JP6639203B2 - セルロース繊維層を含むシート - Google Patents

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Description

本発明は、セルロース繊維の作る網目構造を有するシート、これを用いた繊維強化プラスチックフィルム用芯材、車載向用芯材、電子材料向けのプリント配線基板用芯材、絶縁フィルム用芯材、コア材用芯材等に関する。
近年、軽量で高強度な素材として繊維強化プラスチック(FRP:Fiber Reinforced Plastics)が各種産業分野で注目されている。ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維などの強化繊維と、マトリックス樹脂からなる繊維強化複合材料は、競合する金属などに比べて軽量でありながら、強度、弾性率などの力学特性に優れるため、航空機部材、宇宙機部材、自動車部材、船舶部材、土木建築材、スポーツ用品などの多くの分野に用いられている。特に高性能が要求される用途においては、強化繊維としては比強度、比弾性率に優れた炭素繊維が多く用いられている。また、マトリックス樹脂としては不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シアネートエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂などの熱硬化性樹脂が用いられることが多く、中でも炭素繊維との接着性に優れたエポキシ樹脂が多く用いられている。最近では、比較的大形の繊維強化プラスチック成形体を安価に製造するために、真空吸引による減圧環境下で繊維強化プラスチックの成形を行う真空含浸成形法(VaRTM:Vacuum assist Resin Transfer Molding)が採用されつつある(例えば、以下の特許文献1を参照のこと)。 他方、過去検討された繊維とマトリックス樹脂を複合して製造される繊維強化プラスチックは、使用する繊維が太いために、その内部構造が繊維部分と樹脂部分とに明確に分かれ、繊維強化プラスチックとしての力学特性の向上効果は不十分である。
ここで、一般的に使用されるFRP用の繊維は繊維径がミクロンレベルであるため、厚膜での樹脂含浸性に問題は生じにくい。しかし、単に一般的な繊維をナノファイバー化すると、単位体積あたりの交絡点が増加しFRPとして力学特性が向上するが、特に厚膜が要求される用途では樹脂の含浸性(浸透性)が十分でなかった。
特開昭60−83826号公報
上述の技術の状況に鑑み、本願発明者らは、力学特性をさらに向上させる技術について検討を進めた結果、ナノファイバー化した繊維を用いることで表面積をより大きくし、また、ミクロンレベルで厚みを制御することで水素結合ネットワークを形成させ、熱的安定性が非常に高いセルロースナノファイバーシートを作成できることに着目した。
本発明が解決しようとする課題は、シートとしては厚膜でありながら樹脂含浸性に優れ、かつ、複合化したときのシート強度(弾性率)を向上できるシートを提供することである。
[1]再生セルロース繊維を50重量%以上含むセルロース繊維層を少なくとも一層含む単層又は3層以下の複数層から構成されるシートであって、以下の要件:
(1)前記セルロース繊維層を構成する繊維の比表面積相当繊維径が0.20μm以上2.0μm以下である;
(2)前記セルロース繊維層の膜厚が20μm以上である;
)前記シートの透気抵抗度が1s/100ml以上400,000s/100ml以下である;及び
)前記シートの膜厚が22μm超である;
を満足することを特徴とするシート。
[2]前記セルロース繊維層が、再生セルロース繊維を70重量%以上含む、前記[1]に記載のシート。
[3]前記透気抵抗度が5s/100ml以上20,000s/100ml以下である、前記[1]又は[2]に記載のシート。
[4]前記再生セルロース繊維の比表面積相当繊維径が0.20μm以上2.0μm以下であり、かつ、前記セルロース繊維層には、繊維径3μm以上15μm以下の繊維が0重量%超30重量%以下で含まれる、前記[1]〜[3]のいずれかに記載のシート。
[5]前記シートの膜厚が100μm超である、前記[1]〜[4]のいずれかに記載のシート。
[6]前記セルロース繊維層を構成する繊維の比表面積相当繊維径が0.20μm以上0.45μm以下である、前記[1]〜[5]のいずれかに記載のシート。
[7]前記セルロース繊維層の目付が2g/m以上である、前記[1]〜[6]のいずれかに記載のシート。
[8]前記セルロース繊維層に、天然セルロース繊維が50重量%未満で含まれる、前記[1]〜[7]のいずれかに記載のシート。
[9]前記セルロース繊維層に、天然セルロース繊維が30重量%未満含まれる、前記[8]に記載のシート。
[10]前記セルロース繊維層に、セルロース以外の有機ポリマーからなる繊維が50重量%未満で含まれる、前記[1]〜[7]のいずれかに記載のシート。
[11]前記セルロース繊維層に、セルロース以外の有機ポリマーからなる繊維が30重量%未満で含まれる、前記[10]に記載のシート。
[12]前記セルロース以外の有機ポリマーからなる繊維が、アラミドファイバー及び/又はポリアクリロニトリルファイバーである、前記[10]は[11]に記載のシート。
[13]前記セルロース繊維層が、反応性架橋剤を10重量%以下で含む、前記[1]〜[12]のいずれかに記載のシート。
[14]前記3層以下の複数層構造の一層として、目付が5g/m以上200g/m以下である不織布又は紙である基材層を含む、前記[1]〜[13]のいずれかに記載のシート。
[15]前記3層以下の複数層構造の一層として、目付が10g/m以上100g/m以下である不織布又は紙である基材層を含む、前記[14]に記載のシート。
[16]水系抄紙工程を含む、前記[1]〜[15]のいずれかに記載のシートの製造方法。
[17]塗工工程を含む、前記[1]〜[15]のいずれかに記載のシートの製造方法。
[18]遮音用途として用いる、前記[1]〜[15]のいずれかに記載のシート。
[19](A)前記[1]〜[15]のいずれかに記載のシートに(B)樹脂が含浸されている複合フィルム。
[20]前記(B)樹脂が、熱硬化した樹脂、光硬化した樹脂、及び熱可塑性樹脂からなる群から選ばれる1つ以上の樹脂である、前記[19]に記載の複合フィルム。
[21]前記(B)樹脂が、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂又は汎用プラスチックの内のいずれか1つ以上の樹脂である、前記[19]又は[20]に記載の複合フィルム。
[22]前記(B)樹脂が、無機微粒子を50質量%未満で含む、前記[19]〜[21]のいずれかに記載の複合フィルム。
[23]前記無機微粒子が、SiO、TiO、Al、ZrO、MgO、ZnO、及びBaTiOからなる群から選ばれる1つ以上である、前記[22]に記載の複合フィルム。
[24](A)前記[1]〜[15]のいずれかに記載のシート、並びに(B)熱硬化性樹脂及び/又は光硬化性樹脂を含む複合プリプレグフィルム。
[25]前記(B)樹脂が、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、及び/又はポリイミド系樹脂である、前記[24]に記載の複合プリプレグフィルム。
[26]前記(B)樹脂が、無機微粒子を50質量%未満で含む、前記[24]又は[25]に記載の複合プリプレグフィルム。
[27]前記無機微粒子が、SiO、TiO、Al、ZrO、MgO、ZnO、及びBaTiOからなる群から選ばれる1つ以上である、前記[26]に記載の複合プリプレグフィルム。
[28]前記[1]〜[15]のいずれかに記載のシートを含む繊維強化プラスチックフィルム用芯材。
[29]車載材料のための、前記[28]に記載の繊維強化プラスチックフィルム用芯材。
[30]電子材料のための、前記[28]に記載の繊維強化プラスチックフィルム用芯材。
[31]前記[1]〜[15]のいずれかに記載のシートを含む繊維強化プラスチックフィルム用プリプレグ。
[32]前記[1]〜[15]のいずれかに記載のシートを含む繊維強化プラスチックフィルム。
[33]車載材料のための、前記[32]に記載の繊維強化プラスチックフィルム。
本発明のシートは、シートとしては厚膜でありながら限定された透気抵抗度範囲、すなわち孔径を保有しているため樹脂含浸性に優れる。それ故、例えば、繊維強化プラスチック用芯材として用いた際には、樹脂との複合化時の熱的安定性(線熱膨張率の低減や高温での弾性保持)を付与できる。また、車載材料向けの芯材として用いた際には、車載材料として軽量でありながら、複合化したときの力学特性を確保することができる。
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
本実施形態は、再生セルロースを原料とすることで、微細化により所定の範囲の繊維径を有するセルロースナノファイバーを提供することができる。これにより作製したシートはシートとしては厚くかつ、限定された透気抵抗度範囲、すなわち孔径を保有しているため、樹脂含浸性に優れている。それ故、例えば、繊維強化プラスチック用芯材として用いた際には、樹脂との複合化時の熱的安定性(線熱膨張率の低減や弾性率保持)を付与できる。また、車載材料向けの芯材として用いた際には、車載材料としては薄厚でありながら、シート強度を確保することができる。
本発明のシートに含まれる再生セルロース繊維は、特定範囲の繊維径を有するため一定の細孔を維持しており、かつ、繊維同士の交絡点が多いため、厚膜化した際にも強度を維持しつつ、樹脂含浸性に優れ、繊維径が小さいために多数積層されても平坦性を発現するといった特徴を有する。
本実施形態のシートは、再生セルロース繊維を50重量%以上含むセルロース繊維層を少なくとも一層含む単層又は3層以下の複数層から構成されるシートであって、以下の要件:
(1)セルロース繊維層を構成する繊維の比表面積相当繊維径が0.20μm以上2.0μm以下である;
(2)透気抵抗度が1s/100ml以上400,000s/100ml以下である;及び
(3)膜厚が22μm超である;
を満足するシートである。かかるシートは、繊維強化プラスチックフィルム用芯材として好適に使用可能である。
以下、その理由を説明する。
例えば、繊維強化プラスチックフィルムの分野、特に車載、航空機材の分野では、基板の軽量化・高弾性率化のニーズは大きい。該用途分野に求められるところの材料である、軽量であり、かつ、樹脂含浸性等の加工工程での適性に優れ、熱的安定性の高い、繊維強化プラスチックフィルム用の芯材となり得る。
以下、本実施形態のシートについて詳細に説明する。
まず、本実施形態のシートを構成するセルロース繊維について説明する。
本実施形態において、再生セルロースとは、天然セルロースを溶解又は結晶膨潤(マーセル化)処理し再生して得られる物質であって、粒子線回折によって格子面間隔0.73nm、0.44nm及び0.40nmに相当する回折角を頂点とする結晶回折パターン(セルロースII型結晶)を与えるような分子配列を有するβ−1,4結合グルカン(グルコース重合体)を言う。また、X線回折パターンにおいて、2θの範囲を0°〜30°とするX線回折パターンが、10°≦2θ<19°に1つのピークと、19°≦2θ≦30°に2つのピークとを有し、例えば、レーヨン、キュプラ、テンセル等の再生セルロース繊維のことを意味する。これらの中でも微細化のし易さの観点から、繊維軸方向への分子配向性の高いキュプラ又はテンセルを原料として微細化した繊維を用いることが好ましい。
再生セルロース繊維の最大繊維太さは15μm以下であることが好ましく、より好ましくは10μm以下、さらに好ましくは5μm以下、最も好ましくは3μm以下である。ここで、最大繊維太さが15μm以下であるとは、以下の条件で測定されるセルロース不織布の電子顕微鏡(SEM)において、画像上で15μmの繊維径を超える繊維が全く確認できないことを意味する。セパレータの表面SEM画像を1万倍相当の倍率にて採取し、この画像中に含まれるいずれの交絡繊維についても繊維径が15μm以下であり、かつ、同様にキャスト表面の任意の部分を同一条件のSEM画像で観察し、合計100本以上の繊維について同じように15μmの繊維径を超える繊維が確認できない場合、最大繊維径が15μm以下であると定義する。但し、画像において数本の繊維が多束化して15μm以上の繊維径となっていることが明確に確認できる場合には15μm以上の繊維径をもつ繊維とはしないものとする。最大繊維径が3μm以上15μm以下の再生セルロース長繊維を再生セルロース繊維と混抄するか、または、微細化後に最大繊維径が3μm以上15μm以下の再生セルロースが残存している場合、厚膜シートの樹脂含浸性に優れるため好ましく、その含有率としては0重量%超30重量%以下であることが好ましい。
本実施形態のシートとして、再生セルロース繊維を50重量%以上含むセルロースのうち、繊維層の比表面積相当繊維径は2.0μm以下であり、好ましくは1.0μm以下、より好ましくは0.45μ以下、さらに好ましくは0.40μm以下である。ここで、比表面積相当繊維径について説明する。窒素吸着によるBET法を用いて比表面積をまず評価し、該比表面積に対し、セパレータを構成する繊維が仮想的に、繊維間の融着が全く起こっていない理想状態であり、かつセルロース密度がd(g/cm)でありL/D(L:繊維長,D:繊維径(共に単位:μm))が無限大である円柱である繊維によって表面が構成されると仮定した円柱モデルによって、比表面積と繊維径に関する次式:
比表面積=4/(dD) (m/g)
を誘導した。BET法による比表面積を上式の比表面積として代入し、セルロース密度としてd=1.50g/cmを代入することにより繊維径Dに換算した数値を、比表面積相当繊維径と定義する。ここで、BET法による比表面積測定は、比表面積・細孔分布測定装置(ベックマン・コールター社製)にて、試料約0.2gに対する液体窒素の沸点における窒素ガスの吸着量を同装置のプログラムに則り測定した後、比表面積を算出した。
本実施形態のシートは、再生セルロース繊維を50重量%以上含むセルロース繊維層の比表面積相当繊維径を上記範囲に選択することにより、均一な厚み分布をもつシートを好適に提供することができる。再生セルロース繊維を50重量%以上含むセルロース繊維層の比表面積相当繊維径が2.0μmを超えると、繊維径が太すぎるために、上述した繊維シート表面の凹凸が発生し微多孔構造の分布が大きくなる、すなわち大きな孔径の孔が散在するため、薄くて均一性に優れたシートを提供できなくなる。また、本実施形態のシートをセパレータとして使用する場合には、セルロース繊維層の比表面積相当繊維径が2.0μmを超えると、耐ショート性の点から好ましくない。
本実施形態のシートとして再生セルロース繊維を50重量%以上含むセルロース繊維層の比表面積相当繊維径は、0.20μm以上、好ましくは0.25μm以上である。再生セルロース繊維を50重量%以上含むセルロース繊維層の比表面積相当繊維径が0.20μm未満となると、繊維シートの孔径が小さくなりすぎてしまう。それ故、繊維強化プラスチック用途でシートと樹脂を複合化する際に樹脂が含浸しないこと、繊維径が細すぎるために、繊維強化プラスチックの劣化の原因となり、内部抵抗の経時的増大やガス発生に繋がることもあるため、好ましくない。また、後述する抄紙工程等のシート作製時において、繊維の抜けが発生し、歩留りが低下することがあり好ましくない。
本実施形態のシートとして再生セルロース繊維は50重量%以上含む。好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上である。再生セルロースを50重量%以上含む繊維を使用することで、水中のセルロースナノファイバースラリーを用いて抄紙法、又は塗工法によりシート形成をする際、乾燥時に繊維層の収縮を抑制し、繊維層中の空孔や孔径を保持することが可能となる。それ故、繊維強化プラスチック用途でシートと樹脂とを複合する際に樹脂が含浸しやすくなり複合化しやすいこと、再生セルロース繊維の交絡点数が通常のセルロース繊維シートのそれと比して多くなることで樹脂と複合化した際の熱的安定性(線熱膨張率の低減、高温時の弾性保持)を高めることができる。
本実施形態のシートは、透気抵抗度が1s/100cc以上400,000s/100cc以下、好ましくは100,000s/100cc以下、より好ましくは20,000s/100cc以下の範囲であることを特徴としている。ここで、透気抵抗度はJIS P 8117に記載のガーレー試験機法に基づき測定される数値を意味する。より好ましくは、透気抵抗度が2s/100cc以上10,000s/100cc以下、さらに好ましくは、5s/100cc以上、100s/100cc以下、最も好ましくは8s/100cc以上100s/100cc以下の範囲内である。透気抵抗度が1s/100ccより低いシートでは、微細な繊維で構成されていながら欠点なく均一にシート製造することは困難である。かつ繊維強化プラスチックとしては、強度の問題が生じ、各種用途での機能を発現しなくなるため好ましくない。また、400,000s/100ccを超える場合には、空孔率が低下するか、あるいは孔径が小さくなり過ぎる。故に、本発明のシートを繊維強化プラスチックとして使用する際に、シートに樹脂が含浸せず、複合化が不完全となり、本来発現すべき複合フィルムの熱的安定性(線熱膨張率の低減や高温での弾性保持)を失ってしまう。
また、透気抵抗度が5,000s/100cc以下であれば、繊維強化プラスチック用途でシートと樹脂を複合化する際に樹脂が含浸し易くなるため好ましい。
本実施形態のシートは、上述したようにセルロース繊維をシート状に加工して得ることができるが、実質的な膜厚は22μmより大きい。ここで、膜厚の測定は、面接触型の膜厚計、例えばMitutoyo製の膜厚計(Model ID−C112XB)等を用い、から10.0cm×10.0cmの正方形片を切り取り種々な位置について5点の測定値の平均値を膜厚T(μm)とする。また、膜厚の測定で切り取った10.0cm×10.0cmの正方形片の膜厚T(μm)と、その重さW(g)から、以下の式:
W0=100×W
を用いて膜の目付W0(g/m)を算出することができる。
本実施形態のシートは、より好ましくは100μm以上10mm以下である。膜厚が上記の範囲であると、シートを用いて複合フィルムを作製した際に平坦性を維持したまま樹脂含浸性、強度(弾性率)、熱的安定性を付与することができる。厚みが22μm以下だと樹脂含浸時の強度(弾性率)や熱的安定性に劣る場合がある。
また、微細セルロース層そのものの膜厚は、20μm以上であれば強度の観点から好ましく、50μm以上であることがより好ましい。
本実施形態のシートに用いられるセルロース繊維層の目付は、1g/m以上であり、好ましくは2g/m以上1000g/m以下、より好ましくは3g/m以上500g/m以下、さらに好ましくは4g/m以上100g/m以下である。目付が1g/m未満であると、各種デバイスへの組み立て工程において取り扱い難くなり不適切な場合があり、長期安定性の観点から好ましくない。目付の上限は、樹脂の含浸性等に問題が生じない限り制限はないが、製造上の観点から1000g/m以下であることが好ましい。
本実施形態のシートに用いられる、再生セルロース繊維を50重量%以上含むセルロース繊維層には、さらに再生セルロース繊維の他に天然セルロース繊維が50重量%未満含まれていてもよい。天然セルロース繊維を使用することで、その構成単位であるミクロフィブリルの細さから、0.20μm未満の繊維径の微細なセルロース繊維の製造が比較的容易に得られ、またより細く繊維長/繊維径比率の大きな天然セルロース繊維の混在によりシートの強度を増大させることができる。天然セルロース繊維を50重量%未満含むことで、セルロース繊維層の強度が増加し、デバイスを組み立てる際の取り扱い性や線熱膨張率(CTE)が極めて良好なシートとなる。該含有率は、より好ましくは30重量%未満である。
本実施形態のシートに用いられる、セルロース繊維層中の天然セルロース繊維径は、最大繊維太さが15μm以下であることが好ましい。最大繊維径が15μm以下の場合、シートの表面平坦性の点から好ましい。
セルロースの最大繊維径が15μmを越えない天然セルロース繊維としては、広葉樹又は針葉樹から得られる木材パルプ、精製リンターあるいは各種植物種(竹、麻系繊維、バガス、ケナフ、リンター等)からの精製パルプ等を高度に化処理したものの他に、セルロース生産菌(バクテリア)の作るバクテリアセルロース(BC)のようなネバードライで微細繊維の集合体である天然セルロース繊維も含まれる。
また、本実施形態のシートに用いられる、再生セルロース繊維を50重量%以上含むセルロース繊維層には、さらに再生セルロース繊維の他にセルロース以外の有機ポリマーからなる繊維が50重量%未満含まれていてもよく、より好ましくは30重量%以下である。該有機ポリマーとしては繊維を製造し得る有機ポリマーであれば何でも使用することができ、例えば芳香族系又は脂肪族系のポリエステル、ナイロン、ポリアクリロニトリル、セルロースアセテート、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリケトン、芳香族系ポリアミド、ポリイミド、絹、羊毛等のセルロース以外の天然有機ポリマーを挙げることができるがこれらに限定されない。該有機ポリマーからなる繊維は、有機繊維を叩解、高圧ホモジナイザー等による微細化処理により高度にフィブリル化又は微細化させた繊維、各種ポリマーを原料としてエレクトロスピニング法によって得られる繊維、各種ポリマーを原料としてメルトブロウン法によって得られる繊維等を挙げることができるが、これらに限定されない。これらの中でも、特にポリアクリロニトリルナノファイバーや全芳香族ポリアミドであるアラミド繊維を高圧ホモジナイザーにより微細化した微小繊維状アラミドは、アラミド繊維の高耐熱性、高い化学的安定性も相まって、好適に使用することができる。これら有機ポリマーの繊維径は、最大繊維太さが15μm以下であることが好ましい。
次にセルロース繊維の製造方法について記載する。
セルロース繊維の微細化は、再生セルロース繊維、天然セルロース繊維共に、前処理工程、叩解処理工程及び微細化工程を経ることが好ましい。特に再生セルロース繊維を微細化する場合には前処理工程は油剤を除去するための、場合によって界面活性剤を使用する水洗工程にて実施できるが、天然セルロース繊維の前処理工程においては、100〜150℃の温度での水中含浸下でのオートクレーブ処理、酵素処理等、又はこれらの組み合わせによって、原料パルプが以降の工程で微細化し易い状態にしておくことは有効である。該前処理工程の際に、1重量%以下の濃度の無機酸(塩酸、硫酸、リン酸、ホウ酸など)ないしは有機酸(酢酸、クエン酸など)を添加してオートクレーブ処理を行うことも場合によっては有効である。これらの前処理は、微細化処理の負荷を軽減するだけでなく、セルロース繊維を構成するミクロフィブリルの表面や間隙に存在するリグニンやヘミセルロース等の不純物成分を水相へ排出し、その結果、微細化された繊維のα−セルロース純度を高める効果もあるため、セルロース繊維不織布の耐熱性の向上に大変有効であることもある。
叩解処理工程以降については、再生セルロース繊維、天然セルロース繊維共に以下の内容で製造する。叩解処理工程においては、原料パルプを0.5重量%以上4重量%以下、好ましくは0.8重量%以上3重量%以下、より好ましくは1.0重量%以上2.5重量%以下の固形分濃度となるように水に分散させ、ビーターやディスクレファイナー(ダブルディスクレファイナー)のような叩解装置でフィブリル化を徹底的に促進させる。ディスクレファイナーを用いる場合には、ディスク間のクリアランスを極力狭く(例えば、0.1mm以下)設定して、処理を行うと、極めて高度な叩解(フィブリル化)が進行するので、高圧ホモジナイザー等による微細化処理の条件を緩和でき、有効な場合がある。
セルロース繊維の製造には、上述した叩解工程に引き続き、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー、グラインダー等による微細化処理を施すことが好ましい。この際の水分散体中の固形分濃度は、上述した叩解処理に準じ、0.5重量%以上4重量%以下、好ましくは0.8重量%以上3重量%以下、より好ましくは1.0重量%以上2.5重量%以下である。この範囲の固形分濃度の場合、詰まりが発生せず、しかも効率的な微細化処理が達成できる。
使用する高圧ホモジナイザーとしては、例えば、ニロ・ソアビ社(伊)のNS型高圧ホモジナイザー、(株)エスエムテーのラニエタイプ(Rモデル)圧力式ホモジナイザー、三和機械(株)の高圧式ホモゲナイザー等を挙げることができ、これらの装置とほぼ同様の機構で微細化を実施する装置であれば、これら以外の装置であっても構わない。超高圧ホモジナイザーとしては、みづほ工業(株)のマイクロフルイダイザー、吉田機械興業(株)ナノマイザー、(株)スギノマシーンのアルティマイザー等の高圧衝突型の微細化処理機を意味し、これらの装置とほぼ同様の機構で微細化を実施する装置であれば、これら以外の装置であっても構わない。グラインダー型微細化装置としては、(株)栗田機械製作所のピュアファインミル、増幸産業(株)のスーパーマスコロイダーに代表される石臼式摩砕型を挙げることができるが、これらの装置とほぼ同様の機構で微細化を実施する装置であれば、これら以外の装置であっても構わない。
微細セルロース繊維の繊維径は、高圧ホモジナイザー等による微細化処理の条件(装置の選定や操作圧力及びパス回数)又は該微細化処理前の前処理の条件(例えば、オートクレーブ処理、酵素処理、叩解処理等)によって制御することができる。
さらに、天然セルロース微細繊維として、表面の化学処理を加えたセルロース系の微細繊維、及びTEMPO酸化触媒によって6位の水酸基が酸化され、カルボキシル基(酸型、塩型を含む)となったセルロース系の微細繊維を使用することもできる。前者の場合は、目的に応じて種々の表面化学処理を施すことにより、例えば、微細セルロース繊維の表面に存在する一部又は大部分の水酸基が酢酸エステル、硝酸エステル、硫酸エステルを含むエステル化されたもの、メチルエーテルを代表とするアルキルエーテル、カルボキシメチルエーテルを代表とするカルボキシエーテル、シアノエチルエーテルを含むエーテル化されたものを、適宜調製して使用することができる。また、後者、すなわち、TEMPO酸化触媒によって6位の水酸基が酸化された微細セルロース繊維の調製においては、必ずしも高圧ホモジナイザーのような高エネルギーを要する微細化装置を使用することは必要なく、微細セルロースの分散体を得ることができる。例えば、文献(A.Isogai et al.,Biomacromolecules,7,1687−1691(2006))に記載されるように、天然セルロースの水分散体に2,2,6,6−テトラメチルピペリジノオキシラジカルのようなTEMPOと呼ばれる触媒とハロゲン化アルキルを共存させ、これに次亜塩素酸のような酸化剤を添加し、一定時間反応を進行させることにより、水洗等の精製処理後に、通常のミキサー処理を施すことにより極めて容易に微細セルロース繊維の分散体を得ることができる。
尚、本実施形態では、上記の原料の異なる再生セルロース又は天然セルロース系の微細繊維やフィブリル化度の異なる天然セルロースの微細繊維、表面を化学処理された天然セルロースの微細繊維、有機ポリマーの微細繊維などを2種類以上、所定量混合させてセルロース微細繊維層を形成させることも有効である場合がある。
本実施形態のシートに用いられるセルロース繊維層は、反応性架橋剤を10重量%以下含んでいても強度補強のために有効である。反応性架橋剤とは、多官能性イソシアネートに由来する反応体のことを言い、多官能性イソシアネート化合物と活性水素含有化合物との付加反応により生成した樹脂をいう。反応性架橋剤を10重量%以下含んでいることで、セルロース微細繊維層の強度が増加し、デバイスを組み立てる際の取り扱い性が極めて良好なシートとなる。より好ましくは6重量%以下である。
本実施形態のシートに用いられるセルロース繊維層中の反応性架橋剤を形成する、反応性架橋剤多官能性イソシアネート化合物としては、例えば、芳香族多官能性イソシアネート、芳香脂肪族多官能性イソシアネート、脂環族多官能性イソシアネート、脂肪族多官能性イソシアネート等が挙げられる。黄変性が少ないという観点から脂環族多官能性イソシアネート及び脂肪族多官能性イソシアネートがより好ましい。また、多官能性イソシアネート化合物は1種類又は2種類以上含まれていてもよい。
芳香族多官能性イソシアネートとしては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート及びその混合物(TDI)、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(MDI)、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、3,3−ジメチル−4,4−ビフェニレンジイソシアネート、粗製TDI、ポリメチレンポリフェニルジイソシアネート、粗製MDI、フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族多官能性イソシアネートが挙げられる。
脂環族多官能性イソシアネートとしては、例えば、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,3−シクロペンテンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート等の脂環族多官能性イソシアネートが挙げられる。
脂肪族多官能性イソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族多官能性イソシアネート等が挙げられる。
活性水素含有化合物としては、例えば、1価アルコール、多価アルコール及びフェノール類を含む水酸基含有化合物、アミノ基含有化合物、チオール基含有化合物、カルボキシル基含有化合物等が挙げられる。また、空気中あるいは反応場に存在する水や二酸化炭素なども含まれる。活性水素含有化合物は、1種類又は2種類以上が含まれていてもよい。
1価アルコールとしては、例えば、炭素数1〜20のアルカノール(メタノール、エタノール、ブタノール、オクタノール、デカノール、ドデシルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール及びステアリルアルコール等)、炭素数2〜20のアルケノール(オレイルアルコール及びリノリルアルコール等)及び炭素数7〜20の芳香脂肪族アルコール(ベンジルアルコール及びナフチルエタノール等)等が挙げられる。
多価アルコールとしては、例えば、炭素数2〜20の2価アルコール[脂肪族ジオール(エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−又は1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール及び1,10−デカンジオール、等)、脂環式ジオール(シクロヘキサンジオール及びシクロヘキサンジメタノール等)及び芳香脂肪族ジオール{1,4−ビス(ヒドロキシエチル)ベンゼン等}等]、炭素数3〜20の3価アルコール[脂肪族トリオール(グリセリン及びトリメチロールプロパン等)等]及び炭素数5〜20の4〜8価アルコール[脂肪族ポリオール(ペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、ソルビタン、ジグリセリン及びジペンタエリスリトール等)及び糖類(ショ糖、グルコース、マンノース、フルクトース、メチルグルコシド及びその誘導体)]等が挙げられる。
フェノール類としては、例えば、1価のフェノール(フェノール、1−ヒドロキシナフタレン、アントロール及び1−ヒドロキシピレン等)、多価フェノール[フロログルシン、ピロガロール、カテコール、ヒドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、1,3,6,8−テトラヒドロキシナフタレン、1,4,5,8−テトラヒドロキシアントラセン、フェノールとホルムアルデヒドとの縮合物(ノボラック)、米国特許3265641号明細書に記載のポリフェノール等]等が挙げられる。
アミノ基含有化合物としては、例えば、炭素数1〜20のモノハイドロカルビルアミン[アルキルアミン(ブチルアミン等)、ベンジルアミン及びアニリン等]、炭素数2〜20の脂肪族ポリアミン(エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン及びジエチレントリアミン等)、炭素数6〜20の脂環式ポリアミン(ジアミノシクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジアミン及びイソホロンジアミン等)、炭素数2〜20の芳香族ポリアミン(フェニレンジアミン、トリレンジアミン及びジフェニルメタンジアミン等)、炭素数2〜20の複素環式ポリアミン(ピペラジン及びN−アミノエチルピペラジン等)、アルカノールアミン(モノエタノールアミン、ジエタノールアミン及びトリエタノールアミン等)、ジカルボン酸と過剰のポリアミンとの縮合により得られるポリアミドポリアミン、ポリエーテルポリアミン、ヒドラジン(ヒドラジン及びモノアルキルヒドラジン等)、ジヒドラジッド(コハク酸ジヒドラジッド及びテレフタル酸ジヒドラジッド等)、グアニジン(ブチルグアニジン及び1−シアノグアニジン等)及びジシアンジアミド等が挙げられる。
チオール基含有化合物としては、例えば、炭素数1〜20の1価のチオール化合物(エチルチオール等のアルキルチオール、フェニルチオール及びベンジルチオール)、多価のチオール化合物(エチレンジチオール及び1,6−ヘキサンジチオール等)等が挙げられる。
カルボキシル基含有化合物としては、1価のカルボン酸化合物(酢酸等のアルキルカルボン酸、安息香酸等の芳香族カルボン酸)、多価のカルボン酸化合物(シュウ酸やマロン酸等のアルキルジカルボン酸及びテレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸等)等が挙げられる。
本実施形態のシートに用いられるセルロース繊維層には、3層以下の複数層構造の一層として目付が2g/m以上200g/m以下、好ましくは5g/m以上100g/m以下である不織布又は紙である基材層を含んでいてもよい。目付が3g/m以上200g/m以下である不織布又は紙である基材層を含むことで、薄膜のセルロース繊維層自体の強度が不足していたとしても、基材層が強度を補うために、シートとしての機能を保持しながら、部材や部品を作製する際の取り扱い性が極めて良好なシートとなる。
本実施形態のシートに用いられる基材層としては、例えば、6−ナイロンや6,6−ナイロン等のポリアミド繊維、ポリエチレンテレフタレートやポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、木材パルプやコットンリンター等の天然セルロース繊維、ビスコースレーヨンや銅アンモニアレーヨン等の再生セルロース繊維及びリヨセルやテンセル等の精製セルロース繊維の群から選ばれる少なくとも1種からなる不織布又は紙である。電解液や複合化する樹脂の含浸性の観点から、セルロースやナイロン、ポリプロピレンであることが好ましい。また上記基材層は、本発明で規定する膜厚範囲からメルトブロウン又はエレクトロスピニング系の不織布であると好適に使用できる。
本実施形態のシートには、片面又は両面に絶縁多孔膜を形成していてもよい。特にシートを蓄電デバイス用セパレータとして利用する場合に、蓄電デバイスは内部短絡等の原因により電池内部で局部的な発熱が生じた場合、発熱部位周辺のセパレータが収縮して内部短絡がさらに拡大し、暴走的に発熱して発火・破裂等の重大な事象に至ることがある。シートの片面又は両面に絶縁多孔膜を形成する積層型構造をもたせることで、短絡の発生や拡大を防ぎ、安全性の高い蓄電デバイスを提供できる。
本実施形態の積層型フィルムに形成される、片面又は両面に絶縁多孔膜は、無機フィラーと熱硬化性樹脂からなり、熱硬化性樹脂が無機フィラーを埋没させることなく、無機フィラー間の空隙を保持していることが好ましい。無機フィラーとしては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、アルミナ、ギブサイト、ベーマイト、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、シリカ、酸化チタン、チタン酸バリウム、酸化ジルコニウムなどの無機酸化物や無機水酸化物、窒化アルミニウムや窒化珪素などの無機窒化物、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、硫酸バリウム、シリコン、アルミニウム化合物、ゼオライト、アパタイト、カオリン、ムライト、スピネル、オリビン、マイカ、モンモリロナイトの群から選ばれる少なくとも1種である。
本実施形態に用いられる熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、オキセタン系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、アルキド系樹脂、ノボラック系樹脂、レゾール系樹脂、ウレア系樹脂、メラミン系樹脂などが挙げられ、これらを単独で使用することもでき、2種以上を併用することもできる。これらの熱硬化性樹脂は、取り扱いやすさと安全性の点で水分散体が好ましい。水分散体には必要に応じて分散剤、乳化剤、有機溶剤などを含有してもよい。エポキシ系樹脂としては、例えば、アクリル酸グリシジル、アクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸、メタクリル酸ブチル、スチレンなどの共重合体が挙げられる。アクリル系樹脂としては、例えばメタクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸、ヒドロキシエチルメタクリレート、スチレンなどの共重合体が挙げられる。
本実施形態のシートに形成される、片面又は両面に絶縁多孔膜は、無機フィラーと熱硬化性樹脂の混合スラリーを不織布基材に接触させ、乾燥させることによって作製され、セルロース繊維層に固着する。混合スラリーには、必要に応じて増粘剤、消泡剤、有機溶剤を添加してもよい。
本実施形態の積層型フィルムに形成される、片面又は両面に絶縁多孔膜は、目付が2g/m以上10g/m以下であることが好ましい。目付が2g/mであると、ピンホールが生成する場合があり、他方、目付が10g/mより大きいと、絶縁層が厚くなりすぎて内部抵抗の上昇や、折り曲げ加工時に無機フィラーの粉落ちや、剥離が生じる場合がある。積層型シート中の無機フィラーの含有率は15.0〜50.0重量%が好ましい。セパレータ中の熱硬化性樹脂の固形分含有率は、1.0〜15.0重量%がさらに好ましい。無機フィラーの含有率が10.0重量%未満で、熱硬化性樹脂の固形分含有率が20.0重量%超だと、ピンホールが生成する場合がある。無機フィラーの含有率が70.0重量%超で、熱硬化性樹脂の固形分含有率が0.1重量%未満だと、無機フィラーの粉落ちや剥離が生じる場合がある。
さらに本実施形態のシートにおいては、用途によっては、含有金属イオン量の一つの尺度となる塩素イオン含有濃度が40ppm以下が好ましい。塩素イオン含有濃度が40ppm以下であると、Na,Ca等の金属イオン類も相対的に低い濃度で含まれることとなり、その結果、例えばセパレータの耐熱性および該セパレータが組み込まれた蓄電デバイスの電気特性の阻害を抑制することができるためである。さらに好ましくは30ppm以下、最も好ましくは25ppm以下であると、より好適に耐熱性が発現される。塩素イオン濃度の評価はイオンクロマトグラフィー法で行うことができる。
本実施形態のシートの主な製造方法としては、再生セルロース繊維を水等の分散媒体へ高度に分散させた分散液を抄紙法や塗工法により製膜するが、乾燥工程における負荷等の製膜法の効率性の視点から抄紙法により製膜するのが好ましい。従来は、本発明のようなセルロースの繊維から空孔率の高いシートを製造するためには、乾燥時の繊維間の融着、凝集を抑えるために抄紙によって形成される湿紙中の水を有機溶媒に置換した後に乾燥させるか、ないしは有機溶媒を含有した分散液を塗布用の塗工液として使用する必要があった(例えば、特許第4753874号を参照のこと)。しかしながら、本実施形態では、比表面積相当径が0.20μm以上2.0μm以下の再生セルロース繊維を所定量含有させることにより、有機溶媒を使用することなく抄紙法あるいは塗工法によりシートとして必要な空孔を乾燥時に保持することが可能であることが見い出された。ここで、比表面積相当径が0.20μm以上2.0μm以下の再生セルロース繊維とは、該当する再生セルロース繊維のみを含む水分散体から単層の抄紙(目付:10g/m)を行い、製膜した際に得られる単層シートのBET法による比表面積測定から先に示した数式により算出した比表面積相当繊維径が0.20μm以上2.0μm以下である再生セルロース繊維を意味する。該比表面積相当繊維径は、好ましくは0.25μm以上であることが好ましい。また、該比表面積相当繊維径は、好ましくは1.0μm以下、さらに好ましくは0.45μm以下、最も好ましくは0.40μm以下である。該比表面積相当繊維径が0.20μmよりも小さくなると水系湿紙からの乾燥からは本発明のシートとして相応しい空孔を保つのが難しくなり、また、該比表面積相当繊維径が2.0μmよりも大きくなると薄膜化と均一性を両立できなくなる問題が発生し易くなる。
本実施形態のシートを製造する場合には、抄紙用又は塗工用の水分散液としてセルロース繊維を高度に分散させる際の分散法も重要であり、その選択は、後述するシートの厚みの均一性に大きく影響を及ぼす。
上述した製造方法によりフィブリル化処理又は微細化処理によって得られた再生セルロース繊維を含有する分散液はそのままで又は水で希釈し、適当な分散処理により分散させて本実施形態のセパレータを調製するための抄紙用又は塗布用の分散液とすることができる。再生セルロース繊維以外の成分、例えば天然セルロース繊維やセルロース以外の有機ポリマーからなる繊維、又は反応性架橋剤などは上述した分散液製造の各工程のどのタイミングで混合してもよいが、抄紙用又は塗布用の分散液を製造する段階で加えるのが望ましいこともある。該成分を混入後適当な分散処理により分散し、抄紙用又は塗工用の分散液とする。特に再生セルロース繊維以外の繊維を混合するタイミングに関しては、パルプ又はカット糸の段階から叩解工程で再生セルロース原料(カット糸)と混合し、叩解してもよいし、叩解処理した原料を高圧ホモジナイザー等による微細化処理を行う工程で混合してもよい。抄紙用あるいは塗工用の分散液の希釈後、又は原料混合後の希釈処理はどのような分散方法を用いてもよいが、混入している原料成分の内容に応じて適当に選択する。例えば、ディスパー型の攪拌機、各種ホモミキサー、各種ラインミキサー等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
以下、主に抄紙法による製膜方法について記載する。
抄紙方法は、バッチ式の抄紙機は勿論、工業的に利用可能なすべての連続抄紙機を用いて実施することができる。特に、傾斜ワイヤー型抄紙機、長網式抄紙機、丸網式抄紙機によって好適に本実施形態の複合シート材料を製造することができる。膜質均一性を高めるために、一機又は二機以上(例えば、下地層抄紙は傾斜ワイヤー型抄紙機、上地層抄紙では丸網式抄紙機を用いる等)の抄紙機を用いて多段式の抄紙を施すのも場合によっては有効である。多段式の抄紙とは、例えば、1段目で5g/mの目付で抄紙を行い、そこで得られた湿紙上で2段目の5g/mの抄紙を行って、合計10g/mの目付の本発明の複合シート材料を得るという技術である。多段抄紙の場合は、上層と下層を同じ分散体から製膜する場合には単層の本発明の複合シート材料となるが、下層として第1段で例えば、フィブリル化繊維を用いて目の細かな湿紙の層を形成させ、その上から第2段で前述した分散体による抄紙を行い、下層である湿紙を後述するフィルターとして機能させることもできる。
本実施形態のシートは微細繊維を使用するため、抄紙法で製膜する際には抄紙時に微細繊維が抜けることのない微細な構造を有する濾布やプラスチックワイヤーを用いることが好ましい。このような微細な構造を有する濾布またはプラスチックワイヤーとして、基本的には、抄紙用の分散液中の固形分が湿紙として歩止まる、すなわち抄紙工程における固形分の収率として、90重量%以上、好ましくは95重量%以上、より好ましくは99重量%以上である濾布やプラスチックワイヤーを選択すると工業的に好適な生産が可能となる。該収率が高いことは、フィルター内部への食い込みが低いことも意味し、抄紙製膜後の剥離性が良好になる点でも好ましい。また、フィルターの目のサイズが細かくなると上記収率は向上するので望ましいが、そのため濾水性が悪くなると、湿紙の生産速度が遅くなるため好ましくない。すなわち、大気圧下25℃でのワイヤーメッシュ又は濾布の水透過量が、好ましくは0.005ml/cm・s以上、より好ましくは0.01ml/cm・s以上であると、生産性の観点からも好適な抄紙が可能となる。実際には、固形分の収率が高く、濾水性も良好な濾布やプラスチックワイヤーを選ぶことが好ましい。上記の条件を満たす濾布やプラスチックワイヤーは限定されるが、例えば、SEFAR社(スイス)製のTETEXMONODLW07−8435−SK010(PET製)、濾布として敷島カンバス社製NT20(PET/ナイロン混紡)、日本フィルコン社製のプラスチックワイヤーLTT−9FE、さらには特開2011−42903に記載の多層化ワイヤーを挙げることができるが、これらに限定されない。
セルロース繊維の濃度が0.01重量%以上0.5重量%以下、より好ましくは0.05重量%以上0.3重量%以下に調製した抄紙用分散液を上述した条件を満足する濾布上でサクションの稼働等により濾過することによって該濾布上に堆積させ、該セルロース繊維の固形分4重量%以上の湿紙を製造することができる。この際の固形分率は、できるだけ高い方が好ましく、好ましくは8重量%以上、さらに好ましくは12重量%以上である。一般的には、この湿紙に対して、さらにプレス処理することにより、抄紙用分散体中の分散媒体を高効率で除去し、得られる湿膜中の固形分率を高めることができ、より強度の高い湿紙を得ることが可能となる。しかし、比較的厚膜のシートを得る際には、プレス処理を行わない方が、厚膜で低欠陥かつ大孔径、そして強度の高い湿紙を得ることができるため好ましい。また、プレスを行わなくても、平坦性の高いシートを得ることができ、生産性の観点からも好ましい。この後にドラムドライヤー等の乾燥設備によって乾燥処理を行い、シートとして巻き取る。乾燥工程では湿紙を乾燥させることにより本発明のセパレータを得ることができる。乾燥は、ドラムドライヤーやピンテンター式熱風乾燥室での大気圧下での乾燥を通常行うが、場合によっては加圧下又は真空下での乾燥を実施しても構わない。この際、物性の均一性を確保し、幅方向の収縮を抑える目的により、湿紙は有効に定長乾燥させることができるドラムドライヤーにより乾燥させることがより好ましい。乾燥温度は、60℃〜150℃の範囲で適宜選択すればよい。場合によっては、60〜80℃程度の低い温度で粗乾燥して湿紙に自立性を与え、100℃以上での本乾燥工程とするような多段式の乾燥も操作上、有効であることもある。
本実施形態のシートを連続的に製膜するためには、上述したような抄紙工程と乾燥工程、場合によってはカレンダー処理による平滑化工程を連続的に実施すると有効である場合が多い。カレンダー装置による平滑化処理を施すことにより、上述した薄膜化が可能となり、広範囲の、膜厚/透気抵抗度/強度の組み合わせの本発明のシートを提供することが可能となる。カレンダー装置としては単一プレスロールによる通常のカレンダー装置の他に、これらが多段式に設置された構造をもつスーパーカレンダー装置を用いてもよい。これらの装置、カレンダー処理時におけるロール両側それぞれの材質(材質硬度)や線圧を目的に応じて選定することにより、多種の物性バランスをもつ本発明のシートを得ることができる。
また、上述した抄紙による製膜プロセスにおいて、使用する抄紙用の濾布又はプラスチックワイヤーは、エンドレス仕様のものを用いて全工程を一つのワイヤーで行うか、あるいは途中で次工程のエンドレスフィルター又はエンドレスのフェルト布にピックアップして渡すか又は転写させて渡すか、あるいは連続製膜の全工程又は一部の工程を、濾布を使用するロールtoロールの工程にするかのいずれかをとり得る。もっとも、本実施形態のセパレータの製法はこれに限定されるものではない。
次に、(A)本実施形態のシートと(B)樹脂との複合化について説明する。
再生セルロース繊維を50重量%以上含むセルロース繊維層は、比表面積相当繊維径が0.20μm以上2.0μm以下と設計するため、ナノファイバーの特徴である単位体積当たりの交絡点は多いものの、シート形成時のセルロース水酸基由来の乾燥収縮を防ぎ、空孔率及び孔径を保持することができる。孔径を保持できるが故に、セルロース繊維層へ樹脂を容易に含浸させることができ、セルロース繊維層と樹脂を複合化することができる。
再生セルロース繊維層に含浸できる樹脂としては、熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂、またこれらの樹脂を熱硬化又は光硬化した樹脂、さらには熱可塑性樹脂が挙げられる。
再生セルロース繊維層に含浸できる熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、オキセタン系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、アルキド系樹脂、ノボラック系樹脂、レゾール系樹脂、ウレア系樹脂、メラミン系樹脂などが挙げられ、これらを単独で使用することもでき、2種以上を併用することもできる。
熱硬化性樹脂には、屈折率の向上、硬化性の向上、密着性の向上、硬化成形物の柔軟性の向上及び、熱硬化性樹脂組成物の低粘度化によるハンドリング性向上に優れた特性を有する熱硬化性樹脂組成物を提供する目的で、それぞれの目的に適した熱硬化性化合物を添加することが好ましい。これらの使用にあたっては、単独でも2種以上の混合物でも構わない。熱硬化性化合物の添加量は再生セルロース繊維層100重量部に対して、10〜1,000質量部とするのが好ましく、50〜500質量部とするのがより好ましい。添加量が10質量部以上で、熱安定性(線熱膨張率の低減、高温時の弾性保持)を発揮するのに有効であり、添加量が1,000質量部以下であれば、熱硬化性樹脂組物及び硬化成形物の高透過性、及び高耐熱性を維持することが可能である。
熱硬化性樹脂として添加が可能なエポキシ化合物は、例えば高温時に熱安定性を有する芳香族基を含有したエポキシ化合物である。例としては2官能以上のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂が挙げられる。例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、テトラブロモビスフェノールA、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ヒドロキノン、レゾルシノール、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニル、1,6−ジヒドロキシナフタレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、トリス(p−ヒドロキシフェニル)メタン、テトラキス(p−ヒドロキシフェニル)エタンとエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂が挙げられる。また、ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル骨格を有するエポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレートが挙げられる。また、Tgの著しい低下を引き起こさない範囲で脂肪族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂を配合することもできる。
熱硬化性樹脂として添加が可能なエポキシ化合物の他には、硬化剤として液状芳香族ジアミン硬化剤を添加することが好ましい。ここで液状とは25℃、0.1MPaの状態で液体であることを指す。また、芳香族ジアミン硬化剤とは、分子内に芳香環に直結した2個のアミン性窒素原子を有し、かつ複数の活性水素を有する化合物を意味する。また、ここで「活性水素」とはアミン性窒素原子に結合した水素原子をいう。強化繊維への含浸性を確保するために液状であることが必要であり、高Tgの硬化物を得るために芳香族ジアミン硬化剤であることが必要である。例えば、4,4’−メチレンビス(2−エチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(2−イソプロピルアニリン)、4,4’−メチレンビス(N−メチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(N−エチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(N−sec−ブチルアニリン)、N,N’−ジメチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジエチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、2,4−ジエチル−1,3−フェニレンジアミン、4,6−ジエチル−1,3−フェニレンジアミン、2,4−ジエチル−6−メチル−1,3−フェニレンジアミン、4,6−ジエチル−2−メチル−1,3−フェニレンジアミンなどの液状芳香族ジアミン硬化剤が挙げられる。これらの液状芳香族ジアミン硬化剤は単体で用いてもよいし、複数を混合して用いてもよい。
さらに、本開発の熱硬化性を有する樹脂としてエポキシ化合物の他に添加が可能なものとしては、潜在性硬化剤を添加してもよい。潜在性硬化剤とは、室温ではエポキシ樹脂に不溶の固体で、加熱することにより可溶化し硬化促進剤として機能する化合物であり、常温で固体のイミダゾール化合物や、固体分散型アミンアダクト系潜在性硬化促進剤、例えば、アミン化合物とエポキシ化合物との反応生成物(アミン−エポキシアダクト系)、アミン化合物とイソシアネート化合物または尿素化合物との反応生成物(尿素型アダクト系)等が挙げられる。
常温で固体のイミダゾール化合物としては、例えば、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−ベンジル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6−(2−メチルイミダゾリル−(1))−エチル−S−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−(2′−メチルイミダゾリル−(1)′)−エチル−S−トリアジン・イソシアヌール酸付加物、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール−トリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール−トリメリテイト、N−(2−メチルイミダゾリル−1−エチル)−尿素、N,N′−(2−メチルイミダゾリル−(1)−エチル)−アジボイルジアミド等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
固体分散型アミンアダクト系潜在性硬化促進剤(アミン−エポキシアダクト系)の製造原料の一つとして用いられるエポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、カテコール、レゾルシノールなど多価フェノール、グリセリンやポリエチレングリコールのような多価アルコールとエピクロロヒドリンとを反応させて得られるポリグリシジルエーテル;p−ヒドロキシ安息香酸、β−ヒドロキシナフトエ酸のようなヒドロキシカルボン酸とエピクロロヒドリンとを反応させて得られるグリシジルエーテルエステル;フタル酸、テレフタル酸のようなポリカルボン酸とエピクロロヒドリンとを反応させて得られるポリグリシジルエステル;4,4′−ジアミノジフェニルメタンやm−アミノフェノールなどとエピクロロヒドリンとを反応させて得られるグリシジルアミン化合物;更にはエポキシ化フェノールノボラック樹脂、エポキシ化クレゾールノボラック樹脂、エポキシ化ポリオレフィンなどの多官能性エポキシ化合物やブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレートなどの単官能性エポキシ化合物;等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
上記固体分散型アミンアダクト系潜在性硬化促進剤のもう一つの製造原料として用いられるアミン化合物は、エポキシ基と付加反応しうる活性水素を分子内に1個以上有し、かつ1級アミノ基、2級アミノ基および3級アミノ基の中から選ばれた官能基を少なくとも分子内に1個以上有するものであればよい。このような、アミン化合物の例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。すなわち、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、n−プロピルアミン、2−ヒドロキシエチルアミノプロピルアミン、シクロヘキシルアミン、4,4′−ジアミノ−ジシクロヘキシルメタンのような脂肪族アミン類;4,4′−ジアミノジフェニルメタン、2−メチルアニリンなどの芳香族アミン化合物;2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾリン、2,4−ジメチルイミダゾリン、ピペリジン、ピペラジンなどの窒素原子が含有された複素環化合物;等が挙げられる。
さらに、本開発の熱硬化性を有する樹脂としてエポキシ化合物の他に添加が可能なものとしては、光酸発生剤を添加してもよい。光酸発生剤としては、紫外線照射によりカチオン重合可能な酸を発生するものが用いられる。このような光酸発生剤としては、例えば、SbF 、PF 、BF 、AsF 、(C 、PF(CFCF 等のアニオン成分と、カチオン成分とからなるオニウム塩(ジアゾニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、セレニウム塩、ピリジニウム塩、フェロセニウム塩、ホスホニウム塩等)が挙げられる。これらは単独であるいは2種以上併せて用いられる。具体的には、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族ホスホニウム塩、芳香族スルホキソニウム塩等を用いることができる。その中でも、光硬化性と透明性の観点より、ヘキサフルオロリン酸塩、あるいはヘキサフルオロアンチモネートをアニオン成分とする光酸発生剤が好ましい。
光酸発生剤の含有量は、エポキシ化合物の総重量100重量部に対し、0.5〜2.0重量部の範囲に設定する必要がある。より好ましくは0.5〜1.5重量部の範囲である。光酸発生剤の含有量が少なすぎると、硬化性が悪化したり耐熱性が低下する恐れがあり、含有量が多すぎると、硬化性は向上する一方で透明性が損なわれることとなる。
また、本発明の熱硬化性を有する樹脂としてエポキシ化合物の他に添加が可能なものには、上記各成分に加え、必要に応じて他の添加剤を適宜配合することができる。例えば、硬化性を高める目的で、アントラセン等の光増感剤や酸増殖剤等を必要に応じて配合することができる。また、ガラス等の基材上に硬化物を作製する用途においては基材との接着性を高めるために、シラン系あるいはチタン系等のカップリング剤を添加してもよい。さらには、酸化防止剤、消泡剤等も適宜配合することができる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。そして、これら他の添加剤は、硬化性樹脂組成物全体の5重量%以下の範囲内で用いることが、本発明の作用効果を阻害しない観点から、好ましい。
再生セルロース繊維層に含浸できる光硬化性を有する樹脂としては、1分子内に1つ又は2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物が挙げられる。
光硬化性樹脂には、屈折率の向上、硬化性の向上、密着性の向上、硬化成形物の柔軟性の向上及び、感光性樹脂組成物の低粘度化によるハンドリング性向上に優れた特性を有する感光性樹脂組成物を提供する目的で、それぞれの目的に適した1分子内に1つ又は2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を添加することが好ましい。これらの使用にあたっては、単独でも2種以上の混合物でも構わない。1分子内に1つ又は2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物の添加量は再生セルロース繊維層100重量部に対して、10〜1,000質量部とするのが好ましく、50〜500質量部とするのがより好ましい。添加量が10質量部以上で、熱安定性(線熱膨張率の低減、高温時の弾性保持)を発揮するのに有効であり、添加量が1,000質量部以下であれば、感光性樹脂組物及び硬化成形物の高透過性、及び高耐熱性を維持することが可能である。
光硬化性樹脂として添加が可能な(メタ)アクリレート化合物は、例えば、高温時に熱安定性を有する芳香族基を含有した(メタ)アクリレート化合物である。例として、フェノキシエチルアクリレート、パラフェニルフェノキシエチルアクリレート(東亞合成株式会社製アロニックスTO−1463)、パラフェニルフェニルアクリレート(東亞合成株式会社製アロニックスTO−2344)、フェニルグリシジルエーテルアクリレート(以下、「PGEA」ともいう。)、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、3〜15モルのエチレンオキサイドで変性させたフェノール(メタ)アクリレート、1〜15モルのエチレンオキサイドで変性させたクレゾール(メタ)アクリレート、1〜20モルのエチレンオキサイドで変性させたノニルフェノール(メタ)アクリレート、1〜15モルのプロピレンオキサイドで変性させたノニルフェノール(メタ)アクリレート、1〜30モルのエチレンオキサイドで変性させたビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、1〜30モルのプロピレンオキサイドで変性させたビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、1〜30モルのエチレンオキサイドで変性させたビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、及び1〜30モルのプロピレンオキサイドで変性させたビスフェノールFジ(メタ)アクリレートなどが好ましく挙げられる。これらの使用にあたっては、単独でも2種以上の混合物でも構わない。
光硬化性樹脂には光重合開始剤を添加することが、感光性パターン形成を付与する目的で、添加されることが重要である。
光重合開始剤(C)としては、下記(1)〜(10)の光重合開始剤が挙げられる:
(1)ベンゾフェノン誘導体:例えば、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルケトン、ジベンジルケトン、フルオレノン、
(2)アセトフェノン誘導体:例えば、2,2’−ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(BASF社製 IRGACURE651)、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASF社製 IRGACURE184)、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン(BASF社製 IRGACURE907)、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチルプロパン−1−オン(BASF社製 IRGACURE127)、フェニルグリオキシル酸メチル、
(3)チオキサントン誘導体:例えば、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、
(4)ベンジル誘導体:例えば、ベンジル、ベンジルジメチルケタール、ベンジル−β−メトキシエチルアセタール、
(5)ベンゾイン誘導体:例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、2−ヒドロキシ−2−メチル−1フェニルプロパン−1−オン(BASF社製、DAROCURE1173)、
(6)オキシム系化合物:例えば、1−フェニル−1,2−ブタンジオン−2−(O−メトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(O−メトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(O−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(O−ベンゾイル)オキシム、1,3−ジフェニルプロパントリオン−2−(O−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−3−エトキシプロパントリオン−2−(O−ベンゾイル)オキシム、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−2−(O−ベンゾイルオキシム)](BASF社製 IRGACURE OXE01)、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)(BASF社製 IRGACURE OXE02)、
(7)α−ヒドロキシケトン系化合物:例えば、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチルプロパン、
(8)α−アミノアルキルフェノン系化合物:例えば、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(BASF社製 IRGACURE369)、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)ブタン−1−オン(BASF社製 IRGACURE379)、
(9)フォスフィンオキサイド系化合物:例えば、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(BASF社製 IRGACURE819)、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド(BASF社製、LUCIRIN TPO)、
(10)チタノセン化合物:例えば、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)フェニル)チタニウム(BASF社製 IRGACURE784)。
上記(1)〜(10)の光重合開始剤は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
光重合開始剤の含有量は、感光性樹脂組成物中の溶剤以外の全成分の質量基準で、十分な感度を得る観点から、0.01質量%以上が好ましく、より好ましくは0.1質量%であり、一方で、感光性樹脂層の底の部分を十分に硬化させる観点から、15質量%以下が好ましく、より好ましくは10質量%以下である。
光硬化性樹脂には、所望により、光感度向上のための増感剤を添加することができる。このような増感剤としては、例えば、ミヒラーズケトン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2,5−ビス(4’−ジエチルアミノベンジリデン)シクロペンタノン、2,6−ビス(4’−ジエチルアミノベンジリデン)シクロヘキサノン、2,6−ビス(4’−ジメチルアミノベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサノン、2,6−ビス(4’−ジエチルアミノベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)カルコン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)カルコン、2−(4’−ジメチルアミノシンナミリデン)インダノン、2−(4’−ジメチルアミノベンジリデン)インダノン、2−(p−4’−ジメチルアミノビフェニル)ベンゾチアゾール、1,3−ビス(4−ジメチルアミノベンジリデン)アセトン、1,3−ビス(4−ジエチルアミノベンジリデン)アセトン、3,3’−カルボニル−ビス(7−ジエチルアミノクマリン)、3−アセチル−7−ジメチルアミノクマリン、3−エトキシカルボニル−7−ジメチルアミノクマリン、3−ベンジロキシカルボニル−7−ジメチルアミノクマリン、3−メトキシカルボニル−7−ジエチルアミノクマリン、3−エトキシカルボニル−7−ジエチルアミノクマリン、N−フェニル−N−エチルエタノールアミン、N−フェニルジエタノールアミン、N−p−トリルジエタノールアミン、N−フェニルエタノールアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アニリン、4−モルホリノベンゾフェノン、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4−ジエチルアミノ安息香酸イソアミル、ベンズトリアゾール、2−メルカプトベンズイミダゾール、1−フェニル−5−メルカプト−1,2,3,4−テトラゾール、1−シクロヘキシル−5−メルカプト−1,2,3,4−テトラゾール、1−(tert−ブチル)−5−メルカプト−1,2,3,4−テトラゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−(p−ジメチルアミノスチリル)ベンズオキサゾール、2−(p−ジメチルアミノスチリル)ベンズチアゾール、2−(p−ジメチルアミノスチリル)ナフト(1,2−p)チアゾール、2−(p−ジメチルアミノベンゾイル)スチレンなどが挙げられる。また、使用にあたっては、単独でも2種以上の混合物でも構わない。
感光性樹脂組成物には、所望により、保存時の粘度や光感度の安定性を向上させる目的で、重合禁止剤を添加することができる。このような重合禁止剤としては、例えば、ヒドロキノン、N−ニトロソジフェニルアミン、p−tert−ブチルカテコール、フェノチアジン、N−フェニルナフチルアミン、エチレンジアミン四酢酸、1,2−シクロヘキサンジアミン四酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、2,6−ジ−tert−ブチル−p−メチルフェノール、5−ニトロソ−8−ヒドロキシキノリン、1−ニトロソ−2−ナフトール、2−ニトロソ−1−ナフトール、2−ニトロソ−5−(N−エチル−N−スルフォプロピルアミノ)フェノール、N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシアミンアンモニウム塩、N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアンモニウム塩、N−ニトロソ−N−(1−ナフチル)ヒドロキシルアミンアンモニウム塩、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジtert−ブチル)フェニルメタンなどを用いることができる。
以上の他にも、感光性樹脂組成物には、紫外線吸収剤や塗膜平滑性付与剤などをはじめ、感光性樹脂組成物の諸特性を阻害するものでない限り、必要に応じて、種々の添加剤を適宜配合することができる。
再生セルロース繊維層に含浸できる樹脂は、熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂も使用可能であるが、シート状基材に射出成形等により樹脂を短時間で含浸させて量産品等の成形に供するという面、かつ種々の成形形状により容易に対応できるという面から、熱可塑性樹脂を使用することが好ましい。使用される熱可塑性樹脂としてはとくに限定されないが、例えば、汎用プラスチックのようなポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ABS、ポリアミド、ポリエステル、ポリフェニレンエーテル、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルフォン、ポリケトン、ポリエーテルエーテルケトン、それらの組み合わせ等を用いることができる。
さらに再生セルロース繊維層へ含浸させる樹脂中には、樹脂の熱的安定性(線熱膨張率や高温時の弾性保持)向上の観点で、無機微粒子を添加してもよい。無機微粒子としては、例えば、耐熱性に優れるものとしては、アルミナ、マグネシア、チタニア、ジルコニア、シリカ(石英、ヒュームドシリカ、沈降性シリカ、無水ケイ酸、溶融シリカ、結晶性シリカ、超微粉無定型シリカ等)等;熱伝導性に優れるものとしては、窒化ホウ素、窒化アルミ、酸化アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化ケイ素等;導電性に優れるものとしては、金属単体又は合金(例えば、鉄、銅、マグネシウム、アルミニウム、金、銀、白金、亜鉛、マンガン、ステンレスなど)を用いた金属フィラー及び/又は金属被覆フィラー、;バリア性に優れるものとしては、マイカ、クレイ、カオリン、タルク、ゼオライト、ウォラストナイト、スメクタイト等の鉱物等やチタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、セピオライト、ゾノライト、ホウ酸アルミニウム、酸カルシウム、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、水酸化マグネシウム;屈折率が高いものとしては、チタン酸バリウム、酸化ジルコニア、酸化チタン等;光触媒性を示すものとしては、チタン、セリウム、亜鉛、銅、アルミニウム、錫、インジウム、リン、炭素、イオウ、テリウム、ニッケル、鉄、コバルト、銀、モリブデン、ストロンチウム、クロム、バリウム、鉛等の光触媒金属、前記金属の複合物、それらの酸化物等;耐摩耗性に優れるものとしては、シリカ、アルミナ、ジルコニア、マグネシウム等の金属、及びそれらの複合物及び酸化物等;導電性に優れるものとしては、銀、銅などの金属、酸化錫、酸化インジウム等;絶縁性に優れるものとしては、シリカ等;紫外線遮蔽に優れるものとしては、酸化チタン、酸化亜鉛等である。これらの無機微粒子は、用途によって適時選択すればよく、単独で使用しても、複数種組み合わせて使用してもよい。また、上記無機微粒子は、例に挙げた特製以外にも様々な特性を有することから、適時用途に合わせて選択すればよい。
例えば無機微粒子としてシリカを用いる場合、特に限定はなく粉末状のシリカやコロイダルシリカなど公知のシリカ微粒子を使用することができる。市販の粉末状のシリカ微粒子としては、例えば、日本アエロジル(株)製アエロジル50、200、旭硝子(株)製シルデックスH31、H32、H51、H52、H121、H122、日本シリカ工業(株)製E220A、E220、富士シリシア(株)製SYLYSIA470、日本板硝子(株)製SGフレ−ク等を挙げることができる。また、市販のコロイダルシリカとしては、例えば、日産化学工業(株)製メタノ−ルシリカゾル、IPA−ST、PGM−ST、NBA−ST、XBA−ST、DMAC−ST、ST−UP、ST−OUP、ST−20、ST−40、ST−C、ST−N、ST−O、ST−50、ST−OL等を挙げることができる。
表面修飾をしたシリカ微粒子を用いてもよく、例えば、前記シリカ微粒子を、疎水性基を有する反応性シランカップリング剤で表面処理したものや、(メタ)アクリロイル基を有する化合物で修飾したものがあげられる。(メタ)アクリロイル基を有する化合物で修飾した市販の粉末状のシリカとしては、日本アエロジル(株)製アエロジルRM50、R7200、R711等、(メタ)アクリロイル基を有する化合物で修飾した市販のコロイダルシリカとしては、日産化学工業(株)製MIBK−SD、MEK−SD、等、疎水性基を有する反応性シランカップリング剤で表面処理したコロイダルシリカとしては、日産化学工業(株)製MIBK−ST、MEK−ST等が挙げられる。
前記シリカ微粒子の形状は特に限定はなく、球状、中空状、多孔質状、棒状、板状、繊維状、または不定形状のものを用いることができる。例えば、市販の中空状シリカ微粒子としては、日鉄鉱業(株)製シリナックス等を用いることができる。
無機微粒子の一次粒子径は、5〜2,000nmの範囲が好ましい。5nm以上であると、分散体中の無機微粒子が分散良好となり、2,000nm以内の径であれば、硬化物の強度が良好となる。より好ましくは10nm〜1,000nmである。尚、ここでいう「粒径」とは、走査型電子顕微鏡(TEM)などを用いて測定される。
無機微粒子は樹脂複合体の固形分全量に対して、5〜50重量%の割合で配合することが好ましい。例えば耐熱材料の場合、低線膨張率と硬化物の高強度を両立させるためには、前記シリカ微粒子は5〜50重量%であることが好ましく、線膨張係数をより低下させるためには20〜50重量%の割合で添加することがより好ましく、更に好ましくは30〜50重量%である。
再生セルロース繊維層への樹脂含浸には、必要に応じて溶媒を添加して粘度を調整することができる。好適な溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミド、ピリジン、シクロペンタノン、γ−ブチロラクトン、α−アセチル−γ−ブチロラクトン、テトラメチル尿素、1,3−ジメチル−2−イミダゾリノン、N−シクロヘキシル−2−ピロリドン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アニソール、酢酸エチル、乳酸エチル、乳酸ブチルなどが挙げられ、これらは単独又は二種以上の組合せで用いることができる。これらの中でも、N−メチル−2−ピロリドンやγ−ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが、特に好ましい。これらの溶媒は、塗工膜厚、粘度に応じて、再生セルロース繊維層への樹脂含浸の際に適宜加えることができる。
再生セルロース繊維層への樹脂含浸する製造方法は、特に限定されるものではないが、シートに熱硬化樹脂組成物を含浸させたプリプレグを賦形及び/又は積層後、賦形物及び/又は積層物に圧力を付与しながら樹脂を加熱硬化させるプリプレグ積層成形法、シートに直接液状の熱硬化樹脂組成物を含浸させた後、硬化させるレジントランスファーモールディング法、シートを液状の熱硬化樹脂組成物の満たされた含浸槽に連続的に通して熱硬化樹脂組成物を含浸させた後、スクイーズダイ、加熱金型を通して引張機によって連続的に引き抜きつつ、成形、硬化させるプルトルージョン法などにより製造することができる。
樹脂を含浸させる方法としては、ウェット法とホットメルト法(ドライ法)等を挙げることができる。
ウェット法は、メチルエチルケトン等の溶媒にエポキシ樹脂組成物や光硬化性樹脂組成物、熱可塑性樹脂を溶解させた溶液にシートを浸漬した後、シートを引き上げ、オーブン等を用いて溶媒を蒸発させ、樹脂を含浸させる方法である。ホットメルト法は、加熱により低粘度化したエポキシ樹脂組成物や光硬化性樹脂組成物、熱可塑性樹脂を直接シートに含浸させる方法、離型紙等の上にエポキシ樹脂組成物をコーティングしたフィルムを作製しておき、次いで強化繊維の両側または片側から前記フィルムを重ね、加熱加圧することにより強化繊維に樹脂を含浸させる方法である。このとき、真空脱泡工程を入れて、空気を脱気することが好ましい。また、プリプレグ中に残留する溶媒がないため、ホットメルト法を用いることが好ましい。
プリプレグ又はその硬化樹脂や熱可塑性樹脂中のセルロース繊維層の含有率は、好ましくは1〜80重量%であり、より好ましくは5〜50重量%であり、さらに好ましくは10〜30重量%である。セルロース繊維層の重量含有率が1重量%未満では、樹脂の比率が高すぎるため、複合化した際に線熱膨張率や弾性率に優れる複合材料の利点が得られにくい。また、強化繊維の質量含有率が80重量%を超える場合、樹脂の含浸量が不足することから、得られる複合材料はボイドが多く、フィルムとして必要な強度も低くなってしまう。
本実施形態のシートは、繊維強化プラスチック用芯材、より具体的には、車載、航空機材料向けの芯材やコア材として好適に使用することができる。すなわち、特に繊維強化プラスチックとしたときに、車載、航空機材料の分野での高弾性、高耐熱性、かつ軽量化ニーズに対応できる。車載用途としては、成形性の自由度が高いため、内装及び外装共に用いられ、ルーフ、バンパー、ドア、フロントエンドモジュール等に用いられる。さらに、シートは平坦性を有し、低欠陥であるため、各種用途設計が容易となる。
また、シート単体や芯材として、高い弾性率を有するため、音や振動の吸収、遮断材料として用いることもでき、また、熱伝導性に優れるため、放熱シートとして用いることもできる。
本実施形態のシートは、樹脂との複合化によって高強度かつ軽量となることから、鋼板の代替、炭素繊維強化プラスチックの代替ができる。その例としては、例えば、産業用機械部品(例えば電磁機器筐体、ロール材、搬送用アーム、医療機器部材など)、一般機械部品、自動車・鉄道・車両等部品(例えば外板、シャシー、空力部材、座席など)、船舶部材(例えば船体、座席など)、航空関連部品(例えば、胴体、主翼、尾翼、動翼、フェアリング、カウル、ドア、座席、内装材など)、宇宙機、人工衛星部材(モーターケース、主翼、構体、アンテナなど)、電子・電気部品(例えばパーソナルコンピュータ筐体、携帯電話筐体、OA機器、AV機器、電話機、ファクシミリ、家電製品、玩具用品など)、建築・土木材料(例えば、鉄筋代替材料、トラス構造体、つり橋用ケーブルなど)、生活用品、スポーツ・レジャー用品(例えば、ゴルフクラブシャフト、釣り竿、テニスやバトミントンのラケットなど)、風力発電用筐体部材等、また容器・包装部材、例えば、燃料電池に使用されるような水素ガスなどを充填する高圧力容器用の材料となり得る。
上述した用途以外にも、各種機能紙、吸収材料、医療材料用の支持体等の材料として適用できる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されるものではない。
[シートの作製]
[実施例1]
双日(株)より入手した再生セルロース繊維であるテンセルカット糸(3mm長)を洗浄用ネットに入れて界面活性剤を加え、洗濯機で何度も水洗することにより、繊維表面の油剤を除去した。得られた精製テンセル繊維(カット糸)を固形分1.5重量%となるように水中に分散させて(400L)、ディスクレファイナー装置として相川鉄工(株)製SDR14型ラボリファイナー(加圧型DISK式)を用い、ディスク間のクリアランスを1mmで400Lの該水分散体を20分間叩解処理した。それに引き続き、クリアランスをほとんどゼロに近いレベルにまで低減させた条件下で叩解を行い、叩解水分散体(固形分濃度:1.5重量%)を得た。得られた叩解水分散体を、そのまま高圧ホモジナイザー(ニロ・ソアビ社(伊)製NS015H)を用いて操作圧力100MPa下で5回の微細化処理を実施し、セルロース繊維の水分散体M1(固形分濃度:共に1.5重量%)を得た。
続いて、前記水分散体M1を固形分濃度0.1重量%まで希釈し、ブレンダーで分散した後、PET/ナイロン混紡製の平織物(敷島カンバス社製、NT20,大気下25℃での水透過量:0.03ml/cm・s、セルロース繊維を大気圧下25℃における濾過で99%以上濾別する能力あり)をセットしたバッチ式抄紙機(熊谷理機工業社製、自動角型シートマシーン 25cm×25cm、80メッシュ)に目付4g/mのセルロースシートを目安に、上記調整した抄紙スラリーを投入し、その後大気圧に対する減圧度を4KPaとして抄紙(脱水)を実施した。
得られた濾布上に乗った湿潤状態の濃縮組成物からなる湿紙を、ワイヤー上から剥がし、湿紙面をドラム面に接触させるようにして、湿紙/濾布の2層の状態で表面温度が130℃に設定されたドラムドライヤーに、やはり湿紙がドラム面に接触するようにして約120秒間乾燥させ、得られた乾燥した2層体からセルロースのシート状構造物から濾布を剥離させて、以下の表1に示す白色の均一なセルロース繊維から構成されるシート(25cm×25cm)S1を得た。
[実施例2]
実施例1のM1を水で希釈して調整した抄紙スラリーに対し、目付15g/mのセルロースシートとなるように調整した抄紙スラリーを投入し、得られた湿紙を湿紙/濾布の2層の状態で130℃に設定した乾燥オーブンにて乾燥させた以外は、実施例1と同様に操作をすることで、以下の表1に示す白色セルロースで作製されたシートS2を得た。
[実施例3]
実施例1のM1を水で希釈して調整した抄紙スラリーに対し、目付50g/mのセルロースシートとなるように調整した抄紙スラリーを投入した以外は、実施例1と同様に操作をすることで、以下の表1に示す白色セルロースで作製されたシートS3を得た。
[実施例4]
実施例1のM1を水で希釈して調整した抄紙スラリーに対し、目付100g/mのセルロースシートとなるように調整した抄紙スラリーを投入した以外は、実施例1と同様に操作をすることで、以下の表1に示す白色セルロースで作製されたシートS4を得た。
[実施例5]
実施例2のM1で調整した抄紙スラリーと、旭化成せんい(株)より入手した目付20g/mの親水性ポリプロピレン長繊維不織布上に投入した以外は、実施例2と同様に操作をすることで、以下の表1に示す白色セルロースで作製されたシートS5を得た。
[実施例6]
実施例2のM1で調整した抄紙スラリーと、旭化成せんい(株)より入手した目付17g/mのセルロース長繊維不織布上に投入した以外は、実施例1と同様に操作をすることで、以下の表1に示す白色セルロースで作製されたシートS6を得た。
[実施例7]
原料として有機ポリマーであるアラミドパルプを洗浄用ネットに入れて界面活性剤を加え、洗濯機で何度も水洗することにより、繊維表面の油剤を除去した。得られた精製テンセル繊維(カット糸)を固形分1.5重量%となるように水中に分散させて(400L)、ディスクレファイナー装置として相川鉄工(株)製SDR14型ラボリファイナー(加圧型DISK式)を用い、ディスク間のクリアランスを1mmで400Lの該水分散体を20分間叩解処理した。それに引き続き、クリアランスをほとんどゼロに近いレベルにまで低減させた条件下で叩解を行い、叩解水分散体(固形分濃度:1.5重量%)を得た。得られた叩解水分散体を、そのまま高圧ホモジナイザー(ニロ・ソアビ社(伊)製NS015H)を用いて操作圧力100MPa下で微細化処理を実施し、アラミドナノファイバーの水分散体M2(固形分濃度:共に1.5重量%)を得た。続いて、固形分重量組成として水分散体M1固形分:水分散体M2固形分=50:45、固形分濃度0.1重量%となるように混合し、水で希釈後、メイカネートWEB(明成化学社製)を繊維重量の5重量%分添加した以外は、実施例1と同じ操作をすることで、以下の表1に示す白色セルロースで作製されたシートS7を得た。
[実施例8]
原料として天然セルロースであるリンターパルプを4重量%となるように水に浸液させてオートクレーブ内で130℃、4時間の熱処理を行い、得られた膨潤パルプを何度も水洗し、水を含浸した状態の膨潤パルプを得た。これを実施例1と同じ要領で叩解処理を続け、引き続いて高圧ホモジナイザーによる操作圧力100MPaで5回の微細化処理を行い、固形分濃度が1.5wt%の水分散体M3を得た。続いて、固形分重量組成として水分散体M1固形分:水分散体M3固形分55:45、固形分濃度0.1重量%となるように混合し、実施例1と同じ操作をすることで、以下の表1に示す白色セルロースで作製されたシートS8を得た。
[実施例9]
目付の量を変更した以外は、実施例8と同様に操作をすることで、以下の表1に示す白色セルロースで作製されたシートS9を得た。
[実施例10]
微細化処理の回数を徹底的に行った以外は実施例2と同様に操作をすることで、以下の表1に示す白色セルロースで作製されたシートS10を得た。
[実施例11]
実施例10で得られた、徹底的に叩解し、微細化処理した水分散体(固形分濃度:1.5wt%)を、固形分濃度0.2%となるように希釈した。その後、遠心分離機(KUBOTA 7780)を用いて、回転数8,000rpmにて20分間の遠心分離を行った。その後、水分散体の上部に発生した上澄み液をデカンテーションにて分離した。この上澄み液を固形分濃度0.1重量%まで希釈し、ブレンダーで分散した後、PET/ナイロン混紡製の平織物(敷島カンバス社製、NT20,大気下25℃での水透過量:0.03ml/cm・s、セルロース繊維を大気圧下25℃における濾過で99%以上濾別する能力あり)をセットしたバッチ式抄紙機(熊谷理機工業社製、自動角型シートマシーン 25cm×25cm、80メッシュ)に目付10g/mのセルロースシートを目安に、上記調整した抄紙スラリーを投入した以外は、実施例1と同様に操作をすることで、以下の表に示す白色セルロースで作製されたシートS11を得た。
[実施例12]
目付の量を変更した以外は、実施例11と同様に操作をすることで、以下の表1に示す白色セルロースで作製されたシートS12を得た。
[実施例13]
実施例1に対して、叩解を徹底的に行い、微細化処理を行わず、目付の量を以下の表1のとおり変更した以外は、実施例1と同様に操作をすることで、以下の表1に示す白色セルロースで作製されたシートS13を得た。
[実施例14]
実施例1に対して、微細化処理を行わず、目付の量を以下の表1のとおり変更した以外は、実施例1と同様に操作をすることで、以下の表1に示す白色セルロースで作製されたシートS14を得た。
[比較例1]
実施例7で作製した天然セルロースであるリンターパルプの水分散体M2を水で希釈して調整した抄紙スラリーに対し、目付15g/mのセルロースシートとなるように調整した抄紙スラリーを投入した以外は、実施例1と同様に操作をすることで、以下の表1に示すリファレンスシートR1を得た。
Figure 0006639203
[シート評価]
(1)組成
実施例1〜14、比較例1で作製したシートの原材料及び含有量比を表1にまとめ、記載した。
(2)サンプル厚みの測定
Mitutoyo製の膜厚計(Model ID−C112XB)を用い、シート中から10cm×10cmの正方形片を切り取り、種々の位置について5点の測定値の平均値を膜厚T(μm)とした。
(3)セルロースシートの目付測定
上記(2)で切り取った10.0cm×10.0cmの正方形片の重さW(g)から1mあたりの重量を5点算出しその平均値から計算した。
(4)成形体の空孔率の算出
上記(2)で切り取った10.0cm×10.0cmの正方形片の膜厚d(μm)とその重さW(g)から、膜の空孔率Pr(%)を5点評価しその平均値から算出した。
(5)比表面積相当繊維径測定
比表面積・細孔分布測定装置(ベックマン・コールター社製)にて、シート試料約0.2gに対する液体窒素の沸点における窒素ガスの吸着量を測定した後、同装置プログラムにより比表面積(m/g)を算出、繊維間の融着が全く起こっていない理想状態かつセルロース密度1.50g/mlと仮定した際の円柱モデル(繊維を断面が円形の円柱に見立て、長さが∝)での表面積/体積比から導入した式(繊維径=2.67/比表面積)に基づき、比表面積の3回評価による平均値から比表面積相当繊維径を計算した。
(6)膜の透気抵抗度測定
ガーレー式デンソメータ((株)東洋精機製、型式G−B2C)を用いて、シートの100ccの空気の透過時間(単位;s/100cc)の測定を室温で行った。膜の均一性の指標として、測定は、膜の種々な位置について5点の測定を行った。
(7)樹脂含浸性
実施例1−14、比較例1の組成にて、エポキシモノマー(エポライト100MF 共栄社化学製)をシート上に10μl滴下し、浸透性を評価した。滴下3分後に裏面まで浸透した場合を○、浸透しなかった場合を×とした。
[複合プリプレグフィルムの作製]
[実施例15]
シートS2へ樹脂成分を含浸させることで、複合プリプレグフィルムを作製した。離型剤を塗布したPETフィルム上に10cm角のシートと、100μm厚のスペーサーを置いた。予め撹拌・混合しておいた表2に記載の組成にて調合した混合液をシートに滴下し、その上から離型剤を塗布したPETフィルムを乗せた。このシートをPETフィルム上から10kg/cmでプレスしながら、真空脱泡、室温にて数日間静置することで、以下の表2に記載の白色セルロースにエポキシ樹脂が含浸された複合プリプレグフィルムC1を得た。
[表2に記載の組成物として使用した化合物名称]
C1
エポキシ系樹脂 : エポキシ樹脂JER825(三菱化学社製)
硬化剤 : 潜在性硬化剤フジキュア FXE1000(富士化成社製)
無機微粒子 : コロイダルシリカ(日産化学社製)
[複合フィルムの作製]
[実施例16〜24、比較例2〜4]
シートへ樹脂成分を含浸させることで、複合フィルムを作製した。離型剤を塗布したPETフィルム上に10cm角のシートと、所定厚みとなるスペーサーを置いた。予め撹拌・混合しておいた表2に記載の組成物とシートを合わせ、その上から離型剤を塗布したPETフィルムを乗せた。このシートをPETフィルム上から10kg/cmでプレスしながら、真空脱泡した。これを乾燥機に入れ、熱または紫外線照射による硬化または溶融処理をすることで、以下の表2に記載の白色セルロースに樹脂が含浸された複合フィルムC2−10、リファレンスシートRC2−4を得た。
[表2に記載の組成物として使用した化合物名称]
C2
エポキシ系樹脂 : エポキシ樹脂JER828(三菱化学社製)
硬化剤 : ST12(三菱化学社製)
C3
エポキシ系樹脂 : エポキシ樹脂JER825(三菱化学社製)
硬化剤 : 潜在性硬化剤フジキュア FXE1000(富士化成社製)
無機微粒子 : コロイダルシリカ(日産化学社製)
C4
熱可塑性樹脂 : ポリプロピレンフィルム
C5
熱可塑性樹脂 : ポリプロピレンフィルム
C6
エポキシ系樹脂 : エポキシ樹脂JER825(三菱化学社製)
硬化剤 : 潜在性硬化剤フジキュア FXE1000(富士化成社製)
無機微粒子 : コロイダルシリカ(日産化学社製)
C7
エポキシ系樹脂 : エポキシ樹脂JER825(三菱化学社製)
硬化剤 : 潜在性硬化剤フジキュア FXE1000(富士化成社製)
無機微粒子 : コロイダルシリカ(日産化学社製)
C8
エポキシ系樹脂 : エポキシ樹脂JER825(三菱化学社製)
硬化剤 : 潜在性硬化剤フジキュア FXE1000(富士化成社製)
無機微粒子 : コロイダルシリカ(日産化学社製)
C9
エポキシ系樹脂 : エポキシ樹脂JER825(三菱化学社製)
硬化剤 : 潜在性硬化剤フジキュア FXE1000(富士化成社製)
無機微粒子 : コロイダルシリカ(日産化学社製)
RC1
エポキシ系樹脂 : エポキシ樹脂JER828(三菱化学社製)
硬化剤 : ST12(三菱化学社製)
RC2
熱可塑性樹脂 : ポリプロピレンフィルム
RC3
エポキシ系樹脂 : エポキシ樹脂JER828(三菱化学社製)
硬化剤 : ST12(三菱化学社製)
Figure 0006639203
[複合プリプレグフィルム評価]
(1)組成
実施例15で、複合プリプレグフィルムの作製に使用した原材料及び含有量比を表2にまとめ、記載した。
(2)サンプル厚みの測定
Mitutoyo製の膜厚計(Model ID−C112XB)を用い、複合プリプレグフィルムから10cm×10cmの正方形片を切り取り、種々の位置について5点の測定値の平均値を膜厚d(μm)とした。
(3)樹脂含浸性
実施例15の組成にて、エポキシモノマー(エポライト100MF 共栄社化学製)をシート上に10μl滴下し、浸透性を評価した。滴下3分後に裏面まで浸透した場合を○、浸透しなかった場合を×とした。
「複合フィルム評価」
(1)組成
実施例16〜24、比較例2〜4で、複合フィルムの作製に使用した原材料及び含有量比を表2にまとめ、記載した。
(2)サンプル厚みの測定
Mitutoyo製の膜厚計(Model ID−C112XB)を用い、複合フィルムから10cm×10cmの正方形片を切り取り、種々の位置について5点の測定値の平均値を膜厚d(μm)とした。
(3)樹脂含浸性
実施例14−21、比較例2−4の組成にて、エポキシモノマー(エポライト100MF 共栄社化学製)をシート上に10μl滴下し、浸透性を評価した。滴下3分後に裏面まで浸透した場合を○、浸透しなかった場合を×とした。
(4)剥離性評価
複合フィルムを10cm×2.5cmの短冊状に切り出した後、短辺側の複合フィルム芯材付近にカッターで切り込みを入れた。その後、複合フィルムの表面にテープを貼り付け、テープによる90度剥離試験を試みたときに、テープが複合フィルムから剥がれてしまったものを○、複合フィルムの芯材と樹脂との界面で剥離が起きてしまったものを×とした。
(5)線熱膨張率評価
上記(2)で切り取った複合フィルムを用いて、セイコーインスツル株式会社製のTMA/SS6100を使用して、1度10℃/分の速度で昇温・降温した後、再度10℃/分の速度で昇温した時の100〜150℃の平均線膨張係数を測定した。
(6)弾性率向上評価
実施例15〜24、比較例2〜4の組成にて、複合フィルム厚み2mmとして作製したフィルムを用いて、この樹脂硬化物から、幅10mm、長さ60mmの試験片を切り出し、インストロン万能試験機(インストロン社製)を用い、JIS K7171(1994)に従って3点曲げを実施し、弾性率を測定した。サンプル数n=3で測定した値の平均値を弾性率の値とし、フィルムが存在しないリファレンスシート(RC1及びRC2)の弾性率と比して、1.2倍以上の弾性率向上効果を示したものには、○印、○の中でも著しく弾性率向上効果を示したものには◎をつけた。
[評価]
実施例1〜14で得られたシートと、各樹脂との複合化によって作製された、実施例15の複合プリプレグフィルム、実施例16〜24の複合フィルムは、比表面積相当繊維径が0.20μm以上2.0μm以下の再生セルロースを用いることで、孔径が大きくかつ空孔率の大きなシートが設計できるため、シートへの樹脂含浸性が高く、複合化が容易となった。また、ナノファイバーを用いることで、樹脂と複合化した際の剥離性の向上、線熱膨張率の低減、弾性率の向上効果が発現した。
これに反し、比較例2と3で得られたフィルムと、比較例1の樹脂との複合化によって作製された、比較例4の複合フィルムは、シート層が存在しないか、または、比表面積相当繊維径が0.1μm径であったため、複合化しても樹脂が含浸されにくいことが原因で、線熱膨張率を低減できないことが分かった。
本発明のシートは、シートとしては厚膜でありながら限定された範囲の透気抵抗度、すなわち孔径を保有しているため樹脂含浸性に優れ、例えば、繊維強化プラスチック用芯材として用いた際には、樹脂との複合化時の熱的安定性(線熱膨張率の低減や高温での弾性保持)を付与でき、また、車載材料向けの芯材として用いた際には、車載材料として軽量でありながら、シート強度を確保することができるため、これらの分野に好適に利用可能である。

Claims (33)

  1. 再生セルロース繊維を50重量%以上含むセルロース繊維層を少なくとも一層含む単層又は3層以下の複数層から構成されるシートであって、以下の要件:
    (1)前記セルロース繊維層を構成する繊維の比表面積相当繊維径が0.20μm以上2.0μm以下である;
    (2)前記セルロース繊維層の膜厚が20μm以上である;
    )前記シートの透気抵抗度が1s/100ml以上400,000s/100ml以下である;及び
    )前記シートの膜厚が22μm超である;
    を満足することを特徴とするシート。
  2. 前記セルロース繊維層が、再生セルロース繊維を70重量%以上含む、請求項1に記載のシート。
  3. 前記透気抵抗度が5s/100ml以上20,000s/100ml以下である、請求項1又は2に記載のシート。
  4. 前記再生セルロース繊維に少なくとも微細化セルロース繊維を含み、微細化セルロース繊維の比表面積相当繊維径が0.20μm以上2.0μm以下であり、かつ、前記セルロース繊維層には、繊維径3μm以上15μm以下の繊維が0重量%超30重量%以下含まれる、請求項1〜3のいずれか1項に記載のシート。
  5. 前記シートの膜厚が100μm超である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のシート。
  6. 前記セルロース繊維層を構成する繊維の比表面積相当繊維径が0.20μm以上0.45μm以下である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のシート。
  7. 前記セルロース繊維層の目付が2g/m以上である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のシート。
  8. 前記セルロース繊維層に、天然セルロース繊維が50重量%未満で含まれる、請求項1〜7のいずれか1項に記載のシート。
  9. 前記セルロース繊維層に、天然セルロース繊維が30重量%未満含まれる、請求項8に記載のシート。
  10. 前記セルロース繊維層に、セルロース以外の有機ポリマーからなる繊維が50重量%未満で含まれる、請求項1〜7のいずれか1項に記載のシート。
  11. 前記セルロース繊維層に、セルロース以外の有機ポリマーからなる繊維が30重量%未満で含まれる、請求項10に記載のシート。
  12. 前記セルロース以外の有機ポリマーからなる繊維が、アラミドファイバー及び/又はポリアクリロニトリルファイバーである、請求項10又は11に記載のシート。
  13. 前記セルロース繊維層が、反応性架橋剤を10重量%以下で含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載のシート。
  14. 前記3層以下の複数層構造の一層として、目付が5g/m以上200g/m以下である不織布又は紙である基材層を含む、請求項1〜13のいずれか1項に記載のシート。
  15. 前記3層以下の複数層構造の一層として、目付が10g/m以上100g/m以下である不織布又は紙である基材層を含む、請求項14に記載のシート。
  16. 水系抄紙工程を含む、請求項1〜15のいずれか1項に記載のシートの製造方法。
  17. 塗工工程を含む、請求項1〜15のいずれか1項に記載のシートの製造方法。
  18. 遮音用途として用いる、請求項1〜15のいずれか1項に記載のシート。
  19. (A)請求項1〜15のいずれか1項に記載のシートに(B)樹脂が含浸されている複合フィルム。
  20. 前記(B)樹脂が、熱硬化した樹脂、光硬化した樹脂、及び熱可塑性樹脂からなる群から選ばれる1つ以上の樹脂である、請求項19に記載の複合フィルム。
  21. 前記(B)樹脂が、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂又は汎用プラスチックの内のいずれか1つ以上の樹脂である、請求項19又は20に記載の複合フィルム。
  22. 前記(B)樹脂が、無機微粒子を50質量%未満で含む、請求項19〜21のいずれか1項に記載の複合フィルム。
  23. 前記無機微粒子が、SiO、TiO、Al、ZrO、MgO、ZnO、及びBaTiOからなる群から選ばれる1つ以上である、請求項22に記載の複合フィルム。
  24. (A)請求項1〜15のいずれか1項に記載のシート、並びに(B)熱硬化性樹脂及び/又は光硬化性樹脂を含む複合プリプレグフィルム。
  25. 前記(B)樹脂が、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、及び/又はポリイミド系樹脂である、請求項24に記載の複合プリプレグフィルム。
  26. 前記(B)樹脂が、無機微粒子を50質量%未満で含む、請求項24又は25に記載の複合プリプレグフィルム。
  27. 前記無機微粒子が、SiO、TiO、Al、ZrO、MgO、ZnO、及びBaTiOからなる群から選ばれる1つ以上である、請求項26に記載の複合プリプレグフィルム。
  28. 請求項1〜15のいずれか1項に記載のシートを含む繊維強化プラスチックフィルム用芯材。
  29. 車載材料のための、請求項28に記載の繊維強化プラスチックフィルム用芯材。
  30. 電子材料のための、請求項28に記載の繊維強化プラスチックフィルム用芯材。
  31. 請求項1〜15のいずれか1項に記載のシートを含む繊維強化プラスチックフィルム用プリプレグ。
  32. 請求項1〜15のいずれか1項に記載のシートを含む繊維強化プラスチックフィルム。
  33. 車載材料のための、請求項32に記載の繊維強化プラスチックフィルム。
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