本発明の電極触媒の製造方法は、下記工程:
(a)白金原子と非白金金属原子からなる合金粒子を導電性担体に担持して、触媒前駆粒子を製造し(工程(a));および
(b)上記工程(a)で得られた触媒前駆粒子を、初期設定温度にまで加熱した後、前記初期設定温度で10分未満の間維持した後、5℃/分未満の速度で降温する(工程(b))、
ことを有する。当該構成により、電極触媒の比表面積(白金1g当たりの比表面積)の低下を抑制できる。このため、本発明の方法によって製造される電極触媒は、活性(特に質量比活性)を向上できる。本明細書では、「白金1g当たりの比表面積」を単に「比表面積」とも称する。
本発明者らは、上記特許文献1にて、特定の高活性な結晶面が露出しており、かつ、特定の面積平均粒子径と個数平均粒子径との関係を有する触媒粒子が高活性を発揮できることを見出した。本発明者らは、当該触媒粒子の活性をより向上することを目的としてさらに鋭意検討を行った。その結果、上記工程(b)に規定されるように、触媒粒子を製造する際に行う熱処理時間を短縮し、その後の降温条件を適切に制御することによって、電極触媒(触媒粒子)の活性をさらに向上できることを見出した。上記効果を奏する詳細なメカニズムは、以下のように考えられる。なお、以下のメカニズムは推測であり、本発明の技術的範囲を制限するものではない。すなわち、上記特許文献1では、規則度の調整には熱処理の温度および時間の制御が重要であると記載している。確かに特許文献1の時点では、熱処理をある程度長時間行うことによって、規則度を上げることができると推測していた。しかし、今回、上記課題を解決する手段を模索する中、熱処理を比較的高温でかつ長時間行うと、面積比活性は向上できるものの、白金1g当たりの比表面積が減少し、その結果質量比活性の向上が限定されてしまうことが分かった。このため、規則度は確保したまま、比表面積を増大できる方法についてさらに鋭意検討を行った。その結果、上述したように、比表面積の減少の主要な要因の一つであると思われる熱処理時間を短縮し、その後の降温条件を適切に制御することが有効であると推測した。詳細には、高温に保持する時間を短縮することによって、触媒粒子のシンタリングや凝集による粒子径の成長(ゆえに比表面積の低下)を抑制できる。その一方で、高温での保持時間を短縮することによって、規則度を十分向上することが困難となる。このため、ゆっくり降温(冷却)することによって、白金原子および非白金金属原子を合金(触媒)粒子内で相互拡散させ、これにより触媒粒子のシンタリングや凝集は抑えつつ、規則化を進める(規則度を上げる)ことができると考えた。
したがって、本発明の方法によって製造される電極触媒は、比表面積を増大させ、ゆえに少ない白金含有量であっても質量比活性を向上できる。また、本発明の方法によって製造される触媒粒子は、耐久性にも優れる。加えて、本発明の方法によって製造される電極触媒では、合金粒子は所定の割合以上で凝集せずに担体上に単分散する。このため、本発明に係る電極触媒は、家庭用や移動体駆動用の電源などより高性能が求められる燃料電池用途により好適に適用できる。すなわち、本発明の方法によって製造される電極触媒を触媒層に有する膜電極接合体および燃料電池は、発電性能に優れる。
以下、本発明の電極触媒の製造方法の一実施形態を詳細に説明する。しかし、本発明は、以下の実施形態のみには制限されない。また、本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は、XおよびYを含み、「X以上Y以下」を意味する。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20〜25℃)/相対湿度40〜50%の条件で行う。
[電極触媒の製造方法]
本発明の電極触媒の製造方法は、下記工程:
(a)白金原子と非白金金属原子からなる合金粒子を導電性担体に担持して、触媒前駆粒子を製造し(工程(a));および
(b)上記工程(a)で得られた触媒前駆粒子を、初期設定温度にまで加熱した後、前記初期設定温度で10分未満の間維持した後、5℃/分未満の速度で降温する(工程(b))、
ことを有する。
(工程(a))
本工程では、白金原子と非白金金属原子からなる合金粒子を導電性担体に担持して、触媒前駆粒子を製造する。
ここで、白金原子と非白金金属原子からなる合金粒子を導電性担体に担持する方法は、特に制限されない。例えば、白金前駆体由来の白金イオン及び非白金金属前駆体由来の非白金金属イオンを順次導電性担体上に担持してもよい(工程(a−1))。または、白金前駆体および非白金金属前駆体を含む混合液を調製し、この混合液に還元剤を添加し、白金前駆体由来の白金イオン及び非白金金属前駆体由来の非白金金属イオンを同時に導電性担体上で還元、担持してもよい(工程(a−2))。このうち、上記工程(a−2)は、国際公開第2015/020079号の[触媒粒子/触媒(電極触媒)の製造方法]の(工程(1))および(工程(2))ならびに必要であれば(工程(3))に記載されるのと同様の方法が採用できる。
以下、上記工程(a−1)について説明する。
ここで、白金前駆体由来の白金イオン及び非白金金属前駆体由来の非白金金属イオンを順次導電性担体上に担持させる方法は特に制限されない。例えば、下記の方法がある:
白金前駆体を溶媒に添加して、白金前駆体含有液を調製する。この白金前駆体含有液に導電性担体および還元剤を添加し、白金前駆体由来の白金イオンを導電性担体上で還元、担持して、白金担持前駆粒子を含む液を得る。この白金担持前駆粒子を含む液に、非白金金属前駆体および還元剤を添加して、非白金金属前駆体由来の非白金金属イオンを導電性担体上で還元、担持して、白金/非白金金属担持前駆粒子を含む液を得る。この白金/非白金金属担持前駆粒子を加熱して合金化処理して、触媒前駆粒子を製造する。
以下、上記方法について説明する。
まず、白金前駆体を溶媒に添加して、白金前駆体含有液を調製する。ここで、白金前駆体としては、特に制限されないが、白金塩および白金錯体が使用できる。より具体的には、塩化白金酸(典型的にはその六水和物;H2[PtCl6]・6H2O)、ジニトロジアンミン白金等の硝酸塩、硫酸塩、アンモニウム塩、アミン、テトラアンミン白金およびヘキサアンミン白金等のアンミン塩、炭酸塩、重炭酸塩、塩化白金等のハロゲン化物、亜硝酸塩、シュウ酸などの無機塩類、ギ酸塩などのカルボン酸塩ならびに水酸化物、アルコキサイドなどを使用することができる。なお、上記白金前駆体は、1種を単独で使用してもあるいは2種以上の混合物として使用されてもよい。
上記白金前駆体含有液の調製に使用される溶媒は、特に制限されず、使用される白金前駆体の種類によって適宜選択される。なお、上記白金前駆体含有液の形態は特に制限されず、溶液、分散液および懸濁液を包含する。均一に混合できるという観点から、白金前駆体含有液は溶液の形態であることが好ましい。具体的には、水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等の有機溶媒、酸、アルカリなどが挙げられる。これらのうち、白金前駆体を十分に溶解する(白金を効率よくイオン化する)という観点から、水が好ましく、純水または超純水を用いることが特に好ましい。上記溶媒は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
白金前駆体含有液における白金前駆体の濃度は、特に制限されないが、金属換算で0.1〜50重量%であることが好ましく、より好ましくは0.5〜45重量%である。
次に、上記白金前駆体含有液に導電性担体および還元剤を添加し、白金前駆体由来の白金イオンを導電性担体上で還元、担持して、白金担持前駆粒子を製造する。ここで、導電性担体および還元剤の白金前駆体含有液への添加順序は特に制限されないが、白金粒子の導電性担体上への分散のしやすさなどを考慮すると、導電性担体をまず白金前駆体含有液に添加した後、還元剤を添加することが好ましい。
導電性担体は、合金粒子(触媒粒子)を担持するための担体、および触媒粒子と他の部材との間での電子の授受に関与する電子伝導パスとして機能する。導電性担体としては、触媒粒子を所望の分散状態で担持させるための比表面積を有し、集電体として十分な電子導電性を有しているものであればよく、主成分がカーボンであるのが好ましい。なお、「主成分がカーボンである」とは、主成分として炭素原子を含むことをいい、炭素原子のみからなる、実質的に炭素原子からなる、の双方を含む概念である。場合によっては、燃料電池の特性を向上させるために、炭素原子以外の元素が含まれていてもよい。なお、実質的に炭素原子からなるとは、2〜3重量%程度以下の不純物の混入が許容されることを意味する。
導電性担体としては、具体的には、アセチレンブラック、チャンネルブラック、オイルファーネスブラック、ガスファーネスブラック(例えば、バルカン)、ランプブラック、サーマルブラック、ケッチェンブラック(登録商標)などのカーボンブラック;ブラックパール;黒鉛化アセチレンブラック;黒鉛化チャンネルブラック;黒鉛化オイルファーネスブラック;黒鉛化ガスファーネスブラック;黒鉛化ランプブラック;黒鉛化サーマルブラック;黒鉛化ケッチェンブラック;黒鉛化ブラックパール;カーボンナノチューブ;カーボンナノファイバー;カーボンナノホーン;カーボンフィブリル;活性炭;コークス;天然黒鉛;人造黒鉛などを挙げることができる。また、導電性担体として、ナノサイズの帯状グラフェンが3次元状に規則的に連結した構造を有するゼオライト鋳型炭素(ZTC)も挙げることができる。
導電性担体のBET比表面積は、触媒粒子を高分散担持させるのに十分な比表面積であればよいが、好ましくは10〜5000m2/g担体、より好ましくは50〜2000m2/g担体とするのがよい。このようなBET比表面積であれば、導電性担体に十分な触媒粒子を担持(高分散)して、十分な発電性能を達成できる。なお、担体の「BET比表面積(m2/g担体)」は、窒素吸着法により測定される。
また、導電性担体の大きさは、特に限定されないが、担持の容易さ、触媒利用率、電極触媒層の厚みを適切な範囲で制御するなどの観点からは、平均粒子径が5〜200nm、好ましくは10〜100nm程度とするのがよい。なお、「担体の平均粒子径」は、X線回折(XRD)における担体粒子の回折ピークの半値幅より求められる結晶子径や、透過型電子顕微鏡(TEM)により調べられる担体の粒子径の平均値として測定されうる。本明細書では、「担体の平均粒子径」は、統計上有意な数(例えば、少なくとも200個、好ましくは少なくとも300個)のサンプルについて透過型電子顕微鏡像より調べられる担体粒子の粒子径の平均値である。ここで、「粒子径」とは、粒子の輪郭線上の任意の2点間の距離のうち、最大の距離を意味するものとする。
導電性担体の白金前駆体含有液への添加量は、特に制限されないが、担体の全量に対して、2〜70重量%となるような調節することが好ましい。担持濃度をこのような範囲にすることで、触媒粒子同士の凝集が抑制され、また、電極触媒層の厚さの増加を抑制できるため好ましい。より好ましくは5〜60重量%、さらにより好ましくは5重量%を超えて50重量%以下である。また、質量比活性のさらなる向上の観点から、合金粒子(触媒粒子)の担持濃度(担持量、金属換算)は、好ましくは10〜45重量%である。なお、上記合金粒子(触媒粒子)の担持濃度(担持量)は、白金原子及び非白金金属原子の導電性担体への合計担持濃度(合計担持量)(金属換算)である。合金粒子(触媒粒子)の担持量がかような範囲内の値であると、触媒担体上での触媒成分の分散度と触媒性能とのバランスが適切に制御されうる。なお、触媒成分の担持量は、誘導結合プラズマ発光分析(ICP atomic emission spectrometry)や誘導結合プラズマ質量分析(ICP mass spectrometry)、蛍光X線分析(XRF)等の、従来公知の方法によって調べることができる。
導電性担体を添加した後、撹拌してもよい。これにより、白金前駆体および導電性担体を均一に混合するため、白金粒子を導電性担体上に均一に分散可能である。ここで、撹拌条件は、特に均一に混合できる条件であれば特に制限されない。例えば、スターラーやホモジナイザなどの適当な攪拌機を用いる、あるいは、超音波分散装置など超音波を印加することによって、均一に分散混合できる。また、撹拌温度は、好ましくは0〜50℃、より好ましくは5〜40℃である。また、撹拌時間としては分散が十分に行われるように適宜設定すればよく、通常、1〜60分であり、好ましくは5〜40分である。
また、還元剤としては、特に制限されず、従来と同様の還元剤が使用できる。例えば、エタノール、メタノール、プロパノール、ギ酸、ギ酸ナトリウムやギ酸カリウムなどのギ酸塩、ホルムアルデヒド、チオ硫酸ナトリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム、クエン酸三ナトリウムなどのクエン酸塩、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)およびヒドラジン(N2H4)などが使用できる。なお、上記還元剤のうち、クエン酸三ナトリウム二水和物は凝集防止剤としても作用しうる。これらは水和物の形態になっていてもよい。また、2種類以上を混合して使用してもよい。
還元剤の添加形態は特に制限されず、そのまま白金前駆体含有液に添加されても、または予め溶媒に溶解した還元剤溶液の形態で、白金前駆体含有液に添加されてもよい。溶液の形態であると、容易に均一に混合できるため、好ましい。ここで、溶媒としては、還元剤を溶解できるものであれば特に制限されず、還元剤の種類によって適宜選択される。具体的には、上記白金前駆体含有液の調製に使用される溶媒と同様の溶媒が使用できる。ただし、還元剤溶液に使用される溶媒と、混合液の調製に使用される溶媒とは同じである必要はないが、均一な混合性など考慮すると、同じであることが好ましい。
還元剤の添加量としては、白金イオンを還元させるのに十分な量であれば特に制限されない。具体的には、還元剤の添加量は、白金イオン 1モル(金属換算)に対して、好ましくは5〜90モルである。このような量であれば、白金イオンを十分還元できる。なお、2種以上の還元剤を用いる場合には、これらの合計の添加量が上記範囲であることが好ましい。
還元剤を添加した後、撹拌してもよい。これにより、白金前駆体および還元剤を均一に混合するため、均一な還元反応が可能になる。ここで、撹拌条件は、特に均一に混合できる条件であれば特に制限されない。例えば、スターラーやホモジナイザなどの適当な攪拌機を用いる、あるいは、超音波分散装置など超音波を印加することによって、均一に分散混合できる。また、撹拌温度は、好ましくは0〜50℃、より好ましくは5〜40℃である。また、撹拌時間としては分散が十分に行われるように適宜設定すればよく、通常、1〜60分であり、好ましくは5〜40分である。
白金前駆体含有液に導電性担体および還元剤を添加した後、白金前駆体由来の白金イオンを導電性担体上で還元、担持して、白金担持前駆粒子を含む液を得る。
白金前駆体の還元反応条件は、白金前駆体由来の白金イオンを十分導電性担体上に還元、担持できる条件であれば特に制限されない。例えば、還元反応温度は、溶媒の沸点付近(溶媒沸点±10℃、より好ましくは溶媒沸点±5℃)であることが好ましい。または、還元反応温度は、好ましくは40〜150℃、より好ましくは60〜100℃である。また、還元反応時間は、白金前駆体および還元剤を均一に混合できる時間であれば特に制限されないが、好ましくは0.5〜24時間、より好ましくは1〜8時間である。このような条件であれば、白金を導電性担体により高分散・担持できる。なお、導電性担体は、導電性担体のみを添加してもよいし、懸濁液の形態で添加してもよい。
上記還元反応により、白金前駆体由来の白金イオンが導電性担体上に還元、担持され、白金担持前駆粒子を含む液(白金担持前駆粒子含有液)が得られる。ここで、必要であれば、白金担持前駆粒子を上記白金担持前駆粒子含有液から単離してもよい。ここで、単離方法は、特に制限されず、白金担持前駆粒子を濾過、乾燥すればよい。なお、必要であれば、白金担持前駆粒子を濾過した後に、洗浄(例えば、水洗)を行ってもよい。また、上記濾過ならびに必要であれば洗浄工程は、繰り返し行ってもよい。また、濾過または洗浄後、白金担持前駆粒子を乾燥してもよい。ここで、白金担持前駆粒子の乾燥は、空気中で行ってもよく、また減圧下で行ってもよい。また、乾燥温度は特に限定されないが、例えば、10〜100℃、好ましくは室温(25℃)〜80℃程度の範囲で行うことができる。また、乾燥時間もまた、特に限定されないが、例えば、1〜60時間、好ましくは5〜50時間程度の範囲で行うことができる。
次に、上記白金担持前駆粒子を含む液に、非白金金属前駆体および還元剤を添加して、非白金金属前駆体含有液を調製する。ここで、白金担持前駆粒子を含む液は、白金担持前駆粒子を含むものであればよく、上記還元反応後の液(白金担持前駆粒子含有液)であってもよい。または、上記したように、この白金担持前駆粒子含有液から白金担持前駆粒子を単離した後、白金担持前駆粒子を別途溶媒に分散することによって調製した白金担持前駆粒子を含む液を使用してもよい。後者の場合に使用できる溶媒は、特に制限されないが、使用される非白金金属前駆体が溶解できるものが好ましい。このため、好ましい溶媒は、使用される非白金金属前駆体の種類によって適宜選択されうる。具体的には、上記白金前駆体含有液で例示したのと同様の溶媒を使用できる。これらのうち、非白金金属前駆体を十分に溶解する(非白金金属を効率よくイオン化する)という観点から、水が好ましく、純水または超純水を用いることが特に好ましい。上記溶媒は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。なお、白金担持前駆粒子含有液及び白金前駆体含有液の調製に使用される溶媒は、それぞれ、同じであってもまたは異なってもよい。
また、非白金金属前駆体および還元剤の白金担持前駆粒子を含む液への添加順序は特に制限されないが、非白金金属粒子の導電性担体上への分散のしやすさおよび白金との合金化しやすさなどを考慮すると、非白金金属前駆体をまず白金担持前駆粒子含有液に添加した後、還元剤を添加することが好ましい。
非白金金属前駆体としては、特に制限されないが、非白金金属塩および非白金金属錯体が使用できる。より具体的には、非白金金属の、硝酸塩、硫酸塩、アンモニウム塩、アミン、炭酸塩、重炭酸塩、臭化物および塩化物などのハロゲン化物、亜硝酸塩、シュウ酸などの無機塩類、ギ酸塩などのカルボン酸塩ならびに水酸化物、アルコキサイド、酸化物などを用いることができる。つまり、非白金金属が、純水などの溶媒中で金属イオンになれる化合物が好ましく挙げられる。これらのうち、非白金金属の塩としては、ハロゲン化物(特に塩化物)、硫酸塩、硝酸塩がより好ましい。なお、上記非白金金属前駆体は、1種を単独で使用してもあるいは2種以上の混合物として使用されてもよい。また、非白金金属前駆体は、水和物の形態であってもよい。
ここで、非白金金属(非白金金属原子)は、特に制限されないが、触媒活性、規則化のしやすさ(L12構造の形成しやすさ)などの観点から、遷移金属原子であることが好ましい。ここで、遷移金属原子とは、第3族元素から第12族元素を指し、遷移金属原子の種類もまた、特に制限されない。触媒活性、規則化のしやすさ(L12構造の形成しやすさ)などの観点から、遷移金属原子は、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)およびジルコニウム(Zr)からなる群より選択されることが好ましい。中でも、コバルト(Co)であることが好ましい。このように、遷移金属の中でも白金(Pt)と金属間化合物を形成する金属原子を含有することで、活性が高くなる。上記遷移金属原子は、白金(Pt)と金属間化合物を形成しやすいため、白金の使用量を低減しつつも、質量比活性(単位質量当たりの活性)をより向上できる。また、上記遷移金属原子と白金との合金は、より高い面積比活性(単位面積当たりの活性)および耐久性(耐久試験後の活性)を達成できる。なお、上記遷移金属原子は、単独で白金と合金化されても、あるいは2種以上が白金と合金化されても、いずれでもよい。
非白金金属前駆体含有液における非白金金属前駆体の濃度は、特に制限されないが、金属換算で0.01〜10重量%であることが好ましく、より好ましくは0.01〜5重量%である。または、非白金金属前駆体の濃度は、白金前駆体と非白金金属前駆体との混合比(白金前駆体:非白金金属前駆体の混合比(モル比))は、下記に示される合金粒子の組成になるような濃度であることが好ましい。このような量であれば、触媒粒子の白金原子と非白金金属原子の割合を適切に制御し(あるいは非白金金属原子1モルに対して、白金原子を1.5〜15モルに制御し)、良好に規則化できる(L12構造を良好に形成できる)。なお、最終的に調製される担体上に担持される合金(触媒)粒子の担持濃度は、白金前駆体および非白金金属前駆体の量によって調整される。しかしながら、熱処理前まで同様に調製したとしても、熱処理条件が異なる場合には担持濃度が若干異なる場合がある。
また、還元剤としては、特に制限されず、上記白金前駆体の還元反応の際に例示したのと同様の還元剤を上記と同様の形態で使用できる。
還元剤の添加量としては、非白金金属イオンを還元させるのに十分な量であれば特に制限されない。具体的には、還元剤の添加量は、非白金金属イオン 1モル(金属換算)に対して、好ましくは10〜90モルである。このような量であれば、非白金金属イオンを十分還元できる。なお、2種以上の還元剤を用いる場合には、これらの合計の添加量が上記範囲であることが好ましい。
還元剤を添加した後、撹拌してもよい。これにより、非白金金属前駆体および還元剤を均一に混合するため、均一な還元反応が可能になる。ここで、撹拌条件は、特に均一に混合できる条件であれば特に制限されない。例えば、スターラーやホモジナイザなどの適当な攪拌機を用いる、あるいは、超音波分散装置など超音波を印加することによって、均一に分散混合できる。また、撹拌温度は、好ましくは0〜50℃、より好ましくは5〜40℃である。また、撹拌時間としては分散が十分に行われるように適宜設定すればよく、通常、1〜60分であり、好ましくは5〜40分である。
白金担持前駆粒子を含む液に非白金金属前駆体および還元剤を添加した後、非白金金属前駆体由来の非白金金属イオンを導電性担体上で還元、担持して、白金/非白金金属担持前駆粒子を含む液を得る。
非白金金属前駆体の還元反応条件は、非白金金属前駆体由来の非白金金属イオンを十分導電性担体上に還元、担持できる条件であれば特に制限されない。例えば、還元反応温度は、好ましくは10〜60℃、より好ましくは15〜40℃である。また、還元反応時間は、非白金金属前駆体および還元剤を均一に混合できる時間であれば特に制限されないが、好ましくは0.1〜12時間、より好ましくは0.5〜4時間である。このような条件であれば、非白金金属を導電性担体により高分散・担持できる。また、未還元の白金前駆体や非白金金属前駆体を還元剤でさらに還元できるため、白金及び非白金金属を導電性担体により効率的に高分散・担持できる。
上記還元反応により、非白金金属前駆体由来の非白金金属イオンを導電性担体上に還元、担持して、白金/非白金金属担持前駆粒子を含む液(白金/非白金金属担持前駆粒子含有液)が得られる。ここで、必要であれば、白金/非白金金属担持前駆粒子を上記白金/非白金金属担持前駆粒子含有液から単離してもよい。ここで、単離方法は、特に制限されず、白金/非白金金属担持前駆粒子を濾過、乾燥すればよい。なお、必要であれば、白金担持前駆粒子を濾過した後に、洗浄(例えば、水洗)を行ってもよい。また、上記濾過ならびに必要であれば洗浄工程は、繰り返し行ってもよい。また、濾過または洗浄後、白金担持前駆粒子を乾燥してもよい。ここで、白金担持前駆粒子の乾燥は、空気中で行ってもよく、また減圧下で行ってもよい。また、乾燥温度は特に限定されないが、例えば、10〜100℃、好ましくは室温(25℃)〜80℃程度の範囲で行うことができる。また、乾燥時間もまた、特に限定されないが、例えば、1〜60時間、好ましくは5〜50時間程度の範囲で行うことができる。
上記によって得られた白金/非白金金属担持前駆粒子を加熱して合金化処理する。これにより、触媒前駆粒子が得られる。
ここで、加熱(合金化)条件は、白金および非白金金属が十分合金化できる条件であれば特に制限されず、白金や非白金金属の担持量、非白金金属の種類などによって適宜選択すればよい。具体的には、加熱(合金化)温度は、好ましくは200〜1500℃、より好ましくは500〜1200℃である。また、加熱(合金化)時間は、好ましくは0.5〜10時間、より好ましくは1〜4時間である。
また、加熱(合金化)は、いずれの雰囲気中で行ってもよいが、白金や非白金金属への還元をより進行させるために、非酸化性雰囲気下で行うことが好ましい。非酸化性雰囲気下としては、不活性ガス雰囲気または還元性ガス雰囲気が挙げられる。ここで、不活性ガスは、特に制限されないが、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)、及び窒素(N2)などが使用できる。上記不活性ガスは、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合ガスの形態で使用されてもよい。また、還元性ガス雰囲気は、還元性ガスが含まれていれば特に制限されないが、還元性ガスと不活性ガスとの混合ガス雰囲気であることがより好ましい。ここで、還元性ガスは、特に制限されないが、水素(H2)ガス、一酸化炭素(CO)ガスが好ましい。また、不活性ガスに含有される還元性ガスの濃度も、特に制限されないが、不活性ガス中の還元性ガスの含有量が、好ましくは10〜100体積%、より好ましくは50〜100体積%である。このような濃度であれば、合金(白金及び非白金金属)の酸化を十分抑制・防止できる。上記のうち、熱処理は、還元性ガス雰囲気で行われることが好ましい。このような条件であれば、触媒前駆粒子は担体上で凝集することなく、質量比活性を向上できる。
また、上記では、液相還元担持により、触媒前駆粒子を導電性担体に担持したが、上記方法に限定されない。上記方法に加えて、例えば、含浸法、蒸発乾固法、コロイド吸着法、噴霧熱分解法、逆ミセル(マイクロエマルジョン法)などの公知の方法が使用できる。
このようにして触媒前駆粒子が得られる。ここで、触媒前駆粒子の組成もまた、特に制限されないが、触媒前駆粒子および次の工程(b)後に得られる合金粒子(触媒粒子)の組成は実質的に同様である。合金粒子(触媒粒子)の触媒活性(特に質量比活性)、規則度の高さ(L12構造の形成しやすさ)などの観点から、触媒前駆粒子の組成として、非白金金属原子1モルに対して、白金原子が、1.0〜15モルであることが好ましく、1.2〜10であることがより好ましく、1.5〜5モルであることが特に好ましい。このような組成であれば、次の工程(b)後に得られる合金粒子(触媒粒子)は、質量比活性及び規則度をより向上できる。なお、触媒前駆粒子および合金粒子(触媒粒子)の組成(触媒粒子中の各金属原子の含有量)は、誘導結合プラズマ発光分析(ICP atomic emission spectrometry)や誘導結合プラズマ質量分析(ICP mass spectrometry)、蛍光X線分析(XRF)等の、従来公知の方法によって決定できる。
また、触媒前駆粒子の大きさは、特に制限されない。例えば、触媒前駆粒子の平均粒子径は、好ましくは1〜15nm、より好ましくは2〜10nm以下である。なお、触媒前駆粒子および下記に記載の合金粒子(触媒粒子)の平均粒子径(nm)は、以下のようにして測定される値である。まず、n個の粒子を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察し、各粒子の投影面積よりその面積が真円であった場合の粒子径(等価円直径)を逆算して、各粒子の粒子径(d(nm))を測定する。このようにして得られた粒子の粒子径(d(nm))を用いて、下記式(A)よって、粒子の平均粒子径(nm)を算出する。なお、粒子の測定数(n)は、特に制限されないが、統計学的に有意差のない数であることが好ましく、少なくとも300個である。
(工程(b))
上記工程(a)で得られた触媒前駆粒子を、初期設定温度にまで加熱した後、前記初期設定温度で10分未満の間維持した後、5℃/分未満の速度で降温する。
本工程において、初期設定温度は、特に制限されないが、合金粒子(触媒前駆粒子)の規則度の温度依存性曲線から求められた、前記合金粒子(触媒前駆粒子)が規則化/不規則化する変態温度以上であることが好ましい。本明細書では、「合金粒子(触媒前駆粒子)の規則度の温度依存性曲線から求められた、合金粒子(触媒前駆粒子)が規則化/不規則化する変態温度」を単に「変態温度」とも称する。このように、初期設定温度を変態温度以上とすることによって、触媒前駆粒子(合金粒子)は固溶体(白金及び非白金金属がランダムに配列した構造体)となる。このため、触媒前駆粒子を初期設定温度で維持した後の降温時に規則化がより有効に進行して(L12構造をより容易に形成して)、得られる電極触媒の活性及び耐久性をより有効に向上できる。ここで、変態温度は、合金の組成や合金粒子の粒子径などに依存する。触媒金属前駆粒子と本発明の電極触媒において導電性担体上に担持される触媒粒子とは、組成及び粒子径が実質的に同じとみなせるため、触媒金属前駆粒子の変態温度は触媒粒子の変態温度と実質的に同じである。
本明細書において、「変態温度」は、合金粒子(触媒金属前駆粒子/触媒粒子)の規則度の温度依存性曲線において、合金粒子が規則化するのと不規則化するのとの境界の温度(すなわち、温度依存性曲線において、規則度が0であるときの温度)である。合金粒子の規則度の温度依存性曲線は、下記方法に従って作成される。
<合金粒子の規則度の温度依存性曲線の作成方法>
ある温度において熱力学的平衡に達した状態での規則度を計測する必要があるが、具体的には以下の方法によって行うことができる。まず、調製した合金粒子を加熱し、そのときの合金粒子の最大加熱温度を、バルク体の合金の熱平衡状態図において固溶体となる温度(℃)以上とする。
次に、上記にて求められた最大加熱温度および当該温度から50℃ずつ下げた温度にて、順次合金粒子の規則度を求め、温度を横軸におよび規則度を縦軸にしてプロットし、温度依存性曲線を作成する。ここで、「規則度(%)」または「L12構造の規則度(%)」は、J. Mater. Chem., 2004, 14, 1454−1460に記載される方法を基に求めることができ、本明細書においては、X線回折(X−ray diffraction)(XRD)パターンの最大強度のピーク面積(Ia)と、金属間化合物に特有のピーク面積(Ib)との比として定義される。具体的には、規則度の測定は、下記方法に従って、合金粒子(触媒粒子)を各温度にてX線回折(X−ray diffraction)(XRD)を行い、XRDパターンを得ることによって行う。
<L12構造の規則度の測定方法>
合金粒子(触媒粒子)を、上記各温度にて、それぞれ、下記条件によりX線回折(X−ray diffraction)(XRD)を行い、XRDパターンを得る。得られたXRDパターンにおいて、2θ値が39〜41°の範囲に観測されるピーク面積(Ia)および31〜34°の範囲に観測されるピーク面積(Ib)を測定する。ここで、2θ値が39〜41°の範囲に観測されるピークは、白金の格子面に固有のピークである。39〜41°の範囲に観測されるピークは、合金粒子構造全体を表すピークである。また、2θ値が31〜34°の範囲に観測されるピークは、合金粒子のL12構造に固有のピークである。
上記ピーク面積IaおよびIbを用いて、下記式(1)により、L12構造の規則度(%)を算出する。
上記式(1)において、Xは、合金粒子を構成する非白金金属原子に特有の値である。具体的には、Xは、下記表に示される値である。
上記にて求められた各温度における規則度に基づいて、温度を横軸におよび規則度を縦軸にしてプロットし、温度依存性曲線を作成する。この温度依存性曲線に基づいて、規則度が0になる温度を求め、これを変態温度とする。図2に記載されるような温度依存性曲線を例にとると、図2の温度依存性曲線において、規則度が0%となる温度が「合金粒子の規則度の温度依存性曲線から求められた、合金粒子が規則化/不規則化する変態温度」である。
本工程において、触媒前駆粒子の加熱温度はこのように求められた変態温度以上であることが好ましい。具体的には、触媒前駆粒子の加熱温度は、変態温度に対して、好ましくは0℃以上150℃未満、より好ましくは0〜100℃、特に好ましくは0〜50℃高いことが好ましい。このような温度にまで加熱すれば、触媒前駆粒子(合金粒子)はより効率的に固溶体(白金及び非白金金属のランダム配列)となる。このため、触媒前駆粒子を、加熱後さらに初期設定温度で維持した後の降温時に規則化をより有効に進行できる(規則度をさらに向上できる)。
また、触媒前駆粒子の加熱雰囲気は特に制限されないが、上記加熱(合金化)と同様、規則化をより進行させるために、非酸化性雰囲気下で行うことが好ましい。ここで、非酸化性雰囲気は、上記加熱(合金化)における説明と同様であるため、ここでは説明を省略する。
触媒前駆粒子を加熱する速度(昇温速度)は特に制限されないが、触媒前駆粒子の凝集やシンタリングの抑制・防止効果、規則化の進行具合などを考慮すると、好ましくは1〜60℃/分、より好ましくは5〜30℃/分である。
上記したように、触媒前駆粒子を初期設定温度(好ましくは変態温度以上)に加熱した後は、触媒前駆粒子をこの初期設定温度で10分未満の間維持する。ここで、この初期設定温度での維持時間が10分以上であると、得られる合金(触媒)粒子の規則度は増大するものの、比表面積が大きく低減する。このため、触媒前駆粒子をこの初期設定温度で10分以上維持して得られた合金粒子を有する電極触媒は、質量比活性に劣る(下記比較例参照)。初期設定温度での触媒前駆粒子の維持時間は、10分未満であればよいが、好ましくは5分以下、より好ましくは1分以下である。また、初期設定温度での触媒前駆粒子の維持時間の下限は特に制限されず、0分を超えればよいが、好ましくは0.1分以上である。このような維持時間であれば、触媒前駆粒子(ゆえに得られる合金粒子)のシンタリングや凝集による粒子径の成長(ゆえに比表面積の減少)をより有効に抑制して、合金粒子(電極触媒)の質量比活性をさらに向上できる。なお、触媒前駆粒子を初期設定温度にまで加熱、さらに当該温度で維持する方法は、特に制限されず、オーブンを用いるなど公知の手段が適用できる。また、「触媒前駆粒子を初期設定温度で維持する」とは、触媒前駆粒子を所望の初期設定温度に維持する場合に加えて、触媒前駆粒子を所望の初期設定温度に対してある程度前後した温度範囲(例えば、所望の初期設定温度±5℃)内に維持する場合も包含する。
上記したように、触媒前駆粒子を初期設定温度で短時間維持した後は、5℃/分未満の速度で降温する。ここで、降温速度が5℃/分以上であると、触媒前駆粒子が急冷され、規則化が十分進行せず、得られる合金粒子の規則度が低くなってしまう。このため、触媒前駆粒子を初期設定温度維持後5℃/分以上の速度で急冷して得られた合金粒子を有する電極触媒は、質量比活性に劣る。降温速度は、5℃/分未満であればよいが、好ましくは4℃/分以下、より好ましくは2℃/分以下、特に好ましくは1℃/分以下である。また、降温速度の下限特に制限されないが、好ましくは0.01℃/分以上、より好ましくは0.1℃/分以上、特に好ましくは0.2℃/分以上である。好ましい形態では、初期設定温度維持後の降温速度は、好ましくは0.01〜4℃/分、より好ましくは0.1〜2℃/分、特に好ましくは0.2〜1℃/分である。このような降温速度で触媒前駆粒子を冷却することによって、得られる合金(触媒)粒子はより高い規則度を有する(ゆえに、高い活性を発揮できる)。なお、降温手段は、特に制限されず、公知の手段が適用できる。
ここで触媒前駆粒子を上記速度で降温(冷却)する際の温度の下限は、合金粒子(触媒前駆粒子)の規則度の温度依存性曲線から求められた、合金粒子(触媒前駆粒子)の中で白金原子と非白金金属原子が相互拡散できる温度以下であることが好ましい。すなわち、触媒前駆粒子を、5℃/分未満の速度で、合金粒子の規則度の温度依存性曲線から求められた、合金粒子の中で白金原子と非白金金属原子が相互拡散できる温度以下まで降温(冷却)することが好ましい。本明細書では、「合金粒子(触媒前駆粒子)の規則度の温度依存性曲線から求められた、合金粒子(触媒前駆粒子)の中で白金原子と非白金金属原子が相互拡散できる下限温度」を単に「相互拡散下限温度」とも称する。このような温度までゆっくりと降温(冷却)することによって、白金原子と非白金金属原子が相互拡散できるため、降温時に合金粒子の規則化をより有効に進行できる(L12構造をより容易に形成できる)。ここで、相互拡散下限温度は、合金の組成や合金粒子の粒子径などに依存する。触媒金属前駆粒子と本発明の電極触媒において導電性担体上に担持される触媒粒子とは、組成及び粒子径が実質的に同じとみなせるため、触媒金属前駆粒子の相互拡散下限温度は触媒粒子の相互拡散下限温度と実質的に同じである。
本明細書において、「相互拡散下限温度」は、合金粒子(触媒粒子)の規則度の温度依存性曲線において、温度依存性曲線が定常状態になり始めた温度である。詳細には、上記<合金粒子の規則度の温度依存性曲線の作成方法>と同様にして、合金粒子の規則度の温度依存性曲線を作成する。例えば、上記と同様、図2の温度依存性曲線を例にとると、図2の温度依存性曲線において、隣接する温度間の規則度の差(絶対値)が1%以下(下限=0%)となって安定した温度とする。例えば、図2では、相互拡散温度は400℃である。ここで、「隣接する温度間の規則度の差」とは、ある温度(T℃)での規則度(sT)と、上記温度より50℃低い((T−50)℃)での規則度(sT−50)との差(=|(sT)−(sT−50)|(絶対値))、および上記温度より50℃低い((T−50)℃)での規則度(sT−50)と上記温度より100℃低い((T−100)℃)での規則度(sT−100)との差(=|(sT−50)−(sT−100)|(絶対値))である。
触媒前駆粒子の降温度(冷却温度)はこのように求められた相互拡散下限温度以下であることが好ましい。具体的には、触媒前駆粒子の降温度(冷却温度)は、相互拡散下限温度に対して、好ましくは0℃以上100℃未満、より好ましくは0〜50℃、特に好ましくは0〜20℃低い。このような温度にまで降温(冷却)すれば、白金原子及び非白金金属原子は合金粒子中で現実的な時間内では相互拡散しないため、得られる合金粒子の規則度を高く維持できる。なお、上記「触媒前駆粒子の温度下限」は、触媒前駆粒子の温度を意味し、具体的には加熱容器内の雰囲気温度と同じである。
触媒前駆粒子を5℃/分未満の速度で相互拡散下限温度以下にまで降温(冷却)した後、そのままの速度で室温(25℃)まで降温(冷却)し、本発明に係る電極触媒としてもよい。しかし、触媒前駆粒子を5℃/分未満の速度で相互拡散下限温度以下にまで降温(冷却)した後、5℃/分以上の速度でさらに降温(冷却)することが好ましい。触媒前駆粒子を5℃/分未満の速度で相互拡散下限温度以下にまで降温(冷却)した後、5℃/分以上の速度で、触媒粒子のシンタリングや凝集による粒子成長の起きない温度(好ましくは200℃未満、より好ましくは100℃以下、例えば、室温(25℃))まで降温(冷却)することがより好ましい。触媒前駆粒子を5℃/分未満の速度で相互拡散温度以下にまで降温(冷却)した後の降温(冷却)速度は、より好ましくは10℃/分以上、特に好ましくは40℃/分以上である。また、触媒前駆粒子を5℃/分未満の速度で相互拡散温度以下にまで降温(冷却)した後の降温(冷却)速度の上限は、特に制限されないが、好ましくは400℃/分以下、より好ましくは200℃/分以下である。このように比較的ゆっくり降温(冷却)した後、相対的により速い速度で冷却することによって、触媒前駆粒子(合金粒子)のシンタリングや凝集による粒子径の成長(ゆえに比表面積の減少)をより有効に抑制できる。ゆえに、得られる電極触媒は、高い規則度は確保したまま、より大きな比表面積を有するため、より質量比活性を向上することが可能になる。
すなわち、本発明の好ましい形態によると、触媒前駆粒子を、合金粒子の規則度の温度依存性曲線から求められた、合金粒子の中で白金原子と非白金金属原子が相互拡散できる温度以下まで、5℃/分未満の速度で降温した後、5℃/分以上の速度でさらに降温する。本発明のさらに好ましい形態によると、触媒前駆粒子を、合金粒子の規則度の温度依存性曲線から求められた、合金粒子の中で白金原子と非白金金属原子が相互拡散できる温度以下まで、5℃/分未満の速度で降温した後、5℃/分以上の速度でさらに触媒粒子のシンタリングや凝集による粒成長の起きない温度(好ましくは200℃未満、より好ましくは100℃以下、例えば、室温(25℃))まで降温する。
上記方法によれば、触媒前駆粒子を十分熱処理しつつ、触媒粒子のシンタリングや凝集による粒子径の成長(ゆえに比表面積の増加)を抑制できる。このため、得られる合金粒子は、ある程度高い規則度を確保したまま、比表面積を増大できる。ゆえに、上記方法によって製造される電極触媒は、高い活性(特に質量比活性)を発揮できる。
上記方法によって製造される電極触媒は、導電性担体上に白金と非白金金属との合金粒子(触媒粒子)が担持されてなる。ここで、合金粒子(触媒粒子)は、白金原子と非白金金属原子からなる合金粒子である。「合金」とは、一般に金属元素に1種以上の金属元素または非金属元素を加えたものであって、金属的性質をもっているものの総称である。本発明に係る合金粒子(触媒粒子)は、その合金の組織には、成分元素が別個の結晶となるいわば混合物である共晶合金、成分元素が完全に溶け合い固溶体となっているもの、成分元素が金属間化合物または金属と非金属との化合物を形成しているものなどがある。本発明では、触媒粒子は、いずれの形態であってもよいが、少なくとも白金原子および非白金原子が金属間化合物を形成しているものを含む。
ここで、導電性担体上に担持される白金と非白金金属との合金粒子(触媒粒子)の組成は、特に制限されないが、前記触媒前駆粒子の組成と実質的に同様である。触媒活性(特に質量比活性)、規則度の高さ(L12構造の形成しやすさ)などの観点から、合金粒子(触媒粒子)の組成として、非白金金属原子1モルに対して、白金原子が、1.0〜15モルであることが好ましく、1.2〜10であることがより好ましく、1.5〜5モルであることが特に好ましい。このような組成であれば、次の工程(b)後に得られる合金粒子(触媒粒子)は、質量比活性及び規則度をより向上できる。
また、合金粒子(触媒粒子)の大きさは、特に制限されない。例えば、合金粒子(触媒粒子)の平均粒子径は、好ましくは1〜15nm、より好ましくは2〜10nmである。
さらに、本形態における合金粒子は、内部構造としてL12構造を有する。「L12構造を有する」とは、L12構造の規則度が0%を超えることを指す。上記構成を有する触媒粒子は、少ない白金含有量であっても、高い活性と耐久性を発揮できる。ここで、合金粒子のL12構造の規則度は、特に制限されないが、活性の向上効果を考慮すると、30%以上(上限:100%)であることが好ましい。上記構成を有する触媒粒子は、少ない白金含有量であっても、高い活性と耐久性を発揮できる。ここで、L12構造の規則度は、より好ましくは45%以上、特に好ましくは50%以上(上限:100%)である。これにより、粒子が一定割合以上規則的に原子が配列した構造を有するため、活性をより一層向上させることができ、触媒粒子の活性および耐久性をより向上できる。なお、上記合金粒子の「L12構造の規則度(Extent of ordering)(%)」または「規則度(%)」は、上記<L12構造の規則度の測定方法>において、測定を室温(25℃)で行う以外は上記方法と同様にして測定される。
また、上記方法によって製造される電極触媒は、比表面積(m2/g Pt)が大きい。具体的には、本発明に係る電極触媒の比表面積は、好ましくは35(m2/g Pt)以上、より好ましくは40(m2/g Pt)以上、特に好ましくは50(m2/g Pt)以上である。ここで、比表面積の上限は、大きいほど好ましいため、特に制限されないが、通常、120(m2/g Pt)以下であり、90(m2/g Pt)以下である。ここで、比表面積は、白金1g当たりの比表面積を意味し、下記実施例で測定された値を採用する。
上記本発明の方法によって製造される電極触媒は、比表面積を増大させ、ゆえに少ない白金含有量であっても質量比活性を向上できる。また、本発明の方法によって製造される電極触媒は、耐久性にも優れる。加えて、本発明の方法によって製造される電極触媒では、合金粒子は所定の割合以上で凝集せずに担体上に単分散する。このため、本発明に係る電極触媒は、家庭用や移動体駆動用の電源などより高性能が求められる燃料電池用途により好適に適用できる。すなわち、本発明の方法によって製造される電極触媒を触媒層に有する膜電極接合体および燃料電池は、発電性能に優れる。
すなわち、本発明は、本発明の方法によって製造される電極触媒を含む触媒層を備える膜電極接合体(MEA)および燃料電池をも提供する。以下では、本発明に係る電極触媒を含む触媒層を備える膜電極接合体(MEA)および燃料電池の一実施形態を説明する。
[電解質膜−電極接合体(MEA)]
本発明に係る電極触媒は、電解質膜−電極接合体(MEA)に好適に使用できる。すなわち、本発明は、本発明の電極触媒を含む電解質膜−電極接合体(MEA)、特に燃料電池用電解質膜−電極接合体(MEA)をも提供する。本発明の電解質膜−電極接合体(MEA)は、高い発電性能(特に質量比活性)および耐久性を発揮できる。
本発明の電解質膜−電極接合体(MEA)は、従来の電極触媒に代えて、本発明に係る電極触媒(触媒)を用いる以外は、同様の構成を適用できる。以下に、本発明のMEAの好ましい形態を説明するが、本発明は下記形態に限定されない。
MEAは、電解質膜、上記電解質膜の両面に順次形成されるアノード触媒層およびアノードガス拡散層ならびにカソード触媒層およびカソードガス拡散層から構成される。そしてこの電解質膜−電極接合体において、前記カソード触媒層およびアノード触媒層の少なくとも一方に本発明の電極触媒が使用される。
(電解質膜)
電解質膜は、例えば、固体高分子電解質膜から構成される。この固体高分子電解質膜は、例えば、燃料電池(PEFC等)の運転時にアノード触媒層で生成したプロトンを膜厚方向に沿ってカソード触媒層へと選択的に透過させる機能を有する。また、固体高分子電解質膜は、アノード側に供給される燃料ガスとカソード側に供給される酸化剤ガスとを混合させないための隔壁としての機能をも有する。
固体高分子電解質膜を構成する電解質材料としては特に限定されず従来公知の知見が適宜参照されうる。例えば、以下の触媒層にて高分子電解質として説明したフッ素系高分子電解質や炭化水素系高分子電解質を同様にして用いることができる。この際、触媒層に用いた高分子電解質と必ずしも同じものを用いる必要はない。
電解質膜の厚さは、得られる燃料電池の特性を考慮して適宜決定すればよく、特に制限されない。電解質膜の厚さは、通常は5〜300μm程度である。電解質膜の厚さがかような範囲内の値であると、製膜時の強度や使用時の耐久性および使用時の出力特性のバランスが適切に制御されうる。
(触媒層)
触媒層は、実際に電池反応が進行する層である。具体的には、アノード触媒層では水素の酸化反応が進行し、カソード触媒層では酸素の還元反応が進行する。ここで、本発明の触媒は、カソード触媒層またはアノード触媒層のいずれに存在してもいてもよい。酸素還元活性の向上の必要性を考慮すると、少なくともカソード触媒層に本発明の電極触媒が使用されることが好ましい。ただし、上記形態に係る触媒層は、アノード触媒層として用いてもよいし、カソード触媒層およびアノード触媒層双方として用いてもよいなど、特に制限されるものではない。
触媒層は、本発明に係る電極触媒および電解質を含む。電解質は、特に制限されないが、イオン伝導性の高分子電解質であることが好ましい。上記高分子電解質は、燃料極側の触媒活物質周辺で発生したプロトンを伝達する役割を果たすことから、プロトン伝導性高分子とも呼ばれる。
当該高分子電解質は、特に限定されず従来公知の知見が適宜参照されうる。高分子電解質は、構成材料であるイオン交換樹脂の種類によって、フッ素系高分子電解質と炭化水素系高分子電解質とに大別される。
フッ素系高分子電解質を構成するイオン交換樹脂としては、例えば、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)、アシプレックス(登録商標、旭化成株式会社製)、フレミオン(登録商標、旭硝子株式会社製)等のパーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマー、パーフルオロカーボンホスホン酸系ポリマー、トリフルオロスチレンスルホン酸系ポリマー、エチレンテトラフルオロエチレン−g−スチレンスルホン酸系ポリマー、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリビニリデンフルオリド−パーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマーなどが挙げられる。耐熱性、化学的安定性、耐久性、機械強度に優れるという観点からは、これらのフッ素系高分子電解質が好ましく用いられ、特に好ましくはパーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマーから構成されるフッ素系高分子電解質が用いられる。
炭化水素系電解質として、具体的には、スルホン化ポリエーテルスルホン(S−PES)、スルホン化ポリアリールエーテルケトン、スルホン化ポリベンズイミダゾールアルキル、ホスホン化ポリベンズイミダゾールアルキル、スルホン化ポリスチレン、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン(S−PEEK)、スルホン化ポリフェニレン(S−PPP)などが挙げられる。原料が安価で製造工程が簡便であり、かつ材料の選択性が高いといった製造上の観点からは、これらの炭化水素系高分子電解質が好ましく用いられる。なお、上述したイオン交換樹脂は、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。また、上述した材料のみに制限されず、その他の材料が用いられてもよい。
プロトンの伝達を担う高分子電解質においては、プロトンの伝導度が重要となる。ここで、高分子電解質のEWが大きすぎる場合には触媒層全体でのイオン伝導性が低下する。したがって、本形態の触媒層は、EWの小さい高分子電解質を含むことが好ましい。具体的には、本形態の触媒層は、好ましくはEWが1500g/eq.以下の高分子電解質を含み、より好ましくは1200g/eq.以下の高分子電解質を含み、特に好ましくは1000g/eq.以下の高分子電解質を含む。一方、EWが小さすぎる場合には、親水性が高すぎて、水の円滑な移動が困難となる。かような観点から、高分子電解質のEWは600以上であることが好ましい。なお、EW(Equivalent Weight)は、プロトン伝導性を有する交換基の当量重量を表している。当量重量は、イオン交換基1当量あたりのイオン交換膜の乾燥重量であり、「g/eq」の単位で表される。
また、触媒層は、EWが異なる2種類以上の高分子電解質を発電面内に含み、この際、高分子電解質のうち最もEWが低い高分子電解質が流路内ガスの相対湿度が90%以下の領域に用いることが好ましい。このような材料配置を採用することにより、電流密度領域によらず、抵抗値が小さくなって、電池性能の向上を図ることができる。流路内ガスの相対湿度が90%以下の領域に用いる高分子電解質、すなわちEWが最も低い高分子電解質のEWとしては、900g/eq.以下であることが望ましい。これにより、上述の効果がより確実、顕著なものとなる。
さらに、EWが最も低い高分子電解質を冷却水の入口と出口の平均温度よりも高い領域に用いることが望ましい。これによって、電流密度領域によらず、抵抗値が小さくなって、電池性能のさらなる向上を図ることができる。
さらには、燃料電池システムの抵抗値を小さくするとする観点から、EWが最も低い高分子電解質は、流路長に対して燃料ガスおよび酸化剤ガスの少なくとも一方のガス供給口から3/5以内の範囲の領域に用いることが望ましい。
触媒層には、必要に応じて、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体などの撥水剤、界面活性剤などの分散剤、グリセリン、エチレングリコール(EG)、ポリビニルアルコール(PVA)、プロピレングリコール(PG)などの増粘剤、造孔剤等の添加剤が含まれていても構わない。
触媒層の膜厚(乾燥膜厚)は、好ましくは0.05〜30μm、より好ましくは1〜20μm、さらに好ましくは2〜15μmである。なお、上記は、カソード触媒層およびアノード触媒層双方に適用される。しかしながら、カソード触媒層およびアノード触媒層は、同じであってもあるいは異なってもよい。
(ガス拡散層)
ガス拡散層(アノードガス拡散層、カソードガス拡散層)は、セパレータのガス流路を介して供給されたガス(燃料ガスまたは酸化剤ガス)の触媒層への拡散を促進する機能、および電子伝導パスとしての機能を有する。
ガス拡散層の基材を構成する材料は特に限定されず、従来公知の知見が適宜参照されうる。例えば、炭素製の織物、紙状抄紙体、フェルト、不織布といった導電性および多孔質性を有するシート状材料が挙げられる。基材の厚さは、得られるガス拡散層の特性を考慮して適宜決定すればよいが、30〜500μm程度とすればよい。基材の厚さがかような範囲内の値であれば、機械的強度とガスおよび水などの拡散性とのバランスが適切に制御されうる。
ガス拡散層は、撥水性をより高めてフラッディング現象などを防止することを目的として、撥水剤を含むことが好ましい。撥水剤としては、特に限定されないが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)などのフッ素系の高分子材料、ポリプロピレン、ポリエチレンなどが挙げられる。
また、撥水性をより向上させるために、ガス拡散層は、撥水剤を含むカーボン粒子の集合体からなるカーボン粒子層(マイクロポーラス層;MPL、図示せず)を基材の触媒層側に有するものであってもよい。
カーボン粒子層に含まれるカーボン粒子は特に限定されず、カーボンブラック、グラファイト、膨張黒鉛などの従来公知の材料が適宜採用されうる。なかでも、電子伝導性に優れ、比表面積が大きいことから、オイルファーネスブラック、チャネルブラック、ランプブラック、サーマルブラック、アセチレンブラックなどのカーボンブラックが好ましく用いられうる。カーボン粒子の平均粒径は、10〜100nm程度とするのがよい。これにより、毛細管力による高い排水性が得られるとともに、触媒層との接触性も向上させることが可能となる。
カーボン粒子層に用いられる撥水剤としては、上述した撥水剤と同様のものが挙げられる。なかでも、撥水性、電極反応時の耐食性などに優れることから、フッ素系の高分子材料が好ましく用いられうる。
カーボン粒子層におけるカーボン粒子と撥水剤との混合比は、撥水性および電子伝導性のバランスを考慮して、重量比で90:10〜40:60(カーボン粒子:撥水剤)程度とするのがよい。なお、カーボン粒子層の厚さについても特に制限はなく、得られるガス拡散層の撥水性を考慮して適宜決定すればよい。
(電解質膜−電極接合体の製造方法)
電解質膜−電極接合体の作製方法としては、特に制限されず、従来公知の方法を使用できる。例えば、電解質膜に触媒層をホットプレスで転写または塗布し、これを乾燥したものに、ガス拡散層を接合する方法や、ガス拡散層の微多孔質層側(微多孔質層を含まない場合には、基材層の片面に触媒層を予め塗布して乾燥することによりガス拡散電極(GDE)を2枚作製し、固体高分子電解質膜の両面にこのガス拡散電極をホットプレスで接合する方法を使用することができる。ホットプレス等の塗布、接合条件は、固体高分子電解質膜や触媒層内の高分子電解質の種類(パ−フルオロスルホン酸系や炭化水素系)によって適宜調整すればよい。
[燃料電池]
上述した電解質膜−電極接合体(MEA)は、燃料電池に好適に使用できる。すなわち、本発明は、本発明の電解質膜−電極接合体(MEA)を用いてなる燃料電池をも提供する。本発明の燃料電池は、高い発電性能(特に質量比活性)および耐久性を発揮できる。
ここで、燃料電池は、膜電極接合体(電解質膜−電極接合体、MEA)と、燃料ガスが流れる燃料ガス流路を有するアノード側セパレータと酸化剤ガスが流れる酸化剤ガス流路を有するカソード側セパレータとからなる一対のセパレータとを有する。本発明の燃料電池は、耐久性に優れ、かつ高い発電性能を発揮できる。
以下、適宜図面を参照しながら、本発明に係る電極触媒を使用した触媒層を有する膜電極接合体(MEA)および燃料電池の一実施形態を詳細に説明する。しかし、本発明は、以下の実施形態のみには制限されない。なお、各図面は説明の便宜上誇張されて表現されており、各図面における各構成要素の寸法比率が実際とは異なる場合がある。また、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明した場合では、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
図1は、本発明の一実施形態に係る固体高分子形燃料電池(PEFC)1の基本構成を示す概略図である。PEFC1は、まず、固体高分子電解質膜2と、これを挟持する一対の触媒層(アノード触媒層3aおよびカソード触媒層3c)とを有する。そして、固体高分子電解質膜2と触媒層(3a、3c)との積層体はさらに、一対のガス拡散層(GDL)(アノードガス拡散層4aおよびカソードガス拡散層4c)により挟持されている。このように、固体高分子電解質膜2、一対の触媒層(3a、3c)および一対のガス拡散層(4a、4c)は、積層された状態で電解質膜−電極接合体(MEA)10を構成する。
PEFC1において、MEA10はさらに、一対のセパレータ(アノードセパレータ5aおよびカソードセパレータ5c)により挟持されている。図1において、セパレータ(5a、5c)は、図示したMEA10の両端に位置するように図示されている。ただし、複数のMEAが積層されてなる燃料電池スタックでは、セパレータは、隣接するPEFC(図示せず)のためのセパレータとしても用いられるのが一般的である。換言すれば、燃料電池スタックにおいてMEAは、セパレータを介して順次積層されることにより、スタックを構成することとなる。なお、実際の燃料電池スタックにおいては、セパレータ(5a、5c)と固体高分子電解質膜2との間や、PEFC1とこれと隣接する他のPEFCとの間にガスシール部が配置されるが、図1ではこれらの記載を省略する。
セパレータ(5a、5c)は、例えば、厚さ0.5mm以下の薄板にプレス処理を施すことで図1に示すような凹凸状の形状に成形することにより得られる。セパレータ(5a、5c)のMEA側から見た凸部はMEA10と接触している。これにより、MEA10との電気的な接続が確保される。また、セパレータ(5a、5c)のMEA側から見た凹部(セパレータの有する凹凸状の形状に起因して生じるセパレータとMEAとの間の空間)は、PEFC1の運転時にガスを流通させるためのガス流路として機能する。具体的には、アノードセパレータ5aのガス流路6aには燃料ガス(例えば、水素など)を流通させ、カソードセパレータ5cのガス流路6cには酸化剤ガス(例えば、空気など)を流通させる。
一方、セパレータ(5a、5c)のMEA側とは反対の側から見た凹部は、PEFC1の運転時にPEFCを冷却するための冷媒(例えば、水)を流通させるための冷媒流路7とされる。さらに、セパレータには通常、マニホールド(図示せず)が設けられる。このマニホールドは、スタックを構成した際に各セルを連結するための連結手段として機能する。かような構成とすることで、燃料電池スタックの機械的強度が確保されうる。
なお、図1に示す実施形態においては、セパレータ(5a、5c)は凹凸状の形状に成形されている。ただし、セパレータは、かような凹凸状の形態のみに限定されるわけではなく、ガス流路および冷媒流路の機能を発揮できる限り、平板状、一部凹凸状などの任意の形態であってもよい。
(セパレータ)
セパレータは、固体高分子形燃料電池などの燃料電池の単セルを複数個直列に接続して燃料電池スタックを構成する際に、各セルを電気的に直列に接続する機能を有する。また、セパレータは、燃料ガス、酸化剤ガス、および冷却剤を互に分離する隔壁としての機能も有する。これらの流路を確保するため、上述したように、セパレータのそれぞれにはガス流路および冷却流路が設けられていることが好ましい。セパレータを構成する材料としては、緻密カーボングラファイト、炭素板などのカーボンや、ステンレスなどの金属など、従来公知の材料が適宜制限なく採用できる。セパレータの厚さやサイズ、設けられる各流路の形状やサイズなどは特に限定されず、得られる燃料電池の所望の出力特性などを考慮して適宜決定できる。
燃料電池の製造方法は、特に制限されることなく、燃料電池の分野において従来公知の知見が適宜参照されうる。
さらに、燃料電池が所望する電圧を発揮できるように、セパレータを介して電解質膜−電極接合体を複数積層して直列に繋いだ構造の燃料電池スタックを形成してもよい。燃料電池の形状などは、特に限定されず、所望する電圧などの電池特性が得られるように適宜決定すればよい。
上述したPEFCや電解質膜−電極接合体は、発電性能および耐久性に優れる触媒層を用いている。したがって、当該PEFCや電解質膜−電極接合体は発電性能および耐久性に優れる。
本実施形態のPEFCやこれを用いた燃料電池スタックは、例えば、車両に駆動用電源として搭載されうる。
上記のような燃料電池は、優れた発電性能を発揮する。ここで、燃料電池の種類としては、特に限定されず、上記した説明中では固体高分子形燃料電池を例に挙げて説明したが、この他にも、アルカリ型燃料電池、ダイレクトメタノール型燃料電池、マイクロ燃料電池などが挙げられる。なかでも小型かつ高密度・高出力化が可能であるから、固体高分子形燃料電池(PEFC)が好ましく挙げられる。また、前記燃料電池は、搭載スペースが限定される車両などの移動体用電源の他、定置用電源などとして有用である。なかでも、比較的長時間の運転停止後に高い出力電圧が要求される自動車などの移動体用電源として用いられることが特に好ましい。
燃料電池を運転する際に用いられる燃料は特に限定されない。例えば、水素、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、第2級ブタノール、第3級ブタノール、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、エチレングリコール、ジエチレングリコールなどが用いられうる。なかでも、高出力化が可能である点で、水素やメタノールが好ましく用いられる。
また、燃料電池の適用用途は特に限定されるものではないが、車両に適用することが好ましい。本発明の電解質膜−電極接合体は、発電性能および耐久性に優れ、小型化が実現可能である。このため、本発明の燃料電池は、車載性の点から、車両に該燃料電池を適用した場合、特に有利である。
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。なお、下記実施例において、特記しない限り、操作は室温(25℃)で行われた。また、特記しない限り、「%」および「部」は、それぞれ、「重量%」および「重量部」を意味する。
調製例A:触媒前駆粒子Aの製造
白金濃度0.8重量%のジニトロジアミン白金硝酸水溶液1000g(白金含有量:8g)に、カーボン担体を19g浸漬させ、撹拌後、還元剤として100%メタノールを100ml添加した。なお、カーボン担体として、ケッチェンブラック(登録商標)KetjenBlackEC300J(平均粒子径:40nm、BET比表面積:800m2/g担体、ライオン株式会社製)を使用した。この溶液を沸点(約95℃)で7時間、撹拌、混合し、白金をカーボン担体に担持させた。そして、濾過、乾燥することにより白金粒子担持担体を得た。
上記で得られた白金粒子担持担体20gを2Lの水に分散させ、コバルト前駆体(硫酸コバルト、コバルト含有量0.6g(白金1モルに対して0.33モル相当))を投入した。これに、別途調製した還元剤溶液(水素化ホウ素ナトリウム10gを純水1Lに溶解)を全量投入し、室温(25℃)で1時間、スターラーで撹拌・混合し、還元析出させた。そして、析出物を濾過、乾燥した後、100体積%水素ガス雰囲気中で、900℃、1時間の合金化処理を行うことで、触媒前駆粒子Aを製造した。
このようにして得られた触媒前駆粒子Aにおける触媒金属前駆粒子(Pt−Co合金粒子)の担持濃度(担持量)は、担体に対して、31.9重量%(Pt:29.0重量%、Co:2.9重量%)であった。なお、担持濃度は、ICP分析により測定した。以下、同様である。また、触媒金属前駆粒子(Pt−Co合金粒子)の平均粒子径は、約4nmであった。
本例で得られる触媒金属前駆粒子の変態温度および相互拡散下限温度は、それぞれ、750℃および400℃であった。
調製例B:触媒前駆粒子Bの製造
上記調製例Aと同様にして、白金粒子担持担体を得た。
次に、この白金粒子担持担体20gを2Lの水に分散させ、コバルト前駆体(硫酸コバルト、コバルト含有量1.0g(白金1モルに対して0.6モル相当))を投入した。これに、別途調製した還元剤溶液(水素化ホウ素ナトリウム10gを純水1Lに溶解)を全量投入し、室温(25℃)で1時間、スターラーで撹拌・混合し、還元析出させた。そして、析出物を濾過、乾燥した後、100体積%水素ガス雰囲気中で、900℃、1時間の合金化処理を行うことで、触媒前駆粒子Bを製造した。
このようにして得られた触媒前駆粒子Bにおける触媒金属前駆粒子(Pt−Co合金粒子)の担持濃度(担持量)は、担体に対して、31.6重量%(Pt:26.9重量%、Co:4.7重量%)であった。また、触媒金属前駆粒子(Pt−Co合金粒子)の平均粒子径は、約4nmであった。
本例で得られる触媒金属前駆粒子の変態温度および相互拡散下限温度は、それぞれ、750℃および400℃であった。
実施例1:電極触媒Aの製造
上記調製例Aと同様にして、触媒前駆粒子Aを製造した。
この触媒前駆粒子Aに対して、100体積%水素ガス雰囲気下で、室温(25℃)から750℃まで10℃/分の速度で昇温させ、750℃に1分間保持した後、1℃/分の降温速度で400℃まで冷却した。温度が400℃に達した後、40℃/分の降温速度で25℃まで急冷することによって、電極触媒Aを製造した。この電極触媒Aについて、規則度を測定したところ、54%であった。
このようにして得られた電極触媒Aにおける合金粒子(触媒金属粒子)の担持濃度(担持量)は、担体に対して、31.9重量%(Pt:29.0重量%、Co:2.9重量%)であった。
実施例2:電極触媒Bの製造
上記調製例Bと同様にして、触媒前駆粒子Bを製造した。
この触媒前駆粒子Bに対して、100体積%水素ガス雰囲気下で、室温(25℃)から750℃まで10℃/分の速度で昇温させ、750℃に1分間保持した後、1℃/分の降温速度で400℃まで冷却した。温度が400℃に達した後、40℃/分の降温速度で25℃まで急冷することによって、電極触媒Bを製造した。この電極触媒Bについて、規則度を測定したところ、66%であった。
このようにして得られた電極触媒Bにおける合金粒子(触媒金属粒子)の担持濃度(担持量)は、担体に対して、31.6重量%(Pt:26.9重量%、Co:4.7重量%)であった。
実施例3:電極触媒Cの製造
上記調製例Bと同様にして、触媒前駆粒子Bを製造した。
この触媒前駆粒子Bに対して、100体積%アルゴンガス雰囲気下で、室温(25℃)から750℃まで10℃/分の速度で昇温させ、750℃に1分間保持した後、1℃/分の降温速度で400℃まで冷却した。温度が400℃に達した後、40℃/分の降温速度で25℃まで急冷することによって、電極触媒Cを製造した。この電極触媒Cについて、規則度を測定したところ、49%であった。
このようにして得られた電極触媒Cにおける合金粒子(触媒金属粒子)の担持濃度(担持量)は、担体に対して、31.6重量%(Pt:26.9重量%、Co:4.7重量%)であった。
実施例4:電極触媒Dの製造
上記調製例Bと同様にして、触媒前駆粒子Bを製造した。
この触媒前駆粒子Bに対して、100体積%アルゴンガス雰囲気下で、室温(25℃)から750℃まで10℃/分の速度で昇温させ、750℃に1分間保持した後、0.5℃/分の降温速度で400℃まで冷却した。温度が400℃に達した後、40℃/分の降温速度で25℃まで急冷することによって、電極触媒Dを製造した。この電極触媒Dについて、規則度を測定したところ、58%であった。
このようにして得られた電極触媒Dにおける合金粒子(触媒金属粒子)の担持濃度(担持量)は、担体に対して、31.6重量%(Pt:26.9重量%、Co:4.7重量%)であった。
比較例1:比較電極触媒Eの製造
上記調製例Aと同様にして、触媒前駆粒子Aを製造した。
この触媒前駆粒子Aに対して、100体積%水素ガス雰囲気下で、室温(25℃)から650℃まで10℃/分の速度で昇温させ、650℃に2時間保持した後、40℃/分の降温速度で25℃まで急冷することによって、比較電極触媒Eを製造した。この比較電極触媒Eについて、規則度を測定したところ、31%であった。
このようにして得られた比較電極触媒Eにおける合金粒子(触媒金属粒子)の担持濃度(担持量)は、担体に対して、31.9重量%(Pt:29.0重量%、Co:2.9重量%)であった。
比較例2:比較電極触媒Fの製造
上記調製例Aと同様にして、触媒前駆粒子Aを製造した。
この触媒前駆粒子Aに対して、100体積%水素ガス雰囲気下で、室温(25℃)から700℃まで10℃/分の速度で昇温させ、700℃に2時間保持した後、40℃/分の降温速度で25℃まで急冷することによって、比較電極触媒Fを製造した。この比較電極触媒Fについて、規則度を測定したところ、41%であった。
このようにして得られた比較電極触媒Fにおける合金粒子(触媒金属粒子)の担持濃度(担持量)は、担体に対して、31.9重量%(Pt:29.0重量%、Co:2.9重量%)であった。
比較例3:比較電極触媒Gの製造
上記調製例Aと同様にして、触媒前駆粒子Aを製造した。
この触媒前駆粒子Aに対して、100体積%水素ガス雰囲気下で、室温(25℃)から700℃まで10℃/分の速度で昇温させ、700℃に4時間保持した後、40℃/分の降温速度で25℃まで急冷することによって、比較電極触媒Gを製造した。この比較電極触媒Gについて、規則度を測定したところ、48%であった。
このようにして得られた比較電極触媒Gにおける合金粒子(触媒金属粒子)の担持濃度(担持量)は、担体に対して、31.9重量%(Pt:29.0重量%、Co:2.9重量%)であった。
比較例4:比較電極触媒Hの製造
上記調製例Bと同様にして、触媒前駆粒子Bを製造した。
この触媒前駆粒子Bに対して、100体積%水素ガス雰囲気下で、室温(25℃)から900℃まで10℃/分の速度で昇温させ、900℃に2時間保持した後、10℃/分の降温速度で25℃まで急冷することによって、比較電極触媒Hを製造した。この比較電極触媒Hについて、規則度を測定したところ、72%であった。
このようにして得られた比較電極触媒Hにおける合金粒子(触媒金属粒子)の担持濃度(担持量)は、担体に対して、31.6重量%(Pt:26.9重量%、Co:4.7重量%)であった。
上記にて得られた電極触媒A〜Dおよび比較電極触媒E〜Hについて、下記方法にしたがって、比表面積(m2/g Pt)および質量比活性(μA/g Pt)を測定した。結果を下記表2に示す。
<比表面積の測定>
実施例および比較例の電極触媒を、それぞれ、直径5mmのグラッシーカーボンディスクにより構成される回転ディスク電極(RDE、幾何面積:0.19cm2)上に白金の単位面積当たりの担持量が34μg/cm2となるように、Nafion(登録商標)(Nafionの塗布量=10μg/cm2)と共に、均一に分散担持し、性能評価用RDE電極を作製した。
各実施例及び比較例の性能評価用RDE電極に対して、電気化学計測装置を用い、N2ガスで飽和した25℃の0.1M過塩素酸中において、可逆水素電極(RHE)に対して0.05〜1.2Vの電位範囲で、50mVs−1の走査速度でサイクリックボルタンメトリーを行った。得られたボルタモグラムの0.05〜0.4Vに現れる水素吸着ピークの面積より、各電極触媒の電気化学的表面積(cm2)を算出した。これをRDE電極上の白金担持量で除した値を比表面積(m2/g Pt)とした。
<質量比活性の測定>
実施例及び比較例の性能評価用RDE電極に対して、電気化学計測装置を用い、酸素で飽和した25℃の0.1M過塩素酸中で、0.2Vから1.2Vまで速度10mV/sで電位走査を行った。さらに、電位走査によりに得られた電流から、物質移動(酸素拡散)の影響をKoutecky−Levich式を用いて補正した上で、0.9Vでの電流値を抽出した。そして、得られた電流値を上記単位面積当たりの白金担持量から算出した全白金担持量(6.7μg)で除した値を質量比活性(A/g Pt)とした。Koutecky−Levich式を用いた方法は、例えば、Electrochemistry Vol.79, No.2, p.116−121 (2011) (対流ボルタモグラム(1)酸素還元(RRDE))の「4 Pt/C触媒上での酸素還元反応の解析」に記載されている。
上記表2の結果から、実施例1〜4の電極触媒A〜Dは、本発明で規定される降温条件から外れる方法によって製造される比較電極触媒E〜Hに比して、質量比活性を有意に向上できることがわかる。この結果は、実施例1〜4の電極触媒A〜Dは、本発明の熱処理条件から外れる方法によって製造される比較電極触媒E〜Hに比して、比表面積を有意に増大できることによることが考察される。