JP6653851B2 - 被覆膜とその製造方法およびpvd装置 - Google Patents

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Description

本発明は、被覆膜とその製造方法およびPVD装置に関し、より詳しくは、各種摺動部材の被覆膜として好適な被覆膜とその製造方法および前記製造方法に用いられるPVD装置に関する。
近年、各種産業分野、特に自動車分野において、エンジン基材やその他機械基材等、摺動性が必要とされる部材の表面に硬質炭素膜を被覆させることが盛んに検討されている。
この硬質炭素膜は、一般的にダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜、無定形炭素膜、i−カーボン膜、ダイヤモンド状炭素膜等、様々な名称で呼ばれており、構造的には結晶ではなく非晶質に分類される。
そして、この硬質炭素膜は、ダイヤモンド結晶に見られるような単結合(C−C)とグラファイト結晶に見られるような二重結合(C=C)とが混在していると考えられており、ダイヤモンド結晶のような、高硬度、高耐摩耗性、優れた化学的安定性等といった特徴に加えて、グラファイト結晶のような低硬度、高潤滑性、優れた相手なじみ性等といった特徴を併せ備えている。また、非晶質であるために、平坦性に優れ、相手材料との直接接触における低摩擦性、即ち、小さな摩擦係数や優れた相手なじみ性も備えている。
これらの特性は、成膜条件、摺動条件、相手材料により大きく変動するため、硬質炭素膜の組成、構造、表面粗さ等を制御することにより、これらの特性の向上を図る技術が提案されている。
一方、摺動部材にとって重要な特性である耐チッピング性と耐摩耗性とは、互いにトレードオフの関係にあるため、これらを両立させることが難しい。
このため、低硬度化した硬質炭素層を規定したり、低硬度硬質炭素と高硬度硬質炭素の混在状態を規定したりして、低硬度の硬質炭素を活用することにより、被覆膜の耐チッピング性と耐摩耗性をある程度両立させて、上記したトレードオフの関係を改善することが図られている。
しかしながら、この耐チッピング性と耐摩耗性を両立させることについては、未だ十分とは言えないのが現状である。また、摺動部材の被覆膜には前記した低摩擦性や耐摩耗性に加えて耐チッピング性(耐欠損性)や耐剥離性が要求されるが、これらの特性の改善も未だ十分とは言えないのが現状である。
例えば、特許文献1では、炭素を主成分としたアモルファス構造体であって、平均径2nm以上からなるグラファイトクラスターを含む低硬度硬質炭素層と、平均径1nm以下からなるグラファイトクラスターを含む高硬度硬質炭素層とを交互に積層することにより、耐チッピング性と耐摩耗性とが両立されると示されているが、その両立は未だ不十分であり、耐チッピング性や耐剥離性も十分とは言えない。
また、特許文献2では、炭素、水素を主成分とし、表面粗さがRmax0.5μm以下のプラズマCVD法で成膜された硬質炭素膜であって、X線回折結晶学的に非晶質構造であり、ダイヤモンド構造およびグラファイト構造のクラスターの混合体として、各クラスターの炭素原子数を規定することにより耐チッピング性と耐摩耗性とを両立させているが、異常成長を防いで面粗さを小さくするためにダイヤモンド構造とグラファイト構造の両方のクラスターを必須としており、それぞれのクラスターは原子数が100〜2000と大きいため、X線回折では非晶質構造であっても電子線回折で微小領域を解析すると結晶質を含んでおり、クラスターのサイズが大きいこともあり、耐チッピング性と耐摩耗性との両立には限界があり、耐チッピング性や耐剥離性も十分とは言えない。
また、特許文献3では、少なくとも鉄を含む金属基材上にDLC膜を配してなる金属部材であって、DLC膜はラマンスペクトルで波数が1550〜1600cm−1の範囲に観測されるグラファイトに起因するピークを有し、前記ピークの強度が、膜面内に複数異なって混在し、ピーク強度の最大と最小の差が1桁以上である金属部材が開示されており、高硬度のDLCと潤滑性に優れたDLC膜を同一膜面内で局所的に作り分けて、硬度が異なるDLC膜を同一面内で併せ持つ膜とすることにより、耐チッピング性と耐摩耗性とが両立されると示されているが、硬度に優れるDLC膜および潤滑性に優れるDLC膜の面内での大きさは数10μmサイズと大きいため、場所による性能差が現れやすく、摺動面内で均一に耐チッピング性と耐摩耗性を両立させることが難しい。
また、特許文献4では、sp混成軌道を持つ炭素量が70原子%以上、且つグラファイトの(002)面が厚さ方向に沿って配向した窒素を含有する配向性DLC膜が開示されているが、成膜に際してプラズマCVDで窒素を用いており、バイアス電圧を−1500V以下と非常に低くしている。このため、sp混成軌道を持つ炭素電子が70%以上でsp/sp比が2.3〜∞と非常に大きくなって、低硬度で耐摩耗性に劣る被覆膜しか得られず、やはり、摺動部材の被覆膜として採用することができない。
さらに、特許文献5には、少なくとも10μmの厚さの水素非含有ta−c型DLCを含有するピストンリング用のDLC膜で、このta−c型DLC膜の外側1〜3μmにおけるsp比率をB、O、Siをドープすることにより低減させて、ならし時の摩擦に優れ、不十分な潤滑環境下での耐熱性向上、焼き付き抑制効果を有する非晶質膜が提案されているが、B、O、Siなどのドープにより油中での低摩擦性が低下しており、耐チッピング性と耐摩耗性とを十分に両立させるものではない。
特開2001−261318号公報 特開平10−87396号公報 特開2009−184859号公報 特開2011−148686号公報 特表2013−528697号公報
以上のように、従来の各技術は、いずれも、耐チッピング性と耐摩耗性を両立させることについては十分とは言えず、耐チッピング性や耐剥離性の改善についても十分とは言えなかった。
そこで、本発明は、耐チッピング性と耐摩耗性の両立を十分に改善させるだけでなく、相手なじみ性、低摩擦性、さらには耐剥離性の改善も図られた被覆膜とその製造方法および前記製造方法に用いられるPVD装置を提供することを課題とする。
摺動部材の被覆膜として硬質炭素膜の形成を行う場合、従来より、PVD法やCVD法などの気相成長法を用いて行われているが、その際、基材温度が高くなるとsp結合性炭素が生成しにくくなり耐摩耗性に劣る硬質炭素膜が形成されてしまうことと、基材の軟化を防ぐため、基材温度を200℃以下に制御して成膜を行っていた。
しかし、本発明者が上記課題の解決について、種々の実験と検討を行うにあたって、上記した従来の概念にとらわれることなく、PVD法を用いて200℃以上の温度で形成される膜を活用すべく検討を進めた。まず200℃以下の温度で高いsp比率の硬質炭素膜を被覆した後に、200℃以上の温度に基材温度を上げて硬質炭素膜の形成を行ったところ、基材温度を250℃〜500℃まで昇温させながら、バイアス電圧を−300V以下にして硬質炭素膜を形成した場合、従来とは全く異なる構造の硬質炭素膜が形成されるという、発明者自身も驚く結果が得られた。
具体的には、得られた硬質炭素膜の断面を明視野TEM(透過電子顕微鏡:Transmission Electron Microscope)像により観察したところ、基材表面に対して垂直な方向に柱状に結晶成長した硬質炭素層と、粒状の硬質炭素層が連続して形成されていることが分かった。
そして、この柱状の硬質炭素層と粒状の硬質炭素層とを有する被覆膜の摺動特性を測定したところ、本来トレードオフの関係にある耐チッピング性と耐摩耗性との両立が従来よりも遙かに改善されているだけでなく、相手なじみ性と低摩擦性、さらには耐剥離性も十分に改善されており、摺動性が必要とされる部材の表面に被覆させる硬質炭素膜として極めて好ましいことが分かった。
このような効果が得られた理由は、以下のように考えられる。
柱状の硬質炭素層は、明視野TEM像において相対的に黒色の部分と相対的に白色の部分を有しているが、この柱状の硬質炭素層での白色と黒色の色調差は、柱状の硬質炭素層における密度差あるいはわずかな方位差により生じていると考えられる。また、これら両者、即ち密度差とわずかな方位差の両者により色調差が生じているとも考えられる。
例えば、柱状の硬質炭素層における低密度の部位が白色、高密度の部位が黒色を示して密度差により色調差が生じていると考えられる。また、本発明の柱状の硬質炭素層は、(002)面を基材に平行とし、c軸が基材表面に対して垂直に成長した組織を有するが、柱状組織の1本1本が少しずつ回転した形で成長するため、わずかな方位差を有しており、このわずかな方位差により色調差が生じているとも考えられる。さらに、このような密度差とわずかな方位差の両者により色調差が生じているとも考えられる。なお、この柱状の硬質炭素層は、電子線回折で0.3〜0.4nmの位置に回折スポットを有するグラファイト結晶を示すと考えられる。
粒状の硬質炭素層においても、明視野TEM像において相対的に黒色の部分と相対的に白色の部分を有しているが、粒状の硬質炭素層の場合には、梨地状とも形容できるような濃淡色の組織が確認できる。このような粒状の硬質炭素層における白色と黒色の色調差についても、上記した柱状の硬質炭素層と同様に、密度差あるいはわずかな方位差により生じていると考えられ、また、これら両者により色調差が生じているとも考えられる。
例えば、粒状の硬質炭素層における低密度の部位が白色、高密度の部位が黒色を示して密度差により色調差が生じていると考えられる。また、粒状の硬質炭素層は、電子線回折で回折スポットが格子間隔0.3〜0.4nmの位置にリング状に現れており、(002)面がランダムな配向性を持つグラファイト結晶であるため、わずかな方位差を有しており、このわずかな方位差により色調差が生じているとも考えられる。さらに、このような密度差とわずかな方位差の両者により色調差が生じているとも考えられる。
そして、柱状の硬質炭素は、微細な粒径のまま厚み方向に成長しており、アスペクト比が大きい。アスペクト比の大きい微細な柱状組織は非常に強度に優れているため、耐チッピング性も向上させることができる。また、厚み方向に柱状化した硬質炭素組織は剥離に強いため、優れた耐剥離性を発揮することができる。さらに、柱状の硬質炭素は、グラファイト結晶の(002)面が基材表面に対して垂直、つまりC軸が基材に平行に成長した組織を有するため耐摩耗性に優れる。
一方、粒状の硬質炭素は微細なグラファイト結晶を多く含むため相手なじみ性に優れ、そのグラファイト結晶はランダムな方向に配向しているため、様々な方向に対してすべり性に優れ、優れた低摩擦性を発揮する。さらには、粒状の硬質炭素は、柱状の硬質炭素の直上に連続して形成されているため、耐剥離性に優れる。
この結果、このような柱状の硬質炭素層の直上に粒状の硬質炭素層が形成されている被覆膜を、摺動性が必要とされる部材の表面に被覆させた場合、従来の硬質炭素層を被覆させた場合に比べて、耐チッピング性、耐摩耗性、相手なじみ性、低摩擦性、耐剥離性を大幅に上昇させることができる。
なお、以上に記載したような特長を有する硬質炭素層は、PVD法を用いて成膜することが好ましい。
即ち、従来より、CVD法でも硬質炭素を成膜できることが知られていたが、CVD法の場合には、原料ガスに炭化水素を用いるため、被覆膜に水素を含有し、この水素が油中での油の吸着を抑制するため、低摩擦を示す硬質炭素層を形成させる成膜方法として好適とは言えなかった。本発明者は、検討の結果、PVD法を採用し、成膜温度を適切に制御することにより、上記のような特長をもつ硬質炭素膜が形成されることを見出した。PVD法ではカソードに固体の炭素原料を用いるため、水素や不純物金属を含まない高硬度で、油中での低摩擦性に優れる硬質炭素を成膜できるメリットがある。
請求項1に記載の発明は、上記の知見に基づくものであり、
基材の表面に被覆される被覆膜であって、
断面を明視野TEM像により観察したとき、基材表面に対して垂直な方向に柱状に連なっている硬質炭素層と、前記硬質炭素層の直上に粒状の硬質炭素層とが形成されており、
いずれの硬質炭素層も被覆膜断面の電子線回折で格子間隔0.3〜0.4nmの位置に回折を示すことを特徴とする被覆膜である。
請求項2に記載の発明は、
前記基材表面に対して垂直な方向に柱状に連なっている硬質炭素の幅が、1〜100nmであることを特徴とする請求項1に記載の被覆膜である。
基材表面に対して垂直な方向に柱状に連なっている硬質炭素の幅(柱状の硬質炭素層を構成する硬質炭素の線幅)を細くすることにより、外部からの衝撃吸収能力、即ち、耐衝撃性を向上させることができる。また、硬質炭素の幅を細くすると組織が細かくなるため、耐摩耗性が向上する。この結果、耐チッピング性と耐摩耗性のバランスが優れた被覆膜を提供することができる。好ましい幅は、1〜100nmであり、特に3〜60nmであることが好ましい。そして、そのアスペクト比は2〜300であることが好ましい。
請求項3に記載の発明は、
前記基材表面に対して垂直な方向に柱状に連なっている硬質炭素層の(002)面が前記基材表面に対して垂直な方向に配向しており、
前記粒状の硬質炭素層の(002)面が前記基材表面に対してランダムな方向に配向していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の被覆膜である。
柱状の硬質炭素層の(002)面が基材表面に対して垂直な方向に配向することによって、垂直な方向に配向していない場合に比べて優れた耐摩耗性が期待できる一方で、粒状の硬質炭素層の(002)面がランダムな方向に配向していることによって、被覆膜に対して加わった様々な方向からの衝撃力に対する耐性が向上する。このような柱状の硬質炭素層と粒状の硬質炭素層とが積層された被覆膜は、耐チッピング性、耐摩耗性、相手なじみ性、低摩擦性に優れている。さらに、柱状の硬質炭素層と粒状の硬質炭素層は連続的に形成されているため密着性に優れ、耐剥離性に優れる。
請求項4に記載の発明は、
前記基材表面に対して垂直な方向に柱状に連なっている硬質炭素層および/または前記粒状の硬質炭素層の水素含有量が、10原子%以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の被覆膜である。
水素含有量が多い硬質炭素層は、水素を含まない硬質炭素層に比べて、油中での摩擦低減効果が小さく、また、硬度も低下しやすいため、耐摩耗性が低下しやすい。水素含有量が10原子%以下の場合、硬質炭素層が高硬度となるため、耐摩耗性を向上させることができるため好ましい。なお、水素含有量は5原子%以下であると特に好ましい。さらに、水素以外に窒素(N)や硼素(B)、珪素(Si)、その他の金属元素については不可避不純物を除き、含まないことが好ましい。
また、柱状の硬質炭素層と粒状の硬質炭素層の両方の水素含有量が10原子%以下であると特に好ましいが、いずれか一方の硬質炭素層の水素含有量が10原子%以下であってもよい。
請求項5に記載の発明は、
前記粒状の硬質炭素層が、最表面に形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の被覆膜である。
被覆膜の最表面に、粒状の硬質炭素層が形成されている場合、粒状の硬質炭素層は相手なじみ性に優れ、低摩擦性にも優れるため、摺動材料の最表面に位置する膜として優れた特性を期待することができる。
請求項6に記載の発明は、
前記基材表面に対して垂直な方向に柱状に連なっている硬質炭素層および/または前記粒状の硬質炭素層のsp/sp比が、0.5〜0.9であることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の被覆膜である。
上記した柱状の硬質炭素層や粒状の硬質炭素層において、sp/sp比が小さすぎると、耐チッピング性向上効果が十分でなくなる。一方、sp/sp比が大きすぎると、耐摩耗性が大きく低下する。このため、sp/sp比は0.5〜0.9が好ましく、0.6〜0.8がより好ましい。このような範囲に制御することにより、耐チッピング性と耐摩耗性を十分に両立させることができる。また、高荷重や繰り返し荷重を受けた際にも被覆膜が破壊しにくい。
請求項7に記載の発明は、
前記柱状の硬質炭素層の下層に、非晶質の硬質炭素層が形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の被覆膜である。
柱状の硬質炭素層の下層に、さらに非晶質の硬質炭素層が形成されていることが好ましい。この非結晶質の硬質炭素層は、被覆膜断面の電子線回折で格子間隔0.3〜0.4nmの位置には回折を示さない、すなわちグラファイト結晶を含まない硬質炭素層である。この非晶質の硬質炭素層は、非常に高硬度であるため、上記した柱状の硬質炭素層の下層に形成することにより耐摩耗性を特に向上させることができる。
そして、このような非晶質の硬質炭素層は、ta−C膜(高sp性DLC)と呼ばれており、従来より低摩擦性に優れていると評価が高かったが、このta−C膜の上層に、柱状の硬質炭素層と粒状の硬質炭素層を形成させることにより、耐チッピング性、相手なじみ性、低摩擦性をさらに向上させて表面改質を図ることができる。
なお、本明細書における「非晶質の硬質炭素層」は、上記したようにグラファイト結晶を含まない硬質炭素層であることを指しており、僅かにダイヤモンド結晶が含まれている場合も含む。
請求項8に記載の発明は、
前記非晶質の硬質炭素層のsp/sp比が0.1〜0.5であることを特徴とする請求項7に記載の被覆膜である。
非晶質の硬質炭素層のsp/sp比を0.1〜0.5の範囲、特に0.15〜0.35の範囲に制御することにより、耐摩耗性を十分に向上させることができる。
そして、このような高硬度の非晶質の硬質炭素層を下層として、その上層に耐チッピング性に優れた柱状の硬質炭素層を積層し、さらにその上層に相手なじみ性、低摩擦性に優れた粒状の硬質炭素層を積層して3層構造の被覆膜とすることにより、耐摩耗性、耐チッピング性、相手なじみ性、低摩擦性、耐剥離性に優れた被覆膜を提供することができる。
請求項9に記載の発明は、
前記非晶質の硬質炭素層の水素含有量が、10原子%以下であることを特徴とする請求項7または請求項8に記載の被覆膜である。
上記したように、硬質炭素層の水素含有量が10原子%以下の場合、硬度を向上させることができるため、非晶質の硬質炭素層の場合においても、水素含有量を10原子%以下とすることが好ましく、5原子%以下にするとより好ましい。
請求項10に記載の発明は、
アーク式PVD法を用いて、請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の被覆膜を製造する被覆膜の製造方法であって、
−300〜−1500Vのバイアス電圧が印加され、前記基材の温度が250〜500℃に維持されるように、アーク電流、ヒーター温度および/または炉内圧力を制御すると共に、前記基材を自転および/または公転させながら、前記基材の表面に前記硬質炭素層を被覆するに際して、
前記基材の温度を250℃以上325℃未満に維持することにより、前記基材表面に対して垂直な方向に柱状に連なっている硬質炭素層を形成した後、
前記基材の温度を325℃以上500℃以下に維持することにより、前記粒状の硬質炭素層を形成することを特徴とする被覆膜の製造方法である。
アーク式PVD法は、イオン化率が高い活性なカーボン粒子を生成させて被覆させることが可能な成膜法であり、バイアス電圧やアーク電流、ヒーター温度、炉内圧力などを最適化することによって、柱状の硬質炭素層と粒状の硬質炭素層を形成させることができる。
特に柱状の硬質炭素と粒状の硬質炭素層を形成する際には、バイアス電圧の大きさが重要であり、具体的にはバイアス電圧を−300〜−1500Vに設定する。
そして、上記した各パラメータの最適化に当って、バイアス電圧以外に重要なのは、アーク電流、ヒーターによって制御される基材温度である。
この基材温度を適切に制御することにより、柱状の硬質炭素層の上層に粒状の硬質炭素層を成膜することができる。
具体的には、成膜中の基材温度が250℃以上325℃未満の範囲内の場合には、柱状の硬質炭素層が形成され、基材温度が325℃以上500℃以下の範囲内の場合には粒状の硬質炭素層が形成される。
このため、成膜中の基材温度を250℃以上325℃未満の範囲に維持した後に、325℃以上500℃以下の範囲に維持することにより、柱状の硬質炭素層の直上に粒状の硬質炭素層が連続的に形成された被覆膜を製造することができる。
請求項11に記載の発明は、
請求項10に記載の被覆膜の製造方法に用いられるPVD装置であって、
前記基材の温度を250℃以上325℃未満に制御する第1制御手段と、前記基材の温度を325℃以上500℃以下に制御する第2制御手段とが備えられたアーク式PVD装置であることを特徴とするPVD装置である。
アーク式PVD法を用いて硬質炭素を形成する場合、アーク式PVD装置の治具構造や基材の大きさなどによっては、所定のバイアス電圧を付与しても、基材温度が250℃に到達しなかったり、適切なタイミングで基材温度が325℃以上にならなかったり、成膜中に基材温度が500℃を超えたりするケースが生じることがあり、上記のような構造の被覆膜が形成されない恐れがある。
このため、本発明に係るアーク式PVD装置においては、基材温度を250℃以上325℃未満の範囲に維持する第1制御手段と、325℃以上500℃以下の範囲に維持する第2制御手段を設けて、基材を適切な温度で均一に加熱することを行っている。
これらの制御手段の具体的な内容としては、基材を均一に加熱するためのヒーターを設ける方法や、基材をセットする冶具に冷却機構を導入する方法、また、熱電対でモニターした基材温度を基にバイアス電圧やアーク電流を自動制御する方法などを挙げることができる。
請求項12に記載の発明は、
前記基材を自公転自在に支持する基材支持手段と、
前記基材の自転および/または公転の回転速度を制御する回転制御手段と
を備えていることを特徴とする請求項11に記載のPVD装置である。
基材を自公転自在に支持して、その自公転を制御することにより、一層、基材を均一に加熱することができる。
本発明によれば、耐チッピング性と耐摩耗性の両立を十分に改善させるだけでなく、相手なじみ性、低摩擦性が改善されており、さらに耐剥離性の向上も図られた被覆膜とその製造方法および前記製造方法に用いられるPVD装置を提供することができる。
本発明の一実施の形態の被覆膜の断面における明視野TEM画像である。 図1の一部を拡大した図である。 本発明の一実施の形態の製造装置の成膜用の炉の要部を模式的に示す図である。 本発明の一実施例および従来例の被覆膜形成時の基材温度の変化を概念的に示す図である。 摩擦摩耗試験方法を模式的に示す図である。 本発明の一実施例の摩擦摩耗試験結果を示す顕微鏡写真である。 本発明の一実施例の摩擦摩耗試験結果を示す顕微鏡写真である。
以下、本発明を実施の形態に基づき、図面を用いて説明する。
1.基材
本発明において、被覆膜を形成させる基材としては特に限定されず、鉄系の他、非鉄系の金属あるいはセラミックス、硬質複合材料等の基材を使用することができる。例えば、炭素鋼、合金鋼、軸受け鋼、焼入れ鋼、高速度工具鋼、鋳鉄、アルミ合金、Mg合金や超硬合金等を挙げることができるが、被覆膜の成膜温度を考慮すると、250℃以上の温度で特性が大きく劣化しない基材が好ましい。
2.中間層
被覆膜の形成に際しては、基材上に予め中間層を設けることが好ましい。これにより、基材と被覆膜の密着性を向上させることができると共に、被覆膜が摩耗した場合には、露出したこの中間層に耐摩耗性機能を発揮させることができる。
このような中間層としては、Cr、Ti、Si、W、B等の元素の少なくとも1種を用いることができる。また、これらの元素の下層に、Cr、Ti、Si、W、Al等の少なくとも1種の窒化物、炭窒化物、炭化物等を用いることができ、このような化合物としては、例えばCrN、TiN、WC、CrAlN、TiC、TiCN、TiAlSiN等を挙げることができる。
3.被覆膜
本発明の被覆膜は、基材に対して垂直な断面における明視野TEM像を観察すると、硬質炭素が柱状に連なった硬質炭素層と、粒状の硬質炭素層とを備えている。
図1は本発明の一実施の形態の被覆膜の断面の明視野TEM像であり、図2は図1の明視野TEM像の一部を拡大した図である。
図1において1は被覆膜で、Fは被覆膜1の形成後に設けられたTEM観察用カーボン膜である。図1より、被覆膜1の中間には柱状の硬質炭素層1bが形成されており、柱状の硬質炭素層1bの直上には粒状の硬質炭素層1aが形成されている。なお、本実施の形態においては、柱状の硬質炭素層1bの下層に非晶質の硬質炭素層1cが形成されている。
また、図2のような明視野TEM像により柱状の硬質炭素層1bの硬質炭素粒子の線幅を測定することができる。
本発明において、柱状の硬質炭素層1bは、硬質炭素が微細な粒径のまま厚み方向に成長しており、この硬質炭素の線幅は1〜100nm、より好ましくは3〜60nmであり、電子線回折で回折スポット(結晶性の回折パターン)を有していることが好ましい。
また、粒状の硬質炭素層1aは、柱状の硬質炭素層1bと異なり、各々の硬質炭素がランダムな方向に配向した層である。これらの柱状の硬質炭素層1bと粒状の硬質炭素層1aは、それぞれ、電子線回析で格子間隔0.3〜0.4nmの位置に回折スポットを有している。
また、粒状の硬質炭素層1aと柱状の硬質炭素層1bのsp/sp比は、0.5〜0.9が好ましく、0.6〜0.8がより好ましい。一方、非晶質の硬質炭素層1cのsp/sp比は、0.1〜0.5が好ましく、0.15〜0.35が特に好ましい。
また、被覆膜1を構成する各々の硬質炭素層1a、1b、1cは、水素含有量が10原子%以下、より好ましくは5原子%以下であり、残部は実質的に炭素のみからなる。水素以外にN、B、Siその他の金属元素については不可避不純物を除き、含まないことが好ましい。
4.被覆膜の製造方法およびアーク式PVD装置
(1)製造方法
上記被覆膜1の形成にはアーク式PVD法、スパッタPVD法などを適用できるが、特に好ましいのはアーク式PVD法である。
被覆膜をアーク式PVD法により形成する場合、バイアス電圧やアーク電流を調節したり、ヒーターにより基材を加熱したり、基材をセットする冶具(ホルダー)に冷却機構を導入して基材を強制冷却したりして、成膜中の基材温度が250℃以上325℃未満の範囲に維持した後、325℃以上500℃以下の範囲に維持するように製造条件を調整する。
なお、本実施の形態において、柱状と粒状の硬質炭素層を形成する際に、アーク放電中のバイアス電圧を−300〜−1500Vの範囲内に設定する。
また、成膜に際しては、基材を10〜200rpmの回転数で自転させたり、1〜20ppmの回転数で公転をさせたりすることが好ましい。
このような製造条件で、柱状の硬質炭素層の上層に粒状の硬質炭素層が形成されているような被覆膜を製造できる理由は定かではないが、次のように考えられる。
即ち、基材温度が250℃以上325℃未満、バイアス電圧が−300〜−1500Vの範囲で成膜を行うと、ターゲットから飛び出したカーボンイオンは基材に衝突した時、高温の基材と大きなバイアス電圧の影響を受けて、一定方向に結晶成長を行いやすいため、硬質炭素層が柱状の硬質炭素層として成長しやすいと考えられる。
このようにして形成された柱状の硬質炭素層を電子線回折で分析すると、0.3〜0.4nmの位置に弱い回折スポットが水平方向に観察される。この位置は、sp構造のグラファイトやグラフェンのc面、即ち(002)面に相当すると考えられ、このような回折スポットを有する柱状の硬質炭素は、グラファイトのc面が基材表面に対して垂直方向に配向している。
一方、バイアス電圧が−300〜−1500V、基材温度が325℃以上500℃以下という条件の下で、柱状の硬質炭素層の成膜に続けて硬質炭素層の成膜を行うと、カソードから飛来したカーボンイオンの少なくとも一部が十分に結晶化するエネルギーが与えられて、その場でグラファイトが形成されるので、ランダムな配向性をもつグラファイトと非晶質炭素からなる粒状の硬質炭素層が形成されやすくなる。
そして、このようにして形成された粒状の硬質炭素層を電子線回折で分析すると、電子線回折で回折スポットが格子間隔0.3〜0.4nmの位置にリング状に観察される。このような回折スポットを有していることから、粒状の硬質炭素層は(002)面がランダムな配向性を持つグラファイト結晶を有していると考えられる。
なお、上記において、柱状の硬質炭素層の形成に際して、基材温度を250℃以上325℃未満の範囲内に設定しているのは、250℃未満の場合には、カーボンイオンが基材に正面から入射しても柱状に成長しにくくなる一方で、325℃以上の場合には粒状の硬質炭素層が形成されてしまうためである。
また、粒状の硬質炭素層の形成に際して、基材温度を325℃以上500℃以下の範囲内に設定しているのは、325℃未満の場合には柱状の硬質炭素層が形成されてしまう一方で、500℃を超える場合には、硬質炭素の粒状化が進行するものの硬度が低下し、耐摩耗性が低下しやすいためである。
そして、前記したように、基材温度は、アーク電流、ヒーター温度、炉内圧力などバイアス電圧の調整以外でも調整可能であり、炉内圧力は10−4〜5×10−1Paの真空雰囲気とした場合、水素ガスや窒素ガスを導入した場合に比べて低摩擦で高耐摩耗性の硬質炭素膜を得ることができるため好ましい。
このような本発明に対して、従来の硬質炭素膜の製法では、特にアーク式PVD法で成膜する場合、高密度すなわちsp比率が高く、高硬度の被覆膜を形成するために、一般的にバイアス電圧を制御し、基材温度が200℃より高温に上昇しない条件下で成膜されていた。
本実施の形態の被覆膜は、アーク式PVD装置を用いて製造することができ、具体的な成膜装置としては、例えば、日本アイ・ティ・エフ社製アーク式PVD装置M720を挙げることができる。以下、このアーク式PVD装置を用いた被覆膜の製造について具体的に説明する。
まず、基材となる金属素材を、自公転治具を備えたアーク式PVD装置にセットする。
次に、バイアス電圧やアーク電流の大きさを調整したり、無バイアス電圧となる時間を間欠的に導入して基材を冷却したり、基材をヒーター加熱したり、基材を回転させたりして、基材温度が250℃以上325℃未満の範囲に維持された後、325℃以上500℃以下の範囲に維持されるように制御して、柱状の硬質炭素膜を成長させた後に、粒状の硬質炭素層を連続的に形成する。
前記したように、本発明における成膜のメカニズムの詳細は不明であるが、基材温度を250℃以上325℃未満の温度環境下に置き、バイアス電圧を−300V〜−1500Vに設定することで、硬質炭素が基材表面に対して垂直な方向に柱状に成長するものと考えられる。そして、基材を325℃以上500℃以下の温度環境下に置き、バイアス電圧を−300V〜−1500Vに設定することにより、ランダムな方向に配向した粒状の硬質炭素が形成されるものと考えられる。
(2)アーク式PVD装置
次に、本実施の形態に係るアーク式PVD装置について具体的に説明する。図3は本実施の形態のアーク式PVD装置の成膜用の炉の要部を模式的に示す図である。
アーク式PVD装置は、成膜用の炉11と制御装置(図示省略)とを備えている。炉11には、真空チャンバー12、プラズマ発生装置(図示省略)、ヒーター13、基材支持装置としての自公転治具14、温度計側装置としての熱電対(T.C.10mm角バー)15およびバイアス電源(図示省略)および炉内の圧力を調整する圧力調整装置(図示省略)が設けられている。
また、基材支持装置もしくは炉内中央部に冷却水および/または温水や蒸気を供給する冷却加熱装置が設けられていることが好ましい。なお、Tはターゲット(カーボンターゲット)であり、21は基材(鉄基材)である。また、ターゲットTは実際には5台備えているが、図3では簡略化のため1台のみ記載している。
プラズマ発生装置は、アーク電源、カソードおよびアノ−ドを備え、カソードとアノード間の真空アーク放電により、カソード材料であるカーボンターゲットTからカーボンを蒸発させると共に、イオン化したカソード材料(カーボンイオン)を含むプラズマを発生させる。バイアス電源は、基材21に所定のバイアス電圧を印加してカーボンイオンを適切な運動エネルギーで基材21へ飛翔させる。
自公転治具14は、円板状で、円の中心を回転の中心として矢印の方向に回転自在であり、円板上の中心を中心とする同心円上に、等間隔で、円板に対して垂直な回転軸を複数備えている。複数の基材21は、それぞれ前記回転軸に保持され、矢印の方向に回転自在である。これにより基材21は、自公転治具14に自転および公転自在に保持される。また、自公転治具14には、基材21と自公転治具14との間で速やかに熱が伝導し、基材21と自公転治具14の温度が略等しくなるようにステンレスなど熱伝導性が高い金属材料が用いられている。
ヒーター13および冷却加熱装置は、自公転治具14をそれぞれ加熱、冷却し、これにより基材21が間接的に加熱、冷却される。ここで、ヒーター13は温度調節が可能となるように構成されている。一方、冷却加熱装置は、冷却加熱媒体の供給スピードが調整可能となるように構成されており、具体的には、冷却実施時には冷却水を自公転治具14および/または回転軸もしくは炉内中央部に設置された冷却筒に供給し、冷却停止時には冷却水の供給を停止するように構成されており、加熱時には温水または蒸気を自公転治具14および/または回転軸に供給し、加熱停止時には温水または蒸気の供給を停止するように構成されている。また、熱電対15が基材21の近傍に取り付けられており、基材温度を間接的に計測して、アーク電流値、バイアス電圧値、ヒーター温度の少なくとも一つを成膜中に変化させることで、狙いとする基材温度に制御するように構成されている。
制御装置は、自公転治具14の回転速度を、柱状の硬質炭素層が確実に形成されるように、また偏りのない成膜ができるように、予め選択された自転と公転の組み合わせの下、それぞれの回転速度を所定の回転速度に制御する。また、熱電対15による基材21の温度の計測結果に応じて、バイアス電圧、アーク電流、ヒーター温度、炉内圧力を最適化する。これにより、成膜中の基材21の温度を250〜500℃の温度範囲で制御することができる。また、必要に応じて冷却装置の作動およびバイアス電圧の印加パターンを制御する。
例えば、基材温度を上中下段で計測して、その計測値を基に上中下段各位置のアーク電流値やバイアス電圧を成膜中に適宜変化させ、上中下段各位置の基材温度を狙い温度にするようなフィードバックシステムを組むことが好ましい。これにより上中下段での硬質炭素膜の膜組織の安定化を図ることができる。なお、従来の硬質炭素膜の成膜では、バイアス電圧やアーク電流などの成膜パラメータは決められた値を成膜前に制御装置に入力して、あらかじめプログラム化された成膜条件で行われることが多く、成膜途中で計測した基材の温度を基にアーク電流やヒーター温度を変更させるような成膜方法、装置はなかった。このため、炉内位置での温度バラつきやロット間での温度バラつきは本発明の方法と比較して大きいものであった。
5.被覆膜の検査方法
(1)TEM組織の観察
FIB(Focused Ion Beam)を用いて薄膜化した被覆膜を、TEM(透過型電子顕微鏡:Transmission Electron Microscope)により、例えば加速電圧300kVで明視野TEM像を観察する。
(2)水素含有量の測定
HFS(Hydrogen Forward Scattering)分析により被覆膜中の水素含有量を測定する。
(3)硬質炭素層の粗密判定方法
硬質炭素皮膜の密度は、通常、GIXA法(斜入射X線分析法)やGIXR法(X線反射率測定法)によって測定可能である。しかし、硬質炭素層中で密度の小さい粗な硬質炭素と密度の大きい密の硬質炭素とが非常に微細に分散している場合、上記方法では各部の密度を高精度で測定することは難しい。
このような硬質炭素層に対しては、例えば、特許第4918656号公報に記載されている明視野TEM像の明るさを活用する方法を用いることができる。具体的には、明視野TEM像では、密度が低くなるほど電子線の透過量が増加するため、組成が同じ物質の場合、密度が低くなるほど像が白くなる。従って、同一組成からなる多層の硬質炭素層の各層の密度の高低を判定するために、硬質炭素層の組織断面における明視野TEM像を利用することは好ましい。
図1の明視野TEM像の場合、表面部の硬質炭素層は粒状の硬質炭素層1aであり、その直下の硬質炭素層は柱状の硬質炭素層1bであり、その下層の硬質炭素層は非晶質の硬質炭素層1cである。
(4)被覆膜の結晶性判定方法
FIBにて断面を薄膜化した被覆膜を加速電圧200kV、試料吸収電流10−9A、ビームスポットサイズ0.7nmφにて電子線回折を行い、極微小電子線回折図形の画像を取得して、その画像が散漫散乱パターンであれば非晶性と判定し、スポット状のパターンが観察されれば結晶性と判定してスポット近傍の強度間隔Lを測定して、2Lλ=カメラ長の関係から格子間隔λ(nm)を求める。
(5)sp/sp比の測定方法
EELS分析(Electron Energy−Loss Spectroscopy:電子エネルギー損失分光法)により、1s→π*強度と1s→σ*強度を測定し、1s→π*強度をsp強度、1s→σ*強度をsp強度と見立てて、その比である1s→π*強度と1s→σ*強度の比をsp/sp比として算出した。従って、本発明でいうsp/sp比とは、正確にはπ/σ強度比のことを指す。具体的には、STEM(走査型TEM)モードでのスペクトルイメージング法を適用し、加速電圧200kv、試料吸収電流10−9A、ビームスポットサイズφ1nmの条件で、1nmのピッチで得たEELSを積算し、約10nm領域からの平均情報としてC−K吸収スペクトルを抽出し、sp/sp比を算出する。
(6)被覆膜の電気抵抗の測定方法
成膜後の被覆膜の電気抵抗は、二端子法により、端子間に一定の電流を流して二端子間の電圧降下を測定することにより算出することができる。具体的にはテスター(マルチメータ)を用いて二つの端子間の距離を1cmとして電気抵抗(Ω)を求める方法により算出した。そして、この測定により得られた被覆膜の電気抵抗は1〜100Ωと大きく、導電性を有していなかった。
6.本実施の形態による効果
以上述べてきたように、本発明に係る被覆膜は、TEM組織の明視野像において硬質炭素が、硬質炭素層の厚み方向に柱状に成長した硬質炭素層と、その直上に、粒状の硬質炭素層が形成されているという従来の硬質炭素層には見られなかった非常に特異な組織構造を有している。
そして柱状の硬質炭素は、アスペクト比の大きい結晶組織となることで強度に優れるため、耐チッピング性に優れる。また、厚み方向に連続的に連なった組織となっているため、剥離にも強い。さらに、硬質炭素は微細に柱状化している上、グラファイトのc面が基材表面に対して垂直方向に配向することで、耐摩耗性を向上させることができる。
さらに、柱状の硬質炭素層の直上には、粒状の硬質炭素層が連続して被覆されており、ランダムな方向に配向しているため、相手なじみ性、低摩擦性、耐剥離性に優れる。
この結果、耐チッピング性と耐摩耗性を十分に両立させて、従来の被覆膜より大幅に摺動特性を向上させることができると共に、相手なじみ性、低摩擦性、耐剥離性も従来の被覆膜より大幅に向上させることができる。
なお、本実施の形態に係る被覆膜1においては、断面の明視野TEM像である図1に示したように、柱状の硬質炭素層1bよりも下層に、非晶質の硬質炭素層1cが形成されている。
このように、柱状に成長した柱状の硬質炭素層の下層側に、グラファイト結晶を有さない非晶質の硬質炭素層を形成することにより、グラファイト結晶を有する柱状の硬質炭素層と粒状の硬質炭素層のみが形成されている場合に比べて、耐摩耗性が大幅に上昇することが期待できる。
次に、実施例に基づき、本発明をより具体的に説明する。
1.摩擦摩耗試験試料の作製
(1)基材、中間層の形成
基材(SWOSC−V相当材)を用意し、直径(φ)80mm、リング径方向幅(a1)2.6mm、リング軸方向幅(h1)1.2mmのピストンリング形状に形成し、その摺動面側の表面にアーク式PVD装置を用いて厚み10μmのCrN層を被覆した後、磨き処理を行い、面粗さRzで0.3μmのCrN層被覆鋼基材を準備した。
(2)被覆膜の形成
次に、図3に示す成膜用の炉11を備えるアーク式PVD装置を用いて、CrN層被覆鋼基材に、厚み0.2μmのCr中間層および厚み0.9μmの硬質炭素膜を以下に示す成膜条件の下で形成し、実施例、および従来例の試料を作製した。図4は本実施例および従来例の被覆膜形成時の基材温度の変化を概念的に示す図であり、横軸はDLC膜が成長した厚みを%で表したものであり、縦軸はそのときの基材温度である。
図4から、本実施例では、バイアス電圧−150V、アーク電流40Aで成膜を開始するが、DLC膜が70%成長した時の基材温度は180℃であるが、ここで、アーク電流は40Aのままでバイアス電圧を−500Vに小さくすることで、DLC膜が100%成長したときには基材温度が400℃にまで達していることが分かる。これに対して、従来例では、DLC膜が50%成長したときの基材温度が約175℃程度であり、DLC膜が100%成長したときでも基材温度が180℃に留まっていることが分かる。
(a)実施例
CrN層被覆鋼基材を基材支持装置でもある自公転治具14に配置した後、アーク式PVD装置の炉11内にセットし、厚み0.2μmの金属Cr層を中間層として被覆後、バイアス電圧−150V、アーク電流40Aの条件でアーク放電を行い、カーボンカソードを用いて0.6μmの硬質炭素層を被覆した。その後、ヒーター13で加熱を行いながらバイアス電圧−500V、アーク電流40Aの条件でアーク放電を行って、カーボンカソードを用いて0.2μmの硬質炭素層を連続して成膜した。
なお、実施例においては、大きなマイナスのバイアス電圧を付与すると共に、大きなアーク電流を付与しているため、基材に衝突するイオンの衝撃エネルギーにより、基材の温度が上昇する。このため、上記したようにヒーターで加熱を行いながら、自公転治具14を用いて基材を回転(自転:39rpm、公転:4rpm)させることにより、基材21の温度が、成膜初期の70℃から成膜後期の最高温度400℃まで連続的に上昇するように制御した。
(b)従来例
硬質炭素成膜中のバイアス電圧を−150Vとし、途中冷却を挟みながら成膜中の基材温度が70〜180℃になるように制御したこと以外は実施例と同様にして0.9μmの硬質炭素層の成膜を行った。
得られた各試料の表面に、再び磨き処理を施して、面粗さRzで0.15μmとした後、以下の各評価を行った。
2.被覆膜の評価
(1)明視野TEM像の観察
形成した被覆膜の基材に対して垂直な断面における明視野TEM像を観察した。観察結果を表1に示す。
表1に示すように、実施例では、非晶質の硬質炭素層の上に柱状の硬質炭素層が形成され、さらにその直上に粒状の硬質炭素層が形成されていることが確認された。また、柱状の硬質炭素の線幅は5〜100nmであり、主に10〜20nmであることが確認された。
このような実施例の被覆膜においては、まず200℃未満の温度条件下でバイアス電圧−150Vにて非晶質の硬質炭素層が形成され、次に柱状の硬質炭素層が形成されたのは、バイアス電圧−500Vの下、成膜温度が250℃〜325℃の温度範囲であり、柱状の硬質炭素層の直上に粒状の硬質炭素層が成膜されたのはバイアス電圧−500Vの下、成膜温度が325〜400℃の温度範囲の時であることが確認された。
一方、従来例では、非晶質の硬質炭素層が形成されているのみであり、柱状の硬質炭素層や粒状の硬質炭素層が形成されていないことが確認された。
また、本発明者は、上記した実施例と同等の条件の下で、バイアス電圧を−300Vに変更してヒーター加熱を行いながら、50℃〜400℃の温度範囲で被覆膜を形成したが、この場合でも、実施例と同様に非晶質の硬質炭素層、柱状の硬質炭素層、粒状の硬質炭素層の順に積層された被覆膜が形成されることが確認された。また、バイアス電圧のみを−1500Vに変更して被覆膜を形成した場合も同様の結果が得られた。
(2)電気抵抗、電子線回折、水素含有量、sp/sp比の計測
実施例および従来例の被覆膜について、導電性(電気抵抗率)、電子線回折による結晶性と配向性、水素含有量、sp/sp比を計測した。計測結果を表2に示す。
表2より、本実施例においては、粒状の硬質炭素層と柱状の硬質炭素層の電子線回折による結晶性、配向性、水素含有量、sp/sp比のそれぞれが、本発明の主要な請求項の規定を満たしていることが確認された。
(3)摩擦摩耗試験
次に、各被覆膜に対して、自動車用摺動部材の評価で一般的に行われているSRV(Schwingungs Reihungund und Verschleiss)試験機による摩擦摩耗試験を行った。具体的には、図5に示すように、摩擦摩耗試験試料Wの摺動面を摺動対象であるSUJ2材24に当接させた状態で、100Nおよび1000Nの荷重を掛けて往復摺動させ、摩擦摩耗試験試料Wの摺動面を顕微鏡で観察した。なお、図5において22は中間層であり、23は被覆膜である。また、21’はCrNである。
試験結果の一例を図6および図7に示す。図6は実施例の荷重100Nで10分間の摺動を行った後の摺動面の顕微鏡写真であり、図7は実施例の荷重1000Nで1時間の摺動を行った後の摺動面の顕微鏡写真である。なお、図6、7の淡いグレー色の部分23は硬質炭素被覆膜である。
図7に示すように、実施例では荷重1000Nで1時間摺動を行った後でも、硬質炭素の剥離が発生せず、摩耗が硬質炭素被覆層内に留まっており、実施例の被覆膜は、高荷重で使用しても長時間に亘ってチッピングや剥離が起きることがなく、被覆膜として優れた性能を有していることが確認できた。
一方、従来例では荷重100Nで10分間摺動を行った時点で、チッピングもしくは剥離で硬質炭素被覆層が磨滅してしまい、CrN層被覆鋼基材のCrN層が露出していることが確認できた。さらに、従来例では荷重1000Nで1時間の摺動を行うと、100Nの時と同様にチッピングもしくは剥離で硬質炭素被覆層が磨滅してしまい、CrN層被覆鋼基材のCrN層が露出していることが確認できた。
3.第4の硬質炭素層の形成
なお、上記した実施例とは異なり、非晶質の硬質炭素層と柱状の硬質炭素層との間に、非晶質、柱状、粒状のいずれでもない第4の硬質炭素層を形成した場合でも、上記した実施例と同様に、耐チッピング性と耐摩耗性の両立を十分に改善させるだけでなく、相手なじみ性、低摩擦性、耐剥離性が向上していることが確認できた。
具体的には、初期のバイアス電圧を−200Vとしアーク電流40Aで、基材温度50℃〜250℃まで昇温しながら硬質炭素の成膜を行い、次に、一旦200℃まで冷却後、バイアス電圧−500Vで、ヒーター加熱を行いながら、基材温度を200℃〜400℃まで昇温して硬質炭素の被覆を行うと、非晶質の硬質炭素層と柱状の硬質炭素層との間に、非晶質、柱状、粒状のいずれでもない第4の硬質炭素層である網目状の硬質炭素層が形成されることが確認された。
この場合、形成後の被覆膜は、基材側から1層目に非晶質の硬質炭素層、2層目に網目状の硬質炭素層、3層目に柱状の硬質炭素層、4層目に粒状の硬質炭素層を有していることが確認できた。ここでいう網目状の硬質炭素層はうろこ状、樹枝状、層状とも形容でき、扇状に成長した領域を有する硬質炭素層である。
このような柱状の硬質炭素層の下層に網目状の硬質炭素層が形成されているような被覆膜でも、柱状の硬質炭素層の上層に粒状の硬質炭素層が形成されているため、耐チッピング性と耐摩耗性の両立を十分に改善させるだけでなく、相手なじみ性、低摩擦性や耐剥離性が改善されていることが確認できた。
以上、本発明を実施の形態に基づき説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、上記の実施の形態に対して種々の変更を加えることが可能である。
1、23 被覆膜
1a 粒状の硬質炭素層
1b 柱状の硬質炭素層
1c 非晶質の硬質炭素層
21 基材
11 炉
12 真空チャンバー
13 ヒーター
14 自公転治具(基材支持装置)
15 熱電対
21’ CrN
22 中間層
24 SUJ2材
F TEM観察用カーボン膜
T ターゲット
W 摩擦摩耗試験試料

Claims (12)

  1. 基材の表面に被覆される被覆膜であって、
    断面を明視野TEM像により観察したとき、基材表面に対して垂直な方向に柱状に連なっている硬質炭素層と、前記硬質炭素層の直上に粒状の硬質炭素層とが形成されており、
    いずれの硬質炭素層も被覆膜断面の電子線回折で格子間隔0.3〜0.4nmの位置に回折を示すことを特徴とする被覆膜。
  2. 前記基材表面に対して垂直な方向に柱状に連なっている硬質炭素の幅が、1〜100nmであることを特徴とする請求項1に記載の被覆膜。
  3. 前記基材表面に対して垂直な方向に柱状に連なっている硬質炭素層の(002)面が前記基材表面に対して垂直な方向に配向しており、
    前記粒状の硬質炭素層の(002)面が前記基材表面に対してランダムな方向に配向していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の被覆膜。
  4. 前記基材表面に対して垂直な方向に柱状に連なっている硬質炭素層および/または前記粒状の硬質炭素層の水素含有量が、10原子%以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の被覆膜。
  5. 前記粒状の硬質炭素層が、最表面に形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の被覆膜。
  6. 前記基材表面に対して垂直な方向に柱状に連なっている硬質炭素層および/または前記粒状の硬質炭素層のsp/sp比が、0.5〜0.9であることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の被覆膜。
  7. 前記柱状の硬質炭素層の下層に、非晶質の硬質炭素層が形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の被覆膜。
  8. 前記非晶質の硬質炭素層のsp/sp比が0.1〜0.5であることを特徴とする請求項7に記載の被覆膜。
  9. 前記非晶質の硬質炭素層の水素含有量が、10原子%以下であることを特徴とする請求項7または請求項8に記載の被覆膜。
  10. アーク式PVD法を用いて、請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の被覆膜を製造する被覆膜の製造方法であって、
    −300〜−1500Vのバイアス電圧が印加され、前記基材の温度が250〜500℃に維持されるように、アーク電流、ヒーター温度および/または炉内圧力を制御すると共に、前記基材を自転および/または公転させながら、前記基材の表面に前記硬質炭素層を被覆するに際して、
    前記基材の温度を250℃以上325℃未満に維持することにより、前記基材表面に対して垂直な方向に柱状に連なっている硬質炭素層を形成した後、
    前記基材の温度を325℃以上500℃以下に維持することにより、前記粒状の硬質炭素層を形成することを特徴とする被覆膜の製造方法。
  11. 請求項10に記載の被覆膜の製造方法に用いられるPVD装置であって、
    前記基材の温度を250℃以上325℃未満に制御する第1制御手段と、前記基材の温度を325℃以上500℃以下に制御する第2制御手段とが備えられたアーク式PVD装置であることを特徴とするPVD装置。
  12. 前記基材を自公転自在に支持する基材支持手段と、
    前記基材の自転および/または公転の回転速度を制御する回転制御手段と
    を備えていることを特徴とする請求項11に記載のPVD装置。
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