以下、添付図面を参照して、本発明に従う固体酸化物形燃料電池システムの各種の実施形態について説明する。
〔第1の実施形態〕
まず、図1及び図2を参照して、固体酸化物形燃料電池システムの第1の実施形態について説明する。図1において、図示の固体酸化物形燃料電池システム2は、燃料ガス(例えば、都市ガス、LPガスなど)を消費して発電を行うものであり、燃料ガスを改質するための改質器4と、改質器4にて改質された燃料ガス及び酸化材としての空気の酸化及び還元によって発電を行う固体酸化物形の燃料電池セルスタック6と、を備えている。
燃料電池セルスタック6は、燃料電池反応によって発電を行うための複数の固体酸化物形の燃料電池セルを集電部材を介して積層して構成されており、図示していないが、酸素イオンを伝導する固体電解質と、この固体電解質の一方側に設けられた燃料極と、固体電解質の他方側に設けられた空気極(酸素極)とを備え、固体電解質として例えばイットリアをドープしたジルコニアが用いられる。
燃料電池セルスタック6の燃料極の導入側は、改質燃料ガス送給流路8を介して改質器4に接続され、この改質器4は、ガス・水蒸気送給流路10を介して気化器12に接続されている。気化器12は、燃料ガス供給流路14を介して燃料ガスを供給するための燃料ガス供給源16(例えば、埋設管や貯蔵タンクなど)に接続され、燃料ガス供給源16及び燃料ガス供給流路14が、燃料ガスを供給するための燃料ガス供給手段を構成する。また、この気化器12は、水供給流路18を介して改質水タンク20に接続され、水供給流路18及び改質水タンク20が、改質水を供給するための水供給手段を構成する。
改質器4には改質触媒が収容され、改質触媒として例えばアルミナにルテニウムを担持させたものが用いられ、この改質触媒によって燃料ガス供給流路14を通して供給される燃料ガスが水蒸気改質される。尚、この実施形態では、改質器4と気化器12とを別体に構成しているが、これらを一体的に構成するようにしてもよい。また、この実施形態では、燃料ガス供給手段からの燃料ガスを気化器12に送給しているが、この気化器12に代えて、改質器4に直接的に送給するようにしてもよい。
燃料ガス供給流路14には、脱硫器22、バッファタンク24、昇圧ポンプ26、ガス流量センサ28、ガス圧力センサ30及び遮断弁31が配設されている。脱硫器22は、燃料ガスに含まれる硫黄成分(付臭剤中の硫黄成分)を除去し、バッファタンク24では、燃料ガス供給流路14を流れる燃料ガスの圧力の変動が緩和され、またその流量の制御が安定化される。昇圧ポンプ26は、燃料ガス供給流路14を流れる燃料ガスを昇圧し、燃料ガス供給源16からの燃料ガスを気化器12に送給する。また、ガス流量センサ28は、燃料ガス供給流路14を通して送給される燃料ガスの流量を測定し、ガス圧力センサ30は、燃料ガス供給流路14を流れる燃料ガスの圧力を計測し、遮断弁31は、閉状態になると燃料ガス供給流路14を遮断して燃料ガスの供給を停止する。更に、水供給流路18には水ポンプ32が配設され、この水ポンプ32の作用によって、改質水タンク20内の水(回収水)が水供給流路18を通して気化器12に供給される。
この燃料電池セルスタック6の空気極の導入側は、空気供給流路34を介して送風手段36に接続され、この空気供給流路34に空気流量センサ38が配設されている。送風手段36は、例えば送風ブロアから構成され、この送風手段36の作用によって空気(酸化材)が空気供給流路34を通して燃料電池セルスタック6の空気極側に供給され、空気流量センサ38は、空気供給流路34を流れる空気の流量を計測する。尚、この空気供給流路34及び送風手段36は、発電用の空気を供給するための空気供給手段を構成する。
燃料電池セルスタック6の燃料極及び空気極の排出側には燃焼域40が設けられ、燃料電池セルスタック6の燃料極側から排出される反応燃料ガス(余剰の燃料ガスを含んでいる)と空気極側から排出される空気(酸素を含んでいる)とがこの燃焼域40にて燃焼され、この燃料ガスの燃焼熱を利用して気化器12及び改質器4が加熱される。燃焼排気ガスはこの排気ガス排出流路42を通して大気に排出される。尚、この燃焼排気ガスを利用して、空気供給流路34を通して燃料電池セルスタック6の空気極側に供給される空気を加温するようにしてもよい。
この実施形態では、燃焼排気ガスの熱が温水として貯えられるように貯湯装置44が設けられているとともに、燃焼排気ガスに含まれる水分を回収して改質水と利用するように凝縮水回収手段46が設けられている。更に説明すると、排気ガス排出流路40には排熱回収用の熱交換器48が配設され、この熱交換器48に関連して貯湯装置44及び凝縮水回収手段46が設けられている。
図示の貯湯装置44は、温水を貯める貯湯タンク50と、貯湯タンク50の貯湯水(温度が低いと水であるが、温度が高くなると温水となる)を熱交換器48を通して循環させるための循環流路52とを備え、この循環流路52には、貯湯タンク50内の貯湯水を循環流路52を通して循環させる循環ポンプ54が配設されている。この貯湯装置4に関連する構成については、後述する。
また、図示の凝縮水回収手段46は、熱交換器48から改質水タンク20に延びる凝縮水回収流路56を備え、この凝縮水回収流路56に水精製器58が配設されている。このように構成されているので、熱交換器48による熱交換により燃焼排気ガスが冷やされ、これによって、燃焼排気ガスに含まれた水分が凝縮されて回収され、回収された凝縮水は水精製器58により純水に精製された後に改質水タンク20に貯えられる。
次に、貯湯装置44及びそれに関連する構成について説明すると、貯湯装置44の循環ポンプ54は循環流路52の上流側部60に配設され、この上流側部60の一端側が貯湯タンク50の底部に接続され、その他端側が熱交換器48の流入側に接続されている。また、循環流路50の下流側部62の一端側は熱交換器48の流出側に接続され、その他端側が貯湯タンク50の上部に接続されている。
この循環流路52の下流側部62には、更に、貯湯タンク50に送給する貯湯水(熱交換器48にて加温された温水)を加熱するための加熱ヒータ64が配設され、この加熱ヒータ64は、後述するように、燃料電池セルスタック6の発電出力電力のうちの発電余剰電力(発電出力電力から電力負荷などで消費される発電消費電力を除いた後の余剰の電力)を用いて作動される。
この循環流路52の下流側部62には、更に、第1温度センサ66(第1温度検知手段を構成する)及び第2温度センサ68(第2温度検知手段を構成する)が設けられている。第1温度センサ66は、この下流側部62における熱交換器48に接続された部位と加熱ヒータ64の配設部位との間に配設され、熱交換器48から流出して流れる貯湯水(熱交換器48にて加温された温水)の温度を検知する。また、第2温度センサ68は、この下流側部62における加熱ヒータ64の配設部位と貯湯タンク50に接続された部位との間に配設され、加熱ヒータ64にて加熱された後の貯湯水(換言すると、貯湯タンク50に貯湯される温水)の温度を検知する。
この貯湯装置50では、更に、貯湯タンク50の底部には水流入流路70が接続され、この水流入流路70は、水道管などの水供給源72に接続され、水供給源72からの水が水流入流路70を通して貯湯タンク50に補給される。また、貯湯タンク50の上部には出湯流路74が接続され、貯湯タンク50内に貯えられた温水(貯湯水)が出湯流路74を通して出湯される。
この固体酸化物形燃料電池システム2は、図2に示す制御系によって制御される。図2において、固体酸化物形燃料電池システム2は、システム全体を作動制御するためのコントローラ78を備え、第1及び第2温度センサ66,68からの検知信号はこのコントローラ78に送給される。
図示のコントローラ78は、第1温度比較手段80、第2温度比較手段82、制御手段84及びメモリ手段86を備え、この制御手段84は、ヒータ制御手段88及びポンプ制御手段90を含んでいる。メモリ手段86には、熱交換器48の流出側の貯湯水(温水)の目標温度としての第1目標温度(例えば、65℃前後に設定される)及び貯湯タンク50に貯湯される貯湯水(温水)の目標温度としての第2目標温度(例えば、75℃前後に設定される)が登録されている。第1温度比較手段80は、メモリ手段86に登録された第1目標温度と第1温度センサ66の検知温度とを比較し、ポンプ制御手段90は、第1温度比較手段80の比較結果に基づいて循環ポンプ54を後述するごとく作動制御する。また、第2温度比較手段82は、メモリ手段86に登録された第2目標温度と第2温度センサ68の検知温度とを比較し、ヒータ制御手段88は、第2温度比較手段82の比較結果に基づいて加熱ヒータ64を後述する如く作動制御し、加熱ヒータ64のこの制御に関連して、制御手段84は、昇圧ポンプ26、水ポンプ32及び送風手段36を制御して燃料電池セルスタック6の発電出力を制御する。
次に、この固体酸化物形燃料電池システム2の発電運転について説明する。発電運転のときには、燃料ガス供給源16からの燃料ガスは、昇圧ポンプ26の作用によって燃料ガス供給流路14を通して流れ、脱硫器22にて脱硫された後に気化器12に送給される。また、気化器12には、水ポンプ32の作用によって改質水タンク20からの水(純水)が水供給流路18を通して供給され、気化器12にて気化されて水蒸気となり、発生した水蒸気及び燃料ガスがガス・水蒸気送給流路10を通して改質器4に送給される。
改質器4においては、ガス・水蒸気送給流路10を通して送給された水蒸気により燃料ガスが水蒸気改質され、水蒸気改質された改質燃料ガスが改質燃料ガス送給流路8を通して燃料電池セルスタック6の燃料極側に送給される。また、燃料電池セルスタック6の空気極側には、送風手段36からの空気が空気供給流路32を通して送給される。
燃料電池セルスタック6においては、燃料極側を流れる改質燃料ガス及び空気極側を流れる空気(空気中の酸素)の酸化及び還元によって発電が行われ、発電により得られた直流電力は、インバータ(図示せず)により交流電力に変換された後に、電力負荷(図示せず)に送給される。
燃料電池セルスタック6の燃料極側から燃焼域40に反応燃料ガス(余剰の燃料ガスを含んでいる)が排出されるともに、その空気極側から燃焼域40に空気(酸素を含んでいる)が排出され、この燃焼域40にて反応燃料ガスが燃焼され、燃焼域40からの燃焼排気ガスが排気ガス排出流路42を通して大気に排出される。
燃焼排気ガスが熱交換器48を流れる際に、貯湯装置44の循環流路52を流れる貯湯水との間で熱交換が行われる。また、熱交換器46における熱交換により燃焼排気ガスに含まれる水分が凝縮され、この凝縮水が凝縮水回収流路56を通り、水精製器58により精製された後に改質水タンク20に貯まる。
この発電運転中においては、ポンプ制御手段90は循環ポンプ54を作動制御し、貯湯タンク50の底部の貯湯水は、循環流路50の上流側部60を通して熱交換器48に流れ、この熱交換器48を通して流れる間に燃焼排気ガス排出流路42を通して流れる燃焼排気ガスとの間の熱交換により加温される。そして、この加温された貯湯水(温水)は、循環流路50の下流側部62を通して流れ、加熱ヒータ64で加熱された後に貯湯タンク50の上部に送給され、この上部側から底部側に層状に貯まる。
循環流路52を通しての貯湯水の循環時においては、ポンプ制御手段は90は、熱交換器48から流出して流れる貯湯水(温水)の温度が第1目標温度(例えば、65℃)となるように循環ポンプ54を作動制御する。即ち、第1温度比較手段80は、第1温度センサ66の検知温度と第1目標温度とを比較し、ポンプ制御手段90は、検知温度が第1目標温度より低いときには循環ポンプ54の回転数を下げ(これにより、貯湯水の流速が下がり、熱交換器48を通して流れる時間が長くなって貯湯水の温度が上昇する)、またこの検知温度が第1目標温度より高いときには循環ポンプ54の回転数を上げ(これにより、貯湯水の流速が上がり、熱交換器48を通して流れる時間が短くなって貯湯水の温度が下がる)、このようにして熱交換器48から循環流路50の下流側部62を流れる貯湯水の温度が第1目標温度(例えば、65℃)に維持される。
また、この貯湯水の循環時においては、ヒータ制御手段88は、貯湯タンク50に貯まる貯湯水(温水)の温度が第2目標温度(例えば、75℃)となるように加熱ヒータ64を作動制御する。即ち、第2温度比較手段82は、第2温度センサ68の検知温度と第2目標温度とを比較し、ヒータ制御手段88は、検知温度が第2目標温度より低いときには加熱ヒータ44に供給するヒータ電力(即ち、ヒータ電流)を増やし(これにより、加熱ヒータ64の発熱量が増えて貯湯水の温度が上昇する)、またこの検知温度が第2目標温度より高いときには加熱ヒータ44に供給するヒータ電力(ヒータ電流)を減らし(これにより、加熱ヒータ64の発熱量が少なくなって貯湯水の温度が低下する)、このようにして循環流路50の下流側部62を通して貯湯タンク50に送給される貯湯水の温度が第2目標温度(例えば、75℃)に維持される。
尚、加熱ヒータ64へのヒータ電力が増えたときには、燃料電池セルスタック6の発電出力を増大させる(即ち、燃料ガスの供給量を増やす)ように制御し、このヒータ電力が減ったときには、燃料電池セルスタック6の発電出力を減少させる(即ち、燃料ガスの供給量を減らす)ように制御するのが望ましい。
この固体酸化物形燃料電池システム2においては、加熱ヒータ64に供給される駆動電力として燃料電池設スタック6の発電出力電力のうち発電余剰電力を用いているので、次の通りの特徴がある。図3をも参照して、上述した加熱ヒータ64を備えていない例えば定格700Wの固体酸化物形燃料電池システム(即ち、従来の固体酸化物形燃料電池システム)の燃料電池セルスタック6の送電端AC効率は、燃料電池セルスタック6のAC発電出力(直流の発電出力をインバータにより交流電力に変換した後の出力)が変動すると一点鎖線Aで示すように変化し、AC発電出力が例えば700Wのときには約48%前後であるが、AC発電出力が例えば200Wまで下がると約26%前後まで低下する。このときの総合効率(貯湯タンク50での蓄熱を含めた総合的な効率)は二点鎖線Bで示すように変化し、例えばAC発電出力が例えば700Wのときには約86%前後であるが、このAC発電電力が例えば200Wまで下がると約68%まで低下し、AC発電出力が低下するほど送電端AC効率及び総合効率も低下する。そして、燃料電池セルスタック6の発電出力(換言すると、AC発電出力)のある程度低い稼働範囲(例えば、発電出力が例えば500Wより低い稼働範囲)においては固体酸化物形燃料電池システムの総合効率も低くなり、例えば200Wより下がるとこの総合効率も大きく低下する。
このようなことから、燃料電池セルスタック6の発電出力のある程度低い稼働範囲(例えば、500W以下の範囲)においては、従来のように運転する(加熱ヒータ64を設けることなく電力負荷に追従させて運転する)のではなく、上述した実施形態のように構成することによって、固体酸化物形燃料電池システム2の総合効率を高めることができる。即ち、燃料電池セルスタック6の発電出力がある程度低い稼働範囲においては、電力負荷に追従する発電出力(例えば、300w)に対して、例えば100〜200W程度増やした電力を発電し、このように発電出力を増加させることによって、燃料電池セルスタック6から出力される発電効率を高める。そして、このように稼働運転したことにより生じる発電余剰電力(発電出力電力から電力負荷で消費される発電消費電力を除いた余剰の電力)を加熱ヒータ64で消費することによって、発電余剰電力を熱として蓄熱する、即ち高い温度の温水でもって貯湯タンク50で貯えることによって、燃料電池セルスタック6から出力される電力からヒータへの消費電力が差し引かれて送電端に供給される実効発電効率は、AC発電出力の変動に伴い図3に破線Cで示すように変化し、加熱ヒータ64を備えていない燃料電池システムの送電端AC効率(一点鎖線Aで示す効率)よりも低くなるが、固体酸化物形燃料電池システム2の総合効率は、AC発電出力の変動に伴い図3に実線Dで示すように変化し、加熱ヒータ64を備えていない燃料電池システムの総合効率(二点鎖線Bで示す効率)よりも高くなる。
従って、燃料電池セルスタック6の発電出力電力がある程度低い範囲(例えば、400〜500W以下の範囲)においては、発電出力電力を100〜200W上昇させ、発電出力電力を上昇させたことにより生じる発電余剰電力を加熱ヒータ64で消費し、温水でもって貯湯タンク50で熱として蓄熱することによって、固体酸化物形燃料電池システム2の総合効率を高めることができ、またこの発電余剰電力をより高い温度(第2目標温度)の温水として貯えるので、蓄熱不足の発生を抑えることができる。
尚、上述した形態では、燃料電池セルスタック6の発電出力電力がある程度低い範囲においては、発電出力電力を100〜200W上昇させているが、このような構成に代えて、例えば発電出力電力が例えば400W以下の範囲では、この発電出力電力を400Wとなるように発電運転し、この発電運転において生じる発電余剰電力を加熱ヒータ64で消費し、温水として貯湯タンク50に蓄熱するようにしてもよい。
〔第2の実施形態〕
次に、図4を参照して、本発明に従う固体酸化物形燃料電池システムの第2の実施形態について説明する。この第2の実施形態においては、その制御系に修正が施されている。尚、以下の実施形態において、上述の第1の実施形態と実質上同一のものには同一の参照番号を付し、その説明を省略する。
固体酸化物形燃料電池システムの制御系を示す図4において、この第2の実施形態では、温度センサ66A(第1の実施形態における第1温度センサ66に相当する)は、貯湯装置の循環流路の下流側部に配設され、熱交換器から流出して流れる貯湯水(温水)の温度を検知する。一方、貯湯タンクに送給される貯湯水(温水)の温度を検知する温度センサ(第1の実施形態における第2温度センサ68に相当する)は省略され、貯湯水の温度を直接的に検知して加熱ヒータ64を作動制御することに代えて、貯湯水の流量を検知し、この貯湯水の流量と、第1目標温度(例えば、65℃)と第2目標温度(例えば、75℃)との温度差とに基づいて加熱ヒータ64に供給するヒータ電力(ヒータ電流)を演算するようにしている。
更に説明すると、循環流路(例えば、その上流側部)に貯湯水流量センサ92(貯湯水流量検知手段を構成する)が配設され、この貯湯水流量センサ92は、循環流路を流れる貯湯水の流量を検知し、この検知信号はコントローラ78Aに送給される。また、コントローラ78Aは、第1温度比較手段80に加えて、貯湯水流量演算手段94、加熱量演算手段96及びヒータ電力演算手段98を備えている。
貯湯水流量演算手段94は、貯湯水流量センサ92からの検知信号に基づいて貯湯水の流量を演算し、加熱量演算手段96は、循環流路を流れる貯湯水を第1目標温度から第2目標温度まで上昇させるに必要な熱量を演算し、またヒータ電力演算手段98は、加熱量演算手段96により演算された熱量を得るのに必要なヒータ電力を演算する。この第2の実施形態の固体酸化物形燃料電池システムのその他の構成は、上述した第1の実施形態と実質上同一である。
この第2の実施形態においては、ポンプ制御手段は90は、上述の第1の実施形態と同様に、熱交換器から流出して流れる貯湯水(温水)の温度が第1目標温度(例えば、65℃)となるように循環ポンプを作動制御する。即ち、第1温度比較手段80は、温度センサ66Aの検知温度と第1目標温度とを比較し、ポンプ制御手段90は、検知温度が第1目標温度より低いときには循環ポンプ54の回転数を下げ、またこの検知温度が第1目標温度より高いときには循環ポンプ54の回転数を上げ、このようにして熱交換器から循環流路の下流側部を流れる貯湯水の温度が第1目標温度(例えば、65℃)に維持される。
また、この貯湯水の循環時においては、ヒータ制御手段88Aは、貯湯タンクに貯まる貯湯水(温水)の温度が第2目標温度(例えば、75℃)となるように加熱ヒータ64を作動制御する。即ち、貯湯水演算手段94は、貯湯水流量センサ92の検知信号に基づいて循環流路を流れる貯湯水の流量を演算し、加熱量演算手段96は、循環流路を流れる貯湯水を第2目標温度まで上昇する、この実施形態では第1目標温度から10℃上昇させるのに必要な熱量を演算し、ヒータ電力演算手段98は、この演算した熱量を上昇させるに必要なヒータ電力(ヒータ電流)を演算し、ヒータ制御手段84Aは、この演算したヒータ電力を加熱ヒータ64に供給する。従って、循環流路の下流側部を流れる貯湯水(温水)は、このヒータ電力により制御される加熱ヒータ64によって加熱され、これによって、貯湯タンクに送給される貯湯水の温度が第2目標温度(例えば、75℃)に維持され、第1の実施形態と同様の作用効果を達成することができる。
尚、この実施形態においても、加熱ヒータ64へのヒータ電力が増えたときには、燃料電池セルスタックの発電出力を増大させるように制御し、このヒータ電力が減ったときには、燃料電池セルスタックの発電出力を減少させるように制御するのが望ましい。
この実施形態では、循環流路に貯湯水流量センサ92を配設し、その検知信号に基づいて貯湯水の流量を検知しているが、このような構成に限定されず、循環流路に配設された循環ポンプの回転数に基づいて貯湯水の流量を演算するようにしてもよい。
〔第3の実施形態〕
次に、図5を参照して、本発明に従う固体酸化物形燃料電池システムの第3の実施形態について説明する。この第3の実施形態においても、その制御系に修正が施されている。
固体酸化物形燃料電池システムの制御系を示す図5において、この第3の実施形態では、温度センサ68B(第1の実施形態における第2温度センサ68に相当する)は、貯湯装置の循環流路の下流側部に配設され、加熱ヒータ64により加熱された後に貯湯タンクに流れる貯湯水(温水)の温度を検知する。また、この加熱ヒータ64には、燃料ガス供給手段から供給される燃料ガスの供給流量に対応するヒータ電力が供給され、この燃料ガスの供給流量を検知するのに、燃料ガス供給流路に配設されたガス流量センサ28(燃料ガス流量検知手段を構成する)が利用される。そして、ポンプ制御手段90Bは、温度センサ68Bの検知温度が目標温度(第1の実施形態における第2目標温度に相当する)となるように循環ポンプ54を作動制御する。
このことに関連して、コントローラ78Bは、第2温度比較手段82に加えて、燃料ガス流量演算手段102及びヒータ電力演算手段98Bを備え、上述の第1の実施形態における第1温度センサ86及び第1温度比較手段86は省略されている。燃料ガス流量演算手段102は、ガス流量センサ28からの検知信号に基づいて燃料ガス供給流路を流れる燃料ガスの供給流量を演算し、ヒータ電力演算手段98Bは、この燃料ガスの供給流量に対応したヒータ電力を演算する。
固体酸化物形燃料電池システムでは、燃料電池セルスタックの発電出力の変動に応じて、燃料電池セルスタックから排出されて燃焼排気ガス排出流路を流れる燃焼排気ガスの熱量(即ち、熱交換器を流れる燃焼排気ガスの熱量)も変動し、この発電出力と燃焼排気ガスの熱量とは概ね比例関係にあり、このようなことから燃料ガスの供給流量に基づいてヒータ電力を演算する。例えば、燃料ガスの供給流量とヒータ電力との関係をマップ形式で表し、このマップ(図示せず)を用いてヒータ電力を演算することができ、この場合、このマップはメモリ手段86Bに登録される。この第3の実施形態の固体酸化物形燃料電池システムのその他の構成は、上述した第1の実施形態と実質上同一である。
この第3の実施形態においては、熱交換器では、燃焼排気ガス排出流路を流れる燃焼排気ガスと循環流路を流れる貯湯水との間で熱交換が行われ、熱交換により加温された貯湯水が循環流路の下流側部を流れる。このとき、燃料電池セルスタックの発電出力が大きい(又は小さい)と、燃焼排気ガス排出流路を流れる燃焼排気ガスの熱量も大きく(又は小さく)なり、またこの燃焼排気ガスの熱量が大きい(又は小さい)と加熱ヒータ64に供給されるヒータ電力も大きく(又は小さく)なり、従って、循環流路を通して流れる貯湯水の流量も多く(又は少なく)なる。このようなことから、貯湯水は、熱交換器における熱交換によって第1目標温度(例えば、65℃)に近い温度に加温される。
このように加温された貯湯水(温水)は、加熱ヒータ64にて更に加熱される。即ち、ヒータ制御手段88Bは、ガス流量センサ28の検知流量に対応するヒータ電力でもって貯湯水を加熱し、またポンプ制御手段90Bは、温度センサ68Bの検知温度が目標温度(例えば、75℃)となるように循環ポンプ54を作動制御するので、循環流路の下流側部を流れる貯湯水(温水)(換言すると、貯湯タンクに流れる貯湯水)は、この加熱ヒータ64によって、目標温度(例えば、75℃)となるように加熱され、かくして、第1の実施形態と略同様の作用効果を達成することができる。
この第3の実施形態では、燃料ガス供給流路に配設されたガス流量センサ28の検知信号(即ち、燃料ガスの供給流量)に基づいて加熱ヒータ64に供給するヒータ電力を演算しているが、ガス流量センサ28に代えて、昇圧ポンプ26の回転数に基づいて燃料ガスの供給流量を演算し、演算した燃料ガスの供給流量に基づいてヒータ電力を演算するようにしてもよい。或いは、燃料電池セルスタックの発電出力側に設けられた発電出力センサ(図示せず)(発電出力検知手段を構成する)の検知電力に基づいてヒータ電力を演算するようにしてもよい。
〔第4の実施形態〕
次に、図6〜図8を参照して、固体酸化物形燃料電池システムの第4の実施形態について説明する。この第4の実施形態では、固体酸化物形燃料電池システムが、貯湯タンクの蓄熱状態に応じて、加熱ヒータを作動させないで貯湯を行う第1蓄熱運転モードと加熱ヒータを作動させて貯湯を行う第2蓄熱運転モードとに切り換えて稼働運転されるように構成されている。
図6及び図7において、この第4の実施形態では、貯湯タンク50の蓄熱状態、例えば満蓄熱に対する蓄熱の比率)を検知するために、蓄熱温度検知手段112及び流入水温度センサ114(流入水温度検知手段を構成する)が設けられている。蓄熱温度検知手段112は、貯湯タンク50内に(又はその外表面に)上下方向に実質上等間隔をおいて配設された5つの蓄熱温度センサ、即ち第1、第2、第3、第4及び第5蓄熱温度センサ116,118,120,122,124から構成され、例えば、第1蓄熱温度センサ116は貯湯タンク50の上端部に、第5蓄熱温度センサ124は貯湯タンク50の底部に、第3蓄熱温度センサ120は、第1及び第5蓄熱温度センサ116,124の中間に、また第2蓄熱温度センサ118は、第1及び第3蓄熱温度センサ116,120の中間に、更に第4蓄熱温度センサ122は、第3及び第5蓄熱温度センサ120,124の中間に配置され、これら第1〜第5蓄熱温度センサ116〜124は、貯湯タンク50内の貯湯水の温度を検知する。また、流入水温度センサ114は水流入流路70に配設され、水流入流路70を通して貯湯タンク50に流入する水の温度を検知する。
このことに関連して、コントローラ78Cは、第1温度比較手段86、第2温度比較手段88、制御手段84及びメモリ手段86Cに加えて、蓄熱比演算手段126、最大蓄熱比抽出手段128、蓄熱判定手段130及び蓄熱運転切換手段132を含んでいる。蓄熱比演算手段126は、蓄熱温度検知手段112及び流入水温度センサ114の検知温度に基づいて次のようにして貯湯タンク50の蓄熱比(満蓄熱に対する現蓄熱の比率)を演算する。
例えば、第1〜第5蓄熱温度センサ116〜124の検知温度をT1〜T5とし、流入水温度センサ114の検知温度をT0とすると、第1蓄熱温度センサの検知温度T1と流入水温度センサ114の検知温度T0との温度差TXが満蓄熱までの温度となる(TX=T1−T0)。また、第1〜第5蓄熱温度センサ116〜124の検知温度T1〜T5の平均温度TA〔TA=(T1+T2+T3+T4+T5)/5〕と流入水温度センサ114の検知温度T0との温度差TZが現時点の蓄熱の温度となり、従って、満蓄熱までの温度TXに対する現時点の蓄熱の温度TZの比率TH(TH=TZ/TX)を演算すると、この演算値が貯湯タンク50の現時点の蓄熱比となる。かく演算された演算蓄熱比THは、メモリ手段86Cに記憶される。
最大蓄熱比抽出手段128は、メモリ手段86Cに記憶された演算蓄熱比THのうち最大蓄熱比を抽出し、蓄熱判定手段130は、抽出された最大蓄熱比とメモリ手段86Cに登録された第1基準蓄熱比(例えば、50%)とを対比し、最大蓄熱比が第1基準蓄熱比以下であると蓄熱不足と判定し、また抽出された最大蓄熱比とメモリ手段86Cに登録された第2基準蓄熱比(第1基準蓄熱比よりも大きい値であって、例えば、85%)とを対比し、最大蓄熱比が第2基準蓄熱比以上であると蓄熱過剰と判定する。
この固体酸化物形燃料電池システム2Cでは、加熱ヒータ64を作動させない第1蓄熱運転モード(この第1蓄熱運転モードにおいては、貯湯タンク50に貯えられる温水の温度は第1目標温度、例えば65℃となる)と、加熱ヒータ64を作動させる第2蓄熱運転モード(この第2蓄熱運転モードにおいては、貯湯タンク50に貯えられる温水の温度は第2目標温度、例えば75℃となる)との運転モードで稼働運転することができ、蓄熱運転切換手段132は、後述するように、蓄熱判定手段130が蓄熱不足と判定したときには第1蓄熱運転モードから第2蓄熱運転モードに切り換え、蓄熱判定手段130が蓄熱過剰と判定したときには第2蓄熱運転モードから第1蓄熱運転モードに切り換える。この第4の実施形態の固体酸化物形燃料電池システム2Cのその他の構成は、上述の第1の実施形態のもと実質上同一である。
この固体酸化物形燃料電池システム2Cの稼働運転は、例えば、次のようにして行われる。主として図7及び図8を参照して、燃料電池システム2Cの稼働運転中においては、第1所定時間(例えば、10〜120分の適宜の時間、例えば60分に設定することができる)経過すると、ステップS1からステップS2に進み、貯湯タンク50の蓄熱状態、例えば蓄熱比THの演算が行われる。即ち、蓄熱比演算手段126は、蓄熱温度検知手段112及び流入水温度センサ114の検知信号に基づいて上述したようにして蓄熱比THを演算し、この演算蓄熱比THがメモリ手段86Cに記憶される(ステップS3)。
この貯湯タンク50の蓄熱状態(蓄熱比TH)の演算は、第2所定時間(例えば、6〜24時間の適宜の時間、例えば24時間に設定することができる)が経過するまで、第1所定時間経過毎に行われる。そして、第2所定時間が経過すると、ステップS4を経てステップS5に進み、最大蓄熱比抽出手段128は、この第2の所定時間の間の演算蓄熱比(第1所定時間毎の演算蓄熱比)のうち最大蓄熱比を抽出する。
このように最大蓄熱比が抽出されると、蓄熱判定手段130は、この抽出最大蓄熱比とメモリ手段86Cに登録された第1及び第2基準蓄熱比とを対比して、貯湯タンク50での蓄熱状態の判定を行う(ステップS6)。
この蓄熱判定において、抽出最大蓄熱比が第1基準蓄熱比(例えば、50%)以下であると、ステップS7からステップS8に進み、蓄熱判定手段130は蓄熱不足と判定する。そして、第1蓄熱運転モードで稼働運転していた場合、ステップS9からステップS10に進み、蓄熱運転切換手段132は、第1蓄熱運転モードから第2蓄熱運転モードに切り換える。この第2蓄熱運転モードによる稼働運転においては、加熱ヒータ64が作動されて貯湯タンク50での貯湯水の温度が第2目標温度(例えば、75℃)となり、貯湯タンク50での蓄熱量が増えるために、蓄熱不足が解消される。
また、上述の蓄熱判定において、抽出最大蓄熱比が第2基準蓄熱比(例えば、85%)以上であると、ステップS7からステップS11を経てステップS12に移り、蓄熱判定手段130は蓄熱過剰と判定する。そして、第2蓄熱運転モードで稼働運転していた場合、ステップS13からステップS14に進み、蓄熱運転切換手段132は、第2蓄熱運転モードから第1蓄熱運転モードに切り換える。この第1蓄熱運転モードによる稼働運転においては、加熱ヒータ64は作動されず、貯湯タンク50での貯湯水の温度が第1目標温度(例えば、65℃)となり、貯湯タンク50での蓄熱量が減少するために、蓄熱過剰が解消される。
尚、最大蓄熱比が第1基準蓄熱比と第2基準蓄熱比との間の範囲であるときには、貯湯タンク50での蓄熱状態が過不足のない状態であり、このときには運転モードを切り換えることなくステップS1に戻り、そのままの運転モードでもって継続して運転される。
上述した第4の実施形態では、貯湯タンク50内の貯湯水の温度分布状態を検知するための蓄熱温度検知手段112として、第1〜第5蓄熱温度センサ116〜124の5つの蓄熱温度センサから構成しているが、このような構成に限定されず、この蓄熱温度検知手段として1〜4つ又は6つ以上の蓄熱温度センサから構成するようにしてもよい。また、貯湯タンク50の蓄熱状態(例えば、蓄熱比)を検知するのに蓄熱温度検知手段112及び流入水温度センサ114の検知信号を利用しているが、流入水温度センサ114を省略し、蓄熱温度検知手段112の検知信号のみを用いて貯湯タンク50の蓄熱状態を検知するようにしてもよい。尚、一つの蓄熱温度センサから構成した場合、この蓄熱温度センサを貯湯タンク50の上下方向中央部よりも少し下側に配置するのが望ましく、このように構成したときには、例えば蓄熱温度センサの検知温度が所定温度(例えば、40℃前後に設定することができる)以上となる時間を累積し、この演算累積時間に基づいて蓄熱不足(この演算累積時間が第1所定時間以下であるとき)、蓄熱過剰(この演算累積時間が、第1所定時間よりも長い第2所定時間以上のとき)の判定を行うようにすることができる。
以上、本発明に従う固体酸化物形燃料電池システムの各種実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されず、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変更乃至修正が可能である。
第4の実施形態における第1蓄熱運転モードと第2蓄熱運転モードとの運転モードの切換えに関する技術は、上述した第2及び第3の実施形態のものにも同様に適用することができる。