JP6677392B2 - 車両シート用長繊維強化熱可塑性樹脂線状物 - Google Patents

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Description

本発明は、車両シートの形状保持のためにシートパッド内に使用する車両シート用長繊維強化熱可塑性樹脂線状物に関する。
強化用繊維を合成樹脂で結着した繊維強化熱硬化性樹脂製物品(以下、「FRP」と称することがある。)は強度が高くかつ軽量であるという点から、金属製物品に代わる材料として、自動車、電子、農林、建築材、家具等の多くの分野で利用されている。このFRP技術を使用した製品のひとつであるガラスロービング等の長繊維束を強化用繊維とし、熱硬化性樹脂をマトリックスとするパイプ、ロッド、線状物等も古くから各種産業分野で使用されている。
近年、この様な長繊維強化樹脂製の長尺材料を、製品内の個々の部材としても使用したいという要求が高まっている。この様な個々の部材として使用することを可能にするためには長尺材料が、その使用される製品を加工する時点で、その製品の形状に適合するべく、賦形できることが必要である。特に加熱による温度刺激によって目的の形状に賦形すると共にその形を安定化できることが求められている。
しかしながら、一般にFRPは、マトリックス樹脂としての熱硬化性樹脂が強化用繊維の内部まで完全に含浸し、硬化後においては、熱硬化性樹脂硬化物の特性から、加熱変形することによって所望の形状に塑性加工することが困難である。特に、長手方向の断面において繊維が均一に分散しているFRP線状物は、非常に高剛性で、曲げても真直状に復元し、塑性変形はしないので、曲げた状態で塑性変形させて使用する用途には適さない。
一方、強化用繊維に熱可塑性樹脂を含浸させた繊維強化熱可塑性樹脂製物品(以下、「FRTP」と称することがある。)は、加熱による塑性変形がある程度可能である。しかしながら、長繊維状の強化用繊維にマトリックス樹脂として熱可塑性樹脂を含浸したFRTP線状物においては、加熱賦形による曲げ加工が必ずしも容易ではない。
特許文献1には、連続した強化用繊維を引きながら溶融熱可塑性樹脂を含浸させる長繊維強化複合材料の製造方法において、繊維に溶融樹脂を含浸もしくは被覆させた後、スリットノズルで過剰量の樹脂を絞り込みながら連続的に引き抜き、次いで賦形ノズルを通して目的形状に整えることを特徴とする長繊維強化複合材料の製造方法が開示されている。
そして、特許文献1の製造方法によれば、得られる複合材料中の繊維の分散および樹脂の含浸性も良好で、高品質の複合材料を効率よく安定して得ることができるという効果が挙げられている。
また、特許文献2には、発泡体と、前記発泡体にインサート成形されてシート表皮材の係止部が係止する樹脂ワイヤとを備える車両用シートパッドであって、前記樹脂ワイヤは、複数の長繊維に熱可塑性樹脂を含浸させてなるとともに、屈曲部における前記樹脂が肉抜きされた肉抜き部を有する長繊維状の繊維に熱可塑性樹脂を含浸した直径1〜5mmの樹脂ワイヤが開示されている。
上記の特許文献1の製造方法は、長繊維状の強化用繊維束に溶融状の熱可塑性樹脂を含浸する際破断繊維による毛羽の発生や、破断繊維のダイ内部蓄積によるノズル部での目詰まり等の問題を解消して、熱可塑性樹脂をより均一に含浸させる方法であり、得られる長繊維強化複合材料も、これを切断してペレット状の複合材料とするものであり、長手方向での熱曲げ賦形性や、熱可塑性樹脂と強化用繊維束との結合性の調整等ついては開示されていない。
また上記の特許文献2の樹脂ワイヤは予めシートパッド成形を想定した屈曲部に、表面の熱可塑性樹脂を断面方向に断続的に、複数個所に、肉抜きすることによって熱曲げ賦形性を付与するとともに、肉抜きによって樹脂ワイヤ内部の繊維を露出させ、この露出繊維に発泡体との結合性を生じさせるものであるが、繊維の露出部分が屈曲部に限定されているため、樹脂ワイヤ全体と発泡体との結合性自体が不充分であった。
特開平5−147116号公報 特開2015−97596号公報
本発明は、車両シート用の樹脂線状材として用いられる長繊維状補強束と熱可塑性樹脂マトリックスからなる長繊維強化熱可塑性樹脂製線状物において、車両用シートパッドに用いられる樹脂製発泡体との結合性に優れ、また、熱賦形により長手方向に曲げ加工がし易く、取り扱いが容易な車両シート用長繊維強化熱可塑性樹脂製線状物を提供することを目的とする。
本発明者らは、熱賦形により長手方向に曲げ加工がし易く、取り扱いが容易であり、かつシートの樹脂製発泡体との結合性に優れた樹脂ワイヤについて鋭意研究した結果、熱可塑性樹脂であるマトリックス樹脂と、長繊維状強化用繊維束とからなる車両シート用長繊維強化熱可塑性樹脂線状物であって、強化用繊維束は、長手方向に直交する断面において、マトリックス樹脂が含浸していない未含浸部を有し、かつ、強化用繊維束の一部の繊維が該線状物の表面に、6箇所以上12箇所以下のそれぞれ別個の位置に露出して、該線状物の長手方向に連続してなる車両シート用長繊維強化熱可塑性樹脂線状物とすることによって達成できることを知得して、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の〔1〕〜〔9〕を提供する。
〔1〕熱可塑性樹脂であるマトリックス樹脂と、長繊維状強化用繊維束とからなる車両シート用長繊維強化熱可塑性樹脂線状物であって、前記強化用繊維束は、長手方向に直交する断面において、該マトリックス樹脂が含浸していない未含浸部を有し、かつ、該強化用繊維束の一部の繊維が該線状物の表面に、6箇所以上12箇所以下のそれぞれ別個の位置に露出して、該線状物の長手方向に連続してなる長繊維強化熱可塑性樹脂線状物。
〔2〕前記線状物の前記断面において、表面に露出している前記強化用繊維束の繊維露出箇所のそれぞれの長さが0.3mm〜0.7mmである、前記〔1〕に記載の車両シート用長繊維強化熱可塑性樹脂線状物。
〔3〕前記断面における前記繊維露出箇所の長さの総和に対する前記線状物の見なし外径から計算される外周の長さの比として算出される繊維露出率が20〜60%である、前記〔2〕に記載の車両シート用長繊維強化熱可塑性樹脂線状物。
〔4〕前記強化用繊維束が、単繊維繊度が1.5dtex〜30dtexの繊維を80f〜150f集束してなるマルチフィラメントである、前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の車両シート用長繊維強化熱可塑性樹脂線状物。
〔5〕前記強化用繊維束を構成する強化用繊維が熱可塑性樹脂からなり、前記マトリックス樹脂が該強化用繊維の融点又は軟化点よりも20℃以上低い融点を有するポリオレフィン系樹脂である、前記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の車両シート用長繊維強化熱可塑性樹脂線状物。
〔6〕前記熱可塑性樹脂からなる強化用繊維が、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ポリエチレンナフタレート繊維、ポリトリメチレンテレフタレート繊維、ポリアクリロニトリル繊維、脂肪族ポリアミド繊維から選ばれる一種又は複数種の併用あるいは混繊維である、前記〔5〕に記載の車両シート用長繊維強化熱可塑性樹脂線状物。
〔7〕前記マトリックス樹脂が、メルトフローレート(230℃、21.18N)が20〜100g/10分であるポリプロピレン樹脂からなる、前記〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の車両シート用長繊維強化熱可塑性樹脂線状物。
〔8〕前記マトリックス樹脂が着色されている、前記〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の車両シート用長繊維強化熱可塑性樹脂線状物。
〔9〕前記線状物が、長手方向の所望の部位に毛羽立ち加工又は扁平加工を施してなるものである、前記〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の車両シート用長繊維強化熱可塑性樹脂線状物。
本発明によれば、前記補強用繊維束内の、マトリックス樹脂の未含浸部に、シートパッド成形時に、シートのクッション材である発泡樹脂が含浸することによって長繊維強化熱可塑性樹脂線状物と発泡樹脂体との結合性が発揮される。本発明では特に長手方向での長繊維強化熱可塑性樹脂線状物全体にわたる結合性が発揮されるため大きな結合力を発生し、同時に、該線状物の内部の強化用繊維束では、その内部に熱可塑性マトリックス樹脂が含浸していない未含浸部が存在しているためシートパッド成形時の熱曲げ賦形においても所望の形状に容易に賦形できる長繊維強化熱可塑性樹脂線状物を提供できる。
本発明の車両シート用長繊維強化熱可塑性樹脂線状物の製造工程の説明図である。 クロスヘッドダイに装着するガイド芯金を構成する強化用繊維束のガイド類の説明図であり、(A)及び(B):分離ガイドの一例の正面図、(C)及び(D):収束ガイドの一例の正面図である。 本発明に使用する強化用繊維束のガイド類を保持するガイド芯金の説明図であり、(A)半割状ガイド芯金の片半分の断面図、(B)は(A)の矢視図、(C)は半割状ガイド芯金の片半分の正面図、(D)は(C)の側面図である。 本発明の長繊維強化熱可塑性樹脂線状物の製造の実施例に用いたダイスの構成を示す説明図であり、(A)は内部のガイドに長繊維状強化用繊維(束)を挿通したガイド芯金をダイスに装着する前の上面視の状態を模式的に示す説明図、(B)はガイド芯金をダイスに装着した状態を模式的に示す説明図、(C)はダイス内での強化用繊維束の状況、マトリックス樹脂の流れを模式的示す説明図である。 本発明の(A)実施例1、(B)実施例2、(C)比較例1、(D)比較例2、により得られた長繊維強化熱可塑性樹脂線状物の断面を模式的に示す説明図である。 実施例1および2により得られた長繊維強化熱可塑性樹脂線状物についての、マトリックス樹脂が含浸していない強化用繊維束の一部が長繊維熱可塑性線状物の表面に露出し、同じくマトリックス樹脂が含浸していない強化用繊維束が内部に存在することを示す模式図である。 実施例3により得られた長繊維強化熱可塑性樹脂線状物の扁平加工した端末部の模式図である。 実施例4により得られた長繊維強化熱可塑性樹脂線状物の毛羽立ち加工した端末部の模式図である。
以下、本発明の車両シート用長繊維強化熱可塑性樹脂線状物について、図1及び図5等を参照して説明する。なお、本発明において、図面は、本発明の技術思想を説明するためのものであり、各構成部材及び部材間の寸法上のバランスや、構成要素等が図面に表わされたものに限定されることはない。
図1に製造工程を略示するように、本発明の長繊維強化熱可塑性樹脂線状物は、長繊維状強化用繊維束Fに溶融押出機Eから溶融した熱可塑性樹脂を押出して接触させ、冷却固化して長繊維強化熱可塑性樹脂線状物(以下、「FRTP線状物」と称することがある。)100として引取装置4で引き取られて製造される。得られる長繊維強化熱可塑性樹脂線状物は、図5(A)で実施例1による断面の例を略示するように、熱可塑性樹脂であるマトリックス樹脂Mからなる海Sと、長繊維状強化用繊維束F(以下、単に「強化用繊維束」、「強化用繊維」と称することがある。)からなる島Iとで構成される長繊維強化熱可塑性樹脂線状物であって、長繊維状強化用繊維束FがFRTP線状物の表面にその一部が露出している状態にあるものである。本発明のFRTP線状物において、島Iを構成する強化用繊維束Fは、フィラメント状の単繊維が複数本集合されて束状の単位とされたものであり、長手方向に直交する断面において、図6は、FRTP線状物の長手方向の部分断面における表面及び内部に配置されている強化用繊維束Fo’及びFi’を模式図で示している。
図6において熱可塑性樹脂であるマトリックス樹脂Mは強化用繊維束と接触しているのみであって、強化用繊維束Fo’及びFi’の内部には含浸していない。本発明において、FRTP線状物の表面に一部露出している状態の補強用繊維束Fo’の数は6個(箇所)以上12個(箇所)以下であり、好ましくは6個以上10個以下である。
なお、本発明において、「繊維束」の用語は、主として島を構成するために分離配置して使用される繊維の単位を指称し、最小単位はマルチフィラメントの束としての1本の場合であり、単繊維フィラメントの集合体の単位の意味で「繊維束」と呼称しているものである。繊維束がさらに集合した場合は、「繊維束群」を用いることとするが、「繊維束」を、単に「繊維」と称する場合もあるものとし、これらの用語の違いによって、字義通りに限定的に解釈されることはないものとする。また、「島」とは繊維束又は繊維束群がひとつの集合体として密集した領域を示し、「密集」とは単繊維同士が互いに接触している状態か、又は接触せずとも極めて近距離に隣接している状態で存在していることを示し、本発明のFRTP線状物の断面全体を眺めたときに、海であるマトリックス樹脂の存在をもって別の島との間の距離の大きさから、視覚的に認識される状態を意味するものとする。
また、露出している繊維束Fの1個の露出長さlはばらつきの範囲で0.3mm〜0.7mmの範囲が好ましく、平均値として0.4mm〜0.6mm程度が好ましい。
また、本発明の車両シート用FRTP線状物において、強化用繊維束FがFRTP線状物の表面に露出していることが必要であるが、その程度は、以下の方法で算出される。
まず、FRTP線状物の長手方向に直交する断面において、表面に露出している強化用繊維束の個別の露出箇所長さlは、ばらつきの範囲で、0.3mm〜0.7mmであることが好ましい。0.3mm〜0.7mmの範囲であれば、車両シート用FRTP線状物として用いる際にクッション体としての樹脂発泡体との結合性を向上できる。
さらに、表面に露出している長繊維状強化用繊維束Fの総数によらず、表面に露出している長繊維状強化用繊維束の1箇所の長さをl、これらの総和をLとして、FRTP線状物の見なし外径Daから計算される外周長さ(πDa)に対する比率〔(L/πDa)×100〕を繊維露出率として、該繊維露出率が20%以上60%以下であることが好ましく、25%以上50%以下であることがより好ましい。
なお、見なし外径は、FRTP線状物の長手方向に直交する断面において、熱可塑性樹脂を外表面とする部分の最大径と最小径からその平均を算出して、これを見なし外径Daとして外周長(πDa)を算出する。
繊維露出率が20%以上60%以下であれば、発泡体樹脂の含浸が不充分となり、発泡体(クッション体)との充分な結合性が得られなという問題や、使用時において表面の単繊維が絡み合い、取扱い性が悪くなるという不都合も生じない。なお、繊維露出率が60%を超えると発泡体と繊維束との結合性は高いが、FRTP線状物のマトリックス樹脂と強化用繊維束との結合性が低下するため、結果として発泡体との結合性は低下する傾向となる。
さらにまた、露出させる繊維束FのFRTP線状物の外周における個別の配置は、表面各位置における結合力のバランスの観点から各繊維束間の距離が均等になるような配置が望ましい。
強化用繊維において、かかる比率の含浸部を有するFRTP線状物は、以下に述べる、本発明の車両シート用長繊維強化熱可塑性樹脂線状物の製造方法によって得ることができる。
すなわち、本発明の車両シート用長繊維強化熱可塑性樹脂線状物の製造方法は、
(1)所要本数の長繊維状強化用繊維束を、クリールより引出し、熱可塑性樹脂の溶融押出機のクロスヘッドに装着される分離ガイド、溶融樹脂含浸部及び収束ガイドを備えるガイド芯金に挿通し、これをクロスヘッドダイに装着して、次いで押出ノズルを備えるダイ、冷却槽、及び引取装置迄導く、長繊維状強化用繊維束群の予備引出し工程(以下、「予備引出し工程」と称する。)、
(2)前記引取装置を駆動して、該長繊維状強化用繊維束群を所定速度で引取りながら、該溶融押出機を駆動して、該クロスヘッドに該熱可塑性樹脂を供給して、ガイド芯金の溶融樹脂含浸部及びダイ内において分離状の各該強化用繊維束を溶融状熱可塑性樹脂と接触させて、引き続き収束ガイドを経て、所定の断面形状の押出ノズルを備えるダイにて加圧下に押出する工程(以下、「接触工程」と称する。)、
(3)押出された線状物を冷却固化し、引取る工程、を有している。
以下、各工程について順次説明する。
<予備引出し工程>
以下、図1及び図4により説明する。図1に示すように所要本数の長繊維状強化用繊維束Fを、クリール1より引出し、マトリックス樹脂Mとなる熱可塑性樹脂を強化用繊維束Fに被覆する溶融押出機Eのクロスヘッドダイ部2に導くが、先ず、定常の製造状態としては、図4(C)に示すように、ガイド芯金20に保持された分離ガイド201(図2(A)、(B)参照)と収束ガイド202(図2(C)、(D)参照)の間に形成される溶融樹脂接触部203に強化用繊維束Fを案内する前段階として、所要本数に対応した孔数を有する図2に示す分離ガイド201の各孔に強化用繊維を導通する。この時、FRTP線状物の表面に露出させる強化用繊維束はマトリックス樹脂を特に繊維束内部への含浸させない様にするため、一点鎖線の円で示す分離ガイドの最外周に位置する孔に導通し、その他のFRTP線状物の表面に露出させない強化用繊維束は、分離ガイド中心部に位置する孔に導通する。次いで、分離ガイド201において最外周孔に導通した強化用繊維束は、収束ガイド202の放射状透孔208に通し、一方、分離ガイドの中心部に位置する孔に導通した強化用繊維束は、それらを収束して、収束ガイド202の中央透孔に通した状態で、図3に示す半割り状の一方のガイド芯金20の内周面に設けられた固定溝204、205に分離ガイド201及び収束ガイド202を嵌入し、他方の半割り状ガイド芯金の相対する溝とも合致させて、内部に強化用繊維束Fが配列された円筒状ガイド芯金20を図4(A)に示すように、クロスヘッドダイ部2の上流側に準備し、かつ、収束ガイド202を通した収束強化用繊維束F群は、押出ノズル23を通して、引取装置4側へ導出可能としておく。
次いで、図4(B)に示すように、ガイド芯金20をクロスヘッドダイ部2のサヤ芯21のフランジ211に装着する。クロスヘッドダイ部2へのガイド芯金20の装着は、サヤ芯21のフランジ211の取り付ネジ孔(図示省略)に、図3に示すガイド芯金20のフランジ206に設けられた取付孔207に通したボルトを螺着させることにより行われる。なお、フランジ206のネジ孔210は、使用後にサヤ芯からガイド芯金を取外す際に用いるものである。
クロスヘッドダイ本体22に装着されたガイド芯金20及び押出ノズル23から導出された収束状強化用繊維束F群は、冷却水槽3、引取装置4に案内され、引取装置の駆動により連続的に走行可能な状態とする。
<強化用繊維束への熱可塑性樹脂接触工程>
次いで、引取装置4を駆動して、収束された長繊維状強化用繊維束F群を所定速度で引取りながら、溶融押出機を駆動して、図4(C)に示すように、クロスヘッドダイ部2に熱可塑性樹脂を供給して、ダイ内樹脂流路223からガイド芯金20の溶融樹脂接触部203に溶融状熱可塑性樹脂を流入させ、分離状の各強化用繊維束Fを溶融状熱可塑性樹脂と接触させて、または接触の上、引き続き収束ガイド202を経て、ダイ内樹脂流路223、及び所定の断面形状を有する押出ノズル23の孔部内において溶融樹脂を加圧下に押出被覆する工程を経て、冷却,引取の次工程に供される。強化繊維束Fを押出ノズル23に通過させる時は、分離ガイド201の最外周の孔に導通した強化繊維束(FRTP線状物の表面に繊維束の一部を露出させる繊維束)を押出ノズル23の孔内壁に積極的に接触させるようにする。これによって露出部に配置される(位置する)繊維束の表面に接触した熱可塑性樹脂を削り取り、繊維を表面に露出させることができる。
(ガイド芯金の溶融樹脂接触部)
本発明の長繊維強化熱可塑性樹脂線状物の長手方向に直交する断面において表面(外周面)ではない内部の島成分を構成する強化用繊維束Fに、マトリックス樹脂が含浸していない状態を形成するには、図4(C)に示すように、溶融樹脂が充填されたガイド芯金20において、分離ガイド201に挿通された強化用繊維束Fを溶融樹脂接触部内の接触始点203Sより分離状で走行させ、収束ガイド202の壁面側を溶融樹脂接触部内の接触終点203Eとする溶融樹脂接触部203で、強化用繊維束Fの外周部等に樹脂が保持された状態とし、最終的に複数本の強化用繊維束Fを収束ガイド202の中央透孔によりいわば絞り成形して、内部の強化用繊維束Fの外周部に熱可塑性樹脂の海が形成される。
なお、ガイド芯金20の溶融樹脂接触部203への溶融樹脂の充填は、図4(C)に溶融樹脂の流れを矢印で示しているように、溶融押出機から供給される樹脂はクロスヘッドダイ内の樹脂流路221、供給部樹脂流路222、接触部向き樹脂流路223を通じて、収束ガイド202に向かって連続的に供給され、定常運転時には、強化用繊維束Fによる樹脂の持ち出しと、供給の収支がバランスするように、溶融押出機の押出量が制御される。
ガイド芯金20の溶融樹脂接触部203への収束ガイド202側からの樹脂の導入は、図2(C)(D)に示す収束ガイド202において、透孔となっている複数の放射状扇形肉抜き部208、及びガイド芯金の強化用繊維束Fの挿通下流域に位置する収束ガイド用溝に交差して全周に4個設けられている強化用繊維束Fの挿通方向に長いスリット状を呈している樹脂流入孔209(図3参照)から行われる。
また、溶融樹脂接触部の容積は、ガイド保持用溝204、205を複数設けることによって、強化用繊維束との接触長さ(時間)を微調整できる構成として、溶融樹脂の粘度等に応じて、強化用繊維束へのマトリックス樹脂の含浸度合いを調整することができる。
<冷却,引取り工程>
図1に示すように、押出被覆された線状物を、冷却水を入れた水冷槽3に導いて冷却しつつ、引取装置4により引取り、FRTP線状物が得られ、次いで、適宜、巻取りボビン等(図示省略)に巻取られ、もしくは切断機等で所定の長さに切断される。
<長繊維強化熱可塑性樹脂線状物の強化用繊維束露出状態>
本発明の長繊維強化熱可塑性樹脂線状物(FRTP線状物)は、複数本用いる強化用繊維束の一部がFRTP線状物の表面に長手方向に連続的に露出している。長手方向に直交する断面において、露出箇所数は6〜12箇所、FRTP線状物円周の長さに対する、強化用繊維束が表面に露出している長さの割合(繊維露出率)は25〜60%であることが、樹脂製発泡体との結合性の観点から好ましい。
(FRTP線状物の繊維露出箇所数及び繊維露出率の算出)
本発明のFRTP線状物について、繊維露出箇所数および繊維露出率は以下の手順で求める。
(i)FRTP線状物を長手方向に直交する方向で長さ1cm程度に切断し、切断面が上になるように、デジタルマイクロスコープ(キーエンス製、製品名:VHX‐5000)の台上に粘土等で固定する。
(ii)倍率30倍として、反射光でサンプルを観察し、FRTP線状物表面に露出している繊維束の数を数える。(=繊維露出箇所数)
(iii)デジタルマイクロスコープに内蔵されている距離算出機能を用いて、表面の繊維露出箇所(マトリックス樹脂に覆われていない部分)の長さを一つずつ算出する。(=1箇所の繊維露出長さ)
(iv)繊維露出箇所長さの合計を求め、外径から求めたFRTP線状物の円周長さより、下記の式により繊維露出率を算出する。
繊維露出率(%)=〔(繊維露出箇所長さ合計)/(円周長さ)〕×100
なお、FRTP線状物の円周長さは、FRTP線状物の見なし外径から計算される。該見なし外径は、上記(ii)の観察において、FRTP線状物のマトリックス樹脂(熱可塑性樹脂)を外表面とする部分の最大径と最小径からその平均を算出して、これを見なし外径Daとする。
以下に、本発明の車両シート用FRTP線状物に用いられる材料について説明する。
(強化用繊維束)
本発明の車両シート用FRTP線状物の強化用繊維束に用いられる繊維としては、特に限定されないが、ガラス繊維、バサルト繊維、炭素繊維等の無機繊維や、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ポリエチレンナフタレート繊維、ポリトリメチレンテレフタレート繊維、ポリアミド(6、66)繊維、ポリアクリロニトリル繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、等の熱可塑性樹脂からなる有機繊維(熱可塑性繊維)、再生セルロース繊維、綿、麻などの天然繊維を用いることができる。
汎用されていることによる生産コスト、焼却可能であることによる廃棄容易性の観点からポリエチレンテレフタレート繊維やポリプロピレン繊維が有利に選択できる。
熱可塑性繊維の融点(Tfm)は、マトリックス樹脂の融点(Tmx)より高い必要がある。低いと押出ダイ内部で繊維が溶融して、切れてしまう恐れがある。これらの融点差Tfm −Tmx は、概ね20℃以上であることが好ましい。
本発明の車両シート用FRTP線状物の強化用繊維(束)には、単繊維繊度が1.5dtex〜30dtexの繊維を80f〜150f集束してなるマルチフィラメントを用いることが好ましい。
単繊維繊度が1.5dtex〜30dtexの範囲であれば、得られるFRTP線状物の引張強度が満足でき、また製造工程での強化用繊維束の取り扱いにおいて困難性もない。
また、本発明においては、強化用繊維束には、長繊維による連続繊維状であるマルチフィラメントであって、前記の単繊維繊度のものを、フィラメント数が80f〜150fの範囲で集束されたものを好適に使用することができる。フィラメント数が80f〜150fの範囲であれば、クリールからの引出し時にケバが発生する等の問題がなく安定して用いることができる。
(マトリックス樹脂)
海成分のマトリックス樹脂として用いられる熱可塑性樹脂は、特に限定されないが、強化用繊維束Fに用いる熱可塑性繊維の融点又は軟化点よりも低い融点を有する熱可塑性樹脂から選択される。より具体的には、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン等のポリオレフィンや、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PENp)、液晶ポリエステル等のポリエステル系樹脂や、スチレン系樹脂、ウレタン樹脂、ポリオキシメチレン(POM)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、変性PPE、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリスルホン(PSU)、変性PSU、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリケトン(PK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリアリレート(PAR)、ポリエーテルニトリル(PEN)、フェノール系樹脂およびフェノキシ樹脂が挙げられる。また、熱可塑性樹脂は、上記の樹脂の共重合体や変性体および/または2種類以上ブレンドした樹脂などであってもよい。これらの中でも成形性および軽量性の観点から、該強化用繊維の融点又は軟化点よりも20℃以上低い融点を有するポリオレフィン系樹脂が好ましく、例えば、ポリプロピレン樹脂が特に好ましい。
また、熱可塑性樹脂は生産性の観点から、メルトフローレイト(MFR)(230℃、21.18N荷重)が20〜100 g/10minの範囲であることが好ましい。
MFRが20 g/10min以上であれば、クロスヘッドダイ内に溜めた溶融樹脂の中を強化繊維束が通る際の抵抗が大きく、単糸切れが起きるという弊害がなく、MFRが100 g/10min以下であれば、樹脂の物性が低下も少なく、車両シート用樹脂ワイヤとして使用した際の曲げ加工において、折れ易くなることもない。
さらに、本発明の車両シート用FRTP線状物は、クッション体に埋設して使用する際の識別性等から、マトリックス樹脂に着色することができる。着色は、公知の種々の手段で行うことができるが、マトシックス樹脂にマスターバッチ顔料を添加するのが簡便である。
マトリックス樹脂として用いられる熱可塑性樹脂には、必要に応じて、タルク等の無機充填材、難燃剤、金属不活性剤、導電性付与剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、熱安定剤、金属不活性化剤、帯電防止剤、着色剤、顔料、染料等を配合してもよい。
<車両シート用FRTP線状物の断面形状等>
車両シート用FRTP線状物の断面形状としては、真円とは限らず、楕円、凹凸のある形など様々な形をとりうる。
FRTP線状物の断面における、FRTP内部の強化用繊維束の断面形状としては、図6に部分断面を示している。繊維は真円とは限らず、楕円、多角形などをとり得る。
また、FRTP線状物の断面における、表面に露出した強化用繊維束の断面形状としては、図6に部分断面を示しているように、楕円とは限らず、真円、多角形などをとり得る。
さらに、FRTP線状物の断面における、内部の強化用繊維束の分布は均一とは限らないが、FRTP線状物断面の中心を基準になるべく点対称であることが好ましい。断面における繊維束分布に極端な偏りがあると、FRTP線状物を曲げる向きによって曲がりやすさが変わり、扱いづらくなるだけでなく、特定の方向に折れやすくなる恐れがある。
また、FRTP線状物の断面における、表面に露出した強化用繊維束の分布は均一とは限らないが、FRTP線状物断面の中心と表面に露出した一つの強化用繊維束を通る直線を基準になるべく線対称であることが好ましい。露出した強化用繊維束の分布に極端な偏りがあると、FRTP線状物を曲げる向きによって曲がりやすさが変わり、扱いづらくなるだけでなく、特定の方向に折れやすくなる恐れがある。
強化用繊維束どうしは必ずしもマトリックス樹脂によって明確に分かれているとは限らず、隣どうしが部分的に接触していても構わない。
強化用繊維束の大きさは均一とは限らず、すなわち、繊維束の繊度が異なるもの、繊維束の種類が異なるものを使用してもよい。
本発明の車両シート用FRTP線状物は、長手方向の所望の部位に毛羽立ち加工又は扁平加工を施してなるものとすることができる。当該毛羽立ち加工又は扁平加工は、車両シート用FRTP線状物として用いる際に、曲げる部位を扁平加工したり、クッション体との結合性を高めるために表面の強化用繊維束の単繊維をループ状に引き出す毛羽立ち加工をするものである。扁平加工は、平板による熱プレスや、熱ローラーによるプレス、毛羽立ち加工は、回転ブラシに摺接させるなどして行うことができる。加工の度合いは目的に応じて適宜変更すればよい。
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例になんら限定されるものではない。
実施例及び比較例のFRTP線状物は以下原材料を用いて作製した。また得られたFRTP線状物の評価は以下の手順、測定方法等により行った。
<FRTP線状物の原材料>
(強化用繊維束)
・ポリエチレンテレフタレート繊維(東レ社製、商品名「テトロン」)のマルチフィラメント(フィラメント構成:1100dtex/95フィラメント)
・融点:260℃、単繊維繊度:1100/95≒11.6dtex/本
・強化用補強繊維束の使用本数:25本
なお、実施例及び比較例により得られるFRTP線状物の強化繊維の体積含有率(Vf)は、22vol%に設定した。
(マトリックス樹脂)
・ポリプロピレン(プライムポリマー社製、樹脂融点:160℃)
・メルトフローレイト(230℃、21.18N): 55g/10分
・顔料:青色マスターバッチ(東京インキ社製、PPM−AO−0114)
使用濃度 0.5wt%
<FRTP線状物の評価>
(表面の繊維露出状態)
得られたFRTP線状物の表面の繊維露出箇所数は前述の方法、すなわち、FRTP線状物の断面を、マイクロスコープを用いて、倍率30倍で観察して数えた。また、繊維露出率も前述の方法により算出した。
(樹脂製発泡体からの引き抜き強力)
得られたFRTP線状物について、樹脂製発泡体からの引き抜き強力を以下の手順で測定した。
(i)FRTP線状物を長さ20cmに切断する。
(ii)内径φ3cm、長さ10cmのパイプの片端をテープで塞ぎ、そのテープの中央にFRTP線状物が通る孔を開ける。
(iii)テープに開けた孔から、FRTP線状物を10cm分の長さでパイプの中に通す。
(iv)パイプの、開封状態にある他端からスプレータイプのウレタンフォーム(一液、常温硬化型)を注入し、常温で硬化して一日(24時間)養生する。
(v)引張試験機(ミネベア製、TCM−5000C)を用いて、ウレタンフォームからFRTP線状物を引き抜く際の強力を測定する。(ロードセル50kg、引き抜き速度10mm/min、チャック間距離10cm(FRTPの端から5cmとパイプの端から5cmをチャックする)
なお、端末から4cmにつき扁平加工、毛羽立ち加工を施した実施例3及び4により得られたFRTP線状物についても、全体で10cm分の長さでパイプの中に通して測定した。
(曲げ物性)
JIS K7017に準ずる形で、試料長120mm、支点間64mm、圧子及び支持台半径5mm、ロードセル50kg、試験速度5mm/min、n=5にて三点曲げ試験を行い、曲げ強度、曲げ弾性率を求めた。なお、実施例3及び4により得られたFRTP線状物の測定は、支点間64mmに40mmの扁平加工部分、毛羽立ち加工部分が含まれるように試料を調製して測定した。加工を施す前の実施例3、4の線状物は実施例2に同じ物である。
実施例1
(予備引き出し工程)
強化用繊維束として、1100dtex/95fのポリエチレンテレフタレート繊維(東レ製)25本を、円形の金属プレートに直径1mmの25個の孔があけられた分離ガイド201a(図2(A))の1個の孔に1本ずつ通し、続いて分離ガイドの孔のうちPCDφ18mmの位置に配置された、外側の6個の孔を通した繊維束6本を、図2(C)に示す円形の金属プレートの中央に直径2.0mmの孔が1個、その周囲に放射状扇形の孔が6個あけられた収束ガイド202aの扇形の6個の孔に1本ずつ通し、分離ガイド内側の19個の孔を通した残りの繊維19本を、中央の孔に通した。分離ガイド外側の繊維を収束ガイドの扇形の孔に通す際は、繊維が直線的に通るようにし、繊維同士の交差がないようにした。
次いで、分離ガイド201a及び収束ガイド202aを、クロスヘッドダイ内部に取り付けるための半割り状の一方のガイド芯金20の溝204,205に嵌め、相対する他方の半割り状のガイド芯金と重ね合わせて円筒状のガイド芯金20とし、収束ガイド202aに通した強化用繊維束群をダイス先端に取着された直径3.2mmの円形押出ノズル23に通した上で、ガイド芯金20をクロスヘッドダイ本体2の後方へ取り付けた。この時、分離ガイドの孔のうちPCDφ18mmの位置に導通された、外側の6本の繊維束は押出ノズル23の孔内壁に接触する様にした。
(FRTP線状物の成形)
押出ノズル23を通した強化用繊維束群を、冷却水槽3を通した上で、ベルト式引取装置4を用いて5m/minの速度で引取りながら、溶融押出機Eを起動し、押出温度220℃で溶融状態のポリプロピレン樹脂(プライムポリマー製、MFR:55g/10min:230℃、21.18N)をダイ内部(221〜223、203)に供給した。押出ノズル23から出てきたFRTP線状物を、冷却水を満たした冷却水槽3で冷却しつつ引取ることで直径3.4mmのFRTP線状物100(101)を得た。得られたFRTP線状物101の断面の模式図を図5(A)に示す。
本実施例1により得られたFRTP線状物の繊維露出箇所は6箇所であった。また、繊維露出率は28%であった。引き抜き強力は18.3Nであり、繊維露出のない、または少ないFRTP線状物と比べて高い結果が得られた。これらの結果をまとめて表1に示す。
実施例2
分離ガイドを孔の径、数は実施例1に用いたものとおなじであって、図2(B)に201bとして示す様に外側に8個の孔を有する形に変更し、収束ガイドを、同図(D)に示す扇形の孔の数が8個の収束ガイド202bに変更して、分離ガイド201bの8個の外側の孔を通した繊維を、扇形の8個の孔に通した以外は実施例1と同様にして、直径3.4mmのFRTP線状物を得た。得られたFRTP線状物102の断面の模式図を図5(B)に示す。
得られたFRTP線状物の繊維露出箇所は8箇所であった。また、繊維露出率は39%であった。引き抜き強力は21.6Nであり、繊維露出のない、または少ないFRTP線状物と比べて高い結果が得られた。これらの結果をまとめて表1に示す。
比較例1
分離ガイドを通した繊維束を、収束ガイド202bの放射状扇形の孔208には通さず、全て中央の孔に通した以外は実施例2と同様にして、直径3.4mmのFRTP線状物を得た。得られたFRTP線状物の断面の模式図を図5(C)に示す。
得られたFRTP線状物には繊維露出箇所がなかった。引き抜き強力は9.9Nであり、実施例1および2の繊維露出のあるFRTP線状物と比べて低かった。これらの結果をまとめて表1に示す。
比較例2
分離ガイドの8個の外側の孔を通した繊維のうち対角に存在する2本の繊維を、収束ガイドの放射状扇形の8個の孔のうち対角に存在する2個の孔に通し、それ以外の分離ガイドを通した繊維は全て収束ガイドの中央の孔に通した以外は実施例2と同様にして、直径3.4mmのFRTP線状物を得た。得られたFRTP線状物104の断面の模式図を図5(D)に示す。
得られたFRTP線状物の繊維露出箇所は2箇所であった。また、繊維露出率は10%であった。引き抜き強力は11.2Nであり、実施例1および2の繊維露出箇所の多いFRTP線状物と比べて低かった。これらの結果をまとめて表1に示す。
実施例3
実施例2において得られたFRTP線状物の端末から4cmの範囲を補強繊維束Fが溶融しない温度である90℃で、平板熱プレスし、厚さ2mm、幅6mmの扁平形状にした。その模式図を図7に示す。
扁平箇所を引抜試験用試料のウレタンフォーム埋設端部として全体で10cmになる様にして硬化、養生した以外は実施例2と同様にして引抜試験を行った。引き抜き強力測定結果は26.9Nであり、実施例2のFRTP線状物と比べて増加していた。これらの結果をまとめて表1に示す。
実施例4
実施例2において得られたFRTP線状物の端末から4cmの範囲を回転ブラシに接触させることで、露出繊維を毛羽立たせて、フィラメントの繊維がループ状もしくは単繊維状にFRTP線状物から飛び出るようにした。その模式図を図8に示す。
毛羽立ち箇所を引抜試験用試料のウレタンフォーム埋設端部として全体で10cmになる様にして硬化、養生した以外は実施例2と同様にして引抜試験を行った。引き抜き強力測定結果は27.2Nであり、実施例2のFRTP線状物と比べて増加していた。これらの結果をまとめて表1に示す。
本発明によれば、車両シート用長繊維強化熱可塑性樹脂線状物であって、前記強化用繊維束は、長手方向に直交する断面において、該マトリックス樹脂が含浸していない未含浸部を有し、該強化用繊維束はそれぞれその一部が長繊維強化熱可塑性樹脂線状物の表面にそれぞれ別個の束状に露出して長手方向に連続してなる長繊維強化熱可塑性樹脂線状物であるため、前記補強用繊維束内の、マトリックス樹脂の未含浸部に、シートパッド成形時に、シートのクッション材である軟質ポリウレタン発泡樹脂が含浸することによって長繊維強化熱可塑性樹脂線状物と発泡体との結合性が発揮される。本発明では特に長手方向での長繊維強化熱可塑性樹脂線状物全体にわたる結合性が発揮されるため大きな結合力が発生し、同時に、強化用繊維束の内部には、熱可塑性マトリックス樹脂が含浸していない未含浸部が存在しているためシートパッド成形時の熱曲げ賦形においても所望の形状に容易に賦形できる長繊維強化熱可塑性樹脂線状物として利用できる。
1 クリール
2 溶融押出機クロスヘッドダイ部
3 水冷槽
4 引取装置
20 ガイド芯金
21 サヤ芯
22 クロスヘッドダイ本体
23 押出ノズル
100 長繊維強化熱可塑性樹脂線状物(FRTP線状物)
101〜106 長繊維強化熱可塑性樹脂線状物(FRTPロッド)
201a、b 分離ガイド
202a、b 収束ガイド
203 溶融樹脂接触部
203S 溶融樹脂接触部内の含浸始点
203E 溶融樹脂接触部内の含浸終点
204、205 ガイド保持用溝
206 フランジ
207 取付孔
208 放射状扇形肉抜き部
209 樹脂流入孔
221 ダイ内樹脂流路
222 ダイ内供給部樹脂流路
223 接触部向樹脂流路
E 溶融押出機
F 長繊維状強化用繊維束
Fo’ 露出している強化用繊維
Fi’ 内部の強化用繊維
l 繊維露出箇所長さ
M マトリックス樹脂
S 海
I 島

Claims (9)

  1. 熱可塑性樹脂であるマトリックス樹脂と、長繊維状強化用繊維束とからなる車両シート用長繊維強化熱可塑性樹脂線状物であって、前記強化用繊維束は、長手方向に直交する断面において、該マトリックス樹脂が含浸していない未含浸部を有し、かつ、該強化用繊維束の一部の繊維が該線状物の表面に、6箇所以上12箇所以下のそれぞれ別個の位置に露出して、該線状物の長手方向に連続してなる車両シート用長繊維強化熱可塑性樹脂線状物。
  2. 前記線状物の前記断面において、表面に露出している前記強化用繊維束の繊維露出箇所のそれぞれの長さが0.3mm〜0.7mmである、請求項1に記載の車両シート用長繊維強化熱可塑性樹脂線状物。
  3. 前記断面における前記繊維露出箇所の長さの総和に対する、前記線状物の見なし外径から計算される外周の長さの比として算出される繊維露出率が20〜60%である、請求項2に記載の車両シート用長繊維強化熱可塑性樹脂線状物。
  4. 前記強化用繊維束が、単繊維繊度が1.5dtex〜30dtexの繊維を80f〜150f集束してなるマルチフィラメントである、請求項1〜3のいずれかに記載の車両シート用長繊維強化熱可塑性樹脂線状物。
  5. 前記強化用繊維束を構成する強化用繊維が熱可塑性樹脂からなり、前記マトリックス樹脂が該強化用繊維の融点又は軟化点よりも20℃以上低い融点を有するポリオレフィン系樹脂である、請求項1〜4のいずれかに記載の車両シート用長繊維強化熱可塑性樹脂線状物。
  6. 前記熱可塑性樹脂からなる強化用繊維が、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ポリエチレンナフタレート繊維、ポリトリメチレンテレフタレート繊維、ポリアクリロニトリル繊維、脂肪族ポリアミド繊維から選ばれる一種又は複数種の併用あるいは混繊維である、請求項5に記載の車両シート用長繊維強化熱可塑性樹脂線状物。
  7. 前記マトリックス樹脂が、メルトフローレート(230℃、21.18N)が20〜100g/10分であるポリプロピレン樹脂からなる、請求項1〜6のいずれかに記載の車両シート用長繊維強化熱可塑性樹脂線状物。
  8. 前記マトリックス樹脂が着色されている、請求項1〜7のいずれかに記載の車両シート用長繊維強化熱可塑性樹脂線状物。
  9. 前記線状物が、長手方向の所望の部位に毛羽立ち加工又は扁平加工を施してなるものである、請求項1〜8のいずれかに記載の車両シート用長繊維強化熱可塑性樹脂線状物。
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