以下、図面を参照しながら各実施例を説明する。尚、以下の説明では、信号レベルの大小を論じる場合に、振幅が大きい、あるいは振幅が小さい、の表現を用いることがある。この振幅とは、基準となる信号値から変化した量を示すものである。例えば信号Aの電位(例えば0V)が信号Bの電位(例えば1V)よりも、数値として小さい場合がある。この場合に、信号Aおよび信号Bの電位の基準となる信号レベルが信号A、信号Bの中間の電位よりも大きい(例えば3V)のであれば、信号Aの振幅は信号Bの振幅よりも大きいとして表現される。
(実施例1)
図1(a)は、本実施例の撮像装置を示した図である。
画素アレイ101は、複数行および複数列に渡って配された複数の画素100を有する。垂直走査回路102は、画素アレイ101の複数の画素100を行単位で順次走査する垂直走査を行う。各行の複数の画素100は、垂直走査回路102と制御信号線を介して電気的に接続されている。また、各列の複数の画素100は、垂直信号線110に電気的に接続されている。各列の垂直信号線110は、複数の画素100の1つの列に対応して配されている。この垂直信号線110は、画素アレイ101の外部に配された比較器104に電気的に接続されている。比較器104には、垂直信号線110を介して画素100が出力する信号が入力される。この比較器104に入力される信号を信号VINと表記する。比較器104は、選択回路108に電気的に接続されている。この選択回路108には、参照信号供給回路103からランプ信号VRMP1、ランプ信号VRMP2が供給される。選択回路108は、ランプ信号VRMP1、ランプ信号VRMP2のうちの一方のランプ信号を選択して比較器104に出力する。選択回路108が比較器104に出力するランプ信号をランプ信号VRMPIと表記する。ランプ信号VRMP1、ランプ信号VRMP2のそれぞれは、所定の時間変化率で、時間の経過に伴なって電位が変化する信号である。尚、本実施例では、ランプ信号VRMP1の時間変化率は、ランプ信号VRMP2の時間変化率の1/4倍としている。
参照信号供給回路103はランプ信号VRMP1、ランプ信号VRMP2を供給する参照信号供給部である。
各列の比較器104は、1つのカウンタ105に電気的に接続されている。カウンタ105は、不図示のタイミングジェネレータからクロック信号が入力される。カウンタ105は、このクロック信号を計数したカウント信号を生成する。
各列のカウンタ105は、1つのメモリ106に電気的に接続されている。各列のメモリ106は、対応するカウンタ105が生成したカウント信号を保持する。
1つのAD変換部200は、1つの比較器104、1つのカウンタ105、1つのメモリ106を有する。この1つのAD変換部200は、複数の画素100の1つの列に対応して設けられている。
水平走査回路107は、各列のメモリ106を順次走査する水平走査を行う。これにより、各列のメモリ106が保持したカウント信号(画像信号)が出力される。
図1(b)は、画素100の構成を示した図である。画素100は、フォトダイオードPD、リセットトランジスタM1、転送トランジスタM2、増幅トランジスタM3、選択トランジスタM4を有する。リセットトランジスタM1の制御ノードには、垂直走査回路102から信号φRが入力される。また、転送トランジスタM2の制御ノードには、垂直走査回路102から信号φTが入力される。また、選択トランジスタM4の入力ノードには、垂直走査回路102から信号φSELが入力される。リセットトランジスタM1の一方の主ノードと増幅トランジスタM3の一方の主ノードのそれぞれには電源電圧VDDが入力される。リセットトランジスタM1の他方の主ノードと、転送トランジスタM2の一方の主ノードと、増幅トランジスタM3の制御ノードはノードFDに電気的に接続される。転送トランジスタM2の他方の主ノードは、フォトダイオードPDに電気的に接続される。
増幅トランジスタM3の他方の主ノードは、選択トランジスタM4の一方の主ノードに電気的に接続される。選択トランジスタM4の他方の主ノードは垂直信号線110に電気的に接続される。尚、増幅トランジスタM3は、垂直信号線110に電気的に接続された不図示の電流源と、電源電圧VDDとともにソースフォロワ回路を構成する。
図2は、図1(a)に示した撮像装置の動作を示した図である。図2では、図1(a)に示した複数行の画素100のうち、1行の画素100に関わる動作を示している。図2では信号φSELの表記を省略しているが、時刻T0から時刻T11に渡って、垂直走査回路102は、1行の画素100の選択トランジスタM4に出力する信号φSELの信号レベルをHighレベル(以下、Hiと表記する)としている。よって、時刻T0から時刻T11に渡って、選択トランジスタM4はONの状態となっている。
図2に示した信号φR、信号φTは図1(b)に示したそれぞれの信号に対応している。図2に示したランプ信号VRMPIは、上述した通り、選択回路108が比較器104に出力するランプ信号である。
時刻T0よりも前の期間において、垂直走査回路102は、信号φR、信号φTのそれぞれの信号レベルをLowレベル(以下、Loと表記する)としている。よって信号φR、信号φTが入力される、リセットトランジスタM1、転送トランジスタM2はそれぞれOFFの状態である。
時刻T0に、垂直走査回路102は信号φRをHiとする。これにより、リセットトランジスタM1がONの状態となる。リセットトランジスタM1がONすることにより、ノードFDは、電源電圧VDDに基づく電位にリセットされる。
時刻T1に垂直走査回路102は信号φRをLoとする。これにより、リセットトランジスタM1がOFFする。よって、ノードFDのリセットが解除される。増幅トランジスタM3は、リセットが解除されたノードFDの電位に基づく信号を出力する。この信号を、N信号と表記する。
時刻T2から、参照信号供給回路103はランプ信号VRMP1の時間の経過にともなう電位の変化を開始する。参照信号供給回路103はランプ信号VRMP2の電位は変化させない。全ての列の選択回路108は、ランプ信号VRMP1を、各々が対応する比較器104に出力するランプ信号VRMPIとして出力する。比較器104は、ランプ信号VRMP1と、垂直信号線110に出力されたN信号との比較を行う。比較器104は、ランプ信号VRMP1と垂直信号線110に出力された信号の電位同士を比較した結果を示す比較結果信号をカウンタ105に出力する。
カウンタ105は、時刻T2に、クロック信号の計数を開始する。これにより、カウンタ105が生成するカウント信号の信号値は時間の経過にともなって信号値が増加する。
時刻T2から時刻T3までの期間に、ランプ信号VRMP1とN信号との電位の大小関係が反転する。このタイミングに、比較器104が出力する比較結果信号の信号値が変化する。カウンタ105は、この比較結果信号の信号値が変化した時点のカウント信号を保持する。このカウント信号を第1Nデジタル信号と表記する。
時刻T3に、参照信号供給回路103はランプ信号VRMP1の時間の経過にともなう電位の変化を終了するとともに、ランプ信号VRMP1を初期値にリセットする。
時刻T2から時刻T3までの期間は、第1のN変換期間N1である。第1のN変換期間N1は、第1Nデジタル信号を生成するAD変換期間である。
時刻T4に、参照信号供給回路103は、ランプ信号VRMP1の時間の経過にともなう電位の変化を再び開始する。この時も、参照信号供給回路103はランプ信号VRMP2の電位は変化させない。全ての列の選択回路108は、ランプ信号VRMP1を、各々が対応する比較器104に出力するランプ信号VRMPIとして出力する。カウンタ105は、保持していた第1Nデジタル信号の信号値から、クロック信号の計数を開始する。
時刻T4から時刻T5までに、再び比較結果信号の信号値が変化する。カウンタ105は、この比較結果信号の信号値が変化した時点のカウント信号を保持する。このカウント信号を第2Nデジタル信号と表記する。
時刻T4から時刻T5までの期間は、第2のN変換期間N2である。第2のN変換期間N2は、第2Nデジタル信号を生成するAD変換期間である。第2のN変換期間N2は、第1のN変換期間N1と同じ長さとしている。第1のN変換期間N1と第2のN変換期間N2とで、比較器104は、第1の時間変化率によって第1の振幅範囲で電位が変化するランプ信号とノイズ信号との比較である第4の比較をそれぞれ行っている。尚、第1〜第3の比較は後述される、ランプ信号と光信号との比較である。この複数回の第4の比較によって生成した第2Nデジタル信号が第4のデジタル信号である。尚、第1〜第3のデジタル信号は後述される、ランプ信号と光信号との比較の結果、生成されるデジタル信号である。
メモリ106は、カウンタ105が保持した第2Nデジタル信号を保持する。カウンタ105はカウント信号の信号値を初期値にリセットする。
水平走査回路107は水平走査によって、各列のメモリ106が保持した第2Nデジタル信号を順次、各列のメモリ106から出力させる。
時刻T6に垂直走査回路102は、信号φTをHiとする。これにより転送トランジスタM2がONする。よって、フォトダイオードPDが蓄積した電荷の転送トランジスタM2を介してのノードFDへの転送が開始される。
時刻T7に垂直走査回路102は、信号φTをLoとする。これにより転送トランジスタM2がOFFする。これにより、フォトダイオードPDからノードFDへの電荷の転送が終了する。
増幅トランジスタM3は、ノードFDの電位に基づく信号を、選択トランジスタM4を介して垂直信号線110に出力する。この増幅トランジスタM3が垂直信号線110に出力する信号をS信号と表記する。S信号は画素が光電変換によって生成するとともに出力する光信号である。
時刻T8に、参照信号供給回路103は、ランプ信号VRMP1の時間の経過にともなった電位の変化を開始する。ここでは、参照信号供給回路103はランプ信号VRMP2の電位は変化させない。全ての列の選択回路108は、ランプ信号VRMP1を、各々が対応する比較器104に出力するランプ信号VRMPIとして出力する。比較器104は、垂直信号線110に出力されたS信号とランプ信号VRMP1の電位同士を比較する。時刻T8に、カウンタ105は、初期値からクロック信号の計数を開始する。
ここから、S信号の振幅が時刻T9におけるランプ信号VRMP1の振幅以下である場合と、S信号の振幅が時刻T9におけるランプ信号VRMP1の振幅よりも大きい場合とを分けて説明する。
図2(b)は、S信号の振幅が時刻T9におけるランプ信号VRMP1の振幅以下である場合を説明した図である。時刻T8、T9、T10、T11のそれぞれは図2(a)に示したそれぞれの時刻に対応している。
時刻T8から時刻T9までの期間に、S信号の振幅が時刻T9におけるランプ信号VRMP1の振幅よりも小さい場合にはランプ信号VRMP1とS信号との電位の大小関係が、例えば時刻T8Aに反転する。この場合は、この大小関係の反転によって、比較結果信号の信号値が変化する。カウンタ105は、この比較結果信号の信号値が変化したタイミングのカウント信号を保持する。このカウント信号を第1Sデジタル信号と表記する。また、この時刻T8Aの比較結果信号の信号値の変化は、選択回路108にも出力される。選択回路108は、この比較結果信号の信号値の変化を受けて、時刻T10以降に比較器104に供給するランプ信号VRMPIをランプ信号VRMP1とする。本実施例では、第1のS変換期間S1のAD変換に用いるランプ信号VRMPIの時間変化率である第1の時間変化率は、第2のS変換期間S2のAD変換に用いるランプ信号VRMPIの時間変化率である第2の時間変化率と等しい。
時刻T9に、参照信号供給回路103はランプ信号VRMP1の時間の経過にともなう電位の変化を終了するとともに、ランプ信号VRMP1を初期値にリセットする。
時刻T8から時刻T9までの期間は、第1のS変換期間S1である。第1のS変換期間S1は、光信号と第1の時間変化率のランプ信号とを比較する第1の期間である。図2(b)の動作では、第1の期間に、比較器104は、第1の時間変化率によって第1の振幅範囲で電位が変化するランプ信号と光信号との比較である第1の比較を行っている。この第1の比較によって生成した第1Sデジタル信号が第1のデジタル信号である。
時刻T9から時刻T10までの間に、選択回路108は、ランプ信号VRMPIをランプ信号VRMP1、ランプ信号VRMP2のいずれか一方を選択する。上述した通り、図2(b)の動作では、選択回路108は、時刻T8Aにおける比較結果信号の信号値の変化に基づいて、ランプ信号VRMP1をランプ信号VRMPIとして選択する。
時刻T10に、参照信号供給回路103は、ランプ信号VRMP1の時間の経過にともなう電位の変化を再び開始する。このランプ信号VRMP1の単位時間当たりの電位の変化率は、時刻T8から時刻T9におけるランプ信号VRMP1の単位時間当たりの電位の変化率と同じである。即ち、時刻T10から時刻T11の期間にわたり電位が変化するランプ信号の電位の時間変化率もまた第1の時間変化率である。カウンタ105は、保持していた第1Sデジタル信号の信号値から、クロック信号の計数を開始する。
時刻T10から時刻T11までの期間、例えば時刻T10Aに再び比較結果信号の信号値が変化する。カウンタ105は、この比較結果信号の信号値が変化した時点のカウント信号を保持する。このカウント信号を第2Sデジタル信号と表記する。
時刻T10から時刻T11までの期間は、第2のS変換期間S2である。第2のS変換期間S2は、第1のS変換期間S1と同じ長さとしている。第2のS変換期間S2は、光信号と第1の時間変化率のランプ信号とを比較する第2の期間である。第2のS変換期間S2は、第1のS変換期間S1と同じ長さの期間としている。第2の期間におけるランプ信号の最大振幅(時刻T11における電位)は、第1の期間におけるランプ信号の最大振幅(時刻T9における電位)と等しい。図2(b)の動作では、第2の期間に、比較器104は、第2の時間変化率によって第2の振幅範囲で電位が変化するランプ信号と光信号との比較である第2の比較を行っている。この第2の比較によって生成した第2Sデジタル信号が第2のデジタル信号である。
メモリ106は、カウンタ105が保持した第2Sデジタル信号を保持する。カウンタ105はカウント信号の信号値を初期値にリセットする。
水平走査回路107は水平走査によって、各列のメモリ106が保持した第2Sデジタル信号を順次、各列のメモリ106から出力させる。
図2(c)は、S信号の振幅が時刻T9におけるランプ信号VRMP1の振幅よりも大きい場合を説明した図である。時刻T8、T9、T10、T11のそれぞれは図2(a)に示したそれぞれの時刻に対応している。
S信号の振幅が時刻T9におけるランプ信号の振幅よりも大きい場合には、時刻T8から時刻T9までの期間に、比較結果信号の信号値は変化しない。この場合、カウンタ105は時刻T9にクロック信号の計数を終了すると共に、カウント信号の信号値を初期値にリセットする。また、選択回路108は、時刻T8から時刻T9までの期間に比較結果信号の信号値が変化しなかったことに基づいて、時刻T10以降に比較器104に供給するランプ信号VRMPIとして、ランプ信号VRMP2を選択する。本実施例では、第1のS変換期間S1のAD変換に用いるランプ信号VRMPIの時間変化率である第1の時間変化率に対し、第2のS変換期間S2のAD変換に用いるランプ信号VRMPIの時間変化率である第3の時間変化率は大きい。
時刻T9に、参照信号供給回路103は、ランプ信号VRMPの時間の経過にともなう電位の変化を再び開始する。カウンタ105は、初期値から、クロック信号の計数を開始する。なお、この図2(c)の場合では、図2(b)の場合に対して8倍のカウントアップ(3ビットシフト)を行う。8倍のカウントアップを行う一つの理由は、ランプ信号VRMP2の時間変化率がランプ信号VRMP1の時間変化率の4倍である為である。そしてもう一つの理由は、図2(b)の動作で生成する第2Sデジタル信号が2回のAD変換のそれぞれの結果を加算した信号であるのに対し、図2(c)の動作で生成するデジタル信号が1回のAD変換の動作で生成する信号である為である。従って、図2(b)の動作で生成する第2Sデジタル信号と、図2(c)の動作で生成するデジタル信号とのAD変換ゲインを揃える為、カウンタ105は図2(b)の動作で行ったカウント動作に対して4倍×2倍=8倍のカウントアップを行う。
時刻T10から時刻T11までの期間、例えば時刻T10Bに比較結果信号の信号値が変化する。カウンタ105は、この比較結果信号の信号値が変化した時点のカウント信号を保持する。このカウント信号を第3Sデジタル信号と表記する。第3Sデジタル信号は、時刻T10から時刻T10Bまでの期間のみをカウントした信号であるのに対し、第2Sデジタル信号は、時刻T8から時刻T8Aまでの期間と、時刻T10から時刻T10Aまでの期間を積算してカウントした信号である。第3Sデジタル信号は、比較器104の1回の比較動作によって生成したデジタル信号である。一方、第2Sデジタル信号は、比較器104の複数回の比較動作の各々によって生成したデジタル信号を互いに加算したデジタル信号である。カウンタ105は、複数回のAD変換によって生成したデジタル信号を互いに加算したデジタル信号を生成する加算部である。図2(c)の動作では、第2の期間に、比較器104は、第3の時間変化率によって第3の振幅範囲で電位が変化するランプ信号と光信号との比較である第3の比較を行っている。この第3の比較によって生成した第3Sデジタル信号が第3のデジタル信号である。
メモリ106は、カウンタ105が保持した第3Sデジタル信号を保持する。カウンタ105はその後、カウント信号の信号値を初期値にリセットする。
図2(c)においてもまた、第2のS変換期間S2は、第1のS変換期間S1と同じ長さとしている。ランプ信号VRMP2の時間変化率はランプ信号VRMP1の時間変化率の4倍であることから、時刻T11におけるランプ信号VRMP2の振幅は、同時刻におけるランプ信号VRMP1の振幅の4倍である。従って、ランプ信号VRMP2の電位が変化する振幅は、ランプ信号VRMP1の電位が変化する振幅よりも大きい。
ランプ信号VRMPの電位が変化する振幅範囲は、第1のN変換期間N1のAD変換と第2のN変換期間N2のAD変換とで等しい。また、第1のS変換期間S1のAD変換のランプ信号VRMPの電位が変化する振幅範囲を、図2(b)、図2(c)の動作の両方において第1の振幅範囲とする。また、第2のS変換期間S2のAD変換のランプ信号VRMPの電位が変化する振幅範囲を、図2(b)の動作では第2の振幅範囲とし、図2(c)の動作では第3の振幅範囲とする。本実施例では、第1の振幅範囲と第2の振幅範囲は等しい。また、第3の振幅範囲は、第1の振幅範囲と第2の振幅範囲よりも大きい。
図2(b)に示した動作では、第2Sデジタル信号はS信号を複数回のAD変換の各々において生成したデジタル信号を、互いに加算した結果に基づく信号である。複数回のAD変換の各々のデジタル信号同士の加算を行うことにより、S信号のAD変換を1回のみとして得たデジタル信号に対して、第2Sデジタル信号はランダムノイズを減少させることが可能である。よって、本実施例の撮像装置は、ランダムノイズの低減が可能なデジタル信号を出力することができる効果を有する。
図2(c)に示した動作が行われる、S信号の振幅が時刻T9におけるランプ信号VRMP1の振幅よりも大きい場合とは、当該S信号を出力する画素100のフォトダイオードPDが高輝度の被写体の光を受けた場合である。この場合には、S信号をAD変換して得られるデジタル信号に含まれるノイズは光ショットノイズが支配的であり、ランダムノイズは無視することが可能なレベルである。よって、本実施例の撮像装置は、ランダムノイズが目立ちにくい高輝度の被写体については、S信号に基づくデジタル信号の数を1つとし、ランダムノイズが目立ちやすい低輝度の被写体についてはS信号に基づくデジタル信号の生成回数を2回とする。
特許文献1の構成によれば、同一の時間変化率を有するランプ信号を複数回用いて、複数回のAD変換を行っていた。この時に用いるランプ信号は、S信号のAD変換を行えるようにするために、S信号の取り得る振幅を全て包含する振幅を備えていなければならない。例えば、本実施例の図2(c)の動作で述べた、ランプ信号VRMP2がS信号の取り得る振幅を全て包含する。一方、ランダムノイズの低減が可能なようにAD変換を行うには、ランプ信号の時間変化率を小さくすることによって、AD変換の分解能を高めることが求められる。従って、本実施例で述べたランプ信号VRMP1のような、時間変化率が小さいランプ信号が好ましい。このような時間変化率の小さいランプ信号を、S信号の取り得る振幅を全て包含するように変化させた場合には、AD変換期間が長大化する。例えば、本実施例で述べたランプ信号VRMP1を、S信号が取り得る振幅範囲を全て包含するように電位変化させたとすると第1のS変換期間S1の4倍の期間が必要となる。よって、特許文献1において、ランダムノイズの低減を高精度に行えるように複数回のAD変換を行えば、AD変換期間が長大化する。
一方で、特許文献1において、時間変化率の大きなランプ信号で複数回AD変換を行う場合には、ランダムノイズの低減の精度が低下する。
本実施例の撮像装置は、S信号の振幅に応じてAD変換を行う回数を切り替える。そして、S信号の振幅が所定の閾値よりも大きい場合には、ランプ信号の時間変化率を大きくしてAD変換を行う。これにより本実施例の撮像装置は、ランダムノイズの低減を可能にし、さらにAD変換の高速化を図ることができる。
また、複数回のAD変換に要する期間を短縮しながら、S信号のランダムノイズを低減可能なデジタル信号を生成するには第1のS変換S1のランプ信号VRMP1の最大振幅を調節すればよい。具体的には第1のS変換期間S1のランプ信号VRMP1の最大振幅が、第2のS変換期間S2のランプ信号VRMP2の最大振幅の1/2Nであることが好ましい。さらに言えば、第1のS変換期間S1のランプ信号VRMP1の最大振幅が、第2のS変換期間S2のランプ信号VRMP2の最大振幅の1/2以下、1/8以上であることが好ましい。
また、撮像装置が出力する第2デジタルN信号は、N信号に含まれるゆらぎ(ランダムノイズ)を平均化した信号である。これにより、AD変換部200は、N信号に含まれるランダムノイズを低減した信号を得ることができる。
撮像装置の外部に設けられた不図示の信号処理部は、この第2Nデジタル信号と第2Sデジタル信号との差分を得るCDS(Correlated Double Sampling)処理を行う。信号処理部はこの差分を用いて、画像を生成する。尚、この信号処理部は後述する実施例3で説明する出力信号処理部155とすることができる。
一方、第1Sデジタル信号が生成されなかった場合には、第2Nデジタル信号と、第3Sデジタル信号との差分を得る。信号処理部は、この差分を用いて、画像を生成する。
本実施例では、第1のN変換期間N1、第2のN変換期間N2、第1のS変換期間S1、第2のS変換期間S2の長さの関係を、N1=N2<S1=S2としている。ノイズ信号は振幅の小さい信号であるため、ランダムノイズが目立ちやすい傾向がある。従って、N信号については、同じ時間変化率で同じ振幅範囲のランプ信号VRMP1を用いて複数回、デジタル信号を得る。これにより、N信号のランダムノイズの低減が可能なデジタル信号を得ることができる。
尚、本実施例では、第2Sデジタル信号あるいは第3Sデジタル信号と、第2Nデジタル信号との差分を得る処理を撮像装置の外部で行っていたが、撮像装置の内部で行うようにしても良い。この場合には、撮像装置は第2Sデジタル信号あるいは第3Sデジタル信号と、第2Nデジタル信号との差分を撮像装置の外部の信号処理部に出力する。信号処理部は、この撮像装置から出力される差分の信号を得るCDS処理を行った後、画像の生成を行う。
尚、本実施例では図2(b)の動作でのAD変換回数を2回としていたが、さらに多くの回数を行うようにしても良い。この場合には、図2(c)の動作は、ランプ信号VRMP2を用いたAD変換を複数回行うようにしても良い。その際には、図2(c)の動作においても、ランプ信号VRMP2を用いた複数回のAD変換の各々のカウント信号を加算するようにカウンタ105が動作する。これにより、図2(c)の動作においても、ランダムノイズを低減可能なデジタル信号を生成することができる。
本実施例の撮像装置は、第1のS変換期間S1のAD変換は、第2のS変換期間S2のAD変換のランプ信号VRMPIの時間変化率の設定と、S信号の振幅が小さい場合のAD変換とを行っている。一方、第1のS変換期間S1のAD変換を、カウンタ105を動作させず、所定の閾値の電圧に設定された信号とS信号との比較し、この比較の結果に基づいて第2のS変換期間S2のAD変換のランプ信号VRMPIの時間変化率を設定することがある。この場合に対して、本実施例の撮像装置は、S信号の振幅が小さい場合のAD変換をさらに兼用することができることから、ランダムノイズを低減可能なデジタル信号を得ることができる効果を有する。
このように、本実施例の撮像装置は、S信号の振幅が閾値よりも大きい場合には、所定の回数のAD変換を行い、S信号の振幅が閾値よりも小さい場合には、S信号の振幅が閾値よりも小さい場合に行うAD変換の回数よりも多くする。これにより、本実施例の撮像装置は、AD変換に要する期間の長さと、ダイナミックレンジの広さとのバランスを適切にすることができる。
尚、本実施例では第1のS変換期間S1と第2のS変換期間S2のそれぞれのランプ信号VRMP1を同じ時間変化率とした。他の例として、第1のS変換期間S1のランプ信号VRMP1に対して第2のS変換期間S2のランプ信号VRMP1の時間変化率を変更しても良い。この場合には、AD変換ゲインを第1のS変換期間S1のAD変換と第2のS変換期間S2のAD変換期間とで揃えるようにカウンタ105のカウント動作を変更することが好ましい。
また、本実施例ではランプ信号VRMP2の時間変化率をランプ信号VRMP1の時間変化率の4倍としていた。この例に限定されるものではなく、ランプ信号VRMP2の時間変化率は、ランプ信号VRMP1の時間変化率よりも大きければ良い。ランプ信号VRMP2の時間変化率が、ランプ信号VRMP1の時間変化率の2N倍であることが好ましい。これは、第1のS変換期間S1と第2のS変換期間S2のそれぞれのAD変換の動作で生成するデジタル信号のAD変換ゲインを揃えやすくするためである。具体的には、カウンタ105のカウント信号の生成動作を、Nビット分、上位にビットシフトすることによって行うことができるからである。
尚、本実施例の撮像装置はこの例に限定されず種々の変形が可能である。以下、変形例を説明する。
本実施例ではCDS処理をメモリ106の後段で行っていた。他の例として、カウンタ105がCDS処理を行っても良い。具体的には、第2のN変換期間N2の後、カウンタ105において第2Nデジタル信号の2の補数を取る。この補数をカウンタ105が保持する。カウンタ105は、第1のS変換期間S1におけるカウント動作を、保持した補数を初期値としてカウントを開始する。この場合、第2のN変換期間N2の後の水平走査は必要なく、第2のS変換期間S2の後に、CDS処理された結果を水平走査により出力すればよい。
また第1及び第2のN変換期間において、カウンタ105をダウンカウントし負のカウント値を保持した後に、カウンタ105の初期値として第1のS変換期間S1のアップカウントを開始しても良い。
N信号のAD変換期間については2回としていたが、さらに多くの回数を行う長ようにしても良い。N信号に基づくデジタルN信号の生成回数が増える為、さらにランダムノイズを低減した、N信号に基づくデジタル信号の生成が可能となる。
また、図3に示すように、第2のN変換期間N2で用いるランプ信号VRMPIを、ランプ信号VRMP2としても良い。この場合、メモリ106が第1Nデジタル信号を保持した後、カウンタ105はカウント信号の信号値を初期値にリセットする。そして第2のN変換期間N2のAD変換によって、第2Nデジタル信号を生成する。メモリ106はさらに第2Nデジタル信号を保持する。その後の水平走査によって、メモリ106は第1Nデジタル信号と第2Nデジタル信号をそれぞれ出力する。信号処理部は、図2(b)の動作によって生成された第2Sデジタル信号と、2倍した第1Nデジタル信号との差を得る。一方、図2(c)の動作によって生成された第3Sデジタル信号と第2Nデジタル信号との差を得る。
また、本実施例では、第2Sデジタル信号を、第1Sデジタル信号に対し、さらに第2のS変換期間S2のAD変換によるカウント信号を、カウンタ105で加算して生成していた。他の例として、第1Sデジタル信号をメモリ106が保持した後、カウンタ105はカウント信号の信号値を初期値にリセットする。そして、第2のS変換期間S2のAD変換によって第2Sデジタル信号が生成され、メモリ106はさらに第2Sデジタル信号を保持する。その後の水平走査によって、メモリ106は第1Sデジタル信号と第2Sデジタル信号とを出力する。信号処理部が、この第1Sデジタル信号と第2Sデジタル信号とを加算するようにしても良い。同じように、第2Nデジタル信号についても、カウンタ105が第1Nデジタル信号に対してカウント信号の加算をせずに第2Nデジタル信号を生成するようにしても良い。この場合にも、信号処理部が、第1Nデジタル信号と第2Nデジタル信号とを加算するようにすればよい。この場合には、信号処理部が、複数のAD変換の各々で生成したデジタル信号を互いに加算する加算部である。
また、本実施例では、複数のAD変換部200の各々がカウンタ105を有していた。他の例として、複数のAD変換部200のメモリ106に対して、共通のカウント信号を供給するカウンタを備える構成でも良い。この場合には、本実施例で図2(c)の第2のS変換期間S2のAD変換で行っていた、カウント信号の生成のカウントアップ動作をカウンタは行わない。そして、各列のメモリ106は、図2(c)の動作で第2のS変換期間S2のAD変換を行う場合には、カウンタから供給されるカウント信号を上位にビットシフトさせて保持するようにすればよい。これにより、本実施例の撮像装置と同じように、AD変換ゲインを図2(b)、図2(c)のそれぞれの第2のS変換期間S2のAD変換で合わせることができる。尚、このビットシフトは必ずしもメモリ106で行う必要はない。例えば、メモリ106が水平走査によって出力するデジタル信号が入力される信号処理部が、ビットシフトを行うようにしても良い。
尚、他の例として、垂直信号線110と比較器104との間の電気的経路に増幅器が設けられていても良い。この増幅器は、垂直信号線110に出力されたN信号、S信号のそれぞれを増幅した信号を比較器104に出力する。この場合には、第1Nデジタル信号、第2Nデジタル信号のそれぞれは増幅器がN信号を増幅した信号に基づく信号となる。また、第1Sデジタル信号、第2Sデジタル信号、第3Sデジタル信号のそれぞれは増幅器がS信号を増幅した信号に基づく信号となる。
また、他の例として、垂直信号線110と比較器104との間の電気的経路に、CDS(Correlated Doble Sampling)回路が設けられていても良い。このCDS回路は、垂直信号線110に出力されたS信号からN信号を差し引いた信号を出力する。この場合には、第1Nデジタル信号、第2Nデジタル信号は、比較器104によるノイズおよびオフセットが主の成分となる。
また、ランプ信号VRMP1、ランプ信号VRMP2はスロープ状に電位が変化する信号として示したが、階段状に電位が変化する信号であっても良い。このような階段状に電位が変化する信号も、時間の経過にともなって電位が変化するランプ信号である。
(実施例2)
本実施例の撮像装置について、実施例1と異なる点を中心に説明する。
実施例1の撮像装置は、S信号の振幅に応じて、比較器104に入力されるランプ信号VRMPIの時間変化率を変更していた。本実施例では、S信号を増幅した信号が比較器104に入力される。このS信号の増幅率を、S信号の振幅に応じて変更する点で、実施例1の撮像装置とは異なる。
図4は、本実施例の撮像装置の構成を示した図である。図4では、図1(a)に示した部材と同じ機能を有する部材について、図1(a)で付した符号と同じ符号を付している。
参照信号供給回路113は、各列の比較器104にランプ信号VRMPを出力する。
増幅回路109は、画素100が垂直信号線110に出力したN信号、S信号のそれぞれを増幅した信号を比較器104に出力する。本実施例の信号VINは、増幅回路109が比較器104に出力する信号を示している。本実施例の増幅回路109の増幅率は1倍と4倍である。4倍の増幅率は第1の増幅率であり、1倍の増幅率は第2の増幅率である。尚、本明細書では1倍の増幅率についても、増幅の範疇に含めて取り扱う。第1の増幅率は、第2の増幅率の2N倍であることが好ましい。尚、増幅回路109がN信号を増幅して出力する信号を増幅N信号と表記する。また、増幅回路109がS信号を増幅して出力する信号を増幅S信号と表記する。増幅S信号は、増幅部である増幅回路109が光信号を増幅することによって生成される増幅信号である。第1の増幅信号は、第1の増幅率である4倍の増幅率でS信号が増幅された増幅S信号である。第2の増幅信号は、第2の増幅率である1倍の増幅率でS信号が増幅された増幅S信号である。第3の増幅信号は、第1の増幅率である4倍の増幅率でN信号が増幅された増幅N信号である。
図5(a)は、図4に示した撮像装置の動作を示した図である。第1のN変換期間N1、第2のN変換期間N2、第1のS変換期間S1、第2のS変換期間S2のそれぞれで用いられるランプ信号VRMPの時間変化率は全て等しい。ランプ信号VRMPの電位が変化する振幅範囲は、第1のN変換期間N1のAD変換と第2のN変換期間N2のAD変換とで等しい。また、ランプ信号VRMPの電位が変化する振幅範囲は、第1のS変換期間S1のAD変換と第2のS変換期間S2のAD変換とで等しい。また、ランプ信号VRMPの電位が変化する振幅範囲は、第1のS変換期間S1のAD変換及び第2のS変換期間S2のAD変換の方が、第1のN変換期間N1のAD変換及び第2のN変換期間N2のAD変換よりも大きい。
図5(b)は、S信号の振幅が時刻T9におけるランプ信号VRMPの振幅以下である場合を説明した図である。第1のS変換期間S1では、増幅回路109は4倍の増幅率でS信号を増幅している。
その他の動作は、図2(b)で説明した第1のS変換期間S1の動作と同じである。時刻T8Aの比較結果信号の信号値の変化は、カウンタ105と増幅回路109に出力される。増幅回路109は、この比較結果信号の信号値の変化を受けて、第2のS変換期間S2における、S信号の増幅率を4倍のままとする。
第2のS変換期間S2の動作は、図2(b)で述べた動作と同じである。時刻T10Aの比較結果信号の信号値の変化によって、第2Sデジタル信号が生成される。
図5(c)は、S信号の振幅が時刻T9におけるランプ信号VRMPの振幅よりも大きい場合を説明した図である。第1のS変換期間S1では、増幅回路109は4倍の増幅率でS信号を増幅している。
時刻T8から時刻T9までの期間に比較結果信号の信号値が変化しなかったことを受けて、増幅回路109は第2のS変換期間S2におけるS信号の増幅率を1倍に変更する。その他の動作は、図2(c)で説明した動作と同じである。時刻T10Bに比較結果信号の信号値が変化することによって、第3Sデジタル信号が生成される。
特許文献1の構成であれば、S信号を4倍した増幅S信号の振幅範囲を全て包含するように、ランプ信号VRMPの電位が変化する振幅範囲が求められる。一方、本実施例の撮像装置は、第1のS変換期間S1のAD変換の結果に基づいて、第2のS変換期間S2の増幅回路109の増幅率を変更している。この構成により、ランプ信号VRMPの電位が変化する振幅範囲を小さくすることができる。これにより、特許文献1の構成に比して、複数回のAD変換に要する期間を短縮することができる。また、ランダムノイズを低減可能な信号である第2Sデジタル信号を得ることができる。
尚、本実施例の撮像装置においてもまた、実施例1で述べたように種々の変形が可能である。
(実施例3)
本実施例の撮像装置について、実施例1と異なる点を中心に説明する。図7は、本実施例の撮像装置の構成を示した図である。
図7では、図1(a)に示した部材と同じ機能を有する部材について、図1(a)で付した符号と同じ符号を付している。
本実施例の撮像装置は、複数のAD変換部2000を有する。AD変換部2000の各々は、選択回路108、比較器104、第2の選択回路120、第1メモリ群121、第2メモリ群122、判定信号メモリ128を有する。
第2の選択回路120は、比較結果信号である制御信号VCOMPを、第1メモリ群121、第2メモリ群122、判定信号メモリ128のいずれかに出力する。
カウンタ1050は、複数の信号線を介して、例えば11ビットのグレイコード信号を含むカウント信号である、カウント信号群123を出力する。カウンタ1050からカウント信号群123が出力される複数の信号線は、各列の第1メモリ群121及び第2メモリ群122に共通に接続される。カウント信号群123が示す値(カウント信号)は、ランプ信号VRMPIの変化が開始してからの経過時間に対応する。第1メモリ群121及び第2メモリ群122は、制御信号VCOMPの信号値が変化するタイミングに対応したカウント信号をAD変換結果であるデジタル信号として保持する。第1メモリ群121及び第2メモリ群122に保持されたデジタル信号は、水平走査回路107から走査によって、出力線124を介して順次撮像装置の後段の回路に出力される。本実施例では、AD変換結果であるデジタル信号を保持するメモリ群として、第1メモリ群121及び第2メモリ群122の2つがAD変換部2000に設けられている。
判定信号メモリ128は、制御信号VCOMPを保持するメモリである。
図8(a)及び図8(b)は、本実施例の1つのAD変換部2000が有するメモリの構成を示した図である。図8(a)は、第1メモリ群121、第2メモリ群122、判定信号メモリ128を示した図である。図8(b)は、第1メモリ群121及び第2メモリ群122のそれぞれに含まれるメモリの構成をより詳細に示すブロック図である。
カウンタ1050は、12本の信号線を介して、12個のカウント信号を含むカウント信号群123を出力する。各信号線を伝送する各カウント信号を、カウント信号123−0〜123−10、123−3Mとする。カウント信号123−0〜123−10は、カウント信号123−0を最下位ビットとし、カウント信号123−10を最上位ビットとする、11ビットのグレイコード信号を構成する。また、カウント信号123−0、123−1、123−2、123−3Mは、123−0を最下位ビットとし、123−3Mを最上位ビットとする、4ビットのグレイコード信号を構成する。
第1メモリ群121は5ビットのメモリ121−0〜121−3含む。メモリ121−0〜121−3には、カウント信号123−0、123−1、123−2、123−3Mがそれぞれ入力される。メモリ121−Cは、制御信号VCOMPが入力される。第2メモリ群122は11ビットのメモリ122−0〜122−10を含む。メモリ122−0〜122−10には、カウント信号123−0〜123−10がそれぞれ入力される。
図8(b)には、第1のメモリ群121、第2のメモリ群122の構成例が示されている。これらのメモリを代表して、メモリ122−0の構成のみを説明するが他のメモリも同じ構成とすることができる。本実施例のメモリ122−0は、撮像装置の内部又は撮像装置の後段の映像信号処理部でデジタルCDS(Correlated Double Sampling)処理を行うために、2つのデジタル信号を保持する構成を有する。メモリ122−0は、リセットレベルの信号のAD変換結果を保持するNラッチ200−Nと、光信号のAD変換結果を保持するSラッチ200−Sとを有する。ここで、第1メモリ群121に含まれるメモリの個数、すなわち第1メモリ群121のビット幅は、同一信号に対して複数回のAD変換を行った際の、各回のAD変換結果の差分値の最大値より大きい値に規定する。なお、この差分値は、主に画素信号VIN及びランプ信号VRMPに重畳されるランダムノイズ成分、並びに、比較器104が発生するランダムノイズ成分に起因する。これにより、2回のAD変換結果の間で値が変動しうるビットの値を複数個保持できる構成となる。
例えば、1回目と2回目のAD変換結果の差分値の絶対値が2N−1[LSB]以下の場合、第1メモリ群121に必要なビット幅はN+1ビットとなる。本実施例では、N=3、すなわち差分値の絶対値は7[LSB]以下とし、これにより第1メモリ群121のビット幅は4ビットに設定されていることを前提とする。これは、各回のAD変換結果の上位7ビット(=11ビット−4ビット)は1回目のAD変換と2回目のAD変換において同じ値となるので、第1メモリ群121のビット幅は少なくとも4ビットあればよいためである。
次に、図9を用いて本実施例の撮像装置の動作を説明する。図9(a)、図9(b)は、本実施例に係る撮像装置全体の動作を示すタイミング図である。図9(a)は被写体が低輝度の場合、図9(b)は被写体が高輝度の場合を示している。図9(c)は、カウント信号を示すタイミング図である。図9(d)は、カウント信号の変形例を示すタイミング図である。
まず、時刻T0から時刻T1までの期間において、制御信号φRがハイレベルになり、リセットトランジスタM1がオンになる。これにより、フローティングディフュージョンFDの電圧が所定の電圧レベルにリセットされる。その後、時刻T2から時刻T3までの期間N1及び時刻T4から時刻T5までの期間N2において、リセットレベルの画素信号VINに対する2回のAD変換が行われる。
まず、期間N1における第1のAD変換について説明する。期間N1において、第2の選択回路120は、制御信号VCOMPの出力先として、第1メモリ群121を選択する。時刻T2において、参照信号供給回路103から出力されるランプ信号VRMPの電圧が減少し始める。同時刻において、カウンタ1050から出力されるカウント信号群123が示すカウント信号が時間とともに増加し始める。この時点では、ランプ信号VRMPの電圧がリセットレベルの画素信号VINの電圧よりも大きいので、比較器104の出力である制御信号VCOMPはハイレベルである。
その後、ランプ信号VRMPの電圧が、リセットレベルの画素信号VINの電圧よりも小さくなる時刻T2Aにおいて、ランプ信号VRMPの電圧と、リセットレベルの画素信号VINの電圧の大小関係が反転し、制御信号VCOMPはローレベルになる。第1メモリ群121は、時刻T2Aの時点におけるカウント信号群123が示すカウント信号を、AD変換後のリセットレベルのデジタル信号として保持する。第1メモリ群121は4個のメモリ121−0〜121−3を含む。言い換えると、第1メモリ群121はビット幅が4ビットであるため、期間N1において第1メモリ群121に保持されるデジタル信号は、カウント信号群123が示すカウント信号のうちの最下位ビットから第4ビット目までの下位4ビットのみである。
その後、期間N2における第2のAD変換が行われる。期間N2において、第2の選択回路120は、制御信号VCOMPの出力先として、第2メモリ群122を選択する。上述と同様のAD変換が行われ、時刻T4Aにおいて、第2メモリ群122は時刻T4Aの時点におけるカウント信号群123が示すカウント信号を、AD変換後のリセットレベルのデジタル信号として保持する。第2メモリ群122は11個のメモリ122−0〜122−10を含む。言い換えると、第2メモリ群122はビット幅が11ビットであるため、期間N2において第2メモリ群122に保持されるデジタル信号は、カウント信号群123が示すカウント信号の最下位ビットから第11ビット目までとなる。なお、期間N1及び期間N2においてAD変換により得られるデジタル信号は、各メモリのNラッチ200−Nに保持される。また、期間N2における第2のAD変換に用いられるランプ信号VRMPIの傾きは、期間N1における第1のAD変換に用いられるランプ信号VRMPIの傾きと同一とする。
その後、時刻T6から時刻T7の期間において制御信号φTがハイレベルになり、転送トランジスタM2がオンになる。これにより、入射光により光電変換部PDで発生した電荷がフローティングディフュージョンFDに転送される。この電荷の転送とともに、画素信号VINの電圧が低下する。時刻T7において、画素信号VINの電圧は、電荷転送により光信号に応じた値になる。その後、時刻T8から時刻T9までのS変換期間S1及び時刻T10から時刻T11までのS変換期間S2において、光信号のレベルの画素信号VINに対する2回のAD変換が行われる。
S変換期間S1、S2におけるAD変換動作について説明する。S変換期間S1のAD変換においては、選択回路108はVRMP1信号を選択し出力する。時刻T9における制御信号VCOMPを用いて、S変換期間S2におけるAD変換時に使用するランプ信号を、選択回路108が選択する。S変換期間S1及びS変換期間S2においてAD変換により得られるデジタル信号は各メモリのSラッチ200―Sに保存される。判定信号メモリは時刻T9における、比較器104が出力した制御信号VCOMPのレベルを保持する。
S変換期間S1、S2のAD変換動作について、フォトダイオードPDが高輝度の被写体の光を受けた場合と、フォトダイオードPDが低輝度の被写体の光を受けた場合とに分けて説明する。被写体の低輝度、高輝度の閾値は、時刻T9におけるランプ信号VRMPIのレベルである。
図9(c)は、S変換期間S1とS変換期間S2における、カウント信号群123のうちの下位6ビットの各カウント信号123−0〜123−5と、カウント信号123−3Mのパルスを示している。
S変換期間S1の開始時刻である時刻T8において、カウント信号123−0〜123−2と123−3Mはグレイコードの値で「0000」(10進数で「0」)を示している。時刻T8以降、時間経過に応じて値が増加し、グレイコードの値で「1000」(10進数で「15」)になると、その次は、再び「0000」に戻る。また、カウント信号123−4〜123−10は常にローレベル(0)である。このように、S変換期間S1においては、カウント信号123−0〜123−2と123−3Mで構成された4ビットのグレイコード信号が、0〜15までのカウントを繰り返している。よって、制御信号VCOMPのレベルが反転する時刻T8Aにおいて、第1メモリ群121のSラッチ200−Sには、0〜15までのカウント信号のいずれかがグレイコードで保持される。
S変換期間S1終了後の時刻T9から時刻T9Aの間に、判定信号メモリ128はローレベルの信号VCOMPを保持する。被写体が低輝度の場合、つまり、信号VINが時刻t9におけるランプ信号VRMPIよりも振幅が小さい場合、制御信号VCOMPはS変換期間S1中に、ハイレベルからローレベルに変化する。時刻T9Aに信号VCOMPがローレベルであることにより、選択回路108は、S2期間に出力する信号としてVRMP1選択する。
S変換期間S2の開始時刻である時刻T10において、カウント信号123−0〜123−10はグレイコードの値で「0・・・0000」(10進数で「0」)を示している。時刻T10以降、時間の経過に応じてカウント信号123−0〜123−10が示す値が増加する。このように、S変換期間S2においては、カウント信号123−0〜123−10で構成された11ビットのグレイコードでのカウントが行われる。よって、信号VCOMPのレベルが変化する時刻T10Aにおいて、第2メモリ群122のSラッチ200−Sには、カウント信号が11ビットのグレイコードで保持される。
このように、本実施例では、S変換期間S1、S2の2つの期間に2回のAD変換が行われる。S変換期間S2に保持されるカウント信号は11ビット、すなわちカウント信号群123のすべてのビットであり、S変換期間S1に保持されるカウント信号はカウント信号群123のうちの下位4ビットである。このようにしてS変換期間S1、S2に得られたデジタル信号を用いて、AD変換を2回行った結果を加算、あるいは平均化することで、AD変換結果に含まれるノイズを低減できる。
なお、図9(c)のカウント信号では、S変換期間S1に出力されるカウント信号とS変換期間S2に出力されるカウント信号とが異なっている。特に、S変換期間S1において、AD変換の動作に関係しないカウント信号123−3〜123−10を常にローレベルとしている。これにより、S変換期間S1にもカウント信号123−3〜123−10のレベルを変化させる場合と比べ、消費電力が低減される。しかしながら、図9(d)に示されたカウント信号の変形例のように、S変換期間S1、S2におけるカウント信号は同一の動作タイミングであってもよい。すなわち、第1のAD変換の際にカウンタ1050が出力するカウント信号と、第2のAD変換の際にカウンタ1050が出力するカウント信号とを同一にしてもよい。この場合、カウンタ1050の動作が、第1のAD変換と第2のAD変換とで共通であるため、カウンタ1050の動作の制御が簡略化される。
次に、被写体が高輝度の場合のS変換期間S1,S2のAD変換の動作を説明する。S変換期間S1において、信号VRMPIの振幅が、信号VINの振幅よりも小さいため、信号VCOMPがS変換期間S1において、変化しない。従って、S変換期間S1に、信号VCOMPが変化しないため、第1メモリ群121のSラッチ200−Sにカウント信号が保持されない。また、S変換期間S1終了後の信号VCOMPはハイレベルのままである。時刻T9から時刻T9Aの間に、判定信号メモリ128はハイレベルの信号VCOMPを保持する。この場合、選択回路108はS変換期間S2で用いるランプ信号VRMPIとして、ランプ信号VRMP2を選択する。時刻T9における、その後のAD変換動作は、被写体が低輝度の場合と同じである。
次に、被写体が低輝度の場合において、第1メモリ群121及び第2メモリ群122に保持されたデジタル信号を用いて2回のAD変換結果を加算した結果に相当する信号を得るための処理方法について、図10を参照しつつ説明する。上述したように、各メモリ群に保持されるデジタル信号は、S変換期間S1に保持される下位4ビットのデジタル信号とS変換期間S2に保持される全11ビットのデジタル信号である。したがって、これらを単純加算しても所望の値とはならないので、以下に述べる演算処理が必要となる。なお、これらのデジタル信号に対する演算処理は、グレイコードからバイナリコードに変換された後に行われる。
ここで、S変換期間S1において保持される下位4ビットをS1(Lo)とする。また、S変換期間S2において保持される全ビットをS2(ALL)、下位4ビットをS2(Lo)、上位7ビットをS2(Hi)とする。さらに、本実施例ではS変換期間S1において保持されるデジタル信号には上位7ビットが保持されないが、仮にこのデジタル信号に全11ビットが存在した場合の値をS1(ALL)、上位7ビットをS1(Hi)とする。複数回行われるAD変換後のデジタル信号の上位ビットは、同じ値であるとして、下式が成立する。
S1(Hi)=S2(Hi)
本処理は、第1メモリ群121及び第2メモリ群122に保持されたデジタル信号を用いて、2回のAD変換結果の和であるS1(ALL)+S2(ALL)を求める。また、各メモリ群に保持された既知の値は、S1(Lo)とS2(ALL)である。この観点でS1(ALL)+S2(ALL)を以下のように式変形する。
S1(ALL)+S2(ALL)
=S1(Hi)+S1(Lo)+S2(Hi)+S2(Lo)
=2×S2(Hi)+S2(Lo)+S1(Lo)
=2×{S2(Hi)+S2(Lo)}+S1(Lo)−S2(Lo)
=2×S2(ALL)+diff
ここで、diff=S1(Lo)−S2(Lo)である。
すなわち、第2メモリ群122に保持された値であるS2(ALL)の2倍と、差分値diff(4ビット値)とを加算することで、2回のAD変換結果の和であるS1(ALL)+S2(ALL)と同じ値が算出可能である。
ただし、S1(Lo)及びS2(Lo)の取り得る値は0〜15であるため、上式の差分値diffをそのまま適用すると下位ビットから上位ビットへの繰り上げ又は繰り下げに起因する誤差が生じ得る。そのため、差分値diffに対して、S1(Lo)及びS2(Lo)の組み合わせによっては繰り上げ、あるいは、繰り下げの桁処理が必要となる場合がある。桁処理の内容は以下のようにS1(Lo)−S2(Lo)の値によって決定される。
(Case1)−8<S1(Lo)−S2(Lo)<8の場合
→桁処理なし(diff=S1(Lo)−S2(Lo)とする)
(Case2)S1(Lo)−S2(Lo)≦−8の場合
→桁処理あり(diff=S1(Lo)−S2(Lo)+24とする)
(Case3)8≦S1(Lo)−S2(Lo)の場合
→桁処理あり(diff=S1(Lo)−S2(Lo)−24とする)
以下、図10を参照し、具体例を挙げつつ桁処理の内容について説明する。
(Case1)−8<S1(Lo)−S2(Lo)<8の場合
Bin[0]〜Bin[3]は、S1又はS2をバイナリ変換した後のビットごとの波形のうちの下位4ビットを示している。S2(ALL)行は、Bin[0]〜Bin[3]の取り得る値の一例を示している。
以降、本ケースでは、S2(ALL)が「55」(バイナリ値で「110111」)である場合について説明する。S2(Lo)行は、S2(ALL)が「55」の時の下位4ビットの値「7」(バイナリ値で「0111」)を示している。S2(ALL)が「55」のとき、S1(ALL)の取り得る範囲は「55」±7[LSB]である。S1(Lo)行は、S1(ALL)の下位4ビットである「0」〜「14」(バイナリ値で「0000」〜「1110」)を示している。
S1(Lo)−S2(Lo)行は、S1(Lo)からS2(Lo)を引いた値であり、diff行は桁処理を行った後の結果を示している。なお、本ケースでは桁処理は発生しないため、S1(Lo)−S2(Lo)行と同じ値となる。
S1+S2(期待値)行は、S2(ALL)が「55」の時に、S1(ALL)が取り得る範囲(「55」±7[LSB])におけるAD変換結果の加算値S1(ALL)+S2(ALL)の期待値を示している。
S1+S2(Simple)行は、仮に上述の桁処理を施さなかった場合に得られる計算値である下式を示している。
2×S2(ALL)+S1(Lo)−S2(Lo)
S1+S2行は、桁処理を施した後の計算値である下式を示している。
2×S2(ALL)+diff
この値がS1+S2(期待値)と等しくなるように桁処理が行われる必要がある。本ケースでは−8<S1(Lo)−S2(Lo)<8であるため、図示されたS1の取り得る範囲において、S1+S2(Simple)とS1+S2(期待値)に差は生じない。したがって、本ケースでは桁処理が不要である。
(Case2)S1(Lo)−S2(Lo)≦−8の場合
本ケースでは、S2(ALL)が「63」(バイナリ値で「111111」)であり、S2(Lo)が「15」(バイナリ値で「1111」)となる場合を示している。
ここで、例えば、S1(ALL)がS2(ALL)より「1」大きい「64」(バイナリ値で1000000)の場合を考える。この時、実際に第1メモリ群121に保持される値S1(Lo)は「0」(バイナリ値で0000)となり、桁処理を行わない場合、下式のようになる。
S1(Lo)−S2(Lo)=0−15=−15
したがって、桁処理を行わない場合の2回のAD変換結果の和に相当するS1+S2(Simple)行の値は下式のようになる。
2×S2(ALL)+S1(Lo)−S2(Lo)=63×2−15=111
この結果は、S1+S2(期待値)である「127」と異なる。この理由は以下の通りである。S2(ALL)の値「63」の下位4ビットS2(Lo)は、「15」(バイナリ値で「1111」)である。ここで、S2(ALL)の「63」より「1」だけ大きいS1(ALL)の下位ビットの値であるS1(Lo)は「15」の次の値の「16」ではなく「0」となる。これは、下位ビットのビット幅が4ビットしかないためである。よって、桁処理を行わない場合の、S1+S2(Simple)は、S1+S2(期待値)と「16」だけずれた値となる。
そのため、この値のずれの「16」を補正するために繰り上げの桁処理としてdiffを下式で定義する必要がある。
diff=S1(Lo)−S2(Lo)+24
このdiffを用いてS1(ALL)+S2(ALL)を計算すると、繰り上げ処理後のS1(ALL)+S2(ALL)の値は、下式のようになる。
2×S2(ALL)+diff=2×63−15+16=127
これにより、S1+S2(期待値)と一致する結果が得られる。上述の例は、S1(Lo)が「0」の場合であるが、「1」〜「6」の場合も同様の処理が必要となる。また、S1(Lo)が「8」〜「15」の場合は上述の桁処理は行わない。
(Case3)8≦S1(Lo)−S2(Lo)の場合
本ケースでは、S2(ALL)が「64」(バイナリ値で1000000)であり、S2(Lo)が「0」(バイナリ値で0000)となる場合を示している。
ここで、例えば、S1(ALL)がS2(ALL)より「1」小さい「63」(バイナリ値で「111111」)の場合を考える。この時、実際に第1メモリ群121に保持される値S1(Lo)は「15」(バイナリ値で「1111」)となり、桁処理を行わない場合、
S1(Lo)−S2(Lo)=15−0=15
したがって、桁処理を行わない場合の2回のAD変換結果の和に相当するS1+S2(Simple)行の値は下式のようになる。
2×S2(ALL)+S1(Lo)−S2(Lo)=64×2+15=143
この結果は、S1+S2(期待値)である「127」と異なる。本ケースではCase2とは逆に繰り下げの桁処理としてdiffを下式で定義する必要がある。
diff=S1(Lo)−S2(Lo)−24
このdiffを用いてS1(ALL)+S2(ALL)を計算すると、繰り下げ処理後のS1(ALL)+S2(ALL)の値は、下式のようになる。
2×S2(ALL)+diff=2×64+15−16=127
これにより、S1+S2(期待値)と一致する結果が得られる。上述の例は、S1(Lo)が「15」の場合であるが、「9」〜「14」の場合も同様の処理を行う必要がある。また、S1(Lo)が「0」〜「7」の場合は上述の桁処理を行わない。
上述の桁処理の説明は、被写体が低輝度である場合における、光信号のAD変換結果についてのものであるが、画素リセットレベルのAD変換結果に対しても同様の処理を行うことができる。桁処理の終了後、デジタルCDS処理を行うことでリセットレベルに含まれるノイズが除去された画像データを得ることができる。なお、上述の桁処理方法は、各メモリ群の後段であれば撮像装置の内部で行われてもよく、撮像装置の後段の映像信号処理部等で行われてもよい。
被写体が高輝度である場合は、上述の桁処理を実施せず、次に述べる処理を実施する。
本処理は、S2変換において、ランプ信号VRMP2を用いた際に、ランプ信号VRMP1でAD変換した場合と同等のAD変換ゲインを得る。ランプ信号VRMP2の変化率が、ランプ信号VRMP1の4倍であった時、S2×4を実施する。本処理は、S2信号をグレイコードからバイナリコードに変換された後に行われる。
以上説明したように、本実施例によれば、同一画素から出力された画素信号に対し、複数回のAD変換を行う。この複数回のAD変換によって得られたAD変換結果を加算することで、ノイズを小さくすることができる。この加算において、第1メモリ群121のビット幅を想定されるノイズに応じて信号の全ビット数よりも少なくしている。これにより、第1メモリ群121内のメモリの個数を信号の全ビット数と同じに設定した場合と比べて少なくすることができる。例えば、上述の例では11個から4個に低減されている。したがって、撮像装置の素子数を低減することができる。
なお、上述の説明において、カウンタ信号群から出力されるカウント信号は、グレイコードとしているが、グレイコード以外の形式であってもよい。例えば、通常の2進数を用いたバイナリコードであってもよい。しかしながら、グレイコードは、カウント信号の増加時に反転するビットが1つのみであることから、カウント信号の増加と比較器出力の変化のタイミングずれの影響が小さくなるため、カウント信号にはグレイコードを適用することがより好ましい。
なお、上述の説明では、第1メモリ群121のビット幅は4ビットであり、第2メモリ群122のビット幅は11ビットであり、カウント信号群123が示すカウント信号も11ビットとしているが、これに限定されない。すなわち、これらのビット数は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で任意の値とすることができる。より詳細には、以下のように一般化される。1回目と2回目のAD変換結果の差分値の絶対値が2N−1[LSB](Nは自然数)以下の場合、第1メモリ群121のビット幅はN+1ビットとする。このとき、第2メモリ群122のビット幅及びカウント信号群123が示すカウント信号のビット数は、N+1より大きいMビット(Mは自然数)とする。この場合、第1メモリ群121は、カウント信号群123のうちの最下位ビットから第N+1ビットまでを保持する。第2メモリ群122は、カウント信号群123のうちの最下位ビットから第Mビットまでを保持する。
この場合、上述の桁処理は以下のようにNを用いて一般化することができる。
(Case1)−(2N−1)<S1(Lo)−S2(Lo)<(2N−1)の場合
→桁処理なし
(Case2)S1(Lo)−S2(Lo)≦−(2N−1)の場合
→桁処理あり(diff=S1(Lo)−S2(Lo)+2N+1とする)
(Case3)(2N−1)≦S1(Lo)−S2(Lo)の場合
→桁処理あり(diff=S1(Lo)−S2(Lo)−2N+1とする)
上述の説明では、撮像装置は、2回のAD変換を行い、AD変換結果を2つのメモリ群に保持する構成となっているが、AD変換の回数及びメモリ群の個数は2つに限られない。例えば、3回以上の複数回AD変換を行い、AD変換結果を3つ以上の複数個のメモリ群に保持する構成としてもよい。
上述の説明では、複数回のAD変換で得られたデジタル信号を加算しているが、この加算は別の方法であってもよい。例えば、上述の加算処理を、加算後の値を加算が行われた信号の個数で除算する、平均化処理としてもよい。
(実施例4)
本実施例は、実施例1〜3で述べた撮像装置を適用した撮像システムに関する。
撮像システムとして、デジタルスチルカメラやデジタルカムコーダーや監視カメラなどがあげられる。図6に、撮像システムの例としてデジタルスチルカメラに撮像装置を適用した場合の模式図を示す。
図6に例示した撮像システムは、レンズの保護のためのバリア151、被写体の光学像を撮像装置154に結像させるレンズ152、レンズ152を通過する光量を可変にするための絞り153を有する。レンズ152、絞り153は撮像装置154に光を集光する光学系である。また、図6に例示した撮像システムは撮像装置154より出力される出力信号の処理を行う出力信号処理部155を有する。出力信号処理部155は必要に応じて各種の補正、圧縮を行って信号を出力する動作を行う。
図6に例示した撮像システムはさらに、画像データを一時的に記憶する為のバッファメモリ部156、外部コンピュータ等と通信する為の外部インターフェース部157を有する。さらに撮像システムは、撮像データの記録または読み出しを行う為の半導体メモリ等の着脱可能な記録媒体159、記録媒体159に記録または読み出しを行うための記録媒体制御インターフェース部158を有する。さらに固体撮像システムは、各種演算とデジタルスチルカメラ全体を制御する全体制御・演算部1510、撮像装置154と出力信号処理部155に各種タイミング信号を出力するタイミング供給部1511を有する。ここで、タイミング信号などは外部から入力されてもよく、撮像システムは少なくとも撮像装置154と、撮像装置154から出力された出力信号を処理する出力信号処理部155とを有すればよい。
出力信号処理部155は、実施例1〜3で述べた、撮像装置の外部に設けられた信号処理部とすることができる。
以上のように、本実施例の撮像システムは、撮像装置154を適用して撮像動作を行うことが可能である。
なお、上記実施例は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。また、これまで述べた各実施例を種々組み合わせて実施することができる。