JP6681722B2 - 成形用金型、成形用金型の製造方法、および成形用金型の再生方法 - Google Patents

成形用金型、成形用金型の製造方法、および成形用金型の再生方法 Download PDF

Info

Publication number
JP6681722B2
JP6681722B2 JP2016011754A JP2016011754A JP6681722B2 JP 6681722 B2 JP6681722 B2 JP 6681722B2 JP 2016011754 A JP2016011754 A JP 2016011754A JP 2016011754 A JP2016011754 A JP 2016011754A JP 6681722 B2 JP6681722 B2 JP 6681722B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
film
base material
release film
mold base
mold
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2016011754A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2017132645A (ja
Inventor
洋平 竹本
洋平 竹本
信高 小林
信高 小林
圭佑 福永
圭佑 福永
千紗子 小田
千紗子 小田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Mitsubishi Electric Corp
Original Assignee
Mitsubishi Electric Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Mitsubishi Electric Corp filed Critical Mitsubishi Electric Corp
Priority to JP2016011754A priority Critical patent/JP6681722B2/ja
Publication of JP2017132645A publication Critical patent/JP2017132645A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6681722B2 publication Critical patent/JP6681722B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Re-Forming, After-Treatment, Cutting And Transporting Of Glass Products (AREA)

Description

この発明は、離型膜を備えた成形用金型、成形用金型の製造方法、および成形用金型の再生方法に関する。
従来、微細な凹凸が表面に形成された金型または高い面精度が要求される金型などを用いてガラスなどの成形品を製造する場合、成形用金型とガラスなどの成形品との離型性が不十分であることに起因して、成形品に不良が発生することが問題になっている。そこで、成形用金型は、良好な離型性、および成形の繰り返し耐久性の向上を目的として、その成形面に離型膜が形成されることが一般的である。
ここで、光学ガラス材料のプレス成形に使用する金型には、高い耐熱性と高い強度が要求されることから、通常、タングステンカーバイド(WC)を主成分とする超硬合金、タンタルカーバイド(TaC)、チタンカーバイド(TiC)、クロムカーバイド(CrC)およびアルミナ(Al2O3)を主成分とするサーメット、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、タングステン(W)、チタン(Ti)、ステンレス(SUS)、シリコンカーバイド(SiC)などの材料が用いられ、離型膜には、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、ロジウム(Rh)、オスミウム(Os)およびルテニウム(Ru)などの貴金属、あるいはレニウム(Re)、タングステン(W)およびタンタル(Ta)などの遷移金属が用いられる(例えば、特許文献1参照)。
特開2009−73707号公報
しかし、ガラスなどの成形に使用する金型の場合、その加熱温度が500℃以上と高温であるため、離型膜の寿命が数十ショットから数百ショットと繰り返し耐久性が低い問題がある。そして、成形の繰り返しにより離型膜が劣化した場合、劣化した離型膜を除去し再生を行うことが一般的である。
ガラス成形の場合、成形温度が500℃以上と高温であるため、金型の離型膜として、貴金属系の金属を採用することが多い。貴金属系の離型膜を使用する金型を再生する場合、ダイヤモンド砥石などを利用した研磨・研削により離型膜を物理的に除去することが一般的であった。その際、離型膜のみならず、金型母材まで研削がおよんで金型を傷つける問題があった。傷がついた金型を補修せず離型膜を再生した場合、金型の面精度を維持することができない。そのため、離型膜の再生には金型の寸法出しのための追加工が必要となる問題があった。また、金型の研磨・研削と追加工により金型重量が大幅に変化するため、金型の熱容量が変化し、成形品の成形条件の再調整が必要となる問題もあった。
この発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、金型の離型膜の再生が容易な成形用金型、成形用金型の製造方法、および成形用金型の再生方法を得ることを目的としている。
この発明に係る成形用金型は、金型母材と、上記金型母材の成形面を覆った状態で上記金型母材に形成された保護膜と、上記保護膜上に形成され、上記金型母材および上記保護膜より化学反応性の高い材料からなる剥離膜と、上記剥離膜上に形成され、上記剥離膜より化学反応性の低い材料からなる離型膜と、を備え、上記保護膜は、上記金型母材の上記成形面を超える領域を覆った状態で上記金型母材に形成され、上記剥離膜は、上記金型母材の上記成形面を超える領域を覆った状態で上記保護膜上に形成され、上記離型膜は、上記金型母材の上記成形面を超える領域を覆った状態で上記剥離膜上に形成され、上記保護膜の周縁部は、全周に渡って露出している。
この発明によれば、化学反応性の高い材料からなる剥離膜が離型膜の下面に形成されているので、剥離膜を溶解除去することで、離型膜を同時に除去できる。そこで、研磨・研削による離型膜の剥離が不要となり、金型母材に与える損傷を低減することができる。また、金型母材と剥離膜との間に保護膜が形成されているので、剥離膜を溶解除去する剥離液と金型母材との接触が回避され、剥離液による金型母材と保護膜との界面の損傷発生が抑制される。これにより、研磨・研削による離型膜の再生時に必要であった金型母材の寸法出しのための追加工が不要となり、離型膜の再生コストを大幅に低減できる。また、離型膜の剥離前後で金型の面精度と熱容量が変化しないため、再生前後での金型による成形品の成形条件の変化が小さく、成形品の成形条件を安定化させることができる。
この発明の実施の形態1に係る成形用金型における金型母材を示す断面図である。 この発明の実施の形態1に係る成形用金型における金型母材にレジストを塗布した状態を示す断面図である。 この発明の実施の形態1に係る成形用金型における金型母材に保護膜、剥離膜および離型膜を形成した状態を示す断面図である。 図3のA部拡大図である。 この発明の実施の形態1に係る成形用金型を示す断面図である。 この発明の実施の形態3に係る成形用金型における金型母材に第1レジストを塗布した状態を示す断面図である。 この発明の実施の形態3に係る成形用金型における金型母材に保護膜を形成した状態を示す断面図である。 この発明の実施の形態3に係る成形用金型における保護膜が形成された金型母材に第2レジストを塗布した状態を示す断面図である。 この発明の実施の形態3に係る成形金型における金型母材に保護膜、剥離膜および離型膜を形成した状態を示す断面図である。 この発明の実施の形態3に係る成形用金型を示す断面図である。
以下、この発明の成形用金型、およびその製造方法について説明するが、各図において同一、または相当部材、部位については同一符号を付して説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係る成形用金型における金型母材を示す断面図、図2はこの発明の実施の形態1に係る成形用金型における金型母材にレジストを塗布した状態を示す断面図、図3はこの発明の実施の形態1に係る成形用金型における金型母材に保護膜、剥離膜および離型膜を形成した状態を示す断面図、図4は図3のA部拡大図、図5はこの発明の実施の形態1に係る成形用金型を示す断面図である。
図5において、成形用金型1は、金型母材2と、この金型母材2の成形面2aに形成された保護膜3と、この保護膜3の表面に形成された剥離膜4と、この剥離膜4の表面に形成された離型膜5と、を備えている。
金型母材2は、高い耐熱性と高い強度が求められることから、例えば、タングステンカーバイド(WC)を主成分とし、バインダとして他の軽金属元素を含む超硬合金によって形成される。金型母材2に含まれる他の軽金属元素としては、例えば、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)が含まれており、金型母材2の強度を高めるために添加される。
保護膜3は、離型膜5を化学的に除去する際に金型母材2に損傷を与えないようにする金型母材2の保護と、金型母材2と剥離膜4との密着性の向上のために、少なくとも金型母材2の成形面2aを覆うように形成される。剥離膜4は、保護膜3と離型膜5との間に形成されており、成形の繰返しにより離型膜5が劣化した際、選択的に溶解することで離型膜5を同時に除去する機能を持つ。剥離膜4は、単層または複層に構成され、各層が、金型母材2、保護膜3および離型膜5と比較して化学反応性が高い材料、例えば、ニッケル(Ni)、ニッケル−リン(Ni−P)、金(Au)、クロム(Cr)、酸化クロム(Cr)から選択される一つの材料により形成される。
このように、剥離膜4の材料は、複数の金属種およびその化合物から選択できるため、離型膜5の剥離に使用できる材料選択の幅が広がる。剥離膜4の膜厚は、例えば0.05〜0.50μmであり、剥離膜4の平均表面粗さRaは、例えば40nm以下である。平均表面粗さRaが40nm程度以下を目安としているが、これは、平均表面粗さRaが40nmを超えると、成形品に必要な面精度が維持できなくなる可能性があるためである。
離型膜5は、成形材料に直接接触するので、特にガラス成形においては、ガラス材料の軟化温度において酸化しにくく、かつ化学的に安定な材料、例えば、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)から選択される一つの金属、もしくは複数の金属を組み合わせた合金で形成されている。離型膜5の膜厚は、例えば0.05〜2μmであり、離型膜5の平均表面粗さRaは、例えば40nm以下である。離型膜5は、剥離膜4を構成している元素と同じ金属元素を含んではいけない。また、離型膜5は、剥離膜4と良好な密着性を確保する必要がある。その密着力としては、0.05kN/m以上の強度が必要である。なお、剥離膜4と離型膜5とは、接合に関して相性のよい金属元素を含んでいてもよい。
このように、離型膜5の材料は、複数の金属種から選択できるため、使用できる成形品を構成する成形材料の幅が広がる。
つぎに、このように構成された成形用金型1の製造方法について説明する。
まず、図1に示されるように、所望の形状に加工された金型母材2を準備する。
ついで、図2に示されるように、金型母材2の側面2bにレジスト21を塗布する。
ついで、図3に示されるように、金型母材2の成形面2aに保護膜3を形成し、保護膜3上に剥離膜4を形成し、剥離膜4上に離型膜5を形成する。ついで、レジスト21を除去し、図5に示される成形用金型1が作製される。ここで、保護膜3は、スパッタ、真空蒸着などの乾式成膜技術により形成することができる。剥離膜4と離型膜5は、スパッタ、真空蒸着などの乾式成膜技術、または電気めっき、無電解めっきによる湿式成膜技術により形成することができる。
以下、保護膜3と剥離膜4の具体的な成膜の方法について説明する。
まず、所望の形状に加工された金型母材2の脱脂処理を行い、金型母材2のタングステンカーバイド(WC)表面から有機異物などの表面汚染物を除去する。ついで、脱脂処理された金型母材2にエッチング処理を施し、金型母材2の表面から無機異物などの表面汚染物、酸化被膜を除去し、活性な金属表面を露出させる。ついで、金型母材2の表面上にスパッタ法にてタングステン(W)を0.05〜0.50μmの膜厚範囲に形成する。なお、保護膜3の膜厚が0.05μm未満であると、保護膜3が薄すぎ、剥離膜4を剥離する際に金型母材2に損傷を与える可能性がある。また、保護膜3の膜厚が0.5μmを超えると、金型母材2と保護膜3の密着力が低下し、膜剥離が生じる可能性がある。
ついで、保護膜3が形成され金型母材2に酸エッチング処理を施し、保護膜3のタングステン(W)表面から無機異物などの表面汚染物、酸化膜を除去する。そこで、保護膜3のタングステン(W)の活性な金属表面が露出し、液ぬれ性が確保される。これにより、後のめっき工程で形成されるめっき膜と保護膜であるタングステン(W)との密着性が確保される。この剥離膜4は、保護膜3のタングステン(W)と離型膜5との密着を確保するバインダ層としても機能する。
剥離膜4として、ニッケル−リン膜を形成する場合、まず、酸エッチング処理を施した保護膜3のタングステン(W)上にストライクニッケルめっき膜を形成する。ストライクニッケルめっき液は、従来から用いられているウッド浴や市販品のめっき液が使用できる。ウッド浴の液組成としては、例えば、37wt%の塩酸を120mL/L、および塩化ニッケル六水和物を240g/Lに、純水を加えて1Lに調整しためっき液が使用できる。保護膜3が形成された金型母材2のストライクニッケルめっき液への浸漬、通電時間と液温などのめっき条件は、所望の膜厚のストライクニッケルめっき膜を得ることができるように、適宜設定することができる。例えば、液温25℃、電流密度10A/dm2、めっき時間10秒とすることで、0.2μm程度のストライクニッケルめっき膜を得ることができる。
ついで、無電解ニッケルめっき処理を行い、ストライクニッケルめっき膜上にニッケル−リンめっき膜41を形成する。無電解ニッケルめっき液は、ニッケルめっき膜のリン濃度が低リン(5wt%未満)および中リン(5wt%〜10wt%未満)となる、無電解ニッケルめっきのための従来公知のめっき液が使用できる。例えば、金属塩として2wt%の硫酸ニッケル、還元剤として2wt%の次亜リン酸ナトリウム、錯化剤として10wt%のクエン酸、リンゴ酸、コハク酸などを含み、硫酸または水酸化ナトリウムを用いてpHを4.5に調整しためっき液などが使用できる。この発明において特に断らない限りwt%は、調整した溶液全体に対する値をいう。
保護膜3およびストライクニッケルめっき膜が形成された金型母材2の無電解ニッケルめっき液への浸漬、通電時間と液温などのめっき条件は、所望の膜厚のニッケル−リンめっき膜41を得ることができるように、適宜設定することができる。例えば、液温80℃、めっき時間5分とすることで、1μm程度のニッケル−リンめっき膜41を得ることができる。
ついで、剥離膜4の最終層として無電解金めっき膜42を形成する。無電解金めっき液は、従来から用いられている市販のシアン化金めっき液や亜硫酸金めっき液が使用できる。例えば、シアン系のめっき液としては、金属塩としてシアン化金カリウム、錯化剤としてエチレンジアミン四酢酸、クエン酸など、およびpH調整剤などを含むめっき液が使用できる。また、亜硫酸金系のめっき液としては、金属塩として亜硫酸金ナトリウムなど、錯化剤として亜硫酸ナトリウム、エチレンジアミンなどを含むめっき液が使用できる。保護膜3、ストライクニッケルめっき膜およびニッケル−リンめっき膜41が形成された金型母材2の無電解金めっき液への浸漬時間と液温などのめっき条件は、所望の膜厚の無電解金めっき膜42を得ることができるように、適宜設定することができる。例えば、シアン系の置換型無電解金めっき液を使用した場合、液温90℃、めっき時間10分とすることで、0.05μm程度の無電解金めっき膜42を得ることができる。
これにより、図4では、ニッケル−リンめっき膜41と無電解金めっき膜42からなる2層構造となっているが、実際には、ストライクニッケルめっき膜、ニッケル−リンめっき膜41、無電解金めっき膜42からなる3層構造の剥離膜4が保護膜3上に形成される。
ついで、電気めっき処理を行い、剥離膜4である、無電解金めっき膜42上に白金(Pt)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)から選択される一つの金属、もしくは複数の金属を組み合わせた合金によりなる離型膜5を形成する。
電気めっき液は、白金(Pt)めっき液としては、白金濃度を15〜25g/L、pHを11〜14に調整した液、パラジウムめっき液としては、パラジウム濃度を1〜5g/L、pHを8〜10に調整した液、イリジウムめっき液としては、イリジウム濃度を10〜20g/L、pHを2〜5に調整した液、ロジウムめっき液としては、ロジウム濃度を1〜10g/L、pHを0〜3に調整した液、ルテニウムめっき液としては、ルテニウム濃度を1〜5g/L、pHを0〜3に調整した液が使用できる。保護膜3および剥離膜4が形成された金型母材2の電気めっき液への浸漬、通電時間と液温などのめっき条件は、所望の膜厚の離型膜5としての電気めっき膜を得ることができるように、適宜設定することができる。
例えば、白金めっき液では、液温90℃、陰極電流密度2〜3A/dm2、めっき時間を3分とすることで、1μm程度の白金めっき膜を形成できる。パラジウムめっき液では、液温55℃、陰極電流密度0.5〜1A/dm2、めっき時間を4分とすることで、1μm程度のパラジウムめっき膜を形成できる。イリジウムめっき液では、液温85℃、陰極電流密度0.2〜0.5A/dm2、めっき時間を15分とすることで、1μm程度のイリジウムめっき膜を形成できる。ロジウムめっき液では、液温50℃、陰極電流密度0.5〜2.0A/dm2、めっき時間を5分とすることで、1μm程度のロジウムめっき膜を形成できる。ルテニウムめっき液では、液温65℃、陰極電流密度0.5〜2.0A/dm2、めっき時間を10分とすることで、1μm程度のルテニウムめっき膜を得ることができる。
なお、電気めっきによっては分布のばらつきが大きく、また所望の合金組成が得られない場合がある。このような場合には、真空蒸着装置、スパッタ装置を用いて、所望の離型膜5を形成してもよい。これらの乾式成膜技術にて成膜を行った場合、湿式成膜技術よりも膜厚分布が小さく、膜厚を正確に決定することができるため、寸法精度が要求されるガラス成形用金型には有効である。
つぎに、このように作製した成形用金型1の再生方法について説明する。
まず、離型膜5の剥離液として濃塩酸を使用する。使用済みの成形用金型1を濃塩酸に浸漬することで剥離膜4のニッケル−リンめっき膜41が溶解し、離型膜5が剥離する。保護膜3のタングステン(W)は濃塩酸と反応しない。成形用金型1の濃塩酸への浸漬は、金型のサイズ、剥離膜4のニッケル−リンめっき膜41の膜厚により、適宜設定することができる。また、浸漬時間、液温を調整することで、濃硝酸に替えて希硝酸を使用することもできる。ついで、剥離膜4および離型膜5が除去された成形用金型1、すなわち保護膜3が形成された金型母材2を濃塩酸から取り出し、水洗を室温で1分程度行い、濃硝酸を除去する。
ついで、金型母材2の側面2bにレジスト21を塗布する。その後、成形用金型1の製造方法で説明した方法と同様にして、保護膜3上にストライクニッケルめっき膜を形成し、ストライクニッケルめっき膜上にニッケル−リンめっき膜41を形成し、ニッケル−リンめっき膜41上に無電解ニッケルめっき膜42を形成する。ついで、無電解ニッケルめっき膜42上に離型膜5を形成し、レジスト21を除去して、剥離膜4と離型膜5が形成された成形用金型1が再生される。
この実施の形態1による成形用金型1は、金型母材2と、金型母材2上にタングステン(W)からなる保護膜3と、保護膜3上にニッケル(Ni)、金(Au)の純金属、またはその化合物で形成される剥離膜4と、剥離膜4上に白金(Pt)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)から選択される一つの金属もしくは複数の金属を組み合わせた合金からなる離型膜5と、で構成されている。
そこで、化学反応性が高い剥離膜4が、化学反応性に乏しく、研磨・研削などの物理的除去が困難な離型膜5の金型母材2側に形成されているので、金型の再生時に、剥離膜4を溶解除去することで、離型膜5を同時に除去することができる。これにより、ダイヤモンド砥石などを利用した研磨・研削により離型膜5を物理的に除去する必要がなく、金型の再生が容易となる。さらに、研磨・研削による金型母材2の損傷がないので、再生後の金型の面精度を維持するための追加工が不要となる。さらに、その追加工による金型重量の大幅な変動に起因する金型の熱容量の変動がなく、成形品の成形条件の再調整が不要となる。
また、保護膜3が金型母材2に形成されているので、離型膜5を化学的に除去する際に剥離液による金型母材2の損傷発生を抑制できるとともに、金型母材2と剥離膜4との密着性が高められる。
実施の形態2.
上記実施の形態1では、ニッケル(Ni)、金(Au)の単一金属、またはその化合物からなる剥離膜4を用いているが、この実施の形態2では、クロムまたはクロム酸化物(Cr2O3)からなる剥離膜4を用いている。
なお、他の構成は、上記実施の形態1の成形用金型1と同様に構成されている。
つぎに、実施の形態2による成形用金型1の製造方法について説明する。
まず、実施の形態1における成形用金型1の製造方法と同様に、金型母材2が用意され、タングステン(W)の保護膜3が、スパッタ装置を用いて金型母材2に形成される。
ついで、剥離膜4が、スパッタ、真空蒸着などの乾式成膜技術を用いて形成される。剥離膜4として、クロム膜を形成する場合には、電子ビーム蒸着装置を使用する。まず、保護膜3まで形成された金型母材2を電子ビーム蒸着装置に投入する。同時に、剥離膜材料を電子ビーム蒸着装置に投入し、真空状態とする。剥離膜4をクロム(Cr)とする場合は剥離膜材料としてクロム(Cr)を、剥離膜4を酸化クロム(Cr)とする場合は剥離膜材料として酸化クロム(Cr)を電子ビーム蒸着装置に投入する。そして、所定の真空度に到達後、電子ビームにより剥離膜材料にエネルギーを投入し、剥離膜材料を加熱する。これにより、蒸気圧が上がり、成膜が開始され、保護膜3上に剥離膜4が形成される。このように形成された剥離膜4も、保護膜3のタングステン(W)と離型膜5との密着を確保するバインダ層として機能する。
ここで、剥離膜4にクロム(Cr)を選択した場合、成膜レートを0.2〜2.0nm/secで、0.05〜0.50μmの膜厚のクロム膜を形成して、剥離膜4とする。また、剥離膜4に酸化クロム(Cr)を選択した場合、成膜レートを0.2〜2.0nm/secで、0.05〜0.50μmの膜厚の酸化クロム層を形成して、剥離膜4とする。
ついで、実施の形態1における成形用金型1の製造方法と同様にして、電気めっきにより離型膜5を剥離膜4上に形成する。なお、電気めっきによっては分布のばらつきが大きく、また所望の合金組成が得られない場合がある。その場合には、真空蒸着装置、スパッタ装置にて所望の離型膜5を得てもよい。これらの乾式成膜技術にて成膜を行った場合、湿式成膜技術よりも膜厚分布が小さく、膜厚を正確に決定することができるため、寸法精度が要求されるガラス成形用金型には有効である。
つぎに、実施の形態2による成形用金型1の再生方法について説明する。
離型膜5としてクロム膜を用いた場合、クロム膜の剥離液として希塩酸または希硫酸を使用する。使用済みの成形用金型1を希塩酸または希硫酸に浸漬することで剥離膜4のクロム膜が溶解し、離型膜5が剥離する。保護膜3のタングステン(W)は希塩酸と反応しない。成形用金型1の希塩酸への浸漬時間は、金型のサイズ、剥離膜4のクロム膜の膜厚により、適宜設定することができる。また、希硫酸は保護膜3のタングステン(W)に若干の損傷を与えるため、浸漬時間と液温を調整することで使用することが可能である。ついで、剥離膜4と離型膜5が剥離された成形用金型1、すなわち保護膜3が形成された金型母材2を希塩酸または希硫酸から取り出し、水洗を室温で1分程度行い、希塩酸または希硫酸を除去する。なお、希塩酸または希硫酸を用いたクロム膜の剥離方法に替えて、水酸化ナトリウム水溶液を使用した陽極電解によるクロム膜の剥離方法を用いてもよい。
また、剥離膜4として酸化クロム膜を用いた場合、酸化クロム膜の剥離液として臭素酸ナトリウムを使用する。使用済みの成形用金型1を臭素酸ナトリウムに浸漬することで剥離膜4の酸化クロム膜が溶解し、離型膜5が剥離する。保護膜のタングステン(W)は臭素酸ナトリウムとは反応しない。成形用金型1の臭素酸アルカリへの浸漬時間は、金型のサイズ、剥離膜4としての酸化クロム膜の膜厚により、適宜設定することができる。ついで、剥離膜4と離型膜5が剥離された成形用金型1、すなわち保護膜3が形成された金型母材2を臭素酸ナトリウムから取り出し、水洗を室温で1分程度行い、臭素酸ナトリウムを除去する。
ついで、離型膜5が剥離され、保護膜3が形成されている金型母材2を電子ビーム蒸着装置に挿入し、クロム又は酸化クロムからなる剥離膜4を保護膜3上に形成する。さらに、湿式成膜技術または乾式成膜技術を用い、離型膜5を剥離膜4上に形成して、剥離膜4と離型膜5が形成された成形用金型1が再生される。
この実施の形態2による成形用金型1は、金型母材2と、金型母材2上にタングステン(W)からなる保護膜3と、保護膜3上にクロム(Cr)または酸化クロム(Cr)からなる剥離膜4と、剥離膜4上に白金(Pt)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)から選択された一つの金属もしくは複数の金属を組み合わせた合金からなる離型膜5と、で構成されている。
そこで、実施の形態2では、化学反応性が高い剥離膜4が、化学反応性に乏しく、研磨・研削などの物理的除去が困難な離型膜5の金型母材2側の下面に形成されているので、金型の再生時に、剥離膜4を溶解除去することで、離型膜5を同時に除去することができる。したがって、実施の形態2においても、上記実施の形態1と同様の効果が得られる。
この実施の形態2によれば、剥離膜4としてクロム又はクロム化合物を用いている。クロム(Cr)はタングステン(W)と同じ6族元素であるため、結晶構造や線膨張率を考慮すると、タングステン(W)との相性がよい。つまり、保護膜3と剥離膜4との密着力が高められ、金型使用時の密着不良の発生を抑制することができる。
実施の形態3.
図6はこの発明の実施の形態3に係る成形用金型における金型母材に第1レジストを塗布した状態を示す断面図、図7はこの発明の実施の形態3に係る成形用金型における金型母材に保護膜を形成した状態を示す断面図、図8はこの発明の実施の形態3に係る成形用金型における保護膜が形成された金型母材に第2レジストを塗布した状態を示す断面図、図9はこの発明の実施の形態3に係る成形金型における金型母材に保護膜、剥離膜および離型膜を形成した状態を示す断面図、図10はこの発明の実施の形態3に係る成形用金型を示す断面図である。
図10において、成形用金型10は、金型母材2と、この金型母材2の成形面2aと側面2bを覆うように形成された保護膜11と、この保護膜11の表面の周縁部を除いて、保護膜11を覆うように形成された剥離膜12と、この剥離膜12の表面の全面を覆うように形成された離型膜13と、を備えている。剥離膜12は、上記実施の形態1、2で使用したニッケル−リン、金、クロム、酸化クロムのいずれかで形成されている。保護膜11および離型膜13は、上記実施の形態1,2における保護膜3および離型膜5と同じ材料で作製されている。また剥離膜12と離型膜13は、金型母材2の成形面2aの全面および側面2bの一部を覆う構造であり、保護膜11の周縁部が全周に渡って露出している。
つぎに、実施の形態3による成形用金型10の製造方法について説明する。
まず、所望の形状に加工された金型母材2を準備する。ついで、図6に示されるように、第1レジスト22を、成形面2aおよび側面2bが露出するように、金型母材2に塗布する。
ついで、図7に示されるように、保護膜3はスパッタ、真空蒸着などの乾式成膜技術により保護膜3を金型母材2に形成する。ついで、第1レジスト22を取り除き、図8に示されるように、第2レジスト23を、保護膜11の周縁部を全周に渡って覆うように金型母材2に塗布する。ついで、図9に示されるように、スパッタ、真空蒸着などの乾式成膜技術、または電気めっきによる湿式成膜技術を用いて、剥離膜4と離型膜5を金型母材2の保護膜11上に形成する。さらに、第2レジスト23を除去し、図10に示される成形用金型10が作製される。
なお、保護膜11と剥離膜12の具体的な成膜方法については、上記実施の形態1,2と同様である。
この実施の形態3の成形用金型10は、金型母材2と、金型母材2上にタングステン(W)からなる保護膜11と、保護膜11上にニッケルーリン(Ni−P),金(Au)、クロム(Cr)、酸化クロム(Cr)のいずれかで形成される剥離膜12と、剥離膜12上に白金(Pt)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)から選択される一つの金属もしくは複数の金属を組み合わせた合金からなる離型膜13と、で構成されている。
そこで、実施の形態3では、化学反応性が高い剥離膜12が、化学反応性に乏しく、研磨・研削などの物理的除去が困難な離型膜13の金型母材2側に形成されているので、金型の再生時に、剥離膜12を溶解除去することで、離型膜13を同時に除去することができる。したがって、実施の形態3においても、上記実施の形態1と同様の効果が得られる。
上記実施の形態1,2では、保護膜3、剥離膜4および離型膜5が、その側面を面一として、金型母材2の成形面2aを覆っているが、金型母材2の側面2bが露出している。そこで、剥離膜3の剥離時に、金型母材2の剥離液への浸漬状態によっては、剥離液が金型母材2の側面2bに接し、金型母材2と保護膜11の界面を損傷する危険性があった。そして、金型母材2と保護膜11の界面が損傷した場合には、金型の追加工による寸法出しが必要となる。
実施の形態3では、保護膜11が金型母材2の成形面2aおよびその側面2bを覆うように形成されており、剥離膜12と離型膜13が保護膜11の周縁部のみを露出するように形成されているので、剥離膜12の剥離時に、剥離液が金型母材2の側面2bに接するような事態の発生が回避され、剥離液が金型母材2と保護膜11の界面を損傷することがない。そこで、金型母材2の損傷に起因した金型の追加工による寸法出しが不必要となるため、離型膜13の再生作業が容易となる。
以下、この発明の実施例および比較例をあげて詳細に説明する。なお、この発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、実施例および比較例の仕様を表1に示し、実施例および比較例の剥離試験の結果を表2に示した。
実施例1、2.
実施例1、2は上記実施の形態1に基づくものである。
具体的には、図2に示されるように、成膜面がφ30mmである、タングステンカーバイド製の金型母材2の成形面2aが露出するように、金型母材2の側面2bにレジスト21を塗布した。ついで、脱脂剤ELC−400((株)ワールドメタル製)を用いて脱脂処理を実施し、有機物を除去した。ついで、純水に金型母材2を浸漬し、1分間放置した後取出した。
ついで、HS−55((株)ワールドメタル製)を用いて、金型母材2に酸電解エッチング処理を施し、さらにHC−55((株)ワールドメタル製)を用いて、金型母材2にエッチング処理を施し、無機異物などの表面汚染物や酸化皮膜を除去した。ついで、純水に金型母材2を浸漬し、1分間放置した後取出した。
ついで、スパッタ装置を用いて、金型母材2の表面に、タングステンを厚さ0.1μmで成膜した。これにより、タングステンからなる保護膜3が金型母材2の表面に形成された。
ついで、タングステンが形成された金型母材2に酸エッチング処理を施し、NI−STK((株)ワールドメタル製)のめっき液用いて、タングステンの表面にストライクニッケルめっき膜を厚さ0.1μmで成膜した。ついで、トップニコロンBL(奥野製薬工業(株)製)をめっき液として、ストライクニッケルめっき膜の表面に無電解Ni−Pめっき膜を厚さ0.5μmで成膜した。さらに、フラッシュゴールド2000(奥野製薬工業(株)製)のめっき液を用いて、無電解Ni−Pめっき膜の表面に無電解Auめっき膜を厚み0.05μmで成膜した。これにより、ストライクニッケルめっき膜、無電解Ni−Pめっき膜、無電解Auめっき膜からなる3層構造の剥離膜4が、保護膜3の表面に形成された。
ついで、プラチナート100(EEJA(株)製)のめっき液を用いて、剥離膜4の表面に白金めっき膜を厚さ500nmで成膜した。これにより、白金めっき膜からなる離型膜5が、剥離膜4の表面に形成された。その後、レジスト21を剥離、除去し、図5に示される成形用金型1を作製した。
ついで、成形用金型1の離型膜5の剥離試験を実施した。実施例1では、成形用金型1を濃塩酸に浸漬し、室温で5分放置した。また、実施例2では、成形用金型1を希硝酸に浸漬し、室温で5分放置した。
実施例3〜5.
実施例3〜5は上記実施の形態2に基づくものである。
実施例3〜5では、成膜面がφ30mmである、タングステンカーバイド製の金型母材2を用い、上記実施例1,2と同様に、レジスト21を塗布し、脱脂処理、酸電解エッチング処理、およびエッチング処理を施し、その後スパッタ装置を用いてタングステンの保護膜3を金型母材2の表面に形成した。
ついで、実施例3,4では、真空蒸着装置を用いて、タングステンの表面にクロムを厚さ0.5μmで成膜した。実施例5では、真空蒸着装置を用いて、タングステンの表面に酸化クロムを厚さ0.5μmで成膜した。これにより、クロムまたは酸化クロムからなる剥離膜4が、保護膜3の表面に形成された。
ついで、プラチナート100(EEJA(株)製)のめっき液を用いて、剥離膜4の表面に白金めっき膜を厚さ500nmで成膜した。これにより、白金めっき膜からなる離型膜5が、剥離膜4の表面に形成された。その後、レジスト21を剥離、除去し、図5に示される成形用金型1を作製した。
ついで、成形用金型1の離型膜5の剥離試験を実施した。実施例3では、成形用金型1を濃塩酸に浸漬し、室温で5分放置した。また、実施例4では、成形用金型1を希硫酸に浸漬し、室温で5分放置した。また、実施例5では、成形用金型1を臭素酸アルカリに浸漬し、室温で5分放置した。
実施例6、7.
実施例6、7は上記実施の形態3に基づくものである。
図6に示されるように、成膜面がφ30mmである、タングステンカーバイド製の金型母材2の成形面2aおよび側面2bが露出するように、第1レジスト22を金型母材2に塗布する。ついで、脱脂剤ELC−400((株)ワールドメタル製)を用いて脱脂処理を実施し、有機物を除去した。ついで、純水に金型母材2を浸漬し、1分間放置した後取出した。
ついで、HS−55((株)ワールドメタル製)を用いて、金型母材2に酸電解エッチング処理を施し、さらにHC−55((株)ワールドメタル製)を用いて、金型母材2にエッチング処理を施し、無機異物などの表面汚染物や酸化皮膜を除去した。ついで、純水に金型母材2を浸漬し、1分間放置した後取出した。
ついで、スパッタ装置を用いて、金型母材2の表面に、タングステンを厚さ0.1μmで成膜した。これにより、タングステンからなる保護膜11が金型母材2の表面に形成された。ついで、第1レジスト22を除去し、図8に示されるように、第2レジスト23を保護膜11の周縁部を覆うように金型母材2に塗布した。
ついで、タングステンが形成された金型母材2に酸エッチング処理を施し、NI−STK((株)ワールドメタル製)のめっき液用いて、タングステンの表面にストライクニッケルめっき膜を厚さ0.1μmで成膜した。ついで、トップニコロンBL(奥野製薬工業(株)製)をめっき液として、ストライクニッケルめっき膜の表面に無電解Ni−Pめっき膜を厚さ0.5μmで成膜した。さらに、フラッシュゴールド2000(奥野製薬工業(株)製)のめっき液を用いて、無電解Ni−Pめっき膜の表面に無電解Auめっき膜を厚み0.05μmで成膜した。これにより、ストライクニッケルめっき膜、無電解Ni−Pめっき膜、無電解Auめっき膜からなる3層構造の剥離膜12が、保護膜11の表面に形成された。
ついで、プラチナート100(EEJA(株)製)のめっき液を用いて、剥離膜12の表面に白金めっき膜を厚さ500nmで成膜した。これにより、白金めっき膜からなる離型膜13が、剥離膜12の表面に形成された。その後、第2レジスト23を剥離、除去し、図10に示される成形用金型10を作製した。
ついで、成形用金型10の離型膜13の剥離試験を実施した。実施例6では、成形用金型10を濃塩酸に浸漬し、室温で5分放置した。また、実施例7では、成形用金型10を希硝酸に浸漬し、室温で5分放置した。
実施例8〜10.
実施例8〜10は、上記実施の形態3に基づくものである。
実施例8〜10では、成膜面がφ30mmである、タングステンカーバイド製の金型母材2を用い、上記実施例6,7と同様に、第1レジスト22を塗布し、脱脂処理、酸電解エッチング処理、およびエッチング処理を施し、その後スパッタ装置を用いてタングステンの保護膜11を金型母材2の表面に形成した。ついで、第1レジスト22を除去し、図8に示されるように、第2レジスト23を保護膜11の周縁部を覆うように金型母材2に塗布した。
ついで、実施例8,9では、真空蒸着装置を用いて、タングステンの表面にクロムを厚さ0.5μmで成膜した。実施例10では、真空蒸着装置を用いて、タングステンの表面に酸化クロムを厚さ0.5μmで成膜した。これにより、クロムまたは酸化クロムからなる剥離膜12が、保護膜11の表面に形成された。
ついで、プラチナート100(EEJA(株)製)のめっき液を用いて、剥離膜12の表面に白金めっき膜を厚さ500nmで成膜した。これにより、白金めっき膜からなる離型膜13が、剥離膜12の表面に形成された。その後、第2レジスト23を剥離、除去し、図10に示される成形用金型10を作製した。
ついで、成形用金型10の離型膜13の剥離試験を実施した。実施例8では、成形用金型10を濃塩酸に浸漬し、室温で5分放置した。また、実施例9では、成形用金型10を希硫酸に浸漬し、室温で5分放置した。また、実施例10では、成形用金型10を臭素酸アルカリに浸漬し、室温で5分放置した。
比較例1〜4.
比較例1〜4では、上記実施例1〜10と同様の金型母材2を用い、実施例1〜5と同様に、金型母材2の成形面2aが露出するように、金型母材2の側面2bにレジスト21を塗布した。そして、実施例1〜10と同様に、金型母材2に、脱脂処理、酸電解エッチング処理、およびエッチング処理を施した。ついで、実施例1〜10と同様に、白金めっき膜からなる離型膜5を、金型母材2の成形面2aの表面に形成した。その後、レジスト21を剥離、除去し、比較例1〜4の成形用金型を作製した。なお、比較例1〜4の成形用金型では、保護膜および剥離膜が省略されている。
ついで、成形用金型の離型膜5の剥離試験を実施した。比較例1では、成形用金型を濃塩酸に浸漬し、室温で5分放置した。また、比較例2では、成形用金型を希硫酸に浸漬し、室温で5分放置した。また、比較例3では、成形用金型を希塩酸に浸漬し、室温で5分放置した。また、比較例4では、成形用金型を希硫酸に浸漬し、室温で5分放置した。
Figure 0006681722
ここで、離型膜5の剥離試験の結果を表2に示す。剥離試験では、剥離試験後、離型膜の剥離状態、金型母材の損傷状態を調査した。離型膜の剥離状態については、剥離後の金型母材を目視にて検査し、離型膜が完全に剥離している(金型側の最表面が保護膜のタングステンのみ)状態を○、一部膜が残存している、または離型膜が完全に残っている状態を×とした。また金型母材の損傷状態については、剥離後の金型母材を目視および光学顕微鏡にて検査し、金型母材と保護膜の界面に剥離が生じていないものを○、微量の剥離(剥離した面積が保護膜と金型母材の接触面積の1/10以内)を△、剥離が見られたもの(剥離した面積が保護膜と金型母材の接触面積の1/10を超える)を×とした。
Figure 0006681722
表2に示す評価結果から明らかなように、金型母材に保護膜と剥離膜を形成しなかった比較例1〜4では、離型膜を剥離できず、また剥離液による金型母材の損傷が見られた。
しかし、これに対し、本願発明では、金型母材に保護膜と剥離膜を形成した実施例1〜10に示すように、薬液処理による離型膜の剥離が可能であり、剥離液による金型母材の損傷も生じなかった。このように本願発明の明らかな効果を確認することができた。
1,10 成形用金型、2 金型母材、3、11 保護膜、4,12 剥離膜、5,13 離型膜、21 レジスト、22 第1レジスト、23 第2レジスト。

Claims (6)

  1. 金型母材と、上記金型母材の成形面を覆った状態で上記金型母材に形成された保護膜と、上記保護膜上に形成され、上記金型母材および上記保護膜より化学反応性の高い材料からなる剥離膜と、上記剥離膜上に形成され、上記剥離膜より化学反応性の低い材料からなる離型膜と、を備え
    上記保護膜は、上記金型母材の上記成形面を超える領域を覆った状態で上記金型母材に形成され、
    上記剥離膜は、上記金型母材の上記成形面を超える領域を覆った状態で上記保護膜上に形成され、
    上記離型膜は、上記金型母材の上記成形面を超える領域を覆った状態で上記剥離膜上に形成され、
    上記保護膜の周縁部は、全周に渡って露出している成形用金型。
  2. 上記保護膜は、タングステンからなる請求項1記載の成形用金型。
  3. 上記剥離膜は、単層または複層に構成され、各層は、ニッケル、ニッケルーリン、金、クロム、酸化クロムから選択された一つからなる請求項1または請求項2記載の成形用金型。
  4. 上記離型膜は、白金、パラジウム、イリジウム、ロジウム、ルテニウムから選択された一つの金属または複数の金属を組み合わせた合金からなる請求項1または請求項2記載の成形用金型。
  5. 金型母材と、上記金型母材の成形面を覆った状態で上記金型母材に形成された保護膜と、上記保護膜上に形成された剥離膜と、上記剥離膜上に形成された離型膜と、を備えた成形用金型の製造方法であって、
    上記金型母材の成形面を超える領域が露出するように第1レジストを上記金型母材の表面に塗布する工程と、
    上記第1レジストが塗布された上記金型母材の表面に乾式成膜技術を用いて上記保護膜を形成する保護膜形成工程と、
    第1レジストを除去し、上記保護膜がその周縁部を除いて露出するように第2レジストを上記金型母材に塗布する工程と、
    上記第2レジストが塗布された上記金型母材に湿式成膜技術または乾式成膜技術を用いて剥離膜を形成する剥離膜形成工程と、
    上記剥離膜が形成された上記金型母材に湿式成膜技術または乾式成膜技術を用いて離型膜を形成する離型膜形成工程と、
    上記第2レジストを除去する工程と、
    を備えた成形用金型の製造方法。
  6. 金型母材と、上記金型母材の成形面を覆った状態で上記金型母材に形成された保護膜と、上記保護膜上に形成された剥離膜と、上記剥離膜上に形成された離型膜と、を備え、上記保護膜は、上記金型母材の上記成形面を超える領域を覆った状態で上記金型母材に形成され、上記剥離膜は、上記金型母材の上記成形面を超える領域を覆い、かつ少なくとも保護膜の周縁部を全周に渡って露出した状態で上記保護膜上に形成され、上記離型膜は、上記金型母材の上記成形面を超える領域を覆った状態で上記剥離膜上に形成されている成形用金型の再生方法であって、
    上記成形用金型を剥離液に浸漬し、上記剥離膜を溶解除去するとともに、上記離型膜を除去する離型膜除去工程と、
    上記保護膜が上記周縁部を除いて露出するようにレジストを上記金型母材に塗布する工程と、
    上記レジストが塗布された上記金型母材に湿式成膜技術または乾式成膜技術を用いて剥離膜を再形成する剥離膜再形成工程と、
    上記剥離膜が形成された上記金型母材に湿式成膜技術または乾式成膜技術を用いて離型膜を再形成する離型膜再形成工程と、
    上記レジストを除去する工程と、
    を備えた成形用金型の再生方法。
JP2016011754A 2016-01-25 2016-01-25 成形用金型、成形用金型の製造方法、および成形用金型の再生方法 Active JP6681722B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016011754A JP6681722B2 (ja) 2016-01-25 2016-01-25 成形用金型、成形用金型の製造方法、および成形用金型の再生方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016011754A JP6681722B2 (ja) 2016-01-25 2016-01-25 成形用金型、成形用金型の製造方法、および成形用金型の再生方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2017132645A JP2017132645A (ja) 2017-08-03
JP6681722B2 true JP6681722B2 (ja) 2020-04-15

Family

ID=59502219

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2016011754A Active JP6681722B2 (ja) 2016-01-25 2016-01-25 成形用金型、成形用金型の製造方法、および成形用金型の再生方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6681722B2 (ja)

Also Published As

Publication number Publication date
JP2017132645A (ja) 2017-08-03

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4744790B2 (ja) 蒸着用マスク、蒸着用マスクフレーム組立体及びこれらの製造方法
TWI464052B (zh) 用於裝飾性物件之含貴金屬的層序
JP4846740B2 (ja) めっき物の製造方法及び電気めっき方法
TW201641742A (zh) 用來清潔沉積設備的方法
US9540735B2 (en) Zincating aluminum
JP6681722B2 (ja) 成形用金型、成形用金型の製造方法、および成形用金型の再生方法
TW201420814A (zh) 模具、成形輥及剝離電鑄品
JP2009149965A (ja) 銀めっき方法
JP6335812B2 (ja) 成形用金型、およびその製造方法
JP5863170B2 (ja) 固定砥粒ワイヤの製造方法
TWI428465B (zh) 內部氧化層狀結構及其製作方法
JP2001209925A (ja) 磁気記録媒体用アルミニウム基板およびその製造方法
US2305050A (en) Electroformed article
JP7169495B2 (ja) 電着砥粒層で被覆された切削工具及び該切削工具の再生方法
JP4959306B2 (ja) ガラス成形型
JP6639253B2 (ja) 電鋳用マスク原版の機能部品、電鋳用マスク原版の機能部品の製造方法
JP6284144B2 (ja) 電鋳品及びその製造方法
JP7175420B1 (ja) 成膜装置用部材の製造方法、堆積物除去方法、有価金属回収方法、および成膜装置用部材の再生方法
KR20080090018A (ko) 유리 성형용 금형 및 그 제조방법
TWI352690B (en) The molding die of molding glasses and its recycli
JP2007202746A (ja) レーザーチップの製造方法およびレーザーチップ
JP2008110902A (ja) 光学素子成形用金型及びその製造方法
KR20170084422A (ko) Led 웨이퍼 기판 제조 방법
KR20150131579A (ko) 밸브 트림 장치의 제조 방법, 밸브 트림 장치 및 이를 포함하는 밸브 조립체
JP5665558B2 (ja) 固定砥粒ワイヤの製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20180807

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20190903

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20190830

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20191017

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20200225

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20200324

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6681722

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250