JP6665797B2 - シリコン単結晶育成方法、シリコン単結晶及びシリコン単結晶ウェーハ - Google Patents

シリコン単結晶育成方法、シリコン単結晶及びシリコン単結晶ウェーハ Download PDF

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Description

本発明は、シリコン単結晶育成方法、シリコン単結晶及びシリコン単結晶ウェーハに関し、例えば、メモリー・CPU・パワーデバイス等の半導体デバイスの基板、またはGaN等の化合物半導体用の基板として用いられるシリコンウェーハを切り出すシリコン単結晶の育成方法に関するものであり、特には最先端分野で用いられている無欠陥単結晶の製法技術に関するものである。
近年、デバイスの高集積化に伴い、シリコン単結晶ウェーハの高品質化要求が厳しくなっている。高品質化要求とは、デバイスが動作するウェーハ表面近傍の欠陥が少ない、若しくは無いことである。それらを達成できるウェーハとして、エピタキシャルウェーハ、アニールウェーハ、無欠陥結晶PW(ポリッシュドウェーハ)などがある。一方で低コスト化の要求がある。エピタキシャルウェーハやアニールウェーハはPWに付加工程を加えるものであり、一般に高コストである。結晶成長中に欠陥を制御しながら育成した結晶を、ポリッシュした低欠陥/無欠陥PWは、比較的低コストで高品質化要求を満たすことが可能である。従ってGrown−in欠陥を低減した低欠陥結晶や、Grown−in欠陥を無くした無欠陥結晶の要求が強まっている。特許文献1,2に軸方位<100>の無欠陥結晶の製法が開示されて以来、無欠陥結晶の要求は増加し、このような<100>結晶を製造することは、現在CZ(チョクラルスキー)法によるシリコン単結晶の主流となっている。
一方で、ホール移動速度が速かったり、またGaN結晶用基板等に有用であったりと、結晶軸方位が<100>以外の<110>結晶や<111>結晶の需要も僅かに増えつつある。<100>以外のシリコン単結晶については、古くは特許文献3に、<211>軸方向を有する結晶から(311)面を主面として有するウェーハを切出す方法が記載され、特許文献4には<111>軸から傾斜させた結晶製法や、特許文献5には面内抵抗率が均一なN型<111>結晶などの技術が開示されてきた。また、<110>結晶においてはダッシュネック法(絞り法)により転位が抜けにくいため、特許文献6には<110>の無転位種付け方法、特許文献7には有転位化が判断しやすい<110>結晶製法、特許文献8など複数の特許では<110>結晶の絞りを無転位化させる技術が開示されており、現行主流である<100>結晶以外の軸方位を持つ結晶やその製法が多く開示されてきた。
無欠陥結晶育成の条件は一般にマージンが狭く、一般的な結晶軸方位である<100>でチューニングされた条件を、軸方位の異なる結晶に適用しても無欠陥にならない。このため<100>以外の軸方位の場合、無欠陥条件チューニングに時間とコストが莫大にかかり、少量オーダーには対応できない。移動度が速いデバイスの試作やGaN結晶用基板に用いるに際し、<100>以外の軸方位の無欠陥結晶は、上述したような困難があり費用対効果として過剰品質と考えられ、現実的な要求もないため、実際には製品として定常的に製造されてはいない。
もちろん、特許文献9などに<100>以外の無欠陥結晶は記載されているが、<100>と同条件で製造する方法であり、<100>以外の無欠陥結晶の製造において、その製造条件を<100>とは異なる製造条件にすることは記載も示唆もされておらず、実証されたものではない。
このように軸方位の異なる結晶で無欠陥が得られない原因は、現行の無欠陥結晶製法がVacancyとI−Siという点欠陥の過剰濃度を拮抗させ、それらが凝集して欠陥を形成しない濃度以下に制御する方法であることにある。ここで現行の無欠陥結晶の製法、つまりGrown−in欠陥が検出されない結晶の製法について詳しく述べておく。
Grown−in欠陥は、点欠陥が結晶成長中に凝集して形成された欠陥である。点欠陥には、格子点のSi原子が欠落したVacancy(空孔)と、格子間にSi原子が入り込んだInterstitial−Si(格子間Si)の2種類が存在する。このGrown−in欠陥の形成状態は、単結晶の成長速度やシリコン融液から引上げられた単結晶の冷却条件により違いが生じる。例えば成長速度を比較的大きく設定して単結晶を育成した場合には、Vacancyが優勢になることが知られている。このVacancyが凝集して集まったものはVoid欠陥と呼ばれ、検出のされ方によって呼称は異なるが、FPD(Flow Pattern Defect)、COP(Crystal Originated Particle)あるいはLSTD(Laser Scattering Tomography Defects)などとして検出される。これらの欠陥がシリコン基板上に形成される酸化膜に取り込まれると、酸化膜の耐圧不良の原因となると考えられている。
一方で、成長速度を比較的低速に設定して単結晶を育成した場合には、Interstitial−Si(以下I−Siと表記することがある)が優勢になることが知られている。このI−Siが凝集して集まると、転位ループなどがクラスタリングしたと考えられるLEP(Large Etch Pit=転位クラスタ欠陥)が検出される。この転位クラスタ欠陥が生じる領域にデバイスを形成すると、電流リークなど重大な不良を起こすと言われている。
そこで、Vacancyが優勢となる条件とI−Siが優勢となる条件との中間的な条件で結晶を育成すると、VacancyやI−Siが無い、もしくはVoid欠陥や転位クラスタ欠陥を形成しない程度の少量しか存在しない、無欠陥領域が得られる。このような無欠陥結晶の育成方法は特許文献1、2に開示されている。具体的には、結晶成長界面での温度勾配Gと結晶成長速度Vとの比(V/G)を制御することで無欠陥結晶が得られる。V/Gが大きければVacancy濃度が優勢となり、V/Gが小さいとI−Siが優勢になるので、Vacancy過剰量とI−Si過剰量が拮抗するV/Gに制御することで、点欠陥の過剰量を低減でき、Grown−in欠陥を成長させないようにしている。
この制御法では、Vacancy過剰量とI−Si過剰量とが完全に拮抗すれば、優勢な点欠陥がないので当然Grown−in欠陥は形成されない。しかしわずかにVacancyが優勢であってもそれがGrown−in欠陥を形成するのに十分な量でなければ、Grown−in欠陥は形成されない。このような領域をNv領域と呼んでいる。Nv領域ではGrown−in欠陥は形成されないが、Vacancyが残存しており酸素析出が起こりやすいことが知られている。一方でわずかにI−Siが優勢であってもそれがGrown−in欠陥を形成するのに十分な量でなければ、やはりGrown−in欠陥は形成されない。このような領域をNi領域と呼んでいる。Ni領域はNv領域とは異なりI−Siが残存しており、酸素析出が起こりにくい領域であることが知られている。
以上のように、現行の無欠陥結晶製法においては、I−SiとVacancyの過剰量を拮抗させる必要があり、このために結晶軸方向の点欠陥の拡散を制御する必要がある。欠陥形成領域を考える上で重要になるのは、点欠陥に濃度勾配が生じる成長方向の点欠陥の拡散係数である。もちろん結晶の外周部付近では、結晶の外周が点欠陥のシンク又はソースとして働くので、外周部付近においても点欠陥濃度勾配が生じるが、外周部付近を除けば面内方向の点欠陥の濃度勾配は生じないので考慮する必要がない。従って重要となるのは結晶成長軸方向への点欠陥拡散係数である。このようなことは特許文献10,11に記載されているし、このような点欠陥シミュレーションにおいて用いられているのは、一般的な結晶軸方位である<100>方向の点欠陥拡散係数である。
以上のように、<100>以外の軸方位の結晶製造において、無欠陥結晶を育成する際にも、<100>の無欠陥結晶製造条件をそのまま適用しており、結果的に無欠陥結晶を得ることができない、もしくは得るまでに何度も条件を修正する必要があった。特に、近年の200mm以上といった大直径結晶においては、<100>以外の無欠陥結晶を製造するのには全く対応が取れていなかった。
特開平08−330316号公報 特開平11−147786号公報 特公昭49−019940号公報 特開昭61−242983号公報 特開平11−186121号公報 WO2003−091483 特開2008−266068号公報 特表2015−514674号公報 特開2006−347853号公報 特開2015−036352号公報 特開2016−013957号公報
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、<100>以外の軸方位を有する無欠陥結晶を、容易に育成することが可能なシリコン単結晶育成方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は、チョクラルスキー法によってシリコン単結晶を育成する方法であって、<100>の軸方位を有する無欠陥結晶が製造可能な単結晶製造装置を用いて、<100>以外の軸方位<hkl>を有するシリコン単結晶を製造する際に、前記<100>の軸方位を有する無欠陥結晶を製造可能な条件のうち少なくとも一条件を、前記軸方位<hkl>の点欠陥拡散係数Dhklを用いて補正した条件を用いて、前記軸方位<hkl>を有するシリコン単結晶を無欠陥で育成することを特徴とするシリコン単結晶育成方法を提供する。
このようなシリコン単結晶育成方法であれば、何度もチューニングすることなく、容易に、<100>以外の軸方位を有する無欠陥結晶を得ることが可能である
またこのとき、前記<100>の軸方位を有する無欠陥結晶を製造可能な条件のうち少なくとも一条件を、<100>方向の点欠陥拡散係数をD100とした時、前記Dhklと前記D100との比であるDhkl/D100={(dshkl/ds100×(dnhkl/dn100)}±25%[式中、ds:面間隔、dn:原子面密度を示す]を用いて補正し、前記軸方位<hkl>を有するシリコン単結晶を無欠陥で育成することが好ましい。
このように求めたDhkl/D100を用いて、<100>の軸方位を有する無欠陥結晶を製造可能な条件のうち少なくとも一条件を補正することで、一層容易に<100>以外の軸方位を有する無欠陥結晶を得ることが可能となる。
また、前記補正を行う製造条件を結晶成長速度とし、前記<100>の軸方位を有する無欠陥結晶の成長速度がV100であるとき、前記軸方位<hkl>の結晶成長速度Vhklを、Vhkl=V100×{(Dhkl/D100)±25%}の範囲内の結晶成長速度とし、前記軸方位<hkl>を有するシリコン単結晶を無欠陥で育成することが好ましい。
このように、結晶成長速度を、誤差を考慮した点欠陥拡散係数の比(Dhkl/D100)±25%に、無欠陥結晶成長速度V100をかけた結晶成長速度の範囲内とすることで、一層容易に、<100>以外の軸方位を有する無欠陥結晶を得ることができる。
また、前記軸方位<hkl>の結晶成長速度Vhklを、前記<100>の軸方位を有する無欠陥結晶の成長速度がV100であるとき、V100×{(Dhkl/D100)±25%}の少なくとも一部の範囲を含む速度で漸減又は漸増することにより、<hkl>の軸方位を有する無欠陥結晶が育成可能な結晶成長速度を求め、前記軸方位<hkl>を有するシリコン単結晶を製造する際に、前記求めた結晶成長速度として前記軸方位<hkl>を有するシリコン単結晶を無欠陥で育成することが好ましい。
このように、V100×{(Dhkl/D100)±25%}の少なくとも一部の範囲を含む結晶成長速度の範囲で、結晶成長速度を漸減又は漸増することにより、何度もチューニングすることなく、短時間で<hkl>の無欠陥結晶が育成可能な結晶成長速度を求めることが可能となる。
また、前記軸方位<hkl>を<110>とし、該<110>の軸方位の点欠陥拡散係数をD110とした時、D110/D100=0.707であり、<110>の軸方位の結晶成長速度V110を、V110=V100×{(D110/D100)±25%}の範囲内として<110>の軸方位を有するシリコン単結晶を無欠陥で育成することが好ましい。
また、前記軸方位<hkl>を<111>とし、該<111>の軸方位の点欠陥拡散係数をD111とした時、D111/D100=0.770であり、<111>の軸方位の結晶成長速度V111を、V110=V100×{(D111/D100)±25%}の範囲内として<111>の軸方位を有するシリコン単結晶を無欠陥で育成することが好ましい。
このように、結晶成長速度V110、V111を上記範囲内とすることで、一層容易に軸方位が<110>又は<111>の無欠陥結晶を得ることが可能となる。
また、前記軸方位<hkl>を有するシリコン単結晶を無欠陥で育成する製造条件を、前記点欠陥拡散係数Dhklを用いた点欠陥シミュレーションを行って求めることが好ましい。
このように、点欠陥拡散係数Dhklを用いた点欠陥シミュレーションを行うことにより、より正確な無欠陥結晶育成条件を求めることが可能となる。
また本発明では、直径300mm以上であり、<100>以外の軸方位<hkl>を持つシリコン単結晶であって、該シリコン単結晶は、フッ酸、硝酸、酢酸及び水からなる選択性のあるエッチング液での選択エッチングにより、FPD及びLEPが検出されないものであることを特徴とするシリコン単結晶を提供する。
このようなシリコン単結晶は、実際に半導体デバイスを作製する際に、Grown−in欠陥起因の特性劣化や、Grown−in欠陥起因のパーティクル発生の可能性を低下させることができる。
また本発明では、直径300mm以上であり、(100)以外の面方位(hkl)を持つシリコン単結晶ウェーハであり、該単結晶ウェーハは、フッ酸、硝酸、酢酸及び水からなる選択性のあるエッチング液での選択エッチングにより、FPD及びLEPが検出されないものであることを特徴とするシリコン単結晶ウェーハを提供する。
このようなシリコン単結晶ウェーハは、半導体デバイスを作製する際にも、この結晶を基板としてGaNなどの結晶を成長させる際にも、あるいはその他の応用の場合においても、結晶欠陥による特性劣化を防止することができる。
本発明のシリコン単結晶育成方法であれば、容易に<100>以外の軸方位を有するシリコン単結晶を無欠陥で育成することが可能となる。また、本発明のシリコン単結晶及びシリコン単結晶ウェーハであれば、大口径でありながら、半導体デバイスを作製する際や、GaN等の結晶を成長させる際に、結晶欠陥による特性劣化を防止することが可能となる。
本発明で用いるシリコン単結晶製造装置を示す概略図である。
上述したように、従来のシリコン単結晶育成方法では、<100>以外の無欠陥結晶を育成するのに際し、<100>の無欠陥結晶製造条件をそのまま適用しており、結果的に無欠陥結晶を得ることができない、もしくは得るまでに何度も条件を修正する必要があった。特に、大口径ではほとんど無欠陥結晶を製造することができなかった。
本発明者らは、<100>以外の軸方位の結晶製造において無欠陥結晶を育成するためには、従来用いてきた拡散係数とは異なる目的の結晶軸方位方向への拡散係数を考慮して、結晶育成条件を補正すれば、例え大口径であったとしても、容易に<100>以外の軸方位を有するシリコン単結晶を無欠陥で育成することが可能であることを見出し、本発明に到達した。
シリコン単結晶育成方法
以下、本発明のシリコン単結晶育成方法について詳述する。
本発明は、チョクラルスキー法によってシリコン単結晶を育成する方法であって、<100>の軸方位を有する無欠陥結晶が製造可能な単結晶製造装置を用いて、<100>以外の軸方位<hkl>を有するシリコン単結晶を製造する際に、前記<100>の軸方位を有する無欠陥結晶を製造可能な条件のうち少なくとも一条件を、前記軸方位<hkl>の点欠陥拡散係数Dhklを用いて補正した条件を用いて、前記軸方位<hkl>を有するシリコン単結晶を無欠陥で育成することを特徴とするシリコン単結晶育成方法である。
尚、本発明において<100>の軸方位とは、<100>±0°のみを指しているのではない。切り出した際のヘイズを避けるために、数分〜数度ずらして結晶育成する場合もあり、これらも含めて一般的には<100>の軸方位を有する結晶と称している。即ち、<100>の軸方位とは、<100>±0°のみを指しているのではなく、数分〜数度程度のズレを含めた軸方位を全て含んでいる。
また、<100>以外の軸方位<hkl>も、上述したように<hkl>±0°のみを指しているのではなく、数分〜数度程度のズレを含めた軸方位を全て含んでいる。また<100>以外の軸方位<hkl>とは、<110>,<111>,<211>,<221>,<311>,<331>,<321>,<411>,<441>,<511>,<551>など、概ねh,k,lがそれぞれ5以下であり、<110>に対する<220>などのような等価な軸方位はこれに含まれる。
本発明においては、例えば図1に示すような単結晶製造装置であって、チョクラルスキー法によって<100>の軸方位を有する無欠陥結晶が部分的にでも製造可能な単結晶製造装置を用いる。このような単結晶製造装置について図1を参照して説明するが、本発明において用いることができる単結晶製造装置は、これに限定されない。
図1に示すシリコン単結晶製造装置の外観は、メインチャンバー1、これに連通するトップチャンバー11及びトップチャンバー11に連通する引上げチャンバー2で構成されている。メインチャンバー1の内部には、黒鉛ルツボ6及び石英ルツボ5が設置されている。黒鉛ルツボ6を囲むように加熱ヒーター7が設けられており、加熱ヒーター7によって、石英ルツボ5内に収容された原料シリコン多結晶が溶融されて原料融液4とされる。また、断熱部材8が設けられており、加熱ヒーター7からの輻射熱がメインチャンバー1等の金属製の器具に直接当たるのを防いでいる。
原料融液4の融液面上では熱遮蔽部材13が、融液面に所定間隔で対向配置され、原料融液面からの輻射熱を遮断している。このルツボ中に種結晶を浸漬した後、原料融液4から棒状の単結晶棒3が引き上げられる。ルツボは結晶成長軸方向に昇降可能であり、単結晶の成長が進行して減少した原料融液4の液面下降分を補うように、成長中にルツボを上昇させることにより、原料融液4の融液面の高さはおおよそ一定に保たれる。
さらに、単結晶育成時にパージガスとしてアルゴンガス等の不活性ガスが、ガス導入口10から導入され、引き上げ中の単結晶棒3とガスパージ筒12との間を通過した後、遮熱部材13と原料融液4の融液面との間を通過し、ガス流出口9から排出している。導入するガスの流量と、ポンプや弁によるガスの排出量を制御することにより、引上げ中のチャンバー内の圧力が制御される。
本発明は、このような単結晶製造装置を用いて<100>以外の軸方位<hkl>を有するシリコン単結晶を製造する際に、<100>の軸方位を有する無欠陥結晶(以下、<100>の無欠陥結晶ともいう)を製造可能な条件のうち少なくとも一条件を、軸方位<hkl>の点欠陥拡散係数Dhklを用いて補正することを特徴とする。
このような条件の補正を行うためには、上記のような単結晶製造装置において<100>の無欠陥結晶を製造可能な条件のうち少なくとも一条件が判っていればよく、製造条件の詳細全てが判っている必要はない。即ち、製造条件としては、例えば成長速度やその上下限値、融液面と熱遮蔽部材との距離やその上下限値、結晶成長炉内の圧力やその上下限値、不活性ガスの流量やその上下限値、ルツボ回転速度やその上下限値、結晶回転速度やその上下限値、磁場強度やその上下限値、成長結晶内温度勾配やその上下限値等々が挙げられるが、これらが全て判っていなくてもよい。その中でも、特に、無欠陥結晶が部分的にでも製造可能な成長速度が判っていることが好ましく、この場合、成長速度の上下限や、成長速度マージンなどの詳細までわかっている必要はない。
このようなシリコン単結晶育成方法であれば、何度もチューニングすることなく、容易に、<100>以外の軸方位を有する無欠陥結晶を得ることが可能である
ここで、<100>の無欠陥結晶を製造可能な条件のうち少なくとも一条件は、<100>方向の点欠陥拡散係数をD100とした時、DhklとD100との比であるDhkl/D100={(dshkl/ds100×(dnhkl/dn100)}±25%[式中、ds:面間隔、dn:原子面密度を示す]を用いて補正することが可能である。尚、点欠陥にはInterstitial SiとVacancyとがあるが、上記式はこれら両方又は一方に適用するこができる。
上記式の意味するところは、
{(dshkl/ds100×(dnhkl/dn100)}×0.75≦Dhkl/D100≦{(dshkl/ds100×(dnhkl/dn100)}×1.25である。
固体中の点欠陥の拡散は、点欠陥がジャンプしながら移動していくと考えられ、点欠陥拡散係数Dは、ジャンプする距離をs、平均ジャンプ間隔(時間)をτとすると、D=s/(6τ)と表される。ジャンプした先のサイト数をZ、そのいずれかへジャンプする頻度をνとすれば、D=s×Z×ν/6と書き表される。ここで<hkl>方向の拡散を考えると、拡散距離sは(hkl)面の面間隔dshkl、ジャンプ先のサイト数は(hkl)面の原子面密度dnhklに比例すると考えることができる。
従って<hkl>方向への拡散係数Dhkl∝dshkl ×dnhkl×νhklとなる。従って、拡散係数がすでにわかっている<100>方向の拡散係数との比を取れば、Dhkl/D100=(dshkl/ds100×(dnhkl/dn100)×(νhkl/ν100)となる。
ここで、<hkl>方向へのジャンプ頻度νhklは推定が難しく、本来実験等から求めるべきではあるが、本発明の目的は<hkl>方位の無欠陥製造条件を求めて無欠陥結晶を容易に育成することであるから、ここでは(νhkl/ν100)を±25%の誤差として与えている。
このように、<100>の無欠陥結晶を製造可能な条件のうち少なくとも一条件を、<100>方向の点欠陥拡散係数をD100とした時、DhklとD100との比であるDhkl/D100={(dshkl/ds100×(dnhkl/dn100)}±25%を用いて補正することで、一層容易に<100>以外の無欠陥結晶を得ることが可能となる。
例えば、先ずは誤差の無いDhkl/D100を推定し、Dhkl/D100=(dshkl/ds100×(dnhkl/dn100)を用いて求めた製造条件で単結晶を引き上げた後、引上げられた結晶の品質を元に、製造条件のファインチューニングを行なうことで、迅速に<hkl>方位の無欠陥結晶製造条件を見出すことが可能である。ここでの±25%の意味は、最終的なファインチューニング結果として、製造条件が(dshkl/ds100×(dnhkl/dn100)の±25%以内に入ることを予想したものである。ファインチューニングは、育成条件が既知である<100>結晶においても、HZ(ホットゾーン)などと呼ばれる結晶育成炉内部品の劣化などによる育成条件のズレを補正するために常に行われている作業であり、<hkl>方位の結晶においても必要なので、(νhkl/ν100)起因の誤差を含め、ここでは±25%と大きめの値をとっている。大きめに取っている理由は後述する。
補正を行う製造条件は、<100>の無欠陥結晶を製造可能な条件のうち少なくとも一条件であり、例えば、結晶成長速度、融液面と熱遮蔽部材との距離、結晶成長炉内の圧力、不活性ガスの流量、ルツボ回転速度、結晶回転速度、磁場強度等が挙げられる。
具体的には、補正を行う製造条件を結晶成長速度とし、<100>の軸方位を有する無欠陥結晶の成長速度がV100であるとき、軸方位<hkl>の結晶成長速度Vhklを、Vhkl=V100×{(Dhkl/D100)±25%}の範囲内の結晶成長速度とすることで、一層容易に、軸方位<hkl>を有するシリコン単結晶を無欠陥で育成することができる。
上記式の意味するところは、
100×{(Dhkl/D100)×0.75}≦Vhkl≦V100×{(Dhkl/D100)×1.25}である。
先に述べたように、I−SiとVacancyの過剰量を拮抗させるために結晶成長軸方向の点欠陥を制御する必要があり、結晶の外周部付近を除けば、結晶成長軸方向の点欠陥の濃度勾配を考慮することが重要である。結晶成長界面で導入された点欠陥は、結晶の冷却に伴い平衡濃度が低下するので過飽和状態になる。過飽和になった点欠陥は対消滅や坂道拡散によって過飽和度を低下させる。このときの点欠陥の対消滅や坂道拡散に大きく影響するのが軸方向の拡散係数である。
例えば、Grown−in欠陥シミュレーション等では、軸方向の点欠陥拡散係数を基に点欠陥過飽和→対消滅、坂道拡散→過飽和度低下を計算し、更に点欠陥の凝集を計算してGrown−in欠陥のサイズ分布等を計算する。これを基に無欠陥結晶の製造条件を求めることができる。ここで軸方向の点欠陥拡散係数が変化した場合を考慮すると、点欠陥の凝集過程に関しては軸方向でない成分も多少影響するが、大まかには軸方向の拡散係数が主成分であり、これが変化した分、同様に成長速度も変化させることにより、無欠陥領域が得られるはずである。
そこで、<100>の軸方位を有する無欠陥結晶の成長速度がV100であるとき、拡散係数の比(Dhkl/D100)±25%を掛けてやれば、大まかには<hkl>方向の無欠陥結晶が得られる結晶成長速度になる。この際、Dhkl/D100は、(dshkl/ds100×(dnhkl/dn100)から求められる値で推定することが可能である。
ここで、±25%は種々の誤差を大きめに見積もった値である。誤差要因のひとつは通常の軸方位<100>の無欠陥結晶においてもHZ等に起因するファインチューニングを日常的に行なっている誤差で数%程度と考えられる。もうひとつが先に述べた(νhkl/ν100)に起因する誤差と点欠陥凝集に関する軸方向成分以外の影響による誤差とであるが、これらは定数であり本来αといった値で書き表される。
そしてもう一つ大きいのは、結晶軸方位が異なることに起因する欠陥検出誤差である。欠陥検出法として簡便で広く用いられているのが選択エッチング法であるが、これにより検出される欠陥の形態が面方位によって異なる。これは、Grown−in欠陥が方向性を持った欠陥であるため、Grown−in欠陥と表面との交わった形状が、結晶軸方位によって異なることと、面方位によってエッチングの異方性があることとに起因する。これはもうひとつの一般的な欠陥検出法として用いられる研磨加工後のポリッシュドウェーハにおけるパーティクル測定でも、研磨する際に機械的な加工に加え化学的(エッチングによる)加工成分が含まれるので、同様のことが言える。現在、<100>以外の<110>や<111>、更にはその他の軸方位における欠陥評価は頻繁には行なわれていない。従って、正確な無欠陥結晶を得るためのエッチング条件・観察条件等が確立されているとはいえない。この検出による誤差が上述の±25%に含まれる値である。
以上述べたような誤差のうち、比較的大きいと思われる検出誤差は、<100>以外の軸方位の無欠陥結晶の検出法の検討と製造経験を重ねることにより低下するので、±25%でなく±10%でも良い可能性があるし、経験を積み重ねれば最終的には<100>と同程度の±5%あるいは±3%といったマージンを得ることができるようになる。検出法の検討としては、選択エッチング液のフッ酸・硝酸・酢酸比率を変えたり、クロムを加えたり、酸化銀を加えたりすることで、検出感度を上げることが可能である。
また、経験により先に述べた定数αも求められるので、HZの劣化等に起因する数%程度の誤差のみを含む補正係数αを掛けた値Vhkl=V100×(Dhkl/D100)×αという形で、より的確に表現できるはずであるが、現時点では経験が少ないため±25%という大きめの値を用いている。
上述してきたように、拡散係数の異方性を考慮して求めた製造条件に±25%の誤差を設けている。これは、製造経験が少ないことに起因して、現時点で必要な値ではあるが、実用面としては、±25%の範囲を含む成長速度の漸減又は漸増法として用いることができる。
例えば、軸方位<hkl>の結晶成長速度Vhklを、<100>の軸方位を有する無欠陥結晶の成長速度がV100であるとき、V100×{(Dhkl/D100)±25%}の少なくとも一部の範囲を含む速度で漸減又は漸増することにより、<hkl>の軸方位を有する無欠陥結晶が育成可能な結晶成長速度を迅速かつ正確に求めることができ、次に軸方位<hkl>を有するシリコン単結晶を製造する際に、求めた結晶成長速度とすることで、<hkl>の無欠陥結晶を精度良く効率的に製造することが可能となる。
上記式の意味するところは、
100×{(Dhkl/D100)×0.75}≦Vhkl≦V100×{(Dhkl/D100)×1.25}である。この範囲における少なくとも一部の範囲を含む成長速度において、漸減又は漸増法を適用することで、より迅速に<hkl>の軸方位を有する無欠陥結晶が育成可能な結晶成長速度を求めることができる。
成長速度の漸減又は漸増法とは、<100>の軸方位を有する単結晶を育成する場合であっても、新規装置で無欠陥の育成条件を定める際などに用いられる手法である。軸方位<hkl>のシリコン単結晶を育成する場合においても、漸減又は漸増する成長速度範囲をVhkl=V100×(Dhkl/D100)±25%とすることで、何度もチューニング作業をすることなく短時間で結晶軸方位<hkl>の無欠陥結晶成長速度を正確に求めることができる。更には、経験を重ねαを求めた後においては、Vhkl=V100×(Dhkl/D100)×αとして、より短時間で結晶軸方位<hkl>の無欠陥結晶成長速度を求めることができる。
本発明のシリコン単結晶育成方法としてより具体的な方法としては、軸方位<hkl>が軸方位<110>である場合、<110>の軸方位の点欠陥拡散係数をD110とした時、D110/D100=0.707と概算し、<110>の軸方位の結晶成長速度V110を、V110=V100×{(D110/D100)±25%}の範囲内として<110>の軸方位を有するシリコン単結晶を無欠陥で育成する方法が挙げられる。
110=V100×{(D110/D100)±25%}の意味するところは、
100×(D110/D100)×0.75≦V110≦V100×(D110/D100)×1.25である。
シリコン結晶は正方晶の結晶なので、面間隔dshklは、dshkl=a/√(h+k+l)[ここで、aは格子定数である]と計算される。従って、(110)面の面間隔と(100)面の面間隔との比ds110/ds100は1/√2である。また、シリコンはダイヤモンド構造を持つ結晶なので、(100)面の原子密度は2/a、(110)面の原子密度は4/(√2×a)であり、(110)面と(100)面との原子面密度の比dn110/dn100は√2である。
従って、<110>方向と<100>方向との拡散係数の比D110/D100は(1/√2)×√2=1/√2=0.707と概算される。この概算値には上述したような誤差が含まれている可能性があるので、この値の±25%である0.530〜0.884を結晶軸方位<100>の無欠陥結晶成長速度V100に掛けた成長速度V110を用いることにより、一層容易に、結晶軸方位<110>の無欠陥結晶を育成することができる。
上述したように、この範囲で成長速度を漸減又は漸増させることにより、何度もチューニング作業をすることなく短時間で結晶軸方位<110>の無欠陥結晶成長速度を求めることができる。更に、αを求めた後においては、V110=V100×(D110/D100)×αとしてより短時間で結晶軸方位<110>の無欠陥結晶成長速度を求めることができる。
また、軸方位<hkl>を<111>とした場合には、<111>の軸方位の点欠陥拡散係数をD111とした時、D111/D100=0.770と概算し、<111>の軸方位の結晶成長速度V111を、V111=V100×{(D111/D100)±25%}の範囲内として<111>の軸方位を有するシリコン単結晶を無欠陥で育成する方法が挙げられる。
111=V100×{(D111/D100)±25%}の意味するところは、
100×(D111/D100)×0.75≦V111≦V100×(D111/D100)×1.25である。
(111)面の面間隔ds111はa/√3であり、(111)面の面間隔と(100)面の面間隔との比ds111/ds100は1/√3である。(111)面の原子密度は4/(√3×a)である。ただし、非特許文献(Semiconductor Silicon Crystal Technology , Fumio Shimura著, Academic Press, Inc. 1989, ISBN 0−12−640045−8 P46−49 Table3.6)に記載されているように、(111)面はABCA・・・の繰返し構造になっているが、それらはサブ面aa’bb’cc’aa’・・・の繰返しであり、a’とb、b’とc、c’とaは近接しており、同一面に存在していると見ることができ、従って(111)面の原子面密度は4/(√3×a)×2であるとしている。
この値を基に、<111>方向と<100>方向との拡散係数の比D111/D100は(1/√3)×4/√3=4/3√3=0.770と概算される。この値の±25%である0.577〜0.962を結晶軸方位<100>の無欠陥結晶成長速度V100に掛けた成長速度V111を用いることによって、一層容易に、結晶軸方位<111>の無欠陥結晶を育成することができる。
上述したように、例えば、この範囲で成長速度を漸減又は漸増させることにより、何度もチューニング作業をすることなく短時間で結晶軸方位<111>の無欠陥結晶成長速度を求めることができる。更に、αを求めた後においては、V111=V100×(D111/D100)×αとしてより短時間で結晶軸方位<111>の無欠陥結晶成長速度を求めることができる。
また、軸方位<hkl>を有するシリコン単結晶を無欠陥で育成する製造条件を、点欠陥拡散係数Dhklを用いた点欠陥シミュレーションを行って求めれば、より正確な条件を求めることができる。
上述したように、本発明では、<hkl>方向の無欠陥結晶の製造条件をおおよそ予測し、製造する方法を提供したが、より正確な条件を求めるために、点欠陥シミュレーションを用いることが可能である。シミュレーションの方法は、例えば特許文献10,11があるが、これらに限られず、従来用いてきた手法をそのまま用いれば良い。即ち、拡散係数のみを上述の方法で補正して用いればよい。即ち、Dhkl/D100={(dshkl/ds100×(dnhkl/dn100)}±25%を用いて補正すればよい。
ここで、この式の意味するところは、上述したように、
{(dshkl/ds100×(dnhkl/dn100)}×0.75≦D_hkl/D_100≦{(dshkl/ds100×(dnhkl/dn100)}×1.25である。
拡散係数の幅は±25%の幅を持たせてあるが、αを求めた後においては、
hkl/D100=(dshkl/ds100×(dnhkl/dn100)×α
として用いることがより好ましい。
また、点欠陥にはInterstitial SiとVacancyとがあるが、これら両者にDhkl/D100={(dshkl/ds100×(dnhkl/dn100)}±25%を適用してもよいし、優勢な点欠陥にのみ適用しても良い。適用の仕方は用いている点欠陥シミュレーションの手法によって最適な方法を用いればよい。
<100>以外の軸方位の無欠陥結晶が定常的に製造されていないのは、無欠陥結晶育成の条件は一般にマージンが狭く、一般的な結晶軸方位である<100>でチューニングされた条件を、軸方位の異なる結晶に適用しても無欠陥にならないためである。このため異軸方位の無欠陥条件のチューニングに時間とコストが莫大にかかり、少量オーダーには対応できないためである。
上述した方法を用いることにより、<100>以外の軸方位<hkl>であっても、比較的容易に無欠陥結晶を得ることが可能である。比較的容易に育成された<hkl>を持つ無欠陥結晶は、少量オーダーにも対応できるため、需要と供給を満たす程度に製造コストを下げることができ、しかも結晶欠陥による種々の特性劣化を防止できるので、非常に貴重で重要であるといえる。
本発明のシリコン単結晶育成方法により育成された<100>以外の軸方位の無欠陥結晶は、その後スライス、エッチング、研磨加工等を施すことによりシリコン単結晶ウェーハとすることができる。
このような<100>以外の軸方位を持つ無欠陥ウェーハは、結晶欠陥による種々の特性劣化を防止できるので、汎用性があるウェーハとなる可能性が高い。特に、本発明は、<100>以外ほとんど無欠陥結晶の育成の実績がない大口径結晶の育成において、その効果は絶大である。
シリコン単結晶
本発明では、直径300mm以上であり、<100>以外の軸方位<hkl>を持つシリコン単結晶であって、該シリコン単結晶は、フッ酸、硝酸、酢酸及び水からなる選択性のあるエッチング液での選択エッチングにより、FPD及びLEPが検出されないものであることを特徴とするシリコン単結晶を提供する。
このような、FPD及びLEPが検出されない大口径の結晶は重要な製品である。先に述べたように、直径300mm以上の大口径の結晶製造においては、実際には、<100>以外の軸方位の無欠陥結晶は製品として製造されてはいない。しかし一方では、ホール移動速度が速かったり、またはGaN結晶用基板等として有用であったりするため、今後の需要が期待される。
従って、<100>以外の軸方位<hkl>を持ち、その結晶から切り出したサンプルをフッ酸、硝酸、酢酸、水からなる選択性のあるエッチング液で揺動せず選択エッチングを行った場合に、Vacancy起因で形成されるVoid欠陥がエッチングの際に流れ模様を伴って検出されるFPDや、I−Si起因で形成される転位クラスタが巨大なエッチピットとして検出されるLEPが検出されないシリコン単結晶は、実際に半導体デバイス作製に使用する際には、Grown−in欠陥起因の特性劣化や、Grown−in欠陥起因のパーティクル発生の可能性を低下させることができる。また、この結晶から切り出されたウェーハを基板としてGaNなどの結晶を成長させる場合には、Grown−in欠陥を起点とする格子不整合の発生の可能性を低下させ、あるいはその他の応用の場合においても、結晶欠陥による特性劣化を防止できるので、非常に貴重であり、重要である。
シリコン単結晶ウェーハ
更に本発明では、直径300mm以上であり、(100)以外の面方位(hkl)を持つシリコン単結晶ウェーハであり、該単結晶ウェーハは、フッ酸、硝酸、酢酸及び水からなる選択性のあるエッチング液での選択エッチングにより、FPD及びLEPが検出されないものであることを特徴とするシリコン単結晶ウェーハを提供する。
このような、大口径であり、(100)以外の面方位(hkl)を持ち、フッ酸、硝酸、酢酸、水からなる選択性のあるエッチング液で揺動せず選択エッチングを行った場合に、Vacancy起因で形成されるVoid欠陥がエッチングの際に流れ模様を伴って検出されるFPDや、I−Si起因で形成される転位クラスタが巨大なエッチピットとして検出されるLEPが検出されないシリコン単結晶ウェーハは、Grown−in欠陥及びそれに起因して検出されるパーティクルが少なく、半導体デバイスを作製する際にも、この結晶を基板としてGaNなどの結晶を成長させる場合にも、あるいはその他の応用の場合においても、結晶欠陥による特性劣化を防止できるので、非常に貴重であり、有用である。
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
図1に概略を示したシリコン単結晶製造装置を用いて、狙い直径206mmの<111>結晶を育成した。このシリコン単結晶製造装置及びシリコン単結晶製造装置内に用いられるHZと呼ばれる部品を用いて、磁場中心での磁場強度が4000Gの水平磁場を印加して<100>結晶を育成した場合、平均結晶成長速度0.71mm/minでほぼ全量無欠陥結晶を得ることが可能である。
結晶育成に用いる種結晶の軸方位を<111>とし、平均成長速度を0.55mm/minとしたこと以外は、<100>無欠陥結晶と同じ条件を用いて結晶を育成した。
平均成長速度0.55mm/minは、<100>無欠陥結晶を育成する際の平均成長速度(V100)0.71mm/minの約0.775倍であり、この値は、推定した拡散係数の比(D111/D100)から求めた0.770倍とほぼ一致する値である。
成長させた結晶を輪切りにして、丸状のサンプルを切り出した。このサンプルを平面研削した後、フッ酸、硝酸、酢酸からなる混酸でミラーエッチングした。次にフッ酸、硝酸、酢酸、水からなる選択性のあるエッチング液にサンプルを浸し、エッチング時間が30分になるまで揺動せず放置し、選択エッチングを行った。即ち、エッチング速度が比較的速い組成のものと、それに比較して相対的にフッ酸濃度が薄く、エッチング速度が遅いDash液に近いものとを用いて検査を行った。その後、サンプルを光学顕微鏡にて観察した。その結果、FPDもLEPも検出されず、無欠陥結晶が得られたことが判った。
(比較例1)
平均成長速度を0.71mm/minとしたことを除いて、実施例1と同じ条件で<111>結晶を育成した。この結晶から輪切りにしてサンプルを採取して、実施例1と同様に選択エッチング法で欠陥を評価した結果、<100>でのFPDとは見え方が異なるがVoid欠陥に起因すると思われる模様が検出された。
(実施例2)
実施例1と同じ条件で<110>結晶を育成した。ただし、<110>結晶ではダッシュネック法による無転位化が難しいので、特許文献6に開示されている無転位種付け法を用いた。
また、実施例1と異なり、成長速度を<100>での無欠陥結晶を得られる成長速度(V100)である0.71mm/minに、推定した拡散係数の比(D110/D100)から求めた0.707の±25%の範囲を含む0.71mm/minから0.3mm/minの範囲で徐々に低下させて(漸減させて)結晶を育成した。
この結晶の成長速度漸減部のうち平均成長速度が約0.52mm/minである部分を輪切りにして、サンプルを採取して、実施例1と同様の選択エッチング法で、欠陥を評価した。その結果、FPDもLEPも検出されなかった。平均成長速度0.52mm/minは、<100>無欠陥結晶を育成する際の平均成長速度0.71mm/minの約0.732倍であり、推定した拡散係数の比から求めた0.707+3.6%であり、十分±25%に入る値であった。
この求めた結晶成長速度を用いることで、<110>の軸方位を有するシリコン単結晶を無欠陥で育成することができた。
(比較例2)
平均成長速度を、実施例2で育成した結晶のうち成長速度の漸減を始める前の平均成長速度0.71mm/minとしたことを除いて、実施例2と同じ条件で<110>結晶を育成した。この結晶の輪切りのサンプルを採取して、実施例1と同様に選択エッチング法で、欠陥を評価した結果、<100>でのFPDとは見え方が異なるVoid欠陥に起因すると思われる模様が検出された。
(実施例3)
図1に概略を示したシリコン単結晶製造装置を用いて、狙い直径300mmの<111>結晶を育成した。このシリコン単結晶製造装置及びシリコン単結晶製造装置内に用いられるHZと呼ばれる部品を用いて、磁場中心での磁場強度が4000Gの水平磁場を印加して<100>結晶を育成した場合、平均結晶成長速度0.45mm/minでほぼ全量無欠陥結晶を得ることが可能である。
結晶育成に用いる種結晶の軸方位を<111>とし、平均成長速度を0.36mm/minとしたこと以外は、<100>無欠陥結晶と同じ条件を用いて結晶を育成した。
平均成長速度0.36mm/minは、<100>無欠陥結晶を育成する際の平均成長速度(V100)0.45mm/minの約0.80倍であり、この値は、推定した拡散係数の比(D111/D100)から求めた0.77倍とほぼ一致する値である。
成長させた結晶を輪切りにして、丸状のサンプルを切り出した。このサンプルに対して、実施例1と同様に選択エッチング法で欠陥を評価した結果、FPDもLEPも検出されず、無欠陥結晶が得られたことが判った。
(比較例3)
平均成長速度を0.45mm/minとしたことを除いて、実施例3と同じ条件で直径300mmの<111>結晶を育成した。この結晶から輪切りにしてサンプルを採取して、実施例1と同様に選択エッチング法で欠陥を評価した結果、<100>でのFPDとは見え方が異なるがVoid欠陥に起因すると思われる模様が検出された。
本発明のシリコン単結晶育成方法を用いることにより、<100>以外の軸方位の無欠陥結晶を、容易に育成することができた(実施例1、実施例2)。特に、300mmといった大口径の場合でも、無欠陥結晶を得ることができた。一方、製造条件の補正を行わなかった比較例1−3では、<100>以外の軸方位の無欠陥結晶を製造することができなかった。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
1…メインチャンバー、 2…引上げチャンバー、 3…単結晶棒、
4…原料融液、 5…石英ルツボ、 6…黒鉛ルツボ、
7…加熱ヒーター、 8…断熱部材、 9…ガス流出口、
10…ガス導入口、 11…トップチャンバー、 12…ガスパージ筒、
13…熱遮蔽部材。

Claims (9)

  1. チョクラルスキー法によってシリコン単結晶を育成する方法であって、
    <100>の軸方位を有する無欠陥結晶が製造可能な単結晶製造装置を用いて、<100>以外の軸方位<hkl>を有するシリコン単結晶を製造する際に、前記<100>の軸方位を有する無欠陥結晶を製造可能な条件のうち少なくとも一条件を、前記軸方位<hkl>の点欠陥拡散係数Dhklを用いて補正した条件を用いて、前記軸方位<hkl>を有するシリコン単結晶を無欠陥で育成することを特徴とするシリコン単結晶育成方法。
  2. 前記<100>の軸方位を有する無欠陥結晶を製造可能な条件のうち少なくとも一条件を、<100>方向の点欠陥拡散係数をD100とした時、前記Dhklと前記D100との比であるDhkl/D100={(dshkl/ds100×(dnhkl/dn100)}±25%[式中、ds:面間隔、dn:原子面密度を示す]を用いて補正し、前記軸方位<hkl>を有するシリコン単結晶を無欠陥で育成することを特徴とする請求項1に記載のシリコン単結晶育成方法。
  3. 前記補正を行う製造条件を結晶成長速度とし、前記<100>の軸方位を有する無欠陥結晶の成長速度がV100であるとき、前記軸方位<hkl>の結晶成長速度Vhklを、Vhkl=V100×{(Dhkl/D100)±25%}の範囲内の結晶成長速度とし、前記軸方位<hkl>を有するシリコン単結晶を無欠陥で育成することを特徴とする請求項2に記載のシリコン単結晶育成方法。
  4. 前記軸方位<hkl>の結晶成長速度Vhklを、前記<100>の軸方位を有する無欠陥結晶の成長速度がV100であるとき、V100×{(Dhkl/D100)±25%}の少なくとも一部の範囲を含む速度で漸減又は漸増することにより、<hkl>の軸方位を有する無欠陥結晶が育成可能な結晶成長速度を求め、前記軸方位<hkl>を有するシリコン単結晶を製造する際に、前記求めた結晶成長速度として前記軸方位<hkl>を有するシリコン単結晶を無欠陥で育成することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のシリコン単結晶育成方法。
  5. 前記軸方位<hkl>を<110>とし、該<110>の軸方位の点欠陥拡散係数をD110とした時、D110/D100=0.707であり、<110>の軸方位の結晶成長速度V110を、V110=V100×{(D110/D100)±25%}の範囲内として<110>の軸方位を有するシリコン単結晶を無欠陥で育成することを特徴とする請求項3又は請求項4に記載のシリコン単結晶育成方法。
  6. 前記軸方位<hkl>を<111>とし、該<111>の軸方位の点欠陥拡散係数をD111とした時、D111/D100=0.770であり、<111>の軸方位の結晶成長速度V111を、V111=V100×{(D111/D100)±25%}の範囲内として<111>の軸方位を有するシリコン単結晶を無欠陥で育成することを特徴とする請求項3又は請求項4に記載のシリコン単結晶育成方法。
  7. 前記軸方位<hkl>を有するシリコン単結晶を無欠陥で育成する製造条件を、前記点欠陥拡散係数Dhklを用いた点欠陥シミュレーションを行って求めることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のシリコン単結晶育成方法。
  8. 直径300mm以上であり、<100>以外の軸方位<hkl>を持つシリコン単結晶であって、該シリコン単結晶は、フッ酸、硝酸、酢酸及び水からなる選択性のあるエッチング液での選択エッチングにより、FPD及びLEPが検出されないものであることを特徴とするシリコン単結晶。
  9. 直径300mm以上であり、(100)以外の面方位(hkl)を持つシリコン単結晶ウェーハであり、該単結晶ウェーハは、フッ酸、硝酸、酢酸及び水からなる選択性のあるエッチング液での選択エッチングにより、FPD及びLEPが検出されないものであることを特徴とするものであることを特徴とするシリコン単結晶ウェーハ。
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