以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
(第1実施形態)
まず、本実施形態に係るプロジェクターの一例について説明する。
図1は、本実施形態に係るプロジェクターの概略構成を示す図である。
図1に示すように、本実施形態のプロジェクター1は、スクリーンSCR上にカラー映像を表示する投射型画像表示装置である。プロジェクター1は、照明装置2と、色分離光学系3と、光変調装置4R,光変調装置4G,光変調装置4Bと、合成光学系5と、投射光学系6とを備えている。
色分離光学系3は、照明光WLを赤色光LRと、緑色光LGと、青色光LBとに分離する。色分離光学系3は、第1のダイクロイックミラー7a及び第2のダイクロイックミラー7bと、第1の全反射ミラー8a、第2の全反射ミラー8b及び第3の全反射ミラー8cと、第1のリレーレンズ9a及び第2のリレーレンズ9bとを概略備えている。
第1のダイクロイックミラー7aは、照明装置2からの照明光WLを赤色光LRと、その他の光(緑色光LG及び青色光LB)とに分離する。第1のダイクロイックミラー7aは、分離された赤色光LRを透過すると共に、その他の光(緑色光LG及び青色光LB)を反射する。一方、第2のダイクロイックミラー7bは、緑色光LGを反射すると共に青色光LBを透過することによって、その他の光を緑色光LGと青色光LBとに分離する。
第1の全反射ミラー8aは、赤色光LRの光路中に配置されて、第1のダイクロイックミラー7aを透過した赤色光LRを光変調装置4Rに向けて反射する。一方、第2の全反射ミラー8b及び第3の全反射ミラー8cは、青色光LBの光路中に配置されて、第2のダイクロイックミラー7bを透過した青色光LBを光変調装置4Bに導く。緑色光LGは、第2のダイクロイックミラー7bから光変調装置4Gに向けて反射される。
第1のリレーレンズ9a及び第2のリレーレンズ9bは、青色光LBの光路中における第2の全反射ミラー8bの光射出側に配置されている。第1のリレーレンズ9a及び第2のリレーレンズ9bは、青色光LBの光路長が赤色光LRや緑色光LGの光路長よりも長くなることに起因した青色光LBの光損失を補償する機能を有している。
光変調装置4Rは、赤色光LRを画像情報に応じて変調し、赤色光LRに対応した画像光を形成する。光変調装置4Gは、緑色光LGを画像情報に応じて変調し、緑色光LGに対応した画像光を形成する。光変調装置4Bは、青色光LBを画像情報に応じて変調し、青色光LBに対応した画像光を形成する。
光変調装置4R,光変調装置4G,光変調装置4Bには、例えば透過型の液晶パネルが用いられている。また、液晶パネルの入射側及び射出側各々には、偏光板(図示せず。)が配置されている。
また、光変調装置4R,光変調装置4G,光変調装置4Bの入射側には、それぞれフィールドレンズ10R,フィールドレンズ10G,フィールドレンズ10Bが配置されている。フィールドレンズ10R,フィールドレンズ10G,フィールドレンズ10Bは、光変調装置4R,光変調装置4G,光変調装置4Bそれぞれに入射する赤色光LR,緑色光LG,青色光LBそれぞれを平行化する。
合成光学系5には、光変調装置4R,光変調装置4G,光変調装置4Bからの画像光が入射する。合成光学系5は、各々が赤色光LR,緑色光LG,青色光LBに対応した画像光を合成し、この合成された画像光を投射光学系6に向けて射出する。合成光学系5には、例えばクロスダイクロイックプリズムが用いられている。
投射光学系6は、投射レンズ群からなり、合成光学系5により合成された画像光をスクリーンSCRに向けて拡大投射する。これにより、スクリーンSCR上には、拡大されたカラー映像が表示される。
(照明装置)
続いて、本発明の一実施形態に係る照明装置2について説明する。図2は照明装置2の概略構成を示す図である。図2に示すように、照明装置2は、光源装置2Aと、インテグレーター光学系31と、偏光変換素子32と、重畳レンズ33aとを備えている。本実施形態において、インテグレーター光学系31と重畳レンズ33aとは重畳光学系33を構成している。
光源装置2Aは、アレイ光源21Aと、コリメーター光学系22と、アフォーカル光学系23と、第1の位相差板28aと、ホモジナイザー光学系24と、偏光分離素子50Aを含む光学素子25Aと、第1の集光光学系26と、蛍光発光素子27と、第2の位相差板28bと、第2の集光光学系29と、拡散反射素子30とを備える。
アレイ光源21Aと、コリメーター光学系22と、アフォーカル光学系23と、第1の位相差板28aと、ホモジナイザー光学系24と、光学素子25Aと、第2の位相差板28bと、第2の集光光学系29と、拡散反射素子30とは、光軸ax1上に順次並んで配置されている。一方、蛍光発光素子27と、第1の集光光学系26と、光学素子25Aと、インテグレーター光学系31と、偏光変換素子32と、重畳レンズ33aとは、光軸ax2上に順次並んで配置されている。光軸ax1と光軸ax2とは、同一面内にあり、互いに直交する。
アレイ光源21Aは、固体光源としての複数の半導体レーザー211を備える。複数の半導体レーザー211は光軸ax1と直交する同一面内において、アレイ状に並んで配置されている。半導体レーザー211は、例えば青色の光線BL(例えばピーク波長が460nmのレーザー光)を射出する。本実施形態において、アレイ光源21Aは、複数の光線BLからなる光線束を射出する。
アレイ光源21Aから射出された光線BLは、コリメーター光学系22に入射する。コリメーター光学系22は、アレイ光源21Aから射出された光線BLを平行光束に変換する。コリメーター光学系22は、例えばアレイ状に並んで配置された複数のコリメーターレンズ22aから構成されている。複数のコリメーターレンズ22aは、複数の半導体レーザー211に対応して配置されている。
コリメーター光学系22を通過した光線BLは、アフォーカル光学系23に入射する。アフォーカル光学系23は、光線BLの光束径を調整する。アフォーカル光学系23は、例えば凸レンズ23a,凹レンズ23bから構成されている。
アフォーカル光学系23を通過した光線BLは第1の位相差板28aに入射する。第1の位相差板28aは、例えば回転可能とされた1/2波長板である。半導体レーザー211から射出された光線BLは直線偏光である。1/2波長板の回転角度を適切に設定することにより、第1の位相差板28aを透過した光線BLを、光学素子25Aに対するS偏光成分とP偏光成分とを所定の比率で含む光線とすることができる。第1の位相差板28aを回転させることにより、S偏光成分とP偏光成分との比率を変化させることができる。
第1の位相差板28aを通過することによりS偏光成分の光線BLsとP偏光成分の光線BLpとを含む光は、ホモジナイザー光学系24に入射する。本実施形態において、第1の位相差板28a及びアレイ光源21Aは、特許請求の範囲の「光源部」に相当し、P偏光成分の光線BLpは、特許請求の範囲の「第1の偏光成分」に相当する。
ホモジナイザー光学系24は、第1の集光光学系26と協働して、蛍光体層34上での光線BLsによる照度分布を均一化する。また、ホモジナイザー光学系24は、第2の集光光学系29と協働して、後述する拡散反射素子30上での青色光BLc1による照度分布を均一化する。ホモジナイザー光学系24は、例えば第1のレンズアレイ24aと第2のレンズアレイ24bとから構成されている。第1のレンズアレイ24aは複数の第1小レンズ24amを含み、第2のレンズアレイ24bは複数の第2小レンズ24bmを含む。複数の第2小レンズ24bmは複数の第1小レンズ24amとそれぞれ対応している。
ホモジナイザー光学系24を透過した光は光学素子25Aに入射する。光学素子25Aは、例えば波長選択性を有するダイクロイックプリズムから構成されている。ダイクロイックプリズムは、光軸ax1に対して45°の角度をなす傾斜面Kを有している。傾斜面Kは、光軸ax2に対しても45°の角度をなしている。
傾斜面Kには、波長選択特性を有する偏光分離素子50Aが設けられている。偏光分離素子50Aは、第1の位相差板28aを通過した光を、偏光分離素子50Aに対するS偏光成分とP偏光成分とに分離する偏光分離機能を有している。具体的に、偏光分離素子50Aは、S偏光成分の光線BLsを反射させ、P偏光成分の光線BLpを透過させる。
また、偏光分離素子50Aは光線BLs及び光線BLpとは波長帯が異なる蛍光YLを、その偏光状態にかかわらず透過させる色分離機能を有している。
偏光分離素子50Aから射出されたS偏光の光線BLsは、第1の集光光学系26に入射する。第1の集光光学系26は、光線BLsを蛍光体層34に向けて集光させるとともに、蛍光体層34の上で互いに重畳させる。本実施形態において、蛍光体層34は特許請求の範囲の「波長変換素子」に相当する。
本実施形態において、第1の集光光学系26は、例えば第1レンズ26a及び第2レンズ26bから構成されている。第1の集光光学系26から射出された光線BLsは、蛍光発光素子27に入射する。蛍光発光素子27は、蛍光体層34と、この蛍光体層34を支持する基板35と、蛍光体層34を基板35に固定する固定部材36とを有している。
本実施形態において、蛍光体層34は、蛍光体層34の側面と基板35との間に設けられた固定部材36により、基板35に固定されている。蛍光体層34の光線BLsが入射する側とは反対側の面は基板35に接触している。
蛍光体層34は、波長440nmの光線BLを吸収して励起される蛍光体を含む。
この光線BLsにより励起された蛍光体は、例えば500〜700nmの波長域にピーク波長を有する蛍光(黄色光)YLを射出する。
蛍光体層34には、耐熱性及び表面加工性に優れたものを用いることが好ましい。このような蛍光体層34としては、例えば、アルミナ等の無機バインダー中に蛍光体粒子を分散させた蛍光体層や、バインダーを用いずに蛍光体粒子を焼結した蛍光体層などを好適に用いることができる。
蛍光体層34の光線BLsが入射する側とは反対側には、第1の反射素子としての反射部37が設けられている。反射部37は、蛍光体層34で生成された蛍光YLのうち、基板35に向かって進む成分を反射する。
基板35の蛍光体層34を支持する面とは反対側の面には、ヒートシンク38が配置されている。蛍光発光素子27では、このヒートシンク38を介して放熱できるため、蛍光体層34の熱劣化を防ぐことができる。
蛍光体層34で生成された蛍光YLのうち、一部の蛍光YLは、反射部37によって反射され、蛍光体層34の外部へと射出される。また、蛍光体層34で生成された蛍光YLのうち、他の一部の蛍光YLは、反射部37を介さずに蛍光体層34の外部へと射出される。このようにして、蛍光YLが蛍光体層34から射出される。
蛍光体層34から射出された蛍光YLは、非偏光光である。蛍光YLは、第1の集光光学系26を通過した後、偏光分離素子50Aに入射する。そして、この蛍光YLは、偏光分離素子50Aからインテグレーター光学系31に向けて進む。
一方、偏光分離素子50Aから射出されたP偏光の光線BLpは、第2の位相差板28bに入射する。第2の位相差板28bは、偏光分離素子50Aと拡散反射素子30との間の光路中に配置された1/4波長板から構成されている。したがって、偏光分離素子50Aから射出されたP偏光の光線BLpは、この第2の位相差板28bによって、例えば、右回り円偏光の青色光BLc1に変換された後、第2の集光光学系29に入射する。本実施形態において、第2の位相差板28bは特許請求の範囲の「位相差素子」に相当する。
本実施形態において、第2の集光光学系29は、例えば1つのレンズ29aから構成されており、青色光BLc1を拡散反射素子30に向けて集光させる。本実施形態において、レンズ29aは、例えば、正の線膨張係数を持つ硝子から構成されている。
拡散反射素子30は、第2の集光光学系29から射出された青色光BLc1を偏光分離素子50Aに向けて拡散反射させる。拡散反射素子30としては、青色光BLc1をランバート反射させるものを用いることが好ましい。
図3は拡散反射素子30の断面図である。
図3に示すように、拡散反射素子30は、基材43と、反射膜44と、を備えている。基材43は、例えば硝子等の任意の材料で構成されている。
基材43の2つの面のうち、青色光BLc1が入射する側の面に、ランダムに配置された複数の曲面を含む凹凸構造43aが設けられている。本実施形態では、凹凸構造43aは複数の凹部からなり、個々の凹部は略球面状に形成されている。凹部の深さは、例えば球面全体の径の1/4程度である。拡散反射素子30を光の入射方向から見た場合、複数の凹部はランダムに配置されている。
反射膜44は、例えば銀、アルミニウム等の光反射率の高い金属で形成された金属反射膜である。反射膜44は凹凸構造43aの形状に沿って形成されており、反射膜44の表面も略球面状の形状を呈している。凹凸構造43aの表面に反射膜44が形成されたことにより、凹凸構造43aは反射性を有する。拡散反射素子30の反射膜44の形成面に青色光BLc1が入射したとき、青色光BLc1は1回の反射で射出され、多重反射は生じない。これにより、青色光BLc1が拡散反射素子30によって反射されるときの、その偏光状態の乱れが低減される。
反射膜44として、金属反射膜に限らず、例えば誘電体多層膜を用いることも可能である。しかしながら、反射膜44として金属反射膜を用いた場合、誘電体多層膜からなる反射膜を用いた場合と比べて、光の入射角が変化しても反射特性が低下しにくい。その結果、拡散反射素子30による光の損失が少なくなり、光の利用効率を高めることができる。
なお、拡散反射素子30の構造は図3に示した構成に限定されない。例えば、基材が銀、アルミニウム等の金属を形成しても良い。この場合、基材自体が光反射性を有しているため、基材上に金属膜を形成する必要がない。また、図3に示した構造では、凹凸構造43aの表面に反射膜44を形成したが、基材43の2つの面のうち、青色光BLc1が入射する側の面と反対側の面に反射膜44を形成しても良い。
拡散反射素子30によって拡散反射された光を青色光BLc2と称する。本実施形態によれば、上記拡散反射素子30を用いることにより、青色光BLc1を拡散反射させて、略均一な照度分布を有する青色光BLc2を得ることができる。ここで、右回り円偏光の青色光BLc1は左回り円偏光の青色光BLc2として反射される。
青色光BLc2は第2の集光光学系29にピックアップされることで平行光に変換された後に再び第2の位相差板28bに入射する。本実施形態において、第2の集光光学系29は、特許請求の範囲に記載の「集光光学系」及び「ピックアップ光学系」に相当するものである。つまり、第2の集光光学系29は、集光光学系としての機能とピックアップ光学系としての機能とを兼ねた光学系を構成している。
左回り円偏光の青色光BLc2は、第2の位相差板28bによってS偏光の青色光BL’sに変換される。S偏光の青色光BL’sは、偏光分離素子50Aによってインテグレーター光学系31に向けて反射される。
これにより、青色光BL’sは、偏光分離素子50Aを透過した蛍光YLと共に、照明光WLとして利用されることになる。すなわち、青色光BL’s及び蛍光YLは、偏光分離素子50Aから互いに同一方向に向けて射出される。これにより、青色光BL’sと蛍光(黄色光)YLとが混ざった白色の照明光WLが得られる。
照明光WLは、インテグレーター光学系31に向けて射出される。インテグレーター光学系31は、例えば、レンズアレイ31a,レンズアレイ31bから構成されている。レンズアレイ31a,31bは、複数の小レンズがアレイ状に配列されたものからなる。
インテグレーター光学系31を透過した照明光WLは、偏光変換素子32に入射する。偏光変換素子32は、偏光分離膜と位相差板とから構成されている。偏光変換素子32は、非偏光の蛍光YLを含む照明光WLを直線偏光に変換する。
偏光変換素子32を透過した照明光WLは、重畳光学系33に入射する。重畳光学系33はインテグレーター光学系31と協同して、被照明領域における照明光WLによる照度の分布を均一化する。このようにして、照明装置2は照明光WLを生成する。
ところで、上記説明では理想的な場合について説明した。すなわち、拡散反射素子30から戻ってきた青色光BLc2が第2の位相差板28bによってS偏光に変換される場合について説明した。この場合、偏光分離素子50Aにより反射された青色光BL’sの光量は偏光分離素子50Aに入射した青色光BL’sの光量とほぼ同じである。しかしながら、実際には、偏光分離素子50Aにより反射された青色光BL’sの光量が反射前の光量に比べて減少する場合がある。この傾向は半導体レーザー211のパワーが大きくなるほど顕著となる。
ここで、第2の集光光学系29(レンズ29a)を構成する硝材は内部吸収率がゼロではない。そのため、レンズ29aはアレイ光源21Aから射出されたレーザー光(青色光BLc1或いはBLc2)の一部を吸収して発熱する。
ここで、比較例として、レンズ29aと同じ正の線膨張係数を持つ硝子からなるレンズがレーザー光を吸収した場合のシミュレーション結果について説明する。以下、このレンズを比較用レンズ29bと呼ぶ。比較用レンズ29bとレンズ29aとの違いは、後述のように光が入射していない状態において表層に応力を有しているか否かの点である。
図4は比較用レンズ29bに生じる発熱時の温度分布のシミュレーション結果を示す図である。図4に示すように、比較用レンズ29bはレーザー光を吸収すると、中央部に最も高温となる高温部を有した温度分布が生じる。
図5は発熱時の比較用レンズ29bに生じる応力分布のシミュレーション結果である。なお、図5において、符号A1で示す領域は圧縮応力が生じている圧縮応力発生領域に相当し、符号A2で示す領域は引張応力が生じている引張応力発生領域に相当する。
図5に示すように、比較用レンズ29bでは、発熱による熱歪み(膨張)によって、その表層に引張応力が生じ、その内部に圧縮応力が生じた状態となる。
図6は比較用レンズ29bにおいて熱歪みが生じた場合の現象を模式的に示した図である。図6中の矢印左側に示される状態は比較用レンズ29bに熱歪みが生じない非発熱時に相当し、図6中の矢印右側に示される状態は比較用レンズ29bに熱歪みが生じる発熱時の状態に相当する。
熱歪によって膨張した比較用レンズ29bは、図6に示すように、その表層に引張応力F1が生じ、その内部に圧縮応力F2が生じた状態となる。比較用レンズ29bは熱歪みによって複屈折が大きくなるため、入射光(青色光BLc1或いは青色光BLc2)の偏光状態を乱すようになる。
光弾性効果による偏光状態の乱れは、偏光分離素子50Aによりインテグレーター光学系31に向けて反射された青色光BL’sの光量を減少させる。そのため、照明光WLとして利用できる青色光BL’sの青色光BLc2に対する割合が減少する。つまり、光線BLp(第1の偏光成分)の利用効率が低下してしまう。
これに対し、本実施形態においては、第2の集光光学系29を構成するレンズ29aとして予め表層及び内部に応力を有したレンズを用いている。つまり、レンズ29aは特許請求の範囲の「第1のレンズ」に相当する。
本実施形態のレンズ29aは、青色光BLc1が該レンズ29aに入射していないとき、表層に圧縮応力を有し、内部に引張応力を有している。ここで、青色光BLc1が該レンズ29aに入射していないときとは、例えば、プロジェクター1の電源がOFF状態のため、アレイ光源21Aからレーザー光が射出されず、レンズ29aが室温となっている状態を意味する。
このようなレンズ29aは物理強化法或いは化学強化法(イオン交換法)によって形成することができる。ここで、一般に化学強化法によってレンズ表層に形成される圧縮応力層の厚さは、物理強化法によってレンズ表層に形成される圧縮応力層の厚さよりも薄い。しかしながら、物理強化法によって圧縮応力層に所定の応力分布を持たせることは難しい。
そこで、本実施形態では、レンズ29aとしてイオン交換法によって強化されたレンズを用いた。さらに、レンズ29aの表層に圧縮応力層をより深く形成するため、K2Oを含有した硝子を用いてレンズ29aを形成するようにした。K2Oは、化学強化におけるイオン交換速度を大きくする作用があるため、レンズ29aの表層に形成される圧縮応力層の厚さを大きくすることができる。このように本実施形態では、K2Oを含有する硝子をイオン交換法によって強化することで、後述の圧力分布を有したレンズ29aを実現している。
図7は、上記応力分布を有するレンズ29aにおいて熱歪みが生じた場合の現象を模式的に示した図である。図7において、符号F11はレンズ29aの表層に生じている圧縮応力であり、符号F22はレンズ29aの内部に生じている引張応力である。図7中の矢印左側に示される状態はレンズ29aに熱歪みが生じない非発熱時に相当し、図7中の矢印右側に示される状態はレンズ29aに熱歪みが生じる発熱時の状態に相当する。
レンズ29aにおいて上述の温度分布が発生すると、図6に示した比較用レンズ29bと同様に、その表層に引張応力F1が発生し、内部に圧縮応力F2が発生する。このとき、レンズ29aは表層及び内部に上記応力が予め生じているため、レンズ29aの表層においては上記圧縮応力F11と上記引張応力F1とが合成され、レンズ29aの内部においては上記引張応力F22と上記圧縮応力F2とが合成される。
本実施形態においては、光源装置2Aの使用時にレンズ29aに生じる熱歪みの大きさから上記応力(図6に示した引張応力F1及び圧縮応力F2)を予め算出している。そして、この応力を打ち消す大きさに圧縮応力F11及び引張応力F22を設定するようにしている。そのため、熱歪みによりレンズ29aに発生した応力の少なくとも一部は該レンズ29a内に生じている潜在的な応力(圧縮応力F11及び上記引張応力F22)により相殺される。そのため、光源装置2Aの使用時においてレンズ29a内に生じる応力分布は比較的小さい。
なお、レンズに生じる熱歪みは以下の方法で検出可能である。例えば、一対の偏光板の間にスライスしたレンズを配置し、単一波長光束を一方の偏向板側から他方の偏光板側に向かって照射する。このとき、一対の偏光板を平行ニコルに保ちながら光線軸回りに一回転したときの、透過光強度の角度依存性からレンズの位相差を算出し、この位相差からレンズに生じている歪みを算出する。
本実施形態の光源装置2Aによれば、光源装置2Aの使用時に温度が上昇した場合、光弾性効果による複屈折が小さくなるので、レンズ29aに入射した光の偏光状態の乱れを低減することができる。よって、レンズ29aに入射した青色光BLc2は、偏光状態が乱れることなく円偏光状態を保ったまま第2の位相差板28bに入射し、第2の位相差板28bによってS偏光に変換される。これにより、青色光BLc2は偏光分離素子50Aによって高い効率で反射され、照明光WLとして有効利用される。
したがって、本実施形態の照明装置2は、明るい照明光WLを照射することができる。
また、本実施形態のプロジェクター1によれば、明るい照明光WLを射出する照明装置2を備えるので、明るい画像光をスクリーンSCR上に投射できる。
(第2実施形態)
続いて、第2実施形態に係るプロジェクター1について説明する。なお、上記実施形態と共通の構成及び部材については同じ符号を付し、その説明については省略若しくは簡略化する。
図8は本実施形態のプロジェクターの概略構成を示す図である。
図8に示すように、本実施形態のプロジェクター1Aは、上記実施形態のプロジェクター1における照明装置2の代わりに、第1照明装置12Aおよび第2照明装置12Bを備えている。
本実施形態において、第1照明装置12Aは赤色光及び緑色光を含む黄色の蛍光YLを射出し、第2照明装置12Bは青色光を射出する。そのため、本実施形態のプロジェクター1Aは、色分離光学系3Aの構成が上記実施形態の色分離光学系3とは異なっている。
本実施形態の色分離光学系3Aは、第1照明装置12Aから射出された蛍光YLを赤色光LRと、緑色光LGとに分離する。色分離光学系3Aは、第1のダイクロイックミラー7aと、第1の全反射ミラー8aと、第4の全反射ミラー8dとを含む。
第1のダイクロイックミラー7aは、第1照明装置12Aからの蛍光YLを赤色光LRと、緑色光LGとに分離する。第1のダイクロイックミラー7aは、分離された赤色光LRを透過すると共に緑色光LGを反射する。第1の全反射ミラー8aは、赤色光LRを反射して光変調装置4Rに導く。第4の全反射ミラー8dは、緑色光LGを反射して光変調装置4Gに導く。
第1照明装置12Aは、図8に示すように、第1光源100、コリメート光学系70、ダイクロイックミラー80、コリメート集光光学系90、回転蛍光板40、インテグレーター光学系31と、偏光変換素子32と、重畳レンズ33aとを備える。
第1光源100は、励起光としてレーザー光からなる第1の波長帯の青色光(発光強度のピーク:約445nm)Eを射出する半導体レーザーからなる。第1光源100は、1つの半導体レーザーからなるものであってもよいし、多数の半導体レーザーからなるものであってもよい。なお、第1光源100は、445nm以外の波長(例えば、460nm)の青色光を射出する半導体レーザーを用いることもできる。
本実施形態において、第1光源100は、その光軸が照明光軸100axと直交するように配置されている。
コリメート光学系70は、第1レンズ72と、第2レンズ74とを備え、第1光源100からの光を略平行化する。第1レンズ72及び第2レンズ74は、凸レンズからなる。
ダイクロイックミラー80は、コリメート光学系70からコリメート集光光学系90までの光路中に、第1光源100の光軸及び照明光軸100axのそれぞれに対して45°の角度で交わるように配置されている。ダイクロイックミラー80は、青色光Eを反射し、赤色光及び緑色光を含む黄色の蛍光YLを通過させる。
コリメート集光光学系90は、ダイクロイックミラー80からの青色光Eを略集光した状態で回転蛍光板40の蛍光体層42に入射させる機能と、回転蛍光板40から射出される蛍光YLを略平行化する機能とを有する。コリメート集光光学系90は、第1レンズ92及び第2レンズ94を備える。第1レンズ92及び第2レンズ94は、凸レンズからなる。
回転蛍光板40は、モーター50と、モーター50により回転する円板40aと、円板40a上に形成された蛍光体層42と、蛍光体層42と円板40aとの間に形成された反射層41と、を備える。蛍光体層42及び反射層41は、円板40a上にリング状に形成される。
第2照明装置12Bは、第2光源110と、集光光学系160と、拡散板132と、ピックアップ光学系170と、インテグレーター光学系31と、重畳レンズ33aとを備える。本実施形態において、第2光源110、集光光学系160、拡散板132及びピックアップ光学系170は光源装置12B1を構成する。
第2光源110は、上記第1照明装置12Aの第1光源100と同一構成からなり、例えば、複数の半導体レーザーから構成される。第2光源110は、その光軸が照明光軸101axと平行に配置され、レーザー光からなる青色光Bを射出する。本実施形態において、第2光源110は、特許請求の範囲の「光源部」に相当する。
集光光学系160は、第1レンズ162及び第2レンズ164を備える。集光光学系160は、第2光源110からの青色光を拡散板132付近に集光する。第1レンズ162及び第2レンズ164は、凸レンズからなる。第1レンズ162は、第2レンズ164よりも拡散板132の近くに配置される。本実施形態において、拡散板132は、特許請求の範囲の「光学素子」に相当する。
拡散板132は、第2光源110からの青色光Bを拡散し、回転蛍光板40から射出される蛍光YLの配光分布に似た配光分布を有する青色光Bを生成する。拡散板132としては、例えば、光学硝子からなる磨り硝子を用いることができる。なお、拡散板132をモーター等の駆動装置により回転させるようにしても良い。このようにすれば、レーザー光からなる青色光Bのスペックルを低減させることができる。
ピックアップ光学系170は、第1ピックアップレンズ172と、第2ピックアップレンズ174とを備え、拡散板132からの光をピックアップして略平行化する。第1ピックアップレンズ172及び第2ピックアップレンズ174は、凸レンズからなる。第1ピックアップレンズ172は、第2ピックアップレンズ174よりも拡散板132の近くに配置される。
本実施形態において、光源装置12B1から射出された青色光Bは、インテグレーター光学系31、重畳レンズ33a、第3の全反射ミラー8cおよびフィールドレンズ10Bを介して被照明領域(光変調装置4Bの画素形成領域近傍)に青色光LBとして重畳される。これにより、被照明領域は略均一な照度分布の青色光LBで照明される。
ところで、本実施形態の第2照明装置12Bにおいて、集光光学系160或いはピックアップ光学系170は第1光源100から射出されたレーザー光(青色光B)の一部を吸収して発熱するおそれがある。
本実施形態において、第1光源100から射出される青色光Bは直線偏光である。そのため、上述のように集光光学系160或いはピックアップ光学系170が発熱すると熱歪みが生じ、光弾性効果によって青色光Bの偏光状態が乱れる。
青色光Bの偏光状態が乱れると、青色光Bの一部の成分は、光変調装置4Bの前段に配置された入射側偏光板(不図示)を通過できない。
つまり、青色光Bの光利用効率が低下してしまうおそれがある。特に集光光学系160はレーザー光を集光させるため、発熱量が大きくなることで熱歪みが生じやすく、光弾性効果による複屈折が大きくなる。そのため、青色光Bの光利用効率が大きく低下するおそれがある。
本実施形態では、集光光学系160は、第1レンズ162及び第2レンズ164から構成されている。第1レンズ162を通過する青色光Bの集光度は第2レンズ164を通過する青色光Bの集光度よりも高いため、第1レンズ162の方が第2レンズ164よりも温度が高くなりやすい。そのため、光源装置12B1の使用時に第1レンズ162の方がより大きな複屈折を持つ。
本実施形態においては、第1レンズ162として表層および内部に応力を有したレンズを用いた。つまり、第1レンズ162は特許請求の範囲の「第1のレンズ」に相当する。一方、第2レンズ164としては、応力分布を有しない、一般的な硝子からなるレンズを用いた。
図9は第1レンズ162及び第2レンズ164で熱歪みが生じた場合の現象を模式的に示した図である。なお、本実施形態の第1レンズ162は、正の線膨張係数を持ち、K2Oを含有した硝子から構成されたレンズである。図9中の矢印左側に示される状態は第1レンズ162及び第2レンズ164に熱歪みが生じない非発熱時に相当し、図9中の矢印右側に示される状態は第1レンズ162及び第2レンズ164に熱歪みが生じる発熱時の状態に相当する。
図9において、符号F3は第1レンズ162の表層に生じている圧縮応力であり、符号F4は第1レンズ162の内部に生じている引張応力である。なお、第1レンズ162においては、青色光Bが入射しないとき(室温状態の場合)、これら圧縮応力F3及び引張応力F4が生じている。
本実施形態において、圧縮応力F3及び引張応力F4は、青色光Bが入射することで発熱した際に第1レンズ162に生じる熱歪みによる後述の引張応力F32及び圧縮応力F42をそれぞれ相殺する力よりも強い力に設定されている。以下、便宜上、圧縮応力F3を強圧縮応力F3と称し、引張応力F4を強引張応力F4と称す。
集光光学系160に青色光Bが入射すると、青色光Bの一部を吸収することで第2レンズ164及び第1レンズ162が発熱する。
光源に近い第2レンズ164においては、その表層に引張応力F31が発生し、内部に圧縮応力F41が発生する。第2レンズ164においては、第1レンズ162で生じる温度分布よりも小さい温度分布が生じる。そのため、第2レンズ164には、その表層に相対的に弱い引張応力F31(以下、弱引張応力F31と称す)が発生し、内部に相対的に弱い圧縮応力F41(以下、弱圧縮応力F41と称す)が発生する。
このような応力分布が生じた第2レンズ164においては、光弾性効果による複屈折が僅かに生じてしまう。そのため、第2レンズ164を透過した青色光Bにおいては、僅かな偏光状態の乱れが生じる。
一方、第1レンズ162においては発熱による熱歪みによって、その表層に引張応力F32が生じ、内部に圧縮応力F42が生じる。
第1レンズ162は強圧縮応力F3及び強引張応力F4を予め有するため、第1レンズ162の表層では上記強圧縮応力F3と上記弱引張応力F32とが合成され、第1レンズ162の内部では上記強引張応力F4と上記弱圧縮応力F42とが合成されることになる。
そのため、第1レンズ162は、表層において強圧縮応力F3よりも弱い弱圧縮応力F33が発生し、内部において強引張応力F4よりも弱い弱引張応力F43が発生する。本実施形態において、弱圧縮応力F33と弱引張応力F43の大きさはそれぞれ、第2レンズ164に生じている弱引張応力F31と弱圧縮応力F41の大きさと略同等となっている。
このような応力分布が生じた第1レンズ162においては、光弾性効果による複屈折が僅かに生じてしまう。
ここで、第1レンズ162に生じている応力分布は、第2レンズ164の応力分布をレンズ内部と表層とで反転させた関係となっている。そのため、第1レンズ162によって生じる複屈折は、第2レンズ164によって生じる複屈折によって略相殺される。つまり、第2レンズ164を透過した際に生じていた青色光Bの偏光状態の乱れが第1レンズ162を透過することで低減される。
本実施形態の第2照明装置12Bによれば、第1レンズ162に付与する室温時の応力分布を調整することで、青色光Bが集光光学系160を透過する際に生じる偏光状態の乱れを低減することができる。よって、偏光状態の乱れが低減された青色光Bは光変調装置4Bの前段に配置された入射側偏光板(不図示)を高い効率で通過する。つまり、青色光Bの光利用効率を向上させることができる。
本実施形態においては、光変調装置4Bに偏光状態の乱れが低減された青色光Bが入射するので、前記入射側偏光板を省略してもよい。このようにすれば、入射側偏光板による青色光Bの損失が起こらないので、青色光Bを効率良く利用することができる。
以上述べたように、本実施形態のプロジェクター1Aによれば、明るい青色光Bを射出する第2照明装置12Bを備えるので、明るい画像光をスクリーンSCR上に投射できる。
なお、本発明は上記実施形態の内容に限定されることはなく、発明の主旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
例えば、上記第2実施形態では、集光光学系160を構成する第1レンズ162及び第2レンズ164のうち、拡散板132に近い第1レンズ162に応力分布を持たせるようにしたが、第2レンズ164に応力分布を持たせるようにしても良い。
また、拡散板132で拡散された青色光Bが入射するピックアップ光学系170においても発熱による熱歪みが生じることで、青色光Bの偏光状態に乱れが生じるおそれがある。そこで、ピックアップ光学系170を構成する第1ピックアップレンズ172及び第2ピックアップレンズ174のいずれか一方に応力分布を持たせることで複屈折を低減するようにしても良い。
また、集光光学系160を構成する第1レンズ162及び第2レンズ164の一方を石英レンズで形成しても用いても良い。
ここで、石英レンズとしては例えば、合成石英を用いることができる。合成石英は、青色光Bの波長において内部吸収率が例えば、0.1%以下であり、一般の光学硝子の内部吸収率の1/50程度である。そのため、強い光が入射しても発熱しにくい。また、合成石英は、熱膨張係数が一般の光学硝子の熱膨張係数の1/10程度であるため、温度が上昇しても歪みにくい。そのため、青色光Bの強度を強くしても、大きな熱歪みが起こりにくい。つまり、光弾性効果による偏光状態の変化が起こりにくい。
石英レンズは、通常の硝子からなるレンズに比べて、光弾性効果による偏光状態の変化が起こり難くい。そのため、第1レンズ162及び第2レンズ164のうち、拡散板132に近く高温となる第1レンズ162を石英レンズで形成するのが好ましい。この構成によれば、偏光状態の変化をより低減させることができる。なお、この場合において、第1レンズ162は特許請求の範囲の「第2のレンズ」に相当する。
また、上記実施形態では、第2の集光光学系29を構成するレンズ29a及び集光光学系160の第1レンズ162が正の線膨張係数を持つ硝子から構成される場合を例に挙げたが、本発明はこれに限定されない。
例えば、レンズ29a及び第1レンズ162が負の線膨張係数を持つ硝子から構成されていても良い。この場合、レンズ29a及び第1レンズ162は、室温において表層に引張応力を有し、内部に圧縮応力を有していればよい。例えば、レンズ29aにおいて熱歪みが生じると、その表層に圧縮応力が発生し、内部に引張応力が発生する。このとき、レンズ29aは表層及び内部に上記応力が生じているため、レンズ29aの表層においては引張応力と圧縮応力とが合成され、レンズ29aの内部においては圧縮応力と引張応力とが合成される。これにより、発熱時にレンズ29aに発生する応力分布を低減することができる。
また、上記実施形態では、3つの光変調装置4R,4G,4Bを備えるプロジェクター1を例示したが、1つの光変調装置でカラー映像を表示するプロジェクターに適用することも可能である。また、光変調装置として、デジタルミラーデバイスを用いてもよい。
また、上記実施形態では本発明による光源装置をプロジェクターに搭載した例を示したが、これに限られない。本発明による光源装置は、照明器具や自動車のヘッドライト等にも適用することができる。