以下、本発明の実施の形態に係る斜軸式液圧回転機として、可変容量型の斜軸式液圧回転機、より具体的には、可変容量型斜軸式油圧ポンプを例に挙げ、この油圧ポンプについて、図1ないし図9に従って詳細に説明する。
図1において、斜軸式液圧回転機としての可変容量型斜軸式油圧ポンプ(以下、油圧ポンプ1という)は、例えば油圧ショベルの原動機によって回転駆動され、作動油タンクからの油液を吸込んで、油圧管路の下流側に接続される各種油圧機器(いずれも図示せず)に圧油を供給するものである。この油圧ポンプ1は、ケーシング本体2、ヘッドケーシング3、回転軸4、シリンダブロック6、センタシャフト7、ピストン8、弁板9、傾転機構10等により構成されている。
ケーシング本体2は、油圧ポンプ1の外殻となる中空の筒状体として形成されている。このケーシング本体2は、軸方向の一側に位置して略円筒状に形成された軸受部2Aと、該軸受部2Aの他端から傾斜して延びたシリンダブロック収容部2Bとにより構成されている。このシリンダブロック収容部2Bの他端には、ヘッドケーシング3が組付けられている。即ち、ケーシング本体2とヘッドケーシング3とにより油圧ポンプ1全体のケーシングを構成している。
ヘッドケーシング3は、ケーシング本体2の軸方向の他側の開口、即ち、シリンダブロック収容部2Bの他端を閉塞して設けられている。このヘッドケーシング3は、ケーシング本体2側に位置する一端面3Aに凹円弧状摺接部3Bを有している。一方、ヘッドケーシング3には、凹円弧状摺接部3Bの奥部に位置して後述する傾転機構10のシリンダ孔11が設けられている。さらに、ヘッドケーシング3には、凹円弧状摺接部3B(の凹円弧面3C)に開口する吸入流路と排出流路(いずれも図示せず)とがシリンダ孔11を挟んで設けられている。
ここで、凹円弧状摺接部3Bは、円弧状に凹陥している。即ち、凹円弧状摺接部3Bは、センタシャフト7を支点(回転中心)として弁板9が傾転(揺動)したときの傾転半径(揺動半径)に沿って形成された凹円弧面3Cと、凹円弧面3Cの両端に位置して凹円弧面3Cからシリンダブロック6側に向けて延びる側面3Dとを備えている。そして、凹円弧状摺接部3Bには、弁板9の凸円弧状摺接部9Bが傾転可能に嵌合している。即ち、凹円弧状摺接部3Bの凹円弧面3Cは、弁板9の凸円弧状摺接部9Bの凸円弧面9Cと摺接し、凹円弧状摺接部3Bの側面3Dは、弁板9の凸円弧状摺接部9Bの側面9Dと摺接する。
回転軸4は、ケーシング本体2の軸受部2A内に位置して、軸受部2A内を軸方向に延びて設けられている。この回転軸4は、複数(例えば、3個)の軸受5を介して、軸受部2A内に回転可能に支持されている。回転軸4の一端側は、ケーシング本体2から軸方向に突出する突出端4Aとなり、この突出端4Aには、エンジン等の原動機が動力伝達機構等(いずれも図示せず)を介して連結される。一方、回転軸4には、ケーシング本体2内への挿入側先端部、即ち、軸方向の他端部に位置して円板状のドライブディスク4Bが形成されている。
シリンダブロック6は、回転軸4と一体に回転するように、ケーシング本体2のシリンダブロック収容部2B内に設けられている。このシリンダブロック6は、円柱体として形成され、その中心軸線に沿ってセンタシャフト7が挿入される中心シリンダとしてのセンタシャフト挿入孔6Aが設けられている。一方、シリンダブロック6には、センタシャフト挿入孔6Aの周囲に位置して軸方向に延びるシリンダ6Bが周方向に間隔をもって複数(1つのみ図示)配置されている。さらに、シリンダブロック6は、後述の弁板9側となる軸方向の他端面が摺接端面6Cとなっている。この摺接端面6Cは、弁板9の切換面9Aと摺接するもので、凹球面状に形成されている。
センタシャフト7は、シリンダブロック6のセンタシャフト挿入孔6Aに挿通されている。このセンタシャフト7は、回転軸4のドライブディスク4Bと弁板9との間でシリンダブロック6を傾転自在に支持するものである。センタシャフト7は、一端側が回転軸4のドライブディスク4Bの回転中心位置に揺動可能に連結され、他端側がセンタシャフト挿入孔6Aに挿入されている。そして、センタシャフト7の他端側には、スプリング7Aが設けられている。このスプリング7Aは、シリンダブロック6を弁板9に押しつけるものである。
ピストン8は、シリンダブロック6の各シリンダ6Bに往復動可能に複数本挿嵌されている。これら複数本のピストン8は、シリンダ6Bから突出した一端側が回転軸4のドライブディスク4Bに揺動可能に連結されている。各ピストン8は、回転軸4に対して傾転したシリンダブロック6が回転することにより、シリンダ6B内で往復動し、油液の吸込、吐出を行うものである。
弁板9は、ヘッドケーシング3とシリンダブロック6との間に設けられている。この弁板9は、ヘッドケーシング3の凹円弧状摺接部3B内で凹円弧面3Cに沿って傾転するものである。弁板9は、凹円弧状摺接部3Bの幅寸法(傾転方向に対する横方向の寸法、側面3Dの離間寸法)内に収まる矩形状の外形を有している。弁板9の一端面には、シリンダブロック6の摺接端面6Cに対面して摺接する凸球面状の切換面9Aが設けられている。一方、切換面9Aと反対側となる弁板9の他端面には、ヘッドケーシング3の凹円弧状摺接部3Bに対応した円弧をもって突出した凸円弧状摺接部9Bが設けられている。この凸円弧状摺接部9Bは、傾転機構10の作動時に、ヘッドケーシング3の凹円弧状摺接部3Bに傾転可能に摺接するものである。
この場合、図5に示すように、凸円弧状摺接部9Bは、凹円弧状摺接部3Bの凹円弧面3Cに対応して突出した凸円弧面9Cと、凸円弧面9Cの両端(弁板9の両端)に位置する側面9Dとを備えている。そして、凸円弧状摺接部9Bは、凹円弧状摺接部3Bに傾転可能に嵌合している。
図3に示すように、弁板9には、切換面9Aの中央に位置して軸方向に貫通した嵌合孔9Eが設けられている。この嵌合孔9Eは、サーボピン13の先端13A側が挿入されるものである。また、嵌合孔9Eの他端側(ヘッドケーシング3側)には、嵌合孔9Eの他の部分よりも内径寸法が大きい大径部9Fが形成されている。即ち、嵌合孔9Eは、他端側から順に、(凸円弧状摺接部側)大径部9F、小径部9G、(切換面側)大径部9Hを有している。そして、嵌合孔9Eの小径部9Gに、サーボピン13の嵌合部13Bが嵌合している。嵌合孔9Eは、大径部9Fによってサーボピン13が挿入される側の開口(挿入口)を大きくすることにより、嵌合孔9E内にサーボピン13の先端13Aを挿入し易くしている。
傾転機構10は、ヘッドケーシング3に設けられている。この傾転機構10は、シリンダブロック6と共に弁板9を傾転させるものである。傾転機構10は、凹円弧状摺接部3Bの最深部よりも奥部に位置して弁板9の傾転方向に直線状に延びて設けられたシリンダ孔11と、該シリンダ孔11に摺動可能に挿嵌された動作部としてのサーボピストン12と、該サーボピストン12の長さ方向の中間部位に設けられ、該サーボピストン12から径方向に突出して弁板9側に向けて延びたサーボピン13とを備えている。シリンダ孔11は、一側シリンダ孔となる大径孔11Aと他側シリンダ孔となる小径孔11Bとを有している。
サーボピン13は、基端側がサーボピストン12に形成されたピン孔12A内に挿入され、先端13A側が弁板9の嵌合孔9Eに挿入(接続)されている。即ち、サーボピン13の弁板9側に位置する先端13A寄りには、球形ジョイントの如き嵌合部13Bが設けられており、該嵌合部13Bが嵌合孔9E(の小径部9G)に嵌合することにより、サーボピン13と弁板9とが接続されている。また、サーボピン13の先端13Aには、先細りとなるテーパ状(縮径状)のガイド部13Cが形成されている。この場合、図7に示すように、サーボピン13の中心軸線K−Kとガイド部13C(の傾斜面)とのなす角度はαに設定されている。
傾転機構10は、油通孔(図示せず)からシリンダ孔11(11A,11B)内に油液を供給することにより、このシリンダ孔11(11A,11B)に沿ってサーボピストン12を移動することができる。このように、サーボピストン12を移動させることにより、サーボピン13を介して弁板9をシリンダブロック6と共に傾転させることができる。これにより、傾転機構10は、回転軸4に対するシリンダブロック6と弁板9の傾転角度を、図9に示す最小傾転位置と図1に示す最大傾転位置との間で調整することができる。
本実施の形態による油圧ポンプ1は上述の如き構成を有するもので、次に、この油圧ポンプ1の動作について説明する。
まず、傾転機構10によってシリンダブロック6と共に弁板9を、図1に示す最大傾転位置に移動させる。この場合には、図示しないパイロットポンプからの圧油をシリンダ孔11(の小径孔11B)内に供給し、サーボピストン12を変位させる。このときには、サーボピン13が接続された弁板9がシリンダブロック6と共に傾転し、最大傾転位置まで移動する。
一方、圧油を油通孔からシリンダ孔11(の大径孔11A)内に供給した場合には、弁板9をシリンダブロック6と共に、最小傾転位置(図9に示す位置)や最大傾転位置と最小傾転位置との間の中間位置(図8に示す位置)に移動することができる。なお、図8は、弁板9およびシリンダブロック6が中間位置、即ち、弁板9の中心軸線L−Lとサーボピン13の中心軸線K−Kとのなす角度が0(零)となった状態を示している。
次に、エンジン、モータ等の原動機(図示せず)によって回転軸4を回転駆動すると、該回転軸4のドライブディスク4Bと共にシリンダブロック6が回転する。このときには、シリンダブロック6が回転することによって各シリンダ6B内でピストン8が往復動する。ここで、往復動するピストン8の吸込行程では、作動油タンクから、ヘッドケーシング3の吸入流路(図示せず)等を通じてシリンダ6B内に油液を吸込む。続いて、ピストン8の吐出行程では、シリンダ6B内から圧油を吐出し、この圧油をヘッドケーシング3の排出流路(図示せず)を通じて油圧管路の下流側に接続される各種油圧機器(いずれも図示せず)に圧油を供給することができる。
ところで、従来技術によれば、ケーシング本体にヘッドケーシングを組付けるときに、ヘッドケーシングと弁板とを嵌合させてから、サーボピンの先端側と弁板の嵌合孔とを嵌合させる必要がある。このため、サーボピンの先端側と弁板の嵌合孔とを嵌合させる嵌合作業が外部から目視し難くなり、この嵌合作業が面倒になる可能性がある。
そこで、本実施の形態では、次のような構成を採用している。以下、本発明の特徴部分として、ヘッドケーシング3の凹円弧状摺接部3Bと弁板9の凸円弧状摺接部9Bとの寸法関係(長さ関係)について、図2ないし図6に従って詳しく述べる。この場合、図2に示すように、ヘッドケーシング3をケーシング本体2に組付ける場合を基準として、寸法関係を説明する。即ち、弁板9とヘッドケーシング3とをサーボピン13の中心軸線方向に離間させ、ヘッドケーシング3の凹円弧状摺接部3Bと弁板9の凸円弧状摺接部9Bとを任意の一定間隔を開けて対面させる。この状態で、サーボピン13の中心軸線方向を基準として寸法関係を説明する。なお、寸法関係は、サーボピン13の軸線方向を基準に規制(規定)するが、例えば、鉛直方向を基準に規制(規定)してもよい。
図2に示すように、ヘッドケーシング3をケーシング本体2に組付ける組付作業は、例えば、クレーン等を用いて吊り上げたヘッドケーシング3を、ケーシング本体2の上側から組み付けることにより行う。このとき、ヘッドケーシング3は、サーボピン13側が鉛直下向きとなり、ケーシング本体2は、シリンダブロック6側が鉛直上向きとなる。また、シリンダブロック6、弁板9、サーボピストン12、サーボピン13は、重力によって最大傾転位置となっている。このとき、図2に示すように、シリンダブロック6および弁板9は、センタシャフト7のスプリング7Aによって押し上げられ、サーボピン13側に近づいた状態となっている。
ここで、図5に示すように、サーボピン13の先端13Aは、ヘッドケーシング3の凹円弧状摺接部3Bの側面3Dの端縁3D1よりも、弁板9側に突出している。この上で、図3および図5に示すように、各部の寸法関係を次のように規制(規定)している。即ち、ヘッドケーシング3の凹円弧状摺接部3Bの側面3Dの端縁3D1と弁板9の凸円弧状摺接部9Bの側面9Dの端縁9D1との軸線方向距離をAとし、サーボピン13の先端13Aと弁板9の嵌合孔9Eとの軸線方向距離をBとする。この場合に、A,Bは、弁板9の傾転範囲のうちの少なくともいずれかの位置、より具体的には、弁板9が少なくとも最大傾転の位置で、下記の数1式の関係に設定されている。
この場合、軸線方向距離Bは、例えば、凹円弧状摺接部3Bと凸円弧状摺接部9Bとをサーボピン13の軸線方向に任意の一定間隔を開けて対面させた状態で、サーボピン13の先端13Aと弁板9の嵌合孔9Eの大径部9Fの開口縁との軸線方向距離のうちの最も短い距離とする。即ち、軸線方向距離Bは、例えば、嵌合孔9Eの大径部9Fの開口縁のうちの最もヘッドケーシング3に近くなる部位とサーボピン13の先端13Aとの距離とする。
さらに、弁板9の嵌合孔9Eには、大径部9Fを設けていることから、大径部9Fの軸線方向の長さをCとした場合に、軸線方向距離A,B,Cは、下記の数2式の関係に設定されている。
そして、軸線方向距離A,B,Cは、上記数2式を満たすため、図4および図6に示すように、ケーシング本体2にヘッドケーシング3を組付ける際、ヘッドケーシング3の凹円弧状摺接部3Bの側面3Dと弁板9の凸円弧状摺接部9Bの側面9Dとが嵌合するのに先立って、サーボピン13の先端13Aと弁板9の嵌合孔9E(小径部9G)とが嵌合する。即ち、サーボピン13の先端と弁板9との嵌合孔9Eとの距離が0(B+C=0)となった状態においてA>0となるため、サーボピン13と弁板9の嵌合孔9Eとを目視しつつ嵌合させることができる。
ここで、図7に示すように、サーボピン13のガイド部13C(の傾斜面)とサーボピン13の中心軸線K−Kとのなす角度をαとした場合、このなす角度αを、次のように設定している。即ち、図1に示すように、弁板9を最大傾転させたときの弁板9の中心軸線L−Lとサーボピン13の中心軸線K−Kとのなす角度をβとする。また、図9に示すように、弁板9を最小傾転させたときとの弁板9の中心軸線L−Lとサーボピン13の中心軸線K−Kとのなす角度をγとする。この場合に、なす角度αは、角度βおよび角度γよりも大きく設定されている。即ち、角度α,β,γは、下記の数3式および数4式の関係に設定されている。
かくして、本実施の形態によれば、弁板9とヘッドケーシング3とをサーボピン13の中心軸線方向に離間させ、ヘッドケーシング3の凹円弧状摺接部3Bと弁板9の凸円弧状摺接部9Bとを任意の一定間隔を開けて対面させたときに、ヘッドケーシング3の凹円弧状摺接部3Bの側面3Dの端縁3D1と弁板9の凸円弧状摺接部9Bの側面9Dの端縁9D1との軸線方向距離をAとし、サーボピン13の先端13Aと弁板9の嵌合孔9Eとの軸線方向距離をBとする。この場合に、弁板9の傾転範囲の少なくともいずれかの位置でA>Bに設定されている。これにより、ケーシング本体2にヘッドケーシング3を容易に組付けることができる。
即ち、油圧ポンプ1は、ケーシング本体2にヘッドケーシング3を組付ける際、サーボピン13と弁板9の嵌合孔9Eが嵌合した後に、ヘッドケーシング3の凹円弧状摺接部3Bの側面3Dと弁板9の凸円弧状摺接部9Bの側面9Dが嵌合することができる。言い換えれば、ヘッドケーシング3の凹円弧状摺接部3Bの側面3Dと弁板9の凸円弧状摺接部9Bの側面9Dとの嵌合に先立って、サーボピン13と弁板9の嵌合孔9Eとを嵌合させることができる。
これにより、サーボピン13の先端13A側を弁板9の嵌合孔9Eに挿入(嵌合)させる作業を外部から目視しつつ行うことができるので、ケーシング本体2にヘッドケーシング3を容易に組付けることができる。しかも、サーボピン13の先端13A側が弁板9の嵌合孔9Eに挿入(嵌合)し始めた後は、サーボピン13の先端13A側は、嵌合孔9Eに案内されつつ奥側へ進入する、このとき、弁板9の位置は、サーボピン13によって規制されるため、サーボピン13と嵌合孔9Eとの嵌合の後の、ヘッドケーシング3の凹円弧状摺接部3Bの側面3Dと弁板9の凸円弧状摺接部9Bの側面9Dとの嵌合を容易に行うことができる。
また、本実施の形態によれば、弁板9の傾転範囲のうち少なくとも最大傾転の位置でA>Bに設定されている。これにより、重力によって弁板9等が最大傾転位置にある状態で、サーボピン13と弁板9の嵌合孔9Eとを嵌合させる作業を行うことができる。これにより、この嵌合時に、治具等を用いてシリンダブロック6やサーボピン13の傾転方向の位置決めをする作業を省略(ないしは容易化)することができ、この面からも、ケーシング本体2にヘッドケーシング3を容易に組付けることができる。
また、本実施の形態によれば、弁板9の嵌合孔9Eは、ヘッドケーシング3側に他の部分よりも内径寸法が大きい大径部9Fが形成されている。これにより、サーボピン13を弁板9の嵌合孔9Eに嵌合する際、嵌合孔9Eの挿入口が広くなっているので、サーボピン13を弁板9の嵌合孔9Eに容易に嵌合することができる。
また、本実施の形態によれば、弁板9の嵌合孔9Eに大径部9Fを設けた上で、この大径部9Fの軸線方向の長さをCとした場合に、A>B+Cに設定されている。これにより、サーボピン13の先端13Aが弁板9の嵌合孔9E(小径部9G)に嵌合するまでの距離、即ち、サーボピン13の先端13Aと弁板9の嵌合孔9E(小径部9G)との距離(B+C)が0(零)となる嵌合直前の状態でも、A>0となることができる。この結果、嵌合孔9Eに大径部9Fを設けても、サーボピン13の先端13Aと嵌合孔9E(小径部9G)とを先に嵌合させることができる。即ち、ヘッドケーシング3とケーシング本体2との隙間から、サーボピン13と弁板9の嵌合孔9E(小径部9G)とが嵌合するのが目視できるので、ケーシング本体2にヘッドケーシング3を容易に組付けることができる。
また、本実施の形態によれば、サーボピン13の弁板9側の先端13Aには、先細りとなるテーパ状のガイド部13Cが形成されている。これにより、ガイド部13Cに沿ってサーボピン13を嵌合孔9Eに容易に嵌合させることができる。この結果、サーボピン13自体がヘッドケーシング3をケーシング本体2に組付けるための治具の働きをするので、前述の特許文献2のガイド棒のような組付治具を新たに用意する必要がなく、ヘッドケーシングにガイド孔を開ける等の設計変更をする必要もない。このため、加工工数、部品点数、コストを抑制することができると共に、ヘッドケーシング3を小型化することができる。
この場合、ガイド部を形成せずに単純にA>BないしA>B+Cとなるようにサーボピンの軸方向長さを長くすると、サーボピンの剛性が低下する可能性がある。また、サーボピンをサーボピストン内に支持する支持部とサーボピンの弁板に対する荷重点(サーボピンと弁板の嵌合孔の内周面とが当接する点)との距離が大きくなるので、サーボピンに作用するモーメントが大きくなりサーボピンの信頼性が低下する可能性がある。
これに対して、本実施の形態によれば、サーボピン13は、先端にガイド部13Cが形成され、ガイド部13Cは先細りとなるテーパ状に形成されているため、組立完了後の状態で、サーボピン13の先端13A側(ガイド部13C)が弁板9の嵌合孔9Eの内周面に当接することを抑制できる。これにより、サーボピン13の弁板9に対する荷重点(嵌合孔9Eの小径部9Gとサーボピン13の嵌合部13Bとの接触点)をガイド部13Cよりも軸方向他端側(基端側)にすることができるので、サーボピン13の支持部とサーボピン13の荷重点との距離が大きくなるのを抑制できる。この結果、サーボピン13に作用するモーメントを低下させ、サーボピン13の信頼性を向上させることができる。
また、本実施の形態によれば、ガイド部13Cとサーボピン13の中心軸線K−Kとのなす角度αは、弁板9を最大傾転させたときの弁板9の中心軸線L−Lとサーボピン13の中心軸線K−Kとのなす角度βよりも大きく、かつ、弁板9を最小傾転させたときの弁板9の中心軸線L−Lとサーボピン13の中心軸線K−Kとのなす角度γよりも大きい構成としている。これにより、図1に示す弁板9が最大傾転位置および図9に示す最小傾転位置にあるいずれの場合でも、サーボピン13の先端13A側のガイド部13Cが、弁板9の嵌合孔9Eの内周面に当接することを抑制できる。この結果、ガイド部13Cが嵌合孔9Eの内周面に干渉することを抑制できるので、サーボピン13を長くしても、傾転機構10の傾転角を大きくすることができる。
なお、上述した実施の形態では、弁板9が最大傾転の位置でA>Bに設定されている場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、弁板が最小傾転の位置でA>Bに設定されている構成としてもよいし、弁板が最大傾転位置と最小傾転位置との中間の位置でA>Bに設定されている構成としてもよい。即ち、弁板が最大傾転位置と最小傾転位置との傾転範囲の少なくともいずれかの位置でA>Bに設定されている構成としてもよい。また、傾転範囲の全てでA>Bに設定してもよい。要は、傾転範囲の少なくとも何れかにおいて、ヘッドケーシングの凹円弧状摺接部の側面と弁板の凸円弧状摺接部の側面とが嵌合するのに先立って、サーボピンの先端と弁板の嵌合孔とが嵌合するように、A>B、A>B+Cに設定すればよい。
また、上述した実施の形態では、弁板9の嵌合孔9Eには、嵌合孔9Eの他の部分よりも内径寸法が大きい大径部9Fが形成されている場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、嵌合孔に大径部を設けない構成としてもよい。この場合、ヘッドケーシングと弁板とサーボピンとは、A>Bの関係を満たせばよい。
また、上述した実施の形態では、重力によって弁板9等を最大傾転位置にして、ヘッドケーシング3をケーシング本体2に組付ける場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、弁板等が最小傾転の位置で組付ける構成としてもよいし、弁板等が最大傾転位置と最小傾転位置との中間の位置で組付ける構成としてもよい。即ち、弁板等が最大傾転位置と最小傾転位置との傾転範囲の少なくともいずれかの位置で組付ける構成としてもよい。
また、上述した実施の形態では、斜軸式液圧回転機として、可変容量型斜軸式油圧ポンプ1を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、斜軸式液圧回転機を可変容量型斜軸式油圧モータに適用する構成としてもよい。