JP6697687B2 - 非水電解液二次電池 - Google Patents
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Description
この種の電池は、典型的には、アルミニウム箔等からなる正極集電体上に正極活物質を主成分とする正極合材層が形成された正極と、銅箔等からなる負極集電体上に負極活物質を主成分とする負極合材層が形成された負極とが、セパレータを間に介して交互に積層された形状を有する積層型あるいは捲回型の電極体を備えている。そして、電池性能をより向上させることを目的として、かかる電極体を構成する部材、例えば正極合材層や負極合材層の構成や形態の検討、改良が行われている。
その一例として、特許文献1および特許文献2には、負極活物質である黒鉛等の炭素材に加え、Al2O3、SiO2、ZrO2のような電池反応に関与しない無機化合物からなる粒状の無機フィラー(充填材)を添加して構成されたリチウムイオン二次電池用の負極合材層が開示されている。このような無機フィラーを負極合材層に添加することにより、負極合材層の機械的強度を高くすることができるとともに、電極中のイオン伝導性が向上して電池の内部抵抗(例えばハイレート使用時の抵抗上昇の度合)を低減することができる。
正極集電体上に正極活物質を含む正極合材層を有する正極と、負極集電体上に負極活物質を含む負極合材層を有する負極と、を有する電極体と、
非水電解液と、
前記電極体および非水電解液を内部に収容する電池ケースと、
前記電池ケースの内壁と前記電極体との間に配置された絶縁フィルムであって、該電池ケースと該電極体との直接的な接触を阻む絶縁フィルムと、
を備える。そして、ここで開示される非水電解液二次電池では、
前記負極合材層に電池反応に関与しない無機化合物からなる無機フィラーが含まれており、
前記絶縁フィルムは、前記電池ケース内壁に対向する側の表面と比較して、前記電極体に対向する側の表面の前記非水電解液に対する濡れ性が向上していることを特徴とする。
さらに、本構成の非水電解液二次電池では、上記絶縁フィルム(典型的には、ポリオレフィン等の合成樹脂製絶縁フィルム)の上記電極体に対向する側の表面(以下、絶縁フィルムについて「内表面」ともいう。)の上記非水電解液に対する濡れ性が、上記電池ケース内壁に対向する側の表面(以下、絶縁フィルムについて「外表面」ともいう。)よりも高い(向上している)ことを特徴とする。
本発明者は、かかる絶縁フィルムの内表面側にコロナ放電処理等の表面処理を施すことによって当該内表面側の非水電解液に対する濡れ性を外表面側よりも高めることにより、入出力特性の低下を抑制し得ることを見出した。即ち、本構成の非水電解液二次電池によると、電池の内部抵抗(例えばハイレート使用時のIV抵抗の上昇)を低減しつつ入出力特性の低下についても抑制することができる。
なお、上記の特許文献3〜4には、絶縁フィルムを備えた二次電池が記載されているが、本発明の目的や構成を開示するものではない。
正極集電体上に正極活物質を含む正極合材層を有する正極と、負極集電体上に負極活物質を含む負極合材層を有する負極とを有する電極体と、
非水電解液と、
前記電極体および非水電解液を内部に収容する電池ケースと、
前記電池ケースの内壁と前記電極体との間に配置された絶縁フィルムであって、該電池ケースと該電極体との直接的な接触を阻む絶縁フィルムと、
を備える非水電解液二次電池の製造方法である。
そして、ここで開示される製造方法では、前記負極合材層に電池反応に関与しない無機化合物からなる無機フィラーを含ませるとともに、前記絶縁フィルムとして、前記電極体に対向する側の表面にコロナ放電処理等の表面処理を施すことによって、前記電池ケース内壁に対向する側の表面と比較して、当該電極体に対向する側の表面の非水電解液に対する濡れ性を向上させた絶縁フィルムを使用することを特徴とする。
なお、本明細書において数値範囲をA〜B(ここでA,Bは任意の数値)と記載している場合は、一般的な解釈と同様であり、A以上B以下を意味するものである。
「リチウムイオン二次電池」とは、非水電解液中のリチウムイオンが電荷の移動を担う二次電池をいう。また、「電極体」とは、正極、負極、および正負極間にセパレータとして機能し得る多孔質絶縁層を含む電池の主体を成す構造体をいう。「正極活物質」または「負極活物質」は、電池反応を担う物質、具体的には、電荷担体となる化学種(リチウムイオン二次電池においてはリチウムイオン)を可逆的に吸蔵および放出可能な化合物をいう。
以下、扁平な箱型(角型)の電池ケースを備える角型の非水電解液二次電池の典型例であるリチウムイオン二次電池を例にして、本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明は、かかる実施形態に記載されたものに限定することを意図したものではない。
上記の正極合材層54を構成する材料を分散させる溶媒としては、使用するバインダの性状に応じたものであれば水性溶媒および非水性溶媒(有機溶媒)のいずれもが使用可能である。好適例として、N−メチル−2−ピロリドンが挙げられる。
特に限定するものではないが、正極活物質100質量部に対する導電材の含有量は、例えば1〜20質量部(好ましくは5〜15質量部)とすることができる。また、正極活物質100質量部に対するバインダの含有量は、例えば0.5〜10質量部とすることができる。
特に限定するものではないが、負極活物質100質量部に対するバインダの含有量は、例えば0.5〜10質量部とすることができる。
特に限定するものではないが、負極活物質100質量部に対する無機フィラーの含有量は0.1〜20質量部程度とすることが適当であり、1〜10質量部とすることがさらに好ましい。
図3に示すように、本実施形態では負極合材層64の幅b1は正極合材層54の幅a1よりも少し広い。さらにセパレータ70,72の幅c1、c2は、負極合材層64の幅b1よりも少し広い(c1&c2>b1>a1)。正極シート50と負極シート60とセパレータ70,72は、長さ方向を揃えて、正極シート50、セパレータ70、負極シート60、セパレータ72の順で重ねられている。さらに、正極シート50の正極合材層非形成部分(非塗工部)53と負極シート60の負極合材層非形成部分(非塗工部)63とは、セパレータ70,72の幅方向において互いに反対側にはみ出るように重ねられている。重ねられたシート材は、幅方向に設定された捲回軸周りに捲回されている。
また、絶縁フィルム10の厚さは、特に制限がないが、電池の体積効率の観点から、比較的薄いものが好ましい。具体的には、70μm以下であることが好ましく、60μm以下であることがより好ましく、55μm以下であることが特に好ましい。一方、フィルム強度の観点から、30μm以上であることが好ましく、40μm以上であることがより好ましく、45μm以上であることが特に好ましい。
特に限定しないが、電池ケース30の材質として、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケルめっき鋼等の金属材料、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリイミド樹脂等の樹脂材料が挙げられる。なかでも、金属材料が好ましい。
そして、蓋体34とケース本体32とは、その合わせ目32aに沿ってレーザ溶接が施されることによって密閉、封止される。
例えば、フッ素元素を有するリチウム塩の好適例として、LiPF6、LiBF4等が挙げられる。また、非水系溶媒(即ち有機溶媒)の好適例として、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)等の環状カーボネート系溶媒、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等の鎖状カーボネート系溶媒、エチルプロピオネート(EP)等のエステル系溶媒が挙げられる。これら非水系溶媒中に0.1〜5mol/L程度の濃度でリチウム塩を含有させることにより、リチウムイオン二次電池用の非水電解液を調製することができる。
種々の目的により、ガス発生剤、皮膜形成剤、分散剤、増粘剤等の添加剤を非水電解液に添加してもよい。例えば、ジフルオロリン酸リチウム(LiPO2F2)等のフルオロリン酸塩、リチウムビスオキサレートボレート(LiBOB)等のオキサレート錯体、ビニレンカーボネート等は、電池の性能向上に寄与する好適な添加剤である。また、シクロヘキシルベンゼン、ビフェニル等の過充電防止剤を用いてもよい。
以下の材料、プロセスによって、例1〜5の計5種類の試験用リチウムイオン二次電池を構築した。正極の作製は以下の手順で行った。
正極活物質としてのLiNi1/3Co1/3Mn1/3O2(LNCM)と、導電材としてのアセチレンブラック(AB)と、バインダとしてのポリフッ化ビニリデン(PVDF)とを、LNCM:AB:PVDF=91:6:3の質量比でN−メチルピロリドン(NMP)と混合し、正極合材層形成用組成物(正極ペースト)を調製した。このペーストを、長尺状のアルミニウム箔(正極集電体)の両面に帯状に塗布して乾燥、プレスすることにより、正極を作製した。
一方、上記扁平形状の捲回電極体の形状に対応する袋形状に成形された絶縁フィルムを作製した。具体的には、かかる袋状の絶縁フィルムは、予め内表面(電極体と対向する側の表面)となる面にコロナ放電処理を施し、外表面(電池ケースの内壁と対向する側の表面)よりも濡れ性を向上させておいた熱可塑性樹脂(ポリオレフィン)からなるシートを所定形状に切り取り、所定形状に折り曲げ、重なり合う面の一部を熱融着により固定することで袋状に形成したものである。平均厚みは約50μmであった。
そして、上述のとおりに作製した扁平形状の捲回電極体を、上記絶縁フィルムの開口部から袋内部に収容した。
ここで、非水電解液としては、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とをEC:DMC:EMC=30:40:30の体積比で含む混合溶媒に、支持塩としてのLiPF6を1.1mol/Lの濃度で溶解させたものを用いた。
また、上記コロナ放電処理を外表面側において実施したこと(即ち絶縁フィルムの濡れ性は、内表面よりも外表面で高くなった。)以外は、上記例1と同じ材料、プロセスによって例3に係るリチウムイオン二次電池を構築した。
また、上記コロナ放電処理を内表面側および外表面側の両方において実施したこと(即ち絶縁フィルムの濡れ性は、内表面と外表面とで同じレベルで高くなった。)以外は、上記例1と同じ材料、プロセスによって例4に係るリチウムイオン二次電池を構築した。
また、比較対象として、無機フィラーを含まない負極合材層を形成したこと以外は、上記例2と同じ材料、プロセス(即ち絶縁フィルムの濡れ性は、外表面と内表面とで同じである。)によって例5に係るリチウムイオン二次電池を構築した。
入出力特性の評価の指標として以下の出力測定を行った。具体的には、各例の電池の出力は、SOC60%の電位から2.5Vまで一定出力で放電させ、ここで、各例の電池について、それぞれ2mWから80mWまで出力を順に変化させて放電させた。そして、出力と時間との関係から5秒間の出力値を算出した。結果を表1の該当欄に示す。ここでは、例5に係る電池の出力結果を100%として、他の例1〜例4に係る電池の出力結果を相対的に%で評価した。
次に、各例に係る電池について、25℃の温度条件下においてハイレート充放電を1000サイクル繰り返す充放電サイクル試験を行い、該サイクル試験後の抵抗増加率(%)を算出した。具体的には以下のとおりである。
先ず、各電池に対して、25℃の温度条件下で、SOCが60%の状態となるまで定電流(CC)充電した。そして、測定された電圧上昇の値(V)を、対応する電流値で除してIV抵抗(mΩ)を算出し(典型的には、電流(I)−電圧(V)のプロット値の一次近似直線の傾きからIV抵抗(mΩ)を算出し)、その平均値を初期電池抵抗とした。
次に、25℃の温度条件下において、2.5Cの充電レートで240秒間の定電流充電(CC充電)を行い、その後120秒間休止し、続いて30Cの放電レートで20秒間の定電流放電(CC放電)を行い、その後120秒間休止を行う充放電を1サイクルとした。これを1000サイクルほど繰り返した試験の終了後の各電池について、上記初期電池抵抗測定と同様の方法で、充放電サイクル試験後の電池抵抗(IV抵抗)を測定した。そして、以下の式:
抵抗増加率(%)=(サイクル後のIV抵抗)÷(初期電池抵抗)×100;
から抵抗増加率(%)を算出した。結果を表1の該当欄に示す。
さらに、絶縁フィルムの内表面の濡れ性を高めた例1に係る電池では、出力値の低下も認められず、入出力特性にも優れることが確認された。このことは、濡れ性の向上により、充放電時にいったん電極体から押し出された電解液が、再度、電極体に戻りやすくなることを示している。
逆に、例2〜例4に係る電池では、出力値(入出力特性)の低下が認められた。このことは、特に限定するものではないが、以下のような原因が考えられる。即ち、絶縁フィルムの外表面(電池ケース対向面)の濡れ性を高めた例3や例4に係る電池では、濡れ性の向上によって当該絶縁フィルムが電池ケース内壁面に貼りつきやすくなり、結果として電極体と絶縁フィルムとの隙間が大きくなり電解液が電極体内部へ戻り難くなるため、出力値(入出力特性)の低下が生じると考えられる。
30 電池ケース
32 ケース本体
34 蓋体
42 正極端子
44 負極端子
50 正極
52 正極集電体
54 正極合材層
60 負極
62 負極集電体
64 負極合材層
70,72 セパレータ
80 捲回電極体
100 リチウムイオン二次電池
Claims (1)
- 正極集電体上に正極活物質を含む正極合材層を有する正極と、負極集電体上に負極活物質を含む負極合材層を有する負極とを有する電極体と、
非水電解液と、
前記電極体および非水電解液を内部に収容する電池ケースと、
前記電池ケースの内壁と前記電極体との間に配置された絶縁フィルムであって、該電池ケースと該電極体との直接的な接触を阻む絶縁フィルムと、
を備える非水電解液二次電池であって、
前記負極合材層には、電池反応に関与しない無機化合物からなる無機フィラーが含まれており、
前記絶縁フィルムは、前記電池ケース内壁に対向する側の表面と比較して、前記電極体に対向する側の表面の前記非水電解液に対する濡れ性が向上していることを特徴とする、非水電解液二次電池。
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