JP6692905B2 - 栗皮抽出物の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、栗皮抽出物に関する。また本発明は、当該抽出物の製造方法(抽出方法)及び用途にも関する。
スフィンゴ脂質は、長鎖アミノアルコールであるスフィンゴイド塩基のアミノ基に長鎖脂肪酸が結合したセラミドを基本骨格とし、アルコール性ヒドロキシル基に糖及びリン酸などの極性基が結合した状態で細胞膜に存在する。なかでもスフィンゴ糖脂質であるグリコシルセラミドは、動植物、微生物に広く存在する成分でセレブロシドとも呼ばれ、近年、生体機能調節作用を有するとして注目されている機能性素材でもある。
グリコシルセラミドのなかでも植物及び真菌類に広く存在するグルコシルセラミド(グルコースがセラミドに結合したスフィンゴ糖脂質)は、俗に略して「セラミド」と呼ばれ多くの原料から素材化されている。とくにセラミドはヒト表皮の細胞間脂質の約50%を占めることから、肌の健康との関連で注目され健康食品および機能性化粧品素材として市場を拡大している。加齢による角質セラミドの減少が知られており、外用セラミドの補給が重要であると考えられている。ヒトの角質層は様々な種類のセラミドが存在するが、中でもセラミドNS、セラミドNP、及びセラミドAPの存在割合が高く、特に加齢によるセラミドAPの含有割合の減少が顕著であり(非特許文献1)、よってセラミドAPの補給が特に重要である。
なお、セラミドの命名法の一つとして、セラミドを構成する脂肪酸とスフィンゴイド塩基がそれぞれ何かで名前が決定される方法があり、例えばセラミドAPは、α-ヒドロキシ脂肪酸(A)とファイトスフィンゴシン(P)により構成されるセラミドである。このセラミドの命名方法の概要を図1に示す。
角質層細胞間脂質として存在するセラミドは遊離型のフリーセラミドであり、これはグルコシルセラミドとスフィンゴミエリンとが表皮特異的な分解酵素により分解されて変換されたものである。この皮膚におけるフリーセラミド産生は、陸上動物において表皮のバリア機能を維持するうえで重要な生命現象である。なお、グルコシルセラミドも、外用した場合において肌のセラミド合成を高める働きを有しているとも言われている。
一方、植物から抽出され所謂「セラミド」と称されている植物グルコシルセラミドは、グルコースがセラミドに結合しており、この点でヒト表皮のセラミド(フリーセラミド)とは構造が異なる。また、植物グルコシルセラミドを構成するスフィンゴイド塩基は、一般にヒトには含まれない4,8−スフィンガジエニンを主成分とし、よってセラミドの基本骨格の化学構造の点でもヒトとは異なる。各種セラミドのうち、動物及び植物によく見られるスフィンゴイド塩基について、図2に示す。
また、ヒト角質セラミドの脂肪酸については、その炭素鎖長が種々のものが存在するが、特に炭素数16及び18(C16及びC18)の比較的炭素鎖の短い脂肪酸を有するセラミドの含有割合が増加すると皮膚バリア機能が低下(TEWLが上昇)し、一方で炭素数20、24、及び26(C20、C24、及びC26)という比較的炭素鎖の長い脂肪酸を有するセラミドの含有割合が増加すると皮膚バリア機能が亢進(TEWLが低下)するということが知られている(非特許文献2)。よって、ヒトの肌に適用するセラミドとしては、その脂肪酸の炭素鎖が比較的長いものが好適であると考えられる。
以上のような事情を考慮して、従来、皮膚外用剤としてのセラミド素材には、植物由来セラミドではなく化学合成されたヒト型のセラミド(セラミドの基本骨格の化学構造がヒト型のセラミド)が主に用いられてきた。特にヒト型のフリーセラミドが好ましく用いられてきた。なお、ヒト型とはヒト角質層に含まれるセラミドと同じ構造という意味で、皮膚同一型とも言われる。
フリーセラミドはスフィンゴ脂質合成の中間体であるため自然界にも微量存在するが、その量はグルコシルセラミドの約1/10とも言われる。一方、植物及び真菌類の細胞膜には、セラミドにリン酸が結合しそこにオリゴ糖が結合した酸性スフィンゴ脂質リン脂質群がグルコシルセラミドの数倍量含まれていることが明らかとなっている。この脂質は細胞膜の機能調節だけでなくシグナル伝達のセカンドメッセンジャーであるフリーセラミドを産生する基質としての役割も担っている。このように、自然界においては、スフィンゴ糖脂質及びスフィンゴリン脂質が多く産生され利用されているため、自然界に存在する素材からフリーセラミドを大量に得ることは容易ではなく、フリーセラミドの中でも基本骨格の化学構造がヒト型であるフリーセラミドを大量に得ることは、さらに難しい。
特に植物からのフリーセラミド生産については、自然界においても産業的にも、酸性スフィンゴ脂質がフリーセラミドへと変換されるために必要な自己消化状態を実現することが困難であることから、植物からの効率的なフリーセラミド生産技術はこれまでに存在しない。例えば、特許文献1には、紫芋のもろみを蒸留して得た蒸留粕のアルコール抽出物をアセトン又はヘキサンで抽出して残渣を回収することを含む、セラミド濃縮物の製造方法が記載されており、当該濃縮物はフリーセラミドを含むことも記載されているが、当該製造方法では、紫芋のもろみを蒸留して蒸留粕を得るという工程を経なければならない。
特開2015−105272
Denda M, et al., Arch Dermatol Res (1993) 285:415−417 Joo K, et al., Journal of Dermatological Science 60 (2010) 40−57
本発明は、フリーセラミド(特にヒト型フリーセラミド)を効率よく製造することを課題とする。
本発明者らは、栗の皮(鬼皮と渋皮)にフリーセラミドが蓄積していることを見出し、さらに改良を重ねて本発明を完成させるに至った。
本発明は例えば以下の項に記載の主題を包含する。
項1.
フリーセラミド及びグルコシルセラミドを含む栗皮抽出物。
項2.
含まれるフリーセラミド及びグルコシルセラミドの重量比(フリーセラミド/グルコシルセラミド)が、1〜10である、項1に記載の抽出物。
項3.
含まれるフリーセラミドのうち、50モル%以上が、スフィンゴイド塩基部分のヒドロキシル基数が3であるフリーセラミドである、項1又は2に記載の抽出物。
項4.
含まれるグルコシルセラミドのうち、50モル%以上が、スフィンゴイド塩基部分のヒドロキシル基数が3であるグルコシルセラミドである、項1〜3のいずれかに記載の抽出物。
項5.
栗皮抽出物のフリーセラミド画分であって、
含まれるフリーセラミドのうち、50モル%以上が、スフィンゴイド塩基部分のヒドロキシル基数が3であるフリーセラミドである、画分。
項6.
栗皮抽出物のグルコシルセラミド画分であって、
含まれるグルコシルセラミドのうち、50モル%以上が、スフィンゴイド塩基部分のヒドロキシル基数が3であるグルコシルセラミドである、画分。
項7.
項1〜4のいずれかに記載の抽出物、あるいは項5又は6に記載の画分を含む、化粧品組成物、食品組成物、又は医薬品組成物。
項A1.
フリーセラミド及びグルコシルセラミドを含む栗皮抽出物を、皮膚に適用する工程を含む、保湿、抗皮膚老化、又は皮膚バリア改善方法。
項A2.
栗皮抽出物に含まれるフリーセラミド及びグルコシルセラミドの重量比(フリーセラミド/グルコシルセラミド)が、1〜10である、項A1に記載の方法。
項A3.
栗皮抽出物に含まれるフリーセラミドのうち、50モル%以上が、スフィンゴイド塩基部分のヒドロキシル基数が3であるフリーセラミドである、項A1又はA2に記載の方法。
項A4.
栗皮抽出物に含まれるグルコシルセラミドのうち、50モル%以上が、スフィンゴイド塩基部分のヒドロキシル基数が3であるグルコシルセラミドである、項A1〜A3のいずれかに記載の方法。
項A5.
栗皮抽出物のフリーセラミド画分であって、含まれるフリーセラミドのうち、50モル%以上が、スフィンゴイド塩基部分のヒドロキシル基数が3であるフリーセラミドである、画分を、皮膚に適用する工程を含む、保湿、抗皮膚老化、又は皮膚バリア改善方法。
項A6.
栗皮抽出物のグルコシルセラミド画分であって、含まれるグルコシルセラミドのうち、50モル%以上が、スフィンゴイド塩基部分のヒドロキシル基数が3であるグルコシルセラミドである、画分を、皮膚に適用する工程を含む、保湿、抗皮膚老化、又は皮膚バリア改善方法。
項B1.
保湿、抗皮膚老化、又は皮膚バリア改善における使用のための、
フリーセラミド及びグルコシルセラミドを含む栗皮抽出物。
項B2.
栗皮抽出物に含まれるフリーセラミド及びグルコシルセラミドの重量比(フリーセラミド/グルコシルセラミド)が、1〜10である、項B1に記載の栗皮抽出物。
項B3.
栗皮抽出物に含まれるフリーセラミドのうち、50モル%以上が、スフィンゴイド塩基部分のヒドロキシル基数が3であるフリーセラミドである、項B1又はB2に記載の栗皮抽出物。
項B4.
栗皮抽出物に含まれるグルコシルセラミドのうち、50モル%以上が、スフィンゴイド塩基部分のヒドロキシル基数が3であるグルコシルセラミドである、項B1〜B3のいずれかに記載の栗皮抽出物。
項B5.
保湿、抗皮膚老化、又は皮膚バリア改善における使用のための、栗皮抽出物のフリーセラミド画分であって、含まれるフリーセラミドのうち、50モル%以上が、スフィンゴイド塩基部分のヒドロキシル基数が3であるフリーセラミドである、画分。
項B6.
保湿、抗皮膚老化、又は皮膚バリア改善における使用のための、栗皮抽出物のグルコシルセラミド画分であって、含まれるグルコシルセラミドのうち、50モル%以上が、スフィンゴイド塩基部分のヒドロキシル基数が3であるグルコシルセラミドである、画分。
項C1.
保湿、抗皮膚老化、又は皮膚バリア改善のための化粧品又は医薬品の製造における、フリーセラミド及びグルコシルセラミドを含む栗皮抽出物の使用。
項D1.
栗皮アセトン抽出物を含む、抗紫外線組成物。
項D2.
栗皮アセトン抽出物が、栗皮エタノール抽出物のアセトン抽出物である、項D1に記載の抗紫外線組成物。
項D3.
抗紫外線組成物が、紫外線吸収組成物又は紫外線波長変換組成物(好ましくは紫外線の可視光への変換組成物)である、項D1又はD2に記載の抗紫外線組成物。
項E1.
項1〜4のいずれかに記載の抽出物、又は項5若しくは6に記載の画分と、
栗皮アセトン抽出物と、
を含む、化粧品組成物。
項E2.
化粧品組成物が、保湿、抗皮膚老化、皮膚バリア改善用、あるいは抗紫外線用である、項E1に記載の化粧品組成物。
項E3.
抗紫外線用が、紫外線吸収用又は紫外線波長変換用(好ましくは紫外線の可視光への変換用)である、項E1又はE2に記載の化粧品組成物。
項E4.
栗皮アセトン抽出物が、栗皮エタノール抽出物のアセトン抽出物である、項E1〜E3のいずれかに記載の化粧品組成物。
本発明の一実施形態に係る栗皮抽出物は、セラミドAPを多く含み、且つ脂肪酸の炭素鎖長が比較的長いセラミドを多く含むため、特に肌の機能改善、保湿、抗老化、バリア機能改善などに特に好適に用いることができる。
セラミドの命名方法の概要を示す。 各種セラミドのうち、動物及び植物によく見られるスフィンゴイド塩基について、示す。 栗皮(渋皮、鬼皮、又はその両方)から得られた全脂質中のスフィンゴ脂質をTLCデンシトメトリー法により定量した結果を示す。 栗皮エキスのスフィンゴ脂質について、LC−MSにより構造解析を行った結果を示す。 図4のLC−MS解析のピークの分子種を表にして示す。 栗子実から得られた全脂質中のスフィンゴ脂質をTLCデンシトメトリー法により定量した結果を示す。 アーモンド、ピスタチオおよびトチの実の各部位から得られた全脂質中のスフィンゴ脂質をTLCデンシトメトリー法により定量した結果を示す。 栗皮エキスを精製して得られた全脂質中のスフィンゴ脂質をTLCデンシトメトリー法により定量した結果を示す。 栗皮抽出物が皮膚に与える影響について検討した結果を示す。左側に角層水分量測定結果を、右側に経皮水分蒸散量測定結果を示す。*は、群間で有意差あり(P<0.05)を示す。#は、初期値(塗布前)に対して有意差あり(P<0.05)を示す。 分光光度計による栗UVPの紫外線吸収能測定結果を示す。 市販UVA吸収剤溶液及び栗UVP溶液へ、UV照射を行った際の写真を示す。 栗皮抽出物の水分蒸発抑制効果を検討した結果を示す。
本発明の一実施形態に係る栗皮抽出物は、フリーセラミド及びグルコシルセラミドを含む。上記の通り、セラミドはスフィンゴイド塩基のアミノ基(−NH)に脂肪酸のカルボキシル基(−COOH)が結合した構造(−NH−CO−)を有する化合物である。セラミドのスフィンゴイド塩基のアルコール性ヒドロキシル基(−OH)に、更に糖及びリン酸などの極性基が結合し、それぞれスフィンゴ糖脂質及びスフィンゴリン脂質となる。ここで、糖が結合したものを特にグリコシルセラミドと呼び、特に糖がグルコースである場合グルコシルセラミドと呼ぶ。本明細書では、セラミドに糖及びリン酸が結合していない場合を特にフリーセラミドと呼ぶ。また、以下、特に断らない限り、単に「セラミド」と標記した場合は、フリーセラミドとグルコシルセラミドとを包含する。
フリーセラミドを構成するスフィンゴイド塩基としては、特に制限はされないが、ヒドロキシル基を2又は3個有するものが好ましく、3個有するものがより好ましい。また、当該スフィンゴイド塩基は、炭素数14〜22であるものが好ましく、炭素数16〜20であるものがより好ましく、炭素数18であるものがさらに好ましい。また、炭素間二重結合を0又は1有するものが好ましい。より具体的な好ましいスフィンゴイド塩基としては、例えばスフィンゴシン、ジヒドロスフィンゴシン、フィトスフィンゴシン、6−ヒドロキシスフィンゴシン等が挙げられる。また例えば、図2に構造式を示したものが挙げられる。なお、スフィンゴシンとは2−アミノ−4−オクタデセン−1,3−ジオールのことである。
フリーセラミドを構成する脂肪酸としては、炭素数16〜30の脂肪酸が好ましく、炭素数18〜28の脂肪酸がより好ましく、炭素数20〜26の脂肪酸がさらに好ましく、炭素数22〜26の脂肪酸がよりさらに好ましい。また、炭素間二重結合を0又は1個有する脂肪酸が好ましく、0個有する脂肪酸(すなわち飽和脂肪酸)がより好ましい。また、ヒドロキシル基を0、1、又は2個有する脂肪酸が好ましく、1又は2個有する脂肪酸がより好ましい。ヒドロキシル基を有する場合、α−ヒドロキシル基であることが好ましい。
フリーセラミドにおいて、セラミド骨格の(スフィンゴイド塩基)−(脂肪酸)の組み合わせは、上記のスフィンゴイド塩基及び脂肪酸をどのように組み合わせたものであってもよい。中でも好ましい組み合わせとして、例えば、(ヒドロキシル基を2又は3(特に3)個有するスフィンゴイド塩基)−(ヒドロキシル基を有する(特にα−ヒドロキシル基を有する)脂肪酸)の組み合わせが挙げられる。当該脂肪酸のヒドロキシル基数は1又は2が好ましい。なお、セラミド骨格が(ファイトスフィンゴシン)−(α−ヒドロキシル基を有する脂肪酸)の組み合わせであるフリーセラミドを、本明細書では特にセラミドAPと呼ぶ(図1及び図2も参照)。なお、脂肪酸には、αヒドロキシル基以外にもヒドロキシル基をさらに有するものもあるが、その場合もαヒドロキシル基を有するものはセラミドAPに包含される。例えば、αヒドロキシル基及びβヒドロキシル基の2つのヒドロキシル基を有するセラミドは、セラミドDPと呼ばれるところ、本明細書ではセラミドDPもセラミドAPに包含される。セラミドAPのうち、ヒドロキシル基として、特にαヒドロキシル基のみを有するものを以下セラミドAP1、αヒドロキシル基及びβヒドロキシル基のみを有するものを以下セラミドAP2、と呼ぶことがある。セラミドDPはセラミドAP2である。
セラミドのヒドロキシル基数が多いほど強い水素結合を形成し、より安定な膜構造を構築できるために、肌における保湿効果が高まると考えられていることから、ヒドロキシル基を多く有するセラミドが好ましい。また、別の好ましい組み合わせとして、例えば、(ヒドロキシル基を2又は3個有し、炭素数18で、炭素間二重結合を0又は1個有するスフィンゴイド塩基)−(炭素数20〜26、炭素間二重結合が0、ヒドロキシル基を1又は2個有する(特にα−ヒドロキシル基を有する)脂肪酸)の組み合わせが挙げられる。
グルコシルセラミドを構成するスフィンゴイド塩基としては、特に制限はされないが、ヒドロキシル基を2又は3個有するものが好ましく、3個有するものがより好ましい。また、炭素数14〜22であるものが好ましく、炭素数16〜20であるものがより好ましく、炭素数18であるものがさらに好ましい。また、炭素間二重結合を0、1又は2個有するものが好ましい。より具体的な好ましいスフィンゴイド塩基としては、例えばスフィンゴシン、ジヒドロスフィンゴシン、フィトスフィンゴシン、4−ヒドロキシスフィンゲニン、4,8−スフィンガジエニン、6−ヒドロキシスフィンゴシン等が挙げられる。また例えば、図2に構造式を示したものが挙げられる。
グルコシルセラミドを構成する脂肪酸としては、炭素数16〜30の脂肪酸が好ましく、炭素数18〜28の脂肪酸がより好ましく、炭素数20〜26の脂肪酸がさらに好ましく、炭素数22〜26の脂肪酸がよりさらに好ましい。また、炭素間二重結合を0又は1個有する脂肪酸が好ましく、0個有する脂肪酸(すなわち飽和脂肪酸)がより好ましい。また、ヒドロキシル基を0、1又は2個有することが好ましく、1又は2個有することがより好ましい。ヒドロキシル基を有する場合、α−ヒドロキシル基を有することが好ましい。
グルコシルセラミドにおいて、セラミド骨格の(スフィンゴイド塩基)−(脂肪酸)の組み合わせは、上記のスフィンゴイド塩基及び脂肪酸をどのように組み合わせたものであってもよい。中でも好ましい組み合わせとして、例えば、(ヒドロキシル基を2又は3(特に3)個有するスフィンゴイド塩基)−(ヒドロキシル基を有する(特にα−ヒドロキシル基を有する)脂肪酸)の組み合わせが挙げられる。当該脂肪酸のヒドロキシル基数は1又は2が好ましい。セラミドのヒドロキシル基の数が多いほど強い水素結合を形成し、より安定な膜構造を構築できるために、肌における保湿効果が高まると考えられているため、ヒドロキシル基を多く有するものが好ましい。また、好ましい組み合わせとして、例えば、(ヒドロキシル基を2又は3個有し、炭素数18で、炭素間二重結合を0又は1個有するスフィンゴイド塩基)−(炭素数20〜26、炭素間二重結合が0、ヒドロキシル基を1又は2個有する(特にα−ヒドロキシル基を有する)脂肪酸)の組み合わせが挙げられる。
なお、フリーセラミド及びグルコシルセラミドのいずれにおいても、脂肪酸がヒドロキシル基を2個有する場合には、α−ヒドロキシル基及びβヒドロキシル基の2個のヒドロキシル基を有する(すなわち、α、β−ジヒドロキシ脂肪酸である)ことが好ましい。また、フリーセラミド、グルコシルセラミドのいずれにおいても、そのセラミド骨格におけるスフィンゴイド塩基が炭素間二重結合を有する場合には、トランス型異性体であることが好ましく、また、そのセラミド骨格における脂肪酸が炭素間二重結合を有する場合には、トランス型異性体であることが好ましい。
上記の通り、フリーセラミド及びグルコシルセラミドは、その骨格を構成するスフィンゴイド塩基及び脂肪酸の種類によって多種多様な構造をとる(例えば図1及び図2参照)。本発明において、栗皮抽出物は、様々な構造を有する複数種のフリーセラミド及びグルコシルセラミドを含む。本明細書では、このような構造の異なる種々のフリーセラミドをフリーセラミド種とよぶことがある。また、このような構造の異なる種々のグルコシルセラミドをグルコシルセラミド種とよぶことがある。
栗皮抽出物に含まれるフリーセラミド種の種類数は特に制限はされないが、複数種含まれることが好ましく、例えば、5種類以上、6種類以上、7種類以上、8種類以上、9種類以上、又は10種類以上含まれることが好ましい。含まれるフリーセラミドのうち、50モル%以上が、スフィンゴイド塩基部分のヒドロキシル基数が3(トリヒドロキシスフィンゴイド塩基)であるフリーセラミド種であることが好ましく、60モル%以上であることがより好ましく、70モル%以上であることがさらに好ましく、80モル%以上であることがよりさらに好ましい。またさらに、含まれるフリーセラミドのうち、50モル%以上が、セラミドAPであることが好ましく、60モル%以上であることがより好ましく、70モル%以上であることがさらに好ましく、80モル%以上であることがよりさらに好ましい。
また、含まれるフリーセラミド種のうち、セラミド骨格における脂肪酸鎖長がC22以上のものが、含まれるフリーセラミドの60モル%以上であることが好ましく、70モル%以上であることがより好ましく、80モル%以上であることがさらに好ましく、90モル%以上であることがよりさらに好ましい。また、含まれるフリーセラミド種のうち、セラミド骨格における脂肪酸鎖長がC26以上のものが、含まれるフリーセラミドの10モル%以上であることが好ましく、15モル%以上であることがより好ましく、20モル%以上であることがさらに好ましい。
また、含まれるフリーセラミド種のうち、最も多く含まれるものが、セラミド骨格が(ヒドロキシル基を3個有し、炭素数18で、炭素間二重結合を1個有するスフィンゴイド塩基)−(炭素数22、炭素間二重結合が0、ヒドロキシル基を1個有する(α−ヒドロキシル基を有する)脂肪酸)の組み合わせであるフリーセラミド種(すなわち、t18:1−22:0h)、(ヒドロキシル基を3個有し、炭素数18で、炭素間二重結合を1個有するスフィンゴイド塩基)−(炭素数24、炭素間二重結合が0、ヒドロキシル基を1個有する(α−ヒドロキシル基を有する)脂肪酸)の組み合わせであるフリーセラミド種(すなわち、t18:1−24:0h)、(ヒドロキシル基を3個有し、炭素数18で、炭素間二重結合を有さないスフィンゴイド塩基)−(炭素数24、炭素間二重結合が0、ヒドロキシル基を1個有する(α−ヒドロキシル基を有する)脂肪酸)の組み合わせであるフリーセラミド種(すなわち、t18:0−24:0h)、並びに(ヒドロキシル基を3個有し、炭素数18で、炭素間二重結合を1個有するスフィンゴイド塩基)−(炭素数26、炭素間二重結合が0、ヒドロキシル基を1個有する(α−ヒドロキシル基を有する)脂肪酸)の組み合わせであるフリーセラミド種(すなわち、t18:1−26:0h)の4種のいずれかのフリーセラミド種であることが好ましい。また、含まれるフリーセラミド種のうち、最も多く含まれるものと2番目に多く含まれるものが、上記4種のフリーセラミドの中のいずれか2種であることがより好ましい。また、含まれるフリーセラミド種のうち、最も多く含まれるもの、2番目に多く含まれるもの、及び3番目に多く含まれるものが、上記4種のフリーセラミドの中のいずれか3種であることがさらに好ましい。また、含まれるフリーセラミド種のうち、最も多く含まれるもの、2番目に多く含まれるもの、3番目に多く含まれるもの、及び4番目に多く含まれるものが、上記4種のフリーセラミドから選択されることがよりさらに好ましい。特に、最も多く含まれるものがt18:0−24:0hであることが好ましい。また、最も多く含まれるものがt18:0−24:0h、2番目に多く含まれるものがt18:1−24:0hであることがより好ましい。また、最も多く含まれるものがt18:0−24:0h、2番目に多く含まれるものがt18:1−24:0h、3番目に多く含まれるものがt18:1−22:0hであることがさらに好ましい。また、最も多く含まれるものがt18:0−24:0h、2番目に多く含まれるものがt18:1−24:0h、3番目に多く含まれるものがt18:1−22:0h、4番目に多く含まれるものがt18:1−26:0hであることが、よりさらに好ましい。
栗皮抽出物に含まれるグルコシルセラミド種の種類数は特に制限はされないが、複数種含まれることが好ましく、例えば、3種類以上、4種類以上、又は5種類以上含まれることが好ましい。含まれるグルコシルセラミドのうち、50モル%以上が、スフィンゴイド塩基部分のヒドロキシル基数が3(トリヒドロキシスフィンゴイド塩基)であるフリーセラミド種であることが好ましく、60モル%以上であることがより好ましく、70モル%以上であることがさらに好ましく、80モル%以上であることがよりさらに好ましい。
また、含まれるグルコシルセラミド種のうち、最も多く含まれるものが、セラミド骨格が(ヒドロキシル基を3個有し、炭素数18で、炭素間二重結合を1個有するスフィンゴイド塩基)−(炭素数22、炭素間二重結合が0、ヒドロキシル基を1個有する(α−ヒドロキシル基を有する)脂肪酸)の組み合わせであるグルコシルセラミド種(すなわち、t18:1−22:0h)であることが好ましく、当該グルコシルセラミド種含有量が栗皮抽出物に含まれるグルコシルセラミドの30モル%以上であることが好ましく、40モル%以上であることがより好ましく、50モル%以上であることがさらに好ましい。また、含まれるグルコシルセラミド種のうち、最も多く含まれるものがt18:1−22:0hであり、且つ2番目に多く含まれるもの及び3番目に多く含まれるものが、セラミド骨格が(ヒドロキシル基を3有し、炭素数18で、炭素間二重結合を1有するスフィンゴイド塩基)−(炭素数25、炭素間二重結合が0、ヒドロキシル基を1有する(α−ヒドロキシル基を有する)脂肪酸)の組み合わせであるグルコシルセラミド種(すなわち、t18:1−25:0h)、及び(ヒドロキシル基を3有し、炭素数18で、炭素間二重結合を1有するスフィンゴイド塩基)−(炭素数24、炭素間二重結合が0、ヒドロキシル基を1有する(α−ヒドロキシル基を有する)脂肪酸)の組み合わせであるグルコシルセラミド種(すなわち、t18:1−24:0h)から選択されることがより好ましい。特に、2番目に多く含まれるものがt18:1−25:0h、3番目に多く含まれるものがt18:1−24:0hであることが好ましい。
また、栗皮抽出物に含まれるフリーセラミド及びグルコシルセラミド全量のうち、スフィンゴイド塩基部分のヒドロキシル基数が3であるセラミドが70モル%以上であることが好ましく、80モル%以上であることがさらに好ましい。
なお、ここでのフリーセラミド種の含有量(モル%)及びグルコシルセラミド種の含有量(モル%)は、栗皮抽出物の全脂質を精製した後、当該全脂質をLC−MS解析によって得られる各フリーセラミド種又は各グルコシルセラミド種のピークの面積比から算出される値である。LC−MS解析は、フリーセラミド解析はネガティブイオンモード、グルコシルセラミド解析はポジティブイオンモードにより行う。
栗皮抽出物に含まれるフリーセラミド及びグルコシルセラミドの重量比(フリーセラミド/グルコシルセラミド)は、1〜10であることが好ましく、1〜7であることがより好ましく、1〜5であることがさらに好ましく、1〜3であることがよりさらに好ましく、1〜2であることが特に好ましい。ここでの重量比は、栗皮抽出物の全脂質を精製した後、当該全脂質を薄層クロマトグラフィー(TLC)デンシトメトリー法により定量して得た値の比である。
なお、上記の栗皮抽出物に含まれるフリーセラミド及びグルコシルセラミドに関する事項は、1又は複数を組み合わせることで、より好ましいものを規定することができる。
栗皮抽出物は、水、エタノール、又は水及びエタノールの混合液により栗皮から抽出されるものであることが好ましい。また、1,3−ブチレングリコール、アセトンも抽出溶媒として用いることができる。水及びエタノールの混合液を用いる場合、その混合容量比率は、特に制限はされないが、例えば水:エタノールが0.1〜30:99.9〜70程度が好ましく、特に95〜99.9v/v%エタノールが好ましい。
抽出に用いる栗皮としては、鬼皮及び渋皮のいずれも用いることができ、これらを選別してから抽出に供してもよいし、特に選別せず栗皮として抽出に供してもよい。また、栗皮を得る栗の品種も特に制限はされない。好ましい品種の一例として、栗皮が種子部(可食部)から剥離しやすい「ぽろたん」が挙げられる。
本発明は、栗皮から上記抽出溶媒を用いて、上記栗皮抽出物を抽出する(製造する)方法も包含する。当該方法は、上記抽出溶媒により栗皮を抽出する工程を含む。さらに、抽出工程前に、栗皮乾燥工程及び/又は栗皮の破砕工程を、また、抽出工程後に濃縮乾固する工程、等を含んでもよい。
より具体的な抽出方法としては、例えば次の方法が好ましく挙げられる。まず栗皮を乾燥させ粉砕し、粉砕物を抽出溶媒(例えば95v/v%エタノールの含水エタノール)に加え、30〜50℃程度で約12〜24時間静置又は撹拌して抽出を行う。その後、固液分離処理を行い、栗皮を除去して抽出液を回収する。固液分離処理は、例えば濾過、遠心分離、圧搾法(例えばフィルタープレス)などにより行うことができる。溶媒回収率に優れたフィルタープレス等の圧搾法が好ましい。得られた抽出液をそのまま栗皮抽出物として用いることもできるし、濃縮乾固して固形物(粉末状)として用いることもできる。濃縮乾固は、例えばロータリーエバポレーター等を用いて行うことができる。
上述した、栗皮抽出物の全脂質の精製は、次のようにして行う。抽出液を濃縮乾固して得た固形状抽出物(粉末エキス)を、Folch法にて水溶性画分と脂溶性画分とに分画し、下層(脂溶性画分)を回収して濃縮乾固する。より詳細には、粉末エキスをクロロホルム/メタノール(2:1, v/v)9容量部に溶解し、これに水2.25容量部を添加してよく撹拌した後、遠心分離して脂溶性画分を回収して濃縮乾固する。
栗皮抽出物は、フリーセラミド及びグルコシルセラミド以外の、他の成分を含んでいてもよい。当該他の成分としては、例えば栗皮に含まれる成分、抽出操作に用いられる成分(特に抽出溶媒)等が挙げられる。より具体的には、例えばプロアントシアニジン(タンニン酸)、水、エタノール等が挙げられるが、特に限定はされない。また栗皮抽出物におけるフリーセラミド及びグルコシルセラミドの含有量も、特に制限はされず、適宜精製するなどして、設定することができる。例えば、0.01〜50重量%、0.1〜10重量%、又は1〜5重量%などが例示できるが、特に限定はされない。またさらに、抽出物の精製条件によって、セラミドとしてフリーセラミドのみを含む抽出物(フリーセラミド画分)、あるいはセラミドとしてグルコシルセラミドのみを含む抽出物(グルコシルセラミド画分)を得ることもできる。本発明はこのようなフリーセラミド画分、グルコシルセラミド画分をも包含する。当該フリーセラミド画分に含まれるフリーセラミドについては、好ましくは上述した栗皮抽出物に含まれるフリーセラミドについての説明が同様にあてはまる。また、当該グルコシルセラミド画分に含まれるグルコシルセラミドについても、好ましくは上述した栗皮抽出物に含まれるグルコシルセラミドについての説明が同様にあてはまる。
なお、フリーセラミド画分及びグルコシルセラミド画分は、例えば、次のようにして得ることができる。すなわち、栗皮抽出物(好ましくは固形物、例えば粉末状)をアセトンで繰り返し抽出することにより、アセトン可溶のグルシルセラミドとアセトン不溶のフリーセラミドを分離精製することができる。このときの溶媒の温度は、例えば室温(15℃〜35℃、とくに20〜30℃)が好ましい。あるいは、含水エタノール(エタノールが50〜90v/v%、とくに50〜70v/v%)で繰り返し抽出することにより、親水性の高いグルコシルセラミドと疎水性の高いフリーセラミドとを分離精製することができる。
上述のように、ヒトの肌(特に角質層)の健康(抗老化)のためには、特にヒドロキシル基を比較的多く(特に3又は4個)有するフリーセラミド(中でも好ましくはセラミドAP)の補給が重要と考えられており、またセラミドの脂肪酸の炭素鎖長が比較的長い(特にC20以上、C20、C22、C24、又はC26など)ことが、皮膚バリア機能を亢進するために重要であると考えられている。本発明の一実施形態に係る栗皮抽出物及び各画分は、セラミドAPを多く含み、且つ脂肪酸の炭素鎖長が比較的長いセラミドを多く含むため、特に肌の機能改善、保湿、抗老化、バリア機能改善などに特に好適に用いることができる。より具体的には、例えば、皮膚の乾燥を防ぐ、肌のキメを整える、肌に潤いを与える、肌荒れを防ぐ、肌を滑らかにする、しわの改善、乾燥性小じわの改善、等のために有用である。特に角層水分量を増加させる、又は経皮水分蒸散量(TEWL)を減少させる、といった効果に優れており、このような用途に好適である。
また、本発明の別の実施形態に係る栗皮抽出物は、栗皮アセトン抽出物に係る。アセトン抽出に供される栗皮は、上記に同じものを好ましく用いることができる。また、アセトン抽出前に、予めアルコール(好ましくはエタノール)抽出を行い、得られた栗皮エタノール抽出物をアセトン抽出することがより好ましい。
好ましいアセトン抽出の一具体例としては、まず栗皮を乾燥させ粉砕し、粉砕物を抽出溶媒(例えばアルコール、より具体的には例えば95v/v%エタノールの含水エタノール)に加え、30〜50℃程度で約12〜24時間静置又は撹拌してアルコール抽出を行い、さらに当該アルコール抽出物に対してアセトン抽出を行う方法が挙げられる。
栗皮アセトン抽出物は、優れた紫外線吸収効果及び/又は紫外線波長変換効果(より具体的には、例えば紫外線の可視光への変換効果)を示す。このため、当該栗皮アセトン抽出物及びこれを含む組成物は、紫外線吸収用又は紫外線波長変換用(好ましくは紫外線の可視光への変換用)として用いることができる。
またさらに、栗皮アセトン抽出物は、上記フリーセラミド及びグルコシルセラミドを含む栗皮抽出物と組み合わせて用いることにより、優れた水分蒸発抑制効果も示す。このため、これら2種の抽出物を含む組成物は、保湿、抗皮膚老化、皮膚バリア改善用、あるいは抗紫外線用として用いることができる。
上記各栗皮抽出物及び各画分は、化粧品分野において好適に用いることができる。本発明は、当該栗皮抽出物又は画分含む化粧品組成物を包含する。当該化粧品組成物としては、上記栗皮抽出物又は画分そのものであってもよいが、栗皮抽出物又は画分以外に担体などその他の成分等を含むものであってもよい。
化粧品分野にて用いられる、上記栗皮抽出物又は画分を含む化粧品組成物は、化粧品用として許容される媒体、基剤、担体、添加剤、さらに必要に応じてその他化粧品用として許容される成分及び材料を、上記栗皮抽出物又は画分に適宜配合して、常法に従って製造され得る。当該化粧品組成物の形態としては、例えば、乳液、化粧水、クリーム、美容液、ファンデーション、パック、日焼け止め等を挙げることができる。このような本発明に係る化粧品組成物は、例えば、保湿用、抗皮膚老化用(例えば乾燥肌、肌荒れ、肌のシワ・たるみ等の予防又は改善用)、皮膚バリア改善用として好ましく用いることができる。
またあるいは、当該栗皮抽出物及び各画分は、食品分野においても好適に用いることができる。本発明は、当該栗皮抽出物又は画分を含む食品組成物を包含する。当該食品組成物としては、上記栗皮抽出物又は画分そのものであってもよいが、栗皮抽出物又は画分以外に担体などその他の成分等を含むものであってもよい。
この場合、他の成分としては、食品衛生学上許容される基剤、担体、添加剤、さらに必要に応じてその他食品として利用され得る成分及び材料が例示できる。また、当該食品組成物の形態も特に制限されず、例えば加工食品、飲料、健康食品(栄養機能食品、特定保健用食品、機能性表示食品等)、サプリメント、病者用食品(病院食、病人食又は介護食等)等が例示できる。これらは常法により調製することができる。特に、健康食品(栄養機能食品、特定保健用食品、機能性表示食品等)、又はサプリメントとして、ケトン体産生促進食品組成物を調製する場合は、継続的な摂取が行いやすいように、例えば顆粒、カプセル、錠剤(チュアブル剤等を含む)、飲料(ドリンク剤)等の形態で調製することが好ましく、なかでもカプセル、タブレット、ドリンク剤等の形態が摂取の簡便さの点からは好ましいが、特にこれらに限定されるものではない。
なお、当該食品組成物には、食品添加物組成物も包含され、特に食品添加物組成物として用いられる場合には、その形態としては、例えば液状、粉末状、フレーク状、顆粒状、ペースト状のものが挙げられる。より具体的には、調味料(醤油、ソース、ケチャップ、ドレッシング等)、フレーク(ふりかけ)、焼き肉のたれ、スパイス、ルーペースト(カレールーペースト等)等が例示できる。
あるいはまた、当該栗皮抽出物及び各画分は、医薬品分野においても好適に用いることができる。本発明は、当該栗皮抽出物又は画分を含む医薬品組成物を包含する。当該医薬品組成物としては、上記栗皮抽出物又は画分そのものであってもよいが、栗皮抽出物又は画分以外に担体などその他の成分等を含むものであってもよい。
医薬品分野にて用いられる、上記栗皮抽出物又は画分を含む医薬品組成物は、医薬品用として許容される媒体、基剤、担体、添加剤、さらに必要に応じてその他医薬品用として許容される成分及び材料を、上記栗皮抽出物又は画分に適宜配合して、常法に従って製造され得る。当該医薬品組成物の形態としては、例えば、液剤、懸濁剤、乳剤、乳液剤、ジェル剤、クレーム剤、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤等の製剤に調製することができる。特に、外用剤(外用組成物)又は経口剤(経口組成物)として用いることが好ましい。
上記化粧品組成物、食品組成物及び医薬品組成物における栗皮抽出物又は画分の含有量は、特に制限されず、適宜設定することができる。例えば、100〜0.01重量%、又は99〜0.1重量%が例示できる。
上記化粧品組成物及び医薬品組成物の適用対象も特に制限はされないが、特に加齢により肌の衰え(たるみ、しわ、くすみ、肌荒れ等)が気になる方に好適である。例えば、20歳以上、30歳以上、40歳以上、50歳以上、又は60歳以上の女性に好適である。
なお、本明細書において「含む」とは、「本質的にからなる」と、「からなる」をも包含する(The term "comprising" includes "consisting essentially of” and "consisting of.")。
以下、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。なお、下記の例において、特に断らない場合、セラミドAPはセラミドAP1のことを、セラミドDPはセミラドAP2のことを示す。また、エタノールの%表記はエタノール水溶液におけるエタノール容量%を示す。例えば95%エタノールは、95v/v%エタノールのエタノール水溶液を示す。
栗皮の調製
栗皮が種子部(可食部)から剥離しやすい品種「ぽろたん」を検討に用いた。栗皮と種子の重量割合は約30:70であった。手作業で剥離した鬼皮と渋皮の平均水分率はそれぞれ約30%であった。乾燥後の栗皮の鬼皮と渋皮の平均重量割合は68:32であった。
渋皮と鬼皮の分析
渋皮と鬼皮を粉砕し、各60gに4倍容の95%エタノールを添加し、40℃に維持しながら18時間撹拌して抽出した。吸引ろ過(アドバンテックNo.1 ろ紙)後、ろ液をロータリーエバポレーターで濃縮乾固した。エキス収率は渋皮と鬼皮とでそれぞれ5.0%と0.8%であった。鬼皮についてはろ過残渣に再度95%エタノールを80mL添加し同様の操作を行った。この時のエキス収率は0.3%であった。渋皮エキスはプロアントシアニジン(タンニン酸)が主成分と推測される赤褐色粉末であった。
各エキスからFolch法にて水溶性画分と脂溶性画分とに分画した。すなわち、渋皮エキス0.48gおよび鬼皮エキス0.44gをそれぞれクロロホルム/メタノール(2:1, v/v)9mLに溶解し、水2.25mlを添加してよく撹拌した後、遠心分離(3000rpm、5min)した。下層を分取して濃縮乾固すると、渋皮エキスからの分画と鬼皮エキスからの分画とで、それぞれ17mgと142mgの全脂質(TL)のサンプルが得られた。以下、このようにして得られた全脂質(サンプル)をTLと呼ぶことがある。エキスあたりのTL収率はそれぞれ3.5%および32.2%であった。
得られたTLをクロロホルム/メタノール/水(90:10:1, v/v/v)を展開溶媒としてケイ酸薄層クロマトグラフィー(以下TLC)にて分析した(図3)。検出は50%硫酸塗布後に加熱して行った。渋皮TLはレーン1、鬼皮TLはレーン2に示す。レーン4のスポットはコーン由来グルコシルセラミドとαリグノセリル‐ファイトスフィンゴシン(セラミドAP)である。両皮は共通した脂質パターンを示し、植物に一般的に含まれるステロール類(ステロール(S)、アシルステリルグルコシド(ASG)、ステリルグルコシド(SG))、及びグルコシルセラミド(GC)が含まれていた。
さらに、アシルステリルグルコシドとステリルグルコシドのスポットの間に濃い二つのスポットが検出された。これらはフリーセラミド(Cer)で、上段はα(2)−ヒドロキシ脂肪酸‐ファイトスフィンゴシン(セラミドAP〔セラミド6IIともいう〕に相当)で、下段のフリーセラミドは2,3−ジヒドロキシ脂肪酸‐ファイトスフィンゴシン(セラミドDP)と判断される。
栗皮の分析
栗の渋皮と鬼皮の両方にフリーセラミドとグルコシルセラミドが含まれることが確認されたため、栗皮全体から抽出試作を行った。乾燥栗皮1.02kgをミルサーで粉砕し、95%エタノールを3.5L添加して5時間撹拌抽出を行った。その後、吸引ろ過(アドバンテックNo.1ろ紙)し、ろ液をロータリーエバポレーターで濃縮乾固した。乾固後に赤褐色の粉末エキスが31.9g(3.1%)得られた。エキス中のTL含量は12.9%であった。得られたTLを同様にTLC分析したところ、フリーセラミドとグルコシルセラミドのスポットが確認された(図3、レーン3)。
スフィンゴ脂質の定量
TL中の各スフィンゴ脂質の含量をTLCデンシトメトリー法により定量した。標準試薬としてコーン由来グルコシルセラミドとα−リグノセリル−ファイトスフィンゴシン(Avanti Polar lipids)を使用した。展開溶媒はクロロホルム/メタノール/水(90:10:1, v/v/v)を用いた。栗皮のグルコシルセラミド含量はTLあたり140mg/g、エキスあたり18mg/g、原料あたり0.56mg/gであった。フリーセラミド含量はセラミドAPとセラミドDPの合計値として、TLあたり242mg/g (AP 112mg, DP 130mg)、エキスあたり31.2mg/g、原料あたり0.97mg/gであった。
なお、他の植物のグルコシルセラミドの含量としては、桃1.7mg/g、リンゴ搾汁残渣0.9mg/g、米ぬか0.2mg/gなどが報告されている。
LC−MS分析
次にLC−MSによりスフィンゴ脂質の構造解析を行った。解析条件は次の通りである。
装置:島津 Prominence−i LC−2030C;検出器:島津LCMS −2020 ESI、スキャンモード m/z 650 − 900(グルコシルセラミド)、m/z 500−800(フリーセラミド)、インターフェイス温度:350℃、ネブライザー流量1.5L/min、ヒートブロック温度:200℃、A液:5mMギ酸アンモニウム/メタノール、B液:5mMギ酸アンモニウム、アイソクラティック条件 (A/B=98:2)、カラム:Waters SunFireTM(C18, 5um, 4.6×250mm)、流速:1ml/min
栗皮エキスのスフィンゴ脂質について、LC−MSにより構造解析を行った。なお、LC−MS解析には、全脂質を用い、LC−MSのモードを切り換えることでグルコシルセラミドとフリーセラミドの解析し分けた。(つまり、ポジティブモードならグルコシルセラミドがイオン化されやすく、ネガティブモードだとフリーセラミドがイオン化されやすいという点を利用して、グルコシルセラミドはポジティブイオンモード、フリーセラミドはネガティブイオンモードで分析した。)また、グルコシルセラミドとフリーセラミドではリテンションタイムも異なる点も加味して解析した。グルコシルセラミドとして7種のピークが、フリーセラミドとして13種のピークが検出された(図4)。マススペクトル解析(とECN〔equivalent carbon number〕および標準品との比較)の結果から判定した分子種を表にして図5に示す。なお、図5中の分子種に示した略語は、セラミド骨格のスフィンゴイド塩基−脂肪酸を示したもので、例えばt18:1はトリヒドロキシ塩基/炭素数18/二重結合1個を示しており、26:0hは脂肪酸炭素数26/二重結合0個/αヒドロキシ、を意味する。グルコシルセラミドの7種のピークのうち6種がフィトタイプといわれるトリヒドロキシ塩基であった。最大成分の4−ヒドロキシスフィンゲニン‐αヒドロキシベヘン酸(t18:1−22:0h)はトータルイオンクロマトグラム(TIC)の面積割合から52%であり、他にC24〜C26の超長鎖脂肪酸結合型も含まれていた。
フリーセラミドの13種のピークからはマススペクトル解析により少なくとも18種のセラミドが同定された(図5)。スフィンゴイド塩基はすべてトリヒドロキシ塩基で、飽和型と8−不飽和型が存在していた。不飽和型はほとんどトランス型であった。脂肪酸はC22〜C27の鎖長を有する超長鎖脂肪酸で構成されていた。C26以上の鎖長をもつセラミドは5種確認され、全体の20%以上を占めていた。
なお、スフィンゴイド塩基の炭素間二重結合に基づく構造異性体(シス型又はトランス型)については、次のようにしてGC分析により確認した。セラミド5mgを1M HClメタノール溶液2mlにて70℃、18時間処理して総スフィンゴイド塩基を遊離させた。2mlのヘキサンで脂肪酸を3回抽出除去し、6M NaOHでpH10に調整した後、水2mlを加えてスフィンゴイド塩基を2mlのジエチルエーテルで3回抽出した。遊離のスフィンゴイド塩基はトリメチルシリルエーテル誘導体とし、GC分析に供した。トランス体はシス体よりも保持時間が早く検出される点を利用して、シス体及びトランス体を確認した。(解析条件、GC:Agilent 6890N, Column: CP−Sil 88)
一般に植物グルコシルセラミドには4,8−スフィンガジエニン及び8−スフィンゲニンといったジヒドロキシ塩基が多く含まれ、且つ脂肪酸鎖長が22以上はマイナー成分であることが知られているが、栗皮から得られたセラミドはトリヒドロキシスフィンゴイド塩基が多く含まれ、且つ炭素鎖長が22以上の脂肪酸が多く含まれており、従来知られていた植物グルコシルセラミドの組成とは大きく異なることが明らかとなった。
化学合成セラミド(例えば化粧品原料として利用されている)は一般にC18脂肪酸から構成されているが、ヒト角質セラミドにおいてC18脂肪酸セラミドの割合が増加するとバリア機能が低下することが報告されている。一方、超長鎖脂肪酸の割合が増えるとバリア機能が上昇し、とくにC26セラミドはバリア機能に重要な役割を担っていることも報告されている。従って、栗皮由来のセラミドは、肌のバリア機能向上又は改善のために有用であると考えられる。
また、特に肌機能のためには、セラミドにおける脂肪酸及びスフィンゴイド塩基が飽和型か、炭素間二重結合を有する場合にはトランス型が好ましいとされており、栗皮由来のセラミドにおいては、脂肪酸は飽和型が豊富である点、及びスフィンゴイド塩基は飽和型又はトランス型である点、からも、有用であると考えられる。
栗における部位間の違いの検討
次に、栗の子実(可食部)のスフィンゴ脂質の検出を行うために、上記と同様にTLを抽出し、アルカリ処理を行った。すなわち、25mgのTLをとり、0.4Mメタノール性KOHを3mL添加し、37℃で40分間処理した。室温に戻した後、クロロホルム6mLと水2.25mLを添加して撹拌後、遠心分離して下層を回収した。下層からの回収液をロータリーエバポレーターで濃縮乾固してアルカリ処理物を調製した。TLCで検出すると、栗の子実にはグルコシルセラミドは微量検出されたが、フリーセラミドは全く検出されなかった(図6)。このことから、フリーセラミドは栗の皮(外皮:鬼皮及び渋皮)に特異的に含まれることが分かった。なお、アルカリ処理を行ったのは、モノグリコシルジグリセリド(MGDG)というグリセロ糖脂質が栗子実にふくまれており、TLC上でちょうどASGとSGの間のフリーセラミドの位置に来ることになるため、これを分解しておくためである。
他の植物の分析
栗以外の植物種子の外皮等についても脂質分析を行った。アーモンド、ピスタチオおよびトチの実の各部位からクロロホルム/メタノール(2:1,v/v)を用いて常法によりTLを調製した。TLをTLCで検出すると、いずれにおいてもスフィンゴ脂質はほとんど検出されなかった。(図7)。
精製操作1
栗皮1kgからエタノール抽出により得られたエキスから3g分取し、それを水10mLによく懸濁し、遠心分離(4℃、15分、5000rpm)した後、液層を除去した。この操作を3回行った。沈殿物を66%エタノール10mLで撹拌し、同様に冷却して遠心分離した。この操作を3回行った。沈殿物をアセトン5mLで撹拌し、同様に冷却して遠心分離した。この操作を2回行った。沈殿物を真空乾燥機で乾燥処理し、0.06gの精製エキス〔1〕を得た。
なお、アセトンで撹拌し、遠心分離した後の上清(すなわち、アセトン可溶部)は回収し、下記の紫外線吸収組成物の調製に利用した。
精製操作2
栗皮1kgからエタノール抽出により得られたエキスから3g分取し、これを水10mLによく懸濁し、遠心分離(4℃、15分、5000rpm)した後、液層を除去した。この操作を計3回行った。沈殿物に0.4M NaOH/水を10mL添加し、37℃で1時間処理した。その後、15℃で遠心分離し、沈殿物を水10mLで3回洗った。沈殿物にアセトン5mLを添加し、4℃で15分間遠心分離し、液層を除去した。沈殿物を真空乾燥機で乾燥処理し、0.19gの精製エキス〔2〕を得た。
得られた精製エキスのTLC分析を行った(図8)。精製エキス〔1〕と〔2〕ともに、グルコシルセラミドに加えてフリーセラミドのスポットが認められた。TLCデンシトメトリー法により定量すると、精製エキス〔1〕のグルコシルセラミド量は15.8%、フリーセラミド量は22.7%であった。
皮膚へ与える影響の検討
精製エキス〔1〕に、さらにエタノール及び活性炭を添加して、ろ過及び脱色した後、真空乾燥機で乾燥処理した。さらに得られた乾燥物を冷アセトンで洗浄したのち真空乾燥機で乾燥処理した。得られた乾燥物を粉砕し、篩過させ、得られた粉末を被験栗セラミドとした。
当該被験栗セラミドをTLCデンシトメトリー法にて検査したところ、ヒト型セラミドが30〜50モル%、フィトステロールが30〜60モル%、グルコシルセラミドが10〜30モル%含まれていた。
当該被験栗セラミドを試験溶媒に溶解させ、被験栗セラミドを0.1質量%濃度含有する被験栗セラミド溶液とした。なお、試験溶液は、水及び1,3−ブチレングリコールの混合溶液(混合質量比率は73:25)であり、界面活性剤(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油)を2質量%含有する溶液を用いた。セラミドは難水溶性であるため、界面活性剤を用いて乳化する必要があるためである。
被験栗セラミド溶液を、80μLずつ、被験者10人の前腕内側部に塗布した。そして、塗布前及び塗布1時間後に、皮膚(角層)水分量及び経皮水分蒸散量(TEWL)を測定した。
皮膚水分量測定はCORNEOMETER CM 825を用いて、経皮水分蒸散量測定はTewameter TM300を用いて(いずれもCourage+Khazaka(ドイツ)社製)、それぞれ行った。なお、試験は環境調整室(温度22±2℃、湿度50±10%)で実施し、1部位につき測定部位を約5mmずらして3回以上測定し、平均値を算出した。
また、被験溶媒をプラセボとして、また、被験栗セラミドの代わりに市販のセラミドAPを被験溶媒に溶解させたものを被験合成セラミドAP溶液として、上記と同様の検討を行った。当該市販のセラミドAPは、純度99%のセラミドAP1(より詳細には、セラミド6II)である。
検討結果を図9に示す。なお、図9における「塗布後」は塗布1時間後を示す。また、当該検討においては、市販セラミドAP及び栗セラミドは、同質量用いた。より具体的には、いずれも、0.1質量%溶液を同量用いて検討した。(上記の通り、栗セラミドにはフィトステロールが含まれているため、結果的に栗セラミドに含まれるセラミド量は市販セラミドAPに含まれるセラミド量に比べて少ないと推測される。)
紫外線吸収組成物の調製
精製操作1の工程において、アセトンで撹拌し、遠心分離した遠心上清(すなわちアセトン可溶部)を回収して濃縮乾固し、濃縮乾固物0.12gを得た。これをエタノール2mlに懸濁し、No.1ろ紙で自然ろ過した。ろ液は冷蔵庫で冷却後、再度、No.1ろ紙で自然ろ過した。ろ紙内の固形部(エタノール不溶画分)を回収して合わせ、乾燥させることにより、12mgの固形部を得た。当該固形部をクロロホルム/メタノール(2:1)6mlに懸濁し、水を1.5mlを添加して撹拌後、遠心分離した。下層(クロロホルム層)を回収して濃縮乾固し、固形物8.4mgを得た。当該固形部を「栗UVP」とよぶことがある。
紫外線吸収試験
市販の紫外線A波(UVA)吸収剤及び紫外線B波(UVB)吸収剤を、それぞれエタノールに溶解させ、対象として用いた。なお、当該エタノール溶液の各吸収剤濃度は、10ppm又は20ppmとした。また、市販の紫外線A波(UVA)吸収剤としてジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル(Uvinul A Plus Granular, BASF社製)を、市販の紫外線B波(UVB)吸収剤としてパラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル(ESCALOL 557, Ashland社製)を、それぞれ用いた。
栗UVPの40ppmエタノール溶液を調製し、これを被験サンプルとして用いた。
紫外線の吸光度測定は、分光光度計(V−630BIO型、日本分光)を用いて、エタノールをブランクとしてスペクトル測定により行った。結果を図10に示す。栗UVPの40ppmエタノール溶液は、市販合成UVA吸収剤約12.5ppmに相当する紫外線吸収能を示した。
紫外線照射試験
市販UVA吸収剤の20ppmエタノール溶液と栗UVPの40ppmエタノール溶液とに、暗所で254nm(1013μW/cm)又は365nm(1407μW/cm)の紫外線照射(ハンディーUVランプ、アズワン製)を行い、デジタル写真撮影を行った。結果を図11に示す。図11では、市販UVA吸収剤の20ppmエタノール溶液を「市販」と表記し、栗UVPの40ppmエタノール溶液を「栗」と表記する。栗UVPエタノール溶液では、365nm波長のUV照射により、可視光線が確認された。これにより、栗UVPは紫外光を可視光に変換することが示された。
限定的な解釈を望むものではないが、以上の結果から、栗UVPは紫外線で励起され、励起光より波長の長い可視光にシフトして蛍光としてエネルギーを放出できるものと推測される。
水分蒸発抑制試験
15ml容口内径14mmのガラス容器に、vehicle、0.05質量%栗セラミド溶液、0.05質量%栗UVP溶液、0.05質量%栗セラミド+0.05質量%栗UVP溶液、の4種を各5g加え、電子天秤に静置(室温23℃、湿度50%)して水分の蒸発による重量の変化を測定し、1時間後の数値(コントロールを1とした相対値)を算出した。結果を図12に示す。図12では、前記栗セラミド溶液はCer、前記栗UVP溶液はUVP、と表記する。いずれの溶液も、溶媒組成は、界面活性剤(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油)3%、ブチレングリコール30%、残り水、とした。なお、用いた栗セラミドは、上記「皮膚へ与える影響の検討」で調製した被験栗セラミドである。
vehicleは評価成分無添加(すなわち、溶媒そのもの)とした。コントロール(すなわちvehicle)の水分蒸発量を1としたとき、栗セラミド群では蒸発割合は0.84(0.16減)に、栗UVP群では0.92(0.08減)に、栗セラミド+栗UVP混合群では0.55(0.45減)に低下した。混合群では、単一群の合算値よりも1.87倍高い数値(0.45/(0.16+0.08))を示した。
[付記]
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]
フリーセラミド及びグルコシルセラミドを含む栗皮抽出物。
[2]
含まれるフリーセラミド及びグルコシルセラミドの重量比(フリーセラミド/グルコシルセラミド)が、1〜10である、[1]に記載の抽出物。
[3]
含まれるフリーセラミドのうち、50モル%以上が、スフィンゴイド塩基部分のヒドロキシル基数が3であるフリーセラミドである、[1]又は[2]に記載の抽出物。
[4]
含まれるグルコシルセラミドのうち、50モル%以上が、スフィンゴイド塩基部分のヒドロキシル基数が3であるグルコシルセラミドである、[1]〜[3]のいずれかに記載の抽出物。
[5]
栗皮抽出物のフリーセラミド画分であって、含まれるフリーセラミドのうち、50モル%以上が、スフィンゴイド塩基部分のヒドロキシル基数が3であるフリーセラミドである、画分。
[6]
栗皮抽出物のグルコシルセラミド画分であって、含まれるグルコシルセラミドのうち、50モル%以上が、スフィンゴイド塩基部分のヒドロキシル基数が3であるグルコシルセラミドである、画分。
[7]
[1]〜[4]のいずれかに記載の抽出物、あるいは[5]又は[6]に記載の画分を含む、化粧品組成物、食品組成物、又は医薬品組成物。

Claims (3)

  1. フリーセラミド及びグルコシルセラミドを含む栗皮抽出物の製造方法であって、
    栗皮を、エタノールの容量比率が95〜99.9体積%のエタノール抽出溶媒で抽出することにより、フリーセラミドとグルコシルセラミドを含むエタノール抽出物を得ること、および、
    前記エタノール抽出物をアセトン抽出で精製することにより、アセトン不溶画分とアセトン可溶画分とに分離し、前記アセトン不溶画分として、フリーセラミド及びグルコシルセラミドの重量比(フリーセラミド/グルコシルセラミド)が、1〜10である栗皮抽出物を得ること
    を含む製造方法。
  2. 前記アセトン抽出が繰り返して行われる、請求項に記載の製造方法。
  3. 前記栗皮抽出物に含まれる前記フリーセラミドのうち、50モル%以上が、スフィンゴイド塩基部分のヒドロキシル基数が3のフリーセラミドである、請求項又はに記載の製造方法。
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