JP6729437B2 - 金属構造体およびその製造方法 - Google Patents

金属構造体およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、金属部材の表面に、当該表面を被覆するような耐食性膜を備えてなる金属構造体およびその製造方法に関する。
従来より、防食、防錆等の目的で使用される金属部材としては、一般に、Cr(クロム)やNi(ニッケル)等が添加された鉄系金属としたものが知られている。しかし、このようなCrやNiを添加した金属は、コストが高く、硬いために加工しにくい等の課題があった。
そこで、例えば金属部材の表面を、フッ素系樹脂等でコーティングすることが行われているが、このような樹脂系のコーティングは、自動車部品等が使用される高温環境に対して耐久性が不十分である。
このような課題を解決するため、例えば特許文献1に記載の金属積層体が提案されている。特許文献1に記載の金属積層体は、スチールによりなる金属部材と、金属部材の表面の一部を覆う高硬度および耐摩耗性を有する下地層と、下地層の上に原子層堆積法(ALD)により形成されたAl等によりなるALD層とを備える。特許文献1によれば、金属部材上に下地層を形成し、下地層の上にALD層を形成することにより、下地層の欠陥や亀裂等が生じている部位を埋めるようにALD層が形成される。これにより、酸が侵入しにくい層により被覆された金属積層体となり、耐食性を向上することができる。
特開2013−167012号公報
本発明者らは、耐食性に優れる特許文献1の金属構造体を参考に薄膜の耐食性膜を備えた金属構造体を試作し、自動車部品に求められる高温環境における耐食性試験を行った。その結果、十分な耐食性が得られなかった。このことから、特許文献1に記載された金属構造体相当の試作品は、本発明者らが検討した耐食性試験の環境には適しておらず、当該環境に合わせた改良が必要であることが判明した。
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、金属部材の表面を耐食性膜で被覆してなる耐食性の高い金属構造体およびその製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、請求項1に記載の金属構造体は、表面(11)を有する金属部材(10)と、表面を被覆するように形成された耐食性膜(20)と、を備える。このような構成において、耐食性膜は、表面側から順に、TiO膜(21)とHfO膜(22)とが交互に1回以上積層されてなり、HfO膜は、1.87〜8.40atm%のClを含有している。
これにより、薄膜でありながらも、耐食性能に優れた耐食性膜を備えた金属構造体となる。
請求項6に記載の金属構造体の製造方法は、表面(11)を有する金属部材(10)を用意することと、表面に表面を被覆するように耐食性膜(20)を原子層堆積法により形成することと、を含む。このような製造方法において、耐食性膜を形成することにおいては、表面上にTiO膜(21)を形成した後に、TiO膜を被覆するようにHfO膜(22)を形成し、HfO膜を形成することにおいては、HfO膜に1.87〜8.40atm%のClが含まれるように調整する。
これにより、ALDにより金属部材の形状に追従しつつ、濃度分布が均一に近い薄膜であって、耐食性能に優れた耐食性膜を備えた金属構造体を製造することができる。
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係の一例を示すものである。
第1実施形態の金属構造体を示す断面図である。 第1実施形態の金属構造体の製造工程を示す図である。 ALDにおける成膜温度を変えて作製した第1実施形態の金属構造体の耐食性膜における塩素(Cl)濃度を示す図である。 第1実施形態の金属構造体の耐食性膜の溶出試験の結果を示す図である。
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
(第1実施形態)
第1実施形態について、図1を参照して述べる。図1では、本実施形態の金属構造体であって、例えば6層により構成された耐食性膜20が形成された例について示している。この金属構造体は、例えば、高温、強酸性の環境で使用される自動車用部品等に適用されるものである。
本実施形態の金属構造体は、図1に示すように、金属部材10の表面11上にTiO膜21とHfO膜22とが交互に積層されることにより構成される耐食性膜20が形成された構成とされている。耐食性膜20は、本実施形態では、TiO膜21とHfO膜22とがこの順に交互に積層され、合計で6層の積層膜により構成されている。
金属部材10は、例えば炭素鋼やステンレス(SUS)などのFe(鉄)を主成分とする鉄系金属などによりなる。鉄系金属が金属部材10として用いられる場合には、焼き入れなどが施された焼き入れ部を表層部に有する鉄系金属が用いられてもよい。金属部材10は、表面11を有し、本実施形態では、例えば直方体形状とされているが、直方体形状に限らず、円柱形状、円錐形状などにされていてもよく、他の様々な形状とされていてもよい。金属部材10は、図1に示すように、表面11上に耐食性膜20が形成されている。
耐食性膜20は、図1に示すように、TiO膜21とHfO膜22とがこの順に交互に積層され、本実施形態では、TiO膜21とHfO膜22が合計で6層積層された構成とされている。
耐食性膜20は、金属部材10の表面11上に、例えばTiO膜21が形成され、その上にHfO膜22が形成され、この繰り返しによる積層が1回以上行われることにより形成される。なお、耐食性膜20の総膜厚や繰り返しによる積層数については、使用環境や金属構造体の構成等に応じて適宜設計変更されてもよく、任意の膜厚や積層数とされる。耐食性膜20を構成する各層の総数をnとし、金属部材10の表面11側から順に第1層、第2層、・・・第n層として、金属部材10の表面11に接して形成される第1層はTiO膜21であることが好ましい。TiO膜21は、金属部材10との密着性がHfO膜22よりも高く、HfO膜22とも密着することから、金属部材10の表面11と耐食性膜20との密着性がより向上するためである。また、耐食性膜20のうち第n層は、耐食性向上の観点から耐食性を有するHfO膜22であることが好ましい。
なお、耐食性膜20の積層方向における厚み(以下単に「膜厚」という)については、金属部材10の形状や求められる耐食性能などから適宜調整することができる。
TiO膜21は、金属部材10の表面11上もしくはHfO膜22上に原子気相成長法(ALD)により形成され、TiOを主成分とする薄膜である。金属部材10の表面11に対する法線方向を積層方向として、TiO膜21の膜厚については、耐食性能の確保の観点から、0.1〜6nmの範囲内であることが好ましく、2〜4nmの範囲内であることがより好ましい。
具体的には、TiO膜21は、結晶性を有するTiOによる膜であることから、その膜厚が厚すぎるとTiOが結晶成長し、配向の異なる結晶粒の境界である結晶粒界が生じ得る。TiO膜21に結晶粒界が生じると、この結晶粒界から酸性溶液等が侵入して耐食性膜20の耐食性能が低下するとおそれがあるためである。また、TiO膜21の膜厚が厚過ぎると、TiO膜21自体の膜応力が生じ、下地となる金属部材10もしくはHfO膜22から剥離してしまうおそれがあるためである。一方、TiO膜21の膜厚が薄すぎると、下地との密着性が低下し、HfO膜22の結晶化を抑えきれなくなるおそれがあるためである。
なお、ここでいう「TiOを主成分とする」とは、不可避の不純物や意図的に含有させた不純物を除いたTiOの含有率が90atm%以上であることを意味する。
HfO膜22は、金属部材10の表面11上もしくはTiO膜21上にALDにより形成され、HfOを主成分とする膜である。HfO膜22の膜厚については、耐食性能の確保の観点から、4〜13nmの範囲内であることが好ましく、5〜8nmの範囲内であることがより好ましい。
具体的には、HfO膜22は、TiO膜21と同様に結晶性を有するHfOによる膜であることから、その膜厚が厚すぎると結晶粒界が生じ、耐食性膜20の耐食性能が低下するとおそれがあるためである。一方、HfO膜22の膜厚が薄すぎると、耐食性を発揮できず、耐食性膜20の耐食性能が低下するおそれがあるためである。
HfO膜22は、1.87〜8.40atm%のClを含有する組成とされることが好ましい。このようHfO膜22とすることにより、耐食性膜20の耐食性能が向上するためである。この理由については、後で詳しく述べる。
なお、ここでいう「HfOを主成分とする」とは、不可避の不純物や意図的に含有させた不純物を除いたHfOの含有率が90atm%以上であることを意味する。
次に、本実施形態の金属構造体の製造方法について、図2を参照して説明する。
図2(a)に示されるように、表面11を有する金属部材10を用意する。そして、この金属部材10をALDにおける図示しない反応容器の内部、具体的には真空チャンバ内に設置する。そして、反応容器の内部の温度および金属部材10の温度が、成膜温度になるように、例えば450℃になるように加熱を行う。
次に、TiO成膜工程を行う。具体的には、図2(b)に示されるように、金属部材10の表面11上に、まず、ALDにより、1層のTiO膜21を成膜する。具体的には、例えばTiClとHOとを交互に反応容器に導入する工程を繰り返し行うことにより、所定膜厚とされた1層のTiO膜21を成膜する。
次に、HfO成膜工程を行う。具体的には、図2(c)に示されるように、ALDにより、TiO膜21の上に、1層のHfO膜22を成膜する。具体的には、例えばHfClとHOとを交互に反応容器に導入する工程を繰り返し行うことにより、所定膜厚とされた1層のHfO膜22を成膜する。
ここで、HfO膜22のALDにおいては、成膜温度を所定の温度以下にすることが必要である。具体的には、HfO膜22のALDにおいては、TiO膜21上にまずHfClの膜が形成され、その後、HOのOHとClとが置き換わることによりHfOの膜となる。この際、TiO膜21上のHfClのClとHOのOHとの置換の進行度合いは、成膜温度が上がるにつれて上がる。すなわち、HfO膜22のALDにおける成膜温度を高温、例えば600℃以上の温度とした場合、HfClのClがすべてHOのOHと置換され、Clを含有しないHfO膜となる。言い換えると、HfO膜22のALDにおける成膜温度を所定の低温領域とすることにより、HfClのClとHOのOHとの置換の進行度合いを調整でき、意図的に所定の濃度のClを含有するHfO膜22とすることができる。このように、TiO膜21やHfO膜22に意図的にClを上記のような原理で含有させるために、ALDにおける成膜での材料にハロゲン化物の官能基を有する化合物、例えばTiClやHfClなどを用いる。この詳細については、後述する成膜温度とHfO膜22中のCl濃度との関係にて説明する。
そして、TiO膜21の成膜とHfO膜22の成膜を交互に所定回数繰り返し、最後にHfO膜22を成膜することにより、本実施形態の金属構造体を製造することができる。
次に、HfO膜22のALDにおける成膜温度とHfO膜22中のCl濃度との関係について、図3を参照して説明する。図3では、ALDにおける成膜温度を変えて金属部材10にTiO膜21およびHfO膜22を成膜したサンプルについて、横軸を成膜温度(℃)とし、縦軸をCl濃度(atm%)としてプロットした結果を示している。なお、これらのサンプルは、50mm角の金属部材10に4nmのTiO膜21と7nmのHfO膜22をこの順でそれぞれ11回成膜したものであって、HfO膜22についてはその成膜温度をサンプルごとに変えて行ったものである。また、サンプルの耐食性膜20中のCl濃度の測定については、全反射蛍光X線測定により行った。
図3の測定を行ったサンプルは、TiO膜21のうち特に金属部材10上に接して形成されるTiO膜21については、Clが多く含まれないように成膜し、サンプルの最表層にHfO膜22を成膜したものである。図3のHfO膜のCl濃度は、最表層のHfO膜22中におけるCl濃度である。HfO膜22の成膜条件は、各層ごとですべて同一であるため、同一サンプルにおける各HfO膜22中のCl濃度についてはすべて同じであるとみなすことができる。
なお、ここでいう「Clが多く含まれない」とは、全反射蛍光X線測定による分析においてCl元素が検出限界以下であることを意味する。
図3に示すように、ALDにおける成膜温度が300℃であったサンプルについては、HfO膜22中のCl濃度が8.0〜8.4atm%であった。ALDにおける成膜温度が400℃であるサンプルについては、HfO膜22中のCl濃度が6.8〜7.0atm%であった。ALDにおける成膜温度が450℃であるサンプルについては、HfO膜22中のCl濃度が5.1〜5.3atm%であった。ALDにおける成膜温度が500℃であるサンプルについては、HfO膜22中のCl濃度が1.9〜3.3atm%であった。
これは、ALDにおける成膜を所定の低温領域、例えば300℃〜500℃程度の領域とすることにより、所定濃度のClを含むHfO膜22を製造することができることを示している。
次に、HfO膜22におけるCl濃度と耐食性膜20の耐食性能との関係について、図4を参照して、より具体的に述べることとする。
図4の評価を行った金属構造体は、50mm角の炭素鋼によりなる金属部材10に、原子層堆積法により2nmのTiO膜21と7nmのHfO膜22とをそれぞれ11回積層したものであって、HfO膜22中におけるCl濃度を変えたものである。また、TiO膜21については、高温(400℃)でALD成膜し、Clを含まない構成とした。図4に示した耐食性能の評価結果は、作製したサンプルの当該耐食性膜20上に酸溶液を滴下し、一定期間静置した後、当該酸溶液を高周波誘導結合プラズマ(ICP)分析法により分析し、溶出したHfの元素濃度を算出したものである。具体的には、作製したサンプルの当該耐食性膜20上に酸溶液としてpH=1のエンジン模擬水を滴下して40℃1ヵ月以上静置し、その後、上記酸溶液に含まれるHfの元素濃度をICP分析法により測定することにより行った。図4の縦軸に示す「Hf溶出量(ppb/mm)」とは、当該酸溶液に含まれるHfの元素濃度をサンプルの耐食性膜20のうち滴下した当該酸溶液が接触していた部分の面積で割って算出した値であり、これを耐食性膜20の耐食性能の指標とした。すなわち、Hf溶出量が少ないほど、耐食性膜20の耐食性能が高いことを意味する。
なお、ここでいう「pH=1のエンジン模擬水」とは、例えば硝酸、硫酸、酢酸、ギ酸等を所定の割合で混合し、pH=1となるように調製された酸溶液を指す。これらの酸の混合比については、任意であり、金属構造体が適用される腐食環境に応じて適宜変更することができる。
図4に示すように、HfO膜22中に含まれるCl濃度を1.87atm%としたサンプルについては、Hf溶出量が0.002ppb/mmであった。HfO膜22中に含まれるCl濃度を6.85atm%としたサンプルについては、Hf溶出量が0.005ppb/mmであった。HfO膜22中に含まれるCl濃度を8.40atm%としたサンプルについては、Hf溶出量が0.008ppb/mmであった。この結果は、TiO膜21と所定濃度のClを含有するHfO膜22とが積層された耐食性膜20では、その耐食性能が高いことを示している。
これに対して、TiO膜21とClを含有しないHfO膜22とが積層されたサンプルやTiO膜21と10atm%を超えるClを含有するHfO膜22とが積層されたサンプルについては、Hfの溶出量が0.01ppb/mmを超えていた。この結果は、耐食性膜20の耐食性能の向上については、HfO膜に含まれるCl濃度を所定の範囲内、例えば少なくとも1.87atm%〜8.40atm%の範囲内となるようにした際に特異的に発現することを示唆している。
このように耐食性膜20の耐食性能を向上させるには、不純物であるClを所定の濃度範囲となるように敢えて残すことが必要な条件であると考えられる。この詳細なメカニズムについては、現在不明であるが、次のように推測される。
まず、Clを含有しないTiO膜とHfO膜とが積層された従来の耐食性膜について検討する。TiO膜およびHfO膜をそれぞれ例えば10nm以下の薄膜としつつ、これらを積層して耐食性膜を構成する。これは、結晶性を有するTiOやHfOを薄膜成膜することで、結晶化されていない膜、すなわちアモルファス状の膜とするためである。すなわち、TiO膜およびHfO膜を、結晶化による粒界の発生を抑えたアモルファス状の膜とするためである。これは、結晶化による粒界が発生した場合、この粒界から酸性溶液等が侵入する経路となり、耐食性能の低下につながると考えられるためである。そして、TiO膜とHfO膜とをこの順に交互に複数層成膜した構成とすることで、TiO膜21およびHfO膜22の各層のそれぞれにこのような欠陥が生じた場合であっても、各層の欠陥が成膜方向において繋がることを抑制できると考えられる。そのため、従来の耐食性膜においても、酸性溶液に曝されてもその透過を抑制できる膜となる。
ここで、従来の薄膜成膜においては、通常、不純物が少なくなるように成膜することが原則である。不純物が少なくなるように成膜しつつ、TiO膜やHfO膜において結晶化を抑制するためには、膜厚を所定の厚み以下とするくらいしか実質的に取れる手段がないため、完全に結晶化を抑制することが困難であると考えられる。
これに対して、本実施形態の金属構造体の耐食性膜20については、あえて不純物であるClを所定濃度で残したHfO膜22を含んだ構成としている。これにより、結晶性を有するHfOの薄膜を形成する際に、薄膜とされることに加え、さらにClが存在することでHfOの結晶化が阻害される結果、従来の耐食性膜よりも粒界が少ない耐食性膜20となったと推測される。そのため、酸性溶液等が侵入する経路が従来の耐食性膜より少なくなり、耐食性膜20の耐食性能は、従来の耐食性膜よりも向上したと考えられる。
なお、HfO膜中のCl濃度が少なすぎる場合には、従来の耐食性膜と同程度の耐食性能となり、HfO膜中のCl濃度が多すぎる場合には、耐食性を発現しないClが酸性溶液等の侵入経路となって耐食性能が低下すると考えられる。
また、上記の図3における説明でも述べたように、不純物の中でも特にClは、ALDにおける成膜温度よりその含有濃度が制御できることがわかっており、耐食性膜20をALDにより形成することが重要であると考えられる。例えば、凹凸などが多く複雑な形状の自動車部品(燃料噴射ノズルなど)に耐食性膜20を形成して耐食性能の高い部品とするためには、表面形状に沿いつつ、厚みや組成が均一に近い耐食性膜20を成膜する必要がある。そのため、耐食性膜20の形成方法としては、原理的にALDが最も適すると考えられる。
上記のように、金属部材10の表面11上にTiO膜21とHfO膜22とをこの順に交互に複数層成膜された耐食性膜20が形成されると共に、耐食性膜20中のHfO膜22のCl濃度を1.87〜8.40atm%とした構成とする。これにより、従来よりも耐食性能の高い耐食性膜を備える金属構造体となる。
また、金属部材10にTiO膜21とHfO膜22とをこの順に交互にALDにより複数層成膜しつつ、HfO膜22の成膜温度を所定の温度とすることにより、従来よりも耐食性能の高い耐食性膜を備える金属構造体を製造することができる。
(第2実施形態)
第2実施形態の金属構造体について説明する。本実施形態の金属構造体は、上記第1実施形態の金属構造体に加えて、金属部材10の表面11とTiO膜21のうち表面11に接して形成されたTiO膜21との間にAl膜が形成された構造とされた点で上記第1実施形態と相違する。本実施形態では、この相違点について主に説明する。
Al膜は、金属部材10の表面11上に配置され、耐食性膜20の下地となる層であり、TiO膜21やHfO膜22と同様にALDにより形成される。Al膜は、Alを主成分とする薄膜である。Al膜は、上述したTiO膜21やHfO膜22と同様の理由により、例えば1nm〜10nmの範囲内の薄膜とされることが好ましい。
なお、ここでいう「Alを主成分とする」とは、不可避の不純物や意図的に含有させた不純物を除いたAlの含有率が90atm%以上であることを意味する。
次に、本実施形態の金属構造体について、耐食性能を評価した結果について説明する。耐食性能評価については、上記第1実施形態で説明したのと同様の方法により行ったため、ここでは簡単に説明する。
50mm角の炭素鋼によりなる金属部材10に、ALDにより50nmのAl膜を成膜した後、2nmのTiO膜21と7nmのHfO膜22とをそれぞれ11回積層したサンプルを作製した。そして、上記第1実施形態で述べたpH=1のエンジン模擬水を当該サンプル上に滴下し、Hf溶出量をICP分析により調べた結果、検出限界以下(0.001ppb未満)であった。この結果から、耐食性膜20の下地としてAl膜が形成された金属構造体は、上記第1実施形態の金属構造体よりもさらに耐食性能が高いことが判明した。
Al膜を下地として形成することによる耐食性能の向上の詳細なメカニズムについては不明であるが、金属部材10中の重金属元素が耐食性膜20へ拡散することが抑えられた結果ではないかと推測される。
具体的には、金属部材10と耐食性膜20との間にAl膜がない構成の金属構造体の製造工程において、金属部材10に耐食性膜20をALDにより高温、例えば400℃で成膜する場合について検討する。このとき、鉄系金属などによりなる金属部材10がALDにより成膜で高温にさらされるため、TiO膜21やHfO膜22を積層する際に、金属部材10に含まれる重金属元素、例えばFeが微量ながらこれらの膜へと拡散すると考えられる。このような拡散が起きると、金属部材10から拡散した重金属元素が耐食性膜20での欠陥となり得る。しかし、金属部材10と耐食性膜20との間にAl膜を介することにより、ALDによる耐食性膜20の成膜の際に、上記の重金属元素の拡散がAl膜により抑制され、耐食性膜20の欠陥生成がさらに抑制されると考えられる。その結果、本実施形態の金属構造体は、上記第1実施形態の金属構造体よりもさらにその耐食性能が高くなったと考えられる。
本実施形態によれば、上記第1実施形態の金属構造体と同様に、従来よりも耐食性能の高い耐食性膜を備える金属構造体となる。また、金属部材10にAl膜を成膜した後に、TiO膜21とHfO膜22とをこの順に交互にALDにより複数層成膜しつつ、HfO膜22の成膜温度を所定の温度とすることで、従来よりも耐食性能の高い耐食性膜を備える金属構造体を製造できる。
(他の実施形態)
なお、上記した各実施形態に示した半導体装置は、本発明の半導体装置の一例を示したものであり、上記の各実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。
例えば、金属部材10は、表面11に耐食性膜20を形成することができるものであればよく、上記の鉄系金属以外の金属により構成されていてもよい。また、金属構造体の適用については、上記の自動車用部品に限らず、耐食性能が求められるその他の金属部品に適用することもできる。
上記第1実施形態ではClを含有させないTiO膜21を形成した例について説明したが、TiO膜21は、結晶化された膜とならず、かつ、金属部材10とHfO膜22もしくはHfO膜22同士の密着性を確保できる組成とされていればよい。そのため、TiO膜21は、不純物としてClを含んだ組成とされてもよく、耐食性を低下させない程度の他の不純物を含んだ組成とされてもよい。
上記第1実施形態では、ハロゲン化物としてClを含有させた例について説明したが、HfO膜22の耐食性能を損なわず、かつ、適度に結晶化による粒界発生を阻害できる不純物であればよいと考えられる。そのため、含有させる不純物としては、F、Brなどでも原理的には可能であると考えられ、他のハロゲン化物であっても上記実施形態での効果が得られると考えられる。
10 金属部材
11 金属部材の表面
20 耐食性膜
21 TiO
22 HfO

Claims (8)

  1. 表面(11)を有する金属部材(10)と、
    前記表面を被覆するように形成された耐食性膜(20)と、を備え、
    前記耐食性膜は、前記表面側から順に、TiO膜(21)とHfO膜(22)とが交互に1回以上積層されてなり、
    前記HfO膜は、1.87〜8.40atm%のClを含有している金属構造体。
  2. 前記耐食性膜の最表面は、前記HfO膜である請求項1に記載の金属構造体。
  3. 前記TiO膜のうち前記HfO膜上に積層されている前記TiO膜については、Clを含有している請求項1または2に記載の金属構造体。
  4. 前記表面と前記TiO膜のうち最も前記表面側に形成された前記TiO膜との間には、Al膜が形成されている請求項1ないし3のいずれか1つに記載の金属構造体。
  5. 前記金属部材は、焼き入れ部を有する鉄系金属である請求項1から4のいずれか1つに記載の金属構造体。
  6. 請求項1ないし5のいずれか1つに記載の金属構造体の製造方法であって、
    表面(11)を有する金属部材(10)を用意することと、
    前記表面に前記表面を被覆するように耐食性膜(20)を原子層堆積法により形成することと、を含み、
    前記耐食性膜を形成することにおいては、前記表面上にTiO膜(21)を形成した後に、前記TiO膜を被覆するようにHfO膜(22)を形成し、
    前記HfO膜を形成することにおいては、前記HfO膜に1.87〜8.40atm%のClが含まれるように調整する金属構造体の製造方法。
  7. 前記耐食性膜を形成することにおいては、前記TiO膜と前記HfO膜とを交互に1回以上繰り返す請求項6に記載の金属構造体の製造方法。
  8. 前記TiO膜を形成することにおいては、ハロゲン化物の官能基を有する化合物を材料として使用し、前記材料を反応させることで前記TiO膜とし、
    前記HfO膜を形成することにおいては、ハロゲン化物の官能基を有する化合物を材料として使用し、前記材料を反応させることでClを含有する前記HfO膜とする請求項6または7に記載の金属構造体の製造方法。
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