JP6705570B2 - 解析システム、解析方法、およびプログラム - Google Patents

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Description

本発明は、解析システム、解析方法、およびプログラムに関する。
例えば、材料の設計を行うためにミクロ組織を解析することが行われている。
特許文献1には、結晶組成モデルの解析結果として、オイラー角の変化を得ることと、当該オイラー角の変化から組織の状態を推定することとが記載されている。また、特許文献1には、ミクロ組織から機械特性を得ることが記載されている。
非特許文献1には、熱処理中のミクロ組織の変化と、応力−歪曲線とを予測可能な材質予測モデルが記載されている。
また、材料の設計を行うために統計学や機械学習を利用することが行われている。特許文献2には、複合材料の耐衝撃性を予測するためにニューラルネットワークを用いることが記載されている。特許文献3には、既知物質に基づいて物質モデルを学習し、学習後の物質モデルに目標物性を入力して新規物質を探索することが記載されている。
特開2008−197852号公報 US2015/0170022A1 特開2017−91526号公報 国際公開第2017/011010号
東 昌史、外2名、「ミクロ組織予測から機械特性の予測までの一貫材質予測」、新日鉄技報 第392号、2012年、p.45−p.51 H.Moulinec, P.Suquet, A numerical method for computing the overall response of nonlinear composites with complex microstructure. Comput.Methods Appl.Mech.Engrg. 157 (1998), 69-94 J.Zeman, T.W.J.de Geus, J.Vondrejc, R.H.J.Peerlings and M.G.D.Geers, A finite element perspective on nonlinear FFT-based micromechanical simulations Int.J.Numer.Meth.Engng. 111 (2017), 903-926 D.J.Srolovitz, G.S.Grest, M.P.Anderson, Computer Simulation of Recrystallization-I. Homogeneous Nucleation and Growth, Acta metal. 34 (1986),1833-1845
しかしながら、特許文献1、特許文献2、および非特許文献1の技術では、機械特性からミクロ組織を推定することはできない。また、特許文献3の技術では、材料の特性の目標値から当該材料の構造を推定する際に、統計的な手法を用いる。従って、材料の構造が物理的に妥当なものであるという保証はない。このため、材料の構造が物理的に妥当なものであることの検証が必要になる。また、特許文献2および特許文献3の技術では、予測・探索の対象を内挿により導出することしかできず、外挿により導出することができない。即ち、特許文献2および特許文献3の技術では、学習時に用いるデータが存在する範囲外の解を得ることはできない。
材料の機械特性は、材料のミクロ組織に起因するものである。即ち、材料のミクロ組織を原因とし、当該原因の結果として、材料の機械特性が得られる。ここで、顕微鏡で観察することができる物(肉眼では観察することができない物)に対する系をミクロな系とする。そうすると、材料のミクロ組織は、ミクロな系に属する。一方、顕微鏡を使わなくても観察することができる物に対する系をマクロな系とする。材料の機械特性は、材料全体から定まる。材料全体は、顕微鏡を使わなくても観察することができる。従って、材料の機械特性は、マクロな系に属する。ここで、空間を占める大きさが同程度のものが分類される階層を空間階層とする。そうすると、ミクロな系とマクロな系は、異なる空間階層に属する。前述した技術では、このような、物理現象で結ばれる原因と結果が、異なる空間階層に属する場合に、当該結果から当該原因を正確に推定することが容易ではないという問題点がある。
本発明は、以上の問題点に鑑みてなされたものであり、物理現象で結ばれる原因と結果が、異なる空間階層に属する場合に、当該結果から当該原因を正確に推定することを目的とする。
以上の課題を解決するための手段の一例は、以下の通りである。
(1)
第1の因子が解析対象に与えられた場合の前記解析対象における状態を示す第2の因子を、前記解析対象が従うべき物理現象に従って導出する第1の導出手段と、
前記第1の導出手段により導出された前記第2の因子に基づいて、第3の因子を、前記解析対象が従うべき物理現象に従って導出する第2の導出手段と、
前記第2の導出手段により導出された前記第3の因子を評価した結果に基づいて、当該第3の因子に対応する前記第1の因子を決定する決定手段と、を有し、 前記第3の因子は、前記第1の因子および前記第2の因子を原因として前記解析対象に生じる結果を示す因子であり、
前記第2の因子は、前記解析対象の構成要素のそれぞれに対して個別に定まる因子であり、
前記第3の因子は、前記解析対象の構成要素のそれぞれに対して個別に定まる因子ではなく、前記解析対象の構成要素の集合に対して定まる因子であり、
前記第2の導出手段により導出された前記第3の因子に対する評価値が所定の条件を満たさない場合に、新たな前記解析対象に対して、前記第1の導出手段による新たな前記第2の因子の導出と、前記第2の導出手段による新たな前記第3の因子の導出とが行われ
前記新たな解析対象における前記構成要素の状態は、前記第1の導出手段により導出された最新の前記第2の因子であることを特徴とする解析システム。
(2)
前記第1の導出手段は、前記解析対象が従うべき物理現象に基づく数式を用いて前記第2の因子を導出することを特徴とする(1)に記載の解析システム。
(3)
前記第2の導出手段は、前記解析対象が従うべき物理現象に基づく数式を用いて前記第3の因子を導出することを特徴とする(1)または(2)に記載の解析システム。
(4)
前記決定手段は、前記第2の導出手段により導出された前記第3の因子に対する評価値が所定の条件を満たす場合に、当該第3の因子の導出のために用いられた前記第1の因子を、前記第3の因子に対応する前記第1の因子として決定することを特徴とする(1)〜(3)の何れか1つに記載の解析システム。
(5)
前記決定手段は、前記第2の導出手段により導出された前記第3の因子に対する評価値が所定の条件を満たす場合、当該所定の条件を満たすまでに用いられた複数の前記第1の因子を、前記第3の因子に対応する前記第1の因子として決定することを特徴とする(1)〜(4)の何れか1つに記載の解析システム。
(6)
初期の前記解析対象を示す情報から、前記所定の条件を満たす前記第3の因子に対応する前記複数の第1の因子を導出する学習モデルを、強化学習を行うことにより作成する作成手段を有し、
前記作成手段が、前記第1の導出手段、および前記第2の導出手段を有することを特徴とする(5)に記載の解析システム。
(7)
前記強化学習は、Q学習であることを特徴とする(6)に記載の解析システム。
(8)
前記学習モデルを用いて、前記所定の条件を満たす前記第3の因子に対応する前記複数の第1の因子を推定する推定手段を有し、
前記作成手段と、前記推定手段とのそれぞれが、前記第1の導出手段、および前記第2の導出手段を有することを特徴とする(6)または(7)に記載の解析システム。
(9)
前記解析対象は、製品であり、
前記第1の因子は、前記製品の構成要素の遷移の内容を示す因子であり、
前記第2の因子は、前記製品の構成要素の遷移後の状態を示す因子であり、
前記第3の因子は、前記製品の構成要素の集合に対して定まる因子であり、
前記推定手段により推定された前記第1の因子に基づいて、前記製品の製造工程が決定され、当該製造工程を用いて前記製品が製造されることを特徴とする(8)に記載の解析システム。
(10)
前記解析対象は、ミクロ組織を有する材料であり、
前記第1の因子は、前記材料のミクロ組織の状態の遷移の内容を示す因子であり、
前記第2の因子は、前記材料のミクロ組織の遷移後の状態を示す因子であり、
前記第3の因子は、前記材料全体における機械特性に関する因子であり、
前記推定手段により推定された前記第1の因子に基づいて、前記材料の製造工程が決定され、当該製造工程を用いて前記構造材料が製造されることを特徴とする(8)または(9)に記載の解析システム。
(11)
前記第3の因子に対応する前記第1の因子が決定される際にマルコフ決定過程のアルゴリズムが用いられ、
マルコフ決定過程における状態は、前記解析対象の構成要素の状態であり、
マルコフ決定過程における行動は、前記第1の因子であり、
マルコフ決定過程における報酬は、前記第3の因子であり、
前記第2の因子は、前記第1の因子に従って遷移することを特徴とする(1)〜(10)の何れか1つに記載の解析システム。
(12)
前記解析対象は、製品であり、
前記第1の因子は、前記製品の構成要素の状態の遷移の内容を示す因子であり、
前記第2の因子は、前記製品の構成要素の遷移後の状態を示す因子であり、
前記第3の因子は、前記製品の構成要素の集合に対して定まる因子であることを特徴とする(1)〜(11)の何れか1つに記載の解析システム。
(13)
前記解析対象は、ミクロ組織を有する材料であり、
前記第1の因子は、前記材料のミクロ組織の状態の遷移の内容を示す因子であり、
前記第2の因子は、前記材料のミクロ組織の遷移後の状態を示す因子であり、
前記第3の因子は、前記材料全体における機械特性に関する因子であることを特徴とする(1)〜(12)の何れか1つに記載の解析システム。 (14)
前記第2の導出手段は、前記第1の導出手段により導出された前記第2の因子で示される状態のミクロ組織に対して相変態が行われたミクロ組織に基づいて、前記第3の因子を導出することを特徴とする(13)に記載の解析システム。
(15)
第1の因子が解析対象に与えられた場合の前記解析対象における状態を示す第2の因子を、前記解析対象が従うべき物理現象に従って導出する第1の導出工程と
前記第1の導出工程により導出された前記第2の因子に基づいて、第3の因子を、前記解析対象が従うべき物理現象に従って導出する第2の導出工程と、
前記第2の導出工程により導出された前記第3の因子を評価した結果に基づいて、当該第3の因子に対応する前記第1の因子を決定する決定工程と、を有し、
前記第3の因子は、前記第1の因子および前記第2の因子を原因として前記解析対象に生じる結果を示す因子であり、
前記第2の因子は、前記解析対象の構成要素のそれぞれに対して個別に定まる因子であり、
前記第3の因子は、前記解析対象の構成要素のそれぞれに対して個別に定まる因子ではなく、前記解析対象の構成要素の集合に対して定まる因子であり、
前記第2の導出工程により導出された前記第3の因子に対する評価値が所定の条件を満たさない場合に、新たな前記解析対象に対して、前記第1の導出工程による新たな前記第2の因子の導出と、前記第2の導出工程による新たな前記第3の因子の導出とが行われ、
前記新たな解析対象における前記構成要素の状態は、前記第1の導出工程により導出された最新の前記第2の因子であることを特徴とする解析方法。
(16)
第1の因子が解析対象に与えられた場合の前記解析対象における状態を示す第2の因子を、前記解析対象が従うべき物理現象に従って導出する第1の導出工程と、
前記第1の導出工程により導出された前記第2の因子に基づいて、第3の因子を、前記解析対象が従うべき物理現象に従って導出する第2の導出工程と、
前記第2の導出工程により導出された前記第3の因子を評価した結果に基づいて、当該第3の因子に対応する前記第1の因子を決定する決定工程と、をコンピュータに実行させ、
前記第3の因子は、前記第1の因子および前記第2の因子を原因として前記解析対象に生じる結果を示す因子であり、
前記第2の因子は、前記解析対象の構成要素のそれぞれに対して個別に定まる因子であり、
前記第3の因子は、前記解析対象の構成要素のそれぞれに対して個別に定まる因子ではなく、前記解析対象の構成要素の集合に対して定まる因子であり、
前記第2の導出工程により導出された前記第3の因子に対する評価値が所定の条件を満たさない場合に、新たな前記解析対象に対して、前記第1の導出工程による新たな前記第2の因子の導出と、前記第2の導出工程による新たな前記第3の因子の導出とが行われ、
前記新たな解析対象における前記構成要素の状態は、前記第1の導出工程により導出された最新の前記第2の因子であることを特徴とするプログラム。
図1は、基本となる処理の概要を説明する図である。 図2は、S−S曲線の一例を示す図である。 図3は、第1の実施形態を示し、ミクロ組織の状態の遷移の一例を説明する図である。 図4は、第1の実施形態を示し、ミクロ組織の画像の一例を示す図である。 図5は、第1の実施形態を示し、ミクロ組織の画像の生成方法の一例を説明する図である。 図6Aは、第1の実施形態を示し、Monte Carlo法によるシミュレーションの第1の例の第1の状態を示す図である。 図6Bは、第1の実施形態を示し、Monte Carlo法によるシミュレーションの第1の例の第1の状態を示す図である。 図6Cは、第1の実施形態を示し、Monte Carlo法によるシミュレーションの第2の例の第1の状態を示す図である。 図6Dは、第1の実施形態を示し、Monte Carlo法によるシミュレーションの第2の例の第2の状態を示す図である。 図7は、第1の実施形態を示し、相変態後のミクロ組織の遷移の一例を説明する図である。 図8は、第1の実施形態を示し、相変態後のミクロ組織の画像の一例を示す図である。 図9は、第1の実施形態を示し、所望の機械特性を有するDP鋼を探索する方法の一例を説明する図である。 図10は、第1の実施形態を示し、ミクロ組織の初期画像からミクロ組織の最終画像に至る過程を示す図である。 図11Aは、第1の実施形態を示し、初期のQテーブルの一例を示す図である。 図11Bは、第1の実施形態を示し、学習後のQテーブルの一例を示す図である。 図12は、第1の実施形態を示し、学習が収束する様子の一例を示す図である。 図13は、第1の実施形態を示し、解析装置の機能的な構成の第1の例を示す図である。 図14は、第1の実施形態を示し、学習モデルを作成する際の解析装置における処理の一例を説明するフローチャートである。 図15は、第1の実施形態を示し、ミクロ組織の初期画像からミクロ組織の最終画像に至るまでの遷移の内容(行動)を推定する際の解析装置における処理の一例を説明するフローチャートである。 図16は、解析装置のハードウェアの構成の一例を示す図である。 図17は、第2の実施形態を示し、解析装置の機能的な構成の一例を示す図である。 図18は、第2の実施形態を示し、解析装置における処理の一例を概念的に示す図である。 図19は、第2の実施形態を示し、解析装置における処理の一例を説明するフローチャートである。
<<経緯>>
実施形態を説明する前に、実施形態に至った経緯について説明する。本発明者らは、解析対象において、原因となる因子と当該因子により生じる結果となる因子とを双方向に関連づけることに加えて、結果となる因子から原因となる因子を、内挿だけでなく外挿も行うことにより推定することを着想した。例えば、構造材料を設計する場合、ミクロな系における因子が原因になり、マクロな系における因子が結果になる。
ここで、ミクロな系における因子は、顕微鏡で観察することができる所定の領域の単位で定められる因子である。ミクロな系における因子は、例えば、材料を製造する際の制御因子である。このような制御因子としては、例えば、3次元のミクロ組織の形態・方位や、合金の添加量や、硬質相・軟質相の各々の配合量・形態分布・強度等が挙げられる。また、マクロな系における因子は、材料全体に対して定められる因子である。マクロな系における因子は、例えば、構造材料(全体)の機械特性である。
特許文献2、3に記載の技術のように、既存の技術では、統計学や機械学習の理論をもとに、ミクロな系における因子とマクロな系における因子との間の相関関係を定量化することに主眼をおく。このような技術では、大量で有意なデータがあれば、物理法則を用いなくても、材料の設計に資する情報を得ることができる。しかしながら、例えば、材料の場合には、データのサンプル数がたかだか数百程度である。更に、学習時に使用するデータも、画像データ、音声データ、数値データ等、様々なデータであり、決まった形式のデータではない。このため、学習を十分に行うことができない虞がある。また、前述したように、既存の技術では、内挿を行うことは可能であるが、外挿を行うことができない。
そこで、本発明者らは、逆問題解析の技術に着目した。逆問題解析では、対象とする系を支配する物理法則を偏微分方程式等によるモデルで表現する。逆問題解析では、計測された結果を引き起こしている原因である初期条件や境界条件を、当該モデルを用いて決定する。本発明者らは、逆問題解析を適用すれば、モデルを介して物理法則に従った解が得られるため、外挿を行うことが可能になると考えた。
しかしながら、逆問題解析で用いられるモデルは、通常、同一の空間階層における物理現象を合理的に記述する微分方程式である。従って、学習に使用するデータが、複数の空間階層に跨る場合には、空間階層毎に異なるモデルを設定する必要がある。このため、空間階層間の前述した因果関係を定量的に扱うことは困難である。前述したように、空間階層とは、空間を占める大きさが同程度のものが分類される階層である。空間を占める大きさが同程度であるか否かは、分類の対象によって異なる。ここでは、解析対象の構成要素のそれぞれと、解析対象の構成要素の集合(解析対象全体)は、空間を占める大きさが同程度ではないとする。
例えば、前述したミクロな系およびマクロな系は、相互に異なる空間階層に属する。この場合、同一の空間階層における物理現象とは、ミクロな系における物理現象と、マクロな系における物理現象とのそれぞれを指す。
この他、完成品および部品も相互に異なる空間階層に属する。この場合、同一の空間階層における物理現象とは、部品における物理現象と、完成品における物理現象とのそれぞれを指す。
以上のように、解析対象の構成要素のそれぞれが属する空間階層と、解析対象の構成要素の集合(解析対象全体)が属する空間階層とは異なる空間階層になる。
以上のような経緯から、本発明者らは、空間階層間の物理現象の因果関係を、物理法則に則って(物理現象を表現する数式を用いて)表現することができれば、解析対象の構成要素の集合(解析対象全体)に対して定まる因子を評価した結果から、解析対象の構成要素に関する因子を決定することができることを見出した。
<<処理の概要>>
次に、図1を参照しながら、後述する実施形態の基本となる処理の概要を説明する。
解析対象104に対して、第1の因子101が与えられる。第1の因子101は、解析対象104の構成要素のそれぞれの状態に関する因子である。第1の因子101は、例えば、解析対象104の構成要素の状態の遷移の内容を示す因子である。第1の因子101は、例えば、解析対象104の構成要素の状態を示す因子であってもよい。解析対象104は、例えば、構造材料または製品である。この場合、解析対象104は、解析対象物である。
解析装置は、第1の因子101が与えられた解析対象104の状態を遷移させて、第2の因子102を導出する。第2の因子102は、第1の因子101が解析対象104に与えられた場合の解析対象104の状態を示す因子である。ただし、第2の因子102は、解析対象104の構成要素のそれぞれに対して個別に定まる因子である。解析装置は、解析対象104が従うべき物理現象に従って、第2の因子102を導出する。第1の因子101と第2の因子102とは、解析対象104が従うべき物理現象に基づく数式によって、相互に関連付けられる。
解析装置は、第2の因子102に基づいて、第3の因子103を導出する。第3の因子103は、解析対象104の構成要素の集合(解析対象104全体)に対して定まる因子である。第3の因子103は、解析対象104の構成要素のそれぞれに対して個別に定まるものではない。このような第3の因子103は、第1の因子101および第2の因子102を原因として解析対象104に生じる結果を示す因子である。第1の因子101および第2の因子102は、同一の空間階層に属する。第1の因子101および第2の因子102と、第3の因子103は、異なる空間階層に属する。図1では、第1の因子101および第2の因子は第1の空間階層105に属し、第3の因子103は、第2の空間階層106に属する場合を例示する。
解析装置は、解析対象104が従うべき物理現象に従って、第3の因子103を導出する。第2の因子102と第3の因子103とは、解析対象104が従うべき物理現象に基づく数式によって、相互に関連付けられる。
解析装置は、第3の因子103を評価した結果に基づいて、当該第3の因子103に対応する第1の因子101を決定する。解析装置は、第3の因子103に対する評価値が所定の条件を満たさない場合、新たな解析対象104を設定する。解析装置は、新たな解析対象104に対して、第2の因子102の導出と、第3の因子103の導出とを行う。
解析装置は、新たな解析対象104を設定する際に第1の因子101を更新する。第1の因子101が、解析対象104の構成要素の状態の遷移の内容を示す因子である場合、解析装置は、第1の因子101を選択する。この場合、新たな解析対象104の構成要素の状態は、既に導出されている第2の因子102のうち、最新の第2の因子102が示すものになる。新たな解析対象104に対して、前述したようにして選択された第1の因子101が与えられる。
第1の因子101が、解析対象104の構成要素の状態を示す因子である場合、新たな解析対象104の構成要素の状態として、更新後の第1の因子101が与えられる。
解析装置は、第3の因子103に対する評価値が所定の条件を満たすまで、第1の因子101の選択・更新と、第2の因子102の導出と、第3の因子103の導出とを繰り返す。解析装置は、第3の因子103に対する評価値が所定の条件を満たす場合に、当該第3の因子103の導出のために用いられた第1の因子101を、当該第3の因子103に対応する第1の因子101として決定する。
第1の因子101が、解析対象104の構成要素の状態の遷移の内容を示す因子である場合、解析装置は、前述した繰り返し処理で得られた全ての第1の因子101を、第3の因子103に対応する第1の因子101として決定する。当該全ての第1の因子101の組合せは、当該第3の因子103を導出する方法の指針となる。
第1の因子101が、解析対象104の構成要素の状態を示す因子である場合、解析装置は、前述した繰り返し処理で得られた第1の因子101のうち、最新の第1の因子101を、第3の因子103に対応する第1の因子101として決定する。当該第1の因子101は、当該第3の因子103を導出するための指針となる。
以下に説明する実施形態では、以上のようにして逆問題を解く処理を基本として各種の処理が実行される。ここで、逆問題は、結果(第3の因子103)から当該結果の原因(第1の因子101)を決定する問題である。また、前述したように、第3の因子103と、第1の因子101は、異なる空間階層に属する。後述する実施形態で扱う逆問題は、このような異なる空間階層に属する因子を繋ぐ問題である。
<<マルコフ決定過程>>
本発明者らは、前述した知見の下、このような逆問題をマルコフ決定過程(Markov Decision Processes)の枠組みの中で解くことができることを見出した。マルコフ決定過程について説明する。尚、マルコフ決定過程自体は公知の技術で実現することができる。従って、ここでは、その概要のみを説明する。
マルコフ決定過程は、エージェント(agent)が報酬(reward)を最大にする方策(policy)を学習するものである。マルコフ決定過程は、環境(environment)の状態(state)に対してとるべき行動(action)を試行錯誤(try and error)により決定する最適化問題を扱う。
マルコフ決定過程は、以下の4つの要素により表される。尚、tは時刻を表し、0,1,2,・・・といった値を取り、NおよびKは、それぞれ状態および行動の有限集合の要素の数を表す。
状態sの有限集合 S={s,s,・・・,s
行動aの有限集合 A={a,a,・・・,a
遷移関数f(st+1|s,a
報酬関数r(s,a,st+1
遷移関数f(st+1|s,a)は、時刻tの状態sから行動aをとったときに、次の時刻t+1の状態st+1に遷移する関数または確率密度分布関数である。
報酬関数r(s,a,st+1)は、時刻tの状態sから当該時刻tの行動aをとって次の時刻t+1の状態st+1に遷移する際に得られる即時報酬、または、その期待値を表す。
そして、マルコフ決定過程では、一般に、現在の状態sに対して現在の状態sが与えられたときにエージェントのとるべき行動aを行動aの分布関数(確率密度関数)p(a|s)という形で対応させる写像πを方策πという。方策πを決定する際に用いられる目的関数ρは、以下の(1)式のように、時刻t=0から将来時刻t=tまでの割引された報酬の累積値が用いられる。
Figure 0006705570
ここで、γ∈[0,1]は割引因子(discount factor)と呼ばれる値であり、現在の報酬と未来の報酬との間における重要度の差異を表す。重要度の最も高い報酬に対しては、γとして「1」が設定され、重要度の最も低い報酬に対しては、γとして「0」が設定され、その他の報酬に対しては、重要度に応じて0超1未満の値が設定される。割引因子γの右上に表記されているtは、指数を意味する。rt+1は、時刻tの状態sから当該時刻tの行動aをとって次の時刻t+1の状態st+1に遷移する際に得られる即時報酬である。
マルコフ決定過程のゴールは、以下の(2)式のように、最大報酬を得るための最適な方策πを見つけることである。
Figure 0006705570
ここで、E[ρ|π]は、方策πをとったときの目的関数ρ(割引された報酬の累積値(以下「累積報酬」と称する))の期待値を表す。
(2)式のようにして、最適な方策πを導出する手法としては、種々の手法があるが、その一つとして、動的計画法(dynamic programming)と呼ばれるアルゴリズムがある。動的計画法では、方策πによってエージェントのとるべき行動aは決定論的に定まるものとする。動的計画法自体は公知の技術であるので、ここではその詳細な説明を省略する。
<<第1の実施形態>>
以下、第1の実施形態を説明する。
本実施形態では、解析対象がDP(Dual Phase)鋼であるとする。また、第1の因子が、DP鋼のミクロ組織の状態の遷移の内容を示す因子であるとする。また、第2の因子が、DP鋼のミクロ組織の遷移後の状態を示す因子であるとする。また、第3の因子が、DP鋼のS−S曲線であるとする。また、本実施形態では、説明を簡単にするため、DP鋼のミクロ組織に、硬質相(マルテンサイト相)および軟質相(フェライト相)以外の領域(空隙等)がないものとして説明を行う。本発明者らは、これらの因子を用いることにより、逆問題をマルコフ決定過程の枠組みの中で解くことができることを見出した。そこで、まず、これらの因子に関する説明を行う。
[S−S曲線]
第3の因子の一例であるS−S曲線について説明する。
図2は、S−S曲線の一例を示す図である。図2に示すように、S−S曲線は、応力と歪との関係を表す曲線である。図2に示す例では、S−S曲線は、真応力と真ひずみとの関係を表す。ただし、応力と歪との関係を表す曲線であれば、S−S曲線は、真応力と真ひずみとの関係を表す曲線に限定されない。S−S曲線は、DP鋼に対して引張試験または圧縮試験を行うことにより得られる。従って、S−S曲線は、DP鋼のミクロ組織の集合に対して定まる因子である。S−S曲線は、DP鋼の全体における機械特性に関する因子である。従って、S−S曲線は、DP鋼の全体に対してしか定まらない。即ち、S−S曲線は、DP鋼のミクロ組織のそれぞれに対して個別に定まる因子ではない。本実施形態では、目標となるS−S曲線201と、後述するようにして導出されるS−S曲線202との差が、前述した第3の因子に対する評価値になる。また、目標となるS−S曲線と、後述するようにして導出されるS−S曲線との差が、所定の範囲内であることが、前述した所定の条件である。以下の説明では、目標となるS−S曲線を必要に応じて、目標S−S曲線と称する。
S−S曲線は、マルコフ決定過程における報酬(reward)に対応する。また、S−S曲線を導出するための処理手順が報酬関数r(s,a,st+1)に対応する。
[均質化法]
本実施形態では、DP鋼のS−S曲線を、DP鋼に生じる物理現象に従って導出する。DP鋼のミクロ組織とS−S曲線は、異なる空間階層に属する。本実施形態では、空間階層間の物理現象の因果関係を一貫して論理的に説明する手法として均質化法を採用する場合を例に挙げて説明する。
均質化法を用いてミクロ組織の情報からS−S曲線を導出する手法の一例を説明する。
まず、DP鋼に与える外部歪(引張荷重となる外力)を設定する。そして、設定した外部歪をDP鋼に与えたときのミクロ組織の各位置xにおける応力σ(x)および歪ε(x)を弾塑性解析により導出する。ここでは、説明を簡単にするため、ミクロ組織の各位置xを、ミクロ組織の各ボクセル(の位置)xとする場合を例に挙げて説明する。
弾塑性解析では、外部歪に応じた各ボクセルの変位ut+1(x)が導出される。その後、歪と変位との関係式を用いて各ボクセルに変位ut+1(x)が生じたときの各ボクセルの歪εt+1(ut+1)(x)が導出される。更に、応力と歪の関係式を用いて各ボクセルに歪εt+1(ut+1)(x)が生じたときの各ボクセルの応力σt+1(εt+1(ut+1))(x)が導出される。
均質化法では、以下の(3)式に示す解析対象のDP鋼の歪エネルギーが最小になるように、各ボクセルにおける変位ut+1(x)が導出される。そして、導出した変位ut+1(x)から、歪εt+1(ut+1)(x)および応力σt+1(εt+1(ut+1))(x)が導出される。(3)式は、DP鋼が従うべき物理現象を表す数式の一例である。
Figure 0006705570
ここで、χt+1(x)は、位置xのボクセルにおける2値化ラベルの値である。ここでは、軟質相である場合の2値化ラベルの値χt+1(x)を「1」とする。硬質相である場合の2値化ラベルの値χt+1(x)を「0」とする。従って、位置xのボクセルが硬質相であることは、1−χt+1(x)で表される。Cは、軟質相が弾塑性変形する際の応力と歪との関係を示すコンプライアンス(テンソル)である。Cは、硬質相が弾塑性変形する際の応力と歪との関係を示すコンプライアンス(テンソル)である。ξt+1は、外部歪を表す。Ωは、解析対象のDP鋼の全領域を表す。:は、その前後のテンソル積をとることを表す。
(3)式の:の前の「(χt+1(x)C+(1−χt+1(x))C)(ξt+1+Δεt+1(u)(x))」は、外部歪ξt+1を与えたときに位置xのボクセルがu(x)だけ変位することにより当該ボクセルに生じる応力を表す。(3)式の:の後の「(ξt+1+Δεt+1(u)(x))」は、外部歪ξt+1を与えたときに位置xのボクセルがu(x)だけ変位することにより当該ボクセルに生じる歪を表す。これらのテンソル積は、位置xのボクセルにおける歪エネルギーになる。(3)式は、全てのボクセルにおける歪エネルギーを積算(積分)したものである。当該積算値が最小になるように、全ての位置xのボクセルの変位u(x)が導出される。
以上のようにして歪εt+1(ut+1)(x)および応力σt+1(εt+1(ut+1))(x)の組を導出することが、全ての位置xのボクセルについて行われる。
或る外部歪をDP鋼に与えた場合の、全ての位置xのボクセルにおける歪ε(u)(x)および応力σ(ε(u))(x)の組が導出されると、当該全ての位置xのボクセルにおけるε(u)(x)および応力σ(ε(u))(x)の代表値(例えば平均値)を導出する。これにより、或る外部歪をDP鋼に与えた場合のDP鋼の歪および応力の組が一組得られる。
以上のようにしてDP鋼の引張強さおよび均一伸びの代表値を導出することを、複数の外部歪をDP鋼に与えた場合のそれぞれについて実行する。これにより、DP鋼の歪および応力の組が複数得られる。これらの組から、応力と歪の関係式であるS−S曲線が得られる。
尚、以上のように、均質化法で導出されるのは、歪εt+1(ut+1)(x)および応力σt+1(εt+1(ut+1))(x)である。歪εt+1(ut+1)(x)および応力σt+1(εt+1(ut+1))(x)からS−S曲線が導出される。また、均質化法自体は、例えば、非特許文献2、3に記載のような公知の技術を用いることにより実現することができる。非特許文献2、3の内容を全てここに援用する。
[ミクロ組織の状態および遷移]
第2の因子の一例であるミクロ組織の状態と、第1の因子の一例であるミクロ組織の遷移の内容について説明する。
図3は、ミクロ組織の状態の遷移の一例を説明する図である。図3において、四角形は、ミクロ組織の画像を示す。図3では、63個のミクロ組織の画像0a〜62aを示す。図4は、ミクロ組織の画像の一例を示す図である。図4では、表記の都合上、63個のミクロ組織の画像0a〜62aのうち、15個のミクロ組織の画像0a〜14aのみを示す。その他のミクロ組織の画像15a〜62aの具体的な内容の表記を省略する。
ミクロ組織の画像は、環境(environment)に対応する。ミクロ組織の状態は、マルコフ決定過程における状態(state)に対応する。図3に示す例では、状態sの有限集合Sは、S={s,s,・・・,s62}になる。ミクロ組織の状態を示す情報には、例えば、結晶粒の粒界および方位と、ミクロ組織における元素濃度の分布とが含まれる。本実施形態では、状態sの有限集合Sの各状態sには、その要素として、これらの情報が含まれるものとする。本実施形態では、ミクロ組織の画像0a〜62aに、結晶粒の粒界および方位の情報と、ミクロ組織における元素濃度の分布の情報とが含まれているものとする。ミクロ組織の状態は、ミクロ組織のそれぞれに対して個別に定まる。
ミクロ組織の状態の遷移の内容には、「粗大化」、「微細化」、および「戻る」が含まれる。「粗大化」は、結晶成長が行われることを示す。「微細化」は、再結晶または相変態が行われることを示す。「戻る」は、1つ前の時刻tの状態に戻ることを示す。1つ前の時刻tの状態に対して「粗大化」された場合、「戻る」は、「微細化」することに対応する。1つ前の時刻tの状態に対して「微細化」された場合、「戻る」は、「粗大化」することに対応する。
図3および図4では、Cは、「粗大化」を示す。Mは、「微細化」を示す。Rは、「戻る」を示す。図3および図4において、Cの矢印線と対になっているRの矢印線は、「微細化」に対応する。Mの矢印線と対になっているRの矢印線は、「粗大化」に対応する。
時刻tにおいて、ミクロ組織の状態は、図3および図4に示す1つの矢印線で結ばれるとなりの状態にしか遷移しないものとする。例えば、時刻tにおいて、ミクロ組織の画像1aの状態は、ミクロ組織の画像0a、3a、4aの状態の何れか1つにしか遷移しない。例えば、時刻tにおいて、ミクロ組織の画像1aの状態は、ミクロ組織の画像3aを飛ばしてミクロ組織の画像7aの状態に遷移することはない。
ミクロ組織の画像0aの状態では、「戻る」が選択されることはない。ミクロ組織の画像0aの状態では、「粗大化」または「微細化」が選択される。ミクロ組織の画像31a〜62aの状態では、「粗大化」および「微細化」が選択されることはない。ミクロ組織の画像31a〜62aの状態では、「戻る」のみが選択される。
ミクロ組織の状態の遷移の内容は、マルコフ決定過程の行動(action)に対応する。ミクロ組織の画像0aの状態では、時刻tにおける行動aとして、「粗大化」または「微細化」が選択される。ミクロ組織の画像31a〜62aの状態では、時刻tにおける行動aとして、「戻る」のみが選択される。その他のミクロ組織の画像1a〜30aの状態では、時刻tにおける行動aとして、「粗大化」、「微細化」、または「戻る」が選択される。
このように、本実施形態では、マルコフ決定過程における時刻tに対応するものとして、ミクロ組織の状態の遷移の回数tを用いる。
図3および図4において、ミクロ組織の画像0a〜62aのうち、ミクロ組織の画像0aは、入力画像である。ミクロ組織の画像0aは、例えば、DP鋼に対して、EBSD(Electron Backscattering Diffraction)法、光学顕微鏡、またはSEM(Scanning Electron Microscope)等の公知の計測技術を用いることにより得ることができる。従って、ここでは、その詳細な説明を省略する。ミクロ組織の画像は、3次元画像でも2次元画像でもよい。
ミクロ組織の画像1a〜62aは、当該画像に向かって伸びるCの矢印線またはMの矢印線の始点に位置する画像のみに基づいて生成される。矢印線の始点は、矢印線の2つの端点のうちアローヘッドのない方の端点である。具体的には、例えば、ミクロ組織の画像1a、2aは、ミクロ組織の画像0aのみに基づいて生成される。ミクロ組織の画像3a、4aは、ミクロ組織の画像1aのみに基づいて生成される。
ミクロ組織の画像0a〜62aの状態の遷移は、DP鋼に生じる物理現象に従って行われる。本実施形態では、Pottsモデルを用いたMonte Carlo法によるシミュレーションを行うことにより、ミクロ組織の画像1a〜62aが生成される場合を例に挙げて説明する。
図5は、ミクロ組織の画像1a〜62aの生成方法の一例を説明する図である。図5において、数値1〜9は、結晶方位を示す値である。同じ数値は、結晶方位が同じであることを示す。また、図5において、線は、粒界を示す。また、数値が付されている位置は、格子点の位置である。格子点の位置は、例えば、EBSD法による測定で電子線が照射された位置に対応する。
ここでは、ミクロ組織の画像0aに基づいて、ミクロ組織の画像1a、2aを生成する場合を例に挙げて説明する。
シミュレーションは、以下の手順(A)〜(G)によって行われる。ただし、ここでは、領域が有限であると仮定する。即ち、格子点の数は有限個である。
(A) 全ての格子点の中からランダムに一つの格子点iを選択する。
(B) 格子点iにおける方位S(1≦S≦Q)とは異なる方位S’(1≦S’≦Q)をランダムに選択する。
(C) エネルギーの差ΔE(=E(S’)−E(S))を導出する。
方位SのエネルギーE(S)は、以下の(4)式で表される。
Figure 0006705570
δSiSjは、クロネッカーのデルタである。δSiSjは、S=Sなら1になり、S≠Sなら0になる。n.nは、格子点iの最近接近傍(nearest neiborhood)内の格子点を表す。Jpi,pjは、界面エネルギーの大きさを表す定数である。Jpi,pjは、0を上回る値である(Jpi,pj>0)。pは、母相(未再結晶領域)pまたは新相(再結晶領域)pを表す。Jpm,pmは、母相の結晶粒間の界面エネルギーを表す。Jpm,pn(=Jpn,pm)は、母相の結晶粒と新相の結晶粒との間の界面エネルギーを表す。Jpn,pnは、新相の結晶粒間の界面エネルギーを表す。Hは、格子点のエネルギーの大きさを表す定数である。Hは、0を上回る値である。θは、Heviside関数である。Qは、未再結晶の結晶粒の総数である。
(4)式の左辺第1項は、粒界エネルギーを表す。粒界エネルギーは、結晶粒の成長のための駆動力である。(4)式の左辺第1項は、粒界に近い格子点iであるほど、粒界エネルギーは大きくなることを示す。(4)式の左辺第2項は、格子点エネルギーを表す。格子点エネルギーは、核生成(Nucleation)のための駆動力である。格子点エネルギーは、格子点iが未再結晶領域にある場合に0を上回る値になり、格子点iが再結晶領域にある場合になる。
(4)式は、DP鋼が従うべき物理現象を表す数式の一例である。
(D) エネルギーの差ΔEが0を下回る場合(ΔE<0の場合)、格子点iの方位Sを方位S’に置き換える。エネルギーの差ΔEが0以上である場合(ΔE≧0の場合)、遷移確率W(=ΔE/kT)で格子点iの方位Sを方位S’に置き換える。ここで、kは、ボルツマン定数である。Tは、温度である。温度Tは、予め設定されるものとする。
(E) 未選択の格子点の中からランダムに一つの格子点iを選択する。
(F) 手順(E)で選択した格子点iについて、手順(B)〜(E)を行う。
(G) 手順(F)が終了した後、手順(A)および(E)で全ての格子点iが選択されるまで、手順(B)〜(D)を行う。
図6A〜図6Dは、Pottsモデルを用いたMonte Carlo法によるシミュレーションを概念的に示す図である。ここでは、界面エネルギーJpm,pm、Jpm,pn、Jpn,pm、Jpn,pnは等しいものとする(Jpm,pm=Jpm,pn=Jpn,pm=Jpn,pn=J)。また、定数Hは2J未満(H<2J)であるとする。図6A〜図6Dにおいて、グレーで示す領域は、再結晶領域(新相)を表す。その他の白の領域は、未再結晶領域(母相)を表す。また、1≦S<Qは、格子点iが母相にあることを意味するものとする。Q+1≦S<Qは、格子点iが新相にあることを意味するものとする。
図6Aでは、格子点iとして格子点601が選択されていることを示す(手順(A)を参照)。格子点601の最近接近傍n.nの範囲として範囲602が設定される。格子点601の方位Sは6である。従って、図6Bに示すように、方位S’として6とは異なる値rが選択される(手順(B)を参照)。この場合、(4)式より、E(S)はHである。E(S’)は6Jpm,pn(=6J)である。よって、エネルギーの差ΔEは、6J−Hになる(手順(C)を参照)。このエネルギーの差ΔEは、正の値(>0)である。従って、格子点601の方位Sは、遷移確率Wの確率で方位S’に置き換わる(手順(D)を参照)。
図6Cでは、格子点iとして格子点603が選択されていることを示す(手順(A)を参照)。格子点603の最近接近傍n.nの範囲として範囲604が設定される。格子点603の方位Sは4である。従って、図6Dに示すように、方位S’として4とは異なる値rが選択される(手順(B)を参照)。この場合、(4)式より、E(S)はJpm,pn+3Jpm,pn+H(=4J+H)Hである。E(S’)は6Jpm,pn(=6J)である。よって、エネルギーの差ΔEは、2J−Hになる(手順(C)を参照)。このエネルギーの差ΔEは、負の値(<0)である。従って、rの値が8である場合には、格子点603の方位Sは8に変更される(手順(D)を参照)。よって、方位が8の結晶粒が成長する。一方、rの値が8以外である場合には、格子点603の方位Sは、6および8以外の値に変更される(手順(D)を参照)。よって、核生成と共に、新相(新しい結晶粒)が生成される。
「粗大化」する場合と、「微細化」する場合とで、界面エネルギーJpm,pm、Jpm,pn、Jpn,pm、Jpn,pnおよび定数Hを異ならせて、ミクロ組織の画像0aに対して、以上のシミュレーションが行われる。そうすると、ミクロ組織の画像1a、2aが生成される。ミクロ組織の画像1a、2aを生成元のミクロ組織の画像として、以上のシミュレーションが行われることにより、ミクロ組織の画像3a〜6aが生成される。ミクロ組織の画像3a〜6aを生成元のミクロ組織の画像として、以上のシミュレーションが行われることにより、ミクロ組織の画像7a〜14aが生成される。同様に、ミクロ組織の画像15a〜30aおよびミクロ組織の画像31a〜62aが生成される。以上のように本実施形態では、ミクロ組織の画像1a〜62aを生成するための処理手順が遷移関数f(st+1|s,a)に対応する。
本実施形態では、ミクロ組織の画像0aは、硬質相を含まず軟質相のみであるものとする。従って、ミクロ組織の画像1a〜62aも、硬質相を含まず軟質相のみとなる。軟質相のみのS−S曲線は、ミクロ組織の状態によって大きく異ならない。そこで、本実施形態では、ミクロ組織の画像0a〜62aのそれぞれに対して、以上のシミュレーションを更に行うことにより、ミクロ組織の画像が、硬質相と軟質相とを含むものとする。当該ミクロ組織の画像は、相変態後のミクロ組織の画像である。本実施形態では、相変態が、オーステナイト変態であるものとする。相変態したオーステナイトの領域は、マルテンサイトのような硬質相に変化するものとする。
図7は、相変態後のミクロ組織の遷移の一例を説明する図である。図7は、図3に対応する図である。図3に示すミクロ組織の画像No(No=0a〜62a)から、図7に示すミクロ組織の画像No(No=0b〜62b)が生成される。例えば、図3に示すミクロ組織の画像0aから、図7に示すミクロ組織の画像0bが生成される。図8は、相変態後のミクロ組織の画像の一例を示す図である。図8は、図4に対応する図である。図8では、表記の都合上、63個のミクロ組織の画像0b〜62bのうち、15個のミクロ組織の画像0b〜14bのみを示す。その他のミクロ組織の画像15b〜63bの内容の表記を省略する。
図8において、黒い領域は硬質相を示す。白い領域は軟質相を示す。相変態後のミクロ組織は、2値化画像であるものとする。例えば、硬質相の領域に対応するボクセル(またはピクセル)には、当該ボクセル(またはピクセル)が軟質相および硬質相の何れであるかを示す2値化ラベルが与えられる。
図7および図8に示すミクロ組織の画像0b〜62bを生成する際には、格子点iの方位Sを示す値を変更する場合に、当該値を変更する領域において、前述したように、オーステナイト相への相変態が起こるものとし、相変態したオーステナイトは急速冷却され硬質相(マルテンサイト)になるものとする。即ち、当該値を変更する領域において、硬質相が新相(新しい結晶粒)として生成される。本実施形態では、ミクロ組織の画像0b〜62bを用いて前述したようにしてS−S曲線が導出される。ミクロ組織の画像0b〜62bに含まれる硬質相の割合が異なると、それぞれのS−S曲線を公平に評価することができない。そこで、ミクロ組織の画像0b〜62bに含まれる硬質相(マルテンサイト)の割合が同じになるようにする。例えば、ミクロ組織の画像0b〜62bが3次元画像である場合には、ミクロ組織の画像0b〜62bに含まれる硬質相の体積割合を同じにする。ミクロ組織の画像0b〜62bが2次元画像である場合には、ミクロ組織の画像0b〜62bに含まれる硬質相の面積割合を同じにする。硬質相の体積割合および面積割合として、例えば30%を採用することができる。
Pottsモデルを用いたMonte Carlo法によるシミュレーション自体は、例えば、非特許文献4に記載のような公知の技術を用いることにより実現することができる。非特許文献4の内容を全てここに援用する。
[学習モデル]
図9は、所望の機械特性を有するDP鋼を探索する方法の一例を説明する図である。
図9において、ミクロ組織の初期画像901は、例えば、図3および図4に示したミクロ組織の画像0aに対応する。ミクロ組織の初期画像901は、時刻t=0における状態sに対応する。ミクロ組織の初期画像901に対してエージェントがとる行動aを決定する方策π(s)が与えられ、当該方策に従う行動aを起こす。行動aは、「粗大化」および「微細化」の何れかである。そうすると、遷移関数f(s|s,a)により、状態sは、次の時刻t=1における状態sに遷移する。図3および図4に示す例では、遷移先のミクロ組織の画像902は、ミクロ組織の画像1aまたは2aである。遷移は、マルコフ性を満たすように行われる。従って、1つ先の時刻t+1における状態St+1の条件付き確率分布は、現在の時刻tにおける状態Sにのみ依存する。このことは、図3および図4において、ミクロ組織の画像1a〜62aが、当該画像に向かって伸びるCの矢印線またはMの矢印線の始点に位置する画像のみに基づいて生成されることに対応する。
ミクロ組織の初期画像901からミクロ組織の画像902にミクロ組織の画像が遷移すると、ミクロ組織の画像902から、相変態後のミクロ組織の画像903が生成される。ミクロ組織の画像902がミクロ組織の画像1aである場合、相変態後のミクロ組織の画像1bが生成される。相変態後のミクロ組織の画像903からS−S曲線202が導出される。
目標S−S曲線201とS−S曲線202との差が所定の範囲内であるか否かによって、報酬関数r(即時報酬)の値は異なる。本実施形態では、目標S−S曲線201とS−S曲線202との差が所定の範囲内でない場合、報酬関数r(即時報酬)の値は0とする。目標S−S曲線201とS−S曲線202との差が所定の範囲内になる場合、報酬関数r(即時報酬)の値は1とする。目標S−S曲線201をσとし、S−S曲線202をσとする。目標S−S曲線201とS−S曲線202との距離を数値化した指標をd(σ,σ)とする。当該指標として、例えば、ユークリッドノルムを用いる。目標S−S曲線201とS−S曲線202との距離に対する閾値をεとする。そうすると、報酬関数r(s,a,st+1)は、以下の(5)式で表される。
Figure 0006705570
図9に示す例では、目標S−S曲線201に対する所定の範囲を破線で示す。従って、目標S−S曲線201と、相変態後のミクロ組織の画像1bから導出されるS−S曲線202との差は所定の範囲内でない。よって、報酬関数r(s,a,s)は0になる。
その後、ミクロ組織の画像902を遷移元のミクロ組織の画像として、報酬関数r(s,a,s)を導出する。そして、報酬関数rの積算値(=r(s,a,s)+r(s,a,s))を累積報酬として導出する。
以上のようにして、目標S−S曲線201とS−S曲線202との差が所定の範囲内になるまで、マルコフ性を満たすように、遷移元のミクロ組織の画像を順次異ならせる。図9では、状態Sにおいて、目標S−S曲線201とS−S曲線202との差が所定の範囲内になることを示す。本実施形態では、このときに即時報酬(報酬関数r(sT−1,aT−1,s))は(5)式に従い、1になる。
このように、累積報酬が最大になるミクロ組織の画像を探索する。本実施形態では、即時報酬が1になるミクロ組織の画像904を探索する。従って、累積報酬が最大になるミクロ組織の画像904を探索することは、報酬関数r(st−1,at−1,s)が1になるミクロ組織の画像を探索することと同じである。尚、図9では、即時報酬が1になるミクロ組織の画像904から、相変態後のミクロ組織の画像905が生成される。
ミクロ組織の初期画像901と、即時報酬が1になるミクロ組織の画像904と、ミクロ組織の初期画像901から即時報酬が1になるミクロ組織の画像904に至るまでの行動aを、当該行動をとった順に並べた情報と、を含む情報を生成する。以下の説明では、この情報を、必要に応じて、製造工程情報と称する。
ミクロ組織の画像に対して「粗大化」および「微細化」を行うことは、熱処理工程における熱処理条件を設定することに対応する。従って、製造工程情報は、所望のS−S曲線を有するDP鋼を製造するための温度制御の条件の指針となる情報になる。例えば、ミクロ組織の初期画像901が図3に示すミクロ組織の画像0aであるとする。即時報酬が1になるミクロ組織の画像が図3に示すミクロ組織の画像46aであるとする。ミクロ組織の画像0aからミクロ組織の画像46aに至るまでに、遷移元のミクロ組織の画像が0a→1a→4a→10a→22aの順で遷移したとする。この場合、「粗大化」→「微細化」→「微細化」→「微細化」→「微細化」となるような熱処理条件とすればよいことが分かる。図10に、ミクロ組織の画像0aからミクロ組織の画像46aに至る過程を示す。このようにして方策πの1つが探索される。
本実施形態では、最適な方策を導出するために、学習モデルを用いる。当該学習モデルは、ミクロ組織の初期状態が与えられた場合に、即時報酬が1になるミクロ組織の状態を探索するためのものである。学習モデルは、強化学習を行うことにより作成される。本実施形態では、強化学習の一例としてQ学習を用いる場合を例に挙げる。
最適な方策を導出するための手順について説明する。(1)式を基に、行動価値関数Qπ(s,a)を以下の(6)式のように定義する。尚、ここでは、状態sのときに方策π(s)をとった場合の即時報酬をr(s,π(s))と表記する。また、状態sのときに方策π(s)をとる場合の遷移関数をf(s,π(s)と表記する。
Figure 0006705570
行動価値関数Qπ(s,a)を最大にする最適行動価値関数Q(s,a)を以下の(7)式のように定義する。ここで、方策の集合Mは、以下の(8)式のように定義される。
Figure 0006705570
Sは、状態sの有限集合である。図3に示す例では、状態sの数は63個である(ミクロ組織の画像0a〜62a)。即ち、状態sの有限集合S(={s,s,・・・,s})のNは63である。Aは、行動aの有限集合である。図3に示す例では、行動aの数は3個である(「粗大化」、「微細化」、「戻る」)。即ち、行動aの有限集合A(={a,a,・・・,a})のKは3である。(7)式に(6)式を代入すると、以下の(9)式が得られる。
Figure 0006705570
(9)式は、Bellman方程式と呼ばれる。ここで、s’=f(s,a)である。最適行動価値関数Qに作用する関数F:F→Fを以下の(10)式のように定義すると、(8)式のBellman方程式は、以下の(11)式のように表される。
Figure 0006705570
(11)式は、不動点Qを決定する問題である。(11)式の求解アルゴリズムとして、例えば、Mann iterationを用いることができる。この場合、以下の(12)式により、不動点に収束する。kは、最適な方策πが得られるまでの方策πの試行回数であり、正の整数である。
Figure 0006705570
(12)式では、解の探索空間が∀(s,a)である。Q学習では、以下の(13)式の関係を満たす範囲に解の探索空間が限定される。
Figure 0006705570
(13)式の条件を付与して(12)式の解を導出することによりQテーブルが作成される。Qテーブルは、状態sの有限集合Sの要素(状態s)と、行動aの有限集合Aの要素(行動a)との組(s,a)∈S×AからなるS×Aのサイズの行列である。Qテーブルの各要素には、Q値が設定される。
図11Aは、初期のQテーブルの一例を示す図である。本実施形態では、行動aは、「粗大化a」、「微細化a」、および「戻るa」である。状態sは、ミクロ組織の画像0a〜62aの状態である。従って、Qテーブルは、63行3列の行列である。図11Aにおいて、状態として付している番号は、図3に示すミクロ組織の画像0a〜62aに対応する。例えば、図11Aにおいて、状態0は、図3に示すミクロ組織の画像0aの状態に対応する。また、図3に示す例では、ミクロ組織の画像0aに対して「戻るa」を選択することができない。よって、Qテーブルの状態0(1行目)の「戻る」のQ値は0で固定される。ミクロ組織の画像31a〜62aに対して「粗大化a」および「微細化a」を選択することができない。よって、Qテーブルの状態31〜62(32行目〜61行目)の「粗大化a」および「微細化a」のQ値は0で固定される。
試行回数kが0(k=0)で、Qテーブルが初期化される。本実施形態では、0以上1以下の範囲の一様乱数により、初期のQテーブルの各要素のQ値(Q(s,a))が設定される。
試行回数k(k>0)において、試行回数k−1で導出されたQテーブルを用いる。試行回数kが1の場合、初期のQテーブルを用いる。試行回数k−1で導出されたQテーブルにおいて、Q値(Q(s’,a)、Q(s’,a)、Q(s’,a))を参照する。s’は、遷移後の状態である。本実施形態では、図3に示すように状態sが遷移するため、遷移後の状態s’は定まる。a、a、aは、行動aの有限集合Aの要素である。ここでは、aは「粗大化」を示す。aは「微細化」を示す。aは「戻る」を示す。Q値(Q(s’,a)、Q(s’,a)、Q(s’,a))は、Q値(Q(s,a)、Q(s,a)、Q(s,a))のうち最大の値に基づいて定められる。
例えば、ミクロ組織の初期画像901がミクロ組織の画像0aであるとする。状態0(1行目)のQ値(Q(0,a)、Q(0,a)、Q(0,a))の中で最大の値は、Q(0,a)である。この場合、図3より、遷移後の状態s’は、状態1(ミクロ組織の画像2a)である。従って、図11Aの状態2(3行目)のQ値(Q(2,a)、Q(2,a)、Q(2,a))を参照する。
次に、(10)式に従い、Q値(Q(s’,a)、Q(s’,a)、Q(s’,a))の中で最大のQ値をFQ(s,a)として(12)式に従い、Q値を更新する。例えば、状態0(1行目)のQ値(Q(0,a)、Q(0,a)、Q(0,a))の中で最大の値は、Q(0,a)である。この場合、状態0の次の状態は、状態0(ミクロ組織の画像0a)に対して「微細化」を行うことにより遷移する状態2(ミクロ組織の画像2a)になる。この場合、Q値(Q(0,a))が更新の対象になる。
また、Q値(Q(2,a)、Q(2,a)、Q(2,a))の中で最大の値は、Q(2,a)である。この場合、Q値(Q(2,a))をFQ(s,a)として(12)式の計算を行うことにより、試行回数k+1におけるQ値(Qk+1(0,a))が導出される。このようにして導出されたQ値にQ値(Q(0,a))の値は更新される。
以上のようにしてQテーブルのQ値を更新することを、即時報酬が1になるミクロ組織の画像が得られるまで繰り返し行う。即時報酬が1になるミクロ組織の画像が得られた場合、当該ミクロ組織の画像の状態に対応するQテーブルのQ値(Q(s,a))は、以下のようにして更新される。(10)式の右辺第1項(即時報酬r(s,a))は1とする。(10)式の右辺第2項は0とする。このようにして得られたFQ(s,a)を用いて(12)式の計算を行うことにより、Q値(Qk+1(s,a))が導出される。このようにして導出されたQ値にQ値(Q(s,a))の値は更新される。図10に示す例では、状態46(47行目)のQ値(Q(46,a)の値が更新される。
以上のようにして、即時報酬が1になるミクロ組織の画像が得られるまでQテーブルのQ値を更新することにより1回の学習(試行回数kの試行)が終了する。1回の学習が終了した時点でのQテーブルを用いて、前述したのと同じようにしてQテーブルの更新が行われ、次の学習(試行回数k+1の試行)が終了する。尚、各学習において、ミクロ組織の初期画像901は固定(図3に示す例ではミクロ組織の画像0a)される。所定の収束条件を満たすまで、このような学習を繰り返し行う。
図12は、学習が収束する様子の一例を示す図である。図12において、行動の回数は、即時報酬が1になるミクロ組織の画像が得られるまでの行動(状態の遷移)の回数である。例えば、1回目の学習では、180回程度の行動を行うことにより、即時報酬が1になるミクロ組織の画像が得られたことを示す。学習の回数が120回程度になると、行動の回数は5回に収束する。所定の収束条件として、例えば、所定の回数の学習を行っても、学習の結果(製造工程情報)が変化しないことを用いることができる。
以上のようにしてQテーブルが作成される。図11Bは、学習後のQテーブルの一例を示す図である。
[解析装置1300]
以上で、因子に関する説明を終える。本実施形態では、各因子に関する技術を用いて解析装置1300を構成する。以下、本実施形態の解析装置1300の一例を説明する。図13は、解析装置1300の機能的な構成の一例を示す図である。
<情報取得部1310>
情報取得部1310は、解析対象であるDP鋼のミクロ組織の初期画像901と、目標S−S曲線201の情報とを取得する。作成部1320に対して出力される、ミクロ組織の初期画像901および目標S−S曲線201の情報と、推定部1340に対して出力される、ミクロ組織の初期画像901および目標S−S曲線201の情報は異なる。作成部1320に対して出力される、ミクロ組織の初期画像901および目標S−S曲線201の情報は、Qテーブルを作成するためのものである。推定部1340に対して出力される、ミクロ組織の初期画像901および目標S−S曲線201の情報は、ミクロ組織の推定対象のDP鋼に対するものである。ミクロ組織の初期画像901および目標S−S曲線201の情報の取得は、例えば、外部装置との通信により行われる。
<作成部1320、記憶部1330>
作成部1320は、Qテーブルを作成する。作成部1320は、状態導出部1321、報酬導出部1322、学習部1323、目標判定部1324、決定部1325、および収束判定部1326を有する。記憶部1330には、Qテーブルが記憶される。Qテーブルは、学習モデルの一例である。ここでは、初期のQテーブルが記憶部1330に予め記憶されているものとして説明を行う。
<<状態導出部1321>>
状態導出部1321は、第1の導出部である。状態導出部1321は、処理対象のミクロ組織の画像を設定する。1回目の設定では、状態導出部1321は、情報取得部1310から出力されたミクロ組織の初期画像901を、処理対象のミクロ組織の画像として設定する。2回目以降の設定では、状態導出部1321は、直近の処理対象のミクロ組織の画像に対する遷移後のミクロ組織の画像を、処理対象のミクロ組織の画像として設定する。
状態導出部1321は、マルコフ決定過程におけるエージェントに対応する。状態導出部1321は、学習中のQテーブルを参照して、処理対象のミクロ組織の画像に対する状態の遷移の内容(行動)を導出する。これにより、処理対象のミクロ組織の画像の次の状態が定まる。ミクロ組織の画像は、逆問題における原因に対応する。状態の遷移の内容(行動)は、「粗大化」、「微細化」、および「戻る」の何れかである。本実施形態では、ミクロ組織の画像の状態が図3に示すようにして遷移することが予め定められているものとする。従って、ミクロ組織の画像0aの状態では、「戻る」が導出されることはない。ミクロ組織の画像31a〜62aの状態では、「粗大化」および「微細化」が導出されることはない。
また、本実施形態では、作成部1320においては、ミクロ組織の画像0aがミクロ組織の初期画像901として用いられるものとする。また、本実施形態では、ミクロ組織の画像0a以外のミクロ組織の画像1a〜62aは、状態導出部1321で都度導出されるものとする。ただし、ミクロ組織の画像1a〜62aは、予め導出されて記憶部1330に記憶されていてもよい。この場合、状態導出部1321は、ミクロ組織の画像1a〜62aを検索することにより、ミクロ組織の画像1a〜62aを導出する。
例えば、図11Aにおいて、状態0(1行目)のQ値(Q(0,a)、Q(0,a)、Q(0,a))の中で最大の値は、Q(0,a)である。この場合、状態0(ミクロ組織の画像0a)に対する状態の遷移の内容(行動)は、「粗大化」になる。
状態導出部1321は、以上のようにして導出した状態の遷移の内容(行動)に従って処理対象のミクロ組織の画像の状態を遷移させる。これにより、遷移後のミクロ組織の画像が導出される。状態導出部1321は、例えば、状態0(ミクロ組織の画像0a)に対して「粗大化」を行うことにより遷移する状態1(ミクロ組織の画像1a)を導出する。本実施形態では、状態導出部1321は、Pottsモデルを用いたMonte Carlo法によるシミュレーションを行うことにより、ミクロ組織の画像を導出する。
状態導出部1321は、以上のようにして導出したミクロ組織の画像から、相変態後のミクロ組織の画像を導出する。状態導出部1321は、例えば、ミクロ組織の画像1aから、相変態後のミクロ組織の画像1bを導出する。本実施形態では、相変態後のミクロ組織の画像0b〜62bは、状態導出部1321で都度導出されるものとする。ただし、相変態後のミクロ組織の画像0b〜62bは、予め導出されて記憶部1330に記憶されていてもよい。状態導出部1321は、尚、状態導出部1321は、相変態後のミクロ組織の画像0b〜62bを検索することにより、相変態後のミクロ組織の画像0b〜62bを導出する。例えば、ミクロ組織の初期画像901の相変態後のミクロ組織の画像を、ミクロ組織の初期画像901が入力された時点で導出する。本実施形態では、状態導出部1321は、Pottsモデルを用いたMonte Carlo法によるシミュレーションを行うことにより、相変態後のミクロ組織の画像を導出する。
<<報酬導出部1322>>
報酬導出部1322は、第2の導出部である。報酬導出部1322は、相変態後のミクロ組織の画像からS−S曲線を導出する。本実施形態では、報酬導出部1322は、均質化法を用いてS−S曲線202を導出する。S−S曲線は、逆問題における結果に対応する。本実施形態では、S−S曲線は、報酬導出部1322で都度導出されるものとする。ただし、S−S曲線は、予め導出されて記憶部1330に記憶されていてもよい。この場合、報酬導出部1322は、S−S曲線を検索することにより、S−S曲線を導出する。
<<学習部1323>>
学習部1323は、Qテーブルの要素のうち、処理対象のミクロ組織の画像に対応する状態(行)と、状態導出部1321により導出された状態の遷移の内容に対応する行動(列)とにより定まる要素のQ値を更新する。このとき、学習部1323は、Qテーブルの要素のうち、状態導出部1321により導出されたミクロ組織の画像に対応する状態(行)により定まる要素のQ値の最大値をFQ(s,a)として(12)式の計算を行うことにより、更新後のQ値を導出する。
例えば、状態導出部1321によりミクロ組織の画像0aからミクロ組織の画像1aが導出されたとする。また、Q値(Q(1,a)、Q(1,a)、Q(1,a))の中で最大の値は、Q(1,a)である。この場合、Q値(Q(1,a))をFQ(s,a)として(12)式の計算を行うことにより、更新後のQ値(Qk+1(0,a))が導出される。
<<目標判定部1324>>
目標判定部1324は、目標S−S曲線201と、報酬導出部1322により導出されたS−S曲線202との差が所定の範囲内であるか否かを判定する。本実施形態では、目標判定部1324は、目標S−S曲線201とS−S曲線202との距離を数値化した指標d(σ,σ)が閾値εを下回るか否かを判定する。
目標判定部1324による判定の結果、目標S−S曲線201と、報酬導出部1322により導出されたS−S曲線202との差が所定の範囲内でないとする。この場合、状態導出部1321は、状態導出部1321は、ミクロ組織の画像の遷移の回数tを更新して、処理対象のミクロ組織の画像を再設定する。前述したように、状態導出部1321は、処理対象のミクロ組織の画像の状態を遷移させたミクロ組織の画像を、処理対象のミクロ組織の画像として再設定する。例えば、ミクロ組織の画像0aからミクロ組織の画像1aが導出されたとする。この場合、状態導出部1321は、ミクロ組織の画像1aを処理対象のミクロ組織の画像として再設定する。
状態導出部1321、報酬導出部1322、学習部1323、および目標判定部1324は、目標S−S曲線201とS−S曲線202との差が所定の範囲内になるまで、再設定された処理対象のミクロ組織の画像に対して、以上の処理を繰り返し行う。
<<決定部1325>>
決定部1325は、目標判定部1324により、目標S−S曲線201とS−S曲線202との差が所定の範囲内であると判定されると起動する。決定部1325は、目標判定部1324により、目標S−S曲線201とS−S曲線202との差が所定の範囲内であると判定された時点における処理対象のミクロ組織の画像から特定されるミクロ組織の状態を、目標S−S曲線201を実現するミクロ組織の状態として決定する。以下の説明では、目標判定部1324により、目標S−S曲線201とS−S曲線202との差が所定の範囲内であると判定された時点における処理対象のミクロ組織の画像を、必要に応じて、ミクロ組織の最終画像と称する。図10に示す例では、ミクロ組織の画像46aがミクロ組織の最終画像である。
決定部1325は、目標S−S曲線201を実現する製造工程情報を生成する。前述したように、製造工程情報は、ミクロ組織の初期画像901と、ミクロ組織の最終画像と、ミクロ組織の初期画像901から、ミクロ組織の最終画像に至るまでの状態の遷移の内容(行動)を、当該遷移を行った順に並べた情報とを含む。図10に示す例では、ミクロ組織の画像0aからミクロ組織の画像46aに至るまで、「粗大化」、「微細化」、「微細化」、「微細化」をこの順で行うことを示す情報が製造工程情報になる。このように決定部1325は、ミクロ組織の初期画像901から、ミクロ組織の最終画像に至るまでの状態の遷移の内容(行動)を決定する。
<<収束判定部1326>>
収束判定部1326は、決定部1325により、ミクロ組織の最終画像が決定されると起動する。決定部1325によりミクロ組織の最終画像が決定されるタイミングで、Qテーブルの1回の学習が終了する。収束判定部1326は、所定の収束条件を満たすか否かを判定する。前述したように、所定の収束条件として、所定の回数の学習を行っても、学習の結果(製造工程情報)が変化しないことを用いることができる。所定の回数を大きくすれば、Qテーブルの信頼性が高くなる。ただし、所定の回数を大きくし過ぎると、計算時間が長くなる。所定の回数は、例えば、このような観点から定めることができる。
収束判定部1326により、所定の収束条件を満たさないと判定されたとする。この場合、状態導出部1321は、処理対象のミクロ組織の画像を、ミクロ組織の初期画像901に戻す。状態導出部1321、報酬導出部1322、学習部1323、目標判定部1324、決定部1325、および収束判定部1326は、所定の収束条件を満たすまで、以上の処理を繰り返し行う。記憶部1330に記憶されているQテーブルの更新(学習)は、収束判定部1326により所定の収束条件を満たすと判定されたタイミングで終了する。記憶部1330は、学習が終了したQテーブルを記憶する。
<推定部1340>
推定部1340は、学習後のQテーブルを用いて、ミクロ組織の初期画像901からミクロ組織の最終画像に至るまでの遷移の内容(行動)を推定する。推定部1340は、状態導出部1341、報酬導出部1342、目標判定部1343、および決定部1344を有する。
<<状態導出部1341>>
状態導出部1341は、第1の導出部である。状態導出部1341は、状態導出部1321と同じ機能を有する。従って、状態導出部1341の機能の詳細な説明を省略する。ただし、推定部1340においては、ミクロ組織の初期画像901および目標S−S曲線201の情報として、ミクロ組織の推定対象のDP鋼に対するものが用いられる。ミクロ組織の初期画像901は、ミクロ組織の画像0aに限定されない。ミクロ組織の初期画像901は、ミクロ組織の画像0a〜62aの何れであってもよい。また、状態導出部1341は、学習後のQテーブルを参照して、処理対象のミクロ組織の画像に対する状態の遷移の内容(行動)を導出する。
本実施形態では、状態導出部1341も、状態導出部1321と同様に、ミクロ組織の画像および相変態後のミクロ組織の画像を都度導出するものとする。ただし、ミクロ組織の画像および相変態後のミクロ組織の画像は、予め導出されて記憶部1330に記憶されていてもよい。状態導出部1341は、マルコフ決定過程におけるエージェントに対応する。
<<報酬導出部1342>>
報酬導出部1342は、第2の導出部である。報酬導出部1342は、報酬導出部1322と同じ機能を有する。報酬導出部1342は、相変態後のミクロ組織の画像から、均質化法を用いて、S−S曲線を導出する。本実施形態では、報酬導出部1342も、報酬導出部1322と同様に、S−S曲線を都度導出するものとする。ただし、S−S曲線は、予め導出されて記憶部1330に記憶されていてもよい。
<<目標判定部1343>>
目標判定部1343は、目標判定部1324と同じ機能を有する。目標判定部1343は、目標S−S曲線201と、報酬導出部1342により導出されたS−S曲線202との差が所定の範囲内であるか否かを判定する。
目標判定部1343よる判定の結果、目標S−S曲線201と、報酬導出部1342により導出されたS−S曲線202との差が所定の範囲内でないとする。この場合、状態導出部1341は、処理対象のミクロ組織の画像を再設定する。状態導出部1341は、状態導出部1321と同様に、直近の処理対象のミクロ組織の画像の状態を遷移させたミクロ組織の画像を、処理対象のミクロ組織の画像として再設定する。
状態導出部1341、報酬導出部1342、および目標判定部1343は、目標S−S曲線201とS−S曲線202との差が所定の範囲内になるまで、再設定された処理対象のミクロ組織の画像に対して、以上の処理を繰り返し行う。
<<決定部1344>>
決定部1344は、目標判定部1343により、目標S−S曲線201とS−S曲線202との差が所定の範囲内であると判定されると起動する。決定部1344は、決定部1325の機能と同じ機能を有する。ミクロ組織の最終画像は、目標判定部1343により、目標S−S曲線201とS−S曲線202との差が所定の範囲内であると判定された時点における処理対象のミクロ組織の画像である。
決定部1344は、目標S−S曲線201を実現する製造工程情報を導出する。前述したように、製造工程情報は、ミクロ組織の初期画像901と、ミクロ組織の最終画像と、ミクロ組織の初期画像901から、ミクロ組織の最終画像に至るまでの状態の遷移の内容(行動)を、当該遷移を行った順に並べた情報とを含む。このように決定部1325は、ミクロ組織の初期画像901から、ミクロ組織の最終画像に至るまでの状態の遷移の内容(行動)を決定する。
<出力部1350>
出力部1350は、決定部1344により製造工程情報が導出されると、当該製造工程情報を出力する。情報の出力の形態としては、例えば、コンピュータディスプレイへの表示、解析装置1300の内部または外部の記憶媒体への記憶、および外部装置への送信のうち、少なくとも1つを採用することができる。出力部1350による出力される製造工程情報は、目標S−S曲線201を実現するミクロ組織を製造するための指針となる情報になる。また、出力部1350は、製造工程情報に基づいて、製造設備を制御してもよい。
DP鋼の開発設計者または解析装置1300は、出力部1350により出力された製造工程情報に基づいて、DP鋼を製造する際の温度制御に関する製造工程を決定することができる。出力部1350により出力された製造工程情報から決定される製造工程を実現することが容易ではないでないことや、不可能なことがある。
このような場合、推定部1340に入力する目標S−S曲線201を変更することと、目標判定部1343で用いられる所定の範囲を変更することとの少なくとも何れか一方を行う。例えば、推定部1340に入力する目標S−S曲線201における応力の値を小さくする。これに加えてまたは代えて目標判定部1343で用いられる所定の範囲を大きくする。このようにして目標S−S曲線201および所定の範囲の少なくとも一方が変更された状態で、決定部1344により製造工程情報を導出し直す。このような処理を、出力部1350により出力された製造工程情報から決定される製造工程を実現することができるようになるまで繰り返す。
DP鋼は、製造設備において、製造工程情報に基づく温度制御を行うことにより製造される。これにより、目標S−S曲線201を実現するDP鋼が製造される。
[フローチャート]
次に、図14のフローチャートを参照しながら、学習モデルを作成する際の解析装置1300における処理(解析方法)の一例を説明する。
まず、ステップS1401において、情報取得部1310は、ミクロ組織の初期画像901と、目標S−S曲線201の情報とを取得する。
次に、ステップS1402において、状態導出部1321は、処理対象のミクロ組織の画像を設定する。最初のステップS1402では、状態導出部1321は、ミクロ組織の初期画像901を、処理対象のミクロ組織の画像として設定する。
次に、ステップS1403において、状態導出部1321は、学習中のQテーブルを参照して、処理対象のミクロ組織の画像に対する状態の遷移の内容(行動)を導出する。Qテーブルは、記憶部1330に記憶されている。初期のQテーブルは、一様乱数により予め設定されている。
次に、ステップS1404において、状態導出部1321は、ステップS1403で導出された遷移の内容(行動)に従って処理対象のミクロ組織の画像の状態を遷移させる。これにより、遷移後のミクロ組織(次の状態のミクロ組織)の画像が導出される。
次に、ステップS1405において、状態導出部1321は、ステップS1404で生成されたミクロ組織の画像から、相変態後のミクロ組織の画像を導出する。
次に、ステップS1406において、報酬導出部1322は、ステップS1405で導出された相変態後のミクロ組織の画像からS−S曲線を導出する。
次に、ステップ1407において、学習部1323は、Qテーブルの要素のうち、処理対象のミクロ組織の画像に対応する状態(行)と、ステップS1403で導出された状態の遷移の内容に対応する行動(列)とにより定まる要素のQ値を、(12)式に基づいて更新する。
次に、ステップS1408において、目標判定部1324は、目標S−S曲線201と、ステップS1406で導出されたS−S曲線202との差が所定の範囲内であるか否かを判定する。
この判定の結果、目標S−S曲線201とS−S曲線202との差が所定の範囲内でない場合、処理はステップS1409に進む。処理がステップS1409に進むと、状態導出部1321は、ミクロ組織の画像の遷移の回数tに「1」を加算する。そして、処理はステップS1402に戻る。ステップS1409からステップS1402に処理が戻った場合、ステップS1402において、状態導出部1321は、直近のステップS1404で導出されたミクロ組織の画像を、処理対象のミクロ組織の画像として再設定する。目標S−S曲線201とS−S曲線202との差が所定の範囲内になるまで、ステップS1403〜S1409の処理が繰り返し実行される。
ステップS1408において、目標S−S曲線201とS−S曲線202との差が所定の範囲内であると判定されると、処理はステップS1410に進む。処理がステップS1410に進むと、決定部1325は、ステップS1408において、目標S−S曲線201とS−S曲線202との差が所定の範囲内であると判定された時点における処理対象のミクロ組織の画像から特定されるミクロ組織の状態を、目標S−S曲線201を実現するミクロ組織の状態として決定する。当該ミクロ組織の画像が、ミクロ組織の最終画像である。ステップS1410の処理が実行されたタイミングでQテーブルの1回の学習が終了する。
次に、ステップS1411において、収束判定部1326は、所定の収束条件を満たすか否かを判定する。この判定の結果、所定の収束条件を満たさない場合、処理はステップS1412に進む。処理がステップS1412に進むと、ミクロ組織の画像の遷移の回数tを初期化する(t=0とする)。そして、処理はステップS1402に戻る。所定の収束条件を満たすまで、ステップS1402〜S1412の処理が繰り返し実行される。
ステップS1411において、所定の収束条件を満たすと判定されると、Qテーブルの学習が終了する。
次に、図15のフローチャートを参照しながら、ミクロ組織の初期画像901からミクロ組織の最終画像に至るまでの遷移の内容(行動)を推定する際の解析装置1300における処理(解析方法)の一例を説明する。図15のフローチャートは、図14のフローチャートが実行された後に(即ち、Qテーブルが学習された後に)、実行される。
まず、ステップS1501において、情報取得部1310は、ミクロ組織の初期画像901と、目標S−S曲線201の情報とを取得する。
次に、ステップS1502において、状態導出部1341は、処理対象のミクロ組織の画像を設定する。最初のステップS1502では、状態導出部1341は、ミクロ組織の初期画像901を、処理対象のミクロ組織の画像として設定する。
次に、ステップS1503において、状態導出部1341は、学習後のQテーブルを参照して、処理対象のミクロ組織の画像に対する状態の遷移の内容(行動)を導出する。Qテーブルは、記憶部1330に記憶されている。
次に、ステップS1504において、状態導出部1341は、ステップS1503で導出された遷移の内容(行動)に従って処理対象のミクロ組織の画像の状態を遷移させる。これにより、遷移後のミクロ組織(次の状態のミクロ組織)の画像が導出される。
次に、ステップS1505において、状態導出部1341は、ステップS1504で生成されたミクロ組織の画像から、相変態後のミクロ組織の画像を導出する。
次に、ステップS1506において、報酬導出部1342は、ステップS1505で導出された相変態後のミクロ組織の画像からS−S曲線を導出する。
次に、ステップ1507において、目標判定部1343は、目標S−S曲線201と、ステップS1506で導出されたS−S曲線202との差が所定の範囲内であるか否かを判定する。
この判定の結果、目標S−S曲線201とS−S曲線202との差が所定の範囲内でない場合、処理はステップS1508に進む。処理がステップS1509に進むと、状態導出部1341は、ミクロ組織の画像の遷移の回数tに「1」を加算する。そして、処理はステップS1502に戻る。ステップS1508からステップS1502に処理が戻った場合、ステップS1502において、状態導出部1341は、直近のステップS1504で導出されたミクロ組織の画像を、処理対象のミクロ組織の画像として再設定する。目標S−S曲線201とS−S曲線202との差が所定の範囲内になるまで、ステップS1503〜S1508の処理が繰り返し実行される。
ステップS1507において、目標S−S曲線201とS−S曲線202との差が所定の範囲内であると判定されると、処理はステップS1509に進む。処理がステップS1509に進むと、決定部1344は、ステップS1507において、目標S−S曲線201とS−S曲線202との差が所定の範囲内であると判定された時点における処理対象のミクロ組織の画像から特定されるミクロ組織の状態を、目標S−S曲線201を実現するミクロ組織の状態として決定する。当該ミクロ組織の画像が、ミクロ組織の最終画像である。そして、決定部1344は、目標S−S曲線201を実現する製造工程情報を導出する。
次に、ステップS1510において、出力部1350は、ステップS1509で導出された製造工程情報を出力する。そして、図15のフローチャートによる処理が終了する。
[ハードウェアの構成]
図16は、解析装置1300のハードウェアの構成の一例を示す図である。
図16において、解析装置1300は、CPU1601、主記憶装置1602、補助記憶装置1603、通信回路1604、信号処理回路1605、画像処理回路1606、I/F回路1607、ユーザインターフェース1608、ディスプレイ1609、およびバス1610を有する。
CPU1601は、演算装置であり、解析装置1300の全体を統括制御する。CPU1601は、主記憶装置1602をワークエリアとして用いて、補助記憶装置1603に記憶されているプログラムを実行する。図14および図15に示したフローチャートの処理は、例えば、CPU1601が、補助記憶装置1603に記憶されているプログラムを実行することにより実現される。主記憶装置1602は、データを一時的に格納する。補助記憶装置1603は、CPU1601によって実行されるプログラムの他、各種のデータを記憶する。補助記憶装置1603は、前述した図14および図15に示したフローチャートの処理に必要な情報を記憶する。
通信回路1604は、解析装置1300の外部との通信を行うための回路である。
信号処理回路1605は、通信回路1604で受信された信号や、CPU1601による制御に従って入力した信号に対し、各種の信号処理を行う。作成部1320および推定部1340は、例えば、CPU1601および信号処理回路1605を用いることによりその機能を発揮する。
画像処理回路1606は、CPU1601による制御に従って入力した信号に対し、各種の画像処理を行う。この画像処理が行われた信号は、ディスプレイ1609に出力される。
ユーザインターフェース1608は、オペレータが解析装置1300に対して指示を行う部分である。ユーザインターフェース1608は、例えば、ボタン、スイッチ、およびダイヤル等を有する。また、ユーザインターフェース1608は、ディスプレイ1609を用いたグラフィカルユーザインターフェースを有していても良い。情報取得部1310は、例えば、CPU1601、信号処理回路1605、およびユーザインターフェース1608と、CPU1601、通信回路1604、および信号処理回路1605との一方を用いることによりその機能を発揮する。
ディスプレイ1609は、画像処理回路1606から出力された信号に基づく画像を表示する。I/F回路1607は、I/F回路1607に接続される装置との間でデータのやり取りを行う。図16では、I/F回路1607に接続される装置として、ユーザインターフェース1608およびディスプレイ1609を示す。しかしながら、I/F回路1607に接続される装置は、これらに限定されない。例えば、可搬型の記憶媒体がI/F回路1607に接続されても良い。また、ユーザインターフェース1608の少なくとも一部およびディスプレイ1609は、解析装置1300の外部にあってもよい。
出力部1350は、例えば、通信回路1604および信号処理回路1605と、画像処理回路1606、I/F回路1607、およびディスプレイ1609との少なくとも何れか一方を用いることによりその機能を発揮する 。
尚、CPU1601、主記憶装置1602、補助記憶装置1603、信号処理回路1605、画像処理回路1606、およびI/F回路1607は、バス1610に接続される。これらの構成要素間の通信は、バス1610を介して行われる。また、解析装置1300のハードウェアは、前述した解析装置1300の機能を実現することができれば、図16に示すものに限定されない。
[まとめ]
以上のように本実施形態では、解析装置1300は、ミクロ組織の画像の状態の遷移の内容(行動)を導出する。解析装置1300は、当該遷移の内容に従って遷移後のミクロ組織の画像を導出する。解析装置1300は、遷移後のミクロ組織の画像を用いて、S−S曲線を導出する。解析装置1300は、S−S曲線と目標S−S曲線との差が所定の範囲内でない場合、ミクロ組織の画像の状態の遷移の内容(行動)を再導出する。解析装置1300は、S−S曲線と目標S−S曲線との差が所定の範囲内になるまで、以上の処理を繰り返す。解析装置1300は、S−S曲線と目標S−S曲線との差が所定の範囲内になった時点における遷移後のミクロ組織の画像から特定される状態を、目標S−S曲線を実現するミクロ組織の状態として決定する。
従って、空間階層間の物理現象を繋げることができる。よって、マクロな系の因子(S−S曲線)から、ミクロな系の因子(ミクロ組織の状態)を、少数のデータからDP鋼の内部に生じる物理現象に従って導出することが可能になる。よって、物理現象で結ばれる原因と結果が、異なる空間階層に属する場合に、当該結果から当該原因を正確に推定することができる。
また、本実施形態では、解析装置1300は、目標S−S曲線を実現するミクロ組織の状態を決定することを繰り返し行う処理を含む処理によって強化学習を行う。従って、強化学習により導出される遷移関数を用いる場合における内挿に相当する機能だけでなく、外挿に相当する機能も実現することができる。
また、本実施形態では、解析装置1300は、構造材料の一例であるDP鋼のミクロ組織の初期画像から、ミクロ組織の最終画像に至るまでの状態の遷移の内容(行動)を決定する。従って、ミクロ組織をどのように遷移させれば、目標S−S曲線を実現する構造材料を製造することができるのかについての指標が得られる。従って、目標S−S曲線を実現する構造材料を製造するための製造工程を導出することができる。構造材料を何度も製造し直さなくても、目標S−S曲線を実現する構造材料を製造することができる。これにより、構造材料の開発コストおよび製造コストを低減することができる。
本実施形態では、解析装置1300は、軟質相のみからなるミクロ組織の画像に対応する相変態後のミクロ組織の画像を導出する。従って、相変態後のミクロ組織の画像を容易に導出することができる。また、ミクロ組織の画像を予め用意しておくことで、硬質相の割合の変更と、相変態後のミクロ組織の画像の導出とを容易に行うことができる。
[変形例]
<第1の変形例>
本実施形態では、DP鋼の機械特性に関する因子(物理量)として、S−S曲線である場合を例に挙げて説明した。しかしながら、機械特性に関する因子は、S−S曲線に限定されない。例えば、解析対象が構造材料である場合、引張強さおよび均一伸びの少なくとも一方を機械特性に関する因子としてもよい。引張強さは、S−S曲線における最大の応力である。均一伸びは、S−S曲線における最大の応力に対応する歪である。また、0.2%耐力や全伸びを機械特性に関する因子として用いてもよい。
<第2の変形例>
本実施形態では、ミクロ組織の画像に、結晶粒の粒界および方位の情報と、ミクロ組織における元素濃度の分布の情報とが含まれているものとする場合を例に挙げて説明した。しかしながら、必ずしもこのようにする必要はない。例えば、ミクロ組織における元素濃度の分布の情報を、ミクロ組織の画像とは別個に管理してもよい。
<第3の変形例>
本実施形態では、解析対象がDP鋼である場合を例に挙げて説明した。しかしながら、解析対象は、DP鋼に限定されない。例えば、解析対象は、DP鋼以外のミクロ組織を有する材料であってもよい。DP鋼以外の鋼材や、その他の金属材料を解析対象とすることができる。また、金属材料以外の材料(例えば、半導体)であってもよい。また、材料以外であってもよい。
<第4の変形例>
本実施形態のように、軟質相のみからなるミクロ組織の画像を導出し、当該軟質相のみからなるミクロ組織の画像に対応する相変態後のミクロ組織の画像を導出するのが好ましい。しかしながら、必ずしもこのようにする必要はない。例えば、相変態後のミクロ組織の画像を予め用意してもよい。この場合、解析装置1300は、相変態後のミクロ組織の画像(ミクロ組織の画像0a〜62aではなくミクロ組織の画像0b〜62b)の遷移を探索することになる。
<第5の変形例>
本実施形態のように学習モデルを作成するのが好ましい。しかしながら、学習モデルを用いずに、状態導出部1341、報酬導出部1342、目標判定部1343、および決定部1344による処理が行われるようにしてもよい。この場合、状態導出部1341は、Qテーブルを参照しない。その代わりに、状態導出部1341は、例えば、DP鋼のミクロ組織の状態の遷移の内容(行動)の1つを、ランダムに選択することにより導出する。
<第6の変形例>
本実施形態では、作成部1320と、推定部1340とが同一の解析装置1300に含まれる解析システムを例に挙げて説明した。しかしながら、必ずしもこのようにする必要はない。作成部1320と、推定部1340は、別の解析装置に配置されていてもよい。この場合、当該解析装置が解析システムに含まれる。また、記憶部1330は、解析装置1300の外部にあってもよい。
<<第2の実施形態>>
次に、第2の実施形態を説明する。第1の実施形態では、エージェントが解析装置1300(状態導出部1321、1341)である場合を例に挙げて説明した。これに対し、本実施形態では、エージェントが人(材料設計者)である場合を例に挙げて説明する。本実施形態と第1の実施形態は、エージェントが異なることによる構成および処理が主として異なる。従って、本実施形態の説明において、第1の実施形態と同一の部分についての詳細な説明を省略する。
[解析装置1700]
本実施形態の解析装置1700の一例について説明する。本実施形態でも、第1の実施形態と同様に、解析対象がDP鋼であるとする。また、本実施形態でも、第1の実施形態と同様に、DP鋼のミクロ組織に、硬質相(マルテンサイト相)および軟質相(フェライト相)以外の領域(空隙等)がないものとして説明を行う。
図17は、解析装置1700の機能的な構成の一例を示す図である。図18は、解析装置1700における処理の一例を概念的に説明する図である。解析装置1700のハードウェアは、例えば、図16に示すもので実現することができる。
<情報取得部1701>
情報取得部1701は、解析対象であるDP鋼のミクロ組織の3次元画像を取得する。以下の説明では、DP鋼のミクロ組織の3次元画像を、必要に応じてミクロ組織3D画像と称する。ミクロ組織3D画像は、例えば、EBSD(Electron Backscattering Diffraction)やTEM(Transmission Electron Microscope)等の公知の技術を用いることにより得ることができる。従って、ここでは、その詳細な説明を省略する。尚、ミクロ組織3D画像の各ボクセルには、当該ボクセルが軟質相および硬質相の何れであるかを示す2値化ラベルが与えられている。
<状態導出部1702>
状態導出部1702は、第1の導出部である。状態導出部1702は、外部からの指示に基づいて、ミクロ組織3D画像の各ボクセルにおける2値化ラベルの値を変更する。
外部からの指示は、例えば、以下のようにして行われる。即ち、エージェント(材料設計者)は、VR(Virtual Reality)装置を用いて、VR空間におけるミクロ組織の分布(軟質相および硬質相の領域)を変更する操作を行う。VR装置は、例えば、VRヘッドマウントディスプレイおよびジェスチャー入力装置である。状態導出部1702は、当該操作の内容に合うように、ミクロ組織3D画像の各ボクセルにおける2値化ラベルの値を変更する。エージェント(材料設計者)は、例えば、DP鋼における応力集中箇所に対応するボクセルにおける2値化ラベルの値を変更することができる。
本実施形態では、図18に示すように、ミクロ組織3D画像は、環境(environment)に対応する。ミクロ組織3D画像の各ボクセルにおける2値化ラベルの値を変更することは、マルコフ決定過程における行動(action)aに対応する。また、ミクロ組織3D画像の各ボクセルにおける2値化ラベルの値は、逆問題における原因に対応する。また、ミクロ組織3D画像の各ボクセルにおける2値化ラベルの値が変更されることにより、状態(state)Sが遷移する。状態は、後述するように、各ボクセルにおける応力および歪を含む。また、本実施形態では、マルコフ決定過程における時刻tに対応するものとして、ミクロ組織の変更回数tを用いる。ここでは、ミクロ組織3D画像の各ボクセルにおける2値化ラベルの値を変更することによって、時刻t+1におけるミクロ組織3D画像の各ボクセルにおける2値化ラベルの値が得られたものとして、説明を続ける。
ミクロ組織の状態の有限集合S={s,s,・・・,s}のNは、ミクロ組織3D画像のボクセルにおける2値化ラベルの値の組み合わせの総数である。本実施形態では、ミクロ組織の状態の有限集合Sの各状態sには、その要素として、各ボクセルにおける2値化ラベルの値、応力、および歪が含まれるものとする。尚、2値化ラベルの値、応力、および歪毎に区別して状態を定義してもよい。
また、ミクロ組織の行動の有限集合A={a,a,・・・,a}のKは、ミクロ組織3D画像のボクセルにおける2値化ラベルの値の変更に関する値の組み合わせの総数である。本実施形態では、ミクロ組織の行動の有限集合Aの各行動aには、その要素として、各ボクセルにおける2値化ラベルの値の変更に関する値が含まれるものとする。変更に関する値とは、2値化ラベルの値を元のまま維持するか否かを示す値である。
状態導出部1702は、ミクロ組織3D画像の各ボクセルにおける2値化ラベルの値を変更すると、DP鋼に与える外部歪(引張荷重となる外力)を設定する。状態導出部1702は、設定した外部歪をDP鋼に与えたときのミクロ組織3D画像の各位置xにおける応力σ(x)および歪ε(x)を弾塑性解析により導出する。ここでは、説明を簡単にするため、ミクロ組織3D画像の各位置xを、ミクロ組織3D画像の各ボクセル(の位置)xとする場合を例に挙げて説明する。
以上のように本実施形態では、DP鋼をボクセルの単位で分割し(即ち、1つの分割領域を1つのボクセルとし)、分割した複数のボクセルにおける応力σ(x)および歪ε(x)を導出する場合を例に挙げて説明する。ただし、分割領域は、このような領域に限定されない。例えば、数値解析で使用するメッシュの領域を分割領域としてもよい。尚、分割領域とは、解析対象であるDP鋼を複数の領域に分割した場合の個々の領域をいう。また、本実施形態では、ミクロ組織3D画像の各ボクセルにおける2値化ラベルの値により、ミクロ組織のそれぞれの状態が定まる。本実施形態では、ミクロ組織3D画像の各ボクセルにおける2値化ラベルの値が第1の因子(金属材料の複数の分割領域のそれぞれにおけるミクロ組織に関する因子)である。
本実施形態では、状態導出部1702は、均質化法を用いて、歪εt+1(ut+1)(x)および応力σt+1(εt+1(ut+1))(x)を導出する。本実施形態でも、均質化法が、前述した空間階層間の物理現象を一貫して論理的に説明する方法論の役割を担う。均質化法は、第1の実施形態で説明したものである。
状態導出部1702は、歪εt+1(ut+1)(x)および応力σt+1(εt+1(ut+1))(x)の組を導出することを、全ての位置xのボクセルについて行う。
本実施形態では、状態導出部1702は、DP鋼に与える外部歪として所定の複数の外部歪を設定する。状態導出部1702は、それぞれの外部歪をDP鋼に与えた場合のそれぞれについて、以上のようにして歪εt+1(ut+1)(x)および応力σt+1(εt+1(ut+1))(x)の組を、全ての位置xのボクセルに対して導出する。このように本実施形態では、DP鋼に与える外部歪の設定を変更することにより、DP鋼に対して相異なる作用を施す場合を例に挙げて説明する。ここで、解析対象の状態が変更するようにしていれば、どのような作用を解析対象に施してもよい。即ち、作用とは、解析対象の状態を変更するための操作をいう。
状態導出部1702は、以上のようにして、ミクロ組織3D画像の2値化ラベルの値を変更することにより、DP鋼のミクロ組織の状態(各ボクセルxにおける歪εt+1(ut+1)(x)および応力σt+1(εt+1(ut+1))(x))を遷移させる。本実施形態では、図17に示すように、DP鋼のミクロ組織の状態(各ボクセルxにおける歪εt+1(ut+1)(x)および応力σt+1(εt+1(ut+1))(x))がマルコフ決定過程における状態および逆問題における結果に対応する。また、以上のようにしてDP鋼のミクロ組織の状態を遷移させるため、時刻tの状態sから行動aをとったときに遷移する次の時刻t+1の状態st+1は、一意に定まる。以下の説明では、この一意に定まる状態をst+1をa(s)と表記することにする。すると、遷移関数f(st+1|s,a)は、st+1がa(s)のときに1、そうでないときに0である関数となる。
状態導出部1702は、ミクロ組織3D画像の各ボクセルにおける2値化ラベルの値を変更し、ミクロ組織の変更回数tを更新する度に、以上のようにして、外部歪をDP鋼に与えた場合の、全ての位置xのボクセルにおける歪ε(u)(x)および応力σ(ε(u))(x)の組を導出する。状態導出部1702は、全ての位置xのボクセルにおける歪ε(u)(x)および応力σ(ε(u))(x)の組の導出を、所定の複数の外部歪をDP鋼に与えた場合のそれぞれについて実行する。本実施形態では、各位置x(ボクセル)における歪εt+1(ut+1)(x)および応力σt+1(εt+1(ut+1))(x)の組が第2の因子(金属材料の複数の分割領域のそれぞれにおける機械特性を示す因子)である。当該組は、ミクロ組織のそれぞれに対して個別に定まる。
<報酬導出部1703>
報酬導出部1703は、第2の導出部である。報酬導出部1703は、状態導出部1702により、或る外部歪をDP鋼に与えた場合の、全ての位置xのボクセルにおける歪ε(u)(x)および応力σ(ε(u))(x)の組が導出されると起動する。報酬導出部1703は、当該全ての位置xのボクセルにおける歪ε(u)(x)および応力σ(ε(u))(x)の代表値を導出する。代表値として、例えば、平均値が用いられる。これにより、或る外部歪をDP鋼に与えた場合のDP鋼の歪および応力の組が一組得られる。
報酬導出部1703は、以上のようにしてDP鋼の歪および応力の代表値を導出することを、所定の複数の外部歪をDP鋼に与えた場合のそれぞれについて実行する。これにより、DP鋼の歪および応力の組が複数得られる。そして、報酬導出部1703は、それらの組から、S−S曲線を導出する。
報酬導出部1703は、S−S曲線における最大の応力を、DP鋼の引張強さとして導出する。報酬導出部1703は、当該応力に対応する歪を用いて、DP鋼の均一伸びを導出する。
これにより、DP鋼のミクロ組織の状態(各位置xのボクセルにおける歪ε(u)(x)および応力σ(ε(u))(x))における、DP鋼の引張強さおよび均一伸びが導出される。
更に、報酬導出部1703は、DP鋼の引張強さおよび均一伸びに基づいて、DP鋼の穴広げ率を導出する。DP鋼の穴広げ率は、例えば、予め実験を行うことにより、DP鋼の引張強さおよび均一伸びと、DP鋼の穴広げ率との関係を示す関数を定めることで得ることができる。また、DP鋼の穴広げ率は、ニューラルネットワークを用いて、DP鋼の引張強さおよび均一伸びからDP鋼の穴広げ率を予測するモデルを作成することでも得ることができる。
報酬導出部1703は、以上のようにして、DP鋼の引張強さ、均一伸び、および穴広げ率の値として、ミクロ組織3D画像の各ボクセルにおける2値化ラベルの値が変更され、DP鋼のミクロ組織の状態が遷移した場合の値を導出する。本実施形態では、以上のようにしてDP鋼の引張強さ、均一伸び、および穴広げ率を導出するための処理手順が報酬関数r(s,a,st+1)、r(s,a,st+1)、r(s,a,st+1)に対応する。
即ち、報酬関数r(s,a,st+1)は、即時報酬がr t+1である状態がsからst+1へ遷移したときのDP鋼の引張強さの変化分(増分または減分)を導出するものとして定義される。報酬関数r(s,a,st+1)は、即時報酬がr t+1である状態がsからst+1へ遷移したときのDP鋼の均一伸びの変化分(増分または減分)を導出するものとして定義される。報酬関数r(s,a,st+1)は、即時報酬がr t+1である状態がsからst+1へ遷移したときのDP鋼の穴広げ率の変化分(増分または減分)を導出するものとして定義される。
報酬導出部1703は、ミクロ組織3D画像の各ボクセルにおける2値化ラベルの値が変更され、ミクロ組織の変更回数tが更新される度に、以上のようにして、DP鋼の引張強さ、均一伸び、および穴広げ率を導出する。DP鋼の引張強さ、均一伸び、および穴広げ率は、DP鋼の全体における機械特性に関する因子である。このように本実施形態では、DP鋼の引張強さ、均一伸び、および穴広げ率が第3の因子(金属材料の全体における機械特性に関する因子)である。DP鋼の引張強さ、均一伸び、および穴広げ率は、DP鋼のミクロ組織の集合に対して定まる因子である。DP鋼の引張強さ、均一伸び、および穴広げ率は、DP鋼の全体に対してしか定まらず、DP鋼のミクロ組織のそれぞれに対して個別に定まる因子ではない。尚、S−S曲線をテーブルとして用意してもよい。この場合、当該テーブルにおける値の補間式から、S−S曲線における最大の応力を導出することができる。当該補間式は、解析対象が従うべき物理現象を表す数式の一例である。DP鋼の引張強さおよび均一伸びとDP鋼の穴広げ率との関係を示す関数は、解析対象が従うべき物理現象を表す数式の一例である。DP鋼の穴広げ率は、数式以外のモデルを用いて導出してもよい。
<決定部1704>
報酬(例えば、引張強さおよび均一伸び)が目標範囲になることが、M回のミクロ組織の変更回数t(t=M)で得られたとすると、(1)式を使い、各報酬関数r、r、rに関する累積報酬ρ、ρ、ρを、それぞれ、以下の(14)式、(15)式、(16)式のように表す。
Figure 0006705570
ここで、割引因子γ、γ、γは、例えば、過去の実績等に基づいて報酬関数r、r、r毎に経験的に定められる。尚、γ、γ、γを全て「0」とすれば、ミクロ組織の変更回数tが1であるときの即時報酬r 、r 、r のみを採用することになる(報酬の累積は行われない)。
初期のミクロ組織の状態sに対して方策πに従う行動(各ボクセルにおける2値化ラベルの値の変更)を施して状態を変更することをM回行うことにより、得られる累積報酬の期待値E[ρ|π]は以下の(17)式のように表される。そして、(2)式により、最適な方策π(各ボクセルにおける2値化ラベルの値の最適値)が導出される。
Figure 0006705570
決定部1704は、報酬導出部1703により、DP鋼の引張強さ、均一伸び、および穴広げ率が導出されると、それぞれの累積報酬ρ、ρ、ρを導出する。決定部1704は、当該累積報酬ρ、ρ、ρに基づいて単一の累積報酬ρを導出する。通常、引張強さ、均一伸び、および穴広げ率の全ての報酬を最大にすることは困難である。そこで、累積報酬ρとして、例えば、ナッシュ均衡と呼ばれるゲーム理論における非協力ゲームの解(均衡解)を用いることができる。尚、累積報酬ρは、このようなものに限定されない。決定部1704は、例えば、累積報酬ρ、ρ、ρの積算値を、累積報酬ρとして導出してもよい。
解析装置1700は、以上のようにして決定部1704が(2)式により最適な方策π(全てのボクセルにおける2値化ラベルの値の最適値)を導出するまで、ミクロ組織3D画像の各ボクセルにおける2値化ラベルの値の変更を繰り返し行い、前述した状態導出部1702、報酬導出部1703、および決定部1704による処理を繰り返し実行する。この繰り返し処理は、例えば、前述した動的計画法を適用して、累積報酬ρ(価値関数)の前回値と今回値との差が所定の範囲内になるまで行うことができる。本実施形態では、累積報酬ρ(価値関数)が、前述した第3の因子に対する評価値になる。累積報酬ρ(価値関数)の前回値と今回値との差が所定の範囲内になることが、前述した所定の条件である。
<出力部1705>
出力部1705は、決定部1704により全てのボクセルにおける2値化ラベルの値の最適値が導出されると、そのことを示す情報を出力する。情報の出力の形態としては、例えば、コンピュータディスプレイへの表示、解析装置1700の内部または外部の記憶媒体への記憶、および外部装置への送信のうち、少なくとも1つを採用することができる。
[フローチャート]
次に、図19のフローチャートを参照しながら、解析装置1700における処理(解析方法)の一例を説明する。
まず、ステップS1901において、情報取得部1701は、ミクロ組織3D画像を取得する。
次に、ステップS1902において、状態導出部1702は、外部からの指示に基づいて、ミクロ組織3D画像の各ボクセルにおける2値化ラベルの値を変更する。
次に、ステップS1903において、状態導出部1702は、ミクロ組織の変更回数tに「1」を加算する。ミクロ組織の変更回数tの初期値は「0」である。
次に、ステップS1904において、状態導出部1702は、外部歪を設定する。
次に、ステップS1905において、状態導出部1702は、ステップS1904で設定された外部歪がDP鋼に与えられた場合の、各位置xのボクセルにおける歪ε(u)(x)および応力σ(ε(u))(x)の組を、均質化法を用いて導出する。
次に、ステップS1906において、状態導出部1702は、DP鋼に与える外部歪として所定の複数の外部歪を全て設定したか否かを判定する。この判定の結果、外部歪を全て設定していない場合、処理は、ステップS1904に戻る。そして、ステップS1904において、状態導出部1702は、新たな外部歪を設定する。ステップS1905において、状態導出部1702は、当該新たな外部歪がDP鋼に与えられた場合の、各位置xのボクセルにおける歪ε(u)(x)および応力σ(ε(u))(x)の組を、均質化法を用いて導出する。そして、外部歪を全て設定するまで、ステップS1904〜S1906の処理が繰り返し実行される。
以上のようにして、DP鋼に与える外部歪として所定の複数の外部歪がDP鋼に与えられた場合の、各位置xのボクセルにおける歪ε(u)(x)および応力σ(ε(u))(x)の組が導出されると、処理は、ステップS1907に進む。
ステップS1907において、報酬導出部1703は、ステップS1904で設定された外部歪をDP鋼に与えた場合の、全ての位置xのボクセルにおける歪ε(u)(x)および応力σ(ε(u))(x)の代表値を、ステップS1904で設定された外部歪のそれぞれについて導出し、その結果から、S−S曲線を作成する。
次に、ステップS1908において、報酬導出部1703は、S−S曲線における最大の応力を、DP鋼の引張強さとして導出する。報酬導出部1703は、S−S曲線における最大の応力に対応する歪を用いてDP鋼の均一伸びを導出する。
次に、ステップS1909において、報酬導出部1703は、ステップS1908で導出したDP鋼の引張強さおよび均一伸びに基づいて、DP鋼の穴広げ率を導出する。
次に、ステップS1910において、決定部1704は、ミクロ組織の変更回数tが「1」から現在値になるまでの間にステップS1908〜S1910で導出された、DP鋼の引張強さ、均一伸び、および穴広げ率に基づいて、それぞれの累積報酬ρ、ρ、ρを導出し、当該累積報酬ρ、ρ、ρに基づいて累積報酬ρを導出する。
次に、ステップS1911において、決定部1704は、ステップS1910で導出された累積報酬ρが所定の収束条件を満たすか否かを判定する。この判定の結果、累積報酬ρが所定の収束条件を満たさない場合、処理は、ステップS1902に戻る。そして、ステップS1902において、状態導出部1702は、ミクロ組織3D画像の各ボクセルにおける2値化ラベルの値を変更する。その後、ステップS1903〜S1910の処理により、累積報酬ρが所定の収束条件を満たすまで、ステップS1902〜S1911の処理が繰り返し実行される。
以上のようにして累積報酬ρが所定の収束条件を満たすと、処理は、ステップS1912に進む。処理がステップS1912に進むと、決定部1704は、所定の収束条件を満たしたときにステップS1902で変更された(最新の)ミクロ組織の2値化ラベルの値を、各ボクセルにおける2値化ラベルの値の最適値として決定する。
次に、ステップS1913において、出力部1705は、各ボクセルにおける2値化ラベルの値の最適値を示す情報を出力する。
そして、図19のフローチャートによる処理が終了する。
[まとめ]
以上のように本実施形態では、解析装置1700は、ミクロ組織3D画像の各ボクセルxの2値化ラベルの値(硬質相か軟質相かを示す値)が変更されると、DP鋼に外部歪を与えた場合の、各ボクセルの応力および歪を、均質化法を用いて導出し、それらの代表値を導出する。解析装置1700は、各ボクセルの応力および歪の代表値を導出することを、予め設定されている外部歪をDP鋼に与えた場合のそれぞれについて実行する。解析装置1700は、各外部歪をDP鋼に与えた場合の、各ボクセルの応力および歪の代表値から、S−S曲線を導出する。解析装置1700は、S−S曲線から、DP鋼全体の引張強さおよび均一伸びと、DP鋼全体の穴広げ率とを導出する。解析装置1700は、DP鋼全体の引張強さ、均一伸び、および穴広げ率に基づいて累積報酬を導出する。解析装置1700は、累積報酬が収束するまで、ミクロ組織3D画像の各ボクセルの2値化ラベルの値を変更して以上の処理を繰り返す。解析装置1700は、累積報酬が収束したときのミクロ組織3D画像の各ボクセルxの2値化ラベルの値を最適値として、そのことを示す情報を出力する。
従って、本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、空間階層間の物理現象を繋げることができる。よって、マクロな系の因子(DP鋼全体の引張強さ、均一伸び、および穴広げ率他)から、ミクロな系の因子(ミクロ組織形態、合金成分他)を、少数のデータからDP鋼の内部に生じる物理現象に従って導出することが可能になる。よって、物理現象で結ばれる原因と結果が、異なる空間階層に属する場合に、当該結果から当該原因を正確に推定することができる。
[変形例]
<第1の変形例>
本実施形態では、解析装置1900が、ミクロ組織3D画像の各ボクセルの相(軟質相または硬質相)を変更する場合を例に挙げて説明した。しかしながら、解析対象が金属材料である場合、変更する対象は、ミクロ組織に関する因子(物理量)であれば、どのような因子であってもよい。例えば、前述した制御因子(3次元のミクロ組織の形態・方位や、合金の添加量や、硬質相・軟質相の各々の配合量・形態分布・強度等)の少なくとも何れか1つを変更することができる。
<第2の変形例>
本実施形態では、解析装置1900が3次元画像を取得する場合を例に挙げて説明したが、2次元画像を取得してもよい。
<第3の変形例>
本実施形態では、DP鋼の機械特性に関する因子(物理量)として、引張強さおよび均一伸びを例に挙げて説明した。しかしながら、DP鋼の機械特性に関する因子は、これらに限定されず、例えば、0.2%耐力や全伸びを用いてもよい。
<第4の変形例>
本実施形態では、DP鋼の破壊特性に関する因子(物理量)として、(穴広げ性を示す物理量の一例である)穴広げ率を用いる場合を例に挙げて説明した。しかしながら、破壊特性に関する因子は、穴広げ率に限定されない。また、必ずしも穴広げ率(破壊特性を表す物理量)を導出しなくてもよい。
<第5の変形例>
前述した本実施形態の説明において、解析装置1700は、2値化ラベルの値のミクロ組織のDP鋼を製造することができるか否かを判定してもよい。例えば、解析装置1700は、製造条件と各ボクセルのミクロ組織との関係を、例えば、実験や実操業や数値解析の結果から導出しておく。解析装置1700は、この関係から、ミクロ組織3D画像の各ボクセルにおける2値化ラベルの値が製造可能であるか否かを判定する。この判定のタイミングは、状態導出部1702が、外部からの指示に基づいて、ミクロ組織3D画像の各ボクセルにおける2値化ラベルの値を変更したタイミングとすることができる。この判定のタイミングは、各ボクセルにおける2値化ラベルの値の最適値が得られたタイミングでもよい。解析装置1700は、ミクロ組織3D画像の各ボクセルにおける2値化ラベルの値が製造できないものである場合には、当該ミクロ組織3D画像の各ボクセルにおける2値化ラベルの値では製造することができないことを報知してもよい。そして、解析装置1700は、ミクロ組織3D画像の各ボクセルにおける2値化ラベルの値を変更して、本実施形態で説明した処理を行う。また、製造条件を前記価値関数の制約条件として、例えば、ラグランジュ未定乗数法により価値関数に付与し、拘束条件を考慮した最適化を行ってもよい。
<第6の変形例>
本実施形態では、解析対象がDP鋼である場合を例に挙げて説明した。しかしながら、解析対象は、DP鋼に限定されず、DP鋼以外の鋼材や、その他の金属材料を解析対象とすることができる。また、金属材料以外の材料(例えば、半導体)であってもよい。また、材料以外であってもよい。
例えば、鉄道台車であってもよい。鉄道台車の場合は、エージェント(鉄道台車の設計者)は、環境(environment)である鉄道台車の図面上に、台車部品の配置・大きさ・機能等の変更(action)を加える。解析装置は、鉄道台車が走行する際の満たすべき輪軸、台車、および車両の横振動、ヨーイング、およびローリング等を記述する運動方程式群により、前記の横振動、ヨーイング、およびローリングの変化量を状態(state)として導出する。そして、解析装置は、横振動、ヨーイング、およびローリングの変化量の少なくとも1つから、鉄道車両の安全性、乗り心地等の指標値の変化分(増分または減分)を、これらの関係を示す数式を用いて、報酬(reward)として導出して評価する。この場合、台車部品(の配置・大きさ・機能等)が設計される。尚、鉄道台車が走行する際の満たすべき輪軸、台車、および車両の横振動、ヨーイング、およびローリング等を記述する運動方程式群は、例えば、特許文献4に記載されているもので実現することができる。特許文献4の明細書および図面の内容を全てここに援用する。
また、例えば、電気機器の部品の一つである鉄心であってもよい。鉄心の場合は、エージェント(電気機器の設計者)は、環境(environment)である鉄心の3次元画像におけるボクセル内の結晶方位に変更(action)を加える。解析装置は、マックスウェルの方程式(Maxwell's equations)に基づいて当該ボクセル内の磁束密度と渦電流を(励磁波形の一周期分)状態(state)として導出する。そして、解析装置は、当該励磁波形の一周期分の磁束密度と渦電流に基づいて鉄心の鉄損に−1を乗じた量の変化分(減分または増分)を、報酬(reward)として導出して評価する。この場合、鉄心の3次元画像におけるボクセル内の結晶方位が設計される。尚、鉄心の鉄損は、鉄心の形状によっても変わるので、鉄心を構成する材料(電磁鋼板等)のみを評価せずに、鉄心として評価することが必要な場合がある。
また、状態(本実施形態ではDP鋼の相(軟質相および硬質相)に対応するもの)を観測することができない場合には、部分観測マルコフ決定過程のアルゴリズムを適用し、環境に対して行動をとった場合の状態を推定する処理を加えて、本実施形態で説明した処理を行うようにしてもよい。
<第7の変形例>
本実施形態では、VR装置を用いて、VR空間におけるミクロ組織の分布を変更する操作を行い、当該操作の内容に合うように、ミクロ組織3D画像の各ボクセルにおける2値化ラベルの値を変更することを試行錯誤的に行う場合を例に挙げて説明した。しかしながら、このようにする必要はない。例えば、変分法によってミクロ組織の分布を決定することができる。この場合、ミクロ組織の分布の与え方を相異ならせる必要がなくなる。このことは、ミクロ組織の分布以外の因子を第1の因子とした場合でも同じである。
<第8の変形例>
本実施形態においても、第1の実施形態で説明した変形例を採用することができる。
<その他の変形例>
尚、以上説明した本発明の実施形態は、コンピュータがプログラムを実行することによって実現することができる。また、前記プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体及び前記プログラム等のコンピュータプログラムプロダクトも本発明の実施形態として適用することができる。記録媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM等を用いることができる。
また、以上説明した本発明の実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
本願は、2018年3月27日に、日本国に出願された特願2018−059579号に基づき優先権を主張し、その内容の全てをここに援用する。
本発明は、物理現象に従って得られる結果の原因を推定することに利用できる。例えば、本発明は、所望の機械特性を有する構造材料のミクロ組織を推定することに利用できる。

Claims (16)

  1. 第1の因子が解析対象に与えられた場合の前記解析対象における状態を示す第2の因子を、前記解析対象が従うべき物理現象に従って導出する第1の導出手段と、
    前記第1の導出手段により導出された前記第2の因子に基づいて、第3の因子を、前記解析対象が従うべき物理現象に従って導出する第2の導出手段と、
    前記第2の導出手段により導出された前記第3の因子を評価した結果に基づいて、当該第3の因子に対応する前記第1の因子を決定する決定手段と、を有し、
    前記第3の因子は、前記第1の因子および前記第2の因子を原因として前記解析対象に生じる結果を示す因子であり、
    前記第2の因子は、前記解析対象の構成要素のそれぞれに対して個別に定まる因子であり、
    前記第3の因子は、前記解析対象の構成要素のそれぞれに対して個別に定まる因子ではなく、前記解析対象の構成要素の集合に対して定まる因子であり、
    前記第2の導出手段により導出された前記第3の因子に対する評価値が所定の条件を満たさない場合に、新たな前記解析対象に対して、前記第1の導出手段による新たな前記第2の因子の導出と、前記第2の導出手段による新たな前記第3の因子の導出とが行われ、
    前記新たな解析対象における前記構成要素の状態は、前記第1の導出手段により導出された最新の前記第2の因子であることを特徴とする解析システム。
  2. 前記第1の導出手段は、前記解析対象が従うべき物理現象に基づく数式を用いて前記第2の因子を導出することを特徴とする請求項1に記載の解析システム。
  3. 前記第2の導出手段は、前記解析対象が従うべき物理現象に基づく数式を用いて前記第3の因子を導出することを特徴とする請求項1または2に記載の解析システム。
  4. 前記決定手段は、前記第2の導出手段により導出された前記第3の因子に対する評価値が所定の条件を満たす場合に、当該第3の因子の導出のために用いられた前記第1の因子を、前記第3の因子に対応する前記第1の因子として決定することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の解析システム。
  5. 前記決定手段は、前記第2の導出手段により導出された前記第3の因子に対する評価値が所定の条件を満たす場合、当該所定の条件を満たすまでに用いられた複数の前記第1の因子を、前記第3の因子に対応する前記第1の因子として決定することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の解析システム。
  6. 初期の前記解析対象を示す情報から、前記所定の条件を満たす前記第3の因子に対応する前記複数の第1の因子を導出する学習モデルを、強化学習を行うことにより作成する作成手段を有し、
    前記作成手段は、前記第1の導出手段、および前記第2の導出手段を有することを特徴とする請求項5に記載の解析システム。
  7. 前記強化学習は、Q学習であることを特徴とする請求項6に記載の解析システム。
  8. 前記学習モデルを用いて、前記所定の条件を満たす前記第3の因子に対応する前記複数の第1の因子を推定する推定手段を有し、
    前記作成手段と、前記推定手段とのそれぞれは、前記第1の導出手段、および前記第2の導出手段を有することを特徴とする請求項6または7に記載の解析システム。
  9. 前記解析対象は、製品であり、
    前記第1の因子は、前記製品の構成要素の遷移の内容を示す因子であり、
    前記第2の因子は、前記製品の構成要素の遷移後の状態を示す因子であり、
    前記第3の因子は、前記製品の構成要素の集合に対して定まる因子であり、
    前記推定手段により推定された前記第1の因子に基づいて、前記製品の製造工程が決定され、当該製造工程を用いて前記製品が製造されることを特徴とする請求項8に記載の解析システム。
  10. 前記解析対象は、ミクロ組織を有する材料であり、
    前記第1の因子は、前記材料のミクロ組織の状態の遷移の内容を示す因子であり、
    前記第2の因子は、前記材料のミクロ組織の遷移後の状態を示す因子であり、
    前記第3の因子は、前記材料全体における機械特性に関する因子であり、
    前記推定手段により推定された前記第1の因子に基づいて、前記材料の製造工程が決定され、当該製造工程を用いて前記材料が製造されることを特徴とする請求項8または9に記載の解析システム。
  11. 前記第3の因子に対応する前記第1の因子が決定される際にマルコフ決定過程のアルゴリズムが用いられ、
    マルコフ決定過程における状態は、前記解析対象の構成要素の状態であり、
    マルコフ決定過程における行動は、前記第1の因子であり、
    マルコフ決定過程における報酬は、前記第3の因子であり、
    前記第2の因子は、前記第1の因子に従って遷移することを特徴とする請求項1〜10の何れか1項に記載の解析システム。
  12. 前記解析対象は、製品であり、
    前記第1の因子は、前記製品の構成要素の状態の遷移の内容を示す因子であり、
    前記第2の因子は、前記製品の構成要素の遷移後の状態を示す因子であり、
    前記第3の因子は、前記製品の構成要素の集合に対して定まる因子であることを特徴とする請求項1〜11の何れか1項に記載の解析システム。
  13. 前記解析対象は、ミクロ組織を有する材料であり、
    前記第1の因子は、前記材料のミクロ組織の状態の遷移の内容を示す因子であり、
    前記第2の因子は、前記材料のミクロ組織の遷移後の状態を示す因子であり、
    前記第3の因子は、前記材料全体における機械特性に関する因子であることを特徴とする請求項1〜12の何れか1項に記載の解析システム。
  14. 前記第2の導出手段は、前記第1の導出手段により導出された前記第2の因子で示される状態のミクロ組織に対して相変態が行われたミクロ組織に基づいて、前記第3の因子を導出することを特徴とする請求項13に記載の解析システム。
  15. 第1の因子が解析対象に与えられた場合の前記解析対象における状態を示す第2の因子を、前記解析対象が従うべき物理現象に従って導出する第1の導出工程と、
    前記第1の導出工程により導出された前記第2の因子に基づいて、第3の因子を、前記解析対象が従うべき物理現象に従って導出する第2の導出工程と、
    前記第2の導出工程により導出された前記第3の因子を評価した結果に基づいて、当該第3の因子に対応する前記第1の因子を決定する決定工程と、を有し、
    前記第3の因子は、前記第1の因子および前記第2の因子を原因として前記解析対象に生じる結果を示す因子であり、
    前記第2の因子は、前記解析対象の構成要素のそれぞれに対して個別に定まる因子であり、
    前記第3の因子は、前記解析対象の構成要素のそれぞれに対して個別に定まる因子ではなく、前記解析対象の構成要素の集合に対して定まる因子であり、
    前記第2の導出工程により導出された前記第3の因子に対する評価値が所定の条件を満たさない場合に、新たな前記解析対象に対して、前記第1の導出工程による新たな前記第2の因子の導出と、前記第2の導出工程による新たな前記第3の因子の導出とが行われ、
    前記新たな解析対象における前記構成要素の状態は、前記第1の導出工程により導出された最新の前記第2の因子であることを特徴とする解析方法。
  16. 第1の因子が解析対象に与えられた場合の前記解析対象における状態を示す第2の因子を、前記解析対象が従うべき物理現象に従って導出する第1の導出工程と、
    前記第1の導出工程により導出された前記第2の因子に基づいて、第3の因子を、前記解析対象が従うべき物理現象に従って導出する第2の導出工程と、
    前記第2の導出工程により導出された前記第3の因子を評価した結果に基づいて、当該第3の因子に対応する前記第1の因子を決定する決定工程と、をコンピュータに実行させ、
    前記第3の因子は、前記第1の因子および前記第2の因子を原因として前記解析対象に生じる結果を示す因子であり、
    前記第2の因子は、前記解析対象の構成要素のそれぞれに対して個別に定まる因子であり、
    前記第3の因子は、前記解析対象の構成要素のそれぞれに対して個別に定まる因子ではなく、前記解析対象の構成要素の集合に対して定まる因子であり、
    前記第2の導出工程により導出された前記第3の因子に対する評価値が所定の条件を満たさない場合に、新たな前記解析対象に対して、前記第1の導出工程による新たな前記第2の因子の導出と、前記第2の導出工程による新たな前記第3の因子の導出とが行われ、
    前記新たな解析対象における前記構成要素の状態は、前記第1の導出工程により導出された最新の前記第2の因子であることを特徴とするプログラム。
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