以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
図1は、本実施形態に係るスクロール流体機械の全体断面図である。
図1では、スクロール流体機械として、吸入した流体を圧縮して吐出するスクロール圧縮機1を示している。また、本実施形態のスクロール圧縮機1は、空気調和機や冷凍機などにおいて冷媒を循環する冷媒流路に介在される。
図1に示すように、スクロール圧縮機1は、ハウジング3の内部に、駆動手段であるモータ5と、モータ5により駆動されるスクロール圧縮機構7と、を備えている。
ハウジング3は、上下に延在する筒状のハウジング本体3aと、ハウジング本体3aの下端を閉塞する底部3bと、ハウジング本体3aの上端を閉塞する蓋部3cと、を備え、全体が密閉された圧力容器となっている。ハウジング本体3aは、その側部に、ハウジング3内に冷媒を導入させる吸入管9が設けられている。蓋部3cは、その上部に、スクロール圧縮機構7によって圧縮された冷媒を排出させる吐出管11が設けられている。なお、ハウジング3は、ハウジング本体3aと蓋部3cとの間にディスチャージカバー13が設けられ、ハウジング3の内部は、ディスチャージカバー13より下側の低圧室3Aとディスチャージカバー13より上側の高圧室3Bとに仕切られている。ディスチャージカバー13は、低圧室3Aと高圧室3Bとを連通する開口孔13aが形成され、開口孔13aを開閉する吐出リード弁13bが設けられている。また、ハウジング3内の底は、潤滑油が溜められる油溜として構成されている。
モータ5は、ステータ15と、ロータ17と、回転シャフト19と、を備えている。ステータ15は、ハウジング本体3aの上下方向のほぼ中央において、内壁面に固定されている。ロータ17は、ステータ15に対して回転可能に設けられている。回転シャフト19は、ロータ17に対して長手方向を上下に配置されている。モータ5は、ハウジング3の外部から電源が供給されることでロータ17を回転させ、ロータ17と共に回転シャフト19が回転する。
回転シャフト19は、ロータ17の上方および下方に端部が突出して設けられ、ハウジング本体3aに対し、上端部が上部軸受21に、下端部が下部軸受23によって上下方向に延在する軸心CEを基に回転可能に支持されている。回転シャフト19は、その上端に、軸心CEに対して偏った偏心LEに沿って上方に突出した偏心ピン25が形成されている。この偏心ピン25を有する回転シャフト19の上端に、スクロール圧縮機構7が接続されている。この偏心ピン25の詳細な構成については後述する。また、回転シャフト19および偏心ピン25は、その内部に、上下に貫通する給油孔27が形成されている。また、回転シャフト19は、その下端が油溜に至り設けられ、給油ポンプ29が設けられている。給油ポンプ29は、回転シャフト19の回転に伴って油溜に溜められた潤滑油を回転シャフト19の給油孔27に送り込む。
上部軸受21は、回転シャフト19の上端部を貫通させて回転シャフト19を回転可能に支持する。上部軸受21は、その上面に、貫通させた回転シャフト19の上端部を囲むように凹部21aが形成されている。凹部21aは、後述するブッシュアセンブリ37を収容すると共に、給油ポンプ29により給油孔27を介して送り込まれた潤滑油を貯留する。そして、貯留された潤滑油は、スクロール圧縮機構7に供給される。
また、上部軸受21は、ハウジング3のハウジング本体3aの内壁面と隙間を有するように外周の一部に切欠21bが形成され、当該切欠21bと凹部21aとを連通する排油孔21cが形成されている。また、上部軸受21の切欠21bの下方において、カバープレート31が設けられている。カバープレート31は、上下方向に延在して設けられている。カバープレート31は、切欠21bの周囲を覆うようにハウジング本体3aの内壁面に両側端を向けて湾曲して形成され、かつ下端がハウジング本体3aの内壁面に漸次近づくように折曲して形成されている。そして、排油孔21cは、凹部21aに余剰に貯留された潤滑油を切欠21bから上部軸受21の外周に排出する。カバープレート31は、切欠21bから排出された潤滑油を受けてハウジング本体3aの内壁面に向けて案内する。カバープレート31により内壁面に向けて案内された潤滑油は、カバープレート31により内壁面を伝ってハウジング3内の底の油溜に戻される。
スクロール圧縮機構7は、ハウジング3の内部において、ディスチャージカバー13より下側の低圧室3Aであって上部軸受21の上方に配置されており、固定スクロール33と、旋回スクロール35と、ブッシュアセンブリ37と、を備えている。
固定スクロール33は、ハウジング3の内部に固定された固定側端板33aの内面(図1における下面)に、渦巻状の固定側ラップ33bが形成されている。固定側端板33aは、その中央部に吐出孔33cが形成されている。
旋回スクロール35は、固定スクロール33における固定側端板33aの内面に対面する可動側端板35aの内面(図1における上面)に、渦巻状の可動側ラップ35bが形成されている。そして、旋回スクロール35の可動側ラップ35bと、固定スクロール33の固定側ラップ33bとが互いに位相をずらして噛み合わされることで、各端板33a,35aおよび各ラップ33b,35bで区画された圧縮室が形成されている。また、旋回スクロール35は、可動側端板35aの外面(図1における下面)に、回転シャフト19の偏心ピン25が接続されて当該偏心ピン25の偏心した回転が伝達される円筒形状のボス35cが形成されている。また、旋回スクロール35は、可動側端板35aの外面と上部軸受21との間に配置された周知のオルダムリンクなどの自転阻止機構39により、偏心ピン25の偏心した回転に基づき自転を阻止されつつ公転旋回される。
ブッシュアセンブリ37は、上述した上部軸受21の凹部21aに収容され、回転シャフト19の偏心ピン25と旋回スクロール35のボス35cとの間に介在されて、偏心ピン25の回転移動を旋回スクロール35の旋回移動として伝達するものである。また、ブッシュアセンブリ37は、旋回スクロール35の可動側ラップ35bと、固定スクロール33の固定側ラップ33bとの噛み合わせを維持するために偏心ピン25の径方向にスライド移動可能に設けられている。このブッシュアセンブリ37の詳細な構成については後述する。
このスクロール圧縮機構7では、吸入管9を介してハウジング3内の低圧室3Aに導入された低圧の冷媒は、旋回スクロール35が公転旋回することで固定スクロール33と旋回スクロール35との間の圧縮室内に吸入されつつ圧縮される。圧縮された高圧の冷媒は、固定スクロール33の吐出孔33cから固定側端板33aの外面側に吐出され、自身の圧力によりディスチャージカバー13の吐出リード弁13bを開放し、開口孔13aから高圧室3Bに至り、吐出管11を介してハウジング3の外部に排出される。
図2は、本実施形態に係るスクロール流体機械における回転シャフトの平面図である。図3は、本実施形態に係るスクロール流体機械における回転シャフトおよびブッシュアセンブリを組み合わせた側断面図である。
図2に示すように、回転シャフト19は、上述したように軸心CEに対して偏った偏心LEを有する偏心ピン25が形成されている。偏心ピン25は、回転シャフト19の上端面19aから上方に突出して形成されている。この偏心ピン25は、軸心CE(または偏心LE)の延在方向に投影した外形状が、第一円弧25aと、第二円弧25bと、ピン側スライド面25cと、を主に構成されている。
第一円弧25aは、図2中のP1−P2の範囲であって、回転シャフト19の外形状の外縁19bの一部を超える長さで偏心LEの位置を中心とする第一半径Raにより回転シャフト19の外形状の範囲内に形成される。
第二円弧25bは、図2中のP2−P3の範囲であって、第一半径Raが回転シャフト19の外形状の外縁19bを超える部分において、回転シャフト19の外縁19bをなす半径R以下の長さで軸心CEの位置を中心とする第二半径Rbにより形成される。
すなわち、本実施形態のスクロール圧縮機1では、回転シャフト19の偏心ピン25は、その外形状が、回転シャフト19の外縁19bの一部を超える長さで偏心LEの位置を中心とする第一半径Raにより回転シャフト19の外形状の範囲内に形成される第一円弧25aと、第一半径Raが外縁19bを超える部分において外縁19bをなす半径R以下の長さで軸心CEの位置を中心とする第二半径Rbにより形成される第二円弧25bと、を有して構成されている。
このスクロール圧縮機1によれば、偏心ピン25の外形状が、回転シャフト19の外縁19bの一部を超える長さで偏心LEの位置を中心とする第一半径Raにより回転シャフト19の外形状の範囲内に形成される第一円弧25aを有することで、回転シャフト19の外縁19bの一部を超え得る大径とすることができ、偏心ピン25の剛性を向上できる。この結果、偏心ピン25のたわみの発生を抑制することができる。
しかも、偏心ピン25の外形状が、第一半径Raが外縁19bを超える部分において外縁19bをなす半径R以下の長さで軸心CEの位置を中心とする第二半径Rbにより形成される第二円弧25bを有することで、回転シャフト19の外縁19bから偏心ピン25の外形状がはみ出すことを防いでいる。偏心ピン25の外形状が回転シャフト19の外縁19bからはみ出すと、回転シャフト19の加工に偏心ピン25が邪魔となって加工に手間がかかったり、回転シャフト19を軸受21,23に挿入する際に偏心ピン25が邪魔になって組み立てに手間がかかったりするが、このような不都合をなくすことができる。
また、本実施形態のスクロール圧縮機1では、第一半径Raと、第二半径Rbと、半径Rと、軸心CEの位置と偏心LEの位置との距離ρとが、(Ra2+ρ2)1/2≦Rb≦Rの関係を満たすことが好ましい。
第二円弧25bは、回転シャフト19の外縁19bをなす半径R以下の長さで軸心CEの位置を中心とする第二半径Rbにより形成されるが、第二半径Rbが半径R以下過ぎると偏心ピン25の外形状が細径化してしまう。このスクロール圧縮機1によれば、(Ra2+ρ2)1/2≦Rb≦Rの関係により第二半径Rbの下限を設定することで、偏心ピン25の外形状が細径化を防ぐことができる。この結果、偏心ピン25の剛性を向上し、偏心ピン25のたわみの発生を抑制する効果を顕著に得ることができる。
図4は、本実施形態に係るスクロール流体機械におけるブッシュアセンブリの平面図である。
図3および図4に示すように、ブッシュアセンブリ37は、ブッシュ41と、バランスウェイト43と、を備えている。
ブッシュ41は、図3および図4に示すように、筒状に形成された穴部41aに偏心ピン25が挿入される。そして、ブッシュ41は、穴部41aに偏心ピン25が挿入されることで回転シャフト19の上端面19aに接触する接触端面41bを有している。また、ブッシュ41は、図3に示すように、旋回スクロール35のボス35cに挿入される。このため、ブッシュ41は、その外形状がボス35cの円筒形状に合わせて円形に形成されている。なお、ブッシュ41の外周面とボス35cの内周面との間は、ブッシュ41の偏心回転を旋回スクロール35の公転旋回に円滑に伝達するために円筒状の旋回軸受45が介在される。
また、ブッシュ41は、穴部41aの内形状において、偏心ピン25のピン側スライド面25cに対して対面するブッシュ側スライド面41cが設けられている。また、ブッシュ41は、穴部41aの内形状において、ピン側スライド面25cにおける偏心LEの径方向に沿う方向で偏心ピン25の外形状よりも大径に形成されている。このため、ブッシュ41は、穴部41aが偏心ピン25の外形状よりも大径の分、ピン側スライド面25cに対してブッシュ側スライド面41cが摺動することで、ピン側スライド面25cに沿ってスライド移動が可能に設けられている。
バランスウェイト43は、連結部43Aと、ウェイト43Bと、を備えている。
連結部43Aは、リング状に形成されており、その穴部43Aaがブッシュ41の外周部に接合されている。上述したように、ブッシュ41は、旋回スクロール35のボス35cに挿入されるため、連結部43Aは、旋回スクロール35のボス35cとの干渉を防ぐために回転シャフト19(接触端面41b)近傍の位置でブッシュ41に接合されている。
ウェイト43Bは、連結部43Aの外周の一部にブッシュ41の接触端面41bから遠ざかる方向(図3の上方)に張り出して片持ち状に設けられている。ウェイト43Bは、図3および図4に示すように、ブッシュアセンブリ37を回転シャフト19の偏心ピン25に挿入して取り付けた状態で、偏心ピン25が回転シャフト19に対して偏った方向とは逆方向に配置される。このウェイト43Bの配置は、ブッシュ41における穴部41aのブッシュ側スライド面41cが偏心ピン25のピン側スライド面25cに対して対面することで位置決めされる。つまり、ブッシュアセンブリ37は、偏心ピン25に対してスライド移動が可能であるが、回転を阻止された状態で取り付けられる。
また、上述したように、ブッシュ41は、旋回スクロール35のボス35cに挿入されるため、ウェイト43Bは、ブッシュ41との間にボス35c(および旋回軸受45)を挿通できる間隔をおいて配置され、かつブッシュ41の外形状に沿って円弧状(または扇状)に配置されている。
このように構成されたブッシュアセンブリ37は、偏心ピン25の回転移動を旋回スクロール35の旋回移動として伝達するが、この際、ブッシュアセンブリ37は、偏心ピン25の軸心CEに対する偏りとは逆側に配置されたウェイト43Bが偏心ピン25と共に回転移動することで、旋回スクロール35の公転旋回運動に伴って旋回スクロール35、ボス35c、旋回軸受45、ブッシュアセンブリ37などの不平衡重量により発生する動的アンバランスをウェイト43Bに作用する遠心力によって平衡する。しかも、ブッシュアセンブリ37は、偏心ピン25に対してスライド移動が可能であることで、ブッシュ41が挿入されたボス35cの公転半径を変化させ(つまり旋回スクロール35をスライド移動させ)、固定スクロール33の固定側ラップ33bと旋回スクロール35の可動側ラップ35bとの間の寸法公差による隙間をなくすように旋回スクロール35の公転旋回半径を調整して各ラップ33b,35bを接触させることで相互間の隙間の発生を抑止し当該隙間から流体の漏れを防止する。
ここで、ブッシュアセンブリ37は、ウェイト43Bに作用する遠心力によって連結部43Aを起点としてバランスウェイト43ごとブッシュ41から離れる方向にモーメントが作用する。このモーメントは、ブッシュ41と連結部43Aとの接合部分に作用するため、ブッシュ41から連結部43Aが外れたり、ブッシュ41に対して連結部43Aの位置がずれたりする問題がある。
そこで、本実施形態では、ブッシュアセンブリ37において、ブッシュ41とバランスウェイト43との接合について工夫している。
図3に示すように、本実施形態のスクロール圧縮機1では、連結部43Aが、ブッシュ41に対してブッシュ41の長さ方向(図3の上方)にずれて配置され、回転シャフト19の上端面19aに向く面であるブッシュ41の接触端面41bと連結部43Aの下面43Abとの間に段差部47が形成されている。段差部47は、連結部43Aの下面43Abがブッシュ41の接触端面41bよりも回転シャフト19の上端面19aから若干離れるように連結部43Aがブッシュ41に取り付けられて形成される。そして、この段差部47に、ブッシュ41と連結部43Aとを接合する接合部49が設けられている。接合部49は、段差部47において連結部43Aの下面43Abおよびブッシュ41の側面に形成され、ブッシュ41の接触端面41bよりも回転シャフト19の上端面19a側には突出しないように形成されている。接合部49は、レーザー溶接により形成される。なお、接合部49は、レーザー溶接に限らずその他の溶接により形成されていてもよい。
このように、本実施形態のスクロール圧縮機1では、偏心ピン25が挿入されて回転シャフト19の端面19aに接触する接触端面41bを有し、かつ旋回スクロール35の底面に設けられた円筒形状のボス35cに挿入されるブッシュ41と、ブッシュ41の外周部であって接触端面41bの近傍に配置された連結部43Aおよび当該連結部43Aの外周の一部に接触端面41bから遠ざかる方向に張り出して片持ち状に設けられたウェイト43Bを有するバランスウェイト43と、連結部43Aとブッシュ41の接触端面41bとの間に設けられた段差部47と、段差部47に設けられブッシュ41と連結部43Aとを接合した接合部49と、を備えるブッシュアセンブリ37を有する。
このスクロール圧縮機1によれば、連結部43Aの外周の一部に接触端面41bから遠ざかる方向に片持ち状に張り出して設けられたウェイト43Bの遠心力の作用に伴って連結部43Aを起点としたモーメントは、ウェイト43Bを接触端面41bがある方向に回転させるように作用するが、このモーメントは、段差部47においては、連結部43Aをブッシュ41側に近づけるように作用する。このため、段差部47に設けられた接合部49に過大な負荷がかからず、ブッシュ41と連結部43Aとの接合の剛性を確保することができ、ブッシュ41から連結部43Aが外れたり、ブッシュ41に対して連結部43Aの位置がずれたりする事態を防ぐ。
しかも、ブッシュ41と連結部43Aとを接合した接合部49が段差部47に設けられているため、回転シャフト19の端面19aに接触するブッシュ41の接触端面41bに接合部49が突出する事態を防ぐことができ、接合部49が回転シャフト19の端面19aに干渉することがないと共に、当該干渉を防ぐための接合部49の加工を省くことができる。また、ウェイト43Bが接触端面41bから遠ざかる方向に片持ち状に連結部43Aから張り出して設けられ、段差部47は、ウェイト43Bが張り出す逆側の接触端面41bと連結部43Aとの間に接合部49が設けられているため、ウェイト43Bの存在に係わらず容易に接合部49を設けることができる。
図5は、本実施形態に係るスクロール流体機械におけるブッシュアセンブリの底面図である。
また、本実施形態のスクロール圧縮機1では、ブッシュアセンブリ37は、接合部49がブッシュ41の周方向の全周に設けられていてもよいが、図5に示すように、接合部49が、ブッシュ41の周方向の複数箇所(図5では3箇所)に設けられていることが好ましい。なお、ブッシュ41の周方向とは、偏心ピン25の偏心LEの位置を基準とした周方向をいう。
このスクロール圧縮機1によれば、接合部49が溶接により形成される場合、接合部49がブッシュ41の周方向の全周に設けられているよりも、ブッシュ41の周方向の複数箇所に設けられているほうが、溶接熱によるブッシュ41や連結部43Aの熱変形を抑制することができる。
また、本実施形態のスクロール圧縮機1では、ブッシュアセンブリ37は、接合部49が、ブッシュ41の周方向の複数箇所に設けられている場合、接合部49が、ブッシュ41の周方向に均等配置されていることが好ましい。図5では、接合部49がブッシュ41の周方向に3箇所設けられ偏心ピン25の偏心LEを基準として120°ごとに均等配置されている。
このスクロール圧縮機1によれば、接合部49が溶接により形成される場合、接合部49が、ブッシュ41の周方向に均等配置されていることで、溶接熱によるブッシュ41や連結部43Aの熱変形が生じても均等化して局所的な変形を抑制することができる。
また、本実施形態のスクロール圧縮機1では、ブッシュアセンブリ37は、接合部49が、ブッシュ41の周方向の複数箇所に設けられている場合、接合部49が、ウェイト43Bが設けられている付近に多く配置されていることが好ましい。なお、接合部49が、ブッシュ41の周方向に均等配置される場合は、図5に示すように、接合部49がブッシュ41の周方向の奇数箇所に設けられている構成において、接合部49が、ウェイト43Bが設けられている付近に多く配置される。
このスクロール圧縮機1によれば、ウェイト43Bの遠心力の作用に伴い、連結部43Aを起点としたモーメントは、ウェイト43Bが設けられている付近に作用するため、接合部49がブッシュ41の周方向の複数箇所に設けられている場合は、接合部49をウェイト43Bが設けられている付近に多く配置することで、ブッシュ41と連結部43Aとの接合の剛性を確保する効果を顕著に得ることができる。
また、本実施形態のスクロール圧縮機1では、図4および図5に示すように、ブッシュアセンブリ37は、ブッシュ41の外周部に筒状の延在方向に沿って給油溝51が設けられており、接合部49が、給油溝51の径方向の範囲から離れて配置されていることが好ましい。
このスクロール圧縮機1によれば、給油溝51は、潤滑油をスクロール圧縮機構7に供給するためのものであり、接合部49が溶接により形成される場合、接合部49が、給油溝51の径方向の範囲から離れて配置されていることで、溶接熱による給油溝51の熱変形を抑制することができ、給油溝51による潤滑油の供給を円滑に行うことができる。
また、本実施形態のスクロール圧縮機1では、ブッシュアセンブリ37は、ブッシュ41が焼結材により形成され、バランスウェイト43が鋳鉄材により形成されていることが好ましい。
このスクロール圧縮機1によれば、ブッシュ41は偏心ピン25や旋回スクロール35のボス35cに接続される摺動部材であるため、比較的高硬度の焼結材により形成されることが好ましい。また、バランスウェイト43は、旋回スクロール35の公転旋回運動に伴って旋回スクロール35、ボス35c、旋回軸受45、ブッシュアセンブリ37などの不平衡重量により発生する動的アンバランスを平衡するウェイト43Bを有するため、比較的高密度な鋳鉄材により形成されることが好ましい。
また、本実施形態のスクロール圧縮機1では、ブッシュアセンブリ37は、ブッシュ41とバランスウェイト43の連結部43Aとが焼き嵌めまたは締まり嵌めにて固定されていることが好ましい。
このスクロール圧縮機1によれば、ブッシュ41とバランスウェイト43の連結部43Aとが焼き嵌めまたは締まり嵌めにて固定されていることで、接合部49を備えることと相乗してブッシュ41と連結部43Aとの接合の剛性を確保する効果を顕著に得ることができる。なお、ブッシュ41と連結部43Aとを接合する際(接合部49を設ける際)、ブッシュ41の外径よりも連結部43Aの穴部43Aaの内径を小さく形成しておき、焼き嵌めまたは締まり嵌めによりブッシュ41と連結部43Aとを嵌め合わせ、その後に溶接により接合部49を形成する。このように、ブッシュ41と連結部43Aとを焼き嵌めまたは締まり嵌めにより予め嵌め合わせることで、ブッシュ41と連結部43Aとのずれを生じさせずに溶接して接合部49を形成することができる。
また、本実施形態のスクロール圧縮機1では、ブッシュアセンブリ37は、接合部49が、ブッシュ41の周方向の複数箇所に設けられている場合、図5に示すように、接合部49が、ブッシュ側スライド面41cの径方向の範囲から離れて配置されていることが好ましい。
このスクロール圧縮機1によれば、ブッシュ側スライド面41cは、ブッシュアセンブリ37のスライド移動を支持する部分であり、接合部49が溶接により形成される場合、接合部49が、ブッシュ側スライド面41cの径方向の範囲から離れて配置されていることで、溶接熱によるブッシュ側スライド面41cの熱変形を抑制することができ、ブッシュアセンブリ37のスライド移動を円滑に行うことができる。
また、本実施形態のスクロール圧縮機1では、回転シャフト19の最大回転数が145rpsを超える。
このスクロール圧縮機1によれば、上述した構成により、偏心ピン25のたわみの発生を抑制することができ、また、ブッシュアセンブリ37におけるブッシュ41と連結部43Aとの接合の剛性を確保することができることから、回転シャフト19の最大回転数が145rpsを超えるスクロール圧縮機1を実現することができる。
ここで、図7は、本実施形態に係るスクロール流体機械の他の例の全体断面図である。図8は、本実施形態に係るスクロール流体機械の他の例の回転シャフトおよびブッシュアセンブリを組み合わせた側断面図である。図9は、本実施形態に係るスクロール流体機械の他の例のブッシュアセンブリの底面図である。
図7では、スクロール流体機械として、吸入した流体を圧縮して吐出するスクロール圧縮機101を示している。また、スクロール圧縮機101は、空気調和機や冷凍機などにおいて冷媒を循環する冷媒流路に介在され、特に車両用空気調和機に用いられる。
スクロール圧縮機101は、図7に示すように、ハウジング103と、インバータモータ105と、冷媒を圧縮する固定スクロール133および旋回スクロール135と、旋回スクロール135を駆動する回転シャフト119と、ブッシュアセンブリ137と、が設けられている。なお、図8に示すように、固定スクロール133と、旋回スクロール135と、ブッシュアセンブリ137と、は、インバータモータ105により駆動されるスクロール圧縮機構107を構成する。
ハウジング103は、内部に固定スクロール133や、旋回スクロール135や、回転シャフト119やインバータモータ105などを収納する筐体であって、第一ハウジング103aと、第二ハウジング103bと、モータケース103cと、が設けられている。
第一ハウジング103aは、有底円筒状に形成された部材であり、固定スクロール133が底面に固定されている。固定スクロール133と第一ハウジング103aとの間には、固定スクロール133および旋回スクロール135により圧縮された冷媒が流入する吐出室103Aが形成されている。
第一ハウジング103aは、吐出室103A内の冷媒を外部に導く吐出部(図示せず)と、第一フランジ部103aaと、が設けられている。第一フランジ部103aaは、ハウジングボルト104を用いて第一ハウジング103a、第二ハウジング103bおよびモータケース103cを一体に固定する際に用いられるものであって、第一ハウジング103aの開口側の端部に半径方向外側に向かって延びる部材である。
第二ハウジング103bは、図7に示すように、円筒状に形成された第一軸受121と、第一ハウジング103a側の端部から半径方向外側に向かって延びる鍔部103baが設けられた部材である。第二ハウジング103bは、鍔部103baが第一ハウジング103aとモータケース103cとの間に挟まれるように配置されている。
第二ハウジング103bは、第一軸受121内に、回転シャフト119を回転可能に支持するラジアルベアリング122が設けられている。第一軸受121は、壁面内に回転シャフト119の軸心CEに沿って延びる吸入流路124が設けられている。また、第二ハウジング103bは、鍔部103baに、ハウジングボルト104を用いて第一ハウジング103a、第二ハウジング103bおよびモータケース103cを一体に固定する際に用いられる第二フランジ部103bbが設けられている。第二フランジ部103bbは、鍔部103baから半径方向外側に向かって延びる部材である。
モータケース103cは、図7に示すように、有底円筒状に形成された部材であり、内部にインバータモータ105のステータ115が固定されている。モータケース103cは、外部から冷媒が流入する吸入部(図示せず)と、ボックス103caと、ケースフランジ部103cbと、が設けられている。
ボックス103caは、モータケース103cの半径方向外側に向かって開口し、内部にインバータモータ105のインバータ部179が納められるものである。ケースフランジ部103cbは、ハウジングボルト104を用いて第一ハウジング103a、第二ハウジング103bおよびモータケース103cを一体に固定する際に用いられるものであって、モータケース103cの開口側の端部から半径方向外側に向かって延びる部材である。
インバータモータ105は、周波数制御された交流電流により回転駆動されるモータであり、旋回スクロール135を公転旋回駆動する電動部である。インバータモータ105は、図7に示すように、回転シャフト119およびブッシュアセンブリ137を介して旋回スクロール135を公転旋回させるロータ117およびステータ115と、ステータ115に供給する交流電流を制御するインバータ部179と、が設けられている。
ロータ117は、ステータ115により形成された交流磁場により回転駆動力を発生するものであって、円筒状に形成された永久磁石である。ロータ117は、回転シャフト119が固定されている。ステータ115は、インバータ部179から供給された交流電流に基づいて、交流磁場を形成してロータ117を回転させるものである。ステータ115は、モータケース103cの内周面に焼き嵌めなどの固定方法を用いて固定されている。
インバータ部179は、ステータ115に供給する交流電流を制御するものであり、ボックス103ca内に配置されている。インバータ部179は、キャパシタ(コンデンサ)181と、パワートランジスタ183などの電子素子を備える複数の基板185と、端子187と、が設けられている。
キャパシタ181は、電流を一時的に蓄電するものである。基板185に備えられたパワートランジスタ183などの電子素子は、外部から供給された交流電流の周波数を制御するものである。端子187はステータ115に交流電流を供給するものである。パワートランジスタ183が備えられた基板185は、ボックス103ca内でモータケース103cと接触して固定され、パワートランジスタ183から発生した熱をモータケース103cに逃がすように構成されている。その他の基板185は、モータケース103cから離れた位置に固定されている。言い換えると、基板185は積層した状態で固定されている。端子187は、パワートランジスタ183などにより制御された交流電流をステータ115に供給するものである。
なお、上述のようにインバータモータ105を電動部として用いてもよいし、その他の公知なモータを電動部として用いてもよく、特に限定するものではない。
固定スクロール133および旋回スクロール135は、図7に示すように、閉塞された圧縮室Cを形成して冷媒を圧縮するものである。固定スクロール133は、固定側端板133aと、固定側端板133aから旋回スクロール135に向かって延びる渦巻状の固定側ラップ133bが設けられている。固定スクロール133は、第一ハウジング103aの底面に固定されている。固定側端板133aは、その中心部に吐出孔133cが設けられている。圧縮室Cで圧縮された冷媒は、吐出孔133cを介して吐出室103Aに吐出される。
一方、旋回スクロール135は、可動側端板135aと、可動側端板135aから固定スクロール133に向かって延びる渦巻状の可動側ラップ135bが設けられている。旋回スクロール135は、回転シャフト119および自転防止部139により公転可能に支持されている。旋回スクロール135は、可動側端板135aにおける回転シャフト119と対向する面(底面ともいう)に、回転シャフト119に向かって延びる円筒状のボス135cが設けられている。ボス135cは、ブッシュアセンブリ137を介して回転シャフト119による公転駆動力が伝達される。
回転シャフト119は、図7に示すように、インバータモータ105から旋回スクロール135に向かって延びる円柱状の部材である。回転シャフト119は、ハウジング103に対し、一端部が第一軸受121に、他端部が第二軸受123によって水平方向(図7中の左右方向)に延在する軸心CEを基に回転可能に支持されている。回転シャフト119は、図8に示すように、円板部119Aと、偏心ピン125と、リミット穴126と、を有している。
円板部119Aは、回転シャフト119の一端に設けられ、軸心CEを中心として回転シャフト119よりも直径が大きく形成されている。この円板部119Aは、第一軸受121に形成された貫通部121aの内部に配置され、当該貫通部121aに固定されたベアリング122に周面が支持されて第一軸受121に対して軸心CEを中心として回転可能に設けられている。偏心ピン125は、円板部119Aの端面119Aaから軸心CEに対して偏った偏心LEに沿って延びる円柱形状に形成されている。リミット穴126は、円板部119Aの端面119Aaから凹んだ穴であり、軸心CEに対して偏った別の偏心LE’に沿って形成されている。
ブッシュアセンブリ137は、図8に示すように、第一軸受121の貫通部121aに収容され、回転シャフト119の偏心ピン125と旋回スクロール135のボス135cとの間に介在されて、偏心ピン125の回転移動を旋回スクロール135の旋回移動として伝達するものである。ブッシュアセンブリ137は、ブッシュ141と、リミットピン142と、バランスウェイト143と、を備えている。
ブッシュ141は、筒状に形成された円穴部141aに偏心ピン125が挿入される。そして、ブッシュ141は、円穴部141aに偏心ピン125が挿入されることで回転シャフト119における円板部119Aの端面119Aaに接触する接触端面141bを有している。また、ブッシュ141は、旋回スクロール135のボス135cに挿入される。このため、ブッシュ141は、その外形状がボス135cの円筒形状に合わせて円形に形成されている。なお、ブッシュ141の外周面とボス135cの内周面との間は、ブッシュ141の偏心回転を旋回スクロール135の公転旋回に円滑に伝達するために円筒状の旋回軸受145が介在される。
リミットピン142は、ブッシュ141と円板部119Aとの間に配置され、リミット穴126と共に旋回スクロール135の公転半径を調節する円柱状の部材である。リミットピン142は、図8に示すように、ブッシュ141に形成された嵌合穴141cに嵌合して設けられ、ブッシュ141の円穴部141aに偏心ピン125を挿入した形態で、リミット穴126に挿入されるように偏心LE’に沿って接触端面141bから突出して設けられている。リミットピン142は、リミット穴126に挿入された状態で相互の周面の間に隙間が形成される。また、リミットピン142は、リミット穴126に挿入される部分の側部に、凹状の嵌合溝142aが円周面にわたって形成されている。嵌合溝142aには、弾性部142bが嵌められる。なお、リミットピン142は、円柱状の部材として形成されていてもよいし、その他の断面形状を有する柱状の部材として形成されていてもよく、特に限定するものではない。
弾性部142bは、リミットピン142の嵌合溝142aに嵌められており、リミットピン142がリミット穴126に挿入された状態で、リミットピン142の外周面とリミット穴126の内周面とに接触して配置される略円筒状の弾性部材である。弾性部142bを形成する材料としては、冷媒や、スクロール圧縮機101の潤滑油に対して適合性を備えると共に膨潤しないゴムが望ましい。具体的には、HNBR(水素化ニトリルゴム)などを例示できるが、使用される冷媒や潤滑油に応じて適したゴムを使用することができる。
弾性部142bは、外周面の直径がリミット穴126の直径以上に形成されると共に、内周面の直径がリミットピン142の直径以下に形成されている。弾性部142bは、その内周面に、嵌合溝142aと嵌合する畝状の凸部が内周面にわたって設けられている。弾性部142bは、旋回スクロール135が旋回駆動されていない場合は、旋回スクロール135の自重を支え、リミットピン142をリミット穴126の内周面から離間して保持する剛性を少なくとも備えている。一方、弾性部142bの剛性は、旋回スクロール135が旋回駆動され、遠心力および冷媒の圧縮による反力が働いている場合は、つぶされてリミットピン142がリミット穴126の内周面に直接接触する程度に抑えられている。
円穴部141aとリミットピン142との相対位置関係は、図9に示すように、ブッシュアセンブリ137を円板部119A側(図7および図8の左側)から視て、円穴部141aが2時方向に配置されている場合に、リミットピン142が8時方向に配置されている場合を例示できる。
バランスウェイト143は、固定スクロール133に対する旋回スクロール135の押し付け力を調節するとともに、バランスをとる部材である。バランスウェイト143は、図8および図9に示すように、ブッシュ141における円板部119A側の円周面から半径方向外側に向かって、半円状に延びる鍔状の部材である。バランスウェイト143が延びる範囲は、図9に示すように、円穴部141aが2時方向に配置されている場合に、3時方向から9時方向の間の範囲であり、バランスウェイト143は、ブッシュ141の中心を通る線から6時方向にオフセットされて設けられている。
バランスウェイト143は、連結部143Aと、ウェイト143Bと、を備えている。連結部143Aは、リング状に形成されており、その穴部143Aaがブッシュ141の外周部に接合されている。上述したように、ブッシュ141は、旋回スクロール135のボス135cに挿入されるため、連結部143Aは、旋回スクロール135のボス135cとの干渉を防ぐために回転シャフト119(接触端面141b)近傍の位置でブッシュ141に接合されている。ウェイト143Bは、連結部143Aの外周の一部に接触端面141bから遠ざかる方向に厚みが厚くなって張り出して片持ち状に設けられている。
回転シャフト119とブッシュアセンブリ137とは、図8に示すように、偏心ピン125が円穴部141aに挿通されるとともに、リミットピン142がリミット穴126に挿通されるように組み合わされる。リミットピン142の弾性部142bは、リミットピン142と共にリミット穴126の内部に挿入され、リミット穴126の内周面と接触している。このように組み合わされているため、ブッシュアセンブリ137は、偏心ピン125を回転中心として、リミットピン142およびリミット穴126に規制される範囲内で回転可能とされている。
旋回スクロール135が公転駆動されると、固定スクロール133との間に形成された圧縮室Cが、モータケース103cからスクロール圧縮機101内に流入した冷媒を取り込み圧縮する。具体的に、圧縮室Cは、固定スクロール133および旋回スクロール135の外周端で冷媒を取り込む。そして、旋回スクロール135の公転により、圧縮室Cは固定側ラップ133bおよび可動側ラップ135bに沿って外周端から中心側に向かって移動するにつれて容積が小さくなり、取り込んだ冷媒を圧縮する。圧縮室Cに圧縮された冷媒は、固定スクロール133の吐出孔133cを介して吐出室103Aに吐出され、吐出室103A内から第一ハウジング103aの外部に吐出される。
旋回スクロール135には、公転旋回による遠心力と、圧縮室Cにより圧縮された冷媒の圧縮反力とが、公転旋回半径を広げる方向に働く。これらの力により、旋回スクロール135およびブッシュアセンブリ137は、偏心ピン125を中心として回転して公転旋回半径が広がる。すると、リミットピン142およびリミット穴126は、弾性部142bを押しつぶしながら接近して互いに接触する。リミットピン142およびリミット穴126は、接触することにより、偏心ピン125を中心としたブッシュアセンブリ137および旋回スクロール135の回転範囲を規制する。なお、旋回スクロール135に働く遠心力や圧縮反力は、弾性部142bを押しつぶすのに十分な大きさであり、例えば、数千N程度の力の大きさを例示できる。
このような、動作に係り、例えば、圧縮室C内に液体の冷媒(以後、液冷媒と表記する。)が存在したり、旋回スクロール135と固定スクロール133との間に異物が噛み込まれたりした場合、旋回スクロール135は公転旋回半径が小さくなり、液冷媒や異物の逃げ通路が形成される。つまり、液冷媒を圧縮する際に発生する液圧縮反力や、異物を噛み込んだ際に発生する抵抗力により、旋回スクロール135と共にブッシュアセンブリ137が、弾性部142bを押しつぶして偏心ピン125を中心として公転旋回半径を小さくする方向に回転する。この回転により、旋回スクロール135および固定スクロール133との間に逃げ通路が形成される。
一方、スクロール圧縮機101の運転が停止され、旋回スクロール135の公転旋回が止まると、旋回スクロール135に働いていた遠心力や圧縮反力が消え、旋回スクロール135の公転半径を大きくする力が消える。旋回スクロール135は、鉛直方向下方に働く重力により、偏心ピン125を中心として回転移動し、リミットピン142とリミット穴126とが離間する。スクロール圧縮機101の運転時に遠心力などによりリミットピン142とリミット穴126との間でつぶされていた弾性部142bも、つぶれた形状から元の形状に戻る力によりリミットピン142とリミット穴126とを離間させる。さらに、弾性部142bは、リミットピン142をリミット穴126から離間した状態に保持する。弾性部142bは、旋回スクロール135およびブッシュアセンブリ137に作用する重力により、つぶす力が働くが、その大きさが数N程度であって遠心力および圧縮反力と比較して小さいため、リミットピン142をリミット穴126から離間した状態に保持できる。そのため、スクロール圧縮機101の運転が停止された際に、リミットピン142とリミット穴126とが接触して発生するカタカタ音が抑制される。
また、スクロール圧縮機101の運転が停止され、圧縮室Cに液冷媒が存在する場合は、上述のように、旋回スクロール135の公転半径が小さくなる。つまり、リミットピン142とリミット穴126とが離間して旋回スクロール135の公転半径が小さくなる。このとき、弾性部142bは、リミットピン142がリミット穴126の内周面における所定領域から離間して反対側の領域に接触(衝突)する際に、その形状が変形されてリミットピン142とリミット穴126とが接触する際の勢いを低減させる。そのため、圧縮室Cに液冷媒が存在する場合におけるリミットピン142とリミット穴126とが接触して発生するカタカタ音が抑制される。
また、旋回スクロール135の公転旋回半径が安定していない場合や、異物が旋回スクロール135および固定スクロール133の間に噛みこまれた場合におけるカタカタ音も、上述した弾性部142bの作用によって同様に抑制される。
なお、リミットピン142とリミット穴126とにより旋回スクロール135および固定スクロール133との間に逃げ通路を形成する構成に限定されるものではない。例えば、図には明示しないが、リミットピン142とリミット穴126とを設けず、ブッシュアセンブリ137におけるブッシュ141の円穴部141aと偏心ピン125との間に隙間を設けてブッシュアセンブリ137を偏心ピン125の径方向に移動可能とし、これにより旋回スクロール135および固定スクロール133との間に逃げ通路を形成するようにしてもよい。
図6は、本実施形態に係るスクロール流体機械の他の例の回転シャフトの平面図である。図6に示すように、ブッシュアセンブリ137におけるブッシュ141の円穴部141aと偏心ピン125との間に隙間を設ける構成の場合、偏心ピン125は、軸心CE(または偏心LE)の延在方向に投影した外形状が、第一円弧125aと、第二円弧125bと、を主に構成されている。
第一円弧125aは、図6中のP11−P12の範囲であって、回転シャフト119における円板部119Aの外形状の外縁119Abの一部を超える長さで偏心LEの位置を中心とする第一半径Raにより回転シャフト119(ここでは円板部119A)の外形状の範囲内に形成される。
第二円弧125bは、図6中のP12−P11の範囲であって、第一半径Raが回転シャフト119の外形状の外縁119Abを超える部分において、回転シャフト119の外縁119Abをなす半径R以下の長さで軸心CEの位置を中心とする第二半径Rbにより形成される。
すなわち、本実施形態のスクロール圧縮機101では、回転シャフト119の偏心ピン125は、その外形状が、回転シャフト119(ここでは円板部119A)の外縁119Abの一部を超える長さで偏心LEの位置を中心とする第一半径Raにより回転シャフト119の外形状の範囲内に形成される第一円弧125aと、第一半径Raが外縁119Abを超える部分において外縁119Abをなす半径R以下の長さで軸心CEの位置を中心とする第二半径Rbにより形成される第二円弧125bと、を有して構成されている。
このスクロール圧縮機101によれば、偏心ピン125の外形状が、回転シャフト119(ここでは円板部119A)の外縁119Abの一部を超える長さで偏心LEの位置を中心とする第一半径Raにより回転シャフト119の外形状の範囲内に形成される第一円弧125aを有することで、回転シャフト119の外縁119Abの一部を超え得る大径とすることができ、偏心ピン125の剛性を向上できる。この結果、偏心ピン125のたわみの発生を抑制することができる。
しかも、偏心ピン125の外形状が、第一半径Raが外縁119Abを超える部分において外縁119Abをなす半径R以下の長さで軸心CEの位置を中心とする第二半径Rbにより形成される第二円弧125bを有することで、回転シャフト119の外縁119Abから偏心ピン125の外形状がはみ出すことを防いでいる。偏心ピン125の外形状が回転シャフト119(ここでは円板部119A)の外縁119Abからはみ出すと、回転シャフト119の加工に偏心ピン125が邪魔となって加工に手間がかかったり、回転シャフト119を軸受121,123に挿入する際に偏心ピン125が邪魔になって組み立てに手間がかかったりするが、このような不都合をなくすことができる。
また、本実施形態のスクロール圧縮機101では、第一半径Raと、第二半径Rbと、半径Rと、軸心CEの位置と偏心LEの位置との距離ρとが、(Ra2+ρ2)1/2≦Rb≦Rの関係を満たすことが好ましい。
第二円弧125bは、回転シャフト119の外縁119Abをなす半径R以下の長さで軸心CEの位置を中心とする第二半径Rbにより形成されるが、第二半径Rbが半径R以下過ぎると偏心ピン125の外形状が細径化してしまう。このスクロール圧縮機101によれば、(Ra2+ρ2)1/2≦Rb≦Rの関係により第二半径Rbの下限を設定することで、偏心ピン125の外形状が細径化を防ぐことができる。この結果、偏心ピン125の剛性を向上し、偏心ピン125のたわみの発生を抑制する効果を顕著に得ることができる。
このように構成されたブッシュアセンブリ137においては、ウェイト143Bに作用する遠心力によって連結部143Aを起点としてバランスウェイト143ごとブッシュ141から離れる方向にモーメントが作用する。このモーメントは、ブッシュ141と連結部143Aとの接合部分に作用するため、ブッシュ141から連結部143Aが外れたり、ブッシュ141に対して連結部143Aの位置がずれたりする問題がある。
そこで、本実施形態では、ブッシュアセンブリ137において、ブッシュ141とバランスウェイト143との接合について工夫している。
図8に示すように、本実施形態のスクロール圧縮機101では、連結部143Aが、ブッシュ141に対してブッシュ141の長さ方向(図8の右方)にずれて配置され、回転シャフト119における円板部119Aの端面119Aaに向く面であるブッシュ141の接触端面141bと連結部143Aの端面143Abとの間に段差部147が形成されている。段差部147は、連結部143Aの端面143Abがブッシュ141の接触端面141bよりも回転シャフト119における円板部119Aの端面119Aaから若干離れるように連結部143Aがブッシュ141に取り付けられて形成される。そして、この段差部147に、ブッシュ141と連結部143Aとを接合する接合部149が設けられている。接合部149は、段差部147において連結部143Aの端面143Abおよびブッシュ141の側面に形成され、ブッシュ141の接触端面141bよりも回転シャフト119における円板部119Aの端面119Aa側には突出しないように形成されている。接合部149は、レーザー溶接により形成される。なお、接合部149は、レーザー溶接に限らずその他の溶接により形成されていてもよい。
このように、本実施形態のスクロール圧縮機101では、ブッシュアセンブリ137は、偏心ピン125が挿入されて回転シャフト119(における円板部119A)の端面119Aaに接触する接触端面141bを有し、かつ旋回スクロール135の底面に設けられた円筒形状のボス135cに挿入されるブッシュ141と、ブッシュ141の外周部であって接触端面141bの近傍に配置された連結部143Aおよび当該連結部143Aの外周の一部に接触端面141bから遠ざかる方向に張り出して片持ち状に設けられたウェイト143Bを有するバランスウェイト143と、連結部143Aとブッシュ141の接触端面141bとの間に設けられた段差部147と、段差部147に設けられブッシュ141と連結部143Aとを接合した接合部149と、を備える。
このスクロール圧縮機101によれば、連結部143Aの外周の一部に接触端面141bから遠ざかる方向に片持ち状に張り出して設けられたウェイト143Bの遠心力の作用に伴って連結部143Aを起点としたモーメントは、ウェイト143Bを接触端面141bがある方向に回転させるように作用するが、このモーメントは、段差部147においては、連結部143Aをブッシュ141側に近づけるように作用する。このため、段差部147に設けられた接合部149に過大な負荷がかからず、ブッシュ141と連結部143Aとの接合の剛性を確保することができ、ブッシュ141から連結部143Aが外れたり、ブッシュ141に対して連結部143Aの位置がずれたりする事態を防ぐ。
しかも、ブッシュ141と連結部143Aとを接合した接合部149が段差部147に設けられているため、回転シャフト119の端面119Aaに接触するブッシュ141の接触端面141bに接合部149が突出する事態を防ぐことができ、接合部149が回転シャフト119の端面119Aaに干渉することがないと共に、当該干渉を防ぐための接合部149の加工を省くことができる。また、ウェイト143Bが接触端面141bから遠ざかる方向に片持ち状に連結部143Aから張り出して設けられ、段差部147は、ウェイト143Bが張り出す逆側の接触端面141bと連結部143Aとの間に接合部149が設けられているため、ウェイト143Bの存在に係わらず容易に接合部149を設けることができる。
また、本実施形態のスクロール圧縮機101では、ブッシュアセンブリ37は、接合部149がブッシュ141の周方向の全周に設けられていてもよいが、図9に示すように、接合部149が、ブッシュ141の周方向の複数箇所(図9では3箇所)に設けられていることが好ましい。なお、ブッシュ141の周方向とは、ブッシュ141の中心Oを基準としてブッシュ141の周面に沿う方向をいう。
このスクロール圧縮機101によれば、接合部149が溶接により形成される場合、接合部149がブッシュ141の周方向の全周に設けられているよりも、ブッシュ141の周方向の複数箇所に設けられているほうが、溶接熱によるブッシュ141や連結部143Aの熱変形を抑制することができる。
また、本実施形態のスクロール圧縮機101では、ブッシュアセンブリ137は、接合部149が、ブッシュ141の周方向の複数箇所に設けられている場合、接合部149が、ブッシュ141の周方向に均等配置されていることが好ましい。図9では、接合部149がブッシュ141の周方向に3箇所設けられ、ブッシュ141の中心Oを基準として120°ごとに均等配置されている。
このスクロール圧縮機101によれば、接合部149が溶接により形成される場合、接合部149が、ブッシュ141の周方向に均等配置されていることで、溶接熱によるブッシュ141や連結部143Aの熱変形が生じても均等化して局所的な変形を抑制することができる。
また、本実施形態のスクロール圧縮機101では、ブッシュアセンブリ137は、接合部149が、ブッシュ141の周方向の複数箇所に設けられている場合、接合部149が、ウェイト143Bが設けられている付近に多く配置されていることが好ましい。なお、接合部149が、ブッシュ141の周方向に均等配置される場合は、図9に示すように、接合部149がブッシュ141の周方向の奇数箇所に設けられている構成において、接合部149が、ウェイト143Bが設けられている付近に多く配置される。
このスクロール圧縮機101によれば、ウェイト143Bの遠心力の作用に伴い、連結部143Aを起点としたモーメントは、ウェイト143Bが設けられている付近に作用するため、接合部149がブッシュ141の周方向の複数箇所に設けられている場合は、接合部149をウェイト143Bが設けられている付近に多く配置することで、ブッシュ141と連結部143Aとの接合の剛性を確保する効果を顕著に得ることができる。
また、本実施形態のスクロール圧縮機101では、図9に示すように、ブッシュアセンブリ137は、ブッシュ141の外周部に筒状の延在方向に沿って給油溝151が設けられており、接合部149が、給油溝151の径方向の範囲から離れて配置されていることが好ましい。
このスクロール圧縮機101によれば、給油溝151は、潤滑油をスクロール圧縮機構107に供給するためのものであり、接合部149が溶接により形成される場合、接合部149が、給油溝151の径方向の範囲から離れて配置されていることで、溶接熱による給油溝151の熱変形を抑制することができ、給油溝151による潤滑油の供給を円滑に行うことができる。
また、本実施形態のスクロール圧縮機101では、ブッシュアセンブリ137は、ブッシュ141が焼結材により形成され、バランスウェイト143が鋳鉄材により形成されていることが好ましい。
このスクロール圧縮機101によれば、ブッシュ141は偏心ピン125や旋回スクロール135のボス135cに接続される摺動部材であるため、比較的高硬度の焼結材により形成されることが好ましい。また、バランスウェイト143は、旋回スクロール135の公転旋回運動に伴って旋回スクロール135、ボス135c、旋回軸受145、ブッシュアセンブリ137などの不平衡重量により発生する動的アンバランスを平衡するウェイト143Bを有するため、比較的高密度な鋳鉄材により形成されることが好ましい。
また、本実施形態のスクロール圧縮機101では、ブッシュアセンブリ137は、ブッシュ141とバランスウェイト143の連結部143Aとが焼き嵌めまたは締まり嵌めにて固定されていることが好ましい。
このスクロール圧縮機101によれば、ブッシュ141とバランスウェイト143の連結部143Aとが焼き嵌めまたは締まり嵌めにて固定されていることで、接合部149を備えることと相乗してブッシュ141と連結部143Aとの接合の剛性を確保する効果を顕著に得ることができる。なお、ブッシュ141と連結部143Aとを接合する際(接合部149を設ける際)、ブッシュ141の外径よりも連結部143Aの穴部143Aaの内径を小さく形成しておき、焼き嵌めまたは締まり嵌めによりブッシュ141と連結部143Aとを嵌め合わせ、その後に溶接により接合部149を形成する。このように、ブッシュ141と連結部143Aとを焼き嵌めまたは締まり嵌めにより予め嵌め合わせることで、ブッシュ141と連結部143Aとのずれを生じさせずに溶接して接合部149を形成することができる。
また、本実施形態のスクロール圧縮機101では、ブッシュアセンブリ137は、ブッシュ141が偏心ピン125に対して回転可能に設けられ、回転シャフト119の端面119Aaに形成されたリミット穴126に挿入されて回転範囲を規制するリミットピン142が設けられており、接合部149が、リミットピン142を取り付ける部位(リミットピン142を嵌合する嵌合穴141c)の径方向の範囲から離れて配置されていることが好ましい。
このスクロール圧縮機101によれば、接合部149が溶接により形成される場合、接合部149が、リミットピン142を取り付ける部位の径方向の範囲から離れて配置されていることで、溶接熱によりリミットピン142を取り付ける部位の熱変形を抑制することができ、リミットピン142の取り付けが阻害される事態を抑制することができる。
なお、上述したスクロール圧縮機101では、回転シャフト119の端面119Aaにリミット穴126が形成され、ブッシュ141にリミットピン142が取り付けられる構成であるが、この限りではない。図には明示しないが、回転シャフト119の端面119Aaにリミットピン142が取り付けられ、ブッシュ141にリミット穴126が形成されていてもよい。
この場合、本実施形態のスクロール圧縮機101では、ブッシュアセンブリ137は、ブッシュ141が偏心ピン125に対して回転可能に設けられ、回転シャフト119の端面119Aaに固定されたリミットピン142を挿入して回転範囲を規制するリミット穴126が設けられており、接合部149が、リミット穴126を形成する部位の径方向の範囲から離れて配置されていることが好ましい。
このスクロール流体機械101によれば、接合部149が溶接により形成される場合、接合部149が、リミット穴126を形成する部位の径方向の範囲から離れて配置されていることで、溶接熱によりリミット穴126を形成する部位の熱変形を抑制することができ、リミット穴126により規制する回転範囲の精度が低下する事態を抑制することができる。
また、本実施形態のスクロール圧縮機101では、回転シャフト119の最大回転数が145rpsを超える。
このスクロール圧縮機101によれば、上述した構成により、偏心ピン125のたわみの発生を抑制することができ、また、ブッシュアセンブリ137におけるブッシュ141と連結部143Aとの接合の剛性を確保することができることから、回転シャフト119の最大回転数が145rpsを超えるスクロール圧縮機101を実現することができる。
なお、スクロール流体機械は、スクロール圧縮機1,101に限定されるものではなく、スクロール膨張機であってもよい。スクロール流体機械であるスクロール膨張機は、図には明示しないが、圧縮された流体により固定スクロールと噛み合う旋回スクロールが旋回して流体を膨張させつつ回転シャフトに回転駆動力を発生する。すなわち、上述した回転シャフト19,119の偏心ピン25,125の構成や、スクロール圧縮機構7,107のブッシュアセンブリ37,137の構成は、スクロール膨張機にも適用することが可能である。