体、抗FITC抗体等の抗体が作製できる。それらの抗体は、前述したような実施形態で、核酸プローブに間接的にビオチン(第1実施形態)またはペルオキシダーゼ(第2実施形態)を結合させるための1次抗体として使用することができる。
なお、ビオチンおよびアビジン類に対しては、それぞれアビジン類およびビオチンが特異的に結合する物質となる。したがって、核酸プローブ修飾分子として例えばビオチンを選択し、核酸プローブに直接的に(必要に応じてリンカー分子を利用した共有結合により)ビオチンを結合させれば、さらにそこに、アビジン−ビオチン複合体(そこに含まれる未反応のアビジン)を結合させたり(第1実施形態)、ビオチン修飾されたペルオキシダーゼを結合させたり(第2実施形態)することができ、1次抗体および修飾2次抗体を用いる必要がない。
(修飾核酸プロ―ブの作製方法)
核酸プローブに修飾分子を導入するための手法は特に限定されず、公知の各種の手法を採用することができるが、結合の安定性から共有結合等の結合力の強い結合を用いることが好ましい。共有結合を用いて修飾分子が結合された核酸プローブを調製する手法としては、(i)修飾分子が共有結合された塩基、例えばBiotin−dNTP(Nはアデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、チミン(T)、またはウラシル(U)を表す。)を用いて、対応する反応性官能基を有する修飾分子を結合させることができる。あるいは、(ii)核酸プローブを作製した後、その5′末端のまたは3′末端に試薬を用いて反応性官能基を導入し、それに対応する官能基を有する修飾分子を反応させて共有結合させる方法などが挙げられる。上記(i)の手法において、ニックトランスレーションを利用すれば、核酸プローブの5′末端のまたは3′末端以外の部位に、複数の修飾分子を導入することも可能である。
(1次抗体および2次抗体)
前述したように、核酸プローブにビオチン(第1実施形態)またはペルオキシダーゼ(第2実施形態)を間接的に結合させる際には、1次抗体および2次抗体を用いてもよい。
1次抗体としては、核酸プローブ修飾分子に対して特異的に結合する抗体を使用する。例えば核酸プローブ修飾分子としてビオチン(アビジン)を用いた場合は、抗アビジン抗体(抗ビオチン抗体)が1次抗体となり、核酸プローブ修飾分子としてハプテンを用いた場合は、抗ハプテン抗体が1次抗体となる。1次抗体はモノクローナル抗体であってもポリクローナル抗体であってもよい。
2次抗体としては、1次抗体に対して特異的に結合する抗体を使用する。2次抗体はモノクローナル抗体であってもポリクローナル抗体であってもよい。2次抗体として1次抗体に対するモノポリクローナル抗体を用いる場合は、2次抗体が1次抗体の単一の部位で結合する、つまり1つの1次抗体に対して1つの2次抗体が結合する。2次抗体として1次抗体に対するポリクローナル抗体を用いる場合は、2次抗体が1次抗体と複数の部位で結合する、つまり1つの1次抗体に対して複数の2次抗体が結合する。したがって、後者の場合は前者の場合よりも多くの、2次抗体の抗体修飾分子と特異的に結合するアビジンービオチン複合体(第1実施形態)または修飾ペルオキシダーゼ(第2実施形態)を結合させることが可能となる。
(抗体修飾分子)
抗体修飾分子は、核酸プローブに間接的にビオチン(第1実施形態:ABCを結合させる拠点としてのもの)またはペルオキシダーゼ(第2実施形態)を結合させるために、1次抗体または2次抗体に導入される分子であり、結合部位増幅工程の実施形態に応じた分子が用いられる。すなわち、第1実施形態(ABC処理工程)においては、ABCを結合させるための、増幅の基点としてのビオチンが抗体修飾分子となり、第2実施形態(タイラマイド処理工程)においては、修飾ペルオキシダーゼを結合させるための、ペルオキシダーゼ修飾分子と特異的に結合する分子が抗体修飾分子となる。1次抗体を修飾する場合は1次抗体修飾分子、2次抗体を修飾する場合は2次抗体修飾分子と呼ぶときもあるが、単に修飾抗体分子と呼ぶときは1次抗体修飾分子および2次抗体修飾分子の総称として用いられる。
第2実施形態における抗体修飾分子は、抗体を修飾でき、かつ、それと特異的に結合する抗体以外の分子が存在する(抗体修飾分子に結合させるペルオキシダーゼ修飾分子として抗体は用いないので、特異的に結合する分子から抗体は除外される。)ものであれば特に限定されるものではない。そのような抗体修飾分子としては、例えばビオチンおよびアビジンが挙げられ、特にビオチンが好適である。後述するように、ビオチンおよびアビジンに対しては、それぞれアビジンおよびビオチンが、ペルオキシダーゼ修飾分子として用いられる。
(ペルオキシダーゼ修飾分子)
本発明の第2実施形態で用いるペルオキシダーゼ修飾分子としては、抗体修飾分子または核酸プローブ修飾分子に対して特異的に結合する分子を使用する。例えば、抗体修飾分子または核酸プローブ修飾分子としてビオチンを用いた場合は、ペルオキシダーゼ修飾分子としてアビジン、好ましくはストレプトアビジンを使用する。
(タイラマイド修飾分子)
本発明の第2実施形態で用いるタイラマイド修飾分子は、核酸プローブの周辺に蛍光ナノ粒子を結合させるための分子である。タイラマイド修飾分子は、タイラマイドを修飾でき、かつ、それと特異的に結合する抗体以外の分子(タイラマイド修飾分子に結合させる蛍光ナノ粒子修飾分子として抗体は用いないので、特異的に結合する分子から抗体は除外される。)が存在するものであれば特に限定されるものではない。そのようなタイラマイド修飾分子としては、抗体修飾分子と同様、例えばビオチンおよびアビジンが挙げられ、特にビオチンが好ましい。
なお、本発明の第2実施形態において、修飾ペルオキシダーゼが結合する抗体修飾分子または核酸プローブ修飾分子と、修飾蛍光ナノ粒子が結合するタイラマイド修飾分子は、同一であってもよいし(例えば共にビオチン)、異なっていてもよい(例えば前者がジニトロフェノール、後者がビオチン)が、同一であれば、修飾ペルオキシダーゼが結合しなかった未反応の核酸プローブ修飾分子があったとしても、そこに修飾蛍光ナノ粒子が結合でき、結果的に標的核酸を標識する蛍光ナノ粒子を増やすことができる可能性があるため好ましい。
(蛍光ナノ粒子修飾分子)
本発明の第1実施形態、第2実施形態のいずれにおいても用いる蛍光ナノ粒子修飾分子としては、ビオチン(第1実施形態)またはタイラマイド修飾分子(第2実施形態)に対して特異的に結合する分子を使用する。例えば、ビオチンに対しては、アビジン、好ましくはストレプトアビジンを蛍光ナノ粒子修飾分子として使用することができる。
(タイラマイドおよびペルオキシダーゼ)
本発明の第2実施形態では、タイラマイド(チラミドと呼ばれることもある。)を基質として、ペルオキシダーゼをその基質を活性化する作用を有する酵素として利用する。ペルオキシダーゼ(例えば、HRP:西洋ワサビペルオキシダーゼ)は、過酸化物(例えば過酸化水素)に作用してフリーラジカルを生成し、フリーラジカル連鎖反応により、タイラマイドを活性化(ラジカル化)する。つまり、過酸化物の存在化にペルオキシダーゼとタイラマイドを反応させる処理により、タイラマイドを活性化することができる。活性化されたタイラマイドは、詳細は未解明のところがあるが、おそらく複数のタイラマイド同士が凝集して析出することで、核酸プローブ周辺の分子に結合(沈着)する。このような処理のための適切な条件、たとえば反応溶液の塩濃度、pHおよび温度など、一般的な条件に準じて調製すればよい。
(修飾タイラマイドおよび修飾ペルオキシダーゼの作製方法)
修飾タイラマイドおよび修飾ペルオキシダーゼは、いずれも公知の手法を用いて作製することができる(例えばUS5196306:特許文献2および特表2013−531801:特許文献3参照)。例えば、ビオチンで修飾されたタイラマイドは、試薬を用いてタイラマイドとビオチンとにそれぞれ反応性官能基を導入し、これらの官能基同士を反応させて共有結合を形成させることにより作製することができる。必要に応じて、タイラマイドとビオチンの間(つまりそれらが有する官能基同士の間)にリンカーを介在させてもよい。なお、ビオチンとタイラマイドとのコンジュゲートは市販されており、容易に入手することができる。また、例えばアビジンで修飾されたペルオキシダーゼも、試薬を用いてペルオキシダーゼとアビジンとにそれぞれ反応性官能基を導入し、これらの官能基同士を反応させて共有結合を形成させることにより作製することができる。必要に応じて、ペルオキシダーゼとアビジンの間(つまりそれらが有する官能基同士の間)にリンカーを介在させてもよい。
(蛍光ナノ粒子)
本発明では、目的とする遺伝子を蛍光標識するための物質として、蛍光ナノ粒子を使用する。蛍光ナノ粒子は、ナノサイズの(直径が1μm以下の)粒子状の蛍光体であり、1粒子で十分な輝度を有する蛍光を発することのできるものである。このような蛍光体は、蛍光体集積ナノ粒子および無機蛍光ナノ粒子に大別することができる。なお、単独の蛍光色素は、本発明では十分な輝度を有する蛍光を発することができないため用いられない。蛍光体集積ナノ粒子には、蛍光色素内包ナノ粒子および無機蛍光体集積ナノ粒子が包含される。無機蛍光体ナノ粒子には、量子ドットおよび炭素ドットが包含される。
蛍光ナノ粒子は、撮影される染色画像において所望の波長の蛍光(色)を発するものを選択すればよい。また、蛍光標識の対象とする生体分子が複数ある場合は、それぞれに対応した異なる波長の蛍光を発する、複数種類の蛍光ナノ粒子を組み合わせて用いればよい。
(無機蛍光体ナノ粒子)
本発明では無機蛍光体ナノ粒子として、量子ドットおよび炭素ドットを用いることができる。これらの無機蛍光体ナノ粒子は、次に述べるような無機蛍光体集積ナノ粒子を調製しなくても単独で、観察可能な輝度を有する輝点の輝度を構成することができる。
量子ドットとしては、II−VI族化合物、III−V族化合物、又はIV族元素を成分として含有する量子ドット(それぞれ、「II−VI族量子ドット」、「III−V族量子ドット」、「IV族量子ドット」ともいう。)のいずれかを用いることができる。具体的には、国際公開WO2012/133047号公報に例示されたCdSe等の粒子ドットを挙げることができる。これらの無機蛍光体ナノ粒子は、いずれかの種類を単独で用いても、複数種を併用してもよい。
また、上記量子ドットをコアとし、その上にシェルを設けた量子ドットを用いることもできる。以下、シェルを有する量子ドットの表記法として、コアがCdSe、シェルがZnSの場合、CdSe/ZnSと表記する。具体的には、国際公開WO2012/133047号公報に例示されたCdSe/ZnS等を挙げることができるが、これらに限定されない。
量子ドットは必要に応じて、有機ポリマー等により表面処理が施されているものを用いてもよい。例えば、市販されている表面カルボキシ基を有するCdSe/ZnS(インビトロジェン社製)、表面アミノ基を有するCdSe/ZnS(インビトロジェン社製)等を用いることが出来る。
一方、炭素ドットは、従来の量子ドットと違い有害元素や希少金属を使用しないため、近年注目されている蛍光体である。炭素ドットには、グラフェン量子ドット、炭素ナノドット、ポリマードットなどが包含される。炭素ドットは公知の物質であり、その詳細については、例えばNano Research DOI10.1007/s12274-014-0644-3, Shoujun Zhu et al., The photoluminescence mechanism in carbon dots (graphene quantum dots, carbon nanodots and polymer dots): current state and future perspective, 2014を参照することができる。
例えば、グラフェン量子ドットの一種である炭素ドットは様々な炭素源(グラファイトパウダー、カーボンロッド、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ、カーボンブラック等)を酸化切断することにより製造される。この過程で、前記炭素源は小さな分子に切断され、表面が酸性基に修飾されることにより、炭素ドットが生じる。一般的な酸化切断方法は、濃酸による酸化(硝酸または硫酸/硝酸混合物)である。
炭素ドットは製造するにあたり、2段階の工程がある。1段階目は、黒鉛由来の物質を酸化黒鉛シートに変える工程であり、この工程は通常Hummres法を目的に応じて変更して実施される。2段階目は、種々の公知の切断方法を用いることにより、酸化黒鉛シートから炭素ドットを製造する工程である。
前記炭素源を小分子に切断する方法としては、アーク放電、レーザー照射および反応性イオンエッチング(RIE)を用いたナノリソグラフィー等の物理的方法や、電気化学、水熱/ソルボサーマル酸化等の方法が挙げられる。
一方、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ケトン基およびアミノ基を有する小分子およびポリマーからも脱水および炭化処理を行うことによって、炭素ドットを製造することができる。
脱水および炭化処理方法としては、水熱、マイクロ波−水熱、プラズマ−水熱、マイクロ波、燃焼、濃酸熱分解およびマイクロリアクターによる炭化等が挙げられる。
(蛍光体集積ナノ粒子)
蛍光体集積ナノ粒子は蛍光色素または無機蛍光体ナノ粒子(量子ドット、炭素ドット等)を集積したものである。本発明では蛍光体集積ナノ粒子として、蛍光色素集積ナノ粒子および無機蛍光体集積ナノ粒子を使用することができる。このような蛍光体集積ナノ粒子を用いることで、単独の蛍光色素または無機蛍光体ナノ粒子と比較して、1粒子当たりの発する蛍光の量、すなわち所定の生体分子を標識する輝点の輝度を高めることができる。
蛍光色素集積ナノ粒子の作製に用いる蛍光色素としては、例えば、フルオレセイン系色素、ローダミン系色素、Alexa Fluor(登録商標、インビトロジェン社製)系色素、BODIPY(登録商標、インビトロジェン社製)系色素、カスケード(登録商標、インビトロジェン社)系色素、クマリン系色素、NBD(登録商標)系色素、ピレン系色素、シアニン系色素、ペリレン系色素、オキサジン系色素など、低分子有機化合物(ポリマー等の高分子有機化合物ではないもの)からなる群から選択される蛍光色素が挙げられる。中でも、スルホローダミン101およびその塩酸塩であるTexasRed(登録商標)などのローダミン系色素や、ペリレンジイミドなどのペリレン系色素は、比較的耐光性が高いため好ましい。一方、無機蛍光体集積ナノ粒子の作製に用いる無機蛍光体としては、前述したような、無機蛍光体ナノ粒子として単独で用いることのできる物質が挙げられる。
(蛍光体集積ナノ粒子の製造方法)
本発明で用いられる蛍光体集積ナノ粒子の製造方法は、特に制限されず、公知の方法により製造することができる。一般的には、樹脂またはシリカを母体として蛍光体をまとめ上げる(当該母体の内部または表面に蛍光体を固定化する)製造方法を用いることができる。例えば、蛍光体集積ナノ粒子の母体として使われる樹脂は、熱硬化性樹脂であっても、熱可塑性樹脂であってもよい。各種の樹脂についての具体例およびこれらの樹脂を母体として製造される蛍光体集積ナノ粒子の製造方法は公知の文献(WO2014/136776)に準じる。
さらに、例えば、蛍光色素を内包したシリカナノ粒子はラングミュア 8巻 2921ページ(1992)に記載されているFITC内包シリカ粒子の合成を参考に合成することができる。FITCの代わりに所望の蛍光有機色素を用いることで種々の蛍光色素内包シリカナノ粒子が合成できる。半導体ナノ粒子を内包したシリカナノ粒子はニュー・ジャーナル・オブ・ケミストリー33巻561ページ(2009)に記載されているCdTe内包シリカナノ粒子の合成を参考に合成することができる。
蛍光色素集積ナノ粒子、無機蛍光体集積ナノ粒子などの蛍光体集積ナノ粒子の平均粒子径は、目的とする遺伝子を標識したときに蛍光を発する輝点として適切に観察できる範囲内であれば特に限定されないが、そのような輝点の蛍光観察にとって好適なものとする観点から、蛍光体集積ナノ粒子の平均粒子径は20nm以上300nm以下であることが好ましく、20nm以上100nm以下であることがより好ましい。
量子ドット、炭素ドットなどの無機蛍光体ナノ粒子の平均粒子径も、目的とする遺伝子を標識したときに蛍光を発する輝点として適切に観察できる範囲内であれば特に限定されないが、そのような輝点の蛍光観察にとって好適なものとする観点から、特に核内に移行して目的とする遺伝子を標識しやすくする観点から、無機蛍光体ナノ粒子の平均粒子径は1nm以上300nm以下であることが好ましく、1nm以上20nm以下であることがより好ましい。
蛍光ナノ粒子の平均粒子径の測定は、当該分野で知られた方法により行うことができ,たとえば、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて十分な数(たとえば1000個)の蛍光体ナノ粒子の粒径を測定した後、その算術平均として算出される。
(修飾蛍光ナノ粒子の作製方法)
修飾蛍光ナノ粒子は、公知の手法を用いて作成することができる。例えば、蛍光ナノ粒子として蛍光体集積ナノ粒子(蛍光色素集積ナノ粒子または無機蛍光体集積ナノ粒子)を用いる場合、試薬等を用いて蛍光体集積ナノ粒子の表面と蛍光ナノ粒子修飾分子とにそれぞれ反応性官能基を導入し、これらの官能基同士を結合させることにより、修飾された蛍光体集積ナノ粒子を作製することができる。蛍光体集積ナノ粒子表面の修飾に際しては、その母体の材質(樹脂、シリカ等)を考慮して、適切な試薬等を用いるようにする。また、必要に応じて、アビジンと蛍光体集積ナノ粒子の間(つまりそれらが有する官能基同士の間)にリンカーを介在させてもよい。反応性官能基の組み合わせの例としては、NHSエステル基−アミノ基、チオール基−マレイミド基の組み合わせ等を例示することができる。例えば、(i)シランカップリング剤を用いて蛍光体集積ナノ粒子の表面をあらかじめアミノ基で修飾しておき、(ii)一方でストレプトアビジンにN−スクシンイミジル−S−アセチルチオアセテートを反応させて、ストレプトアビジンが有するアミノ基に、アセチル基で保護されたチオール基を連結し、(iii)クロスリンカーとして、一端にアミノ基と反応するNHS基を有し、他端にチオール基と反応するマレイミド基を有するポリエチレングリコール鎖(例えば「SM(PEG)12」、サーモサイエンティフィック社)を用意し、(iv)蛍光体集積ナノ粒子表面のアミノ基と、クロスリンカーのNHS基を反応させて共有結合させ、(v)次いでストレプトアビジンのチオール基を脱保護した後、クロスリンカーのマレイミド基と反応させることにより、ストレプトアビジンで修飾された蛍光体集積ナノ粒子が得られる。
蛍光ナノ粒子として無機蛍光体ナノ粒子(量子ドット、炭素ドット等)を用いる場合も、上記と同様、試薬等を用いて無機蛍光体ナノ粒子の表面と蛍光ナノ粒子修飾分子とにそれぞれ反応性官能基を導入し、または製法によって炭素ドットが有する官能基を利用し、これらの官能基同士を結合させることにより、修飾された無機蛍光体ナノ粒子を作製することができる。
なお、蛍光ナノ粒子の表面を修飾する蛍光ナノ粒子修飾分子の数(修飾分子数)は、図1および2では模式的に、1つの蛍光ナノ粒子につき1つ(1:1)として描かれているが、蛍光ナノ粒子の粒子径などの条件によって変動するものであり、1:1に限定されるものではない。例えば、蛍光ナノ粒子修飾分子としてストレプトアビジンを用いる場合、分子量が約52000のタンパク質であるストレプトアビジンの分子サイズを考慮すれば、蛍光ナノ粒子の平均粒子径が比較的大きければ(例えば300nm程度)、1つの蛍光ナノ粒子につき複数(例えば数百〜数千程度)のストレプトアビジンを結合させることが可能であるし(1:多)、逆に蛍光ナノ粒子の平均粒子径が比較的小さければ(例えば1nm程度)、1つのストレプトアビジンに複数の蛍光ナノ粒子が結合する、つまり1つの蛍光ナノ粒子あたりの修飾分子数が1に満たない(多:1)ことが考えられる。一般的に、蛍光ナノ粒子表面の修飾分子数が多いほど、蛍光ナノ粒子が結合可能な部位と結合できる確率は高くなるため好ましいといえるが、病理診断等の用途に応じた適切な起点の観察が行える範囲で、修飾分子数は適宜調節することができる。
−病理標本−
本発明に係る病理標本は、本発明のFISH染色方法における結合部位増幅工程(ABC処理工程またはタイラマイド処理工程)によって増幅された複数の結合部位に蛍光ナノ粒子が結合してなる、核酸のFISH染色がされた病理標本である。
−病理診断−
本発明のFISH染色方法の用途は特に限定されるものではないが、基本的には従来の病理標本と同様の用途を有し、典型的には、核酸に含まれる特定の遺伝子を定量することで病理診断を行うための、例えば疾患の診断または治療にとって有用な情報を取得するための、本発明に係る病理標本を調製するために利用される。すなわち、診断対象から採取した組織切片を用いて作製されたスライド(検体スライド)を、本発明に係る核酸のFISH染色方法および必要に応じて組み合わせされるその他の染色方法に基づいて染色し、得られた病理標本(染色その他処理が施されて検査の対象とすることが可能となった検体スライド)の顕微鏡観察および/またはその撮影画像の画像処理することにより、特定の遺伝子を定量するなどの検査をして、病理診断を行うことができる。
このような病理診断は、検体スライドを染色して病理標本を調製するまでの段階(病理標本調製段階)、すなわち本発明に係る核酸のFISH染色方法が実施される段階と、調製された病理標本を用いて検査をし、所望の情報を取得するまでの段階(病理標本検査段階)とに大別することができる。
FISH用の病理標本調製段階には、一般的に、検体スライド作製工程(固定処理、脱水処理、パラフィン包埋処理、薄切処理等)、標本前処理工程(脱パラフィン処理、熱処理、プロテアーゼ処理等)、染色工程(DNA変性処理、FISH染色処理、後固定処理、核染色処理等)および標本後処理工程(洗浄処理、脱水処理、溶媒置換処理、封入処理等)が含まれる。本発明のFISH染色方法は、上記染色工程におけるFISH染色処理および後固定処理を行うために利用することができる。すなわち、本発明のFISH染色方法で規定するハイブリダイゼーション工程、結合部位増幅工程、および蛍光ナノ粒子反応工程は、染色工程におけるFISH染色処理のための手順として、また本発明のFISH染色方法でさらに行うことが好ましい固定化工程は、染色工程における後固定処理として、それぞれ組み込むことができる。
以下、本発明のFISH染色方法を利用する場合の染色工程について、より具体的な手順の一例を記載する。FISH用の染色標本調製段階に含まれるその他の工程、すなわち標本作製工程、標本前処理工程および標本後処理工程、ならびに染色標本検査段階は、従来のFISH染色方法を利用した一般的な病理標本調製段階(例えばWO2015/141856:特許文献1参照)と同様にして行うことができる。
(染色工程)
(1)DNA変性処理
標本前処理工程を経た検体スライドに対して、まずDNAの変性処理を行う。DNAの変性処理は常法に従って、熱変性によっておこなってもよいし、ホルムアミド溶液などの変性溶液で処理することによりおこなってもよい。また、次に述べるFISH染色処理に含まれるハイブリダイゼーションを行う際に、染色体の二本鎖DNAを解離させる(変性)とともに一本鎖DNAと核酸プローブとの結合(ハイブリダイゼーション)を促進することのできる成分を含むハイブリダイゼーション用バッファー(例えばIQFISH FFPE Hybridization Buffer, Agilent Technologies)を用いることによって、DNA変性処理とハイブリダイゼーションとを同時に行うようにしてもよい。
(2)FISH染色処理
本発明を利用して病理標本を調製する場合、FISH染色処理は、前述したような本発明のFISH染色方法におけるハイブリダイゼーション工程、結合部位増幅工程および蛍光ナノ粒子反応工程に準じた処理となる。
(2−1)ハイブリダイゼーション工程
検体スライドに修飾核酸プローブ溶液を滴下し、検体に含まれる標的核酸と修飾核酸プローブ溶液を接触させるようにして、ハイブリダイゼーションを行う。この際、ハイブリダイゼーションを促進する成分を含む(前述したように、さらにDNAを変性させる成分を含んでいてもよい)緩衝液を添加することができる。
修飾核酸プローブは、次に行う結合部位増幅工程の実施形態に応じた、所定の分子で修飾された核酸プローブである。そのような修飾核酸プローブをあらかじめ作製し、適切な濃度の溶液を調製して、このハイブリダイゼーション工程で用いるようにする。
ハイブリダイゼーションの反応条件については、常法に従って、用いる核酸プローブのGC含有率(Tm値)、ハイブリダイゼーションの反応系に存在する1価の陽イオンの濃度(M)、反応系のホルムアミド濃度(%)などにより、核酸分子が染色体上の目的遺伝子の塩基配列に結合する際の精度が変化することを考慮して、適切な反応温度および反応時間を設定すればよい。
(2−2)結合部位増幅工程
ハイブリダイゼーション工程を経た検体スライドに、結合部位増幅工程の実施形態に応じた溶液を順次滴下し、核酸プローブに修飾した分子を起点にした結合により、または核酸プローブ周辺の分子への結合により、蛍光ナノ粒子が結合可能な部位を増幅する。
すなわち、本発明の第1実施形態に準じる場合は、例えば1次抗体溶液、ビオチン修飾2次抗体溶液、ストレプトアビジン溶液、ビオチン化ペルオキシダーゼ(例えばビオチン化HRP)溶液を順次滴下する。本発明の第2実施形態に準じる場合は、例えば、過酸化水素水等の過酸化物水溶液、修飾ペルオキシダーゼ溶液、修飾タイラマイド溶液を順次滴下する。修飾2次抗体、修飾ペルオキシダーゼ、修飾タイラマイドはそれぞれ前述したようにしてあらかじめ作製し、適切な濃度の溶液を調製して、このハイブリダイゼーション工程で用いるようにする。
核酸プローブ修飾分子への1次抗体の結合および1次抗体への修飾2次抗体の結合(第1実施形態および第2実施形態);ビオチン修飾2次抗体へのABCの結合(第1実施形態);抗体修飾分子または核酸プローブ修飾分子への修飾ペルオキシダーゼの結合(第2実施形態);修飾ペルオキシダーゼと修飾タイラマイドの反応(第2実施形態)などはそれぞれ、公知の結合条件または反応条件に準じて設定された、適切な温度、時間、その他の条件の下で行えばよい。
(2−3)蛍光ナノ粒子結合工程
結合部位増幅工程を経た検体スライドに、修飾蛍光ナノ粒子の溶液を滴下し、ABCに含まれるビオチン(第1実施形態)またはタイラマイド修飾分子(第2実施形態)と接触させて、それらに修飾蛍光ナノ粒子を結合させる。この工程を終えることで、最終的に個々の標的核酸を多数の蛍光ナノ粒子で標識することができる。
修飾蛍光ナノ粒子は、前述したように結合部位増幅工程の実施形態に応じた、所定の分子で修飾された蛍光ナノ粒子である。そのような修飾蛍光ナノ粒子をあらかじめ作製し、適切な濃度の溶液を調製して、この蛍光ナノ粒子結合工程で用いるようにする。
ABCに含まれるビオチン(第1実施形態)またはタイラマイド修飾分子(第2実施形態)への修飾蛍光ナノ粒子の結合は、それぞれ公知の結合条件または反応条件に準じて設定された、適切な温度、時間、その他の条件の下で行えばよい。
(3)後固定処理
本発明を利用して病理標本を調製する場合、後固定処理は、前述したような本発明のFISH染色方法における固定化工程に準じた処理となる。
すなわち、FISH染色処理を経た検体スライドに、パラホルムアルデヒド溶液等の適切な濃度の固定化剤を滴下し、標的核酸、修飾核酸プローブ、修飾蛍光ナノ粒子、およびそれらを連結するために介在している結合部位増幅工程に用いられた物質(修飾タイラマイド、ABC、必要に応じて1次抗体、修飾2次抗体等)と接触させ、適切な温度で(通常は室温でよい)、適切な時間、反応させるようにする。これらの反応条件は適宜調節することができるが、例えば固定化剤としてパラホルムアルデヒド溶液を用いる場合、濃度は1〜5w/w%程度、温度は室温程度、時間は10〜15分程度とすることができる。
(4)核染色工程
FISH染色処理または任意で行われる後固定処理の後、通常はさらに、細胞数をカウントするために核染色を行う。核染色試薬としてはDAPIが一般的に用いられるが、Hoechst 33258、Hoechst 33342またはその他の核染色試薬を用いることもできる。
(5)その他の処理
染色工程には、必要に応じてその他の工程例を含めることができる。例えば、第1実施形態および第2実施形態において必要に応じて用いられる1次抗体を添加する前に、その抗体の組織切片中の非特異吸着を抑えるために市販のブロッキング剤を用いてブロッキング処理を行うことが好ましい。また、例えばハイブリダイゼーションの後、市販の洗浄剤を用いて洗浄処理を行うことが好ましい。
[作製例1]HER2遺伝子用DNP修飾核酸プローブの作製
0.2mLPCRストリップチューブ(バイオ・ラッド社)内に5×GoTaq reaction buffer(プロメガ社)5μL、GoTaq DNA polymerase(5U/μL、プロメガ社) 0.25μL、Human Genomic DNA(100ng/μL、タカラバイオ社)0.25μL、dATP、dGTP、dCTP(全て10mM、タカラバイオ社)各0.5μL、dTTP(1mM、タカラバイオ社)3.75μL、DNP−11−UTP(1mM、パーキンエルマー社)1.25μL、ヒトHER2遺伝子のForward primer(配列:5'-CGATGTGACTGTCTCCTCCC-3'、10μM)0.5μL、当該Forward primerに対応するReverse primer(配列:5'-ATCCTACTCCATCCCAAGGCC-3'、10μM)0.5μL、milliQ7μLの計25μLの溶液を調製した。
ストリップチューブをサーマルサイクラー(Chromo4、バイオ・ラッド社)にセット後、以下に示すステップ1からステップ5までの方法にてPCRを実施して約200塩基対のDNP修飾核酸プローブとなるPCR産物を調製した。PCR産物はPCR purification kit(キアゲン社)を用いて精製した。
ステップ1:95℃、3分
ステップ2:95℃、30秒
ステップ3:56℃、30秒
ステップ4:ステップ2に戻る(39回くり返す)
ステップ5:72℃、3分
上記の方法で、HER2領域の約200塩基対にハイブリダイズする、DNPで修飾された核酸プローブを1種類準備した。さらに、異なる塩基配列のForward primerおよびReverse primerを用いたこと以外は同様にして、HER2領域の他の場所にハイブリダイズする約200塩基対のプローブを4種類準備し、これら5種類を混合して一つのHER2−FISHプローブとした。目標とするHER2領域にハイブリダイズする核酸プローブの総塩基長は約1000塩基となる。
[作製例2]アビジン修飾蛍光色素集積メラミン樹脂ナノ粒子の作製
(i)蛍光色素集積メラミン樹脂ナノ粒子の合成
スルホローダミン101(「Sulforhodamine 101」、シグマアルドリッチ社製、TexasRed色素)2.5mgを純水22.5mLに溶解した後、ホットスターラーにより溶液の温度を70℃に維持しながら20分間撹拌した。撹拌後の溶液に、メラミン樹脂「ニカラックMX−035」(日本カーバイド工業社製)1.5gを加え、さらに同一条件で5分間加熱撹拌した。
撹拌後の溶液にギ酸100μLを加え、溶液の温度を60℃に維持しながら20分間攪拌した後、該溶液を放置して室温まで冷却した。これにより、蛍光色素(テキサスレッド)集積メラミン樹脂ナノ粒子(以下、粒子Xと略称する。)の分散液を得た。冷却した後の分散液を複数の遠心用チューブに分注して、12,000rpmで20分間遠心分離して、分散していた粒子Xを沈殿させて、上澄みを除去した。その後、回収した粒子Xをエタノールと水で洗浄した。粒子Xの平均粒子径は80nmであった。
(ii)蛍光体集積メラミン樹脂ナノ粒子表面へのマレイミド基の連結
洗浄後の粒子X0.1mgをエタノール1.5mL中に分散し、アミノプロピルトリメトキシシラン「LS−3150」(信越化学工業社製)2μLを加えて8時間、撹拌しながら室温で反応させて表面アミノ化処理を行った。
表面がアミノ化された粒子Xの濃度を、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)を2mM含有したPBSを用いて3nMに調整し、この溶液に最終濃度10mMとなるようリンカー試薬「SM(PEG)12」(サーモサイエンティフィック社製)を混合して、撹拌しながら室温で1時間反応した。
反応液を10,000Gで20分間遠心分離を行い、上澄みを除去した後、EDTAを2mM含有したPBSを加え、沈降物を分散させ、同一条件で再度遠心分離を行った。同様の手順による洗浄を3回行うことで、末端にマレイミド基を有するPEG鎖で表面修飾された粒子Xを得た。
(iii)ストレプトアビジンへのチオール基の連結
一方、スルフヒドリル基を有するストレプトアビジンの作製は以下のように行った。まず、1mg/mLに調整したストレプトアビジン(和光純薬工業社製)40μLに対して、64mg/mLに調整したN−スクシンイミジル−S−アセチルチオアセテート(N−succinimidyl S−acetylthioacetate,SATA、pirce社製)70μLを室温で1時間より反応させた。すなわち、ストレプトアビジンのアミノ基に対して保護されたチオール基(−NH−CO−CH2−S−CO−CH3)を導入した。
その後、公知のヒドロキシルアミン処理により、保護されたチオール基から遊離のチオール基(−SH)を生成して、ストレプトアビジンにチオール基(−SH)を付加する処理を行った。
このストレプトアビジン溶液をゲルろ過カラム(Zaba Spin Desalting Columns:フナコシ)により脱塩し、チオール基が連結された、つまり末端にマレイミド基を有するPEG鎖で表面修飾された粒子Xに結合可能な、ストレプトアビジンを得た。
(iv)蛍光体集積メラミン樹脂ナノ粒子とストレプトアビジンとの結合
マレイミド基を有するPEG鎖で表面修飾された粒子Xと、チオール基が連結されたストレプトアビジンとを、EDTAを2mM含有したPBS中で混合し、1時間反応させることで、マレイミド基とチオール基を共有結合させた。10mMメルカプトエタノールを添加し、反応を停止させた。得られた溶液を遠心フィルターで濃縮後、精製用ゲルろ過カラムを用いて未反応のストレプトアビジン等を除去して、ストレプトアビジンで修飾された蛍光色素集積メラミン樹脂ナノ粒子を得た。
[実施例1]蛍光色素集積ナノ粒子を用いた第2実施形態(タイラマイド処理工程、ポリクローナル2次抗体使用)
(脱パラフィン処理)
HER2陽性染色対照標本の検体スライド(ロシュ社製「HER2 Dual ISH 3−in−1 コントロールスライド」)を、以下の(1)〜(5)の順で処理することで脱パラフィン処理を行った。(1)キシレンに室温で5分間、浸漬する。この操作をもう1回繰り返す(合計2回行う)。(2)検体スライドを100%エタノール、室温で2分間、浸漬する。この操作をもう1回繰り返す(合計2回行う)。(3)検体スライドを70%エタノール、室温で2分間浸漬する。(4)検体スライドをmilliQ水で、室温で2分間浸漬する。
(熱処理)
DNAプローブの到達性を向上させるために、上記検体スライドに対し以下の(1)〜(3)の順で熱処理を行い、細胞膜及び核膜の蛋白質の除去を行った。(1)MES buffer(HER2 FISH PharmDx「ダコ」Vial 1をmilliQ水で20倍に希釈)で95〜99℃,10分間処理したのち、室温で15分間処理する。(2)検体スライドをTris wash buffer(HER2 FISH PharmDx「ダコ」Vial 6をmilliQ水で20倍に希釈)に3分間浸漬し、洗浄する。(3)この洗浄操作をもう1回繰り返す。
(プロテアーゼ処理)
処理を行った検体スライドに対して、以下の(1)〜(4)の処理をこの順で行うことでプロテアーゼ処理を行った。(1)熱処理した検体スライドを取り出し、ペーパータオルにスライドグラスの下端をつけて余分な洗浄緩衝液を取り除く。(2)検体スライド上にプロテアーゼ溶液(HER2 FISH PharmDx「ダコ」Vial 2A)を5〜6滴滴下し、室温で10分間反応させる。この浸漬処理は、細胞膜及び核膜のタンパク質、特にコラーゲンの分解をするためのものである。(3)検体スライドをTris wash buffer(HER2 FISH PharmDx「ダコ」Vial 6をmilliQ水で20倍に希釈)に3分間浸漬し、洗浄する。(4)この洗浄操作をもう1回繰り返す。
(脱水)
検体スライドを風乾した後、まず70%エタノールに室温で2分間浸漬し、次に100%(脱水)エタノールに室温で2分間浸漬した。その後、検体スライドを取り出し、冷風で風乾し、室温で10分間以上放置した。
(変性およびハイブリダイゼーション)
上記脱水処理を行った検体スライドに対して以下の(1)〜(3)の処理をこの順で行うことで、作製例1により得られたDNP修飾核酸プローブを用いたハイブリダイゼーション処理を行った。(1)検体スライドのハイブリダイゼーション領域に、5ng/μLに調製したDNP修飾核酸プローブを1μLと、IQFISH FFPE Hybridization Buffer(アジレント・テクノロジー社)を9μL添加する。スライド上でピペッティングによる混合後、すぐに、22mm×22mmのカバーグラスを被せ、DNP修飾核酸プローブ溶液を均一に広げる。ハイブリダイゼーション領域に気泡が入らないようにする。(2)ペーパーボンド(コクヨ社)でカバーグラスをシールする。(3)ハイブリダイザー(ダコ社)に検体スライドを配置して、80℃で10分間、その後45℃で一晩、変性およびハイブリダイゼーションを行う。
(検体スライドの洗浄)
上記ハイブリダイゼーション処理を行った検体スライドに対して以下の(1)〜(6)の処理をこの順で行うことで、検体スライドの洗浄処理を行った。(1)ポストハイブリダイゼーション洗浄緩衝液:SSCwash Buffer(HER2 FISH PharmDx「ダコ」Vial 2AをmilliQ水で20倍に希釈したもの)をコプリンジャーに入れる。ポストハイブリダイゼーション洗浄緩衝液が63℃になるまで温浴槽で予備加熱をする。(2)ポストハイブリダイゼーション洗浄緩衝液を入れたコプリンジャーをもうひとつ用意し、室温に維持する。(3)ピンセットでペーパーボンドのシールを取り除く。室温に維持されたポストハイブリダイゼーション洗浄緩衝液が入ったコプリンジャーの中に検体スライドを入れて、カバーグラスを剥がす。(4)検体スライドを63℃に保たれたポストハイブリダイゼーション洗浄緩衝液の中に入れて10分間浸漬し、洗浄する。(5)Tris wash buffer(HER2 FISH PharmDx「ダコ」Vial 6をmilliQ水で20倍に希釈したもの)に室温で3分間浸漬し、洗浄する。この洗浄を再度繰り返す。(6)コプリンジャーから検体スライドを取り出し、遮光下で風乾する。
(ブロッキング)
ブロッキングはAntibody Diluent,Backgroud Reducing(ダコ社)100μLをスライド上に載せ、湿潤箱中、室温で30分間浸漬することで行った。
(DNP修飾核酸プローブと1次抗体の結合)
上記ブロッキング処理を行った検体スライドに対して以下の(1)〜(4)の処理をこの順で行うことで、DNP修飾核酸プローブと1次抗体の結合処理を行った。(1)キムタオル上でスライドを角がキムタオルにあたるように上下に振り、スライド上の溶液を落とした後、細胞周辺以外のスライド上のAntibody Diluent,Backgroud Reducing液をろ紙等で拭きとって、細胞表面のみウエットな状態とする。(2)1次抗体として抗DNPウサギモノクローナル抗体(ロシュ社製 Anti-DNP rabbit mAb)の溶液100μLを検体スライド上に滴下し、湿潤箱中、室温で60分間反応させ、DNP修飾核酸プローブに結合させる。(3)スライド上の溶液をキムタオル上で落としてから、PBSに5分間浸漬して洗浄する。(4)PBS洗浄操作を更に2回繰り返す。
(1次抗体とビオチン標識2次抗体の結合)
上記DNP修飾核酸プローブと1次抗体の結合処理を行った検体スライドに対して以下の(1)〜(4)の処理をこの順で行うことで、1次抗体とビオチン標識2次抗体の結合処理を行った。(1)キムタオル上でスライドを角がキムタオルにあたるように上下に振りスライド上の溶液を落とした後、細胞周辺以外のスライド上の溶液をろ紙等で拭きとって、細胞表面のみウエットな状態とする。(2)ビオチン標識2次抗体としてビオチン標識抗マウス・ウサギポリクローナルIgG抗体(ロシュ社製 Anti−mouse and rabbit Ab)の溶液100μLを検体スライド上に滴下し、湿潤箱中、室温で60分間反応させ、1次抗体に結合させる。(3)スライド上の溶液をキムタオル上で落としてから、PBSに5分間浸漬して洗浄する。(4)PBS洗浄操作を更に2回繰り返す。
(タイラマイド処理)
GenPoint(ダコ社)のキットを使用して、以下の(A1)〜(A4)および(B1)〜(B4)の処理をこの順で行うことで、タイラマイド処理を行った。
(A1)キムタオル上でスライドを角がキムタオルにあたるように上下に振りスライド上の溶液を落とした後、細胞周辺以外のスライド上の溶液をろ紙等で拭きとって、細胞表面のみウエットな状態とする。(A2)キットに含まれるストレプトアビジン修飾ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)溶液を、キット内の希釈液で100倍に希釈し、これを90μL、検体スライドに滴下し、湿潤箱中、室温で15分間反応を行う。(A3)TBST(Tris緩衝生理食塩水およびTween 20の混合液)に5分間浸漬して洗浄を行う。(A4)この洗浄操作を更に2回繰り返す。
(B1)上記(A4)の処理に続いて、キムタオル上でスライドを角がキムタオルにあたるように上下に振りスライド上の溶液を落とした後、細胞周辺以外のスライド上のホースラディッシュペルオキシダーゼ溶液をろ紙等で拭きとって、細胞表面のみウエットな状態とする。(B2)キットに含まれるビオチン標識タイラマイド溶液(この中に過酸化水素も入っていると考えられる。)を検体スライド上に3滴滴下し、湿潤箱中で室温で15分間反応を行う。(B3)TBSTに5分間浸漬して洗浄を行う。(B4)この洗浄操作を更に2回繰り返す。
(蛍光色素集積メラミン樹脂粒子の結合)
上記タイラマイド処理を行った検体スライドに対して以下の(1)〜(4)の処理をこの順で行うことで、蛍光色素集積メラミン樹脂粒子の結合処理を行った。(1)キムタオル上でスライドを角がキムタオルにあたるように上下に振りスライド上の溶液を落とした後、細胞周辺以外のスライド上のビオチン標識タイラマイド溶液をろ紙等で拭きとって、細胞表面のみウエットな状態とする。(2)作製例2により得られたストレプトアビジン修飾蛍光色素集積メラミン樹脂ナノ粒子の、Antibody Diluent,Backgroud Reducing液を用いて濃度を0.1nMに調整した溶液80μLを、検体スライド上に滴下し、室温で60分間反応させて、タイラマイドが有するビオチンと蛍光色素集積メラミン樹脂粒子に修飾されたストレプトアビジンとを結合させる。(3)スライド上の溶液をキムタオル上に落とし、検体スライドをPBSに5分間浸漬して洗浄を行う。(4)この洗浄操作を更に2回繰り返す。
(後固定)
上記蛍光色素集積メラミン樹脂粒子の結合処理を行った検体スライドに対して以下の(1)〜(3)の処理をこの順で行うことで、後固定処理を行った。(1)キムタオル上でスライドを角がキムタオルにあたるように上下に振りスライド上の溶液を落とした後、細胞周辺以外のスライド上の溶液をろ紙等で拭きとって、細胞表面のみウエットな状態とする。(2)検体スライド上に4%パラホルムアルデヒド溶液150μLを滴下し、湿潤箱中で、室温で10分間浸漬させる。(3)スライド上の溶液をキムタオル上に落とし、Tris EDTA緩衝液(Wako)に5分間浸漬して洗浄を行う。
(核染色)
上記後固定処理を行った検体スライドに対して以下の(1)〜(4)の処理をこの順で行うことで、DAPI(4',6-Diamidino-2-Phenylindole, Dihydrochloride)を用いた核染色処理を行った。(1)キムタオル上でスライドを角がキムタオルにあたるように上下に振りスライド上の溶液を落とした後、細胞周辺以外のスライド上の溶液をろ紙等で拭きとって、細胞表面のみウエットな状態とする。(2)0.01%のβ−メルカプトエタノールおよび1.43μMのDAPI(Invitrogen社)を含有する染色液150μLを検体スライドのハイブリダイゼーション領域に添加し、湿潤箱中、室温で15分間反応させ、細胞核を染色する。(3)検体スライド上の溶液をキムタオル上に落とし、Tris EDTA緩衝液(Wako)に室温で5分間浸漬して洗浄する。(4)検体スライドをPBS bufferに5分間浸漬し、洗浄する。
(封入)
上記核染色処理を行った検体スライドに対して以下の(1)〜(2)の処理をこの順で行うことで、封入処理を行った。(1)キムタオル上でスライドを角がキムタオルにあたるように上下に振りスライド上の溶液を落とした後、細胞周辺以外のスライド上の溶液をろ紙等で拭きとって、細胞表面のみウエットな状態とする。(2)非乾燥状態で検体スライド上にAquatex(MERCK社)を1滴ずつ加えて封入した後、カバーガラスを被せて、シグナルの計測まで検体スライドを遮光して保存する。
(観察)
以上の工程により作製された、FISH染色およびDAPI染色がなされた検体スライドを、蛍光顕微鏡「BZ−X710」(キーエンス社製)を用いて観察し、蛍光画像を取得した。対物レンズの倍率は100倍、DAPI、蛍光色素集積メラミン樹脂ナノ粒子の撮像時の励起時間はそれぞれ20msおよび500msとした。撮影された蛍光画像を図4[A]に示す。
[比較例1](ポリクローナル2次抗体、ストレプトアビジン修飾HRP)
「タイラマイド処理」を行わなかったこと以外は実施例1と同じ手順で、染色された検体スライドを調製し、その観察を行った。なお、この実施形態では、2次抗体に修飾されたビオチンに、ストレプトアビジンで修飾された蛍光色素集積メラミン樹脂粒子が結合することになる。撮影された蛍光画像を図4[B]に示す。
[実施例2]量子ドットを用いた第2実施形態(タイラマイド処理工程、ポリクローナル2次抗体使用)
修飾蛍光ナノ粒子として、ストレプトアビジン修飾された蛍光色素集積メラミン樹脂ナノ粒子に代えて、ストレプトアビジン修飾された量子ドット「SA−QD625」(Life technologies社)を用いたこと以外は、実施例1と同じ手順で、染色された検体スライドを調製し、その観察を行った。但し量子ドットの撮像時の励起時間は500msとした。量子ドットは、を使用した。撮影された蛍光画像を図5[A]に示す。
[比較例2]
「タイラマイド処理」を行わなかったこと以外は実施例2と同じ手順で、染色された検体スライドを調製し、その観察を行った。なお、この実施形態では、2次抗体に修飾されたビオチンに、ストレプトアビジンで修飾された量子ドットが結合することになる。撮影された蛍光画像を図5[B]に示す。
[考察]
図4[A]では、図4[B]では検知できない、DAPIで染色された(カラー写真では青色)核内の輝点(増幅されたHER2遺伝子の存在を表す、カラー写真では赤色)が検知できていることがわかる。なお、非特異染色として核外にも輝点が存在しているが、これはブロッキング液等の最適化で低減することができる。
図5[A]では、図5[B]では検知できない、DAPIで染色された核内の輝点(増幅されたHER2遺伝子の存在を表す)が検知できていることがわかる。なお、非特異染色として核外にも輝点が存在しているが、これはブロッキング液等の最適化で低減することができる。図5[A]では、蛍光色素集積ナノ粒子(平均粒子径80nm)より小さい量子ドット(平均粒子径20nm)を用いたため、図4[A]と比べ、核内のシグナル(散在した輝点)の増加が認められる。
1 標的核酸
2 核酸プローブ
3 核酸プローブ修飾分子
4 修飾核酸プローブ
10 モノクローナル1次抗体
20a モノクローナル2次抗体
20b ポリクローナル2次抗体
21 2次抗体修飾分子
22a 修飾モノクローナル2次抗体
22b 修飾ポリクローナル2次抗体
50 ビオチン
60 アビジン
70 ペルオキシダーゼ
71 ペルオキシダーゼ修飾分子
72 修飾ペルオキシダーゼ
80 アビジンービオチン複合体(ABC)
90a 活性化される前のタイラマイド
90b 活性化されたタイラマイド
91 タイラマイド修飾分子
92a 活性化される前の修飾タイラマイド
92b 活性化修飾タイラマイド
100 蛍光ナノ粒子
101 蛍光ナノ粒子修飾分子
102 修飾蛍光ナノ粒子

Claims (7)

  1. 標的とする核酸に、その塩基配列に対して相補的な塩基配列を有する、合計の塩基長が3000以下である核酸プローブをハイブリダイズさせる工程(ハイブリダイゼーション工程)と、
    下記工程(1)または(2)から選ばれる、蛍光ナノ粒子が結合可能な部位を増幅させる工程(結合部位増幅工程)と、
    工程(1):前記核酸プローブにあらかじめ直接的または間接的に増幅の起点としてのビオチンを結合させておき、当該ビオチンとアビジン−ビオチン複合体(ABC)に含まれるアビジンと結合させることにより、前記核酸プローブを、蛍光ナノ粒子と結合可能な部位としての前記ABCに含まれるビオチンで修飾する処理(ABC処理工程)
    工程(2):前記核酸プローブにあらかじめ直接的または間接的にペルオキシダーゼを結合させておき、過酸化物の存在下で、当該ペルオキシダーゼに、蛍光ナノ粒子と結合可能な分子で修飾されたタイラマイドを接触させることにより、前記核酸プローブの周辺に蛍光ナノ粒子と結合可能な部位を沈着させる処理(タイラマイド処理工程)
    前記結合部位に蛍光ナノ粒子を結合させる工程(蛍光ナノ粒子結合工程)とを含
    前記蛍光ナノ粒子結合工程の後、蛍光ナノ粒子が結合した部位から遊離することを防ぐ工程(固定化工程)を行い、
    前記固定化工程が、蛍光ナノ粒子を周辺のタンパク質と架橋させる工程、または蛍光ナノ粒子の周辺のタンパク質同士を架橋させる工程である、核酸のFISH(蛍光in situ ハイブリダイゼーション)染色方法。
  2. 前記結合部位増幅工程において、前記核酸プローブに間接的に増幅の起点としてのビオチン(工程1)またはペルオキシダーゼ(工程2)を結合させるために、
    前記核酸プローブをハプテンで修飾しておき、
    前記ハプテンで修飾された核酸プローブに、1次抗体として抗ハプテンポリクローナル抗体または抗ハプテンモノクローナル抗体を結合させた後、
    前記1次抗体に、2次抗体として前記1次抗体に対するポリクローナル抗体を結合させる、請求項1に記載の核酸のFISH染色方法。
  3. 前記ハプテンが、ジニトロフェノール、ジゴキシゲニンおよびFITC(フルオレセインイソチオシアネート)からなる群より選択される、請求項2に記載の核酸のFISH染色方法。
  4. 前記蛍光ナノ粒子が蛍光色素集積ナノ粒子であり、その平均粒子径が20nm〜300nmである、請求項1〜のいずれか1項に記載の核酸のFISH染色方法。
  5. 前記蛍光ナノ粒子が無機蛍光体集積ナノ粒子であり、その平均粒子径が20nm〜300nmである、請求項1〜のいずれか1項に記載の核酸のFISH染色方法。
  6. 前記蛍光ナノ粒子が量子ドットおよび炭素ドットからなる群より選択される無機蛍光体ナノ粒子であり、その平均粒子径が1nm〜300nmである、請求項1〜のいずれか1項に記載の核酸のFISH染色方法。
  7. 請求項1〜のいずれか1項に記載のFISH染色方法における、前記結合部位増幅工程により増幅された複数の結合部位に蛍光ナノ粒子が結合してなることを特徴とする、核酸のFISH染色がされた病理標本の製造方法
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