JP6686513B2 - 情報処理装置、車載装置、記憶媒体及びコンピュータプログラム - Google Patents
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Description
具体的には、本発明は、自動走行における異常走行を回避する処理に有用となる情報を生成する技術に関する。
支援運転には種々のタイプがあり、例えば、道路の道なりに走行する制御を行うもの(特許文献1)、指令車速となるようにアクセルやブレーキの操作量を制御するもの(特許文献2)、先行車との車間距離を維持する制御を行うもの(特許文献3)などがある。
例えば、急カーブや渋滞末尾などの事象が、車載センサの検出範囲から外れた下流側の位置に存在していても、自動運転車両が自動走行中である場合は、車載センサの検出範囲に入るまでは当該事象に対応できず、急減速などの異常走行となる可能性がある。
しかし、現状では、自動走行における異常走行を回避する処理に有用な情報を生成する装置は、未だ開発されていない。
以下、本発明の実施形態の概要を列記して説明する。
(1) 本実施形態の情報処理装置は、所定の情報処理を実行する情報処理部を備える情報処理装置であって、前記情報処理には、自動運転車両のプローブ情報と道路地図データに基づいて、自動走行が行われた走行区間における複数種類の異常走行の有無と、複数種類の前記異常走行の要因となり得る複数種類の特徴量の有無又は値とを含む走行リスクデータを生成するデータ生成処理と、生成された複数の前記走行リスクデータに基づいて、複数種類の前記特徴量の有無又は値に対する複数種類の前記異常走行の発生確率を含むリスク判定モデルを生成するモデル化処理と、が含まれる。
例えば、リスク判定モデルを用いて、発生確率が高い異常走行の要因と推定される特徴量を含む走行区間を特定し、特定した走行区間の通行を避けるなどにより、自動走行における異常走行を回避できるようになる。
その理由は、気象情報を入力データとする場合には、例えば「降水量」など、プローブ情報では判定できない特徴量を採用できるからである。また、交通情報(例えば、VICS情報)を入力データとすれば、「渋滞末尾」を特徴量として採用する場合に、当該特徴量の値を交通情報から算出可能となるからである。
このようにすれば、自動走行において自動運転がいきなり停止することに伴う搭乗者の動揺を防止でき、スムーズに手動運転に切り替えることができる。
このようにすれば、急減速の発生確率が高い走行区間を自車両が比較的低速で自動走行できるので、急減速の回避した自動走行を行うことができる。
従って、本実施形態の記憶媒体は、上述の本実施形態の情報処理装置と同様の作用効果を奏する。
従って、本実施形態のコンピュータプログラムは、上述の本実施形態の情報処理装置と同様の作用効果を奏する。
以下、図面を参照して、本発明の実施形態の詳細を説明する。なお、以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
本実施形態の詳細を説明するに当たり、まず、本明細書で用いる用語の定義を行う。
「車両」:道路を通行する車両全般のことをいう。自動車、原動機付き自転車、軽車両及びトロリーバスなどの道路交通法上の車両のほか、自動二輪車も本実施形態の車両に該当する。車両の駆動方式は特に限定されない。従って、EV(Electric Vehicle)及びPHV(Plug-in Hybrid Vehicle)なども、本実施形態の車両に該当する。
「自動運転」:車両の各種センサによるセンシング結果に基づいて、ECU(Engine Control Unit)などの車両の制御システムが自車両の運転の一部又は全部を自動的に行う運転のことをいう。
自動運転には、車両の制御システムが自車両の運転の一部を自動的に行って、搭乗者による自車両の運転を支援する「支援運転」も含まれる。これには、車両の減速又は方向転換の自動的な介入や、音声又は画面表示による搭乗者への注意喚起などがある。
「自動走行」:自動運転車両が自車両の動作モードを自動運転モードに設定して道路を走行すること、すなわち、自動運転中である自動運転車両の走行のことをいう。
「プローブ情報」:道路を走行中の車両から得られる当該車両に関する各種情報のことをいう。プローブデータ或いはフローティングカーデータとも称される。プローブ情報には、車両ID、車両位置、車両速度、車両方位及びこれらの発生時刻などの各種の車両データが含まれる。
CAN情報には、例えば、車両のアクセル開度、ブレーキ踏力、ハンドル操舵角及び動作モードの状態情報(自動運転モード又は手動運転モードのいずれかを表す識別情報)などの車両データが含まれる。
「急加速」:車両の加速度(走行方向と同じ向きのため、正値で定義する。)が所定の閾値(例えば0.30G〜0.45G)以上である走行のことをいう。アクセル開度で定義する場合は、走行時におけるアクセル開度が所定値以上となることをいう。
ハンドル操舵角で定義する場合は、所定の車両速度(例えば、40km/h)以上での走行時における、単位時間当たりのハンドル操舵角の変化量である操舵角速度が、所定の閾値以上となることをいう。
外部要因には、例えば、プローブ車両が走行中の道路における、「カーブ」の曲率半径、「料金所」の有無、「合流」の有無、「降水量」の多寡、「交通量」の多寡及び「渋滞末尾」の有無などが含まれる。
これに対して、自動走行中の自動運転車両の場合には、内部要因として、自動運転の制御プログラムのアルゴリズム又はパラメータの不備などのソフトウェア要因が考えられる。つまり、そのようなソフトウェア要因が存在する制御プログラムにより自動運転が継続されると、異常走行が発生する可能性が高まると考えられる。
所定単位長を距離で定義する場合には、例えば、500m〜10kmの範囲に含まれる所定距離、或いは、道路地図データの各リンクとすればよい。所定単位長を時間で定義する場合には、例えば、2分〜5分の範囲に含まれる所定時間とすればよい。
図1は、本発明の実施形態に係る情報処理システム1の全体構成図である。
図1に示すように、本実施形態の情報処理システム1は、データセンターなどに設置された情報処理装置の一種であるサーバ装置2と、自動走行が可能な複数のプローブ車両3とを備える。
このため、情報処理システム1の構成要素となるプローブ車両3には、少なくとも複数の自動運転車両3Aが含まれる。もっとも、情報処理システム1を構成するプローブ車両3には、自動走行を行わない手動運転車両3Bが含まれていてもよい。
サーバ装置2の情報提供サービスには、複数のプローブ車両3から取得したプローブ情報S1から生成された、VICS(「VICS」は登録商標である。)情報が得られない道路区間のリンク旅行時間などを提供するサービスや、登録会員の通信端末からの探索要求に応じて、直近のプローブ情報S1を用いた経路探索処理を行い、探索結果を通信端末に通知するサービスなどが含まれる。
従って、各地に存在するプローブ車両3は、自車両のプローブ情報S1をサーバ装置2宛てに送信することができる。サーバ装置2は、プローブ情報S1及び道路地図データなどを用いて情報提供サービスを実行する。プローブ車両3は、サーバ装置2から提供されるリンク旅行時間などの提供情報S2を、無線基地局4から受信することができる。
図1に示すように、サーバ装置2は、ワークステーション等よりなるサーバコンピュータ10と、サーバコンピュータ10に接続された各種のデータベース21〜27とを備える。サーバコンピュータ10は、情報処理部11、記憶部12及び通信部13を備える。
記憶部12は、HDD(Hard Disk Drive)及びSSD(Solid State Drive)のうちの少なくとも1つの不揮発性メモリ(記憶媒体)と、ランダムアクセスメモリ等よりなる揮発性メモリ(記憶媒体)とを含む記憶装置である。
記憶部12が記憶するコンピュータプログラム14には、通信部13の制御プログラムのほか、後述の「第1情報処理P1」及び「第2情報処理P2」(図2参照)などの処理を情報処理部11に実行させるプログラムなどが含まれる。
交通情報サーバ6は、VICSセンターから取得した日本全国のVICS情報を提供する、所定の情報サービス事業者が運営するサーバである。気象情報サーバ7は、各地の気象台などから取得した日本全国の気象情報を提供する、所定の情報サービス事業者が運営するサーバである。
データベース21〜27は、サーバコンピュータ10にそれぞれデータ転送可能に接続された、HDD又はSSDなどを含む大容量ストレージよりなる。
「交差点データ」は、日本全国の交差点に付与された交差点IDと、その交差点位置とを対応付けたデータである。「リンクデータ」は、日本全国の道路に対応して付与された特定リンクのリンクIDに対して、次の情報1)〜4)を対応付けたデータよりなる。
2) 特定リンクの始点に接続するリンクID
3) 特定リンクの終点に接続するリンクID
4) 特定リンクのリンクコスト
具体的には、道路地図データ28は、交差点ごとにノードnが設定され、各ノードn間が逆向きの一対のリンクlで繋がった有向グラフよりなる。従って、一方通行の道路の場合は、一方向のリンクlのみで表現される。
プローブデータベース22には、日本全国に存在する登録会員のプローブ車両3から通信部13が受信した、多数のプローブ情報S1が蓄積される。交通情報データベース23には、交通情報サーバ6から通信部13が受信した、日本全国のVICS情報よりなる多数の交通情報が蓄積される。
各データベース22〜24に蓄積される情報は、当該情報の発生時刻tp(タイムスタンプ)が現時点から遡って所定期間Tp(例えば、所定期間Tpは3か月以上2年以下)に含まれる情報である。従って、各データベース22〜24に含まれる情報は、発生時刻が最新の情報を通信部13が受信するごとに更新され、発生時刻が最も古い情報から順に消去される。
「走行リスクデータ」とは、プローブ車両3が自動走行により通行した走行区間ごとに、異常走行の有無と当該異常走行に関連し得る特徴量(要因)の値が記録されたデータのことをいう(図3及び図4参照)。
「リスク判定モデル」とは、想定される要因が自動走行の異常走行に及ぼす度合いを数値化した情報(リスク判定情報)の一種であり、本実施形態では、外部要因である特徴量(カーブ、料金所、合流など)の値に応じて、自動走行時における異常走行の発生確率を算出可能となるように構造化されたモデルが採用されている。
「疑義ケースデータ」とは、ある種の異常走行が発生した要因が、道路側の外部要因ではなく、自動運転車両3Aの内部要因(例えば、自動運転の制御プログラムの不備などのソフトウェア要因)の疑いがあることを表すデータのことをいう(図9〜図11参照)。
図1に示すように、プローブ車両3は、車載装置の一種である車載コンピュータ30を備えている。
車載コンピュータ30は、プローブ車両3の加速、制動及び操舵などに関する運転制御機能と、搭乗者の操作入力に応じて経路探索を行うナビゲーション機能を併有しており、処理部31、記憶部32及び通信部33を有する。
処理部31は、記憶部32の不揮発性メモリに格納されたコンピュータプログラム34を読み出し、当該プログラム34に従って情報処理を行うCPU及びECUを含む演算処理装置よりなる。
また、記憶部32が記憶するコンピュータプログラムには、後述の「走行リスク判定処理30」及び「走行リスク回避処理P31」(図8参照)などの処理を処理部31に実行させるプログラムなどが含まれる。
通信部33は、GPS(Global Positioning System )受信機を有しており、処理部31は、通信部33が受信するGPSの位置情報に基づいて自車両の車両位置をほぼリアルタイムにモニタリングしている。
記憶部12に所定時間(例えば5分)分の車両データが蓄積されると、通信部33は、蓄積された車両データをプローブ情報S1としてサーバ装置2宛てに送信する。
図2は、サーバコンピュータ10の情報処理部11が実行する情報処理P0の概要を示す説明図である。
図2に示すように、情報処理部11が実行する情報処理P0には、第1情報処理P1と第2情報処理P2が含まれる。
情報処理部11は、プローブ情報S1、道路地図データ28、交通情報及び気象情報を入力データとして第1情報処理P1を実行し、リスク判定モデルを生成する。情報処理部11は、生成したリスク判定モデルをリスク判定データベース26に格納する。
車載コンピュータ30の処理部31に含まれるナビゲーションCPUは、受信したリスク判定モデルを参照して、例えば、異常走行の発生確率が所定値以上に高まる特徴量が含まれる経路を探索対象から除外して経路探索処理を実行する。これにより、自動走行時における異常走行を回避した走行計画が算出される。
情報処理部11は、プローブ情報S1、道路地図データ28、交通情報及び気象情報を入力データとして第2分析処理P2を実行し、疑義ケースデータを生成する。情報処理部11は、生成した疑義ケースデータを疑義ケースデータベース27に格納する。
制御プログラムの見直しの結果、必要な場合には、技術担当者は、制御プログラムのアルゴリズム又はパラメータの変更を行い、変更後の更新プログラムをパーソナルコンピュータなどの通信端末を用いてサーバコンピュータ10に送信する。
情報処理部11は、自動運転の更新プログラムを受信すると、受信した更新プログラムを自動運転車両3Aの車載コンピュータ30に送信する。車載コンピュータ20の処理部31に含まれる自動運転ECUは、運用中の制御プログラムを、受信した更新プログラムに置き換える。これにより、自動運転の制御プログラムのアルゴリズム又はパラメータが改善される。
図3は、サーバコンピュータ10の情報処理部11が実行する第1情報処理P1と第2分析処理P2の具体例を示す説明図である。
図3に示すように、第1情報処理P1には、データ生成処理P10とモデル化処理P21が含まれる。第2分析処理P2には、データ生成処理P10とデータ抽出処理P22が含まれる。従って、データ生成処理P10は、第1及び第2情報処理P1,P2の両者に共通する情報処理である。
情報処理部11は、蓄積されたプローブ情報S1の中から、動作モードの状態情報がオン(=自動運転)である自動運転車両3Aのプローブ情報S1を抽出し、抽出したプローブ情報S1について各処理P11,P12を実行する。
本実施形態では、異常走行の種類の例として、「急減速」、「急加速」、「急操舵」及び「自動運転モード停止」の4種類を想定する。
情報処理部11は、上記4種類の事象の有無を例えば以下のように判定し、その判定結果(異常走行なしの場合を含む。)と、異常走行ありの場合の異常走行の開始位置と、異常走行なしの場合の走行区間とを、特徴量判定処理P12の入力情報とする。
情報処理部11は、最新時刻Tiの車両速度Viと1期前の時刻Ti−1の車両速度Vi−1とから、加速度A=(Vi−Viー1 )/( Ti−Ti−1 )を算出し、Aが所定の閾値(負値)以下の場合には、急減速ありと判定し、Aが所定の閾値(負値)を超える場合には、急減速なしと判定する。
プローブ情報S1にブレーキ踏力が含まれる場合には、最新時刻Tiのブレーキ踏力が所定の閾値より大きい場合に急減速ありと判定してもよい。この場合の急減速の開始位置は、時刻Tiの車両位置である。
情報処理部11は、最新時刻Tiの車両速度Viと1期前の時刻Ti−1の車両速度Vi−1とから、加速度A=(Vi−Vi−1 )/( Ti−Ti−1 )を算出し、Aが所定の閾値(正値)以上の場合には、急加速ありと判定し、Aが所定の閾値(正値)未満の場合には、急加速なしと判定する。
プローブ情報S1にアクセル開度が含まれる場合には、最新時刻Tiのアクセル開度が所定の閾値より大きい場合に急加速ありと判定してもよい。この場合の急加速の開始位置は、時刻Tiの車両位置である。
情報処理部11は、最新時刻Tiの車両方位Diと1期前の時刻Ti−1の車両方位Di−1から、角速度W=(Di−Di−1 ) /( Ti−Ti−1 )を算出し、Wの絶対値が所定の閾値以上の場合には、急操舵ありと判定し、Wの絶対値が所定の閾値未満の場合には、急操舵なしと判定する。
プローブ情報S1にハンドル操舵角が含まれる場合には、最新時刻Tiと1期前の時刻Ti−1のハンドル操舵角とから角速度Wを算出してもよい。
情報処理部11は、1期前の時刻Ti−1における自動運転車両3Aの動作モードの状態情報がオン(=自動運転)である場合に、最新時刻Tiの動作モードの状態情報がオフ(=手動運転)となった場合に、自動運転モード停止ありと判定する。
情報処理部11は、自動運転モード停止ありの場合の自動運転モード停止の開始位置を、時刻Tiの車両位置に設定する。
情報処理部11は、自動走行中のすべての自動運転車両3Aの全行程のうち、上記の4種類の異常走行を検出しなかった残りの道路区間を複数の走行区間に分割し、分割後の各走行区間についての判定結果を異常走行なしとする。
本実施形態では、特徴量の種類の例として、「カーブ」、「料金所」、「合流」、「降水量」、「交通量」及び「渋滞末尾」の6種類を想定する。
情報処理部11は、異常走行判定処理P11が完了したすべての走行区間について、当該走行区間における上記6種類の特徴量の値を決定する。なお、ここでは、特徴量の値を「1」(=あり)及び「0」(=なし)の二値で定義する。
情報処理部11は、走行区間に含まれる道路リンクの始点、中間点、終点の座標を用いて、当該点とその前後の点の座標から当該点における曲率半径を算出する。
情報処理部11は、算出した曲率半径が所定値(例えば、高速道路で350m、一般道路で200m)以下である場合には、カーブあり(特徴量の値=1)と判定し、所定値を超える場合には、カーブなし(特徴量の値=0)と判定する。
情報処理部11は、道路地図データ28を用いて、走行区間に含まれる道路リンクに料金所を表す施設情報が存在するか否かを判定する。
情報処理部11は、料金所の施設情報が存在する場合には、料金所あり(特徴量の値=1)と判定し、存在しない場合には、料金所なし(特徴量の値=0)と判定する。
情報処理部11は、道路地図データ28を用いて、走行区間に含まれる道路リンクに合流が存在するか否かを判定する。例えば、走行区間に含まれる道路リンクが複数の進入リンクを有する場合には合流が存在する。
情報処理部11は、合流が存在する場合には、合流あり(特徴量の値=1)と判定し、存在しない場合には、合流なし(特徴量の値=0)と判定する。
情報処理部11は、気象情報から、異常走行の開始位置を内部に含む走行区間を包含する所定の大きさのエリア(例えば、1km四方のメッシュ)の降水量を抽出する。
情報処理部11は、抽出した降水量が所定値(例えば、15mm/h)以上である場合には、降水量あり(特徴量の値=1)と判定し、所定値未満である場合には、降水量なし(特徴量の値=0)と判定する。
情報処理部11は、蓄積されたすべてのプローブ情報S1のうち、異常走行の発生時刻を含む所定時間(例えば15分)内に、異常走行の開始位置を通過したプローブ車両3の台数を算出する。
情報処理部11は、算出した車両台数が所定値以上である場合には、交通量あり(特徴量の値=1)と判定し、所定値未満である場合には、交通量なし(特徴量の値=0)と判定する。
情報処理部11は、異常走行の開始位置から下流側を通行していたプローブ車両3の車両位置と車両速度を用いて、異常走行の車両の下流側に渋滞末尾が存在していたか否かを判定する。
情報処理部11は、渋滞末尾が存在する場合には、渋滞末尾あり(特徴量の値=1)と判定し、存在しない場合には、渋滞末尾なし(特徴量の値=0)と判定する。
図4に示すように、走行リスクデータベース25は、走行区間m(m=1〜n)が行に割り当てられ、走行区間mごとの特徴量の値と異常走行の有無が列に割り当てられたテーブルを備える。
1つの走行リスクデータは、1つの行の走行区間mに含まれる複数のセルに記される数値又は記号よりなり、各セルには特徴量の値と異常走行の有無が記される。
また、「カーブ」、「降水量」及び「交通量」など、有無ではなく数値で表現されることが通常である特徴量の場合は、3つ以上の値で1つの特徴量の多寡を定義してもよいし、R0≦R<R1の第1カーブ、R1≦R<R2の第2カーブのように、カーブの種類を曲率半径の範囲で定義し、それらのカーブの有無を二値で表現することにしてもよい。
図5は、サーバコンピュータ10の情報処理部11が実行する走行リスクデータのモデル化処理P21の一例を示すフローチャートである。図6は、モデル化処理P21により生成されるリスク判定モデルの一例を示す説明図である。
本実施形態では、多数の走行リスクデータに含まれる特徴量と異常走行との因果関係をモデル化する手法として、ベイジアンネットワークを採用している。
以下、図5及び図6を参照しつつ、本実施形態の走行リスクデータのモデル化処理P21と、この処理P21によって得られるリスク判定モデルの具体例を説明する。
具体的には、情報処理部11は、特徴量に対応する有向リンクの起点ノードである6つのノードXj(j=1〜6)と、異常走行に対応する有向リンクの終点ノードである4つのノードYk(k=1〜4)を生成する(図6参照)。
例えば、図6の例では、カーブのノードX1の条件付き確率表T1において、カーブありの確率が0.05であり、カーブなしの確率が0.95となっている。この確率は、データベース25に蓄積されたカーブありの走行リスクデータ数(件数)と、カーブなしの走行リスクデータ数(件数)とから算出される。
本実施形態では、ノードXjに対応する特徴量として、ノードYkの要因となり得るものが予め採用されているので、ノードYkに関連する親ノードの候補となるノードXjの集合は、すべてのノードX1〜X6となる。
この親ノードの決定処理は、条件付き確率表T1〜T6に記された確率から算出されるAIC(赤池情報量基準)が最小となるノードXjの組み合わせを、ノードYkの正規の親ノードとすることによって行うことができる。
そして、候補ノードの追加によりAICが減少する場合には、当該候補ノードを正規の親ノードとして採用し、増加する場合には、当該候補ノードを正規の親ノードに採用しないようにすればよい。
例えば、図6の例では、急減速のノードY1は、6つの親ノードX1〜X6と結ばれ、急加速のノードY2は、3つの親ノードX2,X3,X5と結ばれている。同様に、急操舵のノードY3は、5つの親ノードX1〜X5と結ばれ、自動運転モード停止のノードY4は、6つの親ノードX1〜X6と結ばれている。
終点側の各ノードYkに関する条件付き確率表Ukは、ノードYkに対応する異常走行のあり/なしに加えて、ノードYkに対応する親ノードXjの値が条件として付加された確率表となっている。
図7(a)は、急減速のノードY1に関する条件付き確率表U1を示し、図7(b)は、急加速のノードY2に関する条件付き確率表U2を示している。
図7において、Xj=0の場合は、親ノードXjの特徴量が「なし」であることを意味し、Xj=1の場合は、親ノードXjの特徴量が「あり」であることを意味する。また、Xj=N(nul)の場合は、当該ノードXjが親ノードではないことを意味する。
この確率は、データベース25に蓄積された走行リスクデータのうち、X1〜X6=0の場合に急減速が発生した走行リスクデータ数(件数)と、X1〜X6=0の場合に急減速が発生しなかった走行リスクデータ数(件数)とから算出される。
この確率は、データベース25に蓄積された走行リスクデータのうち、X1〜X5=0でかつX6=1の場合に急減速が発生した走行リスクデータ数(件数)と、X1〜X5=0でかつX6=1の場合に急減速が発生しなかった走行リスクデータ数(件数)とから算出される。
この確率は、データベース25に蓄積された走行リスクデータのうち、X2,X3,X5=0の場合に急加速が発生した走行リスクデータ数(件数)と、X2,X3,X5=0の場合に急加速が発生しなかった走行リスクデータ数(件数)とから算出される。
この確率は、データベース25に蓄積された走行リスクデータのうち、X2,X3=0でかつX5=1の場合に急加速が発生した走行リスクデータ数(件数)と、X2,X3=0でかつX5=1の場合に急加速が発生しなかった走行リスクデータ数(件数)とから算出される。
図8は、車載コンピュータ30の処理部31が実行する、走行リスク判定処理P30と走行リスク回避処理P31の概要を示す説明図である。
図8に示すように、サーバ装置2は、リスク判定モデル(図6参照)を車載コンピュータ30に送信可能である。車載コンピュータ30の処理部31は、受信したリスク判定モデルを用いて走行リスク判定処理P30を実行する。
次に、処理部31は、抽出した異常走行のノードYkに繋がる親ノードXjの中から、Xj=1である親ノードXjを選択することにより、異常走行のノードYkの要因であると推定される特徴量の種別を特定し、特定した種別をリスク情報に含める。
走行リスク回避処理P31は、走行リスク判定処理P33によって得られたリスク情報を用いて、自動走行における異常走行の発生を回避する処理である。
これにより、急減速の発生確率が高い第1リスク区間を含む走行計画(探索結果)の出力が防止又は抑制され、急減速の発生を回避した走行計画を生成することができる。
これにより、急減速の発生確率が高い第1リスク区間を自動運転車両が比較的低速で自動走行することになり、急減速の発生を回避した自動走行を行うことができる。
これにより、第2リスク区間での自動走行において自動運転モードがいきなり停止することに伴う搭乗者の動揺を防止でき、スムーズに手動運転に切り替えることができる。
この場合、サーバコンピュータ10がリスク情報を生成して車載コンピュータ30に送信し、車載コンピュータ30は、受信したリスク情報を用いて走行リスク回避処理P31を実行することになる。
図3に示すように、サーバコンピュータ10の情報処理部11が実行するデータ抽出処理P22には、リスク判定データベース26に格納されたリスク判定モデルから、疑義ケースデータを抽出する処理が含まれる。
図9に示す疑義ケースデータは、急減速のノードY1がすべてのノードX1〜X6と有向リンクで繋がる場合において、ノードX1〜X6の値がすべて0(=特徴量なし)であり、かつ、ノードY1の発生確率が所定値(例えば、0.30)以上であるケースを示している。
ここで、急減速に影響する内部要因としては、ブレーキシステムや前方用の画像センサの故障などのハードウェア要因が考えられる。
従って、多数のプローブ情報S1を用いて統計的手法で作成されたリスク判定モデルにおいて、外部要因の特徴量が発生していないのに所定値以上の確率で急減速が発生するということは、自動運転の制御プログラムのアルゴリズム又はパラメータの不備などの、ソフトウェア要因の影響である疑いが高いと考えられる。
すなわち、ノードX1〜X6の値がオールゼロであるのにノードY2(急加速)の発生確率が所定値以上であるケース、ノードX1〜X6の値がオールゼロであるのにノードY3(急操舵)の発生確率が所定値以上であるケース、及び、ノードX1〜X6の値がオールゼロであるのにノードY4(自動運転モード停止)の発生確率が所定値以上であるケースも、それぞれ疑義ケースデータに該当する。
探索の結果、上記のようなノードYkが存在する場合には、当該ノードYkとこれに繋がるノードX1〜X6とからなる有向グラフを生成し、生成した有向グラフを疑義ケースデータとしてデータベース27に格納する。
図10に示す疑義ケースデータは、急加速のノードY2がノードX1のみと有向リンクで繋がっており、ノードX1の値が1(=特徴量あり)であり、かつ、ノードY2の発生確率が所定値(例えば、0.30)以上であるケースを示している。
しかし、手動運転ではカーブで減速するのが通常であるから、多数のプローブ情報S1を用いて統計的手法で作成されたリスク判定モデルにおいて、上記のケースが所定値以上の確率で発生するということは、自動運転の制御プログラムが手動運転とは異なる不自然な操作を車両に指示していると推定され、ソフトウェア要因の影響である疑いが高いと考えられる。
探索の結果、上記のようなノードYkが存在する場合には、当該ノードYkとこれに繋がるノードXjとからなる有向グラフを生成し、生成した有向グラフを疑義ケースデータとしてデータベース27に格納する。
また、リスク判定モデルのディスプレイ表示又は印刷出力(紙媒体)に基づいて、自動車メーカーの技術担当者などが人手で疑義ケースデータを抽出することにしてもよい。
図3に示すように、サーバコンピュータ10の情報処理部11が実行するデータ抽出処理P22には、走行リスクデータベース25に蓄積された走行リスクデータから、疑義ケースデータを抽出する処理であってもよい。
図11に示す疑義ケースデータは、所定の異常走行(例えば、急減速)の発生回数を車種(例えば、普通自動車C1と大型車両C2)ごとにカウントすることにより生成された数値データよりなる。
ここで、普通自動車C1で採用されている自動運転の制御プログラムと、大型車両C2で採用されている自動運転の制御プログラムが異なると仮定すれば、急減速の発生回数に上記のような大差が存在する場合には、普通自動車C1の制御プログラム又は制御パラメータ(定数)に何らかの修正が必要であると推測される。
判定の結果、発生回数などに有意な差が認められる場合には、カウントした車種ごとの発生回数(または発生確率)を、疑義ケースデータとしてデータベース27に格納する。
また、走行リスクデータのディスプレイ表示又は印刷出力(紙媒体)に基づいて、自動車メーカーの技術担当者などが人手で疑義ケースデータを抽出することにしてもよい。
今回開示した実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の権利範囲は、上述の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された構成と均等の範囲内でのすべての変更が含まれる。
2 サーバ装置(情報処理装置)
3 プローブ車両
3A 自動運転車両
3B 手動運転車両
4 無線基地局
5 公衆通信網
6 交通情報サーバ
7 気象情報サーバ
10 サーバコンピュータ
11 情報処理部
12 記憶部
13 通信部
14 コンピュータプログラム
20 車載コンピュータ(車載装置)
21 地図データベース
22 プローブデータベース
23 交通情報データベース
24 気象情報データベース
25 走行リスクデータベース
26 リスク判定データベース
27 疑義ケースデータベース
28 道路地図データ
30 車載コンピュータ
31 処理部
32 記憶部
33 通信部
34 コンピュータプログラム
P0 情報処理
P1 第1情報処理
P2 第2情報処理
P10 データ生成処理
P11 異常走行判定処理
P12 特徴量判定処理
P21 モデル化処理
P22 データ抽出処理
P30 走行リスク判定処理
P31 走行リスク回避処理
Claims (10)
- 所定の情報処理を実行する情報処理部を備える情報処理装置であって、
前記情報処理には、
自動運転車両のプローブ情報と道路地図データに基づいて、自動走行が行われた走行区間における複数種類の異常走行の有無と、複数種類の前記異常走行の要因となり得る複数種類の特徴量の有無又は値とを含む走行リスクデータを生成するデータ生成処理と、
生成された複数の前記走行リスクデータに基づいて、複数種類の前記特徴量の有無又は値に対する複数種類の前記異常走行の発生確率を含むリスク判定モデルを生成するモデル化処理と、が含まれる情報処理装置。 - 前記データ生成処理には、
前記走行区間における複数種類の前記異常走行の有無を判定する異常走行判定処理と、
前記走行区間における複数種類の前記特徴量の有無又は値を判定する特徴量判定処理と、が含まれる請求項1に記載の情報処理装置。 - 前記特徴量判定処理の入力データには、気象情報及び交通情報のうちの少なくとも1つと、前記道路地図データとが含まれる請求項2に記載の情報処理装置。
- 請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の情報処理装置と通信する通信部と、
前記通信部が前記情報処理装置から受信した情報を用いて、所定の情報処理を実行する処理部と、を備える自動運転車両の車載装置であって、
前記通信部は、前記リスク判定モデルを受信し、
前記処理部は、前記リスク判定モデルに含まれる複数種類の前記特徴量の有無又は値ごとの複数種類の前記異常走行の発生確率を用いて、自車両の自動走行における異常走行を回避する処理を実行する車載装置。 - 請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の情報処理装置と通信する通信部と、
前記通信部が前記情報処理装置から受信した情報を用いて、所定の情報処理を実行する処理部と、を備える自動運転車両の車載装置であって、
前記通信部は、自動走行における異常走行の種別と、当該異常走行を発生させる要因であると推定される特徴量の種別が含まれるリスク情報を受信し、
前記処理部は、前記リスク情報に含まれる異常走行の種別及び特徴量の種別を用いて、自車両の自動走行における異常走行を回避する処理を実行する車載装置。 - 複数種類の前記異常走行には、自動運転から手動運転に切り替わる自動運転モード停止が含まれ、
前記処理部は、前記自動運転モード停止の発生確率が所定値以上となる前記走行区間を自車両が自動走行により通行する場合に、前記自動運転の停止を事前に搭乗者に通知する請求項4又は請求項5に記載の車載装置。 - 複数種類の前記異常走行には、急減速が含まれ、
前記処理部は、前記急減速の発生確率が所定値以上となる前記走行区間を自車両が自動走行により通行する場合に、自車両の車両速度を事前に抑制する請求項4〜請求項6のいずれか1項に記載の車載装置。 - 所定の情報処理を情報処理部に実行させるためのコンピュータプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記憶媒体であって、
前記情報処理には、
自動運転車両のプローブ情報と道路地図データに基づいて、自動走行が行われた走行区間における複数種類の異常走行の有無と、複数種類の前記異常走行の要因となり得る複数種類の特徴量の有無又は値とを含む走行リスクデータを生成するデータ生成処理と、
生成された複数の前記走行リスクデータに基づいて、複数種類の前記特徴量の有無又は値に対する複数種類の前記異常走行の発生確率を含むリスク判定モデルを生成するモデル化処理と、が含まれる記憶媒体。 - 所定の情報処理を情報処理部に実行させるためのコンピュータプログラムであって、
前記情報処理には、
自動運転車両のプローブ情報と道路地図データに基づいて、自動走行が行われた走行区間における複数種類の異常走行の有無と、複数種類の前記異常走行の要因となり得る複数種類の特徴量の有無又は値とを含む走行リスクデータを生成するデータ生成処理と、
生成された複数の前記走行リスクデータに基づいて、複数種類の前記特徴量の有無又は値に対する複数種類の前記異常走行の発生確率を含むリスク判定モデルを生成するモデル化処理と、が含まれるコンピュータプログラム。 - 所定の情報処理を実行する情報処理部を備える情報処理装置であって、
前記情報処理には、
自動運転車両のプローブ情報と道路地図データに基づいて、自動走行が行われた走行区間における、自動運転から手動運転に切り替わる自動運転モード停止の有無と、前記自動運転モード停止の要因となり得る特徴量の有無又は値とを含む走行リスクデータを生成するデータ生成処理と、
生成された複数の前記走行リスクデータに基づいて、前記特徴量の有無又は値ごとの前記自動運転モード停止の発生確率を含むリスク判定モデルを生成するモデル化処理と、が含まれる情報処理装置。
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