JP6727759B2 - トナー用外添剤及びトナー - Google Patents

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Description

本発明は、電子写真法などにより画像を形成する複写機等の画像形成装置に用いられるトナーに外添して使用されるトナー用外添剤、及び、該トナー用外添剤を含むトナーに関する。
電子写真法などの静電荷像を経て画像情報を可視化する方法は、現在様々な分野で利用されている。電子写真法においては、帯電工程、露光工程により感光体上に静電荷像を形成し、トナーを含む現像剤で静電荷像を現像し、転写工程、定着工程を経て、その静電荷像が可視化される。
ここで用いられる現像剤には、トナーとキャリアとからなる2成分現像剤と、磁性トナーまたは非磁性トナーを単独で用いる1成分現像剤とが知られているが、いずれも、トナーの流動性やクリーニング性を改善するための無機化合物や有機化合物からなる微粒子がトナー粒子表面に添加される。このような微粒子は、トナー用外添剤(以下、単に外添剤という場合がある)と呼ばれる。トナー粒子と外添剤とは、静電気力(クーロン力)と物理的な作用(ファンデルワールス力)によって付着しており、支配的な力はクーロン力である。
近年、電子写真法の技術は高速化、低エネルギー消費の方向に進んでおり、トナーには従来よりも高い劣化耐性が求められるようになった。トナーが高い劣化耐性をもたないと、使用開始直後から終了時までトナーの転写効率を高い状態に維持できない。その対策の一つとして、大粒径外添剤のスペーサ効果を利用したトナーの劣化抑制技術が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
外添剤として、小粒径外添剤と大粒径外添剤を併用すると、トナー粒子表面に付着した大粒径外添剤の存在により、その近傍の、トナー粒子表面上に付着した小粒径外添剤が直接、せん断力や衝撃力などの外力を受ける頻度が低下し、その外力による小粒径外添剤のトナー粒子表面への埋没を防止できる(スペーサ効果)ことから、トナーの劣化を抑制できる。また、大粒径外添剤を外添することで、感光体からトナーが離れ易くなり、感光体上に乗ったトナーが速やかに紙上に転写され、転写効率を高い状態に維持できることから、大粒径外添剤は転写助剤としても機能する。
スペーサ効果が期待される大粒径外添剤にも、数nm〜30nm程度の小粒径外添剤と同様に従来の燃焼法を適用して製造されたシリカ粒子が使用されてきた。その後、近年においては、ゾルゲル法によって粒度分布の揃った大粒径の球形シリカ粒子が得られるようになってきたことから、50nm〜150nm程度の平均粒径の球形シリカ粒子を外添剤として用いる技術が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
ここで、外添剤として使用される場合の、球形シリカ粒子と不定形シリカ粒子との特性を比較する。
球形シリカ粒子は球形ゆえに分散性が良好であるため、トナー粒子表面に均一に付着してトナー粒子のどの位置でも、一定のスペーサ効果が得られることから、トナーの劣化耐性を高めることができる。これに対して、不定形シリカ粒子は球形シリカ粒子よりも分散性が良好でないため、トナー粒子表面に不均一に付着することがあり、スペーサ効果がトナー粒子の一部のみに偏り、トナーの劣化耐性を高めることが難しい。
また、不定形シリカ粒子は、その表面上の尖った角部分の存在により、均一に帯電しにくい。尖った角部分に電荷が異常集中すると、その電荷の異常集中した部分が感光体等の部材に強く付着して生じる、感光体の変質や削れ、及び、感光体・帯電ロール・現像ロールなどへの部材汚染を引き起こすことがある。これに対して、球形シリカ粒子は均一に帯電するため、電荷が異常集中する部位がないことから、不定形シリカ粒子の場合において生じるような、感光体の変質や削れ、及び、感光体・帯電ロール・現像ロールなどへの部材汚染を抑制でき、結果として画像欠陥を抑制することができる。
また、不定形シリカ粒子がトナー粒子から外れた場合、その不定形シリカ粒子の尖った角部分が感光体表面に引っ掛かることがある。その尖った角部分に電荷が異常集中していると、その高い付着力のため、感光体表面に強固に付着する。感光体が回転している間に、感光体表面に強固に付着した不定形の外添剤に別のトナーが付着することで、感光体表面上にトナー融着現象が起こる。尚、このトナー融着現象は、画像欠陥の一因となり、外添剤の角部分に電荷が異常集中し易い低温低湿環境下において顕著に発生する傾向がある。これに対して、球形シリカ粒子は、その表面に電荷が異常集中する角部分がないため、感光体表面上へのトナー融着の発生を抑制できる。
また、不定形シリカ粒子の場合、相互に離れた外添剤やトナーが、トナーと逆帯電する現像ロールに強固に付着し、現像ロールの回転に伴って、例えば現像ロール上の付着物が他の部材によって摩擦されることで、一層、帯電量が増して、益々外れにくくなることによって下層が形成されることがある。このように下層が形成されると、現像ロールを介して帯電するトナーが正規帯電できなくなるので、画像劣化を招くことになる。尚、この下層形成は、画像欠陥の一因となり、外添剤やトナーの帯電量が増加し易い低温低湿環境下において顕著に発生する傾向がある。これに対して、球形シリカ粒子は均一に帯電するので、現像ロール等の現像部材上への下層形成の発生を抑制できる。
上述したように、外添剤として使用されるシリカ粒子は、均一な帯電性により部材汚染の原因となる感光体表面上へのトナー融着現象や現像部材上への下層形成の発生を抑制できる点で、不定形より球形のものが有利であり、さらに、その球形のもののうち、大粒径のものがスペーサ効果を期待できる点で有利であると云える。
しかし、球形シリカ粒子の粒径を大きくすると、そのシリカ粒子の単位質量当たりの表面積(以下、比表面積という)が減少するので、帯電量が減り、シリカ粒子とトナー粒子との付着力に支配的なクーロン力が弱くなるため、トナー粒子への付着性が低下してトナー粒子から外れ易くなる。シリカ粒子がトナー粒子から外れると、外れたシリカ粒子やトナー粒子によって感光体・帯電ロール・現像ロールの汚染やクリーニングブレードの欠けが発生し、その部材汚染等に起因した画像欠陥を引き起こすことが知られている(例えば、特許文献3参照)。
シリカ粒子のトナー粒子への付着性は、上述した帯電量に依存する。トナーや電子写真システムが使用される環境は、高温高湿から低温低湿まで変化する。この環境変化によってトナーやシリカ粒子の帯電量が変わる。高温高湿では、帯電量が低下してシリカ粒子のトナー粒子への付着性が低下する。低温低湿では、帯電量が過剰に高くなって、トナーに帯電していた電荷が他のものに移り、画像劣化が起こり易い。大粒径で球形のシリカ外添剤が環境変化とは関係なく、元々、トナー粒子への低い付着性を示す場合、帯電量が低下する高温高湿下では、一層、当該付着性が低下することになるので、シリカ粒子が一層、トナー粒子から外れ易くなる。
また、高温高湿下では、帯電量が低下するため、トナー粒子とシリカ粒子との粒子間の付着力が低下し、その付着力が低下した状態で、物理的な力が加わるとシリカ粒子が外れ、外れたシリカ粒子が感光体表面上に付着し、熱によって融着して膜が形成されるフィルミングが生じる場合がある。このフィルミングも画像欠陥の一因となる。
このように、トナーや外添剤として用いられるシリカ粒子は、高温高湿や低温低湿の環境下で様々なストレスを受けるため、そのストレスに起因して画像欠陥を抑制できないことがある。
また、トナー製造工程でのトナー粒子、および得られたトナーの劣化抑制のために特定の大粒径シリカを添加する技術も知られているが(例えば、特許文献4、5参照)、特許文献4の実施例1の表1中に記載のシリカ系外添剤の真密度(2.20g/cm)に代表される物性は従来技術と同等のレベルである。
特開平06-027718号公報 特開平11-143118号公報 特開2007-264142号公報 特開2012-163623号公報 特開2012-168222号公報
上述したように、トナー用外添剤として大粒径の球形シリカ粒子が不定形シリカ粒子よりも有利である。
しかし、特許文献3に記載されているように、単に、球形シリカ粒子の粒径を大きくしてスペーサ効果を発揮させようとしても、その一方で、トナー粒子への付着性が低下してしまう場合には、トナーの劣化や画像欠陥を抑制できない。
また、特許文献4に記載の代表的なシリカ系外添剤の真密度(2.20g/cm)では、外添時などにおいてトナー粒子に対してダメージを与える程度に重いため、結果として、トナーの劣化を抑制できない。尚、単に、真密度を低くして外添剤の軽量化を図ろうとしても、シリカ粒子に外添剤としての必要強度をもたせなければ、そのシリカ粒子は外添剤として使用できない。
このような点において、従来技術には、改善の余地が残されている。
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、外添時などでのトナーの劣化を抑制でき、且つ、部材汚染等に起因する画像欠陥を抑制できるシリカ微粒子を含むトナー用外添剤、及び、該トナー用外添剤を含むトナーを提供することを目的とする。
上述した課題を解決するため、本発明は以下の構成を有する。
(構成1)
式:Si(OR(但し、各Rは炭素原子数1〜6の1価炭化水素基である)で示されるシラン化合物及びその加水分解縮合物からなる群から選択される少なくとも1種のケイ素化合物から得られる微粒子を含むトナー用外添剤であって、
前記微粒子は、
(1)平均粒径が50nm以上250nm以下であり、
(2)ガス吸着法により測定される比表面積(α)が13m/g以上80m/g以下であり、
(3)真密度が1.85g/cm以上2.00g/cm以下であり、
(4)平均粒径から算出される比表面積(β)に対する前記比表面積(α)の比(α/β)が0.85以上1.75以下であり、及び、
(5)室温から500℃まで昇温したときの加熱減量が5%以上13%以下であるトナー用外添剤。
(構成2)
前記微粒子は、ガス吸着法による比表面積(α)の測定時におけるガス脱離時間が3分以上10分以下である構成1に記載のトナー用外添剤。
(構成3)
前記微粒子は、表面に疎水基を有する構成1又は2に記載のトナー用外添剤。
(構成4)
前記疎水基は、トリアルキルシリル基である構成3に記載のトナー用外添剤。
(構成5)
前記微粒子は、前記ケイ素化合物を含むケイ素含有成分と塩基性化合物を含む触媒含有成分との混合溶液中で、前記ケイ素化合物を縮重合反応させることにより得られ、
前記ケイ素含有成分と前記触媒含有成分とを混合するときの前記ケイ素含有成分の温度TA(℃)と前記触媒含有成分の温度TB(℃)が次の関係式(a)〜(c)を満たす構成1から4のいずれかに記載のトナー用外添剤。
(a)2℃<TA<60℃
(b)TA<TB、及び、
(c)TB−40℃<TA<TB−3℃
(構成6)
前記微粒子の疎水化処理材として、式:R SiNHSiR (但し、各Rは炭素原子数1〜6の1価炭化水素基である)で示されるシラザン化合物、及び、式:R SiX(但し、各Rは炭素原子数1〜6の1価炭化水素基であり、XはOH基又は加水分解性基である)で示されるシラン化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を前記微粒子の表面に接触させて前記微粒子の表面にトリアルキルシリル基を導入することにより、前記微粒子の表面を疎水化する構成1から5のいずれか1項に記載のトナー用外添剤。
(構成7)
構成1から6のいずれか1項に記載のトナー用外添剤を含むトナー。
本発明に係るトナー用外添剤によれば、上述した式:Si(OR(但し、各Rは炭素原子数1〜6の1価炭化水素基である)で示されたシラン化合物及びその加水分解縮合物からなる群から選択される少なくとも1種のケイ素化合物から得られる微粒子を含むトナー用外添剤である。この微粒子は、(1)平均粒径が50nm以上250nm以下であり、(2)ガス吸着法により測定される比表面積(α)が13m/g以上80m/g以下であり、(3)真密度が1.85g/cm以上2.00g/cm以下であり、(4)平均粒径から算出される比表面積(β)に対する比表面積(α)の比(α/β)が0.85以上1.75以下であり、及び、(5)室温から500℃まで昇温したときの加熱減量が5%以上13%以下である。
このように、微粒子が(1)〜(5)の物性を併せもち、特に、真密度が低い(比重が小さい)点、比表面積の比(α/β)が特定範囲にある点、加熱減量が特定範囲にある点に特徴があるので、この微粒子を含むトナー用外添剤は、以下のような効果を奏する。
(i)微粒子が、トナー粒子表面に付着したときに、スペーサ効果を発揮できる程度の適切な範囲の平均粒径を有するので、トナーの劣化を抑制できる。
(ii)微粒子が上述の範囲の比表面積の比(α/β)を有し、且つ、従来のシリカ系外添剤の代表値より低い上述の範囲の真密度(比重)を有するので、外添時などに与えるトナー粒子への衝撃力を従来よりも軽減し、トナー粒子へのダメージを緩和してトナーの劣化を抑制できる。
(iii)微粒子が上述の範囲の比表面積の比(α/β)を有するので、トナー粒子への適切な付着性を有することができる。微粒子がトナー粒子への適切な付着性を有するので、トナー粒子から遊離しにくいことから、種々の部材汚染を抑制でき、この部材汚染に起因する画像欠陥を抑制できる。
(iv)微粒子が上述の範囲の加熱減量を有するので、部材汚染の原因となる感光体表面上へのトナー融着現象や現像部材上への下層形成の発生などを抑制して画像劣化を抑制できる程度の適切な帯電量を有することができる。
従って、トナー用外添剤は、外添時などでのトナーの劣化を抑制でき、且つ、部材汚染等に起因する画像欠陥を抑制できる。
本発明に係るトナーによれば、上述したトナー用外添剤を含む。従って、このトナーは、従来よりも高い劣化耐性をもつので、使用開始直後から終了時までの長期間にわたって外添剤とトナー粒子との付着性を維持できることから、転写効率を高い状態で維持できると共に、外添剤がトナー粒子から遊離しにくいので、部材汚染等に起因する画像欠陥を抑制できる。
以下、本発明の実施の形態について、具体的に説明する。尚、以下の実施の形態は、本発明を具体化する際の一形態であって、本発明をその範囲内に限定するものではない。
A.トナー用外添剤
この実施の形態によるトナー用外添剤は、式:Si(OR(但し、各Rは炭素原子数1〜6の1価炭化水素基である)で示されるシラン化合物及びその加水分解縮合物からなる群から選択される少なくとも1種のケイ素化合物から得られる微粒子を含み、この微粒子は、
(1)平均粒径が50nm以上250nm以下であり、
(2)ガス吸着法により測定される比表面積(α)が13m/g以上80m/g以下であり、
(3)真密度が1.85g/cm以上2.00g/cm以下であり、
(4)平均粒径から算出される比表面積(β)に対する比表面積(α)の比(α/β)が0.85以上1.75以下であり、及び、
(5)室温から500℃まで昇温したときの加熱減量が5%以上13%以下であるという物性を有する。
微粒子の原材料であるケイ素化合物は、上述の式で示される四官能シラン化合物又はその加水分解縮合物を含む。上述の四官能シラン化合物としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランなどのシラン化合物(モノマー成分)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。上述の四官能シラン化合物の加水分解縮合物としては、上述の四官能シラン化合物中の加水分解性基(メトキシ基、エトキシ基など)を縮合して得られる加水分解縮合物(ダイマーやオリゴマーなど)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
このようなケイ素化合物を単独又は適宜組み合わせて行うケイ素化合物の縮重合反応によって、上述の式で示されるケイ素化合物のORで示されるアルコキシ基の一部がOH基となり、OH基となった部分同士が縮合してHOが脱離し、シラノール基を経てSi−O−Si結合を生じる一連の過程によって得られるシリカポリマーからなる微粒子(以下、シリカ微粒子という)が形成される。このように形成されたシリカ微粒子は、そのシリカポリマーの強度に依存した、外添剤として必要な強度をもつ。また、上述の縮重合反応後においては、シリカ微粒子表面の一部にOH基が残った状態となっている。このシリカ微粒子表面に残ったOH基は、後述する疎水基と結合することで、シリカ微粒子表面が疎水化され得る。
上述のシリカ微粒子が併せもつ物性のうち、物性(1)の平均粒径の数値範囲は、個数平均粒径の数値範囲である。この数値範囲は、シリカ微粒子がトナー粒子に外添されたときに、トナーの劣化抑制に寄与するに十分なトナー粒子への付着性をシリカ微粒子に付与でき、且つ、スペーサ効果を発揮できる程度の、シリカ微粒子の適切な粒径を示している。
物性(1)の平均粒径の数値範囲は、上述のように、50nm以上250nm以下であり、好ましくは、50nm以上200nm以下である。
ここで、シリカ微粒子の平均粒径が50nmを下回ると、粒径が小さいものも混在することになるため、極めて小さな粒径のものはスペーサ効果を十分に発揮できない点で好ましくない。また、シリカ微粒子の平均粒径が250nmを上回ると、極めて大きな粒径のものも混在することになるため、帯電量が減少し、トナー粒子への付着力が低下し、スペーサ効果を発揮する外添剤の比率が低下する点で好ましくない。
物性(1)の平均粒径は、動的光散乱法によって測定されるシリカ微粒子の粒度分布から求めることができる。動的光散乱法は、レーザー光をシリカ微粒子に照射し、得られた散乱光の散乱強度がシリカ微粒子の粒径によって変わることを利用して、散乱強度から粒度分布を求める方法である。
動的光散乱法によってシリカ微粒子の粒度分布を測定するために使用される測定装置としては、例えば、動的光散乱粒度分布測定装置(ELSZ1000ZS、大塚電子株式会社製)を挙げることができる。この測定装置を用いた場合、以下のようにして粒度分布を測定し、平均粒径を求めることができる。
所定量のシリカ微粒子をメタノール溶媒中に入れ、超音波をあてて、シリカ微粒子を分散させた分散液を得る。この分散液をガラス製の測定セルに入れ、測定装置に入れる。この測定装置では、測定セルにレーザー光を照射し、その動的光散乱強度を測定する。この散乱強度から換算した粒径分布を、縦軸に個数頻度をとり、横軸に粒径をとる座標上に表したときに、その粒度分布を基にして、分割された粒度範囲に含まれる粒子個数を小径側から累積していき、累積50%となる粒径を平均粒径とする。
尚、平均粒径は、上述の動的光散乱法に限らず、これ以外のレーザー回折・散乱法、画像イメージング法などの周知の方法によっても求めることができる。ここで、本発明のシリカ微粒子以外の特定のシリカ微粒子について、上述の測定装置及び測定条件を用いた動的光散乱法以外の測定方法から求められる粒径が物性(1)の平均粒径の数値範囲と異なる場合であっても、当該特定のシリカ微粒子について、上述の測定装置及び測定条件を用いた動的光散乱法によって粒度分布が測定され、その測定結果から求められる平均粒径が物性(1)の平均粒径の数値範囲に含まれるときは、当該特定のシリカ微粒子は物性(1)をもつものとして認識することができる。
上述のシリカ微粒子が併せもつ物性のうち、物性(2)は、ガス吸着法によって測定された比表面積(α)の測定値の範囲である。この数値範囲は、シリカ微粒子がトナー粒子に外添されたときに、トナーの劣化抑制に寄与するに十分なトナー粒子への付着性をシリカ微粒子に付与でき、且つ、スペーサ効果を発揮できる程度の、シリカ微粒子の適切な表面構造及び粒径の大きさを示している。
物性(2)の比表面積(α)は、上述のように、13m/g以上80m/g以下であり、好ましくは、15m/g以上70m/g以下である。
ここで、比表面積(α)が13m/gを下回ると、シリカ微粒子の粒径が大きくなりすぎるため、帯電量が減少し、トナー粒子への付着力が低下し、スペーサ効果を発揮する外添剤の比率が低下する点で好ましくない。また、比表面積(α)が80m/gを上回ると、シリカ微粒子の表面の構造に多くの微細な凹凸部分を有することにより、シリカ微粒子の強度が低下すると共に、外添剤による部材の削れや汚染を引き起こしやすくなるため好ましくない。
物性(2)の比表面積(α)を測定するために用いられるガス吸着法は、例えば、測定セル内にシリカ微粒子を入れ、吸着用ガスの相対圧力の変化をモニタしながら、吸着用ガスをシリカ微粒子表面に接触するように流し、例えば液体窒素温度まで冷却することで、吸着用ガスを微粒子表面に吸着させ、その後、例えば室温まで戻すことで、微粒子表面に吸着した吸着用ガスを脱離させる方法である。吸着用ガスの相対圧力がその初期値よりも低いときはガス吸着過程にあり、ガス吸着時間は、吸着用ガスの相対圧力が初期値より低下し始めてから、初期値に戻るまでの時間である。また、吸着用ガスの相対圧力がその初期値よりも高いときはガス脱離過程にあり、ガス脱離時間は、吸着用ガスの相対圧力が初期値より上昇し始めてから、初期値に戻るまでの時間である。
この方法では、冷却時の吸着用ガスがシリカ微粒子表面に単分子層状に吸着されることを利用して、シリカ微粒子表面の構造や大きさを反映すると考えられるガス吸着時間やガス脱離時間を求めることができる。このため、ガス吸着時間やガス脱離時間は、微粒子の比表面積に比例する。例えば、ガス吸着時間からシリカ微粒子の比表面積(α)を求めるためには、縦軸に窒素ガスの相対圧力をとり、横軸に時間をとるときに、相対圧力が初期値より減少するガス吸着過程を示す略U字状の曲線と相対圧力が初期値より増加するガス脱離過程を示す略逆U字状の曲線を含むプロファイルを得る。得られたプロファイルに基づき、時間軸とガス吸着過程を示す曲線との間の面積からシリカ微粒子の比表面積(α)を算出することができる。
尚、上述の吸着用ガスとしては、上述のシリカ微粒子とガス分子との間のファンデルワールス力によって、例えば液体窒素温度で、シリカ微粒子表面に単分子層状にガス分子が吸着できるガスであれば、いかなるガスを用いてもよい。具体的には、吸着用ガスとしては、窒素ガス、クリプトンガス、アルゴンガス、炭酸ガスなどを挙げることができ、これらのガスから1種又はそれ以上選択して使用することができる。窒素ガスを用いたガス吸着法は一般にBET法と呼ばれる。
吸着用ガスとして窒素ガスを用いるBET法によってシリカ微粒子の比表面積(α)を測定するために使用される測定装置としては、例えば、BET流動法比表面積計(MODEL HM1201、マウンテック社製)を挙げることができる。この測定装置を用いた場合、以下のようにして比表面積(α)を測定することができる。
測定セルとしては、例えば、ガス導入口とガス排出口を有する略U字状のものを用い、測定セルに流すガスとしては、例えば、窒素ガス(吸着用ガス)とヘリウムガス(キャリアガス)の混合ガスを用いることができる。
尚、比表面積は、上述の測定装置及び測定条件を用いたガス吸着法以外の方法によっても測定することができる。本発明のシリカ微粒子以外の特定のシリカ微粒子について、上述の測定装置及び測定条件を用いたガス吸着法以外の測定方法によって測定され、その測定結果が物性(2)の比表面積(α)の数値範囲と異なる場合であっても、当該特定のシリカ微粒子について、上述の測定装置及び測定条件を用いたガス吸着法によって測定され、その測定結果が物性(2)の比表面積(α)の数値範囲に含まれるときは、当該特定のシリカ微粒子は物性(2)をもつものとして認識することができる。
上述のシリカ微粒子が併せもつ物性のうち、物性(3)は、相当量のシリカ微粒子の体積とその質量の各測定値から算出する比重の範囲である。この数値範囲は、シリカ微粒子が従来のシリカ系外添剤の代表値(2.2g/m程度)より低い軽量であり、且つ、外添時などに与えるトナー粒子への衝撃力を従来よりも軽減し、トナー粒子へのダメージを緩和してトナーの劣化を抑制できる程度の、シリカ微粒子の適切な比重を示している。
物性(3)の真密度の数値範囲は、上述のように、1.85g/cm以上2.00g/cm以下であり、好ましくは、1.90g/cm以上1.98g/cm以下である。
ここで、真密度が1.85g/cmを下回ると、シリカ一粒子あたりの重量が軽くなるため、外添時などに与えるトナー粒子への衝撃力を軽減できるが、シリカ微粒子自体の強度が低下する点で好ましくない。また、真密度が2.00g/cmを上回ると、シリカ一粒子あたりの重量が重くなるため、外添時などに与えるトナー粒子への衝撃力を軽減できない点で好ましくない。
物性(3)の真密度は、相当量のシリカ微粒子の体積とその質量を測定できる測定装置によって算出することができる。
シリカ微粒子の体積とその質量を測定し、その測定値から真密度を算出するために使用される比重測定装置としては、例えば、乾式自動密度計(アキュピックII1340型、株式会社島津製作所製)を挙げることができる。この密度計を用いた場合、所定量のシリカ微粒子を密度計内に入れて真密度を自動測定することができる。
尚、真密度は、上述の測定装置及び測定条件を用いた方法以外の方法によっても測定することができる。本発明のシリカ微粒子以外の特定のシリカ微粒子について、上述の測定装置及び測定条件を用いた方法以外の測定方法によって測定され、その測定結果が物性(3)の真密度の数値範囲と異なる場合であっても、当該特定のシリカ微粒子について、上述の測定装置及び測定条件を用いた方法によって測定され、その測定結果が物性(3)の真密度の数値範囲に含まれるときは、当該特定のシリカ微粒子は物性(3)をもつものとして認識することができる。
上述のシリカ微粒子が併せもつ物性のうち、物性(4)は、測定値である物性(2)の比表面積(α)と、物性(1)の平均粒径から算出される理論値である比表面積(β)との比(α/β)である。この数値範囲は、シリカ微粒子がトナー粒子に外添されたときに、トナーの劣化抑制に寄与するに十分なトナー粒子への付着性をシリカ微粒子に付与できる程度のシリカ微粒子の適切な全体形状と、例えば、その表面に電荷が異常集中し易い尖った角部分をもたない程度のシリカ微粒子の適切な表面構造を示している。
物性(4)の比表面積の比(α/β)は、上述のように、0.85以上1.75以下であり、好ましくは、0.85以上1.60以下である。
ここで、比表面積の比(α/β)が0.85を下回ると、シリカ微粒子の粒径が小さすぎるため、スペーサ効果を十分に発揮できない点で好ましくない。また、比表面積の比(α/β)が1.75を上回ると、シリカ微粒子の表面に電荷が異常集中し易い尖った角部分をもつことになるため、その電荷の異常集中した部分が感光体等の部材に強く付着して生じる、感光体の変質や削れ、及び、感光体・帯電ロール・現像ロールなどへの部材汚染を引き起こす可能性がある点で好ましくない。
また、物性(4)の比表面積の比(α/β)をもつシリカ微粒子は、従来よりも低い上述の物性(3)の数値範囲の真密度を併せもつので、従来よりも軽量であっても、トナー用外添剤としての必要強度を維持することができる。
物性(4)のシリカ微粒子の比表面積の比(α/β)は、上述のように、物性(2)の測定値と物性(1)から算出される理論値とから算出して得られる。
上述のシリカ微粒子が併せもつ物性のうち、物性(5)は、上述のように、シリカ微粒子の、室温から500℃まで昇温したときの加熱減量が5%以上13%以下である。物性(5)の加熱減量は、室温でのシリカ微粒子の乾燥重量に対する500℃でのシリカ微粒子の乾燥重量の減少割合であり、その減少分は、主に、シリカ微粒子内部に保持される水分量と、ケイ素化合物の縮重合反応に与らなかった反応残渣量に相当すると考えられる。シリカ微粒子内部に保持される水分量は帯電性に影響を与え、その帯電性はトナー粒子への付着性に影響を与える。従って、この数値範囲は、トナー粒子への付着性を適切なレベルにしてトナーの劣化を抑制でき、また、特に低温低湿下で、シリカ微粒子に対して過剰に電荷が与えられた場合でも水分量が適度に保持されることで、過剰帯電(チャージアップ)を抑制して画像劣化を抑制でき、さらに、部材汚染の原因となる感光体表面上へのトナー融着現象や現像部材上での下層形成の発生などを抑制して画像劣化を抑制できる程度のシリカ微粒子の適切な帯電量を示している。また、反応残渣量は、ケイ素化合物の縮重合反応の進行状況を示している。
物性(5)のシリカ微粒子の加熱減量は、上述のように、5%以上13%以下であり、好ましくは、5%以上10%以下である。
ここで、加熱減量が5%を下回ると、シリカ微粒子の帯電量が高くなりすぎるため、感光体表面上へのトナー融着現象や現像部材上への下層形成の発生などを抑制できず画像劣化を十分に抑制できない点で好ましくない。また、加熱減量が13%を上回ると、シリカ微粒子の帯電量が低くなりすぎるため、シリカ微粒子がトナー粒子から離脱し易くなり、トナーの劣化を十分に抑制できず、また、特に低温低湿下で、シリカ微粒子に対して過剰に電荷が与えられた場合に過剰帯電(チャージアップ)を抑制できないことから画像劣化を十分に抑制できない点で好ましくない。さらに、加熱減量が13%を上回るレベルでは、ケイ素化合物の縮重合反応に与らなかった反応残渣量が多すぎるため、その反応によって形成されるシリカ微粒子自体の強度が低下する可能性がある点でも好ましくない。
物性(5)の加熱減量は、示差熱・熱重量同時測定法(TGDTA)によって測定することができる。
示差熱・熱重量同時測定法(TGDTA)によってシリカ微粒子の加熱減量を測定するために使用される測定装置としては、例えば、セイコーインスツルメンツ社製TG/DTA6200を挙げることができる。この測定装置を用いた場合、以下のようにして加熱減量を測定することができる。
アルゴン雰囲気中で、所定量のシリカ微粒子をアルミ容器に入れ、室温から500℃まで、10℃/分の昇温速度で加熱する。加熱中のアルミ容器の重量は装置内部にある精密天秤により秤量されている。加熱前の質量に対する加熱後の質量の減量割合(加熱減量)を算出する。
尚、加熱減量は、上述の測定装置及び測定条件を用いた示差熱・熱重量同時測定法(TGDTA)以外の方法によっても測定することができる。本発明のシリカ微粒子以外の特定のシリカ微粒子について、上述の測定装置及び測定条件を用いた示差熱・熱重量同時測定法(TGDTA)以外の測定方法によって測定され、その測定結果が物性(5)の加熱減量の数値範囲と異なる場合であっても、当該特定のシリカ微粒子について、上述の測定装置及び測定条件を用いた示差熱・熱重量同時測定法(TGDTA)によって測定され、その測定結果が物性(5)の加熱減量の数値範囲に含まれるときは、当該特定のシリカ微粒子は物性(5)をもつものとして認識することができる。
上述の物性(1)〜(5)を併せもつシリカ微粒子は、さらに、物性(2)のガス吸着法による比表面積(α)の測定時におけるガス脱離時間が3分以上10分以下であるという物性(以下、物性(6)という)をもつことが望ましい。この物性(6)のガス脱離時間は、測定に供されるシリカ微粒子の質量を2gとし、且つ、吸着用ガスの流量を25ml/分とした場合の測定値である。シリカ微粒子の質量を2gより多くすると、そのシリカ微粒子全量の総表面積が増えることになるため、ガス脱離時間は長くなり、逆に、2gより少なくすると、ガス脱離時間は短くなる。また、吸着用ガスの流量を25ml/分より多くすると、2gのシリカ微粒子表面に吸着した吸着用ガスの脱離を促進することになるため、ガス脱離時間は短くなる。逆に、25ml/分より少なくすると、ガス脱離時間は長くなる。
ここで、シリカ微粒子の粒径が小さいと、粒径が大きい場合と比べて、同一質量でのシリカ微粒子全量の総表面積が増えるので、ガス脱離時間は長くなる。シリカ微粒子の表面が微細な凹凸部分を有する場合であっても、表面が微細な凹凸部分を有しない場合と比べて、同一質量でのシリカ微粒子全量の総表面積が増えるので、ガス脱離時間は長くなる。その逆の場合は、ガス脱離時間は短くなる。また、シリカ微粒子の粒径が小さいと、トナー粒子への付着性が高くなるが、高すぎる場合には、画像劣化を抑制する効果が低下する。シリカ微粒子の粒径が大きいと、帯電量が下がり、トナー粒子への付着性が低下する。シリカ微粒子の表面構造が微細になると、その強度が低下する。従って、物性(6)のガス脱離時間の数値範囲は、シリカ微粒子がトナー粒子に外添されたときに、トナーの劣化抑制や画像劣化の抑制に寄与するに十分なトナー粒子への付着性や強度をシリカ微粒子に付与できる程度の、シリカ微粒子の適切な表面構造及び粒径を示し、且つ、スペーサ効果を発揮できる程度の、シリカ微粒子の適切な粒径の大きさを示していると発明者らは考えている。
物性(6)のシリカ微粒子のガス脱離時間は、上述のように、3分以上10分以下であり、好ましくは、4分以上9分以下である。
ここで、ガス脱離時間が3分を下回ると、シリカ微粒子の粒径が大きすぎるため、トナー粒子への付着性が低下する点で好ましくない。また、ガス脱離時間が10分を上回ると、シリカ微粒子の粒径が小さすぎるため、トナー粒子への付着性が高くなりすぎて画像劣化を十分に抑制できず、また、シリカ微粒子の強度が低下する点で好ましくない。
物性(6)のガス脱離時間は、上述の物性(2)の比表面積(α)の測定において用いた測定装置及び測定条件によるガス吸着法によって測定することができる。
尚、ガス脱離時間は、上述の物性(2)の比表面積(α)の測定において用いた測定装置及び測定条件によるガス吸着法以外の方法によっても測定することができる。本発明のシリカ微粒子以外の特定のシリカ微粒子について、上述の物性(2)の比表面積(α)の測定において用いた測定装置及び測定条件によるガス吸着法以外の測定方法によって測定され、その測定結果が物性(6)のガス脱離時間の数値範囲と異なる場合であっても、当該特定のシリカ微粒子について、上述の物性(2)の比表面積(α)の測定において用いた測定装置及び測定条件によるガス吸着法によって測定され、その測定結果が物性(6)のガス脱離時間の数値範囲に含まれるときは、当該特定のシリカ微粒子は物性(6)をもつものとして認識することができる。
上述の物性(1)〜(5)を併せもつシリカ微粒子、又は、物性(1)〜(6)を併せもつシリカ微粒子は、さらに、物性(3)の真密度(ρ)に対する物性(4)の比表面積の比(α/β)の割合(ρ/(α/β))が0.90g/m以上2.20g/m以下であるという物性(以下、物性(7)という)をもつことが望ましい。
物性(7)のシリカ微粒子のρ/(α/β)は、シリカ微粒子の粒径に応じた適度な凹凸を有する表面形状、表面構造をとっていることを示していると発明者らは考えている。
シリカ微粒子のρ/(α/β)が下限値の0.90g/mを下回ると、外添時にシリカ微粒子がトナー粒子に均一付着しにくくなる点で好ましくない。また、シリカ微粒子のρ/(α/β)が上限値の2.20g/mを上回ると、シリカ微粒子とトナー粒子との間の付着力が不足する傾向にある点で好ましくない。
上述の物性(1)〜(5)を併せもつシリカ微粒子、又は、物性(1)〜(5)に物性(6)及び(7)の少なくとも一方を併せもつシリカ微粒子は、その表面に疎水基を有することが望ましい。シリカ微粒子表面に導入される疎水基は、シリカ微粒子の表面に疎水性を付与し、シリカ微粒子の吸湿性を低減することができるので、外添したトナーの帯電量を適切なものとすることができる。
疎水基としては、シリカ微粒子の表面に疎水性を付与するのに適したものであれば特に限定されないが、例えば、トリアルキルシリル基、ジアルキルシリル基、モノアルキルシリル基、フェニル基含有シリル基を挙げることができる。疎水基としてトリアルキルシリル基を用いる場合、他の疎水基と比べて、シリカ微粒子の吸湿性の低減効果が高く、微粒子の流動性も良好なため、外添するトナーの適切な帯電量を維持することができる点で、有利である。
また、表面に疎水基を有するシリカ微粒子表面の疎水化度は、30%以上80%以下であることが望ましい。この範囲の疎水化度を有するシリカ微粒子は、このシリカ微粒子を外添したトナーの帯電量を適切なものとすることができる。疎水化度が30%を下回ると、シリカ粒子の吸湿性が高くなり、トナーの適切な帯電性を妨げる点で好ましくない。疎水化度が80%を上回ると、現実的でない。
尚、疎水化度の測定方法としては、メタノール滴定法を挙げることができる。
この実施の形態によるトナー用外添剤は、上述の物性を併せもつシリカ微粒子と、このシリカ微粒子とは別の材料で形成された微粒子を含めることができる。別の材料で形成された微粒子としては、上述の物性を併せもつ上述のシリカ微粒子の特性を損なわない限り、いかなる材料で形成された微粒子であっても使用可能であり、例えば、上述の物性を併せもつシリカ微粒子よりも小粒径のシリカ微粒子を挙げることができる。小粒径のシリカ微粒子としては、トナーに流動性を付与するために外添される、表面に疎水基を有する疎水性シリカ微粒子を挙げることができるが、これに限定されるものではない。
B.トナー用外添剤の製造方法
このトナー用外添剤の製造方法は、微粒子形成工程と、微粒子回収工程を含む。尚、この製造方法は、上述のAで説明した物性を併せもつシリカ微粒子を製造することができる製造方法の一例である。
以下、工程ごとに説明する。
1.微粒子形成工程
この微粒子形成工程は、式:Si(OR(但し、各Rは炭素原子数1〜6の1価炭化水素基である)で示されたケイ素化合物を含むケイ素含有成分と塩基性化合物を含む触媒含有成分とを混合し、ケイ素含有成分と触媒含有成分との混合溶液中で、ケイ素化合物を縮重合反応させてシリカ微粒子の分散液を形成する工程である。
この微粒子形成工程におけるケイ素化合物の縮重合反応は、混合ステップ、第一の反応工程(以下、第一反応ステップという場合がある)、第二の反応工程(以下、第二反応ステップという場合がある)を経て進行する。
以下、微粒子形成工程をステップごとに説明する。
先ず、混合ステップに先立ち、その事前準備として、以下のようにして、ケイ素含有成分と触媒含有成分を個別に調製する。
<(i)ケイ素含有成分の調製>
ケイ素含有成分は、上述の式で示されるケイ素化合物と、有機溶媒を含む溶液である。
シリカ微粒子の原材料であるケイ素化合物は、上述の式で示される四官能シラン化合物又はその加水分解縮合物を含む。上述の四官能シラン化合物としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランなどのシラン化合物(モノマー成分)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。上述の四官能シラン化合物の加水分解縮合物としては、上述の四官能シラン化合物中の加水分解性基(メトキシ基、エトキシ基など)を縮合して得られる加水分解縮合物(ダイマーやオリゴマーなど)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明のケイ素含有成分中には、粒子物性を調整するためにケイ素化合物骨格を含むことが可能である。ケイ素含有成分中のケイ素化合物の含有率は、ケイ素化合物の種類、使用可能なレベルのシリカ微粒子を得るために必要なケイ素化合物の配合量などを考慮して適宜決められる。具体的には、混合溶液全量に対するケイ素化合物の含有率は、1重量%以上50重量%以下であり、好ましくは、3重量%以上45重量%以下である。ケイ素化合物の含有率が下限値の1重量%を下回ると、混合溶液中に含有するケイ素化合物の絶対量が少なすぎるため、ケイ素化合物の縮重合反応によって製造されるシリカ微粒子の原材料が不足し、使用に耐え得るシリカ微粒子を製造することが困難となる点で好ましくない。また、上限値の50重量%を上回ると、ケイ素化合物の含有量が多すぎるため、縮重合反応に与らないケイ素化合物の反応残渣が混合溶液中に残存する可能性がある点で好ましくない。
ケイ素含有成分中の有機溶媒の含有率は、使用されるケイ素化合物の種類、使用されるケイ素化合物との相溶性、使用可能なレベルのシリカ微粒子を得るために必要なケイ素化合物の配合量などを考慮して適宜決められる。具体的には、混合溶液全量に対する有機溶媒の含有率は、50重量%以上99重量%以下であり、好ましくは、50重量%以上95重量%以下である。有機溶媒の含有率が下限値の50重量%を下回ると、ケイ素化合物の含有量が多すぎるため、ケイ素化合物の反応残渣が混合溶液中に残存する可能性がある点で好ましくない。また、上限値の99重量%を上回ると、混合溶液中のケイ素化合物の絶対量が少なすぎるため、ケイ素化合物の縮重合反応によって製造されるシリカ微粒子の原材料が不足し、使用に耐え得るシリカ微粒子を製造することが困難となる点で好ましくない。
有機溶媒としては、使用されるケイ素化合物の種類、触媒含有成分との相溶性などを考慮して適宜決められる。具体的には、有機溶媒としては、プロトン型溶媒、非プロトン型溶媒などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。プロトン型溶媒としては、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどが挙げられる。非プロトン型溶媒としては、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどが挙げられる。
また、ケイ素含有成分にプロトン型溶媒と非プロトン型溶媒を共存させる場合、両溶媒のバランスがケイ素化合物の縮重合反応を進行させる上で重要である。非プロトン型溶媒とプロトン型溶媒の含有割合(重量比)は、10:90〜90:10であり、好ましくは、20:80〜80:20である。両溶媒の含有割合がその下限値や上限値を外れると、両溶媒のバランスが悪く、ケイ素化合物の縮重合反応の進行に支障を与える可能性がある点で好ましくない。
<(ii)触媒含有成分の調製>
触媒含有成分は、上述の塩基性化合物と、上述のケイ素含有成分との相溶性を示す溶媒を含む溶液である。
塩基性化合物としては、アンモニア、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、溶媒としては、水、メタノール、エタノールなどの水性溶媒が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
触媒含有成分中の塩基性化合物の含有率は、使用されるケイ素化合物との相溶性、使用可能なレベルのシリカ微粒子を得るために必要な混合溶液全量に対するケイ素化合物の配合量などを考慮して決められる。具体的には、塩基性化合物の含有率は、1重量%以上40重量%以下であり、好ましくは、3重量%以上30重量%以下である。塩基性化合物の含有率が下限値の1重量%を下回ると、塩基性化合物の含有量が少なすぎるため、ケイ素化合物の縮重合反応を触媒するのに必要な塩基性化合物の含有量が不足する点で好ましくない。上限値の40重量%を上回ると、塩基性化合物の含有量が多すぎるため、ケイ素化合物の縮重合反応が進みすぎる点で好ましくない。
上述のケイ素含有成分と触媒含有成分は、それぞれ個別に調製する。各成分の調製量は、使用可能なレベルのシリカ微粒子を得るために必要な両成分の配合割合に応じて決められる。
混合溶液中でのケイ素含有成分と触媒含有成分の配合割合(重量比)は、10:90〜90:10であり、好ましくは、30:70〜85:15である。混合溶液全量に対するケイ素含有成分の配合量が少ないと、ケイ素化合物の縮重合反応によって製造されるシリカ微粒子の原材料が不足する点で好ましくない。逆に、混合溶液全量に対する触媒含有成分の配合量が少ないと、ケイ素化合物の縮重合反応の進行に必要な触媒が不足する点で好ましくない。
<a.混合ステップ>
この混合ステップは、ケイ素化合物の縮重合反応の初期段階であり、この混合ステップでは、個別に調製した、ケイ素含有成分の温度TAと触媒含有成分の温度TBが次の関係式(a)〜(c)を満たすように、両成分の液温を個別に調整する。
(a)2℃<TA<60℃
(b)TA<TB、及び、
(c)TB−40℃<TA<TB−3℃
ここで、ケイ素含有成分の温度TAは、関係式(a)を満たす温度範囲であり、好ましくは5℃以上45℃以下である。温度TAが2℃を下回ると、反応温度が低すぎるため、ケイ素化合物の縮重合反応が進行しにくくなること、粒子径およびα/βを所望の範囲に制御しにくくなる点で好ましくない。温度TAが60℃を上回ると、反応温度が高すぎるため、ケイ素化合物の縮重合反応の進行速度を制御することが困難となること、粒子径およびα/βを所望の範囲に制御しにくくなる点で好ましくない。
温度TAと温度TBとの関係では、関係式(b)を満たすことによって、ケイ素含有成分の温度TAは、触媒含有成分の温度TBより低温に設定される。また、温度TAと温度TBとの関係では、関係式(c)を満たすことによって、温度TAは、温度TBよりも40℃低い温度と温度TBよりも3℃低い温度との間に設定される。
次に、関係式(a)〜(c)を満たすように個別に温度調整した直後に、ケイ素含有成分と触媒含有成分を混合する際には、ケイ素含有成分に対して触媒含有成分を一気に添加して両成分を混合する。
このように、両成分に温度差をつけ、低温のケイ素含有成分に対して高温の触媒含有成分を一気に添加して混合することにより、ケイ素含有成分中のケイ素化合物と触媒含有成分中の塩基性化合物を一瞬のうちに接触させ、その混合直後から進行し始めるケイ素化合物の縮重合反応の初期段階で、その後に更に進行していくシリカ微粒子の成長プロセスを方向付けし、得られるシリカ微粒子の素性を決定付けることができると考えられる。
このようなケイ素含有成分と触媒含有成分の混合により得られる混合溶液の液温は、混合時のケイ素含有成分の温度TAと混合時の触媒含有成分の温度TBとの間の温度になる。従って、ケイ素含有成分の温度TAは混合時より上昇し、触媒含有成分の温度TBは混合時より低下する。
混合ステップにおける混合溶液の撹拌速度は、50rpm以上300rpm以下であり、好ましくは、80rpm以上250rpm以下である。撹拌速度が下限値の50rpmを下回ると、遅くすぎるため、ケイ素含有成分中のケイ素化合物と触媒含有成分中の塩基性化合物との接触機会が少なく、ケイ素化合物の縮重合反応を十分に進行させることができない点で好ましくない。また、撹拌速度が上限値の300rpmを上回ると、速すぎるため、成長中のシリカ微粒子同士の接触機会が多くなり、シリカ微粒子を十分に成長させることができない点で好ましくない。撹拌速度は、混合前、混合時、混合後を通じて一定であることが望ましいが、必要に応じて、シリカ微粒子の成長プロセスを阻害しない程度に変化させてもよい。
<b.第一反応ステップ>
この第一反応ステップは、混合ステップ以降の縮重合反応の前半段階であり、この第一反応ステップでは、後半の第二反応ステップで十分な熱量を付与して外添剤粒子の詳細構造を制御する上で必要な外添剤粒子構造の骨格を構築するため、第二反応ステップよりも付与する熱量を小さくする。
第一反応ステップでは、撹拌状態の混合溶液を第一の液温T1(℃)で第一の反応時間t1(時間)保持する。この第一ステップで目的とする粒子骨格を得るためにはT1が2℃を上回る必要がある。一方、T1が60℃に到達すると粒子骨格が固定化されてしまい、第二ステップでの精密制御に支障をきたす。以上のことから、T1は2℃を超え60℃未満の範囲とすることが必須となる。また、このとき2℃を超えて与えられた温度を時間で積分して得られる熱量と混合ステップでケイ素含有成分と触媒含有成分とが混合された直後を開始点としてその時の温度から第一の液温T1(℃)に到達する過程で2℃を超えて与えられた温度を時間で積分して得られる熱量の和を第一ステップの積算熱量Q1とし、これを5以上90以下とするよう反応条件を設定する。
Q1が5を下回ると、第一反応ステップにおいて混合溶液に付与される積算熱量としては少なすぎるため、ケイ素化合物の縮重合反応を十分に進行させることができない点で好ましくない。また、Q1が90を上回ると、第一反応ステップにおいて混合溶液に付与される熱量としては多すぎるため、ケイ素化合物の縮重合反応が進みすぎる点で好ましくない。
ここで、第一の液温は、混合ステップで得られた混合溶液の液温を一旦、下げるため、その混合溶液の液温よりも低く設定される。具体的には、第一の液温は、5℃以上45℃以下であり、好ましくは、5℃以上40℃以下である。
第一の液温が5℃を下回ると、第一反応ステップにおける反応温度としては低すぎるため、ケイ素化合物の縮重合反応が進行しにくくなる点で好ましくない。また、第一の液温が45℃を上回ると、第一反応ステップにおける反応温度としては高すぎるため、ケイ素化合物の縮重合反応の進行速度を制御することが困難となる点で好ましくない。
また、第一の液温は、混合ステップでの混合時のケイ素含有成分の温度TAと同一の温度に設定することもできる。この場合、混合ステップ及び第一反応ステップを通じて、ケイ素含有成分の温度を、混合時のケイ素含有成分の温度TAと触媒含有成分の温度TBとの範囲で調整できるので、混合溶液中で成長するシリカ微粒子が受ける熱的なストレスを最小限に抑制できる。
尚、上述の混合ステップで得られた混合溶液の液温から第一の液温への温度調整は、ケイ素化合物の縮重合反応に影響を与えずに、混合ステップから第一反応ステップへの移行を速やかに行えるのであれば、いかなる方法を用いることができる。例えば、混合ステップでのケイ素含有成分と触媒含有成分とを混合した際に、混合後の混合溶液の液温が第一の液温となるようにするため、混合ステップでのケイ素含有成分量、その混合時の温度TA、触媒含有成分量、及び、その混合時の温度TBのうち、少なくともいずれか一つの条件を調整してもよい。
第一の反応時間は、ケイ素含有成分と触媒含有成分とを一気に混合して混合溶液を得た後の時間であり、第二反応ステップへの移行時間を含まない。第一の反応時間は、反応後半の第二反応ステップよりもあまり熱量をかけないようにするため、第二の反応時間と同一又はそれよりも短く設定されることが望ましい。具体的には、第一の反応時間は、1時間以上10時間以下であり、好ましくは、1時間以上5時間以下である。
第一の反応時間が下限値の1時間を下回ると、第一反応ステップでの混合溶液にかける熱量としては少なすぎるため、ケイ素化合物の縮重合反応が進行しにくくなる点で好ましくない。また、第一の反応時間が上限値の10時間を上回ると、第一反応ステップでの混合溶液にかける熱量としては多すぎるため、ケイ素化合物の縮重合反応が進みすぎる点で好ましくない。
第一反応ステップにおける混合溶液の撹拌速度は、50rpm以上300rpm以下であり、好ましくは、80rpm以上250rpm以下である。撹拌速度は、第一反応ステップで一定であることが望ましいが、必要に応じて、シリカ微粒子の成長プロセスを阻害しない程度に変化させてもよい。
第一反応ステップの終了後から次の第二反応ステップまでの間は、混合溶液の第一の液温を第二の液温まで変える移行ステップである。移行ステップでは、後述するように、第一の液温をそれより高温の第二の液温までゆっくり上げていく。
移行ステップの昇温速度は、0.1℃/分以上5℃/分以下であり、好ましくは、0.3℃/分以上3℃/分以下である。昇温速度が下限値を下回ると、第一反応ステップから第二反応ステップへの移行時間が長すぎるため、第二反応ステップへ早く移行できない点で好ましくない。また、昇温速度が上限値を上回ると、昇温による温度変化が大きくすぎるため、その温度変化が縮重合反応に対するストレスとなり、縮重合反応を十分に進行させることができない点で好ましくない。
<c.第二反応ステップ>
この第二反応ステップは、第一反応ステップ以降の縮重合反応の後半段階であり、この第二反応ステップでは、第一反応ステップよりも多くの熱量を付与して、第一反応ステップで得られる骨格中の縮重合反応をさらに進行させることによって、粒子構造を精密に制御して所望の特性に調整したシリカ微粒子の分散液を得る。
第二反応ステップでは、第一反応ステップ後、撹拌状態の混合溶液を第二の液温T2(℃)で第二の反応時間t2(時間)保持する。この第二ステップにおいて粒子構造を精密に制御するためには2℃を上回る温度が必要であるが、80℃に到達すると反応の進行が速すぎて精密制御が困難になることから、2℃を超え80℃未満の範囲とすることが好ましい。また、このとき2℃を超えて与えられた温度を時間で積分して得られる熱量とさらに第一ステップ終了後から第二ステップ開始までの第一の液温T1(℃)から第二の液温T2(℃)に到達する過程で2℃を超えて与えられた温度を時間で積分して得られる熱量との和を第二ステップの積算熱量Q2とし、これを210以上700以下とするよう反応条件を設定する。ただし、前述のとおりT1からT2に移行する際の熱量は積算熱量に含まれるが、降温過程など第二ステップ終了以降の熱量は含まれない。その理由は、第二反応ステップ終了時点でシリカ粒子の構造が降温過程の熱量によって変化しないからである。
Q2が210を下回ると、第一反応ステップの反応条件を満たしたとしても、第二反応ステップでの混合溶液に付与される熱量としては少なすぎるため、第一反応ステップ後のケイ素化合物の縮重合反応を十分に進行させることができない点で好ましくない。また、Q2が700を上回ると、第一反応ステップの反応条件を満たしたとしても、第二反応ステップでの混合溶液に付与される熱量としては多すぎるため、ケイ素化合物の縮重合反応が進みすぎる点で好ましくない。
第二の液温は、上述のように、縮重合反応の後半でしっかりと熱量をかけるために、第一の液温より高く設定される。具体的には、第二の液温は、15℃以上70℃以下であり、好ましくは、25℃以上65℃以下である。
ここで、第二の液温が15℃を下回ると、第二反応ステップにおける反応温度としては低すぎるため、ケイ素化合物の縮重合反応が進行しにくくなる点で好ましくない。また、第二の液温が70℃を上回ると、第二反応ステップにおける反応温度としては高すぎるため、ケイ素化合物の縮重合反応の進行速度を制御することが困難となる点で好ましくない。
尚、第二の液温は、混合ステップでの混合時の触媒含有成分の温度TBと同一の温度に設定することができる。この場合、混合ステップ、第一反応ステップ及び第二反応ステップを通じて、ケイ素含有成分の温度を、混合時のケイ素含有成分の温度TAと触媒含有成分の温度TBとの範囲で調整できるので、混合溶液中で成長するシリカ微粒子が受ける熱的なストレスを最小限に抑制できる。
第二の反応時間は、上述のように、縮重合反応の後半でしっかりと熱量をかけるために、第一の反応時間と同一又はそれより長く設定されることが望ましい。具体的には、第二の反応時間は、1時間以上10時間以下であり、好ましくは、2時間以上5時間以下である。
第二の反応時間が下限値の1時間を下回ると、第二反応ステップでの混合溶液にかける熱量としては少なすぎるため、ケイ素化合物の縮重合反応が十分に進行しなくなる点で好ましくはない。また、第二の反応時間が上限値の10時間を上回ると、第二反応ステップでの混合溶液にかける熱量としては多すぎるため、ケイ素化合物の縮重合反応が進みすぎる点で好ましくはない。
Q2は、第二反応ステップでの熱量を第一反応ステップより多くするために、第二の液温を第一の液温より高く設定し、第二の反応時間を第一の反応時間以上に設定することによって、Q1よりも大きく設定される。
第二反応ステップにおける混合溶液の撹拌速度は、50rpm以上300rpm以下であり、好ましくは、80rpm以上250rpm以下である。撹拌速度は、第二反応ステップで一定であることが望ましいが、必要に応じて、シリカ微粒子の成長プロセスを阻害しない程度に変化させてもよい。
上述した微粒子形成工程において、シリカ微粒子の原材料であるケイ素化合物を含むケイ素含有成分の温度は、混合時の温度TAから、それより高い触媒含有成分の温度TBとの混合を行う混合ステップで上昇し、その後、第一反応ステップで一旦、下げ、移行ステップでゆっくり上昇する、あるいはTAとT1が同じ温度の場合には温度を維持し、第二反応ステップで更に上昇するという変遷を辿る。このようにケイ素含有成分の温度が変遷する反応系の多段階の温度制御によって、微粒子形成工程でのケイ素化合物の縮重合反応は、混合ステップによってシリカ微粒子の成長プロセスを方向付けし、その後、第一反応ステップによって混合溶液に熱量をかけていくことでシリカ微粒子の成長プロセスを進行させ、その後、第二反応ステップによって混合溶液にしっかりと熱量をかけて、縮重合反応が進んでいない反応部位をしっかり反応させてシリカ微粒子の成長プロセスを更に進行させることで、シリカ微粒子の分散液を得るというプロファイルで進行する。得られるシリカ微粒子の分散液中のシリカ微粒子は、上述のAで説明した物性(1)〜(5)、又は、物性(1)〜(5)に物性(6)及び(7)の少なくとも一方を更に併せもつことができる。
尚、上述した微粒子形成工程によって上述のAで説明した物性をもつシリカ微粒子を得るためには、上述した(i)ケイ素含有成分の調製で説明したケイ素含有成分中のケイ素化合物の含有率、及び、(ii)触媒含有成分の調製で説明した触媒含有成分中の塩基性化合物の含有率で説明した混合溶液中のケイ素含有成分と触媒含有成分の配合割合など、使用可能なレベルのシリカ微粒子を得るための基本的な製造条件を満たすことが前提となる。
2.微粒子回収工程
この微粒子回収工程は、上述の微粒子形成工程で得られたシリカ微粒子の分散液からシリカ微粒子を回収する工程である。
この工程では、シリカ微粒子の分散液からシリカ微粒子のみを分離して回収する。回収方法としては、分散液中のシリカ微粒子の表面や形状を変形させず、且つ、シリカ微粒子に損傷を与えない方法であれば特に限定されるものではなく、例えば、エバポレーターを用いた加熱濃縮、遠心沈降機による固液分離、凍結乾燥を挙げることができる。
微粒子回収工程によって回収されたシリカ微粒子は、上述のAで説明した物性をもつことができる。
3.微粒子疎水化工程
この微粒子疎水化工程は、シリカ微粒子表面の一部に残るOH基と疎水化剤を反応させて、上述のシリカ微粒子表面に疎水基を導入することにより、上述のシリカ微粒子の表面を疎水化する工程である。尚、この微粒子疎水化工程は、疎水化されるシリカ微粒子をトナー粒子表面に外添して製造されるトナーの用途などに応じて任意に行われる。
この微粒子疎水化工程で疎水化されるシリカ微粒子としては、上述の微粒子回収工程で回収されたシリカ微粒子、又は、上述の微粒子形成工程で形成されたシリカ微粒子の分散液中に分散するゾル状態のシリカ微粒子のいずれでもよい。前者の場合は、微粒子形成工程、微粒子回収工程、微粒子疎水化工程の順で、シリカ微粒子を製造する。後者の場合は、微粒子形成工程、微粒子疎水化工程、微粒子回収工程の順で、シリカ微粒子を製造する。
シリカ微粒子の表面に導入される疎水基としては、シリカ微粒子の表面を疎水化するのに適したものであれば特に限定されないが、例えば、トリアルキルシリル基、ジアルキルシリル基、モノアルキルシリル基、フェニル基含有シリル基を挙げることができる。
ここで、疎水基としてトリアルキルシリル基を導入する場合における微粒子疎水化工程の一例を説明する。
この一例の微粒子疎水化工程では、式:R SiNHSiR (但し、各Rは炭素原子数1〜6の1価炭化水素基である)で示されるシラザン化合物、及び、式:R SiX(但し、各Rは炭素原子数1〜6の1価炭化水素基であり、XはOH基又は加水分解性基である)で示されるシラン化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を上述のシリカ微粒子の表面に接触させてシリカ微粒子の表面にトリアルキルシリル基を導入することにより、シリカ微粒子の表面を疎水化する。
上述の少なくとも1種の化合物は、ケイ素化合物の縮重合反応後にシリカ微粒子の表面上に残るOH基をトリアルキルシリル化する疎水化剤として作用する。疎水化剤と上述のシリカ微粒子の表面との接触の例としては、上述の微粒子形成工程で形成されたシリカ微粒子の分散液と疎水化剤を含む溶液との混合、上述の微粒子回収工程で回収されたシリカ微粒子を含む溶液と疎水化剤を含む溶液との混合、上述の微粒子回収工程で回収されたシリカ微粒子表面への疎水化剤を含む溶液の添加を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
尚、シリカ微粒子の表面にトリアルキルシリル基を導入する微粒子疎水化工程における反応温度は、20℃以上90℃以下であり、好ましくは、30℃以上85℃以下である。このような反応温度の範囲でシリカ微粒子の疎水化反応を行うことで、トリアルキルシリル基の導入を速やかに且つ十分に進行させることができる。
また、シリカ微粒子の表面にトリアルキルシリル基を導入する微粒子疎水化工程を行う際に使用する反応容器の内部圧力(以下、反応容器内圧力という)は、常圧でよいが、常圧又はそれ以上の高い圧力である、例えば760mmHg以上850mmHg以下であってもよい。このような反応容器内圧力でシリカ微粒子の疎水化反応を行うことで、トリアルキルシリル基の導入を速やかに且つ十分に進行させることができる。
シリカ微粒子の表面にトリアルキルシリル基を導入する微粒子疎水化工程において、上述の少なくとも1種の化合物として選択され、疎水化剤として機能する、上述の式で示されるシラザン化合物としては、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、トリメチルシリルクロリドなどを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。また、上述の少なくとも1種の化合物として選択され、疎水化剤として機能する、上述の式で示されるシラン化合物としては、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシランなどを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。尚、シラン化合物を示す上述の式中のXで示される加水分解性基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロピル基、ブチル基などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
このような疎水化剤として機能する、シラザン化合物又はシラン化合物の溶媒としては、水などの水性溶媒やアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどを挙げることができる。
上述したトナー用外添剤の製造方法によって得られるシリカ微粒子は、上述のAで説明したシリカ微粒子の物性(1)〜(5)、又は、物性(1)〜(5)に物性(6)及び(7)の少なくとも一方を更に併せもつことができる。
C.トナー
このトナーは、上述のAで説明したトナー用外添剤をトナー母粒子表面に外添することによって得ることができる。
トナーを製造するには、先ず、トナー母粒子を製造する。トナー母粒子は、樹脂粒子であり、周知の方法で製造することが可能である。例えば、先ず、製造原料として用いる樹脂を製造する。その後、樹脂と、着色剤と、必要に応じて含められる荷電制御剤及び離型剤の少なくとも一方を混合して混合物を得る。得られた混合物を溶融混練し、混練物を得る。混練物を粗砕し、その粗砕物を粉砕・分級を行い、特定の平均粒径をもつトナー母粒子を得る。
得られたトナー母粒子に対し、トナー用外添剤と、必要に応じて含められる疎水性シリカを添加し、ブレンドして、トナー粒子を得ることができる。
ここで、トナー母粒子の製造原料に用いられる樹脂としては、1種類又はそれ以上の種類の樹脂を挙げることができる。樹脂材料としては、例えば、ポリエステル樹脂を挙げることができるが、これに限定されるものではない。また、複数の樹脂材料を用いる場合は、例えば、組成の異なる2種類以上のポリエステル樹脂を混合して用いることができる。
着色剤としては、イエロー、マゼンタ、シアン用の顔料、黒色用のカーボンブラックや四三酸化鉄などの周知の顔料を挙げることができ、トナーの用途に応じて適宜選択して使用することができる。
荷電制御剤(charge control agent:CCA)は、トナーの極性、帯電性を制御する添加剤である。正帯電用の荷電制御剤としては、アジン系化合物、4級アンモニウム塩などの周知の化合物を挙げることができ、負帯電の荷電制御剤としては、アゾ含金属化合物、サリチル酸系化合物などの周知の化合物を挙げることができ、トナーの用途に応じて適宜選択して使用することができる。
離型剤としては、周知のワックスなどの天然油、シリコーンオイルなどの合成油を挙げることができ、トナーの用途に応じて適宜選択して使用することができる。
また、疎水性シリカは、得られるトナーが投入される画像形成装置の種類に応じて、トナー粒子の流動性を調製するために適宜添加されるものであり、小粒径(例えば、20nm程度)のシリカ系粒子である。
この実施の形態によるトナー用外添剤によれば、上述した式:Si(OR(但し、各Rは炭素原子数1〜6の1価炭化水素基である)で示されたシラン化合物及びその加水分解縮合物からなる群から選択される少なくとも1種のケイ素化合物から得られる微粒子を含むトナー用外添剤である。この微粒子は、(1)平均粒径が50nm以上250nm以下であり、(2)ガス吸着法により測定される比表面積(α)が13m/g以上80m/g以下であり、(3)真密度が1.85g/cm以上2.00g/cm以下であり、(4)平均粒径から算出される比表面積(β)に対する比表面積(α)の比(α/β)が0.85以上1.75以下であり、及び、(5)室温から500℃まで昇温したときの加熱減量が5%以上13%以下である。
このように、微粒子が(1)〜(5)の物性を併せもち、特に、真密度が低い(比重が小さい)点、比表面積の比(α/β)が特定範囲にある点、加熱減量が特定範囲にある点に特徴があるので、この微粒子を含むトナー用外添剤は、以下のような効果を奏する。
(i)微粒子が、トナー粒子表面に付着したときに、スペーサ効果を発揮できる程度の適切な範囲の平均粒径を有するので、トナーの劣化を抑制できる。
(ii)微粒子が上述の範囲の比表面積の比(α/β)を有し、且つ、従来のシリカ系外添剤の代表値より低い上述の範囲の真密度(比重)を有するので、外添時などに与えるトナー粒子への衝撃力を従来よりも軽減し、トナー粒子へのダメージを緩和してトナーの劣化を抑制できる。
(iii)微粒子が上述の範囲の比表面積の比(α/β)を有するので、トナー粒子への適切な付着性を有することができる。微粒子がトナー粒子への適切な付着性を有するので、トナー粒子から遊離しにくいことから、種々の部材汚染を抑制でき、この部材汚染に起因する画像欠陥を抑制できる。
(iv)微粒子が上述の範囲の加熱減量を有するので、部材汚染の原因となる感光体表面上へのトナー融着現象や現像部材上への下層形成の発生などを抑制して画像劣化を抑制できる程度の適切な帯電量を有することができる。
(v)微粒子がケイ素化合物から得られるシリカポリマーで形成されるので、そのシリカポリマーの強度に依存した、外添剤として必要な強度をもつことができる。
従って、トナー用外添剤は、外添時などでのトナーの劣化を抑制でき、且つ、部材汚染等に起因する画像欠陥を抑制できる。
この実施の形態によるトナー用外添剤の製造方法によれば、上述した式:Si(OR(但し、各Rは炭素原子数1〜6の1価炭化水素基である)で示されたシラン化合物及びその加水分解縮合物からなる群から選択される少なくとも1種のケイ素化合物から得られる微粒子を製造する際に、ケイ素化合物を含むケイ素含有成分と塩基性化合物を含む触媒含有成分とを混合し、ケイ素含有成分と触媒含有成分との混合溶液中で、ケイ素化合物を縮重合反応させて微粒子の分散液を形成する微粒子形成工程と、微粒子の分散液から微粒子を回収する微粒子回収工程と、を含み、ケイ素含有成分と触媒含有成分とを混合するときのケイ素含有成分の温度TA(℃)と触媒含有成分の温度TB(℃)が次の関係式(a)〜(c)を満たすようにする。
(a)2℃<TA<60℃
(b)TA<TB、及び
(c)TB−40℃<TA<TB−3℃
このような温度条件で行った微粒子形成工程によって形成され、その後の微粒子回収工程で回収されたシリカ微粒子は、トナー粒子に外添して製造されたトナーに適切な特性をもたせることができる物性(1)〜(5)、又は、物性(1)〜(5)に物性(6)及び(7)の少なくとも一方を更に併せもつことができる。
また、微粒子形成工程におけるQ1やQ2を特定範囲とする反応条件によって製造することで、得られるシリカ微粒子の物性を更に適切なものとすることができる。
従って、本発明に係るトナー用外添剤の製造方法によれば、外添時などでのトナーの劣化を抑制でき、且つ、部材汚染等に起因する画像欠陥を抑制できるトナー用外添剤を製造することができる。
この実施の形態によるトナーによれば、上述のトナー用外添剤を用いる。従って、このトナーは、従来よりも高い劣化耐性をもつので、使用開始直後から終了時までの長期間にわたって付着性を維持できることから、転写効率を高い状態で維持できると共に、外添剤が遊離しにくいので、部材汚染等に起因する画像欠陥を抑制できる。
以下、実施例に基づいて、本発明をより具体的に説明するが、各実施例は本発明を限定するものではない。尚、以下の説明においては、別途、特定しない限り、「部」はすべて「重量部」を意味する。
以下の実施例1では、外添剤1の製造、この製造した外添剤1の物性の確認、外添剤1を用いるトナー1の製造、この製造したトナー1の特性の評価の順で説明する。実施例2〜8及び比較例1〜8についても、実施例1と同様の順で説明する。
実施例及び比較例の説明に先立って、実施例及び比較例における種々の測定方法、耐久試験、評価テストの内容を説明する。
<平均粒径の測定>
動的光散乱粒度分布測定装置(ELSZ1000ZS、大塚電子株式会社製)を用いて、以下の測定条件で行う動的光散乱法により、微粒子の粒度分布を求め、その粒度分布を基にして、分割された粒度範囲に含まれる粒子個数を小径側から累積していき、累積50%となる粒径を平均粒径(nm)とした。
所定量のシリカ微粒子をメタノール溶媒中に入れ、超音波をあてて、シリカ微粒子を分散させた分散液を得た。その後、分散液をガラス製の測定セルに入れ、測定装置に入れた。この測定装置では、測定セルにレーザー光を照射し、その動的光散乱強度を測定した。この散乱強度から換算した粒径分布を、縦軸に個数頻度をとり、横軸に粒径をとる座標上に表したときに、その粒度分布を基にして、分割された粒度範囲に含まれる粒子個数を小径側から累積していき、累積50%となる粒径を平均粒径とした。
<比表面積(実測BET値)、ガス脱離時間の測定>
BET流動法比表面積計(MODEL HM1201、マウンテック社製)を用いて、以下のBET法により、トナー用外添剤として作製したシリカ微粒子についてのガス脱離時間(時間)を測定し、比表面積(α:m/g)を求めた。
ガス導入口とガス排出口を有する略U字状の測定セルを用い、この測定セル内に2gのシリカ微粒子を入れ、ガス導入口から、窒素ガス(吸着ガス)とヘリウムガス(キャリアガス)の混合ガス(窒素ガス流量:25ml/分)を測定セル内に導入し、シリカ微粒子に接触させるように流し、ガス排出口から排出させた。その後、窒素ガスの相対圧力の変化をモニタしながら、測定セルを液体窒素温度まで冷却することで窒素ガスを粉末表面に吸着させ(ガス吸着過程)、その後、測定セルを室温に戻すことで窒素ガスを脱離させた(ガス脱離過程)。窒素ガスの相対圧力が初期値から低下し、その後、初期値に戻るまでの時間をガス吸着時間とし、ガス吸着過程終了直後の、窒素ガスの相対圧力が初期値から上昇し、その後、初期値に戻るまでの時間をガス脱離時間とした。ガス吸着時間及びガス脱離時間を示すプロファイルに基づき、時間軸とガス吸着過程を示す曲線との間の面積からシリカ微粒子の比表面積(α)を算出した。
<比表面積の比の算出>
上述のBET法によって測定された微粒子の粒度分布から求められる平均粒径から算出される比表面積(β:m/g)に対する、上述のBET法によって測定された比表面積(α)の比(α/β)を算出した。
<真密度の測定>
乾式自動密度計(アキュピックII1340型、株式会社島津製作所製)を用い、この密度計内にシリカ微粒子1.5gを入れて、その真密度を自動測定した。
<加熱減量の測定>
加熱減量測定装置セイコーインスツルメンツ社製)を用いて、以下のようにして示差熱・熱重量同時測定法(TGDTA)により、微粒子を室温から500℃まで昇温させて加熱したときの加熱減量(%)を測定した。
大気雰囲気中で、所定量のシリカ微粒子をアルミ容器に入れ、室温から500℃まで、3℃/分の昇温速度で加熱した。その後、アルミ容器ごと秤量してシリカ微粒子の質量を測定し、加熱前の質量に対する加熱後の質量の減量割合(加熱減量)を算出した。
<耐久試験>
以下の方法によって、トナーを用いた耐久試験1、2を行った。
<耐久試験1>
画像形成装置として、一成分現像方式を採用した「サムスン電子社製カラーレーザープリンターCLP−610ND(プリント速度:21枚/分)」を用いた。
画像形成装置のブラック色の画像形成ユニットに、トナーを投入し、転写材として「富士ゼロックス社製フルカラー複写機用紙J(82g/cm、A4サイズ)」を用い、常温/常湿(N/N)環境(23℃/55%RH)、低温/低湿(L/L)環境(15℃/10%RH)及び高温/高湿(H/H)環境(32℃/80%RH)のそれぞれの印字環境下において、印字比率を5%に調整したテキスト画像を単色モードにより2枚印刷する度に1分休止する方式で1500枚分をプリントアウトするという条件での耐久試験1を実施した。その後、後述するように、評価テスト(1.画像濃度、2.カブリ、3.転写効率、4.部材汚染)を実施した。
<耐久試験2>
印字画像を中央部10cmの幅のベタ黒画像に代え、印字環境を35℃/85%RHに代え、プリントアウトの方式を連続印字に代えた以外は、上述の耐久試験1と同様の条件で行うという条件での耐久試験2を実施した。その後、同じ装置を用いて、後述するように、評価テスト(5.耐フィルミング性)を実施した。
<評価テスト>
以下に説明する評価テストは、各評価テストに対応する耐久試験がある場合、その対応する耐久試験と同様の環境で行った。また、耐久試験を行なわずに行う評価テストについても、その耐久試験と同様の環境で行った。
<1.画像濃度>
使用初期段階の評価テストとして、上述の耐久試験1を行なわずに、評価対象のトナーを用いて、正方形のソリッドパッチ(一辺5mm)を四隅付近と中央部分に有する画像を1枚プリントアウトした。その後、出力した画像に照射光を当て、その反射光の反射率からパッチの反射濃度を「SpectroEye」(GretagMacbeth社製)で計測し、得られた計測値の平均値を、下記の判断基準に基づいて評価し、A〜Dのいずれかに相当するかを判定した。以下、このような使用初期段階の評価テストを「初期の評価テスト」と呼ぶ。また、同じトナーを用いて、上述の耐久試験1を行った後に、上述の「初期」で行った評価テストと同様の評価テストを行った。以下、このような耐久試験1後の評価テストを「耐久後の評価テスト」と呼ぶ。ここで、トナーの帯電量が高いと、現像段階において現像部材から離れにくくなるため、感光体上へ現像されるトナー量が減少する。このため、画像濃度が低い場合、トナーの帯電量が高いことになる。
A:反射濃度の計測値の平均値が1.20以上である。
B:反射濃度の計測値の平均値が1.05以上1.20未満である。
C:反射濃度の計測値の平均値が0.90以上1.05未満である。
D:反射濃度の計測値の平均値が0.90未満である。
<2.カブリ>
初期の評価テストとして、上述の耐久試験1を行なわずに、上述と同じトナーを用いて、白地部分と印刷部分の両方を含む画像を1枚出力した。この出力画像を「リフレクトメータ」(東京電色社製)により測定した、画像の白地部分の白色度と転写紙の白色度の差から、カブリ濃度(%)を算出し、画像カブリを下記の判断基準に基づいて評価し、A〜Dのいずれかに相当するかを判定した。また、上述と同じトナーを用いて、耐久後の評価テストを行った。ここで、カブリとは、トナーが帯電していないか、又は、トナーの帯電量が低い場合、あるいはトナーが反対極性に帯電している場合には、現像段階においてトナーを感光体上の潜像上に移行せずに非画像部である、白地部分にトナーが乗り、画質を低下させる現象である。このため、カブリ濃度が高い場合、トナーが帯電していないか、又は、トナーの帯電量が低い、あるいはトナーが反対極性に帯電していることになる。
A:カブリ濃度が1.0%以下である。
B:カブリ濃度が1.0%以上2.0%未満である。
C:カブリ濃度が2.0%以上3.0%未満である。
D:カブリ濃度が3.0%以上である。
<3.転写効率>
初期の評価テストとして、上述の耐久試験1を行なわずに、上述と同じトナーを用いて、ベタ画像を1枚出力する際に、感光体上のトナー量と転写紙上のトナー量との重量比から転写効率を求めた。感光体上のトナー量の全量が転写紙上に転写された場合を転写効率100%とする。転写効率を下記の判断基準に基づいて評価し、A〜Dのいずれかに相当するかを判定した。また、上述と同じトナーを用いて、耐久後の評価テストを行った。ここで、評価テストの対象であるトナーは、いずれも大粒径外添剤を外添したものであり、大粒径外添剤のトナー粒子への付着力を維持していれば、転写効率を高い状態に維持できることになる。転写効率が低い場合、大粒径外添剤のトナー粒子への付着性が低いことになる。
A:転写効率が95%以上である。
B:転写効率が90%以上95%未満である。
C:転写効率が80%以上90%未満である。
D:転写効率が70%以上80%未満である。
<4.部材汚染>
現像ロール、帯電ロール、感光体の各表面の汚染は、いずれも、外添剤のトナー粒子への付着性が低いなどの理由からトナー粒子から遊離した外添剤微粒子が起因となる、トナーを含めた汚染である。
(1)現像ロール
初期の評価テストとして、上述の耐久試験1を行なわずに、上述と同じトナーを用いて、ハーフトーン画像を1枚出力し、その出力画像と現像ロールの観察を行った。現像ロールの観察の際には、エアブローにて表面のトナーを取り除いた。画像欠陥の有無と現像ロールの部材汚染の状況を下記の判断基準に基づいて評価し、A〜Dのいずれかに相当するかを判定した。また、上述と同じトナーを用いて、耐久後の評価テストを行った。
A:現像ロールの表面は全く汚染しておらず、画像欠陥も全く発生していない。
B:現像ロールの表面はわずかに汚染しているが、画像欠陥は全く発生していない。
C:現像ロールの表面は汚染しており、画像欠陥もわずかに発生している。
D:現像ロールの表面は汚染が目立ち、画像欠陥も目立つ。(使用不可)
(2)帯電ロール
初期の評価テストとして、上述の耐久試験1を行なわずに、上述と同じトナーを用いて、ハーフトーン画像を1枚出力し、その出力画像と帯電ロールの観察を行った。画像欠陥の有無と帯電ロールの部材汚染の状況を下記の判断基準に基づいて評価し、A〜Dのいずれかに相当するかを判定した。また、上述と同じトナーを用いて、耐久後の評価テストを行った。
A:帯電ロールの表面は全く汚染しておらず、画像欠陥も全く発生していない。
B:帯電ロールの表面はわずかに汚染しているが、画像欠陥は全く発生していない。
C:帯電ロールの表面は汚染しており、画像欠陥もわずかに発生している。
D:帯電ロールの表面は汚染が目立ち、画像欠陥も目立つ。(使用不可)
(3)感光体
初期の評価テストとして、上述の耐久試験1を行なわずに、上述と同じトナーを用いて、ハーフトーン画像を1枚出力し、その出力画像と感光体表面の観察を行った。画像欠陥の有無と感光体表面の部材汚染の状況を下記の判断基準に基づいて評価し、A〜Dのいずれかに相当するかを判定した。また、上述と同じトナーを用いて、耐久後の評価テストを行った。
A:感光体表面は全く汚染しておらず、画像欠陥も全く発生していない。
B:感光体表面はわずかに汚染しているが、画像欠陥は全く発生していない。
C:感光体表面は汚染しており、画像欠陥もわずかに発生している。
D:感光体表面は汚染が目立ち、画像欠陥も目立つ。(使用不可)
<5.耐フィルミング性>
(1)感光体
上述と同じトナーを用いて、上述の耐久試験2を行った後に、ハーフトーン画像を1枚出力し、その出力画像と感光体表面の観察を行った。感光体表面の観察の際には、エアブローにて感光体表面のトナーを取り除いた。画像欠陥の有無と感光体表面上への外添剤融着(フィルミング)の発生を目視で観察し、下記の判断基準に基づいて評価し、A〜Dのいずれかに相当するかを判定した。ここで、フィルミングは、トナーの帯電量が低いために、トナー粒子と外添剤との粒子間の付着力が低下した場合に物理的な力によって外れた外添剤が感光体表面上に付着し、熱によって融着して膜が形成される現象である。このため、フィルミングは高温高湿環境下で発生しやすい。また、画像欠陥の有無は、ハーフトーン画像にハーフトーン抜けの発生の有無、あるいはハーフトーンが濃く印字される個所の有無により判断される。
A:感光体表面にフィルミングが全く汚染しておらず、画像欠陥も全く発生していない。
B:感光体表面にフィルミングがわずかに発生しているが、画像欠陥は全く発生していない。
C:感光体表面にフィルミングが発生しており、画像欠陥もわずかに発生している。
D:感光体表面のフィルミングが目立ち、画像欠陥も目立つ。(使用不可)
上述した評価テストにおける判断基準では、「A」判定が好適に使用可能であるとの判断となり、「B」判定が十分に使用可能であるとの判断となる。「C」判定は使用が許容されるか否かのボーダーライン上にあり、「A」判定や「B」判定の他に「C」判定が1項目であれば使用可能であるとの判断となるが、その「C」判定の数が1項目より多い場合には、使用不可の判断となる。1項目でも「D」判定があれば、それだけで使用不可の判断となる。これらの判定は、以下の表2及び表5に示す。
尚、表2及び表5に示すように、画像特性(画像濃度、カブリ、転写効率)について、常温常湿下及び高温高湿下での耐久試験を行い、低温低湿下での耐久試験を行っていない。これは、トナーは、基本的に高温高湿下で一定の画像特性を維持する必要があり、また、画像特性が低温低湿下で悪化することはないという理由に基づく。また、表2及び表5に示すように、部材汚染について、低温低湿下での耐久試験を行っている。これは、低温低湿下で、部材汚染による画像劣化が起こり易いという理由に基づく。
実施例1〜8
以下の実施例1〜8における外添剤1〜8の製造において、第一の反応工程の第一の液温をケイ素含有成分の混合時の温度TAと同一の温度に設定し、第二の反応工程の第二の液温を触媒含有成分の混合時の温度TB以下の温度に設定した。
実施例1.
<外添剤1の製造>
先ず、この実施例1に係るトナー用外添剤(外添剤1)を製造した。
<1.微粒子形成工程>
窒素雰囲気下、反応容器に、エタノール65部とアセトニトリル65部とテトラエトキシシラン50部を入れ、これら3成分を含むケイ素含有成分を150rpmで撹拌しながら、その温度TAを20℃に制御した。このケイ素含有成分の調製とは別に、蒸留水115部と10重量%アンモニア水5部の混合物を含む触媒含有成分をその温度TBが55℃になるまで加温した。その後、温度TBを55℃に維持したままの触媒含有成分の全量を、撹拌状態のケイ素含有成分中に一気に添加して混合溶液を得た。混合直後の混合溶液の液温は、32℃であった。
その後、混合溶液の液温を20℃となるように調整し、150rpmで撹拌しながら、20℃(第一の液温T1)で1.5時間(第一の反応時間t1)保持する第一の反応工程を行った。その後、加温して54℃(第二の液温T2)で6.5時間(第二の反応時間t2)保持する第二の反応工程を行ってシリカ微粒子の分散液を得た。
尚、この外添剤1の製造では、混合時のケイ素含有成分の温度TA及び第一の液温T1を同一の20℃に設定し、混合時の触媒含有成分の温度TBを55℃に設定し、第二の液温T2を54℃に設定した。また、第一の反応工程は、反応中の温度の時間推移を記録し、それに基づき、積算熱量Q1を29とする反応条件で行い、第二の反応工程は、第二の液温(54℃)と第二の反応時間(6.5時間)とのQ2を348とする反応条件で行った。反応時間の合計を8時間とした。
<2.微粒子回収工程>
その後、微粒子形成工程によって得られたシリカ微粒子の分散液に蒸留水を100部添加し、液量が半分になるまでエバポレーターを用いて加熱濃縮し、遠心沈降機により濃縮液を固液分離した。上澄み液をデカンテーションで除去した後、沈降物に蒸留水300部を加えて、同様に遠心沈降機により固液分離を行った。その後、このような蒸留水の添加、遠心沈降機による固液分離、デカンテーションを含む一連のステップをさらに2度繰り返した後、沈降物を24時間凍結乾燥させることにより、白色粉末を得た。
<3.微粒子疎水化工程>
この白色粉末10部を水100部、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)15部の混合物に加え、850mmHgの反応容器内圧力下で、30分間室温で200rpmで撹拌し、更に、70℃、200rpmで4時間撹拌した後、固液分離を行い、得られた沈降物をメタノールで洗浄し、その後、80℃で48時間乾燥させることにより、表面を疎水化したシリカ微粒子の白色粉末(外添剤1)を得た。
この外添剤1の上述した原材料の種類および量、製造条件の一覧を以下の表1に示す。
<外添剤1の物性の確認>
得られた外添剤1は、真密度1.93g/cm、実測BET値(α)36.2m/g、平均粒径90nm、比表面積の比(α/β)が1.05、加熱減量が8.4%の物性をもつことを確認した。また、BET測定時の窒素ガスのガス脱離時間は7.2分であり、上述した(6)を満たすことを確認した。
次に、上述のようにして得られた白色粉末(トナー用外添剤)を外添する対象となるトナー母粒子を以下のようにして製造した。
<樹脂1の製造>
トナー母粒子の製造原料として用いる樹脂1を以下のようにして製造した。
ディーン・スターク・トラップ(Dean-Stark trap)を取り付けた反応容器に、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物(平均付加モル数:2.2モル)10800g、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物(平均付加モル数:2.0モル)4300g、テレフタル酸5040g及びn−ドデセニル無水コハク酸700gを入れ、窒素雰囲気下230℃で撹拌し、反応により生成する水が流出しなくなった時点を、上述のトラップ内に溜まる液量が増えなくなることで確認した上で無水トリメリット酸2112gを添加し、軟化点が147℃となるように反応させて樹脂1を得た。得られた樹脂1をポリエステルAとする。反応後に測定したポリエステルAの軟化点は145℃であった。ガラス転移点は73℃、融解熱の最大ピーク温度は80℃、酸価は26mgKOH/g、水酸基価は27mgKOH/gであった。
<樹脂2の製造>
トナー母粒子の製造原料として用いる樹脂2を以下のようにして製造した。
反応容器にビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物(平均付加モル数:2.2モル)12250g、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物(平均付加モル数:2.0モル)21125g、テレフタル酸14940g及び酸化ジブチル錫15gを入れ、窒素雰囲気下230℃で撹拌し、軟化点が121℃となるように反応させて樹脂2を得た。得られた樹脂2をポリエステルBとする。反応後に測定したポリエステルBの軟化点は120℃であった。ガラス転移点は65℃、融解熱の最大ピーク温度は70℃、酸価は3.6mgKOH/g、水酸基価23.7mgKOH/gであった。
<トナー母粒子1の製造>
樹脂1(ポリエステルA)及び樹脂2(ポリエステルB)を用いて、トナー母粒子1を以下のようにして製造した。
ポリエステルA 2880g、ポリエステルB 4320g、着色剤「ピグメントブルー15:3(顔料名)」(大日精化工業(株)製)300g、荷電制御剤「LR−147(商品名)」(日本カーリット(株)製)86.5g及びヒドロキシ酸エステル含有の離型剤「カルナウバワックス(商品名)」((株)加藤洋行製、融点:83℃)504gをヘンシェルミキサーに投入し、3000rpmで15分間撹拌混合して混合物を得た。得られた混合物を、オープンロール型連続混練機を用いて溶融混練し、混練物を得た。
使用したオープンロール型連続混練機は、ロール外径0.14m、有効ロール長0.8mのものであり、運転条件は、加熱ロール(前ロール)の回転速度を33m/分、冷却ロール(後ロール)の回転速度を11m/分、ロール間隙を0.1mmとした。また、ロール内の加熱及び冷却媒体温度は、加熱ロールの原料投入側の温度を150℃、混練物排出側の温度を115℃、冷却ロールの原料投入側の温度を35℃及び混練物排出側の温度を30℃に設定した。
混練物はロートプレックスにて粗砕し、さらにその粗砕物を衝突板式粉砕機(IDS−2型、日本ニューマチック工業株式会社製)、ディスパージョンセパレータを用いて粉砕・分級を行い、体積平均粒径が約8.0μmの未処理シアントナー粒子(トナー母粒子1)を得た。尚、体積平均粒径は、粒度分布測定装置(マルチサイザー(登録商標)、ベックマン・コールター社製)を用いて測定した。
<トナー1の製造>
得られたトナー母粒子1 50部に対し、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)で疎水化処理した粒径20nm程度の小粒径疎水性シリカ(TS720:キャボット社製)を1.0部、外添剤1を0.4部添加し、サンプルミルにて10,000rpmで30秒間ブレンドして、シアントナー(トナー1)を得た。
<トナー1の評価>
得られたトナー1の特性について、上述した評価テストによって評価した。評価結果の一覧を以下の表2に示す。
表2に示すように、トナー1は、評価テストの全16項目で、いずれも「A」判定であった。この評価結果から、「A」判定が好適に使用可能であるとする判断基準に照らすと、トナー1は、劣化耐性等に優れた静電荷像現像用トナーとして使用可能であることを確認できた。この結果は、トナー1に外添した本発明に係る外添剤1が併せもつ上述の物性に依存する特性によるものであると考えられる。
実施例2.
<外添剤2の製造>
以下の点を変更した以外は、外添剤1と同様にして外添剤2を得た。
(イ)触媒含有成分中の10重量%アンモニア水の含有量を5部から2部に減らした。
(ロ)ケイ素含有成分の混合時の温度TAを20℃から10℃に下げた。
(ハ)触媒含有成分の混合時の温度TBを55℃から44℃に下げた。
(ニ)第一の反応時間t1を1.5時間から2時間へと長くした。
(ホ)第二の反応時間t2を6.5時間から6時間へと短くした。
(ヘ)第一の反応工程におけるQ1を、29から18に減らした。
(ト)第二の液温を44℃に設定し、第二の反応工程におけるQ2を、348から262に減らした。
(チ)疎水化剤をヘキサメチルジシラザンからメチルトリメトキシシランに代え、このメチルトリメトキシシラン15部に対して水135部を添加して疎水化剤を調製した。
この外添剤2の上述した原材料の種類および量、製造条件の一覧を以下の表1に示す。
<外添剤2の物性の確認>
得られた外添剤2は、平均粒径120nm、実測BET値(α)44m/g、真密度1.96g/cm、比表面積の比(α/β)1.72、加熱減量7.2%の物性をもち、上述の物性(1)〜(5)を満たすことを確認した。また、BET測定時の窒素ガスのガス脱離時間は8.1分であり、上述の物性(6)を満たすことを確認した。
実施例3.
<外添剤3の製造>
以下の点を変更した以外は、外添剤1と同様にして外添剤3を得た。
(イ)触媒含有成分中の10重量%アンモニア水の含有量を5部から10部に増やした。
(ロ)ケイ素含有成分の混合時の温度TAを20℃から5℃に下げた。
(ハ)触媒含有成分の混合時の温度TBを55℃から20℃に下げた。
(ニ)第一の液温を5℃に設定し、第一の反応工程におけるQ1を、29から6.5に減らした。
(ホ)第二の液温を20℃に設定し、第二の反応工程におけるQ2を、348から119に減らした。
この外添剤3の上述した原材料の種類および量、製造条件の一覧を以下の表1に示す。
<外添剤3の物性の確認>
得られた外添剤3は、平均粒径210nm、実測BET値(α)13.5m/g、真密度1.85g/cm、比表面積の比(α/β)0.87、加熱減量12.5%の物性をもち、上述の物性(1)〜(5)を満たすことを確認した。また、BET測定時の窒素ガスのガス脱離時間は8.6分であり、上述の物性(6)を満たすことを確認した。
実施例4.
<外添剤4の製造>
以下の点を変更した以外は、外添剤1と同様にして外添剤4を得た。
(イ)触媒含有成分中の10重量%アンモニア水の含有量を5部から3部に減らした。
(ロ)第一の反応時間t1を1.5時間から3時間へと長くした。
(ハ)第二の反応時間t2を6.5時間から5時間へと短くした。
(ニ)第一の液温を温度TAと同一の温度に設定し、第一の反応工程におけるQ1を、29から56に増やした。
(ホ)第二の液温を53℃に設定し、第二の反応工程におけるQ2を、348から264に減らした。
この外添剤4の上述した原材料の種類および量、製造条件の一覧を以下の表1に示す。
<外添剤4の物性の確認>
得られた外添剤4は、平均粒径60nm、実測BET値(α)69.8m/g、真密度1.99g/cm、比表面積の比(α/β)1.39、加熱減量7.9%の物性をもち、上述の物性(1)〜(5)を満たすことを確認した。また、BET測定時の窒素ガスのガス脱離時間は9.3分であり、上述の物性(6)を満たすことを確認した。
実施例5.
<外添剤5の製造>
以下の点を変更した以外は、外添剤1と同様にして外添剤5を得た。
(イ)触媒含有成分中の10重量%アンモニア水の含有量を5部から12部に増やした。
(ロ)触媒含有成分の混合時の温度TBを55℃から65℃に上げた。
(ハ)第一の反応時間t1を1.5時間から4時間へと長くした。
(ニ)第二の反応時間t2を6.5時間から4時間へと短くした。
(ホ)第一の液温を温度TAと同一の温度に設定し、第一の反応工程におけるQ1を、29から74に増やした。
(ヘ)第二の液温を62℃に設定し、第二の反応工程におけるQ2を、348から255に減らした。
尚、微粒子疎水化工程における反応容器内圧力は850mmHgより低い800mmHgであった。
この外添剤5の上述した原材料の種類および量、製造条件の一覧を以下の表1に示す。
<外添剤5の物性の確認>
得られた外添剤5は、平均粒径230nm、実測BET値(α)22.3m/g、真密度1.87g/cm、比表面積の比(α/β)1.60、加熱減量8.6%の物性をもち、上述の物性(1)〜(5)を満たすことを確認した。また、BET測定時の窒素ガスのガス脱離時間は3.5分であり、上述の物性(6)を満たすことを確認した。
実施例6.
<外添剤6の製造>
以下の点を変更した以外は、外添剤1と同様にして外添剤6を得た。
(イ)触媒含有成分を、蒸留水115部と10重量%アンモニア水5部の混合物から蒸留水100部と10重量%アンモニア水2部の混合物に変更した。
(ロ)第一の反応時間t1を1.5時間から3時間へと長くした。
(ハ)第二の反応時間t2を6.5時間から5時間へと短くした。
(ニ)第一の液温を温度TAと同一の温度に設定し、第一の反応工程におけるQ1を、29から56に増やした。
(ホ)第二の液温を44℃に設定し、第二の反応工程におけるQ2を、348から215に減らした。
尚、微粒子疎水化工程における反応容器内圧力は850mmHgより低い760mmHgであった。
この外添剤6の上述した原材料の種類および量、製造条件の一覧を以下の表1に示す。
<外添剤6の物性の確認>
得られた外添剤6は、平均粒径55nm、実測BET値(α)77.5m/g、真密度2.00g/cm、比表面積の比(α/β)1.42、加熱減量7.6%の物性をもち、上述の物性(1)〜(5)を満たすことを確認した。また、BET測定時の窒素ガスのガス脱離時間は4.6分であり、上述の物性(6)を満たすことを確認した。
実施例7.
<外添剤7の製造>
以下の点を変更した以外は、外添剤1と同様にして外添剤7を得た。
(イ)ケイ素含有成分を、エタノール65部とアセトニトリル65部とテトラエトキシシラン50部の混合物からエタノール80部とアセトニトリル50部とテトラエトキシシラン50部の混合物に変更した。
(ロ)触媒含有成分中の10重量%アンモニア水の含有量を5部から12部に増やした。
(ハ)ケイ素含有成分の混合時の温度TAを20℃から40℃に上げた。
(ニ)触媒含有成分の混合時の温度TBを55℃から70℃に上げた。
(ホ)第一の反応時間t1を1.5時間から2時間へと長くした。
(ヘ)第二の反応時間t2を6.5時間から6時間へと短くした。
(ト)第一の液温を温度TAと同一の温度に設定し、第一の反応工程におけるQ1を、29から78に増やした。
(チ)第二の液温を温度TBと同一の温度に設定し、第二の反応工程におけるQ2を、348から416に増やした。
尚、微粒子疎水化工程における反応容器内圧力は850mmHgより低い800mmHgであった。
この外添剤7の上述した原材料の種類および量、製造条件の一覧を以下の表1に示す。
<外添剤7の物性の確認>
得られた外添剤7は、平均粒径250nm、実測BET値(α)15m/g、真密度2.00g/cm、比表面積の比(α/β)1.25、加熱減量10.1%の物性をもち、上述の物性(1)〜(5)を満たすことを確認した。また、BET測定時の窒素ガスのガス脱離時間は4.0分であり、上述の物性(6)を満たすことを確認した。
実施例8.
<外添剤8の製造>
以下の点を変更した以外は、外添剤1と同様にして外添剤8を得た。
(イ)触媒含有成分を、蒸留水115部と10重量%アンモニア水5部の混合物から蒸留水80部と10重量%アンモニア水2部の混合物に変更した。
(ロ)ケイ素含有成分の混合時の温度TAを20℃から45℃に上げた。
(ハ)触媒含有成分の混合時の温度TBを55℃から65℃に上げた。
(ニ)第一の反応時間t1を1.5時間から1.9時間へと長くした。
(ホ)第二の反応時間t2を6.5時間から10時間へと長くした。
(ヘ)第一の液温を温度TAと同一の温度に設定し、第一の反応工程におけるQ1を、29から84に増やした。
(ト)第二の液温を温度TBと同一の温度に設定し、第二の反応工程における第二の液温と第二の反応時間t2とのQ2を、348から633に増やした。
(チ)上述した(ニ)及び(ホ)の変更に伴って、反応時間の合計を8時間から11.9時間に増やした。
尚、微粒子疎水化工程における反応容器内圧力は850mmHgより低い800mmHgであった。
この外添剤8の上述した原材料の種類および量、製造条件の一覧を以下の表1に示す。
<外添剤8の物性の確認>
得られた外添剤8は、平均粒径52nm、実測BET値(α)79.3m/g、真密度1.85g/cm、比表面積の比(α/β)1.27、加熱減量8.7%の物性をもち、上述の物性(1)〜(5)を満たすことを確認した。また、BET測定時の窒素ガスのガス脱離時間は4.9分であり、上述の物性(6)を満たすことを確認した。
Figure 0006727759
尚、表1及び以下の表4中の反応時間は、第一の反応時間t1と第二の反応時間t2の合計であり、第一の反応工程と第二の反応工程との間の移行時間を含まない。
<トナー2〜8の製造>
外添剤の種類を外添剤1から外添剤2〜8に代えた以外は、トナー1と同様にしてトナー2〜8を得た。
<トナー2〜8の評価>
トナー2〜8について、トナー1と同様にして評価した。評価結果の一覧を以下の表2に示す。表2に示すように、トナー2〜8についての評価は以下のようなものであった。
トナー2は、評価テストの全16項目のうち、13項目が「A」判定であった。残りの3項目(高温高湿下での耐久後のカブリ、低温低湿下での感光体の汚染、感光体上への耐フィルミング性)が「B」判定であったが、使用に差し支えるレベルはなく、好適に使用可能である。
トナー3は、評価テストのうち、8項目が「A」判定であった。残りの8項目(常温常湿下での耐久後のカブリ・転写効率、高温高湿下での耐久後のカブリ・転写効率、低温低湿下での現像ロール・帯電ロール・感光体の汚染、感光体上への耐フィルミング性)が「B」判定であったが、使用に差し支えるレベルはなく、好適に使用可能である。
トナー4は、評価テストのうち、13項目が「A」判定であった。残りの3項目(高温高湿下での耐久後のカブリ・転写効率、低温低湿下での現像ロールの汚染)が「B」判定であったが、使用に差し支えるレベルはなく、好適に使用可能である。
トナー5は、評価テストのうち、11項目が「A」判定であった。残りの5項目(高温高湿下での耐久後の画像濃度・カブリ、低温低湿下での帯電ロール・感光体の汚染、感光体上への耐フィルミング性)が「B」判定であったが、使用に差し支えるレベルはなく、好適に使用可能である。
トナー6は、評価テストのうち、12項目が「A」判定であった。残りの4項目(高温高湿下での耐久後の画像濃度・カブリ・転写効率、低温低湿下での感光体の汚染)が「B」判定であったが、使用に差し支えるレベルはなく、好適に使用可能である。
トナー7は、評価テストのうち、10項目が「A」判定であった。残りの6項目(常温常湿下での耐久後の転写効率、高温高湿下での耐久後の転写効率、低温低湿下での現像ロール・帯電ロール・感光体の汚染、感光体上への耐フィルミング性)が「B」判定であったが、使用に差し支えるレベルはなく、好適に使用可能である。
トナー8は、評価テストのうち、11項目が「A」判定であった。残りの5項目(常温常湿下での耐久後のカブリ、高温高湿下での耐久後の画像濃度・カブリ・転写効率、低温低湿下での感光体の汚染)が「B」判定であったが、使用に差し支えるレベルはなく、好適に使用可能である。
以上の評価結果から、「A」判定が好適に使用可能であり、「B」判定が十分に使用可能であるとする判断基準に照らすと、トナー2〜8は、いずれも、劣化耐性等に優れた静電荷像現像用トナーとして好適に使用可能であることを確認できた。この結果は、トナー2〜8に外添した本発明に係る外添剤2〜8の特性によるものであると考えられる。
Figure 0006727759
比較例1〜6
以下の比較例1〜6のうち、比較例1、2、6における比較外添剤1、2、6の製造においては、第一の反応工程の第一の液温をケイ素含有成分の混合時の温度TAと同一の温度に設定し、第二の反応工程の第二の液温を触媒含有成分の混合時の温度TBと同一の温度に設定した。
<比較外添剤1の製造>
以下の点を変更した以外は、外添剤1と同様にして比較外添剤1を得た。
(イ)触媒含有成分を、蒸留水115部と10重量%アンモニア水5部の混合物から蒸留水70部と10重量%アンモニア水2部の混合物に変更した。
(ロ)触媒含有成分の混合時の温度TBを55℃から65℃に上げた。
(ハ)第一の反応時間t1を1.5時間から2時間へと長くした。
(ニ)第二の反応時間t2を6.5時間から6時間へと短くした。
(ホ)第一の液温を温度TAと同一の温度に設定し、第一の反応工程におけるQ1を、29から38に増やした。
(ヘ)第二の液温を63℃に設定し、第二の反応工程におけるQ2を、348から381に増やした。
尚、微粒子疎水化工程における反応容器内圧力は850mmHgより低い760mmHgであった。
この比較外添剤1の上述した原材料の種類および量、製造条件の一覧を以下の表3に示す。
<比較外添剤1の物性の確認>
得られた比較外添剤1の物性を以下の表4に示す。
表4に示すように、比較外添剤1は、平均粒径40nm、実測BET値(α)78m/g、真密度1.98g/cm、比表面積の比(α/β)1.03、加熱減量8.2%の物性をもち、上述の物性(1)、(4)を満たさないことを確認した。また、BET測定時の窒素ガスのガス脱離時間は10.2分であり、上述の物性(6)を満たさないことを確認した。
比較外添剤1が上述の物性(1)、(4)、(6)を満たさない理由としては、比較外添剤1では、本発明に係るトナー用外添剤の製造条件と異なり、温度TAを20℃とし、且つ、温度TBを65℃としたため、温度TAと温度TBが上述した関係式(c)、すなわち、TB−40℃<TA<TB−3℃の左式を満たさないことに起因していると考えられる。
<比較外添剤2の製造>
以下の点を変更した以外は、外添剤1と同様にして比較外添剤1を得た。
(イ)触媒含有成分中の10重量%アンモニア水の含有量を5部から20部に増やした。
(ロ)ケイ素含有成分の混合時の温度TAを20℃から47℃に上げた。
(ハ)第一の反応時間t1を1.5時間から3時間へと長くした。
(ニ)第二の反応時間t2を6.5時間から5時間へと短くした。
(ホ)第一の液温を温度TAと同一の温度に設定し、第一の反応工程におけるQ1を、29から137に増やした。
(ヘ)第二の液温を温度TBと同一の温度に設定し、第二の反応工程におけるQ2を、348から266に減らした。
尚、微粒子疎水化工程における反応容器内圧力は850mmHgより低い760mmHgであった。
この比較外添剤2の上述した原材料の種類および量、製造条件の一覧を以下の表3に示す。
<比較外添剤2の物性の確認>
得られた比較外添剤2の物性を以下の表4に示す。
表4に示すように、比較外添剤2は、平均粒径200nm、実測BET値(α)12m/g、真密度1.98g/cm、比表面積の比(α/β)0.79、加熱減量10.2%の物性をもち、上述の物性(2)、(4)を満たさないことを確認した。また、BET測定時の窒素ガスのガス脱離時間は6.7分であった。
比較外添剤2が上述の物性(2)、(4)を満たさない理由としては、比較外添剤2では、本発明に係るトナー用外添剤の製造条件と異なり、Q1を143とし、Q1の上限値(90)より高くしたことに起因していると考えられる。
Figure 0006727759
<比較外添剤3の製造>
撹拌機、滴下ロート、温度計を備えた3リットルのガラス製反応器に、メタノール693.9gと水46.0gと28重量%アンモニア水55.3gを添加し混合して混合液を得た。この混合液を35℃に調整し撹拌しながら、テトラメトキシシラン1293.0gおよび5.4重量%アンモニア水464.5gの同時添加を開始し、テトラメトキシシランは6時間、そしてアンモニア水は4時間かけて滴下した。テトラメトキシシランの滴下後も0.5時間撹拌を続けて加水分解を行い、シリカ微粒子の懸濁液を得た。得られた懸濁液に室温でヘキサメチルジシラザン(HMDS)547.4gを添加し、120℃に加熱して3時間反応させることにより、シリカ微粒子をトリメチルシリル化した。その後、溶媒を減圧下で留去することで、球状疎水性シリカ微粒子(比較外添剤3)553.0gを得た。
<比較外添剤3の物性の確認>
得られた比較外添剤3の物性を以下の表4に示す。
表4に示すように、比較外添剤3は、平均粒径85nm、実測BET値(α)26.1m/g、真密度2.03g/cm、比表面積の比(α/β)0.75、加熱減量6.1%の物性をもち、上述の物性(3)、(4)を満たさないことを確認した。また、BET測定時の窒素ガスのガス脱離時間は5.8分であった。
比較外添剤3が上述の物性(3)、(4)を満たさない理由としては、比較外添剤3では、本発明に係るトナー用外添剤の製造条件と異なり、テトラエトキシシランとアンモニア水の混合時の各温度を同一の温度に設定したこと、及び、そのシラン化合物の縮重合反応における液温を一定の35℃に設定したことに起因していると考えられる。
尚、この比較外添剤3は、特許文献5の段落0092に記載の「大径シリカ微粒子の製造例1」をベースとしたものである。
<比較外添剤4の製造>
反応温度を35℃から45℃へと上げた以外は、比較外添剤3と同様にして球状疎水性シリカ微粒子(比較外添剤4)を得た。
<比較外添剤4の物性の確認>
得られた比較外添剤4の物性を以下の表4に示す。
表4に示すように、比較外添剤4は、平均粒径60nm、実測BET値(α)39.2m/g、真密度1.94g/cm、比表面積の比(α/β)0.76、加熱減量4.9%の物性をもち、上述の物性(4)、(5)を満たさないことを確認した。また、BET測定時の窒素ガスのガス脱離時間は5.5分であった。
比較外添剤4が上述の物性(4)、(5)を満たさない理由としては、比較外添剤4では、本発明に係るトナー用外添剤の製造条件と異なり、テトラエトキシシランとアンモニア水の混合時の各温度を同一の温度に設定したこと、及び、そのシラン化合物の縮重合反応における液温を一定の45℃に設定したことに起因していると考えられる。
尚、この比較外添剤4は、特許文献5の段落0092に記載の「大径シリカ微粒子の製造例1」をベースとしたものである。
<比較外添剤5の製造>
窒素雰囲気下、反応容器に、エタノール80部と2−プロパノール80部とテトラエトキシシラン9部とジフェニルジエトキシシラン3部を投入し、蒸留水6部を入れ、60rpmで撹拌しているところに、20重量%アンモニア水14部を40分間で滴下した。30℃で3.5時間撹拌した後、液量が半分になるまでエバポレーターを用いて濃縮した。その濃縮物にtert−ブチルアルコール10部と蒸留水300部を加え、遠心沈降機により生成物を沈殿させた。上澄み液をデカンテーションで除去した後、蒸留水300部を加え、上述と同様の遠心沈降機により固液分離を行った。この固液分離のステップを数度繰り返した後、沈殿物を凍結乾燥機で2日間凍結乾燥させることにより、白色粉末を得た。この白色粉末10部を、トルエン300部とイソブチルトリメトキシシラン1部の混合物に加え、超音波をかけ30分間室温で撹拌した後、濃縮乾固し120℃で1時間加熱乾燥を行った。その後更にヘキサメチルジシラザン(HMDS)100部を加え、超音波をかけ30分間室温で撹拌した後、濃縮乾固してから120℃で1時間加熱乾燥することにより、白色粉末(比較外添剤5)を得た。
<比較外添剤5の物性の確認>
得られた比較外添剤5の物性を以下の表4に示す。
表4に示すように、比較外添剤5は、平均粒径131nm、実測BET値(α)20.3m/g、真密度2.17g/cm、比表面積の比(α/β)0.96、加熱減量3.5%の物性をもち、上述の物性(3)、(5)を満たさないことを確認した。また、BET測定時の窒素ガスのガス脱離時間は6.1分であった。
比較外添剤5が上述の物性(3)、(5)を満たさない理由としては、比較外添剤5では、本発明に係るトナー用外添剤の製造条件と異なり、テトラエトキシシラン及びジフェニルジエトキシシランとアンモニア水の混合時の各温度を同一の温度に設定したこと、及び、これらシラン化合物の縮重合反応全体での液温を一定の30℃に設定したことに起因していると考えられる。
尚、この比較外添剤5は、特許文献3の段落0072に記載の「シリカ外添剤(2)の作製」をベースとしたものである。
<比較外添剤6の製造>
テトラエトキシシラン50部の代わりにテトラエトキシシラン9部とジフェニルジエトキシシラン3部を用い、10重量%アンモニア水5部の代わりに20重量%アンモニア水0.5部を用い、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)の代わりにイソブチルトリメトキシシランを用い、ケイ素含有成分を触媒含有成分中に添加する以外は、上述した外添剤1と同様にして白色粉末(比較外添剤6)を得た。
比較外添剤6の原材料の種類および量、製造条件を表3に示す。
<比較外添剤6の物性の確認>
得られた比較外添剤6の物性を以下の表4に示す。
表4に示すように、比較外添剤6は、平均粒径135nm、実測BET値(α)28.7m/g、真密度1.90g/cm、比表面積の比(α/β)1.23、加熱減量4.2%の物性をもち、上述の物性(5)を満たさないことを確認した。また、BET測定時の窒素ガスのガス脱離時間は4.8分であった。
比較外添剤6が上述の物性(5)を満たさない理由としては、比較外添剤6では、本発明に係るトナー用外添剤の製造条件と異なり、ケイ素化合物として、上述の式で示される四官能シラン化合物に含まれないシラン化合物(ジフェニルジエトキシシラン)を用いたことに起因していると考えられる。
<比較トナー1〜6の製造>
外添剤の種類を外添剤1から比較外添剤1〜6に代えた以外は、トナー1と同様にして比較トナー1〜6を得た。
Figure 0006727759
<比較トナー1〜6の評価>
比較トナー1〜6については、トナー1と同様にして評価した。判定結果の一覧を以下の表5に示す。表5に示すように、比較トナー1〜6についての評価は以下のようなものであった。
比較トナー1は、評価テストの全16項目のうち、7項目が「A」判定、4項目が「B」判定、5項目が「C」判定であった。この比較トナー1は、「C」判定が全体の31%以上を占める点から、使用不可のレベルである。
比較トナー2は、評価テストのうち、4項目が「D」判定であった。「D」判定の判断基準によれば、この比較トナー2は、使用不可のレベルである。
比較トナー3は、評価テストのうち、1項目が「D」判定であった。「D」判定の判断基準によれば、この比較トナー3は、使用不可のレベルである。
比較トナー4は、評価テストのうち、全16項目のうち、8項目が「A」判定、5項目が「B」判定、3項目が「C」判定であった。この比較トナー4は、「C」判定が全体の18%以上を占める点から、使用不可のレベルである。
比較トナー5は、評価テストのうち、3項目が「D」判定であった。「D」判定の判断基準によれば、この比較トナー5は、使用不可のレベルである。
比較トナー6は、評価テストのうち、1項目が「D」判定であった。「D」判定の判断基準によれば、この比較トナー6は、使用不可のレベルである。
以上の評価により、比較トナー1〜6は、いずれも使用不可のレベルであり、本発明のトナー1〜8よりも劣る特性をもつことを確認できた。この結果は、本発明のトナー1〜8に外添された外添剤1〜8がいずれも上述の物性(1)〜(5)を併せもつのに対し、比較トナー1〜6に外添された比較外添剤1〜6が上述の物性(1)〜(5)を併せもたないことに起因しているためであると考えられる。
Figure 0006727759
上述した実施例1〜8では、第一の反応工程の第一の液温をケイ素含有成分の混合時の温度TAと同一の温度に設定し、第二の反応工程の第二の液温を触媒含有成分の混合時の温度TB以下に設定した製造条件で、外添剤1〜8を製造したが、混合時のケイ素含有成分の温度TAと触媒含有成分の温度TBが上述の関係式(a)〜(c)を満たすのであれば、又は、上述の関係式(a)〜(c)を満たし、且つ、第一の反応工程を、第一の液温と第一の反応時間t1とのQ1を5以上90以下とする反応条件で行い、第二反応工程を、第二の液温と第二の反応時間t2とのQ2を210以上700以下とする反応条件で行うのであれば、第一の液温をケイ素含有成分の混合時の温度TAと異なる温度に設定してもよく、また、第二の液温を触媒含有成分の混合時の温度TBを超える温度に設定してもよい。
また、上述した実施例1〜8では、外添剤1〜8をトナー母粒子1に外添してトナー1〜8を製造したが、このトナー母粒子1に外添される外添剤として外添剤1〜8に加えて他の外添剤を外添してもよい。

Claims (7)

  1. 式:Si(OR(但し、各Rは炭素原子数1〜6の1価炭化水素基である)で示されるシラン化合物及びその加水分解縮合物からなる群から選択される1種のケイ素化合物から得られる微粒子を含むトナー用外添剤であって、
    前記微粒子は、
    (1)平均粒径が50nm以上250nm以下であり、
    (2)ガス吸着法により測定される比表面積(α)が13m/g以上80m/g以下であり、
    (3)真密度が1.85g/cm以上2.00g/cm以下であり、
    (4)平均粒径から算出される比表面積(β)に対する前記比表面積(α)の比(α/β)が0.85以上1.75以下であり、及び、
    (5)室温から500℃まで昇温したときの加熱減量が5%以上13%以下であるトナー用外添剤。
  2. 前記微粒子は、ガス吸着法による比表面積(α)の測定時におけるガス脱離時間が3分以上10分以下である請求項1に記載のトナー用外添剤。
  3. 前記微粒子は、表面に疎水基を有する請求項1又は2に記載のトナー用外添剤。
  4. 前記疎水基は、トリアルキルシリル基である請求項3に記載のトナー用外添剤。
  5. 式:Si(OR(但し、各Rは炭素原子数1〜6の1価炭化水素基である)で示されるシラン化合物及び前記シラン化合物の加水分解縮合物からなる群から選択される少なくとも1種のケイ素化合物から得られる微粒子を含むトナー用外添剤の製造方法であって、
    前記ケイ素化合物を含むケイ素含有成分と、塩基性化合物を含む触媒含有成分とを混合して混合溶液を製造する段階と、
    前記混合溶液を第一の液温(T1)で第一の時間(t1)保持した後、前記混合溶液を第二の液温(T2)で第二の時間(t2)保持することによって、前記ケイ素化合物を縮重合反応させて前記混合溶液中に分散した前記微粒子を形成する段階と、
    を含み、
    前記ケイ素含有成分と前記触媒含有成分とを混合するときの前記ケイ素含有成分の温度をTA(℃)、前記触媒含有成分の温度をTB(℃)とすると、
    2℃<TA<60℃であり、
    TA<TBであり、
    TB−40℃<TA<TB−3℃を満たすトナー用外添剤の製造方法。
  6. 式:R SiNHSiR (但し、各Rは炭素原子数1〜6の1価炭化水素基である)で示されるシラザン化合物、及び、式:R SiX(但し、各Rは炭素原子数1〜6の1価炭化水素基であり、Xはヒドロキシ基(−OH)又は加水分解性基である)で示されるシラン化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を前記微粒子の表面と接触させて前記微粒子の表面にトリアルキルシリル基を導入する疎水化段階をさらに含む請求項5に記載のトナー用外添剤の製造方法。
  7. 請求項1から4のいずれか1項に記載のトナー用外添剤を含むトナー。
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