以下、本発明に係る作業機の油圧システム及びこの油圧システムを備えた作業機の好適な実施形態について、適宜図面を参照しながら説明する。
[第1実施形態]
まず、作業機の全体の構成から説明する。
作業機の全体の構成について説明する。図18,19は、作業機1の一例としてトラックローダを示している。作業機はトラックローダに限定されず、例えば、トラクタ、スキッドステアローダ、コンパクトトラックローダ、バックホー等であってもよい。尚、本実施形態において、作業機1の運転席に着座した運転者の前側(図18に示す矢印Fが指す方向)を前方、運転者の後側(図18に示す矢印Rが指す方向)を後方、運転者の左側(図18の紙面に向かって手前側)を左方、運転者の右側(図18の紙面に向かって奥側)を右方として説明する。
図18及び図19に示すように、作業機1は、機体2と、この機体2に装着した作業装置3と、機体2を支持する走行装置4とを備えている。機体2の上部であって当該機体2の前部には、キャビン5が搭載されている。キャビン5の後部は、機体2の支持ブラケット11に支持されており、支持軸12回りに揺動自在である。キャビン5の前部は、機体2の前部で支持可能である。
キャビン5内には運転席13が設けられている。運転席13の一方側(例えば、左側)には、走行装置4を操作するための走行用操作装置14が配置されている。
走行装置4は、クローラ式走行油圧装置により構成されている。走行装置4は、機体2の左側の下方及び機体2の右側の下方に設けられている。走行装置4は、後述する油圧駆動式の走行油圧装置44の駆動力によって、走行可能である。
作業装置3は、ブーム22Lと、ブーム22Rと、ブーム22L及びブーム22Rの先端に装着したバケット23(作業具)とを備える。ブーム22Lは、機体2の左に配置されている。ブーム22Rは、機体2の右に配置されている。ブーム22Lとブーム22Rとは、ブーム22Lとブーム22Rの間に設けられた連結体(図示せず)によって相互に連結されている。ブーム22L及びブーム22Rは、それぞれ第1リフトリンク24及び第2リフトリンク25に支持されている。ブーム22L及びブーム22Rの基部側と機体2の後下部との間には、複動式油圧シリンダからなるリフトシリンダ26がブーム22L及びブーム22Rに対応して設けられている。リフトシリンダ26を同時に伸縮させることによりブーム22L及びブーム22Rが同時に上下に揺動動作する。ブーム22L及びブーム22Rの先端側には、それぞれ装着ブラケット27が、横軸回りに回動自在に枢支連結され、装着ブラケット27にバケット23の背面側が取り付けられている。
また、装着ブラケット27とブーム22L及びブーム22Rの先端側中途部との間には、複動式油圧シリンダからなるチルトシリンダ28が、ブーム22L及びブーム22Rに対応して介装されている。チルトシリンダ28の伸縮によってバケット23が揺動動作(スクイ・ダンプ動作)する。
バケット23は装着ブラケット27に着脱自在である。装着ブラケット27は、バケット23を取り外せば、各種のアタッチメント(油圧アクチュエータを有する油圧駆動式の作業具)を取り付けることができ、掘削以外の各種の作業(又は他の掘削作業)を行えるように構成されている。
機体(車体)2の底壁上の後側には原動機29が設けられている。原動機29は、ディーゼルエンジン、モータジェネレータ等である。機体2の底壁上の前側には燃料タンク30と作動油タンク31とが設けられている。
次に、作業機の油圧システムについて説明する。
図1は、作業機の走行系の油圧システムを示す図である。図2は、作業機の作業系の油圧システムを示している。
図1及び図2に示すように、油圧システム(走行系の油圧システム、作業系の油圧システム)は、第1油圧ポンプP1と、第2油圧ポンプP2とを有している。第1油圧ポンプP1及び第2油圧ポンプP2は、原動機29の動力によって駆動される定容量型のギヤポンプである。なお、第1油圧ポンプP1及び第2油圧ポンプP2は、原動機29によって駆動される斜板型の可変容量ポンプであってもよく、その他のポンプであってもよい。
第1油圧ポンプP1(メインポンプ)は、リフトシリンダ26、チルトシリンダ28又はブーム22の先端側に取り付けられるアタッチメントの油圧アクチュエータを駆動するために使用される。第2油圧ポンプP2(パイロットポンプ、チャージポンプ)は、主として制御圧又は信号圧としての作動油の圧力を供給するために使用される。以降、説明の便宜上、制御圧又は信号圧としての作動油のことを「パイロット油」、パイロット油の圧力のことを「パイロット圧」という。
油圧システムは、走行油圧装置44と、作動弁45と、油圧切換弁90とを備えている。走行油圧装置44は、作動油によって速度を変更することが可能な装置である。即ち、走行油圧装置44は、後述する走行モータの回転数(回転速度)が変更である。言い換えれば、走行油圧装置44は、走行装置4が走行する際の推進力を変更可能な装置である。走行油圧装置44は、第1走行油圧ポンプ66Aと、第2走行油圧ポンプ66Bと、第1走行モータ80Aと、第2走行モータ80Bとを有している。油圧切換弁90は、油圧切換弁90Aと、第2油圧切換弁90Bとを有している。
第1走行油圧ポンプ66Aと、第1走行モータ80Aとは、作動油を循環可能な第1循環油路101により接続されている。第2走行油圧ポンプ66Bと、第2走行モータ80Bとは、作動油を循環可能な第2循環油路102により接続されている。第1油圧切換弁90Aと第1走行モータ80Aとは油路103により接続され、第2油圧切換弁90Bと第2走行モータ80Bとは油路104により接続されている。また、第1油圧切換弁90A、第2油圧切換弁90B及び作動弁45は、油路(第1油路)105により接続されている。油圧切換弁(第1油圧切換弁90A、第2油圧切換弁90B)の受圧部91には、排出油路108が接続されている。排出油路108は、第1油路105の作動油(受圧部91に作用している作動油)を外部に排出する油路であって、例えば、一端が第1油路105に接続され、他端が作動油タンク31に接続されている。排出油路108の接続先は、作動油タンク31に限定されず、油圧ポンプの吸込部であっても、その他の部分であってもよい。排出油路108には、第1絞り部(例えば、オリフィス)109aが設けられている。また、第1油路105であって、当該第1油路105と排出油路108との接続部180と作動油45との間の区間には、第2絞り部(例えば、オリフィス)109bが設けられている。第1絞り部109aと第2絞り部109bとの内径(絞り径)は、略同じに設定されている。なお、第1絞り部109aと第2絞り部109bとの径は、上述した径に限定されない。
作動弁45と第2油圧ポンプP2とは油路106により接続されている。なお、第1走行油圧ポンプ66A及び第2走行油圧ポンプ66Bと、第2油圧ポンプP2とは図示省略の油路により接続されており、第2油圧ポンプP2から吐出した作動油は、第1走行油圧ポンプ66A及び第2走行油圧ポンプ66Bに供給可能である。
第1走行油圧ポンプ66Aは、原動機29の動力によって駆動される斜板形可変容量アキシャルポンプである。また、第1走行油圧ポンプ66Aは、パイロット圧が作用する受圧部66aと受圧部66bとを備えている。受圧部66a,66bに作用するパイロット圧によって斜板の角度が変更可能である。斜板の角度が変更すると、作動油の吐出方向や吐出量が変わり、これによって第1走行モータ80Aの回転出力を変更する。
なお、第2走行油圧ポンプ66Bは、第1走行油圧ポンプ66Aと同様の構成である。第2走行油圧ポンプ66Bの斜板の角度を変更すると、作動油の吐出方向や吐出量が変わり、これによって第2走行モータ80Bの回転出力を変更する。
第1走行モータ80Aは、カムモータ(ラジアルピストンモータ)で構成されている。この第1走行モータ80Aは、稼動時における容量(モータ容量)の大きさを変更できる容量可変型であって、モータ容量を変更することによって出力軸の回転やトルクを変更することができる。詳しくは、第1走行モータ80Aは、第1モータ81と、第2モータ82とを有している。第1モータ81及び第2モータ82の両方に作動油を供給することにより、モータ容量は大きくなり、第1走行モータ80Aは1速となる。また、第1モータ81と第2モータ82とのいずれかに作動油を供給することによって、モータ容量は小さくなり、第1走行モータ80は2速となる。なお、第2走行モータ80Bは、第1走行モータ80Aと同様の構成であり、1速又は2速に変更可能である。
第1油圧切換弁90Aは、パイロット油の圧力であるパイロット圧に応じて複数の切換位置に切換可能な油圧切換弁であって、第1走行モータ80Aを1速或いは2速に切り換え可能な弁である。第1油圧切換弁90Aは、例えば、第1位置90a、第2位置90b、及び中立位置90cの3つの切換位置に切り換え可能な三位置切換弁である。
詳しくは、第1油圧切換弁90Aの受圧部91に作用するパイロット油の圧力が、予め定められた所定圧力である切換圧に満たない場合、油圧切換弁90は、バネによって第1位置90aに保持される。第1油圧切換弁90Aが第1位置90aである場合、第1モータ81及び第2モータ82の両方に作動油が供給され、第1走行モータ80Aは1速となる。第1油圧切換弁90Aの受圧部91に作用するパイロット油の圧力が、切換圧以上である場合、第1油圧切換弁90Aは、中立位置90cを経て第2位置90bに切り換えられる。第1油圧切換弁90Aが第2位置90bである場合、第1モータ81だけに作動油が供給され、第1走行モータ80Aは2速となる。
なお、第2油圧切換弁90Bは、第1油圧切換弁90Aと同様の構成である。第2油圧切換弁90Bは、第2走行モータ80Bを1速或いは2速に切り換え可能である。
作動弁45は、油圧切換弁(第1油圧切換弁90A、第2油圧切換弁90B)に作用する作動油の圧力(流量)を変更可能な弁であって、当該油圧切換弁が所定の切換位置に切り換わらない程度に作動油の圧力を付与することが可能な弁である。作動弁45は、後述する制御装置110から出力された制御信号によって開度を変更可能である。この実施形態では、作動弁45は、電磁比例弁(比例弁)であって、制御信号により開度が変更される。作動弁45の開度を変更することによって、油圧切換弁に作用(供給)する作動油の圧力が変わる。
図3は、作動弁を作動させた場合の油圧切換弁(第1油圧切換弁、第2油圧切換弁)の位置と作動油の圧力(パイロット圧)との関係を示した図である。図3に示す変速圧L1は、油圧切換弁の受圧部に作用するパイロット圧である。以下、説明の便宜上、作動弁45のことを比例弁45という。また、第1油圧切換弁90A及び第2油圧切換弁90Bのことを油圧切換弁、第1走行モータ80A及び第2走行モータ80Bのことを走行モータということがある。
図3の変速圧L1に示すように、第1油圧切換弁90A及び第2油圧切換弁90Bの受圧部91に作用するパイロット圧が、第1位置90aと中立位置90cとの境界圧(切換圧)CP1未満である場合、油圧切換弁(第1油圧切換弁90A及び第2油圧切換弁90B)は、第1位置90aである。油圧切換弁が第1位置90aである場合、走行モータ(第1走行モータ80A、第2走行モータ80B)は、1速である。比例弁45は、油圧切換弁が第1位置90aを維持した状態で、当該油圧切換弁に対して与圧を与える。即ち、比例弁45は、図3に示すように、油圧切換弁の受圧部91に付与圧F1を付与可能である。言い換えれば、比例弁45は、走行モータが1速である場合に、予め設定された付与圧F1を、油圧切換弁の受圧部91に付与する。
ここで、比例弁45の開度を徐々に大きくして、第1油圧切換弁90A及び第2油圧切換弁90Bの受圧部91に作用するパイロット圧が、切換圧CP1を超えると、第1油圧切換弁90A及び第2油圧切換弁90Bは、中立位置90cになる。また、第1油圧切換弁90A及び第2油圧切換弁90Bの受圧部91に作用するパイロット圧が、中立位置90cと第2位置90bとの境界圧(切換圧)CP2を超えると、第1油圧切換弁90A及び第2油圧切換弁90Bは、第2位置90bになる。油圧切換弁が第2位置90bである場合、走行モータは、2速である。つまり、比例弁45の開度と油圧切換弁に作用するパイロット圧とは比例関係にあって、比例弁45の開度に伴って走行モータを1速、又は,2速に切り換えることができる。
比例弁45は、上述したように、油圧切換弁に与圧を作用させることができる構成であるが、特に、第1油路105に、排出油路108を設けたうえで、第2絞り部109bを設けていることから、油圧切換弁に対する与圧を精度良く行うことができる。第1絞り部109a及び第2絞り部109bを設けることによって、これらの絞り部によって比例弁45の作動時における圧力幅を大きくすることができる。即ち、比例弁45に対して、与圧時の制御圧力幅に余裕を持たすことができる。
さて、図1に示すように、油路106は比例弁45の上流側で分岐していて、分岐後の油路107は、走行用操作装置14に接続されている。走行用操作装置14は、前進用のリモコン弁36と、後進用のリモコン弁37と、右旋回用のリモコン弁38と、左旋回用のリモコン弁39と、走行レバー40とを有する。また、走行用操作装置14は、第1〜4シャトル弁51,52,53,54を有する。リモコン弁36、37、38、39は、共通、即ち、1本の走行レバー40によって操作される。リモコン弁36、37、38、39は、走行レバー40(操作部材)の操作に応じて作動油の圧力を変化させ且つ変化後の作動油を走行油圧装置14に供給する。なお、この実施形態では、1本の走行レバー40でリモコン弁36、37、38、39が操作されるが、走行レバー40は複数本でもよい。例えば、運転席13の一方側(左側)に第1の走行レバーを配置し、他方側に第2の走行レバーを配置して、これら2本の走行レバーによって、リモコン弁36、37、38、39を操作してもよい。
走行レバー40は、中立位置から、前後、前後に直交する幅方向、斜め方向に傾動可能である。走行レバー40を傾動することにより、走行用操作装置14のリモコン弁36、37、38、39が操作される。そうすると、走行レバー40の中立位置からの操作量に比例したパイロット圧がリモコン弁36、37,38,39の二次側ポートから出力される。
走行レバー40を前側(図1では矢示A1方向)に傾動させると、前進用リモコン弁36が操作されて該リモコン弁36からパイロット圧が出力される。このパイロット圧は、第1シャトル弁51から油路61を介して第1走行油圧ポンプ66Aの受圧部66aに作用すると共に、第2シャトル弁52から油路62を介して第2走行油圧ポンプ66Bの受圧部66aに作用する。これにより、第1走行モータ80A及び第2走行モータ80Bの出力軸が走行レバー40の傾動量に比例した速度で正転(前進回転)して作業機1が前方
に直進する。
また、走行レバー40を後側(図1では矢示A2方向)に傾動させると、後進用リモコン弁37が操作されて該リモコン弁37からパイロット圧が出力される。このパイロット圧は、第3シャトル弁53から油路64を介して第1走行油圧ポンプ66Aの受圧部66bに作用すると共に、第4シャトル弁54から油路63を介して第2走行油圧ポンプ66Bの受圧部66bに作用する。これにより、第1走行モータ80A及び第2走行モータ80Bの出力軸が走行レバー40の傾動量に比例した速度で逆転(後進回転)して作業機1
が後方に直進する。
また、走行レバー40を右側(図1では矢示A3方向)に傾動させると、右旋回用リモコン弁38が操作されて該リモコン弁38からパイロット圧が出力される。このパイロット圧は、第1シャトル弁51から油路61を介して第1走行油圧ポンプ66Aの受圧部66aに作用すると共に、第4シャトル弁54から油路63を介して第2走行油圧ポンプ66Bの受圧部66bに作用する。これにより、第1走行モータ80Aの出力軸が正転し且つ第2走行モータ80Bの出力軸が逆転して作業機1が右側に旋回する。
また、走行レバー40を左側(図1では矢示A4方向)に傾動させると、左旋回用リモコン弁39が操作されて該リモコン弁39からパイロット圧が出力される。このパイロット圧は、第2シャトル弁52から油路62を介して第2走行油圧ポンプ66Bの受圧部66aに作用すると共に、第3シャトル弁53から油路64を介して第1走行油圧ポンプ66Aの受圧部66bに作用する。これにより、第1走行モータ80Aの出力軸が逆転し且つ第2走行モータ80Bの出力軸が正転して作業機1が左側に旋回する。
また、走行レバー40を斜め方向に傾動させると、第1走行油圧ポンプ66A及び第2走行油圧ポンプ66Bの受圧部66a、66bに作用するパイロット圧の差圧によって、第1走行モータ80A及び第2走行モータ80Bの出力軸の回転方向及び回転速度が決定され、トラックローダ1が前進又は後進しながら右旋回又は左旋回する。
すなわち、走行レバー40を左斜め前側に傾動操作すると該走行レバー40の傾動角度に対応した速度で作業機1が前進しながら左旋回する。走行レバー40を右斜め前側に傾動操作すると該走行レバー40の傾動角度に対応した速度で作業機1が前進しながら右旋回する。走行レバー40を左斜め後側に傾動操作すると該走行レバー40の傾動角度に対応した速度で作業機1が後進しながら左旋回する。走行レバー40を右斜め後側に傾動操作すると該走行レバー40の傾動角度に対応した速度で作業機1が後進しながら右旋回する。
次に、作業系の油圧システムについて説明する。
図2に示すように、第1油圧ポンプP1には、油路108が接続されている。油路108には、複数の制御弁70が接続されている。複数の制御弁70は、ブーム制御弁70A、バケット制御弁70B、予備制御弁70Cである。ブーム制御弁70Aは、パイロット方式の直動スプール型3位置切換弁であって、リフトシリンダ26を制御する。バケット制御弁70Bは、パイロット方式の直動スプール型3位置切換弁であって、チルトシリンダ28を制御する。予備制御弁70Cは、パイロット方式の直動スプール型3位置切換弁であって、予備アタッチメントの油圧アクチュエータ76を制御する。予備制御弁70Cは、パイロット圧によって、第1位置79a、第2位置79b、第3位置79cに切換可能である。なお、第3位置79cは中立位置である、
ブーム22、バケット23の操作は、運転席13の周囲に設けられた操作部材71によって行うことができる。操作部材71は、中立位置から、前後、前後と直交する幅方向及び斜め方向に傾動可能に支持されている。操作部材71を傾動操作することにより、操作部材71の下部に設けられたリモコン弁72A、72B、72C、72Dを操作することができる。
操作部材71を前側に傾動させると、リモコン弁72Aが操作されて当該リモコン弁72Aからパイロット圧が出力される。このパイロット圧は、ブーム制御弁70Aの受圧部に作用し、当該ブーム制御弁70Aに入った作動油をリフトシリンダ26のロッド側に供給することにより、ブーム(ブーム22L、ブーム22R)は下降する。
操作部材71を後側に傾動させると、リモコン弁72Bが操作されて当該リモコン弁72Bからパイロット圧が出力される。このパイロット圧は、ブーム制御弁70Aの受圧部に作用し、当該ブーム制御弁70Aに入った作動油をリフトシリンダ26のボトム側に供給することにより、ブームは上昇する。
即ち、ブーム制御弁70Aは、操作部材71の操作によって設定された作動油の圧力(リモコン弁72Aによって設定されたパイロット圧、リモコン弁72Bによって設定されたパイロット圧)に応じて、リフトシリンダ26に流れる作動油の流量を制御可能である。
操作部材71を右側に傾動させると、リモコン弁72Cが操作され、バケット制御弁70Bの受圧部にパイロット油が作用する。その結果、バケット制御弁70Bは、チルトシリンダ28を伸長させる方向に作動し、操作部材71の傾動量に比例した速度でバケット23がダンプ動作する。
操作部材71を左側に傾動させると、リモコン弁72Dが操作され、バケット制御弁70Bの受圧部にパイロット油が作用する。その結果、バケット制御弁70Bは、チルトシリンダ28を縮小させる方向に作動し、操作部材71の傾動量に比例した速度でバケット23がスクイ動作する。
即ち、バケット制御弁70Bは、操作部材71の操作によって設定された作動油の圧力(リモコン弁72Cによって設定されたパイロット圧、リモコン弁72Dによって設定されたパイロット圧)に応じて、チルトシリンダ28に流れる作動油の流量を制御可能である。つまり、リモコン弁72A、72B、72C、72Dは、操作部材71の操作に応じて作動油の圧力を変化させ且つ変化後の作動油を、ブーム制御弁70A、バケット制御弁70Bに供給する。
予備制御弁70Cには、供排油路74が接続されている。供排油路74は、予備制御弁70Cの2つのポートのうち、一方のポートに接続する油路74aと、他方のポートに接続する油路74bとを有している。供排油路74(油路74a及び油路74b)は接続部材75に接続され、接続部材75には、予備アタッチメントの油圧アクチュエータ76が接続可能となっている。したがって、予備制御弁70cから予備アタッチメントの油圧アクチュエータ76に作動油の供給が可能である。予備制御弁70Cの操作は、作動油の圧力に応じて開度が変更可能な比例弁73で行う。比例弁73は、予備制御弁70Cの受圧部70C1に油路77aを介して接続される第1比例弁73Aと、予備制御弁70Cの受圧部70C2に油路77bを介して接続される第2比例弁73Bとを含んでいる。第1比例弁73Aが開くと、油路77aを介して受圧部70C1にパイロット油が作用する。また、第2比例弁73Bが開くと、油路77bを介して受圧部70C2にパイロット油が作用する。したがって、予備制御弁70Cの受圧部70C1又は受圧部70C2にパイロット油が作用すると予備制御弁70Cが切り換わり、予備アタッチメントの油圧アクチュエータ76は、予備制御弁70Cから供給された作動油によって作動する。なお、第1比例弁73A及び第2比例弁73Bの操作は、制御装置110によって行う。制御装置110には、運転席13の周囲に設けられた操作部材78が接続されている。操作部材78は、例えば、揺動自在なシーソ型スイッチ、スライド自在なスライド型スイッチ、或いは、押圧自在なプッシュ型スイッチで構成されている。操作部材78の操作量は、制御装置110に入力される。制御装置110は、操作部材78の操作量に応じた制御信号(例えば、電流)を第1比例弁73A、又は、第2比例弁73Bに出力する。比例弁73(第1比例弁73A、第2比例弁73B)は、制御装置110から出力された制御信号によって開閉する。したがって、比例弁73(第1比例弁73A、第2比例弁73B)に出力された作動油が所定以上に達すると、予備制御弁70Cは、第1位置79a、第2位置79b、第3位置79cに切り換わり、油圧アタッチメント76を操作することができる。
さて、図1に示すように、油圧システムは、制御装置110と、測定装置118とを備えている。測定装置118は、油圧切換弁(第1油圧切換弁90A、第2油圧切換弁90B)に作用する作動油の圧力を検出する装置で、第1油圧切換弁90A又は第2油圧切換弁90Bの受圧部91、又は、油路105に設けられている。この実施形態では、測定装置118は、油路105において、第2絞り部109bから受圧部91との間に設けられている。測定装置118で検出した作動油の圧力(パイロット圧)は、制御装置110に入力される。
制御装置110は、CPU等から構成されている。制御装置110と比例弁45とは接続されている。制御装置110は、当該制御装置110に接続された操作部材115に基づき、比例弁45の制御を行う。操作部材115は、走行モータ(第1走行モータ80A及び第2走行モータ80B)を1速、又は2速にする部材である。操作部材115は、例えば、揺動自在なシーソ型スイッチ、スライド自在なスライド型スイッチ、或いは、押圧自在なプッシュ型スイッチで構成されている。
シーソ型スイッチにあっては、一方側に揺動することにより1速、他方側に揺動することにより2速に設定することができる。スライド型スイッチにあっては、一方側にスライドすることにより1速、他方側にスライドすることにより2速に設定することができる。プッシュ型スイッチにあっては、押圧を行う毎に1速、2速の順に切り換わる。
制御装置110は、切換圧CP1よりも低い付与圧F1、付与圧F1に対応する比例弁45の開度(付与開度)、付与開度に対応する電流値(付与電流値)のいずれかを記憶している。この実施形態では、付与圧F1に対応する付与電流値を記憶しているものとして説明を進める。なお、付与圧F1又は付与開度を記憶している場合は、これら付与圧F1又は付与開度を、制御装置110が制御信号(付与電流)に変換することで、比例弁45を制御することができる。
制御装置110は、操作部材115によって1速に設定されている場合、例えば、付与電流を比例弁45に出力する。比例弁45は、付与電流に応じて開く。その結果、図3の変速圧L1に示すように、油圧切換弁の受圧部91には、付与圧F1が付与される。
ここで、制御装置110は、付与電流を比例弁45に出力した後、即ち、付与期間では、測定装置118で検出した作動油の検出圧F2、即ち、実付与圧F2を監視する。具体的には、図3に示すように、制御装置110によって油圧切換弁に対して付与圧F1を付与する制御を行っている状況下(1速時)において、制御装置110は、実付与圧F2が予め定められた警戒圧F3以上であるか否かを判断する。警戒圧F3は、制御装置110に予め設定された付与圧F1と切換圧CP1との間に設定された圧力である。実付与圧F2が警戒圧F3以上になった場合、即ち、何らかの事情(例えば、作業時等における負荷変動等)で実付与圧F2が付与圧F1よりも上昇して、警戒圧F3以上になった場合、制御装置110は、比例弁45に対する付与圧の制御を停止する。つまり、実付与圧F2が警戒圧F3以上になった場合、制御装置110は、比例弁45に対する付与電流の出力を停止する(比例弁45のソレノイドを消磁する)。即ち、実付与圧F2が警戒圧F3以上になった場合、比例弁45は全閉することによって、油圧切換弁への作動油の付与を停止する。
したがって、油圧切換弁に作動油を付与している状況下で、何らかの事情によって当該油圧切換弁に付与した実付与圧F2が上昇した場合でも、油圧切換弁が中立位置90c、第2位置90bに切り換えることを防止することができる。即ち、複数の切換位置に切り換わる油圧切換弁において、付与圧F1によって不用意に油圧切換弁が切り換わることを防止しつつ、与圧を確実に行うことができる。
また、油圧切換弁が第1位置、即ち、1速である状態で、操作部材115によって2速に設定された場合、制御装置110は、油圧切換弁への作動油の付与中、又は、油圧切換弁への作動油の付与の停止に関わらず、比例弁45に制御信号を出力して、油圧切換弁に作用する作動油の圧力を切換圧CP2以上にする。制御装置110は、油圧切換弁に作用する作動油の圧力(実付与圧F2)が切換圧CP2以上であって、予め定められた設定圧Q3に達すると、実付与圧F2と設定圧Q3とが一致するように比例弁45の開度を制御する。
また、油圧切換弁が第2位置90b、即ち、2速である状態で、操作部材115によって1速に設定された場合、制御装置110は、比例弁45に制御信号を付与電流値に出力する。そうすると、切換圧L1は、徐々に減少して、油圧切換弁が第2位置90bから第1位置90aに切り換わり、2速から1速に減速した後に、当該油圧切換弁に付与圧F1が付与される。
上述した実施形態では、比例弁45は、2速から1速に減速する際、油圧切換弁に対して付与圧F1を付与しているが、油圧切換弁に対する付与圧F1の付与を停止してもよい。図4に示すように、操作部材115によって2速から1速への減速が設定された場合、制御装置110は、比例弁45のソレノイドを消磁する。そのため、比例弁45は全閉し、図4の変速圧L1aに示すように、油圧切換弁に作用する圧力は略零になる。即ち、2速から1速へ減速において1速にした場合は、比例弁45は油圧切換弁に付与圧F1を付与しない。
また、2速から1速に減速後(制御装置110が比例弁45のソレノイドを消磁した後)、1速に設定された状態で予め定められた所定時間T1が経過すると、制御装置110は再び付与電流を比例弁45に出力する。その結果、図4の変速圧L1bに示すように、油圧切換弁に作用(付与)する圧力は付与圧F1に増加する。つまり、比例弁45は、減速後、油圧切換弁に作用(付与)する作動油の圧力を所定時間T1だけ略零にする。
このように、2速から1速に減速する際、比例弁45による付与圧F1の付与を停止していることから、安定して油圧切換弁に作動油を付与することができる。言い換えれば、比例弁45の作動を一旦、全閉等の初期位置に戻しているので、油圧切換弁に付与する作動油の圧力(付与圧)を一定にし易い。例えば、比例弁45において、ヒステリシスが比較的大きな弁である場合、ヒステリシスの影響によって、1速時の付与圧と、2速から1速に減速した場合の付与圧とが異なる。上述した実施形態では、減速時には比例弁45を一旦、全閉しているため、付与圧の差異を小さくすることができる。
また、図4では、2速から1速へ減速した場合、油圧切換弁に作用(付与)する作動油の圧力を略零にしているが、これに代えて、図5に示すように、比例弁45は付与圧未満の圧力である減速設定圧F4を油圧切換弁に付与してもよい。制御装置110は、付与圧F1よりも低い減速設定圧F4、減速設定圧F4に対応する比例弁45の開度(減速開度)、減速開度に対応する電流値(減速電流)を記憶している。制御装置110は、2速から1速に減速した場合、減速開度に対応する減速電流を比例弁45に出力する。そして、比例弁45は減速開度に応じて開く。その結果、図5の変速圧L1cに示すように、減速直後には、油圧切換弁(油路105)に作用する圧力は減速設定圧F4になる。
また、2速から1速に減速後、1速に設定された状態で所定時間T1が経過すると、制御装置110は付与電流を比例弁45に出力する。そして、図5の変速圧L1dに示すように、油圧切換弁に付与(作用)する圧力は付与圧F1に増加する。つまり、比例弁45は、減速後、油圧切換弁に作用する作動油の圧力を所定時間T1だけ減速設定圧F4にする。なお、上述した実施形態において、所定時間T1以内に、1速から2速に設定された場合は、制御装置110は、比例弁45に所定の制御信号を出力して、1速から2速に変更する。
このように、2速から1速に減速する際、比例弁45による付与圧F1の付与の代わりに、付与圧F1よりも低い圧力である減速設定圧F4を油圧切換弁に作用させていることから、比例弁45を出来る限り、初期位置に戻しつつ、油圧切換弁にも少しの圧力を作用させることができる。
[第2実施形態]
図6は、第2実施形態の油圧システムを示している。第2実施形態で示す走行系の油圧システムは、上述した第1実施形態の油圧システムに適用可能である。なお、第1実施形態と同様の構成の説明は省略する。
図6に示すように、油圧システムは、制動装置130と、制御装置131とを備えている。制動装置130は、走行装置4、即ち、走行油圧装置44を制動する制動状態と制動状態を解除する解除状態とに切換可能な装置である。制動装置130は、走行モータ(第1走行モータ80A、第2走行モータ80B)の制動を行う。制動装置130は、第1走行モータ80Aの出力軸に設けられた第1ディスクと、移動可能な第2ディスクと、第2ディスクが第1ディスクに接触する側へ付勢するバネとを備えている。また、制動装置130は、第1ディスク、第2ディスク及びバネを収容する収容部(収容ケース)130aを備えている。この収容部130aにおいて、第2ディスクが納められている格納部には油路132が接続されている。油路132には、油路106が接続され、収容部130aの格納部に作動油が供給可能である。油路132には、開閉可能な作動弁133が接続されている。作動弁133は、制動装置130を制動状態にする制動位置と、制動装置130を解除状態にする解除位置とに切換可能な切換弁(油圧切換弁)で構成されている。作動弁133が解除位置(第1位置133a)に切り換わると、収容部130aの格納部には作動油が供給される。格納部内の作動油の圧力が所定以上になると、第2ディスクが制動とは反対側(バネの付勢方向とは反対側)に移動して、制動装置130による制動を解除することができる。一方、作動弁133が制動位置(第2位置133b)に切り換わると、収容部130aの格納部において、パイロット油の圧力が低下する。格納部内の作動油の圧力が所定以下になると、第2ディスクが第1ディスクに接触する側へ移動し、制動装置130による制動を行うことができる。作動弁133の切換は、制御装置131により行うことが可能である。作動弁133が電磁弁式の2位置切換弁である場合、制御装置131は、作動弁133を励磁することにより、作動弁133を第1位置133aに切り換える。また、制御装置131は、作動弁133を消磁することにより、作動弁133を第2位置133bに切り換える。また、制御装置131は、第1実施形態に示した制御装置が有する機能を備えている。即ち、制御装置131は、比例弁45を制御することが可能であり、比例弁45は、油圧切換弁に対して与圧を付与することが可能である。
制御装置131は、制動装置130によって制動が解除されている場合、操作部材115による設定に応じて比例弁45の制御を行う。即ち、制御装置131は、第1実施形態の図3〜図5に示したように、比例弁45を制御することで、1速及び2速の切り換え、油圧切換弁に対する作動油の与圧等を行う。
制御装置131は、1速に設定され且つ制動装置130によって制動が行われている場合において、油圧切換弁に対して与圧を付与する際、付与圧F1は高めに設定する。説明の便宜上、制動の解除時に設定する付与圧F1のことを「第1付与圧F1」といい、この付与圧F1と異なる付与圧F6のことを「第2付与圧F6(図示省略)」という。
制御装置131は、第2付与圧F6、第2付与圧F6に対応する比例弁45の開度(付与開度)、付与開度に対応する電流値(付与電流値)のいずれかを記憶している。ここで、第2付与圧F6は、少なくとも第1付与圧F1よりも大きく、例えば、警戒圧F3と同じである。また、第2付与圧F6は、切換圧CP1よりも大きくてもよい。
制御装置131は、1速であること及び制動装置130に制動を行う制御を行っていることを条件として、油圧切換弁に作用させる作動油の圧力を第2付与圧F6に設定する。即ち、操作部材115によって1速の設定が制御装置131に入力された状態で、且つ、制御装置131が作動弁133を消磁している場合、当該制御装置131は、第2付与圧F6に対応する付与電流値を比例弁45に出力する。一方、制御装置131は、上述した条件以外の状態になった場合、例えば、2速の設定が行われた場合、制動装置130による制動が解除された場合等は、第2付与圧F6の作動油の付与は停止する。
したがって、比例弁45は、作動弁133が制動位置133bである場合には、作動油を油圧切換弁に付与する付与圧を所定以上、即ち、第2付与圧F6に設定している。これにより、油圧切換弁の受圧部91に作用する作動油が大きくなり、比例弁45と油圧切換弁の受圧部91の間の作動油を、排出油路108を通じて効率的に循環させることができる。
なお、上述した実施形態では、変速時(1速から2速への増速時、2速から1速への減速時)には、油圧切換弁の受圧部91に作用するパイロットの圧力を徐々に上昇又は下降させる、即ち、変速圧L1において変速前から変速後に至る区間を傾斜させていたが、図7に示すように、変速時には、図7に示すように、変速圧L2を途中まで一挙に上昇又は下降させてもよい。
具体的には、1速から2速に変速する場合は、図7の変速圧L2aに示すように、比例弁45によって油圧切換弁に対して付与圧F1を付与している状態から、中立位置に対応して定められた第1設定圧Q1になるまで一挙に変速圧を上昇させる(第1段階)。油圧切換弁の受圧部91に作用する圧力が第1設定圧Q1に達すると、変速圧L2bに示すように、第1設定圧Q1に達した時点から第2位置に対応して定められた第2設定圧Q2になるまでは変速圧を徐々に上昇させる(第2段階)。そして、油圧切換弁の受圧部91に作用する圧力が第2設定圧Q2に達すると、変速圧L2cに示すように、第2位置に定められた第3設定圧Q3になるまで一挙に変速圧を上昇させる(第3段階)。即ち、図7に示すように、1速から2速に変速する場合は、変速圧の変化を3段階に分けて上昇させる。
一方、2速から1速に変速する場合は、図7の変速圧L2dに示すように、比例弁45を所定の位置で維持している状態から閉鎖し、中立位置に対応して定められた第4設定圧Q4になるまで一挙に変速圧を下降させる(第1段階)。油圧切換弁の受圧部91に作用する圧力が第4設定圧Q4に達すると、変速圧L2eに示すように、第4設定圧Q4に達した時点から第1位置に対応して定められた第5設定圧Q5になるまでは変速圧を徐々に下降させる(第2段階)。そして、油圧切換弁の受圧部91に作用する圧力が第5設定圧Q5に達すると、付与圧F1になるまで一挙に変速圧を下降させる(第3段階)。即ち、図7に示すように、2速から1速に変速する場合は、変速圧の変化を3段階に分けて下降させる。
油圧システムでは、第1油路105に第2絞り部109bを設け、当該第2絞り部109bと油圧切換弁の受圧部91との間に測定装置118を設けている。そのため、上述したように、比例弁45の制御によって油圧切換弁の受圧部91に作用する作動油の圧力の設定(コントロール)が行いやすく、精度よく、油圧切換弁の切換等を行うことができる。言い換えれば、第1油路105に第2絞り部109bを設けることによって、比例弁45の開度と油圧切換弁の受圧部91に作用する作動油の圧力との関係を安定させ易く。また、これに加え、第2絞り部109bと受圧部91との間に設けた測定装置118によって比例弁45を制御しているため、油圧切換弁の受圧部91に作用する作動油の圧力の設定の精度を向上させることができる。
[第3実施形態]
図8は、第3実施形態の油圧システムを示している。第3実施形態で示す作業系の油圧システムは、上述した第1実施形態又は第2実施形態の油圧システムに適用可能である。なお、第1実施形態又は第2実施形態と同様の構成の説明は省略する。
図8に示すように、遮断弁(切換弁)140と、制御装置141とを備えている。
遮断弁(シャット弁)140は、制御弁70と油圧アクチュエータとの間の油路を開放又は遮断する弁である。詳しくは、遮断弁140は、供排油路74の中途部、即ち、油路74a及び油路74bの中途部には、遮断弁140が設けられている。遮断弁140は、供排油路74を開放状態にする第1位置140aと、供排油路74を遮断状態にする第2位置140bとに切換可能な切換弁である。したがって、遮断弁140を第1位置140aにした場合には、油路74a及び油路74bの両方の中途部が繋がり、第2位置140bにした場合には、油路74a及び油路74bの両方を遮断する。
油路77aには、排出油路83が接続されている。排出油路83は、作動油タンク31が接続されている。排出油路83には、当該排出油路83に流れる作動油の流量を低下させる絞り部84が設けられている。油路77bには、排出油路85が接続されている。排出油路85は、作動油タンク31が接続されている。排出油路85には、当該排出油路85に流れる作動油の流量を低下させる絞り部86が設けられている。
制御装置141は、比例弁73の制御を行う。制御装置141には、操作部材78が接続されている。操作部材78の操作量は、制御装置141に入力される。制御装置141は、操作部材78の操作量に応じた制御信号(例えば、電流)を第1比例弁73A、又は、第2比例弁73Bに出力する。比例弁73(第1比例弁73A、第2比例弁73B)は、制御装置141から出力された制御信号によって開閉する。したがって、制御装置141の制御によって、予備アクチュエータを作動させることができる。
また、制御装置141は、遮断弁140の状態に基づいて比例弁73の制御を行う。図9は、予備制御弁70Cの受圧部70C1、70C2に作用するパイロット圧と、予備制御弁70Cの切換との関係を示した図である。図9に示す切換圧CP3は、予備制御弁70Cが中立位置79cから第1位置79a又は第2位置79cに切り換わる境界の圧力である。図9に示す付与圧F7は、切換圧CP3未満の圧力である。
遮断弁140が第1位置140aであって開放状態であり、且つ、操作部材78の操作が行われていない場合[予備制御弁70Cが第3位置(中立位置79c)である場合]、
制御装置141は、比例弁73(第1比例弁73A、第2比例弁73B)に付与電流を出力する。したがって、図9の変速圧L3に示すように、遮断弁140が開放状態で且つ操作部材78の操作が行われていない場合は、予備制御弁70Cには付与圧F7を作用させることができる。
また、遮断弁140が第2位置140bであって遮断状態であり、且つ、操作部材78の操作が行われていないことを条件として、制御装置141は、予備制御弁70Cに作用させる作動油の圧力を、予め設定された付与圧F7よりも大きくする。例えば、予備制御弁70Cに作用させる作動油の圧力を、付与圧F7と切換圧CP3との間に設定された警戒圧F8と略同じにしてもよいし、切換圧CP3以上に設定してもよい。言い換えれば、遮断弁140が遮断状態である場合は、予備制御弁70Cに付与する作動油の圧力(付与圧)を警戒圧F8又は切換圧CP3以上に設定し、遮断弁140が開放状態である場合は、予備制御弁70Cに付与する作動油の圧力を付与圧F7に一致させる。
また、遮断弁140が第1位置140aであって開放状態であり、且つ、操作部材78の操作が行われた場合、制御装置141は、操作部材78の操作量に対応する電流を比例弁73に出力する。したがって、遮断弁140が開放状態で操作部材78の操作が行われた場合には、操作部材78の操作に応じて予備制御弁70Cを切り換えることができる。
なお、作動油の温度に基づいて、予備制御弁70Cに付与する作動油の圧力(付与圧)を設定してもよい。図8に示すように、制御装置141には、作動油の温度を検出可能な測定装置(第1測定装置)150が接続されている。操作部材78の操作が行われていない場合で、遮断弁140が遮断状態且つ測定装置150で検出された作動油の温度が所定以下である場合、制御装置141は、予備制御弁70Cに作用させる作動油の圧力(付与圧)を、警戒圧F8又は切換圧CP3以上に設定する。例えば、作動油の温度が低温で粘性が高くなった場合に制御装置141は、予備制御弁70Cに作用させる作動油の圧力(付与圧)を、警戒圧F8又は切換圧CP3以上に設定する。
また、外気の温度に基づいて、予備制御弁70Cに付与する作動油の圧力(付与圧)を設定してもよい。図8に示すように、制御装置141には、外気の温度を検出可能な測定装置(第2測定装置)151が接続されている。操作部材78の操作が行われていない場合で、遮断弁140が遮断状態且つ測定装置151で検出された外気の温度が所定以下である場合、制御装置141は、予備制御弁70Cに作用させる作動油の圧力(付与圧)を、警戒圧F8又は切換圧CP3以上に設定する。
[第4実施形態]
図10は、第4実施形態の油圧システムを示している。第4実施形態で示す走行系の油圧システムは、上述した第1実施形態〜第3実施形態の油圧システムに適用可能である。なお、第1実施形態〜第3実施形態と同様の構成の説明は省略する。
上述した実施形態は、第1走行油圧ポンプ66A及び第2走行油圧ポンプ66Bは、リモコン弁36、37、38、39に作動していたが、第4実施形態では、第1走行油圧ポンプ66A及び第2走行油圧ポンプ66Bは、作動弁210A、作動弁210Bにより作動する。作動弁210A及び作動弁210Bは、制御信号によって開度が変更する電磁比例弁(比例弁)である。作動弁210A及び作動弁210Bには、図示省略の油路を介して第2油圧ポンプP2から作動油が供給可能となっている。作動弁210A及び作動弁210Bの開度を変更することにより、走行油圧ポンプ(第1走行油圧ポンプ66A及び第2走行油圧ポンプ66B)に作用する作動油の圧力(パイロット圧)が変わる。走行油圧ポンプに作用する圧力によって、斜板の角度を変更することができる。以降、説明の便宜上、作動弁210A及び作動弁210Bのことを、それぞれ比例弁210A、比例弁210Bという。
油圧システムは、制動装置130と、制御装置160とを備えている。制動装置130は、第4実施形態と同様である。制御装置160は、作動弁133を励磁することにより、作動弁133を第1位置133aに切り換える。また、制御装置160は、作動弁133を消磁することにより、作動弁133を第2位置133bに切り換える。
また、制御装置160は、当該制御装置160に接続された操作部材161に基づいて、比例弁210A及び比例弁210Bの制御を行う。即ち、制御装置160は、走行油圧ポンプ(第1走行油圧ポンプ66A、第2走行油圧ポンプ66B)の制御を行う。
制御装置160は、制動装置130によって制動が解除されている場合、操作部材161による設定に応じて比例弁210A及び比例弁210Bの制御を行う。制動が解除されている状態で、操作部材161を中立位置から一方向又は他方向に揺動させた場合は、制御装置160は、揺動量(操作量)に応じて、比例弁210A及び比例弁210Bに制御信号(例えば、電流)を出力する。制御信号によって、比例弁210A及び比例弁210Bの開度が大きくなり、開度に応じて、走行油圧ポンプ(第1走行油圧ポンプ66A、第2走行油圧ポンプ66B)の斜板の角度が増加する。走行油圧ポンプ(第1走行油圧ポンプ66A、第2走行油圧ポンプ66B)の増加に伴い作動油の吐出量は増加する。
また、制動が解除されている状態で、操作部材161を一方向における位置又は他方向の位置から中立位置に向けて揺動させた場合は、制御装置160は、揺動量(操作量)に応じて、比例弁210A及び比例弁210Bに制御信号(例えば、電流)を出力する。制御信号によって、比例弁210A及び比例弁210Bの開度が小さくなり、開度に応じて、走行油圧ポンプ(第1走行油圧ポンプ66A、第2走行油圧ポンプ66B)の斜板の角度が減少する。走行油圧ポンプ(第1走行油圧ポンプ66A、第2走行油圧ポンプ66B)の減少に伴い作動油の吐出量は減少する。なお、制動が解除されている状態で、操作部材161の操作が行われていない場合、制御装置160は、比例弁210A及び比例弁210Bの開度を制御することにより、走行油圧ポンプから吐出した作動油によって走行モータが回転しない程度に、走行油圧ポンプに付与圧(第1付与圧)F8を掛ける。
制御装置160は、制動装置130によって制動が行われている場合において、走行油圧ポンプに対して与圧を付与する際、付与圧を高めに設定する。即ち、制御装置160は、図示省略の第2付与圧F9、第2付与圧F9に対応する比例弁210A及び比例弁210Bの開度(付与開度)、付与開度に対応する電流値(付与電流値)のいずれかを記憶している。ここで、第2付与圧F9は、少なくとも第1付与圧F8よりも大きく、走行モータが走行油圧ポンプによって回転を始める走行油圧ポンプの最小圧力よりも小さい。
制御装置160は、操作部材161の操作が行われておらず且つ制動装置130に制動を行う制御を行っていることを条件として、走行油圧ポンプに作用させる作動油の圧力を付与圧F9に設定する。一方、制御装置160は、上述した条件以外の状態になった場合、例えば、操作部材161の操作がなされた場合、制動装置130による制動が解除された場合、操作部材161の操作がなされておらず且つ制動装置130による制動が解除された場合等は、第2付与圧F9の作動油の付与は停止する。
[第5実施形態]
図11は、第5実施形態の油圧システムを示している。第5実施形態で示す走行系の油圧システムは、上述した第1実施形態〜第4実施形態の油圧システムに適用可能である。なお、第1実施形態〜第4実施形態と同様の構成の説明は省略する。図11に示す油圧システムは、排出油路108、第1絞り部109a及び第2絞り部109bが設けられていない。
走行系の油圧システムは、制御装置170は、CPU等から構成されている。制御装置170は、操作部材115による設定及び測定装置118で検出された作動油の圧力(検出圧)に基づき、比例弁45の制御を行う。
制御装置170は、付与圧F1、付与圧F1に対応する比例弁45の開度(付与開度)、付与開度に対応する電流値(付与電流値)のいずれかを記憶している。この実施形態では、付与圧F1に対応する付与電流値を記憶しているものとして説明を進める。
制御装置170は、操作部材115によって1速に設定されている場合、例えば、付与電流を比例弁45に出力する。また、制御装置170は、付与期間では検出圧F2を監視する。図12に示すように、付与期間では、制御装置170は、検出圧F2が付与圧F1よりも大きい場合は、比例弁45を制御することで、油圧切換弁の受圧部91に作用する作動油の圧力を低下させ、付与圧F1と検出圧F2とを一致させるフィードバック制御を行う。また、制御装置170は、検出圧F2が付与圧F1よりも小さい場合は、比例弁45を制御することで、油圧切換弁の受圧部91に作用する作動油の圧力を上昇させ、付与圧F1と検出圧とを一致させるフィードバック制御を行う。このように、制御装置170は、検出圧F2を監視してフィードバック制御を行うことによって、油圧切換弁の受圧部91に作用する作動油の圧力を付与圧F1に一致させることができる。
また、油圧切換弁が第1位置(1速)である状態で、操作部材115によって2速に設定された場合、制御装置170は、比例弁45に制御信号を出力して、油圧切換弁に作用する作動油の圧力を切換圧CP2以上にする。制御装置170は、油圧切換弁に作用する作動油の圧力(付与圧F1)が切換圧CP2以上であって、予め定められた設定圧Q3に達すると、付与圧F1と設定圧Q3とが一致するように比例弁45の開度を制御する。
また、油圧切換弁が第2位置90b(2速)である状態で、操作部材115によって1速に設定された場合、制御装置170は、比例弁45に制御信号を付与電流値に出力する。そうすると、切換圧L1は、徐々に減少して、油圧切換弁が第2位置90bから第1位置90aに切り換わり、2速から1速に減速した後に、当該油圧切換弁に付与圧F1が付与される。
以上、制御装置170によって、測定装置118で検出された検出圧F2と付与圧F1とが一致するように比例弁45を制御することができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
図13は、油圧切換弁及び走行モータの変形例を示している。図13に示すように、油圧切換弁は、第1油圧切換弁200Aと、第2油圧切換弁200Bとを有している。第1油圧切換弁200A及び第2油圧切換弁200Bは、パイロット圧に応じて、第1位置200aと第2位置200bとに移動可能な二位置切換弁である。図14の変速圧L4に示すように、第1油圧切換弁200A及び第2油圧切換弁200Bは、受圧部に作用したパイロット圧が切換圧CP4未満である場合は、第1位置200aであり、パイロット圧が切換圧CP4以上になると、第2位置200bになる。
走行モータは、第1走行モータ201Aと、第2走行モータ201Bとを有している。第1走行モータ201A及び第2走行モータ201Bは、高低2速に変速可能な斜板形可変容量アキシャルモータである。第1走行モータ201A及び第2走行モータ201Bそれぞれは、斜板の角度を切り換える斜板切換シリンダ202を含んでいる。第1走行モータ201Aの斜板切換シリンダ202は、第1油圧切換弁200Aに接続され、当該第1油圧切換弁200Aからの作動油により伸縮する。第2走行モータ201Bの斜板切換シリンダ202は、第2油圧切換弁200Bに接続され、当該第2油圧切換弁200Bからの作動油により伸縮する。
したがって、第1走行モータ201A及び第2走行モータ201Bが第1位置200aである場合は、斜板切換シリンダ202は収縮して、第1走行モータ201A及び第2走行モータ201Bの斜板の角度を変更する。これにより、第1走行モータ201A及び第2走行モータ201Bは1速になる。第1走行モータ201A及び第2走行モータ201Bが第2位置200bである場合は、斜板切換シリンダ202は伸長して、第1走行モータ201A及び第2走行モータ201Bの斜板の角度を変更する。これにより、第1走行モータ201A及び第2走行モータ201Bは2速になる。なお、比例弁45は、中立位置を含まない油圧切換弁であっても、走行状態、走行負荷、原動機の負荷、原動機の状態に応じて、変速圧L4を変更可能である。
なお、図13に示すように、制御装置110は、比例弁45に出力する制御信号(電流値)と、測定装置118で検出した作動油の圧力との関係を記憶する記憶部240を有していることが好ましい。制御装置110に設定モードを設けておく。設定モードは、図示省略のスイッチ等の操作部材によって有効又は無効に切り換えることが可能である。設定モードが有効である場合には、例えば、比例弁45を全閉している状態から徐々に開くことによって、油圧切換弁の受圧部91に作用する作動油の圧力を零から徐々に上昇させる。設定モードでは、油圧切換弁の受圧部91に作用する作動油の圧力(測定装置118で検出した検出圧)が付与圧F1に達した時点で設定モードを終了する。設定モードでは、油圧切換弁の受圧部91に作用する作動油の圧力が零から徐々に上昇させて付与圧F1に達するまでの検出圧と、制御装置110が比例弁45に出力した制御信号(電流)とを逐次取得しておき、検出圧と制御信号との関係を記憶部240に記憶する。即ち、設定モードでは、制御装置110から比例弁45に出力する制御信号と付与圧F1に達するまでの作動油の圧力との関係を取得する。そして、制御装置110は、設定モードが無効である場合は通常の制御を行う。即ち、通常の制御で油圧切換弁に付与圧を付与する場合、制御装置110は、設定モードによって得られた関係(記憶部240に記憶した制御信号及び圧力)を用いて、比例弁45を制御する。なお、記憶部240及び設定モードは、制御装置110以外の他の制御装置に設けてもよい。
上述した実施形態では、第1油圧切換弁90A及び第2油圧切換弁90Bのそれぞれに、排出油路108、第1絞り部109a、第2絞り部109b及び測定装置118を設けていたが、図15に示すように、第1油圧切換弁90A及び第2油圧切換弁90Bに共通する排出油路108、第1絞り部109a、第2絞り部109b及び測定装置118を設けてもよい。また、油圧切換弁に与圧を行う油圧システムにおいては、排出油路108、第1絞り部109a及び第2絞り部109bを設けてもよいし、設けなくてもよい。例えば、図1、図10、図13、図15及び図17の油圧システムにおいて、排出油路108、第1絞り部109a及び第2絞り部109bが無くてもよい。
また、図16A及び図16Bに示すように、比例弁45を、油路105を介して斜板切換シリンダ(サーボシリンダ)202に接続して、比例弁45によって走行モータ(第1走行モータ201A、第2走行モータ201B)を1速、又は、2速に切り換えてもよい。制御装置110は、制御対象が斜板切換シリンダ202である点が上述した実施形態と異なるだけで、その他の動作は、上述した実施形態と同様である。即ち、油圧切換弁を斜板切換シリンダに読み替えればよい。
例えば、制御装置110は、1速に設定されている場合は、斜板切換シリンダ202に作用する圧力を所定圧CP3未満にする。制御装置110は、2速に設定されている場合は、斜板切換シリンダ202に作用する圧力を所定圧CP3以上にする。なお、図16Bの場合は、斜板切換シリンダ202に作用する圧力が所定圧CP3未満では、走行モータは2速であり、所定圧CP3以上であれば、走行モータは1速になる。なお、斜板切換シリンダ(サーボシリンダ)202は、制御装置110以外の他の制御装置で行っても良い。
また、上述した実施形態において、制御装置110によって比例弁45を制御する際、測定装置118で検出した作動油の圧力(検出圧)を、制御装置110にフィードバックして、比例弁45をフィードバック制御してもよい。例えば、制御装置110は、検出圧が予め定められた付与圧F1よりも大きい場合は、比例弁45を制御することで、油圧切換弁の受圧部91に作用する作動油の圧力を低下させ、付与圧F1と検出圧とを一致させる。また、制御装置110は、検出圧が予め定められた付与圧F1よりも小さい場合は、比例弁45を制御することで、油圧切換弁の受圧部91に作用する作動油の圧力を上昇させ、付与圧F1と検出圧とを一致させる。