JP6654166B2 - 環境試験装置 - Google Patents
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Description
図1に示す環境試験装置100は、断熱壁2によって覆われた断熱槽3を有している。そして当該断熱槽3内には仕切り壁(仕切り)6があり、断熱槽3内が試験室5と空調部7に区切られている。空調部7は、仕切り壁6と断熱槽3の奥壁33によって奥行き方向が挟まれた空間である。
試験室5は、被試験物を設置する空間である。試験室5の正面には扉8が設けられている。試験室5は、扉8が設けられた壁面と仕切り壁6によって奥行き方向が挟まれた空間である。
なお本明細書では、扉8と断熱槽3の奥壁33との間を断熱槽3の奥行き方向と称し、これと交差する方向を断熱槽3の幅方向と称する。また後記する蒸発皿20の凹部23や、排水溝31は、それ自体の幅を幅方向と称する。
加湿器12は、加湿ヒータ16と蒸発皿20の組み合わせで構成されるものである。加湿ヒータ16は電気ヒータである。蒸発皿20は、断熱槽3の底板22の一部を凹変させて凹部23を形成させたものである。
加湿器12は、蒸発皿20内の水を加湿ヒータ16で加熱して水を蒸発させるものである。
冷凍機21は、気体状の冷媒を凝縮し、さらに蒸発器(冷却器13)内で断熱膨張させて冷却器13の表面温度を低下させるものである。
加熱装置15は電気ヒータである。
加熱装置15は、空調部7から吐出される空気の温度を微調整する必要から、最も通風経路の下流の位置に設けられている。冷却器13は、加湿器12と加熱装置15の間の高さに配置されている。
そのため送風機11を起動すると、試験室5内の空気が空気導入部26から空調部7内に導入される。そして空調部7内が通風状態となり、空調機器10に空気が接触して熱交換や湿度調整がなされ、空気吹き出し部25から試験室5内に調整後の空気が吹き出される。
また空調部7の空気吹き出し部25の近傍に、温度センサー35と湿度センサー27が設けられている。
環境試験装置100を使用する際には、送風機11を運転して空調部7内を通風状態とし、温度センサー35及び湿度センサー27の検出値が、設定環境の温度及び湿度に近づく様に空調機器10を制御する。
試験室5内の湿度が設定湿度よりも高い場合には、冷凍機21を駆動して冷却器(蒸発器)13の表面温度を低下させ、冷却器13の表面で空気中の水蒸気を凝縮し、空気中の水蒸気分圧を低下させて除湿する。
そのため蒸発皿20内の水は、蒸発して消費される。
環境試験装置100では、断熱槽3の外部に給水タンク30があり、蒸発皿20の水位が低下すると、図示しない給水ポンプによって給水タンク30内の水が蒸発皿20に供給される。
その結果、冷却器13の表面で空気中の水蒸気が凝縮して結露する。さらに凝縮水は、下部に落下する。
環境試験装置100では、冷却器13の下部に加湿器12の蒸発皿20がある。また冷却器13及び蒸発皿20は、共に断熱槽3の幅方向に沿って設置されている。そのため冷却器13から、落下した凝縮水は、図14(a)の様に蒸発皿20で受けられ、加湿用の蒸留水として再利用される。
また冷却器13の一部が、蒸発皿20の真上の位置から外れ、冷却器13の投影面が、蒸発皿20からはみ出してしまい、冷却器13の一部から落下する凝縮水が、蒸発皿20に入らない場合もある。
また図16(a)の様に水たまり37の水が、断熱槽3の奥行き方向に移動し、試験室5側に侵入し、試験室5の床面を濡らしてしまう場合もある。
水たまり37の水が、排水溝31に入って排水されると、試験室5の床面を濡らしてしまうという不具合はないが、凝縮水を加湿用の蒸留水として再利用することができず、蒸発皿20に供給する純水の消費量が多くなってしまう場合がある。
そのため冷却器で発生した凝縮水の多くは、蒸発皿に落下する。
一方、本発明の環境試験装置では、蒸発皿の凹部の周辺に床部がある。そのため冷却器で発生した凝縮水の一部は、蒸発皿を外れて床部にも落下する。
本発明の環境試験装置では、床部に、他の部位に比べて水に対する濡れ性が高い導水処理部がある。
ここで「濡れ性」とは、固体表面における液体の親和性である。液体が水である場合は、親水性と同様の意味である。水に対する「濡れ性」が低い板面に水を垂らすと、水は、球状に近い形状となる。また水は、板面から盛り上がってその場に止まる。
これに対して水に対する「濡れ性」が高い板面に水を垂らすと、水は板面の表面に広がり、流れる。
本願発明では、導水処理部が蒸発皿の凹部と繋がっているか、あるいは凹部の近傍に至っている。そのため冷却器から蒸発皿周辺の床部に落下した水は、導水処理部に沿って移動し、蒸発皿の凹部に流れ込む。
本発明の実施形態の環境試験装置1は、蒸発皿20の周辺に導水処理部50が設けられている点に特徴があり、他の構成については従来技術と同一である。
そのため環境試験装置1の基本構成についての詳細な説明は簡単なものに止める。
本実施形態の環境試験装置1についても、断熱槽3内が仕切り壁6によって試験室5と空調部7に区切られている。空調部7には、空調機器10を構成する機器として加湿器12、冷却器13及び加熱装置15が設置されており、冷却器13の下に加湿器12がある。
断熱槽3の底部28は、一枚の底板22によって作られている。
断熱槽3は、前記した様に仕切り壁6によって奥行き方向に仕切られ、試験室5と空調部7に区切られている。
仕切り壁6よりも奥行き方向(奥壁33側)であって空調部7の底部28は、蒸発皿20が形成される平面領域であり、空調部7の底部28の大半は蒸発皿領域40と言える。本実施形態では、蒸発皿20の凹部23の試験室5側の長辺56が、蒸発皿領域40の境界となっている。仕切り壁6よりもやや扉8よりの位置から扉8付近までの底部28は、試験室5の底を形成する平面領域であり、試験室領域41と言える。
凹部23の長辺56よりも試験室5側であって、仕切り壁6よりもやや扉8よりの位置の底部28は、排水溝31が設けられた排水溝領域42である。
凹部23は、仕切り壁6よりも奥壁33寄りの位置にあり、その全体が空調部7の領域に属する。
本実施形態においても、図13と同様に、蒸発皿20の凹部23の全長wが、冷却器13の全長Wよりも短く、図2の様に蒸発皿20の凹部23が占める面積が冷却器13の平面断面よりも小さい。言い換えると、冷却器13の断熱槽3の底部への投影面が、蒸発皿20からはみ出している。
蒸発皿領域40は、蒸発皿20を構成する凹部23が他の部位に比べて窪んでおり、図5に示す様に凹部23の端部と、断熱槽3の側壁43、45との間は、試験室領域41の床面と同等の高さの床部36となっている。
導水処理部50は、ヘヤーライン加工あるいはそれに近い表面形状に加工されたものである。
ここでヘヤーライン加工とは、髪の毛を線上に並べた様な外観から名付けられたものであり、細い線状跡が複数平行に並んだ様な平面視形状となる。
顕微鏡的に観察すると、図4、図8の様に多数の微小溝51が並んで帯状にのびている。
前記した様に導水処理部50の表面形状は、多数の微小溝51が並んで帯状にのびたものであり、当該微小溝51は、いずれも断熱槽3の側壁43、45と蒸発皿20の凹部23を繋ぐ方向に形成されている。
本実施形態では、導水処理部50の幅方向の端部は、蒸発皿20の凹部23の試験室5側の長辺56と、略同じライン上にある。
本実施形態では、蒸発皿20の凹部23と排水溝31の間には導水処理部50は無い。即ち蒸発皿20の凹部23と排水溝31の間の床部36は、平滑な未処理床部57である。
また蒸発皿領域40であって、導水処理部50と奥壁33との間の床部36も平滑な未処理床部58である。
導水処理部50は、単に表面に複数の微小溝51が形成されているに過ぎず、導水処理部50の高さは、実質的に平滑な未処理床部57,58と同じである。
ここで公知の物理現象として、金属表面が粗面化すると、水に対する濡れ性が向上する。そのため他の床部36に落下した水滴は、接触角が大きく、図8の様に球状となるのに対し、導水処理部50に落下した凝縮水は、接触角が小さくなり、横に広がる。
そのため導水処理部50に落下した凝縮水は、水たまり状にはなりにくく、流れやすくなる。
また他の領域から導水処理部50に進入した凝縮水は、接触角が小さくなり、横に広がり、流れやすくなる。
導水処理部50は、単に粗面であって濡れ性が高いだけなく、顕微鏡視的な表面形状は、図4、図8の様に多数の微小溝51が並んで帯状にのびたものとなっている。そのため導水処理部50に落下した凝縮水の移動は、一定の方向性を持ち、微小溝51に沿う方向に流れやすい。
本実施形態の環境試験装置1においても、従来技術と同様に蒸発皿20の凹部23の全長wが、冷却器13の全長Wよりも短いので、冷却器13の端部側から落下した凝縮水は、蒸発皿20の凹部23以外の床部36に落下し、図6(a)の様に濡れ性が低い未処理床部58には水たまり60ができる。そしてしだいにその水たまり60が成長し、横に広がって図6(b)の様に導水処理部50に至る。
しかしながら、図6(b)の様に水たまり60の一部が、導水処理部50に接すると、水滴表面の均衡が破れ、水が導水処理部50に流れ込む。
そして新たに未処理床部58に落下した凝縮水は、図7(a)の様に、次々と未処理床部58から濡れ性が高い導水処理部50に流れ込む。
即ち未処理床部58の水たまり60と、導水処理部50が繋がることにより、一時的に水路が開き、新たに未処理床部58に落下した凝縮水は、当該水路を通って滞ることなく導水処理部50に流れ込む。
そして遂には図7(b)の様に、水の端部が蒸発皿20の凹部23の端部に至り、凹部23内に流れ込む。
もちろん、導水処理部50に直接落下した凝縮水は、微小溝51に沿って移動し、凹部23内に流れ込む。
なお凝縮水は、蒸留水であるから、蒸発皿20に残存していた純水と混合して気化させても、不都合はない。
そのため本実施形態の環境試験装置1では、蒸発皿20に補助する純水を倹約することができる。
また本実施形態の環境試験装置1では、凝縮水が試験室5に流れ込むことが少なく、試験室5を濡らしにくい。
しかしながら本発明は、この構成に限定されるものではなく、例えば、表面をブラスト加工したり、紙やすりがけをすることによってランダムに粗面化したものであってもよい。即ち方向性を持たせずに粗面化したものであってもよい。例えば表面が梨地であってもよい。
逆に、図9(b)の様に一定の領域を除いて撥導水処理部62を設け、相対的に一定の領域の濡れ性を相対的に高めてもよい。
図10(b)の様に、蒸発皿領域40の凹部23を除く全面をヘヤーライン加工する場合には、各微小溝が凹部23を中心として放射状に広がる様に加工することが推奨される。
また図11(a)の様に、蒸発皿20の凹部23の長辺56を超えて断熱槽3の奥行き方向の扉8側に導水処理部50が広がるものであってもよい。
さらに図11(b)の様に、蒸発皿20の凹部23の長辺56から断熱槽3の奥行き方向の扉8側に導水処理部50が設けられているものであってもよい。
図11(a)(b)の構成においても、導水処理部50は排水溝31には至らず、導水処理部50によって蒸発皿領域40と排水溝領域42の間が区切られている。
3 断熱槽
5 試験室
6 仕切り壁
7 空調部
12 加湿器
13 冷却器
16 加湿ヒータ
20 蒸発皿
23 凹部
28 底部
31 排水溝
36 床部
40 蒸発皿領域
41 試験室領域
42 排水溝領域
43、45 側壁
50 導水処理部
51 微小溝
57、58 未処理床部
61 親水性塗膜
Claims (7)
- 被試験物が配される試験室を備え、試験室内を所望の環境に調整することが可能な環境試験装置であって、少なくとも加湿器と冷却器を備え、加湿器は蒸発皿と、蒸発皿内の水を加熱する加湿ヒータを有し、前記蒸発皿は冷却器よりも下の位置に設置された水を溜める凹部であり、前記凹部の周辺に床部がある環境試験装置において、
床部には他の部位に比べて水に対する濡れ性が高い導水処理部があり、当該導水処理部が蒸発皿の凹部と繋がっているか、あるいは凹部の近傍に至っていることを特徴とする環境試験装置。 - 導水処理部は多数の微小溝が並んで帯状にのびるものであることを特徴とする請求項1に記載の環境試験装置。
- 被試験物が配される試験室を備え、試験室内を所望の環境に調整することが可能な環境試験装置であって、少なくとも加湿器と冷却器を備え、加湿器は蒸発皿と、蒸発皿内の水を加熱する加湿ヒータを有し、前記蒸発皿は冷却器よりも下の位置に設置され水を溜める凹部であり、前記凹部の周辺に床部がある環境試験装置において、
床部には多数の微小溝が並んで帯状にのびる導水処理部があり、当該導水処理部が蒸発皿の凹部と繋がっているか、あるいは凹部の近傍に至っていることを特徴とする環境試験装置。 - 導水処理部は多数の溝状にのびる微小キズが並んで帯状にのびるものであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の環境試験装置。
- 導水処理部は床部の他の領域に比べて表面が粗面であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の環境試験装置。
- 断熱槽を有し、当該断熱槽内に仕切りが設けられて試験室と空調部に区分され、空調部領域の下部に蒸発皿が設けられた蒸発皿領域があり、蒸発皿の近傍に排水溝が設けられた排水溝領域があり、導水処理部と蒸発皿の凹部とによって、又は導水処理部によって蒸発皿領域と排水溝領域の間が区切られていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の環境試験装置。
- 断熱槽を有し、当該断熱槽内に仕切りが設けられて試験室と空調部に区分され、空調部領域の下部に蒸発皿が設けられた蒸発皿領域があり、蒸発皿の平面形状は、断熱槽の幅方向に長く且つ断熱槽の奥行き方向に狭く、導水処理部は、蒸発皿の幅方向への延長領域に形成されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の環境試験装置。
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