本発明は、自発光型の映像素子を有して装置全体の軽量化・小型化を図りつつ、映像素子の性能を維持して良好な画像形成が可能な虚像表示装置、映像素子ユニット及び映像素子ユニットの製造方法を提供することを目的とする。
本発明に係る虚像表示装置は、映像光を生じさせる発光部を含む映像素子と、映像素子を収納するケース部とを備え、ケース部は、映像素子のうち映像光を射出する側の反対側を開放させて放熱する放熱構造部を有する。
上記虚像表示装置では、映像素子が映像光を生じさせる発光部を含む自発光型の素子であり、別途の光源を要しないものであることで、映像素子の軽量化・小型化延いては装置全体の軽量化・小型化を図ることができる。さらに、ケース部が映像素子の一部を開放させて放熱する放熱構造部を有することで、映像素子の内部温度上昇を抑制し、映像素子が自発光型であっても内部温度の上昇に伴う性能劣化や寿命短縮を回避し、良好な画像形成が可能となる。
本発明の具体的な側面では、ケース部は、放熱構造部において映像素子の一部を開放させる開口を形成する一部材構成である。この場合、開口を設けて映像素子の放熱を確保した一部材構成とすることで、必要な機能を維持させつつ映像素子及びその周辺の構成を簡素小型のものとすることができる。
本発明の別の側面では、映像素子は、発光部を構成する有機EL素子を、シリコン基板上に形成し、ケース部において、放熱構造部は、シリコン基板の裏面を開放して放熱する。この場合、シリコン基板の裏面から効率的な放熱が可能となる。なお、シリコン基板の裏面を開放するに際しては、例えば裏面の全体を露出した状態とする場合の他、裏面の一部を露出させ、他の一部が別の部材と当接した状態(例えばケース部の一部が裏面に当接してシリコン基板を支持固定している)としてもよい。
本発明のさらに別の側面では、映像素子は、シリコン基板の裏面以外の端面において、ケース部に対して当接して位置決めされている。この場合、シリコン基板の端面形成におけるダイシングの精度を利用することで、精度の高い位置決めが可能になり、映像素子の他部材へのアセンブリにおいて、調整範囲を抑えることができ、装置全体としての小型化を図ることができる。
本発明のさらに別の側面では、ケース部は、映像素子を開放させる箇所以外の箇所に当接して、映像素子の収納位置を定める映像素子位置決め部を有する。この場合、映像素子の放熱を確保しつつ高精度な位置決めを行うことができる。
本発明のさらに別の側面では、映像素子位置決め部は、平面形状又は突起形状を有する。この場合、例えば作製工程において、映像素子の当節箇所を平面形状又は突起形状を有する映像素子位置決め部に突き当てることで、位置合わせが可能になる。
本発明のさらに別の側面では、映像素子のうち放熱構造部により開放された露出部分を放熱する放熱部をさらに備える。この場合、放熱部により、露出部分の放熱をさらに促すことができる。
本発明のさらに別の側面では、放熱部は、露出部分に貼り付けられる熱伝導テープである。この場合、シリコン基板の裏面から熱伝導テープを貼り付けた任意の箇所への放熱が可能となる。
本発明のさらに別の側面では、ケース部は、金属製である。この場合、ケース部での放熱性を高めることができる。
本発明のさらに別の側面では、ケース部は、映像素子のうち映像光を射出する側の面の一部を覆うマスク部と、他の光学部品に対する取り付けアライメントを行うための取付部とを有する。この場合、ケース部が不要光を遮断するマスク機能と、他の光学部品に対する取り付け時のアライメント機能とを有するものとなる。
本発明のさらに別の側面では、高熱伝導性シリコーン系接着剤又は熱伝導性エポキシ接着剤により形成され、映像素子とケース部とを固着させる接着部を有する。この場合、映像素子とケース部とをつなぐ接着部における放熱性を高めることができる。
本発明のさらに別の側面では、複数面での全反射により映像素子からの映像光を導光させる導光部材と、映像素子からの映像光を導光部材に入射させる投射光学系とをさらに備える。この場合、導光部材と投射光学系とにより映像素子からの映像光を観察者の眼前に導くことができる。
本発明に係る映像素子ユニットは、映像光を生じさせる発光部を含む映像素子と、映像素子を収納するケース部とを備え、ケース部は、映像素子のうち映像光を射出する側の反対側を開放させて放熱する放熱構造部と、映像素子を開放させる箇所以外の箇所に当接して、映像素子の収納位置を定める映像素子位置決め部とを有する。
上記映像素子ユニットでは、映像素子が映像光を生じさせる発光部を含む自発光型の素子であり、別途の光源を要しないものであることで、映像素子の軽量化・小型化延いては映像素子ユニットの軽量化・小型化を図ることができ、さらに、ケース部が映像素子の一部を開放させて放熱する放熱構造部を有することで、映像素子の内部温度上昇を抑制し、映像素子が自発光型であっても内部温度の上昇に伴う性能劣化や寿命短縮を回避し、良好な画像形成が可能となる。
本発明に係る映像素子ユニットの製造方法は、映像光を生じさせる発光部を含む映像素子と、映像素子を収納するケース部とを備え、ケース部は、映像素子のうち映像光を射出する側の反対側を開放させて放熱する放熱構造部と、映像素子を開放させる箇所以外の箇所に当接して、映像素子の収納位置を定める映像素子位置決め部とを有する映像素子ユニットの製造方法であって、ケース部の映像素子位置決め部において映像素子を固着させるための接着剤を塗布し、放熱構造部において映像素子を開放させた状態としつつ、映像素子とケース部とを位置合わせして接着剤により固着させる。
上記映像素子ユニットの製造方法では、軽量化・小型化を図りつつ内部温度の上昇に伴う性能劣化や寿命短縮を回避して良好な画像形成が可能な自発光型の映像素子ユニットの製造において、放熱構造部における高い放熱性を確保しつつ簡易かつ確実な組付けを行うことができる。
以下、図1等を参照しつつ、本発明に係る映像素子ユニットである表示装置ユニットを組み込んだ虚像表示装置の一実施形態について詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態の虚像表示装置100は、眼鏡のような外観を有するヘッドマウントディスプレイ(HMD)であり、この虚像表示装置100を装着した観察者又は使用者に対して虚像による画像光(映像光)を視認させることができるとともに、観察者に外界像をシースルーで視認又は観察させることができる。虚像表示装置100は、第1表示装置100Aと、第2表示装置100Bと、フレーム部102とを備える。
第1表示装置100A及び第2表示装置100Bは、右眼用と左眼用の虚像をそれぞれ形成する部分であり、観察者の眼前を透視可能に覆う第1及び第2光学部材101a,101bと、第1及び第2像形成本体部105a,105bとをそれぞれ備える。第1及び第2像形成本体部105a,105bについては、後述するが、表示装置(映像素子)や投射レンズ等の像形成のための光学系やこれらの光学系を収納する部材等でそれぞれ構成されている。なお、表示装置(映像素子)や投射レンズ等は、カバー状の外装部材105dにより覆われることで、支持・収納されている。第1及び第2光学部材101a,101bは、第1及び第2像形成本体部105a,105bで形成される映像光を導光させるとともに外界光と映像光とを重複して視認させる導光部であり、導光装置を構成している。以下、第1光学部材101aまたは第2光学部材101bを導光装置20ともする。なお、第1表示装置100A及び第2表示装置100Bは、単独でも虚像表示装置として機能する。
フレーム部102は、平面視でU字状に折れ曲がった細長い部材であり、金属製の一体部品である。ここでは一例として、フレーム部102は、マグネシウム合金で構成されている、すなわち、フレーム部102は、金属製の一体部品であるマグネシウムフレームを本体部分102pとして構成されている。また、フレーム部102は、図示のように、第1光学部材101aと第2光学部材101b(一対の導光部である導光装置20)との双方に接続して設けられる肉厚構造の中央部102aと、中央部102aから第1及び第2光学部材101a,101bに沿って延び、さらに、U字状に折れ曲がった箇所を形成する支持体102bとを有している。
中央部102aは、第1及び第2光学部材101a,101bの先端側を挟持することにより、これらの相対的位置を固定している。これに加えて、支持体102bは、U字状に折れ曲がる部分である第1及び第2周辺部102c,102dを形成し、第1及び第2周辺部102c,102dにおいて第1及び第2光学部材101a,101bとそれぞれ接続する(組み付けられている)ことで、互いの固定をさらに強固なものとしている。
なお、フレーム部102の左右両端から後方に延びるつる部分であるテンプル104が設けられており、観察者の耳やこめかみ等に当接させ支持するものにできる。また、第1及び第2像形成本体部105a,105bは、フレーム部102からテンプル104の部分に付加されているものとしてもよい。
以下、図2を参照して、虚像表示装置100による映像光の導光をするための構造等についての一例を概念的に説明する。なお、映像光の導光を行うための装置は、既述のように、第1表示装置100A及び第2表示装置100B(図1等参照)であるが、第1表示装置100A及び第2表示装置100Bとは、左右対称で同等の構造を有するため、第1表示装置100Aについてのみ説明し、第2表示装置100Bについては説明を省略する。図2に示すように、第1表示装置100Aは、映像光を形成する画像表示装置80と、鏡筒部に収納される結像用の投射レンズ30と、画像表示装置80及び投射レンズ30を経た映像光を導光する導光装置20(第1光学部材101a)と、を備える。導光装置20は、導光及び透視用の導光部材10と、透視用の光透過部材50とで構成されている。
画像表示装置80は、例えば有機EL等の自発光型の素子構成される映像素子(映像表示素子)とすることができる。また、例えば透過型の空間光変調装置である映像表示素子(映像素子)のほか、映像表示素子へ照明光を射出するバックライトである照明装置(不図示)や動作を制御する駆動制御部(不図示)を有する構成としてもよい。詳しくは図3等を参照して後述するが、本実施形態において、映像素子である画像表示装置80は、ケース部に収納されユニット化(モジュール化)した構成であることで、投射レンズ30へのアライメントがなされるものとなっている。また、画像表示装置(映像素子)80がケース部に収納されユニット化(モジュール化)されたものを表示装置ユニット(または映像素子ユニット)と呼ぶものとする。
投射レンズ30は、構成要素として、例えば入射側光軸AXに沿って並ぶ複数(例えば3つ)の光学素子(レンズ)を備える投射光学系であり、これらの光学素子が、鏡筒部39(図3等参照)によって収納・支持されている。なお、当該光学素子は、例えば非軸対称な非球面(非軸対称非球面)と軸対称な非球面(軸対称非球面)との双方を含む非球面レンズで構成することで、導光装置20を構成する導光部材10の一部と協働して導光部材10の内部に表示像に対応する中間像を形成するものとすることができる。投射レンズ30は、画像表示装置80で形成された映像光を導光装置20に向けて投射し入射させる。
導光装置20は、既述のように、導光及び透視用の導光部材10と、透視用の光透過部材50とで構成されている。導光部材10は、プリズム型の導光装置20の一部であり、一体の部材であるが、光射出側の第1導光部分11と光入射側の第2導光部分12とに分けて捉えることができる。光透過部材50は、導光部材10の透視機能を補助する部材(補助光学ブロック)であり、導光部材10と一体的に固定され1つの導光装置20となっている。導光装置20は、例えば鏡筒部39(図3等参照)にネジ止めされることにより、投射レンズ30に対して精度よく位置決め固定されている。
導光部材10は、光学的な機能を有する側面として、第1〜第5面S11〜S15を有している。これらのうち、第1面S11と第4面S14とが連続的に隣接し、第3面S13と第5面S15とが連続的に隣接する。また、第1面S11と第3面S13との間に第2面S12が配置されている。第2面S12の表面には、ハーフミラー層が付随して設けられている。このハーフミラー層は、光透過性を有する反射膜(すなわち半透過反射膜)であり、金属反射膜や誘電体多層膜を成膜することにより形成され映像光に対する反射率が適宜設定されている。
以下、図2を参照して映像光(ここでは映像光GLとする。)の光路について概略説明する。導光部材10は、投射レンズ30から映像光GLを入射させるとともに第1〜第5面S11〜S15での反射等により観察者の眼に向けて導光する。具体的には、投射レンズ30からの映像光GLは、まず、第4面S14に入射して第5面S15で反射され、第4面S14に内側から再度入射して全反射され、第3面S13に入射して全反射され、第1面S11に入射して全反射される。第1面S11で全反射された映像光GLは、第2面S12に入射し、第2面S12に設けたハーフミラー層を部分的に透過しつつも部分的に反射されて第1面S11に再度入射して通過する。第1面S11を通過した映像光GLは、観察者の眼又はその等価位置に略平行光束として入射する。つまり、観察者は、虚像としての映像光により画像を観察することになる。
光透過部材50は、既述のように導光部材10と一体的に固定され1つの導光装置20となっており、導光部材10の透視機能を補助する部材(補助光学ブロック)である。光透過部材50は、光学的な機能を有する側面として、第1透過面S51と、第2透過面S52と、第3透過面S53とを有する。第2透過面S52は、第1透過面S51と第3透過面S53との間に配置されている。第1透過面S51は、導光部材10の第1面S11を延長した面上にあり、第2透過面S52は、第2面S12に対して接合され一体化されている曲面であり、第3透過面S53は、導光部材10の第3面S13を延長した面上にある。
導光装置20は、上述したように導光部材10により観察者に映像光を視認させるとともに、導光部材10と光透過部材50との協働により観察者に歪みの少ない外界像を観察させるものとなっている。すなわち、視認させるべき外界像を構成する成分光としての外界光のうち、導光部材10の第2面S12よりも+X側に入射するものは、第1導光部分11の第3面S13と第1面S11とを通過するが、この際、第3面S13と第1面S11とが互いに略平行な平面(視度略0)となっていることで、収差等をほとんど生じない。また、外界光のうち、導光部材10の第2面S12よりも−X側に入射するもの、つまり、光透過部材50に入射したものは、これに設けた第3透過面S53と第1透過面S51とを通過する際に、第3透過面S53と第1透過面S51とが互いに略平行な平面となっていることで、収差等を生じない。さらに、外界光のうち、導光部材10の第2面S12に対応する光透過部材50に入射するものは、第3透過面S53と第1面S11とを通過する際に、第3透過面S53と第1面S11とが互いに略平行な平面となっていることで、収差等をほとんど生じない。以上により、観察者は、光透過部材50越しに歪みのない外界像を観察することになる。
上記のような構成は、第2表示装置100B(図1等参照)においても同様となっている。これにより、左右の眼にそれぞれ対応した画像をそれぞれ形成することが可能となっている。
以下、図3等を参照して、画像表示装置(映像素子)80を含む映像素子ユニットである表示装置ユニットDUについて説明する。なお、図3は、表示装置ユニットDUの投射レンズ30(鏡筒部39)への組付けの様子を示す斜視図である。なお、第1表示装置100Aと第2表示装置100Bとにおいて、表示装置ユニットDUは、左右対称で同等の構造を有するため、図3及び図4では、左側のみについて図示及び説明をし、右側については説明等を省略する。
図3に示すように、表示装置ユニットDUは、画像表示装置(映像素子)80をケース部88に収納してユニット化(モジュール化)して構成されるものである。言い換えると、画像表示装置80は、筐体状のケース部88の内部に嵌合によって収納され、移動しないように保持されている。特に、本実施形態では、図示のように、ケース部88は、放熱構造部88aを設けていることにより、画像表示装置80のうち映像光を射出する側の反対側を開放させて露出させた状態で、画像表示装置80を支持・固定するものとなっている。さらに、本実施形態では、図4に示すように、画像表示装置80の裏側部分のうちケース部88から露出させた部分に、例えば熱伝導テープを直接貼り付けて構成される放熱部DPを設けることで、画像表示装置80の放熱を促進させるものとしている。なお、図示の例では、熱伝導テープで構成される放熱部DPは、画像表示装置80から鏡筒部39更には支持フレームであるフレーム部102にかけて延びるように貼り付けられている。
ここで、上記のようないわゆる自発光型の画像表示装置(映像素子)80を、HMDに適用して高輝度な画像を形成させようとする場合、パネル基板内部で発光源を有しさらに駆動用ドライバーICや電源素子などを内蔵するといった構造となる。このため、内部温度の上昇が問題となりやすい。特に、本実施形態のように画像表示装置(映像素子)80のパネル部分に有機EL(OLED)パネルを適用する場合、その特性として内部温度の上昇に伴う性能劣化や寿命短縮が著しくなるおそれがある。
本実施形態では、上記問題に対応すべく、表示装置ユニット(映像素子ユニット)DUの構造において、特に、ケース部88の放熱構造部88aにおいて、画像表示装置80を構成するシリコン基板SSの一部を露出した状態とすることで、熱伝導テープ等で構成される放熱部DP(図4参照)による効率的な放熱を可能とし、さらに、画像表示装置80のシリコン基板SSの端面を利用してケース部88と画像表示装置80との組付け位置精度の向上を図る構造を有するものとなっている。
以下、図5等を参照して、表示装置ユニット(映像素子ユニット)DUや、表示装置ユニットDUを構成するケース部88及び画像表示装置80の構造の詳細について説明する。
まず、図5(A)、5(B)、6(A)〜6(C)、図7(A)及び7(B)を参照して、表示装置ユニットDUを構成する画像表示装置80及びケース部88のうち、画像表示装置80の構造について説明する。図示のように、画像表示装置80は、ケース部88に収納される矩形の板形状の本体部分80aと、本体部分80aから接続されて延びるFPC(Flexible Printed Circuits)部80fとを有する。このうち、本体部分80aは、図7(A)に示すように、各種回路等が配置されるとともに本体部分80aの外形を形作るシリコン基板SSと、有機EL材料を含んで構成される有機EL素子であって映像光となるべきカラーの光を発生させる発光部80kと、シリコン基板SSと協働して発光部80kを密閉する封止用の保護ガラスGGとを備える。画像表示装置80は、FPC部80fから受けた駆動信号に従い発光動作を行うことで、保護ガラスGG側すなわち+z側へ向けて映像光を射出させる。また、画像表示装置80は、図示のように、また既述のように、本体部分80aの一部が露出した状態でケース部88に収納されている。より具体的には、画像表示装置80は、映像光を射出する側の反対側に配置されるシリコン基板SSの裏面SSrの全体を露出した状態で支持・固定されている。
ここで、本実施形態では、画像表示装置80の構成に関して、有機EL(OLED)を搭載させた自発光型の素子基板としてシリコン(Si)基板を採用している。これにより、まず、上述した放熱に対して高い熱伝導性をもたせることができ、高効率な放熱が可能となっている。さらに、発光素子を構成するための回路基板作成において精緻な構成のもの、すなわちより微細な構造のもの(例えば数ミクロン単位)の回路形成が可能となる。さらに、シリコン基板が画像表示装置80の外形を形成するものとなっていることで、シリコンのダイシングにおける精度の高さ(例えば製造誤差数十μ以内)を利用して、シリコン基板の各端面を高精度に切り出して、画像表示装置80をケース部88に収納する際の位置決めに利用することで、ケース部88に対する位置精度を(例えば保護ガラスGGの面等と比較してはるかに)、高精度のものとすることができる。また、ケース部88は、後述するように、画像表示装置80を内蔵した表示装置ユニット(映像素子ユニット)DUを他の光学部材(本実施形態では投射レンズ30を収納する鏡筒部39)とのアライメントさせるための部材でもあるが、ユニット内部において上記精度の高さを維持することで、結果的に投射レンズ30に対する画像表示装置80の位置精度を高い状態に保つことができる。
次に、表示装置ユニットDUを構成する画像表示装置80及びケース部88のうち、ケース部88の構造について説明する。図示のように(例えば図7(B)参照)、ケース部88は、中央部分に貫通孔を有する枠体構造であり、画像表示装置80の一部を開放させる開口OPを形成する放熱構造部88aと、画像表示装置80の位置決め固定を行う表示装置位置決め部(映像素子位置決め部)88bと、放熱構造部88aや表示装置位置決め部88bの反対側である映像光の射出側に設けられて画像表示装置80から射出される成分光のうち不要光を除去するマスク部88mと、鏡筒部39(図3等参照)に対する取り付けアライメントを行うための取付部である突起部材(嵌合部)88u,88vとを有する。ケース部88は、例えばアルミニウムやマグネシウム等の熱伝導性の高い金属製の部材であり、例えばダイカスト等により成形される一部材構成すなわち1つの部材で構成される構造体である。
例えば図6(C)や図7(B)に示すように、ケース部88のうち、放熱構造部88aは、背面側(映像光を射出させる側の反対側)すなわち図中の−z側において+y側に開いたコの字型(U字型)の溝部分として形成されており、+y側から画像表示装置80の本体部分80aが挿入されるものとなっている。また、既述のように、ケース部88は、中央部分に貫通孔を有する枠体構造であり、放熱構造部88aは、コの字型(U字型)の溝部分とともに開口OPを形成するものとなっている。すなわち、図7(B)以外の各図に示されるように、シリコン基板SSの裏面SSrの全体が当該開口OPによって露出した状態となっている。ケース部88の立場で言うと、ケース部88は、当該開口OPによって裏面SSrを開放させて放熱する放熱構造部88aを有することで、シリコン基板SSの裏面SSrを放熱構造部88aによる露出部分としている。
さらに、ケース部88のうち、画像表示装置80と当接して位置決めを行う表示装置位置決め部(映像素子位置決め部)88bは、図示のように、z方向についての位置決めの基準となる平面部分である第1基準面SF1と、x方向についての位置決めの基準となる平面部分である第2基準面SF2と、y方向についての位置決めの基準となる平面部分である第3基準面SF3とで構成される。これらの基準面SF1〜SF3は、例えば図8(A)及び8(B)に示すように、いずれも、矩形の板状であるシリコン基板SSの端面のうち裏面SSr以外の各端面SS1〜SS3と当接することで、高精度な位置決めがなされるものとなっている。
ケース部88は、既述のように、嵌合によって画像表示装置80を位置決めしつつ支持固定して画像表示装置80を収納してユニット化(モジュール化)した表示装置ユニットDUを構成するとともに、画像表示装置80すなわち表示装置ユニットDUの鏡筒部39への組付けを行うためのアライメント部分を形成する部材である。
さらに、ケース部88には、+z側(映像光を射出させる側)において、光軸AXに平行に延びる一対の突起部材88u,88vが形成されている。これらの突起部材88u,88vは、例えば図3や図4に示すように、投射レンズ(投射光学系)30の鏡筒部39の後端部を上下から挟むように後端部と緩く嵌合する嵌合部であり、ケース部88を鏡筒部39に固定するために用いられる。つまり、図3等において、突起部材(嵌合部)88u,88vの内面と鏡筒部39の側面との間には接着剤が充填され、ケース部88を鏡筒部39に対してアライメントした後に接着剤が硬化され、ケース部88が鏡筒部39に固定されている。この際、上下左右前後に加え3回転の回転軸に関するアライメントが可能となっている。なお、上記アライメントの前段として、導光装置20のうち導光部材10において、根元側が鏡筒部39にはめ込まれていることで固定されている。この状態において、上記のように画像表示装置80を収納したケース部88が、導光部材10等と組付けられた鏡筒部39に対してアライメントを行うことで、最終的な画像の位置合わせが可能となっている。特に、本実施形態のように、左右一対の構成の場合右眼側用の画像と左眼側用の画像とがぴったり重なった状態で視認されるように画素単位での調整が必要となり、この位置合わせが非常に重要となる。これに対して、本実施形態では、画像表示装置80が高精度でケース部88に組み込まれているため、上記調整用のマージンを最小限に抑えることができ、位置調整を可能としつつも装置の大型化を極力回避することができる。
以下、図9(A)〜9(E)を参照して、虚像表示装置100の作製工程の一工程でもある表示装置ユニットDUの作製工程の一例について説明する。
まず、図9(A)に示すように、枠体構造であるケース部88のうち、z方向についての位置決めの基準となる第1基準面SF1を含む面上あるいは第1基準面SF1の近傍の面であるのりしろ面NSに接着剤88sを塗布する(接着剤塗布工程)。ここでは、例えば駆動回路等が配置される箇所等も接着のためののりしろ面NSの一部として利用され得るものとする。なお、第1基準面SF1において、接着剤88sを介さず、画像表示装置80(シリコン基板SS)の端面が第1基準面SF1に直接当接するような構成としてもよい。また、接着剤88sとしては、例えば高熱伝導性シリコーン系接着剤又は熱伝導性エポキシ接着剤を使用することが考えられる。熱伝導性の高い接着剤を用いることで、映像光の射出側においても、放熱性を高めることができる。
次に、図9(B)に示すように、画像表示装置80を第1基準面SF1の面上に落とし込んで、接着剤88sを押し広げつつ、第1基準面SF1での位置決め、すなわち第1基準面SF1において画像表示装置80(シリコン基板SS)の端面SS1を当接させ、z方向についての位置決め(図8(A)に対応)を行う(第1位置決め工程)。なお、この際、x方向については、元々ほとんどマージンがない状態(例えばシリコンのダイシングにおける誤差の程度である数十μ以内のマージン)であり、併せて第2基準面SF2に関する位置決めすなわち第2基準面SF2において画像表示装置80(シリコン基板SS)の端面SS2が当接し、x方向についての位置決めも行われることになる(第2位置決め工程)。
次に、図9(C)に示すように棒状の治具JGにより、画像表示装置80を−y方向(矢印Y1の方向)に押し込むことで、第3基準面SF3において画像表示装置80(シリコン基板SS)の端面SS3を当接させ(突き当てて)、y方向についての位置決め(図8(B)に対応)を行う(第3位置決め工程)。以上の第1〜第3位置決め工程により、第1〜第3基準面SF1〜SF3は、画像表示装置80法面SSrを開放させた状態としつつ、接着剤88sにより固着させることで画像表示装置80のケース部88における収納位置を定める表示装置位置決め部(映像素子位置決め部)88bとして機能する。なお、図9(B)から9(C)に示す治具JGによる調整すなわちスライド移動に際して、図中破線で示す矩形の表示エリアEA(すなわち有機EL素子等が形成され映像光が射出される領域)に接着剤88sが付着したりすること等がないようにできる。
第1〜第3位置決め工程の後、図9(D)に示すように、x方向について挟み込み可能なフック治具FGにより、画像表示装置80とケース部88との当該位置関係を動かさないように固定し、接着剤88sを硬化させる。最後に、接着剤88sの硬化後、フック治具FGを取り外すことで、図9(E)に示すように、ケース部88に画像表示装置80を収納してユニット化された表示装置ユニットDUが作製される。なお、硬化させた接着剤88sが画像表示装置80とケース部88とを固着させる接着部BPとなる。
以上のように、本実施形態に係る表示装置ユニットDUを含む虚像表示装置100では、映像素子である画像表示装置80が映像光を生じさせる発光部80kを含む自発光型の素子であり、別途の光源を要しないものであることで、軽量化・小型化図ることができ、延いては虚像表示装置100全体の軽量化・小型化を図ることができるものとなっている。さらに、表示装置ユニットDUのケース部88が画像表示装置80の一部を開放させて放熱する放熱構造部88aを有することで、画像表示装置80の内部温度上昇を抑制し、画像表示装置80が自発光型で特に有機EL(OLED)素子を含むものであっても、内部温度の上昇に伴う性能劣化や寿命短縮を回避し、良好な画像形成が可能となる。また、表示装置ユニットDUの作製において、高い放熱性を確保しつつ簡易かつ確実な組付けを行うことができる。この際、特にシリコン基板SSの特性を利用することで高精度な位置合わせを行うことができる。
以下、図10(A)等を参照して、本実施形態の一変形例の虚像表示装置について説明する。上記実施形態では、表示装置位置決め部(映像素子位置決め部)88bを構成する第1〜第3基準面SF1〜SF3は、いずれも平面形状であるものとしているが、例えば一部を突起形状としてもよい。例えば図10(A)に示す例では、y方向についての位置決めの基準となる平面に代えて、当該箇所に第3基準突起部TP3,TP3を設けている。図示の例では、平面に相当する面の両端の2箇所に設けて第3基準面SF3を設定している。この場合、治具等で矢印Y1の方向について押し込むことによるy方向についての位置決めにおける誤差を、第3基準突起部TP3,TP3によりゼロにするあるいはゼロに近づけることが可能になる。
さらに、例えば図10(B)に示すように、x方向についての位置決めについても突起形状としてもよい。すなわち、x方向についての位置決めの基準となる平面に代えて、当該箇所に第2基準突起部TP2,TP2を設けている。図示の例では、平面に相当する面(片側の面)の両端の2箇所に設けて第2基準面SF2を設定している。この場合、治具等で矢印X1の方向及び矢印Y1の方向あるいはこれら双方の方向の成分を含む方向押し込むことによるx方向及びy方向についての位置決めにおける誤差を、第2基準突起部TP2,TP2及び第3基準突起部TP3,TP3によりゼロにするあるいはゼロに近づけることが可能になる。
〔その他〕
以上実施形態に即して本発明を説明したが、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能である。
例えば、上記の例では、シリコン基板SSの裏面SSrの全体が開口OPによって露出した状態となっているものとしているが、裏面の露出については、放熱等が十分であれば、必ずしも裏面SSrの全体を露出させている必要はなく一部が他の部材によって覆われているものとしてもよい。例えば、図11(A)及び図11(A)のAA矢視断面に相当する図11(B)において概念的に示すように、ケース部88においてシリコン基板SSの裏面SSrの一部に当接する一対の当接部分CPを設けて当接部分CPによってシリコン基板SSを支持固定させる構造とすることも可能である。
また、上記において、放熱部DPの構成について、一例としてシート状の部材を裏面側に直接貼り付けるものとしているが、これに限らず、例えば冷却用のファンやフィン構造、ペルチェ素子を設ける等種々の構造や手段を放熱部DPとして適用することが考えられる。
また、上記では、画像表示装置80の素子基板をシリコン基板としているが、必要に足りる放熱や位置精度が確保される場合には、石英ガラス等の他の部材を使用することも可能である。
また、上記では、ケース部88をアルミニウムやマグネシウム等の熱伝導性の高い金属製のものとしているが、画像表示装置80の放熱や収納位置精度が確保されれば、これ以外の材料(例えば樹脂材料)を適用するものとしてもよい。
また、上記において、画像表示装置80としては、種々のものを利用可能であり、例えば、反射型の液晶表示デバイスを用いた構成も可能であり、液晶表示デバイス等からなる映像表示素子に代えてデジタル・マイクロミラー・デバイス等を用いることもできる。
上記の説明では、第2面S12のハーフミラー層を例えば金属反射膜や誘電体多層膜としたが、平面又は曲面のホログラム素子に置き換えることができる。また、第5面S15についても、ミラー反射面とする場合のほか、ホログラム素子で構成することも可能である。
上記の説明では、導光部材10等が眼の並ぶ横方向に延びているが、導光部材10を縦方向に延びるように配置することもできる。この場合、導光部材10は、直列的ではなく並列的に平行配置された構造を有することになる。
上記の説明では、画像光と外界光とを重畳させる態様についてのみ説明しているが、例えば重畳させずに画像光のみにする態様と外界光のみにする態様とを切り替えて観察することができる虚像表示装置において適用してもよい。
また、本願発明の技術を、ディスプレイと撮像装置とで構成されるいわゆるビデオシースルーの製品に対応させるものとしてもよい。
また、本願発明の技術、すなわち画像表示装置(映像素子)のユニット化において放熱のための構造を有したケーシング(映像素子ユニット構造)を、カメラのファインダーや小型のプロジェクター等の表示装置において利用することも可能である。
なお、以上のような他への応用等の場合において、例えば、表示装置ユニット(映像素子ユニット)について他の光学部品との高精度なアライメントが必要でない場合には、当該アライメントのための取付部(典型的には突起部材(嵌合部)88u,88vのようなもの)を有しない構成としてもよい。