JP6722475B2 - オーステナイト系ステンレス鋼焼鈍材およびその製造方法 - Google Patents

オーステナイト系ステンレス鋼焼鈍材およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、熱疲労特性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼焼鈍材およびその製造方法に関する。
従来、自動車の吸排気系部材等として用いられる耐熱鋼としては、成分組成を限定して鋳造性および被削性を向上させたオーステナイト系鋳物が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
また、成分組成を限定するとともに組織の状態を制限し、鋳造後の焼鈍の温度を規定することにより、安価に製造可能なフェライト系鋳物が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
さらに、成分組成を限定するとともに組織の状態を制限することにより、耐熱疲労性を向上させたフェライト系鋳物が知られている(例えば、特許文献3参照。)。
なお、軽量化および低熱容量化を図るため、板材である耐熱鋼板を利用したプレス化も検討されているが、設計自由や剛性設計の容易性等の観点から、鋳物が利用されることが多い。
特開平7−228948号公報 特開平10−60606号公報 特開2004−115840号公報
自動車の吸排気系部材等をプレス化するための耐熱鋼としては、熱膨張量および高温ヤング率を低下させることで非弾性ひずみ範囲を小さくすることが重要である。
また、室温強度、高温強度、および、加熱と冷却との繰り返しによる熱疲労特性が良好であることが重要である。
さらに、耐加速酸化性および耐スケール剥離性等の高温酸化特性が良好であることが重要である。
また、成形性が良好であることが重要である。
したがって、自動車の吸排気系部材のプレス化のためには、加工性を確保しつつ、高温の排ガス環境下における耐熱性が良好な熱疲労特性に優れたステンレス鋼が求められていた。
本発明はこのような点に鑑みなされたもので、熱疲労特性が良好なオーステナイト系ステンレス鋼焼鈍材およびその製造方法を提供することを目的とする。
請求項1に記載されたオーステナイト系ステンレス鋼焼鈍材は、Cr:16質量%以上25質量%以下、Ni:10質量%以上15質量%以下、Si:1.1質量%以上5.0質量%以下、C:0.08質量%以下、Mn:2.0質量%以下、P:0.04質量%以下、S:0.01質量%以下、Nb:0.05質量%以上0.3質量%以下およびN:0.02質量%以上0.25質量%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる化学成分で、室温から1000℃までの熱膨張係数が19.5×10−6/K以下で、500℃でのヤング率が155GPa以下で、g電解した際に抽出される析出物の総量が0.3質量%以下で、1050℃で5分間の加熱と室温で5分間の冷却とを2000サイクル繰り返す断続酸化試験後の板厚減肉率が20%以下で、23℃における0.2%耐力が330MPa以上で、1000℃における0.2%耐力が38MPa以上で、下限温度を200℃とし上限温度を950℃として拘束率30%での熱疲労寿命が500サイクル以上で、800℃での高温高サイクル疲労限が120MPa以上で、23℃での引張試験における全伸びが45%以上であるものである。
請求項2に記載されたオーステナイト系ステンレス鋼焼鈍材は、請求項1記載のオーステナイト系ステンレス鋼焼鈍材において、REMおよびCaの少なくとも1種を合計0.001質量%以上0.1質量%以下で含有する化学成分であるものである。
請求項3に記載されたオーステナイト系ステンレス鋼焼鈍材は、請求項1または2記載のオーステナイト系ステンレス鋼焼鈍材において、Ti:0.5質量%以下、Mo:4.0質量%以下、Cu:4.0質量%以下、W:4.0質量%以下、Co:4.0質量%以下およびB:0.01質量%以下のうちの少なくとも1種を含有する化学成分であるものである。
請求項4に記載されたオーステナイト系ステンレス鋼焼鈍材の製造方法は、請求項1ないし3いずれか一記載のオーステナイト系ステンレス鋼焼鈍材を製造するオーステナイト系ステンレス鋼焼鈍材の製造方法であって、請求項1ないし3いずれか一記載の化学成分である冷延板に1160℃以上の温度で焼鈍を行い、焼鈍後に冷却速度10℃/秒以上で900℃まで冷却するものである。
本発明によれば、化学成分を規制して、室温から1000℃までの熱膨張係数を19.5×10−6/K以下とし、500℃でのヤング率を155GPa以下とし、1g電解した際に抽出される析出物の総量を0.3質量%以下とし、1050℃で5分間の加熱と室温で5分間の冷却とを2000サイクル繰り返す断続酸化試験後の板厚減肉率を20%以下とし、23℃における0.2%耐力を330MPa以上とし、1000℃における0.2%耐力を38MPa以上とし、下限温度を200℃とし上限温度を950℃として拘束率30%での熱疲労寿命を500サイクル以上とし、800℃での高温高サイクル疲労限を120MPa以上とし、23℃での引張試験における全伸びを45%以上とするため、熱疲労特性を向上できる。
ステンレス鋼における低熱膨張化、低ヤング率化および低温強度上昇による非弾性ひずみの変化を示す模式図である。
以下、本発明の一実施の形態の構成について詳細に説明する。
例えば自動車の吸排気系部材等として用いられる本発明に係るオーステナイト系ステンレス鋼は、16質量%以上25質量%以下のCr(クロム)、10質量%以上15質量%以下のNi(ニッケル)、1.1質量%以上5.0質量%以下のSi(ケイ素)、0.08質量%以下のC(炭素)、2.0質量%以下のMn(マンガン)、0.04質量%以下のP(リン)、0.01質量%以下のS(硫黄)、0.05質量%以上0.3質量%以下のNb(ニオブ)および0.02質量%以上0.25質量%以下のN(窒素)を含有し、残部がFe(鉄)および不可避的不純物からなる化学成分にて構成される。
また、必要に応じて、REM(希土類金属)およびCa(カルシウム)の少なくとも1種を合計0.001質量%以上0.1質量%以下で含有する。
さらに、必要に応じて、0.5質量%以下のTi(チタン)、4.0質量%以下のMo(モリブデン)、4.0質量%以下のCu(銅)、4.0質量%以下のW(タングステン)、4.0質量%以下のCo(コバルト)および0.01質量%以下のB(ホウ素)のうちの少なくとも1種を含有する。
ここで、上記各元素について説明する。
Crは、保護性に優れたCr系酸化皮膜を形成するために必須の元素であり、Cr系の酸化皮膜を形成するには、16質量%以上含有させる必要がある。しかし、Crは25質量%を超えて過剰に含有させると、σ脆化を誘発してしまう可能性がある。そこで、Crの含有量は、16質量%以上25質量%以下とする。
Niは、オーステナイト安定化元素であり、相バランスの調整に有効である。また、ステンレス鋼を低膨張化するために重要な元素である。そして、これらの作用を奏するには、10質量%以上含有させる必要がある。しかし、Niは比較的高価であるため、過剰に含有させると原料コストが高騰してしまう。そこで、Niの含有量は、10質量%以上15質量%以下とする。
Siは、高温酸化特性の改善や高温ヤング率の抑制に非常に有効である。そして、1.1質量%以上含有させることによって、850〜1050℃の温度域でSi濃化皮膜がCr酸化物の内層に形成され、耐スケール剥離性を向上できるとともに、高温ヤング率を抑制できる。しかし、Siは、5.0質量%を超えて過剰に含有させると、σ脆化感受性を高め、使用中にσ脆化を誘発してしまう。そこで、Siの含有量は、1.1質量%以上5.0質量%以下とする。
Cは、オーステナイト系ステンレス鋼の高温強度の向上に有効である。しかし、Cは、0.08質量%を超えて過剰に含有させると、使用中に粒界にてCr炭化物が形成されて、靭性および時効後の高温強度が低下するとともに、耐高温酸化性の向上に有効な固溶Cr量が減少してしまう。そこで、Cを含有させる場合の含有量は、0.08質量%以下とする。
Mnは、オーステナイト安定化元素であり、主として相バランス調整のために含有させる。また、Mnの含有量を多くすることでオーステナイト系ステンレス鋼中のNの固溶限が増大し、Nによる高強度化が促進される。しかし、Mnは、2.0質量%を超えて過剰に含有させると、耐高温酸化性の低下を招いてしまう。そこで、Mnを含有させる場合の含有量は、2.0質量%以下とする。
Pは、オーステナイト系ステンレス鋼の熱間加工性を損なう元素であるため、可能な限り含有量を低減することが好ましい。そこで、Pの含有量は、0.04質量%以下とする。
Sは、Pと同様にオーステナイト系ステンレス鋼の熱間加工性を損なう元素であるため、可能な限り含有量を低減することが好ましい。そこで、Sの含有量は0.01質量%以下とする。
Nbは、固溶強化により低温側および高温側の高温強度を大きくし、高温での塑性変形を抑制することにより熱疲労特性を確保する。このような作用を奏するには、Nbを0.05質量%以上含有させる必要がある。しかし、Nbは、0.3質量%を超えて過剰に含有させると、製造中のいずれかの工程または材料昇温時にNb炭窒化物を生成してしまって、高温強度向上作用の希釈化や靭性の低下を招いてしまう。そこで、Nbを含有させる場合の含有量は、0.05質量%以上0.3質量%以下とする。
Nは、固溶強化により低温側および高温側の高温強度を大きくし、高温での塑性変形を抑制することにより熱疲労特性を確保する。このような作用を奏するには、Nを0.02質量%以上含有させる必要がある。しかし、Nは、0.25質量%を超えて過剰に含有させると、Cr窒化物の形成によりオーステナイト系ステンレス鋼の靭性を低下させてしまう。そこで、Nを含有させる場合の含有量は、0.02質量%以上0.25質量%以下とする。
REMおよびCaは、耐高温酸化性の向上に有効であり、特にREMは、繰り返し酸化による酸化スケールの剥離性が向上し、酸化速度を低下させる。このような作用を奏するには、REMおよびCaの少なくとも1種を合計で0.001質量%以上含有させる必要がある。しかし、REMおよびCaの少なくとも1種を合計で0.1質量%を超えて過剰に含有させると、オーステナイト系ステンレス鋼が硬質化する可能性があり、また、原料コストが上昇してしまう。そこで、REMおよびCaを含有させる場合には、REMおよびCaの少なくとも1種の含有量の合計が0.001質量%以上0.1質量%以下となるようにする。
Tiは、高温強度の向上に有効であるが、0.5質量%を超えて過剰に含有させるとオーステナイト系ステンレス鋼が硬質化する可能性があり、また、原料コストも上昇してしまう。そこで、Tiは選択的に含有させることができ、含有させる場合の含有量は、0.5質量%以下とする。
Moは、高温強度や耐食性の向上に有効であるが、4.0質量%を超えて過剰に含有させると、σ脆化を招き、オーステナイト系ステンレス鋼の靭性が低下する可能性がある。そこで、Moは選択的に含有させることができ、含有させる場合の含有量は、4.0質量%以下とする。
Cuは、オーステナイト生成元素であり、高温強度の向上に有効である。また、オーステナイト相のバランスの調整にも有効に作用する。しかし、Cuは、4.0質量%を超えて過剰に含有させると、耐高温酸化性を低下させる可能性がある。そこで、Cuは選択的に含有させることができ、含有させる場合の含有量は4.0質量%以下とする。
Wは、高温強度の向上に有効であるが、4.0質量%を超えて過剰に含有させるとオーステナイト系ステンレス鋼が硬質化する可能性があり、また、原料コストも上昇してしまう。そこで、Wは選択的に含有させることができ、含有させる場合の含有量は、4.0質量%以下とする。
Coは、高温強度の向上に有効であるが、4.0質量%を超えて過剰に含有させると加工性が低下する可能性があるとともに、原料コストが上昇する。そのため、Coは選択的に含有させることができ、含有させる場合の含有量は、4.0質量%以下とする。
Bは、高温強度の向上に有効な炭窒化物の微細析出の促進に有効であるが、0.01質量%を超えて過剰に含有させると、低融点ホウ化物が生成しやすく熱間加工性が低下する可能性がある。そこで、Bは選択的に含有させることができ、含有させる場合の含有量は0.01質量%以下とする。
なお、Ti、Mo、Cu、W、CoおよびBを含有させる場合には、これら元素のうちの少なくとも1種を所定の範囲内で含有させることができる。
次に、上記化学組成で構成されたオーステナイト系ステンレス鋼における熱疲労特性について説明する。
上記化学組成のオーステナイト系ステンレス鋼は、熱疲労特性の改善に有効な非弾性ひずみの範囲を小さくするため、排気ガスの温度等を考慮し、室温(例えば23℃)から1000℃までの熱膨張係数が19.5×10−6/K以下に調整されるとともに、熱疲労特性を改善させるために500℃でのヤング率が155GPa以下に調整されている。
図1には、上記低熱膨張化、低ヤング率化および低温強度上昇による非弾性ひずみの変化を模式的に示す。なお、比較対象としてSUS304およびSUS316の非弾性ひずみの変化を一点鎖線で示す。
非弾性ひずみの範囲を小さくするには、熱膨張しにくいようにオーステナイト系ステンレス鋼を低熱膨張化させて、熱サイクル中に発生するひずみを減少させることが有効であるとともに、加熱と冷却とが繰り返される全温度域での高温ヤング率を低下させることが重要である。
そこで、オーステナイト系ステンレス鋼では、Niを10質量%以上含有させることによって、室温から1000℃までの熱膨張係数を19.5×10−6/K以下に調整して、低熱膨張化させる。
また、オーステナイト系ステンレス鋼においてSiを1.1質量%以上含有させることによって、高温ヤング率を155GPa以下に調整する。
さらに、NおよびNbを上記範囲で含有させることにより、低温側の強度を向上させて熱疲労特性を向上させる。
また、NおよびNbの固溶強化により低温側から高温側の全温度域の強度を向上させて、高温での塑性変形を抑制することにより熱疲労特性を向上させることが好ましい。
このようにNおよびNbの固溶強化作用を確保するには、仕上焼鈍温度を最適化することが重要である。すなわち、冷延焼鈍板および丸棒焼鈍材等の焼鈍材を1g電解した際に抽出されるNおよびNbを含む析出物の総量が0.3質量%以下となるように、仕上焼鈍温度を調整することが好ましい。より具体的には、仕上焼鈍温度を1160℃以上にすることが好ましい。
また、仕上焼鈍温度を可能な限り高温化して、再結晶粒径を最適化するとともに析出物を固溶させることで加工性を向上できる。
そして、NおよびNbによる固溶強化作用の確保や加工性の向上を考慮すると、仕上焼鈍温度を1160℃以上の温度で焼鈍するとともに、焼鈍後の冷却では冷却速度10℃/秒以上で900℃まで冷却することが好ましい。
さらに、Si、CrおよびREMの添加により、耐高温酸化性(耐スケール剥離性)を向上させることが好ましい。具体的には、上述のように所定量のSiを含有させることで耐スケール剥離性を向上でき、所定量のCrを含有させることによりCr系酸化皮膜を形成して耐高温酸化性を向上でき、所定量のREMを含有させることにより、繰り返し酸化による酸化スケールの剥離性を向上できる。その結果、酸化速度を減少できる。
そして、このように耐高温酸化性や耐スケール剥離性を向上させることにより、1050℃で5分間の加熱と室温で5分間の冷却とを2000サイクル繰り返す断続酸化試験後の板厚減肉率を20%以下に抑えることが好ましい。
また、上記化学成分の範囲内で合金成分を調整することにより、室温強度を示す23℃における0.2%耐力が330MPa以上とすることが好ましく、また、高温強度を示す1000℃における0.2%耐力が38MPa以上とすることが好ましい。
さらに、上記化学成分の範囲内で合金成分を調整することにより、下限温度を200℃とし上限温度を950℃として拘束率30%での熱疲労寿命を500サイクル以上とすることが好ましい。
また、上記化学成分の範囲内で合金成分を調整することにより、800℃での高温高サイクル疲労限を120MPa以上にすることが好ましい。
さらに、上記化学成分の範囲内で合金成分を調整することにより、加工性を示す23℃での引張試験における全伸びを45%以上にすることが好ましい。
次に、上記一実施の形態の作用および効果を説明する。
上記オーステナイト系ステンレス鋼によれば、上述のように化学成分を規制し、特に、CrおよびSiの含有量を調整することにより、耐高温酸化性を向上でき、Niの含有量を調整することにより、室温から1000℃までの熱膨張係数を19.5×10−6/K以下にでき低熱膨張化させて熱サイクル中で発生するひずみを減少でき、Siの含有量を調整することにより、500℃でのヤング率を155GPa以下にできるため、熱疲労特性を向上できる。
冷延焼鈍板および丸棒焼鈍材等の焼鈍材を1g電解した際に抽出されるNおよびNbを含む析出物の総量が0.3質量%以下にすることで、NおよびNbの固溶強化を確保して、NおよびNbの固溶強化により低温側および高温側の高温強度を向上できるため、高温での塑性変形を抑制でき、熱疲労特性を向上できる。
Siの含有量を規制することで耐スケール剥離性を向上でき、Crの含有量を規制することでCr系酸化皮膜を形成し耐高温酸化性を向上でき、REMの含有量を規制することで繰り返し酸化による酸化スケールの剥離性を向上できるため、酸化速度を減少できる。
また、このように耐高温酸化性や耐スケール剥離性を向上させることにより、1050℃で5分間の加熱と室温で5分間の冷却とを2000サイクル繰り返す断続酸化試験後の板厚減肉率を20%以下に抑えることができる。
23℃における0.2%耐力が330MPa以上となるように上記化学成分の範囲内で合金成分を調整することにより、室温強度を向上できる。
また、1000℃における0.2%耐力が38MPa以上となるように上記化学成分の範囲内で合金成分を調整することにより、高温強度を向上できる。
さらに、下限温度を200℃とし上限温度を950℃として拘束率30%での熱疲労寿命が500サイクル以上となるように、上記化学成分の範囲内で合金成分を調整することにより、熱疲労特性を向上できる。
800℃での高温高サイクル疲労限が120MPa以上となるように上記化学成分の範囲内で合金成分を調整することにより、熱疲労特性を向上できる。
23℃での引張試験における全伸びが45%以上となるように上記化学成分の範囲内で合金成分を調整することにより、加工性を向上できる。
以下、本実施例および比較例について説明する。
まず、表1に示すオーステナイト系ステンレス鋼を溶製した。
Figure 0006722475
溶製した各オーステナイト系ステンレス鋼に熱間圧延、冷間圧延および焼鈍を行った板厚2.0mmの供試材を用いて、高温酸化試験、引張試験、高温高サイクル疲労試験、熱膨張試験および高温ヤング率試験に供した。
また、熱疲労試験では、溶製後に鋳造加工および熱処理を施した後、評点間の直径が10mmの丸棒に加工し、熱処理を施したものを試験に供した。
表2には、仕上焼鈍温度、および、焼鈍材を1g電解した際に抽出される析出物量を示す。なお、熱疲労試験用の丸棒サンプルも表2に示す冷延板サンプルと同じ条件で焼鈍を行った。
Figure 0006722475
ここで、高温強度および熱疲労特性を向上させるには、NおよびNbの固溶強化が重要であり、析出物量を調整する必要がある。また、種々検討した結果、焼鈍材を1g電解した際に抽出される析出物量を0.3質量%以下にすることで高温強度および熱疲労特性に対して有効であることを見出した。そして、表2に示すように、仕上焼鈍温度が1160℃より低いと、析出物が生じやすく、析出物量が0.3質量%を超えやすい傾向がある。
なお、上記各試験は以下のように行った。
耐高温酸化性は、大気にて加熱5分、冷却5分を1サイクルとして1050℃、2000サイクルでの板厚減肉率を評価し、板厚減肉率が20%以下の場合を良好と判断した。
高温強度は、板厚2.0mmの各オーステナイト系ステンレス鋼板から圧延方向に平行方向の高温引張試験片を切り出し、JIS G 0567に準拠して1000℃の温度環境下で引張試験を行った。引張速度は評点間50mmに対し0.3%/分とした。そして、0.2%耐力を求めて評価し、0.2%耐力値が38MPa以上の場合に良好と判断した。
室温強度は、高温引張試験と同様の試験片を用い、23℃の温度環境下で高温引張試験と同じ引張速度で引張試験を行い0.2%耐力を求めて評価し、0.2%耐力値が330MPa以上の場合に良好と判断した。
熱疲労は、下限温度を200℃とし、上限温度を950℃とし、拘束率を30%とし、昇熱速度および降熱速度のいずれも3℃/秒として、熱疲労寿命を示す10サイクル目の応力が75%以下となるサイクル数で評価し、500サイクル以上の場合を良好と判断した。
高温高サイクル疲労は、800℃での疲労限、すなわち800℃にて10サイクル繰返し応力を加えても破断しない最大の応力で評価し、疲労限が120MPa以上の場合に良好と判断した。
加工性は、引張試験での全伸びで評価し、全伸びが45%以上の場合に良好と判断した。
熱膨張係数は、25℃を起点として1000℃まで加熱した場合の膨張量を測定して、25℃から1000℃での熱膨張係数を算出し、熱膨張係数の値が19.5×10−6/K以下の場合を良好と判断した。
高温ヤング率は、横振動共振法にて500℃にて測定を行い、算出したヤング率が155GPa以下の場合を良好と判断した。
これら各試験の結果を表3に示す。
Figure 0006722475
表3に示すように、所定の化学成分の範囲で合金成分を調整し、仕上焼鈍温度を1160℃以上とした本実施例である鋼種No.1〜11のいずれも、上記各試験で示す特性の目標値を満足している。
これに対して、所定の化学成分の範囲で合金成分を調整しなかった比較例である鋼種No.12〜21はいずれも、各試験で示す特性全ての目標値を満足できなかった。
具体的には、鋼種No.12は、Crの含有量が16質量%未満で、また、Nの含有量が0.02質量%未満であるため、耐高温酸化性、高温強度および熱疲労の目標値を満たさなかった。
鋼種No.13およびNo.14は、高温強度および室温強度が高く熱疲労の目標値を満たしているが、Siの含有量が1.1質量%未満であるため、高温ヤング率および耐高温酸化性が目標値を満たさなかった。
鋼種No.15および鋼種No.16は、Siの含有量が1.1質量%未満であるため、高温ヤング率および耐高温酸化性の目標値を満たさず、Niの含有量が10質量%未満であるため、熱膨張係数が目標値を超えてしまって熱疲労の目標値を満たさなかった。
鋼種No.17は、Crの含量が16質量%未満であるため、耐高温酸化性の目標値を満たさず、Niの含有量が10質量%未満であるため、熱膨張係数の目標値を満たさなかった。
鋼種No.18は、Siの含有量が1.1質量%未満であるため、高温ヤング率および耐高温酸化性の目標値を満たさなかった。
鋼種No.19は、Niの含有量が10質量%以上であり熱膨張係数の目標値を満たすため、熱疲労の目標値を満たすが、Siの含有量が1.1質量%未満であり、また、REMが無添加であるため、高温ヤング率および耐高温酸化性の目標値を満たさなかった。
鋼種No.20は、Siの含有量が1.1質量%未満であり、高温ヤング率の目標値を満たさず、また、REMが無添加であるため、耐高温酸化性の目標値を満たさなかった。
鋼種No.21は、Niの含有量が10質量%以上であるため、熱膨張係数の目標値を満たすが、Siの含有量が1.1質量%未満であるため、高温ヤング率および熱疲労の目標値を満たさなかった。

Claims (4)

  1. Cr:16質量%以上25質量%以下、Ni:10質量%以上15質量%以下、Si:1.1質量%以上5.0質量%以下、C:0.08質量%以下、Mn:2.0質量%以下、P:0.04質量%以下、S:0.01質量%以下、Nb:0.05質量%以上0.3質量%以下およびN:0.02質量%以上0.25質量%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる化学成分で、
    室温から1000℃までの熱膨張係数が19.5×10−6/K以下で、
    500℃でのヤング率が155GPa以下で、
    g電解した際に抽出される析出物の総量が0.3質量%以下で、
    1050℃で5分間の加熱と室温で5分間の冷却とを2000サイクル繰り返す断続酸化試験後の板厚減肉率が20%以下で、
    23℃における0.2%耐力が330MPa以上で、1000℃における0.2%耐力が38MPa以上で、
    下限温度を200℃とし上限温度を950℃として拘束率30%での熱疲労寿命が500サイクル以上で、
    800℃での高温高サイクル疲労限が120MPa以上で、
    23℃での引張試験における全伸びが45%以上である
    ことを特徴とするオーステナイト系ステンレス鋼焼鈍材
  2. REMおよびCaの少なくとも1種を合計0.001質量%以上0.1質量%以下で含有する化学成分である
    ことを特徴とする請求項1記載のオーステナイト系ステンレス鋼焼鈍材
  3. Ti:0.5質量%以下、Mo:4.0質量%以下、Cu:4.0質量%以下、W:4.0質量%以下、Co:4.0質量%以下およびB:0.01質量%以下のうちの少なくとも1種を含有する化学成分である
    ことを特徴とする請求項1または2記載のオーステナイト系ステンレス鋼焼鈍材
  4. 請求項1ないし3いずれか一記載のオーステナイト系ステンレス鋼焼鈍材を製造するオーステナイト系ステンレス鋼焼鈍材の製造方法であって、
    請求項1ないし3いずれか一記載の化学成分である冷延板に1160℃以上の温度で焼鈍を行い、
    焼鈍後に冷却速度10℃/秒以上で900℃まで冷却する
    ことを特徴とするオーステナイト系ステンレス鋼焼鈍材の製造方法。
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